平成22(行ケ)1 選挙無効請求事件

裁判年月日・裁判所
平成23年1月28日 大阪高等裁判所 選挙
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判決文本文19,782 文字)

-1- 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求の趣旨平成22年7月11日に行われた参議院(選挙区選出)議員選挙の大阪府選挙区における選挙を無効とする。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,平成22年7月11日に施行された参議院(選挙区選出)議員通常選挙について,当該選挙において大阪府選挙区の選挙人である原告が,被告である大阪府選挙管理委員会に対し,公職選挙法別表第三及び同法附則による選挙区及び議員定数の規定が,人口比例に基づいた定数配分をしておらず,憲法が規定する代議制,選挙権の平等の保障に反し無効であると主張して,公職選挙法204条に基づき,上記選挙のうち大阪府選挙区における選挙の無効確認を求めた事案である。 2 前提事実以下の事実は,当事者間に争いがないが,末尾の括弧内掲記の証拠により容易に認められる。 (1) 原告は,平成22年7月11日に施行された第22回参議院(選挙区選出)議員通常選挙(以下「本件選挙」という。)の大阪府選挙区の選挙人である。 (2) 本件選挙当時の選挙制度によれば,参議院議員の総定数は242人であり,そのうち146人が選挙区選出議員,96人が比例代表選出議員であった(公職選挙法4条2項)。 -2-(3) 本件選挙は,平成18年法律第52号によって改正された公職選挙法14条1項,別表第三及び同法附則による選挙区及び議員定数の規定(以下「本件定数配分規定」という。)に基づいて実施された。 (4) 本件選挙当時の参議院(選挙区)議員1人当たりの選挙人登録者数(在外選挙人名簿者を含む。)は,最少の鳥取県選挙区(24万2956人 以下「本件定数配分規定」という。)に基づいて実施された。 (4) 本件選挙当時の参議院(選挙区)議員1人当たりの選挙人登録者数(在外選挙人名簿者を含む。)は,最少の鳥取県選挙区(24万2956人)と最多の神奈川県選挙区(121万5760人)との間で,その較差が1対5. 00となっており,大阪府選挙区(118万1548人)との間でも,その較差は1対4.86となっていた(速報値)(乙1)。 3 争点及びこれに関する当事者の主張本件の争点は,本件定数配分規定が憲法に違反するか否かであるが,この点に関する当事者の主張の要旨は,以下のとおりである。 〔原告〕(1) 投票価値の平等は,民主主義の基本である。 憲法前文・第1段・第1文冒頭の「正当な選挙」とは,「国民の多数が多数の国会議員を選出する仕組みの選挙」を意味する。民主主義の根幹ルールは,「主権者たる国民が,正当に選挙された国会における代表者を通じて,実質的な意味での多数決で,立法,行政を支配すること」である。したがって,少数の国民から構成される選挙区選出の全国会議員が多数を占めることは,憲法前文・第1段・第1文冒頭の「正当な選挙」の定めに違反するところ,本件定数配分規定においては,参議院選挙区選出議員定数146人の過半数74人を選出する有権者数は約33%でしかないから,「正当な選挙」といえないことは明らかである。 (2) 「二院制の中での参議院の独自性」は,投票価値の平等を減殺するための正当化事由たり得ない。 憲法42条は,衆議院と参議院からなる二院制を採用しているが,衆議院議員も参議院議員も全国民を代表する選挙された議員である点では,何らの-3-差異もない(憲法43条)。参議院の独自性は,国会が,「1人1票」を前提として,その高度の政治的裁量によって設ければよ 院議員も参議院議員も全国民を代表する選挙された議員である点では,何らの-3-差異もない(憲法43条)。参議院の独自性は,国会が,「1人1票」を前提として,その高度の政治的裁量によって設ければよいことである。このように,投票価値の平等を維持した上で参議院の独自性を設け得る以上,憲法が二院制を採用していることは,参議院議員選挙の選挙権の投票価値の平等を減殺するための正当化事由たり得ない。 (3) 「1人1票」の憲法上の権利は,都道府県間の境界の維持等の憲法外の利益に優越する。 都道府県,市町村その他の行政区画,従来の選挙の実績,選挙区としてのまとまり具合,面積の大小,人口密度,住民構成,交通事情,地理的状況は,いずれも憲法上保障される利益ではなく,これらを理由として,関係する地域に居住する国民の1票の価値を増減することは憲法に違反する。したがって,「1人1票」の権利を実現するためにやむを得ない場合は,都道府県の境界を跨いででも,人口比例に基づいて合併選挙区を創造することが憲法によって要求されているといえる。 (4) 裁判官は,国民の多数が,投票価値が最大の選挙区の選挙権を1票とすると,自らの選挙権は1票未満でしかないという真実を知った場合に持つと合理的に推察される国民の意見(世間の常識)と矛盾しないように,憲法が国民1人1人に「1人1票」を保障しているか否かを判断するよう求められる。 そして,証拠(甲9,10)によれば,上記の国民の多数意見が自己の1票につき1票未満ではなく1票の価値を求めていることは明らかである。 (5) 国会議員は,現在の選挙区割り・議員定数のお陰で当選しているのであるから,1票の較差問題の「当事者」又は「利害関係者」である。 したがって,1票の較差問題の是正について,国会に,合理的な範囲内とはいえ,裁 は,現在の選挙区割り・議員定数のお陰で当選しているのであるから,1票の較差問題の「当事者」又は「利害関係者」である。 したがって,1票の較差問題の是正について,国会に,合理的な範囲内とはいえ,裁量権を認める,最高裁判所平成19年6月13日大法廷判決・民集61巻4号1617頁(以下「最高裁平成19年大法廷判決」という。)は,憲法前文第1段第1文,第2文,15条3項,14条,44条,56条-4-2項に違反する。 (6) 1983年米国連邦最高裁判所の判決は,ニュージャージー州における米国連邦下院議員選挙において,同選挙区間の1票対0.993票の最大較差ですら,違憲・無効と判断している。 米国下院議員選挙においても,州間では,下院議員の定数1とされた7つの州の間で連邦下院議員1人当たり最大1.83倍の較差が生じているが,米国の各州は,我が国の都道府県と異なり,独自の憲法その他の法体系,独自の軍隊,独自の司法機関,独自の警察権,実質的課税権を有している一つの「国家」であるためやむを得ないものであり,かつ,人口が膨大であることから,上記程度の較差も微少な影響しか持ち得ない。 〔被告〕(1) 憲法は,いかなる選挙制度が国民の利害や意見を効果的に国政に反映させ得るものであるのかについての決定を国会の裁量にゆだねているから,投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する唯一,絶対の基準になるものではなく,参議院の独自性など,国会が正当に考慮することができる他の政策的目的等との関連において調和的に実現されるべきものである。したがって,国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を是認し得るものである限り,それによって投票価値の平等が一定の限度で後退することとなっても,憲法違反の問題は生じない。そして,二院制,半数改選制を採用し 定めたところがその裁量権の行使として合理性を是認し得るものである限り,それによって投票価値の平等が一定の限度で後退することとなっても,憲法違反の問題は生じない。そして,二院制,半数改選制を採用し,参議院に独自性を持たせようとして決定した選挙制度の仕組みは合理性を有し,社会的,経済的変化が激しい中で不断に生ずる人口変動をいかなる形で選挙制度の仕組みに反映させるかという問題は,複雑かつ高度な政策的判断を要し,国会の裁量にゆだねられる。それゆえ,人口の変動等の結果,上記選挙制度の仕組みの下において投票価値の平等の有すべき重要性に照らして到底看過することができないと認められる程度の投票価値の著しい不平等状態が生じ,かつ,それが相当期間継続しているにもかかわらず-5-これを是正する措置を講じないことが,国会の裁量を超えると判断される場合に,初めて議員定数配分規定が憲法に違反するに至るものと解される。このことは,これまでの累次の最高裁判例が判示しているところである。 (2) 本件定数配分規定に基づきされた本件選挙において,選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は1対5.00であり,本件定数配分規定の下で平成19年7月29日に施行された参議院議員選挙における最大較差1対4.86に比べて拡大しているが,上記較差をもって,投票価値の平等の有すべき重要性に照らして到底看過することができないと認められる程度の投票価値の著しい不平等状態を生じさせるに至っていたとまではいえない。従来の最高裁判例を見ても,最大較差が1対5程度の場合において,上記の著しい不平等状態が生じていると判示したものは存しない。 (3) 仮に,本件定数配分規定が投票価値の著しい不平等状態を生じさせるに至っていたという見方があり得るとしても,平成18年改正後も国会において い不平等状態が生じていると判示したものは存しない。 (3) 仮に,本件定数配分規定が投票価値の著しい不平等状態を生じさせるに至っていたという見方があり得るとしても,平成18年改正後も国会において投票価値の較差をより縮小するための検討が継続されていることなどに照らすと,その著しい不平等状態が許されない程度に継続し,それが国会の裁量的権限の許される限界を超えると判断されるような場合でないことは明らかである。 (4) 原告が指摘している米国連邦最高裁判決は,多民族国家で,州と連邦との二重国家制を採っているという特殊な社会的背景を前提とするものである上,我が国でいえば,衆議院に相当する連邦下院の議員の選挙について,ニュージャージー州に割り当てられた14の定数を公平に取り扱うための選挙区割りの見直しの際,より公平な区割案が考えられたのに不平等な区割案が採用されたことについて,州が主張するマイノリティーの投票価値の保持という目的と関連せず,較差を正当化しないとして違法としたものである。 米国においては,合衆国憲法(連邦憲法)修正14条2節において,各州-6-における連邦下院議員の数は各州の人口に応じて割り当てられると明文で定められており,いわゆる人口比例主義が採用されているところ,2000年(平成12年)の国勢調査に基づく州別の定数は,カリフォルニア州が最大の定数53であったのに対し,最小の定数1とされた州は7州にのぼっている。そして,定数1である7州の人口較差は約1.83倍に上っていたのであって,憲法において人口比例主義が明記されている米国においてさえ,制度上,連邦下院議員の選挙における州を超えた選挙区間の人口較差が2倍近くに達し得ることが前提となっていることは明らかである。 したがって,少なくとも,原告引用の米国連邦最高裁判決の においてさえ,制度上,連邦下院議員の選挙における州を超えた選挙区間の人口較差が2倍近くに達し得ることが前提となっていることは明らかである。 したがって,少なくとも,原告引用の米国連邦最高裁判決の事案における較差と日本の参議院(選挙区選出)議員選挙の全選挙区間における最大較差とを単純に比較することは適切でないし,あたかも全選挙区間における最大較差がわずか1対0.9930でも当然に違憲無効となるかのような誤解を与えかねない形で上記連邦最高裁判決を引用することも相当ではないというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 参議院議員選挙の定数配分規定の制定及び改正の経緯について証拠(乙1~3),公知の事実及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 参議院発足当初以来の定数配分憲法施行(昭和22年5月3日)当初の参議院議員選挙法(昭和22年法律第11号)は参議院議員の選挙について全国選出議員100人,地方選出議員150人と定め,地方選出議員は都道府県を選挙区とし,各選挙区ごとの議員定数については,定数を偶数としてその最小限を2人とし,昭和21年当時の人口に基づき,各選挙区の人口に比例する形で,2人ないし8人の偶数の議員数を配分したが,同法制定当時,選挙区間の議員1人当たりの人口の最大較差は1対2.62であった。