主文 被告人を懲役4年6月に処する。 未決勾留日数中120日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,架空の投資話を持ち掛けて金員をだまし取ろうと企て,別紙一覧表欺罔日時欄記載のとおり,平成11年3月下旬ころから平成12年8月下旬ころまでの間,前後19回にわたり,宇都宮市a町b番c号所在の有限会社A1階事務室において,Bに対し,元金を返済し利息等を支払う意思も能力もないのにこれがあるかのように装い,別紙一覧表欺罔文言欄記載の文言をそれぞれ申し向けてBをその旨誤信させ,よって,別紙一覧表交付日時欄記載のとおり,平成11年4月1日ころから平成12年9月6日ころまでの間,別紙一覧表交付場所欄記載の場所において,Bから投資等名下に別紙一覧表交付金品欄記載のとおり現金合計1億9600万円の交付を受け,もって人を欺いて財物を交付させた。 (事実認定の補足説明) 1 弁護人は,判示各事実について,被告人には詐欺の犯意はなく,被告人が現金の交付を受けた時期,回数及び金額も公訴事実に記載されたものとは異なり,その回数は7回で交付額は合計1億5000万円であると主張し,被告人も,これに沿う供述をしている。そこで,判示のとおり認定した理由を補足して説明する。 2 Bは,本件の被害状況について,検察官及び警察官に対し,判示各事実に沿う供述をしているので,まず,Bの供述の信用性について検討する。 Bは,知人から被告人を紹介され,被告人に儲け話を持ち掛けられた状況,貯金の解約や親族等の援助により投資の資金を調達し,被告人に現金を交付した状況,現金交付後に被告人から儲けが出た旨の連絡を受けた状況,投資の勧誘を受けていた間,被告人から果物を届けてもらったり旅行に招待されたりした状況,被告人に 投資の資金を調達し,被告人に現金を交付した状況,現金交付後に被告人から儲けが出た旨の連絡を受けた状況,投資の勧誘を受けていた間,被告人から果物を届けてもらったり旅行に招待されたりした状況,被告人に預かり証を差し入れさせたり,交付金の返還を求めた状況等について,具体的かつ詳細に供述し,その内容も一貫しており,特に不自然な点は認められない。Bは,被告人に現金を交付した時期や交付した金額等についても,各交付ごとに手帳の記載や貯金通帳等を確認しながら合理的にその根拠を説明している。また,Bは,記憶が曖昧な点についてはその旨申し述べた上,資産状況等の供述がはばかられる事柄についてもこれを明らかにしたくない事情を有り体に述べ,被害当時,手持ちの現金があったにもかかわらず貯金の解約や実母からの借入れにより現金を準備した事情についても率直に供述している。そして,Bの供述は,預貯金の払戻請求書等の客観的な証拠によっても裏付けられている上,資金を調達したBの親族等の供述とも符合している。また,Bには,被告人に現金を交付した時期や被害額等について,あえて虚偽の申告をしなければならないような格別の事情はうかがわれない。さらに,Bは,被告人に「まぐろ」と題する書面を渡した趣旨についても,当公判廷において合理的に説明している。 そうすると,Bの供述は,その信用性が高いといえる。 3 被告人は,捜査段階において,現金の交付を受けた時期や回数についてははっきりと覚えていないとしながら,不動産を購入したり借金の返済をしたりするため,実際に投資するつもりはないのに,被害者から投資名下に現金をだまし取り,その合計金額は1億9600万円で間違いない旨,本件各詐欺の事実を自白し,被害者から受け取った現金で不動産を購入したりスーツ等を購入したりしたなどとその使途についても供述 資名下に現金をだまし取り,その合計金額は1億9600万円で間違いない旨,本件各詐欺の事実を自白し,被害者から受け取った現金で不動産を購入したりスーツ等を購入したりしたなどとその使途についても供述している。その内容は自然で,Bの供述とも概ね符合するものであり,その犯行状況や被告人の意図を率直に述べたものと認められる。被告人は,当初否認していた理由について,夫に問い詰められてお金をだまし取ったのではないと嘘を付いており,夫をがっかりさせるわけにもいかないので,本当のことが言えず,嘘をつき通していれば警察も事件にはできないと思っていたからである旨供述し,真実を述べるつもりになったのは,嘘をつき通すことはできないと思い,被害者のためにも本当のことを話そうと思ったからであると供述しており,自白するに至った経緯にも不自然な点はうかがわれない。 これに対し,弁護人は,被告人の捜査段階における供述は,判断ができないほどに疲労し,被害者に迷惑をかけたことは間違いないので真実を押し通すことができずに捜査官に迎合したものであると主張し,被告人も,当公判廷において,捜査段階の供述調書には捜査官が嘘ばかり書いたなどと供述している。しかしながら,被告人の供述調書には,最初に被害者に投資の話を持ち掛けた際には被害者から金額を言い出したことなど被告人にとって有利な主張や,被害者から交付を受けた現金の使途につき捜査官が把握していないものについても録取されているほか,被告人の体調についても録取されており,被告人の立場や体調に配慮した取調べがなされていたものと認められる。