平成28年12月6日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成25年(ワ)第14748号特許権侵害行為差止等請求事件(本訴)平成25年(ワ)第31727号損害賠償請求事件(反訴)口頭弁論の終結の日平成28年8月31日判決 本訴原告兼反訴被告パナソニック株式会社(以下「原告」という。)同訴訟代理人弁護士小松陽一郎同川端さとみ同森本純同山崎道雄同淳子同藤野睦子同大住洋同訴訟復代理人弁護士中原明子同訴訟代理人弁理士阿部伸一同補佐人弁理士太田貴章 本訴被告兼反訴原告沖マイクロ技研株式会社(以下「被告」という。)同訴訟代理人弁護士永島孝明同安國忠彦同朝吹英太同安友雄一郎同補佐人弁理士若山俊輔同久米川正光 主文 1 被告は,別紙被告製品目録1及び2記載の各製品を製造し,販売し,輸入し,又は販売の申出をしてはならない。 2 被告は,別紙被告製品目録1及び2記載の各製品並びにそれらの半製品を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,8901万9752円及びこれに対する平成28年9月1日から支払済みまで てはならない。 2 被告は,別紙被告製品目録1及び2記載の各製品並びにそれらの半製品を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,8901万9752円及びこれに対する平成28年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告のその余の本訴請求及び被告の反訴請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用は,本訴反訴を通じて,これを8分し,その3を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 6 この判決は,第3項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 本訴請求被告は,別紙被告製品目録1及び2記載の各製品(以下,順に「被告製品1」,「被告製品2」といい,これらを併せて「各被告製品」という。)を製造し,販売し,輸入し,又は販売の申出をしてはならない。 被告は,各被告製品並びにその半製品及び各被告製品の製造に供する金型を廃棄せよ。 被告は,原告に対し,2億5607万5000円及びこれに対する平成27年9月5日(平成27年8月28日付け訴えの変更申立書の送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 反訴請求原告は,被告に対し,5000万円及びこれに対する平成25年12月7日(反訴状の送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払 え。 第2 事案の概要 1 本件は,①発明の名称を「遮断弁」とする特許権(特許番号第4547751号。以下「原告特許権1」という。)を有するとともに,発明の名称を「流体制御弁」又は「遮断弁」とする3件の各特許権(特許番号第4389904号,4389905号,4461539号。以下,順に「原告特許権2」~「原告特許権4」という。)を有していた原告が,被告に対し,次のの各請求をする事件(本訴請求事件)及び② 許番号第4389904号,4389905号,4461539号。以下,順に「原告特許権2」~「原告特許権4」という。)を有していた原告が,被告に対し,次のの各請求をする事件(本訴請求事件)及び②発明の名称を「モータ駆動双方向弁とそのシール構造」とする特許権(特許番号第3049251号。以下「被告特許権」という。)を有する被告が,原告に対し,次のの請求をする事件(反訴請求事件)から成る。 本訴請求ア原告が,被告に対し,被告による各被告製品の製造,販売等が原告特許権1を侵害すると主張して,特許法(以下,単に「法」という。)100条1項,2項に基づき,各被告製品の製造,販売等の差止め及び各被告製品及びその半製品等の廃棄を求める。 イ原告が,被告に対し,被告による各被告製品及び各被告製品と同一の構成の製品(以下「各被告製品等」という。)の製造,販売等が原告特許権1を侵害するとともに,原告特許権2~4を侵害していたと主張して,民法709条,法102条2項に基づく損害賠償金の一部である2億5000万円及びこれに対する不法行為後の日である平成27年9月5日(平成27年8月28日付け訴えの変更申立書の送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 ウ原告が,被告に対し,被告による各被告製品等の製造,販売等が原告特許権2及び3を侵害していたと主張して,民法703条に基づく不当利得金607万5000円並びにこれらに対する平成27年9月5日(平成 27年8月28日付け訴えの変更申立書の送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 反訴請求被告が,原告に対し,原告による別紙原告製品目録記載の製品(以下「原告製品」という。)の製造,販売等が被告特許権 ら支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 反訴請求被告が,原告に対し,原告による別紙原告製品目録記載の製品(以下「原告製品」という。)の製造,販売等が被告特許権を侵害していたと主張して,原告に対し,民法709条,法102条2項に基づく損害賠償金又は民法703条に基づく不当利得金の一部である5000万円及びこれに対する不法行為後の日である平成25年12月7日(反訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 2 前提事実(証拠等を掲げたもの以外は,当事者間に争いがない。)原告の特許権ア原告は,次の特許権(原告特許権1。以下,これに係る特許を「原告特許1」という。)を有している。 特許番号第4547751号発明の名称遮断弁出願日平成11年12月28日登録日平成22年7月16日イ~4。以下,これらに係る特許を順に「原告特許2」~「原告特許4」という。)を有していたが,原告特許権2~4は,原告の特許料不納のため,平成24年10月16日の経過(原告特許権2及び3)及び平成25年2月26日の経過(原告特許権4)により,いずれも消滅した。(乙25~乙27)原告特許権2特許番号第4389904号発明の名称流体制御弁 出願日平成18年6月29日(特願平11-106245の分割出願,原出願日平成11年4月14日)登録日平成21年10月16日原告特許権3特許番号第4389905号発明の名称流体制御弁出願日平成18年6月29日(特願平11-106245の分割出願,原出願日平成11年4月14日)登録日平成21年10月16日 第4389905号発明の名称流体制御弁出願日平成18年6月29日(特願平11-106245の分割出願,原出願日平成11年4月14日)登録日平成21年10月16日原告特許権4特許番号第4461539号発明の名称遮断弁出願日平成11年12月27日登録日平成22年2月26日(乙25~27,弁論の全趣旨)ウ原告特許1及び4の各特許出願の願書に添付した各明細書(以下,それぞれ「原告明細書1」,「原告明細書4」という。)の特許請求の範囲の各請求項1の記載は,本判決添付の特許公報(第4547751号及び第4461539号)の各請求項1記載のとおりである(以下,原告特許1及び4の各請求項1に係る発明を,それぞれ「原告発明1」及び「原告発明4」という。)。 また,原告特許2及び3の各特許出願の願書に添付した特許請求の範囲の各請求項1の記載は,本判決添付の特許公報(第4389904号及び第4389905号)の各請求項1記載のとおりである(以下,原告特許 2及び3の各請求項1に係る発明を,それぞれ「原告発明2」及び「原告発明3」という。)。 エ被告は,平成25年9月18日,特許庁に対し,原告特許1~3についての各特許無効審判(無効2013-800175,無効2013-800176,無効2013-800177)を請求し,特許庁は,平成26年6月30日,いずれについても無効審判請求を不成立とする旨の各審決をした。 上記各審決のうち,原告特許2及び3について無効審判請求を不成立とした各審決は,いずれも被告が審決取消訴訟を提起せず確定した。原告特許1について無効審判請求を不成立とした審決に対しては,被告が,知的財産高等裁判所に審決取消請求訴訟を提起したが(平成 求を不成立とした各審決は,いずれも被告が審決取消訴訟を提起せず確定した。原告特許1について無効審判請求を不成立とした審決に対しては,被告が,知的財産高等裁判所に審決取消請求訴訟を提起したが(平成26年(行ケ)第10181号),同裁判所は,平成27年3月19日,被告の請求を棄却する旨の判決をし,同判決は確定した。 (甲28~30,41,弁論の全趣旨)被告の特許権ア被告は,次の特許権(被告特許権。以下,これに係る特許を「被告特許」という。)の共有持分(持分2分の1)を有していたが,存続期間の満了日である平成23年9月10日の経過により,権利が消滅した。 特許番号第3049251号発明の名称モータ駆動双方向弁とそのシール構造出願日平成3年9月10日登録日平成12年3月31日被告特許の特許出願の願書に添付した明細書(以下「被告明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は,本判決添付の特許公報(第3049251号)の該当項記載のとおりである(以下,同項記載に係る発明を「被告発明」という。)。 イ原告は,平成26年4月25日,特許庁に対し,被告特許についての特許無効審判(無効2014-800064。以下「本件無効審判」という。)を請求した。被告は,本件無効審判の手続において,被告発明についての特許を無効とする旨の平成26年12月26日付け審決予告(以下「本件審決予告」という。)を受け,平成27年2月2日付けで,特許庁に対して特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正請求(以下,同訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。)をした。本件訂正は,被告明細書の特許請求の範囲の請求項1を別紙「被告発明の訂正後における請求項1の記載」のとおり訂正する内容を含むものである(以下,同訂正後の 求に係る訂正を「本件訂正」という。)をした。本件訂正は,被告明細書の特許請求の範囲の請求項1を別紙「被告発明の訂正後における請求項1の記載」のとおり訂正する内容を含むものである(以下,同訂正後の請求項1に係る発明を「被告訂正発明」という。)。 特許庁は,平成27年6月4日,「請求のとおり訂正を認める。本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をした。原告は,知的財産高等裁判所に対し,上記審決の取消しを求める審決取消訴訟(平成27年(行ケ)第10120号。以下「本件審決取消訴訟」という。)を提起したが,平成28年2月17日,同裁判所において請求棄却判決を受けたため,最高裁判所に対し,上告受理申立てをした。 (甲36,乙53~55,60,68,弁論の全趣旨)原告及び被告の行為ア被告は,平成24年4月以降,業として,被告製品1に該当する型番の遮断弁「KBA35SL06A」(以下「被告製品1A」という。)及び被告製品1には含まれないがこれと同一の構成を有する型番「KBA35SL06C」の遮断弁(以下「被告製品1´」という。)を,それぞれ,中華人民共和国に所在する被告の完全子会社(以下「被告子会社」という。)から輸入し,日本国内においてその販売及び販売の申出をした。 また,被告は,遅くとも平成22年7月16日(本件訴状の被告への送達日からさかのぼって3年前の日)以降,業として,被告製品2に該当す る型番「KBA35ML08A」(以下「被告製品2の1」という。)及び型番「KBA35ML10A」(以下「被告製品2の2」という。)の各遮断弁を,被告子会社から輸入し,日本国内においてその販売及び販売の申出をしていた。 イ原告は,遅くとも平成16年1月1日から平成23年9月10日(被告特許の存続期間満了日)までの間,業と の各遮断弁を,被告子会社から輸入し,日本国内においてその販売及び販売の申出をしていた。 イ原告は,遅くとも平成16年1月1日から平成23年9月10日(被告特許の存続期間満了日)までの間,業として,日本国内において,原告製品の製造,譲渡及び譲渡の申出をした。 原告発明1~4の各構成要件原告発明1~4をそれぞれ構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件1A」のようにいう。)。 ア原告発明11A 励磁コイルを有するステータと,1B 前記ステータの内側に同軸に配設され貫通穴のないなべ状に成形された剛体性の隔壁と,1C 流体室に取り付け可能で前記隔壁の円筒部外径より若干大きな内径の円筒状段差部を形成された剛体性の取り付け板と,1D 前記隔壁の円筒部外周と前記取り付け板段差部内周との間に円周方向に圧縮されて配設された弾性体製のシール部材と,1E 前記隔壁の内側に前記ステータに対向して配設されたロータと,1F 前記ロータの回転軸に配設された弁機構とで構成され,1G 前記隔壁は,開放端につばを有し,前記つばを前記シール部材と共に前記取り付け板段差部に挿入して構成した1H 遮断弁。 イ原告発明22A コイルを有するステータと, 2B 前記コイルへの通電によって励磁され回転するロータと,2C 前記ロータの回転軸と,2D 前記ステータとロータの間に介在し前記ロータを収納してガス流路との気密性を保持する有底筒状の気密隔壁と,2E 前記気密隔壁の底部に設け前記回転軸の一方を受ける第2の軸受と,2F 前記気密隔壁の開口側に挿入され前記回転軸の他方を受ける第1の軸受と,2G 前記気密隔壁の外周に配しベース板との間で気密性を保持す 隔壁の底部に設け前記回転軸の一方を受ける第2の軸受と,2F 前記気密隔壁の開口側に挿入され前記回転軸の他方を受ける第1の軸受と,2G 前記気密隔壁の外周に配しベース板との間で気密性を保持するシール材と,2H 前記ロータの回転を直動に変換する変換手段と,2I 前記変換手段を介してガス流路に配設した弁座への当接,離反により流路の開閉を行う弁体と,2J 前記弁体を弁座側に付勢する付勢手段とを備え,2K 前記変換手段は,回転軸に形成したねじ部と弁体側に形成したナット部の係合により回転運動を直進運動に変換し,2L-1 前記第1の軸受と第2の軸受は,異なる材質を用いて構成すると共に,2L-2 それぞれ前記回転軸に接触するラジアル軸受部と前記ロータと当接するスラスト軸受部を有し,2L-3 弁開動作時に当接する前記ロータと前記スラスト軸受部との摺動抵抗に対し,弁閉状態時に当接する前記ロータと前記スラスト軸受部との摺動抵抗を大きくした2M 流体制御弁。 ウ原告発明33A コイルを有するステータと,3B 前記コイルへの通電によって励磁され回転するロータと, 3C 前記ロータの回転軸と,3D 前記ステータとロータの間に介在し前記ロータを収納してガス流路との気密性を保持する有底筒状の気密隔壁と,3E 前記気密隔壁の底部に設け前記回転軸の一方を受ける第2の軸受と,3F 前記気密隔壁の開口側に挿入され前記回転軸の他方を受ける第1の軸受と,3G 前記気密隔壁の外周に配しベース板との間で気密性を保持するシール材と,3H 前記ロータの回転を直動に変換する変換手段と,3I 前記変換手段を介してガス流路に配設した弁座への当接,離反により流路の開閉を行う弁体と,3J 前記ロータが回転する際 るシール材と,3H 前記ロータの回転を直動に変換する変換手段と,3I 前記変換手段を介してガス流路に配設した弁座への当接,離反により流路の開閉を行う弁体と,3J 前記ロータが回転する際に前記弁体が回転しないように規制する回転防止手段と,3K 前記弁体を弁座側に付勢する付勢手段とを備え,3L 前記変換手段は,回転軸に形成したねじ部と弁体側に形成したナット部の係合により回転運動を直進運動に変換し,3M 前記回転防止手段は,前記ベース板側に設けた回転規制部を前記変換手段のナット部に作用させることで前記弁体の回転を防止する構成とし,3N-1 前記第1の軸受と第2の軸受は,異なる材質を用いて構成すると共に,3N-2 それぞれ前記回転軸に接触するラジアル軸受部と前記ロータと当接するスラスト軸受部を有し,3N-3 弁開動作時に当接する前記ロータと前記スラスト軸受部との摺動抵抗に対し,弁閉状態時に当接する前記ロータと前記スラスト軸受部との摺動抵抗を大きくした 3O 流体制御弁。 エ原告発明44A 励磁コイルを有するステータと,4B 前記ステータの内側に同軸に配設され貫通穴がなく,大径の円筒部と小径の円筒部で形成された2段の底を有するなべ状に絞り加工で成形された隔壁と,4C 中心孔と前記隔壁の小径の円筒部のなべ側面に嵌挿される嵌挿部を有する合成樹脂製の第1の軸受と,4D 前記隔壁の大径の円筒部のなべ側面の開放端側に嵌挿された中心孔を有するふた状の合成樹脂製の第2の軸受と,4E 前記隔壁の内側に前記ステータに対向して配設されたロータと,4F 前記第1,第2の軸受に回転可能に緩挿された前記ロータの回転軸と,4G 前記第2の軸受から外側に突出し前記回転軸に配設された弁機構とで構成し に前記ステータに対向して配設されたロータと,4F 前記第1,第2の軸受に回転可能に緩挿された前記ロータの回転軸と,4G 前記第2の軸受から外側に突出し前記回転軸に配設された弁機構とで構成し,4H 前記第1の軸受けは,前記大径の円筒部の底に当接するストッパを備え,前記ストッパを前記隔壁の大径の円筒部のなべ側面に接しない大きさとしたことを特徴とする4I 遮断弁。 被告発明及び被告訂正発明の各構成要件被告発明及び被告訂正発明をそれぞれ構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件A」のようにいう。)。 ア被告発明A 回転軸(28)の左端部にリードスクリュー(28a)を形成し,ロータ回転手段(34)のステータヨーク(37)の内周面に接するよう に非磁性材の薄板パイプ(38)を配設した正逆回転可能なモータDと,B このモータDの取付板(23)との間に装着されたスプリング(24)により付勢されて弁座(21)に密着する弁体(22)と,C 先端部(25a)がこの弁体(22)の保持板(22a)に固定され,前記リードスクリュー(28a)と螺合して,左右に移動する弁体移動手段25とD からなることを特徴とするモータ駆動双方向弁。 イ被告訂正発明A ガス遮断装置に用いられるモータ駆動双方向弁において,B 回転軸(28)の左端部にリードスクリュー(28a)を形成し,ロータ回転手段(34)のステータヨーク(37)の内周面に接するように配置され,Oリング等のシール材と共に内部の気密を確保するシール構造をなし,当該シール材が嵌装される静止部分となる非磁性材の薄板パイプ(38)を有する正逆回転可能なモータDと,C このモータDの取付板(23)との間に装着され と共に内部の気密を確保するシール構造をなし,当該シール材が嵌装される静止部分となる非磁性材の薄板パイプ(38)を有する正逆回転可能なモータDと,C このモータDの取付板(23)との間に装着されたスプリング(24)により付勢されて弁座(21)に密着する弁体(22)と,D 先端部(25a)がこの弁体(22)の保持板(22a)に固定され,前記リードスクリュー(28a)と螺合して,左右に移動する弁体移動手段25とE からなることを特徴とするモータ駆動双方向弁。 各被告製品及び原告製品の各構成要件充足性ア各被告製品は,原告発明1の構成要件1Aないし1F及び1H,原告発明2の構成要件2Aないし2L-1及び2M,原告発明3の構成要件3Aないし3N-1及び3Oを充足し,被告製品1は,原告発明4の構成要件4Aないし4C,4Eないし4G及び4Iを充足する。 イ原告製品は,被告発明の構成要件BないしDを充足する。また,原告製 品は,被告訂正発明の構成要件A,CないしEを充足する。 ⑺ 相殺合意の成立原告と被告は,平成28年8月31日,同日時点において,本訴請求債権と反訴請求債権(いずれも不法行為に基づく損害賠償債権に係る部分も含む。)とを対当額で相殺する旨の合意(以下「本件相殺合意」という。)をした。 3 争点本件の争点は,以下のとおりである。なお,被告は,各被告製品につき,原告発明1の構成要件1G,原告発明2の構成要件2L-2及び2L-3,原告発明3の構成要件3N-2及び3N-3の各充足性を,被告製品1につき,原告発明4の構成要件4D及び4Hの各充足性を,それぞれ争い,原告は,原告製品について被告発明の構成要件Aの充足性を争う。 本訴請求についてア各被告製品が原告発明1の技術的範囲に属するか(争点) 明4の構成要件4D及び4Hの各充足性を,それぞれ争い,原告は,原告製品について被告発明の構成要件Aの充足性を争う。 本訴請求についてア各被告製品が原告発明1の技術的範囲に属するか(争点)イ各被告製品が原告発明2,3の技術的範囲に属するか(争点)ウ被告製品1が原告発明4の技術的範囲に属するか(争点)エ差止め及び廃棄請求の必要性 オ原告の損害額及び被告の不当利得額(争点)反訴請求についてア原告製品が被告発明の技術的範囲に属するか(争点)イ被告発明に係る特許の無効理由の有無(争点⑺)ウ本件訂正により被告発明に係る特許の無効理由が解消したか(争点⑻)エ被告の損害額及び原告の不当利得額(争点⑼) 4 争点に関する当事者の主張 各被告製品が原告発明1の技術的範囲に属するか)について[原告の主張] ア各被告製品の構成は,別紙「原告の主張に係る各被告製品の構成」記載のとおりである。 各被告製品についての原告発明1の充足論に関する争点は,構成要件1Gの「前記つばを前記シール部材と共に前記取り付け板段差部に挿入して構成した」の充足性のみである。 イ原告発明1は遮断弁に関する物の発明であり,物の組立方法をもって発明を特定するものでないから,構成要件1Gの「前記つばを前記シール部材と共に前記取り付け板段差部に挿入して構成した」は,つばがシール部材と共に前記取り付け板段差部に挿入されたという物の客観的な構成を特定するものであり,このことは,原告明細書1の記載(段落【0012】~【0014】,【0021】,【0022】,【0039】,【0054】,【0060】,【0071】,【図1】)からも明らかである。 被告は,上記構成要件1Gの「共に」につき,時間的に「同時に」の意 ~【0014】,【0021】,【0022】,【0039】,【0054】,【0060】,【0071】,【図1】)からも明らかである。 被告は,上記構成要件1Gの「共に」につき,時間的に「同時に」の意味であると主張するが,原告明細書1の上記各記載に照らせば,原告発明1は,高度の気密性を確保するための各部材の選択及び部材相互の組合せ構造並びに嵌着及び固着構造そのものに発明の本質が認められるのであって,構成要件1Gの「前記つばを前記シール部材と共に前記取り付け板段差部に挿入して構成した」は,物の客観的構成としての「つばとシール部材とが共に取り付け板段差部に挿入されてなる構成」を意味するものと解釈すべきである。この点,原告が原告特許1の出願経過において提出した意見書(乙19)の記載は,原告発明1では隔壁とシール部材とを一体的に取り付け板段差部に嵌着することができて組立作業が容易となること,すなわち,そのような組立てが可能な構造であることを示した記載に過ぎず,時間的な意味で厳密に「同時」に隔壁とシール部材とを取り付け板段差部に挿入する構成に限定するものではない。 ウ各被告製品は,段差部にキャンが挿入された状態において,キャンの外 周に嵌着されたOリングをステータの開口縁部でつば側に押し込むことによって,Oリングを段差部に挿入し,これによりはじめて,キャンとOリングとが一体的にベースフランジに嵌着されるから,まさに,隔壁とシール部材とを共に取り付け板段差部に挿入する構成を備えるものである(なお,仮に被告が主張する「同時に」の解釈に立ったとしても,Oリングを押し込んだ時点で,キャンとOリングとは一体的に「同時に」ベースフランジに嵌着されるといえる。)。 エ以上によれば,各被告製品は,構成要件1Gを充足するから,原告発明1の技 としても,Oリングを押し込んだ時点で,キャンとOリングとは一体的に「同時に」ベースフランジに嵌着されるといえる。)。 エ以上によれば,各被告製品は,構成要件1Gを充足するから,原告発明1の技術的範囲に属する。 [被告の主張]ア原告は,原告特許1の出願審査において,特許庁から拒絶理由通知を受けたのに対し,請求項1に構成要件1Gを追加する補正を行うとともに,意見書において,「つばを前記シール部材と共に前記取り付け板段差部に挿入して構成した」の意義に関し,「本願発明は,隔壁が開放端につばを有し,このつばをシール部材と共に取り付け板段差部に挿入して構成したところに特徴を有するもので,隔壁の開放端につばを構成することにより強度を確保できるので,隔壁の変形を防止して真円度を確保することができ,更に,組み立ての際に,シール部材を押し込むことで,同時に隔壁を取り付け板段差部に挿入する事が出来るため組立作業も容易となるという格別の効果を奏するものであります。」と述べている。また,原告は,原告特許1に関する無効審判の手続においても,同様の主張をしている。 したがって,構成要件1Gの「共に」とは,組み立ての際に,シール部材の押し込みによって,シール部材と隔壁とを「同時に」取り付け板段差部に挿入することと解すべきである。 これに対し,各被告製品は,①まず,Oリングがつばに至る軸方向途中まで嵌着されたキャンをベースフランジの段差部に挿入し,②次に,段差 部にキャンが挿入された状態で,キャンの外周に嵌着されたOリングをステータの開口縁部でつば側に押し込むことによって,Oリングを段差部に挿入するものであって,シール部材に該当する「Oリング」と,隔壁に該当する「キャンのつば」とを,Oリングの押し込みによって,「同時に」ベースフランジの ば側に押し込むことによって,Oリングを段差部に挿入するものであって,シール部材に該当する「Oリング」と,隔壁に該当する「キャンのつば」とを,Oリングの押し込みによって,「同時に」ベースフランジの段差部に挿入するものではない。 