令和2年3月19日判決言渡平成31年(行コ)第101号鉄道運賃上限認可取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成26年(行ウ)第422号) 主文 1 本件各控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 国土交通大臣が平成26年3月4日付けで北総鉄道株式会社に対してした旅客運賃の上限変更認可処分を取り消す。 3 国土交通大臣が平成26年3月4日付けで京成電鉄株式会社に対してした同社の成田空港線に係る旅客運賃の上限変更認可処分を取り消す。 4 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要等 1 事案の概要控訴人らの本件請求の内容本件は,北総線(京成高砂駅と印旛日本医大駅間の路線)における旅客の運送を行う北総鉄道株式会社(以下「北総鉄道」という。),並びに北総鉄道が所有する鉄道線路(京成高砂駅と小室駅間の路線)及び千葉ニュータウン鉄道株式会社(以下「千葉ニュータウン鉄道」という。)が所有する鉄道線路(小室駅と印旛日本医大駅間の路線)等を使用して,成田空港線(京成高砂駅と成田空港駅間の路線)における旅客の運送を行う京成電鉄株式会社(以下「京成電鉄」という。)が,平成26年4月1日に消費税率が5パーセントから8パーセントに引き上げられたこと(以下「平成26年消費税率 引上げ」という。)に伴い,北総鉄道においては北総線について,京成電鉄においては成田空港線について,旅客運賃の上限変更の認可を申請し(以下,北総鉄道による上記申請を「本件北総申請」,京成電鉄による上記申請を「本件京成申請」といい,両申請を併せて「本件各申請」という。),国土交通大臣 線について,旅客運賃の上限変更の認可を申請し(以下,北総鉄道による上記申請を「本件北総申請」,京成電鉄による上記申請を「本件京成申請」といい,両申請を併せて「本件各申請」という。),国土交通大臣が,鉄道事業法16条1項に基づき,いずれも平成26年3月4日付けで,旅客運賃の上限変更認可処分(以下,本件北総申請に対する処分を「本件北総処分」,本件京成申請に対する処分を「本件京成処分」といい,両処分を併せて「本件各処分」という。)をしたところ,北総線及び成田空港線の沿線住民であると主張している控訴人A及びその子である控訴人Bが,本件各申請に係る旅客運賃の上限が「能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないもの」(鉄道事業法16条2項)となっていないことから,同項に違反する違法があるなどと主張して,本件各処分の取消しを求める事案である。 原審の判断及び本件各控訴原審は,控訴人Aの原告適格について,控訴人Aが,書店を訪ねたり,控訴人AがC市内で経営する英語塾(本件塾)のチラシのポスティングをしたりするなどの個別の目的のため,北総線又は成田空港線を利用しているにとどまることからすれば,控訴人Aは,日常的に北総線又は成田空港線を利用していると認めることはできず,本件各処分の取消しを求める法律上の利益を有するとはいえないと判示し,また,控訴人Bの原告適格について,控訴人Bが,本件各処分時から平成30年3月までは,北総線に係る通学定期券を購入し,大学に通学するため,日常的に北総線を利用していたことが認められるものの,同年3月に大学を卒業して,その後就職をし,平日は東京都新宿区内にある会社の寮(以下「本件寮」ということがある。)に居住していることなどから,控訴人Bは,日常的に北総線又は成田空港線を利用していると認めるこ 大学を卒業して,その後就職をし,平日は東京都新宿区内にある会社の寮(以下「本件寮」ということがある。)に居住していることなどから,控訴人Bは,日常的に北総線又は成田空港線を利用していると認めることはできず,本件各処分の取消しを求める法律上の利益は, 同年4月以降消滅したと判示し,控訴人らの本件訴えをいずれも却下したので,これを不服とする控訴人らが本件各控訴をした。 