同法は公職選挙法(昭和25年4月-7-15日法律第100号)に統合され,その定数配分規定は参議院議員定数配分規定としてそのまま引き継がれ,沖縄の復帰に伴い,昭和46年法律第130号により沖縄県選挙区の議員定数2人が付加されたほか変更はされなかった。なお,昭和57年法律第81号による公職選挙法改正により,従来の全国選出議員に代えて全都道府県を区域とする拘束名簿式比例代表制が導入されたが,定数は比例代表選出議 付加されたほか変更はされなかった。なお,昭和57年法律第81号による公職選挙法改正により,従来の全国選出議員に代えて全都道府県を区域とする拘束名簿式比例代表制が導入されたが,定数は比例代表選出議員100人と選挙区選出議員152人で変更はなかった。 (2) 平成6年改正その後,選挙区間の人口較差は次第に拡大し,平成4年7月26日施行の参議院議員選挙当時にはその最大較差は1対6.59にまで至った。その是正を目的とした平成6年法律第47号による議員定数配分規定の改正は,参議院議員の選挙制度の仕組み及び定数を変更することなく,直近の平成2年の国勢調査結果に基づき,できる限り増減の対象となる選挙区を少なくし,かつ,いわゆる逆転現象(選挙人数の多い選挙区の議員定数が選挙人数の少ない選挙区の議員定数よりも少ない現象)を解消することとし,7選挙区の議員定数の8増8減(ただし,改選はその半数)を行った。その結果,最大較差は1対4.81に縮小し,その後,平成7年7月23日に施行された参議院議員選挙の選挙人数を基準とする上記最大較差は1対4.97であった(なお,同年10月実施の国勢調査結果の人口に基づく較差は1対4.79であった。)。 最高裁判所平成8年9月11日大法廷判決(民集50巻8号2283頁)(以下「最高裁平成8年大法廷判決」という。)は,上記平成4年7月26日施行の参議院議員選挙について,投票価値の不平等は,「投票価値の平等の有すべき重要性に照らして,もはや到底看過することができないと認められる程度に達していたもの」で,「違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態が生じていたものと評価せざるを得ない」が,同選挙までの間に国会が-8-当時の定数配分規定を是正する措置を講じなかったことをもって,その立法裁量の限界を超えるものと断定すること の著しい不平等状態が生じていたものと評価せざるを得ない」が,同選挙までの間に国会が-8-当時の定数配分規定を是正する措置を講じなかったことをもって,その立法裁量の限界を超えるものと断定することは困難であるとして,同定数配分規定が憲法に違反するに至っていたものと断ずることはできないと判示した。 (3) 平成12年改正平成12年法律第118号による公職選挙法の改正により比例代表選出議員の選挙制度が非拘束名簿式比例代表制に改められ,議員定数の削減(改正前の選挙区選出議員と比例代表選出議員の定数比をできる限り維持することとし,前者の定数を146人,後者の定数を96人とした。公職選挙法4条2項)等が行われたが,平成7年実施の国勢調査の人口に基づく最大較差は1対4.79であり,改正前と差異がなかった。そして,平成13年7月29日に施行された第19回参議院議員通常選挙当時における選挙区間の議員1人当たりの選挙人数の最大較差は1対5.06であった。 最高裁判所平成16年1月14日大法廷判決(民集58巻1号56頁)(以下「最高裁平成16年大法廷判決」という。)は,その結論において,上記改正は,憲法が選挙制度の具体的な仕組みの決定につき国会にゆだねられた立法裁量の限界を超えるものではなく,上記選挙当時において,定数配分規定が憲法に違反するに至っていたものとすることはできない旨判示したものの,これを違憲とする裁判官6人の反対意見があったほか,補足意見中にも,仮に漫然と現在の状況が維持されるならば違憲判断がされる余地があるとの指摘や人口の大都市集中化により最大較差が拡大していく傾向にあることからすれば,制度の枠組み自体の改正をも視野に入れた抜本的な検討をしておく必要がある旨の指摘がされた。 (4) 平成16年の1票較差是正に向けての動き等 最大較差が拡大していく傾向にあることからすれば,制度の枠組み自体の改正をも視野に入れた抜本的な検討をしておく必要がある旨の指摘がされた。 (4) 平成16年の1票較差是正に向けての動き等参議院は,最高裁平成16年大法廷判決に,裁判官6名の反対意見が付されるなどしたことを受けて,平成16年2月6日,参議院議長が主宰する各会派代表者懇談会の下に,「参議院議員選挙の定数較差問題に関する協議-9-会」を設置し,同協議会は5回にわたって協議を行った。その結果,同年5月28日,同年7月に施行される第20回参議院議員通常選挙までの間に定数較差を是正することは困難であり,同選挙後に協議を再開すべきであるとの意見が大勢であった旨の報告書を参議院議長に提出した。そして,同年6月1日,各会派代表者懇談会において,同選挙後に定数較差問題について結論を得るように協議を再開する旨の申合せがされ,結局,議員定数配分規定は改正されないまま平成16年7月11日同選挙が施行された。同選挙当時における選挙区間の議員1人当たりの選挙人数の最大較差は1対5.13となっていた。 (5) 平成18年改正上記選挙後,参議院議長は平成16年12月1日に参議院改革協議会の下に選挙制度に係る専門委員会を設け,同委員会において,平成17年2月から同年10月までの間,9回の会合が開かれ,各種の是正案が具体的に検討された。