イまた,原告は,原告特許1の出願審査及び無効審判の手続において,原告発明1につき,①隔壁の変形を防止して真円度を確保することができ,②組み立ての際にシール部材を押し込むことで,同時に隔壁を取付板段差部に挿入することができるため組立作業が容易となり,③つばが組み立て工程においてシール部材の位置を仮決めするストッパとして機能し,シール部材を正しい位置にセットすることを容易にし,また,シール部材の挿入時の隔壁円筒部外周面及び取付板段差部内周面とシール部材とのすべり嵌合を別工程にでき,無理な荷重を加えることなく容易にシール部材を円周方向に圧縮しながら組立てできるという効果を奏することを主張したのであり,このような原告の主張を受けて原告特許1が特許査定され,無効審判においても無効理由がないと判断されたことに照らせば,原告発明1は,上記①~③の全ての効果を奏する発明として解釈されなければならない。 これに対し,各被告製品は,原告発明1における上記①~③のいずれの作用効果も有していない。 ウさらに,原告は,無効審判の口頭審理において,隔壁の外周に配されたシール部材と接触していない「つば」を有する遮断弁については,意識的に特許請求の範囲から除外したと解される陳述をしているから,構成要件1Gにおける「前記つばを前記シール部材と共に」とは,隔壁の「つば」と隔壁の外周に配された「シール部材」とが互いに接触した構造でなければならないと解される。これに対し,各被告製品においては,組立工程の 最初から最後まで, と共に」とは,隔壁の「つば」と隔壁の外周に配された「シール部材」とが互いに接触した構造でなければならないと解される。これに対し,各被告製品においては,組立工程の 最初から最後まで,Oリング(シール部材)が「つば」と接触することは一度もなく,また,組立完了後も,Oリング(シール部材)と「つば」は互いに接触しない。 エ以上によれば,各被告製品が,構成要件1Gを充足せず,原告発明1の技術的範囲に属しないことは明らかである。 原告発明2,3の技術的範囲に属するか)について[原告の主張]ア文言侵害について本件の争点は,構成要件2L-2,2L-3及び3N-2,3N-3の「スラスト軸受部」の充足性のみであるところ,被告は,原告発明2及び3は,「回転運動を阻害するトルク」が「ロータとスラスト軸受部との摺動」によって生じることを特徴としているとし,このことから,「スラスト軸受部」はすべり軸受に限定される旨主張する。 しかしながら,「摺動抵抗」は「ロータの回転運動を阻害するトルク」を意味するもので,ロータと軸受との接触面の摩擦に限定されるものではない。「ころがり軸受」がロータと当接した場合は,玉(転動体)と玉がころがる平面との間で生じる摩擦によって,ロータの回転運動を阻害するトルクが生じるのであるから,機序に若干の相違はあるものの,「ころがり軸受」もすべり軸受と同様に,ロータを受けてその回転運動を阻害する部材であり,これを原告発明2及び3の「スラスト軸受部」に含めても「摺動抵抗」の意義と矛盾しない。原告特許2及び3の特許出願の願書に添付した各明細書(以下,それぞれ「原告明細書2」,「原告明細書3」という。)において開示された実施例はすべり軸受であるが,あくまで実施例として記載されたものであるから,同記載 3の特許出願の願書に添付した各明細書(以下,それぞれ「原告明細書2」,「原告明細書3」という。)において開示された実施例はすべり軸受であるが,あくまで実施例として記載されたものであるから,同記載のみで「軸受」がすべり軸受に限定されるはずはない。むしろ,原告明細書2及び3においては,「軸受」をすべり軸受に限定しておらず,かえって,軸受とロータの接触 面積のみならず軸受の「材質」で摺動抵抗に差異が生じることを開示しているのであるから(原告明細書2の段落【0012】,【0018】),当業者は「軸受」にころがり軸受が含まれることを当然に読み取ることができる。 よって,ころがり軸受である被告製品の軸受Qも,原告発明2の構成要件2L-2,2L-3及び原告発明3の構成要件3N-2,3N-3の「スラスト軸受部」に相当し,これらの各構成要件をいずれも充足する。 イ均等侵害について原告発明2及び3と各被告製品との相違点は,軸受の一方が「すべり軸受」か「ころがり軸受」かという点のみである。 そして,原告発明2及び3と各被告製品は,いずれもロータの回転力を阻害するトルクが異なる2つの軸受(第2の軸受・第1の軸受)を設け,場面に応じて,ロータと接触する軸受を選定して使用するよう構成し,その結果,トルクの異なる電動機出力が得られるようにして,当該出力を選択的に開閉弁の開成力あるいは閉止性能として利用するとの作用効果を奏するものである。これに対し,各被告製品もトルクが異なる2つの軸受(軸受P=合成樹脂・すべり軸受,軸受Q=金属製,ころがり軸受)を設け,ロータは,弁開動作時にトルクの小さい軸受Qに,弁閉状態時にトルクの大きい軸受Pにそれぞれ当接するようになっているから,いずれも「異なるトルク出力を選択的に開閉弁の開成力もしくは閉止性能とし 設け,ロータは,弁開動作時にトルクの小さい軸受Qに,弁閉状態時にトルクの大きい軸受Pにそれぞれ当接するようになっているから,いずれも「異なるトルク出力を選択的に開閉弁の開成力もしくは閉止性能として利用する」という全く同一の作用効果を奏する(置換可能性)。また,各被告製品の製造時において,軸受にすべり軸受ところがり軸受があり,すべり軸受はころがり軸受に比して摩擦係数がはるかに小さいことは技術常識であったから,当業者は,すべり軸受に代えてころがり軸受を採用することを容易に想到できた(容易想到性)。さらに,原告発明2及び3の本質的部分は,ロータの回転力を阻害するトルクが異なる2つの軸受を設け, ロータと接触する軸受を場面に応じて選択するよう構成するという点にあり,「軸受」がすべり軸受かころがり軸受かは本質的部分ではない(非本質的部分)。加えて,各被告製品は原告特許2及び3の出願時の公知技術と同一又は公知技術から容易に推考できたものではないし(非容易推考),出願手続上も,各被告製品を原告発明2及び3から意識的に除外したなどの事情は存在しない(非意識的除外)。 したがって,仮に,原告発明2及び3の「スラスト軸受部」にころがり軸受が含まれないとしても,各被告製品について,原告特許権2及び3の均等侵害が成立する。 ウ以上によれば,各被告製品は,原告発明2及び3の技術的範囲に属する。 [被告の主張]ア文言非侵害について原告発明2及び3は,第1の軸受と第2の軸受について,いずれも,「それぞれ前記回転軸に接触するラジアル軸受部と前記ロータと当接するスラスト軸受部を有」すること(構成要件2L-2及び3N-2),「弁開動作時に当接する前記ロータと前記スラスト軸受部との摺動抵抗に対し,弁閉状態時に当接する前記ロータと前記スラス 記ロータと当接するスラスト軸受部を有」すること(構成要件2L-2及び3N-2),「弁開動作時に当接する前記ロータと前記スラスト軸受部との摺動抵抗に対し,弁閉状態時に当接する前記ロータと前記スラスト軸受部との摺動抵抗を大きくした」こと(構成要件2L-3及び3N-3)を発明特定事項としているところ,「摺動抵抗」とは滑って動くことによる抵抗,すなわち「すべり摩擦」を意味し,そのような抵抗を生じさせる軸受部が「スラスト軸受部」に該当する。「すべり軸受」は,すべり運動によってすべり摩擦(摺動抵抗)だけが生じる軸受であるのに対し,「ころがり軸受」は,ころがり運動によるころがり摩擦(ころがり抵抗)の小さいことを利用した軸受であり,その機序が全く異なる上,摩擦係数も,すべり摩擦の方がころがり摩擦よりはるかに大きいことは技術常識である。 したがって,「スラスト軸受部」は,潤滑油膜を介して流体潤滑によっ て摩擦を減じる「すべり軸受」に限定され,ころを介して軸と軸受とのすべり摩擦をころがり摩擦に変換して摩擦を減じる「ころがり軸受」は,「スラスト軸受部」には含まれない。原告明細書2及び3の各図1~4にも,一体成形された一部材からなる「すべり軸受」が開示されているのであって,「スラスト軸受部」が,すべり軸受とは機序のみならず摩擦係数も大きく異なる「ころがり軸受」をも含むと解釈する余地はない。 各被告製品は,いずれも,前端側の軸受Qが「すべり軸受」ではなく「ころがり軸受」であるから,構成要件2L-2及び3N-2を充足しない。 イ均等非侵害について原告は,「スラスト軸受部」ところがり軸受とは,軸受の種別の違いでしかなく,ロータとの当接によりロータの回転運動を阻害するトルク(摺動抵抗)が生じる点に違いはないとして,各被告製品について,原告 原告は,「スラスト軸受部」ところがり軸受とは,軸受の種別の違いでしかなく,ロータとの当接によりロータの回転運動を阻害するトルク(摺動抵抗)が生じる点に違いはないとして,各被告製品について,原告発明2及び3の均等侵害を主張する。 しかしながら,構成要件2L-2及び3N-2は,いずれも,原告特許2及び3の出願審査に際しての特許庁からの拒絶理由通知に対し,原告が,原告発明2及び3の進歩性を主張すべく手続補正書で追加した事項である。 したがって,包袋禁反言の法理により,原告が意識的に除外した構成である構成要件2L-2及び3N-2をいずれも充足しない構成について,均等論を適用する余地はない(意識的除外)。また,審査経過に照らせば,構成要件2L-2及び3N-2はいずれも原告発明2及び3の本質的部分である(本質的部分)。 したがって,構成要件2L-2及び3N-2については,いわゆる均等の第5要件及び第1要件をいずれも具備せず,均等論を適用する余地はない。 ウ以上のとおり,各被告製品が,原告発明2又は3の技術的範囲に属しな いことは明らかである。 1が原告発明4の技術的範囲に属するか)について[原告の主張]ア文言侵害について構成要件4Dの充足性被告製品1の合成樹脂製の「ふた状部材」には,中心孔が同軸になるよう金属製の「軸受Q」が嵌挿されており,上記「ふた状部材」は,「軸受Q」と一体となって,キャンの大径の円筒部のなべ側面の開放端側に嵌挿された中心孔を有するふた状の軸受が構成されているから,被告製品1の「軸受Q」及び「ふた状部材」は,一体の構成として,原告発明4の「第2の軸受」に相当する。したがって,被告製品1は,構成要件4Dを充足する。 これに対し,被告は,被告製品1の軸受Qは金属製であるから「ふた 及び「ふた状部材」は,一体の構成として,原告発明4の「第2の軸受」に相当する。したがって,被告製品1は,構成要件4Dを充足する。 これに対し,被告は,被告製品1の軸受Qは金属製であるから「ふた状の合成樹脂製の第2の軸受」を充足しないと主張するが,原告発明4において,第2の軸受が合成樹脂製であることの技術的意義は,原告明細書4の「隔壁47の円筒部47cと第2の軸受49の嵌挿部49eは締まり嵌めで嵌合している。第2の軸受49の嵌挿部49eと中心孔49aとの間には,薄肉化した波紋状の応力緩和部49dが形成されている」(段落【0027】)という点にしか認められない。したがって,原告発明4における第2の軸受は,嵌挿部49eが締まり嵌めで嵌合し,応力緩和部49dが形成される限度で合成樹脂製であれば足り,部材全部が合成樹脂製であることまで要するものではない。被告製品1は,合成樹脂製のふた状部材を有し,ふた状部材の中心部に,ふた状部材と同軸に金属製の軸受Qが嵌着される構成であり,この合成樹脂製のふた状部材によって,隔壁の円筒部とふた状部材の嵌挿部とが締まり嵌めで嵌合し,ふた状部材の嵌挿部と中心孔との間に薄肉化した波紋状の応力緩 和部が形成されているのであるから,構成要件4Dの充足性は否定されない。 構成要件4Hの充足性被告製品1の軸受Pは,キャンの大径の円筒部の底に当接するストッパを備え,ストッパはキャンの大径の円筒部のなべ側面に接しない大きさである。したがって,被告製品1は,構成要件4Hを充足する。 これに対し,被告は,被告製品1の仕様上,突起部と大径の円筒部の底との間に0.15ミリメートルの「すきまA」が生じるから,軸受Pの突起部はキャンの大径の円筒部の底に当接しないと主張する。しかし,①被告の主張する「すきまA」な 1の仕様上,突起部と大径の円筒部の底との間に0.15ミリメートルの「すきまA」が生じるから,軸受Pの突起部はキャンの大径の円筒部の底に当接しないと主張する。しかし,①被告の主張する「すきまA」なるものは,その幅が0.15ミリメートルというごく微細なものであって,軸受Pの製造時や被告製品1への組込み時,あるいは作動時における誤差の範囲内であると考えられるのであって,被告において,これらいずれの段階でも常に,0.15ミリメートルの「すきまA」が生じているという立証はされていない。また,②第1の軸受の隔壁の大径の円筒部の底への「当接」は,原告明細書4の「当接するよう」(に)(段落【0026】)との記載からも明らかなとおり,常に当接していることを要求するものではないから,仮に,製造時に0.15ミリメートルのすきまAが存在することがあるとしても,被告製品1の突起部は構成要件4Hのストッパに該当する。さらに,③被告製品1の軸受Pは金属製ではなく合成樹脂製であり,かつ,ロータの回転を阻害しないように必ずスラスト方向の隙間(ガタ)が形成されているから,閉成動作時には,弁体が弁座に当接した後さらに回転することで,ロータが軸受P側に移動し,軸受Pを押すことによる反力に起因する閉止保持トルクを得ることとなる。その際,軸受Pに圧縮の力学的作用が生じるから,被告製品1について,製造時の段階ですきまAが生じていたとしても,遮断動作によって,すきまAの存在がなくなる 可能性がある。加えて,④原告発明4で重要なのは,隔壁を二段の底を有する形状とし,小径の円筒部のなべ側面に合成樹脂製の軸受を嵌装することであって,大径の円筒部の底への当接は付随的なものにすぎない。 しかるに,被告製品1の軸受Pも,キャンの小径の円筒部の底には当たっている。したがって, 円筒部のなべ側面に合成樹脂製の軸受を嵌装することであって,大径の円筒部の底への当接は付随的なものにすぎない。 しかるに,被告製品1の軸受Pも,キャンの小径の円筒部の底には当たっている。したがって,被告の主張は,いずれも被告製品1の構成要件4Hへの充足性を否定する根拠とはならない。 なお,被告は,原告が被告製品1のストッパであると指摘する突起部に逆向き挿入防止の意義があると主張するが,軸受Pがキャンの大径の円筒部の底に当接する以上,付加的に逆向き挿入防止の意義があったとしても,ストッパであることを否定する理由となるものではない。 イ均等侵害について仮に,被告製品1の軸受Pの突起部が,文言上,構成要件4Hの「当接するストッパ」に該当しないとしても,均等侵害が成立する。 すなわち,被告製品1の軸受Pは,隔壁の小径の円筒部のなべ側面と底に接していることによって軸受の取り付け精度を向上させており,原告発明4での隔壁の小径の円筒部のなべ側面と大径の底と接することにより取り付け精度を向上させるという作用効果と同様であり(作用効果の同一性),置換が可能かつ容易であるといえるし(容易想到性),突起部が大径の底に当接するか,わずか幅0.15ミリメートルの微細な隙間が設けられているかの差異は,原告発明の本質的部分に係るものではない(非本質的部分)。なお,原告が手続補正により構成要件4Hを追加したのは,第1の軸受が「ストッパ」を備えていない引用発明に対し,補正によりストッパを備える構成を加えたもので,ストッパが大径の底に常に当接する構成に限定したものではない(意識的除外なし)。 ウ以上によれば,被告製品1は,原告発明4の技術的範囲に属する。 [被告の主張]ア文言非侵害について構成要件4Dの非充足構成要件4Dは, はない(意識的除外なし)。 ウ以上によれば,被告製品1は,原告発明4の技術的範囲に属する。 [被告の主張]ア文言非侵害について構成要件4Dの非充足構成要件4Dは,「前記隔壁の大径の円筒部のなべ側面の開放端側に嵌挿された中心孔を有するふた状の合成樹脂製の第2の軸受」であることを発明特定事項とするのに対し,被告製品1の軸受Qは金属製であるから,構成要件4Dを充足しない。 これに対し,原告は,被告製品1の軸受Qが金属製であることを自認しつつ,合成樹脂製の「ふた状部材」に軸受Qが嵌挿されて一体のふた上の軸受が構成されるから「ふた状の合成樹脂製の第2の軸受」に相当するなどと主張するが,被告製品1の軸受Qは,合成樹脂製の「ふた状部材」とは別部材であり,同「ふた状部材」は軸受としての機能を備えていないから,上記原告の主張には理由がない。 構成要件4Hの非充足構成要件4Hは,「前記第1の軸受は,前記大径の円筒部の底に当接するストッパを備え」ることを発明特定事項とするのに対し,被告製品1は,軸受Pの突起部がキャンの大径の円筒部の底に「当接」していないから,構成要件4Hを充足しない。 すなわち,被告製品1の仕様は,キャンにおける小径の円筒部(凹部)の深さが2.3ミリメートル,軸受Pにおける突起部を基準とした高さが2.45ミリメートルにそれぞれ設定されているため,組立状態において,突起部と大径の円筒部の底との間に0.15ミリメートルのすきまAが生じるのであり,実際の管理公差(部品加工メーカが購入している材料の管理公差)を前提に最も公差が生じる場合であっても0.02ミリメートルのすきまAが残る。したがって,軸受Pの突起部がキャンの大径の円筒部の底に「当接する」ことは起こり得ないから,当該突起 部は を前提に最も公差が生じる場合であっても0.02ミリメートルのすきまAが残る。したがって,軸受Pの突起部がキャンの大径の円筒部の底に「当接する」ことは起こり得ないから,当該突起 部は構成要件4Hの「ストッパ」としての機能を有しない。 そもそも,被告製品1における軸受Pの突起部は,軸受Pを逆方向に挿入しないための対策(いわゆる「ポカよけ」=作業ミスの防止)として設けたものであり,軸受Pの位置決めは,小径の円筒部のなべ側面と,小径の円筒部の底の2つの面でなされるから,軸受Pの突起部がキャンの大径部の底に当接している必要はないのである。 なお,原告は,原告明細書4に「当接した」ではなく「当接するよう」(に)と記載されていることを根拠に,第1の軸受は隔壁の大径の円筒部の底に常に当接していなければならないものではないなどと主張するが,明細書の記載における日本語の解釈として,ここにいう「ように」は,当接している状態を示すものであり,比喩として用いられているものではないから,かかる原告の主張は,文言を曲解した不当なものである。 イ均等非侵害について原告は,予備的に均等侵害を主張する。しかしながら,構成要件4Hの「当接するストッパ」は,拒絶理由通知に対する手続補正書において,原告が,原告発明4の進歩性を主張すべく追加された事項であり,意見書(乙52)においても,隔壁の小径のなべ側面と大径の円筒部の底という2つの面でストッパの位置決めをすることが公知文献との差異を決定付ける特徴的部分として主張されている。このような経過に照らせば,「当接するストッパ」を有しない構成を原告が意識的に除外したことは明らかである。また,隔壁の小径のなべ側面と,大径の円筒部の底の2面によってストッパの位置決めがされることは原告発明4の特徴的部分であるか するストッパ」を有しない構成を原告が意識的に除外したことは明らかである。また,隔壁の小径のなべ側面と,大径の円筒部の底の2面によってストッパの位置決めがされることは原告発明4の特徴的部分であるから,ストッパが大径の円筒部の底に当接することは,原告発明4の本質的部分である。 したがって,均等の第5要件及び第1要件をいずれも具備しないから, 均等論を適用する余地はない。 ウ以上によれば,被告製品1は,原告発明4の技術的範囲に属しない。 差止め及び廃棄請求の必要性)について[原告の主張]ア被告は,各被告製品について設計変更を実施したと主張するが,遮断弁には高度の信頼性が求められるため,設計変更をした遮断弁を顧客(ガスメータメーカー)に納品するためには,顧客から設計変更についての承認を得る必要がある。設計変更後の被告の製品は,原告発明1の技術的範囲に属する各被告製品と比して,製品の信頼性が明らかに後退しているのであって,そのような設計変更を顧客が承認したとはにわかに考え難い。設計変更につき顧客が承認しなければ,被告は,設計変更前の各被告製品の販売を継続せざるを得ないところ,被告は,設計変更につき顧客から承認を受けたことを示す証拠を提出していない。さらに,被告は,中国で各被告製品の部品在庫が全て廃棄されたことを示す証拠についても提出していない。 しかも,被告は,各被告製品が原告発明1の技術的範囲に属さないと終始争っているのであるから,設計変更のいかんにかかわらず,少なくとも侵害のおそれを肯定することはでき,各被告製品の差止めを求める必要性は,依然として十分認められる。 イまた,被告は,各被告製品の完成品,半製品及び各被告製品の製造に要する金型を有しているから,原告が,各被告製品の完成品,半製品及び各被 品の差止めを求める必要性は,依然として十分認められる。 イまた,被告は,各被告製品の完成品,半製品及び各被告製品の製造に要する金型を有しているから,原告が,各被告製品の完成品,半製品及び各被告製品の製造に要する金型の廃棄を求める必要性も認められる。 [被告の主張]ア被告は,各被告製品について設計変更を実施しており,これにより,設計変更後の被告の製品がいずれも原告発明1の技術的範囲に属しないことに疑いの余地はなくなった。また,被告は,各被告製品を完成品として中 国内の被告子会社から輸入し,これを日本国内で販売していたが,上記設計変更に伴い,被告子会社は,既に中国での各被告製品の製造を中止し,部品の在庫も全て廃棄した。そのため,遅くとも平成27年9月には,日本国内においても被告の保有する各被告製品の在庫がなくなり,以後,被告による各被告製品の保有及び販売は生じ得ないから,将来においても原告特許権1の侵害行為が行われるおそれは全くない。したがって,原告が求める各被告製品の販売等の差止め(請求の趣旨第1項)並びに各被告製品及びその半製品並びに各被告製品の製造に供する金型の廃棄(同第2項)を求める訴えは,いずれも訴えの利益を欠く。 イ原告は,各被告製品の製造に供する金型の廃棄を求めているが,被告はかかる金型を保有していないから,原告の廃棄請求権のうち,金型の廃棄を求める部分は理由がない。 及び被告の不当利得額)について[原告の主張]ア特許権侵害の不法行為についての原告の損害額原告は,被告による原告特許権1~4の侵害行為について,法102条2項に基づく損害額の算定を主張するから,被告が侵害行為により得た利益の額(限界利益額。侵害品の売上額×限界利益率)が原告の受けた損害の額と推定される。 各被 ~4の侵害行為について,法102条2項に基づく損害額の算定を主張するから,被告が侵害行為により得た利益の額(限界利益額。侵害品の売上額×限界利益率)が原告の受けた損害の額と推定される。 各被告製品等の譲渡数量原告特許権1の設定登録時(平成22年7月)から平成27年8月までに被告が販売した各被告製品等の譲渡数量は,下記の表のとおり,合計●(省略)●個である。 このうち平成22年7月ないし平成27年6月の各期間における被告製品2の1の販売数量は被告の主張をそのまま採用したものであるが,同期間における被告製品2の1以外の各被告製品等の販売数量は,原告 が各ガスメータメーカーに対し同期間内に販売したコントローラーの総数から,原告が当該ガスメータメーカーに対し販売した遮断弁の個数を差し引くことにより算出したものである。これは,各ガスメータメーカーに対し遮断弁を販売しているのが,原告及び被告の2社のみ(一部の製品については被告のみ)である一方,原告は,各ガスメータメーカーに対し,被告製品2の1以外の各被告製品等につき,遮断弁1個に1台が必要とされるコントローラーの全数を販売しているから,上記方法によって各被告製品等の販売数量を正確に算出できるからである。なお,平成27年7月及び同年8月における各被告製品等の販売数量は,上記の各方法によって算出した平成27年4月から6月の各被告製品等の販売数量に基づき,推定計算により算出したものである。 記●(省略)●以上各被告製品等の売上各被告製品等の単価は,被告製品1Aが●(省略)●円(消費税別。 以下同じ),被告製品2の1が●(省略)●円●(省略)●,被告製品2の2が●(省略)●円であり,4-6号及び10-16号の各遮断弁の単価は,少なくとも●(省略)●円 1Aが●(省略)●円(消費税別。 以下同じ),被告製品2の1が●(省略)●円●(省略)●,被告製品2の2が●(省略)●円であり,4-6号及び10-16号の各遮断弁の単価は,少なくとも●(省略)●円である。したがって,被告による各被告製品等の売上は,下記の表のとおり,合計●(省略)●円である。 記●(省略)●以上被告の限界利益a 被告と同様に遮断弁を製造,販売している原告において,各被告製品等についての製造コスト等を算定したところ,被告製品1Aの限界 利益率は●(省略)●%であったから,他の各被告製品等も同様であると考えられる。 したがって,各被告製品等の限界利益率は●(省略)●%であり,各被告製品等に係る被告の限界利益は,合計●(省略)●円(計算式は,●(省略)●円×●(省略)●%)である。 b この点,被告は,被告子会社からの各被告製品等の完成品の仕入原価の全額について,売上から控除されるべき変動経費であると主張する。しかし,被告子会社は,被告の完全子会社で,被告から具体的な指示を受けて各被告製品等を製造した上,その全数を被告に納入しているのであるから,被告の主張によると,本来,固定経費として控除がされない経費をも含めて変動経費として控除されることとなってしまい,不当である。そこで,侵害品の製造コストは,被告子会社における具体的な製造コストに基づき算定すべきである。また,被告と被告子会社との間には,原告特許権1~4に対する特許権侵害において,主観的関連共同性及び密接な客観的関連共同性が認められるから,被告子会社は,原告特許権1~4の侵害行為を少なくとも幇助したものとして,損害賠償義務を負担することとなる(民法719条2項参照)。したがって,各被告製品等の限界利益率は,連結による収支計 から,被告子会社は,原告特許権1~4の侵害行為を少なくとも幇助したものとして,損害賠償義務を負担することとなる(民法719条2項参照)。したがって,各被告製品等の限界利益率は,連結による収支計算で考えるべきであって,各被告製品等について,上記aで算定した●(省略)●%を下回る限界利益率が認められる余地はない。 