令和6(行ケ)10074 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年9月18日 知的財産高等裁判所 4部 判決 審決一部取消
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判決文本文201,969 文字)

令和7年9月18日判決言渡 令和6年(行ケ)第10074号審決取消請求事件 口頭弁論終結日令和7年6月3日判決 原告 ジェンマブエー/エス 同訴訟代理人弁護士 城山康文 大石裕太 篠崎慎一郎 同訴訟代理人弁理士 小野誠 同訴訟復代理人弁理士 重森一輝 小笠原洋平 今里崇之 被告 中外製薬株式会社 同訴訟代理人弁護士 大野聖二 多田宏文 亀山和輝 同訴訟代理人弁理士 森田裕 池田直俊 主文 1 特許庁が無効2022-800030号事件について 令和6年3月21日にした審決のうち、特許第6773929号の請求項1、3から6まで、11、14から18まで、20から22まで、24、28、30から44まで及び46から196までに係る部分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経過等(当事者間に争いがない。) (1) 被告は、発明の名称を「細胞傷害誘導治療剤」とする発明について、平成23年11月30日を国際出願日とする特許出願(特願2012-546900号の一部を、平成30年1月16日に新たな特許出願とした特願2018-4616号の一部を更に、令和2年2月25日に新たな 成23年11月30日を国際出願日とする特許出願(特願2012-546900号の一部を、平成30年1月16日に新たな特許出願とした特願2018-4616号の一部を更に、令和2年2月25日に新たな特許出願とした特願2020-29153号。優先権主張:平成22年11月30日、平成23年5月31日、同年10月31日。以下では、平成22年11月30 日を「本件優先日」という。)について、令和2年10月5日、特許権の設定登録を受けた(特許第6773929号。請求項の数59。以下、この特許を「本件特許」という。)。 (2) 訴外ファイザー・インクは、令和4年3月31日、被告を被請求人として、本件特許について特許無効審判請求をし、特許庁はこれを無効2022 -800030号事件として審理を行った(以下、この審判を「本件審判」という。)。 (3) 被告は、令和5年7月4日付けで、本件特許の特許請求の範囲を別紙1「本件特許の特許請求の範囲の記載」のとおりに訂正する旨の訂正請求をした(訂正前の請求項1~59のうち、請求項2、7~10、12、13、1 9、23、25~27、29、45は削除され、請求項60~196が追加 された。以下、この訂正を「本件訂正」という。)。 (4) 原告は、令和5年12月1日、本件審判に請求人側で参加申請をし、令和6年2月8日に同申請が許可された。請求人であるファイザー・インクは、同月19日付けで請求取下書を提出した。 (5) 特許庁は、令和6年3月21日、「特許第6773929号の特許請求 の範囲を、令和5年7月4日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3~6、11、14~17、21、24、31~44、46~48、54~59〕、〔18、67~80〕、〔2 を、令和5年7月4日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3~6、11、14~17、21、24、31~44、46~48、54~59〕、〔18、67~80〕、〔20、93~106〕、〔22、119~132〕、〔28、145~158〕、〔30、171~184〕、〔49~53、60~66〕、〔81~92〕、〔107~11 8〕、〔133~144〕、〔159~170〕、〔185~196〕について訂正することを認める。特許第6773929号の請求項1、3~6、11、14~18、20~22、24、28、30~44、46~196に係る発明についての本件審判の請求は、成り立たない。特許第6773929号の請求項2、7~10、12、13、19、23、25~27、29、45に 係る発明についての無効審判請求を却下する。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は令和6年4月1日原告に送達された。なお、出訴期間とし在外者に対し90日が附加された。 (6) 原告は、令和6年7月25日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 発明の内容(1) 特許請求の範囲の記載本件特許の特許請求の範囲(本件訂正による訂正後のもの。以下同じ。)の記載は、別紙1「本件特許の特許請求の範囲の記載」のとおりである(下線部は本件訂正によるもの。以下、本件特許の特許請求の範囲の記載によっ て特定される発明を、各請求項の番号に対応して「本件訂正発明1」などと いい、まとめて「本件訂正発明」という。)。このうち、請求項1について、以下に記載する(下線部は本件訂正によるものである。)。 【請求項1】下記のドメイン;(1) 癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、 う。)。このうち、請求項1について、以下に記載する(下線部は本件訂正によるものである。)。 【請求項1】下記のドメイン;(1) 癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、 (2) 配列番号:23、24、25または26に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、 (3) T細胞受容体複合体結合ドメインを含むポリペプチド会合体であって、癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介 してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異 なる配列を有し、該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している、ポリペプチド会合体。 (2) 明細書及び図面の記載 本件訂正発明に係る明細書(甲42。以下「本件明細書」という。)及び 図面の抜粋を別紙2に掲げる。これによれば、本件明細書には、次のような開示があることが認められる。 ア技術分野本件訂正発明は、T細胞を標的癌細胞に近接せしめT細胞による標的癌細胞に対する 図面の抜粋を別紙2に掲げる。これによれば、本件明細書には、次のような開示があることが認められる。 ア技術分野本件訂正発明は、T細胞を標的癌細胞に近接せしめT細胞による標的癌細胞に対する細胞傷害活性を通じて癌を治療することを可能とするポ リペプチド会合体、当該ポリペプチド会合体の製造方法、及び当該ポリペプチド会合体を有効成分として含む細胞傷害誘導治療剤に関する。また当該細胞傷害誘導治療剤を有効成分として含む、様々な癌を治療又は予防するための医薬組成物又は当該医薬組成物を用いる治療方法に関する(【0001】)。 イ背景技術これまでに優れた抗腫瘍効果を示す複数の治療用抗体が、癌治療を目的とする医薬品として開発されている。これらの治療用抗体は、癌細胞の増殖に必要なシグナルの阻害、細胞死シグナルの誘発、あるいはADCC(AntibodyDependentCell-mediatedCytotoxicity;抗体依存性細 胞傷害)、CDC(ComplementDependentCytotoxicity;補体依存性細胞傷害)によって、癌細胞に対する抗腫瘍効果を発揮することが知られている。抗体のFc領域がNK細胞やマクロファージなどのエフェクター細胞上に存在するFcレセプターに結合することにより、抗体が結合した標的の癌細胞に対してこれらのエフェクター細胞が発揮する細胞 傷害がADCCである。抗体が結合した細胞の細胞膜上に当該複合体中に存在する補体成分が孔を形成することにより、水やイオンの細胞内への流入が促進され細胞が破壊されて起こる細胞傷害がCDCである。既存の治療用抗体には優れた作用が認められるものの、こうした抗体の投与によって得られる治療成績はまだ満足できるものではない。そこで、 さ 促進され細胞が破壊されて起こる細胞傷害がCDCである。既存の治療用抗体には優れた作用が認められるものの、こうした抗体の投与によって得られる治療成績はまだ満足できるものではない。そこで、 さらに強力な殺細胞活性を発揮する癌に対する治療抗体の開発が望まれ ている(【0002】)。 上記のNK細胞やマクロファージをエフェクター細胞として動員するADCCをその抗腫瘍効果のメカニズムとする抗体とは別に、T細胞をエフェクター細胞として動員する細胞傷害をその抗腫瘍効果のメカニズムとする抗体であるT細胞リクルート抗体(Tcellrecruiting 抗体、以 下「TR抗体」という。)も1980年代から知られている。TR抗体は、T細胞上のT細胞レセプター(TCR)複合体の構成サブユニットのいずれかに対する抗体、特にCD3 epsilon 鎖に結合する抗体と、標的である癌細胞上の抗原に結合する抗体を含むbi-specific(二重特異性)抗体である。TR抗体がCD3 epsilon 鎖と癌抗原に同時に結合することにより、 T細胞が癌細胞に接近する。その結果、T細胞の持つ細胞傷害作用により癌細胞に対する抗腫瘍効果が発揮されると考えられている(【0003】)。 TR抗体の一つとしてtrifunctional 抗体と称される抗体も知られている。これは、癌抗原に結合するFabとCD3 epsilon 鎖に結合するFab がそれぞれ片腕に含まれるwholeIgG型のbi-specific 抗体である。EpCAMに対するtrifunctional 抗体であるcatumaxomab をEpCAM発現陽性の癌細胞を持つ悪性腹水患者の腹腔内に対して投与することにより悪性腹水症に対する治療の効果が示されている(【0004】)。 さら tional 抗体であるcatumaxomab をEpCAM発現陽性の癌細胞を持つ悪性腹水患者の腹腔内に対して投与することにより悪性腹水症に対する治療の効果が示されている(【0004】)。 さらに最近になり、BiTE(bispecificT-cellengager)と称され るTR抗体が強い抗腫瘍作用を示すことが知られるようになった。BiTEは癌抗原に対する抗体のscFvとCD3 epsilon 鎖に対する抗体のscFvが短いポリペプチドリンカーを介して連結された分子型を有するTR抗体である。BiTEはそれまでに知られていた様々なTR抗体に比べて優れた抗腫瘍作用を持つことが報告されている。すなわちBiT Eは、他のTR抗体に比較し、著しく低い濃度、および低いエフェク ター細胞:癌細胞比率(ETレシオ)の下で抗腫瘍効果を発揮する。またこの効果の発現に、予めエフェクター細胞をIL-2やCD28アゴニスト抗体などにより活性化させる必要がないことも示されている。さらに最近行なわれた第一相臨床試験、第二相臨床試験において極めて優れた抗腫瘍効果を示したことが報告されている(【0005】)。 catumaxomab が臨床で薬効を示し治療薬として承認されていること、及びblinatumomab を始めとする複数のBiTEが強い抗腫瘍効果を発揮することから、T細胞をエフェクター細胞として動員するTR抗体には、通常のADCCをその作用機序とする抗体に比べて極めて高い抗腫瘍薬としてのポテンシャルがあることが示唆された(【0006】)。 しかしながら、trifunctional 抗体が癌抗原非依存的にT細胞とNK細胞やマクロファージなどの細胞と同時に結合する結果、これらの細胞に発現する受容体が架橋されることにより、 )。 しかしながら、trifunctional 抗体が癌抗原非依存的にT細胞とNK細胞やマクロファージなどの細胞と同時に結合する結果、これらの細胞に発現する受容体が架橋されることにより、癌抗原非依存的な各種サイトカインの発現を誘導することが知られている。こうしたサイトカインの発現の誘導は、trifunctional 抗体の全身投与によるサイトカインストー ム様の副作用の発生につながるものと考えられる。実際、非小細胞肺癌患者に対するcatumaxomab の全身投与による第一相臨床試験においては、5μg/body という極めて低い用量が最大許容投与量であり、それ以上の用量の投与により様々な重篤な副作用が起こることが報告されている。 こうした低い用量のcatumaxomab の投与によっては、その有効血中濃度に は到底達し得ない。すなわち、こうした低い用量のcatumaxomab の投与によっては期待される抗腫瘍作用が得られない(【0007】)。 一方、BiTEはcatumaxomab とは異なりFcγ受容体に対する結合部位を持たないため、癌抗原非依存的にT細胞とNK細胞やマクロファージなどに発現する受容体が架橋されることはない。そのため、 catumaxomab が投与された場合に観察された癌抗原非依存的なサイトカイ ンの誘導は起こらないことが示されている。しかしながら、BiTEはFc領域を欠く低分子量型の改変抗体分子であるために、治療用抗体として通常用いられるIgG型の抗体に比較して、患者に投与されたBiTEの血中半減期は著しく短いという問題点が存在する。実際、生体に投与されたBiTEの血中半減期は数時間程度であることが示されてお り、blinatumomab の臨床試験においてはミニポンプを用 Eの血中半減期は著しく短いという問題点が存在する。実際、生体に投与されたBiTEの血中半減期は数時間程度であることが示されてお り、blinatumomab の臨床試験においてはミニポンプを用いた持続静脈内投与によりblinatumomab の投与が行なわれている。こうした投与は患者にとって著しく利便性の悪い投与法であるばかりでなく、機器の故障などによる医療事故のリスクも潜在し、望ましい治療法であるとはいえない(【0008】)。 ウ発明が解決しようとする課題本件訂正発明は上記の情況に鑑みてなされたものであり、T細胞を標的癌細胞に近接せしめT細胞による標的癌細胞に対する細胞傷害活性を通じて癌を治療することを可能とするポリペプチド会合体、当該ポリペプチド会合体の製造方法、及び当該ポリペプチド会合体を有効成分とし て含む細胞傷害誘導治療剤を提供することを目的とする。また当該細胞傷害誘導治療剤を有効成分として含む、様々な癌を治療又は予防するための医薬組成物又は当該医薬組成物を用いる治療方法を提供することを目的とする(【0010】)。 エ課題を解決するための手段 本発明者らは、BiTEが持つ強い抗腫瘍活性と、癌抗原非依存的にサイトカインストームなどを誘導しないという安全性上の優れた性質が維持され、かつ長い血中半減期を持つ新たなポリペプチド会合体を見出した。さらに、ポリペプチド会合体における抗原結合ドメインを置換することにより、当該ポリペプチド会合体が様々な細胞を標的として細胞 傷害をもたらすことを見出した。本発明者らは、かかる発見に基づいて、 本発明に係るポリペプチド会合体が癌細胞を傷害することを明らかにした。また、ポリペプチド会合体に、CH1/CL界面会合制御導入及びKnobinto 本発明者らは、かかる発見に基づいて、 本発明に係るポリペプチド会合体が癌細胞を傷害することを明らかにした。また、ポリペプチド会合体に、CH1/CL界面会合制御導入及びKnobintoHole(KiH)改変を導入することで、さらに効率よく細胞傷害をもたらすことを見出した。また、本発明者らは、本発明に係るポリペプチド会合体を有効成分とする細胞傷害誘導治療剤が、様々な癌を治 療又は予防することを見出した(【0011】)。 オ発明の効果本件訂正発明によって、BiTEが持つ強い抗腫瘍活性と、癌抗原非依存的にサイトカインストームなどを誘導しないという安全性上の優れた性質が維持され、かつ長い血中半減期を持つ新たなポリペプチド会合 体が提供された。本件訂正発明のポリペプチド会合体における抗原結合ドメインを置換することにより、当該ポリペプチド会合体を有効成分として含む細胞傷害誘導治療剤が癌細胞を含む様々な細胞を標的として細胞傷害をもたらし、様々な癌を治療又は予防することができる。患者にとっても、安全性が高いばかりでなく、身体的負担が少なく利便性も高 いという、望ましい治療ができるようになる(【0014】)。 3 本件審決の理由の要旨本件審決の理由の要旨を以下に示す。 (1) 無効理由1(甲2に基づく新規性欠如)及び無効理由2(甲2に基づく進歩性欠如)について ア甲第2号証に記載された発明本件審決が認定した甲第2号証(本件審判での甲2。以下、本件審判での証拠番号を「〔甲●〕」などと記す。)に記載された発明(以下「甲2発明」という。甲2の記載(訳文)の抜粋を別紙3に掲げる。)は、以下のとおりである。 「IgG1抗体のFc領域からのCH2部分を含み、299Kおよび2 97D(EU (以下「甲2発明」という。甲2の記載(訳文)の抜粋を別紙3に掲げる。)は、以下のとおりである。 「IgG1抗体のFc領域からのCH2部分を含み、299Kおよび2 97D(EU付番慣例)からなる群から選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸位置に、1つまたはそれ以上の安定化アミノ酸変異を含み、前記安定化アミノ酸変異を欠く親ポリペプチドと比較して、FcγRI、FcγRII、FcγRIIIからなる群から選択されるFc受容体への低下した結合を有し、 腫瘍細胞抗原に対する少なくとも1つのアーム、および細胞毒性誘引分子に対する少なくとも1つのアームを有する二重特異性結合抗体である、安定化ポリペプチド。」イ本件訂正発明1と甲2発明との対比 本件訂正発明1と甲2発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 (一致点)「(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、(2)ヒトFc領域を含むドメイン、及び、(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン、 を含むポリペプチド会合体であって、癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fab の軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結された、ポリペプチド会合体。」 (相違点1) 本件訂正発明1では、ヒトFc領域を含むドメインが「配列番号:23、24、25、または26に記載のヒ Fv断片がCL領域と連結された、ポリペプチド会合体。」 (相違点1) 本件訂正発明1では、ヒトFc領域を含むドメインが「配列番号:23、24、25、または26に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が 低下している」ものであり、「該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している」のに対し、甲2発明では、「IgG1抗体のFc領域からのCH2部分を含み、299Kおよび297D(EU付番慣例)からなる群から選択される1つ またはそれ以上のアミノ酸位置に、1つまたはそれ以上の安定化アミノ酸変異を含み、前記安定化アミノ酸変異を欠く親ポリペプチドと比較して、FcγRI、FcγRII、FcγRIIIからなる群から選択されるFc受容体への低下した結合を有」する点。 (相違点2) 本件訂正発明1では、「該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有する」のに対し、甲2発明では、上記のような特定がされていない点。 ウ相違点1についての判断甲第2号証には、低下したFcγR結合親和性を有するFcポリペプ チド(例えば、低下したFcγRI、FcγRIIa、FcγRIIIa結合親和性)が有する23か所のアミノ酸の置換位置の候補の1つとして234位が例示されている(【0230】)が、段落【0230】以外において、Fcポリペプチドの234位のアミノ酸を置換する旨の記載は一切存在せず、実施例においても234位のアミノ酸に置換 1つとして234位が例示されている(【0230】)が、段落【0230】以外において、Fcポリペプチドの234位のアミノ酸を置換する旨の記載は一切存在せず、実施例においても234位のアミノ酸に置換を有す るポリペプチドは製造されていない。 さらに、甲第2号証には235位のアミノ酸を置換する旨の記載や示唆は一切存在しない。 そうすると、本件訂正発明1は、少なくとも相違点1において甲2発明と異なるから、甲第2号証に記載されたものではない。 また、甲第7号証(〔甲7〕。特に、Table1)には、Fcγ受容 体への結合が低下するものだけでなく、Fcγ受容体への結合が増加するものや、一部のFcγ受容体にのみ結合するもの、FcRn結合のみに作用し、Fcγ受容体には作用しないものなど、様々な結合特性を有するアミノ酸変異が多岐にわたって記載されているものであり、234位および235位以外にも多数のアミノ酸位置が掲載されている。また、 甲第28号証(〔乙17〕、特に、Table2)をみても、ADCC、ADCP、サイトカインストーム、CDCを減少させることができるアミノ酸変異として234位および235位の他に多数のアミノ酸変異が記載されている。 しかも、これらのアミノ酸位置には甲第2号証の段落【0230】に は記載されていないもの(例えば、甲7に記載された233位、238位、甲28(〔乙17〕)に記載された237位、318位等)、また、逆に、段落【0230】で掲載されたアミノ酸位置には甲第7号証に掲載されていないもの(例えば、239位、252位等)、甲第28号証(〔乙17〕)に掲載されていないもの(例えば、241位、251位等) が存在する。 そうすると、甲第7号証のL234V、L235Aという記載や、甲 えば、239位、252位等)、甲第28号証(〔乙17〕)に掲載されていないもの(例えば、241位、251位等) が存在する。 そうすると、甲第7号証のL234V、L235Aという記載や、甲第28号証(〔乙17〕)のL234A、L235Aの記載が、甲2発明のヒトFc領域において、特に234位および235位のアミノ酸に着目し、両位置のアミノ酸を置換すること、すなわち、両位置を変異させ ることを当業者に動機付けるものであるとは認められない。 さらに、甲第1号証(〔甲1〕)、甲第3号証(〔甲3〕)から甲第6号証(〔甲6〕)まで、甲第8号証(〔甲8〕)から甲第10号証(〔甲10〕)まで、甲第28号証(〔乙17〕)の記載及び本件優先日の技術常識を参酌しても、甲2発明のヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち234位および235位を変異させることを当業者に動機付けるとは認められな い。 そうすると、甲2発明において、甲第2号証、甲第7号証、甲第1号証、甲第3号証から甲第6号証まで、甲第8号証から甲第10号証まで、甲第28号証の記載に接した当業者が、上記の相違点1として挙げた本件訂正発明1の発明特定事項を採用することを容易に想到し得るとはい えない。 エ相違点についての判断のまとめ以上からすると、本件訂正発明1は、相違点2について検討するまでもなく、甲第2号証に記載された発明とはいえず、本件訂正発明1は、甲第2号証に記載された発明と甲第7号証、甲第1号証、甲第3号証か ら甲第6号証まで、甲第8号証から甲第10号証まで及び甲第28号証に記載された事項及び本件優先日の技術常識に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。 オ本件訂正発明3から6まで、11、14から18まで、20から22ま 0号証まで及び甲第28号証に記載された事項及び本件優先日の技術常識に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。 オ本件訂正発明3から6まで、11、14から18まで、20から22まで、24、28、30から44まで、46から196までについて 本件訂正発明11、14から17まで、21、24、31から44まで、46から48まで、54から59までは、いずれも本件訂正発明1を直接的又は間接的に引用するものであるから、本件訂正発明1と同様の理由により、甲第2号証に記載された発明とはいえず、甲第2号証に記載された発明と甲第7号証、甲第1号証、甲第3号証から甲第6号証 まで、甲第8号証から甲第10号証まで及び甲第28号証に記載された 事項及び本件優先日の技術常識に基づき当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 一方、独立請求項である本件訂正発明3から6まで、18、20、22、28、30、49、81、107、133、159、185は、いずれも、上記の相違点1として挙げた本件訂正発明1の発明特定事項を 含むものであるから、本件訂正発明3から6まで、18、20、22、28、30、49、81、107、133、159、185及びこれらの発明を直接的又は間接的に引用する本件訂正発明11、14から17まで、21、24、31から44まで、46から48まで、50から196までも、本件訂正発明1に対するものと同様の理由により、甲第2 号証に記載された発明とはいえず、甲第2号証に記載された発明と甲第7号証、甲第1号証、甲第3号証から第6号証まで、甲第8号証から第10号証まで、甲第28号証に記載された事項及び本件優先日の技術常識に基づき当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2) 無 第1号証、甲第3号証から第6号証まで、甲第8号証から第10号証まで、甲第28号証に記載された事項及び本件優先日の技術常識に基づき当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2) 無効理由3(甲11に基づく進歩性欠如)について ア甲第11号証に記載された発明本件審決が認定した甲第11号証(〔甲11〕)に記載された発明(以下「甲11発明」という。甲11の記載(訳文)の抜粋を別紙4に掲げる。)は、以下のとおりである。 「抗FcRH5アームと、CD3といったT細胞受容体分子と結合する アームとが組合された、ヒト化抗体である、全長抗体の二重特異性抗体。」イ本件訂正発明1と甲11発明との対比本件訂正発明1と甲11発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 (一致点) 「(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、 (2)配列番号:23、24、25、または26に記載のヒトFc領域を含むドメイン、及び、(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン、を含むポリペプチド会合体であって、癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々 一価のFabであり、癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構 成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結された、ポリペプチド会合体」(相違点3)本件訂正発明1では、ヒトFc領域を含むドメインが「配列番号:2 3、24、25、または26に記載のヒ 該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結された、ポリペプチド会合体」(相違点3)本件訂正発明1では、ヒトFc領域を含むドメインが「配列番号:2 3、24、25、または26に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している」ものであり、「該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、 EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している」のに対し、甲11発明では、上記のような特定がされていない点。 (相違点4)本件訂正発明1では、「ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプ チドの配列が互いに異なる配列を有する」のに対し、甲11発明では、 上記のような特定がされていない点。 ウ相違点3についての判断甲第11号証には、副作用又は治療的合併症を最小限にするために、エフェクター機能を排除するか又は低減することが望ましい場合、ある種の他のFc領域が用いられ得ることが記載され(【0744】)、甲第1 1号証の段落【0636】には、抗FcRH5抗体上に存在する炭水化物部分の除去が、グリコシル化の標的として役立つアミノ酸残基をコードするコドンの突然変異置換によっても成し遂げられ得ることが、化学的に又は酵素的に脱グリコシル化する方法とともに示唆されている。 しかし、甲第11号証には、特にグリコシル化及びエフェクター機能 が必要とされない場合、全長抗体が細菌中で産生され得、大腸菌中での産生は、より速く、且つより費用効率が高いこと(【0651】)が記載され、甲第11号証の実施例11には、FcR フェクター機能 が必要とされない場合、全長抗体が細菌中で産生され得、大腸菌中での産生は、より速く、且つより費用効率が高いこと(【0651】)が記載され、甲第11号証の実施例11には、FcRH5二重特異性抗体の産生について、大腸菌を用いて抗体を発現させることが採用されているので、甲第11号証では、エフェクター機能を排除又は低減させる手段と して、大腸菌といった細菌を用いて脱グリコシル化する方法が好ましい方法として推奨されており、上記の「アミノ酸残基をコードするコドンの突然変異置換」による方法、すなわち、Fc領域を構成するアミノ酸を変異する方法は推奨されているわけではない。まして、甲第11号証には、Fc領域のうち、特に234位及び235位のアミノ酸に着目し、 両位置のアミノ酸を置換すること、すなわち、両位置を変異させることを示唆する記載は存しないから、相違点3は実質的な相違点である。 また、甲第1号証から甲第7号証までには、抗体のFc領域にアミノ酸変異を導入することで、エフェクター機能を減少させることが記載されているが、Fc領域の特に234位及び235位のアミノ酸に着目し、 両位置を変異させることを当業者に動機付ける記載や示唆は見当たらな いし、甲第8号証から甲第10号証までには、抗体のFc領域にアミノ酸変異を導入することで、エフェクター機能を減少させることに関する記載はない。 そうすると、甲第1号証から甲第11号証までの記載及び本件優先日の技術常識を参酌しても、甲第11号証において示唆に止まる、グリコ シル化の標的として役立つアミノ酸残基をコードするコドンの突然変異置換による方法を、甲11発明で敢えて採用し、さらに、この方法の採用を前提に、甲11発明のFc領域を構成するアミノ酸の234位及び シル化の標的として役立つアミノ酸残基をコードするコドンの突然変異置換による方法を、甲11発明で敢えて採用し、さらに、この方法の採用を前提に、甲11発明のFc領域を構成するアミノ酸の234位及び235位のアスパラギン酸をアラニンに変異させることを当業者が動機付けられるとは認められない。 したがって、甲11発明において、甲第1号証から甲第11号証までの記載に接した当業者が、上記の相違点3として挙げた本件訂正発明1の発明特定事項を採用することを容易に想到し得るとはいえない。 エ相違点についての判断のまとめ以上により、本件訂正発明1は、相違点4について検討するまでもな く、甲11発明と甲第1号証から甲第11号証までに記載された事項及び本件優先日の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 オ本件訂正発明3から6まで、11、14から18まで、20から22まで、24、28、30から44まで、46から196までについて 本件訂正発明11、14から17まで、21、24、31から44まで、46から48まで、54から59までは、いずれも本件訂正発明1を直接的又は間接的に引用するものであるから、本件訂正発明1と同様の理由により、甲11発明と甲第1号証から甲第11号証までに記載された事項及び本件優先日の技術常識に基づき当業者が容易に発明をする ことができたものとはいえない。 一方、独立請求項である本件訂正発明3から6まで、18、20、22、28、30、49、81、107、133、159、185は、いずれも、上記の相違点1(当審注:相違点3の誤記と解される。)として挙げた本件訂正発明1の発明特定事項を含むものであるから、本件訂正発明3から6まで、18、20、22、28、3 159、185は、いずれも、上記の相違点1(当審注:相違点3の誤記と解される。)として挙げた本件訂正発明1の発明特定事項を含むものであるから、本件訂正発明3から6まで、18、20、22、28、30、49、81、10 7、133、159、185及びこれらの発明を直接的又は間接的に引用する本件訂正発明11、14から17まで、21、24、31から44まで、46から48まで、50から196までも、本件訂正発明1に対するものと同様の理由により、甲11発明と甲第1号証から甲第11号証までに記載された事項及び本件優先日の技術常識に基づき当業者が 容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3) 無効理由4(サポート要件違反)について本件訂正発明は、TR抗体であるtrifunctional 抗体やBiTEが備える技術課題に鑑み、提案されたものであり、「BiTEが持つ強い抗腫瘍活性と、癌抗原非依存的にサイトカインストームなどを誘導しないという安全性 上の優れた性質を維持し、かつ長い血中半減期を持つ、T細胞による標的癌細胞に対する細胞傷害活性を通じて癌を治療することを可能とするポリペプチド会合体を提供すること」を課題としたものであると認められる。 そして、本件訂正発明のポリペプチド会合体は、実施例の記載より、BiTEが持つ強い抗腫瘍活性を備えたものであることを当業者は理解できる (無効理由4-1、会合体の抗腫瘍活性)。 また、本件訂正発明のポリペプチド会合体は、「Fc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している」ことにより、Fcγ受容体への結合性が低下しているドメインを備えており、癌抗原非依存的にサイトカインストームなどを誘導しな いという安全性上の優 定される234位および235位が変異している」ことにより、Fcγ受容体への結合性が低下しているドメインを備えており、癌抗原非依存的にサイトカインストームなどを誘導しな いという安全性上の優れた性質を維持していることを当業者は理解できる (無効理由4-3、Fc領域のアミノ酸変異)。 さらに、本件訂正発明のポリペプチド会合体は、Fc領域を有するものであり、実施例3でも確認されたとおり、長い血中半減期を持つものである。 そうすると、本件訂正発明は、本件明細書の記載及び本件特許の出願時の技術常識を踏まえると、上記課題を解決できることを当業者が認識できる ものであるから、特許請求の範囲の記載が、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしている。 (4) 無効理由5(実施可能要件違反)について上記で検討したとおり、本件訂正発明のポリペプチド会合体を製造し、それを使用することに、過度の試行錯誤、実験を要するとは認められないの で、本件訂正発明は、発明の詳細な説明の記載が、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしているといえる。 4 原告が主張する本件審決の取消事由(1) 取消事由1(甲2に基づく新規性・進歩性欠如に係る認定・判断の誤り)(2) 取消事由2(甲11に基づく進歩性欠如に係る認定・判断の誤り) (3) 取消事由3(サポート要件違反に係る判断の誤り)(4) 取消事由4(実施可能要件違反に係る判断の誤り)第3 当事者の主張当事者双方の主張は、別紙5「当事者の主張」に記載のとおりである。以下に、その要旨を掲げる。 1 取消事由1(甲2に基づく新規性・進歩性欠如に係る認定・判断の誤り)について【原告の主張】(1) 甲2発明の認定の誤りア相違点1がないこと その要旨を掲げる。 1 取消事由1(甲2に基づく新規性・進歩性欠如に係る認定・判断の誤り)について【原告の主張】(1) 甲2発明の認定の誤りア相違点1がないこと 本件審決は、甲第2号証の記載に関し、①前記アミノ酸変異を欠く親 ポリペプチド(IgG1抗体)と比較してFcγ受容体に対する結合活性が低下していることの記載を認めた一方で、②IgG1のFc領域を構成するアミノ酸において234位及び235位の変異が生じていること及び③変異の導入されるFc領域がIgG2~4抗体由来であり得ることの記載は認めなかった(相違点1)。 しかし、上記②は、甲第2号証に組み込まれた文献の内容に鑑みれば、甲第2号証に記載されているか、又は記載されているに等しい事項である。さらにいえば、④234位及び235位の変異によってFcγ受容体に対する結合活性が低下していることも、甲第2号証に記載されているか、記載されているに等しい事項である。 すなわち、甲第2号証の段落【0222】及び【0223】では、「エフェクタ機能」(すなわちFc領域におけるFcγ受容体に対する結合活性)の変化をもたらすために、本件優先日当時に周知技術であった国際公表第WO06/019447A1(甲38の1)及び同WO99/58572A1(甲39の1)で開示されているアミノ酸位置の1つ以上 の変化(置換)を含むことができる、ということが示されている。そして、上記で言及されている国際公表第WO06/019447A1号(甲38の1)及び同第WO99/58572A1(甲39の1)と、前者の国際出願の日本における国内移行手続である出願の公表特許公報(甲38の2)及び後者の国際出願の日本における国内移行手続である 出願の特許公報(甲3 99/58572A1(甲39の1)と、前者の国際出願の日本における国内移行手続である出願の公表特許公報(甲38の2)及び後者の国際出願の日本における国内移行手続である 出願の特許公報(甲39の2)には、Fc領域のアミノ酸の234位及び235位の変異が生じること、及びそれがFcγ受容体に対する結合活性を低下させることが、明確に示されていた。 また、甲2発明は、Fcγ受容体に対する結合活性が低下しているFc領域に変異を生じているポリペプチドであるところ、本件優先日当時 の技術常識を参酌すれば、当該変異に234位及び235位の変異を含 むことが導き出されるから、上記②(234位及び235位のアミノ酸に変異が生じていること)は、甲第2号証に記載されているか、又は記載されているに等しい事項である。 さらに、甲第2号証の段落【0205】には、「好ましい実施形態においては、親Fcポリペプチドは、抗体として、そして好ましくは、例え ば、サブタイプIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4のIgG免疫グロブリン、そして好ましくはサブタイプIgG1もしくはIgG4のIgG免疫グロブリンである」こと、段落【0211】には「本発明の親Fcポリペプチドを産生するために有用なFc部分は、多数の異なる源から得ることができる。…さらに、Fcは、…IgG1、 IgG2、IgG3、およびIgG4を含む、任意の免疫グロブリンイソタイプに由来することができる。好ましい実施形態においては、ヒトイソタイプIgG1またはIgG4が使用される」ことが記載されていたから、前記③の構成(変異の導入されるFc領域がIgG2~4抗体由来であり得ること)をも具備していることは明らかである。 よって、相違点1は認められない。 イ相違点2が が記載されていたから、前記③の構成(変異の導入されるFc領域がIgG2~4抗体由来であり得ること)をも具備していることは明らかである。 よって、相違点1は認められない。 イ相違点2がないこと本件審決は、本件訂正発明1と甲2発明の対比において、相違点2を認定し、甲2発明が、変異しているFc領域を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有するものであることを認定しなかっ た。 しかし、甲第2号証の段落【0128】には「2つの非同一のFc部分のヘテロ二量体であり得る」こと、段落【0207】には「本発明のポリペプチドは、異なる配列組成である少なくとも2つのFc部分を含むFc領域(すなわち、本明細書において「異種Fc領域」と称される。) を含むことができる」ことが記載されている。また、段落【0485】 では、いわゆる「KnobintoHole」の説明があり、これは「異種Fc領域」の具体的実施形態の1つが、その導入根拠と共に、説明されていることに他ならない。 よって、相違点2は認められない。 ウ被告主張の更なる相違点が存在しないこと 被告は、甲2発明には「癌抗原及びT細胞受容体複合体に結合する」「典型的なWholeIgG型の二重特異性抗体」が記載されていないと主張し、この点を更なる相違点(以下「相違点A」という。)として認定すべきであると主張する。 しかし、甲第2号証には「典型的なWholeIgG型の」「抗体」 が記載されており、完全長抗体などは抗体の最たる例であるから、甲第2号証には、完全長抗体であるIgG型の抗体が記載されていることは明らかである。そして、甲第2号証の段落【0391】及び【0392】には、「腫瘍細胞抗原に対する少なくとも1つのアーム、および細胞毒 2号証には、完全長抗体であるIgG型の抗体が記載されていることは明らかである。そして、甲第2号証の段落【0391】及び【0392】には、「腫瘍細胞抗原に対する少なくとも1つのアーム、および細胞毒性誘引分子に対する少なくとも1つのアームを有する二重特異性の変化し た結合タンパク質」として、CD3(T細胞受容体複合体の一部を構成する補助分子)と癌抗原に結合する二重特異性抗体が具体例により多数列挙されている。 よって、上記相違点Aは認められない。 (2) 本件訂正発明1と甲2発明の相違点の認定(新規性があると判断したこ と)の誤り上記のとおり、本件審決が認定した相違点1及び2は認められないから、本件訂正発明1について、新規性は認められない。 (3) 進歩性の判断の誤りア仮に、本件審決の認定する相違点1が存在したとしても、以下に述べる とおり、甲第7号証等の副引例及び周知技術又は技術常識から、当業者 において相違点1に係る本件訂正発明1の構成を容易に想到することができた。 イ被告は、本件優先日当時のTR抗体を研究する当業者にとって、Fcγ受容体への結合を介したエフェクター機能がTR抗体における技術的特徴として不可欠なものとして認識されていたことは明らかであるなどと 主張しているが、本件優先日当時において、被告が主張するような当業者における共通認識はなかった。 (4) 小括以上のとおり、本件審決は、甲2発明の認定、甲第2号証に基づく本件訂正発明1の新規性・進歩性に関する認定及び判断のいずれも誤っており、 その結果、本件訂正発明3から6まで、11、14から18まで、20から22まで、24、28、30から44まで及び46から196までについての新規性・進歩性の欠如を認めなかった本件審決 おり、 その結果、本件訂正発明3から6まで、11、14から18まで、20から22まで、24、28、30から44まで及び46から196までについての新規性・進歩性の欠如を認めなかった本件審決の結論も誤りである。 【被告の主張】(1) 甲2発明の認定について ア原告の主張について原告の主張は、甲第2号証とは別の文献に基づいて甲2発明を認定しようとするものであって、引用発明の認定として許されない、誤ったものである。そればかりか、このような主張は、本件訂正発明の構成要件に合致するよう、甲第2号証の広範な記載の中に散らばる膨大な数の選 択肢、更には引用文献外の内容から、都合の良い要素を拾い出して組み合わせることによって甲2発明を認定しようとするものであって、引用発明の認定として許されない、誤ったものである。 甲第2号証には、原告が主張するような構成を有する発明が記載されているとはいえず、相違点1及び2は認められる。 イ本件審決が看過した相違点Aも存在すること 本件審決は、甲2発明として、「腫瘍細胞抗原に対する少なくとも1つのアーム、および細胞毒性誘引分子に対する少なくとも1つのアームを有する二重特異性結合抗体である、安定化ポリペプチド」を認定した上で、この部分を、本件訂正発明の「癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、癌抗原結合ドメ インを構成するFabの重鎖Fv断片がCHl領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCHl領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCHl領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され た、ポリペプチド会合体」との一致点としたが、何らの構造上の限定もない「ポリペプチド」は上位概念であり、これをもって下位概念である特定の構成の「ポリペプチド会合体」に該当するとしていることのみからして、誤りである。そして、甲第2号証の段落【0390】から【0392】までには、極めて多数の「多特異性結合ポリペプチド」が抽象 的に例示列挙されているのみであり、ここには、二重特異性抗体が結合する抗原の点も含め、具体的な技術思想としての発明の開示はないから、ここから「癌抗原及びT細胞受容体複合体に結合するWholeIgG型の二重特異性抗体」を認定することはできない。 よって、本件訂正発明1と甲2発明には、以下の更なる相違点Aが認 められる(同相違点を踏まえて正しく認定されたものを、以下「甲第2号証に記載された発明」という。)。 <相違点A>本件訂正発明1では、「(1)癌抗原結合ドメイン及び(3)T細胞受容体複合体結合ドメインを含むポリペプチド会合体であって、T細胞受 容体複合体結合ドメインがFabであり、癌抗原結合ドメインを構成す る一価のFabの重鎖Fv断片がCHl領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCHl領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結された、ポ リペプチド会合体」であるのに対し、甲2発明は 成するFabの重鎖Fv断片がCHl領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結された、ポ リペプチド会合体」であるのに対し、甲2発明はそのような構成を有しない点。 ウ二重特異性のT細胞リクルート抗体に関する技術常識甲第2号証に記載された発明の認定に関し、本件特許出願時には、癌を治療することを目的とする二重特異性のT細胞リクルート抗体(TR抗 体)においては、Fcγ受容体への結合を介したエフェクター機能が重要であることが技術常識であった。これを前提に、進歩性についても検討すべきである。 (2) 甲第2号証に記載された発明に基づく新規性欠如の主張について本件訂正発明1と甲第2号証に記載された発明との間には、相違点1、 相違点2及び相違点Aが存在するから、本件訂正発明1は、甲第2号証に記載された発明とはいえない。よって、原告の甲第2号証に記載された発明に基づく新規性欠如の主張も失当である。 (3) 甲第2号証に記載された発明に基づく進歩性欠如の主張についてア本件審決が正しく認定したように、甲第2号証に甲第7号証又は甲第2 8号証(〔乙17〕)を組み合わせる動機付けは全く存在していない。甲第7号証をみれば明らかなとおり、甲第7号証(特にTable1)にはFcγ受容体への結合が低下するものだけではなく、Fcγ受容体への結合が増加するものや、⼀部のFcγ受容体にのみ作用するもの、FcRn結合のみに作用し、Fcγ受容体には作用しないものなど、様々 な結合特性を有するアミノ酸変異が多岐にわたって記載されているもの であり、234位及び235位以外にも多数のアミノ酸位置が掲載されている。また、甲第28号証(〔乙17〕、特に、Table2 結合特性を有するアミノ酸変異が多岐にわたって記載されているもの であり、234位及び235位以外にも多数のアミノ酸位置が掲載されている。また、甲第28号証(〔乙17〕、特に、Table2)をみても、ADCC、ADCP、サイトカインストーム、CDCを減少させることができるアミノ酸変異として234位および235位の他に多数のアミノ酸変異が記載されているところ、当業者は、これらの中から、2 34位及び235位の変異をピックアップして、これを、安定性の改善に焦点を当てて成された発明である甲第2号証に記載された発明に組み合わせることはできない。さらに、本件審決が指摘するとおり、甲第2号証と甲第7号証又は甲第28号証(〔乙17〕)の記載は、互いに食い違っており、整合していないから、この点からも、当業者がこれらの文 献を組み合わせる動機付けはない。 また、前記のとおり、甲第2号証に記載された発明は、「改善された安定性」を提供することを課題とし、安定性に着目したものであるが、甲第2号証の段落【0223】で言及されている国際公表第WO06/019447A1及び同第WO99/58572A1(甲38の1及び甲 39の1)には、安定性の観点から評価したデータは一切開示されておらず、甲第38号証の1及び甲第39号証の1に記載される発明を安定性の改善を目的とする甲第2号証に記載された発明に適用するための動機付けは存在しない。 したがって、本件訂正発明1は、甲第2号証に記載された発明と副引 例及び本件優先日の技術水準に基づいて当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。 イ以上のとおり、本件訂正発明1は、甲第2号証に記載された発明と、甲第2号証、甲第7号証、甲第28号証(〔乙17〕)、甲第38号証の1、甲第39号証の 容易に想到できたものであるとはいえない。 イ以上のとおり、本件訂正発明1は、甲第2号証に記載された発明と、甲第2号証、甲第7号証、甲第28号証(〔乙17〕)、甲第38号証の1、甲第39号証の1(原告が主張する周知技術)及び本件優先日の技術水 準から、当業者が容易に発明をすることができたものであったというこ とはできないから、取消事由1のうちの甲第2号証に基づく進歩性欠如に関する原告の主張は理由がない。 2 取消事由2(甲11に基づく進歩性欠如に係る認定・判断の誤り)について【原告の主張】 (1) 本件審決は、甲11発明と本件訂正発明1の間において、Fc領域の234位及び235位のアミノ酸に変異に係る相違点3を認定したが、甲第11号証(訳文)の段落【0744】に「・・・代替的には、副作用または治療的合併症を最小限にするために、エフェクター機能を排除するかまたは低減することが望ましい場合、ある種の他のFc領域が用いられ得る。」と示唆 されていることからすれば、甲第11号証に甲第2号証、甲第7号証及び甲第28号証(〔乙17〕)の記載並びに周知技術又は技術常識を適用し、エフェクター機能を排除するためにFcγR結合親和性を低下させるものとしてFc領域の234位及び235位のアミノ酸に変異を導入することは、甲第11号証に記載されているに等しいか、容易に想到することができた事項 といえる。 すなわち、上記記載にはエフェクター機能に関連しない機序で細胞傷害性を誘導する場合も当然に含まれ、TR抗体一般がこれに該当する。そして、この場合に技術常識として知られていた234位及び235位のアミノ酸変異を「エフェクター機能を排除するかまたは低減する」ために導入すればよ い。さらに、甲第11号証の段落【00 する。そして、この場合に技術常識として知られていた234位及び235位のアミノ酸変異を「エフェクター機能を排除するかまたは低減する」ために導入すればよ い。さらに、甲第11号証の段落【0084】と段落【0744】を合わせれば、アミノ酸置換によるエフェクター機能の低下を読み取れ、それが二重特異性抗体にも適用される。他にも甲第11号証の段落【0651】は「特に、グリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合、例えば、治療用抗体が細胞傷害性物質(例えば、毒素)と接合され、免疫接合体 それ自体が腫瘍細胞崩壊において有効性を示す場合」と記載され、TR抗体 がまさにこれに該当する。そして、実施例11で、唯一二重特異性抗体が作製されており、これはTR抗体である。してみれば、甲第11号証において二重特異性抗体とはTR抗体が基本的には想起されていたものであり、このような二重特異性TR抗体にアミノ酸置換によるエフェクター機能の低下を導入することも明確に記載されていたということができる。 したがって、甲第11号証に記載されるエフェクター機能の低下を実現するために、甲第11号証のガイダンスに従って甲第63号証記載の234位及び235位のアミノ酸変異を導入することは、甲第11号証に記載されているに等しいか、容易に想到することができた事項といえる。 (2) また、本件審決は、相違点4として、「本件訂正発明1では、『該変異し ているFc領域を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有する』のに対し、甲11発明では、上記のような特定がされていない点。」と認定したが、甲第11号証の段落【0423】には「ヘテロ接合体抗体も、本発明の範囲内である」ことが記載されているから、本件審決は相違点4を誤って認定したも は、上記のような特定がされていない点。」と認定したが、甲第11号証の段落【0423】には「ヘテロ接合体抗体も、本発明の範囲内である」ことが記載されているから、本件審決は相違点4を誤って認定したものである。さらに、甲第11号証では、「ヘテロ多量体形 成を行なうために用いる戦術」として、KnobintoHole は開示されており(【0922】)、これが「ごくごく抽象的な記載」であるはずがない。 (3) したがって、本件審決は、本件訂正発明1について甲第11号証に基づく進歩性に関する認定及び判断のいずれも誤っており、その結果、本件訂正発明3から6まで、11、14から18まで、20から22まで、24、2 8、30から44まで及び46から196までについての進歩性の欠如を認めなかった本件審決の結論も誤りである。 【被告の主張】(1) 原告は、相違点3について、甲第11号証の段落【0744】に示唆があるなどとするが、そもそも、段落【0744】には、Fc領域内の234 位及び235位を変異させることの示唆など全くない。ここでは、「代替的 には…ある種の他のFc領域が用いられ得る」として、「適切なFc領域」を「ある種の他のFc領域」に替えることが抽象的に記載されているだけである。その内のFc領域内の234位及び235位を変異させることの示唆など全くない。 また、甲第11号証において、アミノ酸置換をエフェクター機能に関連 付けた記載は段落【0425】のみであり、そこでは確かに、エフェクター機能操作を行う方法として、アミノ酸置換を導入することが記載されているが、当該段落では、「抗源依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害性(CDC)を増強するため」(当裁判所注:甲第11号証の対応 ミノ酸置換を導入することが記載されているが、当該段落では、「抗源依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害性(CDC)を増強するため」(当裁判所注:甲第11号証の対応日本語文献である「特表2012-522512号公報」 では、「抗源依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)」と記載されているが、「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)」の誤りである。)にアミノ酸置換を行うのであり、エフェクター機能を低下させるためにアミノ酸置換を行うのではない。甲第11号証には、エフェクター機能を低下させるためのアミノ酸置換は全く記載されていないのであるから、甲第7号証や甲第2 8号証(〔乙17〕)等の他の文献とを組み合わせる動機付けは一切存在しない。 さらに、相違点3に関しては、本件審決でも判断されているように、甲第11号証や甲第7号証、甲第28号証(〔乙17〕)等には、甲11発明のFc領域を構成するアミノ酸の234位及び235位のアミノ酸に着目し、 両位置を変異させることを当業者が動機付けられない。 加えて、上記段落【0744】の記載からして、甲第11号証を出発点にして本件訂正発明に至るには阻害事由があることが明白である。すなわち、原告が依拠する上記の記載は、「代替的には」(Alternatively)と明示されていることから明らかなとおり、「細胞傷害性を誘導」する技術とは異なる 技術に関する記載である。本件訂正発明は、癌細胞を傷害する技術を規定し たものであるから、まさに、「細胞傷害性を誘導」するものである。このように、甲第11号証では、本件訂正発明のように「細胞傷害性を誘導」する場合には、Fc領域を積極的に活用すべきことが記載されているのであり、Fc領域の活性を下げることにはむ 導」するものである。このように、甲第11号証では、本件訂正発明のように「細胞傷害性を誘導」する場合には、Fc領域を積極的に活用すべきことが記載されているのであり、Fc領域の活性を下げることにはむしろ阻害事由があるし、少なくとも、そのような示唆など存在しない。なお、甲第11号証の段落【0651】には、 「グリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合」の例として、「例えば、治療用抗体が細胞傷害性物質(例えば、毒素)と接合され、免疫接合体それ自体が腫瘍細胞崩壊において有効性を示す場合」とあるが、これは明らかにTR抗体と異なる技術を対象としたものである。 (2) また、相違点4についても、甲第11号証の段落【0423】には「ヘ テロ接合体抗体も、本発明の範囲内である」との抽象的な記載があるのみで、このような抽象的な記載から「具体的な技術的思想」を認定することはできないことは明らかである。 (3) したがって、取消事由2が認められる余地はない。 3 取消事由3(サポート要件違反に係る判断の誤り)について 【原告の主張】(1) アミノ酸変異について仮に、甲第2号証と、甲第7号証及び甲第28号証(〔乙17〕)を組み合わせることができず、かつ前記の技術常識又は周知技術が認められないのであれば、本件訂正発明はサポート要件に違反する。 