令和4(行ケ)10073 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年1月19日 知的財産高等裁判所 4部 判決 請求棄却
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令和5年1月19日判決言渡令和4年(行ケ)第10073号審決取消請求事件口頭弁論終結日令和4年11月14日判決 原告 WES株式会社 同訴訟代理人弁理士岡田陽之介 被告桂林智神信息技術股▲ふん▼有限公司 同訴訟代理人弁護士藤沼光太同訴訟代理人弁理士岡村太一主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求特許庁が無効2021-890051号事件について令和4年6月14日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。)⑴ 原告は,以下の商標(登録第6256358号。以下「本件商標」という。)の商標権者である。 商標 zhiyun(標準文字) 登録出願日平成30年9月24日 登録審決日令和2年3月30日設定登録日令和2年6月3日指定商品第9類「スマートフォン用スタビライザー,コンピュータ用スタビライザー,携帯電話用スタビライザー,カメラ用スタビライザー,液晶ディスプレイ用スタビライザー, ビデオカメラ用スタビライザー」⑵ 被告は,令和3年9月17日付けで,本件商標の登録を無効とすることを求める商標登録無効審判を請求(以下「本件無効審判請求」という。)した。 被告が本件商標の登録無効の理由に引用する商標は、被告がスマートフォン用又 7日付けで,本件商標の登録を無効とすることを求める商標登録無効審判を請求(以下「本件無効審判請求」という。)した。 被告が本件商標の登録無効の理由に引用する商標は、被告がスマートフォン用又はカメラ用スタビライザーの名称として使用していると主張する別紙 引用商標目録1ないし3のとおりの構成よりなる各標章(以下、それぞれ「引用商標1」ないし「引用商標3」という。)及び同目録4のとおりの構成からなる国際登録第1444758号商標(以下「引用商標4」という。以下、引用商標1ないし引用商標4を包括して「引用商標」という。)であり、日本国を指定する国際登録において指定された第9類「Close-upl enses; cinematographiccameras; casesespeciallymadeforphotographicapparatusandinstruments; photographicracks; dryingracks [photography]; selfiesticks [hand-held monopods]; tripodsforcameras; cameras [photography]; standsforphotographicapparatus.」及び第35類「On-lineadvertisingonacomputernetwork; salespromotionforothers; ma rketing; advertising; searchengin eoptimizationforsalespromotion; updatingandmaintenanceofdataincomputerd archengin eoptimizationforsalespromotion; updatingandmaintenanceofdataincomputerdatabases; import-exportagencyservices; provisionofanon-linemarketplaceforbuyers andsellersofgoodsandservices;presentationofgoodsoncommunicationmedia, forretailpurposes; systemizationofinformationintocomputerdatabases.」を指定商品及び指定役務として、 2018年(平成30年)11月23日に国際商標登録出願を行ったが、本件商標を引用商標として商標法4条1項11号の暫定拒絶通報がされている。 ⑶ 特許庁は,本件無効審判請求につき無効2021-890051号事件として審理を行い,令和4年6月14日、「登録第6256358号の登録を無効とする。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は, 同月23日,原告に送達された。 ⑷ 原告は,令和4年7月22日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 本件審決の理由の要旨⑴ 原告は、他者の使用する商標について、多岐にわたる指定商品に関し商標 登録出願をし、他者からの譲渡対価の取得等を目的として登録商標を収集しているものというべきであって、本件商標は、登録査定時又は登録審決時において、原告が現に自己の業務に係る商品に使用をしている商標に当たらない上、原告に将来自己の業務に係る商品に使用する意思 を収集しているものというべきであって、本件商標は、登録査定時又は登録審決時において、原告が現に自己の業務に係る商品に使用をしている商標に当たらない上、原告に将来自己の業務に係る商品に使用する意思があったとも認め難い。 