さらに,被告は,各被告製品等を日本国内で販売するための輸入費,国内顧客への販売輸送費その他の販売経費,ガス弁専属の設計技師の人件費,その他各被告製品等の販売のために直接必要になった直接固定費も売上から控除すべきであると主張するが,かような主張は根拠を全く欠いており,認められる余地はない。 寄与率 原告発明1は,ガス遮断弁の構成要素となる構成のほぼ全部を特定し,これらの各部品の有機的かつ相互の組合せにより,製品全体として,ガス漏出防止につき高度の信頼性を実現する発明であって,隔壁の開放端につばが設けられているか否かという構成の一部に限定された発明ではない。また,原告発明1に関連するモータ式ガス遮断弁を製造,販売するメーカーは,原告及び被告の2社のみであるところ,原告が約●(省略)●割のシェアを占めている。さらに,原告発明1は,その採用する構成の信頼性が高く評価されており,この高度の信頼性は他の技術によって代替できないし,ガス漏出防止という製品の目的からも,信頼性の低い製品で代替させることは全く想定できない。 こうしたことからすると,被告は,原告特許権1を侵害しなければ,各被告製品等を製造,販売することができなかったのであり,被告が得た利益は,ほとんどそのまま,原告の受けた損害に対応する関係にある。 したがって,原告発明1の実施が各被告製品等の売上げに寄与した割合は大きく,被告の限界利益の少なくとも8割 たのであり,被告が得た利益は,ほとんどそのまま,原告の受けた損害に対応する関係にある。 したがって,原告発明1の実施が各被告製品等の売上げに寄与した割合は大きく,被告の限界利益の少なくとも8割が,被告の侵害行為と相当因果関係にある利益というべきである。 イ被告の不当利得額原告特許2及び3の各登録日は,いずれも平成21年10月16日であるところ,被告は,同日から平成22年7月10日(平成25年7月10日(同月9日付け訴えの変更申立書が郵送により裁判所へ到着した日)の3年前の日)までの間,実施料の支払をしないまま,権限なくして原告発明2及び3を実施して被告製品2を製造,販売して利益を受け,これにより,原告は実施料相当額の損害を被った。 被告の上記期間における被告製品2の販売数量は少なくとも●(省略)●個,単価は少なくとも●(省略)●円であり,原告特許権2及び3を 合わせた実施料率は被告の売上高の9%を下らない。 したがって,上記期間における被告製品2の製造,販売に係る被告の不当利得額は,少なくとも●(省略)●円(計算式は,上記期間における販売数量●(省略)●個(●(省略)●個×9/12年(平成21年10月16日~平成22年7月10日までの約9か月間))×単価●(省略)●円×実施料率9%)となるから,被告は原告に対し,少なくとも●(省略)●円の不当利得返還義務を負う。 ウまとめ上記アのとおり,被告による原告特許権1~4の侵害行為によって原告が受けた損害の額は,法102条2項に基づき,少なくとも,●(省略)●円(限界利益●(省略)●円(上記)×寄与率8割))と算定される。また,原告は,被告による特許権侵害の不法行為のために本件訴訟の提起を余儀なくされ,弁護士費用として,上記●(省略)●円の約●(省略) 界利益●(省略)●円(上記)×寄与率8割))と算定される。また,原告は,被告による特許権侵害の不法行為のために本件訴訟の提起を余儀なくされ,弁護士費用として,上記●(省略)●円の約●(省略)●%に相当する●(省略)●円を下らない額の損害を被った。したがって,原告は,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償請求権●(省略)●円(計算式は,●(省略)●円+●(省略)●円)を有しており,その一部である2億5000万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める。 これに加えて,被告は,上記イのとおり,法律上の原因に基づかずに,平成21年10月16日から平成22年7月10日までの間,原告発明2及び3を実施し,その実施料相当額●(省略)●円の利得を得たから,原告は,被告に対し,同額及びこれに対する遅延損害金の支払を求める。 [被告の主張]ア各被告製品等の平成22年7月16日以降における譲渡数量,売上高及び仕入原価は下記の各表のとおりであり,売上高の合計は●(省略)●円,仕入原価の合計は●(省略)●円である。 なお,原告は,4-6号のガスメータ用遮断弁(ただし,被告製品1´を除く。)及び10-16号のガスメータ用遮断弁についても,原告特許権1を侵害するとして各被告製品等の譲渡数量や売上高を計算しているが,これらについてはいずれも原告特許権1を侵害するものではないから,原告の主張は失当である。 記【被告製品1A】●(省略)●【被告製品1´】●(省略)●【被告製品2の1】●(省略)●【被告製品2の2】●(省略)●以上イ被告の限界利益上記アのとおり,各被告製品等の売上高の合計は●(省略)●円,仕入原価の合計は●(省略)●円であるから,原価率は●(省略)●%である。 これに ●(省略)●以上イ被告の限界利益上記アのとおり,各被告製品等の売上高の合計は●(省略)●円,仕入原価の合計は●(省略)●円であるから,原価率は●(省略)●%である。 これに対し,原告は,①各被告製品等の製造原価は,完全親子会社間の問題として,被告子会社における具体的な製造コストに基づき算定するのが相当である,②被告と被告子会社とは,不真正連帯債務として損害賠償義務を負担することとなる,と主張して,被告と被告子会社との連結による収支計算に基づいて算定された限界利益について,被告が損害賠償責任を負担するなどと主張する。 しかしながら,上記①について,単に親子会社の関係にあるという理 由で連結による収支計算に基づいて利益が算定されるということになれば,親子会社の関係にない第三者や,親子会社の関係にないため連結対象ではない関連会社に下請けさせている場合に比して,親子会社の場合には,特許権者の損害の範囲が変動することとなり,侵害行為によって生じた特許権者等の損害を適正に回復するという趣旨を逸脱する結果となりかねない。したがって,被告が被告子会社に対して各被告製品等の製造を下請けさせているという事実のみから,直ちに被告が負うべき損害賠償額を被告子会社との連結による収支計算に基づき算定すべきこととはならない(なお,被告における被告子会社からの各被告製品等の仕入原価は,4半期ごとに為替レート,原材料費その他関連事情に応じて詳細に検討し,変更されているから,何ら取引上不合理な点はない。)。 また,上記②について,被告子会社が,原告特許権1の効力が及ばない中国において,各被告製品等を製造等する行為は何ら違法でなく,不法行為の成立要件を具備しないから,被告と被告子会社が不真正連帯債務として損害賠償義務を負うという原 社が,原告特許権1の効力が及ばない中国において,各被告製品等を製造等する行為は何ら違法でなく,不法行為の成立要件を具備しないから,被告と被告子会社が不真正連帯債務として損害賠償義務を負うという原告の主張は,その前提において誤っている。 各被告製品等の限界利益を算出するに当たっては,仕入原価に加えて,その製造,販売に直接要した諸経費を控除する必要があり,具体的には,各被告製品等を完成品として被告子会社から輸入し,これを日本国内で販売するための輸入費,国内顧客への販売輸送費その他販売経費が控除される。また,ガス遮断弁という各被告製品等の特殊性から,ガス弁専属の設計技師を雇用しているのでその人件費が控除されるべきであり,その他各被告製品等の製造,販売のために直接必要になった直接固定費は控除されるべきである。これらの費用を算出するには,被告の営業秘密に係る詳細かつ膨大な資料が必要となり,証拠提出において留意を要することから,かかる資料によらずとも,各被告製品等に係る限界利益 を売上高のせいぜい25%として計算するのが相当である。 ウ推定覆滅事情(寄与率)原告発明1の技術的思想の中核をなす特徴的部分である隔壁の開放端に設けられた「つば」(構成要件1G)は,各被告製品等の隔壁開放端のごく一部をなすにすぎない。 また,設計変更前の各被告製品等(シールケースに「つば」のあるもの)とシールケースに「つば」のない設計変更後の製品とで,組立方法には全く変更がない。そして,顧客から事前に設計変更を拒否されたり設計変更後の性能上の問題を指摘されたりすることもなく,滞りなく設計変更がされ,設計変更後の製品について継続して顧客との取引が行われている。このように,上記「つば」は,各被告製品等において特段の機能を有しておらず,顧客が各 指摘されたりすることもなく,滞りなく設計変更がされ,設計変更後の製品について継続して顧客との取引が行われている。このように,上記「つば」は,各被告製品等において特段の機能を有しておらず,顧客が各被告製品等を選択する動機ともなっていない。 加えて,ガス遮断弁には「ソレノイド式」と「モータ式」があるが,両方式を併せたガス遮断弁全体では,原告と被告が市場を寡占している。 そして,各被告製品等及び原告製品がいずれも属する「モータ式」の遮断弁については,被告が,原告に先立って被告特許を出願し,先駆的に市場を開拓してきたのであって,その後に原告が参入してきたという経緯がある。 以上によれば,原告発明1は,何ら技術的な優位性がないばかりか,顧客吸引力を有しているものともいえない。各被告製品等の売上は,当該技術分野におけるパイオニアとして,長きにわたり,顧客の要求仕様に対応した種々のガス遮断弁を世に送り出し,市場を確立してきた被告の営業力及び技術的な信用力に依拠するものにほかならないのである。 したがって,各被告製品等における原告発明1の寄与は,あったとしても極めて限定されたものであり,限界利益の少なくとも90%につい て,損害の推定が覆滅されるべきである。 エ不当利得額原告は,被告製品2の販売数量が●(省略)●個で,その単価が●(省略)●円であると主張するが,全く根拠がない。また,原告発明1~4の仮想実施料率はせいぜい1~3%にとどまる。 (原告製品が被告発明の技術的範囲に属するか)について[被告の主張]ア原告製品の構成は,別紙「被告の主張に係る原告製品の構成」記載のとおりであるところ,原告製品の「薄板の筒状部10a」は,被告発明の「薄板パイプ(38)」に相当するから,原告製品は被告発明の構成要件Aを充足 の構成は,別紙「被告の主張に係る原告製品の構成」記載のとおりであるところ,原告製品の「薄板の筒状部10a」は,被告発明の「薄板パイプ(38)」に相当するから,原告製品は被告発明の構成要件Aを充足する。 イこれに対し,原告は,被告発明について,クレーム記載の構成のみではサポート要件違反となることを前提に,「薄板パイプの両端部をOリング等のシール部材で装填し固定する」という構成を付加して被告発明を限定解釈し,原告製品が同構成を有しないから非充足であると主張する。しかしながら,被告発明における「薄板パイプ(38)」の技術的意義が,①「薄板パイプ(38)」をOリング等のシール材39が装着される被シール部材(静止部材)として用いることにより,②「薄板パイプ(38)」の内部の気密を確保する点にあることは明らかであるから,被告明細書に接した当業者は,被告明細書の記載全体を参酌し,「薄板パイプ(38)」について,ステータヨーク(37)の内周面に接するような形状としてのパイプ状(筒状)の部位を有していれば足り,後端側の開口は必ずしも必要ないものと理解するのであって,被告発明がクレーム記載の構成のみではサポート要件違反となるという原告の主張には理由がなく,原告主張のような構成を付加してクレームを限定解釈すべき理由など全く存在しない。 ウまた,原告製品のケース体10を構成する「薄板の筒状部10a」とこ の筒状部10aの後端を塞ぐ「底部10b」のうち「薄板の筒状部10a」は,被告発明の「薄板パイプ」に相当する。「薄板パイプ」に相当するのは,あくまで「薄板の円筒部10a」であり,単なる付加的事項にすぎない「底部10b」を含めた「ケース体10」全体が「パイプ」形状であるか否かを論じることに意味はない。 そして,原告製品の「薄板の筒状部1 くまで「薄板の円筒部10a」であり,単なる付加的事項にすぎない「底部10b」を含めた「ケース体10」全体が「パイプ」形状であるか否かを論じることに意味はない。 そして,原告製品の「薄板の筒状部10a」にシール部材が取り付けられている以上,「薄板の筒状部10a」は,シール部材が装着される被シール部としての静止部材を提供するものであって,被告発明の「薄板パイプ」の技術的意義と何ら異なるところはない。また,薄板パイプの後端部については,ガス通路隔壁として内外を遮断するものである限り,パイプ部分とは別の部材で密閉しようと,原告製品の「ケース体10」のようにパイプ部分に一体成型されたふたで密閉しようと,パイプ部分自体が果たす技術的意義に何ら変わりはない。 [原告の主張]ア原告製品が別紙「被告の主張に係る原告製品の構成」記載の構成bを有することは否認する。被告発明の構成要件Aに対応する原告製品の構成は,「回転軸7の一端部にリードスクリュー7aを形成し,ステータユニット6の内周面に接するように,非磁性材よりなる,貫通穴がなくなべ状に成形され,開放端につばを有する薄板のケース体10を配設した正逆回転可能なモータユニット1と,」である。 イ被告発明は,クレーム記載の構成のみでは,発明本来の目的及び課題を解決するための技術的手段となっておらず,サポート要件に違反するから,被告特許を有効に解しようとするためには,「薄板パイプの幅方向の両端部をOリング等のシール材で装填し固定する」との構成を付加して限定解釈せざるを得ない。原告製品は,非磁性体材よりなる,貫通穴がなくなべ状に成形され,開放端につばを有する薄板のケース体10を具備し,ケー ス体10の開放端部にOリングが取り付けられる構成であって,被告発明の上記「薄板パイプの幅方向の ,貫通穴がなくなべ状に成形され,開放端につばを有する薄板のケース体10を具備し,ケー ス体10の開放端部にOリングが取り付けられる構成であって,被告発明の上記「薄板パイプの幅方向の両端部をOリング等のシール材で装填し固定する」構成を具備していないから,被告発明の技術的範囲に属しない。 また,被告発明の構成要件を限定解釈せずにそのまま形式的に原告製品と対比させたとしても,原告製品は,貫通穴のないなべ状に成形され開放端につばを有するケース体10を具備するものであって,被告発明の「薄板パイプ(38)」に相当する構成を具備していないから,構成要件5Aを充足しない。「パイプ」の字義及び被告明細書の段落【0005】及び【0015】の記載によれば,「薄板パイプ(38)」は,その両端が開放されていることを必須の構成と見るべきところ,原告製品の「ケース体10」は,その一端のみが開放された構成であって,被告発明の「薄板パイプ」と原告製品の「ケース体10」とは,部材として全く別個のものであるばかりか,部材に関する技術的意義も製品全体としての気密構造も全く異にする。 ⑺被告発明に係る特許の無効理由の有無)についてア甲16に基づく進歩性欠如について[原告の主張]ドイツ特許第512667号公報(甲16。以下「甲16文献」という。)には,シャフト9の下端部にスピンドル12を形成し,ステータxの内周面に接するように両端が開いた中空体からなるシール体zを配設した正逆回転可能な電動モータと,このモータのハウジング3と対向する位置に設けられた,弁座に密着する遮断機構aと,先端部が遮断機構aに固定され,スピンドル12と螺合して,上下に移動するスピンドルナット13とからなることを特徴とするモータ駆動双方向弁が記載されている(以下,甲16 ,弁座に密着する遮断機構aと,先端部が遮断機構aに固定され,スピンドル12と螺合して,上下に移動するスピンドルナット13とからなることを特徴とするモータ駆動双方向弁が記載されている(以下,甲16文献に記載された発明を「甲16発明」という。)。 被告発明と甲16発明とは,被告発明が,モータDの取付板(23)と弁体(22)との間にスプリング(24)が装着され,弁体(22)がスプリング(24)により付勢されて弁座(21)に密着する構成であるのに対し,甲16発明は,スプリングを具備していない点(以下「本件相違点2」という。)で相違し,その余の点で一致する。なお,甲16発明における「弾力性あるシール体z」は,ステータとロータとの間の電磁誘導によりロータを回転させるモータ機構に関する発明である以上,技術常識に照らして当然に「非磁性材」からなるものであるし,構成要件Aは,単に,ステータヨークの内周面に接するように非磁性材の薄板パイプを配置する構成を採用したものでしかないから,その限度で甲16発明と対比されるべきであって,被告が相違点として主張する具体的なシール機構の差異は,相違点となるものではない。 他方,甲19(特開昭61-244971号公報。以下「甲19文献」という。)には,弁装置に係る発明が記載されているところ,甲19文献には,「このばねは弁体を閉弁方向に所定付勢力にて付勢するため,弁体が閉弁位置にある際,弁体は弁座に押圧され流体の流れを確実に停止し得る構成」,すなわち,モータ駆動双方向弁において,モータの蓋体(被告発明の「取付板」に相当)と弁体との間にばね(被告発明の「スプリング」に相当)が装着され,弁体がばねにより付勢されて弁座に密着する構成が開示されている。また,甲20(特開平3-172689号公報。以下「甲 取付板」に相当)と弁体との間にばね(被告発明の「スプリング」に相当)が装着され,弁体がばねにより付勢されて弁座に密着する構成が開示されている。また,甲20(特開平3-172689号公報。以下「甲20文献」という。)には,電動式流量調節弁に係る発明が記載され,コイルスプリングが主軸の軸方向の直線運動におけるガタを抑制するためのものである旨の記載があるところ,①甲20文献の第1図において,コイルスプリングが弁体と主軸用軸受部の間に弁体をシート(弁座)に付勢する方向に圧縮されて配されていること,②甲20文献記載の発明が,エンジンの吸気系に 用いられアイドリング回転数を制御するための電動式流量調節弁に係る発明であり,動いていないときのガソリン等の燃料の流出を防ぐことができるよう高い信頼性の流体(燃料)遮断性能が要求されることに照らせば,甲20文献には,スプリングの付勢により弁体を弁座に密着させる構成を開示されているといえる。 そして,甲16発明と甲19文献又は甲20文献にそれぞれ記載されている各発明の課題は共通し,甲16発明の気密性の確保をより確実なものとするために,技術分野が同一である甲19文献又は甲20文献に開示された構成を適用して,取付板と弁体との間にスプリングを設け,スプリングの付勢により弁体が弁座により密着するよう構成する動機付けは十分に認められる一方,組合せを阻害する要因は存在しない。また,モータ駆動双方向弁(電動モータ式の流体遮断弁)において,モータの取付板と弁体との間にスプリングが装着され,弁体がばねにより付勢されて弁座に密着する構成は,甲21~24に開示されているとおり,被告特許の出願時における周知技術であった。 したがって,被告発明は,甲16発明に甲19文献又は甲20文献に記載された発明を組み されて弁座に密着する構成は,甲21~24に開示されているとおり,被告特許の出願時における周知技術であった。 したがって,被告発明は,甲16発明に甲19文献又は甲20文献に記載された発明を組み合わせることにより,また,甲16発明に原告特許の出願当時の周知技術(甲21~24)を適用することにより,当業者が容易に想到できたものであるから,進歩性を欠く。 [被告の主張]被告発明と甲16発明とは,本件相違点2に加え,ステータの内周側に中空状の部材を配設した点について,被告発明では「ロータ回転手段のステータヨークの内周面に接するように非磁性材の薄板パイプを配設した」のに対し,甲16発明では「モータのエアギャップに配置され高圧の作用のもとでステータ体xに当接する両方の側で開いた中空体から なる弾力性あるシール体zを配置した」点(以下「本件相違点1」という。)及び被告発明では先端部が弁体の保持板に固定されるのに対し,甲16発明では下側端部が弁部である点(以下「本件相違点3」という。)においても相違する。 本件相違点3については,甲16発明に周知技術を適用することにより当業者が容易に想到し得たものであることを争わない。 他方,本件相違点1に係る構成は,原告が提示した甲19文献,甲20文献のいずれにも記載されておらず,周知技術(甲19~24)としても存在しないのであって,甲16発明に甲19文献記載の発明又は甲20文献記載の発明を組み合わせ,あるいは,甲16発明に周知技術を適用したとしても,当業者が容易に想到し得るものではない。甲16発明は,「弾力性あるシール体z」の内部の気密を確保するために,「弾力性あるシール体z」そのものを自動式の高圧シール体として機能させるものであるから,「弾力性あるシール体z」であることは,高圧シ 6発明は,「弾力性あるシール体z」の内部の気密を確保するために,「弾力性あるシール体z」そのものを自動式の高圧シール体として機能させるものであるから,「弾力性あるシール体z」であることは,高圧シール体としての機能上,必要不可欠な構成である。これに対し,被告発明は,「非磁性の薄板パイプ(38)」の内部の気密を確保することを目的とする点で甲16発明と同様であるが,そのための手段として「非磁性の薄板パイプ(38)」を用いるものである。このように,甲16発明と被告発明とは,内部の気密を確保するという点では共通するが,それを実現するための手段や機序が全く異なり,技術的思想として全く異なるのである。 さらに,本件相違点2に係る構成についても,甲16発明に甲19文献又は甲20文献を組み合わせ,あるいは,甲16発明に周知技術を適用したとして,当業者が容易に想到し得るものとはいえない。甲16発明は,巨大な高圧設備用の大型高圧弁に関するもので,このような重量のある構造体を付勢するには巨大なスプリングが必要であって,およそ 現実的ではないから,甲16発明にいずれも小型弁に関する甲19文献や甲20文献を組み合わせ,又は小型弁に関する周知技術(甲21~24)を適用することには明らかに阻害要因がある。 イサポート要件違反について[原告の主張]被告明細書の発明の詳細な説明には,「貫通孔8とリードスクリュー5との間のシール構造では,シール材としてのOリング16は密着状態にあるリードスクリュー5が左右に移動するため,摩擦熱等による経年変化を起して,リードスクリュー5と粘着状態になってしまう。このため,流体遮断装置の負荷が増大し,緊急時におけるガス遮断に即応することができなくなる」との課題を解決するため,「非磁性材の薄板パイプをステータ て,リードスクリュー5と粘着状態になってしまう。このため,流体遮断装置の負荷が増大し,緊急時におけるガス遮断に即応することができなくなる」との課題を解決するため,「非磁性材の薄板パイプをステータヨーク内周面及び軸受保持板外周面に接するように配設し,このパイプとその幅方向の両端に嵌装したOリングと,モータの軸端部に設けたOリングとによるシール構造によって,負荷の安定と信頼性の向上を図ったモータ駆動双方向弁とそのシール構造を提供すること」を目的として,「弁体移動手段はモータの外側に設け,モータのステータヨーク内周面を非磁性材の薄板パイプで覆うとともに,このパイプの幅方向の両端部をOリング等のシール材で装填し固定したので,静止部分でのシール構造が得られるようになり,弁体移動手段との摩擦を避けることが可能となったので,Oリングの劣化により負荷が増大するという従来シール構造の問題点が解消されるため,負荷の安定性を保持できるとともに,高い信頼性を実現できる」との効果を奏する発明のみが開示され(段落【0004】,【0005】,【0015】),その実施例としては「パイプ38の両端部38a,38aと取付板23,33及びステータヨーク37,37とで包囲される空隙はOリング等のシール材39により嵌装シールされている」構成のみが開示されている。 ところが,被告発明の特許請求の範囲の記載には,「薄板パイプの幅方向の両端部をOリング等のシール材で装填し固定する」との発明に欠く事ができない事項(発明特定事項)が特定されておらず,広く,薄板パイプの幅方向の両端部がOリング等のシール材で装填・固定されていない発明をも含む記載となっている。 したがって,被告発明に係る特許請求の範囲の記載は,平成6年法律第16号による改正前の特許法(平成6年法律1 向の両端部がOリング等のシール材で装填・固定されていない発明をも含む記載となっている。 したがって,被告発明に係る特許請求の範囲の記載は,平成6年法律第16号による改正前の特許法(平成6年法律116号附則6条2項により被告特許に適用される。以下「改正前法」という。)36条5項1号のサポート要件を具備しておらず,被告特許は,改正前法123条1項3号により無効である。 [被告の主張][被告の主張]イ記載のとおり,被告発明における「薄板パイプ(38)」の技術的意義は,①「薄板パイプ(38)」をOリング等のシール材39が装着される被シール部材(静止部材)として用いることによって,②「薄板パイプ(38)」の内部の気密を確保する点にある。このことは,被告明細書の発明の詳細な説明から明らかであるから,被告発明の特許請求の範囲の記載が,薄板パイプの幅方向の両端部がOリング等のシール材で装填・固定されていない発明をも含む記載となっていることは,サポート要件に違反するものではない。 ウ構成不可欠要件違反について[原告の主張]被告発明の特許請求の範囲の記載では,「薄板パイプの幅方向の両端部をOリング等のシール材で装填し固定する」との発明に欠くことができない事項が特定されておらず,広く,薄板パイプの幅方向の両端部がOリング等のシール材で装填・固定されていない発明をも含む記載となっている。 すなわち,被告発明に係る特許請求の範囲の記載には,被告発明の技術的 特徴点をなす構成のうち,薄板パイプ(38)及び取付板(23)しか記載されておらず,これらとともに発明に欠くことができない事項(発明特定事項)である取付板(33),軸受保持盤(32,32),シール材(39,39)が記載されていないのであって,このような記載のみでは,請求項に記 ,これらとともに発明に欠くことができない事項(発明特定事項)である取付板(33),軸受保持盤(32,32),シール材(39,39)が記載されていないのであって,このような記載のみでは,請求項に記載された事項に基づいて特許を受けようとする発明が明確に把握できず,「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項」が記載されたものとはいえない。 