また,被告人に対する取調べの際に,供述の任意性や信用性に疑いを生じさせる強制や偽計が加えられた形跡はうかがわれない。 そうすると,被告人の捜査段階の自白には任意性が認められ,その信用性も十分であるとい 被告人に対する取調べの際に,供述の任意性や信用性に疑いを生じさせる強制や偽計が加えられた形跡はうかがわれない。 そうすると,被告人の捜査段階の自白には任意性が認められ,その信用性も十分であるというべきである。 4 被告人は,当公判廷において,被害者から受け取った現金は合計1億5000万円で,これはDなる人物に言われて被害者から受け取ったのであり,全額Dに渡したなどと弁解する。しかし,被告人の公判供述は,被害者から現金を受け取った日時・回数やDに現金を渡した点を含め,全体的に甚だ曖昧かつ不合理で一貫しないものとなっている。被告人は,第1回公判期日において公訴事実を認める旨の供述をしていたのに,その後に供述を変遷させるに至った理由についても合理的な説明をしていない。また,被告人の公判供述は,信用性のあるBの供述内容に反するとともに,被告人の捜査段階の供述とも符合しない。これらの諸点に照らすと,被告人の弁解は到底信用することができない。 5 以上の次第で,被告人は,判示のとおり被害者から現金をだまし取ったと認めるのが相当であり,被告人の当公判廷における弁解は信用できず,弁護人の主張は採用することができない。 (法令の適用)被告人の判示各所為はいずれも刑法246条1項に該当するが,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により犯情の最も重い判示別紙一覧表番号7の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役4年6月に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中120日をその刑に算入することとし,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由)本件は,被告人が,架空の投資話を持ち掛けて前後19回にわたり被害者を欺罔し,現金合計1億9600万円をだまし取ったという詐欺の 項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由)本件は,被告人が,架空の投資話を持ち掛けて前後19回にわたり被害者を欺罔し,現金合計1億9600万円をだまし取ったという詐欺の事案である。 被告人は,借金等の返済や不動産購入の資金を得ようなどと考えて本件に及んだものと認められるが,その利欲的で自己中心的な動機に格別酌むべき点はない。犯行の態様は,金を持っていそうな被害者に目を付け,約1年5か月の期間にわたり,自分が市場の関係者であるかのように装い,商品を買い付けて高値で売れば絶対に儲かるなどともっともらしい話をして投資に勧誘し,被害者に果物を送り届けたり旅行に連れて行くなどしながら,投資により利益が出たなどとして被害者を信用させ続け,さらには,既に多額の金員を支出していた被害者の心理に付け込んで清算のために金が必要だなどとして,1回当たり100万円から1000万円単位の現金をだまし取ったというものであり,本件は,巧妙かつ狡猾で大胆な犯行である。本件の被害総額は1億9600万円に上り,その結果も重大である。被害者は,高額の財産的損害を被ったのみならず,本件により家族関係にも悪影響が生じているようにうかがわれ,被告人に対して厳重な処罰を求めているのも当然のことである。以上によれば,本件の犯情は悪く,被告人の刑事責任は重い。 しかしながら,他方,被害者の側にも,被告人の甘言につられ,儲け話に乗ろうとして金員を交付したという事情が認められる。被告人は,詐欺の犯意や交付を受けた金額等については否認しているものの,被害者には申し訳ないことをした旨述べている。被告人は,本件後に30万円から40万円程度を被害者に返還しており,その後,被告人の夫において,被害者に対して月々4万円を送金するなどし,被害額に比して十分とは言い難いもの ことをした旨述べている。被告人は,本件後に30万円から40万円程度を被害者に返還しており,その後,被告人の夫において,被害者に対して月々4万円を送金するなどし,被害額に比して十分とは言い難いものの,一部被害の回復がなされている。また,被告人の夫が情状証人として出頭している。被告人には詐欺罪等による古い前科があるものの,昭和57年に有罪判決の宣告を受けて以降は前科のない生活を送っている。これらのほか,被告人が83歳の高齢であることなど,被告人のために酌むことのできる事情もある。 そこで,以上の諸事情を総合して考慮し,主文のとおり量刑した。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑懲役6年)平成15年9月12日宇都宮地方裁判所刑事部3係裁判官有賀貞博
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