令和7(わ)220 道路交通法違反、危険運転致傷

裁判年月日・裁判所
令和7年10月8日 津地方裁判所
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判決文本文2,776 文字)

- 1 - 主文 被告人を懲役1年6月に処する。 理由 (罪となるべき事実)第1 被告人は、酒気を帯び、呼気1ℓにつき0.15mg以上のアルコールを身体に保有する状態で、令和7年5月18日午前3時53分頃、名古屋市中区(以下省略)付近道路で、普通乗用自動車を運転した。 第2 被告人は、令和7年5月18日午前10時57分頃、普通乗用自動車を運転し、三重県亀山市(以下省略)の道路を進行するに当たり、法令の規定により自動車の通行が禁止されている同道路の中央から右側部分の第二車両通行帯を、滋賀県甲賀市方面から三重県鈴鹿市方面に向けて逆行して進行中、折から同通行帯を対向進行してきたA運転の普通乗用自動車及び同車の後続車両の通行を妨害する目的で、重大な交通の危険を生じさせる速度である時速約15kmで逆行を継続し、A運転車両及び第一車両通行帯を進行してきたB運転の普通乗用自動車に著しく接近して、A運転車両及びB運転車両を停止させ、更に同車に追従走行していたC(当時58歳)運転の普通乗用自動車、D(当時63歳)運転の普通乗用自動車及びE運転の準中型貨物自動車に、B運転車両との衝突を回避するため第一車両通行帯上で順次停止させることを余儀なくさせた上、E運転車両の後方から進行してきたF運転の大型貨物自動車前部をE運転車両後部に衝突させ、その衝撃でE運転車両をその前方に押し出してD運転車両に衝突させ、さらにその衝撃でD運転車両をC運転車両に衝突させるなどし、よって、Dに加療約2週間を要する頸椎捻挫等の傷害を、G(当時49歳)に加療約1週間を要する頸椎捻挫等の傷害を、H(当時62歳)に全治まで約17日間を要する頸椎捻挫等の傷害を、I(当時49歳)に加療約1か月間を要する脊髄損傷の傷害を(以上4名はD運転車両の同乗者 )に加療約1週間を要する頸椎捻挫等の傷害を、H(当時62歳)に全治まで約17日間を要する頸椎捻挫等の傷害を、I(当時49歳)に加療約1か月間を要する脊髄損傷の傷害を(以上4名はD運転車両の同乗者)、Cに加療約6日間を要する胸背部打撲等の傷害を、J(当時44歳)に加療約6日間を要する胸背部打撲等の傷害を(以上2名はC運- 2 - 転車両の同乗者)それぞれ負わせた。 第3 被告人は、前記第2の日時頃、前記第2の場所で、前記のとおり自動車を運転中にDらに傷害を負わせる交通事故を起こし、自己の運転に起因して人に傷害を負わせたのに、直ちに車両の運転を停止してDらを救護する等必要な措置を講じず、かつ、その事故発生の日時及び場所等法律の定める事項を、直ちに最寄りの警察署の警察官に報告しなかった。 (量刑の理由) 1 量刑の中心となる危険運転(判示第2)のやり方は、上下線が分離された二車線の高速道路上を逆行することで、いずれの車線にも複数台の車両を停車させた上、それらに対面して接近し、一部の車両と接触、衝突もしながら、それらの間を通過して走行したというものである。この時点では時速約15kmと高速度ではなかったことを踏まえても、高速道路上における逆走行為であり、それなりに交通量のある昼前の時間帯だったことも併せ考えると、やり方は、重大な交通の危険を生じさせる可能性が非常に高く、悪質というべきである。実際に、複数台の車両に停止を余儀なくさせ、車列の最後尾の中型積載車に大型トレーラーが追突したことで、一部の車両が大破する多重事故を引き起こしている。負傷した被害者6名のうち、加療約1か月を要する脊髄損傷を負った1名を始め、幸いにも致命傷を負った者はいなかったが、高速道路を通常どおり走行中に突然本件に巻き込まれたことによる被害者らの精神的な衝撃も看 た被害者6名のうち、加療約1か月を要する脊髄損傷を負った1名を始め、幸いにも致命傷を負った者はいなかったが、高速道路を通常どおり走行中に突然本件に巻き込まれたことによる被害者らの精神的な衝撃も看過できず、結果はそれなりに重い。本件の危険運転に至るまでの経緯をみると、被告人は、街中で酒気帯び運転(判示第1)をした後も、更に複数の店で飲酒して運転を再開し、名古屋市内から高速道路に入り、急減速や蛇行するなどして走行し、目的地を通り過ぎた。 そして、具体的な事情は証拠上明らかではないものの高速道路上で逆走を開始した後、正しい向きで走行中の車両を複数台避けるなどしてトンネルを抜け、一旦は停止したものの、その後本件の危険運転に及んだと認められる。疲れていて眠かった旨の被告人の供述を踏まえても、誤って高速道路に進入して逆走した事案- 3 - などとは全く異なり、経緯には酌むべき点がない。そればかりか、被告人は、警察車両に飲酒運転が発覚することをおそれ、あえて再び逆走を開始することにしたというのであり、交通の危険を気にかけない非常に身勝手なその意思決定は、強い非難に値する。 そして被告人は、この危険運転だけでなく、その後すれ違い様に本件の事故が起きたことを認識できたにもかかわらず、逮捕されたくないとの身勝手な考えで、現場から逃走する犯行(判示第3)にも及び、多数の車両とすれ違いながら現場からさらに約9kmもの距離を逆走し続けた。これらの犯行の約7時間前には、酒気帯び運転(判示第1)にも及んでおり、被告人が交通ルールを軽視する態度は限度を超えている。 犯情を踏まえると、本件は危険運転致傷罪を量刑の中心とする事案の中でも悪い部類に位置づけられるというべきである。 2 そして、行為責任を中心とすべき量刑の枠組みを前提とすると、本件の翌日に自ら出 犯情を踏まえると、本件は危険運転致傷罪を量刑の中心とする事案の中でも悪い部類に位置づけられるというべきである。 2 そして、行為責任を中心とすべき量刑の枠組みを前提とすると、本件の翌日に自ら出頭した点で被告人に自首が成立する(現認した警察官は車両番号等を把握できておらず、証拠上、本件につき被告人の出頭前に犯人が特定されていなかった可能性を否定できない)ことや、前科がないことに加え、加入していた自動車保険により被害弁償が見込まれ、物損分を含めた一部については既に完了していること、母が情状証人として同居して監督を誓ったこと、被告人が反省文を作成し、公判廷でも本件について謝罪した上、再犯をしないと約束したことなどの被告人にとって有利な事情を考慮しても、刑の執行を猶予することは相当でなく、被告人は実刑を免れない。 そこで、上記の被告人に有利な事情を刑期の点で考慮し、主文の刑を定めた。 (検察官の求刑‐懲役3年、弁護人の科刑意見‐執行猶予付き判決)令和7年10月8日津地方裁判所刑事部 - 4 - 裁判官湯川亮

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