したがって,被告明細書の特許請求の範囲の記載は,改正前法36条5項2号の構成不可欠要件を具備しておらず,被告特許は,改正前法123条1項3号により無効である。 [被告の主張]記載のとおり,「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項」は,被告発明に係る特許請求の範囲の記載から明確に把握できるから,被告発明に構成不可欠要件違反は存在しない。 ⑻本件訂正により被告発明に係る特許の無効理由が解消したか)について[被告の主張]ア被告訂正発明が進歩性を有すること被告訂正発明と甲16発明との相違点は,本件相違点2及び3のほか,ステータの内周側に配設した中空状の部材について,被告訂正発明では,「ロータ回転手段のステータヨークの内周面に接するように配置され,Oリング等のシール材と共に内部の気密を確保するシール構造をなし,当該シール材が嵌装される静止部分となる非磁性材の薄板パイプ(38)」であるのに対し,甲16発明では,「モータのエアギャップに配置され高圧の作用のもとでステータ体xに当接する両方の側で開いた中 空体からなる弾力性あるシール体z」である点(以下「本件相違点1´」という。),被告訂正発明は「ガス遮断装置に用いられるモータ駆動双方向弁」であるのに対し,甲16発明は「高圧設備(高圧蒸気ボイラー,高圧蒸気タービンなど)用のモータが遮断機構を駆動す 件相違点1´」という。),被告訂正発明は「ガス遮断装置に用いられるモータ駆動双方向弁」であるのに対し,甲16発明は「高圧設備(高圧蒸気ボイラー,高圧蒸気タービンなど)用のモータが遮断機構を駆動する高圧遮断弁」である点(以下「本件相違点4」という。)である。なお,本件相違点1´は,本件訂正に伴って本件相違点1が修正されたもの,本件相違点4は,本件訂正に伴って新たに生じたものである。 本件相違点1´について,被告訂正発明の「薄板パイプ」が,「Oリング等のシール材と共に内部の気密を確保するシール構造をなし,当該シール材が嵌装される静止部分となる非磁性材の薄板パイプ」であることは明確である。また,被告訂正発明の「薄板パイプ」は,Oリング等のシール材39が装着される被シール部材(静止部材)として機能するかどうかという点において甲16発明とは明らかに相違している。被告訂正発明の「薄板パイプ」は,被シール部材として機能するものであるから,Oリング等のシール材39を介して外力が作用しても容易に変形しないことが不可欠で,剛性の高い部材を用いることが当然の前提であって,変形自在な弾性部材を用いることなどおよそ想定し得ない。さらに,甲16発明は「高圧設備(高圧蒸気ボイラー,高圧蒸気タービンなど)用のモータが遮断機構を駆動する高圧遮断弁」であり,それ自体がシール材である「弾力性あるシール体z」がどのような方法で装着されるのか不明であるし,組立方法の点でも被告訂正発明と甲16発明には技術的に根本的な相違がある。 また,本件相違点4について,甲16発明は大型高圧弁に関するもので,「ガス遮断装置に用いられるモータ駆動双方向弁」に関する被告訂正発明とは技術分野が全く異なるばかりか,採用される具体的な構造も大きく相違するのであって,甲16発明から「ガス遮断 圧弁に関するもので,「ガス遮断装置に用いられるモータ駆動双方向弁」に関する被告訂正発明とは技術分野が全く異なるばかりか,採用される具体的な構造も大きく相違するのであって,甲16発明から「ガス遮断装置に用いられ るモータ駆動双方向弁」に関する構成を容易に想到することはできない。 さらに,本件相違点2については,のとおり,甲16発明にいずれも小型弁に関する甲19文献や甲20文献を組み合わせ,又は小型弁に関する周知技術(甲21~24)を適用することには明らかに阻害要因があり,当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 以上のとおり,被告訂正発明は,少なくとも相違点1´,2及び4について,甲16発明等に基づいて当業者が容易に想到し得るものではないから,被告訂正発明につき進歩性欠如の無効理由は存在しない。 イ被告訂正発明にサポート要件違反がないこと被告明細書の全体的な記載に照らせば,被告訂正発明は,従来のシール構造の問題点を解消する「静止部分でのシール構造」に着目したものであり,薄板パイプの「両端」に「2個」のシール部材を装着した実施例の記載事項から,①ロータ回転手段(34)のステータヨーク(37)の内周面に接するように配置し,②Oリング等のシール材と共に内部の気密を確保するシール構造をなし,③当該シール材が嵌装される静止部分とするといった技術的事項をひとまとまりの技術思想として導き出すことは極めて合理的である。 そもそも,被告明細書の実施例として,薄板パイプの「両端」を開口した構成を記載したのは,もっぱら,薄板パイプの後端側に外部操作手段を設けることを意識したからにすぎない。被告訂正発明において,薄板パイプは,内部の気密を確保するものであれば足りるのであり,その具体的なシール構造を問うものではない。原告の主張 後端側に外部操作手段を設けることを意識したからにすぎない。被告訂正発明において,薄板パイプは,内部の気密を確保するものであれば足りるのであり,その具体的なシール構造を問うものではない。原告の主張は,被告訂正発明の発明特定事項でない【発明が解決しようとする課題】や【発明の効果】等の欄に記載されているにすぎない「両端部」等の表現を,特許請求の範囲に取り込んで限定するもので,適切ではない。 以上のとおり,被告訂正発明は,何らサポート要件に違反するものではない。 ウ被告訂正発明に構成不可欠要件違反がないこと被告発明につき構成不可欠要件違反の無効事由が存在しないことについては,上記⑺ウ[被告の主張]のとおりである。 エ原告製品が被告訂正発明の技術的範囲に属すること原告製品の構成は,別紙「被告の主張に係る原告製品の構成」記載のとおりであるところ,原告製品の構成のうち「回転軸7」,「リードスクリュー7a」,「ステータユニット6」,「薄板の筒状部10a」,「Oリング」及び「モータユニット1」は,それぞれ,被告訂正発明の「回転軸(28)」,「リードスクリュー(28a)」,「ステータヨーク(37)」,「薄板パイプ(38)」,「Oリング等のシール材」及び「モータD」に相当する。また,原告製品の「薄板の筒状部10a」は,「Oリング等のシール材と共に内部の気密を確保するシール構造をなし,当該シール材が嵌装される静止部分となる」ものである。 したがって,原告製品は,被告訂正発明の構成要件Bを充足し,被告訂正発明の技術的範囲に属する。 [原告の主張]ア上記⑺ア~ウの各[原告の主張]記載のとおり,被告特許には進歩性欠如,サポート要件違反及び構成不可欠要件違反の各無効理由がある。そして,これらの各無効理由は,以下の本件訂正に [原告の主張]ア上記⑺ア~ウの各[原告の主張]記載のとおり,被告特許には進歩性欠如,サポート要件違反及び構成不可欠要件違反の各無効理由がある。そして,これらの各無効理由は,以下の本件訂正によっても解消されていない。 進歩性欠如について甲16発明と被告訂正発明との相違点は,本件相違点2(スプリングの有無)のみであって,被告が甲16発明との相違点と主張する本件相違点1´及び本件相違点4は相違点となるものでない。 すなわち,本件相違点1´について,被告訂正発明の「薄板パイプ」には,単に薄板のパイプであるという以外に特段の技術的意義を認めることができないのであって,甲16発明の「弾力性あるシール体z」が,別個の部材である「薄板パイプ」と「シール材」からなるか一部材からなるかは,上記技術的意義に照らしても,実質的な相違点となるものではない(なお,仮に本件相違点1´が甲16発明との相違点であるとしても,当業者において容易に想到し得たものである。)。また,本件相違点4について,被告訂正発明と甲16発明の特許分類は,いずれもモータ駆動による弁であって,両者は技術分野が同一である。甲16文献には,大型設備に搭載する遮断弁等の限定的な記載はなく,被告訂正発明に係る明細書にも,遮断弁のサイズ等についての限定はない上,大型設備であっても,流体を遮断するために用いられる「遮断弁」は,ごく小型のものでしかない。したがって,遮断弁が搭載される設備が大型であるか否か,ガスが高圧,中圧あるいは低圧であるかは,「遮断弁」の発明である被告訂正発明と甲16発明との対比において相違点となるものではない(なお,仮に本件相違点4が甲16発明との相違点であるとしても,当業者において容易に想到し得たものである。)。 そして,本件相違点2については 明と甲16発明との対比において相違点となるものではない(なお,仮に本件相違点4が甲16発明との相違点であるとしても,当業者において容易に想到し得たものである。)。 そして,本件相違点2については,前記⑺ア[原告の主張]のとおり,被告訂正発明は,甲16発明に甲19文献又は甲20文献に記載された発明を組み合わせることにより,また,甲16発明に被告特許の出願当時の周知技術(甲21~24)を適用することにより,当業者が容易に想到できたものであるから,被告訂正発明には進歩性が認められない。 本件訂正は,明細書の発明の詳細な説明及び図面を訂正するものではなく,特許請求の範囲の記載のみを訂正するものであるから,上記⑺イ[原告の主張]は,被告訂正発明にもそのまま妥当する。 すなわち,本件訂正に係る訂正請求書に添付した訂正明細書(乙54。 以下「被告訂正明細書」という。)の記載(段落番号【0005】,【0007】,【0010】,【0014】,【0015】及び【図1】)には,いずれも,被告訂正発明が,両端が開放された薄板パイプの幅方向の両端部でシールする構成を具備する発明であることが明確に示されており,あるいは前後の文脈からも,薄板パイプの両端に形成される「隙間」をシールする構成であることを当然の前提とした記載であることを容易に理解することができる。このように被告訂正明細書の発明の詳細な説明及び図面には,両端が開放された「薄板パイプ(38)」の幅方向の両端部をOリング等のシール材でシールする発明のみが開示されているのに対し,被告訂正発明の特許請求の範囲の記載には,広く,薄板パイプの幅方向の両端部がOリング等のシール材で装填・固定されていない発明をも含む記載がある。 被告訂正発明の特許請求の範囲の記載は,両端が開放された薄板パイ 許請求の範囲の記載には,広く,薄板パイプの幅方向の両端部がOリング等のシール材で装填・固定されていない発明をも含む記載がある。 被告訂正発明の特許請求の範囲の記載は,両端が開放された薄板パイプに対し,シール材を具体的にどのように装着するのかを発明特定事項として明らかにしておらず,同発明の技術的意義を支えるに足るシール構造の具体的な特定がされていない。また,本件訂正により,被告訂正発明の特許請求の範囲には,「当該シール材が嵌装される静止部分」という文言が追加されているが,他方,Oリング等のシール材を嵌装する空間につき,具体的に「薄板パイプ38の両端縁においてモータの取付板23,33及びステータヨーク37,37とにより包囲される隙間」と特定していないのであって,抽象的に「静止部分」と定めているにすぎない。 したがって,被告訂正発明について「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項」が記載されているとはいえず,本件訂正前の被告特許に比しても,より明確に構成不可欠要件違反が認められる。 イ原告製品が被告訂正発明の技術的範囲に属しないこと 原告製品が被告発明の技術的範囲に属しない[原告の主張]記載のとおりであるから,特許請求の範囲を減縮した被告訂正発明についても,原告製品がその技術的範囲に属することになるはずがない。 ⑼ 争点⑼(被告の損害額及び原告の不当利得額)について[被告の主張]原告製品の販売数量,単価(税抜)及び売上高は,下記の表1及び表2の該当欄記載のとおりである。また,平成22年12月2日から平成23年9月10日までの間の売上についての変動費及び限界利益は,下記の表2の該当欄記載のとおりである。 記【表1】●(省略)●【表2】 ●(省略)●以上被告は, から平成23年9月10日までの間の売上についての変動費及び限界利益は,下記の表2の該当欄記載のとおりである。 記【表1】●(省略)●【表2】 ●(省略)●以上被告は,原告による被告特許権の侵害行為のうち,平成22年12月2日(反訴提起日《判決注:原告は「反訴状が原告に送達された日」とするが(第26準備書面2頁など),反訴状の原告への送達日は同月6日であることから,「反訴提起日」の誤記と認める。》である平成25年12月2日からさかのぼって3年前の日)から平成23年9月10日(被告特許の存続期間の満了日)までに行われたものについて,特許権侵害の不法行為に基づき損害賠償を求めるものであり,被告の損害額は,法102条2項により,原告による特許権侵害行為によって原告が得た利益の額と推定される。 また,平成22年12月1日以前に原告が製造,販売等を行った原告製品については,被告は,原告に対し,民法703条に基づき,原告の 不当利得額について不当利得返還請求権を有する。 イ法102条2項に基づく損害額(平成22年12月2日~平成23年9月10日)寄与率被告特許は,モータ駆動式のガス遮断装置に隔壁を採用した先駆的な基本特許であり,被告特許の公開後,原告製品を含めたモータ駆動式ガス遮断弁の構成が,従来のソレノイド駆動式からモータ駆動式へと変更され,これらはいずれも被告特許において開示された構成を具備している。このように,被告特許は,モータ駆動双方向弁の基本構造そのものに係る基本特許であり,代替技術が存在しない(これに対し,原告特許1~4は,いずれも被告特許の改良特許にすぎず,しかも,その特徴的部分は隔壁の開放端に設けられた「つば」にすぎない。)。 したがって,原告製品に対する被告特許の寄与は 在しない(これに対し,原告特許1~4は,いずれも被告特許の改良特許にすぎず,しかも,その特徴的部分は隔壁の開放端に設けられた「つば」にすぎない。)。 したがって,原告製品に対する被告特許の寄与は80%を下らない。 被告特許が共有特許であることによる控除被告特許は被告と愛知時計電機株式会社(以下「愛知時計」という。)との共有に係るものであるところ,知的財産高等裁判所平成22年4月28日判決が判示するとおり,法102条2項による損害額は,特許権の共有持分ではなく実施の程度の比に応じて算定される。そして,特許を実施していない共有者であっても,法102条3項に定める実施料相当額の損害賠償請求を行うことはできるから,法102条2項に基づく損害額の算定においては,共有者の法102条3項に基づく損害賠償に相当する部分が控除されるべきである。 本件において,愛知時計は,被告特許を自ら実施しておらず,他者に対する実施許諾も行っていないから,法102条2項に基づく損害賠償を請求できないが,法102条3項に定める実施料相当額の損害賠償請求を行うことは可能であり,被告特許の基本特許としての位置付けに鑑 みればその実施料率が5%を下ることはあり得ない。 したがって,愛知時計が法102条3項に基づいて原告に請求し得る損害賠償額は,●(省略)●円(計算式は,●(省略)●円(平成22年12月2日から平成23年9月10日までの間における原告製品の売上高)×5%(実施料率)×0.5(被告特許の共有持分))となり,これを被告の損害額から控除すべきである。 そして,上記アのとおり,平成22年12月2日から平成23年9月10日までの期間における原告製品の限界利益は●(省略)●円であるから,同期間における被告の損害額は,●(省略)●円(計算式は,● そして,上記アのとおり,平成22年12月2日から平成23年9月10日までの期間における原告製品の限界利益は●(省略)●円であるから,同期間における被告の損害額は,●(省略)●円(計算式は,●(省略)●円✕80%(被告特許の寄与度)●(省略)●円(愛知時計が原告に請求し得る損害賠償請求権の額)となる。 ウ原告の不当利得額(平成16年~平成22年12月1日)法102条3項の適用場面においては,当業界における正常な取引における実施料率よりも高い実施料率が認定されるべきであり,不当利得返還請求における返還額の認定の場面においても,法102条3項の立法趣旨や特許権侵害における侵害者の立場を斟酌し,通常取引における当業界の実施料率よりも高い実施料率を認定することが妥当である。これに加えて,被告特許がモータ駆動双方向弁の基本構造そのものに係る基本特許であることに照らせば,特許侵害において認定されるべき被告特許の実施料率が5%を下ることはあり得ない。また,不当利得返還請求の場面であることから,共有特許権者である愛知時計と前記金額を2分の1ずつ按分することが相当である。 そして,上記アのとおり,平成16年から平成22年12月1日までの期間における原告製品の売上は,●(省略)●円であるから,同期間における原告の不当利得額は,●(省略)●円(計算式は,●(省略)●円×5%(被告特許の実施料率)×0.5(被告の被告特許の共有持分)を下 らない。 エまとめ上記イ及びウのとおり,原告による被告特許権の侵害行為によって被告が受けた損害額及び不当利得返還請求権に基づく返還額は,合計●(省略)●円(計算式は,●(省略)●円+●(省略)●円)と算定される。さらに,本件反訴請求訴訟は専門性が高く,弁護士及び弁理士が代理しなければ訴訟 額及び不当利得返還請求権に基づく返還額は,合計●(省略)●円(計算式は,●(省略)●円+●(省略)●円)と算定される。さらに,本件反訴請求訴訟は専門性が高く,弁護士及び弁理士が代理しなければ訴訟追行が不可能であったことに加え,本件事案の内容,被告が被った損害内容,本件訴訟に至る経過等を総合的に斟酌すれば,原告による被告特許権の侵害行為と因果関係のある弁護士費用等は,1500万円を下らない。 よって,被告は,原告に対し,上記損害賠償請求権及び不当利得返還請求権合計●(省略)●円(計算式は,●(省略)●円+●(省略)●円)の一部である5000万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める。 [原告の主張]ア原告製品の販売数量,単価(税抜)及び売上高が,上記[被告の主張]アの表1及び表2記載のとおりであること,平成22年12月2日から平成23年9月10日までの間の売上についての変動費及び限界利益は,上記[被告の主張]アの表2記載のとおりであることは,いずれも認める。 イ法102条2項に基づく損害額(平成22年12月2日~平成23年9月10日)寄与率ガス遮断弁は,各部品が有機的に組み合わさることによって,製品全体として高度のガス漏出防止を確保するものであるから,具体的なシール構造の構成が,製品の安全性の確保のために重要である。しかし,被告訂正発明は,シール構造につき,「ロータ回転手段(34)のステー タヨーク(37)の内周面に接するように配置され,Oリング等のシール材と共に内部の気密を確保するシール構造」としか定めておらず,ガス遮断弁のシール構造の構成のごく一部を定めたものでしかない。 また,被告訂正発明の技術的意義である可動部分と静止部分との間のシールに代えて,弁体とモータの間の取付板(静止部分)と 定めておらず,ガス遮断弁のシール構造の構成のごく一部を定めたものでしかない。 また,被告訂正発明の技術的意義である可動部分と静止部分との間のシールに代えて,弁体とモータの間の取付板(静止部分)と薄板パイプ(静止部分)との間のシールを行うことにより,静止部分でのシール構造を得るという点は,甲16発明において既に課題として認識され解決されていたものにすぎない。 さらに,日本国内においてモータ式ガス遮断弁を製造,販売するメーカーは原告及び被告のみであるところ,原告製品が長年にわたって約●(省略)●割ものシェアを占めているのであって,これは原告が製造,販売する製品の信用力に基づくものである。そうすると,原告製品が被告訂正発明の技術的範囲に属していなければ,被告が原告に代わって発注を受けることができたという関係を認めることはできない。 このように,仮に原告製品が被告訂正発明の構成を備えているとしても,このことは,原告製品の販売にほとんど寄与しておらず,原告の侵害行為と相当因果関係にあるのは,原告製品の限界利益の2割にすぎない。 被告特許が共有特許であることによる控除被告は,愛知時計と共に被告特許権を持分2分の1ずつで共有し,愛知時計も,●(省略)●を搭載したガスメータを製造,販売して,被告特許権を自己実施している。したがって,本件においては,共有持分に応じて損害額を算定するのが相当であって,法102条2項に基づき被告が原告に対して請求できるのは,共有持分割合である2分の1で按分した額にすぎない。 そして,上記アのとおり,平成22年12月2日から平成23年9月 10日までの期間における原告製品の限界利益は●(省略)●円であるから,同期間における被告の損害額は,●(省略)●円(計算式は,●(省略)●円×20%(被告 月2日から平成23年9月 10日までの期間における原告製品の限界利益は●(省略)●円であるから,同期間における被告の損害額は,●(省略)●円(計算式は,●(省略)●円×20%(被告特許の寄与度)×0.5(被告特許権についての被告の共有持分割合))となる。 ウ原告の不当利得額(平成16年~平成22年12月1日)占める被告発明の意義は僅少なものでしかなく,被告特許の実施料率はたかだか2%にすぎない。 そして,上記アのとおり,平成16年から平成22年12月1日までの期間における原告製品の売上は,●(省略)●円であるから,同期間における原告の不当利得額(被告の損失額)は,●(省略)●円(計算式は,●(省略)●円×2%(被告特許の実施料率)×0.5(被告の被告特許の共有持分))である。 エまとめ上記イ及びウのとおり,被告特許権の侵害の不法行為による被告の損害額及び原告の不当利得額は,合計●(省略)●円(計算式は,●(省略)●円+●(省略)●円)にすぎない。 第3 当裁判所の判断 (各被告製品が原告発明1の技術的範囲に属するか)について各被告製品が原告発明1の構成要件1G以外の構成要件を充足することは当事者間に争いがない。 構成要件1Gは,「前記隔壁は,開放端につばを有し,前記つばを前記シール部材と共に前記取り付け板段差部に挿入して構成した」というものである。 原告明細書1には,次の各記載がある。 ア 【従来の技術】として,「ガス事故を未然に防ぐため,従来より種種の安全装置が利用されており, 中でもガスメータに内蔵され流量センサによりガスの流量を監視しマイクロコンピュータによりガスの使用状態を異常使用と判断した場合や,地震センサ,ガス圧力センサ,ガス警報器,一酸化炭素センサなどの 中でもガスメータに内蔵され流量センサによりガスの流量を監視しマイクロコンピュータによりガスの使用状態を異常使用と判断した場合や,地震センサ,ガス圧力センサ,ガス警報器,一酸化炭素センサなどのセンサの状況を監視し危険状態と判断した場合は,ガスメータに内蔵された遮断弁によりガスを遮断する電池電源によるマイクロコンピュータ搭載ガス遮断装置内蔵ガスメータ(以下マイコンメータと省略する)は,安全性,ガス配管の容易性,低価格等の優位性のため,普及が促進され,近年ほぼ全世帯普及が実施されるに至っている。また,流量センサによって計測されたガス流量情報を電話回線などを利用して集中監視するテレメータ機能を有した,集中監視型マイコンメータの比率も増加し,ますます,情報端末として利便性の向上が求められている。この集中監視型マイコンメータなどにおいては,簡単な電気スイッチ操作や電話回線などによる遠隔操作でガスの遮断,復帰が可能なよう,マイコンメータに搭載した電池による電気エネルギーでガス遮断もガス復帰も可能で開弁状態と閉弁状態の保持はエネルギーを必要としない遮断弁が要求されている。」(段落【0002】)イ 【発明が解決しようとする課題】として,「この種の遮断弁は,ガスメータに取り付けられた場合ケーシング8の外側が空気側になり,ガスメータが屋外に設置された場合,高い湿度やオゾン,温度変化などの過酷な環境にさらされることになる。そして,その中で,ガスメータの使用期間(一般に10年間)中特にメンテナンスしなくても,ガス漏れなどが発生しない高い信頼性が要求されている。」(段落【0008】)「上記の従来の遮断弁では,弾性シール部材8を段付きフランジ2と平板フランジ7とでスラスト方向に挟み込んでいて,弾性シール部材8の圧縮率は段付フランジ2の段深さに頼 いる。」(段落【0008】)「上記の従来の遮断弁では,弾性シール部材8を段付きフランジ2と平板フランジ7とでスラスト方向に挟み込んでいて,弾性シール部材8の圧縮率は段付フランジ2の段深さに頼っているが,段付きフランジ2と平板フランジ7とが充分にかしめられていることが前提になっている。しかしな がら,かしめ工法においては時にかしめ前の加圧が不充分で,かしめ部に隙間が生じることがあり,このとき従来の遮断弁のように弾性シール部材8がスラスト方向に圧縮されている場合は圧縮率が不充分になり,長期間の使用中に気密性が劣化してくることがあるという課題を有していた。」(段落【0009】)「また,かしめ部は母材が大きく変形されるため,かしめ時に表面処理膜が剥離したり,ひび割れている場合が多く,さらには,段付きフランジ2と平板フランジ7との接触部などは水分が残存しやすく,長期の使用中に段付きフランジ2と平板フランジ7とのかしめ部や接触部が腐食して,段付フランジ2から平板フランジ7が浮き上がり,弾性シール部材8の圧縮率が不充分になり,長期間の使用中に気密性が劣化してくることがあるという課題を有していた。」(段落【0010】)「また,弾性シール部材8と合成樹脂製のアウターブッシュ3とケーシング6とを,同時に段付きフランジ2と平板フランジ7とで挟み込んでいるため,温度変化によるアウターブッシュ3の膨張収縮で段付きフランジ2と平板フランジ7とのかしめが緩み弾性シール部材8の圧縮率が不充分になったり,アウターブッシュ3が径方向に膨張して弾性シール部材8を過圧縮状態にして圧縮永久ひずみを促進し,長期間の使用中に気密性が劣化してくることがあるという課題を有していた。」