2 関係法令等の定め及び前提事実は,次のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」第2の1及び2に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,以下,原判決を引用する場合,「別紙」を「原判決別紙」と,「本件第○回口頭弁論期日」を「原審第○回口頭弁論期日」と,それぞれ読み替える。 原判決10頁2行目の「当裁判所は,」から7行目末尾までを削る。 原判決10頁8行目の「平成30年3月6日に訴えを取り下げたが,」を「平成30年3月6日に訴え取下書を原審裁判所に提出して訴えを取り下げ,被控訴人が同月20日にこれに同意したが,」と,9行目の「同日の」を「同月6日の」と,それぞれ改める。 3 争点及び争点に関する当事者の主張争点及び争点に関する当事者の主張の要旨は,次のとおり当審における控訴人らの主張を付加するほか,原判決の「事実及び理由」第2の3に記載のとおりであるから,これを引用する。 (当審における控訴人らの主張) 北総線の利用者に生じ得る影響について,北総線鉄道運賃第1次訴訟である東京地方裁判所平成25年3月26日判決(判例タイムズ1415号214頁。以下「東京地裁平成25年判決」という。)が,「日常生活の基盤を揺るがすような重大な損害」と判示したのに対し,原判決は,「生活上の利益にかかる著しい被害を直接的に受けるおそれ」と判示しているが,原判決 下「東京地裁平成25年判決」という。)が,「日常生活の基盤を揺るがすような重大な損害」と判示したのに対し,原判決は,「生活上の利益にかかる著しい被害を直接的に受けるおそれ」と判示しているが,原判決は,「著しい」,「直接的」という文言が示すように,東京地裁平成25年判決に比較して,結果的に,鉄道利用者の原告適格を絞り込むことが可能となっており,このことが,あえて,東京地裁平成25年判決が触れていない「定期券を購入する」との文言を付加することにつながったものであるところ,東京地裁平成25年判決は,定期券を利用していない,「1か月に2回 から5回程度出社するほか,北総線を利用して顧客先に出向くなどしている」者についても原告適格を認めており,この者の北総線の利用頻度は,控訴人らとさほど変わらないから,控訴人らの原告適格も認めるべきである。 原判決は,控訴人Bの原告適格に関して,事実審の口頭弁論終結の時点において,原告適格を基礎付ける事情が存在していなければならないことを前提として,控訴人Bの原告適格を否定する判示をしているが,処分を取り消した効果が処分時に遡るのであれば,処分時から原告適格を基礎付ける事情が消滅した時点までの間において,処分の取消しを求める法律上の利益があったという事実は残るから,必ずしも事実審の口頭弁論終結の時点において,原告適格を基礎付ける事情が存在していなくても原告適格を認めるべきであるし,控訴人らの訴えの提起から原審口頭弁論終結の時点まで4年以上という長期間が経過している本件においては,なおさら,このように解するべきである。 控訴人Bは,令和元年7月2日から,住民票上の住所である控訴人B肩書住所にある自宅(以下「Dの自宅」ということがある。)から,通勤定期券を用いて,Eに所在する会社に通勤しているとこ べきである。 控訴人Bは,令和元年7月2日から,住民票上の住所である控訴人B肩書住所にある自宅(以下「Dの自宅」ということがある。)から,通勤定期券を用いて,Eに所在する会社に通勤しているところ,この事実は,控訴人Bが,通勤定期券(甲79)を購入したこと,印西牧の原駅から都営新橋駅までの間(京成高砂線,押上駅経由)の6か月通勤定期券を千葉ニュータウン中央駅で購入したこと(甲80),東京都新宿区(住所省略)に所在する社宅である本件寮からDの自宅に引っ越し,引越代金3万8000円を支出したこと(甲81),Dの自宅の下水道料金を出捐していること(甲82)から裏付けられている。 