【DRY-RUN】○ 主文 一 被告中京税務署長が原告に対し昭和四〇年一〇月一五日付でなした原告の昭和 三九年分所得税の総所得金額を八四万三六〇〇円と更正した処分のうち、二六万三 七〇〇円を超える部分を取消す。 二 被
○ 主文一被告中京税務署長が原告に対し昭和四〇年一〇月一五日付でなした原告の昭和三九年分所得税の総所得金額を八四万三六〇〇円と更正した処分のうち、二六万三七〇〇円を超える部分を取消す。 二被告大阪国税局長に対する訴えを却下する。 三訴訟費用中、原告と被告中京税務署長との間に生じたものは同被告の負担とし、原告と被告大阪国税局長との間に生じたものは原告の負担とする。 ○ 事実第一当事者の求めた裁判一請求の趣旨 1 主文第一項と同旨 2 被告大阪国税局長が原告に対し昭和三九年分所得税の更正処分に対する審査請求について昭和四三年五月一三日でなした裁決を取消す。 3 訴訟費用は被告らの負担とする。 二請求の趣旨に対する被告らの答弁 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 第二当事者の主張一請求原因 1 原告は、洋品雑貨の販売業を営む者であるが、被告中京税務署長(以下、被告署長という)に対し昭和二五年分の所得税総所得金額を二六万三七〇〇円とする確定申告をしたところ、同被告は昭和四〇年一〇月一五日付でこれを八四万一二六〇〇円に更正する処分(以下、本件更正処分という)を行ない、その頃これを原告に通知した(右申告所得金額による算出税額は〇円であり、更正所得金額による算出税額は九万五一〇〇円である)。原告は右更正処分を不服として昭和四〇年一一月一三日同被告に対し異議の申立をしたが、同被告は翌四一年二月九日これを棄却する旨の決定をなし、その頃これを原告に通知した。 原告は更に、右決定を不服として昭和四一年三月九日被告大阪国税局長(以下、被告局長という)に対し審査請求をしたが、同被告は昭和四三年五月一三日これを棄却する旨の裁決(以下、本件裁決という)をなした。 2 しかしながら、本件更正処分に次のとおり、その手続に違法があり、 下、被告局長という)に対し審査請求をしたが、同被告は昭和四三年五月一三日これを棄却する旨の裁決(以下、本件裁決という)をなした。 2 しかしながら、本件更正処分に次のとおり、その手続に違法があり、かつ所得を過大に認定したものであるから、違法である。 (一) 原告は全国商工団体連合会傘下の京都府中京民主商工会(以下、これらの会を単に民商という)の会員であるところから、被告署長は民商の組織を破壊するために、ことさら原告を対象としてその所得調査を行なつたうえ、原告に不利益な本件更正処分をなしたものであつて、これは憲法一四条に違反するとともに同法二一条で保護された結社の自由を侵害するものである。 (二) 本件更正処分は違法な税務調査に基づくものであるから違法である。 税務行政庁が税務調査をなすに際しては、被調査者の営業に支障をきたすことがないようにするため、事前にその日時等を通知すべきであるところ、被告署長は税務調査をなすに際して原告に事前通知をしなかつた。かかる調査は、納税者の営業と生活を充分に尊重する民主的税務行政のあり方からして違法といわなければならない。 また、税務調査は、その目的が本来納税者の所得等の調査にある以上、納税者の同意を得てこれをなすべきであるところ、被告署長は原告の同意を得ずにその取引先に対して反面調査を行なつたから、かかる反面調査は違法である。 更に、税法上原則とされる申告納税制度の下においては、税務調査をなすには納税者の申告内容を疑うに足る合理的理由の存在を要し、かつ所得税法上の質問検査権を行使するに際しては調査の具体的必要性ないし理由の開示を要すると解すべきところ、原告に対して調査を行なつた中京税務署の調査担当官は帳簿等の呈示を要求したのみであつて、右必要性ないし理由を全然開示しなかつたから、右調査は違法である。 