(段落【0011】)ウ 【課題を解決するための手段】として「本発明 ル部材8を過圧縮状態にして圧縮永久ひずみを促進し,長期間の使用中に気密性が劣化してくることがあるという課題を有していた。」(段落【0011】)ウ 【課題を解決するための手段】として「本発明は上記課題を解決するために,貫通穴のないなべ状に成形された剛体性の隔壁と,流体室に取り付け可能でこの隔壁の円筒部外径より若干大きな内径の円筒状段差部を形成された剛体性の取り付け板と,この隔壁の円筒部外周とこの取り付け板段差部内周との間に円周方向に圧縮して弾性体製のシール部材を配したものである。」(段落【0013】)「このため,シール部材の圧縮率は剛体製の隔壁の円筒部外径と剛体製の 取り付け板の段差部内径で決定され,隔壁と取り付け板の軸方向の位置の微小な変動にはほとんど影響されない。そして,組立時にかしめ部の隙間発生などによる隔壁と取り付け板との若干の軸方向の位置ずれが発生した場合や,長期間使用している間に腐食や熱膨張などによって隔壁と取り付け板との固着のゆるみなどが発生した場合でも,シール部材の圧縮率はほとんど影響を受けず,気密性に関して高い信頼性を持った遮断弁を提供することができる。」(段落【0014】)エ 【発明の実施の形態】として「本発明の遮断弁は,励磁コイルを有するステータと,前記ステータの内側に同軸に配設され貫通穴のないなべ状に成形された剛体性の隔壁と,流体室に取り付け可能で前記隔壁の円筒部外径より若干大きな内径の円筒状段差部を形成された剛体性の取り付け板と,前記隔壁の円筒部外周と前記取り付け板段差部内周との間に円周方向に圧縮されて配設された弾性体製のシール部材と,前記隔壁の内側に前記ステータに対向して配設されたロータと,前記ロータの回転軸に配設された弁機構とで構成され,前記隔壁は,開放端につばを有し,前記 方向に圧縮されて配設された弾性体製のシール部材と,前記隔壁の内側に前記ステータに対向して配設されたロータと,前記ロータの回転軸に配設された弁機構とで構成され,前記隔壁は,開放端につばを有し,前記つばを前記シール部材と共に前記取り付け板段差部に挿入して構成されたものである。」(段落【0021】)「そして,シール部材の圧縮率は剛体製の隔壁の円筒部外径と剛体製の取り付け板段差部内径で決定され,隔壁と取り付け板の軸方向の位置の微小な変動にはほとんど影響ず,組立時にかしめ部の隙間発生などによる隔壁と取り付け板との若干の軸方向の位置ずれが発生した場合や,長期間使用している間に腐食や熱膨張などによって隔壁と取り付け板との固着のゆるみなどが発生した場合でも,シール部材の圧縮率はほとんど影響を受けず,気密性に関して高い信頼性を持った遮断弁を提供することができる。」(段落【0022】)オ 【実施例】として, 「流体室56に取り付け可能な取り付け板57は,中央に中心孔57aと隔壁47の大径の円筒部47cの外径より若干大きな内径を持った円筒状段差部57bを形成され,外周部の2カ所に爪状の嵌合部57cを形成されている。段差部57bには隔壁47の大径の円筒部47cの端部が挿入され,ふた49の円筒部49bが中心孔57aを貫通して流体室56側に突出し,円筒部47cの外周と段差部57bの内周との間には,合成ゴム製Oリングなどの弾性体シール部材58が隔壁47の中心軸に対して円周方向に圧縮されて配されている。ふた49のつば部49cは,取り付け板57の段差部57bの底面57dと隔壁47のつば47eとに挟まれて保持されている。」(段落【0039】)「本実施例の遮断弁は,弾性体シール部材58を隔壁47の円筒部47c外周と取り付け板57段差部57b 差部57bの底面57dと隔壁47のつば47eとに挟まれて保持されている。」(段落【0039】)「本実施例の遮断弁は,弾性体シール部材58を隔壁47の円筒部47c外周と取り付け板57段差部57b内周との間に円周方向に圧縮して配しているため,シール部材58の圧縮率は隔壁47の円筒部47c外径と取り付け板57の段差部57b内径で決定され,隔壁47と取り付け板57の軸方向の位置の微小な変動にはほとんど影響されない。そして,組立時に嵌合部57cの隙間発生などによる隔壁47と取り付け板57との若干の軸方向の位置ずれが発生した場合や,長期間使用している間に腐食によって嵌合部57cがゆるみ隔壁47と取り付け板57との固着のゆるみなどが発生した場合や,ふた49のつば部49cのクリープ変形によって,取り付け板57の段差部57bの底面57dと隔壁47のつば47eとに隙間を生じた場合でも,シール部材58の圧縮率はほとんど影響を受けず,気密性に関して高い信頼性を持った遮断弁を提供することができる。」(段落【0054】)「流体室56に取り付け可能な取り付け板78は,中央に中心孔78aと隔壁の大径の円筒部47cの外径より若干大きな内径を持った円筒状段差部78bを形成され,段差部78bには隔壁47の大径の円筒部47cの 端部が挿入され,ふた74の円筒部74bが流体室56側に中心孔78aを貫通して,円筒部47cの外周と段差部78bの内周との間には,合成ゴム製Oリングなどの弾性体シール部材58が隔壁47の中心軸に対して円周方向に圧縮されて配されている。ふた74のつば部74cには,取り付け板78の段差部78bの底面78dに向かって突出した小さい突起状の寸法吸収部79が形成され,つば部74cは,取り付け板78の段差部78bの底面78dと隔壁47のつ た74のつば部74cには,取り付け板78の段差部78bの底面78dに向かって突出した小さい突起状の寸法吸収部79が形成され,つば部74cは,取り付け板78の段差部78bの底面78dと隔壁47のつば47eとに挟まれて保持されている。」(段落【0060】)カ 【発明の効果】として,「以上のように本発明によれば,貫通穴のないなべ状に成形された剛体性の隔壁と,流体室に取り付け可能でこの隔壁の円筒部外径より若干大きな内径の円筒状段差部を形成された剛体性の取り付け板と,この隔壁の円筒部外周とこの取り付け板段差部内周との間に円周方向に圧縮して弾性体製のシール部材を配したため,シール部材の圧縮率は剛体製の隔壁の円筒部外径と剛体製の取り付け板の段差部内径で決定され,隔壁と取り付け板の軸方向の位置の微小な変動にはほとんど影響されない。そして,組立時にかしめ部の隙間発生などによる隔壁と取り付け板との若干の軸方向の位置ずれが発生した場合や,長期間使用している間に腐食や熱膨張などによって隔壁と取り付け板との固着のゆるみなどが発生した場合でも,シール部材の圧縮率はほとんど影響を受けず,気密性に関して高い信頼を持った遮断弁を提供することができるといった有利な効果を有する。」(段落【0071】)アそこで検討するに,原告よれば,原告発明1は,長期の使用においてシール部材の圧縮率がほとんど変化せず,気密性に関して高い信頼性を持った遮断弁を提供することを課題とし,その課題解決手段として,構成要件1Dないし1Gの各構成を採用したもの と認められるから,原告発明1の本質は,高度の気密性を確保するための各部材の選択及び部材相互の組合せ構造,嵌着・固着構造そのものにあると解される原告明細書1の実施例においては,つばとOリングの関係を,組立手順 ら,原告発明1の本質は,高度の気密性を確保するための各部材の選択及び部材相互の組合せ構造,嵌着・固着構造そのものにあると解される原告明細書1の実施例においては,つばとOリングの関係を,組立手順によることなく構造として説明していることが認められるのであって(段落【0039】,段落【0054】,段落【0060】),Oリングと隔壁の挿入が同時に行われることやその効果について言及した記載も見当たらない。 そうすると,構成要件1Gは,物の客観的構成としての,つばとシール部材とが共に取り付け板段差部に挿入されてなる構成を意味するものと解釈するのが合理的であり,各被告製品が同構成を備えていることは明らかであるから,各被告製品は,構成要件1Gを充足し,原告発明1の技術的範囲に属すると認められる。 イこれに対し,被告は,構成要件1Gの「共に」とは,組立ての際にシール部材の押し込みによってシール部材と隔壁とを「同時に」取り付け板段差部に挿入することを意味するとして,シール部材に該当するOリングと隔壁に該当するキャンのつばとをOリングの押し込みによって「同時に」ベースフランジの段差部に挿入するものでない各被告製品については構成要件1Gを充足しないと主張する。 しかしながら,原告明細書1には,Oリングと隔壁の挿入が同時に行われることやその効果について言及した記載は見当たらず,かえって,つばとOリングとの関係を組立手順ではなく構造として説明する実施例が存在することは,上記アのとおりである。そもそも原告発明1は遮断弁に関する物の発明であるから,物(遮断弁)の組立方法によって当該物の構成が相違するものではなく,構成要件1Gの「共に」は,物の構成を組立手順によって特定したものではなく,物の客観的構成を物の状態によって特定するものと解される。この点,被告 組立方法によって当該物の構成が相違するものではなく,構成要件1Gの「共に」は,物の構成を組立手順によって特定したものではなく,物の客観的構成を物の状態によって特定するものと解される。この点,被告は,原告が,原告発明1の出願審査及 び無効審判の手続において,原告発明1について,その製造方法を限定する記載又は陳述をしたから,原告発明1は当該製造方法及びこれによる効果を有する場合に限定して解釈されるべきである旨主張するが,被告の指摘する上記記載及び陳述は,いずれも,原告発明1の構成を採用したことによる製造時の利便性や同構成によって可能となる組立方法の一形態の利便性に関する主張にすぎず,製造方法等を限定するものとは到底解することができないから,これらをもって,構成要件1Gが物の組立方法を特定したものとは認めることはできない。 したがって,被告の主張は採用することができない。 各被告製品は原告発明2,3の技術的範囲に属するか)について文言侵害の成否ア構成要件2L-2及び3N-2は,いずれも「それぞれ前記回転軸に接触するラジアル軸受部と前記ロータと当接するスラスト軸受部を有」すること,構成要件2L-3及び3N-3は,いずれも「弁開動作時に当接する前記ロータと前記スラスト軸受部との摺動抵抗に対し,弁閉状態時に当接する前記ロータと前記スラスト軸受部との摺動抵抗を大きくした」ことを規定するものである。他方,各被告製品の軸受部は,いずれもころがり軸受(ころを介して軸と軸受とのすべり摩擦をころがり摩擦に変換して摩擦を減じる軸受)である(当事者間に争いがない。)。 そこで検討するに,構成要件2L-3及び3N-3は,摺動抵抗について「前記ロータと前記スラスト軸受部との」間に生じることを規定しているところ,「摺動抵抗」が摺動 である(当事者間に争いがない。)。 そこで検討するに,構成要件2L-3及び3N-3は,摺動抵抗について「前記ロータと前記スラスト軸受部との」間に生じることを規定しているところ,「摺動抵抗」が摺動している物体間に働く動摩擦力による抵抗を意味することは技術常識であるから,上記「スラスト軸受部」が,当接するロータとの間で摺動している物体間に働く動摩擦力による抵抗(すべり摩擦)を生じることを前提とする「すべり軸受」に限定されることは明らかである。 したがって,各被告製品の軸受部である「ころがり軸受」は,構成要件2L-2及び3N-2並びに構成要件2L-3及び3N-3の「スラスト軸受部」を充足しない。 イこれに対し,原告は,「摺動抵抗」が「ロータの回転運動を阻害するトルク」を意味するにすぎず,すべり摩擦に限定されるものではないとして,各被告製品の「ころがり軸受」についても構成要件2L-2及び3N-2の「スラスト軸受部」に含まれると主張する。しかしながら,上記アのとおり,構成要件2L-3及び3N-3の記載及び技術常識に照らせば,「スラスト軸受部」にころがり軸受が含まれないことは明らかである。 均等侵害の成否ア均等侵害の要件特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても,①上記部分が特許発明の本質的部分ではなく(第1要件),②上記部分を対象製品等におけるものと置き換えても,特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって(第2要件),③上記のように置き換えることに,当業者が,対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり(第3要件),④対象製品等が,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから上記出願時に容易に推考できたも が,対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり(第3要件),④対象製品等が,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから上記出願時に容易に推考できたものではなく(第4要件),かつ,⑤対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もない(第5要件)ときは,上記対象製品等は,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である(最高裁平成10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁参照)。 イ原告明細書2及び3の記載 原告明細書2には,以下の記載がある。なお,下線部は,手続補正により加わった記載である。 a 【発明が解決しようとする課題】として,「しかしながら,従来の流体制御弁は,モータ5の出力を有効に主流路開閉弁8の開成力として利用していなかった。即ち,図7においてガス流体が主流路開閉弁8を閉成する方向に流れる場合,閉成している主流路開閉弁8を開成する時はガス流体の圧力が主流路開閉弁8を閉成するガス背圧に打ち勝って弁開する必要がある。主流路開閉弁8を弁開する時には,回転子6は主流路開閉弁8を引き上げるため,下部の軸受10に押し付けられることになる。その結果,回転子6と下部の軸受10による摩擦抵抗の影響で回転子6の回転力が有効に主流路開閉弁8の開成力として得られなかった。」(段落【0003】)b 【課題を解決するための手段】として,「本発明は上記課題を解決するために,コイルを有するステータと,前記コイルへの通電によって励磁され回転するロータと,前記ロータの回転軸と,前記ステータとロータの間に介在し前記ロータを収納してガス流路との気密性を 課題を解決するために,コイルを有するステータと,前記コイルへの通電によって励磁され回転するロータと,前記ロータの回転軸と,前記ステータとロータの間に介在し前記ロータを収納してガス流路との気密性を保持する有底筒状の気密隔壁と,前記気密隔壁の底部に設け前記回転軸の一方を受ける第2の軸受と,前記気密隔壁の開口側に挿入され前記回転軸の他方を受ける第1の軸受と,前記気密隔壁の外周に配しベース板との間で気密性を保持するシール材と,前記ロータの回転を直動に変換する変換手段と,前記変換手段を介してガス流路に配設した弁座への当接,離反により流路の開閉を行う弁体と,前記弁体を弁座側に付勢する付勢手段とを備え,前記変換手段は,回転軸に形成したねじ部と弁体側に形成したナット部の係合により回転運動を直進運動に変換し,前記第1の軸受と第2の軸受は,異なる材質を用いて構成すると共に,それぞれ前記回転軸に接触するラ ジアル軸受部と前記ロータと当接するスラスト軸受部を有し,弁開動作時に当接する前記ロータと前記スラスト軸受部との摺動抵抗に対し,弁閉状態時に当接する前記ロータと前記スラスト軸受部との摺動抵抗を大きくしたものである。」(段落【0004】)「上記発明によれば,回転軸及びロータを受ける2つの軸受の材質をそれぞれ異なる材質を用いて構成したことにより,トルクの異なる出力をもつ電動機が得られ,この電動機を開閉弁の駆動手段として用いることにより,出力を選択的に開閉弁の開成力として利用することが出来る。」(段落【0005】)c 【発明の効果】として,「本発明の流体制御弁は,コイルを有するステータと,コイルへの通電による励磁により回転するロータと,ロータの回転軸と,回転軸の一方に設けられた第1の軸受と,回転軸の他方に設けられ第1の軸受と材質を 「本発明の流体制御弁は,コイルを有するステータと,コイルへの通電による励磁により回転するロータと,ロータの回転軸と,回転軸の一方に設けられた第1の軸受と,回転軸の他方に設けられ第1の軸受と材質を異にする第2の軸受とで構成することにより,回転軸及びロータと摺動抵抗の異なる軸受となり,接触方向を選定して使用することにより,トルクの異なる電動機出力が得られ,この電動機を開閉弁の駆動手段として用いることにより,出力を選択的に開閉弁の開成力として利用することが出来る。」(段落【0006】)原告明細書3には,,bの段落【0005】及びcの各記載に加え,【課題を解決するための手段】として,以下の記載がある。な 「本発明は上記課題を解決するために,コイルを有するステータと,前記コイルへの通電によって励磁され回転するロータと,前記ロータの回転軸と,前記ステータとロータの間に介在し前記ロータを収納してガス流路との気密性を保持する有底筒状の気密隔壁と,前記気密隔壁の底部に設け前記回転軸の一方を受ける第2の軸受と,前記気密隔壁の開口側 に挿入され前記回転軸の他方を受ける第1の軸受と,前記気密隔壁の外周に配しベース板との間で気密性を保持するシール材と,前記ロータの回転を直動に変換する変換手段と,前記変換手段を介してガス流路に配設した弁座への当接,離反により流路の開閉を行う弁体と,前記ロータが回転する際に前記弁体が回転しないように規制する回転防止手段と,前記弁体を弁座側に付勢する付勢手段とを備え,前記変換手段は,回転軸に形成したねじ部と弁体側に形成したナット部の係合により回転運動を直進運動に変換し,前記回転防止手段は,前記ベース板側に設けた回転規制部を前記変換手段のナット部に作用させることで前記弁体の回転を防止する構成とし,前記第1 に形成したナット部の係合により回転運動を直進運動に変換し,前記回転防止手段は,前記ベース板側に設けた回転規制部を前記変換手段のナット部に作用させることで前記弁体の回転を防止する構成とし,前記第1の軸受と第2の軸受は,異なる材質を用いて構成すると共に,それぞれ前記回転軸に接触するラジアル軸受部と前記ロータと当接するスラスト軸受部を有し,弁開動作時に当接する前記ロータと前記スラスト軸受部との摺動抵抗に対し,弁閉状態時に当接する前記ロータと前記スラスト軸受部との摺動抵抗を大きくしたものである。」(段落【0004】)ウ原告特許2,3の出願経過前記前提事実及び証拠(甲32~35,乙21~24)によれば,原告特許2及び3の出願経過は,それぞれ次のとおりである。 原告特許2及び3の特許出願時における各特許請求の範囲の記載は,それぞれ,別紙「補正前原告特許2に係る『特許請求の範囲』」及び「補正前原告特許3に係る『特許請求の範囲』」各記載のとおりであった。 特許庁審査官は,原告特許2の出願(特願2006-179144)及び原告特許3の出願(特願2006-179145)に対し,それぞれ平成21年2月9日付け各拒絶理由通知書において,出願人たる原告に対し,これらの出願が,法29条2項により拒絶すべきものである旨 を通知した。 出願人たる原告は,上の各拒絶理由の通知を受けて,原告特許2及び3の各出願について,平成21年4月17日,原告特許2及び3の旧請求項2~4をそれぞれ削除して特許請求の範囲をいずれも旧請求項1に限定した上,原告特許2の旧請求項1を本判決添付の特許公報(第4389904号)の請求項1とし,原告特許3の旧請求項1を本判決添付の特許公報(第4389905号)の請求項1とする旨の各手続補正書(乙21,23 原告特許2の旧請求項1を本判決添付の特許公報(第4389904号)の請求項1とし,原告特許3の旧請求項1を本判決添付の特許公報(第4389905号)の請求項1とする旨の各手続補正書(乙21,23)及び各意見書(乙22,24)を提出した。なお,同手続補正書により補正された部分は,上記各特許公報の各下線部である。 原告の上記各意見書中には,次の各記載がある。 a 「『弁開閉動作時に当接する前記ロータと前記スラスト軸受部との摺動抵抗に対し,弁開閉状態時に当接する前記ロータと前記スラスト軸受部との摺動抵抗を大きくした』との補正は段落【0031】,【0035】の記載から弁開動作時と弁閉状態時におけるロータと2つのスラスト軸受部との当接の関係を規定すると共に,段落【0025】の『軸受22のスラスト軸受部24の方が,軸受19のスラスト軸受部21に比べ,ロータ16へ接触する直径が大きく,結果的に軸受22のスラスト軸受部24の方が軸受19のスラスト軸受部21に比べ,接触面積が大きく構成されている。この構成により軸受19と軸受22の摺動抵抗に差が生じるものである。』との記載から,2つの摺動抵抗に差が有る,即ち大小関係が存在していること,及び,弁開閉状態時に当接するロータ16とスラスト軸受部24との摺動抵抗を弁開動作時に当接するロータ16とスラスト軸受部21との摺動抵抗よりも大きくしている構成であることは明白であることに基づくものであります。」 b 「段落【0024】の『小さい摺動抵抗を必要とする軸受には,摺動摩擦抵抗の小さい材質を選択する。』との記載から,接触面積で摺動抵抗を変える代わりとして,本願では第1の軸受と第2の軸受けの材料を異なるように構成していることは明白であります。」c 「引用文献1には,軸受体54(本願の弁開 る。』との記載から,接触面積で摺動抵抗を変える代わりとして,本願では第1の軸受と第2の軸受けの材料を異なるように構成していることは明白であります。」c 「引用文献1には,軸受体54(本願の弁開動作時にロータが当接する方のスラスト軸受部に相当)を摩擦抵抗の小さい摺動材で形成するとの記載はありますが,スラスト軸受48(本願の弁閉状態時にロータが当接する方のスラスト軸受部に相当)と異なる材料で構成しているとの記載は無く,また,本願の様に摺動抵抗に差を設けたとの明示も無く,更に,大小の関係も明示されておりません。また,引用文献2には,2つの軸受の材料を異なるように構成した軸受構造が開示されておりますが,一方の軸受は,スラスト軸受ではなく,また,本願の様に摺動抵抗に差を設けたとの明示も無く,更に,摺動抵抗の大小の関係も明示されておりません。」d 「従いまして,引用文献1に引用文献2を適用したとしても,本願の特徴である第1の軸受と第2の軸受を,異なる材質を用いて構成すると共に,それぞれ回転軸に接触するラジアル軸受部とロータと当接するスラスト軸受部を有し,弁開動作時に当接する前記ロータと前記スラスト軸受部との摺動抵抗に対し,弁閉状態時に当接する前記ロータと前記スラスト軸受部との摺動抵抗を大きくするという構成は想到することは困難であると思料いたします。」 特許2及び3の設定登録がされた。 エ上記イのとおり,原告明細書2及び3の各記載によれば,原告発明2及び3はいずれも,主流路開閉弁を弁開するときに回転子が下部の軸受に押し付けられる結果,その摩擦抵抗によって回転子の回転力が有効に主流路 開閉弁の開成力として得られないという課題を解決するために,第1の軸受と第2の軸受を異なる材質を用いて構成するとともに,弁開動作時に当 その摩擦抵抗によって回転子の回転力が有効に主流路 開閉弁の開成力として得られないという課題を解決するために,第1の軸受と第2の軸受を異なる材質を用いて構成するとともに,弁開動作時に当接するロータとスラスト軸受部との摺動抵抗に対し,弁閉状態時に当接するロータとスラスト軸受部の摺動抵抗を大きくしたものであり,これにより,流体制御弁が回転軸及びロータと摺動抵抗の異なる軸受となり,接触方向を選定して使用することでトルクの異なる電動機出力を得て,これを選択的に開閉弁の開成力として利用することができるという効果を奏するものであるとされている。また,原告明細書2及び3の各記載と上記ウの出願経過を考慮すれば,原告発明2及び3に係るスラスト軸受の構成(ロータとの間に摺動抵抗を生じるものであること)は,進歩性欠如の拒絶理由を回避するために必要な部分であると評価すべきである。 そうすると,特許請求の範囲に記載された構成と各被告製品との相違点である構成要件2L-2及び3N-2並びに構成要件2L-3及び3N-3の「スラスト軸受部」に係る構成は,ロータとスラスト軸受部との間における摺動摩擦の存在を課題とするか否か,同摺動摩擦の程度を弁開時と弁閉時で異ならせるという課題解決原理を有するか否か,という点に係る相違であり,原告発明2及び3の各本質的部分に係るものということができる。 さらに,上記ウの出願経過に照らせば,原告は,ロータとの間に摺動抵抗を生じる軸受(すべり軸受)の構成に限定されないスラスト軸受に係る原告発明2及び3に係る特許出願当初の特許請求の範囲の記載を,進歩性欠如の拒絶理由を回避するため,あえてすべり軸受に係る構成に限定し,弁開動作時にロータと当接するスラスト軸受(第2の軸受)と弁閉状態時にロータと当接するスラスト軸受(第1の軸受 範囲の記載を,進歩性欠如の拒絶理由を回避するため,あえてすべり軸受に係る構成に限定し,弁開動作時にロータと当接するスラスト軸受(第2の軸受)と弁閉状態時にロータと当接するスラスト軸受(第1の軸受)の材料を異なるものとすることで第2の軸受よりも第1の軸受の摺動抵抗を大きくするという構成に限定したものというべきである。そうすると,原告は,各被告製品の採 用するころがり軸受の構成については,発明に係る特許請求の範囲から意識的に除外したものと認められる。 したがって,均等の第1要件(本質的部分ではないこと)及び第5要件(意識的に除外されたものでないこと)を充たさないから,各被告製品が原告発明2又は3と均等であるとは認められない。 以上によれば,各被告製品が原告発明2,3の各技術的範囲に属すると認めることはできない。 文言侵害の成否事案に鑑み,構成要件4Hの充足性から判断する。 ア構成要件4Hは,「前記第1の軸受けは,前記大径の円筒部の底に当接するストッパを備え,前記ストッパを前記隔壁の大径の円筒部のなべ側面に接しない大きさとしたことを特徴とする」ことを規定する。 