平成16(行コ)94 贈与税更正処分等取消請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成12年(行ウ)第5号)

裁判年月日・裁判所
平成17年4月14日 大阪高等裁判所 租税
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判決文本文14,339 文字)

主文 1 一審原告ら,一審被告らの本件各控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は,一審原告ら,一審被告らそれぞれの貼用印紙分をそれぞれ一審原告ら,一審被告らの各負担とし,その余の費用を二分し,その一を一審原告ら,その余を一審被告らの各負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 一審原告ら(1) 原判決主文3ないし5項を次のとおり変更する。 ア主位的請求一審被告門真税務署長が,一審原告Aの平成6年分の贈与税について平成9年6月13日付けでした更正(ただし,一審被告国税不服審判所長の裁決により一部取り消された後のもの)のうち,課税価格360万4000円,納付すべき税額45万1000円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定(ただし,一審被告国税不服審判所長の裁決により一部取り消された後のもの)を取り消す。 一審被告吹田税務署長が,一審原告Bの平成6年分の贈与税について平成9年6月13日付けでした更正(ただし,一審被告国税不服審判所長の裁決により一部取り消された後のもの)のうち,課税価格434万4492円,納付すべき税額64万8200円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定(ただし,一審被告国税不服審判所長の裁決により一部取り消された後のもの)を取り消す。 イ予備的請求一審被告門真税務署長が,一審原告Aの平成6年分の贈与税について平成9年6月13日付けでした更正(ただし,一審被告国税不服審判所長の裁決により一部取り消された後のもの)のうち,課税価格1585万4000円,納付すべき税額573万9700円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定(ただし,被告国税不服審判所長の裁決により一部取り消された後のもの)を取り消す。 一審被告吹田税 5万4000円,納付すべき税額573万9700円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定(ただし,被告国税不服審判所長の裁決により一部取り消された後のもの)を取り消す。 一審被告吹田税務署長が,一審原告Bの平成6年分の贈与税について平成9年6月13日付けでした更正(ただし,一審被告国税不服審判所長の裁決により一部取り消された後のもの)のうち,課税価格4109万4492円,納付すべき税額2042万1100円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定(ただし,一審被告国税不服審判所長の裁決により一部取り消された後のもの)を取り消す。 (2) 訴訟費用は第1審,2審とも一審被告らの負担とする。 (3) 仮執行宣言 2 一審被告ら(1) 原判決中,一審被告ら敗訴部分を取り消す。 (2) 一審原告らの本件請求を棄却する。 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも一審原告らの負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,一審原告らの平成6年分の贈与税について,一審被告門真税務署長(一審原告Aについて)及び一審被告吹田税務署長(一審原告Bについて)がした更正(以下「本件各更正」という。。)及び過少申告加算税賦課決定(以下「本件各賦課決定」といい,本件各更正とあわせて,「本件各更正等」という。)の各取消しを求めた事案であり,原判決は,一部を認容し,一部を却下し,その余を棄却し,双方が却下部分を除く部分につき控訴した。 