本件審決は、①本件明細書に記されている変異の好ましい態様の記載を抜き出すと共に、ERY17-2、ERY17-3がサイレント型Fcを有すること、すなわち、Fcγ受容体への結合性が減弱されていることが記載されており、ERY17-2、ERY17-3は、IgG1のFc領域にL234A/L235Aの変異が導入されたものであるとし、②さらに、本件 明細書の段落【0124】には 弱されていることが記載されており、ERY17-2、ERY17-3は、IgG1のFc領域にL234A/L235Aの変異が導入されたものであるとし、②さらに、本件 明細書の段落【0124】には234Vや235Aの変異体が公知であるこ と、段落【0129】には234A/235Aを有する変異体が記載され、実施例では234A/235Aを有する変異体についてFcγ受容体への結合性が低下したことが確認されていることと、ポリペプチド中のあるアミノ酸残基を、それと構造や電荷等が類似するそのほかのアミノ酸残基へと置換しても、もとの性質が変化しない場合が多いことは本願出願時点における技 術常識であるなどとして、当業者にとって通常行う程度の検証試験によりFcγ受容体への結合性が低下した変異体を選択すれば、本件訂正発明の課題を解決できることを当業者は認識し得たとした。 しかし、上記①は本件明細書において「サイレント型Fc」と呼称するものがERY17-2、ERY17-3に導入されたことをいうものでしか ない。同様に②のいう「実施例」というのも、本件審決はこのERY17-2、ERY17-3のことをいうものと考えられるが、これらは本件明細書において「サイレント型Fc」と呼称するものが導入された、というだけで、Fcγ受容体への結合性が減弱されていることを確認したわけではない。 また、上記②の「ポリペプチド中のあるアミノ酸残基を、それと構造や 電荷等が類似するそのほかのアミノ酸残基へと置換しても、もとの性質が変化しない場合が多いことは本願出願時点における技術常識」という本件審決の認定が正しいのであれば、FcγRに対する結合活性がL234A/L235A変異やL234V/L235A変異によって変化することは、本件審決の摘示する技術常識に 時点における技術常識」という本件審決の認定が正しいのであれば、FcγRに対する結合活性がL234A/L235A変異やL234V/L235A変異によって変化することは、本件審決の摘示する技術常識に反することであって、この不整合は、本件審決の認 定が誤りであることを端的に示している。 さらに、最も重要な点として、「234位及び235位をAと類似するアミノ酸残基に置換」する場合以外も本件訂正発明に含まれるにもかかわらず、本件審決において、「類似するアミノ酸残基」以外のアミノ酸においても効果がかわらないとの理由付けは何らされていない。 したがって、当業者は、本件訂正発明の全範囲にわたって課題を解決で きるなどとは、到底、認識をすることはできない。 (2) 抗腫瘍活性について本件審決は、本件訂正発明1、3から6まで、11、14から18まで、20から22まで、24、28、30から44まで及び46から196までが、BiTEが持つ強い抗腫瘍活性を有するとの課題を解決できると認識で きる範囲のものであり、サポート要件を満たすと認定した。しかし、本件訂正発明には、審決において本件訂正発明1の会合体、本件訂正発明3の会合体、本件訂正発明4の会合体、本件訂正発明5の会合体、本件訂正発明6の会合体と呼ばれる5種類の会合体が含まれるところ、本件明細書の記載からでは、それらの会合体がいずれもBiTEが持つ強い抗腫瘍活性を有するこ とを理解することができない。 【被告の主張】(1) アミノ酸変異について本件訂正発明は、「該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している」との 発明特定事項、すなわち234位及び235位の変異を規定している。そして、2 トFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している」との 発明特定事項、すなわち234位及び235位の変異を規定している。そして、234位及び235位の変異は、Fc領域のFcγ受容体への結合活性を低下させる変異であるから、この変異を有することで特定された本件訂正発明は、(2)「配列番号:23、24、25、または26に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当 該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン」を有することを、当業者であれば十分に理解できる。したがって、本件訂正発明がサポート要件を充足することは明らかである。 (2) 抗腫瘍活性について ア原告は、本件訂正発明の課題の一つが、BiTEが持つ強い抗腫瘍活性を有することであることを前提として、本件訂正発明の範囲に、BiTEが持つ強い抗腫瘍活性を有するという課題を満たさない発明が含まれるなどと主張するが、本件訂正発明の課題は、正しくは、本件明細書の段落【0004】から【0008】までに記載された情況に鑑みて、「T 細胞を標的癌細胞に近接せしめT細胞による標的癌細胞に対する細胞傷害活性を通じて癌を治療することを可能とするポリペプチド会合体、当該ポリペプチド会合体の製造方法、および当該ポリペプチド会合体を有効成分として含む細胞傷害誘導治療剤を提供すること」、及び「当該細胞傷害誘導治療剤を有効成分として含む、様々な癌を治療または予防する ための医薬組成物または当該医薬組成物を用いる治療方法を提供すること」である(【00 導治療剤を提供すること」、及び「当該細胞傷害誘導治療剤を有効成分として含む、様々な癌を治療または予防する ための医薬組成物または当該医薬組成物を用いる治療方法を提供すること」である(【0010】)。そして、本件訂正発明は、BiTEが生体に投与された場合の短い血漿中半減期が改善され、且つ癌抗原非依存的なサイトカイン放出症候群(CRS)等の重篤な副作用が低減された、T細胞を標的癌細胞に近接せしめ、T細胞による標的癌細胞に対する細胞 傷害活性を通じて癌を治療することを可能とするポリペプチド会合体を提供しているから、本件訂正発明の課題を解決していることは明らかである。 イ仮に、本件訂正発明の課題の一つに、「BiTEが持つ強い抗腫瘍活性を有する」ことも含まれるとした場合であっても、本件審決の認定のと おり、本件訂正発明がBiTEが持つ強い抗腫瘍活性を奏することは、本件明細書から理解できる。それゆえ、この点においても、原告の主張は、失当である。 4 取消事由4(実施可能要件違反に係る判断の誤り)について【原告の主張】 当業者は、本件訂正発明の全てについて、FcγR結合親和性が低下してい る(それがゆえにサイトカインストームを抑制できる)と同時に、BiTEが持つ強い抗腫瘍活性を有することを、本件明細書及び技術常識から理解することはできないから、本件訂正発明の構造を決定・生産・使用するには、過度の試行錯誤を要し、本件訂正発明は実施可能要件に違反する。 【被告の主張】 取消事由4の実施可能要件違反について、原告は、実質的には取消事由3のサポート要件違反の主張と同一の内容を述べるにすぎず、取消事由3と同様、理由がないことは明らかである。 第4 当裁判所の判断事案に鑑み、取消事由2について判断す 、原告は、実質的には取消事由3のサポート要件違反の主張と同一の内容を述べるにすぎず、取消事由3と同様、理由がないことは明らかである。 第4 当裁判所の判断事案に鑑み、取消事由2について判断する。 1 取消事由2(甲11に基づく進歩性欠如に係る認定・判断の誤り)について(1)ア原告は、甲第11号証に基づく進歩性の主張の前提として、相違点4(本件訂正発明1では、「該変異しているFc領域を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有する」のに対し、甲11発明では、 上記のような特定がされていない点)に関し、甲第11号証の段落【0423】には「ヘテロ接合体抗体も、本発明の範囲内である」ことが記載されており、段落【0922】でも「ヘテロ多量体形成を行なうために用いる戦術」として、KnobintoHole が開示されているから、本件審決は相違点4を誤って認定したものであり、かかる相違点は存在しないと主張す る。 イそこで検討するに、甲11発明の請求項195では、「空洞への隆起(protuberance-into-cavity)抗体である請求項194記載の抗体。」と記載され、甲第11号証の段落【0423】には「ヘテロ接合体抗体も、本発明の範囲内である」ことが記載されている。そして、段落【092 2】でも「ヘテロ多量体形成を行なうために用いる戦術」として、Knob intoHole が開示され、さらに、FcRH5二重特異性抗体の産生及び特性化に係る実施例11に関する段落【0923】及び【0924】では、ヒト化抗CD3軽鎖(L)及び重鎖(H)変異体をコードする大腸菌発現プラスミドを構築し、ヒト化抗CD3H鎖のCH3ドメイン中に隆起又は空洞を導入する突然変異を誘発し、さらに、ヒト化抗 924】では、ヒト化抗CD3軽鎖(L)及び重鎖(H)変異体をコードする大腸菌発現プラスミドを構築し、ヒト化抗CD3H鎖のCH3ドメイン中に隆起又は空洞を導入する突然変異を誘発し、さらに、ヒト化抗FcRH5軽 鎖及び重鎖をコードする大腸菌発現プラスミドを構築し、ヒト化抗FcRH5H鎖のCH3ドメイン中に対応する空洞(抗CD3ドメインが隆起突然変異を有する場合)又は対応する隆起(抗CD3ドメインが空洞突然変異を有する場合)を導入する突然変異を誘発し、上記大腸菌発現プラスミドを適切な大腸菌株中で形質転換することにより、抗CD3/ FcRH5空洞への隆起二重特異性抗体が産生されることが記載されている。 ウ以上の点、特に実施例11に関する記載からすると、甲第11号証には、「抗FcRH5アームと、CD3といったT細胞受容体分子と結合するアームとが組合された、ヒト化抗体である、全長抗体の空洞への隆起二 重特異性抗体」という発明が記載されていると認められる。 そうすると、本件審決は、甲11発明として、空洞への隆起抗体である点、すなわち、二重特異性抗体における一方の重鎖に隆起又は空洞を導入する突然変異を導入し、もう一方の重鎖に対応する空洞又は隆起を導入したものである点を認定しなかった点で誤りがあるものといえる。そ して、空洞への隆起抗体とは、上述のとおり、二重特異性抗体における一方の重鎖に隆起又は空洞を導入する突然変異を誘発し、もう一方の重鎖に対応する空洞又は隆起を導入したものであることから、甲11発明の「空洞への隆起」「抗体」は、本件訂正発明1の「Fc領域を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有する」「ポリペプチド 会合体」に相当し、審決が認定した相違点4に係る構成は、一致点に含 体」は、本件訂正発明1の「Fc領域を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有する」「ポリペプチド 会合体」に相当し、審決が認定した相違点4に係る構成は、一致点に含 まれることとなる。 そうすると、本件訂正発明1と甲11発明との対比において、本件審決が認定した相違点4は、相違点とはいえない。 エ以上に対し、被告は、相違点4が認められるとし、甲第11号証の段落【0423】にも「ヘテロ接合体抗体も、本発明の範囲内である」との ごく抽象的な記載があるのみであると主張するが、上記イで検討した同号証の請求項や段落の記載を考慮しないものであり、同主張は採用することができない。 (2) 以上を前提に、本件訂正発明について甲第11号証に基づく進歩性について判断するに、原告は、甲第11号証の段落【0744】に「抗体は、F c領域で修飾されて、所望のエフェクター機能を提供し得る。本明細書中の節で詳細に考察されているように、適切なFc領域を用いて、細胞表面に結合された裸抗体は、例えば抗体依存性細胞性細胞傷害性(ADCC)を介して、または補体依存性細胞傷害性において補体を動員することにより、または他のいくつかの機序により、細胞傷害性を誘導し得る。代替的には、副作 用または治療的合併症を最小限にするために、エフェクター機能を排除するかまたは低減することが望ましい場合、ある種の他のFc領域が用いられ得る。」と示唆されていることなどから、甲第11号証に、甲第2号証、甲第7号証及び甲第28号証(〔乙17〕)の記載並びに周知技術又は技術常識を適用し、エフェクター機能を排除するためにFcγR結合親和性を低下させ るものとして234位及び235位における変異を導入することは、容易に想到することができたと主張する 知技術又は技術常識を適用し、エフェクター機能を排除するためにFcγR結合親和性を低下させ るものとして234位及び235位における変異を導入することは、容易に想到することができたと主張する。 (3) そこで検討するに、甲11発明に係る甲第11号証に記載された二重特異性抗体(「抗FcRH5アームと、CD3といったT細胞受容体分子と結合するアームとが組合された、ヒト化抗体である、全長抗体の空洞への隆起 二重特異性抗体」。前記1(1)ウ参照)については、①甲第11号証の請求 項193から199まで、特に請求項197に「大腸菌宿主細胞中で産生される請求項196記載の抗体。」とあり、請求項198に「1つ以上のFcエフェクター機能を欠く請求項196記載の抗体。」とあること、②甲第11号証の段落【0050】に「別の態様では、本発明は、FcRH5を発現する第一細胞と、ならびに細胞表面標的抗原を発現する第二細胞と結合し得 る二重特異性抗体を提供する。一実施形態では、第二細胞はT細胞である。 一実施形態では、細胞表面標的抗原はCD3である。ある実施形態では、二重特異性抗体は、空洞への隆起(protruberance-into-cavity)抗体である。 一実施形態では、二重特異性抗体は非グリコシル化される。一実施形態では、二重特異性抗体は、大腸菌宿主細胞中で産生される。一実施形態では、二重 特異性抗体は、1つ以上のFcエフェクター機能を欠く。一実施形態では、二重特異性抗体はADCC活性を欠く。」と記載されていること、③実施例11が「大腸菌で産生される」ものであること、④甲第11号証の段落【0651】に「グリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合、例えば、治療用抗体が細胞傷害性物質(例えば、毒素)と接合され、 「大腸菌で産生される」ものであること、④甲第11号証の段落【0651】に「グリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合、例えば、治療用抗体が細胞傷害性物質(例えば、毒素)と接合され、免 疫接合体それ自体が腫瘍細胞崩壊において有効性を示す場合、全長抗体、抗体断片および抗体融合タンパク質が細菌中で産生され得る。全長抗体は、より大きな循環中半減期を有する。大腸菌中での産生は、より速く、且つより費用効率が高い。」と記載されていることが認められる。そうすると、甲11発明の二重特異性抗体は、1つ以上のFcエフェクター機能を欠き、Fc エフェクター機能が必要とされない抗体を主として含むものと認められる。 また、甲第11号証の段落【0744】に「抗体は、Fc領域で修飾されて、所望のエフェクター機能を提供し得る」、「代替的には、副作用または治療的合併症を最小限にするために、エフェクター機能を排除するかまたは低減することが望ましい場合、ある種の他のFc領域が用いられ得る」との 記載もあり、抗体のエフェクター機能を低減するために修飾されたFc領域 を用いることも記載されているといえる。 そして、抗体におけるFcエフェクター機能を低減させる手段としては、大腸菌で発現させることのほか、Fc領域にFcγ受容体との結合親和性を低下させるアミノ酸変異を導入することが、本件優先日当時の当業者にとって周知慣用の手段であって技術常識であったといえる(甲1の請求項1、1 2、【0005】、甲2の【0221】~【0223】、【0229】~【0231】、甲4、甲5、甲7のTable1、甲28の1のTable2、甲32の請求項1、【0001】、【0002】、【0017】、【0047】、【0053】、甲38の2の請求項10、【002 ~【0231】、甲4、甲5、甲7のTable1、甲28の1のTable2、甲32の請求項1、【0001】、【0002】、【0017】、【0047】、【0053】、甲38の2の請求項10、【0028】、【0255】、図41、甲39の2の【0004】、【0010】、【0013】、【0105】、図15、 図16、甲78の請求項14~22、【0001】)。さらに、Fcγ受容体との結合親和性を低下させFcエフェクター機能を低減させるアミノ酸変異として、234位及び235位における変異も、本件優先日当時の当業者に周知であり技術常識であったと認められる(甲28のTable2、甲29、同証拠のTable2、甲30(甲51)、同証拠の図2、甲32の請求項 1、【0047】、【0053】、甲33の1のTable1、図5、甲34の1のTable1、図2、甲38の2の請求項10、【0255】、図41、甲39の2の【0105】、図15、図16、甲49、甲50、甲52、甲78の1のTable6)。 そうすると、エフェクター機能を必要としない甲11発明の二重特異性 抗体において、上記技術常識に基づいて、Fc領域の234位及び235位に変異を導入することは当業者が容易に想到し得ることであると認められる。 (4) そして、本件明細書においては、その実施例に関する記載をみても、二重特異性抗体においてFc領域の234位及び235位に変異を導入することについて、Fcγ受容体に対する結合活性が低下したものになるという以 上の技術的意義は明らかでなく、本件訂正発明1が予測できないような顕著 な効果を奏するものとは認められない。 (5) そうすると、本件訂正発明1は、甲11発明及び本件優先日当時の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をする 正発明1が予測できないような顕著 な効果を奏するものとは認められない。 (5) そうすると、本件訂正発明1は、甲11発明及び本件優先日当時の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項により特許を受けることができない発明であると認められる。 (6)アこれに対し、被告は、甲第11号証には、エフェクター機能を低下さ せるためのアミノ酸置換は全く記載されておらず、234位及び235位における変異を選択できた事情があったということはできないと主張する。 しかしながら、前記のとおり、抗体のエフェクター機能を低下させるための手段として、Fc領域にFcγ受容体との結合親和性を低下させるアミノ酸変異を導入することは、本件優先日当時の技術常識であるこ とから、Fcγ受容体との結合親和性を低下させることが知られた任意のアミノ酸置換をFc領域に導入することは、当業者であれば十分に動機付けられることである。そして、前記のとおり、234位及び235位における変異を導入したことによる格別の効果は認められないのであるから、Fcγ受容体への結合能を低下させることが知られたアミノ酸 置換のうち、特に234位及び235位における変異を選択することによる技術的意義は明らかでなく、234位及び235位における変異を選択することは当業者の単なる設計事項にすぎないといわざるを得ない。 イ(ア) 次に、被告は、甲第11号証の段落【0744】では、本件訂正発明のように「細胞傷害性を誘導」する場合には、Fc領域を積極的に活 用すべきことが記載されているのであり、Fc領域の活性を下げることには阻害事由があるとも主張する。 この点、上記段落には、「抗体は、Fc領域で修飾されて、所望のエフェクター機能を提供し 活 用すべきことが記載されているのであり、Fc領域の活性を下げることには阻害事由があるとも主張する。 この点、上記段落には、「抗体は、Fc領域で修飾されて、所望のエフェクター機能を提供し得る。本明細書中の節で詳細に考察されているように、①適切なFc領域を用いて、細胞表面に結合された裸抗体は、 例えば抗体依存性細胞性細胞傷害性(ADCC)を介して、または補体 依存性細胞傷害性において補体を動員することにより、または他のいくつかの機序により、細胞傷害性を誘導し得る。②代替的には、副作用または治療的合併症を最小限にするために、エフェクター機能を排除するかまたは低減することが望ましい場合、ある種の他のFc領域が用いられ得る。」と記載されている(①、②の付番は被告の主張のとおり。)。 (イ) しかしながら、甲第11号証の段落【0744】について被告が指摘する上記(ア)①の記載には、抗体は、適切なFc領域によるエフェクター機能により、細胞傷害性を誘導することができることが記載されているだけであり、細胞傷害性を誘導することができる抗体は、全てFc領域によるエフェクター機能を用いるものであると記載されてい るわけではない。実際、前記(3)①から④まで、特に④の甲第11号証の段落【0651】に「グリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合、例えば、治療用抗体が細胞傷害性物質(例えば、毒素)と接合され、免疫接合体それ自体が腫瘍細胞崩壊において有効性を示す場合、全長抗体、抗体断片および抗体融合タンパク質が細菌 中で産生され得る。」と記載されているように、治療用抗体が細胞傷害性物質(例えば、毒素)と接合され、免疫接合体それ自体が腫瘍細胞崩壊において有効性を示す場合は、抗体のエフェクター機能によらず 中で産生され得る。」と記載されているように、治療用抗体が細胞傷害性物質(例えば、毒素)と接合され、免疫接合体それ自体が腫瘍細胞崩壊において有効性を示す場合は、抗体のエフェクター機能によらず、細胞傷害性が誘導され、エフェクター機能が必要とされないことが知られている。このように、細胞傷害性を誘導する抗体には、Fc領域 を介したエフェクター機能により細胞傷害性を誘導するものばかりではなく、細胞傷害性物質を結合するなどして、Fc領域を介したエフェクター機能がなくとも細胞傷害性を誘導する抗体もある。 そして、本件訂正発明1のような、T細胞上のT細胞受容体複合体構成サブユニット、及び、標的である癌細胞上の抗原に結合する二重特異 性抗体(TR抗体)においても、FcのFcγ受容体との結合に起因す る副作用の可能性が知られていたのであり、当該副作用を最小限にするためにエフェクター機能を排除するか又は低減することが望まれていたといえる(甲57、甲58、甲60)。 そうすると、本件訂正発明1のTR抗体は、上記(ア)②に該当するといえる。 (ウ) これに対し、被告は、甲第11号証の段落【0651】における「グリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合」の例としての「治療用抗体が細胞傷害性物質(例えば、毒素)と接合され、免疫接合体それ自体が腫瘍細胞崩壊において有効性を示す場合」とは、明らかにTR抗体と異なる技術を対象としたものであるとも主 張する。 しかしながら、TR抗体について、本件明細書の段落【0003】や甲第2号証の段落【0391】及び【0392】の記載によれば、TR抗体も免疫接合体も、いずれも、腫瘍細胞と細胞傷害性物質(例えば、T細胞や毒素)に結合し、細胞傷害性物質を腫瘍細胞に接近させる 3】や甲第2号証の段落【0391】及び【0392】の記載によれば、TR抗体も免疫接合体も、いずれも、腫瘍細胞と細胞傷害性物質(例えば、T細胞や毒素)に結合し、細胞傷害性物質を腫瘍細胞に接近させること により、Fcエフェクター機能を必要とせずに抗腫瘍効果を発揮できる抗体であるという点で共通するものである。そうすると、甲第11号証の段落【0651】において「グリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合」の例として挙げられたにすぎない「免疫接合体」が、一般的にTR抗体を指すものでないとしても、その機能面から 考えて、TR抗体が上記(ア)②の場合に当たり得ることは何ら左右されない。 (7) そうすると、本件訂正発明1は、甲11発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、これと異なり、甲11発明において、相違点3として挙げた本件訂正発明1の発明特定事項を採用することを 容易に想到し得るとはいえないとした本件審決の進歩性の判断は誤りである といえる。 2 結論以上によれば、取消事由2は理由があり、その余の取消事由について判断するまでもなく、原告の請求は理由があるから、本件審決を取り消すこととし、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官 増田稔 裁判官 岩井直幸 裁判官 岩井直幸 裁判官 安岡美香子 別紙1本件特許の特許請求の範囲の記載(下線部は本件訂正によるものである。)【請求項1】下記のドメイン: (1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、(2)配列番号:23、24、25または26に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、 (3)T細胞受容体複合体結合ドメインを含むポリペプチド会合体であって、癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細 胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位 および235位が変異している、 c領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位 および235位が変異している、ポリペプチド会合体。 【請求項2】 (削除)【請求項3】下記のドメイン: (1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、 (2)配列番号:23、24、25または26に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン を含むポリペプチド会合体であって、癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの軽鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域 を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの重鎖Fv断片がCL領域と連結され、該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している、 ポリペプチド会合体。 【請求項4】下記のドメイン:(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、(2)配列番号:23、24、25、または26に 位が変異している、 ポリペプチド会合体。 【請求項4】下記のドメイン:(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、(2)配列番号:23、24、25、または26に記載のヒトFc領域において変異を有する ヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、(3)T細胞受容体複合体結合ドメインを含むポリペプチド会合体であって、 癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、 癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCL領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCH1領域と連結され、 該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している、ポリペプチド会合体。 【請求項5】 下記のドメイン:(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、(2)配列番号:23、24、25、または26に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、 に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受 容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、(3)T細胞受容体複合体結合ドメインを含むポリペプチド会合体であって、癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してF c領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、癌抗原結合ドメインを構成するFabの軽鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの重鎖Fv断片がCL領域と連結され、該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、 該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位 および235位が変異している、ポリペプチド会合体。 【請求項6】下記のドメイン:(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、 (2)配列番号:23、24、25、または26に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン を含むポリペプチド会合体であって、癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複 、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン を含むポリペプチド会合体であって、癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCL領域を介してFc領域を 構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCH1領域と連結され、該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している、 ポリペプチド会合体。 【請求項7】 (削除)【請求項8】 (削除)【請求項9】 (削除)【請求項10】 (削除) 【請求項11】 ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項1および3から6のいずれかに記載のポリペプチド会合体。 【請求項12】 (削除)【請求項13】 (削除) 【請求項14】T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項1、3から6、および11のいずれかに記載のポリペプチド会合体。 【請求項15】T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項1、3から6、1 1、および14のいずれかに記載のポリペプチド会合体 のいずれかに記載のポリペプチド会合体。 【請求項15】T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項1、3から6、1 1、および14のいずれかに記載のポリペプチド会合体。 【請求項16】CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項15に記載のポリペプチド会合体。 【請求項17】 CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項15に記載のポリペプチド会合体。 【請求項18】下記のドメイン:(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、 (2)配列番号:23、24、25、または26に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン を含むポリペプチド会合体であって、 癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結さ れ、該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のう プチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結さ れ、該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異しており、かつ、234位のアミノ酸がアラニンに置換されており、及び/又は235位のアミノ酸がアラニンに置換されている、 ポリペプチド会合体。 【請求項19】 (削除)【請求項20】下記のドメイン:(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、 (2)ヒトIgG4抗体のFc領域(配列番号:26) において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン を含むポリペプチド会合体であって、癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域 を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL頷域と連結さ れ、該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が れ、該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異しており、かつ、234位のアミノ酸がアラニンに置換されており、及び/又は235位のアミノ酸がアラニンに置換されている、 ポリペプチド会合体。 【請求項21】該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項1、3から6、11、および14から17のいずれかに記載のポリペプチド会合体。 【請求項22】下記のドメイン:(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、(2)ヒトIgG4抗体のFc領域(配列番号:26) において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプ の抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、(3)T細胞受容体複合体結合ドメインを含むポリペプチド会合体であって、癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、 癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、 該ヒトFc領域変異体を構成 結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、 該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、 該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異しており、かつ、235位のアミノ酸がアラニンに置換されている、ポリペプチド会合体。 【請求項23】 (削除)【請求項24】 297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項1、3から6、11、および14から17のいずれかに記載のポリペプチド会合体。 【請求項25】 (削除)【請求項26】 (削除)【請求項27】 (削除) 【請求項28】下記のドメイン:(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、(2)ヒトIgG4抗体のFc領域(配列番号:26) において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプ の抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、(3)T細胞受容体複合体結合ドメインを含むポリペプチド会合体であって、癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、 癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してF がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、 該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、 該ヒトIgG4抗体のFc領域(配列番号:26) を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定されるF234A、およびL235Aの変異を含むヒトFc領域変異体である、ポリペプチド会合体。 【請求項29】 (削除) 【請求項30】下記のドメイン:(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、(2)配列番号:23に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒ トFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、(3)T細胞受容体複合体結合ドメインを含むポリペプチド会合体であって、癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、 癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、 該ヒトFc領域変 容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、 該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異しており、該234位のアミノ酸が、対応するIgG4においてそのEUナンバリングが対応するアミノ酸に置換されている、ポリペプチド会合体。 【請求項31】 癌抗原非依存的なサイトカインストームが誘導されないか、又は、誘導が低下される、請求項1、3から6、11、14から17、21、および24のいずれかに記載のポリペプチド会合体。 【請求項32】抗がん剤である有機化合物がコンジュゲートされていない、請求項1、3から6、11、1 4から17、21、24、および31のいずれかに記載のポリペプチド会合体。 【請求項33】癌抗原結合ドメイン中の重鎖Fv断片と軽鎖Fv断片、またはT細胞受容体結合ドメイン中の重鎖Fv断片と軽鎖Fv断片が会合するようにCH1領域とCL領域の電荷が制御されている、請求項1、11、14から17、21、24、31、および32のいずれかに記載のポリ ペプチド会合体。 【請求項34】T細胞受容体複合体結合ドメイン中の重鎖Fv断片に連結されたCH1領域のアミノ酸残基および癌抗原結合ドメイン中の軽鎖Fv断片に連結されたCL領域のアミノ酸残基が互いに同種の電荷を有する、請求項33に記載のポリペプチド会合体。 【請求項35】癌抗原結合ドメイン中の重鎖Fv断片に連結されたCH1領域のアミノ酸残基およびT細胞受容体複合 酸残基が互いに同種の電荷を有する、請求項33に記載のポリペプチド会合体。 【請求項35】癌抗原結合ドメイン中の重鎖Fv断片に連結されたCH1領域のアミノ酸残基およびT細胞受容体複合体結合ドメイン中の軽鎖Fv断片に連結されたCL領域のアミノ酸残基が互いに同種の電荷を有する、請求項33に記載のポリペプチド会合体。 【請求項36】 T細胞受容体複合体結合ドメイン中の重鎖Fv断片に連結されたCH1領域のアミノ酸残基および癌抗原結合ドメイン中の軽鎖Fv断片に連結されたCL領域のアミノ酸残基が互いに同種の電荷を有し、癌抗原結合ドメイン中の重鎖Fv断片に連結されたCH1領域のアミノ酸残基およびT細胞受容体複合体結合ドメイン中の軽鎖Fv断片に連結されたCL領域のアミノ酸残基が互いに同種の電荷を有する、請求項33に記載のポリペプチド会合体。 【請求項37】 T細胞受容体複合体結合ドメイン中の重鎖Fv断片に連結されたCH1領域のアミノ酸残基およびT細胞受容体結合ドメイン中の軽鎖Fv断片に連結されたCL領域のアミノ酸残基が互いに異種の電荷を有する、請求項34又は36に記載のポリペプチド会合体。 【請求項38】癌抗原結合ドメイン中の重鎖Fv断片に連結されたCH1領域のアミノ酸残基および癌抗原 結合ドメイン中の軽鎖Fv断片に連結されたCL領域のアミノ酸残基がともに異種の電荷を有する、請求項35又は36に記載のポリペプチド会合体。 【請求項39】CH1領域のアミノ酸残基およびCL領域のアミノ酸残基が、以下の(a)~(f)に示される1組又は2組以上のアミノ酸残基の組からなる群: (a)CH1領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング147位のアミノ酸残基、及びCL領域のアミノ酸残基であってEUナ )~(f)に示される1組又は2組以上のアミノ酸残基の組からなる群: (a)CH1領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング147位のアミノ酸残基、及びCL領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング180位のアミノ酸残基、(b)CH1領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング147位のアミノ酸残基、及びCL領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング131位のアミノ酸残基(c)CH1領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング147位のアミノ酸残基、及びC L領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング164位のアミノ酸残基(d)CH1領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング147位のアミノ酸残基、及びCL領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング138位のアミノ酸残基(e)CH1領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング147位のアミノ酸残基、及びCL領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング123位のアミノ酸残基 (f)CH1領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基、及びCL領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング160位のアミノ酸残基より選択され、CH1領域のアミノ酸残基とCL領域のアミノ酸残基とが互いに異種の電荷を有するアミノ酸残基である、請求項37又は38に記載のポリペプチド会合体。 【請求項40】 さらに、以下の(g)に示されるアミノ酸残基の組を含む群より選択される、請求項39に 記載のポリペプチド会合体:(g)CH1領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング213位のアミノ酸残基、及びCL領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング123位のアミノ酸残基。 【請求項41】前記異種の電荷を有するアミノ酸残基が、以下の(X)または(Y)のいずれか ング213位のアミノ酸残基、及びCL領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング123位のアミノ酸残基。 【請求項41】前記異種の電荷を有するアミノ酸残基が、以下の(X)または(Y)のいずれかの群: (X)グルタミン酸(E)、アスパラギン酸(D);(Y)リジン(K) 、アルギニン(R)、ヒスチジン(H);に含まれるアミノ酸残基から選択される、請求項39又は40に記載のポリペプチド会合体。 【請求項42】前記異種の電荷を有するアミノ酸残基が、CH1領域のアミノ酸残基であってEUナンバリ ング175位のアミノ酸残基がLys、CL領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング180位、131位及び160位のアミノ酸残基がいずれもGluである、請求項39から41のいずれかに記載のポリペプチド会合体。 【請求項43】前記異種の電荷を有するアミノ酸残基が、CH1領域のアミノ酸残基であってEUナンバリ ング147位及び175位のアミノ酸残基がGlu、CL領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング180位、131位及び160位のアミノ酸残基がいずれもLysである、請求項39から41のいずれかに記載のポリペプチド会合体。 【請求項44】さらに、CH1領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング213位のアミノ酸残基がG luであり、CL領域のアミノ酸残基であってEUナンバリング123位のアミノ酸残基がLysである、請求項43に記載のポリペプチド会合体。 【請求項45】 (削除)【請求項46】Fc領域を構成する二つのポリペプチドの一方のポリペプチドのアミノ酸残基のうちEUナ ンバリングに従って特定される349位のアミノ酸がシステイン、366位のアミノ酸がトリ プトファンに、他方のポリペプチ つのポリペプチドの一方のポリペプチドのアミノ酸残基のうちEUナ ンバリングに従って特定される349位のアミノ酸がシステイン、366位のアミノ酸がトリ プトファンに、他方のポリペプチドのアミノ酸残基のうちEUナンバリングに従って特定される356位のアミノ酸がシステイン、366位のアミノ酸がセリンに、368位のアミノ酸がアラニンに、407位のアミノ酸がバリンに変異していることを特徴とする、請求項1、3から6、11、14から17、21、24、および31から44のいずれかに記載のポリペプチド会合体。 【請求項47】Fc領域を構成する二つのポリペプチドの一方のポリペプチドのアミノ酸残基のうちEUナンバリングに従って特定される356位のアミノ酸がリジンに、他方のポリペプチドのアミノ酸残基のうちEUナンバリングに従って特定される439位のアミノ酸がグルタミン酸に変異し、いずれか一方のポリペプチドのアミノ酸残基のうちEUナンバリングに従って特定される 435位のアミノ酸がアルギニンに変異している、請求項1、3から6、11、14から17、21、24、31から44、および46のいずれかに記載のポリペプチド会合体。 【請求項48】Fc領域を構成する二つのポリペプチドのカルボキシ末端に存在する配列GKが欠失している、請求項1、3から6、11、14から17、21、24、31から44、46、および4 7のいずれかに記載のポリペプチド会合体。 【請求項49】下記のドメイン:(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、(2)配列番号:23、24、25、または26に記載のヒトFc領域において変異を有する ヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソ ない)、(2)配列番号:23、24、25、または26に記載のヒトFc領域において変異を有する ヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、(3)T細胞受容体複合体結合ドメインを含むポリペプチド会合体であって、 癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、 癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、 該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している、ポリペプチド会合体を有効成分として含む医薬組成物。 【請求項50】 癌抗原非依存的なサイトカインストームを誘導しないか、又は、誘導を低下するための、請求項49に記載の医薬組成物。 【請求項51】細胞傷害誘導治療剤である、請求項49又は50に記載の医薬組成物。 【請求項52】 癌治療剤である、請求項49から51のいずれかに記載の医薬組成物。 【請求項53】癌が肝癌又は肺癌である、請求項52に記載の医薬組成物。 【請求項54】請求項1、3から6 】 癌治療剤である、請求項49から51のいずれかに記載の医薬組成物。 【請求項53】癌が肝癌又は肺癌である、請求項52に記載の医薬組成物。 【請求項54】請求項1、3から6、11、14から17、21、24、31から44、および46から4 8のいずれかに記載のポリペプチド会合体をコードするポリヌクレオチド。 【請求項55】請求項54に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。 【請求項56】請求項55に記載のベクターを保持する細胞。 【請求項57】 請求項56に記載の細胞を培養し培養上清からポリペプチド会合体を回収することを含むポリペプチド会合体の製造方法。 【請求項58】細胞が真核細胞である、請求項57に記載の方法。 【請求項59】 真核細胞が哺乳類細胞である、請求項58に記載の方法。 【請求項60】ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項49に記載の医薬組成物。 【請求項61】T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項49に記載の医薬組成物。 【請求項62】T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項49に記載の医薬組 成物。 【請求項63】CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項62に記載の医薬組成物。 【請求項64】 CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項62に記載の医薬組成物。 【請求項65】該ヒトFc領域変異体が、 。 【請求項64】 CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項62に記載の医薬組成物。 【請求項65】該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項49に記 載の医薬組成物。 【請求項66】該ヒトFc領域変異体が、297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項49に記載の医薬組成物。 【請求項67】ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγ IIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項18に記載のポリペプチド会合体。 【請求項68】T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項18に記載のポリペプチド会合体。 【請求項69】T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項18に記載のポリペプチド会合体。 【請求項70】CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請 求項69に記載のポリペプチド会合体。 【請求項71】CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項69に記載のポリペプチド会合体。 【請求項72】 該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項18に記載のポリペプチド会合体。 【請求項73】該ヒトFc領域変異体が、297位 ミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項18に記載のポリペプチド会合体。 【請求項73】該ヒトFc領域変異体が、297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体であ る、請求項18に記載のポリペプチド会合体。 【請求項74】癌抗原非依存的なサイトカインストームが誘導されないか、又は、誘導が低下される、請求項18に記載のポリペプチド会合体。 【請求項75】請求項18および67から74のいずれかに記載のポリペプチド会合体をコードするポリヌ クレオチド。 【請求項76】請求項75に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。 【請求項77】請求項76に記載のベクターを保持する細胞。 【請求項78】請求項77に記載の細胞を培養し培養上清からポリペプチド会合体を回収することを含むポリペプチド会合体の製造方法。 【請求項79】細胞が真核細胞である、請求項78に記載の方法。 【請求項80】真核細胞が哺乳類細胞である、請求項79に記載の方法。 【請求項81】下記のドメイン:(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、 (2)配列番号:23、24、25、または26に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン を含むポリペプチド会合体であって、 癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメイ 結合活性が低下している、ドメイン、及び、(3)T細胞受容体複合体結合ドメイン を含むポリペプチド会合体であって、 癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結さ れ、該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、該Fc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異しており、かつ、234位のアミノ酸がアラニンに置換されており、及び/又は235位のアミノ酸がアラニンに置換されている、 ポリペプチド会合体を有効成分として含む、医薬組成物。 【請求項82】癌抗原非依存的なサイトカインストームを誘導しないか、又は、誘導を低下するための、請求項81に記載の医薬組成物。 【請求項83】 細胞傷害誘導治療剤である、請求項81に記載の医薬組成物。 【請求項84】癌治療剤である、請求項81に記載の医薬組成物。 【請求項85】癌が肝癌又は肺癌である、請求項84に記載の医薬組成物。 【請求項86】ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項81に記載の医薬組成物。 【請求項87】 、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項81に記載の医薬組成物。 【請求項87】 T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項81に記載の 医薬組成物。 【請求項88】T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項81に記載医薬組成物。 【請求項89】 CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項88に記載の医薬組成物。 【請求項90】CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項88に記載の医薬組成物。 【請求項91】該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc 領域変異体である、請求項81に記載の医薬組成物。 【請求項92】 該ヒトFc領域変異体が、297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項81に記載の医薬組成物。 【請求項93】ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下してい る、請求項20に記載のポリペプチド会合体。 【請求項94】T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項20に記載のポリペプチド会合体。 【請求項95】 T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項20に記載のポリペ プチド会合体。 【請求項96】 請求項20に記載のポリペプチド会合体。 【請求項95】 T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項20に記載のポリペ プチド会合体。 【請求項96】CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項95に記載のポリペプチド会合体。 【請求項97】 CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項95に記載のポリペプチド会合体。 【請求項98】該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項20に記 載のポリペプチド会合体。 【請求項99】297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項20に記載のポリペプチド会合体。 