令和7(行コ)21 裁定取消請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和7年12月11日 福岡高等裁判所 福岡地方裁判所 令和4(行ウ)9
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判決文本文9,425 文字)

主文 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人の請求を棄却する。 3 訴訟費用は、1、2審を通じて、被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨主文同旨第2 事案の概要(以下、略称は、特に断らない限り、原判決の例による。)1(1) 事実経過被控訴人の内縁の夫(本件犯罪被害者)は、同人の父(本件加害者)に殺 害された(本件犯罪行為)。 被控訴人は、犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律(犯給法)による犯罪被害者等給付金(遺族給付金)(以下「本件給付金」という。)の支給を受けるため、福岡県公安委員会に対し、裁定の申請(本件申請)をした。 福岡県公安員会は、本件犯罪被害者と本件加害者との間に親族関係があることを理由に、本件給付金の支給をしない旨を裁定した(本件裁定)。 (2) 訴訟物被控訴人は、本件犯罪被害者と本件加害者の親族関係は明らかに破綻しており、支給要件を満たす等と主張して、控訴人に対し、本件裁定の取消しを 求めている。 (3) 原判決及び控訴提起原審は、本件犯罪被害者と本件加害者との間の親族関係が犯給法6条及び同法施行規則(犯給法施行規則)2条柱書本文括弧書所定の除外事由に該当するから、本件裁定が同条1号に該当するとして犯罪被害者等給付金の全部 を支給しないとしたことは、明白に合理性を欠き、社会通念に照らして著し く妥当性を欠いたものであり違法であるとして、被控訴人の請求を全部認容した。控訴人は、これを不服として、本件控訴を提起した。 2 犯罪被害者等給付金制度の概要、前提事実、本件の争点及びこれに関する当事者の主張原判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要」2から4(原判決2頁 人は、これを不服として、本件控訴を提起した。 2 犯罪被害者等給付金制度の概要、前提事実、本件の争点及びこれに関する当事者の主張原判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要」2から4(原判決2頁3行 目から5頁21行目まで、及び引用される別紙(原判決17頁から20頁まで))に記載のとおりであるから、これを引用する。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、原判決とは異なり、被控訴人の請求は認められないと判断する。 その理由は、次のとおりである。 2 認定事実次の事実は、当事者間に争いがないか、後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によって認定することができる。 (1) 親族関係ア本件加害者は、昭和36年、Aと婚姻した。なお、本件犯罪行為に至る まで、本件加害者に前科はない。 本件犯罪被害者は、同年、本件加害者とAの子として出生した。本件犯罪被害者は、両名の唯一の子である。本件加害者は、本件犯罪被害者が高校卒業後働き始めてから職を転々としていたことを心配し、就業先を世話したことがあった。 イ本件犯罪被害者は、昭和61年、前妻と婚姻し、子(本件孫)が出生した。その後も、本件犯罪被害者は本件加害者らとの同居を続けていた。 (以上につき、争いがない、乙3から5)(2) 内縁の成立等ア本件犯罪被害者は、平成2年、本件孫の親権者を父(本件犯罪被害者) と定めて、前妻と離婚した。 本件犯罪被害者と被控訴人は、遅くとも平成13年頃、内縁関係となり、本件孫を本件加害者とAに預けて別居し、福岡県鞍手郡宮田町において2人だけで同居を開始した。 イ他方、本件加害者とAは、引き取った本件孫を当時福岡県飯塚市にあった住居で養育した。本件孫は、後記の本件犯罪被害者自宅の隣へ 預けて別居し、福岡県鞍手郡宮田町において2人だけで同居を開始した。 イ他方、本件加害者とAは、引き取った本件孫を当時福岡県飯塚市にあった住居で養育した。本件孫は、後記の本件犯罪被害者自宅の隣への転居及 びAの死亡後も、本件犯罪行為発生まで、長年本件加害者と同居を続けてきた。 (以上につき、争いがない、甲9、乙3、4、36)(3) 居住状況等ア本件犯罪被害者と被控訴人は、平成16年6月、福岡県鞍手郡小竹町所 在の建物(本件犯罪被害者自宅)に転居した。 イ本件加害者は、公共工事のためそれまで住んでいた家屋からの立ち退きを余儀なくされ、その補償金をもって、平成23年頃、本件犯罪被害者自宅が建つ土地(本件土地)内に、それに隣接する建物(本件加害者自宅)を新築し、A及び本件孫と同居して生活するようになった。それに 先立ち、本件犯罪被害者とAとの間で、上記補償金を原資とするなどして2世帯住宅を建てる話が出たものの、本件加害者は金が足りないことから断った。 なお、本件孫は、後に(Aの死亡後1年以上経過後)、本件加害者に頼まれて、生活費を一部負担するようになった。 (以上につき、争いがない、甲21、乙5、7)(4) 関係の悪化Aは、平成25年7月に死亡した。それ以前から、本件加害者が、前記2世帯住宅を建てる話を断ったことや、被控訴人の親族と会った際連れ子(本件孫)の存在を暴露したことから、本件犯罪被害者と本件加害者との間に心 理的な軋轢があったものの、Aが間に入ることによりトラブルが顕在化する ことはなかった。 しかし、Aの死去以降、本件犯罪被害者は、2世帯住宅を建てる話を本件加害者が断ったことについて同人に文句を言うなどして、本件犯罪被害者 ことによりトラブルが顕在化する ことはなかった。 しかし、Aの死去以降、本件犯罪被害者は、2世帯住宅を建てる話を本件加害者が断ったことについて同人に文句を言うなどして、本件犯罪被害者及び被控訴人と本件加害者の軋轢は顕在化し、お互いに口論をすることなどがあった。本件加害者は、本件犯罪被害者と被控訴人から様々な嫌がらせを受 けていると思っており、他方、本件犯罪被害者と被控訴人は、本件加害者が、土地の使用について息子の土地であるとして遠慮や配慮がないなどの振る舞いに出ている等と受け止めて大きな不満を抱いた。 そのような中、本件犯罪被害者は、本件加害者に地代等として月額2万円を支払うことを要求した。同人は、むしろ子として援助があって然るべき本 件犯罪被害者からの要求であり、不満であったもののこれに応じ、平成29年1月以降、地代等として毎月2万円を支払うようになった。また、本件加害者は、本件犯罪被害者自宅のトイレの修繕費を負担したこともあった。 なお、近隣住民は、同年頃以降、本件犯罪被害者ないし被控訴人が本件加害者自宅前で大声をあげたり、被控訴人が窓ガラスを叩いたりするのを見聞 しており、他方、本件加害者がそのようなことをしているのは見たことがない旨供述している。 (以上につき、争いがない、甲21、26の12・13・18、31、乙5、36、37)(5) 本件衝突事故の発生と転居等の合意 ア本件加害者は、平成30年12月13日、本件土地で自動車を後退進行させた際、被控訴人に自車を衝突させた(本件衝突事故)。 本件犯罪被害者と被控訴人は、本件加害者に治療費を支払うよう求めたが、本件加害者は衝突していないと考えてこれを拒否した。そのため、本件犯罪被害者と被控訴人は、本 させた(本件衝突事故)。 本件犯罪被害者と被控訴人は、本件加害者に治療費を支払うよう求めたが、本件加害者は衝突していないと考えてこれを拒否した。そのため、本件犯罪被害者と被控訴人は、本件加害者に対し、大声で金銭の支払を 求めるなどして、口論も発生した(なお、この本件衝突事故に係る損害 賠償請求について、本件犯罪行為に係る刑事判決の後、被控訴人が訴訟を提起して一部勝訴の判決が言い渡されており、その理由中では、衝突はあり、それは本件加害者の過失であった(故意ではなかった。)と認定されている。)。 前記のとおり、これまでも本件加害者と本件犯罪被害者及び被控訴人と の間には度重なるトラブルがあったが、本件衝突事故により、本件犯罪被害者及び被控訴人と本件加害者との関係はさらに悪化した。 イ本件加害者は、平成31年3月6日、福岡県直方警察署を訪れ、本件犯罪被害者が治療費を支払えと怒鳴り込んでくる、今度押し掛けてきたときは現行犯逮捕できないかなどと相談した。 他方、本件犯罪被害者も、同署に架電し、相談をした。 ウその頃、本件犯罪被害者と本件加害者は、本件加害者自宅からの同人の退去等に関し、次のとおり、合意した。 ・本件加害者は、同年8月までに本件加害者自宅から退去する。 ・本件加害者は、本件犯罪被害者に対し、同年8月31日まで、地代と して、月額5万5000円を支払う。 ・本件加害者は、本件加害者自宅について、本件孫に贈与するか、同年7月までに解体する。 ・本件加害者は、本件加害者自宅にある仏壇や家財道具全部を運び出す。 本件加害者は上記のとおり合意したものの、本件加害者自宅から退去さ せられることや、月額5万5000円もの地 。 ・本件加害者は、本件加害者自宅にある仏壇や家財道具全部を運び出す。 本件加害者は上記のとおり合意したものの、本件加害者自宅から退去さ せられることや、月額5万5000円もの地代は高すぎ生活が難しくなることに、不満を感じた。 (以上につき、争いがない、甲19、21、26の14・19・24、28、30、31、乙6、8、被控訴人本人)(6) 本件犯罪行為の発生 本件犯罪被害者と被控訴人は、平成31年3月25日、本件加害者自宅を 訪れ、本件犯罪被害者において、本件加害者が前記(5)ウの合意に反して地代を振り込んでいないことなどについて、同人を強く問い質すことを続けた。 本件加害者は、それを聞いているうちに我慢の限界を超えて激高し、包丁で、本件犯罪被害者の胸部を1回突き刺し、同人を殺害した(本件犯罪行為)。さらに、本件加害者は、別の包丁で、被控訴人の背後から左外側胸部 を突き刺したうえ、左脇部を切る等したが、被控訴人が逃走したため、加療約2か月間を要する傷害を負わせたにとどまった。 (以上につき、争いがない、甲4、5、26の17、31、乙8、34、35、被控訴人本人) 3 犯給法施行規則2条柱書所定の除外事由の有無について (1) 本件加害者は本件犯罪被害者の父であり、直系血族である。よって、原則として、犯給法6条1号、同法施行規則2条1号によって、犯罪被害者等給付金の全部が支給されない。 しかし、犯給法施行規則2条柱書所定の除外事由(本件では、当該親族関係が破綻していたと認められる事情がある場合又はこれと同視することが相 当と認められる事情がある場合)があれば、親族関係があることを理由とした支給制限を受けず(同法施行規則2条柱書本文括弧書 係が破綻していたと認められる事情がある場合又はこれと同視することが相 当と認められる事情がある場合)があれば、親族関係があることを理由とした支給制限を受けず(同法施行規則2条柱書本文括弧書。以下、単に「除外事由」という場合がある。)、一件記録によってもその他の支給制限事由は認められないから、本件裁定は違法となるといえる。 そこで、上記除外事由の有無を検討する。 (2) 犯給法施行規則2条1号は犯罪被害者と加害者との間に、夫婦又は直系血族の親族関係がある場合には全額支給しないと定めつつ、例外として、同条柱書本文括弧書において、「婚姻を継続し難い重大な事由が生じていた場合その他の当該親族関係が破綻していたと認められる事情がある場合」と、「これ(親族関係の破綻)と同視することが相当と認められる事情がある場 合」に支給制限が除外される旨を定めている。 そして、婚姻や養子縁組等創設的な親族関係については、裁判上の離婚原因である「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法770条1項4号)や、裁判上の離縁原因である「縁組を継続し難い重大な事由があるとき」(民法814条1項3号)と同趣旨の文言が用いられている。そうすると、婚姻や養親子関係については、裁判上の離婚又は離縁が認容されるような場 合にはじめて除外事由として認められると解される。 これに対し、実親子関係のように生来的な親族関係の場合には、法手続上、関係そのものを消滅させる手立てはない。そうすると、裁判上の離婚や離縁が認容される場合と同程度というためには、(裁判上の離婚等が認容されれば他人となるのであるから)犯罪被害者と加害者の親族関係が実体を失い、 もはや他人と同視し得る程度にまで、破綻していることが求められていると解するのが相当である。 裁判上の離婚等が認容されれば他人となるのであるから)犯罪被害者と加害者の親族関係が実体を失い、 もはや他人と同視し得る程度にまで、破綻していることが求められていると解するのが相当である。 (3) 親子といえども種々の経緯で不和になり、あるいは疎遠になることは世上よく見られることであり、そうなりつつも、内容や頻度が千差万別であるにせよ一定の交流が継続することも珍しくない。親子は人の身分関係として基 本的かつ最も重要なものの1つであるから、親子間の情愛という根源的な感情やそれに立脚する社会秩序は、現代でもできるだけ維持尊重されるべきであって、一方ないし双方当事者が親子関係を絶つ意思をもっていたり、不和の継続があったりするからといって、直ちに親子関係がその実体を失い、破綻しているとすることは相当でない。 