2 前提となる事実等,争点及び争点についての当事者の主張は,次に付加するほか,原判決の事実及び理由,第2の1ないし3(原判決4頁20行目から53頁20行目まで)中,控訴にかかる一審被告ら関係部分記載のとおりであるから,これを引用する。 3 当審における主張(1) 一審原告らア評価基本通達による配当還 判決4頁20行目から53頁20行目まで)中,控訴にかかる一審被告ら関係部分記載のとおりであるから,これを引用する。 3 当審における主張(1) 一審原告らア評価基本通達による配当還元方式の適用相続税法22条は贈与により取得した価額については,原則として当該財産の取得の時における時価により評価すべき旨定めているところ,時価とは客観的な交換価値,すなわち,不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立する価格をいうものと解される。しかし,客観的な交換価値は必ずしも一義的に確定されるものでないので,課税実務上,納税者間の公平,納税者の便宜,徴税費用の節減という見地から,財産評価の一般的基準として評価基本通達が定められている。 国民は,その経済活動を行うに際し,租税上の負担のことをも考えて経済活動を取捨選択している。 課税上の評価が違うのであれば,当該の経済活動そのものを国民が行わないことも当然ありえる。国民が行った経済活動に対して当事者の申告と異なる課税処分がされた場合,仮にその課税処分が正しかったとしても,国民が行った経済活動に正しい課税がなされただけであると評価することはできない。なぜなら,たとえ正しい課税であったとしても,そのような課税がなされるのであれば,そもそも国民はそのような経済活動を行わなかったといえるから,当該課税処分は,納税者の経済活動の選択の自由を奪ってしまうからである。したがって,現実に国民への税務申告の指針として開示されている財産評価基本通達と異なる課税処分は,当該通達の修正がなされない限り,国民の経済活動の自由を侵害するものとして許されないというべきである。 本件出資に対し評価通達188-2を適用しないことは,憲法29条,同13条によって国民に保障された経済活動の自由,憲 り,国民の経済活動の自由を侵害するものとして許されないというべきである。 本件出資に対し評価通達188-2を適用しないことは,憲法29条,同13条によって国民に保障された経済活動の自由,憲法31条,同30条が規定する適正手続きの保障に違反するものというべきである。 仮に,財産評価基本通達をそのまま適用することがかえって実質的な租税負担の公平を著しく害するような特別の事情がある場合に別の合理的な評価方法によることが許されるしても,その特別事情は厳格に判断されなければならない。 Cが本件出資をした平成4年当時,シティ・アイランド開発は,坪単価50万円という極めて廉価な購入価格で土地を購入済みで,売却により充分な利益が上がる可能性が極めて高く,有望な事業への投資だった。本件出資金は,ほとんど地下げ事業のための土地購入資金として使用され,地下げ事業が成功しない限り戻ってくることがなく,シティ・アイランド開発は,当初,地下げ事業自体が長期間を要する事業であるとともに,バブル経済の崩壊の時期と重なったことから,やむを得ず無配にしたに過ぎず,平成10年2月期より利益配当を行なっている。配当金の額は利益金額や処分可能額のうち何割を配当に廻すかという経営政策(配当性向)によって決定されるのであり,資本と資本準備金の振り分け如何により影響を受けることはなく,本件出資は利益配当を目的としてを行われた。 また,1対99の割合による資本と資本準備金の振り分けになったのは,Dがシティ・アイランドを設立する際,地下げ事業をする上で底地借地人との交渉の際に多額の資本金の会社であることが不都合であり,さらに,当時の不動産会社の実際として,資本金が1000万円ぐらいの会社が普通ぐらいであったことから,自然に資本金1000万円の会社が設立された結 渉の際に多額の資本金の会社であることが不都合であり,さらに,当時の不動産会社の実際として,資本金が1000万円ぐらいの会社が普通ぐらいであったことから,自然に資本金1000万円の会社が設立された結果に過ぎず,Cは,上記振分けが既に定められていた増資を引き受けて本件出資をした関係上,自己の意思を関与させる余地がなかった。