【請求項100】 癌抗原非依存的なサイトカインストームが誘導されないか、又は、誘導が低下される、請求項20に記載のポリペプチド会合体。 【請求項101】請求項20および93から100のいずれかに記載のポリペプチド会合体をコードするポリヌクレオチド。 【請求項102】請求項101に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。 【請求項103】請求項102に記載のベクターを保持する細胞。 【請求項104】 請求項103に記載の細胞を培養し培養上清からポリペプチド会合体を回収することを含む ポリペプチド会合体の製造方法。 【請求項105】細胞が真核細胞である、請求項104に記載の方法。 【請求項106】真核細胞が哺乳類細胞である、請求項105に記載の方法。 【請求項107 チド会合体の製造方法。 【請求項105】細胞が真核細胞である、請求項104に記載の方法。 【請求項106】真核細胞が哺乳類細胞である、請求項105に記載の方法。 【請求項107】下記のドメイン:(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、(2)ヒトIgG4抗体のFc領域(配列番号:26) において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプ の抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、(3)T細胞受容体複合体結合ドメインを含むポリペプチド会合体であって、癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFab であり、 癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、 該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異しており、かつ、234位のアミノ酸がアラニンに置換されており、及び/又は235位のアミノ酸がアラニンに詈換されている、ポリペプチド会合体を有効成分として含む、医薬組成物。 【請求項108】 癌抗原非依存的なサイトカインストームを誘導しない は235位のアミノ酸がアラニンに詈換されている、ポリペプチド会合体を有効成分として含む、医薬組成物。 【請求項108】 癌抗原非依存的なサイトカインストームを誘導しないか、又は、誘導を低下するための、請求項107に記載の医薬組成物。 【請求項109】細胞傷害誘導治療剤である、請求項107に記載の医薬組成物。 【請求項110】 癌治療剤である、請求項107に記載の医薬組成物。 【請求項111】癌が肝癌又は肺癌である、請求項110に記載の医薬組成物。 【請求項112】ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγ IIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項107に記載の医薬組成物。 【請求項113】T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項107に記載の医薬組成物。 【請求項114】T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項107に記載の医薬組成物。 【請求項115】CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する請求 項114に記載の医薬組成物。 【請求項116】CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項114に記載の医薬組成物。 【請求項117】 該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに 従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項107に記載の医薬組成物。 【請求項118】該ヒトFc領域変異体が、297位がアラニンに置換さ ングに 従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項107に記載の医薬組成物。 【請求項118】該ヒトFc領域変異体が、297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項107に記載の医薬組成物。 【請求項119】ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項22に記載のポリペプチド会合体。 【請求項120】 T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項22に記載のポリペプチド会合体。 【請求項121】T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項22に記載のポリペプチド会合体。 【請求項122】CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項121に記載のポリペプチド会合体。 【請求項123】CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合す る請求項121に記載のポリペプチド会合体。 【請求項124】該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項22に記載のポリペプチド会合体。 【請求項125】 該ヒトFc領域変異体が、297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項22に記載のポリペプチド会合体。 【請求項126】癌抗原非依存的なサイトカインストームが誘導されないか、又は、誘導が低下される、請求項22に記載の されているヒトFc領域変異体である、請求項22に記載のポリペプチド会合体。 【請求項126】癌抗原非依存的なサイトカインストームが誘導されないか、又は、誘導が低下される、請求項22に記載のポリペプチド会合体。 【請求項127】請求項22および119から126のいずれかに記載のポリペプチド会合体をコードするポリヌクレオチド。 【請求項128】請求項127に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。 【請求項129】請求項128に記載のベクターを保持する細胞。 【請求項130】請求項129に記載の細胞を培養し培養上清からポリペプチド会合体を回収することを含むポリペプチド会合体の製造方法。 【請求項131】細胞が真核細胞である、請求項130に記載の方法。 【請求項132】真核細胞が哺乳類細胞である、請求項131に記載の方法。 【請求項133】 下記のドメイン:(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、(2)ヒトIgG4抗体のFc領域(配列番号:26)において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結 合活性が低下している、ドメイン、及び、 (3)T細胞受容体複合体結合ドメインを含むポリペプチド会合体であって、癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細 胞受容体 bであり、癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細 胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位 および235位が変異しており、かつ、235位のアミノ酸がアラニンに置換されている、ポリペプチド会合体を有効成分として含む、医薬組成物。 【請求項134】癌抗原非依存的なサイトカインストームを誘導しないか、又は、誘導を低下するための、請求項133に記載の医薬組成物。 【請求項135】細胞傷害誘導治療剤である、請求項133に記載の医薬組成物。 【請求項136】癌治療剤である、請求項133に記載の医薬組成物。 【請求項137】 癌が肝癌又は肺癌である、請求項136に記載の医薬組成物。 【請求項138】ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項133に記載の医薬組成物。 【請求項139】 T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項133に記載の医薬組成物。 【請求項140】T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項133に記載医薬組成物。 【請求項141 受容体結合ドメインである、請求項133に記載の医薬組成物。 【請求項140】T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項133に記載医薬組成物。 【請求項141】CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項140に記載の医薬組成物。 【請求項142】CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合す る、請求項140に記載の医薬組成物。 【請求項143】該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項133に記載の医薬組成物。 【請求項144】該ヒトFc領域変異体が、297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項133に記載の医薬組成物。 【請求項145】ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγ IIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項28に記載のポリペプチド会合体。 【請求項146】T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項28に記載のポリペプチド会合体。 【請求項147】 T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項28に記載のポリペプチド会合体。 【請求項148】CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項147に記載のポリペプチド会合体。 【請求項149】CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在す ンがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項147に記載のポリペプチド会合体。 【請求項149】CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項147に記載のポリペプチド会合体。 【請求項150】該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに 従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項28に記載のポリペプチド会合体。 【請求項151】297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項28に記載のポリペプチド会合体。 【請求項152】癌抗原非依存的なサイトカインストームが誘導されないか、又は、誘導が低下される、請求項28に記載のポリペプチド会合体。 【請求項153】請求項28および145から152のいずれかに記載のポリペプチド会合体をコードするポ リヌクレオチド。 【請求項154】請求項153に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。 【請求項155】請求項154に記載のベクターを保持する細胞。 【請求項156】 請求項155に記載の細胞を培養し培養上清からポリペプチド会合体を回収することを含むポリペプチド会合体の製造方法。 【請求項157】細胞が真核細胞である、請求項156に記載の方法。 【請求項158】 真核細胞が哺乳類細胞である、請求項157に記載の方法。 【請求項159】下記のドメイン:(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、(2)ヒトIgG4抗体のFc領域(配列番号:26)において変異を有するヒトFc領域変 異体を含むドメインであって 記のドメイン:(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、(2)ヒトIgG4抗体のFc領域(配列番号:26)において変異を有するヒトFc領域変 異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン、及び、(3)T細胞受容体複合体結合ドメインを含むポリペプチド会合体であって、 癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結さ れ、該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、該ヒトIgG4抗体のFc領域(配列番号:26)を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定されるF234A、およびL235Aの変異を含むヒトFc領域変異体である、 ポリペプチド会合体を有効成分として含む、医薬組成物。 【請求項160】癌抗原非依存的なサイトカインストームを誘導しないか、又は、誘導を低下するための、請求項159に記載の医薬組成物。 【請求項161】細胞傷害誘導治療剤である、請求項159に記載の医薬組成物。 【請求項162】癌治療剤である、請求項159に記載の医薬組成物。 【請求項163】癌が肝 物。 【請求項161】細胞傷害誘導治療剤である、請求項159に記載の医薬組成物。 【請求項162】癌治療剤である、請求項159に記載の医薬組成物。 【請求項163】癌が肝癌又は肺癌である、請求項162に記載の医薬組成物。 【請求項164】 ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項159に記載の医薬組成物。 【請求項165】T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項159に記載 の医薬組成物。 【請求項166】T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項159に記載の医薬組成物。 【請求項167】 CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項166に記載の医薬組成物。 【請求項168】CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項166に記載の医薬組成物。 【請求項169】 該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項159に記載の医薬組成物。 【請求項170】該ヒトFc領域変異体が、297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体であ る、請求項159に記載の医薬組成物。 【請求項171】ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下 の医薬組成物。 【請求項171】ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγIIB、ヒトFcγIIIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、請求項30に記載のポリペプチド会合体。 【請求項172】T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項30に記載のポリペプチド会合体。 【請求項173】T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項30に記載のポリペ プチド会合体。 【請求項174】CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項173に記載のポリペプチド会合体。 【請求項175】 CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項173に記載のポリペプチド会合体。 【請求項176】該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc 領域変異体である、請求項30に記 載のポリペプチド会合体。 【請求項177】297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項30に記載のポリペプチド会合体。 【請求項178】癌抗原非依存的なサイトカインストームが誘導されないか、又は、誘導が低下される、請求 項30に記載のポリペプチド会合体。 【請求項179】請求項30および171から178のいずれかに記載のポリペプチド会合体をコードするポリヌクレオチド。 【請求項180】 請求項179に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。 【請求項181】請求項180に記 78のいずれかに記載のポリペプチド会合体をコードするポリヌクレオチド。 【請求項180】 請求項179に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。 【請求項181】請求項180に記載のベクターを保持する細胞。 【請求項182】請求項181に記載の細胞を培養し培養上清からポリペプチド会合体を回収することを含む ポリペプチド会合体の製造方法。 【請求項183】細胞が真核細胞である、請求項182に記載の方法。 【請求項184】真核細胞が哺乳類細胞である、請求項183に記載の方法。 【請求項185】下記のドメイン:(1)癌抗原結合ドメイン(ただし癌抗原はCD3ではない)、(2)配列番号:23に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒ トFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低 下している、ドメイン、及び、(3)T細胞受容体複合体結合ドメインを含むポリペプチド会合体であって、癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成 する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、 該ヒトFc領域を構成する 方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、該ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有し、 該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異しており、該234位のアミノ酸が、対応するIgG4においてそのEUナンバリングが対応するアミノ酸に置換されている、ポリペプチド会合体を有効成分として含む、医薬組成物。 【請求項186】 癌抗原非依存的なサイトカインストームを誘導しないか、又は、誘導を低下するための、請求項185に記載の医薬組成物。 【請求項187】細胞傷害誘導治療剤である、請求項185に記載の医薬組成物。 【請求項188】 癌治療剤である、請求項185に記載の医薬組成物。 【請求項189】癌が肝癌又は肺癌である、請求項188に記載の医薬組成物。 【請求項190】ヒトFc領域変異体が、ヒトFcγI、ヒトFcγIIA、ヒトFcγII、ヒトFcγI IIA及びヒトFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体に対する結合活性が低下している、 請求項185に記載の医薬組成物。 【請求項191】T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、請求項185に記載の医薬組成物。 【請求項192】 T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、請求項185に記載の医薬組成物。 【請求項193】CD3結合ドメインがヒトCD3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項192に記載の医薬組成物。 【請求項194】CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合 3を構成するε鎖配列に存在するエピトープに結合する、請求項192に記載の医薬組成物。 【請求項194】CD3結合ドメインがヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合する、請求項192に記載の医薬組成物。 【請求項195】該ヒトFc領域変異体が、ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに 従って特定される297位がさらに変異しているヒトFc領域変異体である、請求項185に記載の医薬組成物。 【請求項196】該ヒトFc領域変異体が、297位がアラニンに置換されているヒトFc領域変異体である、請求項185に記載の医薬組成物。 別紙2本件明細書の記載等(抜粋) 【技術分野】【0001】 本発明は、T細胞を標的癌細胞に近接せしめT細胞による標的癌細胞に対する細胞傷害活性を通じて癌を治療することを可能とするポリペプチド会合体、当該ポリペプチド会合体の製造方法、および当該ポリペプチド会合体を有効成分として含む細胞傷害誘導治療剤に関する。また当該細胞傷害誘導治療剤を有効成分として含む、様々な癌を治療または予防するための医薬組成物または当該医薬組成物を用いる治療方法に関する。 【背景技術】【0002】これまでに優れた抗腫瘍効果を示す複数の治療用抗体が、癌治療を目的とする医薬品として開発されている(非特許文献1)。これらの治療用抗体は、癌細胞の増殖に必要なシグナルの阻害、細胞死シグナルの誘発、あるいはADCC(AntibodyDependentCell-mediatedCytotox icity;抗体依存性細胞傷害)、CDC(ComplementDependentCytotoxicity;補体依存性細胞傷害)に endentCell-mediatedCytotox icity;抗体依存性細胞傷害)、CDC(ComplementDependentCytotoxicity;補体依存性細胞傷害)によって、癌細胞に対する抗腫瘍効果を発揮することが知られている(非特許文献2)。抗体のFc領域がNK細胞やマクロファージなどのエフェクター細胞上に存在するFcレセプターに結合することにより、抗体が結合した標的の癌細胞に対してこれらのエフェクター細胞が発揮する細胞傷害がADCCである。抗体の構造中に存在する補体結合部位には補体複合体が結 合する。抗体が結合した細胞の細胞膜上に当該複合体中に存在する補体成分が孔を形成することにより、水やイオンの細胞内への流入が促進され細胞が破壊されて起こる細胞傷害がCDCである。既存の治療用抗体には優れた作用が認められるものの、こうした抗体の投与によって得られる治療成績はまだ満足できるものではない。そこで、さらに強力な殺細胞活性を発揮する癌に対する治療抗体の開発が望まれている。 【0003】 上記のNK細胞やマクロファージをエフェクター細胞として動員するADCCをその抗腫瘍効果のメカニズムとする抗体とは別に、T細胞をエフェクター細胞として動員する細胞傷害をその抗腫瘍効果のメカニズムとする抗体であるT細胞リクルート抗体(Tcellrecruiting抗体、TR抗体)も1980年代から知られている(非特許文献3-5)。TR抗体は、T細胞上のT細胞レセプター(TCR)複合体の構成サブユニットのいずれかに対する抗体、特にCD3 epsilon鎖に結 合する抗体と、標的である癌細胞上の抗原に結合する抗体を含むbi-specific(二重特異性)抗体である。TR抗体がCD3 epsilon鎖と癌 に対する抗体、特にCD3 epsilon鎖に結 合する抗体と、標的である癌細胞上の抗原に結合する抗体を含むbi-specific(二重特異性)抗体である。TR抗体がCD3 epsilon鎖と癌抗原に同時に結合することにより、T細胞が癌細胞に接近する。その結果、T細胞の持つ細胞傷害作用により癌細胞に対する抗腫瘍効果が発揮されると考えられている。 【0004】 TR抗体の一つとしてtrifunctional抗体と称される抗体も知られている(非特許文献6、7)。これは、癌抗原に結合するFabとCD3 epsilon鎖に結合するFabがそれぞれ片腕に含まれるwholeIgG型のbi-specific抗体である。EpCAMに対するtrifunctional抗体であるcatumaxomabをEpCAM発現陽性の癌細胞を持つ悪性腹水患者の腹腔内に対して投与することにより悪性腹水症に対する治療の効果が示されている。EUにおいて上記の治療を目的とするcatumaxomab の使用が承認されている。 【0005】さらに最近になり、BiTE(bispecificT-cellengager)と称されるTR抗体が強い抗腫瘍作用を示すことが知られるようになった(非特許文献8、9)。BiTEは癌抗原に対する抗体のscFvとCD3 epsilon鎖に対する抗体のscFvが短いポリペプチドリンカーを介して連結された分子 型を有するTR抗体である。BiTEはそれまでに知られていた様々なTR抗体に比べて優れた抗腫瘍作用を持つことが報告されている(非特許文献9、10)。すなわちBiTEは、他のTR抗体に比較し、著しく低い濃度、および低いエフェクター細胞:癌細胞比率(ETレシオ)の下で抗腫瘍効果を発揮する。またこの効果の発現に、予めエフェクタ 非特許文献9、10)。すなわちBiTEは、他のTR抗体に比較し、著しく低い濃度、および低いエフェクター細胞:癌細胞比率(ETレシオ)の下で抗腫瘍効果を発揮する。またこの効果の発現に、予めエフェクター細胞をIL-2やCD28アゴニスト抗体などにより活性化させる必要がないことも示されている。臨床的に優れた効果があること が知られているリツキサンよりもはるかに強いinvitroでの癌細胞に対する傷害作用をCD19 に対するBiTEであるblinatumomab(MT103)が示した。さらに最近行なわれた第一相臨床試験、第二相臨床試験において極めて優れた抗腫瘍効果を示したことが報告されている(非特許文献11)。 【0006】catumaxomabが臨床で薬効を示し治療薬として承認されていること、およびblinatumomabを 始めとする複数のBiTEが強い抗腫瘍効果を発揮することから、T細胞をエフェクター細胞として動員するTR抗体には、通常のADCCをその作用機序とする抗体に比べて極めて高い抗腫瘍薬としてのポテンシャルがあることが示唆された。 【0007】しかしながら、trifunctional抗体が癌抗原非依存的にT細胞とNK細胞やマクロファージな どの細胞と同時に結合する結果、これらの細胞に発現する受容体が架橋されることにより、癌抗原非依存的な各種サイトカインの発現を誘導することが知られている。こうしたサイトカインの発現の誘導は、trifunctional抗体の全身投与によるサイトカインストーム様の副作用の発生につながるものと考えられる。実際、非小細胞肺癌患者に対するcatumaxomabの全身投与による第一相臨床試験においては、5μg/bodyという極めて低い用量が最大許容投与量であ り、それ 生につながるものと考えられる。実際、非小細胞肺癌患者に対するcatumaxomabの全身投与による第一相臨床試験においては、5μg/bodyという極めて低い用量が最大許容投与量であ り、それ以上の用量の投与により様々な重篤な副作用が起こることが報告されている(非特許文献12)。こうした低い用量のcatumaxomabの投与によっては、その有効血中濃度には到底達し得ない。すなわち、こうした低い用量のcatumaxomabの投与によっては期待される抗腫瘍作用が得られない。 【0008】 一方、BiTEはcatumaxomabとは異なりFcγ 受容体に対する結合部位を持たないため、癌抗原非依存的にT細胞とNK細胞やマクロファージなどに発現する受容体が架橋されることはない。そのため、catumaxomabが投与された場合に観察された癌抗原非依存的なサイトカインの誘導は起こらないことが示されている。しかしながら、BiTEはFc領域を欠く低分子量型の改変抗体分子であるために、治療用抗体として通常用いられるIgG型の抗体に比較して、患者に投 与されたBiTEの血中半減期は著しく短いという問題点が存在する。実際、生体に投与されたBi TEの血中半減期は数時間程度であることが示されており(非特許文献13、14)、blinatumomabの臨床試験においてはミニポンプを用いた持続静脈内投与によりblinatumomabの投与が行なわれている。こうした投与は患者にとって著しく利便性の悪い投与法であるばかりでなく、機器の故障などによる医療事故のリスクも潜在し、望ましい治療法であるとはいえない。 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】【0010】本発明は上記の情況に鑑みてなされたものであり、T細胞を標的癌細胞 事故のリスクも潜在し、望ましい治療法であるとはいえない。 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】【0010】本発明は上記の情況に鑑みてなされたものであり、T細胞を標的癌細胞に近接せしめT細胞による標的癌細胞に対する細胞傷害活性を通じて癌を治療することを可能とするポリペプチド会合体、当該ポリペプチド会合体の製造方法、および当該ポリペプチド会合体を有効成分として 含む細胞傷害誘導治療剤を提供することを目的とする。また当該細胞傷害誘導治療剤を有効成分として含む、様々な癌を治療または予防するための医薬組成物または当該医薬組成物を用いる治療方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】【0011】 本発明者らは、BiTEが持つ強い抗腫瘍活性と、癌抗原非依存的にサイトカインストームなどを誘導しないという安全性上の優れた性質が維持され、かつ長い血中半減期を持つ新たなポリペプチド会合体を見出した。さらに、ポリペプチド会合体における抗原結合ドメインを置換することにより、当該ポリペプチド会合体が様々な細胞を標的として細胞傷害をもたらすことを見出した。本発明者らは、かかる発見に基づいて、本発明に係るポリペプチド会合体が癌細胞 を傷害することを明らかにした。また、ポリペプチド会合体に、CH1/CL界面会合制御導入およびKnobintoHole (KiH)改変を導入することで、さらに効率よく細胞傷害をもたらすことを見出した。また、本発明者らは、本発明に係るポリペプチド会合体を有効成分とする細胞傷害誘導治療剤が、様々な癌を治療又は予防することを見出した。 【発明の効果】 【0014】 本発明によって、BiTEが持つ強い抗腫瘍活性と、癌抗原非依存的にサイトカインストームな 治療剤が、様々な癌を治療又は予防することを見出した。 【発明の効果】 【0014】 本発明によって、BiTEが持つ強い抗腫瘍活性と、癌抗原非依存的にサイトカインストームなどを誘導しないという安全性上の優れた性質が維持され、かつ長い血中半減期を持つ新たなポリペプチド会合体が提供された。本発明のポリペプチド会合体における抗原結合ドメインを置換することにより、当該ポリペプチド会合体を有効成分として含む細胞傷害誘導治療剤が癌細胞を含む様々な細胞を標的として細胞傷害をもたらし、様々な癌を治療又は予防することがで きる。患者にとっても、安全性が高いばかりでなく、身体的負担が少なく利便性も高いという、望ましい治療ができるようになる。 【図面の簡単な説明】【0015】【図1】GPC3 ERY1(GPC3 BiTE)、GPC3 ERY2、IgG型GPC3抗体の細胞傷害活性の比較を表す グラフである。黒四角(■)はGPC3 ERY1(GPC3 BiTE)、黒三角(▲)はGPC3 ERY2、白四角(□)はIgG型GPC3抗体の細胞傷害活性をそれぞれ表す。 【図2】GPC3 BiTE、GPC3 ERY5の細胞傷害活性の比較を表すグラフである。黒四角(■)はGPC3 BiTE、白丸(○)はGPC3 ERY5の細胞傷害活性をそれぞれ表す。 【図3】GPC3 BiTE、GPC3 ERY6の細胞傷害活性の比較を表すグラフである。黒四角(■)はGP C3 BiTE、黒三角(▲)はGPC3 ERY6の細胞傷害活性をそれぞれ表す。 【図4】GPC3 BiTE、GPC3 ERY7の細胞傷害活性の比較を表すグラフである。黒四角(■)はGPC3 BiTE、黒菱(◆)はGPC3 ERY7の細胞傷害活性をそれぞれ表す。 【図5】GPC3 4】GPC3 BiTE、GPC3 ERY7の細胞傷害活性の比較を表すグラフである。黒四角(■)はGPC3 BiTE、黒菱(◆)はGPC3 ERY7の細胞傷害活性をそれぞれ表す。 【図5】GPC3 BiTE、GPC3 ERY8-2、GPC3 ERY9-1、GPC3 ERY10-1の細胞傷害活性の比較を表すグラフである。黒四角(■)はGPC3 BiTE、黒三角(▲)はGPC3 ERY8-2、白丸(○)はGPC3 ERY9-1、白四角(□)はGPC3 ERY10-1の細胞傷害活性をそれぞれ表す。 【図6】PC-10 pre-mixモデルにおけるGPC3 ERY8-2のinvivo抗腫瘍効果を表すグラフである。白四角(□)はGPC3 ERY7投与群の腫瘍体積の変化を表す。黒菱(◆)は対照群(PBS投与)の腫瘍体積の変化を表す。 【図7】PC-10 pre-mixモデルにおけるGPC3 ERY10-1のinvivo抗腫瘍効果を表すグラフであ る。白四角(□)はGPC3 ERY10-1投与群の腫瘍体積の変化を表す。黒菱(◆)は対照群(PBS 投与)の腫瘍体積の変化を表す。 【図8】PC-10 T細胞移入モデルにおけるGPC3 ERY10-1のinvivo抗腫瘍効果を表すグラフである。白四角(□)はGPC3 ERY10-1投与群の腫瘍体積の変化を表す。黒菱(◆)は対照群(PBS投与)の腫瘍体積の変化を表す。 【図9】GPC3発現Ba/F3細胞を用いて測定したGPC3 ERY9-1及びGPC3 ERY10-1の血漿中濃度の 推移を表すグラフである。黒菱(◆)はGPC3 ERY9-1、白四角(□)はGPC3 ERY10-1の血漿中濃度の推移を表す。 【図10】CD3発現Ba/F3細胞を用いて測定したGPC3 ERY9-1及び 表すグラフである。黒菱(◆)はGPC3 ERY9-1、白四角(□)はGPC3 ERY10-1の血漿中濃度の推移を表す。 【図10】CD3発現Ba/F3細胞を用いて測定したGPC3 ERY9-1及びGPC3 ERY10-1の血漿中濃度の推移を表すグラフである。黒菱(◆)はGPC3 ERY9-1、白四角(□)はGPC3 ERY10-1の血漿中濃度の推移を表す。 【図11】GPC3 BiTE、GPC3 ERY9-1、GPC3 ERY10-1、GPC3 ERY15-1、及びcatumaxomabによる癌抗原非依存的なサイトカイン誘導能の評価を示すグラフである。 【図12】GPC3 ERY18 L1、GPC3 ERY18L2、GPC3 ERY18L3、GPC3 ERY18L4、のinvitro細胞傷害活性を示すグラフである。黒三角(▲)はGPC3 ERY18 L1、黒丸(●)はGPC3 ERY18 L2、黒四角(■)はGPC3 ERY18 L3、白四角(□)はGPC3 ERY18 L4、白菱(◇)はGPC3 ERY18 S1 の細胞傷害活性を表す。 【図13】GPC3 ERY18 L3とGPC3 ERY10-1のinvitro細胞傷害活性の比較を表すグラフである。黒四角(■)はGPC3 ERY18 L3、白四角(□)はGPC3 ERY10-1の細胞傷害活性を表す。 【図14】GPC3 ERY19-3とGPC3 BiTEのinvitro細胞傷害活性の比較を表すグラフである。白四角(□)はGPC3 ERY19-3、黒四角(■)はGPC3 BiTEの細胞傷害活性を表す。 【図15】A.NTA1L/NTA1R/GC33-k0を発現させたCMのサイズ排除クロマトグラフィー分析の結果を表すクロマトグラムである。B.NTA2L/NTA2R Eの細胞傷害活性を表す。 【図15】A.NTA1L/NTA1R/GC33-k0を発現させたCMのサイズ排除クロマトグラフィー分析の結果を表すクロマトグラムである。B.NTA2L/NTA2R/GC33-k0を発現させたCMのサイズ排除クロマトグラフィー分析の結果を表すクロマトグラムである。 【図16】本願明細書の実施例に記載されるポリペプチド会合体であるGPC3 BiTE、ERY2、GPC3 ERY5、GPC3 ERY6、GPC3 ERY7、GPC3 ERY8-2、GPC3 ERY9-1、GPC3 ERY 10-1、GPC3 ERY1 5、GPC3 ERY18、およびGPC3 ERY19-3を構成する各ドメインの表示である;交差線で表される ドメインは抗癌抗原(GPC3、EpCAM、EGFR)抗体H鎖可変領域、斜線で表されるドメインは抗癌抗原(GPC3、EpCAM、EGFR)抗体L鎖可変領域、点線で表されるドメインは抗CD3抗体H鎖可変領域、黒塗りで表されるドメインは抗CD3抗体L鎖可変領域、白塗りで表されるドメインは抗体定常領域、クロス字はサイレントFc変異、星印はヘテロFcを会合化させる変異、をそれぞれ表す。 【図17】A:GPC3 BiTEの模式図、B:GPC3 ERY 10の模式図、C:GPC3 ERY2の模式図、D:GPC3 ERY5の模式図、E:GPC3 ERY6の模式図、F:GPC3 ERY7の模式図、G:の模式図、H:GPC3 ERY9-1の模式図、I:GPC3 ERY10-1の模式図、J:GPC3 ERY15の模式図、K:GPC3 ERY18の模式図、L:GPC3 ERY19-3の模式図、を示す。 【図18】IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4のFc領域を構成するアミノ酸残基と、kabatのE 15の模式図、K:GPC3 ERY18の模式図、L:GPC3 ERY19-3の模式図、を示す。 【図18】IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4のFc領域を構成するアミノ酸残基と、kabatのEUナンバ リング(本明細書においてEUINDEXとも呼ばれる)との関係を表す。 【図19】本願明細書の実施例に記載されるポリペプチド会合体であるGPC3 ERY17-2、GPC3ERY17-3、EpCAMERY17-2、およびEpCAMERY17-3を構成する各ドメインの表示である;交差線で表されるドメインは抗癌抗原(GPC3、EpCAM、EGFR)抗体H鎖可変領域、斜線で表されるドメインは抗癌抗原(GPC3、EpCAM、EGFR)抗体L鎖可変領域、点線で表されるドメインは抗CD3 抗体H鎖可変領域、黒塗りで表されるドメインは抗CD3抗体L鎖可変領域、白塗りで表されるドメインは抗体定常領域、クロス字はサイレントFc変異、星印はヘテロFcを会合化させる変異、をそれぞれ表す。 【図20】GPC3 BiTE、GPC3 ERY17-2、GPC3 ERY17-3、GPC3 ERY10-1の細胞傷害活性の比較を表すグラフである。黒四角(■)はGPC3 BiTE、黒三角(▲)はGPC3 ERY17-2、白丸(○)は GPC3 ERY17-3、白四角(□)はGPC3 ERY10-1の細胞傷害活性をそれぞれ表す。 【図21】PC-10 T細胞移入モデルにおけるGPC3 ERY17-2のinvivo抗腫瘍効果を表すグラフである。白四角(□)はGPC3 ERY17-2投与群の腫瘍体積の変化を表す。黒菱(◆)は対照群(PBS投与)の腫瘍体積の変化を表す。 【図22】GPC3 ERY17-2、GPC3 ERY17-2-M20の細胞傷害活性の比較を 3 ERY17-2投与群の腫瘍体積の変化を表す。黒菱(◆)は対照群(PBS投与)の腫瘍体積の変化を表す。 【図22】GPC3 ERY17-2、GPC3 ERY17-2-M20の細胞傷害活性の比較を表すグラフである。黒 三角(▲)はGPC3 ERY17-2、白丸(○)はGPC3 ERY17-2-M20の細胞傷害活性をそれぞれ表す。 【図23】EpCAMERY17-2、EpCAMERY17-3の細胞傷害活性の比較を表すグラフである。黒三角(▲)はEpCAMERY17-2、白四角(□)はEpCAMERY17-3の細胞傷害活性をそれぞれ表す。 【図24】本願明細書の実施例に記載されるポリペプチド会合体であるGM1又はGM2、およびGM0を構成する各ドメインの表示である。CH1/CL界面会合制御が導入され、さらにKnobintoHole (KiH)の改変が導入されたポリペプチド会合体をA、CH1/CL界面会合制御もKiHも導入さ れていないポリペプチド会合体をBとして示した;交差線で表されるドメインは抗癌抗原(GPC3, EpCAM)抗体H鎖可変領域、斜線で表されるドメインは抗癌抗原(GPC3,EpCAM)抗体L鎖可変領域、点線で表されるドメインは抗CD3抗体H鎖可変領域、黒塗りで表されるドメインは抗CD3抗体L鎖可変領域、白塗りで表されるドメインは抗体定常領域、クロス字はサイレントFc変異、星印はヘテロFcを会合化させる変異、中空円はCH1/CL界面会合制御が導入された変異、 をそれぞれ表す。 【図25】GM1、GM2、GM0の細胞傷害活性の比較を表すグラフである。黒三角(▲)は、白四角(□)はGM2、白丸(○)はGM0の細胞傷害活性をそれぞれ表す。 【図26】EGFRERY17-2の細胞傷害活性を表すグラ 2、GM0の細胞傷害活性の比較を表すグラフである。黒三角(▲)は、白四角(□)はGM2、白丸(○)はGM0の細胞傷害活性をそれぞれ表す。 【図26】EGFRERY17-2の細胞傷害活性を表すグラフである。黒三角(▲)はEGFRERY17-2の細胞傷害活性を表す。 【発明を実施するための形態】【0068】抗原結合ドメイン本明細書において「抗原結合ドメイン」とは、抗原の一部または全部に特異的に結合し且つ相補的である領域を含んで成る抗体の部分をいう。抗原の分子量が大きい場合、抗体は抗原の 特定部分にのみ結合することができる。当該特定部分はエピトープと呼ばれる。抗原結合ドメインは一または複数の抗体の可変ドメインより提供され得る。好ましくは、抗原結合ドメインは抗体軽鎖可変領域(VL)と抗体重鎖可変領域(VH)とを含む。こうした抗原結合ドメインの例としては、「scFv(singlechainFv)」、「単鎖抗体(singlechainantibody)」、「Fv」、「scFv2(singlechainFv 2)」、「Fab」または「F(ab')2」等が好適に挙げられ る。 【0098】本明細書において、Fvとしては、例えば以下のポリペプチド会合体;二価のscFvのうち一価のscFvがCD3結合ドメインを構成する重鎖Fv断片を介してFc領域を構成する一つのポリペプチドに、他方の一価のscFvがCD3結合ドメインを構成する軽鎖Fv断片を介してFc領域を構成する他方の一つのポリペプチドに連結された二価の抗原結合ドメインが二価 のscFvである(1)二価の抗原結合ドメイン、(2)IgG1、IgG2a、IgG3又はIgG4のFc領域を構成するアミノ酸のうちFcγ 受容体に対する結合活性を有 二価の抗原結合ドメインが二価 のscFvである(1)二価の抗原結合ドメイン、(2)IgG1、IgG2a、IgG3又はIgG4のFc領域を構成するアミノ酸のうちFcγ 受容体に対する結合活性を有しないFc領域を含むドメイン、及び、(3)少なくとも一価のCD3結合ドメイン、を含むポリペプチド会合体等において軽鎖Fv断片及び重鎖Fv断片が、抗原であるCD3に対する結合を有する態様で会合しCD3結合ドメインを構成する一組のFvも好適に含まれる。 【0099】scFv 、単鎖抗体、またはsc(Fv)2本明細書において、「scFv」、「単鎖抗体」、または「sc(Fv)2」という用語は、単一のポリペプチド鎖内に、重鎖および軽鎖の両方に由来する可変領域を含むが、定常領域を欠いている抗体断片を意味する。一般に、単鎖抗体は、抗原結合を可能にすると思われる所望の構造を 形成するのを可能にする、VHドメインとVLドメインの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。単鎖抗体は、ThePharmacologyofMonoclonalAntibodies,113巻,Rosenburg、及び、Moore編, Springer-Verlag, NewYork, 269~315(1994)においてPluckthunによって詳細に考察されている。同様に、国際特許出願公開WO1988/001649および米国特許第4,946,778号および同第5,260,203号を参照。特定の態様において、単鎖抗体はまた、二重特異性であるか、 かつ/またはヒト化され得る。 【0109】Fab 、F(ab’)2 、またはFab’「Fab」は、一本の軽鎖、ならびに一本の重鎖のCH1領域および可変領域から構成される。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とのジ 得る。 【0109】Fab 、F(ab’)2 、またはFab’「Fab」は、一本の軽鎖、ならびに一本の重鎖のCH1領域および可変領域から構成される。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とのジスルフィド結合を形成できない。 【0110】 「F(ab’)2」及び「Fab’」とは、イムノグロブリン(モノクローナル抗体)をタンパク質分解酵素であるペプシンあるいはパパイン等で処理することにより製造され、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の前後で消化されて生成される抗体フラグメントを意味する。例えば、IgGをパパインで処理することにより、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の上流で切断されてVL(L鎖可変領域)とCL(L鎖定常領域)からなるL 鎖、及びVH(H鎖可変領域)とCHγ1(H鎖定常領域中のγ1領域)とからなるH鎖フラグメントがC末端領域でジスルフィド結合により結合した相同な2つの抗体フラグメントが製造され得る。これら2つの相同な抗体フラグメントはそれぞれFab'といわれる。 【0111】「F(ab’)2」は、二本の軽鎖、ならびに、鎖間のジスルフィド結合が2つの重鎖間で形成さ れるようにCH1ドメインおよびCH2ドメインの一部分の定常領域を含む二本の重鎖を含む。本明細書において開示されるポリペプチド会合体を構成するF(ab’)2は、所望の抗原結合ドメインを有する全長モノクローナル抗体等をペプシン等の蛋白質分解酵素にて部分消化した後に、Fc断片をプロテインAカラムに吸着させて除去することにより、好適に取得され得る。かかる蛋白質分解酵素としてはpH等の酵素の反応条件を適切に設定することにより制限的にF(ab’)2 を生じるように全長抗体を消化し得るものであれば特段 除去することにより、好適に取得され得る。かかる蛋白質分解酵素としてはpH等の酵素の反応条件を適切に設定することにより制限的にF(ab’)2 を生じるように全長抗体を消化し得るものであれば特段の限定はされず、例えば、ペプシンやフィシン等が例示できる。 【0112】Fc領域本明細書において開示されるポリペプチド会合体を構成するFc領域はモノクローナル抗体等 の抗体をペプシン等の蛋白質分解酵素にて部分消化した後に、断片をプロテインAカラム、あるいはプロテインGカラムに吸着させた後に、適切な溶出バッファー等により溶出させることにより好適に取得され得る。かかる蛋白質分解酵素としてはpH等の酵素の反応条件を適切に設定することによりモノクローナル抗体等の抗体を消化し得るものであれば特段の限定はされず、例えば、ペプシンやフィシン等が例示できる。 【0113】 本明細書に記載されるポリペプチド会合体にはIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のFc領域を構成するアミノ酸のうちFcγ受容体に対する結合活性が低下しているFc領域が含まれる。 【0115】Fc領域は、二本の軽鎖、ならびに、鎖間のジスルフィド結合が2つの重鎖間で形成されるようにCH1ドメインおよびCH2ドメイン間の定常領域の一部分を含む二本の重鎖を含むF(ab’)2 を除いた領域のことをいう。本明細書において開示されるポリペプチド会合体を構成するFc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4モノクローナル抗体等をペプシン等の蛋白質分解酵素にて部分消化した後に、プロテインAカラムに吸着された画分を再溶出することによって好適に取得され得る。かかる蛋白質分解酵素としてはpH等の酵素の反応条件を適切に設定することにより制限的にF(ab’)2を生じ 消化した後に、プロテインAカラムに吸着された画分を再溶出することによって好適に取得され得る。かかる蛋白質分解酵素としてはpH等の酵素の反応条件を適切に設定することにより制限的にF(ab’)2を生じるように全長抗体を消化し得るものであれば特段の限定はされず、例 えば、ペプシンやフィシン等が例示できる。 【0116】Fcγ受容体Fcγ受容体とは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4モノクローナル抗体のFc領域に結合し得る受容体をいい、実質的にFcγ受容体遺伝子にコードされるタンパク質のファミリーのいかなるメン バーをも意味する。ヒトでは、このファミリーには、アイソフォームFcγRIa 、FcγRIbおよびFcγRIcを含むFcγRI(CD64);アイソフォームFcγRIIa(アロタイプH131およびR131を含む)、FcγRIIb(FcγRIIb-1およびFcγRIIb-2を含む)およびFcγRIIcを含むFcγRII(CD32);およびアイソフォームFcγRIIIa(アロタイプV158およびF158を含む)およびFcγ RIIIb(アロタイプFcγ RIIIb-NA1およびFcγ RIIIb-NA2を含む)を含むFcγRIII(CD16)、並び にいかなる未発見のヒトFcγR類またはFcγRアイソフォームまたはアロタイプも含まれるが、これらに限定されるものではない。FcγRは、ヒト、マウス、ラット、ウサギおよびサルを含むが、これらに限定されるものではない、いかなる生物由来でもよい。マウスFcγR類には、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)およびFcγRIII-2(CD16-2)、並びにいかなる未発見のマウスFcγR類またはFcγRアイソフォームまたはアロタイプも含まれるが、 )、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)およびFcγRIII-2(CD16-2)、並びにいかなる未発見のマウスFcγR類またはFcγRアイソフォームまたはアロタイプも含まれるが、 これらに限定されない。こうしたFcγ受容体の好適な例としてはヒトFcγI(CD64)、FcγII A(CD32)、FcγIIB(CD32)、FcγIIIA(6)及び/又はFcγIIIB(CD16)が挙げられる。FcγIのポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列はそれぞれ配列番号:13(NM_000566.3)及び14(NP_000557.1)に、FcγIIAのポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列はそれぞれ配列番号:15(BC020823.1)及び16(AAH20823.1)に、FcγIIBのポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列はそれぞれ配列番号:17(BC146678.1)及び18(AAI46679.1)に、FcγI IIAのポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列はそれぞれ配列番号:19(BC033678.1)及び20(AAH33678.1)に、及びFcγIIIBのポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、それぞれ配列番号:21(BC128562.1)及び22(AAI28563.1)に記載されている(カッコ内はRefSeq登録番号を示す)。Fcγ受容体が、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4モノクローナル抗体のFc領域に結合活性を有するか否かは、上記に記載されるFACSやELISAフォーマットのほか、ALPHAス クリーン(AmplifiedLuminescentProximityHomogeneousAssay)や表面プラズモン共鳴(SPR)現象を利用したBIACORE法等によって確認され得る(Proc.Natl.Acad. dLuminescentProximityHomogeneousAssay)や表面プラズモン共鳴(SPR)現象を利用したBIACORE法等によって確認され得る(Proc.Natl.Acad.Sci.USA (2006) 103 (11), 4005-4010)。 【0117】また、「Fcリガンド」または「エフェクターリガンド」は、抗体のFc領域に結合してFc/F cリガンド複合体を形成する、任意の生物に由来する分子、好ましくはポリペプチドを意味する。FcリガンドのFcへの結合は、好ましくは、1つまたはそれ以上のエフェクター機能を誘起する。Fcリガンドには、Fc受容体、FcγR、FcαR、FcεR、FcRn、C1q、C3、マンナン結合レクチン、マンノース受容体、スタフィロコッカスのプロテインA、スタフィロコッカスのタンパク質GおよびウイルスのFcγRが含まれるが、これらに限定されない。Fcリガンドには、Fc γRに相同なFc受容体のファミリーであるFc受容体相同体(FcRH)(Davisetal.,(2002)ImmunologicalReviews 190, 123-136)も含まれる。Fcリガンドには、Fcに結合する未発見の分子も含まれ得る。 【0118】Fcγ受容体に対する結合活性 Fc領域がFcγI、FcγIIA、FcγIIB、FcγIIIA及び/又はFcγIIIBのいずれかのFcγ受容体 に対する結合活性が低下していることは、上記に記載されるFACSやELISAフォーマットのほか、ALPHAスクリーン(AmplifiedLuminescentProximityHomogeneousAssay)や表面プラズモン共鳴(SPR)現象を利用したBIACORE法等によって確認するこ PHAスクリーン(AmplifiedLuminescentProximityHomogeneousAssay)や表面プラズモン共鳴(SPR)現象を利用したBIACORE法等によって確認することができる(Proc.Natl.Acad.Sci.USA (2006) 103 (11), 4005-4010)。 【0122】 本明細書において、Fcγ受容体に対する結合活性が低下しているとは、例えば、上記の解析方法に基づいて、対照とするポリペプチド会合体の競合活性に比較して被検ポリペプチド会合体の競合活性が、50%以下、好ましくは45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、20%以下、15%以下、特に好ましくは10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下の結合活性を示すことをいう。 【0123】対照とするポリペプチド会合体としては、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4モノクローナル抗体のFc領域を有するポリペプチド会合体が適宜使用され得る。当該Fc領域の構造は、配列番号:23(RefSeq登録番号AAC82527.1のN末にA付加)、24(RefSeq登録番号.1のN末にA付加)、25(RefSeq登録番号CAA27268.1のN末にA付加)、26(RefSeq登録番号AAB59394.1 のN末にA付加)に記載されている。また、ある特定のアイソタイプの抗体のFc領域の変異体を有するポリペプチド会合体を被検物質として使用する場合には、当該特定のアイソタイプの抗体のFc領域を有するポリペプチド会合体を対照として用いることによって、当該変異体が有する変異によるFcγ受容体への結合活性に対する効果が検証される。上記のようにして、Fcγ受容体に対する結合活性が 体のFc領域を有するポリペプチド会合体を対照として用いることによって、当該変異体が有する変異によるFcγ受容体への結合活性に対する効果が検証される。上記のようにして、Fcγ受容体に対する結合活性が低下していることが検証されたFc領域の変異体を有するポリペプチド 会合体が適宜作製される。 【0124】このような変異体の例としては、EUナンバリングに従って特定されるアミノ酸である1A-238Sの欠失(WO 2009/011941)、C226S, C229S, P238S, (C220S)(J.Rheumatol (2007) 34,1)、C226S, C229S(Hum.Antibod.Hybridomas (1990) 1(1), 47-54)、C226S, C229S, E233 P, L234V, L235A(Blood (2007) 109, 1185-1192)等の変異体が公知である。 