東京地裁平成25年判決も,原判決も,違法な旅客運賃の認可ないし上限認可が鉄道利用者にもたらす過大な経済的負担という観点から,原告適格論を導いているところ,この点に着目するならば,扶養者が扶養義務の一環として鉄道料金を負担している場合は,必ずしも扶養者が当該鉄道を利用して いなくても,経済的負担能力いかんによっては,住居をより扶養者の学校の近くに移転せざるを得なくなったりするなどの日常生活の基盤を揺るがすような重大な損害を生じかねないのであるから,扶養者に原告適格が認められるべきであり,控訴人Aは,扶養義務の一環として三男の鉄道料金を負担しているので,この点からしても,控訴人Aには原告適格が認められる。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人らの本件各訴えは,いずれも不適法なものとして却下すべきであると判断する。その理由は,次のとおり付加訂正するほか,原判決の「事実及び理由」第3に記載のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の訂正)原判決16頁11行目冒頭から24行目末尾までを,以下のとおり改める。 「控訴人Bの原告適格 ほか,原判決の「事実及び理由」第3に記載のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の訂正)原判決16頁11行目冒頭から24行目末尾までを,以下のとおり改める。 「控訴人Bの原告適格についてア前記第2の2の前提事実(以下「前提事実」という。)イによれば,控訴人Bは,平成25年4月,F大学G学部に入学し,本件各処分がされた平成26年3月4日当時,通学定期券を利用して北総線印西牧の原駅から北総線,京成押上線,都営浅草線及び総武線を経由して四ツ谷駅まで通っていた。その後,控訴人Bは,平成30年3月,同大学を卒業後,東京都内の会社に就職し,平日は本件寮に居住し,週末はC市内の実家に戻り,控訴人AがC市内で経営する本件塾の講師を務めるなどし,1か月に4回ないし8回程度,北総線を利用していたことが認められる。 イ前記アの事実によれば,控訴人Bは,本件各処分がされた平成26年3月4日当時から平成30年3月までは,北総線に係る通学定期券を購入し,大学への通学のために北総線を日常的に利用していたと認められ,前記のおそれがある者に当たるものであったということができる。 しかし,控訴人Bは,前記アのとおり,平成30年に大学を卒業し,その後東京都内の会社に就職し,平日は東京都新宿区内にある会社の本件寮に居住するようになったというのであるから,通勤や通学のために定期券を購入している者には当たらなくなったものといえるし,また,週末等に実家や自身が講師を務める本件塾を訪れるため北総線を利用することがあるものの,その頻度は1か月に4ないし8回にすぎないというのであるから,日常的に北総線及び成田空港線を利用しているものと認めることはできない。 ウもっとも,控訴人らは,当審において,控訴人Bが,令和元年7月 の頻度は1か月に4ないし8回にすぎないというのであるから,日常的に北総線及び成田空港線を利用しているものと認めることはできない。 ウもっとも,控訴人らは,当審において,控訴人Bが,令和元年7月2日以降,住民票上の住所である控訴人B肩書住所にあるDの自宅から,通勤定期券を用いて,Eに所在する会社に通勤していると主張し,これに沿う証拠(甲79ないし82,87ないし90)を提出するので,以下,検討する。 控訴人らは,本件寮を退去した証拠として,「H~C市D荷物引越代金」と記載されたI作成に係る領収書(甲81)を提出しているが,「I」の実態が明らかでないこと,前記領収書には「荷物引越代金」と記載され,その内訳等が明らかでないことからすれば,前記領収書から直ちに,控訴人Bが本件寮を退去した事実を認めることはできない。 