その後,平成19年7月29日に施行される参議院議員通常選挙(以下「平成19年選挙」という。)に向けて,上記是正案のうちの有力意見であった4増4減案に基づく公職選挙法の一部を改正する法律案が国会に提出され,平成18年6月1日に成立した(平成18年改正)。 平成18年改正の結果,平成17年10月に実施された国勢調査結果の速報値による人口に基づくと,選挙区間にお の一部を改正する法律案が国会に提出され,平成18年6月1日に成立した(平成18年改正)。 平成18年改正の結果,平成17年10月に実施された国勢調査結果の速報値による人口に基づくと,選挙区間における議員1人当たりの人口の最大較差は1対4.84に縮小した。 なお,上記専門委員会の報告書は,現行の選挙制度の仕組みを維持する限り,各選挙区の定数を振り替える措置により較差の是正を図ったとしても,較差を1対4以内に抑えることは困難であり,以後も,参議院の在り方にふさわしい選挙制度に関する議論を進めていく過程で,定数較差の継続的な検証等を行う場を設け,調査を進めていく必要がある旨指摘している。 最高裁判所平成18年10月4日大法廷判決(民集60巻8号2696-10-頁)(以下「最高裁平成18年大法廷判決」という。)は,平成16年7月11日施行の参議院議員選挙当時の定数配分規定の合憲性について,現行の選挙制度の仕組みの下で選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の較差の是正を図ることが容易でないこと,最高裁平成16年大法廷判決の言渡しから同選挙までの期間は約6か月に過ぎず是正措置を講ずるための期間として必ずしも十分でなかったこと及び平成18年改正等の事情を考慮すると,同選挙までの間に定数配分規定を改正しなかったことが国会の裁量権の限界を超えたものと断ずることはできず,同選挙当時において定数配分規定が憲法に違反するに至っているということはできない旨判示した。 (6) 平成19年選挙等平成19年7月29日,平成18年改正による本件定数配分規定の下で平成19年選挙が施行された。同選挙当時の選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は,1対4.86であった。 参議院においては,投票価値の較差の縮小を図るための取組みが継続され,平成19 成19年選挙が施行された。同選挙当時の選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は,1対4.86であった。 参議院においては,投票価値の較差の縮小を図るための取組みが継続され,平成19年11月30日,新たに参議院議長の諮問機関として「参議院改革協議会」が設置され,同年12月4日から平成20年12月19日までの間,数回の協議が行われ,定数是正も含めた参議院の組織及び運営に関する諸問題の調査検討が継続された。同年6月9日に開催された参議院改革協議会では,参議院改革協議会専門委員会(選挙制度)(以下「専門委員会」という。)の設置が協議決定され,同専門委員会は,同年12月19日(第1回),専門委員会の運営に関する事項について協議決定し,平成21年7月1日まで3回の協議を行った。 最高裁判所平成21年9月30日大法廷判決(民集63巻7号1520頁)(以下「最高裁平成21年大法廷判決」という。)は,平成19年選挙における定数配分規定について,平成18年改正の結果,選挙区間における議員1人当たりの人口の最大較差は,1対4.84に縮小することとなり,-11-平成19年選挙当時の最大較差1対4.86は平成18年改正前の平成16年選挙当時の上記最大較差1対5.13に比べて縮小したものとなっていたこと,平成19年選挙の後には,参議院改革協議会の下に設置された専門委員会が定数較差の問題について検討すること,現行の選挙制度の仕組みを大きく変更するには相応の時間を要し,同選挙までにそのような見直しを行うことは極めて困難であったことを考慮すると,同選挙までの間に本件定数配分規定を更に改正しなかったことが国会の裁量権の限界を超えたものということはできず,同選挙当時において,本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたものとすることはできない旨判示し の間に本件定数配分規定を更に改正しなかったことが国会の裁量権の限界を超えたものということはできず,同選挙当時において,本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたものとすることはできない旨判示し,平成18年の「改正の結果によっても残ることになった上記のような較差は投票価値の平等という観点からは,なお大きな不平等状態であり,選挙区間における選挙人の投票価値の較差の縮小を図ることが求められる状況にある」旨付言した。 (7) その後の経緯専門委員会は,更に平成22年2月17日から同年5月14日までに3回の協議を行い,検討結果に関する報告書を作成し,参議院改革協議会は協議の上,同月21日,同報告書を参議院議長に提出した。 その検討過程では,本件選挙に先立っての定数是正を行うか否かについても議論がされたものの,①現行の選挙制度を前提に選挙区の定数を増減する従来の改正方法では,定数較差是正の効果は限定的であり,定数較差是正の議論は,参議院の選挙制度の見直しと併せて行うべきで,それには時間がかかること,②平成18年に行った4増4減の公職選挙法改正は平成19年及び平成22年選挙で完了すること,③平成22年の選挙について,定数較差是正を行うこととすると,法改正から選挙実施までの周知期間が短いことなどから,本件選挙について,定数較差是正は見送り,平成25年通常選挙に向け選挙制度の見直しを行うこととなったものである。 本件選挙当時の選挙区割り,議員定数,有権者数,議員1人当たりの有権-12-者数,最小選挙区との較差は,別紙(乙1)のとおりであり,鳥取県選挙区においては,有権者約24万3000人が議員1人を選任しているのに対し,神奈川県選挙区においては,有権者約121万6000人が議員1人を選任していることになる。