【0125】すなわち、特定のアイソタイプの抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される下記のいずれかのアミノ酸;220位、226位、229位、231位、232位、233位、234位、235位、236位、237位、238位、239位、240位、264位、265位、266位、267位、269位、270位、295位、296位、297位、298位、299位、300位、325位、327位、328位、329位、3 30位、331位、332位が置換されているFc領域を有するポリペプチド会合体が好適に挙げられる。Fc領域の起源である抗体のアイソタイプとしては特に限定されず、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4モノクローナル抗体を起源とするFc領域が適宜利用され得るが、IgG1抗体を起源とするFc る。Fc領域の起源である抗体のアイソタイプとしては特に限定されず、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4モノクローナル抗体を起源とするFc領域が適宜利用され得るが、IgG1抗体を起源とするFc領域が好適に利用される。 【0126】 例えば、IgG1抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される下記のいずれかの置換(数字がEUナンバリングに従って特定されるアミノ酸残基の位置、数字の前に位置する一文字のアミノ酸記号が置換前のアミノ酸残基、数字の後に位置する一文字のアミノ酸記号が置換前のアミノ酸残基をそれぞれ表す);(a)L234F、L235E、P331S、 (b)C226S、C229S、P238S、(c)C226S、C229S、(d)C226S、C229S、E233P、L234V、L235Aが施されているFc領域、又は、231位から238位のアミノ酸配列が欠失したFc領域を有するポリペプチド会合体も適宜使用され得る。 【0127】また、IgG2抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される下記のいずれかの置換(数字がEUナンバリングに従って特定されるアミノ酸残基の位置、数字の前に位置する一文字のアミノ酸記号が置換前のアミノ酸残基、数字の後に位置する一文字のアミノ酸記号が置換前のアミノ酸残基をそれぞれ表す); (e)H268Q、V309L、A330S、P331S (f)V234A(g)G237A(h)V234A、G237A(i)A235E、G237A(j)V234A、A235E、G237A が施されているFc領域を有するポリペプチド会合体も適宜使用され得る。 【0128】また、IgG3抗体のF A(i)A235E、G237A(j)V234A、A235E、G237A が施されているFc領域を有するポリペプチド会合体も適宜使用され得る。 【0128】また、IgG3抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される下記のいずれかの置換(数字がEUナンバリングに従って特定されるアミノ酸残基の位置、数字の前に位置する一文字のアミノ酸記号が置換前のアミノ酸残基、数字の後に位置する一文字の アミノ酸記号が置換前のアミノ酸残基をそれぞれ表す);(k)F241A(l)D265A(m)V264Aが施されているFc領域を有するポリペプチド会合体も適宜使用され得る。 【0129】また、IgG4抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される下記のいずれかの置換(数字がEUナンバリングに従って特定されるアミノ酸残基の位置、数字の前に位置する一文字のアミノ酸記号が置換前のアミノ酸残基、数字の後に位置する一文字のアミノ酸記号が置換前のアミノ酸残基をそれぞれ表す); (n)L235A、G237A、E318A(o)L235E(p)F234A、L235Aが施されているFc領域を有するポリペプチド会合体も適宜使用され得る。 【0130】 その他の好ましい例として、IgG1抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリン グに従って特定される下記のいずれかのアミノ酸;233位、234位、235位、236位、位、327位、330位、331位が、対応するIgG2またはIgG4においてそのEUナンバリングが対応するアミノ酸に置換されているFc領域を有するポリペプチド会合体が挙げられる。 【0131】その他の好ましい例として 331位が、対応するIgG2またはIgG4においてそのEUナンバリングが対応するアミノ酸に置換されているFc領域を有するポリペプチド会合体が挙げられる。 【0131】その他の好ましい例として、IgG1抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリン グに従って特定される下記のいずれか一つ又はそれ以上のアミノ酸;234位、235位、297位が他のアミノ酸によって置換されているFc領域を有するポリペプチド会合体が好適に挙げられる。置換後に存在するアミノ酸の種類は特に限定されないが、234位、235位、7位のいずれか一つ又はそれ以上のアミノ酸がアラニンに置換されているFc領域を有するポリペプチド会合体が特に好ましい。 【0132】その他の好ましい例として、IgG1抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される下記のいずれかのアミノ酸;265位が他のアミノ酸によって置換されているFc領域を有するポリペプチド会合体が好適に挙げられる。置換後に存在するアミノ酸の種類は特に限定されないが、265位のアミノ酸がアラニンに置換されているFc領域を有するポリ ペプチド会合体が特に好ましい。 【0133】二重特異性抗体を起源とするFc領域本明細書において、Fcγ受容体に対する結合活性が低下しているFc領域としては、二重特異性抗体(bispecific抗体)を起源とするFc領域も適宜使用される。二重特異性抗体とは、二 つの異なる特異性を有する抗体である。IgG型の二重特異性抗体はIgG抗体を産生するハイブリドーマ二種を融合することによって生じるhybridhybridoma(quadroma)によって分泌させることが出来る(MilsteinCetal.Nature (1983) 生するハイブリドーマ二種を融合することによって生じるhybridhybridoma(quadroma)によって分泌させることが出来る(MilsteinCetal.Nature (1983) 305, 537-540)。 【0134】また、IgG型の二重特異性抗体は目的の二種のIgGを構成するL鎖及びH鎖の遺伝子、合計四 種の遺伝子を細胞に導入しそれらを共発現させることによって分泌される。しかし、これらの 方法で産生されるIgGのH鎖とL鎖の組合せは理論上10通りにもなる。10種類のIgGから目的の組み合わせのH鎖L鎖からなるIgGを精製することは困難である。さらに目的の組み合わせのものの分泌量も理論上著しく低下するため、大きな培養規模が必要になり、製造上のコストはさらに増大する。 【0135】 この際H鎖のFc領域を構成するCH3領域に適当なアミノ酸置換を施すことによってH鎖についてヘテロな組合せのIgGが優先的に分泌され得る。具体的には、一方のH鎖のCH3領域に存在するアミノ酸側鎖をより大きい側鎖(knob(「突起」の意))に置換し、もう一方のH鎖のCH3領域に存在するアミノ酸側鎖をより小さい側鎖(hole(「空隙」の意))に置換することにより突起が空隙内に配置され得るようにして異種H鎖形成の促進および同種H鎖形成の阻害を引き 起こす方法である(WO1996/027011、RidgwayJBetal., ProteinEngineering (1996) 9,617-621、MerchantAMetal. NatureBiotechnology (1998) 16,677-681)。 【0137】また、ポリペプチドの会合、またはポリペプチドによって構成される異種多量体の会 AMetal. NatureBiotechnology (1998) 16,677-681)。 【0137】また、ポリペプチドの会合、またはポリペプチドによって構成される異種多量体の会合の制御方法を、Fc領域を構成する二つのポリペプチドの会合に利用することによって二重特異性抗 体を作製する技術も知られている。即ち、Fc領域を構成する二つのポリペプチド内の界面を形成するアミノ酸残基を改変することによって、同一配列を有するFc領域を構成するポリペプチドの会合が阻害され、配列の異なる二つのFc領域を構成するポリペプチド会合体が形成されるように制御する方法が二重特異性抗体の作製に採用され得る(WO2006/106905)。 【0138】 本発明にかかるFc領域を含むドメインとしては、上記の二重特異性抗体を起源とするFc領域を構成する二つのポリペプチドが適宜使用され得る。より具体的には、Fc領域を構成する二つのポリペプチドであって、その一方のポリペプチドのアミノ酸配列のうちEUナンバリングに従って特定される349位のアミノ酸がシステイン、366位のアミノ酸がトリプトファンであり、他方のポリペプチドのアミノ酸配列のうちEUナンバリングに従って特定される356位のアミノ 酸がシステイン、366位のアミノ酸がセリンに、368位のアミノ酸がアラニンに、407位のアミ ノ酸がバリンであることを特徴とする、二つのポリペプチドが好適に用いられる。 【0145】C末端のヘテロジェニティーが改善されたFc領域本明細書において、Fcγ受容体に対する結合活性が低下しているFc領域として、上記の特徴に加えてFc領域のC末端のヘテロジェニティーが改善されたFc領域が適宜使用され得る。より 具体的には、IgG1、IgG いて、Fcγ受容体に対する結合活性が低下しているFc領域として、上記の特徴に加えてFc領域のC末端のヘテロジェニティーが改善されたFc領域が適宜使用され得る。より 具体的には、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4を起源とするFc領域を構成する二つのポリペプチドのアミノ酸配列のうちEUナンバリングに従って特定される446位のグリシン、及び447位のリジンが欠失したFc領域が提供される。 【0146】T細胞受容体複合体結合ドメイン 本明細書において、「T細胞受容体複合体結合ドメイン」とは、T細胞受容体複合体の一部または全部に特異的に結合し且つ相補的である領域を含んで成るT細胞受容体複合体抗体の部分をいう。T細胞受容体複合体は、T細胞受容体自身でもよいし、T細胞受容体とともにT細胞受容体複合体を構成するアダプター分子でもよい。アダプターとして好適なものはCD3である。 【0147】 T細胞受容体結合ドメイン本明細書において、「T細胞受容体結合ドメイン」とは、T細胞受容体の一部または全部に特異的に結合し且つ相補的である領域を含んでなるT細胞受容体抗体の部分をいう。 【0148】T細胞受容体としては、可変領域でもよいし、定常領域でもよいが、好ましいCD3結合ドメイ ンが結合するエピトープは定常領域に存在するエピトープである。定常領域の配列として、例えばRefSeq登録番号CAA26636.1のT細胞受容体α鎖(配列番号:67)、RefSeq登録番号C25777のT細胞受容体β鎖(配列番号:68)、RefSeq登録番号A26659のT細胞受容体γ1鎖(配列番号:69)、RefSeq登録番号AAB63312.1のT細胞受容体γ2鎖(配列番号:70)、RefSeq登録番号AAA61033.1のT細胞受容体δ 登録番号A26659のT細胞受容体γ1鎖(配列番号:69)、RefSeq登録番号AAB63312.1のT細胞受容体γ2鎖(配列番号:70)、RefSeq登録番号AAA61033.1のT細胞受容体δ鎖(配列番号:71)の配列を挙げることができる。 【0149】 CD3結合ドメイン本明細書において「CD3結合ドメイン」とは、CD3の一部または全部に特異的に結合し且つ相補的である領域を含んで成るCD3抗体の部分をいう。CD3結合ドメインは一または複数の抗体の可変ドメインより提供され得る。好ましくは、CD3結合ドメインはCD3抗体の軽鎖可変領域(VL)とCD3抗体の重鎖可変領域(VH)とを含む。こうしたCD3結合ドメインの例としては、「sc Fv(singlechainFv)」、「単鎖抗体(singlechainantibody)」、「Fv」、「scFv2(singlechainFv 2)」、「Fab」または「F(ab')2」等が好適に挙げられる。 【0150】本発明に係るCD3結合ドメインは、ヒトCD3を構成するγ 鎖、δ 鎖又はε 鎖配列に存在するエピトープであればいずれのエピトープに結合するものであり得る。本発明において、好ま しくはヒトCD3複合体のε 鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合するCD3抗体の軽鎖可変領域(VL)とCD3抗体の重鎖可変領域(VH)とを含むCD3結合ドメインが好適に用いられる。こうしたCD3結合ドメインとしては、OKT3抗体(Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1980)7, 4914-4917)や種々の公知のCD3抗体の軽鎖可変領域(VL)とCD3抗体の重鎖可変領域(VH)とを含むCD3結合ドメインが好適に用いられる。また、ヒトCD3を . USA(1980)7, 4914-4917)や種々の公知のCD3抗体の軽鎖可変領域(VL)とCD3抗体の重鎖可変領域(VH)とを含むCD3結合ドメインが好適に用いられる。また、ヒトCD3を構成するγ鎖、δ 鎖又 はε 鎖を前記の方法によって所望の動物に免疫することによって取得された所望の性質を有するCD3抗体を起源とするCD3結合ドメインが適宜使用され得る。CD3結合ドメインの起源となるCD3抗体は前記のとおり適宜ヒト化された抗体やヒト抗体が適宜用いられる。CD3を構成するγ鎖、δ鎖又はε鎖の構造は、そのポリヌクレオチド配列が、配列番号:27(NM_000073.2)、29(NM_000732.4)及び31(NM_000733.3)に、そのポリペプチド配列が、配列番 号:28(NP_000064.1)、30(NP_000723.1)及び32(NP_000724.1)に記載されている(カッコ内はRefSeq登録番号を示す)。 【0165】本発明に係るポリペプチド会合体の別の構造である、抗原結合ドメインおよびT細胞受容体複合体結合ドメインが各々一価のFabである構造の一態様として、 (1)抗原に結合する一価のFab構造の重鎖Fv断片がCH1領域を介して前記Fc領域を構成する 一方のポリペプチドに連結され、当該Fab構造の軽鎖Fv断片がCL領域と連結された抗原結合ドメイン、及び、(2)T細胞受容体複合体に結合する一価のFab構造の重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fab構造の軽鎖Fv断片がCL領域と連結されたT細胞受容体複合体結合ドメイン、 を含み、抗原結合ドメイン中の重鎖Fv断片と抗原結合ドメイン中の軽鎖Fv断片またはT細胞受容体結合ドメイ 、当該Fab構造の軽鎖Fv断片がCL領域と連結されたT細胞受容体複合体結合ドメイン、 を含み、抗原結合ドメイン中の重鎖Fv断片と抗原結合ドメイン中の軽鎖Fv断片またはT細胞受容体結合ドメイン中の重鎖Fv断片とT細胞受容体結合ドメイン中の軽鎖Fv断片が会合するようにCH1領域とCL領域の電荷が制御されているポリペプチドが好適に挙げられる。本態様においては、抗原結合ドメイン中の重鎖Fv断片と抗原結合ドメイン中の軽鎖Fv断片またはT細胞受容体結合ドメイン中の重鎖Fv断片とT細胞受容体結合ドメイン中の軽鎖Fv断片が会合するようにC H1領域とCL領域の電荷が制御されていればよく、そのポリペプチド会合体の構造(会合制御構造)は特定の一構造に限定されない。 【0174】CH1領域とCL領域の電荷の制御T細胞受容体結合ドメインの重鎖と軽鎖によりT細胞受容体結合ドメインのエピトープを認識 し、また、抗原結合ドメインの重鎖と軽鎖により抗原のエピトープを認識するような二重特異性ポリペプチド会合体を取得したい場合、当該ポリペプチド会合体の生産に際して4種のそれぞれの鎖を発現させると理論上10種類のポリペプチド会合体分子が生産される可能性がある。 【0175】この場合、例えば、T細胞受容体結合ドメインの重鎖と抗原結合ドメインの軽鎖および/ま たは抗原結合ドメインの重鎖とT細胞受容体結合ドメインの軽鎖の間の会合を阻害するように制御すれば、所望のポリペプチド会合体分子を優先的に取得することが可能である。 【0176】例えば、T細胞受容体結合ドメインの重鎖CH1と抗原結合ドメインの軽鎖CL間の界面を形成するアミノ酸残基を正の電荷を有するアミノ酸残基に改変し、抗原結合ドメインの重鎖CH1とT細 胞受容体結合ドメインの軽 胞受容体結合ドメインの重鎖CH1と抗原結合ドメインの軽鎖CL間の界面を形成するアミノ酸残基を正の電荷を有するアミノ酸残基に改変し、抗原結合ドメインの重鎖CH1とT細 胞受容体結合ドメインの軽鎖CL間の界面を形成するアミノ酸残基を負の電荷を有するアミノ酸 残基に改変する例を挙げることができる。この改変により、目的としないT細胞受容体結合ドメインの重鎖CH1と抗原結合ドメインの軽鎖CLとの会合は界面を形成するアミノ酸残基がどちらも正電荷であるため阻害され、目的としない抗原結合ドメインの重鎖CH1とT細胞受容体結合ドメインの軽鎖CLとの会合は界面を形成するアミノ酸残基がどちらも負電荷であるため阻害される。その結果、目的とするT細胞受容体結合ドメインの重鎖CH1とT細胞受容体結合ドメイン の軽鎖CLとの会合及び目的とする抗原結合ドメインの重鎖CH1と抗原結合ドメインの軽鎖CLとの会合が生じた本発明のポリペプチド会合体が効率的に取得され得る。また、好適には、目的とするT細胞受容体結合ドメインの重鎖とT細胞受容体結合ドメインの軽鎖との会合は、界面を形成するアミノ酸残基が互いに異種の電荷を有するために促進され、目的とする抗原結合ドメインの重鎖と抗原結合ドメインの軽鎖との会合も界面を形成するアミノ酸残基が互いに異種の 電荷を有するため促進される。その結果、目的とする会合が生じた本発明のポリペプチド会合体が効率的に取得され得る。 【0177】また、本発明の会合制御を利用することにより、CH1同士(T細胞受容体結合ドメインの重鎖と抗原結合ドメインの重鎖)、あるいは、CL同士(T細胞受容体結合ドメインの軽鎖と抗原結合 ドメインの軽鎖)の会合を抑制することも可能である。 【0178】当業者であれば、本発明によって会合を 結合ドメインの重鎖)、あるいは、CL同士(T細胞受容体結合ドメインの軽鎖と抗原結合 ドメインの軽鎖)の会合を抑制することも可能である。 【0178】当業者であれば、本発明によって会合を制御したい所望のポリペプチド会合体について、会合した際のCH1とCLの界面において接近するアミノ酸残基の種類を適宜知ることが可能である。 【0179】また、ヒト、サル、マウス及びウサギ等の生物において、抗体のCH1又はCLとして利用可能な配列を、当業者は、公共のデータベース等を利用して適宜取得することができる。より具体的には、後述の実施例に記載の手段にて、CH1又はCLのアミノ酸配列情報が取得され得る。 【0180】 例えば、後述の実施例で示されるように、T細胞受容体結合ドメインまたは抗原結合ドメイ ンを構成するVHおよびVLにそれぞれ連結するCH1とCLが会合する際のCH1とCLの界面において接近(相対または接触)するアミノ酸残基の具体例として、以下の組合せが挙げられる。 ・CH1のEUナンバリング147位(例えば、配列番号:1に記載のアミノ酸配列における位)のリジン(K)と、相対(接触)するCLのEUナンバリング180位のスレオニン(T)・CH1のEUナンバリング147位のリジン(K)と、相対(接触)するCLのEUナンバリング131位の セリン(S)・CH1のEUナンバリング147位のリジン(K)と、相対(接触)するCLのEUナンバリング164位のスレオニン(T)・CH1のEUナンバリング147位のリジン(K)と、相対(接触)するCLのEUナンバリング138位のアスパラギン(N) ・CH1のEUナンバリング147位のリジン(K)と、相対(接触)するCLのEUナンバリング123位のグルタミ (K)と、相対(接触)するCLのEUナンバリング138位のアスパラギン(N) ・CH1のEUナンバリング147位のリジン(K)と、相対(接触)するCLのEUナンバリング123位のグルタミン酸(E)・CH1のEUナンバリング175位のグルタミン(Q)と、相対(接触)するCLのEUナンバリング160位のグルタミン(Q)・CH1のEUナンバリング213位のリジン(K)と、相対(接触)するCLのEUナンバリング123位の グルタミン酸(E)なお、これら部位のナンバリングについては、Kabatらの文献(KabatEAetal. 1991.SequenceofProteinsofImmunologicalInterest. NIH)を参考にしている。また、本発明におけるEUナンバリングとして記載された番号は、EUnumbering(Sequencesofproteinsofimmunologicalinterest, NIHPublicationNo.91-3242)にしたがって記載したものである。 なお本発明において、「EUナンバリングX位のアミノ酸残基」、「EUナンバリングX位のアミノ酸」(Xは任意の数)は、「EUナンバリングX位に相当するアミノ酸残基」、「EUナンバリングX位に相当するアミノ酸」と読みかえることも可能である。 【0181】後述の実施例で示すように、これらアミノ酸残基を改変し、本発明の方法を実施することに より、所望のポリペプチド会合体が優先的に取得され得る。 【0182】これらアミノ酸残基は、ヒトおよびマウスにおいて高度に保存されていることが知られている(J. Mol. Recognit. (2003) 16, 113-120)ことから、 【0182】これらアミノ酸残基は、ヒトおよびマウスにおいて高度に保存されていることが知られている(J. Mol. Recognit. (2003) 16, 113-120)ことから、実施例に示すポリペプチド会合体以外のCH1とCLの会合についても、上記アミノ酸残基に対応するアミノ酸残基を改変することによって、本発明のポリペプチド会合体の定常領域の会合が制御され得る。 【0183】即ち、本発明は、重鎖と軽鎖の会合が制御されたポリペプチド会合体であって、以下の(a)~(f)に示すアミノ酸残基の組からなる群より選択される1組または2組以上のアミノ酸残基が同種の電荷を有するポリペプチド会合体を提供する;(a)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング147位のアミノ酸残基、及びCLに 含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング180位のアミノ酸残基、(b)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング147位のアミノ酸残基、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング131位のアミノ酸残基、(c)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング147位のアミノ酸残基、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング164位のアミノ酸残基、 (d)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング147位のアミノ酸残基、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング138位のアミノ酸残基、(e)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング147位のアミノ酸残基、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング123位のアミノ酸残基、(f)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基、及びCLに 含まれ 酸残基、及びCLに含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング123位のアミノ酸残基、(f)CH1に含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング175位のアミノ酸残基、及びCLに 含まれるアミノ酸残基であってEUナンバリング160位のアミノ酸残基。 【0191】これらアミノ酸残基は、ヒトおよびマウスにおいて高度に保存されていることが知られている(J. Mol. Recognit. (2003) 16, 113-120)ことから、実施例に示すポリペプチド会合体以外のVHとVLの会合についても、上記アミノ酸残基に対応するアミノ酸残基を改変することに よって、抗体の可変領域の会合が制御され得る。 【0201】本発明に係るポリペプチド会合体として、例えば図17、図19および図24に記載される態様が挙げられる。 【実施例】【0219】 以下に実施例により本発明をより詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を制限するものではない。 【0220】〔実施例1〕GPC3 ERY2の作製と検討(1)概容 生体内に投与されたタンパク質の血中半減期を延ばす方法としては、目的タンパク質に抗体のFcドメインを付加し、FcRnを介したリサイクリング機能を利用する方法が良く知られている。しかしこの際、天然型のFcをBiTEに付加すると、一つの分子がBiTE部分の抗CD3 scFvを介してT細胞と結合すると同時に、Fc部分を介してNK細胞、マクロファージなどの細胞膜上のFcgR(Fcγ受容体)と結合することにより、癌抗原非依存的にこれらの細胞を架橋することに よって活性化させ、各種サイトカインの誘導につながる可能性があるものと考えられた。そこで、BiTEにポリペプチドリンカーを介してFcγ ことにより、癌抗原非依存的にこれらの細胞を架橋することに よって活性化させ、各種サイトカインの誘導につながる可能性があるものと考えられた。そこで、BiTEにポリペプチドリンカーを介してFcγ 受容体に対する結合活性が低下しているFc領域(サイレント型Fc)を連結させた分子、ERY2が作製され、この活性をBiTEと比較する検証が行われた。肝臓癌細胞において高発現していることが知られているGPIアンカータンパクであるGlypican 3(GPC3)に対する抗体のscFvとCD3 epsilonに対する抗体のscFvを短いペプチ ドリンカーで連結することによって、GPC3に対するBiTE(GPC3 BiTE)が作製された(図17A)。ついで、これにサイレント型Fcを連結したに対するERY2(GPC3 ERY2)が作製された(図17C)。また、比較として通常のIgG型抗GPC3抗体が作製された。この際、IgG型抗GPC3抗体は、ADCC活性がより増強することが知られている、糖鎖部分においてフコース含量を低減させた抗体、すなわち低フコース型抗体として調製された。 【0221】 (2)GPC3 BiTEの作製抗GPC3抗体の発現ベクターを鋳型として用いることによって、PCR法により増幅されたH鎖可変領域(anti-GPC3 VH)、L鎖可変領域(anti-GPC3 VL)をコードするcDNAがそれぞれ取得された。適切な配列を付加したプライマー及び当該cDNAを鋳型として用いたPCR法により、anti-GPC3 VHとanti-GPC3 VLとがGly・Gly・Gly・Gly・Ser(配列番号:7)を3回繰り返す配 列からなるリンカーによって連結されたアミノ酸配列を有するanti-GPC3 scFvをコードするc ti-GPC3 VLとがGly・Gly・Gly・Gly・Ser(配列番号:7)を3回繰り返す配 列からなるリンカーによって連結されたアミノ酸配列を有するanti-GPC3 scFvをコードするcDNA断片が作製された。 【0222】また、抗CD3抗体(M12)のH鎖可変領域(M12 VH)、及びL鎖可変領域(M12 VL)の部分配列をコードする塩基配列を有し、その末端配列が相補的配列を有する一連のオリゴヌクレオチ ドが作製された。ポリメラーゼ反応によってこれら一連のオリゴヌクレオチドがその相補的配列部分を介して連結され当該H鎖可変領域(M12 VH)、及びL鎖可変領域(VL)に相当するポリヌクレオチドが合成されるように設計された。当該オリゴヌクレオチドが混合された後、PCR法によってこれらのオリゴヌクレオチドが連結され、各可変領域のアミノ酸配列をコードする2つのcDNAが取得された。適切な配列を付加したプライマー及びこれらのcDNAを鋳型として 用いたPCR法により、M12 VLとM12 VHとがGly・Gly・Gly・Gly・Ser(配列番号:7)を3回繰り返す配列からなるリンカーによって連結されたアミノ酸配列を有するM12 scFvをコードするcDNA断片が作製された。 【0223】次に、適切な配列を付加したプライマー及びanti-GPC3 scFvとM12 scFvをそれぞれコード するcDNA断片を鋳型として用いたPCR法により、anti-GPC3 scFvとM12 scFvとがGly・Gly・Gly・Gly・Ser配列(配列番号:7)からなるリンカーによって連結され、かつそのC末端にHisタグ(8個のHis)が付加された(配列番号:33で記載されるアミノ末端のアミノ酸を除く)アミノ酸配列をコードす y・Ser配列(配列番号:7)からなるリンカーによって連結され、かつそのC末端にHisタグ(8個のHis)が付加された(配列番号:33で記載されるアミノ末端のアミノ酸を除く)アミノ酸配列をコードするcDNA断片が作製された。 【0224】 適切な配列を付加したプライマー及び配列番号:33で記載されるアミノ末端の19アミノ酸 を除くアミノ酸配列をコードするcDNA断片を鋳型として用いたPCR法により、当該cDNA断片の5’ 側にEcoRI切断配列、kozac配列、及び分泌シグナル配列をコードする塩基配列が付加され、またその3’ 側にNotI切断配列が付加されたcDNA断片が作製された。このcDNA断片を、EcoRI、NotIで切断し、哺乳動物細胞用発現ベクターに組み込むことによって、GPC3 BiTE(配列番号:33、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない) の発現ベクターを取得した。 【0225】当該ベクターがエレクトロポレーション法によってCHO細胞DG44株へ遺伝子導入された。限界希釈後に1 mg/mLGeneticine存在下で遺伝子導入された細胞を培養することによって薬剤耐性細胞株が単離された。Hisタグに対する抗体を用いて、得られた細胞株の培養上清に対す るウエスタンブロット解析を行なうことにより、GPC3 BiTEを発現する細胞株が選択された。 【0226】前記細胞株を大量に培養することによって得られた培養上清がSPSepharoseFFカラム(GEHealthcare社)に添加された。当該カラムの洗浄後、GPC3 BiTEを含む画分がNaClの濃度勾配によって溶出された。さらに当該画分がHisTrapHPカラム(GEHealthcare社)に添 lthcare社)に添加された。当該カラムの洗浄後、GPC3 BiTEを含む画分がNaClの濃度勾配によって溶出された。さらに当該画分がHisTrapHPカラム(GEHealthcare社)に添加され た。当該カラムの洗浄後、GPC3 BiTEを含む画分がイミダゾールの濃度勾配によって溶出された。当該画分が限外ろ過膜で濃縮された後に、濃縮液がSuperdex 200カラム(GEHealthcare社)に添加された。単量体のGPC3 BiTE画分のみを回収することにより精製GPC3 BiTEが得られた。 【0227】 (3)GPC3 ERY2の作製上記した方法と同様の適切な配列が付加されたプライマーを用いたPCR法、およびQuikChangeSite-DirectedMutagenesisKit(Stratagene社)を用いた方法等の当業者において公知の方法によって、GPC3 ERY2_Hk(配列番号:34、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、およびGPC3 ERY2_Hh(配列番号:35、シグナル配列で あるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)をそれぞれコードするポリヌクレオ チドが挿入された発現ベクターが作製された。 【0228】これらの発現ベクターがFreeStyle293-F細胞(Invitrogen社)に共に導入され、一過性にGPC3 ERY2が発現させた。得られた培養上清がAntiFLAGM2カラム(Sigma社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、0.1 mg/mLFLAGペプチド(Sigma社)による溶出が実施された。GPC3 E RY2を含む画分がHisTrapHPカラム(GEHealthcare社)に添加され、当 ムの洗浄の後、0.1 mg/mLFLAGペプチド(Sigma社)による溶出が実施された。GPC3 E RY2を含む画分がHisTrapHPカラム(GEHealthcare社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、イミダゾールの濃度勾配による溶出が実施された。GPC3 ERY2を含む画分が限外ろ過膜で濃縮された後、濃縮液がSuperdex 200カラム(GEHealthcare社)に添加され、その溶出液の単量体のGPC3 ERY2画分のみを回収することにより精製GPC3 ERY2が得られた。 【0229】 (4)低フコース型抗GPC3抗体の作製抗GPC3抗体(WO2006/006693においてヒト化GC33抗体として記載されている)の発現ベクターがエレクトロポレーション法によってGDPフコースノックアウトCHO細胞DXB11株(CancerSci. (2010) 101(10), 2227-33)に遺伝子導入された。限界希釈後に0.5 mg/mLGeneticine存在下で培養することにより薬剤耐性株が選択され、低フコース型抗GPC3抗体発現株が得ら れた。この細胞を培養して調製した培養上清より、Hitrap(R) ProteinA(Pharmacia社)を用いた通常のアフィニティー精製により抗体画分が調製された。次に当該抗体画分がSuperdex20026/60(Pharmacia社)を用いたゲルろ過精製に供され、溶出液のモノマー画分を分取することによって低フコース型GPC3抗体が得られた。 【0230】 (5)ヒト末梢血単核球を用いた細胞傷害活性の測定(5-1)ヒト末梢血単核球(PBMC)溶液の調製1,000単位/mLのヘパリン溶液(ノボ・ヘパリン注5千単位,ノボ・ノルディスク社)をあらか (5)ヒト末梢血単核球を用いた細胞傷害活性の測定(5-1)ヒト末梢血単核球(PBMC)溶液の調製1,000単位/mLのヘパリン溶液(ノボ・ヘパリン注5千単位,ノボ・ノルディスク社)をあらかじめ100μ L注入した注射器を用い、健常人ボランティア(成人)より末梢血50 mLが採取された。PBS(-)で2倍希釈した後に4等分された末梢血が、15 mLのFicoll-PaquePLUSをあら かじめ注入して遠心操作が行なわれたLeucosepリンパ球分離管(290、Greinerbio-one社) に加えられた。当該分離管の遠心分離(2,150 rpm、10分間、室温)の後、単核球画分層が分取された。10%FBSを含むDulbecco’ sModifiedEagle’ sMedium(SIGMA社、以下10%FBS/D-MEM)で1回単核球画分の細胞が洗浄された後、当該細胞は10%FBS/D-MEMを用いてその細胞密度が4×106 /mLに調製された。このように調製された細胞溶液がヒトPBMC溶液として以後の試験に用いられた。 【0231】(5-2)細胞傷害活性の測定細胞傷害活性はxCELLigenceリアルタイムセルアナライザー(ロシュ・ダイアグノスティックス社)を用いた細胞増殖抑制率で評価された。標的細胞にはSK-HEP-1細胞株にヒトGPC3を強制発現させて樹立したSK-pca13a細胞株が用いられた。SK-pca13aをディッシュから剥離 し、1×104 cells/wellとなるようにE-Plate 96(ロシュ・ダイアグノスティックス社)プレートに100μL/wellで播き、xCELLigenceリアルタイムセルアナライザーを用いて生細胞の測定が開始された。翌日xCELLigenceリ te 96(ロシュ・ダイアグノスティックス社)プレートに100μL/wellで播き、xCELLigenceリアルタイムセルアナライザーを用いて生細胞の測定が開始された。翌日xCELLigenceリアルタイムセルアナライザーからプレートを取り出し、当該プレートに各濃度(0.004、0.04、0.4、4 nM)に調製した各抗体50μ Lが添加された。室温にて15分間反応させた後に(5-1)で調製されたヒトPBMC溶液50μL(2×105 cell s/well)が加えられ、xCELLigenceリアルタイムセルアナライザーに当該プレートを再セットすることによって、生細胞の測定が開始された。反応は5%炭酸ガス、37℃ 条件下にて行われ、ヒトPBMC添加72時間後のCellIndex値から、下式により細胞増殖抑制率(%)が求められた。なお計算に用いたCellIndex値は、抗体添加直前のCellIndex値が1となるようにノーマライズした後の数値が用いられた。 【0232】細胞増殖抑制率(%)=(A-B)×100/(A-1)【0233】Aは抗体を添加していないウェルにおけるCellIndex値の平均値(標的細胞とヒトPBMCのみ)、Bは各ウェルにおけるCellIndex値の平均値を示す。試験はtriplicateにて行なわれ た。 【0234】ヒト血液より調製したPBMC(PeripheralBloodMononuclearCell)をエフェクター細胞としてGPC3 BiTE、GPC3 ERY2、およびIgG型GPC3抗体の細胞傷害活性を測定したところ、GPC3 BiTEには極めて強い活性が認められた(図1)。この活性は低フコース型抗抗体よりもはるかに強いもので iTE、GPC3 ERY2、およびIgG型GPC3抗体の細胞傷害活性を測定したところ、GPC3 BiTEには極めて強い活性が認められた(図1)。この活性は低フコース型抗抗体よりもはるかに強いものであり、GPC3 BiTEはIgG型抗体を凌駕する優れた癌治療薬となり得るものと考え られた。一方、GPC3 ERY2にはIgG型抗GPC3抗体を上回る活性が見られたものの、GPC3 BiTEの活性には及ばなかった。このことより、単にFcをBiTEに付加するだけでは目的とする分子を創製することができないものと考えられた。 【0235】〔実施例2〕GPC3 ERY5、GPC3 ERY6、GPC3 ERY7の作製と検討 次に、癌抗原(GPC3)への結合ドメインを2価にすることにより、より癌細胞に対する結合活性を高めることで比活性を向上させることを試みた。GPC3 ERY2にさらにGPC3に対するscFvをもう一つ付加した形のGPC3 ERY5(図17D)、付加するGPC3に対する結合ドメインをscFvではなくFabの形にしたGPC3 ERY7(図17F)がそれぞれ作製された。また、GPC3 ERY5のCD3epsilonに対するscFvを両腕に分離した形のGPC3 ERY6(図17E)も作製された。 【0236】すなわち、上記した方法と同様の適切な配列が付加されたプライマーを用いたPCR法等の当業者において公知の方法により、GPC3 ERY5_Hh、GPC3 ERY6_Hk、GPC3 ERY6_Hh、ERY7_Hh、GPC3 ERY7_Lをそれぞれコードするポリヌクレオチドが挿入された一連の発現ベクターが作製された。 【0237】以下に示す組み合わせの発現ベクターがFreeStyle293-F細胞に導入され、 Y7_Lをそれぞれコードするポリヌクレオチドが挿入された一連の発現ベクターが作製された。 【0237】以下に示す組み合わせの発現ベクターがFreeStyle293-F細胞に導入され、各目的分子を一過性に発現させた。 【0238】A.目的分子:GPCERY5 発現ベクターに挿入されたポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド:GPC3 ERY5 _Hh(配列番号:36、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY2_Hk【0239】B.目的分子:GPCERY6発現ベクターに挿入されたポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド:GPC3 ERY6 _Hk(配列番号:37、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY6_Hh(配列番号:38、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)【0240】C.目的分子:GPCERY7 発現ベクターに挿入されたポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド:GPC3 ERY7_Hh(配列番号:39、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY7_L(配列番号:40、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY2_Hk【0241】 得られた培養上清がAntiFLAGM2カラム(Sigma社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、0.1 mg/mLFLAGペプチド(Sigma社)による溶出が行われた。目的分子を含む画分がHisTrapHPカラム(GEHealthcare社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、イミダゾールの濃度 mg/mLFLAGペプチド(Sigma社)による溶出が行われた。目的分子を含む画分がHisTrapHPカラム(GEHealthcare社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、イミダゾールの濃度勾配による溶出が実施された。目的分子を含む画分が限外ろ過膜で濃縮された後、当該画分がSuperdex 200カラム(GEHealthcare社)に添加され、溶出液の単量体画分のみを回収することに より精製された各目的分子が得られた。 【0242】これらのポリペプチド会合体とGPC3 BiTEとの細胞傷害活性の比較が行なわれた。その結果、これらのポリペプチド会合体の細胞傷害活性はいずれもGPC3 BiTEの活性に及ばないことが明らかとなった(図2~4)。このことから、BiTEの構造、あるいはそれを模倣した構造に Fcを付加し、さらに癌抗原に対して2価で結合する構成のみでは目的とする分子を創製するこ とができないものと考えられた。 【0243】〔実施例3〕GPC3 ERY8-2、GPC3 ERY9-1、GPC3 ERY10-1の作製と検討(1)GPC3 ERY8-2、GPC3 ERY9-1、GPC3 ERY10-1の作製次に、BiTEの構造を持たずに目的の活性を持つ分子の創製が試みられた。癌抗原(GPC3) に対するIgGを基本骨格とし、これにCD3 epsilonに対するscFvを付加した形の分子が作製された。この際、基本骨格とするIgGのFcとしては、上述した場合と同様に、FcgR(Fcγ 受容体)への結合性が減弱されたサイレント型Fcが用いられた。CD3 epsilonに対するscFvが抗GPC3抗体IgGのH鎖のN末に付加されたGPC3 ERY8-2(図17G)、H鎖のC末に付加されたGPC3 ER が減弱されたサイレント型Fcが用いられた。CD3 epsilonに対するscFvが抗GPC3抗体IgGのH鎖のN末に付加されたGPC3 ERY8-2(図17G)、H鎖のC末に付加されたGPC3 ERY10-1(図17I)、L鎖のC末に付加されたGPC3 ERY9-1(図17H)がそれぞれ作製された。 【0244】すなわち、上記した方法と同様の適切な配列を付加したプライマーを用いたPCR法等の当業者において公知の方法により、GPC3 ERY8-2_Hk(配列番号:41、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY8-2_Hh(配列番号:42、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY9-1_H(配列 番号:43、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3ERY9-1_ L-His(配列番号:44、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY9-1_ L-FLAG(配列番号:45、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY10-1_Hh(配列番号:46、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)をそれぞれコードするポリヌク レオチドが挿入された一連の発現ベクターが作製された。 【0245】以下に示す組み合わせの発現ベクターがFreeStyle293-F細胞に導入され、各目的分子を一過性に発現させた。 【0246】 D.目的分子:GPC3 ERY8-2 発現ベクターに挿入されたポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド:GPC3 ERY8-2_Hk(配列番号:41、 【0246】 D.目的分子:GPC3 ERY8-2 発現ベクターに挿入されたポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド:GPC3 ERY8-2_Hk(配列番号:41、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY8-2_Hh(配列番号:42、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY7_L【0247】 E.目的分子:GPCERY9-1発現ベクターに挿入されたポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド:GPC3 ERY9-1_H(配列番号:43、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY9-1_L-His(配列番号:44、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY9-1_L-FLAG(配列番号:45、シグナル配列であるア ミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)【0248】F.目的分子:GPC3 ERY10-1発現ベクターに挿入されたポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド:GPC3 ERY10-1_Hh(配列番号:46、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれ ない)、GPC3 ERY8-2_Hk、GPC3 ERY7_L【0249】得られた培養上清がAntiFLAGM2カラム(Sigma社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、0.1 mg/mLFLAGペプチド(Sigma社)による溶出が実施された。目的分子を含む画分がHisTrapHPカラム(GEHealthcare社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、イミダゾールの濃度勾 配による溶出が実施された。目 社)による溶出が実施された。目的分子を含む画分がHisTrapHPカラム(GEHealthcare社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、イミダゾールの濃度勾 配による溶出が実施された。目的分子を含む画分が限外ろ過によって濃縮された後、当該画分がSuperdex 200カラム(GEHealthcare社)に添加され、溶出液の単量体画分のみを回収することにより精製された各目的分子が得られた。 【0250】これらの分子についてinvitroの細胞傷害活性を調べたところ、いずれの分子もGPC3 BiTE と同等以上の細胞傷害活性を示すことが明らかとなった(図5)。特に、GPC3 ERY10-1は、 明らかにGPC3 BiTEを上回る細胞傷害活性が認められた。本発明において、癌抗原に対するIgGにCD3 epsilonに対するscFvを付加する分子においてもBiTEと同等以上の細胞傷害活性を持つことが初めて明らかとなった。特に、GPC3 ERY9-1、GPC3 ERY10-1のように癌抗原に対する結合ドメインとCD3 epsilonに対する結合ドメインの距離が大きい分子において、BiTEよりも明らかに強い細胞傷害活性が見られたことは予想外の結果であった。 【0251】(2)GPC3 ERY8-2、及び、GPC3 ERY10-1の invivo薬効の評価:(1)で記載されたinvitroのアッセイでGPC3 BiTEと同等以上の細胞傷害活性が認められたGPC3 ERY8-2、及び、GPC3 ERY10-1のinvivoの薬効の評価が行なわれた。GPC3を発現するヒト肺癌細胞株であるPC-10がヒトPBMCと混合されNODscidマウスに移植された。当該マウス に対してGPC3 ERY8-2 invivoの薬効の評価が行なわれた。GPC3を発現するヒト肺癌細胞株であるPC-10がヒトPBMCと混合されNODscidマウスに移植された。当該マウス に対してGPC3 ERY8-2、あるいはGPC3 ERY10-1の投与による治療が行なわれた(pre-mixモデルと指称される)。 【0252】すなわち、GPC3 ERY8-2のPC-10 pre-mixモデルによる薬効試験においては、下記のような試験が実施された。健常人ボランティアより採取した血液から分離されたPBMCから、CD56 Mi croBeads, human (MCASMiltenyibiotec社)を用いてNK細胞が除去された。ヒト肺扁平上皮がん細胞株PC-10(免疫生物研究所)5×106細胞と、NK細胞が除去されたヒトPBMC 4.5×106細胞、およびマトリゲル基底膜マトリックス(BD社)が混和され、NODscidマウス(日本クレア、雌、7W)のそけい部皮下に移植された。移植の日をday 0とした。マウスには移植前日に抗アシアロGM1抗体(和光純薬)が0.2 mg/匹で腹腔内に投与された。移植2時間後にGPCERY8 -2が30μg/匹で腹腔内投与された。GPCERY8-2の投与がday 0~4までの間、計5回行われた。 【0253】また、GPC3 ERY10-1のPC-10 pre-mixモデルによる薬効試験においては、下記のような試験が実施された。健常人ボランティアより採取した血液から分離されたPBMCから、MicroBeads,human (MACSMiltenyibiotec社)を用いてNK細胞が除去された。ヒト肺扁平上皮がん細胞株 PC-10(免疫生物研究所)5×106 細胞と、NK細胞が除去されたヒトPB human (MACSMiltenyibiotec社)を用いてNK細胞が除去された。ヒト肺扁平上皮がん細胞株 PC-10(免疫生物研究所)5×106 細胞と、NK細胞が除去されたヒトPBMC4.5×106 細胞、およ びマトリゲル基底膜マトリックス(BD社)が混和され、NODscidマウス(日本クレア、雌、7W)のそけい部皮下に移植された。移植の日をday 0とした。マウスには移植前日に抗アシアロGM1抗体(和光純薬)が0.2 mg/匹で腹腔内に投与された。移植2時間後にGPCERY10-1が30μg/匹で腹腔内投与された。GPCERY10-1の投与がday 0~4、day 7~11、day 14~16の間、計13回行われた。 【0254】その結果、GPC3 ERY8-2、あるいはGPC3 ERY10-1投与群においては、コントロールである溶媒(PBS)投与群と比べて明らかに腫瘍の増殖が抑制されることが明らかとなった(図6および7)。 【0255】 また、別のモデルにおいてもGPC3 ERY10-1によるinvivo薬効の評価が行なわれた。すなわち、移植されたPC-10による腫瘍の形成が確認されたNODscidマウスに、invitroでヒトPBMCを培養することにより増殖させたT細胞が移入された。当該マウスに対してERY10-1を投与することによる治療が行なわれた(T細胞移入モデルと指称される)。 【0256】 すなわち、GPC3 ERY10-1のPC-10 T細胞移入モデルによる薬効試験においては、下記のような試験が行われた。健常人ボランティアより採取した血液から分離されたPBMC及びTcellactivation/ expansionkit/ human(MAC る薬効試験においては、下記のような試験が行われた。健常人ボランティアより採取した血液から分離されたPBMC及びTcellactivation/ expansionkit/ human(MACSMiltenyibiotec社)を用いてT細胞の拡大培養が行なわれた。ヒト肺扁平上皮がん細胞株PC-10(免疫生物研究所)1×107細胞と、マトリゲル基底膜マトリックス(BD社)が混和され、NODscidマウス(日本クレア、雌、7W)のそけい 部皮下に移植された。移植の日をday 0とした。マウスには移植前日、およびday 6、8、12、16、20に抗アシアロGM1抗体(和光純薬)が0.2 mg/匹で腹腔内に投与された。移植後6日目に腫瘍サイズと体重に応じて群分けが行なわれた後、前記拡大培養によって得られたT細胞が1×107細胞/匹で腹腔内に移植された。その2時間後から、GPCERY10-1が30 μg/匹で腹腔内投与された。GPCERY10-1の投与はday 7、8、12、16、17に、計5回行われた。 【0257】 その結果、このモデルにおいても、GPC3 ERY10-1投与群においては溶媒投与群に比較して明らかな抗腫瘍作用が認められた(図8)。 【0258】以上のことから、サイレント型Fcを持つIgGを基本骨格とし、これにCD3 epsilonに対する抗体のscFvを一つ付加した形の一連の分子は明らかなinvivoにおける抗腫瘍効果を奏するこ とが示された。 【0259】(3)血漿中滞留性の評価GPC3 ERY8-2、GPC3 ERY9-1、GPC3 ERY10-1等の一連の分子が、GPC3 BiTEに比較して顕著に長い血漿中半減期を有するか否かを検証するために、癌細胞が移植さ の評価GPC3 ERY8-2、GPC3 ERY9-1、GPC3 ERY10-1等の一連の分子が、GPC3 BiTEに比較して顕著に長い血漿中半減期を有するか否かを検証するために、癌細胞が移植されていないNODscid マウスに対して30μg/匹で投与された、GPC3 ERY9-1、GPC3 ERY10-1の血漿中濃度が経時的に測定された。 【0260】すなわち、下記のようなPK解析試験が実施された。NODscidマウス(日本クレア、雌、8W)の腹腔内にGPC3 ERY9-1、GPC3 ERY10-1が30μ g/匹で投与された。投与後、15min、2時 間、1日、2日、7日の各ポイントでマウスの頬静脈よりヘマトクリット毛細管(テルモ)を用いて採血が行われ、その血漿が調製された。 【0261】GPC3を発現させたBa/F3細胞(GPC3/BaF)およびヒトCD3 epsilonを発現させたBa/F3細胞(CD3/BaF)に適宜希釈したGPC3 ERY9-1、GPC3 ERY10-1が加えられ、GPC3 ERY9-1、又は、G PC3 ERY10-1とGPC3/BaF又はCD3/BaFと反応させた。これらの細胞の洗浄の後、FITC標識された2次抗体が加えられ、当該二次抗体をさらに反応させた。当該細胞の洗浄の後、EpicsXLフローサイトメーター(Beckmancoulter社)により当該細胞に標識された蛍光強度が測定され、各抗体についての標準曲線が作成された。 【0262】 GPC3 ERY9-1、GPC3 ERY10-1が投与されたマウスより継時的に採取された血液から調製され た血漿が適宜希釈された。上記の標準曲線の作成の場合と同様に当該血漿とGPC3/BaF、CD3/BaFと GPC3 ERY10-1が投与されたマウスより継時的に採取された血液から調製され た血漿が適宜希釈された。上記の標準曲線の作成の場合と同様に当該血漿とGPC3/BaF、CD3/BaFとを反応させ、血漿中に存在するGPC3 ERY9-1及びGPC3 ERY10-1の各細胞への結合量が測定された。測定された値と前記の標準曲線を用いて、血漿中の各抗体濃度が算出された。 【0263】その結果、GPC3 ERY9-1及びGPC3 ERY10-1はともに、投与後2日後において10 nM以上の血中 濃度を維持していることが明らかとなった(図9および10)。この結果から、ERY9-1及びGPC3 ERY10-1等の一連の分子の血漿中半減期はBiTEに比べて著しく改善されていることが示された。 【0264】(4)癌抗原非依存的サイトカイン誘導におけるサイレントFcの効果 (4-1)FcgR結合型Fcを持つGPC3 ERY15-1の作製GPC3 ERY8-2、GPC3 ERY9-1、GPC3 ERY10-1等の一連の分子が癌抗原非依存的なサイトカインの誘導を起こすか否かを検証するために、FcgR結合型Fcを持つGPC3 ERY15-1(図17J)を作製した。 