以上に基づき本件について検討する。 (4) 前記認定のとおり、本件犯罪被害者と本件加害者の間には、遅くともAが死亡した平成25年7月頃以降、軋轢が顕在化していて、それが、度重なる口論や、相互に相手から嫌がらせを受けていて困っている旨の相談を警察にしたり、本件犯罪被害者が、高齢の親であり、生活扶助義務を負っている対 象の本件加害者に月額2万円もの地代の支払を求めたりしたなどの行動にな っていた。 以上によれば、両者の不和の程度は相当深刻であったといわざるを得ない。 (5) 他方、そのような深刻な不和が生じた責任が、専らないし主として本件加害者にあったとまでは認められない。 この点、被控訴人は、本件加害者がAを日常的に殴るなどしたり、本件犯 罪被害者に対し自分の子ではない、どこかに行けと言ったりするなど、その人格に大きな問題がある旨主張し、そのようにAないし本件犯罪被害者から聞かされた旨陳 者がAを日常的に殴るなどしたり、本件犯 罪被害者に対し自分の子ではない、どこかに行けと言ったりするなど、その人格に大きな問題がある旨主張し、そのようにAないし本件犯罪被害者から聞かされた旨陳述している(甲31)。しかし、そうであれば、本件犯罪被害者が、成人後も本件加害者と同居していたこと、本件孫を預けて(Aと共同してであるが)養育させたこと、本件孫が、成人後、さらにはAの死亡後 も本件加害者と同居し、同人に生活費の援助もしていたことの合理的説明がつかない。また、本件孫は、本件加害者が昔気質で頑固であるとしつつ、暴力を振るったことはなく、本件犯罪行為に至るまで自分の面倒を見てくれたことに感謝し、本件加害者と再び一緒に暮らすことを希望していた(甲4、乙36)。以上に照らし、被控訴人の上記陳述は採用できない。 また、本件加害者が、本件衝突事故の発生を否定したことは相当でないものの、同事故は故意に基づくものではなく、本件加害者は、他の物にぶつかった等と考えて同事故が発生したと認識していなかったとも認められるから、本件加害者を強く非難することはできない。 その他、本件加害者が、本件犯罪被害者及び被控訴人に迷惑をかける行為 をした事実があったとしても、その具体的内容を認めるに足りる証拠はなく、度重なる口論があった等の諸事情にかんがみ、不和が生じ継続したことについて、本件加害者に専らないし主として責任があったと認められない。 (6) 次に、本件加害者と本件犯罪被害者が同居していた期間は長く、少なくともAが死去するまでは両名の関係は長らく良好であり、他方、不和が継続し た期間は約6年間に過ぎない。 Aの死亡後、前記認定のとおり種々のトラブルが生じたものの、双方は隣接する住居に居住しており、日常的に顔を合わ 関係は長らく良好であり、他方、不和が継続し た期間は約6年間に過ぎない。 Aの死亡後、前記認定のとおり種々のトラブルが生じたものの、双方は隣接する住居に居住しており、日常的に顔を合わせる機会があった。かつ、本件加害者は、本件犯罪被害者からの月額2万円の地代の支払要求に応じ、さらに本件加害者自宅からの退去や、地代の値上げ等にも応じていて、むしろ前向きな交流もあった(内心に不満があったにせよ、話し合いにより合意が できたことは、そう評価すべきである。)。 一般に、本件加害者のように高齢になって配偶者と死別した者は、唯一の子がいればその者との良好な親子関係を持ちたいとの切実な意思を有すると推認できる。本件においても、従前は本件犯罪被害者と良好な関係が続いていたこと、本件加害者は本件犯罪被害者及び被控訴人から嫌がらせをされて いると認識しつつも、また、年金生活者で経済的に余力が乏しいとうかがわれるのに、地代を支払う等の譲歩をしていたことは、親子関係の改善をあきらめない強い意思の存在を裏付けるものであり(その意思は尊重されるべきである。)、それと同時に、そのための譲歩をしていたと評価させるものである。 本件犯罪被害者についても、本件加害者とかつて長らく良好な関係が続いていたことや、不満を抱えトラブルが度重なっても、事項によっては話し合いにより解決を図ろうとしていたことからは、本件加害者との関係を完全に絶つまでの決意があったとまでは認められない。仮にそのような意思があったとしても(特に、本件加害者自宅からの同人の退去を決めた平成31年3 月の合意時)、前記のとおり良好な関係が長らく続いており、関係が悪化したのは約6年間に過ぎないこと、本件加害者が、本件犯罪被害者が被控訴人と同居するに際し、本件孫を引き取 決めた平成31年3 月の合意時)、前記のとおり良好な関係が長らく続いており、関係が悪化したのは約6年間に過ぎないこと、本件加害者が、本件犯罪被害者が被控訴人と同居するに際し、本件孫を引き取り養育したこと、本件加害者は親子関係の改善の意思を持ちそのための譲歩をしていたことからは、本件犯罪被害者の意思のみをもって親子関係の破綻ないしそれと同視できる事情があったと することは酷であり相当でない。 (7) なお、本件犯罪被害者と本件加害者は、平成31年3月の合意の成立時点では、あくまでも退去の準備段階にあるに過ぎず、その後3週間程度経過した本件犯罪行為の時点でも、同合意の締結をもってしても、本件犯罪被害者と本件加害者との親子関係が実体を失い破綻したというべきではない。 (8) そうすると、本件犯罪行為の時点において、本件犯罪被害者と本件加害者 との実親子関係が実体を失ったとまではいえず、他人と同視し得るほどに破綻していたとはいえない。 したがって、除外事由は認められない。 4 被控訴人の主張について(1) 被控訴人は、本件加害者が本件衝突事故後に実の子の内妻である被控訴人 に謝罪しないばかりか、当たり屋などと誹謗し、賠償金の支払を拒絶していたこと、そのため、本件犯罪被害者と被控訴人が、支払を求めて本件加害者の玄関先で怒鳴ったこと、本件加害者が平成31年3月6日に警察に対し本件犯罪被害者が押し掛けてきた場合には現行犯逮捕できないかと相談していること、本件加害者が、地代の支払について、親が子に支払うのは正常では ないと認識していたこと、本件犯罪被害者から地代として5万5000円を払うよう要求されたことについて、死ねと言われているのと同じだと受け取り、本件犯罪行為に及んだこと等の諸事情を指摘したうえ ないと認識していたこと、本件犯罪被害者から地代として5万5000円を払うよう要求されたことについて、死ねと言われているのと同じだと受け取り、本件犯罪行為に及んだこと等の諸事情を指摘したうえで、本件犯罪行為は、両者の関係が破綻していたからこそ発生したとして、親子関係の破綻を主張する。 しかし、本件加害者は、本件犯罪行為の当日に、本件犯罪被害者から強く問い質され続け、にわかに激高して殺害に及んだものであり、その直前まで、殺意を抱くどころか、親子関係の改善を望んでいて、親子関係が既に破綻していたとは認められないことは、前記認定のとおりである。そして、犯罪被害者等給付金制度は、人の生命又は身体を害する罪に当たる行為(犯罪行為) によって、死亡、重傷病又は障害(犯罪被害)が生じた場合に所定の支援を するものである。その対象となる犯罪行為には、犯罪被害者と加害者の関係性が悪化し、結果的に殺人行為に至る場合も当然想定されているのであって、とっさに殺人を決意しそれに及んだことは、犯給法の適用において親族関係が破綻しているということを帰結するものではない。被控訴人の上記主張は採用することができない。 (2) 被控訴人は、本件犯罪被害者が幼少の頃から本件加害者から虐待を受けており、父親の愛情を注がれていなかったと主張する。 しかし、前記のとおり、同主張は採用することができない。 (3) 被控訴人は、その他にも縷々主張するが、前記判断を左右せず、いずれも採用することができない。 5 本件裁定の審査手続の瑕疵について本件裁定における採証に係る被控訴人の主張は単なる推測に過ぎず、これを裏付けるに足りる証拠はない。また、親子関係が破綻したと認められないことは、前記認定説示のとおりである。 6 本件裁 本件裁定における採証に係る被控訴人の主張は単なる推測に過ぎず、これを裏付けるに足りる証拠はない。また、親子関係が破綻したと認められないことは、前記認定説示のとおりである。 6 本件裁定の憲法14条違反について 前記認定のとおり、本件加害者が、子であり長らく良好な関係にあった本件犯罪被害者と、その内縁の妻である被控訴人と不和となったものの、その責任が専らないし主として本件加害者にあるとはいえず、それでも高齢の同人は唯一の子である本件犯罪被害者との関係を改善したいとの意思を持ち、そのための譲歩もするなど一定の交流があったことから親子関係の実体を失い破綻して いたとはいえないという状況の下で、本件犯罪行為が生じたのであるから、それを通り魔的犯行と同列に論じることはできない。被控訴人の主張は前提を欠いており、採用することができない。 7 結論よって、被控訴人の本訴請求は認められず、本件控訴は理由がある。 福岡高等裁判所第1民事部 裁判長裁判官高瀬順久 裁判官古川大吾 裁判官高山慎

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