したがって、本件商標の登録は、「自己の業務に係る商品又は役務につい て使用をする商標」に関して行われたものとは認められず、商標法3条1項柱書きに違反する。 ⑵ 原告は、本件商標の登録出願前から、引用商標が被告によって「スマートフォン用又はカメラ用スタビライザー」に使用されていたことを十分知っていながら、引用商標が商標登録されていないことを奇貨として、これと実質 的に同一といい得るほど酷似している本件商標を被告に承諾を得ずに先取り的に商標登録出願をし、登録を得たものであって、原告の行為は、被告の我が国における事業の遂行を阻止し、引用商標による利益の独占を図る意図でしたものであり、剽窃的なものである。 したがって、本件商標の登録出願の経緯には、著しく社会的妥当性を欠く ものがあり、その商標登録を認めることは、公正な競業秩序を害するものであって、公序良俗を害するおそれがある商標というべきであるから、その登録は、商標法4条1項7号に違反してされたものである。 3 取消事由⑴ 商標法3条1項柱書き違反に係る判断の誤り(取消事由1) ⑵ 商標法4条1項7号該当性に係る判断の誤り(取消事由2)第3 当事者の主張 1 取消事由1(商標法3条1項柱書き違反に係る判断の誤り)⑴ 原告の主張ア商標登録審査実務では、商標登録出願人等が、現に指定商品又は指定役 務に係る自己の業務を行っていなくても、出願後3ないし4年以内(登録後3年に相当する時期まで)に、 )⑴ 原告の主張ア商標登録審査実務では、商標登録出願人等が、現に指定商品又は指定役 務に係る自己の業務を行っていなくても、出願後3ないし4年以内(登録後3年に相当する時期まで)に、指定商品又は指定役務についての商標の使用を開始する意思がある場合に、指定商品又は指定役務に係る業務を行う予定があると判断することとされている。 イ我が国の商標法における登録主義の下で、不使用の登録商標が蓄積され るなどといった弊害を是正するために、不使用取消審判制度が導入されて おり、商標権者に対し、登録商標の使用義務が課されている。 このような状況に照らせば、商標法3条1項柱書きに違反するか否かを判断するに際しての、商標登録出願人等による商標の使用又は使用の意思の確認は、不使用取消審判における商標権者等による登録商標の使用の事実の証明(同法50条2項)よりも緩やかなものであるべきである。 ウ原告は平成30年1月に本件商標に係る指定商品である「スタビライザー」(甲16)、令和2年11月2日、同月22日、同月25日、及び同月26日に本件商標に係る指定商品のうち「スマートフォン用スタビライザー」(甲50ないし53。書証については枝番を含む。)、令和3年9月15日に本件商標に係る指定商品のうち少なくとも「カメラ用スタビラ イザー,ビデオカメラ用スタビライザー」(甲20)、令和4年8月20日及び同月22日に本件商標に係る指定商品のうち少なくとも「スマートフォン用スタビライザー,カメラ用スタビライザー,液晶ディスプレイ用スタビライザー,ビデオカメラ用スタビライザー」(甲47、54)について、本件商標を使用していた。 これらを踏まえると、原告は出願日である平成30年9月24日後から3ないし4年以内(登録 タビライザー,ビデオカメラ用スタビライザー」(甲47、54)について、本件商標を使用していた。 これらを踏まえると、原告は出願日である平成30年9月24日後から3ないし4年以内(登録日である令和2年6月3日後から3年に相当する時期まで)に、本件商標に係る指定商品の全ての類似群をカバーする商品について、本件商標を使用しており、本件商標に係る指定商品について、本件商標の使用又は使用の意思を十分に有しているといえる。なお、もし 仮に、上記期間内に本件商標の使用をしていないとされる期間が一時的にあったとしても、直ちに商標の使用又は使用の意思がなかったとはいえない。 よって、本件商標は同項柱書きに違反するとした本件審決の認定判断は誤りである。 エ本件審決は、原告が他者の使用する商標について多岐にわたる指定商品 に関し登録出願をし、登録商標を収集していることを理由に、原告が登録査定時又は登録審決時において本件商標を現に自己の業務に係る商品に使用する意思があったとも認め難いとしているが、商標法3条1項柱書きに違反するか否かの判断において、原告の他の商標出願や、他人による引用商標の使用の事実を考慮する必要性はない。 ⑵ 被告の主張ア商標法3条1項柱書きが、出願人において「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」であることを商標の登録要件とした趣旨は、登録主義の下において、他者からの許諾料や譲渡対価の取得のみを目的として行われる、いわゆる商標ブローカー等による濫用的な商標登録を排除 し、登録商標制度の健全な運営を確保することにあるから、同法50条2項との関係で、同法3条1項柱書きの「使用」についての事実の立証を、より緩やかに解してよいとする理由はない。 イ し、登録商標制度の健全な運営を確保することにあるから、同法50条2項との関係で、同法3条1項柱書きの「使用」についての事実の立証を、より緩やかに解してよいとする理由はない。 