なお,本件選挙においては,有権者 挙区においては,有権者約24万3000人が議員1人を選任しているのに対し,神奈川県選挙区においては,有権者約121万6000人が議員1人を選任していることになる。なお,本件選挙においては,有権者又は人口が少ない都道府県の議員定数が有権者又は人口が多い都道府県の議員定数よりも多くなるいわゆる逆転現象は生じていなかった。 2 参議院議員選挙における投票価値の平等の保障について(1) 投票価値平等の要請議会制民主主義を採用している我が国の憲法の下においては,国権の最高機関である国会を構成する衆議院及び参議院の各議員を選挙する権利は,国民の国政への参加の機会を保障する基本的権利として,議会制民主主義の根幹を成すものであり,憲法は,その重要性にかんがみ,14条1項の定める法の下の平等の原則の政治の領域における適用として,成年者による普通選挙を保障するとともに,人種,信条,性別,社会的身分,門地,教育,財産又は収入によって選挙人の資格を差別してはならないものとしている(15条3項,44条)。 そして,選挙権の平等の原則は,単に選挙人の資格における上記のような差別を禁止するにとどまらず,選挙権の内容の平等,すなわち議員の選出における各選挙人の投票の有する価値の平等をも要求するものと解するのが相当である。 (2) 参議院の第二院として位置付け憲法は,二院制を採用し,参議院はいわゆる第二院として位置付けられており,参議院議員の任期は衆議院議員より長い6年で,解散制度はなく,3年毎の半数改選制が定められており(46条),衆議院に比して安定性,持続性を有し,それをもって衆議院に対する補完的役割を果たすことが想定されていると考えられる。 -13-しかしながら,参議院議員も衆議院議員と同様に全国民の代表(43条)とされている て安定性,持続性を有し,それをもって衆議院に対する補完的役割を果たすことが想定されていると考えられる。 -13-しかしながら,参議院議員も衆議院議員と同様に全国民の代表(43条)とされているし,法律案の再議決(59条2項),予算先議(60条),内閣総理大臣の指名の優越(67条2項),内閣不信任決議(69条)等の点で衆議院が参議院に優越等が認められる場合を除き,憲法上,参議院と衆議院との間に優劣はなく,参議院が衆議院の解散中に緊急案件について臨時的に国会としての機能を果たすことが予定されている(54条2項,3項)ことも考慮すると,参議院議員選挙において要請される投票価値の平等の要請は,衆議院議員選挙において要請される投票価値の平等と基本的には同等であって,それが大きく異なるものと考えることはできず,せいぜい上記で述べた衆議院の権能の参議院の権能との差異から,衆議院の方がより民意に直結し,不断に民意を反映させることが想定されている点で,衆議院議員選挙における投票価値の平等の要請に比してやや緩和されているという程度に過ぎないものというべきである。 しかも,平成19年選挙以降の自民党・公明党の連立政権,本件選挙以降の民主党・国民新党の連立政権の下では,与野党間で衆・参両院議員数の逆転現象が生じ,衆議院で多数派を占める時の政権与党が参議院では過半数割れを来していた(来している)ことから,国政に占める参議院の重要性が改めて注目されており,参議院議員選挙における投票価値平等の要請は,衆議院議員選挙における投票価値の平等の要請よりもやや緩和されているとはいっても,それを強調することはできない。 3 議員定数配分規定の違憲判断の基準について(1) 当裁判所の判断上記のとおり,参議院議員選挙においても憲法上,投票価値の平等が とはいっても,それを強調することはできない。 3 議員定数配分規定の違憲判断の基準について(1) 当裁判所の判断上記のとおり,参議院議員選挙においても憲法上,投票価値の平等が要請されているが,憲法は,どのような選挙制度が国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させることになるのかの決定を国会の裁量にゆだねているのであるから,投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する唯一,-14-絶対の基準となるものではなく,参議院の独自性など,国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものである。それゆえ,国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を是認し得るものである限り,それによって投票価値の平等が一定の限度で譲歩を求められることになっても,憲法に違反するとはいえない。 上記1において指摘した参議院議員の現行選挙制度の仕組みは,①憲法が二院制を採用し参議院の実質的内容ないし機能に独特の要素を持たせようとしたこと,②都道府県が歴史的にも政治的,経済的,社会的にも独自の意義と実体を有し一つの政治的まとまりを有する単位としてとらえ得ること,③憲法46条が参議院議員については3年ごとにその半数を改選すべきものとしていること等に照らし,相応の合理性を有するものであり,国会の有する裁量権の合理的な行使の範囲を超えているとはいえない。そして,社会的,経済的変化の激しい時代にあって不断に生ずる人口の変動につき,それをどのような形で選挙制度の仕組みに反映させるかなどの判断は,複雑かつ高度に政策的な考慮と判断を要するものであって,その決定は,基本的に国会の裁量にゆだねられているものである。 とはいえ,現在の参議院議員の選挙区選出議員中,半数をはるかに超える の判断は,複雑かつ高度に政策的な考慮と判断を要するものであって,その決定は,基本的に国会の裁量にゆだねられているものである。 