他方,被告製品1の軸受Pにつき,原告は,軸受Pが,キャンの大径の円筒部の底に当接するストッパを備え,同ストッパがキャンの大径の円筒部のなべ側面に接しない大きさであることは明らかであると主張し,被告は,軸受Pの突起部はストッパとしての機能を有せず,また,同突起部はキャンの大径の円筒部の底に当接していない旨主張する。 イそこで検討するに,仮に被告製品1の軸受Pの突起部が構成要件4Hの「ストッパ」に当たるとしても,これが隔壁(キャン)の大径の円筒部の底に当接していることと認めるに足る証拠はない。かえって,被告製品1の設計寸法によれば,軸受Pの突 の軸受Pの突起部が構成要件4Hの「ストッパ」に当たるとしても,これが隔壁(キャン)の大径の円筒部の底に当接していることと認めるに足る証拠はない。かえって,被告製品1の設計寸法によれば,軸受Pの突起部と大径の円筒部の底との間に0.15ミリメートルのすきまが存在すると認められるため(弁論の全趣旨),軸受Pの突起部はキャンの大径の円筒部の底に当接しないことがうかがわれる。 これに対し,原告は,①軸受Pの突起部と大径の円筒部の底との間のす きまは,幅0.15ミリメートルであるというごく微細なものであり,軸受Pの製造時,組立時及び作動時を通じて同すきまが生じているという立証はない,②ストッパについて隔壁の大径の円筒部の底への「当接」は常に当接していることを要求するものではないから,製造時に同すきまがあっても「当接」は否定されない,③軸受Pは合成樹脂製であり,閉成動作時に生ずる圧縮の力学的作用によってすきまAの存在がなくなる可能性がある,④原告発明4で重要なのは,隔壁を二段の底を有する形状とし,小径の円筒部のなべ側面に合成樹脂製の軸受を嵌装することであり,大径の円筒部の底への当接は付随的なものにすぎないところ,被告製品1の軸受Pもキャンの小径の円筒部の底には当接している旨主張する。しかしながら,原告の主張のうち④は,「前記第1の軸受けは,前記大径の円筒部の底に当接するストッパを備え,」という構成要件4Hの記載に反するものというほかなく,また,②については,大径の円筒部の底に当接するストッパを備える構成は原告発明4の本質的部分であって,原告発明4はかかる構成を採用することにより,絞り加工の際,ストッパに当接する大径の円筒部の底によっても位置決めされることとなり,第1の軸受の取り付け精度を向上させるとの作用効果を奏するものであ ,原告発明4はかかる構成を採用することにより,絞り加工の際,ストッパに当接する大径の円筒部の底によっても位置決めされることとなり,第1の軸受の取り付け精度を向上させるとの作用効果を奏するものであるところ,製造時においてストッパと上記底との間にすきまがあれば,上記作用効果を奏することができないのであるから,いずれも到底採用することができない。さらに,上記①及び③については,いずれも,軸受Pの突起部が隔壁の大径の円筒部の底に当接している可能性を指摘するにとどまり,何らその点の立証はないのであるから(なお,この点は上記②についても同様である。),いずれも到底採用することができない。 ウしたがって,構成要件4Dについて検討するまでもなく,被告製品1は原告特許権4を文言上侵害しない。 均等侵害の成否 ア前記前提事実に証拠(甲37,乙51,52)及び弁論の全趣旨を総合すると,原告特許4の出願経過は次のとおりである。 特許庁審査官は,原告特許4の出願(平成11年特許願第369854号)に対し,平成21年7月23日付け拒絶理由通知書において,出願人たる原告に対し,同出願が法29条2項により拒絶すべきものである旨を通知した。 の拒絶理由通知を受けて,原告特許4の出願について,平成21年9月17日,請求項1及び2をそれぞれ本判決添付の特許公報(第4461539号)のとおり補正する旨の手続補正書(乙51)及び意見書(乙52)を提出した。なお,同手続補正書により補正された部分は,上記特許公報の下線部である。 a 「引用文献1における軸受保持部は絞り加工により側面部(本願の小径の円筒部のなべ側面)に環状の突出部を設けることで中央に凹部40eを形成したものであります。これに対し,本願は,第1の軸受けは,前記大径の円 献1における軸受保持部は絞り加工により側面部(本願の小径の円筒部のなべ側面)に環状の突出部を設けることで中央に凹部40eを形成したものであります。これに対し,本願は,第1の軸受けは,前記大径の円筒部の底に当接するストッパを備え,前記ストッパの外径を前記隔壁の大径の円筒部のなべ側面に接しない大きさとしたことを特徴とするもので,これにより,第1の軸受けは,嵌挿部が嵌挿される小径の円筒部のなべ側面と,ストッパが当接する大径の円筒部の底の2つの面で位置決めされることになります。この円筒部のなべ側面や大径の円筒部の底は,絞り加工の際,精度が確保できる為,第1の軸受けの取り付け精度を向上することが出来ます。」b 「引用文献1において,本願発明の大径の円筒部の底に相当するのは環状の突出部であり,平面で構成されておりませんので,例え,ストッパを設けたとしても,面と当接する本願発明に比べ取り付け精度が劣ることは明白であります。」 イ上記アの出願経過に照らせば,原告は,進歩性欠如の拒絶理由を回避するため,構成要件4Hにおいて,第1の軸受が,隔壁の大径の円筒部の底に当接するストッパを備え,同ストッパの外径を隔壁の大径の円筒部のなべ側面に接しない大きさとする構成に限定したものと認められるのであって,第1の軸受が大径の円筒部の底に当接するストッパを備えない構成については,原告発明4に係る特許請求の範囲から意識的に除外したものというべきである。 さらに,原告載,とりわけ,上記構成により,第1の軸受が,嵌挿部が嵌挿される小径の円筒部のなべ側面と,ストッパが当接する大径の円筒部の底の2つの面で位置決めされることとなるため,引用文献1に係る発明に比べて,第1の軸受の取り付け精度を向上することができる旨の記載に照らせば,第1の軸受が大径の と,ストッパが当接する大径の円筒部の底の2つの面で位置決めされることとなるため,引用文献1に係る発明に比べて,第1の軸受の取り付け精度を向上することができる旨の記載に照らせば,第1の軸受が大径の円筒部の底に当接するストッパを備えるという構成は,原告発明4の本質的部分ということができる。 そうすると,本件においては,均等の第1要件(本質的部分ではないこと)及び第5要件(意識的に除外されたものでないこと)を充たさないから,被告製品1が原告発明4と均等であるとは認められない。 以上によれば,被告製品1が原告発明4の技術的範囲に属するとは認められない。 差止め及び廃棄請求の必要性)について被告は,被告子会社において,各被告製品を原告発明1の技術的範囲に属しない構成となるよう設計変更を実施し,設計変更前の部品の在庫を全て廃棄した結果,遅くとも平成27年9月には日本国内における設計変更前の各被告製品の在庫がなくなったとし,これを前提に,被告が,同月以降,各被告製品を保有・販売していないし,今後,再び各被告製品を保有・販売する予定もないから,差止め及び廃棄請求の必要性を欠く旨主張する。 しかしながら,被告子会社において設計変更前の各被告製品の部品を全て廃棄したことを認めるに足る証拠はない上(なお,乙62の1,2,乙63の1,2,乙64,乙65によっても直ちに同事実を認めることはできない。),各被告製品の構成を設計変更前のものに戻すことが物理的に困難であるともうかがわれない。さらに,被告が,本件訴訟において,一貫して,各被告製品が原告発明1の技術的範囲に属しないと主張していることからすれば,被告において今後,各被告製品を製造,販売するおそれも十分認められる。 他方,各被告製品の製造に供する金型については,被告にお 告製品が原告発明1の技術的範囲に属しないと主張していることからすれば,被告において今後,各被告製品を製造,販売するおそれも十分認められる。 他方,各被告製品の製造に供する金型については,被告において,これを保有していると認めるに足る証拠がなのとおり,各被告製品の製造を行っているのが,被告とは別の法人格を有する被告子会社であることからすれば,被告において各被告製品の製造に供する金型を有しているとは認め難い。したがって,原告の廃棄請求のうち,各被告製品の製造に供する金型に係る廃棄請求には理由がない。 以上によれば,原告の被告に対する差止め及び廃棄の請求については,各被告製品の製造に供する金型に係る廃棄請求を除き,その必要性を肯定することができる。 及び被告の不当利得額)について原告は,被告による各被告製品等の販売等が原告特許権1~4を侵害すると主張して,不法行為に基づく損害賠償金の支払を求めるが,前記1~3のとおり,各被告製品等について,原告発明1の技術的範囲に含まれると認められる一方,原告発明2~4の技術的範囲に含まれるとは認められない。そこで,以下,各被告製品等の販売等による原告特許権1の侵害の限度で,法102条2項に基づく原告の損害額を検討する。 ア各被告製品等の譲渡数量及び売上高について被告は,各被告製品等を被告子会社から仕入れて販売しているところ,被告の主張に係る各被告製品等の譲渡数量,単価(税抜),売上高及び 仕入原価は,めると,下記の表のとおりである。そして,各被告製品等の譲渡数量等に係る上記被告の主張に不自然なところは見当たらないこと,少なくとも被告製品2の1についての譲渡数量については原告の主張とも一致している上,各被告製品等の譲渡数量,売上高及び仕入原価が被告の主張に係る る上記被告の主張に不自然なところは見当たらないこと,少なくとも被告製品2の1についての譲渡数量については原告の主張とも一致している上,各被告製品等の譲渡数量,売上高及び仕入原価が被告の主張に係る数額を上回る又は下回ると認めるに足る的確な証拠も見当たらないこと等に照らせば,上記被告の主張を採用することが相当である。 したがって,各被告製品等の売上高は,被告の主張する数額どおり,合計●(省略)●円であると認められる。 記●(省略)●以上これに対し,原告は,各被告製品等の譲渡数量が合計●(省略)●個であり,各被告製品等の売上高は合計●(省略)●円であると主張する。 しかしながら,原告は,各被告製品等の譲渡数量及び売上高が被告の主張に係る数額を上回ることについて何ら立証しない。なお,原告の主張する被告製品2の1以外の各被告製品等の譲渡数量は,原告が各ガスメータメーカーに販売したコントローラーの総数から,原告が当該ガスメータメーカーに対し販売した遮断弁の個数を差し引いた数量をもって各被告製品等の譲渡数量とするもので,それ自体正確なものとはいい難いし(同期間内に販売されたコントローラーが全て同期間内に販売されたガスメータの製造に使用されたことを認めるに足る証拠はなく,かえって,そのような事態は取引通念に照らして一般には想定しにくい。),販売期間の一部に係る譲渡数量について推定計算を行っていることや,各被告製品等の単価等についての根拠も示されていないことなども勘案すると,到底採用することはできない。 イ各被告製品等の限界利益について各被告製品等の仕入原価(再検査費用を含む。)が合計●(省略)●円であることについては,当事者間に争いがないから(第21回弁論準備手続調書),各被告製品等の限界利益は,●( 等の限界利益について各被告製品等の仕入原価(再検査費用を含む。)が合計●(省略)●円であることについては,当事者間に争いがないから(第21回弁論準備手続調書),各被告製品等の限界利益は,●(省略)●円であると認められる(計算式は,●(省略)●●(省略)●円)。 これに対し,原告は,①原告において被告製品1の限界利益率を算定したところ●(省略)●%であったから,各被告製品等の限界利益率は売上高に同率を乗じて算定すべきである,②被告が各被告製品等を自らの完全子会社である被告子会社から仕入れていること,被告と被告子会社が不真正連帯債務として損害賠償義務を負担することからすると,被告と被告子会社との連結による収支計算に基づいて限界利益率を●(省略)●%と算定すべきであると主張する。 しかしながら,上記①については,原告社員による被告製品1についての推計にすぎない上(甲42),同推計の基礎となる原価の正確性を裏付ける証拠も見当たらず,さらに,同推計が被告製品1以外の各被告製品等に妥当するという根拠も不明である。また,上記②についても,原告は,被告子会社が被告の完全子会社であると主張するのみで,各被告製品等に係る被告の被告子会社からの仕入価格が不当に高額に設定されているなどといった各被告製品等の仕入原価の適正性を疑わせる具体的な事情を何ら主張しないのであるから(さらに,連結による収支計算によった場合に限界利益率が●(省略)●%となることを認める証拠もない。),被告子会社からの仕入価格を原価として限界利益を算定することが不相当であるということはできない。したがって,原告の上記主張はいずれも採用することができない。 なお,被告は,各被告製品等の仕入原価に加えて,製造,販売に直接 要した諸経費を控除する必要があり,各 ことはできない。したがって,原告の上記主張はいずれも採用することができない。 なお,被告は,各被告製品等の仕入原価に加えて,製造,販売に直接 要した諸経費を控除する必要があり,各被告製品等の限界利益は売上高のせいぜい25%である旨主張する。しかしながら,被告は仕入原価以外の製造,販売に直接要した諸経費について,具体的な主張,立証を一切しないのであるから,被告の同主張についても採用することはできない。 ウ推定覆滅について原告は,平成22年7月16日(原告特許権1の設定登録時)から各被告製品等の販売終了までの間における被告による原告特許権1の侵害について,法102条2項による損害賠償を求めるから,特許権者である原告が受けた損害額は,上記期間における被告の限界利益額である●(省略)●円(上記)であると推定される。 そして,法102条2項の推定を覆滅できるか否かは,侵害行為によって生じた特許権者の損害を適正に回復するとの観点から,侵害品全体に対する特許発明の実施部分の価値の割合のほか,市場における代替品の存在,侵害者の営業努力,広告,独自の販売形態,ブランド等といった営業的要因や,侵害品の性能,デザイン,需要者の購買に結びつく当該特許発明以外の特徴等といった侵害品自体が有する特徴などを総合的に考慮して判断すべきである(知的財産高等裁判所平成26年12月17日判決参照)。 そこで検討するに,原告明細書1の特許請求の範囲の記載に照らすと,原告発明1は,ガス遮断弁の構成全体に関する発明であることが明らかであるから,各被告製品等においては,そのガス遮断弁の構成全体について原告発明1が実施されているというべきである。また,原告発明1は,組立時に隔壁と取り付け板との若干の軸方向の位置ずれが発生した場合や長期間使用し 告製品等においては,そのガス遮断弁の構成全体について原告発明1が実施されているというべきである。また,原告発明1は,組立時に隔壁と取り付け板との若干の軸方向の位置ずれが発生した場合や長期間使用している間に腐食や熱膨張などによって隔壁と取り付け板との固着のゆるみなどが発生した場合でも,シール部材の圧縮率は ほとんど影響を受けず,気密性に関して高い信頼性を持った遮断弁を提供することができるという効果を奏するものであって(原告明細書1の段落【0014】),このような原告発明1の作用効果に加えて,上記のとおり,各被告製品等の構成全体について原告発明1が実施されていることも併せれば,原告発明1の存在が各被告製品等についての需要者の購入意欲に大きく結びついているものと考えられる。また,原告製品と各被告製品等は,いずれもモータ式のガス遮断弁であるところ,ガス遮断弁の市場シェアについては原告と被告が2分し,寡占状態にあるから(争いのない事実),需要者にとって原告又は被告の製品以外に代替品の選択肢はほぼ存在しない(なお,ガス遮断弁全体の市場シェアについては,原告が被告よりも高い市場シェアを有しているものの,原告製品及び各被告製品等の属するモータ式遮断弁の市場においては,本件の本訴及び反訴が提起された年の前年(平成24年)に被告の大口取引先がガスメータ事業から撤退するまでの間,長らく被告は原告と拮抗する市場シェアを有していたと認められる(甲44,弁論の全趣旨)。)。 さらに,原告が我が国有数の電機メーカーであることは公知の事実であり,そのブランド力は高いと認められる。 他方,原告発明1を除く各被告製品等の性能,デザイン等のその他の特徴が需要者の購買意欲に殊更に影響していることを認めるに足る証拠はない。確かに,原告の事業規模が被告の事業 ド力は高いと認められる。 他方,原告発明1を除く各被告製品等の性能,デザイン等のその他の特徴が需要者の購買意欲に殊更に影響していることを認めるに足る証拠はない。確かに,原告の事業規模が被告の事業規模を上回るとはいえ,被告が,長年にわたって各被告製品等と同種のモータ式双方向遮断弁を含む遮断弁を市場に供給し,自ら取引先を開拓することによって,原告と拮抗するモータ式双方向遮断弁の市場シェアを確保してきたことからすると,被告の営業努力や顧客との継続的な関係性といった要素を無視することはできず,各被告製品等の売上が専ら原告発明1のみによるものとまでは認めることができない。しかしながら,このような事情を十 分に考慮しても,上記で検討した各事情に鑑みれば,大幅な推定覆滅を認めることは相当ではない。 以上によれば,法102条2項の推定に係る推定覆滅の割合については,20%と認めるのが相当である。 これに対し,被告は,①原告発明1の技術的思想の中核を成す特徴的部分が隔壁の開放端に設けられた「つば」であるところ,同部分は各被告製品等の隔壁開放端のごく一部にすぎず,原告発明1に技術的優位性はない,②被告は各被告製品等について原告特許権1を侵害しない構成に設計変更したにもかかわらず,設計変更後も設計変更前と変わらず,需要者が被告との取引を継続している,③ガス遮断弁のうち,原告製品と各被告製品等が属するモータ式のものについては,被告が先駆的に開拓してきたところに原告が参入した経緯があるとし,これらの事情からすると,各被告製品等の販売における原告発明1の寄与は極めて限定されたものであり,少なくともその90%について,法102条2項の推定が覆滅されると主張する。 しかしながら,まず,上記①につき,そもそも法102条2項は,侵害者の侵害品 発明1の寄与は極めて限定されたものであり,少なくともその90%について,法102条2項の推定が覆滅されると主張する。 しかしながら,まず,上記①につき,そもそも法102条2項は,侵害者の侵害品の販売により特許権者が侵害品の競合品を市場で販売できなかったものとして,侵害者における侵害品の売上を特許権者の損害(売上減少)と推定する規定である。したがって,法102条2項の推定を覆滅するには,侵害者において,侵害者による侵害品の売上が特許権者の売上減少との間に全面的な因果関係を有しないことを主張,立証する必要があるのであって,仮に,原告特許権1の特徴的部分が各被告製品等の構成の一部であるとか,特許権の技術的意義が小さいなどの事情があったとしても,直ちに上記推定を覆滅すべき事情ということはできず,これらの事情が購入者の購入動機にどの程度影響を与えるか(需要喚起力の有無及び程度)を侵害者において主張,立証する必要がある ところ,この点についての的確な主張,立証はない。また,上記②についても,被告が各被告製品等について原告特許権1を侵害しない構成への設計変更後に従前の顧客と取引を継続しているからといって,これが直ちに上記推定覆滅率についての判断を左右すべき事情ということはできない(設計変更後も従前の顧客と取引を継続するに際し,被告の営業努力等が寄与していることは否定できないが,推定覆滅率の判断に当たっては,このような被告の営業努力等も考慮している。 なお,被告が,各被告製品等の設計変更後も顧客との取引を継続しているとしても,上記のとおり顧客誘引力を有する原告特許権1を侵害する各被告製品等によって獲得した信用力やブランドが設計変更後の売上維持に貢献していることも十分考えられる。)。さらに,上記③について,上記のとおり,被告が各 り顧客誘引力を有する原告特許権1を侵害する各被告製品等によって獲得した信用力やブランドが設計変更後の売上維持に貢献していることも十分考えられる。)。さらに,上記③について,上記のとおり,被告が各被告製品等と同種のモータ式双方向遮断弁の取引先を開拓してきたことについて,被告の営業努力や顧客との継続的な関係性といった要素があることを認めた上で推定覆滅率の判断をしているのであり,同事情をもって,上記推定覆滅率を超えて推定覆滅をすべき事情であると認めることはできない。以上によれば,推定覆滅率に関する上記被告の主張を採用することはできない。 エそうすると,被告による原告特許権1の侵害行為によって原告の受けた損害(逸失利益)の額は2億1942万7552円(計算式は,●(省略)●計算式は,100%-20%の推定覆滅率)))と認められる。また,原告の弁護士費用のうち2200万円については,被告による上記特許権侵害行為と因果関係を有する損害と認めるのが相当である。 オなお,原告は,被告による被告製品2の販売等が原告特許権2及び3を侵害していたとして不当利得返還金の支払も求めるが,前記2のとおり, 被告製品2は原告特許権2又は3の技術的範囲に属するものではなく,被告製品2の販売等が原告特許権2又は3を侵害するとは認められないから,この点に関する原告の請求は理由がない。 したがって,原告は,被告に対し,原告特許権1の侵害による不法行為に基づく損害賠償請求権として2億4142万7552円(計算式は,2億1942万7552円+2200万円)を請求できる。 られるから,そうである以上,原告製品は,特許請求の範囲の減縮を目的とする本件訂正の前の被告発明の技術的範囲にも当然属すると認められる。 7 争点⑻(本件訂正により 円)を請求できる。 られるから,そうである以上,原告製品は,特許請求の範囲の減縮を目的とする本件訂正の前の被告発明の技術的範囲にも当然属すると認められる。 7 争点⑻(本件訂正により被告発明に係る特許の無効理由が解消したか)について原告は,被告発明に係る特許について無効の抗弁を主張し,これに対し,被告が被告発明に係る特許について訂正の再抗弁を主張しているが,被告の訂正の再抗弁が認められる場合,すなわち,①被告訂正発明について無効理由が存在せず,かつ,②原告製品が被告訂正発明の技術的範囲に属すると認められる場合には,争点⑺(被告発明に係る特許の無効理由の有無)について判断するまでもなく,原告製品は被告特許権を侵害することとなる(なお,本件無効審判において,特許庁が,平成27年6月4日に本件訂正を認めた上で不成立審決をし,原告の提起した本件審決取消訴訟に対し,知的財産高等裁判所が,平成28とおりである。)。 そこで,事案に鑑み,以下,争点⑺の判断に先行して,まず争点⑻について判断することとする。 被告訂正発明についての無効理由の存否ア被告訂正明細書の発明の詳細な説明には,次の各記載がある。 【従来の技術】として,「従来,この種の装置のシール構造としては図3に示される構成例のものがある。すなわち,図3はガス遮断時のガス遮断装置の要部断面を示すもので,1はガス供給管路中の弁座で,弁体2の保持板2aとゴム材等の弾性材で形成したシール弁2bから構成されている。そして,弁体2は,ガス通路の側壁の開口(図示していない)に外側から取り付けられたホルダ3に,スプリング4を介して取り付けられており,該スプリング4は弁2を弁座1に押し付ける方向に付勢されている。また,弁体2の中央部にはリードスクリュー5 示していない)に外側から取り付けられたホルダ3に,スプリング4を介して取り付けられており,該スプリング4は弁2を弁座1に押し付ける方向に付勢されている。また,弁体2の中央部にはリードスクリュー5の先端部6が貫通した後,Eリング7,7で挟持するようにして連結されている。リードスクリュー5は前記ホルダ3の貫通孔8を貫通して流体通路外側に延設され,その中程にはスクリューねじ9が形成されている。10はロータで内周面の雌形スクリューねじ10aがスクリューねじ9と螺合する。11は永久磁石,12は電磁コイル,12aはボビン,13はステータヨーク,14は軸受で15はホルダ3にねじ等で固定されたモータの取付板である。また,15は弾性材で成形されたOリングで,シール板17と共に,ホルダ3に形成された貫通孔8とリードスクリュー5との隙間からのガスの漏出を防止するためのものである。」(段落【0002】)「上記のように構成されているため,ステータヨーク13とこれに内装されている電磁コイル12とを備えたロータ回転手段Aの制御により,ロータ10と永久磁石11とよりなる回転手段Bが正逆回転し,この回転手段Bと螺合しているリードスクリュー5と弁体2からなる弁体移動手段Cが左右にリニア移動する。これにより,弁体2は弁座1と密着又は弁座1から離隔する。(段落【0003】)【発明が解決しようとする課題】として, 「しかしながら,上記のように構成された貫通孔8とリードスクリュー5との間のシール構造では,シール材としてのOリング16は密着状態にあるリードスクリュー5が左右に移動するため,摩擦熱等による経年変化を起して,リードスクリュー5と粘着状態になってしまう。 このため,流体遮断装置の負荷が増大し,緊急時におけるガス遮断に即応することができなく スクリュー5が左右に移動するため,摩擦熱等による経年変化を起して,リードスクリュー5と粘着状態になってしまう。 このため,流体遮断装置の負荷が増大し,緊急時におけるガス遮断に即応することができなくなるという問題点が生じる。」(段落【0004】)「本発明は,このような従来の技術の有していた問題点を解消するため,非磁性材の薄板パイプをステータヨーク内周面及び軸受保持板外周面に接するように配設し,このパイプとその幅方向の両端に嵌装したOリングと,モータの軸端部に設けたOリングとによるシール構造によって,負荷の安定と信頼性の向上を図ったモータ駆動双方向弁とそのシール構造を提供することを目的とする。」(段落【0005】)【課題を解決するための手段】として,「上記目的を達成するため,第1の発明に係るモータ駆動双方向弁装置は,回転軸28の左端にリードスクリュー28aを形成した正逆回転可能なモータDと,このモータDの取付板23との間に装着されたスプリング24により弁座21に密着する弁体22と,先端部25aがこの弁体22の保持板22aに固定され,前記リードスクリュー28aと螺合して左右に移動する弁体移動手段25とより構成される。 