平成25(わ)24 売春防止法違反

裁判年月日・裁判所
平成25年9月4日 岐阜地方裁判所
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判決文本文6,637 文字)

- 1 - 主文 被告人Aを懲役2年6月及び罰金30万円に,同有限会社Bを罰金30万円にそれぞれ処する。 被告人Aにおいてその罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。 被告人Aに対し,この裁判が確定した日から3年間その懲役刑の執行を猶予する。 被告人有限会社Bから現金10万6000円(岐阜県a警察署において保管中の現金64万9465円(領置番号省略)を没収する。 被告人両名から金4225万2750円を追徴する。 理由 (罪となるべき事実)被告人有限会社B(以下,「被告会社」という。)は,岐阜市b町c丁目d番地に本店を置き,同所所在の個室付き特殊浴場「甲」(以下,「本件店舗」という。)を営むもの,被告人Aは,被告会社の全株式を保有して同社を実質的に経営し,平成24年9月12日以降は名目上も同社の代表取締役に就任し,その業務全般を統括するもの,C及びDは,被告会社の従業員として本件店舗の管理,遊客の対応,売春婦の採用時の面接等を行うものであったところ,被告人Aは,C及びDと共謀の上,第1 被告会社の業務に関し,別表1(略)記載のとおり,同年4月3日から同年11月1日までの間,4回にわたり,本件店舗内において,Eほか3名との間で,同人らをして,同店舗で不特定の遊客を相手に対償を受けて性交させ,その対償を同人らと分配取得する旨約し,もってそれぞれ人に売春させることを内容とする契約をした。 第2 被告会社の業務に関し,別表2(略)記載のとおり,平成24年9月1日か- 2 -ら平成25年1月13日までの間,本件店舗と契約した売春婦である「F」ことGほかの売春婦らが,不特定多数の遊客であるHらを相手として売春するに際し,その情を知り ,平成24年9月1日か- 2 -ら平成25年1月13日までの間,本件店舗と契約した売春婦である「F」ことGほかの売春婦らが,不特定多数の遊客であるHらを相手として売春するに際し,その情を知りながら,遊客らから入浴料を徴して上記売春婦及び遊客らに本件店舗の個室を使用させ,もって売春を行う場所を提供することを業とした。 (証拠の標目)略(法令の適用) 1 罰条 被告人Aについて判示第1の所為契約毎に刑法60条,売春防止法10条1項判示第2の所為刑法60条,売春防止法11条2項 被告会社について判示第1の所為契約毎に刑法60条,売春防止法10条1項,14条判示第2の所為刑法60条,売春防止法11条2項,14条 2 刑種の選択(被告人Aとの関係,判示第1 の罪について)懲役刑を選択 3 併合罪の処理 被告人Aとの関係懲役刑につき刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い判示第2の罪の懲役刑に法定加重) 被告会社との関係刑法45条前段,48条2項 4 労役場留置(被告人Aとの関係)同法18条(金5000円を1日に換算) 5 刑の執行猶予(被告人Aとの関係,懲役刑について)同法25条1項 6 没収(被告会社との関係)- 3 -組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(以下,「組織犯罪処罰法」という。)13条1項1号,15条1項本文(主文掲記の現金10万6000円は,判示第2の罪に係る犯罪収益で,犯人以外の者に帰属しない。) 7 追徴(被告人両名との関係)組織犯罪処罰法13条1項1号 文掲記の現金10万6000円は,判示第2の罪に係る犯罪収益で,犯人以外の者に帰属しない。) 7 追徴(被告人両名との関係)組織犯罪処罰法13条1項1号,2号,16条1項(判示第2の罪に係る犯罪収益4235万8750円のうち,主文掲記の現金10万6000円を除く金額である4225万2750円については,既に費消され,或いは,他の財産と混和して混和額を特定することができない。)(追徴について) 1 検察官は,被告会社及び被告人Aは,判示第2の期間中に本件店舗を訪れた遊客が本件店舗に支払った金額の総額は1億1617万6000円を下回ることはないところ,売春婦が手にした金額も含め,その全額が判示第2の犯行による「犯罪収益」に当たる旨主張し,同金額相当の没収ないし追徴を求刑している。 しかし,本件において没収ないし追徴することができるのは,業としての売春場所提供罪(売春防止法11条2項)による犯罪収益であって,これを超えて,売春業ないし売春をさせる業そのものによる犯罪収益を没収ないし追徴することはできないというべきである。 すなわち,組織犯罪処罰法は,犯罪収益の前提犯罪として,業としての売春場所の提供罪(売春防止法11条2項)とは別に,いわゆる管理売春の罪(同法12条)を挙げている(組織犯罪処罰法別表42)。