とはいえ,現在の参議院議員の選挙区選出議員中,半数をはるかに超える議員が,議員1人当たりの有権者数が平均よりも少ない選挙区から選出された議員で構成されている(甲1,4,弁論の全趣旨)ことから,国会が1票の較差是正に取り組んだ場合に,上記選挙区選出参議院議員の多数が較差是正には消極的になり,できることなら,差し当たり問題となっている点に絞った小手先だけの是正に留めたいと願うことは,議員心理として無理からぬものといえる。前記1の(2)(3)(5)で認めたこれまでの参議院議員選挙の定数配分規定の改正は,かかる議員心理が働き,1票の較差是正に向けての抜本的な改正が見送られた妥協の産物といえる。それゆえ,前述のとおり,定-15-数配分規定の見直しは,基本的に国会の裁量にゆだねられているものではあるが,その裁量の程度については,上記のような問題点も認識しておく必要がある。 以上の次第で,人口の変動が生じた結果,それだけ選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の較差が拡大するなどして,当初における議員定数の配分の基準及び方法とこれらの状況との間にそごを来したとしても,その一事では直ちに憲法違反の問題が生ずるものではないとはいえるが,その人口の変動が当該選挙制度の仕組みの下において投票価値の有すべき重要性に照らして到底看過することができないと認められる程度の投票価値の著しい不平等状態を生じさせ,かつ,それが相当期間継続して,このような不平等状態を是正する何らの措置を講じないことが,前記のような複雑かつ高度に政策的な考慮と判断の上に立って行使されるべき国会の裁量的権限に係るものであることを考慮しても,その許され して,このような不平等状態を是正する何らの措置を講じないことが,前記のような複雑かつ高度に政策的な考慮と判断の上に立って行使されるべき国会の裁量的権限に係るものであることを考慮しても,その許される限界を超えると判断される場合には,当該議員定数配分規定が憲法に違反するに至るものと解するのが相当である(最高裁判所昭和58年4月27日大法廷判決・民集37巻3号345頁(以下「最高裁昭和58年大法廷判決」という。),その後の最高裁大法廷の累次の判決参照)。そして,上記裁量の程度を考えるに当たっては,前述の1票較差の是正についての消極的な議員心理の問題があることも忘れてはならない。 (2) 原告主張の検討これに対し,原告は,「本件定数配分規定は,憲法前文・第1段・第1文冒頭の『正当な選挙』の定めに違反する。」とか,「参議院の独自性は,投票価値の平等を減殺するための正当化事由たり得ない。」とか,「国会に裁量権を認める最高裁判所の判例は憲法に違反する。」などと主張している。 しかしながら,憲法が国会議員の定数,選出方法及び選挙区の定めを国会にゆだねている(憲法47条)ことなどからすると,本件定数配分規定が憲-16-法前文・第1段・第1文冒頭の「正当な選挙」の定めに反するか否かの判断基準も基本的には上記の投票価値の平等の観点からの違憲性判断基準と異なるところはないものというべきである。 また,憲法が二院制を採用し,前記のとおり,参議院については半数改選制を定め,解散の定めを置いていないことからすると,参議院については衆議院に比して継続性及び安定性を求めていることが明らかであるから,参議院においては,衆議院に比して投票価値の平等の点においてやや後退することがあっても憲法が許容しているものと解される。また,憲法は,「選挙区,投票の方法そ 定性を求めていることが明らかであるから,参議院においては,衆議院に比して投票価値の平等の点においてやや後退することがあっても憲法が許容しているものと解される。また,憲法は,「選挙区,投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は,法律でこれを定める。」と規定(憲法47条)しており,選挙区や選挙制度の決定を国会の裁量判断にゆだねていることは明らかである。 したがって,原告の上記主張はいずれも採用することはできない。とはいえ,参議院議員選挙における投票価値平等の要請は,衆議院議員選挙における投票価値の平等の要請よりもやや後退しているとはいっても,最近のねじれ国会の状況を目の当たりにして,それを強調することはできない(前記2(2)の3文)ことや,定数配分規定の見直しは,基本的に国会の裁量にゆだねられているものではあるが,その裁量の程度を考えるに当たっては,較差是正には消極的にならざるを得ない議員心理も理解しておく必要がある(前記3(1)5文)ことは,前述のとおりであり,この限度では,当裁判所も原告の上記主張を理解することができる。 4 本件定数配分規定の違憲性の判断について(1) 投票価値の不平等状態についてア当裁判所の判断前記1(7)認定のとおり,本件定数配分規定によると,本件選挙当時,議員1人当たりの登録有権者数の較差は,最少の鳥取県選挙区と最多の神奈川県選挙区との間では,1対5.00であるから,これを比喩的に例える-17-と,鳥取県選挙区の有権者の選挙権の価値を1票とすると,神奈川県選挙区の有権者の選挙権の価値は,計算上0.2票になる上,本件選挙当時の上記較差は,憲法施行当時の選挙区間の議員1人当たりの人口の最大較差1対2.62(前記1(1))とも大きく乖離している。 加えて,今日 挙権の価値は,計算上0.2票になる上,本件選挙当時の上記較差は,憲法施行当時の選挙区間の議員1人当たりの人口の最大較差1対2.62(前記1(1))とも大きく乖離している。 加えて,今日,戦後まもなくの時期に比して,社会が成熟し,これに伴い,国民の権利意識が強くなっていることや,本件選挙当時,議員1人当たりの有権者数が都市部(東京及びその周辺,大阪,兵庫,愛知,福岡等)の選挙区で多く,地方の選挙区では少なくなっていて,その較差が著しく(別紙〔乙1〕参照),地方に住む住民1人当たりの意見が,都市部に住む住民1人当たりの意見よりも,著しく極端に国政に反映される状況にあったことを併せ考慮すると,参議院議員選挙における投票価値の平等の要請が衆議院議員選挙のそれに比してやや緩和されていることを考慮しても,本件選挙当時の上記定数較差は,違憲の問題が生ずる程度の投票価値の著しい不平等状態(いわゆる違憲状態)にあったと認めるのが相当である。 