【0265】 すなわち、上記の方法と同様に、適切な配列を付加したプライマーを用いたPCR法、およびQuikChangeSite-DirectedMutagenesisKit(Stratagene社)を用いた方法等の当業者にとって公知の方法により、GPC3 ERY15-1_Hh(配列番号:47、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY15-1_Hk(配列番号:48、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成 RY15-1_Hh(配列番号:47、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY15-1_Hk(配列番号:48、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)をそれぞれコードするポリヌ クレオチドが挿入された発現ベクターが作製された。 【0266】GPC3 ERY15-1_Hh(配列番号:47、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY15-1_Hk(配列番号:48、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、およびGPC3 ERY7_Lの発現ベクターが共にFreeStyl e293-F細胞に導入され、GPC3 ERY15-1を一過性に発現させた。得られた培養上清がAntiFLAG M2カラム(Sigma社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、0.1 mg/mLFLAGペプチド(Sigma社)による溶出が実施された。GPC3 ERY15-1を含む画分がHisTrapHPカラム(GEHealthcare社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、イミダゾールの濃度勾配による溶出が実施された。 GPC3 ERY15-1を含む画分が限外ろ過によって濃縮された後、当該画分がSuperdex 200カラム(GEHealthcare社)に添加され、溶出液の単量体のERY15-1画分のみを回収することにより 精製GPC3 ERY15-1が得られた。 【0267】(4-2)癌抗原非依存的なサイトカイン誘導能の測定GPC3 ERY15-1の癌抗原非依存的なサイトカイン誘導能が、GPC3 BiTE、GPC3 ERY9-1、GPC3ERY10-1、及びcatumaxomabのそれと比較された。健 導能の測定GPC3 ERY15-1の癌抗原非依存的なサイトカイン誘導能が、GPC3 BiTE、GPC3 ERY9-1、GPC3ERY10-1、及びcatumaxomabのそれと比較された。健常人ボランティアから採取した血液より 上記の方法によりPBMCが調製された。ヒトPBMC溶液50 μL(2×105 細胞/ウェル)に、40 nMに調製された各抗体50μLが添加され、更に100μLの10%FBS/D-MEMが加えられた。反応液は5%炭酸ガス、37℃ 条件下にて培養された。72時間の培養の後に、培養上清が回収され、HumanTh1/Th2/Th17 Kit(BD社)を用いたCytometricBeadsArray(CBA)法にて培養上清中に分泌されたサイトカインが定量された。添付プロトコールに従った測定方法による試験はtripli cateにて行われた。 【0268】その結果、FcgR結合型Fcを持つGPC3 ERY15-1、catumaxomabには明らかなサイトカイン誘導が認められたのに対して、Fcを持たないGPC3 BiTE、及びサイレント型Fcを持つERY9-1、GPC3ERY10-1ではサイトカイン誘導が認められなかった(図11)。よって、サイレント型Fcを 持つGPC3 ERY8-2、GPC3 ERY9-1、GPC3 ERY10-1等の一連の分子は癌抗原非依存的なサイトカイン誘導を起こさず、非常に高い安全性を持つ分子であるものと考えられた。 【0269】〔実施例4〕GPC3 ERY18 L1、L2、L3、L4、S1の作製と検討scFv構造と異なるCD3結合ドメインを持つ分子の検討が行われた。癌抗原(GPC3)に対する IgGの2本のH鎖のC末端にそれぞれCD3抗体のVH領域、VL 、L3、L4、S1の作製と検討scFv構造と異なるCD3結合ドメインを持つ分子の検討が行われた。癌抗原(GPC3)に対する IgGの2本のH鎖のC末端にそれぞれCD3抗体のVH領域、VL領域を結合した分子型であるGPC3 ERY 18(図17K)が作製された。この際、間のリンカー(Gly・Gly・Gly・Gly・Ser)の個数を1個~4個に変えた一連の分子(GPC3 ERY18 L1~L4)が作製された。また、適切な部位のアミノ酸をCysに置換してジスルフィド結合を導入することを可能とする分子(GPC3 ERY18 S1)も同時に作製された。 【0270】 すなわち、上記の方法と同様に適切な配列を付加したプライマーを用いたPCR法等の当業者にとって公知の方法により、GPC3 ERY18 L1_Hh(配列番号:49、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY18 L1_Hk(配列番号:50、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY18 L2_Hh(配列番号:51、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれな い)、GPC3 ERY18 L2_Hk(配列番号:52、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY18 L3_Hh(配列番号:53、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY18 L3_Hk(配列番号:54、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY18 L4_Hh(配列番号:55、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれな い)、GPC3 ERY1 るアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY18 L4_Hh(配列番号:55、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれな い)、GPC3 ERY18 L4_Hk(配列番号:56、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY18 S1_Hh(配列番号:57、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY18 S1_Hk(配列番号:58、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)をそれぞれコードするポリヌクレオチドが挿入された一連の発現ベクターが作製された。 【0271】以下に示す組み合わせの発現ベクターがFreeStyle293-F細胞に導入され、各目的分子を一過性に発現させた。 【0272】G.目的分子:GPC3 ERY18 L1 発現ベクター:GPC3 ERY18 L1_Hh(配列番号:49、シグナル配列であるアミノ末端19 アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY18 L1_Hk(配列番号:50、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、及びGPC3 ERY7 L【0273】H.目的分子:GPC3 ERY18 L2発現ベクター:GPC3 ERY18 L2_Hh(配列番号:51、シグナル配列であるアミノ末端19 アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY18 L2_Hk(配列番号:52、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、及びGPC3 ERY7 L【0274】I.目的分子:GPC3 ERY18 L3発現ベクター:GPC3 ERY18 L3_Hh( 列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、及びGPC3 ERY7 L【0274】I.目的分子:GPC3 ERY18 L3発現ベクター:GPC3 ERY18 L3_Hh(配列番号:53、シグナル配列であるアミノ末端19 アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY18 L3_Hk(配列番号:54、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、及びGPC3 ERY7 L【0275】J.目的分子:GPC3 ERY18 L4発現ベクター:GPC3 ERY18 L4_Hh(配列番号:55、シグナル配列であるアミノ末端19 アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY18 L4_Hk(配列番号:56、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、及びGPC3 ERY7 L【0276】K.目的分子:GPC3 ERY18 S1発現ベクター:GPC3 ERY18 S1_Hh(配列番号:57、シグナル配列であるアミノ末端19 アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY18 S1_Hk(配列番号:58、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、及びGPC3 ERY7 L【0277】得られた培養上清がAntiFLAGM2カラム(Sigma社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、0.1 mg/mLFLAGペプチド(Sigma社)による溶出が実施された。目的分子を含む画分がHisTra pHPカラム(GEHealthcare社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、イミダゾールの濃度勾 配による溶出が実施された。目的分子を含む画分が限外ろ過によって濃縮された後、当該画分がSupe ム(GEHealthcare社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、イミダゾールの濃度勾 配による溶出が実施された。目的分子を含む画分が限外ろ過によって濃縮された後、当該画分がSuperdex 200カラム(GEHealthcare社)に添加され、溶出液の単量体画分のみを回収することにより精製された各目的分子が得られた。 【0278】GPC3 ERY18 L1、GPC3 ERY18L2、GPC3 ERY18L3、GPC3 ERY18L4、GPC3 ERY18S1の各分子のi nvitroの細胞傷害活性が評価された(図12および13)。その結果、GPC3 ERY18 L1を除くいずれの分子もGPC3 ERY10-1と同等の活性を有することが見出された。scFvではない構造を有する分子が同等の細胞傷害活性を有することが示された。癌抗原(GPC3)に対するIgGの2本のH鎖のC末端にそれぞれCD3抗体のVH領域、VL領域を結合した構造による、本願発明に係るポリペプチド会合体分子の安定化への貢献が期待される。 【0279】〔実施例5〕GPC3 ERY19-3の作製と検討次に、CD3結合ドメインがFab様構造である分子の検討が行われた。癌抗原(GPC3)に対するIgG抗体の2本のH鎖のC末端にそれぞれCD3抗体のVH領域とCH1領域、およびVL領域とCL領域が結合した分子型であるGPC3 ERY19-3が作製された(図17L)。すなわち、上記の方法と同 様に適切な配列を付加したプライマーを用いたPCR法等の当業者にとって公知の方法により、GPC3 ERY19-3_Hh(配列番号:59、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY19-3_Hk(配列番号:60、シグナ にとって公知の方法により、GPC3 ERY19-3_Hh(配列番号:59、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY19-3_Hk(配列番号:60、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)をそれぞれコードするポリヌクレオチドが挿入された発現ベクターが作製された。 【0280】GPC3 ERY19-3_Hh(配列番号:59、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、GPC3 ERY19-3_Hk(配列番号:60、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、およびGPC3 ERY7_Lの発現ベクターが共にFreeStyle293-F細胞に導入され、一過性にGPC3 ERY19-3を発現させた。得られた培養上清がHiTraprP roteinAFFカラム(GEHealthcare社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、酸による溶出 が実施された。GPC3 ERY19-3を含む画分が限外ろ過によって濃縮された後、当該画分がSuperdex 200カラム(GEHealthcare社)に添加され、溶出液の単量体のGPC3 ERY19-3画分のみを回収することにより精製GPC3 ERY19-3が得られた。 【0281】GPC3 ERY19-3分子によるinvitroの細胞傷害活性が評価された。その結果、GPC3 BiTEと同 等の活性を有することが示された(図14)。Fab様構造を有するCD3結合ドメインによる、本願発明に係るポリペプチド会合体分子の安定化への貢献が期待される。 【0282】〔実施例6〕GPC3 ERY 10-1のCH3ドメインへの変異導入によるプロテインA精製工程のみ ドメインによる、本願発明に係るポリペプチド会合体分子の安定化への貢献が期待される。 【0282】〔実施例6〕GPC3 ERY 10-1のCH3ドメインへの変異導入によるプロテインA精製工程のみを用いたポリペプチド会合体の調製 (1)概要実施例3で調製されたGPC3 ERY10-1では、CH3ドメインの構造としてknobs-into-holeが用いられている。それぞれのH鎖のC末端にはHisタグとFLAGタグが付加されており、これらのタグを用いた2種類のアフィニティー精製を行うことにより、目的としている2種類のH鎖がヘテロ会合化したGPC3 ERY10-1分子が精製された。GPC3 ERY10-1分子を医薬品として製造する場 合、GPC3 ERY10-1を発現する細胞の培養上精からプロテインAクロマトグラフィーを用いてFcドメインを有するポリペプチド会合体がまず精製される。さらに、HisタグアフィニティークロマトグラフィーとFLAGタグアフィニティークロマトグラフィーの2種類のクロマトグラムを用いた精製工程が必要となり、精製工程のコストが高くなるという課題がある。そこで本実施例では、HisタグとFLAGタグを用いることなく、プロテインAクロマトグラフィーのみを用い ることによって目的とする2種類のH鎖がヘテロ会合化したGPC3 ERY10-1分子を精製することを可能とする分子改変の検討が行われた。 【0283】具体的には、2種類のH鎖のうち、一方のH鎖のプロテインAへの結合を無くす改変の検討が行なわれた。この改変により、プロテインAへの結合を無くしたH鎖がホモ会合化した分子は、プ ロテインAに結合することができないためプロテインAクロマトグラフィーをパスする。一方、 プロテインAへの結合 により、プロテインAへの結合を無くしたH鎖がホモ会合化した分子は、プ ロテインAに結合することができないためプロテインAクロマトグラフィーをパスする。一方、 プロテインAへの結合を無くしたH鎖とプロテインAへの結合を保持しているH鎖がヘテロ会合化した分子と、プロテインAへの結合を保持しているH鎖がホモ会合化した分子との、プロテインAへの結合性の相違を利用することによって、プロテインAクロマトグラフィーによりこれらの分子の分離が可能であると考えられた。この際、抗体のFcドメインにおいて、プロテインAと抗体の血漿中滞留性に重要なFcRnが結合する箇所は重複していることから、FcRnへの結合性 を維持したまま、プロテインAへの結合性のみを選択的に低減する必要がある。そのような改変として、EUナンバリング435番目のHisをArgに置換する変異が見出された。この変異に加えて、2種類のH鎖のヘテロ会合化を促進する改変として WO2006/106905に記載された変異(一方のH鎖のEUナンバリング356番目のAspをLysに置換し、もう一方のH鎖のEUナンバリング439番目のLysをGluに置換する)を組み合わせることにより、プロテインAクロマトグラフィーの みでGPC3 ERY10-1等のポリペプチド会合体分子を精製することが可能かどうかが検証された。 【0284】(2)抗体遺伝子発現ベクターの作製と各抗体の発現抗体H鎖可変領域として、GC33(2)H(抗ヒトGlypican-3抗体 H鎖可変領域、配列番号:6 1、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)をコードする遺伝子が当業者にとって公知の方法により作製された。同様に、抗体L鎖として、3-k0(抗ヒトGlypican-3抗体L 、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)をコードする遺伝子が当業者にとって公知の方法により作製された。同様に、抗体L鎖として、3-k0(抗ヒトGlypican-3抗体L鎖、配列番号:62、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)をコードする遺伝子が当業者にとって公知の方法により作製された。次に、抗体H鎖定常領域として、以下に示す遺伝子が当業者にとって公知の方法により作製され た。 【0285】L.目的分子:LALA-G1dIgG1の配列中のEUナンバリング234番目および235番目のLeuがAlaに置換され、297番目のAsnがAlaに置換された変異が導入され、C末端のGly及びLysが除去されたLALA-G1d(配列番号: 63、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない) 【0286】M.目的分子:LALA-G1d-CD3LALA -G1d(配列番号:63、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)にCD3のscFv(抗ヒトCD3抗体H鎖可変領域及び抗ヒトCD3抗体L鎖可変領域がポリペプチドリンカーを介して結合されたもの)がC末端に結合されたLALA-G1d-CD3(配列番号: 64、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)【0287】N.目的分子:LALA-G3S3E-G1dLALA-G1d(配列番号:63、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)の配列中のEUナンバリング435番目のHisをArgに置換する変異及びEUナンバリン グ439番目のLysをGluに置換する変異が導入されたLALA-G3S3E-G1d(配列 には含まれない)の配列中のEUナンバリング435番目のHisをArgに置換する変異及びEUナンバリン グ439番目のLysをGluに置換する変異が導入されたLALA-G3S3E-G1d(配列番号:65、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)【0288】O.目的分子:LALA-S3K-G1d-CD3LALA-G1d-CD3(配列番号:64、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列 には含まれない)の配列中のEUナンバリング356番目のAspをLysに置換する変異が導入されたLALA-S3K-G1d-CD3(配列番号:66、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)。 【0289】GC33(2) Hの下流にLALA-G1d-CD3あるいはLALA-G1dを連結することで、抗ヒトGPC3抗体H鎖 遺伝子NTA1LあるいはNTA1Rが作製された。GC33(2) Hの下流にLALA-S3K-G1d-CD3あるいはLALA-G3S3E-G1dを連結することで、抗ヒトGPC3抗体H鎖遺伝子NTA2LあるいはNTA2Rが作製された。 【0290】NTA1L, NTA1R, NTA2L, NTA2R(H鎖)及びGC33-k0(L鎖)の各遺伝子を、動物細胞発現ベクターに組み込むことによって当該遺伝子の発現ベクターが作製された。以下に示す組み合わせ により、これらのベクターが当業者公知の方法でFreeStyle293細胞(invitrogen社)へ導入 されることによって、下記に示す各ポリペプチド会合体を一過性に発現させた。以下に示すように、導入した遺伝子の組み合わせを第一のH鎖/第二のH鎖/L鎖の順番で示すことによってポリペプチド会合体の名 されることによって、下記に示す各ポリペプチド会合体を一過性に発現させた。以下に示すように、導入した遺伝子の組み合わせを第一のH鎖/第二のH鎖/L鎖の順番で示すことによってポリペプチド会合体の名前として表記されている。 NTA1L/NTA1R/GC33-k0NTA2L/NTA2R/GC33-k0 【0291】(3)発現サンプルの精製とヘテロ会合体形成の評価下記に示すポリペプチド会合体を含むFreeStyle293細胞の培養上清(以下CMと指称される)が試料として用いられた。 NTA1L/NTA1R/GC33-k0 NTA2L/NTA2R/GC33-k0【0292】D-PBSで平衡化したrProteinASepharoseFastFlowカラム(GEHealthcare)にφ0.22μmフィルターで濾過したCMが負荷され、表1に示すバッファーにより洗浄1、2、および溶出1の各ステップが実施された。負荷される抗体量が20 mg/mLresineになるようにCMの負荷量が調 節された。分取された溶出画分のサイズ排除クロマトグラフィー分析により、溶出画分に含まれている成分が同定された。 【0293】【表1】 【0294】各溶出画分のサイズ排除クロマトグラフィー分析の結果を図15及び表2に示した。値は溶出ピークの面積がパーセントで表記されている。NTA1L/NTA1R/GC33-k0及びNTA2L/NTA2R/GC33 -k0を発現させたCM中には、共にCD3に対するホモ抗体(NTA1L/GC33-k0, NTA2L/GC33-k0)がほとんど検出されなかった。GPC3に対するホモ抗体(NTA2R/GC33-k0)に関しては、NTA1L/ には、共にCD3に対するホモ抗体(NTA1L/GC33-k0, NTA2L/GC33-k0)がほとんど検出されなかった。GPC3に対するホモ抗体(NTA2R/GC33-k0)に関しては、NTA1L/NTA1R/GC33-k0を発現させたCM中では76%程度検出されたのに対して、NTA2L/NTA2R/GC33-k0をを発現させたCM中では2%程度しか検出されなかった。すなわち、EUナンバリング435番目のHisをArgに置換する変異に加えて、各H鎖のヘテロ分子を効率的に形成させるために、一方のH鎖 のポリペプチド配列中のEUナンバリング356番目のAspをLysに置換する変異およびもう一方のH鎖のポリペプチド配列中のEUナンバリング439番目のLysをGluに置換する変異を導入することによって、プロテインAを用いた精製工程のみにより、目的のGPC3 ERY10-1と同様の分子形からなるヘテロで会合するポリペプチド会合体を98%以上の純度で効率的に精製することが可能であることが明らかになった。 【0295】【表2】 【0296】〔実施例7〕GPC3 ERY 17-2及びGPC3 ERY 17-3の作製と検討 (1)GPC3 ERY 17-2及びGPC3 ERY 17-3の作製次に、癌抗原(GPC3)に対するIgGを基本骨格とし、片方のFabをCD3 epsilonに対する結合ドメインに置き換えた形の分子が作製された。この際、基本骨格とするIgGのFcとしては、上述した場合と同様に、FcgR(Fcγ 受容体)への結合性が減弱されたサイレント型Fcが用いられた。CD3 epsilonに対する結合ドメインとして、CD3 epsilonに対するFabのVHドメインとVL ドメインを置き換えたGPC3 ERY1 性が減弱されたサイレント型Fcが用いられた。CD3 epsilonに対する結合ドメインとして、CD3 epsilonに対するFabのVHドメインとVL ドメインを置き換えたGPC3 ERY17-2(図19A)と、CH1ドメインとCLドメインを置き換えたGPC3 ERY17-3(図19B)がそれぞれ作製された。 【0297】すなわち、上記した方法と同様の適切な配列を付加したプライマーを用いたPCR法等の当業 者において公知の方法により、ERY17-2_Hh(配列番号:73、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、ERY17-2_L(配列番号:74、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、ERY17-3_Hh(配列番号:75、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、ERY17-3_L(配列番号:76、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)をそれ ぞれコードするポリヌクレオチドが挿入された一連の発現ベクターが作製された。 【0298】以下に示す組み合わせの発現ベクターがFreeStyle293-F細胞に導入され、各目的分子を一過性に発現させた。 【0299】 P.目的分子:GPC3 ERY17-2発現ベクターに挿入されたポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド:GPC3 ERY8-2_Hk、GPC3 ERY7_L、ERY17-2_Hh(配列番号:73、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、ERY17-2_L(配列番号:74、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない) 【0300】Q.目的分子:GPC3 ERY17 ノ酸は成熟配列には含まれない)、ERY17-2_L(配列番号:74、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない) 【0300】Q.目的分子:GPC3 ERY17-3発現ベクターに挿入されたポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド:GPC3 ERY8-2_Hk、GPC3 ERY7_L、ERY17-3_Hh(配列番号:75、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、ERY17-3_L(配列番号:76、シグナル配列であるアミ ノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)【0301】(2)GPC3 ERY 17-2及びGPC3 ERY 17-3の精製得られた培養上清がAntiFLAGM2カラム(Sigma社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、0.1 mg/mLFLAGペプチド(Sigma社)による溶出が実施された。目的分子を含む画分がHisTra pHPカラム(GEHealthcare社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、イミダゾールの濃度勾 配による溶出が実施された。目的分子を含む画分が限外ろ過によって濃縮された後、当該画分がSuperdex 200カラム(GEHealthcare社)に添加され、溶出液の単量体画分のみを回収することにより精製された各目的分子が得られた。 【0302】(3)GPC3 ERY 17-2及びGPC3 ERY 17-3の細胞傷害活性 GPC3 ERY 17-2及びGPC3 ERY 17-3についてinvitroの細胞傷害活性が調べられた(図20)。その結果、いずれの分子も明らかにGPC3 BiTEを上回る細胞傷害活性を奏することが認められた。本発明において、癌抗原に対するIgGを基本骨格とし vitroの細胞傷害活性が調べられた(図20)。その結果、いずれの分子も明らかにGPC3 BiTEを上回る細胞傷害活性を奏することが認められた。本発明において、癌抗原に対するIgGを基本骨格とし、片側のFabをCD3 epsilonに対する結合ドメインに置き換えた分子もBiTEと同等以上の細胞傷害活性を奏することが初めて明らかとなった。 【0303】(4)PC-10 T細胞移入モデルを用いたGPC3 ERY17-2の薬効試験invitroのアッセイでGPC3 BiTEと同等以上の細胞傷害活性が認められたGP3 ERY17-2のinvivoの薬効の評価がPC-10 T細胞移入モデルを用いて行なわれた。すなわち、GPC3 ERY17-2のPC-10 T細胞移入モデルによる薬効試験においては、下記のような試験が行われた。健常人 ボランティアより採取した血液から分離されたPBMC及びTcellactivation/ expansionkit/human(MACSMiltenyibiotec社)を用いてT細胞の拡大培養が行なわれた。ヒト肺扁平上皮がん細胞株PC-10(免疫生物研究所)1×107細胞と、マトリゲル基底膜マトリックス(BD社)が混和され、NODscidマウス(日本クレア、雌、7W)のそけい部皮下に移植された。移植の日をday 0とした。マウスには移植前日、およびday 13、17、21、25に抗アシアロGM1抗体 (和光純薬)が0.2 mg/匹で腹腔内に投与された。移植後13日目に腫瘍サイズと体重に応じて群分けが行なわれ、移植後14日目に前記拡大培養によって得られたT細胞が3×107 細胞/匹で腹腔内に移植された。その2時間後から、GPCERY17-2が30μg/匹で静脈内投与された。GPC じて群分けが行なわれ、移植後14日目に前記拡大培養によって得られたT細胞が3×107 細胞/匹で腹腔内に移植された。その2時間後から、GPCERY17-2が30μg/匹で静脈内投与された。GPCERY17-2の投与はday 14、15、16、17、18に、計5回行われた。 【0304】 その結果、このモデルにおいても、GPC3 ERY17-2投与群においては溶媒投与群に比較して 明らかな抗腫瘍作用が認められた(図21)。 【0305】以上のことから、癌抗原に対するIgGを基本骨格とし、片側のFabをCD3 epsilonに対する結合ドメインに置き換えた分子は明らかなinvivoにおける抗腫瘍効果を奏することが示された。 【0306】〔実施例8〕GPC3 ERY17-2-M20の作製と検討(1)GPC3 ERY17-2-M20の作製次に、CD3 epsilonに対する結合ドメインの配列が変わっても目的の活性を持つ分子の創製が試みられた。GPC3 ERY17-2のCD3 epsilonに対する結合ドメインの配列を変えたGPC3 ERY17 -2-M20(図19A)が作製された。すなわち、CD3抗体(M20)の発現ベクターが鋳型として用いられ、上記した方法と同様の適切な配列を付加したプライマーを用いたPCR法等の当業者において公知の方法により、ERY17-2-M20_Hh(配列番号:77、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、ERY17-2-M20_L(配列番号:78、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)をそれぞれコードするポリヌ クレオチドが挿入された一連の発現ベクターが作製された。 【0307】(2)GPC3 E 8、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)をそれぞれコードするポリヌ クレオチドが挿入された一連の発現ベクターが作製された。 【0307】(2)GPC3 ERY17-2-M20の精製GPC3 ERY8-2_Hk、GPC3 ERY7_L、ERY17-2-M20_Hh(配列番号:77)、およびERY17-2-M20_L(配列番号:78)の発現ベクターが共にFreeStyle293-F細胞に導入され、一過性にGPC3 ERY17-2-M20を発現させた。得られた培養上清が、φ0.22μmフィルターで濾過された後、平衡化したrProteinASepharoseFastFlowカラム(GEHealthcare)に負荷された。表3に示すバッファーにより洗浄1、2、および溶出1の各ステップが実施されることにより精製GPC3ERY17-2-M20が得られた。 【0308】 【表3】 【0309】(3)GPC3 ERY17-2-M20の細胞傷害活性GPC3 ERY17-2-M20のinvitroの細胞傷害活性を調べたところ、GPC3 ERY17-2とほぼ同等の細胞傷害活性が認められた(図22)。このことからCD3 epsilonに対する結合ドメインの配 列が変わった分子においても同等の細胞傷害活性を持つことが明らかとなった。 【0310】〔実施例9〕EpCAMERY17-2、EpCAMERY17-3の作製と検討(1)EpCAMERY17-2、EpCAMERY17-3の作製次に、標的とする癌抗原が変わっても目的の活性を持つ分子の創製が試みられた。ERY17-2 のGPC3に対するFabをEpCAMに対するFabに変えたEpCAM AMERY17-3の作製次に、標的とする癌抗原が変わっても目的の活性を持つ分子の創製が試みられた。ERY17-2 のGPC3に対するFabをEpCAMに対するFabに変えたEpCAMERY17-2(図19A)と、GPC3 ERY17-3のGPC3に対するFabをEpCAMに対するFabに変えたEpCAMERY17-3(図19B)がそれぞれ作製された。すなわち、EpCAM抗体の発現ベクターが鋳型として用いられ、上記した方法と同様の適切な配列を付加したプライマーを用いたPCR法等の当業者において公知の方法により、EpCAMERY17_Hk(配列番号:79、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には 含まれない)、EpCAMERY17_L(配列番号:80、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)をそれぞれコードするポリヌクレオチドが挿入された一連の発現ベクターが作製された。 【0311】以下に示す組み合わせの発現ベクターがFreeStyle293-F細胞に導入され、各目的分子を一 過性に発現させた。 【0312】R.目的分子:EpCAMERY17-2 発現ベクターに挿入されたポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド:EpCAMERY17_Hk(配列番号:79、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、EpCAMERY17_L(配列番号:80、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、ERY17-2_Hh、ERY17-2_L【0313】 S.目的分子:EpCAMERY17-3発現ベクターに挿入されたポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド:EpCAMERY17_H 2_Hh、ERY17-2_L【0313】 S.目的分子:EpCAMERY17-3発現ベクターに挿入されたポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド:EpCAMERY17_Hk、EpCAMERY17_L、ERY17-3_Hh、ERY17-3_L【0314】(2)EpCAMERY17-2、EpCAMERY17-3の精製 得られた培養上清がAntiFLAGM2カラム(Sigma社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、0.1 mg/mLFLAGペプチド(Sigma社)による溶出が実施された。目的分子を含む画分がHisTrapHPカラム(GEHealthcare社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、イミダゾールの濃度勾配による溶出が実施された。目的分子を含む画分が限外ろ過によって濃縮された後、当該画分がSuperdex 200カラム(GEHealthcare社)に添加され、溶出液の単量体画分のみを回収する ことにより精製された各目的分子が得られた。 【0315】(3)EpCAMERY17-2、EpCAMERY17-3の細胞傷害活性EpCAMERY17-2、EpCAMERY17-3のinvitroの細胞傷害活性を調べたところ、いずれの分子においても強い細胞傷害活性が認められた(図23)。本発明において、癌抗原に対するIgG を基本骨格とし、片側のFabをCD3 epsilonに対する結合ドメインに置き換えた分子において、癌抗原の種類を変えても細胞傷害活性を持つことが明らかとなった。 【0316】〔実施例10〕CH1/CL界面会合制御が導入された二重特異性抗体の作製と検討(1)二重特異性抗体の設計 二重特異性抗体のそれぞれのCH1とCLドメインに変異を導 た。 【0316】〔実施例10〕CH1/CL界面会合制御が導入された二重特異性抗体の作製と検討(1)二重特異性抗体の設計 二重特異性抗体のそれぞれのCH1とCLドメインに変異を導入し、CH1/CLの界面の電荷的な反 発を利用し、CH1/CLの界面会合を制御することによって、GPC3に対するH鎖とL鎖のみが会合し、CD3に対するH鎖とL鎖のみがそれぞれ特異的に会合させることが可能であると考えられた。電荷的な反発を利用してCH1/CL界面会合の制御を行うために、H鎖のCH1、またはL鎖のCL中のアミノ酸残基が、正電荷であるLys、または負電荷であるGluに置換された。 【0317】 (2)抗体遺伝子発現ベクターの作製と各抗体の発現Anti-CD3抗体であるM12 (H鎖、配列番号:81およびL鎖、配列番号:82)と、Anti-GPC3抗体であるGC33(2)(H鎖、配列番号:83およびL鎖、配列番号:84)にCH1/CL界面会合制御が導入され、さらにH鎖同士の会合を避けるため、KnobintoHole(KiH)(WO1996/027011、RidgwayJB ら(ProteinEngineering (1996) 9, 617-621)、MerchantAM ら (Nat. Biotech nol. (1998) 16, 677-681))の改変が導入された二重特異性抗体が作製された(図24A)。対照として、CH1/CL界面会合制御もKnobintoHole(KiH)改変も導入されていない二重特異性抗体も作製された(図24B)。具体的には、M12のH鎖(配列番号:81)のCH1の数アミノ酸がLysに置換されたM12_TH2h(配列番号:85)、L鎖(配列番号:82)のCLの数アミノ酸がG 異性抗体も作製された(図24B)。具体的には、M12のH鎖(配列番号:81)のCH1の数アミノ酸がLysに置換されたM12_TH2h(配列番号:85)、L鎖(配列番号:82)のCLの数アミノ酸がGluに置換されたM12_TL17(配列番号:86)をそれぞれコードするポリヌクレオチドが挿入された発 現ベクターが当業者にとって公知の方法により作製された。同様に、GC33(2)のH鎖(配列番号:83)のCH1の数アミノ酸がGluに置換されたGC33(2)_TH13k(配列番号:87)、GC33(2)_TH15k(配列番号:88)、L鎖(配列番号:84)のCLの数アミノ酸がLysに置換されたGC33(2)_TL16(配列番号:89)、GC33(2)_TL19(配列番号:90)をそれぞれコードするポリヌクレオチドが挿入された発現ベクターが当業者にとって公知の方法により作製された。 【0318】以下に示す配列をコードする発現ベクターの組み合わせがFreeStyle293-F細胞に導入され、各目的分子を一過性に発現させた。 【0319】T.目的分子:GM1 発現ベクター:M12_TH2h(配列番号:85)、M12_TL17(配列番号:86)、GC33(2)_TH13k (配列番号:87)、及びGC33(2)_TL16(配列番号:89)【0320】U.目的分子:GM2発現ベクター:M12_TH2h(配列番号:85)、M12_TL17(配列番号:86)、GC33(2)_TH15k(配列番号:88)、及びGC33(2)_TL19(配列番号:90) 【0321】V.目的分子:GM0発現ベクター:M12のH鎖(配列番号:81)、M12のL鎖(配列番号:82)、GC33(2) のH鎖(配 C33(2)_TL19(配列番号:90) 【0321】V.目的分子:GM0発現ベクター:M12のH鎖(配列番号:81)、M12のL鎖(配列番号:82)、GC33(2) のH鎖(配列番号:83)、及びGC33(2) のL鎖(配列番号:84)【0322】 得られた培養上清から、rProteinASepharoseTMFastFlow(GEHealthcare社)を用いた当業者公知の方法で、抗体が精製された。 【0323】(3)GM1、GM2、GM0細胞傷害活性GM1、GM2、GM0の各ポリペプチド会合体のinvitroの細胞傷害活性を調べたところ、GM1お よびGM2は同等の細胞傷害活性を示すことが認められ、またその活性は明らかにGM0の活性を上回る細胞傷害活性であった(図25)。本発明において、CH1/CL界面制御の導入とKiHの改変を組み合わせることによって効率よく二重特異性抗体が作製されることが明らかとなった。 【0324】〔実施例11〕EGFRERY17-2の作製と検討 (1)EGFRERY17-2の作製さらに他の癌抗原を標的とした目的の活性を持つ分子の創製が試みられた。GPC3 ERY17-2のGPC3に対するFabをEGFRに対するFabに変えたEGFRERY17-2(図19A)が作製された。すなわち、EGFR抗体の発現ベクターが鋳型として用いられ、上記した方法と同様の適切な配列を付加したプライマーを用いたPCR法等の当業者において公知の方法により、EGFRERY17_Hk (配列番号:91、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれな い)、EGFRERY17_L(配列番号:92、シグナル配列であるアミノ末端19ア Y17_Hk (配列番号:91、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれな い)、EGFRERY17_L(配列番号:92、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)をそれぞれコードするポリヌクレオチドが挿入された一連の発現ベクターが作製された。 【0325】以下に示す組み合わせの発現ベクターがFreeStyle293-F細胞に導入され、各目的分子を一 過性に発現させた。 【0326】W.目的分子:EGFRERY17-2発現ベクターに挿入されたポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド:EGFRERY17_Hk(配列番号:91、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれな い)、EGFRERY17_L(配列番号:92、シグナル配列であるアミノ末端19アミノ酸は成熟配列には含まれない)、ERY17-2_Hh、ERY17-2_L【0327】(2)EGFRERY17-2の精製得られた培養上清がAntiFLAGM2カラム(Sigma社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、 0.1 mg/mLFLAGペプチド(Sigma社)による溶出が実施された。目的分子を含む画分がHisTrapHPカラム(GEHealthcare社)に添加され、当該カラムの洗浄の後、イミダゾールの濃度勾配による溶出が実施された。目的分子を含む画分が限外ろ過によって濃縮された後、当該画分がSuperdex 200カラム(GEHealthcare社)に添加され、溶出液の単量体画分のみを回収することにより精製された各目的分子が得られた。 【0328】(3)EGFRERY17-2の細胞傷害活性EGFRERY17-2のin 社)に添加され、溶出液の単量体画分のみを回収することにより精製された各目的分子が得られた。 【0328】(3)EGFRERY17-2の細胞傷害活性EGFRERY17-2のinvitroの細胞傷害活性を調べたところ、強い細胞傷害活性が認められた(図26)。本発明において、癌抗原に対するIgGを基本骨格とし、片側のFabをCD3 epsilonに対する結合ドメインに置き換えた分子において、GPC3、EpCAMのみならず、癌抗原の種類を さらに変えても細胞傷害活性を持つことが明らかとなった。 【産業上の利用可能性】【0329】本発明によって、BiTEが持つ強い抗腫瘍活性と、癌抗原非依存的にサイトカインストームなどを誘導しないという安全性上の優れた性質が維持され、かつ長い血中半減期を持つ新たなポリペプチド会合体が提供された。本発明のポリペプチド会合体における抗原結合ドメインを置 換することにより、当該ポリペプチド会合体を有効成分として含む細胞傷害誘導治療剤が癌細胞を含む様々な細胞を標的として細胞傷害をもたらし、様々な癌を治療又は予防することができる。患者にとっても、安全性が高いばかりでなく、身体的負担が少なく利便性も高いという、望ましい治療ができるようになる。 【図1】 【図2】 【図3】 【図4】 【図5】 【図6】 【図7】 【図8】 【図9】 【図10】 【図11】 【図12】 【図13】 【図14】 【図16】 【図17】 別紙3甲第2号証の記載事項(抜粋) 【発明の名称】低下したエフェクタ機能を有する安定化Fcポリペプチドおよび使用方法 【特許請求の範囲】 【請求項5】IgG1抗体のFc領域からのCH2部分を含む安定化ポリペプチドであって、299Kおよび297D(EU付番慣例)からなる群から選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸位置に、1つまたはそれ以上の安定化アミノ酸を含む、安定化ポリペプチド。 【請求項9】IgG抗体は、ヒト抗体である、請求項1~8のいずれか1項に記載の安定化ポリペプチド。 【請求項18】前記安定化ポリペプチドは、前記安定化変異を欠く親Fcポリペプチドと比較して、低下したエフェクタ機能を有する、請求項1~17のいずれか1項に記載の安定化ポリペプチド。 【請求項20】前記低下したエフェクタ機能は、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIからなる群から選択されるFc受容体(FcR)への低下した結合である、請求項18の記載の安定化ポリペプチド。 【請求項39】前記Fc領域は、結合部位と機能的に結合する、請求項1~38のいずれか1項に記載の安定化ポリペプチド。 低下した結合である、請求項18の記載の安定化ポリペプチド。 【請求項39】前記Fc領域は、結合部位と機能的に結合する、請求項1~38のいずれか1項に記載の安定化ポリペプチド。 【請求項40】前記結合部位は、抗原結合部位、受容体のリガンド結合部分、またはリガンドの受容体結合 部分から選択される、請求項39に記載の安定化ポリペプチド。 【請求項41】前記結合部位は、scFv、Fab、ミニボディ、ジアボディ、トリアボディ、ナノボディ、カメリド抗体、およびDabからなる群から選択される修飾抗体に由来する、請求項39に記載の安定化ポリペプチド。 【請求項42】 安定化完全長抗体である、請求項39に記載の安定化ポリペプチド。 【背景技術】【0002】獲得免疫反応は、体に侵入し、感染または疾病をもたらす外来の生物に対して、体が自らを 防御する機構である。1つの機構は、宿主の可変領域を通して抗原に結合するために、産生される、または宿主に投与される、抗体の能力に基づく。抗原が抗体によって結合されると、この抗原は、抗体の定常領域またはFc領域によって、しばしば、少なくとも部分的に媒介され、破壊の標的となる。 【0003】 抗体のFc領域によって媒介される幾つかのエフェクタ機能または活性がある。あるエフェクタ機能は、補体依存性細胞傷害(CDC)と称されるプロセスにおいて、標的抗原、例えば、細胞病原体を溶解することを補助し得る、補体タンパク質に結合する能力である。Fc領域の別のエフェクタ活性は、免疫細胞、またはいわゆるエフェクタ細胞の表面上でFc受容体(例えば、FcγR)に結合することであり、これは、他の免疫効果を誘発する能力を有す る。これらの免疫効果( 域の別のエフェクタ活性は、免疫細胞、またはいわゆるエフェクタ細胞の表面上でFc受容体(例えば、FcγR)に結合することであり、これは、他の免疫効果を誘発する能力を有す る。これらの免疫効果(例えば、抗体依存性細胞毒性(ADCC)および抗体依存性細胞食作用(ADCP))は、例えば、免疫活性物質の放出、抗体産生の調節、エンドサイトーシス、食菌作用、および細胞の死滅によって、病原体/抗原の除去に作用する。幾つかの臨床上の適用において、これらの応答は、抗体の効力にとって重要であるが、他の場合において、これらは、望まれない副作用を引き起こす。エフェクタによって媒介された副作用の1つの例は、急 性発熱反応をもたらす炎症サイトカインの放出である。別の例は、抗原保有細胞の長期欠失で ある。 【0004】抗体のエフェクタ機能は、Fc領域(例えば、Fab、F(ab′)2、または一本鎖Fv(scFv))を欠く抗体断片を使用することにより避けられ得る。しかしながら、これらの断片は、腎臓を通る迅速なクリアランスにより減少した半減期を有し、FabおよびscFv の場合、断片は、2つではなく1つのみの抗原結合部位を有し、結合親和力によるいかなる利点も損なう可能性があり、また、製造における課題を提示し得る。 【0005】代替のアプローチは、Fc領域の他の価値のある特質(例えば、長期にわたる半減期およびヘテロ二量化)を保持しながら、完全長抗体のエフェクタ機能を減少させることを目標として いる。エフェクタ機能を減少させる1つのアプローチは、Fc領域の特定の残基に結合される糖を除去することによって、いわゆる非グリコシル化抗体を生成することである。非グリコシル化抗体は、例えば、その糖が付着している残基を除去するか、もしくは変更するこ は、Fc領域の特定の残基に結合される糖を除去することによって、いわゆる非グリコシル化抗体を生成することである。非グリコシル化抗体は、例えば、その糖が付着している残基を除去するか、もしくは変更することによってか、酵素的にその糖を除去することによってか、グリコシル化阻害剤の存在下で培養された細胞中に抗体を産生することによってか、あるいはタンパク質をグリコシル化できない細胞 (例えば、細菌性宿主細胞)中で抗体を発現することによって、生成することができる。別のアプローチは、IgG1の代わりにIgG4抗体からのFc領域を利用することである。IgG4抗体が、IgG1よりも低いレベルの補体活性化および抗体依存性細胞毒性を有することによって特徴付けられることは、公知である。 【0006】 これらの代替アプローチの利点にもかかわらず、抗体のFc領域からのオリゴ糖の除去は、その構造および安定性において顕著な悪影響を及ぼすことが、現在、十分に確立されている。 さらに、IgG4のCH3ドメインが、IgG1のCH3ドメインに対して同程度の安定性を欠いているため、IgG4抗体は、一般的に、より低い安定性を有する。いかなる場合でも、抗体安定性の損失または低下は、抗体薬物の開発に悪影響を及ぼすプロセス開発課題を提示し 得る。 【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0007】したがって、変更された、もしくは低下したエフェクタ機能、および改善された安定性を有する、改善された抗体および他のFc含有ポリペプチド、ならびにこれらの分子を作製する方 法の必要性が存在する。 【課題を解決するための手段】【0008】(発明の概要)本発明は、Fc領域の安定性を強化するための改善された方法を提供することによって、先 分子を作製する方 法の必要性が存在する。 【課題を解決するための手段】【0008】(発明の概要)本発明は、Fc領域の安定性を強化するための改善された方法を提供することによって、先 行技術の「エフェクタ無し」抗体の問題、実に、いかなる「エフェクタ無し」Fc含有抗体の問題をも解決する。例えば、本発明は、安定性を操作したFcポリペプチド、例えば、安定化IgG抗体または他のFc含有結合分子を提供し、これは、ポリペプチドのFc領域内における、安定化アミノ酸を含む。一実施形態においては、本発明は、Fc領域の向上した安定性をもたらす親FcポリペプチドのFc領域内における、特定のアミノ酸残基位置で、変異体を導 入するための方法を提供する。好ましくは、該安定化Fcポリペプチドは、(1つまたは複数の安定化アミノ酸を含まないポリペプチドと比較して)変化した、あるいは低下したエフェクタ機能を有し、親Fcポリペプチドと比較して、強化された安定性を示す。 【0034】別の実施形態においては、該低下したエフェクタ機能は、FcγRI、FcγRII、およ びFcγRIIIからなる群から選択されるFc受容体(FcR)への低下した結合である。 【図面の簡単な説明】【0115】【図1】 典型的な抗原結合ポリペプチド(IgG抗体)の構造、ならびに抗体の抗原結合およびエフェクタ機能(例えば、Fc受容体(FcR)結合)の機能的特性を示す。また、いか に抗体のCH2ドメインにおける糖(グリコシル化)の存在がエフェクタ機能(FcR結合) を変化させるが、抗原結合に影響を及ぼさないことも示す。 【発明を実施するための形態】【0128】本明細書において使用される「Fc領域」という用語は、抗体重鎖の2つまたはそれ以上の を変化させるが、抗原結合に影響を及ぼさないことも示す。 【発明を実施するための形態】【0128】本明細書において使用される「Fc領域」という用語は、抗体重鎖の2つまたはそれ以上のFc部分によって形成される免疫グロブリンの一部として定義される。ある実施形態において は、該Fc領域は、二量体Fc領域である。「二量体Fc領域」または「dcFc」とは、2つの別々の免疫グロブリン重鎖のFc部分によって形成される二量体を指す。二量体Fc領域は、2つの同一のFc部分(例えば、天然に存在する免疫グロブリンのFc領域)のホモ二量体、または2つの非同一のFc部分のヘテロ二量体であり得る。他の実施形態においては、該Fc領域は、単量体または「一本鎖」Fc領域(すなわち、scFc領域)である。一本鎖F c領域は、単一のポリペプチド鎖(すなわち、単一の隣接遺伝子配列においてコードされる)内において、遺伝的に連鎖しているFc部分から構成される。例示的なscFc領域は、2008年5月14日出願のPCT出願第PCT/US2008/006260号に開示されており、この内容は、参照することにより、本明細書に組み込まれる。 【0205】 (II)親Fcポリペプチド多様Fcポリペプチドは、当技術分野で周知である、親または出発Fcポリペプチドに由来し得る。好ましい実施形態においては、親Fcポリペプチドは、抗体として、そして好ましくは、例えば、サブタイプIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4のIgG免疫グロブリン、そして好ましくはサブタイプIgG1もしくはIgG4のIgG免疫グロブリンであ る。親Fcポリペプチドは、免疫グロブリンに由来するFc領域を含むが、任意に、Fc領域に機能的に結合させるか、または融合される結合部位をさらに gG1もしくはIgG4のIgG免疫グロブリンであ る。親Fcポリペプチドは、免疫グロブリンに由来するFc領域を含むが、任意に、Fc領域に機能的に結合させるか、または融合される結合部位をさらに含み得る。好ましい実施形態においては、前述のポリペプチドは、リガンド、サイトカイン、受容体、細胞表面抗原、または癌細胞抗原等の抗原に結合する。本明細書の実施例は、IgG抗体を使用するが、本方法は、いかなるFcポリペプチド内のFc領域に同等に適用され得ることを理解されよう。Fcポリ ペプチドが抗体である場合、抗体は、合成されるか、(例えば、血清に)天然に由来するか、 細胞株(例えば、ハイブリドーマ)によって産生されるか、または遺伝子導入生物において産生され得る。 【0207】ある実施形態においては、本発明のポリペプチドは、同じ、または実質的に同じ配列組成のFc部分を含むFc領域(本明細書において「ホモマーFc領域」と称される)を含むことが できる。他の実施形態においては、本発明のポリペプチドは、異なる配列組成である少なくとも2つのFc部分を含むFc領域(すなわち、本明細書において「異種Fc領域」と称される)を含むことができる。ある実施形態においては、本発明の結合ポリペプチドは、少なくとも1つの挿入またはアミノ酸置換を含むFc領域を含む。1つの例示的な実施形態においては、異種Fc領域は、第1のFc部分においてアミノ酸置換を含むが、第2のFc部分には含 まない。 【0208】一実施形態においては、本発明の結合ポリペプチドは、本明細書に記載されるFc部分から独立して選択されるその構成Fc部分の2つまたそれ以上を有するFc領域を含むことができる。一実施形態においては、Fc部分は同じである。別の実施形態においては、F ドは、本明細書に記載されるFc部分から独立して選択されるその構成Fc部分の2つまたそれ以上を有するFc領域を含むことができる。一実施形態においては、Fc部分は同じである。別の実施形態においては、Fc部分の少 なくとも2つは、異なる。