平成19(行ウ)745 児童福祉施設入所措置決定取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成20年7月11日 東京地方裁判所 その他
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判決文本文11,208 文字)

- 1 -主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求東京都多摩児童相談所長が平成19年7月18日付けでしたA(平成▲年▲月▲日生)についての児童福祉施設への入所措置決定を取り消す。 第2事案の概要 本件は,東京都多摩児童相談所長が,在籍小学校から児童虐待の疑いの通告を受けた児童であるAについて,児童福祉法28条1項1号に基づく家庭裁判所の承認の審判を得た上,同法27条1項3号に基づく児童福祉施設への入所措置決定をしたところ,Aの親権者父である原告が,同決定の取消しを求めている事案である。 関係法令の定め( )児童福祉法において「保護者」とは,親権者,未成年後見人その他の ,者で,児童を現に監護する者をいい(同法6条「要保護児童」とは,保),護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童をいう(同法6条の3。 )( )児童相談所長は,同法25条により要保護児童として通告を受けた児童 について,児童福祉司等による指導,知的障害児施設など一定の児童福祉施設への入所その他の同法27条の措置が必要であると認めたときは,これを都道府県知事に報告しなければならない(同法26条1項柱書及び1号。 )なお,児童相談所長は,必要があると認めるときは,上記都道府県知事に対する報告その他の同法26条1項各号の措置を採るに至るまで,児童に一時保護を加え,又は適当な者に委託して,一時保護を加えさせることができる(同法33条1項。 )- 2 -( )都道府県は,上記( )の報告を受けた児童について,同法27条1項各号 又は2項の措置を採らなければならない(同条1項,2項。ただし,知的)障害児施設など一定の児童福祉施設への入所など同条1項3 府県は,上記( )の報告を受けた児童について,同法27条1項各号 又は2項の措置を採らなければならない(同条1項,2項。ただし,知的)障害児施設など一定の児童福祉施設への入所など同条1項3号又は2項の措置は,児童に親権者(同法47条1項の規定により親権を行う児童福祉施設の長を除く)又は未成年後見人(以下「親権者等」という)があるとき。 。 は,その者の意に反して,これを採ることができない(同法27条4項。 )なお,都道府県知事は,必要があると認めるときは,児童福祉司等による指導,知的障害児施設など一定の児童福祉施設への入所その他の同法27条1項各号又は2項の措置を採るに至るまで,児童に一時保護を加え,又は適,()。 当な者に委託して一時保護を加えさせることができる同法33条2項上記( )及び上記の一時保護の期間は,原則として,その開始の日から2 月を超えてはならないが,児童相談所長又は都道府県知事は,必要があると認めるときは,同期間経過後も引き続き一時保護を行うことができる(同条3項,4項。 )( )都道府県は,上記( )にかかわらず,親権者等である保護者が,その児童 を虐待し,その監護を怠り,その他当該保護者に監護させることが著しく当該児童の福祉を害する場合において,当該児童を知的障害児施設等,一定の児童福祉施設に入所させるなど同法27条1項3号の措置を採ることが,当該親権者等の意に反するときは,家庭裁判所の承認を得て,当該措置を採ることができる(同法28条1項柱書及び1号。 )( )家庭裁判所は,上記( )の承認を,家事審判法9条1項甲類に掲げる事項 の審判として行い(児童福祉法28条3項,当該児童を現に監護する者及)び親権者(親権者のないときは,未成年後見人)の陳述を聴かなければならない の承認を,家事審判法9条1項甲類に掲げる事項 の審判として行い(児童福祉法28条3項,当該児童を現に監護する者及)び親権者(親権者のないときは,未成年後見人)の陳述を聴かなければならない(特別家事審判規則19条1項。その承認の審判に対しては,当該児)童を現に監護する者又は親権者若しくは未成年後見人が,即時抗告をすることができる(同規則20条2項。 )- 3 -( )東京都においては上記( )及び( )に摘示した児童福祉法27条1項同 ,(項3号の規定による重症心身障害児施設への入所を除く,同法28条1。)項及び同法33条2項(知事が別に定める場合を除く。)の規定による知事の権限は,児童相談所長に委任されている(同法32条1項,地方自治法153条2項,東京都児童福祉法施行細則(昭和41年東京都規則第161号)1条1号,5号。 ) 前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)( )Aは,平成▲年▲月▲日,原告とBとの間の二男として出生したが,○ で知的障害があり,平成12年5月からは乳児院,平成13年11月からは肢体不自由児施設に入所していた。 原告は,Aの親権者父であり,平成18年3月25日,Aを上記肢体不自由児施設から引き取り,親権者母であるBとともに,児童福祉法6条の保護者として,Aの監護をしていた。 ,,(),原告とBにはAのほか両名の間の長男であるC平成▲年▲月▲日生BとBの前夫との間の長男で原告の養子であるD(平成▲年▲月▲日生)の,,,(「」。)2名の子がありCにはAと同様の障害がありD以下長兄というには,軽度の知的障害がある(甲5)。 ( )東京都多摩児童相談所長は,平成18年9月4日,Aの在籍する多摩市 (「」。)2名の子がありCにはAと同様の障害がありD以下長兄というには,軽度の知的障害がある(甲5)。 ( )東京都多摩児童相談所長は,平成18年9月4日,Aの在籍する多摩市 立E小学校から,児童福祉法25条に基づき,同人について虐待の疑いがあるとの通告を受けたことから,同月21日,同法33条に基づき,虐待の疑いを理由として,Aに一時保護を加え,同日,原告に対し,その決定を通知した(甲2,乙1)。 ( )原告は,同年10月6日,東京都知事に対し,上記( )の一時保護決定に ついて審査請求をし,虐待の事実を争うなどしたが,同年12月14日,同審査請求を棄却する旨の裁決を受けた(甲3,4)。 - 4 -( )東京都多摩児童相談所長は,同日,東京家庭裁判所八王子支部に対し, Aに対する家庭内の虐待が継続していると判断したが,同人の親権者父母である原告及びB(以下「原告ら」という)が虐待の事実を否認して知的障。 害児施設への入所に同意しないとして,Aを知的障害児施設に入所させることについて児童福祉法28条1項1号の承認の審判の申立てをした。原告らは,同審判手続において,虐待の事実を争うなどしたが,同裁判所は,平成19年3月27日,Aが一時保護前に受傷した多数の創傷について,同人に対し家族(父母又は長兄)による虐待がされていた蓋然性が高く,同人をこれ以上家庭内で養育することはその福祉を害すると認められる等として,同人を知的障害児施設に入所させることを承認する旨の審判(以下「本件承認審判」という)をした(甲5,8)。 。 ( )原告らは,同年4月12日付けで,東京高等裁判所に対し,本件承認審 判に対し即時抗告の申立てをし,抗告審において,虐待の事実を争うなどしたが,同年6月14日,抗告棄却の決定を受 )。 。 ( )原告らは,同年4月12日付けで,東京高等裁判所に対し,本件承認審 判に対し即時抗告の申立てをし,抗告審において,虐待の事実を争うなどしたが,同年6月14日,抗告棄却の決定を受け,所定の期間内に特別抗告又,。(,)は許可抗告の申立てをすることなく本件承認審判が確定した甲6 ( )東京都多摩児童相談所長は,同月16日,児童福祉法27条1項3号に 基づき,Aに対し,被虐待を理由として,同人を知的障害児施設に入所させ(「」。),る措置の決定以下本件入所措置決定というをしてその措置を採り同年7月18日,原告に対し,本件入所措置決定の通知をした。なお,その通知書に,入所施設名及びその所在地は記載されていなかった(甲1)。 争点 ( )本件承認審判に基因する本件入所措置決定の違法事由の有無 ( )本件入所措置決定自体の違法事由の有無 当事者の主張の要旨( )争点( )(本件承認審判に基因する本件入所措置決定の違法事由の有無) について- 5 -(原告の主張の要旨)ア本件承認審判は,以下のとおり,Aに対する虐待の事実がないにもかかわらず,それがあると誤認してされたものであり,虐待の事実がない以上,このように事実を誤認してされた承認審判に基づく本件入所措置決定は,その要件を欠き,違法である。 (ア)本件承認審判では,Aの腰背部に煙草の押付けによる火傷跡とみられる瘢痕があったことが問題とされた。しかし,原告らがそのような虐待をしたことはなく,同瘢痕は,Aが○のため皮膚が弱いことにより,日常生活の中で生じたものにすぎないと推測される。 (イ)本件承認審判では,Aに鈍体による打撃痕や前額部の傷跡があることも問題とされた。しかし,前者は,長兄との兄弟喧嘩によって生じ いことにより,日常生活の中で生じたものにすぎないと推測される。 (イ)本件承認審判では,Aに鈍体による打撃痕や前額部の傷跡があることも問題とされた。しかし,前者は,長兄との兄弟喧嘩によって生じたものにすぎず,後者は,Aが食事をしながら眠ってしまいテーブルに額をぶつけ,又はトイレのドア等に額をぶつけて生じたと推測されるものにすぎず,いずれも,原告らによる虐待によって生じたものではない。 イ本件承認審判には,以下のとおり,事実誤認,審理不尽,適正手続違背等の違法があるので,本件入所措置決定も,その違法性が承継され,違法である。 (ア)本件承認審判は,全体で2回,原告らが代理人を選任した後は1回のみの期日で終了したが,重要な資料であった医師の意見書は原告らに開示されず,審判書の理由では,誰による虐待があったのかも特。 ,,定されていない抗告審の審理も極めて形式的で杜撰なものであり1回の期日で終了した。本件承認審判及びその抗告審決定は,以上の,,とおり原告らに十分な反論・反証の機会を与えずにされている点で憲法31条の適正手続の保障を侵害するもので,違憲・違法である。 (イ)本件承認審判が依拠した医師の意見書は,専門外の法医学者が,- 6 -Aを診察せず,写真等のみを根拠に作成したものと考えられ,根拠のない推認をするなど信用性を欠くものであり,本件承認審判の申立書及び家庭裁判所調査官の調査報告書も,多数の事実誤認や問題のある記述を含むものであった。本件承認審判は,これらに依拠して審理不尽による事実誤認を犯したものであり「職権で,事実の調査及び必,要があると認める証拠調をしなければならない」とする家事審判規則7条1項に違反し,違法である。なお,上記(ア)のとおり,同審判の審理自体が適正手続の保障を侵害するものであったのであ の調査及び必,要があると認める証拠調をしなければならない」とする家事審判規則7条1項に違反し,違法である。なお,上記(ア)のとおり,同審判の審理自体が適正手続の保障を侵害するものであったのであるから,以上の主張は,本件承認審判の審理を蒸し返すものではない。 (ウ)また,本件承認審判は,Aの身体を侵害し,原告らのAに対する監護権を侵害するものとしても,違法である。 (被告の主張の要旨)ア本件承認審判及びその抗告審決定が述べるとおり,Aには,医学的知見から,明らかに火傷跡と認められる傷があったところ,その傷の位置から,本人による受傷又は通常の生活環境で生じたものであるとは考えられない上,複数の火傷跡であることから,長期にわたり継続的に受傷したものと認められるのであり,当該火傷跡は,父母又は兄など家族の加害行為によるものである蓋然性が高い。そして,抗告審決定が指摘するとおり,一時保護の当時に見られたAの傷跡は,一時保護後,火傷跡がケロイド状に残るほか,いずれも消失している。現在,火傷跡も治癒に向かっており,一時保護後,現在に至るまで,新たな傷は生じていない。そうすると,一時保護の当時,Aが家族により虐待を受けていたことは明らかである。 イ原告らは,学校等に対し虐待の事実を隠ぺいし,児童相談所の指導等に対しても虐待の事実を認めず,一貫してこれに従う姿勢を有していないのであり,Aの福祉を害することは明らかである。 - 7 -( )争点( )(本件入所措置決定自体の違法事由の有無)について (原告の主張)ア東京都多摩児童相談所長は,原告らに対し,一時保護の当時から,Aを入所させた知的障害児施設の施設名を開示していない。そのため,原告らは,Aがどこにいるのか全く分からず,非常に不安な状況にある。 このことは,原告らの監護権( ,原告らに対し,一時保護の当時から,Aを入所させた知的障害児施設の施設名を開示していない。そのため,原告らは,Aがどこにいるのか全く分からず,非常に不安な状況にある。 このことは,原告らの監護権(民法820条)を害し,児童と父母との接触の権利を保障した児童の権利に関する条約9条3項にも違反するのであるから,本件入所措置決定は違法というべきである。