このうち後者は,売春婦を自己の占有・管理する場所等に居住させ,売春させること....... を業とする行為を処罰するものである一方,前者は,あくまでも場所の提供行為....... を処罰するものであり,- 4 -売春場所提供の対価や売春報酬の一部を取得していなくても,現に売春を行う場所を提供することを反復継続していれば成立し(最二小決昭和39・2・8刑集18巻2号43頁 処罰するものであり,- 4 -売春場所提供の対価や売春報酬の一部を取得していなくても,現に売春を行う場所を提供することを反復継続していれば成立し(最二小決昭和39・2・8刑集18巻2号43頁),また,利用し得る状態におけば足り,その場所で売春したかどうかも問わないと解される。このような両罪に係る罰条の解釈に加え,両罪の法定刑の違い(後者については,売春助長行為の中でも特に悪質な行為であるとして,売春防止法上,最も重い刑罰が規定されている。)をも併せ考えれば,業としての売春場所の提供罪に,売春業そのものや業として売春をさせる行為が包含されないことは明らかである。 そうである以上,売春行為そのものに関する対価は,管理売春による犯罪収益に該当し得るとしても,特段の事情がない限り,売春場所の提供行為自体により得た財産又はその報酬として得た財産(組織犯罪処罰法2条2項1号)と評価することはできず,業としての売春場所の提供罪による犯罪収益には当たらないというべきである。 本件においても,売春婦らは,判示第2の期間中,売春行為をする毎に,遊客が本件店舗に支払った金額のうち6割から7割程度の金額を自らの取り分として取得していると認められるところ,同金額は,その実質において,売春婦らによる売春行為の対価であることが明らかであり,同金額をも含めて被告会社ないし被告人Aが,売春.. 場所を提供した行為......... によって得た財産又はその報酬として得た財産とみることはおよそ困難である。本件において,上記特段の事情は認められず,売春行為そのものに関する対価は,判示第2の犯行による犯罪収益には当たらないというべきである。 なお,検察官は,①「客が支払う料金は,従業員たる売春婦による客との性交渉を含めた,被告会社の不可分一体の営業全体によって する対価は,判示第2の犯行による犯罪収益には当たらないというべきである。 なお,検察官は,①「客が支払う料金は,従業員たる売春婦による客との性交渉を含めた,被告会社の不可分一体の営業全体によって得られた収益とみることができる」からその全額を没収ないし追徴すべきであり,また,②売春婦の「取り分」は被告会社が得た収益全体の中から支払われる給与とみるべきであり,同収益を得るための経費に当たるから没収・追徴額から控除されるべきではないな- 5 -どと主張する。しかし,このうち①の点については,没収・追徴されるべき犯罪収益の前提犯罪は,あくまでも売春場所の提供罪であるのに,売春行為を含めた........ 営業全体.... による収益を問題としている点で論理的な一貫性を欠くといわざるを得ず,また,そうである以上,②の点についてはそもそも主張の前提を欠くというべきである(売春婦の取り分は,広い意味での売春業の経費とみる余地があるにしても,少なくとも本件との関係においては,売春場所の提供の経費とみることはおよそ困難である。)。 2 そこで,以上を踏まえ,判示第2の犯行による犯罪収益の金額を検討する。 本件店舗においては,フロント従業員が,入店した遊客から料金(①)を受け取り,その中から入浴料(②)を控除した金額(③)を売春婦に渡し,売春婦は,売春行為を終えた後,本件店舗に対し,上記受け取り額の中から,④個室使用料(「おとし金」)を支払うほか,帰宅時に,⑤雑費,お茶代,⑥税金,⑦ネット維持費を支払うシステムが採られていた。このうち⑤ないし⑦については,それぞれ1000円の定額に接客した遊客の数を乗じた金額とされていたが,①ないし④の金額はサービス時間,売春婦の指名の有無等によって異なっていた。 上記金額のうち,売春場所の提供に いては,それぞれ1000円の定額に接客した遊客の数を乗じた金額とされていたが,①ないし④の金額はサービス時間,売春婦の指名の有無等によって異なっていた。 上記金額のうち,売春場所の提供による犯罪収益とみることができるのは,①の金額から売春行為自体の対価を控除した金額であり,具体的には,②,④,⑤,⑦の合計金額である(⑤及び⑦については,いずれも,売春行為の経費と評価し得るほか,売春場所提供のための経費と評価することも可能であり,同金額も含めて没収・追徴の対象とし得るというべきである。)。 ア関係証拠によれば,平成24年9月1日から平成25年1月13日までの間に本件店舗を訪れた遊客は合計で少なくとも3262人に上り,これら遊客の支払額合計(①の合計金額)は1億1617万6000円を下回ることはないと認められる。 イこのうち,本件店舗が売春場所の提供によって得た金額は,平成24年9- 6 -月1日から平成25年1月12日までの間の分として,少なくとも3378万1000円,同月13日の分として,少なくとも10万6000円であると認められ,その合計額は,3388万7000円である。 また,関係証拠によれば,本件店舗においては,接客人数や売上額を意図的に過少計上することによって所得税や法人税の金額を減らし,利益を増大させる運用が常態化していたと認められるところ,C及びDの各供述調書,被告人A宛てに送信された売上報告メールや売春婦のスケジュール帳等の記載と押収された本件店舗の帳簿上の記載との比較等に照らせば,どんなに控え目に見積もっても2割ないし3割程度過少計上していたことは明らかである。 