例えば、本発明のFcポリペプチドのFc部分は、同じ数のアミノ酸残基を含むか、またはそれらは、1つまたはそれ以上のアミノ酸残基(例えば、約5つのアミノ酸残基(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つのアミノ酸残基)、約10の残基、約15の残基、約20の残基、約30の残基、約40の残基、または約50の残基)の長さにおいて異なり得る。さらに他の実施形態においては、Fc部分は、1つまたはそれ以上の アミノ酸位置において、配列が異なり得る。例えば、Fc部分の少なくとも2つは、約5のアミノ酸位置(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つのアミノ酸部分)、約10の位置、約15の位置、約20の位置、約30の位置、約40の位置、または約50の位置)で異なり得る。 【0221】 ある実施形態においては、親Fcポリペプチドは、1を超えるアミノ酸置換を含む。親Fc ポリペプチドは、例えば、野生型Fc領域と比較して、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、またはそれ以上のアミノ酸置換を含むことができる。好ましくは、アミノ酸置換は、少なくとも1アミノ酸部分、またはそれ以上、例えば、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、またはそれ以上のアミノ酸位置、またはそれ以上の間隔で互いに空間的に位置する。より好ましくは、操作アミノ酸は、少なくとも5、 10、15、20、または25のアミノ酸位置、またはそれ以上の間隔で互いに離れて空間的に位置する。 【0222】 隔で互いに空間的に位置する。より好ましくは、操作アミノ酸は、少なくとも5、 10、15、20、または25のアミノ酸位置、またはそれ以上の間隔で互いに離れて空間的に位置する。 【0222】ある実施形態においては、置換は、野生型Fc部分を含むFc領域によって与えられた少なくとも1つのエフェクタ機能の変化(例えば、Fc受容体(例えば、FcγRI、FcγRI I、もしくはFcγRIII)、または補体タンパク質(例えば、C1q)に結合する、または抗体依存性細胞毒性(ADCC)、食作用、もしくは補体依存性細胞毒性(CDC)を誘引するFc領域の能力の低下)を与える。 【0223】親Fcポリペプチドは、エフェクタ機能の変化を与えることが周知の当技術分野において承 認されている置換を使用することができる。具体的に、本発明の親Fcポリペプチドは、例えば、国際公開第WO88/07089A1号、同第WO96/14339A1号、同第WO98/05787A1号、同第WO98/23289A1号、同第WO99/51642A1号、同第WO99/58572A1号、同第WO00/09560A2号、同第WO00/32767A1号、同第WO00/42072A2号、同第WO02/44215A2号、同第 WO02/060919A2号、同第WO03/074569A2号、同第WO04/016750A2号、同第WO04/029207A2号、同第WO04/035752A2号、同第WO04/063351A2号、同第WO04/074455A2号、同第WO04/099249A2号、同第WO05/040217A2号、同第WO04/044859号、同第WO05/070963A1号、同第WO05/077981A2号、同第WO05/092 925A2号、同第WO 249A2号、同第WO05/040217A2号、同第WO04/044859号、同第WO05/070963A1号、同第WO05/077981A2号、同第WO05/092 925A2号、同第WO05/123780A2号、同第WO06/019447A1号、同 第WO06/047350A2号、および同第WO06/085967A2号、米国特許公開第US2007/0231329号、同第US2007/0231329号、同第US2007/0237765号、同第US2007/0237766号、同第US2007/0237767号、同第US2007/0243188号、同第US20070248603号、同第US20070286859号、同第US20080057056、または米国特許第5,6 48,260号、同第5,739,277号、同第5,834,250号、同第5,869,046号、同第6,096,871号、同第6,121,022号、同第6,194,551号、同第6,242,195号、同第6,277,375号、同第6,528,624号、同第6,538,124号、同第6,737,056号、同第6,821,505号、同第6,998,253号、同第7,083,784号、および同第7,317,091号において開 示されるアミノ酸位置の1つまたはそれ以上の変化(例えば、置換)を含むことができ、Fc変異に関係があるそれぞれの部分は、参照することにより、本明細書に組み込まれる。一実施形態においては、特定の変化(例えば、当技術分野において開示される1つまたはそれ以上のアミノ酸の特定の置換)は、開示されるアミノ酸位置の1つまたはそれ以上で行われる場合がある。別の実施形態においては、開示されるアミノ酸位置の1つまたはそれ以上における異な る変化(例 れ以上のアミノ酸の特定の置換)は、開示されるアミノ酸位置の1つまたはそれ以上で行われる場合がある。別の実施形態においては、開示されるアミノ酸位置の1つまたはそれ以上における異な る変化(例えば、当技術分野において開示される1つまたはそれ以上のアミノ酸部分の異なる置換)が行われる場合がある。 【0229】B.エフェクタ無しFcポリペプチドある実施形態においては、親Fcポリペプチドは、変化したまたは低下したエフェクタ機能 を有する「エフェクタ無し」Fcポリペプチドである。好ましくは、低下した、または変化したエフェクタ機能は、抗原依存性エフェクタ機能である。例えば、親Fcポリペプチドは、例えば、野生型Fcポリペプチドと比較して、ポリペプチドの抗原依存性エフェクタ機能、特に、ADCCまたは補体活性化を低下させる配列変異(例えば、アミノ酸置換)を含むことができる。残念なことに、そのような親Fcポリペプチドは、しばしば、本発明の方法に従って 安定化に対して理想的な候補にする低下した安定性を有する。 【0230】低下したFcγR結合親和性を有するFcポリペプチドは、エフェクタ機能を低下させることが見込まれ、そのような分子も、標的細胞破壊が望ましくない状態、例えば、正常細胞が標的分子を発現する場合、またはポリペプチドの慢性投与によって好ましくない免疫系活性化が引き起こされる可能性がある場合の治療に有用である。一実施形態においては、Fcポリペプ チドは、野生型Fc領域を含むFcポリペプチドと比較して、オプソニン化、食作用、補体依存性細胞毒性、抗体依存性細胞毒性(ADCC)、またはエフェクタ細胞改変からなる群から選択される少なくとも1つの抗原依存性エフェクタ機能の低下を示す。一実施形態においては、Fcポ 化、食作用、補体依存性細胞毒性、抗体依存性細胞毒性(ADCC)、またはエフェクタ細胞改変からなる群から選択される少なくとも1つの抗原依存性エフェクタ機能の低下を示す。一実施形態においては、Fcポリペプチドは、FcγR(例えば、FcγRI、FcγRIIa、またはFcγRIIIa)への変化した結合を示す。別の実施形態においては、Fcポリペプチドは、阻害性 FcγR(例えば、FcγRIIb)への変化した結合親和性を示す。他の実施形態においては、低下したFcγR結合親和性を有するFcポリペプチド(例えば、低下したFcγRI、FcγRIIa、またはFcγRIIIa結合親和性)は、以下の位置の1つまたはそれ以上に対応するアミノ酸位置にアミノ酸置換を有する少なくとも1つのFc部分(例えば、1つまたは2つのFc部分)を含む。234、236、239、241、251、252、261、 265、268、293、294、296、298、299、301、326、328、332、334、338、376、378、および435(EU付番)。他の実施形態においては、低下した補体結合親和性(例えば、低下したC1q結合親和性)を有するFcポリペプチドは、以下の位置の1つまたはそれ以上に対応するアミノ酸位置にアミノ酸置換を有するFc部分(例えば、1つまたは2つのFc部分)を含む。239、294、296、301、32 8、333、および376(EU付番)。FcγRまたは補体結合活性を変化させた例示的なアミノ酸置換は、国際公開第WO05/063815号に開示され、この内容は、参照することにより、本明細書に組み込まれる。ある好ましい実施形態においては、本発明の結合ポリペプチドは、以下の特定の置換の1つまたはそれ以上を含むことができる。S239D、S239E、M25 は、参照することにより、本明細書に組み込まれる。ある好ましい実施形態においては、本発明の結合ポリペプチドは、以下の特定の置換の1つまたはそれ以上を含むことができる。S239D、S239E、M252T、H268D、H268E、I332D、I332E、N434A、および N434K(すなわち、抗体Fc領域におけるこれらのEU付番位置の1つまたはそれ以上に 対応するアミノ酸位置にあるこれらの置換の1つまたはそれ以上)。 【0231】ある例示的な実施形態においては、親「エフェクタ無し」ポリペプチドのエフェクタ機能は、親Fcポリペプチド内の非グリコシル化されたFc領域により変化または低下させることができる。ある実施形態においては、非グリコシル化Fc領域は、Fc領域のグリコシル化を 変化させるアミノ酸置換によって生成される。例えば、Fc領域内のEU位置297のアスパラギンは、そのグリコシル化を阻害するために、(例えば、置換、挿入、欠失によって、または化学修飾によって)変化させることができる。別の例示的な実施形態においては、EU位置299のアミノ酸残基(例えば、トレオニン(T))を、(例えば、アラニン(A))で置換し、隣接する残基297のグリコシル化を低下させる。グリコシル化を低下するまたは変化さ せる例示的なアミノ酸置換は、国際公開第WO05/018572号および米国特許公開第2007/0111281号に開示され、この内容は、参照することにより、本明細書に組み込まれる。他の実施形態においては、非グリコシル化Fc領域は、Fc領域をグリコシル化することができない宿主細胞(例えば、減少したグリコシル化機構を有する細菌性宿主細胞または哺乳類宿主細胞)における、オリゴ糖の酵素的もしくは化学的除去、またはFcポリペプチド 域をグリコシル化することができない宿主細胞(例えば、減少したグリコシル化機構を有する細菌性宿主細胞または哺乳類宿主細胞)における、オリゴ糖の酵素的もしくは化学的除去、またはFcポリペプチド の発現によって生成される。 【0269】・・・(IV).変異体Fcポリペプチドを安定化させるための方法ある態様においては、本発明は、Fc領域(例えば、非グリコシル化Fc領域)を含むポリ ペプチドを安定化させる方法に関連し、該方法には、(a)変異のために出発Fc領域の少なくとも1つのFc部分内において、1つまたはそれ以上のアミノ酸位置を選択することと、(b)変異のために選択された1つまたはそれ以上のアミノ酸位置を変異させ、それによって、ポリペプチドを安定化することと、を含む。 【0270】 一実施形態においては、該出発Fc領域は、IgG1Fc領域である。別の実施形態におい ては、出発Fc領域は、IgG4 Fc領域である。別の実施形態においては、出発Fc領域は、キメラFc領域である。一実施形態においては、該出発Fc領域は、非グリコシル化IgG1 Fc領域である。別の実施形態においては、該出発Fc領域は、非グリコシル化IgG 4 Fc領域である。 【0271】 一実施形態においては、変異のために選択されたアミノ酸位置は、出発IgG分子(例えば、IgG4分子)のFc領域において、延長したループ内にある。別の実施形態においては、変異のために選択されたアミノ酸位置は、CH3ドメイン間のインターフェイスに存在する。別の実施形態においては、変異のために選択されたアミノ酸位置は、1hzh結晶構造中の炭水化物(例えば、V264、R292、またはV303)を有する接触部位付近である。 他の実施形態におい る。別の実施形態においては、変異のために選択されたアミノ酸位置は、1hzh結晶構造中の炭水化物(例えば、V264、R292、またはV303)を有する接触部位付近である。 他の実施形態においては、アミノ酸位置は、CH3/CH2のインターフェイス付近、またはCH3/CH2のインターフェイス付近(例えば、H310)であり得る。別の実施形態においては、例えば、1組の表面が露出したグルタミン残基(Q268、Q274、またはQ355)のうちの1つまたはそれ以上の、Fc領域の全表面電荷を変化させる1つまたはそれ以上の変異がなされ得る。別の実施形態においては、アミノ酸位置は、CH2およびCH3の「バ リン中心」に見出されるバリン残基である。CH2の「バリン中心」は、5つのバリン残基(V240、V255、V263、V302、およびV323)であり、全ては、CH2ドメインの同じ近接した内部の中心に方向付けられる。同様の「バリン中心」は、CH3(V348、V369、V379、V397、V412、およびV427)において観察される。別の実施形態においては、変異のために選択されるアミノ酸位置は、アミノ酸297のN結合型炭 水化物と相互作用するか、接触することが予測される位置にある。そのようなアミノ酸位置は、同族Fc受容体(例えば、FcγRIIIa)に結合されるFc領域の結晶構造の検査を行うことによって特定することができる。N297との相互作用を形成する例示的なアミノ酸は、残基262~270によって形成されるループを含む。 【0272】 例示的なアミノ酸位置は、EU付番慣例によるアミノ酸位置240、255、262~26 6、267~271、292~299、302~309、379、397~399、409、412、および42 示的なアミノ酸位置は、EU付番慣例によるアミノ酸位置240、255、262~26 6、267~271、292~299、302~309、379、397~399、409、412、および427を含む。ある実施形態においては、変異のために選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸位置は、240、255、262、263、264、266、268、274、292、299、302、303、307、309、323、348、355、369、379、397、399、409、412、および427からなる群から選択される1つ またはそれ以上のアミノ酸位置である。ある実施形態においては、変異のために選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸位置は、240、262、264、266、297、299、307、309、399、409、および427からなる群から選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸位置である。別の実施形態においては、1つまたはそれ以上のアミノ酸位置は、297、299、307、309、409、および427からなる群から選択される1つまたは それ以上のアミノ酸位置である。別の実施形態においては、1つまたはそれ以上のアミノ酸位置は、アミノ酸残基240、262、264、および266から選択される。別の実施形態においては、アミノ酸位置のうちの少なくとも1つは、EU位置297にある。別の実施形態においては、アミノ酸位置のうちの少なくとも1つは、EU位置299にある。別の実施形態においては、アミノ酸位置のうちの少なくとも1つは、EU位置307にある。別の実施形態に おいては、アミノ酸位置のうちの少なくとも1つは、EU位置309にある。別の実施形態においては、アミノ酸位置のうちの少なくとも1つは、EU位置399にある。別の実施形態においては、アミノ酸位置 おいては、アミノ酸位置のうちの少なくとも1つは、EU位置309にある。別の実施形態においては、アミノ酸位置のうちの少なくとも1つは、EU位置399にある。別の実施形態においては、アミノ酸位置のうちの少なくとも1つは、EU位置409にある。別の実施形態においては、アミノ酸位置のうちの少なくとも1つは、EU位置427にある。 【0273】 ある実施形態においては、該Fc領域は、IgG1 Fc領域である。ある実施形態においては、該Fc領域は、IgG1 Fc領域であり、1つまたはそれ以上のアミノ酸位置は、アミノ酸残基240、262、264、299、297、および266から選択される。他の実施形態においては、該Fc領域は、IgG4 Fc領域であり、1つまたはそれ以上のアミノ酸位置は、アミノ酸残基297、299、307、309、399、409、および427か ら選択される。 【0274】一実施形態においては、変異は、アミノ酸位置(例えば、アラニン(A)、セリン(S)、またはトレオニン(T)による置換)のアミノ酸側鎖の大きさを減少させる。別の実施形態においては、変異は、非極性側鎖を有するアミノ酸による置換(例えば、グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、メチオニン(M)、プロリン (P)、フェニルアラニン(F)、およびトリプトファン(W)による置換)である。別の実施形態においては、変異は、例えば、2つの相互作用するドメイン(例えば、Y349F、T350V、およびT394V)間の関連性を増加する、またはインターフェイスの側鎖(例えば、F405Y)の容積を増加するために、CH3インターフェイスへの疎水性を付加する。 別の実施形態においては、「バリン中心」の1つ T394V)間の関連性を増加する、またはインターフェイスの側鎖(例えば、F405Y)の容積を増加するために、CH3インターフェイスへの疎水性を付加する。 別の実施形態においては、「バリン中心」の1つまたはそれ以上のアミノ酸は、それらの安定 性を増加させるために、イソロイシンまたはフェニルアラニンで置換される。別の実施形態においては、アミノ酸(例えば、L351および/またはL368)は、高分枝状の疎水性側鎖に変異させる。 【0275】一実施形態においては、変異は、アラニン(A)による置換である。一実施形態において は、変異は、フェニルアラニン(F)による置換である。別の実施形態においては、変異は、ロイシン(L)による置換である。一実施形態においては、変異は、トレオニン(T)による置換である。別の実施形態においては、変異は、リシン(K)による置換である。一実施形態においては、変異は、プロリン(P)による置換である。一実施形態においては、変異は、フェニルアラニン(F)による置換である。 【0390】III. 多特異性結合ポリペプチドsある特定の態様においては、本発明の結合ポリペプチドは、多特異性であり、すなわち、分子の第1の分子またはエピトープに結合する少なくとも1つの結合部位、および第2の分子または第1の分子の第2のエピトープに結合する少なくとも1つの第2の結合部位を有する。本 発明の多特異性結合分子は、少なくとも2つの結合部位を含むことができ、結合部位の少なく とも1つは、上述の結合分子の1つからの結合部位に由来するか、またはそれを含む。ある実施形態においては、本発明の多特異性結合分子の少なくとも1つの結合部位は、抗体の抗原結合領域、またはその抗原結合断片(例えば、上述の抗体または抗原結 らの結合部位に由来するか、またはそれを含む。ある実施形態においては、本発明の多特異性結合分子の少なくとも1つの結合部位は、抗体の抗原結合領域、またはその抗原結合断片(例えば、上述の抗体または抗原結合断片)である。 【0391】(a)二重特異性分子 一実施形態においては、本発明の結合ポリペプチドは、二重特異性である。二重特異性結合ポリペプチドは、例えば、同じ標的分子または異なる標的分子上の2つの異なる標的部位に結合することができる。例えば、本発明の結合ポリペプチドの場合、その二重特異性変異体は、例えば、同じ抗原または2つの異なる抗原上の2つの異なるエピトープに結合することができる。二重特異性結合ポリペプチドは、例えば、診断的および治療的用途において使用すること ができる。例えば、それらは、免疫アッセイにおける使用で酵素を固定するために使用することができる。それらは、例えば、腫瘍関連分子および検出可能なマーカー(例えば、放射性核種に強固に結合するキレート剤)の両方に結合することによって、癌の診断および治療においても使用することができる。二重特異性結合ポリペプチドは、例えば、細胞毒性を特定の標的へ誘導することによって(例えば、病原体または腫瘍細胞、およびT細胞受容体またはFcγ 受容体等の細胞毒性誘引分子に結合することによって)、ヒトの治療のために使用することもできる。二重特異性結合ポリペプチドは、例えば、線維素溶解剤またはワクチンアジュバントとして使用することもできる。 【0392】二重特異性結合ポリペプチドの例には、異なる腫瘍細胞抗原に対する少なくとも2つのアー ムを有する二重特異性結合ポリペプチド、腫瘍細胞抗原に対する少なくとも1つのアーム、および細胞毒性誘引分子に対する少なくとも1つのアームを有する 異なる腫瘍細胞抗原に対する少なくとも2つのアー ムを有する二重特異性結合ポリペプチド、腫瘍細胞抗原に対する少なくとも1つのアーム、および細胞毒性誘引分子に対する少なくとも1つのアームを有する二重特異性の変化した結合タンパク質(抗Fc.ガンマ.RI/抗CD15、抗p185.sup.HER2/Fc.ガンマ.RIII(CD16)、抗CD3/抗悪性B細胞(1D10)、抗CD3/抗p185.sup.HER2、抗CD3/抗p97、抗CD3/抗腎細胞癌、抗CD3/抗OVCAR- 3、抗CD3/L-D1(抗結腸癌)、抗CD3/抗メラニン細胞刺激ホルモン類似体、抗E GF受容体/抗CD3、抗CD3/抗CAMA1、抗CD3/抗CD19、抗CD3/MoV18、抗神経系細胞接着分子(NCAM)/抗CD3、抗葉酸結合タンパク質(FBP)/抗CD3、抗膵臓癌関連抗原(AMOC-31)/抗CD3等)、腫瘍抗原に特異的に結合する少なくとも1つのアーム、および毒素に結合する少なくとも1つのアームを有する二重特異性結合ポリペプチド(抗サポリン/抗Id-1、抗CD22/抗サポリン、抗CD7/抗サポリ ン、抗CD38/抗サポリン、抗CEA/抗リシンA鎖、抗インターフェロン-.アルファ. (IFN-.アルファ.)/抗ハイブリドーマイディオタイプ、抗CEA/抗ビンカアルカロイド等)、酵素活性プロドラッグを変換するための二重特異性結合ポリペプチド(抗CD30/抗アルカリホスファターゼ(マイトマイシンアルコールへのマイトマイシンリン酸塩プロドラッグの変換を触媒する)等)、線維素溶解剤として使用することができる二重特異性結合ポ リペプチド(抗フィブリン/抗組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)、抗フィブリン/抗ウロキナーゼ型プラスミノゲン活性化因子(uPA )、線維素溶解剤として使用することができる二重特異性結合ポ リペプチド(抗フィブリン/抗組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)、抗フィブリン/抗ウロキナーゼ型プラスミノゲン活性化因子(uPA)等)、細胞表面受容体への免疫複合体を標的とするための二重特異性結合ポリペプチド(抗低比重リポタンパク質(LDL)/抗Fc受容体(例えば、Fc.ガンマ.RI、Fc.ガンマ.RII、またはFc.ガンマ.RIII)等)、感染病の治療において使用するための二重特異性結合ポリペプチド(抗CD3/抗 単純ヘルペスウイルス(HSV)、抗T細胞受容体:CD3複合体/抗インフルエンザ、抗Fc.ガンマ.R/抗HIV等)、インビトロまたはインビボにおける腫瘍検出のための二重特異性結合ポリペプチド(抗CEA/抗EOTUBE、抗CEA/抗DPTA、抗p185HER2/抗ハプテン)、ワクチンアジュバントとしての二重特異性結合ポリペプチド(上述のFangerらを参照)、および診断ツールとしての二重特異性結合ポリペプチド(抗ウサギI gG/抗フェリチン、抗西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)/抗ホルモン、抗ソマトスタチン/拮抗物質P、抗HRP/抗FITC、抗CEA/抗.ベータ.-ガラクトシダーゼ(上述のNolanらを参照)等)が含まれる。三重特異性ポリペプチドの例には、抗CD3/抗CD4/抗CD37、抗CD3/抗CD5/抗CD37、および抗CD3/抗CD8/抗CD37が含まれる。 【実施例】 【0476】親抗体本発明の安定化抗体を産生するために、モデルヒト抗体(例えば、hu5c8)、その変異体抗体、あるいは対応するFc領域のいずれかをコードするポリヌクレオチドを、標準的な発現ベクターに導入した。ヒト抗体hu5c8およびその変 生するために、モデルヒト抗体(例えば、hu5c8)、その変異体抗体、あるいは対応するFc領域のいずれかをコードするポリヌクレオチドを、標準的な発現ベクターに導入した。ヒト抗体hu5c8およびその変異型は、例えば、米国特許第5,4 74,771号および同第6,331,615号に記載されている。アミノ酸配列は、それぞれ、hu5c8 IgG4重鎖(配列番号37)、hu5c8軽鎖(配列番号38)、hu5c 8 Fab(配列番号39)、親IgG4抗体(配列番号40)からの完全Fc部分、S228P変異を有する親IgG4 Fc部分(配列番号41)、およびS228P/T299A変異を有する親非グリコシル化IgG4 Fc部分(配列番号42)に対して、以下に提供され る。重鎖に対するリーダー配列は、MDWTWRVFCLLAVAPGAHSであった。また、親IgG1非グリコシル化されたhu5c8抗体の重鎖(配列番号43)およびFc部分(配列番号44配列も提供される。 【0477】・・・ 親IgG1(配列番号45)EPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWE SNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG・・・【0485】・・・IgG4 CH3インターフェイスにおいて、アルギニンの追加容積をより良好に適合さ せるために、反対のCH3ドメインか VMHEALHNHYTQKSLSLSPG・・・【0485】・・・IgG4 CH3インターフェイスにおいて、アルギニンの追加容積をより良好に適合さ せるために、反対のCH3ドメインからの接触残基D399:D399EおよびD399S で、いくつかの変異を行った(図2A)。この位置でのより小さい側鎖を置換することによって、反対のCH3ドメインは、アルギニンの追加容積をより良好に適合させ、CH3ドメインの全安定性を増加させ得る。・・・【0502】・・・ 実施例3.安定化IgGFc抗体の産生A.大腸菌における、安定化IgGFc部分の変異生成、一時的発現、および精製安定性変異を、StratageneQuik-ChangeLightning変異生成キットを用いた部位特異的突然変異誘発法によって、実施例2に既に詳述されるBRM13構造体に組み込んだ。1つまたはそれ以上のC/G塩基中で開始し、終結する、少なくとも 40%GC含量の両側に10~15塩基の正しい配列を有する中央に変異を有する36~40塩基長のプライマーを設計した。・・・【0507】B.CHO細胞における、安定化抗体の変異生成、一時的発現、抗体精製、および特性解析安定性変異は、StratageneQuik-ChangeLightning変異 生成キットを用いた部位特異的突然変異誘発法によって、IgG4.P抗体(アミノ酸228にプロリンヒンジ変異を既に含むVH構造体)に組み込まれた。Fabを認識する抗原は、抗CD40抗体5c8からのものであった。1つまたはそれ以上のC/G塩基中で開始し、終結する、少なくとも40%GC含量の両側に10~15塩基の正しい配列を有する中央に変異を有する36~40塩基長のプライマーを 抗体5c8からのものであった。1つまたはそれ以上のC/G塩基中で開始し、終結する、少なくとも40%GC含量の両側に10~15塩基の正しい配列を有する中央に変異を有する36~40塩基長のプライマーを設計した。全てのグリコシル化および非グリコシル化 された変異構造体を、表3.2に列記する。 【0508】【表10-1】 【0509】【表10-2】 変異を導入するプライマーを用いたPCR後、親プラスミドを完全に消化するために、37℃で5分間、DpnI制限酵素を加えて、各変異生成物を消化させた。次いで、変異生成反応物を、XL10-Gold大腸菌超形質転換受容性細胞に形質転換した。アンピシリン耐性コロニーをスクリーニングし、DNA塩基配列決定法を用いて、変異生成反応物からの正しい 配列を確認した。 【0541】実施例6.安定性を操作したIgGFc抗体のFc受容体結合本発明の非グリコシル化された変異体抗体のエフェクタ機能を、Fc受容体またはC1q等の補体分子に結合するそれらの能力によって特徴付けた。 【0542】A.液相競合Biacore実験Fcγ受容体への結合は、溶液親和性の表面プラズモン共鳴を用いて分析された(DayES,CacheroTG,QianF,SunY,WenD,Pelletier M,HsuYM,WhittyA.SelectivityofBAFF/BLySandAPRILforbindingtotheTNFfamilyreceptorsBAFFR/BR3 andBCMA.Biochemistry.20 05 Feb 15;44(6):1919-31を参照)。本方法は、リガンド結合(センサーチップ amilyreceptorsBAFFR/BR3 andBCMA.Biochemistry.20 05 Feb 15;44(6):1919-31を参照)。本方法は、リガンド結合(センサーチップに結合するタンパク質結合)の初期速度は、溶液中のリガンドの濃度に比例する、 いわゆる「物質移動限界」結合の条件を使用する(BIApplicationsHandbook(1994)Chapter6:Concentrationmeasurement,pp6-1-6-10,PharmaciaBiosensorABを参照)。これらの条件下で、チップ上の固定化したタンパク質への可溶性検体(チップ表面上を流れるタンパク質)の結合は、チップ表面上のデキストランマトリックスへの検体の拡散と比較して速 い。したがって、検体の拡散特性およびチップ表面上を流れる溶液中の検体の濃度は、検体がチップに結合する速度を決定する。この実験においては、溶液中の遊離Fc受容体の濃度は、固定化IgG1 MAbを含むCM5 Biacoreチップに結合する初期速度によって決定される。これらのFc受容体溶液に、安定性を操作した構造体を滴定した(下の表6.1を参照)。これらの構造体の半最大(50%)抑制濃度(IC50)は、センサーチップの表面 上に固定化した固定化IgG1抗体に結合することからFc受容体を抑制する能力によって示された。初期結合速度は、センサーグラム生データから得られた(図5)。IC50を計算するために使用された滴定曲線をCD64(FcγRI)については図6AおよびCD16(FcγRIIIaV158)については図6Bに示す。結果を表6.1に示し、2つの滴定の平均として報告する。 【0543】【表17】 CD64結合アッ びCD16(FcγRIIIaV158)については図6Bに示す。結果を表6.1に示し、2つの滴定の平均として報告する。 【0543】【表17】 CD64結合アッセイにおいては、IgG1対照抗体は、9.6μMのIC50を有したが、IgG1T299A(agly)およびIgG4.PT299A(agly)は、それぞれ、205μMおよび739μMのIC50を有した。予想通りに、IgG1分子は、IgG4分子よりもCD64に対してより大きな親和性を有し、非グリコシル化されたIgG1は、 グリコシル化されたIgG1と比較して低下した親和性を示した。安定性を操作したグリコシル化されたIgG4.P分子(EC300およびEC326)は、440μMから5000μMを超える範囲に及ぶ安定性を操作した非グリコシル化されたIgG4.P分子(EC331およびYC400シリーズ)と比較して、約8μMのIC50値を有した。安定性を操作したIgG4.Pグリコシル化された分子(EC300、EC326)に対するIC50は、グリ コシル化されたIgG1対照と同等であり、T299A(YC401、YC403)を有する安定性を操作した非グリコシル化されたIgG4.Pは、非グリコシル化されたIgG4.PT299A対照と同等のIC50の対数を有した。しかしながら、T299Kを有する安定性 を操作した非グリコシル化されたIgG4.Pは、T299A置換を有する等価分子と比較して、親和性の1から2対数大きい低下を示した。図7A。また、この結果は、非グリコシル化されたIgG1T299A対照と比較して、親和性の対数低下を示した安定性を操作した非グリコシル化されたIgG1T299K(CN578)についても観測された(図7B)。実際、T299K置換 リコシル化されたIgG1T299A対照と比較して、親和性の対数低下を示した安定性を操作した非グリコシル化されたIgG1T299K(CN578)についても観測された(図7B)。実際、T299K置換は、非グリコシル化されたIgG4.PT299A対照よりもCD64に 対してより大きな親和性を有することから、非グリコシル化されたIgG4.P対照と比較して、非グリコシル化されたIgG1(T299K)に対して低下した親和性を有することへと、非グリコシル化されたIgG1(T299A)分子を転換する(図7B)。簡潔に言えば、T299K変異は、IgG1分子およびIgG4分子の両方において、CD64に対する親和性を低下させる。 【0544】CD16アッセイについては、IgG1対照は、105μMのIC50を有したが、非グリコシル化されたIgG4.PT299AおよびIgG1 T299Aは共に、1000μMを超えるIC50値を有した。グリコシル化された安定性を操作したIgG4.P分子は、IgG1対照に対して同等の対数IC50値を有し、全ての安定性を操作した非グリコシル化さ れた分子(IgG4.PおよびIgG1の両方)は、1000μMを超えるIC50値を有した。T299Kが、CD16対する親和性をさらに低下したかどうかを調査するために、唯一の差異(YC401、YC404、YC403、およびYC406)としてT299K置換を有する2セットの構造体を高濃度の抗体(5μM)で試験した。結合曲線は、高濃度で、T299K変異によって生じるCD16に対する親和性の低下を示す(図8)。簡潔に言えば、T 299K変異は、IgG分子において、CD16に対する親和性を低下させる。 【0556】・・・実施例9.T299は、安定性およびエフェクタ機 和性の低下を示す(図8)。簡潔に言えば、T 299K変異は、IgG分子において、CD16に対する親和性を低下させる。 【0556】・・・実施例9.T299は、安定性およびエフェクタ機能の決定因子である。 【0557】 本項に記載されるタンパク質は全て、5c8抗体に由来し、特に示さない限り、IgG1抗 体のCH1、CH2、およびCH3ドメインを含む。実施例3に記載されるように、タンパク質を産生し、精製した。CH2およびCH3ドメインの融解温度における変異の効果は、pH6.0およびpH4.5で、DSCによって測定された(実施例4に詳述)。本発明の非グリコシル化された変異体抗体のエフェクタ機能は、Fc受容体またはC1q等の補体分子に結合するそれらの能力によって特徴付けられた。Fcγ受容体への結合は、溶液親和性の表面プラ ズモン共鳴を用いて分析され、補体因子C1qへの結合は、ELISAによって分析された(実施例6)。 【0558】IgG1 T299XおよびN297X/T299Kの非グリコシル化された構造体は、実施例3に詳述されるように、1リットルの培養液当たり7から30mgの収量を有するCHO において発現した(表9.1)。T299Kと組み合わせて位置N297における第2の変異への添加により、1.5-4.4℃で、CH2ドメインの熱安定性は減少しなかった(表9. 2)。さらに、T299X変異は、Arg(T299R)およびLys(T299K)の正電荷を持つ側鎖から最大の安定性の増加を示した(表9.2)。2つの極性側鎖のAsn(T299N)およびGln(T299Q)は共に、正電荷を持つ側鎖ほど大きくはないが、T29 9Aと比較して、より大きな安定性を示した。プロリン(T299P)は、T299Aと の極性側鎖のAsn(T299N)およびGln(T299Q)は共に、正電荷を持つ側鎖ほど大きくはないが、T29 9Aと比較して、より大きな安定性を示した。プロリン(T299P)は、T299Aと比較して安定性のわずかな低下を示し、より大きな疎水性側鎖Phe(T299F)は、2.4℃で、CH2ドメインの熱安定性を低下させた。最後に、負電荷を持つ側鎖Glu(T299E)は、CH2の熱安定性に対してほとんど効果を及ぼさなかった。これらの結果は、CH2ドメインにおける熱安定性を増加させるために、位置T299に正電荷を持つ側鎖を置換する 新規の特性を示す。 【0559】N297X、T299K変異(CN645、CN646、およびCN647)は全て、CD64に対する親和性を若干増加させたが、CD32aおよびCD16に対する非常に低い親和性を維持することが観察される(図11B、11D、および11F)。T299X変異は、C D16に対して一貫して低親和性を示したが、CD32aに対する低親和性は、T299Eの 場合には、増加した(表9.3および図11C、9E)。また、正電荷を持つ側鎖T299RおよびT299Kのみが、CD64に対して低親和性を与えることを示すことも興味深い(表9.3および図11A)。最後に、T299K、T299P、およびT299Qは、C1q結合の痕跡がなく、T299N、T299E、T299Fは、若干上昇したが、それでも非常に低いC1qへの結合を示す(図11Gおよび11H)。N297P/T299K、N297D /T299K、およびN297S/T299Kは、C1qへの結合を示さない(図11H)。 【0560】【表19-1】 【0561】 【表19-2】 実施例10.安 299K、およびN297S/T299Kは、C1qへの結合を示さない(図11H)。 【0560】【表19-1】 【0561】 【表19-2】 実施例10.安定化Fc構造体は、安定性変異の適用は、Fabから独立していることを示す本項に記載されるタンパク質は、5c8抗体に由来する結合部位を含む。EAG2476構造体は、IgG4免疫グロブリン分子からのFc部分を含み、EAG2478は、IgG1分 子からのFc部分を含む(EAG2476およびEAG2478は、それぞれ、YC406およびCN578構造体のFc版(Fabなし)である)。 【0562】実施例3に記載されるように、タンパク質を産生し、精製した。CH2およびCH3ドメインの融解温度における変異の効果は、pH6.0で、DSCによって測定された(実施例4に 詳述)。本発明の非グリコシル化された変異抗体のエフェクタ機能を図12に示す。抗体は、Fc受容体に結合するそれらの能力によって特徴付けられた。Fcγ受容体への結合は、溶液親和性の表面プラズモン共鳴を用いて分析された(実施例6)。 【0563】 安定化Fc非グリコシル化された構造体は、実施例3に詳述されるようにCHOにおいて発現され、収量は(表10.1)に詳述する。。CH2ドメイン(T299K、T307P、およびL309K)における変異は、Fabの存在または不在下で、同じ熱安定性を示し(表10.2)、ならびに、同じFcγ受容体結合親和性を有した(表10.3)。総合すれば、本発明に詳述される安定化変異は、予想通りに、Fabから独立しており、Fabが貢献している どうかにかかわらず、Fcドメインを安定化するのに適用可能である。 【0564】【表20】 明に詳述される安定化変異は、予想通りに、Fabから独立しており、Fabが貢献している どうかにかかわらず、Fcドメインを安定化するのに適用可能である。 【0564】【表20】 別紙4甲第11号証の記載事項(抜粋) 【特許請求の範囲】【請求項24】 図11で示されるHVR1-HC、HVR2-HCおよび/またはHVR3-HC配列(配列番号35~37)を含む重鎖可変ドメインを含む抗体。 【請求項27】図11で示されるHVR1-LC、HVR2-LCおよび/またはHVR3-LC配列(配列番号26~28)を含む軽鎖可変ドメインを含む抗体。 【請求項33】請求項24~26のいずれかに記載の重鎖可変ドメインおよび請求項27~29のいずれかに記載の軽鎖可変ドメインを含む抗体。 【請求項193】二重特異性抗体である請求項33記載の抗体。 【請求項194】CD3に特異的に結合する請求項193記載の抗体。 【請求項195】空洞への隆起(protuberance-into-cavity)抗体である請求項194記載の抗体。 【請求項196】 非グリコシル化される請求項195記載の抗体。 【請求項197】大腸菌宿主細胞中で産生される請求項196記載の抗体。 【請求項198】1つ以上のFcエフェクター機能を欠く請求項196記載の抗体。 【請求項199】 ADCC活性を欠く請求項198記載の抗体。 【発明の詳細な説明】【技術分野】【0002】本発明は、哺乳類における造血系腫瘍の治療に有用な物質の組成物に、ならびにそのための 物質の組成物の使用方法に関 項198記載の抗体。 【発明の詳細な説明】【技術分野】【0002】本発明は、哺乳類における造血系腫瘍の治療に有用な物質の組成物に、ならびにそのための 物質の組成物の使用方法に関する。 【背景技術】【0007】癌療法のための有効な細胞性標的を発見しようと試みて、研究者等は、1つ以上の正常非癌性細胞(単数または複数)と比較して、1つ以上の特定型(単数または複数)の癌細胞の表面 で特異的に発現される膜貫通または他の膜関連ポリペプチドを特定しようと努めてきた。しばしば、このような膜関連ポリペプチドは、非癌性細胞の表面と比較して、癌細胞の表面で豊富に発現される。このような腫瘍関連細胞表面抗原ポリペプチドの特定は、抗体ベースの療法による破壊のために癌細胞を特異的に標的にする能力を生み出した。この点で、抗体ベースの療法が、ある種の癌の治療に非常に有効であることが見出された、ということが注目される。例 えば、ヘルセプチン(登録商標)およびリツキサン(登録商標)(ともに、GenentechInc.,SouthSanFrancisco, California により製造される)は、それぞれ乳癌および非ホジキンリンパ腫を治療するのに首尾よく用いられている抗体である。さらに具体的には、ヘルセプチン(登録商標)は、ヒト上皮細胞増殖因子受容体2(HER2)癌原遺伝子の細胞外ドメインと選択的に結合する組換えDNA由来ヒト化モノクローナル抗体である。HER2タンパク質 過剰発現は、原発性乳癌の25~30%で観察される。リツキサン(登録商標)は、正常および悪性Bリンパ球の表面に見出されるCD20抗原に対して向けられる遺伝子操作キメラネズミ/ヒトモノクローナル抗体である。これらの抗体はともに、CHO細胞中で組換え的に産 キサン(登録商標)は、正常および悪性Bリンパ球の表面に見出されるCD20抗原に対して向けられる遺伝子操作キメラネズミ/ヒトモノクローナル抗体である。これらの抗体はともに、CHO細胞中で組換え的に産生される。 【0008】 癌療法のための有効な細胞性標的を発見するための他の試みでは、研究者等は、(1)1つ 以上の特定型(単数または複数)の非癌性正常細胞(単数または複数)と比較して、1つ以上の特定型(単数または複数)の癌細胞(単数または複数)により特異的に産生される非膜関連ポリペプチド、(2)1つ以上の正常非癌性細胞(単数または複数)のものより有意に高い発現レベルで癌細胞により産生されるポリペプチド、あるいは(3)癌性および非癌性状態(例えば、正常前立腺および前立腺腫瘍組織)の両方における単一(または非常に限定された数の 異なる)組織型(単数または複数)にのみ、その発現が特異的に限定されるポリペプチドを特定しようと努めてきた。このようなポリペプチドは、依然として細胞内に位置するか、あるいは癌細胞により分泌され得る。さらに、このようなポリペプチドは、癌細胞それ自体によらずに、むしろ、癌細胞に及ぼす増強または増殖強化作用を有するポリペプチドを産生しおよび/または分泌する細胞により発現され得る。このような分泌ポリペプチドは、しばしば、正常細 胞を上回る増殖利点を癌細胞に提供するタンパク質であり、例としては、血管新生因子、細胞接着因子、増殖因子等が挙げられる。このような非膜関連ポリペプチドのアンタゴニストの特定は、このような癌の治療のための有効な治療薬として役立つと予期される。さらに、このようなポリペプチドの発現パターンの特定は、哺乳類における特定の癌の診断に有用である。 【0011】 FcRH5( うな癌の治療のための有効な治療薬として役立つと予期される。さらに、このようなポリペプチドの発現パターンの特定は、哺乳類における特定の癌の診断に有用である。 【0011】 FcRH5(またはIRTA2)は、Fc受容体ファミリーと相同性を有する細胞表面受容体である。それは普通は成熟B細胞中で発現され、そしてFcRH4(IRTA1)とは異なる末梢リンパ器官中の分布を示す。IRTA1は辺縁帯B細胞中で発現され、一方、IRTA2は胚中心細胞中および免疫芽細胞中でも発現される。IRTA2発現は、多発性骨髄腫、ならびに1q21異常を伴うバーキットリンパ腫細胞株において脱調節される(Milleret al., Blood 99: 2662-2669, 2002 参照)。B細胞悪性疾患における1q21構造再編成の高頻度の関与は、IRTA1およびIRTA2がこれらの疾患の病因に対して重要である、ということを示唆する(公開PCT出願番号WO 01/38490;米国公開特許出願番号20080292632参照;これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される)(Polson,etal. IntImmunol. 2006 Sep; 18(9): 1363-73 も参照)。 【0012】 FcRH5の発現を考えると、特に長期治療のために、患者に投与される際に、最小抗原性を有するかまたは全く有さないFcRH5抗原に対する治療用抗体を産生することは有益である。本発明は、このまたは他の要求を満たす。本発明は、一般的治療用組成物の制限を克服し、ならびに以下の詳細な説明から明らかになる付加的な利点を与える抗FcRH5抗体を提供する。 【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0019】本発明は 物の制限を克服し、ならびに以下の詳細な説明から明らかになる付加的な利点を与える抗FcRH5抗体を提供する。 【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0019】本発明は、抗FcRH5抗体またはその機能的断片、ならびに造血系腫瘍の治療におけるその使用方法に関する。 【0050】別の態様では、本発明は、FcRH5を発現する第一細胞と、ならびに細胞表面標的抗原を発現する第二細胞と結合し得る二重特異性抗体を提供する。一実施形態では、第二細胞はT細胞である。一実施形態では、細胞表面標的抗原はCD3である。ある実施形態では、二重特異性抗体は、空洞への隆起(protruberance-into-cavity)抗体である。一実施形態では、二重 特異性抗体は非グリコシル化される。一実施形態では、二重特異性抗体は、大腸菌宿主細胞中で産生される。一実施形態では、二重特異性抗体は、1つ以上のFcエフェクター機能を欠く。一実施形態では、二重特異性抗体はADCC活性を欠く。 【発明を実施するための形態】【0084】 アミノ酸残基/位置の「修飾」は、本明細書中で用いる場合、出発アミノ酸配列と比較した場合の一次アミノ酸配列の変化を指し、ここで、変化は、上記アミノ酸残基/位置に関連した配列変更に起因する。例えば典型的な修飾としては、別のアミノ酸残基による当該残基(または上記位置)の置換(例えば保存的または非保存的置換)、上記残基/位置に隣接する1つ以上の(一般的には5または3より少ない)アミノ酸の挿入、ならびに上記残基/位置の欠失が 挙げられる。「アミノ酸置換」またはその変形は、異なるアミノ酸残基による既定(出発)ア ミノ酸配列中の現存アミノ酸残基の取替えを指す。一般的には、そして好ましくは、 /位置の欠失が 挙げられる。「アミノ酸置換」またはその変形は、異なるアミノ酸残基による既定(出発)ア ミノ酸配列中の現存アミノ酸残基の取替えを指す。一般的には、そして好ましくは、修飾は、出発(または「野生型」)アミノ酸配列を含むポリペプチドと比較して、変異体ポリペプチドの少なくとも1つの物理生物化学的活性における変更を生じる。例えば抗体の場合、変更される物理生物化学的活性は、結合親和性、結合能力および/または標的分子に及ぼす結合作用であり得る。 【0142】「補体依存性細胞傷害性」または「CDC」は、補体の存在下での標的細胞の溶解を指す。 古典的補体経路の活性化は、補体系(Clq)の第一構成成分と、それらの同種の抗原と結合される(適切なサブクラスの)抗体との結合により開始される。補体活性化を査定するために、例えばGazzano-Santoroetal., J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載された ようなCDC検定が実施され得る。変更されたFc領域アミノ酸配列を有するポリペプチド変異体(変異体Fc領域を有するポリペプチド)、ならびに増大されたまたは低減されたClq結合能力は、例えば米国特許第6,194,551 B1号およびWO 1999/51642に記載されている。例えば、Idusogieetal. J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000)も参照されたい。 【0285】一態様では、ヒト化抗体およびキメラ抗体はともに一価である。一実施形態では、ヒト化およびキメラ抗体はともに、Fc領域と連結される単一Fab領域を含む。一実施形態では、参照キメラ抗体は、ヒトFc領域と結合される図2(配列番号11)および図4(配列番号1 ある。一実施形態では、ヒト化およびキメラ抗体はともに、Fc領域と連結される単一Fab領域を含む。一実施形態では、参照キメラ抗体は、ヒトFc領域と結合される図2(配列番号11)および図4(配列番号13)に示される可変ドメイン配列を含む。一実施形態では、ヒトFc領域は、IgGのもの (例えば、IgG1、2、3または4)である。 【0364】A. 抗FcRH5抗体一実施形態では、本発明は、治療薬として本明細書中で用途を見出し得る抗FcRH5抗体を提供する。抗体の例としては、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異性およ び異種接合体抗体が挙げられる。 【0412】5. 二重特異性抗体二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有する抗体である。例となる二重特異性抗体は、本明細書中に記載されるようなFcRH5タンパク質の2つの異なるエピトープと結合し得る。他のこのような抗体は、別のタンパク質に対する結合部 位を有するFcRH5結合部位を併有し得る。代替的には、抗FcRH5アームは、FcRH5発現細胞に細胞性防御機序を集中し、限局するために、T細胞受容体分子(例えば、CD3)、あるいはIgGに対するFc受容体(FcγR)、例えばFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)およびFcγRIII(CD16)のような白血球上のトリガー分子と結合するアームと組合され得る。二重特異性抗体は、FcRH5を発現する細胞に細胞傷害剤 を限局するためにも用いられ得る。これらの抗体は、FcRH5結合アーム、ならびに細胞傷害剤(例えば、サポリン、抗インターフェロン-α、ビンカアルカロイド、シリンA鎖、メトトレキサートまたは放射性同位体ハプテン)に結合するアームを 。これらの抗体は、FcRH5結合アーム、ならびに細胞傷害剤(例えば、サポリン、抗インターフェロン-α、ビンカアルカロイド、シリンA鎖、メトトレキサートまたは放射性同位体ハプテン)に結合するアームを有する。二重特異性抗体は、全長抗体または抗体断片(例えばF(ab‘)2二重特異性抗体)として調製することができる。 【0413】WO96/16673は二重特異性抗ErbB2/抗FcγRIII抗体を記載し、米国特許第5,837,234号は二重特異性抗ErbB2/抗FcγRI抗体を開示する。二重特異性抗ErbB2/抗Fcα抗体は、WO98/02463に示されている。米国特許第5,821,337号および第6,407,213号は、二重特異性抗ErbB2/抗CD3抗体 を教示する。CD3抗原上のエピトープおよび第二エピトープと結合する付加的二重特異性抗体が記載されている。例えば、米国特許第5,078,998号(抗-CD3/腫瘍細胞抗原);第5,601,819号(抗-CD3/IL-2R;抗-CD3/CD28;抗-CD3/CD45);第6,129,914号(抗-CD3/悪性疾患B細胞抗原);第7,112,324号(抗-CD3/CD19);第6,723,538号(抗-CD3/CCR5); 第7,235,641号(抗-CD3/EpCAM);第7,262,276号(抗-CD3 /卵巣腫瘍抗原);および第5,731,168号(抗-CD3/CD4IgG)を参照されたい。 【0414】二重特異性抗体を作製するための方法は、当該技術分野で既知である。全長二重特異性抗体の伝統的産生は、2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現に基づいており、ここで、2 つの鎖は異なる特異性を有する(Millsteinetal., Natu で既知である。全長二重特異性抗体の伝統的産生は、2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現に基づいており、ここで、2 つの鎖は異なる特異性を有する(Millsteinetal., Nature 305:537-539 (1983))。免疫グロブリン重鎖および軽鎖の無作為組合せのため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は10の異なる抗体分子の潜在的混合物を産生し、そのうち、1つだけが正しい二重特異性構造を有する。通常はアフィニティークロマトグラフィー段階により実行される正しい分子の精製は、かなり厄介であり、その生成収率は低い。類似の手順は、WO 93/08829に、そ してTrauneckeretal., EMBOJ. 10:3655-3659 (1991)に開示されている。 【0417】米国特許第5,731,168号に記載された別のアプローチによれば、抗体分子の対の間の界面は、組換え細胞培養から回収されるヘテロ二量体のパーセンテージを最大にするよう操作され得る。好ましい界面は、CH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第一 抗体分子の界面からの1つ以上の小アミノ酸側鎖が、より大きい側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置き換えられる。大型アミノ酸側鎖をより小さいもの(例えば、アラニンまたはトレオニン)で置き換えることにより、大きい側鎖(単数または複数)と同一または類似のサイズの代償性「空洞」が第二抗体分子の界面上に作られる。これは、ホモ二量体のような他の望ましくない最終産物に対してヘテロ二量体の産生を増大するための機序を提供す る。このアプローチに従って産生される二重特異性抗体は、本明細書中では「空洞への隆起」抗体として言及される。 【0423】6. ヘテロ接合体抗 産生を増大するための機序を提供す る。このアプローチに従って産生される二重特異性抗体は、本明細書中では「空洞への隆起」抗体として言及される。 【0423】6. ヘテロ接合体抗体ヘテロ接合体抗体も、本発明の範囲内である。ヘテロ接合体抗体は、2つの共有結合抗体か らなる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を望ましくない細胞に向けることが(米国特 許第4,676,980号)、ならびにHIV感染の治療のために(WO 91/00360、WO 92/200373およびEP 03089)、提案されている。抗体は、架橋剤が関与するものも含めて、合成タンパク質化学における既知の方法を用いて、invitro で調製され得る。例えば、免疫毒素は、ジスルフィド交換反応を用いて、またはチオエーテル結合を形成することにより、構築され得る。この目的のための適切な試薬の例としては、イミノチ オレートおよびメチル-4-メルカプトブチルイミデート、ならびに例えば米国特許第4,676,980号に開示されたものが挙げられる。 【0425】8. エフェクター機能操作例えば、抗体の抗源依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)(当裁判所注:甲第11号証 の対応日本語文献である「特表2012-522512号公報」では、「抗源依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)」と記載されているが、「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)」の誤りである。)および/または補体依存性細胞傷害性(CDC)を増強するために、エフェクター機能に関して本発明の抗体を修飾することが望ましい。これは、抗体のFc領域に1つ以上のアミノ酸置換を導入することにより達成され得る。代替的には、または付加的に、 システイン残基(単数ま ェクター機能に関して本発明の抗体を修飾することが望ましい。これは、抗体のFc領域に1つ以上のアミノ酸置換を導入することにより達成され得る。代替的には、または付加的に、 システイン残基(単数または複数)をFc領域に導入し、それにより、この領域における鎖間ジスルフィド結合形成を可能にし得る。このようにして生成されるホモ二量体抗体は、内在化能力が改良され得、および/または補体媒介性細胞殺害および抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)を増大し得る(Caronetal., J. ExpMed. 176:1191-1195 (1992)およびShopes,B. J. Immunol. 148:2918-2922 (1992)参照)。抗腫瘍活性増強を示すホモ二量体抗体は、 Wolffetal., CancerResearch 53:2560-2565 (1993)に記載されるようなヘテロ二官能性架橋剤を用いても調製され得る。