仮に,原告らがAと面会することにより,同人の福祉が害されるというのであれば,入所施設名を開示した上,原告らが面会の申出をした際,それを拒絶すれば足りる。 (),イ被告の提出に係る平成20年1月21日撮影の写真乙2によればAには,知的障害児施設への入所後も,新たな傷跡が認められる。この同人の受傷が施設内での虐待によるものであるならば,同人を施設に入所させたことにより同人が傷害を負ったわけであり,本件入所措置決定自体が同人の身体及び原告らの監護権を侵害する違法な措置であることが明らかとなる。 (被告の主張)ア原告らは,終始一貫して虐待の事実を否認してきたところ,このような原告らの態度からすれば,原告らにAの入所施設名を開示すると,原告らがAの取戻しを図る危険性が高い。その結果,実際に取戻しにまで至らなくても,Aと原告らとが遭遇して,Aが虐待の事実を思い出すなど,同人の福祉が著しく害されることになる。そうすると,原告らにAの入所施設名を開示しないことは,監護権に対する合理的な制限であって,原告らの監護権を侵害するものではない。また,児童の権利に関する条約9条1項は,児童の父母からの分離の制限の例外として,権限の- 8 -ある当局が司法の審査に従うことを条件として適用のある法律及び手続に従い「児童の最善の利益」のために分離が必要であると決定する場合を除いており,本件入所措置決定は,こ 例外として,権限の- 8 -ある当局が司法の審査に従うことを条件として適用のある法律及び手続に従い「児童の最善の利益」のために分離が必要であると決定する場合を除いており,本件入所措置決定は,この条約の定めを踏まえて規定された児童福祉法28条1項1号の規定に基づき「児童の最善の利益」,のために必要であるとして決定されたものであり,同条約9条3項も,児童と父母との接触の権利を尊重することの例外として「児童の最善,の利益」に反する場合を除いている。 イAが本件入所措置決定により知的障害児施設に入所した後,Aに新たな受傷は生じていない。 第3当裁判所の判断 争点( )(本件承認審判に基因する本件入所措置決定の違法事由)について ( )児童福祉法は,都道府県に対し,児童の福祉のため(1条ないし3条, )種々の措置を採る権限を付与し(27条1項,そのうち,知的障害児施設)(「」。)など一定の児童福祉施設への入所又は里親委託以下施設入所等というの措置(同項3号)については,原則として,親権者等の意に反して採ることができないとする(同条4項)一方,保護者である親権者等が児童を虐待するなど親権者等に監護させることが著しく児童の福祉を害する場合においては,親権者等の意思に反する場合であっても,家庭裁判所の承認の審判を得ることを条件として,当該措置を採ることができると定めており(28条1項柱書及び1号,親権者等の手続保障として,審判手続中の意見聴取の)機会に加え,承認の審判に対する即時抗告の権利が付与されている(特別家事審判規則19条1項,20条2項。 )このような児童福祉法及び関連法令の規定・構造に照らすと,上記のとおり,保護者である親権者等の意に反して施設入所等の措置を採ることについ,,,て家庭裁判所の承認の 19条1項,20条2項。 )このような児童福祉法及び関連法令の規定・構造に照らすと,上記のとおり,保護者である親権者等の意に反して施設入所等の措置を採ることについ,,,て家庭裁判所の承認の審判が条件とされているのは施設入所等の措置が親権者等の監護権等の制限のみならず,児童の身体の拘束等も伴う措置であ- 9 -ることから,親権者等による監護の継続が著しく児童の福祉を害するとの要件(同法28条1項)の認定・判断に加え,児童の福祉,親権者等の権利及び双方の比較衡量の総合的な観点からの当該措置の相当性の判断を,行政機関ではなく,親権の行使及び未成年後見について監督的立場にある家庭裁判所の専権にゆだね,行政機関は,家庭裁判所の判断に従って当該措置の採否を決すべきものとすることにより,児童の福祉の保護及び親権又は後見の擁護の各要請を適切かつ調和的に確保する趣旨によるものと解される。 