有限会社は,有限会社法の規定により,増資の場合に1口当たりの資本金の額を超える部分の払込金を資本準備金の額に組入れることが法定されており,Cや一審原告らの意思によって資本金の額と資本準備金の額への組入れを左右することはできない。 したがって,本件において特別事情があったということはできず,配当還元方式を規定した通達188-2をそのまま適用すべきである。 イ純資産価額方式を基準とした評価方法の不合理性一審被告らを含む課税当局は,他の同種事件において,出資の評価額につき修正配当還元方式により50万円と主張したり,純資産価額の80%で77万9533円と主張したり,純資産価額そのままの86万9211円と主張したり,預け金として100万円と主張したり,主張が首尾一貫しないのであって,本件と同様の事件であると一審被告らが主張しているE事件において,国税不服審判所における審理の際,城東税務署長(実質的に大阪国税局)は,配当還元方式の所定の計算式の中の「その株式の1株当たりの資本金の額」につきこれを「資本等の金額」と読み替えて実際に払込みされた額の100万円を当てはめて本件出資を1口当たり50万円と評価した処分が正当であると主張し,国税不服審判所長は,上記修正配当還元方式の是非を示すことなく新たに純資産価額方式を適用して1口97万4417円の80%である77万9533円と評価し,城東税務署長及び国税不服審判所長は,そ 主張し,国税不服審判所長は,上記修正配当還元方式の是非を示すことなく新たに純資産価額方式を適用して1口97万4417円の80%である77万9533円と評価し,城東税務署長及び国税不服審判所長は,その訴訟においては,本件出資の評価額が1口77万9533円であると主張する一方,1口50万円とした原処分庁の判断も違法でない旨主張し,「『他の合理的な方式』とは,複数の方法が考えられるところであり,いずれか一つの方法以外は誤りであるとの帰結が導かれるものではない。『資本金の額』を資本金及び資本準備金の額と読み替えた上で配当還元方式を用いることも,純資産価額方式を用いることも,他の合理的な方法に当たり,いずれの方法からも本件処分の適法性が基礎づけられるというべきである,複数の方法が考えられるところであり,いずれか一つの方法以外は誤りであるとの帰結が導かれるものではない。本件に則していえば,『資本金の額』を資本金及び資本準備金の額と読み替えた上で配当還元方式を用いることも,純資産価額方式を用いることも,他の合理的な方法に当たり,いずれの方法からも本件処分の適法性が基礎づけられるというべきである。」旨釈明し,さらに,「2億4500万円との評価額(修正配当還元方式による1口50万円の評価額)も,3億8197万1464円との評価額(純資産価額方式による2割減の評価額)も,いずれも客観的な評価方法により算出されたものであり」と釈明していたのであり,また,一審被告らは本件税務調査の段階で原判決の評価方法・評価額と同様の1口50万円で修正申告をするように一審原告らに対して指導するなど,課税根拠が変遷しており,純資産価額方式の根拠そのものが破綻している。 純資産価額方式の合理性は,小会社の株主が株式を保有することによって会社財産を間接的に保有するものであり,個人 するなど,課税根拠が変遷しており,純資産価額方式の根拠そのものが破綻している。 純資産価額方式の合理性は,小会社の株主が株式を保有することによって会社財産を間接的に保有するものであり,個人企業者と同じように(間接的にではあるが)会社財産を支配しているから,個人企業者の財産評価と均衡を維持できることにあり,会社を支配している状況が必要である。純資産価額方式の妥当性は,会社を支配している株主がその支配権によって会社の解散を決議して残余財産の分配に与ることが法的に可能であるという点にある。 したがって,会社が大会社で解散決議など容易にできず支配株主といえども残余財産の分配にあずかることが困難な場合には純資産価額方式によらず類似業種比準価額方式によっていることや,支配株主であっても単独で解散決議ができない50%未満の持株の株主の場合には,その事情を斟酌して純資産価額の80%で評価することとされているのも同様の理由によるのである。会社への出資は共益権的側面と自益権的側面を有していることを基本とするところ,純資産価額を出資口数で除したものが出資の客観的交換価値であるというのは,出資の共益権的側面を無視し,ひいては自益権的側面の把握も歪めてしまうものである。 