上記期間中の接客数や売上額の実数は,これを忠実に記載した書面が現存せず,正確な数値を認定することはできないものの,上記のよ 見積もっても2割ないし3割程度過少計上していたことは明らかである。 上記期間中の接客数や売上額の実数は,これを忠実に記載した書面が現存せず,正確な数値を認定することはできないものの,上記のような実情に照らせば,過少計上された書類に基づいて計算された金額等を過少計上の割合によって割り戻すことにより,その数値を推計することが可能である。判示第2の期間中に本件店舗における売春場所の提供によって被告会社が得た金額についても同様であり,その実金額は,3388万7000円(過少計上された書類に基づいて算定)を,過少計上の割合を最も控え目に2割と見積もり,同割合により割り戻した数値である4235万8750円を下回ることがないことは明らかである。 そこで,以上を前提に没収ないし追徴すべき額を検討するに,組織犯罪処罰法13条1項1号により没収することができる犯罪収益は,前提犯罪により得た財産又はその報酬として得た財産全体であり,前提犯罪を行うに当たって犯人が支出した費用等を控除すべきではない。本件においては,売春場所の提供により得た金銭の一部が,C,Dら従業員に対する給与や本件店舗の維持・管理費用等として支出されていたとしても,その金額は没収ないし追徴し得べき額から控除されるものではなく,上記4235万8750円全体が,没収ないし追徴し得る犯罪収益に該当するというべきである。 - 7 -そして,被告会社における経営実態や同社における被告人Aの地位等に照らせば,上記全額を被告会社及び被告人Aから剥奪するのが相当である。 したがって,被告会社から,判示第2の犯行による犯罪収益で犯人以外の者に属しないと認められる主文掲記の現金10万6000円を没収するとともした金額である4225万2750円については,既に費消され,或いは, て,被告会社から,判示第2の犯行による犯罪収益で犯人以外の者に属しないと認められる主文掲記の現金10万6000円を没収するとともした金額である4225万2750円については,既に費消され,或いは,他の財産と混和して混和額を特定することができないから,被告会社及び被告人Aから追徴するのが相当である。 (量刑の理由)本件は,金津園にある個室付き特殊浴場の経営者である被告人Aが,従業員2名と共謀の上,売春婦4名と売春契約をするとともに(判示第1),約4か月半にわたり,同人らを含む58名の売春婦に対し,本件店舗の個室を売春を行う場所として提供することを業とした(判示第2),という事案である。 被告人Aは,平成22年6月の開店当初から,2年半余りにわたり,複数の従業員らと役割分担をしつつ,インターネット広告等を使用して積極的に集客活動を行うとともに,多数の女性と売春契約をした上,これら売春婦に対し,同店の個室を売春の場所として提供するなどして,平成24年9月1日から平成25年1月13日までの期間だけでも1億円以上もの多額の売り上げを計上する大規模かつ継続的な営業に携わっていた。本件各犯行は,いずれもその一環として行われたものであり,組織的かつ営業的な犯行というべきである。 また,被告人Aは,開業資金を用意したほか,店舗の内装の修復や従業員の採用等,開店準備の中心的な役割を担った上,開店後は,本件店舗の実質的な経営者として,広告戦略等の経営方針の策定や売春婦の採用等を含め,その業務全般を統括し,その収益により生計を立ててていたのであって,職業的に本件各犯行に関与し,主導的かつ中心的な役割を果たした。 以上によれば,被告人Aの刑事責任は,共犯者であるCやDのそれに比して相当- 8 -に重いというべきである。 他方,被告人Aは, 的に本件各犯行に関与し,主導的かつ中心的な役割を果たした。 以上によれば,被告人Aの刑事責任は,共犯者であるCやDのそれに比して相当- 8 -に重いというべきである。 他方,被告人Aは,本件各事実を認め,自分なりの反省の態度を示していること,被告会社については,岐阜県公安委員会により営業廃止処分が下される見通しであり,その代表者である被告人Aは,被告会社による営業を再開する意図がないことはもとより,二度と違法な風俗営業等には関わらない旨述べていること,妻及び知人が出廷し,それぞれの立場において,被告人Aを監督する旨述べていること,被告人A自身,保釈後に開店した上記知人との共同経営に係る焼肉店を軌道に乗せるべく努力したい旨述べるなどして更生の意欲を示していること,被告人Aには,10年以上前の罰金前科が1件あるものの,そのほかに前科・前歴がないことなど,被告人Aのために酌むべき事情も認められる。 そこで,これらの事情を総合し,被告人Aを主文の刑に処した上,今回に限り,社会内で更生する機会を与えるのが相当であると判断し,その懲役刑の執行を猶予するとともに,被告会社に対し,主文の罰金刑を科することとした。 よって,主文のとおり,判決する。 (求刑-被告人Aにつき懲役2年6月及び罰金30万円,被告会社につき罰金30万円及び現金10万6000円の没収。被告人両名につき金1億1607万円の追徴)平成25年9月4日 岐阜地方裁判所刑事部 裁判官大西直樹

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