右に し理由の開示を要すると解すべきところ、原告に対して調査を行なつた中京税務署の調査担当官は帳簿等の呈示を要求したのみであつて、右必要性ないし理由を全然開示しなかつたから、右調査は違法である。 右に述べたように、税務調査が違法な場合には、更正処分の内容の適否を論ずるまでもなく更正処分は違法となり取消されるべきである。 (三) 本件更正処分はその通知書に更正処分の理由が全く附記されていなかつたから違法である。 更正処分が行政処分である以上、税法上明文規定のある青色申告者に対する更正処分と同じく、白色申告者に対する更正処分についても理由附記に更正処分の手続的要件である。従つて、これを欠いた本件更正処分にその内容の適否を論ずるまでもなく、取消されるべきである。 また、本訴においても、本件更正処分をなした理由につきなんらの主張、立証がないから、内容の当否を論ずるまでもなく、本件更正処分は取消されるべきである。 (四) 原告の昭和三九年分における総所得金額は二六万三七〇〇円(確定申告額)であるから、本件更正処分のうち右金額を超える部分は原告の所得を過大に認定した違法がある。 3 本件裁決の違法事由本件審査手続には、以下のとおり違法事由があるから、本件裁決も違法である。 (一) 原告は被告局長に対し、行政不服審査法(以下審査法という。)二二条に基づき、原処分庁である被告署長の弁明書副木の送付方を請求したところ、被告局長は、被告署長に対して弁明書の提出を要求していないから右請求に応じられない旨回答してきた。しかし、被告局長としては、審査請求が期間徒過による不適法な場合とか、審査請求を全部認容する場合など特別な事由がある場合以外は、被告署長に対して弁明書の提出を要求すべきであつて、被告局長がこれをしなかつたことは同法条に反し違法である。 (二) 被告局長が被 場合とか、審査請求を全部認容する場合など特別な事由がある場合以外は、被告署長に対して弁明書の提出を要求すべきであつて、被告局長がこれをしなかつたことは同法条に反し違法である。 (二) 被告局長が被告署長に対して弁明書の提出を要求しなかつたため、原告は審査法二三条による右弁明書に対する反論書を提出する権利を違法に侵害された。 (三) 原告が、審査手続において審査法三三条二項に基づき被告局長に対して本件更正処分の理由となつた事実を証する書類の閲覧を請求したのに対し、同被告が原告に閲覧を許可したものは確定申告書、更正決議書、異議申立書、異議申立決定決議書のみで、その各書類の表題だけからも明らかなように、いずれも右更正処分の理由となつた事実を証明するものではなく、審査法三三条に規定する「書類」に該当しないものであることは明白である。本件更正処分の理由となつた事実を証明する書類は、いわゆる所得調査書であつて、原告は同書類を閲覧することなくして有効適切な防禦を行なうことができないから、被告局長のなした右閲覧許可は違法な閲覧拒否と同一視されるべきである。 四被告局長は、本件審査手続において、実質的審査はなんら行なわれないまま被告署長のなした前記の違法な更正処分をそのまま認容したもので、審理不尽の違法がある。 4 よつて、本件更正処分及び本件裁決はいずれも違法であるから、その取消を求める。 二請求原因に対する被告らの認否 1 請求原因1の事実は認める。 2 同2(一)の事実のうち、原告が民商会員であることは不知。その余は否認する。 3 同2(二)の主張はすべて争う。 4 同2(三)のうち、本件更正処分の通知書に理由附記のなかつた事実は認めるが、その余の主張は争う。 5 同2(四)の事実は否認する。 6 同(一)の事実のうち、原告が弁明書副本の送付方を請求 争う。 4 同2(三)のうち、本件更正処分の通知書に理由附記のなかつた事実は認めるが、その余の主張は争う。 5 同2(四)の事実は否認する。 6 同(一)の事実のうち、原告が弁明書副本の送付方を請求したこと、被告局長が副本を送ることができない旨の回答をしたことは認めるが、その余は争う。 7 同3(二)の主張は争う。 