シティ・アイランド開発は,ほとんど出資金を土地購入資金として使用しているから,返還約束を果たそうと思えば地下げ事業で利益を上げるか,金融機関から返済資金を借りるしかしないが,地下げ事業は,借地人への土地払下げ交渉がうまくいかなければ利益が上がらないという大きなリスクがあり,その交渉相手の借地人の数たるや180人にも及び,それら借地人が底地買取り資金を有しているのかどうか,払下げ価格がいくらで妥結するのか,そしてこのような交渉がいつになれば全体として利益を上げられるようになるのか の借地人の数たるや180人にも及び,それら借地人が底地買取り資金を有しているのかどうか,払下げ価格がいくらで妥結するのか,そしてこのような交渉がいつになれば全体として利益を上げられるようになるのか,様々なリスクがあることは明らかであり,本件出資を受けた時点で出資金の返還約束をすることは客観的にも不可能というほかなく,返還約束を守るために金融機関から買戻し資金を借り入れなければならないということになれば,その時点で金利負担が発生することになり,いずれにしろ,金利負担のない資金調達ということは,大きなリスクのある買戻約束と比べると,何のメリットにもならない。したがって,およそシティ・アイランド開発が返還約束をしていたと推認すべき状況はない。 Fから贈与を受けたGらが出資をシティ・アイランド開発に譲渡したことは,地下げ事業を誤解した借地人らの代理人弁護士からシティ・アイランド開発の取締役であったF,H,I及びJに対し,借地人らに対する脅迫行為により法的措置をとる旨の警告文書が送付されてきたというやむを得ない事情に基づくものであって,かかる事実があるからといって,出資された当時,既に買い戻し約束があったなどということにならない。また,Kから贈与を受けたLが出資をシティ・アイランド開発に譲渡したのは,Kが日本刀収集の趣味が高じて資産を散逸させた挙句に長男のLが自殺をするという異常事態の中で,Kがシティ・アイランド開発への出資を筋の悪い関係者に提供するおそれがあったからシティ・アイランド開発がやむを得ず買い取ったものであり,もとより買戻し約束があったことによるものではない。シティ・アイランド開発の出資者は,平成3年から4年にかけて行なわれた出資から既に12,13年間が経過しているにもかかわらず,F及びKを除いて,誰一人として出資を譲渡,買戻しな とによるものではない。シティ・アイランド開発の出資者は,平成3年から4年にかけて行なわれた出資から既に12,13年間が経過しているにもかかわらず,F及びKを除いて,誰一人として出資を譲渡,買戻しなどせず,現在まで保有し続けてきた。 ウ国税通則法65条4項所定の正当な理由評価通達は,いったん定められれば,画一的に適用することが納税者の予測可能性を担保することになる。いったん定められた通達を安易に操作すれば,国民は何を基準に申告を行っていいのか判断しようもない。極めて複雑な納税事務において納税者に対し通達以外の基準で納税せよとなどど期待しても,納税者に不可能を強いるに等しい。 本件において,一審被告らが純資産価額方式を主張し,原判決が配当還元方式そのものではなく配当還元方式に準ずる方式によるすべき旨判示しているとおり,本件出資の時価は明確なものではなく,課税当局による評価額でさえ変動しているのであり,国民の立場からすれば評価通達以外の評価方法がないのであるから,所与の通達を基準として申告をした以上,過少申告加算税を適用すべきではない正当理由があるといえる。 (2) 一審被告らア配当還元方式を基準とした評価方法の不合理性配当還元方式は,多種多様な出資の評価額の決定要素のうち配当金のみを基準とする評価方式であるために,評価の適正も担保し難いほか,評価の基準となる配当金額についても客観的な支払基準が存在しないため,決定に際して経営者の恣意が介入しやすい。このため,個々の資産,負債を基に税額が決定される個人事業者との権衡を図るという観点からすれば,配当還元方式は,配当を受けることが当該出資の主たる要素となるような例外的な場合の評価方法として限定的に用いられるべきものである。評価基本通達188-2の合理性 者との権衡を図るという観点からすれば,配当還元方式は,配当を受けることが当該出資の主たる要素となるような例外的な場合の評価方法として限定的に用いられるべきものである。