また,控訴人Bは,陳述書(甲78)において,午前7時半頃には印西牧の原駅から北総線に乗車し,京成高砂駅を経由して午前8時頃には都営新橋駅に到着する旨陳述をしているが,列車運行ダイヤ(乙122ないし124)によると,午前8時までに都営新橋駅に到着するためには,午前6時53分印西牧の原駅発の北総線に乗車する必要があり,逆に,午前7時30分頃に印西牧の原駅で乗車した場合,都営新橋駅に到着するのは午前8時28分又は午前8時40分となることが認められるから,この点に関する控訴人Bの上記陳述は誤りということになるが, 仮に控訴人Bが,週5日,印西牧の原駅から北総線に乗車し,京成高砂駅を経由して都営新橋駅に到着しているとすれば,このような誤った陳述をしたことは不自然である上,控訴人Bは,陳述書(甲87)において,このような陳述をした理由について,合理的な説明をしていない。 さらに,控訴人Bは,陳述書(甲78)において,1 のような誤った陳述をしたことは不自然である上,控訴人Bは,陳述書(甲87)において,このような陳述をした理由について,合理的な説明をしていない。 さらに,控訴人Bは,陳述書(甲78)において,1か月通勤定期券(甲79)を購入した理由について,月に5万円近くする定期券を落とした時のことを考えて1か月定期券を購入したが,記名パスモ定期券の場合は,落とした時にほとんどコストをかけることなく再発行をしてもらうことができることを知ったので,8月からは6か月定期券を購入する予定であるなどと陳述しているが,控訴人Bが購入したとされる6か月定期券(甲80)は,落とした時にほとんどコストをかけることなく再発行を受けることができるパスモ定期券でなく,紛失時に再発行を受けることができない磁気定期券であることが認められる(甲80,乙125,126)から,控訴人Bが磁気定期券を購入したことは,落とした時にほとんどコストがかからず再発行をしてもらうことができることを知ったので,8月からは6か月定期券を購入する予定であるとの控訴人Bの前記陳述と相容れない。 そして,令和元年8月3日を始期とする6か月定期券(甲80)は,前記1か月通勤定期券(甲79)の期限の範囲内である同月1日,いわゆる継続手続(期間満了前に定期乗車券を回収して,期間の継続する新たな定期乗車券をその有効期間の開始前から有効とさせるもの(北総鉄道作成に係る旅客営業規則89条))を取ることなく購入されていることが認められる(甲79,80,乙127)ところ,仮に前記1か月定期券を保持していた控訴人Bが,自ら6か月定期券を購入したのであれば,その購入に際し,いわゆる継続手続を取るのが自然であるのにもかかわらず,これをしていないことは不自然である上,控訴人Bは,購 入に際し,いわゆる継続手 自ら6か月定期券を購入したのであれば,その購入に際し,いわゆる継続手続を取るのが自然であるのにもかかわらず,これをしていないことは不自然である上,控訴人Bは,購 入に際し,いわゆる継続手続をしなかった理由について,合理的な説明をしていない。 加えて,控訴人らは,使用者の氏名を控訴人Bとする令和元年9月9日付け下水道使用料納付済証明書(甲82),令和元年9月分及び同年10月分の電気料金等領収証(甲88,89)並びに同年11月分の電気料金等請求書(甲90)を提出するが,これらによっても,直ちに控訴人Bが肩書住所地のDの自宅に居住していることを認めるに足りない。 そうすると,控訴人らが提出した上記各証拠から,直ちに,控訴人Bが,本件寮からDの自宅に引っ越して居住し,自ら購入した通勤定期券を利用して,週5日,印西牧の原駅から北総線に乗車し,京成高砂駅を経由して都営新橋駅まで通勤していると認めることはできない。 したがって,控訴人らの当審における上記主張は採用することができない。 エ以上によれば,控訴人Bは,本件各処分の取消しを求めるに当たり,違法な旅客運賃の上限認可によって利用者の利便を阻害するような旅客運賃の上限の設定又は変更がされた場合に,これにより生活上の利益に係る著しい被害を直接的に受けるおそれがある者に当たらないというべきであり,控訴人Bについて本件各処分の取消しを求める法律上の利益は平成30年4月以降消滅したといえるから,控訴人Bは,本件訴えについて原告適格を有しないというべきである。」