また,第2の発明に係る外部操作用円盤装置は,第1の発明に係るモータ駆動双方向弁装置を停電時等の緊急時に,外部から手動等の操作により,弁体22と弁座21に密着し又は弁座21から離隔させるために,この弁体移動手段25とは反対側にモータに外部操作手段40を付属させたものである。さらに,第3の発明は,第1又は第2の発明における弁体移動手段25の実施態様である。そして,第4の発明 は,第1の発明のモータ駆動双方向弁装置におけるシール構造において,その両端縁が軸受保持盤22aの外周面に接するとともに,残りの部 体移動手段25の実施態様である。そして,第4の発明 は,第1の発明のモータ駆動双方向弁装置におけるシール構造において,その両端縁が軸受保持盤22aの外周面に接するとともに,残りの部分はステータヨーク37の内周面に接するように,黄銅等の非磁性材の薄板パイプ38を配設し,この薄板パイプ38の両端縁においてモータの取付板23,33及びステータヨーク37,37とにより包囲される隙間にOリング等のシール材39,39を嵌装したものである。」(段落【0006】)【作用】として,「上記構成の弁体移動手段25により,弁体22は弁座21に密着されてガス通路等を遮断してガス流を停止させるとともに,弁座21から離隔保持してガス通路を開放する。また,弁体移動手段25のみがガス通路隔壁内に配置され,他のモータ構成部分はガス通路隔壁外に配置されているから,このモータのステータヨーク37内周面及び軸受保持盤32の外周面に接する薄板パイプ38と,これらにより形成される隙間にOリング等のシール材39を嵌装するシール構造のため,シール材39は移動部分との接触がなくなるので,双安定弁の負荷が安定する。さらには,外部操作手段としての円盤40を備えたことにより,停電中の緊急時には,工具(ドライバ等)により,円盤40を押し込んで,その突起140aを回転軸28の先端溝28bに係合することにより,弁体22と弁座21の開閉を手動操作により行うことが可能になる。」(段落【0007】)【発明の効果】として,「以上詳細に説明したように,本発明によれば,次に記載する効果を奏する。弁体移動手段はモータの外側に設け,モータのステータヨーク内周面を非磁性材の薄板パイプで覆うとともに,このパイプの幅方向の両端部をOリング等のシール材で装填し固定したので,静止部分 効果を奏する。弁体移動手段はモータの外側に設け,モータのステータヨーク内周面を非磁性材の薄板パイプで覆うとともに,このパイプの幅方向の両端部をOリング等のシール材で装填し固定したので,静止部分 でのシール構造が得られるようになり,弁体移動手段との摩擦を避けることが可能となったので,Oリングの劣化により負荷が増大するという従来シール構造の問題点が解消されるため,負荷の安定性を保持できるとともに,高い信頼性を実現できる。また,外部操作手段を設けることにより,停電時でも,工具等の使用により,手動で双方向弁の開閉が可能になる。」(段落【0015】)イ被告訂正発明の進歩性について被告訂正発明の構成要件及び上記アで認定した被告訂正明細書の記載によれば,被告訂正発明の概要は下記のとおりであると認められる。 記従来のモータ駆動双方向弁における貫通孔8とリードスクリュー5との間のシール構造では,シール材としてのOリング16は密着状態にあるリードスクリュー5が左右に移動するため,摩擦熱等による経年変化を起こして,リードスクリュー5と粘着状態になってしまい,流体遮断装置の負荷が増大し,緊急時におけるガス遮断に即応することができなくなるという問題点が生じていた。(段落【0002】~【0004】)被告訂正発明は,このような従来の技術の有していた問題点を解消するため,非磁性材の薄板パイプをステータヨーク内周面及び軸受保持板外周面に接するように配設し,このパイプとその幅方向の両端に嵌装したOリングと,モータの軸端部に設けたOリングとによるシール構造によって,負荷の安定と信頼性の向上を図ったモータ駆動双方向弁とそのシール構造を提供することを目的とする。(段落【0005】)同目的を達成するため,被告訂正発明に係るモータ駆動双方向 るシール構造によって,負荷の安定と信頼性の向上を図ったモータ駆動双方向弁とそのシール構造を提供することを目的とする。(段落【0005】)同目的を達成するため,被告訂正発明に係るモータ駆動双方向弁装置においては,弁体移動手段25のみがガス通路隔壁内に配置され,他のモータ構成部分はガス通路隔壁外に配置されているから,このモータのステータヨーク37内周面及び軸受保持盤32の外周面に接する薄板パ イプ38と,これらにより形成される隙間にOリング等のシール材39を嵌装するシール構造のため,シール材39は移動部分との接触がなくなり,静止部分でのシール構造が得られるようになり,弁体移動手段との摩擦を避けることが可能となったので,Oリングの劣化により負荷が増大するという従来シール構造の問題点が解消されるため,負荷の安定性を保持できるとともに,高い信頼性を実現できる。(段落【0007】,【0015】)以上甲16発明の概要甲16文献の記載によれば,甲16発明の概要は,下記のとおりである。 記高圧蒸気の貫流を遮断する装置に利用されるモータが遮断機構を駆動する高圧遮断弁であって,モータのシャフト9の下側端部に形成されたスピンドル12,モータのエアギャップに高圧の作用の下でステータ体に当接するように配置され,ロータのある空間がモータのステータから分離されて定置の部品に密閉式に密着して高圧シールが実現され,相互に可動の部品でのシールを回避した,両方の側で開いた中空体からなる弾力性あるシール体,を備えてなる,モータが遮断機構を駆動する高圧遮断弁。 以上被告訂正発明と甲16発明との一致点及び相違点a 一致点ガス遮断装置に用いられるモータ駆動双方向弁において,回転軸の左端部にリードスクリューを形成し,ステータの内 る高圧遮断弁。 以上被告訂正発明と甲16発明との一致点及び相違点a 一致点ガス遮断装置に用いられるモータ駆動双方向弁において,回転軸の左端部にリードスクリューを形成し,ステータの内周側に配置され,内部の気密を確保するシール構造をなし,静止部分となる中空状の部 材を有する正逆回転可能なモータと,モータの取付板と,弁座に密着する弁体と,端部に弁体を有し,前記リードスクリューと螺合して,左右に移動する弁体移動手段とからなるモータ駆動双方向弁。 b 相違点被告訂正発明と甲16発明の相違点は,以下のなお,原告は,以下のにつき,被告訂正発明と甲16発明との相違点ではないと主張するが,主張の前提を欠くものであって,採用することができない。他方,被告は,被告訂正発明の対象が「ガス遮断装置に用いられるモータ駆動双方向弁」であるのに対し,甲16発明の対象は「高圧設備(高圧蒸気ボイラー,高圧蒸気タービンなど)用のモータが遮断機構を駆動する高圧遮断弁」であることも相違点であると主張するが,被告訂正発明の「ガス遮断装置」が対象とするガスの圧力に限定はなく「高圧」のものも含まれ得る一方,甲16発明の「高圧」についてもある程度の範囲があり得ることからすると,この点を被告訂正発明と甲16発明の相違点と認めることはできず,被告の主張も採用できない。 相違点1´内部の気密を確保するシール構造をなし,静止部分となる中空状の部材を有する点について,被告訂正発明では「ロータ回転手段のステータヨークの内周面に接するように配置され,Оリング等のシール材と共に内部の気密を確保するシール構造をなし,当該シール材が嵌装される静止部分となる非磁性材の薄型パイプを有する」のに対し,甲16発明では「モータのエアギャップに高圧の作用の下でス グ等のシール材と共に内部の気密を確保するシール構造をなし,当該シール材が嵌装される静止部分となる非磁性材の薄型パイプを有する」のに対し,甲16発明では「モータのエアギャップに高圧の作用の下でステータ体に当接するように配置され,ロータのある空間がモータのステータから分離されて定置の部品に密閉式に密着して高圧シールが実現され,相互に可動の部品でのシールを回避した,両方の 側で開いた中空体からなる弾力性あるシール体を備えてなる」点。 相違点2被告訂正発明では,モータの取付板と弁体との間にスプリングが装着され,弁体がスプリングにより付勢されて弁座に密着する構成であるのに対し,甲16発明では,モータのハウジングと弁座との間にスプリングが装着されておらず,弁体がスプリングにより付勢されて弁座に密着する構成になっていない点。 ⒞ 相違点3弁体移動手段が端部に弁体を有する構成に関し,被告訂正発明では先端部が弁体の保持板に固定されるのに対し,甲16発明では下側端部が弁体である点。 相違点1´の容易想到性について被告訂正発明と甲16発明との上記相違点1´は,具体的には,各発明に共通する「静止部分でのシール構造を得る」という技術思想につき,被告訂正発明においては薄板パイプにОリング等のシール材を嵌装することにより実現しているのに対して,甲16発明においてはシール体zのみで実現している点に係る相違である。 そこで検討するに,被告訂正発明における薄板パイプ38は,ロータとステータヨークの間を隔ててロータ内のガスを隔離するとともに,薄板パイプ38を非磁性材としてステータヨークからロータへの磁力の伝達に支障を来さないようにして,シール材(Оリング39)と共に静止部分のシール構造を形成するものであるが,ロータ側とステータヨーク 薄板パイプ38を非磁性材としてステータヨークからロータへの磁力の伝達に支障を来さないようにして,シール材(Оリング39)と共に静止部分のシール構造を形成するものであるが,ロータ側とステータヨーク側の間の気密の確保は,薄板パイプ38とシール材(Оリング39)との協働によって行っているものと認められる。これに対し,甲16発明は,弾力性あるシール体zのみで,シール体z全体に係る内圧を受けてステータx,ハウジング3,4に密着させて,ロータyとステータx間 を仕切り,ロータyのある空間17内の高圧蒸気を隔離するとともに,内部の気密の確保を行いつつ,非磁性体であるシール体zにより,ステータxからロータyへの磁力の伝達に支障を来さないようにしているものと認められる。 そうすると,被告訂正発明における薄板パイプ38と甲16発明のシール体zとでは,ガス(高圧蒸気)を隔離するためのシール作用が相違しているというべきであり,相違点1´に係る被告訂正発明の構成が設計事項であるということはできない。 また,甲16文献には,シール体zではステータとの間のシールが不十分であるといった課題は提示されておらず,シール体zに加えて,Оリング等のシール材を採用することについての記載も示唆もないから,シール体zに加えてОリング等のシール材を採用する動機付けがないし,シール体zとОリング等のシール材との協働形態を想定することも容易ではない。かえって,甲16発明のシール体zにОリング等のシール材を嵌装すれば,シール体zとステータとの間にシール材の厚み分の空間が生じることとなり,これによりシール体zの弾性変形によるシール性能が損なわれるなどして気密性が失われるおそれもあるから,そのような構成を採用することには阻害要因もあるというべきである。 以上によれば じることとなり,これによりシール体zの弾性変形によるシール性能が損なわれるなどして気密性が失われるおそれもあるから,そのような構成を採用することには阻害要因もあるというべきである。 以上によれば,甲16発明におけるシール体に加えて,Оリング等のシール材を採用することは,当業者が容易に想到することができたものということができず,相違点1´に係る被告訂正発明の構成が容易に想到できたとはいえない。したがって,相違点2及び3について検討するまでもなく,被告訂正発明には進歩性が認められる。 これに対し,原告は,相違点1´は,甲16発明と被告訂正発明とが,「弾力性あるシール体z」が一部材からなるか(甲16発明),「薄板パイプ」及び「シール材」という別部材からなるか(被告訂正発明)の 違いにすぎず,実質的な相違点ではないと主張するが,上記説示に照らし採用することはできない。 ウ被告訂正発明におけるサポート要件違反の有無について原告は,被告訂正明細書の発明の詳細な説明及び図面には,両端が開放された「薄板パイプ(38)」の幅方向の両端部をOリング等のシール材でシールする発明のみが開示されているのに対し,被告訂正発明の特許請求の範囲の記載には,広く,薄板パイプの幅方向の両端部がOリング等のシール材で装填・固定されていない発明をも含む記載となっているから,サポート要件に適合しない旨主張する。 そこで検討するに,のとおり,被告訂正発明は,ガス遮断装置に用いられるモータ駆動双方向弁において,従来のリードスクリュー(可動部分)とその貫通孔(静止部分)との間のシール構造においては,シール材としてのОリングが経年変化を起こし,リードスクリューが粘着状態になってしまうなどの問題点があったことから,これを解決するために,①ステータヨークの内 止部分)との間のシール構造においては,シール材としてのОリングが経年変化を起こし,リードスクリューが粘着状態になってしまうなどの問題点があったことから,これを解決するために,①ステータヨークの内周面に接するように非磁性体材の薄板パイプを配設し,②Оリング等のシール材と共に内部の気密を確保するシール構造を成し,③当該薄板パイプを当該シール材が嵌装される静止部分としたものである。このように,弁体側からモータを経て外部にガスが漏れないようにするために,薄板パイプをロータとステータヨークの間に配設して,シール材と協働してシール構造を形成すること,すなわち,従来技術における可動部分と静止部分との間のシールに代えて,薄板パイプをロータとステータヨークの間に配設し,シール材と協働して静止部分でのシール構造を形成する点に技術的意義があると認められる。 このような被告訂正発明の技術的意義に鑑みると,被告訂正発明におけるシール材は,静止部分でのシール構造を得ることができるものであれば足り,シール材が薄板パイプの幅方向の両端部にあることは必須ではない というべきであり,シール材が薄板パイプ両端に設けられた被告訂正明細書の実施例記載の構成に限定すべき旨の原告の主張を採用することはできない。 したがって,被告訂正発明についてサポート要件違反の無効理由は存在しない。 エ被告訂正発明における構成不可欠要件違反の有無について改正前法36条5項2号は,請求項を「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載した項」と定義し,発明の要旨に不可欠かつ十分な構成要件のみを記載することを求めることによって,一の請求項から必ず発明が把握されるという請求項の構成要件的機能を担保したものと解される。したがって,同号の要件を満たすためには 旨に不可欠かつ十分な構成要件のみを記載することを求めることによって,一の請求項から必ず発明が把握されるという請求項の構成要件的機能を担保したものと解される。したがって,同号の要件を満たすためには,特許請求の範囲に,当該発明の技術的課題を解決するために必要不可欠な技術的手段(技術的事項),すなわち,当該発明の技術的特徴を成す発明の要旨(発明特定事項)が記載されていることが必要であり,このような記載がある場合には,特許請求の範囲に記載された事項に基づいて特許を受けようとする発明が明確に把握できるから,同号の要件を満たすというべきである。 そこで検討するに,上記ウのとおり,被告訂正発明の技術的意義は,弁体側からモータを経て外部にガスが漏れないようにするため,従来技術における可動部分と静止部分との間のシールに代えて,薄板パイプをロータとステータヨークの間に配設し,シール材と協働して静止部分でのシール構造を形成する点にある。このような被告訂正発明の技術的意義を実現し,静止部分でのシール構造を得るためには,「Oリング等のシール材と共に内部の気密を確保するシール構造をなし,当該シール材が嵌装される静止部分となる非磁性材の薄板パイプ」であれば足り,例えば薄板パイプとステータヨークとの間の全面にシール材を設けても良いのであるから,シー ル材が薄板パイプの幅方向の両端部にあることは必須ではないというべきである。また,上記のとおり,被告訂正発明は,ロータとステータヨークとの間に設けた薄板パイプとともにシール材を用いることにより,ロータのあるモータ内部空間とステータヨークとの間のシール構造を得ることに係る発明であって,モータ後端部(封止される必要があることは明らかである。)は,金具等を含む適宜の方法で封止されていれば足りるのであるから ータ内部空間とステータヨークとの間のシール構造を得ることに係る発明であって,モータ後端部(封止される必要があることは明らかである。)は,金具等を含む適宜の方法で封止されていれば足りるのであるから,この部分の封止に関して実施例が備える取付板33や軸受保持版32について,必ずしも特許請求の範囲に記載されていなければならない理由はない。 そして,被告訂正発明に係る特許請求の範囲には,「ロータ回転手段(34)のステータヨーク(37)の内周面に接するように配置され,Oリング等のシール材と共に内部の気密を確保するシール構造をなし,当該シール材が嵌装される静止部分となる非磁性材の薄板パイプ(38)を有する正逆回転可能なモータDと,このモータDの取付板(23)との間に装着されたスプリング(24)により付勢されて弁座(21)に密着する弁体(22)と,」と記載されているから,モータDの弁体側に取付板(23)があること,薄板パイプ(38)をロータ回転手段(34)のステータヨーク(37)の内周面に接するように配置していること,薄板パイプ(38)とOリング等のシール材とで内部の気密を確保するシール構造を成していること,薄板パイプ(38)はシール材が嵌装される静止部分となっていることを,いずれも把握することができる。すなわち,モータDのステータヨーク及び取付板を含むステータヨークの周辺構造は,ロータのような可動部分とは異なり静止部分であること,ロータとステータヨークとの間に薄板パイプが設けられ,薄板パイプにシール材が嵌装されていることからすると,当業者において,被告訂正発明におけるシール構造につき,薄板パイプという静止部分と,ステータヨーク及びその周辺構 造というもう一つの静止部分との間にシールを行うものであると把握することができるから,特 告訂正発明におけるシール構造につき,薄板パイプという静止部分と,ステータヨーク及びその周辺構 造というもう一つの静止部分との間にシールを行うものであると把握することができるから,特許請求の範囲には,被告訂正発明の技術的特徴を成す発明の要旨である「静止部分でのシール構造を得る」ための構成が記載されているということができる。 したがって,被告訂正発明の特許請求の範囲の記載は,改正前法36条5項2号の要件を満たす。 オ以上によれば,被告訂正発明について無効理由が存在するとはいえない。 原告製品が被告訂正発明の技術的範囲に属するか否かについてア原告製品の構成要件充足性の前提問題として,原告製品の構成について当事者間に争いがあり,被告が,原告製品について,非磁性体材より成る「薄板の筒状部10a」を配設した正逆回転可能なモータユニット1を有すると主張するのに対し,原告は,原告製品には上記「薄板の筒状部10a」はなく,これに代わって,非磁性体材より成る「,貫通穴がなくなべ状に成形され,開放端につばを有する薄板のケース体10」を配設した正逆回転可能なモータユニット1を有すると主張する。 しかしながら,原告製品の「ケース体10は,有底筒状の形状,すなわち,円筒状の筒状部10aと,この筒状部10aの後端を塞ぐ底部10bとを有する」ことも含めて,原告製品が別紙原告製品説明書記載の構成を有することについては当事者間に争いがないことに照らすと,上記争いは,結局のところ,後記のとおり,原告製品の「ケース体10」が被告訂正発明の「薄板パイプ(38)」を充足するか否かの評価によって決せられるものといえるのであって,原告製品の構成についての当事者間の主張が実質的に食い違うとは認められない。 イそして,原告製品が被告訂正発明の構成要件 (38)」を充足するか否かの評価によって決せられるものといえるのであって,原告製品の構成についての当事者間の主張が実質的に食い違うとは認められない。 イそして,原告製品が被告訂正発明の構成要件B以外の構成要件(構成要件A,C~E)を充足することは当事者間に争いがないから,以下,原告製品が被告訂正発明の構成要件Bを充足するか否かを検討する。 被告訂正発明の技術的意義は,弁体側からモータを経て外部にガスが漏れないようにするために,薄板パイプをロータとステータヨークの間に配設して,シール材と協働してシール構造を形成する点,すなわち,従来技術における可動部分と静止部分との間のシールに代えて,薄板パイプをロータとステータヨークの間に配設し,シール材と協働して静止部分でのシール構造を形成する点にある。このような技術的意義に鑑みれば,「薄板パイプ」は,ロータとステータヨークの間に配設され,シール材と協働して静止部分でのシール構造を形成していればよいのであって,薄板パイプの後端部について,必ずしもOリングによってシールされている必要はなく,適宜の方法で封止されていれば足りると解される。この点,別紙原告製品説明書のとおり,原告製品についても,ロータとステータユニットの間に円筒状の筒状部を有するケース体10が配置され,同筒状部がOリング8と協働して静止部分でのシール構造を形成しているのであるから,同筒状部は「薄板パイプ」に当たることが明らかである。したがって,原告製品は被告訂正発明の構成要件Bを充足し,被告訂正発明の技術的範囲に属すると認められる。 これに対し,まず,原告は,被告訂正発明は,特許請求の範囲に記載された構成のみでは発明本来の目的及び課題を解決するための技術的手段となっておらず,サポート要件に違反するから,被告 と認められる。 これに対し,まず,原告は,被告訂正発明は,特許請求の範囲に記載された構成のみでは発明本来の目的及び課題を解決するための技術的手段となっておらず,サポート要件に違反するから,被告訂正発明に係る特許を有効に解しようとすれば,構成要件Bを「薄板パイプの幅方向の両端部をОリング等のシール材で装填し固定する」構成に限定解釈せざるを得ないとし,これを前提に,原告製品は,貫通穴がなくなべ状に成形され,開放端につばを有する薄板のケース体10を具備し,ケース体10の開放端部にОリングが取り付けられる構成であって,上記「薄板パイプの幅方向の両端部をОリング等のシール材で装填し固定する」構成を具備していないから,構成要件Bを充足しない旨主張する。しかし 定解釈を行うまでもなく,サポート要件に違反するものでもないから,原告の上記主張は,その前提において失当というほかない。 また,原告は,「パイプ」の字義及び被告明細書の段落【0005】及び【0015】の記載によれば,「薄板パイプ(38)」は,その両端が開放されていることを必須の構成と見るべきところ,原告製品の貫通穴のないなべ状に成形され開放端につばを有する「ケース体10」は,その一端のみが開放された構成であって,被告訂正発明の「薄板パイプ(38)」に相当する構成を具備していないと主張する。しかしながら,上記の被告訂正発明の技術的意義に鑑みれば,薄板パイプの後端部については,必ずしもOリングによってシールされている必要がなく,適宜の方法で封止されていれば足りると解されるから,薄板パイプの後端部を薄板パイプと同一部材でなべ状に封止したからといって,これにより,直ちに被告訂正発明の「薄板パイプ」該当性が否定されることとはならず,原告の主張は採用することができない。 したが イプの後端部を薄板パイプと同一部材でなべ状に封止したからといって,これにより,直ちに被告訂正発明の「薄板パイプ」該当性が否定されることとはならず,原告の主張は採用することができない。 したがって,原告製品は,「薄板パイプ(38)」を有するものといえ,構成要件Bを充足するから,被告訂正発明の技術的範囲に属する。 以上によれば,被告の訂正の再抗弁が認められるから,争点⑺について判断するまでもなく,原告製品は被告特許権を侵害する。 被告の損害額及び原告の不当利得額)について①原告製品の販売数量,単価(税抜)及び売上高が,下記の表1及び表2の該当欄記載のとおりであること,②平成22年12月2日から平成23年9月10日までの間の変動費及び限界利益が,下記の表2の該当欄記載のとおりであることは当事者間に争いがない。 記【表1】 ●(省略)●【表2】 ●(省略)●以上法102条2項に基づく損害額についてア被告は,平成22年12月2日(反訴提起日である平成25年12月2日からさかのぼって3年前の日)から平成23年9月10日(被告特許の存続期間の満了日)までの間(以下「反訴損害賠償対象期間」という。)に行われた原告製品の販売等について,法102条2項による損害賠償を求めるから,被告の損害額は,同条項により,上記期間における原告の限界利益額である●(省略)● イこれに対し,原告は,①被告訂正発明が原告製品の販売にほとんど寄与しておらず,原告の侵害行為と相当因果関係にあるのは原告製品の限界利益の2割にすぎない,②被告特許が愛知時計との共有特許であり,愛知時計の持分2分の1については,被告が請求することはできないと主張し,他方,被告は上記①につき原告の侵害行為との間に相当因果関係が認め 益の2割にすぎない,②被告特許が愛知時計との共有特許であり,愛知時計の持分2分の1については,被告が請求することはできないと主張し,他方,被告は上記①につき原告の侵害行為との間に相当因果関係が認められる金額は原告製品の限界利益の8割を下回らない,②愛知時計は被告特許を実施しておらず,法102条3項による損害賠償請求ができるにすぎないから,控除されるのはこの限度にとどまると主張する。 この点,法102条2項により,被告の損害額が,●(省略)●円と推定されることは上記アのとおりであるから,原告及び被告の上記各主張は,いずれも,同推定に対する推定覆滅事情の存否の問題として検討することが相当である。 ウ推定覆滅の割合について法102条2項の侵害行為によって生じた特許権者の損害を適正に回復するとの観点から, 侵害品全体に対する特許発明の実施部分の価値の割合のほか,市場における代替品の存在,侵害者の営業努力,広告,独自の販売形態,ブランド等といった営業的要因や,侵害品の性能,デザイン,需要者の購買に結びつく当該特許発明以外の特徴等といった侵害品自体が有する特徴などを総合的に考慮して判断すべきである。 