【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄する。 被告人は無罪。 理 由 弁護人工藤雄助の控訴趣意は別紙記載のとおりであつて、これに対し検察官は右 控訴趣意は理由がない旨
主文 原判決を破棄する。 被告人は無罪。 理由 弁護人工藤雄助の控訴趣意は別紙記載のとおりであつて、これに対し検察官は右控訴趣意は理由がない旨答弁した。 よつて先づ控訴趣意第一点について調査するに、本件の訴因(検察官が公判期日において訂正陳述したところによる)及び原判決認定の事実は、「被告人は昭和二十二年二月二十八日頃a町字bにおいてA(中国人)に対し、検一、二等長切昆布二千貫及び干鱈検一等三十五貫を金四十万円で売渡した上之を同人の依頼により右自宅倉庫に保管中其の頃同所で勝手にB株式会社に売渡して引渡しをなし以て横領したものである。」というのであるところ、弁護人は被告人とAとの間の右長切昆布及び干鱈の売買は臨時物資需給調整法に違反し、無効であるから、売買の目的物の所有権は買主Aに移転しない。従つて被告人が右物件を更にAから保管を依頼せられたとしても、それは他人の物を占有するものでないから、これを第三者に売却する行為は横領罪となるものでないと主張するのである。 ところで原判決挙示の証拠によると、被告人が前記物件をAに販売したてんまつは明らかに認められるのであつて、この点は被告人も争うところではない。而して長切昆布及び干鱈が、共に本件売買の当時臨事物資需給調整法第一条、加工水産物配給規則(昭和二十二年七月二十九日農林省令第六十二号)第二条、及び昭和二十二年八月一日農林省告示第百十号によつて、北海道において配給統制を受けていた、所謂指定水産物であつたことも、亦弁護人の主張するとおりである。而して指定水産物の生産者がその生産にかゝる指定水産物を販売するのは、右加工水産物配給規則第七条によつて、その但書各項の特別の場合を除き、当該指定生産地域の公認集荷機関に対してゞなければ、できない 而して指定水産物の生産者がその生産にかゝる指定水産物を販売するのは、右加工水産物配給規則第七条によつて、その但書各項の特別の場合を除き、当該指定生産地域の公認集荷機関に対してゞなければ、できないことになつているのであつて、若しこれに違反した公認集荷機<要旨第一>関以外の者に販売した場合には臨時物資需給調整法に違反することゝなるわけであるが、同法はその第一条に</要旨第一>も掲げているとおり産業の回復及び振興に関する国の基本的経済政策の実施を確保するための諸施策を規定したものであつて、強行法規であるから、これに違反する行為は法律上無効のものと解しなければならない。 今本件においては被告人は昆布及び干鱈の生産者であると認められるところ、販売の相手方たるAが公認集荷機関であるということ或はその他法定の除外理由のあることについては何等これを認めるべき証拠がないのであるから、被告人がAに前記長切昆布及び干鱈を販売したことは臨時物資需給調整法違反行為であつて無効といわなければならない。従つて形式上の買受人たるAは、この売買によつて、本件物件の所有権を取得するものではない。 ところで本件においては被告人とAとの間に売渡証が作成せられて同日附を以て被告人はAに右売渡物件についての保管証を差し入れているのであるけれども、事実は目的物たる長切昆布と干鱈とはいづれもその間被告人の現実の占有から離れたことはないのであるから、この場合右保管証の存在は、売買と独立した別個の保管契約の成立を意味するものではなくて、売買に基く引渡義務を確保するためのものであると考えられるし、しかも右売買が無効であることは前述のとおりであるから、買受人たるAは本件物件については何等の権利をも有するものでないことには変りはない。 被告人がAに販売した本件物件の一部をB株式会社に売 るし、しかも右売買が無効であることは前述のとおりであるから、買受人たるAは本件物件については何等の権利をも有するものでないことには変りはない。 被告人がAに販売した本件物件の一部をB株式会社に売却したことは被告人も認めているし、これを裏書する証拠もあるのである。これについては前述のとおり被告人は形式的には既にAに売却したものであり、保管証まで差し入れているのであるから、被告人の行為はAに対しては甚だ信義に欠くるものといわなければならないのであるけれども、前に説明したとおりAは本件物件については何等法律上保護せらるべき権利を有しないのであるから、被告人はこれを第三者に売却することによつて、Aの財産権を侵害したことにはならないわけである。 <要旨第二>本件は横領罪として起訴せられたものであるが、横領罪は自己の占有する他人の物に対し領得行為をなすによ</要旨第二>つて成立するものであるところ、被告人がB株式会社に売却した物件は、結局Aの物であるとはいえないのであるから、被告人の行為は統制法違反となるは格別財産罪たる横領罪とはならないものといわなければならな。 弁護人は原審公判廷において右控訴趣意と同旨の主張をしているに拘らず、原判決は右弁護人の主張は容れないと云つてこれを却け、訴因の事実を認定して被告人に対し有罪の言渡をしたのは、以上の点に関する法令の解釈を誤つた結果適用すべからざる法律を適用したものであつて、しかもその法令の適用の違反は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、刑事訴訟法第三百九十七条第三百八十条によつて破棄を免れないものである。 以上のとおりであつて、結局原判決は破毀せらるべきものであるから控訴趣意の他の諸点についてはその判断を省略し、刑事訴訟法第四百条但書により直に次のとおり判決する。 被告人に対する公訴事実は る。 以上のとおりであつて、結局原判決は破毀せらるべきものであるから控訴趣意の他の諸点についてはその判断を省略し、刑事訴訟法第四百条但書により直に次のとおり判決する。 被告人に対する公訴事実は冒頭に記載したとおりであるが、既に述べたとおりの理由により被告人の行為は罪とならないものであるから刑事訴訟法第三百三十六条により、被告人に対し無罪の言渡をなすべきものとするよつて主文のとおり判決する。 (裁判長判事竹村義徹判事西田賢次郎判事河野力)(控訴趣意は省略する。)
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