(当審における控訴人らの主張に対する判断) 控訴人らは,北総線の利用者に生じ得る影響について,東京地裁平成25年判決が,「日常生活の基盤を揺るがすような重大な損害」と判示したのに対し,原判決は,「生活上の利益にかかる に対する判断) 控訴人らは,北総線の利用者に生じ得る影響について,東京地裁平成25年判決が,「日常生活の基盤を揺るがすような重大な損害」と判示したのに対し,原判決は,「生活上の利益にかかる著しい被害を直接的に受けるおそれ」と判示しているが,原判決は,「著しい」,「直接的」という文言が示 すように,東京地裁平成25年判決に比較して,結果的に,鉄道利用者の原告適格を絞り込むことが可能となっており,このことが,あえて,東京地裁平成25年判決が触れていない「定期券を購入する」との文言を付加することにつながったものであるところ,東京地裁平成25年判決は,定期券を利用していない,「1か月に2回から5回程度出社するほか,北総線を利用して顧客先に出向くなどしている」者についても原告適格を認めており,この者の北総線の利用頻度は,控訴人らとさほど変わらないから,控訴人らの原告適格も認めるべきであると主張する。 しかしながら,先に引用した原判決の「事実及び理由」第3の3イ(ただし,訂正後のもの)で説示したとおり,控訴人Bは,平成30年に大学を卒業し,その後東京都内の会社に就職し,平日は東京都新宿区内にある会社の本件寮に居住するようになったというのであるから,通勤や通学のために定期券を購入している者には当たらなくなったものといえるし,また,週末等に実家や自身が講師を務める本件塾を訪れるため北総線を利用することがあるものの,その頻度は1か月に4ないし8回にすぎないというのであるから,日常的に北総線及び成田空港線を利用しているものと認めることはできない。また,先に引用した原判決の「事実及び理由」第3の3(16,17頁)で認定したとおり,控訴人Aは,書店を訪ねたり,本件塾のチラシのポスティングをしたりするなどの個別の目的のため,北総線又は成 ない。また,先に引用した原判決の「事実及び理由」第3の3(16,17頁)で認定したとおり,控訴人Aは,書店を訪ねたり,本件塾のチラシのポスティングをしたりするなどの個別の目的のため,北総線又は成田空港線を利用しているにとどまり,しかも,その利用頻度は,上記控訴人Bの利用頻度(1か月に多くて8回程度)よりも多いとはいえないから,日常的に北総線及び成田空港線を利用していると認めることはできない。 そして,東京地裁平成25年判決で原告適格が認められた者(甲4)は,北総線の利用目的やその頻度において,控訴人らと事実関係が異なるから,東京地裁平成25年判決は,本件とは事案を異にするものといわざるを得ない。 したがって,控訴人らの上記主張は採用することができない。 控訴人らは,原判決は,控訴人Bの原告適格に関して,事実審の口頭弁論終結の時点において,原告適格を基礎付ける事情が存在していなければならないことを前提として,控訴人Bの原告適格を否定する判示をしているが,処分を取り消した効果が処分時に遡るのであれば,処分時から原告適格を基礎付ける事情が消滅した時点までの間において,処分の取消しを求める法律上の利益があったという事実は残るから,必ずしも事実審の口頭弁論終結の時点において,原告適格を基礎付ける事情が存在していなくても原告適格を認めるべきであるし,控訴人らの訴えの提起から原審口頭弁論終結の時点まで4年以上という長期間が経過している本件においては,なおさら,このように解するべきであると主張する。 しかしながら,鉄道事業法及び関連法令に照らして,本件各処分後に原告適格を基礎付ける事情が消滅した者をも保護する旨の規定は見当たらず,控訴人Bは,原審口頭弁論終結の時点において,本件各処分によって生活上の利益に係る著しい被害を直接的 に照らして,本件各処分後に原告適格を基礎付ける事情が消滅した者をも保護する旨の規定は見当たらず,控訴人Bは,原審口頭弁論終結の時点において,本件各処分によって生活上の利益に係る著しい被害を直接的に受けるおそれがあるとは認められないから,原判決が,控訴人Bの原告適格に関して,事実審の口頭弁論終結の時点において,原告適格を基礎付ける事情が存在していなければならないことを前提として,控訴人Bに原告適格がない旨の判断をしたことは正当であって,この結論は,本件訴えの提起から原審口頭弁論終結の時点までに4年以上が経過しているという事情によって,左右されるものでないというべきである。 