イ原告の主張する本件商標の使用実績は、早期審査の認定を受けるための名目的なものか、本件異議の申立日(令和2年8月6日)の後に、商標登 録の取消や無効を免れるためにされた名目的なものである。 ウ原告は、本件商標の使用許諾をし(乙1)、本件商標以外にも他人の造語商標を一貫性なく大量に出願し、譲渡及び使用許諾をするなどしている(甲13ないし15)。さらに、原告代表者が複数の商標権を販売している(乙3)。 エしたがって、本件商標が商標法3条1項柱書きに反するとした本件審決の判断に誤りはない。 2 取消事由2(商標法4条1項7号該当性に係る判断の誤り)⑴ 原告の主張ア商標法4条1項7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある 商標」は、同項1号ないし6号には該当しないが、公益保護、公共の権威 の尊重、公共の道徳観念等の公益的な見地から一私人に商標登録することが適切ではないと考えられる商標が該当する。 イ商標法4条1項7号の解釈に当たって、同項1号ないし6号を考慮せずに解釈の幅を私益保護等の見地にまで広げ、出所混同のおそれのある商標や、フリーライド等の不正の目的をもって使用する商標までもが同項7号 に該当することとすると、同項10号ないし15号や、平成8年6月12日法律第68号による改正で新設された同項19号の存在意義がなくなることとなり、妥当ではない。 また、他人が使用する周知・著名でない商標が、我が国で出願・登録されていないことを奇貨として、これと同一又は よる改正で新設された同項19号の存在意義がなくなることとなり、妥当ではない。 また、他人が使用する周知・著名でない商標が、我が国で出願・登録されていないことを奇貨として、これと同一又は類似の商標を先取り的に登 録出願することが、同項7号に該当するとすれば、周知・著名でない商標が、我が国に出願・登録していなくても商標法による保護を受けられるという結果を招くことになり、先願主義(同法8条1項)と矛盾する。 引用商標は、本件商標の登録出願の日の約2年2か月前である平成28年7月13日からインターネット通販サイトAmazonジャパンのウ ェブサイト上で商品「スマートフォン用スタビライザー又はカメラ用スタビライザー」について商標として使用されていたのみで、本件商標の登録出願時及び登録時のいずれにおいても、需要者の間に広く認識されていたわけではなく、その上、その間、被告は引用商標を我が国に登録出願も、商標登録もしていなかったのであるから、先願主義を建前とする我が国商 標法のもとでは、原告が本件商標を先に登録出願し、商標登録したとしても、社会公共の不特定多数の利益に反するとまではいえないし、指定商品について使用することが社会公共の不特定多数の利益に反するともいえない。 被告は引用商標について我が国に登録出願するのに十分な時間があった にもかかわらず、登録出願も、商標登録もしていなかったのであるから、 原告が本件商標を先に登録出願し、商標登録することが、先願主義を建前とする我が国商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当するとはいえないし、著しく社会的妥当性を欠くとする具体的な事情もない。 ⑵ 被告の主張 ア商標法4条1項7号に該当する事由 序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当するとはいえないし、著しく社会的妥当性を欠くとする具体的な事情もない。 ⑵ 被告の主張 ア商標法4条1項7号に該当する事由としては、①その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、②当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、③他の法律によって、当該商標の使用 等が禁止されている場合、④特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合のほか、⑤当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合も含まれる。 ⑤の場合、私益保護の域を超えるものであり、公益的観点からも公序良 俗違反になるということができ、本件はこのような場合に当たる。 イ原告の前記⑴イの主張は、原告において、「他人が使用する周知・著名でない商標が、我が国で出願・登録されていないことを奇貨として、これと同一又は類似の商標を先取り的に登録出願」したことを自認したことにほかならない。 第4 当裁判所の判断 1 本件商標と引用商標について 本件商標について本件商標は、標準文字による「zhiyun」の欧文字である。この文字列に対応した語は、辞書に記載されておらず、一般には存在しない造語であ るから、本件商標からは特定の観念は生じない。 また、本件商標のように特定の意味合いを想起させない欧文字からなる商標を称呼するときは、我が国で広く親しまれている英語風又はローマ字風 から、本件商標からは特定の観念は生じない。 また、本件商標のように特定の意味合いを想起させない欧文字からなる商標を称呼するときは、我が国で広く親しまれている英語風又はローマ字風の発音をもって称呼されるのが一般的といえるところ、本件商標からは、全体としてローマ字風に発音した「ジユン」の称呼が生ずる。 