代替的には、抗体は操作され、これは、二元性Fc領域を有し、それにより、増強された補体溶解およびADCC能力を有し得る(Stevensonetal.,Anti-CancerDrugDesign 3:219-230 (1989)参照)。抗体の血清半減期を増大するために、例えば、米国特許第5,739,277号に記載されたような抗体(特に抗体断片)中にサル ベージ受容体結合エピトープを組み入れ得る。本明細書中で用いる場合、「サルベージ受容体 結合エピトープ」という用語は、IgG分子のinvivo 血清半減期を増大するのに関与するIgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)のFc領域のエピトープを指す。 【0651】特に、グリコシル化およびFcエフェクター機能が必要 半減期を増大するのに関与するIgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)のFc領域のエピトープを指す。 【0651】特に、グリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合、例えば、治療用抗 体が細胞傷害性物質(例えば、毒素)と接合され、免疫接合体それ自体が腫瘍細胞崩壊において有効性を示す場合、全長抗体、抗体断片および抗体融合タンパク質が細菌中で産生され得る。全長抗体は、より大きな循環中半減期を有する。大腸菌中での産生は、より速く、且つより費用効率が高い。細菌中での抗体断片およびポリペプチドの発現に関しては、例えばU. S. 5,648,237 (Carteret. al.)、U.S. 5,789,199 (Jolyet al.)およびU.S. 5,840,523 (Simmonsetal.)(これは、発現および分泌を最適化するための翻訳開始領域(TIR)およびシグナル配列を記載する)(これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される)を参照されたい。発現後、抗体は可溶性分画中の大腸菌細胞ペーストから単離され、例えば、アイソタイプによってプロテインAまたはGカラムを通して精製され得る。最終精製は、例えばCHO細胞中で発現される抗体を精製するための プロセスと同様に実行され得る。 【0744】本発明の抗FcRH5抗体は、本明細書中の「抗体」の定義に包含される種々の形態で存在し得る。したがって、抗体は、全長または無傷抗体、抗体断片、ネイティブ配列抗体またはアミノ酸変異体、ヒト化、キメラまたは融合抗体、免疫接合体、ならびにその機能的断片を包含 する。融合抗体では、抗体配列は異種ポリペプチド配列と融合される。抗体は、Fc領域で修飾されて、所望のエフェクター 異体、ヒト化、キメラまたは融合抗体、免疫接合体、ならびにその機能的断片を包含 する。融合抗体では、抗体配列は異種ポリペプチド配列と融合される。抗体は、Fc領域で修飾されて、所望のエフェクター機能を提供し得る。本明細書中の節で詳細に考察されているように、適切なFc領域を用いて、細胞表面に結合された裸抗体は、例えば抗体依存性細胞性細胞傷害性(ADCC)を介して、または補体依存性細胞傷害性において補体を動員することにより、または他のいくつかの機序により、細胞傷害性を誘導し得る。代替的には、副作用また は治療的合併症を最小限にするために、エフェクター機能を排除するかまたは低減することが 望ましい場合、ある種の他のFc領域が用いられ得る。 【0824】一実施形態では、本発明は、いくつかの、しかし全てではない、エフェクター機能を保有する変更された抗体を意図するが、これはinvivo での抗体の半減期が重要であるが、ある種のエフェクター機能(例えば、補体およびADCC)は必要でないかまたは有害である多数の用 途のための望ましい候補となる。ある実施形態では、抗体のFc活性は、所望の特性のみが維持される、ということを保証するために測定される。invitro および/またはinvivo 細胞傷害性検定は、CDCおよび/またはADCC活性の低減/枯渇を確証するために実行され得る。例えば、Fc受容体(FcR)結合検定は、抗体がFcγR結合を欠く(それゆえ、ADCC活性を欠くと思われる)が、しかしFcRn結合能力を保持する、ということを保証する ために実行され得る。ADCCを媒介するための一次細胞、NK細胞はFc(RIII)のみを発現するが、一方、単球はFc(RI)、Fc(RII)およびFc(RIII)を発現する。造 とを保証する ために実行され得る。ADCCを媒介するための一次細胞、NK細胞はFc(RIII)のみを発現するが、一方、単球はFc(RI)、Fc(RII)およびFc(RIII)を発現する。造血系細胞上でのFcR発現は、RavetchandKinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-92(1991)の464ページの表3に要約されている。当該分子のADCC活性を査定するためのinvitro 検定の一例は、米国特許第5,500,362号または第5,821,337号に 記載されている。このような検定のために有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。代替的には、または付加的には、当該分子のADCC活性は、invivo で、例えばClynesetal. PNAS (USA) 95:652- 656 (1998)に開示されたような動物モデルで査定され得る。C1q結合検定は、抗体がC1qを結合できず、それゆえCDC活性を欠く、ということを確証するためにも用いられ得る。 補体活性化を査定するために、例えば、Gazzano-Santoroetal., J. Immunol. Methods202:163 (1996)に記載されたようなCDC検定が実施され得る。FcRn結合およびinvivoクリアランス/半減期確定も、当該技術分野で既知の方法を用いて実施され得る。 【0828】実施例1:FcRH5を結合する抗体の調製 この実施例は、FcRH5を特異的に結合し得るモノクローナル抗体の調製を例証する。 【0829】モノクローナル抗体を産生するための技法は当該技術分野で知られており、例えば、Goding(上 、FcRH5を特異的に結合し得るモノクローナル抗体の調製を例証する。 【0829】モノクローナル抗体を産生するための技法は当該技術分野で知られており、例えば、Goding(上記)に記載されている。用いられ得る免疫原としては、精製FcRH5、FcRH5を含有する融合タンパク質、ならびに細胞表面に組換えFcRH5を発現する細胞が挙げられる。免疫原の選択は、過度の実験を伴なわずにう、当業者によりなされ得る。 【0849】D. ヒト化抗ヒトFcRH5抗体10A8の生成残基番号は、カバト(Kabatetal., Sequencesofproteinsofimmunologicalinterest, 5thEd., PublicHealthService, NationalInstitutesofHealth,Bethesda, MD (1991))に従った。一文字アミノ酸記号を用いる。IUBコードを用いて、D NA縮重を表す(N=A/C/G/T、D=A/G/T、V=A/C/G、B=C/G/T、H=A/C/T、K=G/T、M=A/C、R=A/G、S=G/C、W=A/T、Y=C/T)。 【0850】1.ヒト化抗-FcRH5 抗体移植片 種々のヒト化抗FcRH5抗体を生成した。ネズミFcRH5抗体(10A8)からのVLおよびVHドメインを、ヒト共通VLカッパ(huKI)およびヒト亜群III共通VH(huIII)ドメインと整列させた。ヒト共通配列カッパIを伴うネズミ10A8の軽鎖可変ドメインのアラインメントを、図9に示す。ネズミ10A8(mu10A8)からの超可変領域を、受容体ヒト共通フレームワーク中に操作して、MA10A8の直接HVR移植片(本明細 うネズミ10A8の軽鎖可変ドメインのアラインメントを、図9に示す。ネズミ10A8(mu10A8)からの超可変領域を、受容体ヒト共通フレームワーク中に操作して、MA10A8の直接HVR移植片(本明細 書中では、「10A8移植片」または10A8移植「ヒト化抗体」または「hu10A8移植片」と呼ぶ)を生成した。哺乳類シグナル配列、ヒトVカッパI可変ドメインに関する共通配列、およびヒト定常カッパIドメインを含有する哺乳類発現ベクター上に、10A8のCDRを操作した。ネズミ残基は、ドナーmAbから受容体プラスミドへは移入されなかった。 Kunkle 突然変異誘発プロトコールに従って、各CDRをコードする単一オリゴヌクレオチ ド、および受容体プラスミドのssDNAを用いて、CDRを移入した。移植した残基、なら びにその結果生じたヒト10A8バージョン(hu10A8v1)軽鎖可変ドメイン(配列番号19)を、図9に示す。 【0851】同様に、哺乳類シグナル配列、ヒト重鎖亜群IIIの共通配列、および全長ヒトIgG1定常ドメインをコードする配列を含有するベクター上に、ネズミ10A8(mu10A8)の重 鎖可変ドメインのCDRを操作した。ネズミ残基は、ドナーmAbから受容体プラスミドへは移入されなかった。ネズミ10A8重鎖可変ドメイン、移植されたヒト亜群III可変ドメイン残基のアラインメント、ならびにその結果生じたヒト10A8バージョン(hu10A8v1)重鎖可変ドメイン(配列番号21)を、図10に示す。 【0920】 実施例11: FcRH5二重特異性抗体の産生および特性化抗CD3/FcRH5二重特異性抗体の構築および産生 FcRH5二重特異性抗体、具体的には抗CD3/FcRH5 空洞への隆起 実施例11: FcRH5二重特異性抗体の産生および特性化抗CD3/FcRH5二重特異性抗体の構築および産生 FcRH5二重特異性抗体、具体的には抗CD3/FcRH5 空洞への隆起二重特異性抗体の構築を、以下に記載する。 【0921】種々の空洞への隆起二重特異性抗体は、以前に記載されている(例えば米国特許第5,73 1,168号および第7,183,076号;Ridgwayetal., Prot. Eng. 9:617-621(1996);Atwelletal., J. Mol. Biol. 270:26-35 (1997);Merchantetal., Nat.Biotechn. 16:677-681 (1998)参照)。ある場合には、Chamowetal. J. Immunol. 153:4268(1994)により前に記載されたヒト化抗CD3/CD4-IgGキメラ間のCH3界面を操作して、発現構築物で同時トランスフェクトされた哺乳類細胞株から回収され得るヘテロ多量体の パーセンテージを最大にした。本明細書中で用いる場合、「ヘテロ多量体」は、少なくとも第一のポリペプチドおよび第二のポリペプチド(ここで、第二のポリペプチドはアミノ酸配列の少なくとも1つのアミノ酸残基が第一のポリペプチドと異なる)を含む分子、例えば二重特異性抗体を指す。 【0922】 前段落中で引用した文書に記載されているように、ヘテロ多量体形成を行なうために用いる 戦術は、第一ポリペプチド、例えば抗体H鎖のCH3ドメイン中に1つ以上の「隆起」を導入すること、そしてさらにまた、第二ポリペプチド、例えば第二抗体H鎖のCH3ドメイン中に1つ以上の対応する「空洞」を導入することに頼っている。「隆起」突然 鎖のCH3ドメイン中に1つ以上の「隆起」を導入すること、そしてさらにまた、第二ポリペプチド、例えば第二抗体H鎖のCH3ドメイン中に1つ以上の対応する「空洞」を導入することに頼っている。「隆起」突然変異は、小アミノ酸をより大きいものに置き換え、そして「空洞」突然変異は、大型アミノ酸をより小さいもので置き換えた。さらに、隆起および空洞突然変異のほかに、遊離チオール含有残基が2つのポリ ペプチド、例えば2つのCH3ドメインの界面に導入されたが、これは、ヘテロ多量体の形成を増強することが示された。ポリペプチド界面に導入される種々の例となる空洞への隆起突然変異および遊離チオール含有残基が記載されている。例えば米国特許第5,731,168号および第7,183,076号;Ridgwayetal., Prot. Eng. 9:617-621 (1996);Atwelletal., J. Mol. Biol. 270:26-35 (1997);Merchantetal., Nat. Biotechn. 16:677- 681 (1998)を参照されたい。 【0923】以下の工程を実行して、抗CD3/FcRH5二重特異性抗体を産生した。ネズミ抗CD3モノクローナルAb UCHT1のヒト化抗CD3軽鎖(L)および重鎖(H)変異体をコードする大腸菌発現プラスミド(米国特許第5,821,337号および第6,407,213 号;Shalabyetal., J. Exp. Med. 175: 217 [1992]およびRodriguesetal., Int. J.Cancer (Suppl.) 7: 45 [1992]))を構築する。多数の適切な大腸菌発現プラスミド、例えばpAK19が、当該技術分野で知られている(Carte etal., Int. J.Cancer (Suppl.) 7: 45 [1992]))を構築する。多数の適切な大腸菌発現プラスミド、例えばpAK19が、当該技術分野で知られている(Carteretal., Bio/Tehcnology 10:163-167(1992))。ヒト化抗CD3H鎖の(上記のような)CH3ドメイン中に隆起または空洞を導入する突然変異は、例えば部位特異的突然変異誘発により成される。種々の部位特異的突然変異 誘発方法が、当該技術分野で周知である(例えばKunkeletal., MethodsEnzymol.154:367-382 (1987)参照)。さらに、ヒト化抗FcRH5軽鎖および重鎖、例えば本明細書中に記載されるようなヒト化抗FcRH5軽鎖および重鎖をコードする大腸菌発現プラスミドが、構築される。ヒト化抗FcRH5H鎖の(上記のような)CH3ドメイン中に対応する空洞(抗CD3ドメインが隆起突然変異を有する場合)または対応する隆起(抗CD3ドメイン が空洞突然変異を有する場合)を導入する突然変異は、例えば部位特異的突然変異誘発により 作製される。 【0924】二重特異性抗CD3/FcRH5抗体は、当該技術分野で知られている方法を用いて、上記のような大腸菌発現プラスミドを、適切な大腸菌株、例えば33B6中で形質転換することにより産生される(例えばRodriguesetal., CancerRes. 55:63-70 (1995)参照)。前に記載 されたように、10L発酵器中で増殖させた形質転換大腸菌により、抗体は分泌される(Carteretal., Bio/Technology 10:163-167 (1992))。当該技術分野で既知の手法を用いて、抗体 発酵器中で増殖させた形質転換大腸菌により、抗体は分泌される(Carteretal., Bio/Technology 10:163-167 (1992))。当該技術分野で既知の手法を用いて、抗体は精製され、分析される(例えばAtwelletal., J. Mol. Biol. 270:26-35(1997)参照)。 【0925】 細胞結合検定:B細胞およびT細胞を結合する抗CD3/FcRH5二重特異性抗体の能力を査定するために、当該技術分野で既知の標準手法に従ってフィコール勾配を用いて、ヒト末梢白血球を健常ドナーからの全血から単離する。約100万個の細胞を、PBS中に0.5%BSAおよび2mMのEDTAを含有する緩衝液中で氷上で、抗CD3/FcRH5二重特異性抗体とともにインキュベートする。次いで、細胞を洗浄し、メーカーのプロトコールに従っ て、CD8-APCおよび抗CD138-PEおよび抗CD38-PerCP-Cy5抗体とともにFITC接合ヤギ(Fab’)2抗ヒトIgGで染色し(BDBiosciences, SanDiego,CA)、Flowjoソフトウェア(TreeStar, Ashland, OR)を用いて分析を実行する。 【0926】invitro 細胞殺害検定:EJM-FcRH5.LSP.2多発性骨髄腫細胞(ヒトFcR H5で安定的にトランスフェクトされたEJM細胞、DSMZ ACC-560)を標的細胞として用いて、総ヒト末梢白血球またはCD8+T細胞と同時培養する。CD8+T細胞を用いる場合、96ウェル丸底プレート中でCD8プラスT細胞単離キット(MiltenyiBiotech,Auburn, CA)を用いて、陰性選別により、ヒトPBMCからそれらを精製する。20,00 いる場合、96ウェル丸底プレート中でCD8プラスT細胞単離キット(MiltenyiBiotech,Auburn, CA)を用いて、陰性選別により、ヒトPBMCからそれらを精製する。20,000EJM-FcRH5.LSP.2細胞を、抗CD3/FcRH5二重特異性抗体とともに、 または伴わずに、標的:エフェクター=1:10の比率でウェル当たりで付加する。約19時 間後、メーカーのプロトコール(BDBiosciences, SanDiego, CA)に従って、細胞を標識化抗CD38-FITCおよび抗CD138-PEで染色し、Fluoresbrite(登録商標)較正等級6.0ミクロンYGマイクロスフェア(Polysciences, Inc., Warrington,PA)と混合する。前方/側方散乱のゲーティングおよびCD38-CD138染色により、FACS分析を実行する。標準手法によりヨウ化プロピジウム染色を用いて、死細胞を排除す る。以下の方程式に従って、抗CD3/FcRH5二重特異性抗体の特異的殺害活性を算定する:特異的殺害%=(1-処理を受けた生EJM-FCRH5.LSP.2細胞の数/エフェクター中の生EJM-FCRH5.LSP.2細胞&抗-CD3/FcRH5二重特異性抗体を伴わないEJM-FCRH5.LSP.2の数)x100)。 【0927】 invivo 効力:EJM-FcRH5.LSP.2多発性骨髄腫細胞を、末梢血単核球と混合し、雌NOD.CD17-Prkdcscid/Jマウス(CharlesRiversLaboratories,Wilmington, MA)の右胸脇腹部に皮下注射する。次いで、接種マウスを対照および処置群に分ける。対照群には、ビヒクルまたは抗CD3/Her2対照二重特 versLaboratories,Wilmington, MA)の右胸脇腹部に皮下注射する。次いで、接種マウスを対照および処置群に分ける。対照群には、ビヒクルまたは抗CD3/Her2対照二重特異性抗体を投与する。処置群には、抗CD3/FcRH5二重特異性抗体を投与する。二重特異性抗体を0.01~10 mg/kgの範囲で投与する。細胞接種後1~2時間以内に、対照および処置群に静脈内投与し、5連続日の間、毎日反復する。週2回、カリパスを用いて、2つの寸法(長さおよび幅)で腫瘍を測定する。週2回、マウスを臨床的にモニタリングする。実験終了時に、対照-処置動物の腫瘍サイズを、抗CD3/FcRH5二重特異性抗体処置動物の腫瘍サイズと比較して、抗CD3/FcRH5二重特異性抗体処置の効力を査定する。 別紙5当事者の主張 1 取消事由1(甲2に基づく新規性・進歩性欠如に係る認定・判断の誤り)について【原告の主張】 (1) 甲2発明の認定の誤りア相違点1がないこと(ア) 本件審決は、甲第2号証の記載に関し、①前記アミノ酸変異を欠く親ポリペプチド(IgG1抗体)と比較してFcγ受容体に対する結合活性が低下していることの記載を認めた一方で、②IgG1のFc 領域を構成するアミノ酸において234位及び235位の変異が生じていること及び③変異の導入されるFc領域がIgG2~4抗体由来であり得ることの記載は認めなかった(相違点1)。 しかし、上記②は、甲第2号証に組み込まれた文献の内容に鑑みれば、甲第2号証に記載されているか、又は記載されているに等しい事項であ る。さらにいえば、④234位及び235位の変異によってFcγ受容体に対する結合活性が低下していることも、甲第2号証に記載され 甲第2号証に記載されているか、又は記載されているに等しい事項であ る。さらにいえば、④234位及び235位の変異によってFcγ受容体に対する結合活性が低下していることも、甲第2号証に記載されているか、記載されているに等しい事項である。 すなわち、甲第2号証の段落【0222】及び【0223】では、「エフェクタ機能」(すなわちFc領域におけるFcγ受容体に対する 結合活性)の変化をもたらすために、本件優先日当時に周知技術であった国際公表第WO06/019447A1(甲38の1)及び同WO99/58572A1(甲39の1)で開示されているアミノ酸位置の1つ以上の変化(置換)を含むことができる、ということが示されている。 そして、上記で言及されている国際公表第WO06/019447A 1号(甲38の1)及び同第WO99/58572A1(甲39の1) と、前者の国際出願の日本における国内移行手続である出願の公表特許公報(甲38の2)及び後者の国際出願の日本における国内移行手続である出願の特許公報(甲39の2)には、Fc領域のアミノ酸の234位及び235位の変異が生じること、及びそれがFcγ受容体に対する結合活性を低下させることが、明確に示されていた。 したがって、甲第2号証の段落【0222】及び【0223】には、同段落で言及されている周知技術たる国際公表第WO06/019447A1号及び同第WO99/58572A1(甲38の1及び甲39の1)の開示を通じて、Fc領域における234位及び235位が変異しており、かつそれによりFcγ受容体に対する結合活性を低下している 上述のポリペプチドが示されていたといえる。 (イ) また、甲2発明は、Fcγ受容体に対する結合活性が低下しているFc領域に変異を生じ つそれによりFcγ受容体に対する結合活性を低下している 上述のポリペプチドが示されていたといえる。 (イ) また、甲2発明は、Fcγ受容体に対する結合活性が低下しているFc領域に変異を生じているポリペプチドであるところ、当時の技術常識を参酌すれば、当該変異に234位及び235位の変異を含むことが導き出されるから、上記②(234位及び235位のアミノ酸に 変異が生じていること)は、甲第2号証に記載されているか、又は記載されているに等しい事項である。 すなわち、本件優先日当時に公知であった文献等のうち、①甲第28号証(審判事件における乙17。以下では、「〔乙17〕」などという。)には、IgG1のFc領域にL234A、L235A変異を導入するこ とにより、ADCC(抗体依存性細胞傷害)、ADCP(抗体依存性細胞貪食)、サイトカインストームといったエフェクター機能を抑制したことが記載されており、この記載がFcγ受容体との結合の関連において位置づけられ、②甲第29号証(〔乙18〕)には、IgG1の234位及び235位のアミノ酸に同時に変異を入れることにより複数のFc γRに対して抗体濃度を高くしても、最大半量結合が達成されないほど にFcγRとの親和性が低下する旨が記載されており、③甲第30号証(〔乙19〕)には、IgG1の234位及び235位のアミノ酸に同時に変異を入れること(特にL234A及びL235AからなるいわゆるLALA変異)によりFcγRとの結合が著しく弱まることが記載されており、④甲第33号証(〔乙22〕)には、IgG1又はIgG4の2 34位及び235位のアミノ酸同時変異を含む多数の変異体においてIgG野生型と比較して各種Fcγ受容体への結合が低下していることが記載されており、⑤甲 乙22〕)には、IgG1又はIgG4の2 34位及び235位のアミノ酸同時変異を含む多数の変異体においてIgG野生型と比較して各種Fcγ受容体への結合が低下していることが記載されており、⑤甲第34号証(〔乙23〕)には、IgG1又はIgG4の234位及び235位のアミノ酸同時変異を含む多数の変異体においてIgG野生型と比較してFcγRIへの結合が低下していること が記載されている。さらに、L234A/L235A変異(LALA変異として知られている)、すなわち234位及び235位のアミノ酸をアラニンに変異させることとそれによるFcγ受容体への結合活性の低下が1990年代から知られていた(甲47)。 以上のとおり、本件優先日当時、FcγR結合親和性を低下させるた めに234位及び235位のアミノ酸に同時に変異を導入することを示した文献は数多く存在し、当該変異は技術常識にすぎなかった。この点は、本件審決でも、サポート要件の充足性を認めるにあたって、「本件明細書の【0124】には234Vや235Aの変異体が公知であること」が記載されていると指摘されており、234位や235位の変異が 当業者において当然に知られていることを判断の前提としている。 したがって、当業者が、本件優先日当時の技術常識を参酌すれば、甲2発明の変異として234位及び235位のアミノ酸変異を導入できることは明らかであった。よって、当時の技術常識を参酌すれば、甲2発明の変異に234位及び235位の変異を含むことが記載されていたに 等しいものといえる。 (ウ) さらに、甲第2号証の段落【0205】には、「好ましい実施形態においては、親Fcポリペプチドは、抗体として、そして好ましくは、例えば、サブタイプIgG1、IgG2、IgG3、 (ウ) さらに、甲第2号証の段落【0205】には、「好ましい実施形態においては、親Fcポリペプチドは、抗体として、そして好ましくは、例えば、サブタイプIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4のIgG免疫グロブリン、そして好ましくはサブタイプIgG1もしくはIgG4のIgG免疫グロブリンである」こと、段落【021 1】には「本発明の親Fcポリペプチドを産生するために有用なFc部分は、多数の異なる源から得ることができる。…さらに、Fcは、…IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む、任意の免疫グロブリンイソタイプに由来することができる。好ましい実施形態においては、ヒトイソタイプIgG1またはIgG4が使用される」 ことが記載されていた。したがって、甲2発明は、前記①の構成(Fcγ受容体に対する結合活性が低下していること)及び前記②の構成(234位及び235位のアミノ酸に変異が生じていること、さらには前記④の構成)のみならず、前記③の構成(変異の導入されるFc領域がIgG2~4抗体由来であり得ること)をも具備していること は明らかである。 (エ) まとめしたがって、本件審決は、甲2発明が前記(ア)の①から③までの構成を具備していることを認定しなかったことについて誤りがある。 イ相違点2がないこと (ア) また、本件審決は、本件訂正発明1と甲2発明の対比において、相違点2を認定し、甲2発明が、⑤変異しているFc領域を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有するものであることを認定しなかった。 (イ) しかし、甲第2号証の段落【0128】には「2つの非同一のFc 部分のヘテロ二量体であり得る」こと、段落【0207】には「本発 明のポリペプチドは とを認定しなかった。 (イ) しかし、甲第2号証の段落【0128】には「2つの非同一のFc 部分のヘテロ二量体であり得る」こと、段落【0207】には「本発 明のポリペプチドは、異なる配列組成である少なくとも2つのFc部分を含むFc領域(すなわち、本明細書において「異種Fc領域」と称される)を含むことができる」ことが記載されている。また、段落【0485】では、いわゆる「KnobintoHole」の説明があり、これは「異種Fc領域」の具体的実施形態の1つが、その導入根拠と共に、 説明されていることに他ならない。 よって、甲2発明が「該変異しているFc領域を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有する」ことは甲第2号証に記載されており、相違点2は認められず、本件審決はこの点でも誤っている。 (ウ) これに対し、被告は、甲第2号証に記載される「異種Fc領域」に ついて、何らの技術的意義も記載されていないから、具体的な技術的思想として抽出できないなどと主張する。 しかし、本件訂正発明において、Fc領域が互いに異なることの技術的意義などどこにも記載されていない。特殊な調整をした場合にはKnobintoHole 変異として技術的意義を持ち得るが、Fc領域が互い に異なるなどということは、ほぼ特定の意義をなさないほどに広範な、発明特定事項のうちのごく一部の話である。 仮に、本件訂正発明において、Fc領域が互いに異なるとの構成要素が認定できたとしても、Fc領域に変異を導入することは、その目的が安定化であるにせよ、Fcγ受容体に対する結合活性の低下であるにせ よ、甲第2号証に明確に開示されている事項なのであるから、そのような実施形態の一例として必然的に「異種Fc領域」が想定できること 定化であるにせよ、Fcγ受容体に対する結合活性の低下であるにせ よ、甲第2号証に明確に開示されている事項なのであるから、そのような実施形態の一例として必然的に「異種Fc領域」が想定できることはあまりにも明らかである。 したがって、「異種Fc領域」の記載が抽象的であり、具体的な技術的思想が抽出できないなどということはあり得ない。 ウ被告主張の更なる相違点が存在しないこと (ア) 被告は、甲2発明には「癌抗原及びT細胞受容体複合体に結合する」「典型的なWholeIgG型の二重特異性抗体」が記載されていないと主張し、この点を更なる相違点として認定すべきであると主張する。 (イ) しかしながら、甲第2号証には「典型的なWholeIgG型」 の「抗体」が記載されている。甲第2号証の記載から明らかなように、甲2発明が主として技術的範囲に含むものは抗体である。そして、完全長抗体などは抗体の最たる例であり、当業者が真っ先に想定するものであって、何ら特殊な実施形態ではない。したがって、甲第2号証には、完全長抗体であるIgG型の抗体、すなわち、被告が「典型的 なWholeIgG型の」「抗体」などと表現する具体的な技術的思想が記載されていたことは明らかである。 (ウ) そして、甲第2号証の段落【0391】及び【0392】には、「腫瘍細胞抗原に対する少なくとも1つのアーム、および細胞毒性誘引分子に対する少なくとも1つのアームを有する二重特異性の変化し た結合タンパク質」として、CD3(T細胞受容体複合体の一部を構成する補助分子)と癌抗原に結合する二重特異性抗体が、具体例により多数列挙されており、甲第2号証には「癌抗原及びT細胞受容体に結合する」「二重特異性抗体」が記載されている。甲第2号証のこれら 部を構成する補助分子)と癌抗原に結合する二重特異性抗体が、具体例により多数列挙されており、甲第2号証には「癌抗原及びT細胞受容体に結合する」「二重特異性抗体」が記載されている。甲第2号証のこれらの段落では、「癌抗原及びT細胞受容体複合体に結合する典型的なWh oleIgG型の二重特異性抗体」が、むしろ主要な実施形態の1つとして、具体的に記載されているものである。 (エ) したがって、被告が主張する更なる相違点は認められない。 (2) 本件訂正発明1と甲2発明の相違点の認定(新規性があると判断したこと)の誤り ア相違点1について 本件審決は、本件訂正発明1と甲2発明の対比において相違点1を認定したが、このような相違点が存在しないことは、前記(1)アで説明した甲第2号証の記載から明らかである。 よって、本件審決が本件訂正発明についてそのような誤った要旨認定に基づいて相違点1を認定したことは誤りである。なお、前記(1)ア(ア) で説明した甲第2号証の段落【0222】及び【0223】における記載に基づけば、仮に、本件訂正発明に関する本件審決の誤った要旨認定を前提としても、相違点1は存在しない。本件審決がこれを看過して本件訂正発明の新規性を認めたことは誤りである。 イ相違点2について また、本件審決は、相違点2も認定しているが、甲第2号証において、変異しているFc領域を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有する構成が示されていることは、前記(1)イで説明したとおりである。 したがって、本件審決が相違点2を認定し、新規性を認めたことも誤 りである。 (3) 進歩性の判断の誤りア仮に、本件審決の認定する相違点1が存在したとしても、以下に述べるとおり、本件訂正発 がって、本件審決が相違点2を認定し、新規性を認めたことも誤 りである。 (3) 進歩性の判断の誤りア仮に、本件審決の認定する相違点1が存在したとしても、以下に述べるとおり、本件訂正発明1は、甲2発明に基づき、甲第7号証等の副引例及び周知技術又は技術常識を踏まえ、当業者において相違点1に係る本 件訂正発明1の構成を容易に想到することができた。 この点、被告は、甲第13号証を引用して、本件優先日当時のTR抗体を研究する当業者にとって、Fcγ受容体への結合を介したエフェクター機能がTR抗体における技術的特徴として不可欠なものとして認識されていたことは明らかであるなどと主張し、本件訂正発明に新規性及 び進歩性があると述べているが、後記エ(ア)のとおり、本件優先日当時に おいて、被告が主張するような当業者における共通認識はなかった。 したがって、相違点1について進歩性を認めた本件審決の認定は誤りである。 イ甲2発明に甲第7号証記載の発明を組み合わせる動機付けがあること(ア) 本件審決は、甲第7号証のTable1にはL234V、L235 Aが記載され、甲第28号証の1(〔乙17〕)のTable2にはL234A、L235Aの変異が記載されていることを特段否定していないものの、同じ「低下したFcγR結合親和性」の達成という課題の共通性等に基づけば、甲2発明のヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち234位及び235位を甲第7号証及び甲第28号証の1等に 従って変異させることの動機付けがある、という審判請求人の主張を認めなかった。本件審決はその理由として、まず、「甲7(特に、Table1)には、Fcγ受容体への結合が低下するものだけでなく、Fcγ受容体への結合が増加するものや、一部のFcγ受容体にの の主張を認めなかった。本件審決はその理由として、まず、「甲7(特に、Table1)には、Fcγ受容体への結合が低下するものだけでなく、Fcγ受容体への結合が増加するものや、一部のFcγ受容体にのみ結合するもの、FcRn結合のみに作用し、Fcγ受容体には作用し ないものなど、様々な結合特性を有するアミノ酸変異が多岐にわたって記載されており、234位および235位以外にも多数のアミノ酸位置が掲載されている。また、甲第28号証(〔乙17〕、特に、Table2)をみても、ADCC、ADCP、サイトカインストーム、CDCを減少させることができるアミノ酸変異として234位および 235位の他に多数のアミノ酸変異が記載されている。」ことを指摘している。 (イ) しかし、本件審決が指摘する点は、甲第7号証及び甲第28号証の1の記載が多角的かつ詳細に記載されていることを意味するものであって、「低下したFcγR結合親和性」の達成という課題が明示され た甲第2号証に記載された発明に触れた当業者が、当該課題に適した 変異を甲第7号証及び甲第28号証の1の記載から見出して適用することを促進することはあっても、その逆は起こり得ない。 さらにいえば、前記のとおり、甲第2号証の段落【0223】には、国際公表第WO06/019447A1(甲38の1)及び同WO99/58572A1(甲39の1)で示されているアミノ酸位置の変異に よりFcγ受容体の結合活性が変化することが示されており、これらにはFc領域の234位及び235位の変異がFcγ受容体に対する結合活性を低下させることが示されていた。したがって、甲第2号証の段落【0223】は、Fc領域の234位及び235位の変異がFcγ受容体に対する結合活性を低下させることを少なくとも γ受容体に対する結合活性を低下させることが示されていた。したがって、甲第2号証の段落【0223】は、Fc領域の234位及び235位の変異がFcγ受容体に対する結合活性を低下させることを少なくとも示唆するものである から、当業者であれば、かかる示唆を踏まえて、甲2発明に甲第7号証及び甲第28号証の1記載の発明(Fc領域の234位及び235位の変異はFcγ受容体への結合を低下させる変異であること)を組み合わせることを容易に想到できた。よって、甲第7号証や甲第28号証の1に234位及び235位の変異以外の選択肢が複数列挙されているとし ても、甲第2号証に接した当業者であれば、段落【0223】の記載等を踏まえて、234位及び235位のアミノ酸変異を容易に選択し得た。 (ウ) また、本件審決はさらに、(a)甲第2号証のアミノ酸変異の例の記載と、甲第7号証及び甲第28号証の1のアミノ酸変異の例の記載に差異があること(一方のみに記載されている例)を指摘し、(b)ある同 一の変異について甲第2号証と甲第7号証でその活性の理解が異なることから「甲2と甲7におけるFcγ受容体への結合性は判断手法が異なっていること」を「推知」している。 しかし、(a)についていえば、アミノ酸の各部位における変異は19種類が想定できる(つまり、当該アミノ酸とは別の種類のアミノ酸が1 9種存在する。)のであって、それらすべてをあらゆる変異部位に対応 して測定することなど不可能に近く、2つの文献を対比した際に、一方にのみ記載される変異があること自体は何ら不自然なことではない。 次に、(b)については、本件審決は具体的には「甲2の【0230】で低下したFcγR結合親和性を有するものとして例示された『N434A』について、甲7のTable 自体は何ら不自然なことではない。 次に、(b)については、本件審決は具体的には「甲2の【0230】で低下したFcγR結合親和性を有するものとして例示された『N434A』について、甲7のTable1においてはFcRN結合のみに作 用するClass10に分類されているから、甲2と甲7におけるFcγ受容体への結合性は判断手法が異なっていることが推知される。」と述べるところ、分類の記載自体は事実であるとしても、甲第7号証のTable1を見るとN434A変異の各Fcγ受容体に対する結合活性の平均はすべて1以下となっているため、データそのものを見れば「低 下したFcγR結合親和性」として理解することもでき、少なくとも「甲2と甲7におけるFcγ受容体への結合性は判断手法が異なっていること」が推知されるほどのことはないから、本件審決の当該理由付けは技術常識に反した理解に基づくものである。むしろ、甲第2号証の段落【0227】がN434A変異についてFcRn結合親和性に影響す るものとして言及し、甲第7号証のTable1においてN434A変異がFcRn結合親和性を著しく向上させることが明らかにされていることからすると、この2つの文献の記載内容は整合的であるといえる(甲47、段落22)。 (エ) したがって、仮に、相違点1があるとしても、甲2発明に甲第7号 証及び甲第28号証の1記載の発明を組み合わせる動機付けは十分に存在し、当業者であれば、当該組み合わせにより本件訂正発明1(相違点1)を容易に想到できた。本件訂正発明1を容易に想到できないとした審決の判断は誤りである。 ウ周知技術又は技術常識を斟酌しても、甲第2号証に基づく進歩性の欠如 が認められること また、甲2発明に対して、甲第2号証の段落【0 ないとした審決の判断は誤りである。 ウ周知技術又は技術常識を斟酌しても、甲第2号証に基づく進歩性の欠如 が認められること また、甲2発明に対して、甲第2号証の段落【0223】が言及する周知技術又はそれを含めた技術常識を組み合わせることでも、本件訂正発明1(相違点1)を容易に想到することができた。 すなわち、甲第2号証の段落【0223】には、「エフェクタ機能の変化を与えることが周知の当技術分野において承認されている置換」とい う記載があり、その周知である置換として、国際公表第WO06/019447A1(甲38の1)及び同WO99/58572A1(甲39の1)で示されているFc領域のアミノ酸変異(234位及び235位の変異)が例示されていた。したがって、甲第2号証に接した当業者であれば、同国際特許公表で示されているFc領域のアミノ酸変異(23 4位及び235位の変異)は周知の置換であると認識し、かつ同文献により234位及び235位の変異によってFcγ受容体の結合活性が変化することが示されているわけであるから、これを周知の置換として導入し、本件訂正発明1の相違点1に係る構成を容易に想到できた。 また、前記のとおり、本件優先日当時、234位及び235位の変異 によりFcγ受容体の結合活性が低下することを示す文献は数多くあった。かかる事実からすれば、当業者であれば、数多くある文献のうちどれかに接することは通常であって、これを甲2発明に対して適用することは容易であったといえる。さらに、前記のとおり、234位及び235位における変異は、L234A/L235A変異も含めて本件優先日 前に論文に明確に開示されており、十分に確立された変異となっていた。 したがって、甲2発明に対して、甲第2号証の段 位及び235位における変異は、L234A/L235A変異も含めて本件優先日 前に論文に明確に開示されており、十分に確立された変異となっていた。 したがって、甲2発明に対して、甲第2号証の段落【0223】で言及されていた周知技術又はそれを含めた技術常識を組み合わせることでも、本件訂正発明1の相違点1に係る構成を容易に想到することができた。 さらに、被告自身も、本件特許のファミリーに関して欧州特許庁に提 出した控訴理由書や上申書において、アミノ酸変異、特にL234A/L235A変異を導入することでFcγ受容体への結合の低下を実現させることが一般的な技術常識であることは認めている(甲53、甲54)。 したがって、甲2発明に対して、甲第2号証の段落【0223】で言及されていた周知技術又は技術常識を組み合わせることでも、本件訂正 発明1の相違点1に係る構成を容易に想到することができた。 よって、この点からも、本件訂正発明1を容易に想到できないとした審決の判断は誤りである。 エ被告の主張について(ア) 被告主張の技術常識について 被告は、甲第13号証を引用して、「癌抗原及びT細胞受容体複合体に結合するWholeIgG型の二重特異性抗体」(すなわち、WholeIgG型のTR抗体)については、癌細胞の破壊を目的とするためにFc領域を介したエフェクター機能が重要だと考えられていたなどと主張する。そのうえで、被告は、エフェクター機能が重要である当 該TR抗体を記載する甲第2号証の段落【0390】から【0392】までは、エフェクター機能を低下させる技術である甲2発明と整合するものではなく、当該段落の記載から「癌抗原及びT細胞受容体複合体に結合するWholeIgG型の二重特異性抗体」(Whol 0392】までは、エフェクター機能を低下させる技術である甲2発明と整合するものではなく、当該段落の記載から「癌抗原及びT細胞受容体複合体に結合するWholeIgG型の二重特異性抗体」(WholeIgG型のTR抗体)である甲2発明を認定できないと主張する。 しかしながら、「癌抗原及びT細胞受容体複合体に結合するWholeIgG型の二重特異性抗体」(WholeIgG型のTR抗体)であれば、必ずFc領域を介したエフェクター機能を利用しなければならないというわけではない。甲第2号証が公開される前から、抗CD3もしくは抗TCRモノクローナル抗体(mAb)と、抗標的細胞mAb を化学的に結合した二重特異性抗体を、T細胞に添加することにより、 癌細胞とT細胞を架橋すると、抗CD3もしくは抗TCR部分自体がT細胞上のCD3やTCRと結合してT細胞を活性化し、その結果として架橋した癌細胞に対する高い抗癌活性が奏され得ることが、公知文献により示されていた(甲57、甲59、甲60等)。すなわち、二重特異性抗体は、Fc領域への結合を介したエフェクター機能を必ずしも利用 せずとも、癌細胞とT細胞(エフェクター細胞)の架橋によって、その抗癌活性を奏し得ることが知られていたのである。実際に、Fc領域を欠くBiTEも二重特異性抗体の一種類であるが、これが「強い抗腫瘍効果を発揮すること」は本件明細書の段落【0005】及び【0006】で記載されているとおりである。また、Fc領域を欠くF(ab’)2 が抗腫瘍特性を有することも確認されている(甲57、60)。したがって、「癌抗原及びT細胞受容体複合体に結合するWholeIgG型の二重特異性抗体」(WholeIgG型のTR抗体)一般について、Fc領域を介するエフェクター されている(甲57、60)。したがって、「癌抗原及びT細胞受容体複合体に結合するWholeIgG型の二重特異性抗体」(WholeIgG型のTR抗体)一般について、Fc領域を介するエフェクター機能の維持が抗腫瘍活性に重要だったという技術常識はなかったのであるから、エフェクター機能が低 下している甲2発明の一態様として「癌抗原及びT細胞受容体複合体に結合するWholeIgG型の二重特異性抗体」が含まれ得ると当業者が考えることが本件優先日当時の技術常識と矛盾するわけではない。 そして、当業者は、甲第2号証の段落【0390】から【0392】までの記載から、甲2発明の一態様として「癌抗原及びT細胞受容体複 合体に結合するWholeIgG型の二重特異性抗体」が含まれると理解できた。 さらに、このような「癌抗原及びT細胞受容体複合体に結合するWholeIgG型の二重特異性抗体」についても、本件優先日以前に、Fc領域におけるFcγ受容体への結合により発生する副作用や欠点が 知られていた。かかる副作用や欠点の解決のために、当該抗体に対して Fc領域により引き起こされるエフェクター機能低下を導入することが実際に想到され、さらには実際に作製された例は複数存在した。このことは、甲第55号証の段落52から54までにおいて、甲第58号証やその引用文献の記載も踏まえつつ説明されている。 よって、被告主張の上記技術常識は存在しない。 (イ) 甲第2号証の「安定化」の課題について被告は、甲第2号証の「安定化」という課題の観点からるる主張するが、甲2発明は、安定性のみならず、Fc領域を介するエフェクター機能の低下をも解決すべき課題とし、これを実現するFc領域内のアミノ酸変異を有する抗体を開示するものである。甲 題の観点からるる主張するが、甲2発明は、安定性のみならず、Fc領域を介するエフェクター機能の低下をも解決すべき課題とし、これを実現するFc領域内のアミノ酸変異を有する抗体を開示するものである。甲2発明と副引 例等を組み合わせるための動機付けを考察するにおいては、「安定化」のみならずFc領域を介するエフェクター機能の低下という観点からも検討し得る。したがって、当業者が、Fcγ受容体への結合活性の低下のためのアミノ酸変異を有しかつ「安定化」している甲2発明から出発し、甲第7号証や本件優先日当時の技術常識を当てはめて、同 じくFcγ受容体への結合活性の低下のために234位及び235位を有し、かつ「安定化」している本件訂正発明に至ることは、何ら妨げられていない。 したがって、専ら「安定化」の観点から動機付けの有無を検討して、動機付けがないと結論付ける被告の主張は、誤りである。むしろ、甲第 7号証や周知技術等は、甲2発明のFc領域を介したエフェクター機能を低下させるという課題の一つを解決するものであり、かつ当該課題の観点からみたときに、両者の技術分野は同一である上に、その作用・機能も同じといえるのであるから、両者を組み合わせる動機付けがあることは明らかである。 (ウ) 多数のアミノ酸位置の掲載 さらに、被告は、国際公表第WO06/019447(甲38の1)の図41の表には、Fcγ受容体への結合が低下するものだけではなく、Fcγ受容体への結合が増加するものや、一部のFcγ受容体にのみ作用するもの、FcRn結合のみに作用し、Fcγ受容体には作用しないもの、補体タンパク質への結合が増加するもの、補体タンパク質への結 合が低下するものなど、様々な結合特性を有するアミノ酸変異が多岐にわたって記載され 結合のみに作用し、Fcγ受容体には作用しないもの、補体タンパク質への結合が増加するもの、補体タンパク質への結 合が低下するものなど、様々な結合特性を有するアミノ酸変異が多岐にわたって記載されており、234位及び235位以外にも多数のアミノ酸位置が掲載されているのであって、234位及び235位の変異をこの多数の列挙から選択するような動機付けも存在しない。また、被告は、国際公表第WO99/58572A1(甲39の1)についても、同様 に、これを組み合わせる動機付けは存在していないと主張する。しかし、甲2発明にはFcγ受容体への結合活性を低下させることが記載されているのだから、そのような変異として234位及び235位のアミノ酸に導入される変異を採用するだけであり、他の結合活性を示す変異など関係がない。 (4) 小括以上のとおり、本件審決は、甲2発明の認定、甲第2号証に基づく本件訂正発明1の新規性・進歩性に関する認定及び判断のいずれも誤っており、その結果として本件訂正発明1の新規性・進歩性の欠如を認めなかったことは誤りである。 そして、本件訂正発明1についての認定及び判断が誤っていることは上述のとおりであるから、これを理由に本件訂正発明3から6まで、11、14から18まで、20から22まで、24、28、30から44まで及び46から196までについての新規性・進歩性の欠如を認めなかった本件審決の結論も誤りである。 【被告の主張】 (1) 甲2発明の認定についてア原告の主張について原告は、本件審決が、甲2発明の認定において、①234位及び235位において変異が生じていることを認定していない点、②変異に導入されるFc領域がIgG2~4抗体由来でありうることを認定していな い は、本件審決が、甲2発明の認定において、①234位及び235位において変異が生じていることを認定していない点、②変異に導入されるFc領域がIgG2~4抗体由来でありうることを認定していな い点(以上、相違点1関係)、③変異しているFc領域を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有するものであることを認定していない点(相違点2関係)で誤っていると主張している。 しかし、原告の主張は、甲第2号証とは別の文献に基づいて甲2発明を認定しようとするものであって、引用発明の認定として許されない、 誤ったものである。そればかりか、原告の主張は、本件訂正発明の構成要件に合致するよう、甲第2号証の広範な記載の中に散らばる膨大な数の選択肢、更には引用文献外の内容から、都合の良い要素を拾い出して組み合わせることによって甲2発明を認定しようとするものであって、引用発明の認定として許されない、誤ったものである。甲第2号証には、 原告が主張するような構成①から③までを有する発明が記載されているとはいえない。 それ以前に、本件審決は、原告側に極めて有利な認定を不適法に行った上で、それでも、本件訂正発明が甲第2号証に対して新規性及び進歩性を有すると判断したものである。後述するとおり、本件審決は、重要 な相違点(相違点A)を認定しておらず、この相違点をも考慮すれば、本件訂正発明に新規性及び進歩性が認められることは一層明らかである。 イ甲第2号証には、相違点1は記載されていないこと(ア) 甲第2号証には、235位の変異は開示されていないため、甲2発明として、相違点1に係る、234位及び235位の変異に係る構成 が認められないのは明らかである。それゆえ、この点のみをもってし ても、原告の主張は明らかに失 ていないため、甲2発明として、相違点1に係る、234位及び235位の変異に係る構成 が認められないのは明らかである。それゆえ、この点のみをもってし ても、原告の主張は明らかに失当である。 (イ) また、原告は、相違点1に係る、234位及び235位の変異及びこれによるFcγ受容体に対する結合活性低下に係る構成は、甲第2号証の段落【0222】及び【0223】に記載されているか、記載されているに等しい事項であると主張しているが、これらの部分から、 上記構成を具備した技術的思想としての甲2発明を読み取ることはできない。 すなわち、甲第2号証の段落【0223】では、極めて多くの特許公報が単に列挙されており、挙げられた全ての公報に記載されたアミノ酸置換の例は膨大であり、かつ、これに対する取捨選択の指針も何 ら与えられていない。原告は、参照されている文献に記載された事項は、甲第2号証に記載されているに等しい事項であるとの前提で主張するが、このような記載に接した当業者がこの記載から直接、原告が具体的に引用する甲第38号証の1や甲第39号証の1の記載を読み取れるかのようにいう原告の主張は非現実的であり、不合理極まりな い。 原告が指摘するWO06/019447A1(甲38の1)及びWO99/58572A1(甲39の1)は、甲第2号証の段落【0223】に極めて多数の文献の中の一つとして挙げられたものであって、明らかに別個の文献であり、これを甲第2号証に組み合わせて甲2発明の認定 を行うことは決して許されない。 しかも、甲第2号証の段落【0223】には、極めて多くの特許文献が技術的説明もなしに単に列挙されており、その中身まで含めると、大量のアミノ酸置換の記載がある。また、これらの多くの特許文献は、「 しかも、甲第2号証の段落【0223】には、極めて多くの特許文献が技術的説明もなしに単に列挙されており、その中身まで含めると、大量のアミノ酸置換の記載がある。また、これらの多くの特許文献は、「エフェクタ機能の変化を与えることが周知の当技術分野において承認 されている置換」を開示する文献として列挙されているのであり、Fc γRへの結合能の低下に関するものに限られず、FcγRへの結合能の増加や、補体タンパク質への結合能の変化、新生児Fc受容体への結合能の変化に関するものも含まれる。さらに、これらの特許文献の記載の中には、組み込みによって相反する内容のアミノ酸置換や技術内容が存在することは明らかであるし、ましてや全ての特許文献中の記載を矛盾 なく甲第2号証に組み込むことは明らかに不可能である。 このように、引用文献で単に別文献を引用しても、これは、一般的・抽象的な一行記載よりもさらに抽象的な記載にすぎず、そこに「具体的な技術的思想」が開示されているといえないことは明らかである。これを措くとしても、ここには膨大な選択肢が単に列挙されているだけであ り、技術的な説明や取捨選択のための何らの指針もなく、このような膨大な選択肢の中から234位及び235位の変異を「積極的あるいは優先的に選択すべき事情」も存在しない。したがって、ここに234位及び235位の変異に係る具体的な技術的思想が開示されていないことは明らかである。 (ウ) さらに、原告は、当時の技術常識を参酌すれば、甲2発明の変異に234位及び235位の変異を含むことが導き出されることを主張しているが、原告が参照する甲第28号証(〔乙17〕)、甲第29号証(〔乙18〕)、甲第30号証(〔乙19〕)、甲第33号証(〔乙22〕)、甲第34号証(〔乙23 を含むことが導き出されることを主張しているが、原告が参照する甲第28号証(〔乙17〕)、甲第29号証(〔乙18〕)、甲第30号証(〔乙19〕)、甲第33号証(〔乙22〕)、甲第34号証(〔乙23〕)は、甲第2号証とは明らかに別個の文献で あり、これを甲第2号証に組み合わせることによって甲2発明を認定することは明らかな誤りである。前記のとおり、甲第2号証には、235位の変異は開示されていないため、234位及び235位の変異に係る構成が認められないのは明らかであり、甲第2号証における235位変異の開示の欠如を補うために、技術常識との記載を持ち出し て、甲第2号証とは明らかに別個の文献である上記証拠の記載内容を 甲第2号証に取り込むことは、甲2発明の認定として明らかに許されない判断・手法である。 ウ甲第2号証には、相違点2に係る構成は記載されていないこと原告は、本件審決が甲2発明について相違点2に係る構成を有するものとして認定しなかった点でも誤っていると述べているが、失当である。 甲第2号証の段落【0128】には「2つの非同一のFc部分のヘテロ二量体であり得る」こと、段落【0207】には「本発明のポリペプチドは、異なる配列組成である少なくとも2つのFc部分を含むFc領域(すなわち、本明細書において『異種Fc領域』と称される)を含むことができる」と記載されているにすぎず、当該構成とすることの技術的 意義について甲第2号証には何の説明も存在しない。それゆえ、当該構成を備えた発明を、甲第2号証の記載から具体的な技術的思想として抽出できるものではない。 エ本件審決が看過した相違点Aも存在すること以上のとおり、本件審決の相違点1及び2の認定は概ね正しく、原告 の主張に理由がないことは明らか 的な技術的思想として抽出できるものではない。 エ本件審決が看過した相違点Aも存在すること以上のとおり、本件審決の相違点1及び2の認定は概ね正しく、原告 の主張に理由がないことは明らかである(ただし、甲2において「297D」が安定化アミノ酸変異であることは開示されていないから、本件審決が、相違点1において、甲2発明として「297D変異」を認定しているのは誤りである。)。 もっとも、本件審決は、相違点1及び2以外の部分について具体的な 技術的思想を十分に検討することなく、一般的かつ抽象的な記載を基に引用発明の認定を行った結果、重大な相違点を看過している。そのため、引用発明の認定及び対比において非常に原告に有利な認定となっている。 具体的にいえば、本件審決は、甲2発明として、「腫瘍細胞抗原に対する少なくとも1つのアーム、および細胞毒性誘引分子に対する少なくとも 1つのアームを有する二重特異性結合抗体である、安定化ポリペプチド」 を認定した上で、この部分を、本件訂正発明の「癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを 構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結された、ポリペプチド会合体」との一致点としている。 しかし、甲第2号証は、具体的な技術的思想として、かかる構成を備えた発明を開示しておらず、この点に関する審決の認定は誤りである。 何らの構造上の限定もない「ポリペプチ との一致点としている。 しかし、甲第2号証は、具体的な技術的思想として、かかる構成を備えた発明を開示しておらず、この点に関する審決の認定は誤りである。 何らの構造上の限定もない「ポリペプチド」は上位概念であり、これをもって下位概念である特定の構成の「ポリペプチド会合体」に該当するとしていることのみからして、誤りであることが明白である。このことは、甲第2号証自体の記載を見れば、さらに明らかである。すなわち、甲第2号証では、「(結合)ポリペプチド」については、単に、「標的分子 と特異的に結合する少なくとも1つの標的結合部位または結合ドメインを含むポリペプチド」という意味で用いられており(【0146】)、また、その形態には、同段落に記載されるように、様々な形態のものが含まれる。 