したがって,控訴人らの上記主張は採用することができない。 控訴人らは,控訴人Bが,令和元年7月2日から,Dの自宅から,通勤定期券を用いて,Eに所在する会社に通勤しているところ,この事実は,控訴人Bが,通勤定期券(甲79)を購入したこと,印西牧の原駅から都営新橋駅までの間(京成高砂線,押上駅経由)の6か月通勤定期券を千葉ニュータウン中央駅で購入したこと(甲80),東京都新宿区(住所省 略)に所在する社宅である本件寮からDの自宅に引っ越し,引越代金3万8000円を支出したこと(甲81),Dの自宅の下水道料金を出捐していること(甲82)から裏付けられていると主張する。 しかしながら,先に引用した原判決の「事実及び理由」第3の3ウ(ただし,訂正後のもの)で説示したとおり,控訴人らが提出した上記各証拠から,直ちに,控訴人Bが,Dの自宅で生活をし,自ら購入した通勤定期券を利用して,週5日,印西牧の原駅から北総線に乗車し,京成高砂駅を経由して都営新橋駅まで通勤していると認めることはできない。 したがって,控訴人らの上記主張は採用することができない。 勤定期券を利用して,週5日,印西牧の原駅から北総線に乗車し,京成高砂駅を経由して都営新橋駅まで通勤していると認めることはできない。 したがって,控訴人らの上記主張は採用することができない。 控訴人らは,東京地裁平成25年判決も,原判決も,違法な旅客運賃の認可ないし上限認可が鉄道利用者にもたらす過大な経済的負担という観点から,原告適格論を導いているところ,この点に着目するならば,扶養者が扶養義務の一環として鉄道料金を負担している場合は,必ずしも扶養者が当該鉄道を利用していなくても,経済的負担能力いかんによっては,住居をより扶養者の学校の近くに移転せざるを得なくなったりするなどの日常生活の基盤を揺るがすような重大な損害を生じかねないのであるから,扶養者に原告適格が認められるべきであり,控訴人Aは,扶養義務の一環として三男の鉄道料金を負担しているので,この点からしても,控訴人Aには原告適格が認められると主張する。 しかしながら,東京地裁平成25年判決も,扶養義務に基づいて旅客運賃を負担していると主張する者についても,自ら反復継続して日常的に北総線を利用していることが認められるとして,原告適格を認めているのであって,原判決と同様に,自ら反復継続して日常的に北総線を利用していることを要件としているから,控訴人Aがその子らの運賃を負担しているとしても,当然に原告適格が認められるものではない。のみならず,控訴人Aが扶養義務の一環として三男の鉄道料金を負担しているとしても,それにより控訴人A に日常生活の基盤を揺るがすような重大な損害を生じるおそれがあることを具体的に認めるに足りる証拠はなく,控訴人Aがその生活上の利益に係る著しい被害を直接的に受けるおそれがある者に当たると認めることはできない。 したがって,控訴人 損害を生じるおそれがあることを具体的に認めるに足りる証拠はなく,控訴人Aがその生活上の利益に係る著しい被害を直接的に受けるおそれがある者に当たると認めることはできない。 したがって,控訴人らの上記主張は採用することができない。 2 結論よって,控訴人らの本件訴えは,控訴人らがいずれも原告適格を有せず,不適法であるから,これらを却下すべきであるところ,これと同旨の原判決は相当であって,本件各控訴はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第10民事部 裁判長裁判官大段亨 裁判官大野和明 裁判官小河原寧
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