引用商標について 引用商標の構成は、「Zhiyun」の欧文字(引用商標1)、「ZHIYUN」の欧文字(引用商標2)、赤色四角形内に白抜き「ZHIYUN」の欧文字(引用商標3)及び図案化した太字で表された「ZHIYUN」の欧文字(引用商標4)であるところ、これらは、大文字、小文字の違いはあるとしても、文字列としては本件商標と一致する。また、引用商 標に対応した語が辞書に記載されておらず、一般には存在しない造語として、特定の観念が生じないとみるべきことは、本件商標と同じである。 また、大文字、小文字の違いはあっても、欧文字部分が本件商標と共通する引用商標からは、「ジユン」の称呼が生ずると認めるべきことも、本件商標と同様である。 本件商標と引用商標の対比について本件商標と引用商標は、外観において紛らわしく、称呼を共通とするものであり、観念において比較できないとしても、全体として類似するものであることは明らかである。 2 取消事由2(商標法4条1項7号該当性に係る判断の誤り)について 事案に鑑み、取消事由2から判断する。 ⑴ 認定事実ア被告は、中国に所在する企業であり、スマートフォン又はカメラ用のスタビライザーやジンバル雲台(いずれも三脚の上に取り付ける装置)等の販売を業とするところ、平成29年頃から日本の見本市に参加し、平成3 0年には日本市場に進出した(乙2 フォン又はカメラ用のスタビライザーやジンバル雲台(いずれも三脚の上に取り付ける装置)等の販売を業とするところ、平成29年頃から日本の見本市に参加し、平成3 0年には日本市場に進出した(乙20、21)。 本件商標の登録出願日である平成30年9月24日前後の状況をみると、被告は、全世界で平成29年に●●●●●●●●●円、平成30年に●●●●●●●●●円を売り上げ、日本において同年に●●●●●●●●●円を売り上げている(乙19)。 イ Amazonジャパンのウェブサイトにおいて、引用商標ないしこれに 類似する商標が使用された被告の製造販売に係る商品の情報として、「ZhiyunCraneV2 3軸手持ちジンバル」(甲2、取扱開始日平成28年7月13日)、「ZHIYUN」及び「ZHIYUNSMOOTH 4」(甲5、取扱開始日平成30年5月20日)、「ZhiyunCranePlusPro 3軸ハンドヘルドジンバルスタ ビライザー」(甲6、取扱開始日平成30年2月6日)が掲載されている。 ウ原告は、前記第2の1⑴のとおり、平成30年9月24日に本件商標の商標登録出願をしているが、平成29年9月25日から令和3年5月11日までの間に本件商標を含む114件の商標の登録出願をし、特に、平成30年から令和元年にかけては109件にも及んでいるところ、その指定 商品は、バッグ、ボイスレコーダー、キャンプ用マット、椅子、楽器、釣り具等、広範囲に及び一貫性がなく(甲13)、原告が公式ウェブサイト(甲24)に掲載している事業内容「・コンピュータ、その周辺機器・関連機器及びそのソフトウェアの開発、設計、製造、販売並びに輸出入業務・インターネット等の通信ネットワーク及び電子技術を利用した各種 情報提 している事業内容「・コンピュータ、その周辺機器・関連機器及びそのソフトウェアの開発、設計、製造、販売並びに輸出入業務・インターネット等の通信ネットワーク及び電子技術を利用した各種 情報提供サービス、情報収集サービス、広告・宣伝に関する業務及び代理業務・通信販売業務・前各号に付帯関連する一切の事業」と無関係なものも多い。 また、これらの商標のうち22件については、登録後1、2年で移転されているが(甲14、15)、少なくとも18件については、原告による 商標登録出願が類似する他人の商標の使用に後れるものである(甲25)。 なお、原告出願に係るこれらの商標で、他人が使用する商標に後れるものについては、「BOBOVR」、「NUBWO」等、日本語や英語を前提とする限り考え付くのが困難な特徴的な造語が多く含まれ、他人が先行して使用する商標と偶然に一致したものとは認め難い。 原告は、本件商標についても使用許諾する旨、知的財産権の取引サイト に出品している(乙1)。 上記114件の商標登録出願中、7件について、商標法3条1項柱書き違反、同法4条1項7号、10号、15号又は19号該当等を理由として、第三者から刊行物提出書による情報提供がされ(甲26)、本件商標を含む12件について、無効審判請求や登録異議の申立てがされている(甲2 7)。 エ原告は、本件無効審判請求に係る審理において、何ら答弁していない。 検討ア前記ア及びイによれば、本件商標の登録出願日である平成30年9月24日以前に、被告は、引用商標ないしそれに類似する商標を付したスタ ビライザー等の商品について、海外において相当な売上げを得ており、我が国においても、遅くとも平成28年7月13日以降、引用商標ないしそ 、被告は、引用商標ないしそれに類似する商標を付したスタ ビライザー等の商品について、海外において相当な売上げを得ており、我が国においても、遅くとも平成28年7月13日以降、引用商標ないしそれに類似する商標を付したジンバル雲台やスタビライザーがAmazonジャパンで販売され、平成29年には見本市に参加し、平成30年には日本市場に本格参入している。 