そこで検討するに,被告訂正発明に係る特許請求の範囲の記載に照らせば,被告訂正発明はガス遮断弁(モータ駆動双方向弁)の構成全体に関する発明であると認められるから,原告製品の構成全体について被告訂正発明が実施されているというべきである。また,被告訂正発明は,上記7うにするために,薄板パイプをロータとステータヨークの間に配設して,シール材と協働してシール構造を形成すること,すなわち,従来技術における可動部分と静止部分との間のシールに代えて,薄板パイプをロータとステータヨークの間に配設し,シール材と協働して静止部分でのシー シール材と協働してシール構造を形成すること,すなわち,従来技術における可動部分と静止部分との間のシールに代えて,薄板パイプをロータとステータヨークの間に配設し,シール材と協働して静止部分でのシール構造を得る点に,その技術的意義があり,そのために,①ステータヨークの内周面に接するように非磁性体材の薄板パイプを配設し,②Оリング等のシール材と共に内部の気密を確保するシール構造を成し,③当該薄板パイプを当該シール材が嵌装される静止部分とするという具体的な構成を採用したものであって,このような被告訂正発明の技術的意義及び具体的構成に加えて,上記のとおり,原告製品の構成全体について被告訂正発明が実施されていることも併せれば,被告訂正発明の存在が原告製品についての需要者の購入意欲に大きく結びついているものと認められる。また,原告製品と各被告製品等は,いずれもモータ式のガス遮断弁であるところ,ガス遮断弁の市場シェアについては原告と被告が2分し,寡占状態にあるから,需要者にとって原告又は被告の製品以外に代替品の選択肢はほぼ存在しない。さらに,原告が我が国有数の電 機メーカーでそのブランド力は高いと認められる一方,被告についても,事業規模こそ原告より小さいとはいえ,長年にわたって各被告製品等と同種のモータ式双方向遮断弁を含む遮断弁を市場に供給し,モータ式遮断弁の市場に限定すれば,長年にわたって原告と拮抗する市場シェアを有していたことに照らせば,事業規模による推定覆滅を認めることは相当でない。 他方で,被告訂正発明を除く原告製品の性能,デザイン等のその他の特徴が需要者の購買意欲に殊更に影響していることを認めるに足る証拠はない。確かに,原告が高いブランド力を有することに加え,原告の営業努力や原告と顧客との継続的な関係性といった要素が イン等のその他の特徴が需要者の購買意欲に殊更に影響していることを認めるに足る証拠はない。確かに,原告が高いブランド力を有することに加え,原告の営業努力や原告と顧客との継続的な関係性といった要素が原告製品の売上に一定の役割を果たしたことは否定できず,原告製品の売上が被告訂正発明のみによるものとまでは認めることができないが,このような事情を十分に考慮しても,上記で検討した各事情に鑑みれば,被告の損害額の算定において,大幅な推定覆滅を認めることは相当でない。 以上によれば,法102条2項の推定に係る推定覆滅の割合については,20%と認めるのが相当である。 なお,被告は,被告訂正発明がモータ駆動式のガス遮断装置に隔壁を採用した先駆的な発明であり,同発明に係る特許を基本特許と評価できる一方,原告発明1は被告訂正発明の改良発明であり,その特徴的部分は隔壁の開放端に設けられた「つば」にすぎないから,原告製品の売上に対する被告訂正発明の寄与が,各被告製品等の売上に対する原告発明1の寄与よりはるかに大きいと主張する。 しかしながら,法102条2項による損害賠償額の算定に際しては,侵害者の利益の額が特許権者の受けた損害の額と推定されるのであるから,同推定を覆滅するためには,侵害者において,侵害品に当該特許に係る発明以外の特徴があり,この点に需要喚起力があるなど,当該特許 に係る発明を除く売上への貢献要素を具体的に主張,立証する必要があるというべきであり,発明の技術的意義や客観的価値の大小が推定覆滅率と直結するものではない。したがって,被告が法102条2項の推定を覆滅させるためには,各被告製品等の売上に対する原告発明1以外の貢献要素について具体的な主張,立証を要するのであって,原告発明1と被告訂正発明の技術的意義や発明の客観的価値 が法102条2項の推定を覆滅させるためには,各被告製品等の売上に対する原告発明1以外の貢献要素について具体的な主張,立証を要するのであって,原告発明1と被告訂正発明の技術的意義や発明の客観的価値が相違する旨の被告の上記主張は,直ちに推定覆滅率についての判断を左右するものとはいえず,失当である(なお,モータ駆動式のガス遮断装置について,ステータとロータを隔てる部材を採用すること自体は,被告特許に係る出願時において,既に甲16文献で開示されていた周知技術であると認められるから,被告訂正発明の技術的意義が,ロータとステータヨークの間に配設した薄板パイプとシール材との協働により静止部分でのシール構造を形成するという点を超えて,被告主張のようなものであるとは認めることができない。)。 以上によれば,被告の上記主張は,推定覆滅事情についての当裁判所の判断を左右するものではない。 エ被告特許が共有特許であることによる推定覆滅について原告は,被告特許が,被告と愛知時計との共有に係るものであるところ,愛知時計も,●(省略)●を搭載したガスメータを製造,販売して被告特許を実施しているから,被告が原告に対して法102条2項に基づき請求できるのは,共有持分に応じて按分した額にすぎないと主張する。 しかしながら,特許権の共有者は,その共有持分の割合にかかわらず特許発明全部を実施することができるから(法73条2項),法102条2項による損害額についての推定が,他の共有者の存在により直ちに共有持分割合に応じて比例して覆滅されるということはできず,他の共 有者による実施の事実及び実施割合又は他の共有者に支払うべき実施料相当額についての侵害者の主張,立証に応じて,個別に覆滅の可否を検討する必要がある。 これを本件についてみるに,愛知 有者による実施の事実及び実施割合又は他の共有者に支払うべき実施料相当額についての侵害者の主張,立証に応じて,個別に覆滅の可否を検討する必要がある。 これを本件についてみるに,愛知時計は,●(省略)●を購入した上でこれを搭載したガスメータを製造,販売しているのであるから,こうした経緯に鑑みれば,原告製品の製造,販売によって愛知時計がその製品の販売機会を喪失したという関係を認めることはできず,愛知時計が●(省略)●を搭載したガスメータを製造,販売する行為が被告特許の実施に当たるか否かにかかわらず,愛知時計による実施割合は認められないというべきである。 もっとも,愛知時計は,特許発明の実施の有無にかかわらず,被告特許の共有持分に基づき,法102条3項の実施料相当額として,それぞれ,単独保有の場合に想定される実施料相当額を持分割合に応じて按分した額の損害賠償請求を行うことができるから,法102条3項に基づく愛知時計の損害額に相当する部分については,法102条2項に基づく被告の損害額の推定が覆滅されるというべきである。 版〕」(2003年。発明協会研究センター編)の250~251頁において「農業・林業・漁業の技術」を含む「他に分類されない製造業・産業の技術(イニシャル無)」に関する実施料率別契約件数について,最頻値が5%であるとされる一方,1~6%のものも相当程度存在していること,②「知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用の在り方に関する調査研究報告書~知的財産(資産)価値及びロイヤルティ料率に関する実態把握~本編」(平成22年3月。株式会社帝国データバンク)の52頁及び395頁においては,国内アンケートの結果,「工学一般」の技術分野における特許権のロイヤルティ料率の平均値が3.3%で, 5%未満が 2年3月。株式会社帝国データバンク)の52頁及び395頁においては,国内アンケートの結果,「工学一般」の技術分野における特許権のロイヤルティ料率の平均値が3.3%で, 5%未満が全体の8割を占めているとされていること等の事情をも総合考慮すると,被告特許権の仮想実施料率については,4%とみるのが相当である。 したがって,法102条2項に基づく被告の損害額の算定においては,法102条3項に基づく愛知時計の損害額に相当する●(省略)●円(計算式は,●(省略)●円(反訴損害賠償対象期間における原告製品の売上高))×4%(被告発明の仮想実施料率)×1/2(被告特許についての愛知時計の共有持分))を被告の損害額から控除すべきである。 オしたがって,反訴損害賠償対象期間における原告の被告特許権侵害による被告の損害額は,●(省略)●円(計算式は,●(省略)●円(原✕80%(計算式は,100%-2)-●(省略)●円(愛知時計が原告に請求し得る損害賠償請求権の額(上記エ))となる。 原告の不当利得額(平成16年~平成22年12月1日)についてア原告が,平成16年から同22年12月1日の間(以下「反訴不当利得対象期間」という。)に,原告製品の製造,販売等によって得た利益について,被告は,原告に対し,民法703条に基づき,不当利得返還請求権を有するところ,反訴不当利得対象期間における原告製品の売上高は,上のとおり,合計●(省略)●円と認められる。 また,被告特許は,愛知時計との共有特許であるから,被告と愛知時計は,原告の不当利得額について,それぞれ共有持分(2分の1)で按分した部分についての返還請求権を有する。 イしたがって,被告は,原告に対し,反訴不当利得対象期間における不当利得返還請求権として,●(省略)●円( 得額について,それぞれ共有持分(2分の1)で按分した部分についての返還請求権を有する。 イしたがって,被告は,原告に対し,反訴不当利得対象期間における不当利得返還請求権として,●(省略)●円(計算式は,●(省略)●円(反訴不当利得対象期間における原告製品の売上高)×4%(被告 発明の仮想実施料率)×1/2(被告特許に係る被告の共有持分))の支払を求めることができる。 まとめオのとおり,原告による被告特許権の侵害行為という不法行為によって被告が受けた損害額は,●(省略)●円であるところ,本件事案の内容や本件訴訟に至る経過等を総合的に斟酌すれば,原告による被告特許権の侵害行為と因果関係のある弁護士費用として950万円を認めるのが相当である。他方,不当利得返還請求権に基づく返還請求額は,イのとおり,●(省略)●円と算定される。 したがって,被告は原告に対し,不法行為に基づく損害賠償請求権及び不当利得返還請求権として,合計1億4458万4760円(計算式は,●(省略)●円+950万円+●(省略)●円)を有すると認められる。 9 結論上記5及び7のとおり,①本訴原告の被告に対する損害賠償金2億4142万7552円及びこれに対する平成27年9月5日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払請求権が存在すると認められる一方,②反訴請求(前記第1の2)について,被告の原告に対する損害賠償金及び不当利得金の合計1億4458万4760円並びにこれに対する平成25年12月7日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払請求権が存在する。しかるに,原告と被告は,平成28年8月31日,同日時点における上記①と②の各債権を対当額で相殺する旨の本件相殺合意をしたから(前記第2の2⑺),これにより,同日時点にお 害金の支払請求権が存在する。しかるに,原告と被告は,平成28年8月31日,同日時点における上記①と②の各債権を対当額で相殺する旨の本件相殺合意をしたから(前記第2の2⑺),これにより,同日時点における上記①の債権2億5337万7633円(計算式は,2億4142万7522円×{1+5%×(118/365+244/366)年})と上記②の債権1億6435万7881円(計算式は,1億4458万4760円×{1+5%×(25/365+2+244/366)}年)とは,対当額で消滅したものと 認められる。 したがって,口頭弁論終結日(平成28年8月31日)の時点において,上記①の債権のうち8901万9752円(計算式は,2億5337万7633円-1億6435万7881円)の債権が残存する一方,上記②の債権は全て消滅したこととなる。 以上によれば,原告の本訴請求は主文第1項ないし第3項の限度で理由があるからこれらを認容し(なお,主文第3項に係る遅延損害金の始期は,本件相殺合意の翌日である平成28年9月1日と認めるのが相当である。),原告のその余の本訴請求及び被告の反訴請求はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官沖中康人 裁判官矢口俊哉 裁判官瀬達人 (別紙)被告製品目録 型番「6」の遮断弁 型番「7」の遮断弁 ステータの底の外側に「D」と記載されている遮断弁 ステータの底の外側に「E」と記載されている遮断弁以上 (別紙)原告製品目録 パナソニック株式会社が製造し,使用し,譲 「D」と記載されている遮断弁 ステータの底の外側に「E」と記載されている遮断弁以上 (別紙)原告製品目録 パナソニック株式会社が製造し,使用し,譲渡し,貸し渡し,輸出若しくは輸入し,又はその譲渡若しくは貸渡しの申出をする別紙原告製品説明書記載の構成を有するガス遮断弁(モータ駆動双方向弁)(製品型番GB-V7Y6M2,GB-V3C2M1を含む。)以上 (別紙)原告製品説明書 1 下記図1に示す,モータの正逆回転によって弁体を弁座に密着又は離隔させてガスの流路の開閉を行うモータ駆動双方向弁【図1】外観図 2 下記図2に示すとおり,原告製品は,モータユニット1と,取付板2と,スプリング3と,弁ユニット4とによって構成されている。 取付板2の前面には,弁ユニット4が取り付けられており,この弁ユニット4と取付板2との間には,スプリング3が装着されている。 取付板2の後面には,モータユニット1が取り付けられており,モータユニット1は,ロータユニット5とステータユニット6とによって構成されている。 【図2】ユニット分解図 3 下記図3(a)に示すとおり,取付板2の前面には,前方に向かって突出した突出部2aが設けられており,この突出部2aには,取付板2の前後面を貫通する開口部2bが設けられている。開口部2bには,前方に向かって突出した回転軸7が臨んでおり,この回転軸7の前端部には,リードスクリュー7aが設けられている。開口部2bの周囲には,前方に向かって突出した複数のガイド爪2cが設けられている。 また,同図3(b)に示すとおり,取付板2の後面には陥没部2dが設けられており,この陥没部2dには,ロータユニット5が取り付けられている。 方に向かって突出した複数のガイド爪2cが設けられている。 また,同図3(b)に示すとおり,取付板2の後面には陥没部2dが設けられており,この陥没部2dには,ロータユニット5が取り付けられている。ロータユニット5の外周面と陥没部2dの内周面との間には,Oリング8が装着されており,両者の間が全周にわたってシールされている。 (a) (b) 【図3】取付板まわりの組立状態図 4 下記図4は,ロータユニット5を回転軸7の軸方向Xに展開した展開図である。 ロータユニット5は,回転軸7と,ロータ9と,ケース体10と,蓋体11と,一対の軸受12a,12bとを有する。回転軸7に取り付けられたロータ9は,ケース体10及び蓋体11によって形成される収容空間内に収容されており,軸受12a,12bを介して回転自在に取り付けられている。 ケース体10は,非磁性材によって薄板状に形成されている。ケース体10は,有底筒状の形状,すなわち,円筒状の筒状部10aと,この筒状部10aの後端を塞ぐ底部10bとを有する。底部10bの中央は,軸後方に向かって凸状に突出しており,これによって,軸受12aを保持するための,凹状に陥没した軸受保持部10cが上記収容空間内に形成されている。また,筒状部10aの前端部には,ケース体10の径方向外側に向かって突出したフランジ10dが全周にわたって形成されている。 ロータ9が収容されたケース体10は,その前開口が蓋体11によって塞がれており,この状態で取付板2の陥没部2dに取り付けられている。そして,筒状部10aの外周面と陥没部2dの内周面との間にはOリング8が嵌入され,これ によって,ロータユニット5が取付板2とステータユニット6とに挟まれて固定されている。 【図4】ロータユニットの展開 外周面と陥没部2dの内周面との間にはOリング8が嵌入され,これ によって,ロータユニット5が取付板2とステータユニット6とに挟まれて固定されている。 【図4】ロータユニットの展開図 5 図5に示すとおり,ステータユニット6は収容部6aを有し,この収容部6a内には,これと略同径のロータユニット5が収容されており,この状態において,ロータユニット5及びステータユニット6は,モータユニット1として機能する。 【図5】モータユニットの構成図 6 下記図6に示すとおり,弁ユニット4は,可動体13と弁体14とを有する。 可動体13は,保持部13aと,この保持部13aから軸方向X(図4参照)に突出した貫通突出部13b及び突出片13cとを有し,これらの部位13a~13cは一体形成されている。 保持部13aは,その外周に弁体14側の内溝が嵌め入れられ,これによって,弁体14を保持する。貫通突出部13bの前端は,保持部13aに固定されていると共に,この貫通突出部13bには,可動体13を貫通するネジ孔13dが軸方向Xに沿って設けられている。突出片13cは,貫通突出部13bと同心 円状に配置されており,軸方向Xに延在する切欠き状のガイド溝13eが複数設けられている。 【図6】弁ユニットの構成図 7 以上のとおり,原告製品は,下記図7に示す各構成部材からなるものである。 【図7】全体展開図 8 下記図8は,可動体13の動作説明図である。 可動体13のガイド溝13eは,取付板2のガイド爪2cと係合している。両者が係合している状態において,可動体13は,その回転が規制され,ガイド溝13に沿った軸方向Xへの変位のみが許容される。また,可動体13のネジ孔13は,回転軸7のリードスクリュー7a 合している。両者が係合している状態において,可動体13は,その回転が規制され,ガイド溝13に沿った軸方向Xへの変位のみが許容される。また,可動体13のネジ孔13は,回転軸7のリードスクリュー7aと螺合している。 この螺合によって,モータユニット1による回転軸7の回転運動は,軸方向Xに沿った可動体13の直進運動に変換される。ステータユニット6の電磁力によってロータ9を一方向に回転させた場合,可動体13はスプリング3の付勢力に抗して後方に変位して,弁体14は弁座から離隔する(弁状態=開)。これに対し,ロータ9を逆方向に回転させた場合,可動体13は前方に変位して,弁体14は弁座に密着する(弁状態=閉)。 【図8】可動体の動作説明図 9 下記図9は,図3(b)のA-A断面を示したモータユニット1の模式断面図である。 同図に示すとおり,ステータユニット6内にケース体10が収容された状態において,ケース体10の筒状部10aは,ステータユニット6の内周面と接している。 【図9】モータユニットの模式断面図以上 (別紙)被告発明の訂正後における請求項1の記載(訂正箇所に下線を付した。) ガス遮断装置に用いられるモータ駆動双方向弁において,回転軸(28)の左端部にリードスクリュー(28a)を形成し,ロータ回転手段(34)のステータヨーク(37)の内周面に接するように配置され,Oリング等のシール材と共に内部の気密を確保するシール構造をなし,当該シール材が嵌装される静止部分となる非磁性材の薄板パイプ(38)を有する正逆回転可能なモータDと,このモータDの取付板(23)との間に装着されたスプリング(24)により付勢されて弁座(21)に密着する弁体(22)と,先端部(2 なる非磁性材の薄板パイプ(38)を有する正逆回転可能なモータDと,このモータDの取付板(23)との間に装着されたスプリング(24)により付勢されて弁座(21)に密着する弁体(22)と,先端部(25a)がこの弁体(22)の保持板(22a)に固定され,前記リードスクリュー(28a)と螺合して,左右に移動する弁体移動手段25とからなることを特徴とするモータ駆動双方向弁。 (別紙)原告の主張に係る各被告製品の構成 1 被告製品1① 被告製品1は,励磁コイルを有するステータを備える。 ②ステータの内側には,同軸に配設され貫通穴がなく,大径の円筒部と小径の円筒部で形成された2段の底を有するなべ状に絞り加工で成形され,開放端につばを有するキャンが設けられている。 ③被告製品1は,キャンの大径の円筒部外径より若干大きな内径の円筒状段差部が形成された剛体性のベースフランジを備える。 ④キャンの大径の円筒部外周とベースフランジ段差部内周との間には,円周方向に圧縮されて配設された弾性体製のOリングが設けられている。キャンのつばは,Oリングと共にベースフランジの段差部に挿入される。 ⑤キャンの内側には,ステータに対向してロータが配設されている。ロータには回転軸が設けられており,ロータは,励磁コイルへの通電によって励磁され回転する。 ⑥被告製品1は,キャンの小径の円筒部のなべ側面に嵌挿される嵌挿部と中心孔とを有し,回転軸の一方を受ける合成樹脂製の軸受Pを備えている。軸受Pは,キャンの大径の円筒部の底に当接するストッパを備え,ストッパはキャンの大径の円筒部のなべ側面に接しない大きさである。 ⑦被告製品1は,キャンの開放端側に挿入され回転軸の他方を受ける金属性の軸受Qを備えている。 ⑧軸受Pと軸受Qは,それぞれ回 え,ストッパはキャンの大径の円筒部のなべ側面に接しない大きさである。 ⑦被告製品1は,キャンの開放端側に挿入され回転軸の他方を受ける金属性の軸受Qを備えている。 ⑧軸受Pと軸受Qは,それぞれ回転軸に接触するラジアル軸受部とロータと当接するスラスト軸受部を有する。 ⑨被告製品1は,キャンの大径の円筒部のなべ側面の開放端側に嵌挿された中心孔を有する合成樹脂製のふた状部材を備えている。ふた状部材には,中心孔が同軸になるよう軸受Qが嵌挿されている。 ⑩被告製品1は,軸受Qから外側に突出し回転軸に配設された弁体を備えており,弁体は,弁シート及び移動体から構成される。回転軸に形成したねじ部と移動体に形成したナット部との係合により,ロータの回転運動を直進運動に変換する変換手段を備えている。 ⑪被告製品1は,弁体を弁座側に付勢するコイルスプリングを備えており,変換手段を介して弁体が弁座に当接・離反することにより,ガス流路の開閉が行われる。 ⑫被告製品1は,ロータが回転する際に弁体が回転しないように規制する回転防止手段を備えている。回転防止手段は,ふた状部材の円筒部内に形成されたリブを,弁体のナット部の外周に形成された凹状部に係合させることによって弁体の回転を防止する。 2 被告製品2①’被告製品2は,励磁コイルを有するステータを備える。 ②’ステータの内側には,貫通穴がなく,円筒部と底を有するなべ状に絞り加工で成形され,開放端につばを有するキャンが設けられている。 ③’被告製品2は,キャンの円筒部外径より若干大きな内径の円筒状段差部が形成された剛体性のベースフランジを備える。 ④’キャンの円筒部外周とベースフランジ段差部内周との間には,円周方向に圧縮されて配設された弾性体製のOリングが設けられている。キャンの の円筒状段差部が形成された剛体性のベースフランジを備える。 ④’キャンの円筒部外周とベースフランジ段差部内周との間には,円周方向に圧縮されて配設された弾性体製のOリングが設けられている。キャンのつばは,Oリングと共にベースフランジの段差部に挿入される。 ⑤’キャンの内側には,ステータに対向してロータが配設されている。ロータには回転軸が設けられており,ロータは,励磁コイルへの通電によって励磁され回転する。 ⑥’被告製品2は,キャンの円筒部のなべ側面に嵌挿される嵌挿部と中心孔とを有し,回転軸の一方を受ける合成樹脂製の軸受Pを備えている。 ⑦’被告製品2は,キャンの開放端側に挿入され回転軸の他方を受ける金属性の軸受Qを備えている。 ⑧’軸受Pと軸受Qは,それぞれ回転軸に接触するラジアル軸受部とロータと当接するスラスト軸受部を有する。 ⑨’被告製品2は,キャンの円筒部のなべ側面の開放端側に嵌挿された中心孔を有する合成樹脂製のふた状部材を備えている。ふた状部材には,中心孔が同軸になるよう軸受Qが嵌挿されている。 ⑩’被告製品2は,軸受Qから外側に突出し回転軸に配設された弁体を備えており,弁体は,弁シート及び移動体から構成される。回転軸に形成したねじ部と移動体に形成したナット部との係合により,ロータの回転運動を直進運動に変換する変換手段を備えている。 ⑪’被告製品2は,弁体を弁座側に付勢するコイルスプリングを備えており,変換手段を介して弁体が弁座に当接・離反することにより,ガス流路の開閉が行われる。 ⑫’被告製品2は,ロータが回転する際に弁体が回転しないように規制する回転防止手段を備えている。回転防止手段は,ふた状部材の円筒部内に形成されたリブを,弁体のナット部の外周に形成された凹状部に係合させることによって弁体 タが回転する際に弁体が回転しないように規制する回転防止手段を備えている。回転防止手段は,ふた状部材の円筒部内に形成されたリブを,弁体のナット部の外周に形成された凹状部に係合させることによって弁体の回転を防止する。 (別紙)被告の主張に係る原告製品の構成 原告製品は,以下の構成を備える遮断弁である。 a ガスメータに用いられるモータ駆動双方向弁において,b 回転軸7の一端部にリードスクリュー7aを形成し,ステータユニット6の内周面に接するように配置され,筒状部10aと取付板2の間を全周にわたってシールすることで,Oリングと共に内部の気密を確保するシール構造をなし,Oリングが外周面に嵌装される静止部分となる非磁性材よりなる薄板の筒状部10aを配設した正逆回転可能なモータユニット1と,c このモータユニット1の取付板2との間に装着されたスプリング3により付勢されて弁座に密着する弁体14と,d 前記回転軸7の軸方向に突出した一端が,弁体14を保持する保持部13aに固定されていると共に,前記軸方向に沿って設けられたネジ孔13dを有し,このネジ孔13dがリードスクリュー7aと螺合して,前記軸方向に移動する貫通突出部13bとe からなることを特徴とするモータ駆動双方向弁。 以上
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