これに対して、本件訂正発明1の「(1)癌抗原結合ドメイン(ただし 癌抗原はCD3ではない)及び(3)T細胞受容体複合体結合ドメインを含むポリペプチド会合体であって、癌抗原結合ドメイン、及び、T細胞受容体複合体結合ドメインは各々一価のFabであり、癌抗原結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片 がCL領域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するF abの重鎖Fv断片がCH1領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結された、ポリペプチド会合体」は、ポリペプチドの特定の構造(すなわち、典型的なWholeIgG型の二重特異性抗体)を規定したものであり、明らかに、ポリペプチドの下位概念である。 この点について、本件審決は、甲第2号証の請求項42を引用して、「完全 なわち、典型的なWholeIgG型の二重特異性抗体)を規定したものであり、明らかに、ポリペプチドの下位概念である。 この点について、本件審決は、甲第2号証の請求項42を引用して、「完全長抗体二重特異性結合抗体」が記載されていると述べているが、誤りである。請求項42には、「安定化完全長抗体である、請求項39に記載の安定化ポリペプチド。」と記載されているが、これは、単に請求項に抽象的な記載がされたにすぎず、それ以上の何らの具体的な技術も開 示されていない。これをもって具体的技術的思想の開示と見ることはできない。また、請求項42にも、あるいはその他の請求項にすら、「二重特異性結合抗体」は、全く記載されていない。ここにそのような技術的思想は記載されていないからこそ、本件審決も、甲2発明として、「完全長抗体二重特異性結合抗体」は認定できず、「ポリペプチド」との認定し かできなかったものである。このように、上位概念しか読み取れないにもかかわらず、下位概念との一致を認定しているのは、明らかに誤りである。そして、甲第2号証の段落【0390】から【0392】までには、極めて多数の「多特異性結合ポリペプチド」が抽象的に例示列挙されているのみであり、ここには、抗原含め、具体的な技術思想としての 発明の開示はないから、ここから「癌抗原及びT 細胞受容体複合体に結合するWholeIgG型の二重特異性抗体」を認定することはできない。 したがって、本件訂正発明と甲第2号証との間には、以下の相違点Aが存在する(同相違点を踏まえて正しく認定されたものを、以下「甲第2号証に記載された発明」という。)。 <相違点A> 本件訂正発明1では、「(1)癌抗原結合ドメイン及び(3)T細胞受容体複合体結合ドメインを含むポ れたものを、以下「甲第2号証に記載された発明」という。)。 <相違点A> 本件訂正発明1では、「(1)癌抗原結合ドメイン及び(3)T細胞受容体複合体結合ドメインを含むポリペプチド会合体であって、T細胞受容体複合体結合ドメインがFabであり、癌抗原結合ドメインを構成する一価のFabの重鎖Fv断片がCHl領域を介してFc領域を構成する一方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領 域と連結され、T細胞受容体複合体結合ドメインを構成するFabの重鎖Fv断片がCHl領域を介してFc領域を構成する他方のポリペプチドに連結され、当該Fabの軽鎖Fv断片がCL領域と連結された、ポリペプチド会合体」であるのに対し、甲2発明はそのような構成を有しない点。 オ二重特異性のT細胞リクルート抗体に関する技術常識甲第2号証に記載された発明の認定に関して重要なのは、本件特許出願時には、癌を治療することを目的とする二重特異性のT細胞リクルート抗体(TR抗体)が開発されていたが、このような抗体においては、Fcγ受容体への結合を介したエフェクター機能が重要であることが技術 常識であったことである。すなわち、TR抗体は、「T細胞リクルート」という文字どおり、がん細胞と免疫細胞であるT細胞のそれぞれに結合し、がん細胞に免疫細胞を動員させる(リクルートする)ことによって免疫の力でがん細胞を駆逐しようとするものである。本件特許出願時には、TR抗体の技術分野では、抗体のFc領域がFcγ受容体に結合す ることが積極的に活用されていた。このことは例えば甲第12号証(〔乙1〕)や、甲第7号証及び甲第31号証の1によっても明らかである。標的細胞の破壊には、エフェクター機能の低下ではなく、エフェクター機能 とが積極的に活用されていた。このことは例えば甲第12号証(〔乙1〕)や、甲第7号証及び甲第31号証の1によっても明らかである。標的細胞の破壊には、エフェクター機能の低下ではなく、エフェクター機能の増強が必要であることが様々な文献により明らかにされており、この技術分野における技術常識を形成していたものと考えられる。 なお、このことは、甲第2号証自体からも裏付けられている。すなわ ち、甲第2号証の段落【0230】には、「低下したFcγR結合親和性を有するFcポリペプチドは、エフェクタ機能を低下させることが見込まれ、そのような分子も、標的細胞破壊が望ましくない状態、例えば、正常細胞が標的分子を発現する場合、またはポリペプチドの慢性投与によって好ましくない免疫系活性化が引き起こされる可能性がある場合の 治療に有用である。」と記載されているが、この記載は、低下したFcγR結合親和性を有し、エフェクター機能を低下させた分子は、TR細胞のように標的細胞破壊を行うのではなく、「標的細胞破壊が望ましくない」場合に有用であるとしたものである。これは、TR細胞のように標的細胞破壊を行う場合には、高いFcγR結合親和性や、エフェクター機能 が必要であることを前提としたものである。 付言するに、このようなTR抗体は、Trifunctionalantibody(三機能性抗体、三官能性抗体)とも呼ばれていたことが、甲第12号証を含む多数の文献に記載されている技術常識である。三機能性とはすなわち、①がん抗原(がん細胞)に結合する機能、②CD3(T細胞)に結合す る機能、③Fc領域を介したエフェクター機能、の3つの機能を持つという意味である。つまり、Trifunctionalantibody という技術呼称のみから考えても D3(T細胞)に結合す る機能、③Fc領域を介したエフェクター機能、の3つの機能を持つという意味である。つまり、Trifunctionalantibody という技術呼称のみから考えても、本件優先日当時のTR抗体を研究する当業者にとって、Fc領域を介したエフェクター機能がTR抗体における技術的特徴として不可欠なものと認識されていたことは明らかである。 このように、腫瘍細胞などの標的細胞破壊に用いるTR抗体にとって、エフェクター機能が重要であることは、本件優先日当時の技術常識であった。なお、当然ながら、「癌抗原及びT 細胞受容体複合体に結合するWholeIgG型の二重特異性抗体」もTR抗体であり、エフェクター機能が重要と認識されていた。 (2) 甲第2号証に記載された発明に基づく新規性欠如の主張について 以上のとおり、本件訂正発明1と甲第2号証に記載された発明との間には上記相違点1、相違点2及び相違点Aが存在するから、本件訂正発明1は、甲第2号証に記載された発明とはいえない。 また、本件訂正発明11、14から17まで、21、24、31から44まで、46から48まで、54から59までは、いずれも本件訂正 発明1を直接的又は間接的に引用するものであるから、本件訂正発明1と同様の理由により、甲第2号証に記載された発明とはいえない。 同様に、独立請求項である本件訂正発明3から6まで、18、20、22、28、30、49、81、107、133、159、185並びにこれらの発明を直接的又は間接的に引用する本件訂正発明11、14 から17まで、21、24、31から44まで、46から48まで、50から80まで、82から106まで、108から132まで、134から158まで、160から184まで、1 訂正発明11、14 から17まで、21、24、31から44まで、46から48まで、50から80まで、82から106まで、108から132まで、134から158まで、160から184まで、186から196までは、いずれも、甲第2号証に記載された発明との間に、少なくとも本件訂正発明1と同様に上記相違点1、相違点2及び相違点Aが存在するから、本 件訂正発明1に対するものと同様の理由により、甲第2号証に記載された発明とはいえない。 よって、原告の甲第2号証に記載された発明に基づく新規性欠如の主張も失当である。 (3) 甲2発明に基づく進歩性欠如の主張について ア甲第2号証及び甲第7号証又は甲第28号証の1に基づく進歩性判断について(ア) 本件審決が正しく認定したように、甲第2号証に甲第7号証又は甲第28号証の1を組み合わせる動機付けは全く存在していない。 すなわち、甲第7号証(特にTable1)には、Fcγ受容体への 結合が低下するものだけではなく、Fcγ受容体への結合が増加するも のや、⼀部のFcγ受容体にのみ作用するもの、FcRn結合のみに作用し、Fcγ受容体には作用しないものなど、様々な結合特性を有するアミノ酸変異が多岐にわたって記載されているものであり、234位及び235位以外にも多数のアミノ酸位置が掲載されている。また、甲第28号証の1(特に、Table2)をみても、ADCC、ADCP、 サイトカインストーム、CDCを減少させることができるアミノ酸変異として234位および235位の他に多数のアミノ酸変異が記載されているところ、当業者は、これらの中から、234位及び235位の変異をピックアップして、これを甲第2号証に組み合わせることはできない。 さらに、本件審決が指摘するとおり に多数のアミノ酸変異が記載されているところ、当業者は、これらの中から、234位及び235位の変異をピックアップして、これを甲第2号証に組み合わせることはできない。 さらに、本件審決が指摘するとおり、甲第2号証と甲第7号証又は甲第 28号証の1の記載は互いに食い違っており、整合していないから、この点からも、当業者がこれらの文献を組み合わせる動機付けはない。 (イ) さらに、課題の観点からしても、動機付けが存在し得ないことは明らかである。 前記のとおり、甲第2号証に記載された発明の課題は、エフェクター 機能の低下のためにFc領域からのオリゴ糖を除去したり、IgG4のFc領域を用いたりすると、抗体の安定性が損失又は低下するという問題を解決するために、変更された、もしくは低下したエフェクター機能、及び改善された安定性を有する、改善された抗体を提供することである。 甲第2号証では、当該発明課題を前提とした上で、発明構成の一要件と して、IgG1抗体のFc領域にT299K変異を導入することによって、非グリコシル化を達成してエフェクター機能を低下させると共に、改善された安定性を有する抗体が得られている。ここで、甲第2号証に記載された発明は、安定性の改善に焦点を当てて成された発明であることは、甲第2号証の発明の詳細な説明及び実施例に基づけば明らかであ り、甲第2号証に記載された発明に甲第7号証又は甲第28号証の1を 組み合わせることの可否を判断する際には、甲第7号証又は甲第28号証の1に記載されるアミノ酸変異が安定性について検討されたものであるかどうかを考慮する必要がある。 しかしながら、甲第7号証又は甲第28号証の1には、安定性の観点から評価したデータは一切開示されていない。そのため、甲第7号証の Ta いて検討されたものであるかどうかを考慮する必要がある。 しかしながら、甲第7号証又は甲第28号証の1には、安定性の観点から評価したデータは一切開示されていない。そのため、甲第7号証の Table1に記載される234V、235Aや、甲第28号証の1に記載されるL234A、L235Aについて検討する以前に、そもそも甲第7号証又は甲第28号証の1を甲2発明に組み合わせる動機付けが一切存在しないのである。 (ウ) また、甲第2号証に記載された発明におけるT299K変異は、す でに非グリコシル化によって低下したエフェクター機能を有しているため、さらに234位や235位のエフェクター機能を低下させる変異を導入する動機付けも何ら存在しない。甲第2号証は、あくまでも、非グリコシル化によって低下したエフェクター機能を有する抗体が不安定であることに基づいて、抗体を安定化させることを課題としてい るからである。したがって、この観点からしても、甲第2号証に甲第7号証又は甲第28号証の1を組み合わせる動機付けは存在しない。 (エ) 加えて、甲第7号証及び甲第28号証の1は、他の相違点2及び相違点Aに関する不足を何ら補うものではない。 (オ) したがって、本件訂正発明は、甲第2号証及び甲第7号証又は甲第 28号証の1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ甲第2号証及び周知技術又は技術常識に基づく進歩性判断について(ア) 原告は、本件訂正発明1について、甲第2号証、及び甲第2号証の段落【0223】が言及する周知技術又はそれを含めた技術常識に基 づき当業者が容易に発明をすることができたと主張しているが、前記 のとおり、甲第2号証に記載された発明は、「改善された安定性」を提供することを 知技術又はそれを含めた技術常識に基 づき当業者が容易に発明をすることができたと主張しているが、前記 のとおり、甲第2号証に記載された発明は、「改善された安定性」を提供することを課題とし、安定性に着目したものであり、甲第2号証の段落【0223】で言及されている国際公表第WO06/019447A1及び同第WO99/58572A1(甲38の1及び甲39の1)には、安定性の観点から評価したデータは一切開示されていない から、甲第38号証の1及び甲第39号証の1に記載される発明を安定性の改善を目的とする甲第2号証に記載された発明に適用するための動機付けは存在しない。 (イ) また、国際公表第WO06/019447(甲38の1)の図41の表には、Fcγ受容体への結合が低下するものだけではなく、Fc γ受容体への結合が増加するものや、一部のFcγ受容体にのみ作用するもの、FcRn結合のみに作用し、Fcγ受容体には作用しないものなど、様々な結合特性を有するアミノ酸変異が多岐にわたって記載されており、234位及び235位以外にも多数のアミノ酸位置が掲載されているのであって、234位及び235位の変異をこの多数 の列挙から選択するような動機付けも存在しない。また、国際公表第WO99/58572A1(甲39の1)についても、同様に、これを組み合わせる動機付けは存在していない。 (ウ) そうすると、当業者が、甲第38号証の1(特に図41の表)に記載される234位及び235位の変異に着目し、この変異を甲第2号 証に記載された発明に適用するように動機付けられるとは認められない。 (エ) 加えて、甲第7号証や甲第28号証の1、甲第38号証の1、甲第39号証の1は、相違点2及び相違点Aに関する不足を何ら補うものでは れた発明に適用するように動機付けられるとは認められない。 (エ) 加えて、甲第7号証や甲第28号証の1、甲第38号証の1、甲第39号証の1は、相違点2及び相違点Aに関する不足を何ら補うものではない。 (オ) その上、WholeIgG型TR抗体におけるFcγR陽性細胞へ の結合が抗腫瘍効果の十分な発揮に必須であることを指摘する甲第12号証に鑑みれば、より一層、234位及び235位の変異のようなFcγRへの結合能を低下させる変異を、holeIgG型TR抗体に導入することが甲第2号証から動機付けられたということはできないし、多数記載されたFcγRへの結合能を低下させる変異の中か ら、234位及び235位の変異を選択できた事情があったということもできない。 (カ) したがって、本件訂正発明1は、甲第2号証に記載された発明と副引例及び本件優先日の技術水準に基づいて当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。 ウ小括以上のとおり、本件訂正発明1は、甲第2号証に記載された発明と、甲第2号証、甲第7号証、甲第28号証の1、甲第38号証の1、甲第39号証の1(原告が主張する周知技術)及び本件優先日の技術水準から、当業者が容易に発明をすることができたものであったということはでき ない。 また、本件訂正発明11、14から17まで、21、24、31から44まで、46から48まで、54から59までは、いずれも本件訂正発明1を直接的又は間接的に引用するものであるから、本件訂正発明1と同様の理由により、甲第2号証に記載された発明と、甲第2号証、甲 第7号証、甲第28号証の1、甲第38号証の1、甲第39号証の1(原告が主張する周知技術)及び本件優先日の技術常識に基づき、当業者が容易に発明を 甲第2号証に記載された発明と、甲第2号証、甲 第7号証、甲第28号証の1、甲第38号証の1、甲第39号証の1(原告が主張する周知技術)及び本件優先日の技術常識に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであったということはできない。 また、独立請求項である本件訂正発明3から6まで、18、20、22、28、30、49、81、107、133、159、185並びに これらの発明を直接的又は間接的に引用する本件訂正発明11、14か ら17まで、21、24、31から44まで、46から48まで、50から80まで、82から106まで、108から132まで、134から158まで、160から184まで、186から196までは、いずれも、甲第2号証に記載された発明との間に、本件訂正発明1と同様に上記相違点1、相違点2及び相違点Aを有するものであるから、本件訂 正発明1に対するものと同様の理由により、甲第2号証に記載された発明と、甲第2号証、甲第7号証、甲第28号証の1、甲第38号証の1、甲第39号証の1(原告が主張する周知技術)及び本件優先日の技術常識に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであったということはできない。 以上に述べたとおり、取消事由1(甲2に基づく進歩性欠如)は理由がない。 2 取消事由2(甲11に基づく進歩性欠如に係る認定・判断の誤り)について【原告の主張】 (1) 本件審決は、甲11発明と本件訂正発明1の間において、Fc領域の234位及び235位のアミノ酸に変異に係る相違点3を認定したが、甲第11号証(訳文)の段落【0744】に「抗体は、Fc領域で修飾されて、所望のエフェクター機能を提供し得る。本明細書中の節で詳細に考察されているように、①適切なFc領域を用 相違点3を認定したが、甲第11号証(訳文)の段落【0744】に「抗体は、Fc領域で修飾されて、所望のエフェクター機能を提供し得る。本明細書中の節で詳細に考察されているように、①適切なFc領域を用いて、細胞表面に結合された裸抗体は、例 えば抗体依存性細胞性細胞傷害性(ADCC)を介して、または補体依存性細胞傷害性において補体を動員することにより、または他のいくつかの機序により、細胞傷害性を誘導し得る。②代替的には、副作用または治療的合併症を最小限にするために、エフェクター機能を排除するかまたは低減することが望ましい場合、ある種の他のFc領域が用いられ得る。」(下線、①及び ②の付番は原告による。)と示唆されていることからすれば、甲第11号証 に、甲第2号証、甲第7号証及び甲第28号証の1の記載並びに周知技術又は技術常識を適用し、エフェクター機能を排除するためにFcγR結合親和性を低下させるものとしてFc領域の234位及び235位のアミノ酸に変異を導入することは、当業者が容易に想到できた事項といえる。 すなわち、文面を読めば明らかなように、上記の①は、抗体依存性細胞性 細胞傷害性(ADCC)を介して、又は補体依存性細胞傷害性において補体を動員することにより、又は他のいくつかの機序により、細胞傷害性を誘導する場合の話であって、②がこれと異なる話をしているとしても、細胞傷害性を誘導しない場合の話であるということにはならない。②にはこのようなエフェクター機能に関連しない機序で細胞傷害性を誘導する場合も当然に含 まれ、すなわちTR抗体一般がこれに該当する。そして、この場合に、技術常識として知られていた234位及び235位のアミノ酸に導入される変異を「エフェクター機能を排除するかまたは低減する」ために導入す まれ、すなわちTR抗体一般がこれに該当する。そして、この場合に、技術常識として知られていた234位及び235位のアミノ酸に導入される変異を「エフェクター機能を排除するかまたは低減する」ために導入すればよいだけである。 さらに、甲第11号証の段落【0084】には「例えば典型的な修飾と しては、別のアミノ酸残基による当該残基(または上記位置)の置換(例えば保存的または非保存的置換)…が挙げられる。一般的には、そして好ましくは、修飾は、出発(または「野生型」)アミノ酸配列を含むポリペプチドと比較して、変異体ポリペプチドの少なくとも1つの物理生物化学的活性における変更を生じる。例えば抗体の場合、変更される物理生物化学的活性は、 結合親和性、結合能力および/または標的分子に及ぼす結合作用であり得る。」とあって、甲第11号証の段落【0744】とあわせてアミノ酸置換によるエフェクター機能の低下を読み取れる。それが二重特異性抗体にも適用されることは「一実施形態では、二重特異性抗体は、1つ以上のFcエフェクター機能を欠く。」(【0050】)とあるとおりである。むしろ、二重 特異性TR抗体にフォーカスする同段落には、エフェクター能の増強など一 切記載されていない。 他にも甲第11号証の段落【0651】は、「特に、グリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合、例えば、治療用抗体が細胞傷害性物質(例えば、毒素)と接合され、免疫接合体それ自体が腫瘍細胞崩壊において有効性を示す場合」と説明し、TR抗体が、一方のアームにおいて 細胞傷害性T細胞と結合したものであることを考えれば、まさに「治療用抗体が細胞傷害性物質と接合され、免疫接合体それ自体が腫瘍細胞崩壊において有効性を示す場合」に該当するのだから、TR抗体が て 細胞傷害性T細胞と結合したものであることを考えれば、まさに「治療用抗体が細胞傷害性物質と接合され、免疫接合体それ自体が腫瘍細胞崩壊において有効性を示す場合」に該当するのだから、TR抗体が「Fcエフェクター機能が必要とされない場合」であることは明確に記載されている。ここで、細胞傷害性T細胞は、一般的には毒素と分類されるものではないが、毒素は あくまで腫瘍細胞を攻撃する物質の例示にすぎず、腫瘍細胞を攻撃する細胞傷害性T細胞を除外したものでないことはいうまでもない。甲第11号証の段落【0865】の実施例2から段落【0936】の実施例13までには、多数の抗FcRH5抗体薬剤接合体の試験例が記載されているところ、その途中に現れる段落【0920】の実施例11の「抗CD3/FcRH5二重 特異性抗体」には薬剤は接合されていない。このことからも、TR抗体における細胞傷害性T細胞が、抗体薬剤接合体における薬剤(すなわち毒素)に相当するものであることは自明である。 甲第11号証では、実施例11で唯一二重特異性抗体が作製されており、これは本件審決が、「実施例11では、その製造方法からみて、ヒト化抗体 である、抗CD3/FcRH5二重特異性抗体の製造方法が記載されている。」、「甲11発明におけるFcRH5は、甲11の【0007】~【0011】からみて、骨髄腫等の癌細胞の表面で特異的に発現する細胞表面受容体であると認められる」と述べるとおり、TR抗体である(それゆえに被告は相違点Aを甲11について主張していないのである。)。してみれば、甲第 11号証において、二重特異性抗体とは、TR抗体が基本的には想起されて いたものであり、上記の甲第11号証の記載も踏まえると、このような二重特異性TR抗体にアミノ酸置換による 第 11号証において、二重特異性抗体とは、TR抗体が基本的には想起されて いたものであり、上記の甲第11号証の記載も踏まえると、このような二重特異性TR抗体にアミノ酸置換によるエフェクター機能の低下を導入することも明確に記載されていたということができる。実際、実施例11では、アミノ酸変異の手法ではないものの、「二重特異性抗CD3/FcRH5抗体は、当該技術分野で知られている方法を用いて、上記のような大腸菌発現プ ラスミドを、適切な大腸菌株、例えば33B6中で形質転換することにより産生される」(甲11【0924】)とあるとおり、大腸菌内で抗体を発現させていることから、特にエフェクター機能が必要とされない場合の実施例を示すと解釈される。 したがって、甲第11号証に記載されるエフェクター機能の低下を実現 するために、甲第11号証のガイダンスに従って甲第63号証記載の234位及び235位のアミノ酸変異を導入すれば足り、234位及び235位のアミノ酸変異を導入することは、甲第11号証に記載されているに等しいか、容易に想到することができた事項といえる。 (2) また、本件審決は、相違点4として、「本件訂正発明1では、『該変異し ているFc領域を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有する』のに対し、甲11発明では、上記のような特定がされていない点。」と認定したが、甲第11号証の段落【0423】には「ヘテロ接合体抗体も、本発明の範囲内である」ことが記載されているから、本件審決は相違点4を誤って認定したものであり、かかる相違点は存在しない。 なお、被告は、甲第11号証の段落【0423】の上記記載だけでは、Fc領域が互いに異なるとの具体的な技術的思想を見出せないと主張するが、甲第11号証で のであり、かかる相違点は存在しない。 なお、被告は、甲第11号証の段落【0423】の上記記載だけでは、Fc領域が互いに異なるとの具体的な技術的思想を見出せないと主張するが、甲第11号証でもKnobintoHole は開示されており、「ヘテロ多量体形成を行なうために用いる戦術は、第一ポリペプチド、例えば抗体H鎖のCH3ドメイン中に1つ以上の『隆起』を導入すること、そしてさらにまた、第二ポ リペプチド、例えば第二抗体H鎖のCH3ドメイン中に1つ以上の対応する 『空洞』を導入することに頼っている。『隆起』突然変異は、小アミノ酸をより大きいものに置き換え、そして『空洞』突然変異は、大型アミノ酸をより小さいもので置き換えた。」(【0922】)と記載されるとおりである。これがごくごく抽象的な記載であるはずがない。 (3) したがって、本件審決は、本件訂正発明1について甲第11号証に基づ く進歩性に関する認定及び判断のいずれも誤っており、これを理由に本件訂正発明1の進歩性の欠如を認めなかった審決の結論は誤りである。 そして、本件審決は、本件訂正発明3から6まで、11、14から18まで、20から22まで、24、28、30から44まで及び46から196までについても、本件訂正発明1と同じ理由により進歩性の欠如を認めな かった。しかしながら、本件訂正発明1についての認定及び判断が誤っていることは上述のとおりであるから、これを理由に本件訂正発明3から6まで、11、14から18まで、20から22まで、24、28、30から44まで及び46から196までについての進歩性の欠如を認めなかった審決の結論も誤りである。 【被告の主張】(1) 原告は、Fc領域の234位及び235位の変異に係る審決の相違点3につい まで及び46から196までについての進歩性の欠如を認めなかった審決の結論も誤りである。 【被告の主張】(1) 原告は、Fc領域の234位及び235位の変異に係る審決の相違点3について、甲第11号証の【0744】に「抗体は、Fc領域で修飾されて、所望のエフェクター機能を提供し得る。本明細書中の節で詳細に考察されているように、①適切なFc領域を用いて、細胞表面に結合された裸抗体は、 例えば抗体依存性細胞性細胞傷害性(ADCC)を介して、または補体依存性細胞傷害性において補体を動員することにより、または他のいくつかの機序により、細胞傷害性を誘導し得る。②代替的には、副作用または治療的合併症を最小限にするために、エフェクター機能を排除するかまたは低減することが望ましい場合、ある種の他のFc領域が用いられ得る。」(下線、①及 び②の付番は被告による。)との記載があり、この②の部分に示唆があるか ら、これに周知技術又は技術常識を適用して、234位及び235位の変異に係る相違点に想到し得たと主張する。 (2) しかし、そもそも、上記段落【0744】には、Fc領域内の234位及び235位を変異させることの示唆など全くない。ここでは、「代替的には…ある種の他のFc領域が用いられ得る」として、「適切なFc領域」を 「ある種の他のFc領域」に替えることが抽象的に記載されているだけである。その内の234位及び235位を変異させることの示唆など、全く存在しない。 (3) また、甲第11号証において、アミノ酸置換をエフェクター機能に関連付けた記載は段落【0425】のみであるが、そこでは確かに、エフェク ター機能操作を行う方法として、アミノ酸置換を導入することが記載されているものの、当該段落では、「抗源依存性細 ー機能に関連付けた記載は段落【0425】のみであるが、そこでは確かに、エフェク ター機能操作を行う方法として、アミノ酸置換を導入することが記載されているものの、当該段落では、「抗源依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害性(CDC)を増強するため」(当裁判所注:甲第10号証の対応日本語文献である「特表2012-522512号公報」では、「抗源依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)」と記載され ているが、「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)」の誤りである。)にアミノ酸置換を行うのであり、エフェクター機能を低下させるためにアミノ酸置換を行うのではない。また、エフェクター機能を低下させるためのアミノ酸置換については、甲第11号証には記載も示唆も一切存在しない。ましてや、234位及び235位を変異させることの示唆など、全く存在しな い。甲第11号証には、エフェクター機能を低下させるためのアミノ酸置換は全く記載されていないのであるから、甲第7号証や甲第28号証の1等の他の文献とを組み合わせる動機付けは一切存在しない。 (4) さらに、相違点3に関しては、本件審決でも判断されているように、甲第11号証や甲第7号証、甲第28号証の1等には、甲11発明のFc領域 を構成するアミノ酸の234位及び235位のアミノ酸に着目し、両位置を 変異させることを当業者が動機付けられない。 (5) 加えて、前記段落【0744】の記載からして、甲第11号証を出発点にして本件訂正発明に至るに阻害事由があることが明白である。すなわち、原告が依拠する前記②の記載は、「代替的には」(Alternatively)と明示されていることから明らかなとおり、前記①の「細胞傷害性を誘導」する技術 とは異 あることが明白である。すなわち、原告が依拠する前記②の記載は、「代替的には」(Alternatively)と明示されていることから明らかなとおり、前記①の「細胞傷害性を誘導」する技術 とは異なる技術に関する記載である。ここで、本件訂正発明は、癌細胞を傷害する技術を規定したものであるから、まさに、「細胞傷害性を誘導」するものであり、そのような技術については、①でFc領域の機能を積極的に用いるべきことが記載されている。このように、甲第11号証では、本件訂正発明のように「細胞傷害性を誘導」する場合には、Fc領域を積極的に活用 すべきことが記載されているのであり、Fc領域の活性を下げることにはむしろ阻害事由があるし、少なくとも、そのような示唆など存在しない。 なお、甲第11号証の段落【0651】には、「グリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合」の例として、「例えば、治療用抗体が細胞傷害性物質(例えば、毒素)と接合され、免疫接合体それ自体が腫 瘍細胞崩壊において有効性を示す場合」とあるが、これは明らかにTR抗体と異なる技術を対象としたものである。 (6) また、相違点4(本件訂正発明1では、『ヒトFc領域変異体を構成する二つのポリペプチドの配列が互いに異なる配列を有する』のに対し、甲11発明では、上記のような特定がされていない点)についても、原告は、何 ら実質的な議論はできておらず、単に、甲第11号証の段落【0423】には「ヘテロ接合体抗体も、本発明の範囲内である」との記載があると述べるのみである。このようなごくごく抽象的な記載から「具体的な技術的思想」を認定することはできないことは明らかである。 (7) したがって、取消事由2が認められる余地はない。 3 取消事由3(サポート要件違反に係る ごくごく抽象的な記載から「具体的な技術的思想」を認定することはできないことは明らかである。 (7) したがって、取消事由2が認められる余地はない。 3 取消事由3(サポート要件違反に係る判断の誤り)について 【原告の主張】(1) アミノ酸変異についてア仮に、甲第2号証と、甲第7号証及び甲第28号証の1を組み合わせることができず、かつ、前記の技術常識又は周知技術が認められないのであれば、本件訂正発明はサポート要件に違反する。 原告(審判参加人)は、本件審判において、一部のアミノ酸変異しか効果を確認できていない本件明細書の開示内容を、その他のアミノ酸変異を含む本件訂正発明の範囲まで拡張ないし一般化することはできないことを主張した(無効理由4-3)。特に、a)「該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位お よび235位が変異して」いるとの発明特定事項において234位及び235位の変異の具体的内容が少なくとも片方は判明しておらず、いかなる変異がFcγ受容体への結合性を低下させるかが不明であること、及びb)IgG1~4の全てのサブクラスにおいてアミノ酸変異がFcγ受容体への結合性を低下させるかが不明であることを指摘した。 しかし、本件審決は、サポート要件違反は認めなかった。本件審決は、①本件明細書に記されている変異の好ましい態様の記載を抜き出すと共に、ERY17-2、ERY17-3がサイレント型Fcを有すること、すなわち、Fcγ受容体への結合性が減弱されていることが記載されており、ERY17-2、ERY17-3は、IgG1のFc領域にL2 34A/L235Aの変異が導入されたものであるとし、②さらに、本件明細書の段落【0124】には234V いることが記載されており、ERY17-2、ERY17-3は、IgG1のFc領域にL2 34A/L235Aの変異が導入されたものであるとし、②さらに、本件明細書の段落【0124】には234Vや235Aの変異体が公知であること、段落【0129】には234A/235Aを有する変異体が記載され、実施例では234A/235Aを有する変異体についてFcγ受容体への結合性が低下したことが確認されていることと、ポリペプ チド中のあるアミノ酸残基を、それと構造や電荷等が類似するそのほか のアミノ酸残基へと置換しても、もとの性質が変化しない場合が多いことは本願出願時点における技術常識であり、このことを裏付ける記載として、A(アラニン)と類似したアミノ酸であるバリン(V)の変異を有する変異体である234V/235AがFcγ受容体への結合性低下を示したことが甲第33号証(〔乙22〕)及び甲第34号証(〔乙23〕) に示されていることを合わせると、234位および235位をAと構造や電荷等が類似するアミノ酸残基に置換した場合でも、234A/235Aと同様にFcγ受容体への結合性が低下する場合が多いこと、234位及び235位をAと類似するアミノ酸残基に置換した変異体について、【0123】にも記載されているとおり、当業者にとって通常行う程 度の検証試験によりFcγ受容体への結合性が低下した変異体を選択すれば、本件訂正発明の課題を解決できることを当業者は認識し得た(下線は原告による。)とした。 イしかし、上記①は本件明細書において「サイレント型Fc」と呼称するものがERY17-2、ERY17-3に導入されたことをいうもので しかない。同様に②のいう「実施例」というのも、本件審決はこのERY17-2、ERY17-3のこと イレント型Fc」と呼称するものがERY17-2、ERY17-3に導入されたことをいうもので しかない。同様に②のいう「実施例」というのも、本件審決はこのERY17-2、ERY17-3のことをいうものと考えられるが、これらは本件明細書において「サイレント型Fc」と呼称するものが導入された、というだけで、Fcγ受容体への結合性が減弱されていることを確認したわけではない。すなわち、Fc領域の234位及び235位に変 異があることで、Fcγ受容体に対する結合活性を低下させることができることは、本件明細書の実施例の結果を見ても明らかにされていない。 ウまた、上記②の「ポリペプチド中のあるアミノ酸残基を、それと構造や電荷等が類似するそのほかのアミノ酸残基へと置換しても、もとの性質が変化しない場合が多いことは本願出願時点における技術常識」という 審決の認定が正しいのであれば、IgG1の234位及び235位のロ イシン(L)は、バリン(V)やアラニン(A)と同じ疎水性の側鎖を有しており、これらは構造や電荷の類似するアミノ酸であるため(甲40)、ロイシン(L)をバリン(V)やアラニン(A)で置換しても、技術常識に照らして、もとの性質が変化しないと判断される。他方で、本件審決では、234位及び235位のロイシン(L)をアラニン(A) やバリン(V)に置換することで(換言すると、L234A/L235A変異やL234V/L235A変異で)、Fcγ受容体に対する結合活性が下がることを前提としているが、これは、構造や電化の類似するロイシン(L)をバリン(V)やアラニン(A)に置換することで「もとの性質」が大きく「変化」することを明確に示すものである。すなわち、 FcγRに対する結合活性がL234A/L235A変異や ロイシン(L)をバリン(V)やアラニン(A)に置換することで「もとの性質」が大きく「変化」することを明確に示すものである。すなわち、 FcγRに対する結合活性がL234A/L235A変異やL234V/L235A変異によって変化することは、本件審決の摘示する技術常識に反することであって、この不整合は、本件審決の認定が誤りであることを端的に示している。 さらに、最も重要な点として、本件訂正発明1は、「該ヒトFc領域を 構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している」とだけ特定しているにすぎないから、「234位及び235位をAと類似するアミノ酸残基に置換」する場合以外も本件訂正発明に含まれる。にもかかわらず、本件審決において、「類似するアミノ酸残基」以外のアミノ酸においても効果がかわらない との理由付けは何らされていない。 したがって、当業者は、本件訂正発明の全範囲にわたって課題を解決できるなどとは、到底、認識をすることはできない。 エその上、上記②の判断においては、甲第33号証及び甲第34号証の記載も参酌されているところ、本件審決の新規性・進歩性欠如の判断の説 明に沿えば、①甲第33号証(〔乙22〕)及び甲第34号証(〔乙23〕) の変異にはFcγ受容体への結合が低下するものだけではなく、G1ΔaなどFcγ受容体への結合が低下しないものなど、様々な結合特性を有するアミノ酸変異が多岐にわたって記載されているものであり、234位及び235位以外にも多数のアミノ酸位置が掲載されていること、②本件明細書の段落【0125】に記載のある変異箇所の多くは甲第3 3号証及び甲第34号証に記載がなく、逆に甲第33号証及び甲第34号証に記載のある複数部位の同時 ノ酸位置が掲載されていること、②本件明細書の段落【0125】に記載のある変異箇所の多くは甲第3 3号証及び甲第34号証に記載がなく、逆に甲第33号証及び甲第34号証に記載のある複数部位の同時変異について本件明細書に記載がないこと、の2点が認められる。したがって、もし仮に審決の新規性・進歩性の判断に従うのならば、それぞれの文献のFcγ受容体への結合性は判断手法が異なっていると認定されるべきもののはずである。本件訂正 発明は、サポートを欠いているか(新規性及び進歩性が認められる場合)、又は新規性及び進歩性を欠いている(サポートが認められる場合)。 オ以上のとおり、本件審決は、本件訂正発明のアミノ酸変異の点について、サポート要件違反に関する判断を誤っている。 (2) 抗腫瘍活性について ア本件審決は、本件訂正発明1、3から6まで、11、14から18まで、20から22まで、24、28、30から44まで及び46から196までが、BiTEが持つ強い抗腫瘍活性を有するとの課題を解決できると認識できる範囲のものであり、サポート要件を満たすと認定した。しかし、本件訂正発明には、審決において本件訂正発明1の会合体、本件 訂正発明3の会合体、本件訂正発明4の会合体、本件訂正発明5の会合体、本件訂正発明6の会合体と呼ばれる5種類の会合体が含まれるところ、本件明細書の記載からでは、それらの会合体がいずれもBiTEが持つ強い抗腫瘍活性を有することを理解することができない。 イまず、本件訂正発明1の会合体は単独の抗腫瘍活性のデータしかなく、 BiTEとの比較がなされていない。 本件審決は、BiTEと抗腫瘍活性を比較していない本件訂正発明1の会合体について、実施例3及び7によれば、IgGを基本骨格とした各種 く、 BiTEとの比較がなされていない。 本件審決は、BiTEと抗腫瘍活性を比較していない本件訂正発明1の会合体について、実施例3及び7によれば、IgGを基本骨格とした各種会合体がBiTEが持つ強い細胞傷害活性(抗腫瘍活性)を有することが認められるから、同じくIgGを基本骨格とする、本件訂正発明1、5及び6の会合体も同様に、BiTEが持つ強い抗腫瘍活性を有す ることが優に推測されると述べる。しかし、実施例7の記載が、そのデータの対象となった本件訂正発明3及び4の会合体の抗腫瘍活性すら示せていないのは後記のとおりであって、実施例7の記載は当然本件訂正発明1の会合体に関しても何ら有利なデータとはならない。 さらに、BiTEとはFc領域を欠くことによってサイトカインス トームを防ぐというような欠点を除去するという(副作用に関する)メリットのみならず、「BiTEはそれまでに知られていた様々なTR抗体に比べて優れた抗腫瘍作用を持つことが報告されている」(本件明細書【0005】)という更なるメリットも有するものであったが、普通の二重特異性抗体(すなわち普通のTR抗体)にエフェクター機能を低下さ せるためにFc領域にアミノ酸変異を導入しただけの本件訂正発明1の会合体について何の具体的データもなく「BiTEが持つ強い抗腫瘍活性を有することが優に推測される」などという結論を導くに足りる技術常識等は、何ら示されていない。 したがって、本件明細書の記載から本件訂正発明1の会合体がBiT Eが持つ強い抗腫瘍活性を有することを理解することはできず、本件訂正発明1の会合体を発明特定事項とする本件訂正発明1、18、20、22、28、30、49、81、107、133、159、185はサポート要件に違反する。 ウ ることを理解することはできず、本件訂正発明1の会合体を発明特定事項とする本件訂正発明1、18、20、22、28、30、49、81、107、133、159、185はサポート要件に違反する。 ウ次に、本件訂正発明3及び4の会合体に対し、癌抗原結合ドメインがG PC3以外(Ep-CAM及びEGFR)の場合についてBiTEとの 抗腫瘍活性の比較がされていない上に、むしろ他の実験データから推察するにBiTEより抗腫瘍活性が劣るものと考えられる。すなわち、本件訂正発明3及び4の会合体については、癌抗原結合ドメインがGPC3である場合においてのみBiTEが持つ強い抗腫瘍活性を有することを示すデータ(本件明細書実施例7、図20)が記載されている。しか し、これをEp-CAM及びEGFRといったその他の癌抗原結合ドメインの場合にも当てはめて理解することはできない。 本件審決は、この点、実施例7の実験は会合体の構成による腫瘍活性の差異のみに着目したデータとして、「癌結合ドメイン」が実施例7以外のEp-CAM及びEGFR含めその他の癌結合ドメインである場合全 体にも一般化できるとしたが、そのような論理では説明できない事象がある。具体的には、本件明細書の図20において、本件訂正発明3の会合体は本件訂正発明4の会合体を抗体濃度0.01nMにおいて大きく上回る抗腫瘍活性を見出しているが、本件明細書の図23においては、本件訂正発明3の会合体は本件訂正発明4の会合体と抗腫瘍活性が抗体 濃度0.01nMにおいてほとんど変わらない(有意なものかはともかくとして、むしろ上下は逆になっている。)。 したがって、本件明細書の記載からでは、本件訂正発明3及び4の会合体がBiTEが持つ強い抗腫瘍活性を有することを理解することはできず、 なものかはともかくとして、むしろ上下は逆になっている。)。 したがって、本件明細書の記載からでは、本件訂正発明3及び4の会合体がBiTEが持つ強い抗腫瘍活性を有することを理解することはできず、本件訂正発明3及び4はサポート要件に違反する。 エさらに、本件訂正発明5及び6の会合体は一切の抗腫瘍活性のデータがない。 本件審決は、BiTEと抗腫瘍活性を比較していない本件訂正発明5及び6の会合体について、実施例3及び7によれば、IgGを基本骨格とした各種会合体がBiTEが持つ強い細胞傷害活性(抗腫瘍活性)を 有することが認められるから、同じくIgGを基本骨格とする、本件訂 正発明1、5及び6の会合体も同様に、BiTEが持つ強い抗腫瘍活性を有することが優に推測されると述べるが、実施例7の記載が、そのデータの対象となった本件訂正発明3及び4の会合体の抗腫瘍活性すら示せていないのは上記のとおりであって、当然本件訂正発明5及び6の会合体においても何ら有利な事情とはならない。実施例3の記載につい ても、本件訂正発明5及び6の会合体はドメイン置換が入っている点で通常の抗体とは異なるが、新規の構造を付加しているものではないから、実施例3の抗体とは構造が大きく異なる。 したがって、本件明細書から本件訂正発明5及び6の会合体がBiTEが持つ強い抗腫瘍活性を有することを理解することはできず、本件訂 正発明5及び6はサポート要件に違反する。 オ以上より、すべての独立請求項である本件訂正発明1、3から6まで、18、20、22、28、30、49、81、107、133、159、185がサポート要件に違反するから、従属請求項も含め、この点においても、本件審決の本件訂正発明(本件訂正発明1、3から6まで、1 1、14 、28、30、49、81、107、133、159、185がサポート要件に違反するから、従属請求項も含め、この点においても、本件審決の本件訂正発明(本件訂正発明1、3から6まで、1 1、14から18まで、20から22まで、24、28、30から44まで及び46から196まで)についてのサポート要件違反に関する判断は誤っている。 【被告の主張】(1) アミノ酸変異について ア本件訂正発明は、「該ヒトFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される234位および235位が変異している」との発明特定事項、すなわち234位及び235位の変異を規定している。そして、234位及び235位の変異は、Fc領域のFcγ受容体への結合活性を低下させる変異であるから、この変異を有することで特 定された本件訂正発明は、(2)「配列番号:23、24、25、または 26に記載のヒトFc領域において変異を有するヒトFc領域変異体を含むドメインであって、当該変異体を有するポリペプチド会合体が、同じアイソタイプの抗体のヒトFc領域を有するポリペプチド会合体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する結合活性が低下している、ドメイン」を有することを当業者であれば十分に理解できる。 したがって、本件訂正発明がサポート要件を充足することは明らかである。 イこれに対し、原告は、仮に、甲第2号証と甲第7号証及び甲第28号証の1を組み合わせることができず、かつ技術常識又は周知技術との組み合わせも認められないのであれば、本件訂正発明はサポート要件に違反 するなどと主張し、進歩性欠如の主張が認められないのであれば、サポート要件に違反するとの主張をしている。 しかし、甲第2号証と甲第7号証及び甲第28号証の1は、 発明はサポート要件に違反 するなどと主張し、進歩性欠如の主張が認められないのであれば、サポート要件に違反するとの主張をしている。 しかし、甲第2号証と甲第7号証及び甲第28号証の1は、組み合わせる動機付けを欠いた文献であるから、組み合わせることを前提として議論していることがそもそも誤っている。 また、進歩性の判断においては、仮に周知技術であったとしても、その周知技術を引用発明と組み合わせる動機付けが必要である。他方で、サポート要件の判断においてはこのような動機付けが問題とならず、明細書の記載を前提に技術常識も考慮して、開示が十分かどうかが問われるものである。両者の判断基準は自ずと異なり、一方を満たせば他方を 満たさないという関係にはならない。原告の主張は、進歩性及びサポート要件のそれぞれ判断基準を理解していないか、意図的に両者を混同したものであって、さらに、審決の判断内容も誤解したものであり、失当である。 (2) 抗腫瘍活性について ア本件訂正発明の正しい課題 (ア) 原告は、本件訂正発明の課題の一つが、BiTEが持つ強い抗腫瘍活性を有することであることを前提として、本件訂正発明の範囲に、BiTEが持つ強い抗腫瘍活性を有するという課題を満たさない発明が含まれるため、本件訂正発明はサポート要件を満たさないことを主張している。 (イ) しかし、本件訂正発明の課題は、正しくは、本件明細書の段落【0004】から【0008】までに記載された情況に鑑みて、「T細胞を標的癌細胞に近接せしめT細胞による標的癌細胞に対する細胞傷害活性を通じて癌を治療することを可能とするポリペプチド会合体、当該ポリペプチド会合体の製造方法、および当該ポリペプチド会合体を有 効成分として含む細胞傷 T細胞による標的癌細胞に対する細胞傷害活性を通じて癌を治療することを可能とするポリペプチド会合体、当該ポリペプチド会合体の製造方法、および当該ポリペプチド会合体を有 効成分として含む細胞傷害誘導治療剤を提供すること」、及び「当該細胞傷害誘導治療剤を有効成分として含む、様々な癌を治療または予防するための医薬組成物または当該医薬組成物を用いる治療方法を提供すること」である(【0010】)。より具体的には、T細胞リクルート抗体(TR抗体)としてtrifunctional 抗体と称される抗体が知られ、 癌抗原に結合するFabとT細胞上のCD3イプシロン鎖に結合するFabがそれぞれ片腕に含まれる、WholeIgG型の二重特異性抗体が知られているが、特許権者は、trifunctional 抗体は癌抗原非依存的な各種サイトカインを発現誘導し、副作用に繋がると考えた(【0003】~【0005】)。他方で、二重特異性T細胞エンゲイジャー (BiTE)と称されるTR抗体が知られていたところ、特許権者は、これについて、血中半減期が著しく短いということが問題であると考えた(【0008】)。これらの問題を並べて検討することや、これらの問題に対処しようとすること自体が、課題として新しいのであって、本件訂正発明は、この情況に鑑みて、新しいTR抗体を提供しようと するものである。 (ウ) そして、本件訂正発明は、上記情況の少なくとも1つの問題を解決する手段を提供している。すなわち、BiTEの生体に投与された場合の短い血漿中半減期が改善され、且つ癌抗原非依存的なサイトカイン放出症候群(CRS)等の重篤な副作用が低減された、T細胞を標的癌細胞に近接せしめT細胞による標的癌細胞に対する細胞傷害活性 を通じて癌を治療するこ が改善され、且つ癌抗原非依存的なサイトカイン放出症候群(CRS)等の重篤な副作用が低減された、T細胞を標的癌細胞に近接せしめT細胞による標的癌細胞に対する細胞傷害活性 を通じて癌を治療することを可能とするポリペプチド会合体を提供している。よって、本件明細書の【発明が解決しようとする課題】(【0010】)に記載された本件訂正発明の課題を解決していることは明らかである。仮に、このようなポリペプチド会合体がBiTEと同等の効力を有しないものであっても、このようなポリペプチド会合体は、 出願日当時の技術水準を超える発明であり、それ自体で価値のある課題を解決したものと評価することができる。 イ BiTEが持つ強い抗腫瘍活性を有することが課題だとしてもサポート要件を充足すること(ア) 仮に、本件訂正発明の課題の一つに、「BiTEが持つ強い抗腫瘍 活性を有する」ことも含まれるとした場合であっても、本件審決の認定のとおり、本件訂正発明がBiTEが持つ強い抗腫瘍活性を奏することは、本件明細書から理解できる。それゆえ、この点においても、原告の主張は、失当である。 (イ) 原告は、本件訂正発明3の会合体と本件訂正発明4の会合体につい て、本件明細書の【図20】及び【図23】の結果が完全には一致していないことを指摘するが、これらが完全に一致していなくとも、当業者が、これらの会合体が癌抗原を変えた場合でも効果を奏すると認識できることは、何ら否定されない。 (ウ) さらに、原告は、本件訂正発明1の会合体、本件訂正発明5の会合 体、本件訂正発明6の会合体については実施例のデータを一般化でき ないと主張するが、本件審決が述べるとおり、本件明細書では諸々の構造の会合体について開示し、実施例3及び7で種々の会合体につい 本件訂正発明6の会合体については実施例のデータを一般化でき ないと主張するが、本件審決が述べるとおり、本件明細書では諸々の構造の会合体について開示し、実施例3及び7で種々の会合体について細胞傷害活性が示されていることからすれば、IgGを基本骨格とした各種会合体が、BiTEが持つ強い細胞傷害活性(抗腫瘍活性)を有することは明らかである。具体的には、実施例7から実施例11 までにより、「癌抗原に対するIgGを基本骨格とし、片側のFabをCD3 epsilon に対する結合ドメインに置き換えた分子」が、優れた細胞傷害活性及び抗腫瘍効果を奏することが示されている。そして、本件訂正発明1は、癌抗原結合ドメインもT細胞受容体複合体結合ドメインも、Fab構造を有するWholeIgG型の基本骨格を有する 抗体になっているから、「癌抗原に対するIgGを基本骨格とし、片側のFabをCD3 epsilon に対する結合ドメインに置き換えた分子」に対応するものである。したがって、本件訂正発明1は、BiTEと同等以上の細胞傷害活性を奏することを当業者は理解できる。 (エ) さらに、本件明細書の段落【0008】に記載されるように、Bi TEは、血中半減期が著しく短く、より具体的には生体に投与された場合のBiTEの血中半減期は数時間程度であるという問題を有する。 実施例においては、ERY9-1とERY10-1(それぞれ図17H及び図17I参照)が優れた血漿中半減期を有することが示されている(図9及び図10参照)。具体的には、本件明細書の段落【000 8】によれば、BiTEの血中半減期は数時間程度であるとされているのに対して、図9及び図10では、ERY9-1及びERY10-1が1日以上の血中半減期を有し、段落【0263】によれ 【000 8】によれば、BiTEの血中半減期は数時間程度であるとされているのに対して、図9及び図10では、ERY9-1及びERY10-1が1日以上の血中半減期を有し、段落【0263】によれば2日後でさえ10nM以上の濃度を保っていることが読み取れる。このことは、FcγRへの結合能を低下させたFc領域が、本件訂正発明のポ リペプチド会合体の有効血中濃度を長期間維持でき、本件訂正発明の ポリペプチド会合体の治療有効性が大きく高まることを意味する。 そして、本件明細書では、生体投与後の抗腫瘍効果(細胞傷害活性)に関しても評価し、GPC3 ERY8-2(図17G参照)とERY10-1(図17I参照)が明らかな抗腫瘍効果を奏することが示され(図6~図8参照)、GPC3 ERY17-2(図19A参照)もま た明らかな抗腫瘍効果を奏することが示されている(図21参照)。これらの結果から本件訂正発明のTR抗体の生体内での抗腫瘍効果は明らかであり、これは本件訂正発明のTR抗体が投与後に優れた血中半減期を備えることと整合する。このことは、甲第23号証(〔乙12〕)でも説明されており、想定どおり、GPC3 ERY10-1とERY17 -2の血漿中半減期が、非常に長くなっていることを示すデータが得られている(甲23、10頁の項目5-3参照)。血漿中半減期が長くなることによりTR抗体が体内に長く滞留し、長期にTR効果が抗腫瘍効果を発揮することになる。 このように、本件訂正発明は、BiTEと同等以上の細胞傷害活性を 奏するものであるとともに、Fcγ受容体への結合性が低減されたFc領域を有することによって癌抗原非依存的なサイトカイン誘導などの副作用を低減することができるために、生体内において投与量を治療上有効量 するものであるとともに、Fcγ受容体への結合性が低減されたFc領域を有することによって癌抗原非依存的なサイトカイン誘導などの副作用を低減することができるために、生体内において投与量を治療上有効量に引き上げ、有意な薬効を奏することを可能としている。その上、本件訂正発明は、BiTEよりも改善された血漿中滞留性を有するため、 体内に長く滞留し、長期に抗腫瘍効果を発揮することができる。 (オ) したがって、仮に、本件訂正発明の課題に「BiTEが持つ強い抗腫瘍活性を有する」ことが含まれると認定されたとしても、本件訂正発明のTR抗体は、BiTEが持つ強い抗腫瘍活性を有することは合理的に理解できる。原告の主張するサポート要件に係る取消事由に理 由はない。 4 取消事由4(実施可能要件違反に係る判断の誤り)について【原告の主張】当業者は、本件訂正発明の全てについて、FcγR結合親和性が低下している(それがゆえにサイトカインストームを抑制できる)と同時に、BiTEが持つ強い抗腫瘍活性を有することを、本件明細書及び技術常識から理解するこ とはできない。これらの性質をいかにして得るかについて、説明やデータは本件明細書中に一切存在しない。 したがって、当業者が、Fcγ受容体に対する結合活性が低下しているFc領域を含み、かつBiTEが持つ強い抗腫瘍活性をも保持する、本件訂正発明の構造を決定・生産・使用するには、過度の試行錯誤を要するから、本件訂正 発明は実施可能要件に違反する。 【被告の主張】取消事由4の実施可能要件違反について、原告は、実質的には取消事由3のサポート要件違反の主張と同一の内容を述べるにすぎず、取消事由3と同様、理由がないことは明らかである。 なお、原告は、234位及び235位の変異 違反について、原告は、実質的には取消事由3のサポート要件違反の主張と同一の内容を述べるにすぎず、取消事由3と同様、理由がないことは明らかである。 なお、原告は、234位及び235位の変異以外の変異を当業者が全て確認する必要があり、それが過度の試行錯誤に当たると述べているが、当業者は、その他のあらゆる全ての変異を確認しなくとも、234位及び235位の変異を入れ、単に結合活性を確認すれば本件訂正発明を実施できる。全ての変異を確認する必要などなく、原告の主張は明らかに誤りである。

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