そして,以上のような施設入所等の措置及びその承認の審判の手続構造,施設入所等の措置の当否に関する認定・判断を家庭裁判所の専権にゆだねた制度の趣旨等によれば,①児童福祉法28条1項所定の要件の有無(虐待の事実など児童の福祉を害する事情の有無,当該措置の相当性といった承認)の実体要件のみならず,②審判の手続要件を含め,当該審判手続及びその上訴審手続で争うことができる事由については,児童福祉法及び関連法令上,専ら当該審判手続及びその上訴審手続において争うことが予定されており,承認の審判に対する事実誤認・判断不当,審理不尽・手続違背等の実体上又,,,,は手続上の不服についても憲法違反の不服を含めすべて抗告特別抗告許可抗告の上訴審手続の中で争うべき事柄であって,抗告棄却の決定を経るなどして承認の審判が有効に確定した以上,親権者等は,後行の手続において 服についても憲法違反の不服を含めすべて抗告特別抗告許可抗告の上訴審手続の中で争うべき事柄であって,抗告棄却の決定を経るなどして承認の審判が有効に確定した以上,親権者等は,後行の手続において,これらの不服を主張して確定審判の適法性を争うことはできず,また,上記①の実体要件について,確定審判の基準時以前の事情に基づき確定審判の認定・判断に反する主張をしてこれを争うことはできないと解するのが相当である。 もとより,児童福祉法において,承認の審判を得た上で行われる児童福祉施設への入所措置決定につき,行政不服審査法の審査請求に関する規定の適用を除外する規定が設けられていないことに照らすと,当該入所措置決定に対しその取消しを求める抗告訴訟を提起することが妨げられるものではない- 10 -が,既に承認の審判が有効に確定し,その承認に係る施設への入所の措置が採られている場合には,(ア)上記のとおり,当該抗告訴訟において,確定審判に対する事実誤認・判断不当,審理不尽・手続違背等の実体上又は手続上の不服(憲法違反の不服を含む)を主張して確定審判の適法性を争うこと。 はできず,また,上記①の実体要件について,確定審判の基準時以前の事情に基づき確定審判の認定・判断に反する主張をしてこれを争うことはできず,(イ)当該抗告訴訟において争い得るのは,裁判権の欠如等による審判の無効,確定審判の基準時後(入所措置決定前)の事情変更による上記①の実体要件の欠如等の事由に限られるものと解される。 これを本件についてみるに,前記第2,5( )(原告の主張)ア及びイの 主張は,要するに,本件承認審判(抗告審決定による変更後のもの。以下同じについて事実誤認・判断不当審理不尽・手続違背の不服を主張し上。),(記イ,また,本件承認審判の基準時(抗告審決定時) 張は,要するに,本件承認審判(抗告審決定による変更後のもの。以下同じについて事実誤認・判断不当審理不尽・手続違背の不服を主張し上。),(記イ,また,本件承認審判の基準時(抗告審決定時)以前の事情に基づい)てその認定に反する事実を主張する(上記ア)ものであるところ,裁判権の欠如など審判の無効事由の存在を窺わせる証拠はなく,本件承認審判は有効に確定し,その承認に係る知的障害者施設への入所の措置が採られている以上,上記の説示のとおり,いずれも,本件訴訟において争い得る事由ではなく,主張自体失当であるといわざるを得ない(なお,憲法31条(適正手続の保障)違反の主張(上記イ(ア))は,本来,本件承認審判の抗告審決定に対する特別抗告において主張すべき事由であるところ,原告らは,特別抗告の申立てをすることなく,同審判を確定に至らしめている。また,原告は,本件承認審判が,Aの身体を侵害し,原告らのAに対する監護権を侵害するものとして違法であるとも主張するが(上記イ(ウ) ,上記主張も,要する)に,上記①の実体要件のうち当該措置の相当性に関する判断の不当をいうものであって,本件訴訟において争い得る事由ではない。 。)( )したがって,その余の点について判断するまでもなく,争点( )(本件承 - 11 -認審判に基因する本件入所措置決定の違法事由)に関する原告の主張は,いずれも理由がない。 争点( )(本件入所措置決定自体の違法事由の有無)について ( )原告は,東京都多摩児童相談所長が,原告らにAの入所施設名を開示し なかったことが「締約国は,児童の最善の利益に反する場合を除くほか,,父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重する」と定める児童 かったことが「締約国は,児童の最善の利益に反する場合を除くほか,,父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重する」と定める児童の権利。 に関する条約9条3項に反し,原告らの親権者としての監護権を侵害するもので違法でありこれにより本件入所措置決定も違法となる旨主張する前,,(記第2,5( )(原告の主張)ア。 )しかしながら,児童福祉法並びに同法施行令及び同法施行規則において,同法28条1項1号に基づく児童福祉施設への入所措置決定に際し,親権者等に対する入所施設名の告知を義務付ける規定はない以上,その告知がされなかったことによって原告らの親権者としての監護権が一定の制限を受けたとしても,児童福祉法上,それによって当該入所措置決定自体が違法となる余地はないものと解される。 また,児童の権利に関する条約においても,同条約9条1項は,児童が父母の意思に反して父母から分離されないことを締約国が確保する旨の原則(同項本文)の例外として「権限のある当局が司法の審査に従うことを条,件として適用のある法律及び手続に従いその分離が児童の最善の利益のために必要であると決定する場合」に分離を許容し(同項ただし書,同条3項)も,父母と分離されている児童が定期的に父母と人的な関係及び直接の接触を維持する権利を締約国が「尊重する」旨の原則の例外として「児童の最,善の利益に反する」場合を除外しており,同条約19条1項は,締約国の責務として父母等の監護下にある児童につき虐待不当な取扱い等から児,,,「童を保護するためすべての適当な立法上,行政上,社会上及び教育上の措置- 12 -をとる」べきものと定めている。そして,本件入所措置決定は,同条約9条1項及び19条1 い等から児,,,「童を保護するためすべての適当な立法上,行政上,社会上及び教育上の措置- 12 -をとる」べきものと定めている。そして,本件入所措置決定は,同条約9条1項及び19条1項の趣旨に沿って,児童福祉法28条1項の規定及び同項1号の手続に従い「権限のある当局」である東京多摩児童相談所長が「司,,法の審査」としての家庭裁判所の本件承認審判に従い,児童の福祉の観点から「児童の最善の利益」のために知的障害者施設への入所が必要であると,決定したものと認められ,その決定に際して原告らに入所施設名の告知がされなかったのも,これを原告らに告知することが「児童の最善の利益に反する」との判断によるものと推認され(甲1,弁論の全趣旨,本件承認審判)の認定を前提とする以上,その判断が相当性を欠くものとは認められないから,同条約との関係を考慮しても,その告知がされなかったことをもって,本件入所措置決定自体の違法を招来する余地はないものと解される。 ( )原告は,乙第2号証(平成20年1月24日付け「Aの現在の状態につ いて」と題する書面)添付のAの写真に新たな傷跡が認められるとして,」当該傷跡が入所施設内での虐待によるものであるならば,本件入所措置決定も違法となる旨主張する(前記第2,5( )イ。 )しかしながら,本件承認審判の基準時後の事情であっても,本件入所措置決定後の事情によって同決定自体の違法が招来される余地はない上,乙第1及び第2号証によれば,平成18年9月4日撮影のAの写真と平成20年1月21日撮影の同人の写真とを対比しても,新たな傷跡が生じていると認めることはできないので,上記主張は,いずれにしても,その前提を欠き,理由がない。 ( )したがって,争点( )(本件入所措置決定自体の違法事由の有無)に関す 対比しても,新たな傷跡が生じていると認めることはできないので,上記主張は,いずれにしても,その前提を欠き,理由がない。 ( )したがって,争点( )(本件入所措置決定自体の違法事由の有無)に関す る原告の主張は,いずれも理由がない。 ,,, 以上のとおり争点( )及び( )に関する原告の主張はいずれも理由がなく 本件承認審判が有効に確定している以上,本件承認審判の基準時(抗告審決定時)において,Aについて,児童福祉法28条1項所定の要件の充足及び当該- 13 -入所措置の相当性を基礎付ける事情が存在したものとみるべきところ,上記基準時から本件入所措置決定までの間に上記事情の変更を認めるに足りる証拠はなく,当該審判の承認に係る知的障害者施設への入所措置が採られており,他の違法事由の存在を窺わせる証拠もないのであるから,本件入所措置決定は,適法であるというべきである。 第4 結論 よって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部裁判長裁判官岩井伸晃裁判官倉澤守春裁判官吉野俊太郎

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