昭和26(う)5163 窃盗被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和27年1月29日 東京高等裁判所 破棄差戻
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【DRY-RUN】主    文      原判決を破棄する。      本件を原裁判所に差戻す。      被告人の控訴はこれを棄却する。          理    由  検事並びに被告人の各控訴趣意は末尾添附の書面

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判決文本文2,157 文字)

主文 原判決を破棄する。 本件を原裁判所に差戻す。 被告人の控訴はこれを棄却する。 理由 検事並びに被告人の各控訴趣意は末尾添附の書面記載のとおりである。これに対し当裁判所は次のように判断する。 検事の控訴趣意について。 第一点よつて調査するに、昭和二五年七月二四日附の追起訴状には公訴事実として「被告人は昭和二四年十一月初旬頃より同二五年五月中旬頃までの間に十数回に亘り甲府市a町b番地A百貨店の二階において、衣料品の販売店を経営している同市c町d番地B方の店舗より毛布一枚外衣料品四十五品目を窃取したものである」と記載してあつて、犯行の始期及び終期並びにその間に行われた窃盗の回数、賍品の合計数量のみを記載し各個の犯罪行為を特定しないて一括して記載してある。ところが原判決は連続犯の規定が削除された今日では右十数箇の窃盗行為は一罪を構成しない。そして各窃盗行為について、一の犯罪行為から他の犯罪行為を区別して、これを特定し、もつて法令を適用すべき基礎を認めることができないから各訴因は特定せず、従つて公訴提起の手続は違法で無効であるとして公訴を棄却しているのである。 惟うに連続犯の規定が削除せられた今日では数箇の行為を大審院の判例が認めたような条件で一罪とすることは正当でない。しかし連続犯の規定が削除されたからというて直ちに連続犯的の犯罪は絶対に認めることはできないと解するのは早計である。一箇の犯意に基づく同一人に対する数次に亘る実行行為は日時場所を異にしても包括して一罪を構成するのである。元来犯罪の箇数は常に必ずしも自然的(又は社会的)事実としての行為の数の単複によつて決せられるものでなく常に法的事実として規範評価によつて定まるのである。従つて時として外観的には各独立の数箇 ある。元来犯罪の箇数は常に必ずしも自然的(又は社会的)事実としての行為の数の単複によつて決せられるものでなく常に法的事実として規範評価によつて定まるのである。従つて時として外観的には各独立の数箇の行為である如く認められる場合でも、規範的評価の上からは、これを包括<要旨第一>して一箇の行為と認めるのを相当とする場合がある。ただ数箇の行えを包括して、これを一罪たらしめる要件</要旨第一>は何であるかが問題であるが、その要件は数箇の行為が同一罪名に該当すること並びに犯意及び結果の各単一性であると解するのが相当である。同一罪名とは大審院の判例の認めたような広い意味に解すべきてないことは刑法第五五条の規定が削除された今日では当然のことである。次に数箇の行為を一罪と見るか、数罪と見るかは現行法上は刑を併合加重するべきか、どうかに関係してくるのであるが、刑の重車の契機は犯人の悪性の強弱に求めるか、或は結果の大小に求めるかは大間題であるが現行法は折衷的の立場を採り、その双方を考量しているのである。これは未遂犯、中止犯に関する規定や刑事訴訟法第二四八条の規定の精神からも窺われるのである。ところが一般的にいうと、結果が単一でも犯罪的決意が複数である場合(いわゆる承継的意思継続の場合を含む)は犯意の単一の場合よりも悪性が強く、また犯意が単一でも結果が複数である場合は結果の単一である場合よりも結果が大で、しかも悪性も強いのが普通である。即ち犯意や結果の何れかが単一でない場合にはその何れもが単一である場合よりも一般に悪性が強いか結果が大である。従つて併合加重をしないで、<要旨第二>一罪として処断するには犯意並びに結果の各単一性を要するものと解すべきである。以上の要件を具備すれば</要旨第二>数箇の行為は一罪を構成し、そして一罪だとすれば本件追起訴状のように犯 、<要旨第二>一罪として処断するには犯意並びに結果の各単一性を要するものと解すべきである。以上の要件を具備すれば</要旨第二>数箇の行為は一罪を構成し、そして一罪だとすれば本件追起訴状のように犯行の始期と終期、その回数、目的物の主なものを掲げてその合計額犯行方法等を記載すれば訴因は特定するわけである。さて本件追起訴状の記載によれば、十数回の犯行が同一罰条に触れ、またその結果が単一であることについては疑がないが、犯意の単一性に関する記載が明確を欠いている。同一意思の下にしたという記載もなく、記載の全趣旨からも、そのことが窺知できない。さればというて数箇の犯意の下にしたとも判然読めない。かような場合には裁判所はよろしく検察官に対し釈明を求めて、その何れであるかを明確にし、検察官において犯意の単一でない旨釈明し、しかも犯行の回数も十何回であるか、その日時、各犯行の目的物の主たるもの等について明確にしないときはこの時こそ各犯罪について訴因を特定しないものとして公訴を棄却すべきである。しかるに原審は連続犯の規定が削除された今日では数箇の行為は一罪を構成しないものであると解し、検察官に対し上述の釈明も求めないで、直ちに訴因を特定しない公訴であるとして、これを棄却したのは罪数に関する法律の解釈を誤つたもので右違法は判決に影響を及ぼすこと明白である。論旨結局理由がある。 (その他の判決理由は省略する。)(裁判長判事吉田常次郎判事石井文治判事鈴木勇)

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