また、同ウによれば、本件商標の登録出願は、平成29年9月25日から令和3年5月11日までの間に原告によりされた大量の商標登録出願の一部であるところ、これらの出願のうち22件については、登録後1、2年で移転され、そのうち少なくとも18件については原告による登録出願が、類似する他人の商標の使用に後れるものであり、原告出願に係るこ れらの商標の多くが特徴的な造語で、先行する他人の商標と偶然に一致し たものとは考えられず、また、原告は本件商標についても使用料を得ようとしていたことが認められる。 これらの事情によれば、原告は、先願主義に名を借りて、先行して使用されてきた他人の商標と類似する商標を出願した上、金銭的利益を得ることを業とする者と認めざるを得ない。また、本件商標についても、日本語 とも英語とも考えられない造語であり、およそ原告が独自に考え出したものとは認められないもので、原告は、被告が海外において、引用商標を付したスタビライザーやジンバル雲台で相当の販売実績を有していることを知りながら、これらの商品と同じ商品を指定商品として、我が国で先に商標登録を得ることで、金銭的利益を得ようとしていたものと推認し得る ものである。このような本件商標の登録出願に至る経緯等に照らせば、登録を認めることは、商標法の予定する公正な取引秩序に著しく反す 登録を得ることで、金銭的利益を得ようとしていたものと推認し得る ものである。このような本件商標の登録出願に至る経緯等に照らせば、登録を認めることは、商標法の予定する公正な取引秩序に著しく反するものというべきであるから、本件商標の商標登録は、公序良俗に反するものというほかない。 イ原告は、前記第3の2⑴イのとおり、出所混同のおそれのある商標や、 フリーライド等の不正の目的をもって使用する商標も商標法4条1項7号に該当するとすれば、同項10号ないし15号や、同項19号の存在意義がなくなる、あるいは、他人が使用する周知・著名でない商標が、我が国で出願・登録されていないことを奇貨として、これと同一又は類似の商標を先取り的に商標登録出願することが、同項7号に該当するとすれば、 先願主義に反する旨主張する。 しかし、公序良俗の維持は法の原則であり、社会秩序や道徳秩序に反する商標を登録して助長すべきではないところ、剽窃的な商標登録出願が公正な取引秩序を害するものとなれば、公序良俗を害すると評価されるに至る場合があり、同項7号はこのような場合も想定しているものというべき である。 本件は、原告が、先願主義に名を借りて、商標権が本来持つべき出所識別機能とは関係なく、剽窃的な商標出願を大量にした上、金銭的利益を得ることを業とするという事案であって、単なる特定の当事者間の私的な問題に止まるものではなく、公正な取引秩序そのものに関わる重大な違反があると認められるものであるから、商標法が先願主義を採り、また、冒認 者による出願が登録拒絶理由として定められていないことを考慮しても、その登録が公序良俗に反することは明らかといわざるを得ない。 なお、原告は、前記第3の1⑴ウのとおり、本件商標 冒認 者による出願が登録拒絶理由として定められていないことを考慮しても、その登録が公序良俗に反することは明らかといわざるを得ない。 なお、原告は、前記第3の1⑴ウのとおり、本件商標は、その指定商品について使用実績がある旨主張する。 しかし、これらは単発的なAmazonジャパンへの出品や、売上げを 示すものにすぎない。また、例えば、原告が使用実績として挙げる甲47の1には、1頁目に「ブランド:Muzili」、2頁目に「ブランド名Muzili」及び「メーカー zhiyu」との記載があるが、「Muzili」はオーディオ製品の専業メーカーの商標であり(乙5,6)、しかも、前記⑴ウのとおり原告が平成29年9月25日から令和3年5月 11日までの間に大量に出願した商標の1つであって(甲13、商願2018-122372)、極めて不自然である。 そうすると、原告の挙げる使用実績は、早期審査の認定を受けるためか、商標登録異議や無効審判の請求に対応する名目的なものというべきで、前記認定判断を覆すに足りる事情に当たるとは到底いえない。その他に原告 がるる主張する点も本件結論を左右し得ない。 小括以上によれば,本件商標は,公序良俗に反する商標というべきであり,本件商標が商標法4条1項7号に違反して登録されたとする本件審決の判断に誤りはない。 3 結論 以上のとおり,原告主張の取消事由2は認められないから,取消事由1について判断するまでもなく、本件商標の登録には無効理由があるというべきであり、本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。 したがって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。したがって、原告の請求は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。 主文 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官菅野雅之 裁判官本吉弘行 裁判官岡山忠広 (別紙)引用商標目録

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