イ専門委員会での指摘の検討(ア) この点,専門委員会が現行の選挙制度の仕組みを維持する限り,各選挙区の定数を振り替える措置により較差の是正を図ったとしても,較差を1対4以内に抑えることは困難であると指摘しているとおり,現行の選挙制度を前提に選挙区の定数を増減する従来の改革方法では,定数較差是正の効果は限定的であるとされていることとの関係が問題になる。 (イ) 確かに,前記3(1)3文で判示したとおり,都道府県を選挙区の単位とする現行の参議院議員の選挙制度は,相応の合理性を有するものではある。 しかしながら,都道府県を選挙区の単位とすること自体には,絶対的-18-な価値は認められないのであるから,これを維持することによって抜本的な定数の較差是正を図ることが困難になるのであれば, しかしながら,都道府県を選挙区の単位とすること自体には,絶対的-18-な価値は認められないのであるから,これを維持することによって抜本的な定数の較差是正を図ることが困難になるのであれば,都道府県を選挙区の基本的な枠組みを維持するにしても,議員1人当たりの人口が非常に少ない都道府県については,隣接する都道府県と併せた選挙区を設定したりするなどすれば,定数の較差是正を図ることが可能なのであるから,そのような較差是正を考慮するべきであって,上記の点も本件選挙当時の定数較差が違憲の問題が生ずる程度の投票価値の不平等状態にあったと判断することの妨げとなるものではない。 (ウ) すなわち,憲法は,第8章で地方自治に関する規定を設け,その92条で,「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は,地方自治の本旨に基いて,法律でこれを定める。」と定めるだけで,現行の47都道府県制を採用することまでは規定していない。そして,参議院議員選挙における投票価値の平等は,憲法14条1項が定める法の下の平等の原則の政治の領域における適用であり,国民の国政への参加の機会を保障する基本的権利として議会制民主主義の根幹を成すものである(前記2(1))。以上に照らすと,現行の47都道府県制の下で,参議院議員選挙の時点で各都道府県に少なくとも2人の議席(3年毎の改選議員数は1人)を配分することの要請は,投票価値平等の実現を要請する場面では,一歩後退すると認めざるを得ない。 そして,例えば,本件選挙時点で県人口が100万人未満であった県(具体的には,別紙1〔乙1〕の番号41から47までの7県)について,隣接している府県と併せた選挙区を設定すれば,それだけで,一票の較差を1対4よりも大幅に縮小させることができ,抜本的な投票価値の平等を実現することが可能となる。 1から47までの7県)について,隣接している府県と併せた選挙区を設定すれば,それだけで,一票の較差を1対4よりも大幅に縮小させることができ,抜本的な投票価値の平等を実現することが可能となる。 (エ) したがって,専門委員会が現行の選挙制度の仕組みを維持する限り,各選挙区の定数を振り替える措置により較差の是正を図ったとして-19-も,較差を1対4以内に抑えることは困難であると指摘してはいるが,そこでの指摘は,参議院議員選挙での有権者の投票価値の平等の要請は,国民の国政への参加の機会を保障する基本的権利として議会制民主主義の根幹を成すものであることをいささか軽視したものといわざるを得ず,上記指摘はもっともと思われる面もあるが,本件選挙当時の定数較差が違憲の問題が生ずる程度の投票価値の不平等状態にあったと判断することの妨げとなるものではないと解する。 ウ被告主張の検討(ア) 被告は,従来の最高裁判例を見ても,最大較差が1対5程度の場合において,到底看過することができないと認められる程度の投票価値の著しい不平等状態が生じていると判示したものは存在しないと主張している。 この点,確かに,最高裁昭和58年大法廷判決においては,最大較差1対5.26の場合に違憲の問題が生じる程度の著しい不平等状態が生じていたとするには至らないと判示しているし,最高裁判所昭和61年3月27日第一小法廷判決(裁判集民事147号431頁)(最大較差1対5.37),最高裁判所昭和62年9月24日第一小法廷判決(裁判集民事151号711頁)(最大較差1対5.56),最高裁判所昭和63年10月21日第二小法廷判決(裁判集民事155号65頁)(最大較差1対5.85)においても,いずれも,いまだ違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態が生じていたとす 5.56),最高裁判所昭和63年10月21日第二小法廷判決(裁判集民事155号65頁)(最大較差1対5.85)においても,いずれも,いまだ違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態が生じていたとするに足りない旨判示している。 (イ) しかしながら,上記の「到底看過することのできないと認められる程度の投票価値の著しい不平等状態」「違憲の問題が生ずる程度の投票価値の著しい不平等状態」が生じていたか否かについての判断は,単に最大較差の数値のみで決せられるものではなく,事柄の性質上,当時の-20-国民の権利意識等の国民感情と無縁ではあり得ないものである。 