評価基本通達188-2の合理性は,事業経営の影響の少ない同族株主の一部及び従業員株主などのような少数株主が利益配当のみを期待して株式を取得した場合の実質的な期待を評価において反映させるのが妥当であること,評価基本通達による一般的基準を定めることによる株式評価の簡便性を確保する必要性があることに求められる。 しかるところ,Cないし一審原告らは,本件出資に対する利益配当を得ることなど期待しておらず,もっぱら配当還元方式により評価をされることを前提に贈与税の負担を軽減させることのみを目的としていたのであって,配当還元方式による評価をする実質を有していない。払込金額を資本金1に対し資本準備金99の割合で組み入れ,出資金のうち100分の1しか利益配当を受け得ない当該出資が配当金の受領を目的とするとは考えられず,現に,平成8年2月29日までの各事業年度に利益配当がなかったから,本件出資は,その利益配当額を基準にして算定する配当還元方式によって評価するだけの実質を有していないといわざるを得ない。 本件出資は,評価基本通達188-2に定める配当還元方式による評価方法を形式的に適用することが,実質的な租税負担の公平を著しく害する結果となるなど,評価基本通達に定められた評価方法によらない評価を行うことが正当とされる特別の事情があるから,評価の簡便性に配慮する必要はなく,利益配当を基準とする配当還元方式を採用する合理性はない。 イ純資産価額方式を基準とした評価方法の合理性純資産価額方式は,評価理論上取引相場のない会社の持分評価における原則的な方法であり,評価基本通達 配当還元方式を採用する合理性はない。 イ純資産価額方式を基準とした評価方法の合理性純資産価額方式は,評価理論上取引相場のない会社の持分評価における原則的な方法であり,評価基本通達上も取引相場のない会社の株式の原則的評価方法として合理性を有する。そして,純資産価額方式による算定の合理性は,当該出資の理論的・客観的価値が会社の純資産価額を出資の口数で除したものと考えられることから導かれるのであって,当該有限会社を支配しているといえる状況がない場合に算定の合理性が失われるわけではない。 シティ・アイランド開発に対する出資者は,評価基本通達188-2に定める配当還元方式が適用されるように,Mが30パーセント以上の出資割合を保つことによって,Mが同族社員となり,M以外の出資者が同族社員以外の社員となるよう出資割合を調整することを前提に出資しているのであり,また,出資の目的も,会社経営や利益配当にあるのではなく,もっぱら出資の評価額を低く抑え,これを贈与することにより,本来であれば負担すべき贈与税ないし相続税の軽減を図ることのみにある。しかも,本件は,将来においてその目的が達成できたことが確定した時点で,出資者がシティ・アイランド開発から出資金相当額の返還を受けることが推認できるという特殊な事案なのである。そして,このような特殊な会社においては,出資者が支配権を有しているとみられるような出資割合にするはずがなく,また,出資者が当該会社の経営自体に参加する意思がないのは当然であるから,通常の会社の株式買取請求の際の評価等における一般論を持ち出し,当該有限会社を支配しているといえる状況の有無を問題とする必要性はない。 シティ・アイランド開発のC以外の出資者6名(Mを除く。)の1名であるFから平成5年6月15日に贈与を受けた ち出し,当該有限会社を支配しているといえる状況の有無を問題とする必要性はない。 シティ・アイランド開発のC以外の出資者6名(Mを除く。)の1名であるFから平成5年6月15日に贈与を受けたG及びNは,平成6年6月1日ころ,出資(490口)を払込金額と同額の4億9000万円でシティ・アイランド開発に譲渡した。同じ1名であるKから贈与を受けたLは,その出資持分を配当還元方式により1口当たり5000円と評価し,贈与税の申告をしているが,平成6年3月1日に出資(500口)を払込金額と同額の1口当たり100万円,合計5億円でシティ・アイランド開発に譲渡した。上記2名の出資分の出資口数(合計990口)及び譲渡金額(合計9億9000万円)からすれば,本件出資を含むシティ・アイランド開発の出資者ら(Mを除く。)の各出資の客観的価値は,贈与時において,1口当たり100万円を下らなかったと認められる。990口の出資口数が9億9000万円で譲渡された事実からすれば,全く同じ契約関係に基づき出資をしている本件出資も,同等の価値を有すると考えるのが自然であって,単に一審原告らにおいて回収された事実が立証されていないことのみを理由に,本件出資の客観的価値が失われていると認めることはできない。 Cは,本件メモ(乙2)及び本件自筆書面(乙3)において,「子供から㈲シティ・アイランド開発への売却は,出資価格のほぼ2億円くらいでできるという約束があったので」との記載を残すことを認めたから,本件出資が払込金とほぼ同額の1口当たり約100万円の価値があることの記載を残すことを認めたことになり,本件調査時,本件出資が払込金額相当額の価値があることを認識し,また,そのような認識をもって本件出資を行い,一審原告らに贈与したと推認される。 そして,F及びKの出資に係 認めたことになり,本件調査時,本件出資が払込金額相当額の価値があることを認識し,また,そのような認識をもって本件出資を行い,一審原告らに贈与したと推認される。 そして,F及びKの出資に係る権利が最終的にシティ・アイランド開発に払込金額と同額で買い取られていることとCが本件出資に際し出資価額相当額での売却ができる特別な約束が存在していたことを認めていることからすれば,出資者ら(Mを除く。)による各出資に際し,出資者らとシティ・アイランド開発との間で,本件出資を含む各出資に係る権利を対象とするいわゆる買戻特約が存在していたことが優に推認される。 シティ・アイランド開発らは,買戻特約付き出資を受けたことにより,通常,金融機関等からの利息付き融資に頼ることなく,無利息である出資者からの出資により資金調達を行うというメリットがあったことになる。また,出資者らは,租税回避できる金額相当の利益を期待して出資するのであるから,必ずしも払込金額全額の回収が得られないとしても,出資に応じるメリットがある。そうすると,仮に,シティ・アイランド開発らが出資者らに対し,払込金額全額の支払を保証する内容の買戻しまでは約束しなかったとしても,出資者らが出資をする可能性・合理性は十分にあり,この場合,シティ・アイランド開発らは,払込金額と出資者らへの返還額との差額分を確保することができるというメリットがあるというべきであるから,シティ・アイランド開発が出資者らとの間で買戻特約等を付して出資を受け入れることに合理性がなかったとはいえない。 なお,本件出資の買戻し等による本件出資に係る払込金額相当額の回収が実現していないことは,本件出資の客観的価値そのものを算定する上で重要な斟酌事由であっても,当該有限会社を支配しているといえる状況の有無を判断する事由 戻し等による本件出資に係る払込金額相当額の回収が実現していないことは,本件出資の客観的価値そのものを算定する上で重要な斟酌事由であっても,当該有限会社を支配しているといえる状況の有無を判断する事由になり得ないから,これを肯定した原判決はその論理に明白な誤りがある。 ウ仮執行宣言行政処分は,その成立に何らかの瑕疵があっても,それが重大かつ明白な瑕疵であってそのために無効と認められる場合のほかは,権限のある行政庁が職権によってこれを取り消すか,一定の訴訟手続によって争った結果それが取り消されるまでは,その相手方はもちろん,裁判所・行政庁その他第三者も一応,これを有効な行為として取り扱う仕組みが採られている。仮に原判決における一審被告らの敗訴部分が維持され,更に当審において一審原告らの控訴がいれられるとした場合であっても,その判断は判決確定を待って行政庁を拘束するものであるから,本案判決に仮執行の宣言を付すことは認められるべきではない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,当審における一審原告ら,一審被告らの主張及び証拠を加えて更に検討するも,一審原告らの一審被告らに対する本件請求は原判決の認容する限度で相当として認容し,その余を不相当として棄却すべきものと判断するが,その理由は,次のとおり付加するほか,原判決の事実及び理由第3の1ないし3(原判決53頁22行目から82頁2行目まで)の説示と同一であるから,これ(却下についての部分を除く。)を引用する。ただし,原判決54頁24行目の「午後9時」を「午前9時」と改める。 