そして,平成年代に至り,最高裁平成8年大法廷判決は,最大較差1対6.59の場合に,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態が生じていたと最高裁昭和58年大法廷判決以降,初めて判示し,最高裁判所平成10年9月2日大法廷判決(民集52巻6号1373頁)(最大較差1対4.97),最高裁判所平成12年9月6日大法廷判決(民集54巻7号1997頁)(最大較差1対4.98)においては,いずれも違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態が生じていたとは認められないと判示したものの,当該定数配分規定が違憲であるとの裁判官5名の反対意見が付されているし,最高裁平成16年大法廷判決(最大較差1対5.06),最高裁平成18年大法廷判決(1対5.13)においては,いずれも,その結論において,選挙当時において,当該定数配分規定は憲法に違反するに至っていないと判示したものの,法廷意見としては,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態が生じていたか否かについて判断を示しておらず,しかも,いずれも当該定数配分規定が違憲である旨の6名の反対意見が付され,最高裁平成21年大法廷判決においては,最大較差1対4.86の場 しい不平等状態が生じていたか否かについて判断を示しておらず,しかも,いずれも当該定数配分規定が違憲である旨の6名の反対意見が付され,最高裁平成21年大法廷判決においては,最大較差1対4.86の場合に,やはり法廷意見としては,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態が生じていたか否かについての判断を示さず,当該定数配分規定が違憲である旨の5名の裁判官の反対意見が付されていたのである。 しかも,最高裁平成18年大法廷判決は,「投票価値の平等の重要性を考慮すると,今後も国会においては,人口の偏在傾向が続く中で,これまでの制度の枠組みの見直しも含め,選挙区間における選挙人の投票価値の較差をより縮小するための検討を継続することが,憲法の趣旨にそうものというべきである。」と判示し,また,最高裁平成21年大法廷判決は,「平成18年改正によっても残ることになった較差は,投票-21-価値の平等という観点からは,なお大きな不平等が存する状態であり,選挙区間における選挙人の投票価値の較差の縮小を図ることが求められる状況にあるといわざるを得ない。」と指摘し,さらに,同判決は,「国民の意思を適正に反映する選挙制度が民主主義の基盤であり,投票価値の平等が憲法上の要請であることにかんがみると,国会において,速やかに,投票価値の平等の重要性を十分に踏まえて,適切な検討が行われることが望まれる。」とまで踏み込んだ意見を述べている。 (ウ) このような最高裁判所の判例の流れからすると,本件選挙当時の最大較差1対5.00の場合に,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態が生じていたと判断することが,最高裁判所の判例に反する判断であるということはできず,むしろその趣旨に合致したものというべきである。 (2) 相当な是正期間について上記で判示したとおり,当裁 態が生じていたと判断することが,最高裁判所の判例に反する判断であるということはできず,むしろその趣旨に合致したものというべきである。 (2) 相当な是正期間について上記で判示したとおり,当裁判所は,議員1人当たりの登録有権者数の選挙区間の最大較差が1対5.00の場合,違憲の問題が生ずる程度の投票価値の著しい不平等状態が生じていたと判断するものであり,それは少なくとも最大較差が1対4程度の場合であっても,登録有権者数の最少の選挙区の有権者の選挙権の価値を1票とすると,最多の選挙区の有権者の選挙権の価値は,0.25票程度に過ぎないことになるから,同様であると判断するものである。 ところが,前記1で認定したとおり,この程度の較差状況は,最高裁昭和58年大法廷判決の対象である昭和52年7月10日施行の参議院議員選挙より以前からほぼ恒常的に生じており,平成6年改正の後も,本件選挙に至るまで,投票価値の最大較差は常に4倍を超えていたのであり,その間,国会は,現行選挙制度の下で修正的な改正を繰り返してきたに過ぎないのであるから,このような投票価値の不平等状態の解消についての不作為は,も-22-はや国会の裁量権の限界を超えて憲法に違反するとの評価をする立場もあり得るものと考えられる。 しかしながら,最大較差を4倍以下にするためには,現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要になるが,このような見直しを行うについては,複雑かつ高度に政策的な考慮と判断を要するものであって,その検討・実施に相応の時間を要することは否定できない。 そして,前記1認定のとおり,平成19年選挙の後,参議院改革協議会の下に設置された専門委員会の検討を踏まえて,参議院改革協議会が平成22年5月21日に参議院議長に提出した報告書において,ようやく現行選挙制度を前提とした おり,平成19年選挙の後,参議院改革協議会の下に設置された専門委員会の検討を踏まえて,参議院改革協議会が平成22年5月21日に参議院議長に提出した報告書において,ようやく現行選挙制度を前提とした改革では限界があることを指摘し,選挙制度の見直しを提言するに至ったものの,選挙制度の見直しには時間がかかることや,平成18年改正による4増4減の公職選挙法改正は,前回選挙及び本件選挙で完了することなどから,本件選挙については,定数是正は見送り,平成25年通常選挙に向けて選挙制度の見直しを行うこととなったというのである。 以上のような経緯や累次の最高裁判決も従前の較差が必ずしも許容できないと判示していたわけではなかったこと,平成6年以降参議院議員の半数ずつの改選が完了する6年おきに公職選挙法の改正が行われ,議員定数の見直しがされていたことなどの諸事情を考慮すると,本件選挙時点において,本件定数配分規定を是正する措置を講じなかったことが国会の裁量を超え,憲法に違反するに至っていたものと判断することは困難である。 5 結論以上のとおり,原告の本訴請求は理由がないから棄却することとする。 よって,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第13民事部 -23-裁判長裁判官紙浦健二 裁判官川谷道郎 裁判官神山隆一

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