2 当審における一審原告らの主張について(1) 評価基本通達による配当還元方式の適用について通常の経済活動につき特別の事情もないのに税務申告の指針として開示されている財産評価基本通達と異なる課税処分を 審原告らの主張について(1) 評価基本通達による配当還元方式の適用について通常の経済活動につき特別の事情もないのに税務申告の指針として開示されている財産評価基本通達と異なる課税処分をすることは,国民の法に対する予測と信頼に反して経済活動の自由を侵害することとなり,許されないが,本件出資は,引用にかかる原判決認定,説示のとおり,もっぱら本件出資の評価額を低廉なものとする目的で評価基本通達188-2に定める配当還元方式を適用し得るようにするための方策として1対99の割合をもって資本金と資本準備金への振り分けをしたのであって,このような経済活動につき同通達どおりの評価をすることは,実質的な租税負担の公平を著しく害するという国民経済に対する明らかな不公正をもたらすのであるから,同通達の適用を否定することは,法の理念,憲法の精神に合致する当然の措置であり,憲法29条,同13条によって国民に保障された経済活動の自由,憲法31条,同30条が規定する適正手続の保障に違反しない。 上記振り分けをするに至った事情についての一審原告ら主張に沿う甲36,49の供述部分ないし記載部分は,採用し得ないから,本件で特別事情を厳格に解した場合,これに該当する事実があるといえる。 一審原告らの上記に関する主張は採用することができない。 (2) 純資産価額方式を基準とした評価方法の合理性について純資産価額方式の妥当性は,引用にかかる原判決認定,説示のとおり,会社を支配している株主がその支配権によって会社の解散を決議して残余財産の分配に与ることが法的に可能であるという点にあり,或いは,法形式的には会社を支配していない株主が事実として現実に残余財産の分配に与ることが可能であるという点にあると考えられ,評価理論上,何らの留保もなく,当然に取引相場 に可能であるという点にあり,或いは,法形式的には会社を支配していない株主が事実として現実に残余財産の分配に与ることが可能であるという点にあると考えられ,評価理論上,何らの留保もなく,当然に取引相場のない会社の持分評価における原則的方法となるわけではない。 甲36,乙2,3,弁論の全趣旨によれば,本件メモ(乙2)及び本件自筆書面(乙3)に,「㈲シティ・アイランド開発への出資は,出資前から,D,日本経営のO,Pより子供への贈与は安い価格ででき,子供から㈲シティ・アイランド開発への売却は,出資価格のほぼ2億くらいでできるという約束があったので,私の2億の預金を子供名義の預金に安い税金で移せる事を目的として出資しました。」との内容が記述されていること,シティ・アイランド開発のC以外の出資者6名(Mを除く。)の1名であるFから平成5年6月15日に贈与を受けたG及びNは,平成6年6月1日ころ,出資(490口)を払込金額と同額の4億9000万円でシティ・アイランド開発に譲渡し,同じ1名であるKから贈与を受けたLは,平成6年3月1日,出資(500口)を払込金額と同額の1口当たり100万円,合計5億円でシティ・アイランド開発に譲渡したことが認められ,これによると,引用にかかる原判決認定,説示のとおり,Cは,極めて低額の税金の負担で子孫への財産の移譲ができて,シティ・アイランド開発の行う事業の成果により将来的に出資した金額と同程度の金額の回収が見込まれるとの認識を有していたといえるが,同程度の金額の回収見込みの認識であるから,シティ・アイランド開発による本件出資の譲渡ないし買戻し(自己持ち分の取得)で同回収を行うとの確定的認識であったかは明らかでなく,利益配当を含む利益配分で同回収を受けるとの認識であったことを否定できず,将来的回収見込であるから,本件出資 譲渡ないし買戻し(自己持ち分の取得)で同回収を行うとの確定的認識であったかは明らかでなく,利益配当を含む利益配分で同回収を受けるとの認識であったことを否定できず,将来的回収見込であるから,本件出資が払込金とほぼ同額の1口当たり約100万円の価値があることの記載を残すことを認めたことにならず,本件調査時に,本件出資が払込金額相当額の価値があることを認識していたとか,そのような認識をもって本件出資を行ったとか,一審原告らに贈与したとかの事実を推認することもできない上,Cや一審原告らにつき,本件出資の譲渡ないし買戻し(自己持ち分の取得)或いはその約束があったことを直接認めるに足りる証拠はないから,上記G、NやLの譲渡の事実をあわせ考慮しても,本件出資が払込金とほぼ同額の1口当たり約100万円の価値があることを推認することもできない。 したがって,一審原告らは,引用にかかる原判決認定,説示のとおり,会社を支配している株主といえず,また,事実として現実に残余財産の分配に与ることが可能ともいえないから,純資産価額方式が妥当性を有するということはできない。 一審被告らの上記に関する主張は採用することができない。 (3) 配当還元方式を基準とした評価方法の合理性について上記のとおり,本件出資の1対99の割合の資本金と資本準備金への振り分けが評価基本通達188-2の適用を否定した理由であり,引用にかかる原判決認定,説示のとおり,同通達の考え方は合理性があるから,1対99の割合をもってする資本金と資本準備金への振り分けのない,少なくとも,出資全部を資本金とした場合につき,同通達の考え方による評価をすることの合理性は否定し得べくもない。 甲36,弁論の全趣旨によれば,一審原告らは,平成8年2月29日までの各事業年度に利益配当を受 資全部を資本金とした場合につき,同通達の考え方による評価をすることの合理性は否定し得べくもない。 甲36,弁論の全趣旨によれば,一審原告らは,平成8年2月29日までの各事業年度に利益配当を受けていなかったことが認められるが,直ちに利益配当を期待していなかったとは断定できず,上記のとおり,シティ・アイランド開発への本件出資の譲渡ないし買戻し(自己持ち分の取得)或いはその約束ががないことからすると,一審原告らは,他の第三者への本件出資の譲渡ができれば格別,利益配当を期待する以外に本件出資の回収を図る手だてがないといえる。 配当還元方式は,評価の基準となる配当金額につき客観的な支払基準が存在せず,決定に際し経営者の恣意が介入しやすい面があり得るが,会社の業績から生ずる当期利益に拘束されるという基本による歯止めがある上,会社の業績から生ずる利益自体,理論的に会社価値を正確に表現するものといえ,一審被告ら主張のような限定的例外的場合以外に合理性がないとはいえない。 前記財産評価基本通達をそのまま適用することがかえって実質的な租税負担の公平を著しく害するような特別の事情がある場合における別途の合理的な評価方法は,合理的ということの多様性もあって,相対的にならざるを得ない面があり,本件において,原判決が合理性ありとした配当還元方式の考え方による評価方法は,少なくとも一審被告ら主張の上記純資産価額方式に比し,相対的に合理性があるといえる。課税当局が同種事件において同様の局面でその事案に応じた種々の評価方法を合理的と主張していること(甲91ないし97)も,ことがらが相対的要素をはらんでいることを示している。 なお,株式評価の簡便性が評価基本通達188-2の一つの要素であるとしても,上記合理性の結論を左右するものでない。 一審 97)も,ことがらが相対的要素をはらんでいることを示している。 なお,株式評価の簡便性が評価基本通達188-2の一つの要素であるとしても,上記合理性の結論を左右するものでない。 一審被告らの上記に関する主張は採用することができない。 (4) 国税通則法65条4項所定の正当な理由の有無本件出資は,前記のとおり,もっぱら本件出資の評価額を低廉なものとする目的で評価基本通達188-2に定める配当還元方式を適用し得るようにするための方策として1対99の割合をもって資本金と資本準備金への振り分けをした結果,同通達による評価を否定されたのであって,単に国民が所与の通達を基準として申告をした場合以上に,同通達による評価を意図して申告をしたものであり,正当な理由があったとはいえない。 一審原告らの上記に関する主張は採用することができない。 3 結論よって,原判決は相当であって,本件各控訴はいずれも理由がないからこれを棄却し,一審原告らの求める仮執行宣言は付さず,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第12民事部裁判長裁判官若林諒裁判官三木昌之裁判官島村雅之は差し支えにつき署名,押印することができない。 裁判長裁判官若林諒

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