8 同3(三)の事実のうち、原告が被告局長に対して書類の閲覧請求をしたこと、同被告が確定申告書、更正決議書、異議申立書、異議申立決定決議書の閲覧を許可したことは認めるが、その余は争う。 9 同3(四)の主張は争う。 三被告署長の主張 1 本件更正処分の手続上の適法性税務調査をなすにあたり事前に通知するか否かは課税庁の判断事項に属するものであり、質問検査権の行使についての理由および必要性の具体的な告知が法律上の要件とされているわけでもなく、また反面調査をする必要がある場合には、事前に納税者の了解を得なければならないものではない。 従つて、本件更正処分の手続過程においで違法が存しないことはもちろんであるが、質問検査権の行使は更正処分の前提たる行政手続(行為)ないしは法律要件ということはできないから、仮に質問検査権の存使にあたつて違法の問題が生じたとしても、その違法のために本件更正処分が取消されるべきものではない。 また、所得税の更正処分について理由附記を要するのは青色申告にかかる更正の場合だけであつて、原告の場合はいわゆる白色申告者であるから、本件更正処分にあたつて理由を附記しなかつたことはなんら違法ではない。 なお、課税処分は、申告とあいまち客観的、抽象的に既に成立している租税債務を具体的に確定させる手続であるから、当該課税処分が適法であるか否かは当該処分において認定された租税債務が客観的に存在するか否かにかかる。従つて、被告署長 ち客観的、抽象的に既に成立している租税債務を具体的に確定させる手続であるから、当該課税処分が適法であるか否かは当該処分において認定された租税債務が客観的に存在するか否かにかかる。従つて、被告署長が更正処分時にどのような調査をし、どのような資料に基づき、どのような認識判断をしたかということは、ひとつの歴史的な事実であつて、それによつて直ちに課税処分の適否が左右されるものではない。そして、訴訟において当該処分の認定した租税債務が客観的に存在することが認められれば当該処分は適法とされ、租税債務額よりも少ないことが認められれば当該処分はその限度で違法となる。そもそも、税法が積極的に一定の手続要件を定めているのは、青色申告書に記載された課税標準等を更正する場合の帳簿調査およびその場合の更正理由の附記だけであつて、これ以外には手続的要件についての規定がなく、このことは、現行税法自体が憲法の適正手続保障の見地からみても、右の手続要件以外には課税処分の違法事由にならないとの立場をとつていることを示すものである。 2 本件更正処分における課税の根拠(一) 原告の昭和三九年分総所得金額に一〇五万七九一二円(その算定根拠は次のとおり)であり、その範囲内でなされた本件更正処分は適法である。 (1) 収入金額七二〇万三〇〇〇円(2) 必要経費((イ)+(ロ)+(ハ)+(ニ))六一四万五〇八八円(イ) 売上原価および一般経費五九〇万六四六〇円(ロ) 雇人費一二万五〇〇〇円(ハ) 支払利子二万七二三八円(ニ) 専従者控除八万六三〇〇円(3) 所得金額((1)-(2)) 一〇五万七九一二円(二) (推計の必要性)ところで、右金額のうち(1)の収入金額と(2)(イ)の売上原価および一般経費につ 除八万六三〇〇円(3) 所得金額((1)-(2)) 一〇五万七九一二円(二) (推計の必要性)ところで、右金額のうち(1)の収入金額と(2)(イ)の売上原価および一般経費については、次の事情により推計せざるをえなかつた。 (1) 中京税務署の調査担当官は、原告の昭和三九年分所得税に関する調査のため昭和四〇年夏頃に三回ほど原告方へ赴いたが、原告と面談できたのは一回だけであつた。 (2) その際、右調査担当官は原告に所得計算に関する帳簿書類等の提示を求めたところ、原告は、帳簿も伝票類もなく、特定の仕入先はないうえ仕入販売とも現金取引が多い旨を説明したので、原告の取引先からの調査も不可能であることが判明した。 (三) 右(二)の推計の方法は次のとおり(以下、本件推計という)である。 (1) 大阪国税局長において、同国税局管内(大阪府、京都府、兵庫県、滋賀県、奈良県、和歌山県)の全税務署八四署のうち大蔵省組織規程上、種別「A」とされている四三署(以下、A級税務署という)管内で洋品雑貨(販売小売)業を営む者の昭和三九年分所得内容につき実額調査を行なつておられた基礎資料(以下、実調資料という)を集計したところ、従事員一人当りの平均収入金額は二四〇万一〇〇〇円であり、収入金額から売上原価および一般経費を控除した金額即ち所得金額と特別経費の合計額(標準外経費控除前所得)の収入金額に対する割合(以下、標準外経費控除前所得率という)は〇・一八(小数点第三位以下切捨て)であつた(内訳は別表のとおり)。 (2) ところで、昭和三九年当時における原告の営業形態は次のとおりであつた。 (イ) 京都市烏丸三条の市外電話局、京都市内の上、西陣、伏見、山科、壬生の各電報電話局を月曜日から金曜日にかけて毎日どこかの局へ出張して販売したほか、安井病院や の営業形態は次のとおりであつた。 (イ) 京都市烏丸三条の市外電話局、京都市内の上、西陣、伏見、山科、壬生の各電報電話局を月曜日から金曜日にかけて毎日どこかの局へ出張して販売したほか、安井病院や知人宅を巡回して販売していた(かかる販売方法を、以下出張販売という)。 (ロ) また出張販売のほか、原告宅の表の間(四ないし四・五坪)において、陳列棚に商品を陳列し、畳か板敷の間に商品を置いて小売販売をしていた(以下、これを店舗販売という)。 (3) そして、出張販売には原告のほかその妻と使用人で当時三一歳のAが従事し、店舗販売は主として原告の母が担当していたのであるから、従事員数は四人であるが、原告の妻を〇・八人、母を〇・二人と能力評価して合計三人と認定した。 なお、原告は事業専従者一名を申告し、専従者控除をうけている。 (4) そこで、実調資料による従事員一人当りの収入金額二四〇万一〇〇〇円に原告の従事員数三(人)を乗じると、収入金額は次のとおり七二〇万三〇〇〇円となる。 2、410、000円×3(人)=7、203、000円更に、一から実調資料による標準外経費控除前所得率(〇・一八)を差引くと実調資料による売上原価および一般経費率になるから、右収入金額七二〇万三〇〇〇円にこれを乗じると、売上原価および一般経費は次のとおり五九〇万六四六〇円となる。 7、203、000円×(1-0.18)=5、906、460円(四) (推計の合理性)ところで、本件推計は次の諸点からみて極めて合理的なものである。 (1) 実調資料は、原告の営業地が属する京都市等の都会地を管理するA級税務署から収集されたものであるから、別表記載の同業者と原告は営業地について類似性を有し、また事業規模および営業形態において多様性を有する法人企業を除いた同業個人事業者を対象とし、青色申 理するA級税務署から収集されたものであるから、別表記載の同業者と原告は営業地について類似性を有し、また事業規模および営業形態において多様性を有する法人企業を除いた同業個人事業者を対象とし、青色申告者については実地調査を、白色申告者については収支実額調査を行なつた者のうち、年の中途で開廃業した者、他の業種と兼業していて収入金額等の区分計算ができない者、あるいは不服申立ないし訴訟で係争中の者等特殊事情にある者を除いた全員について収集されたものであるから、その資料収集に恣意の介在する余地はなく、その内容(数値)も一般性を有し、かつ正確なものである。 (2) ところで、別表記載の同業者である洋品雑貨(販売小売)業者の中に出張販売をなす者またはこれと店舗販売を併用する者が含まれているか否かは不明であるが、このことはそれらの者に前記推計方法を適用するについて妨げになるものではない。 即ち、店舗販売の場合は出張販売と比較して、一般的に売上額が多い反面、店舗維持に要する一般経費は問題なく多いのであつて、出張販売には多少の値引が伴うとしても、利益率は店舗販売の場合よりむしろ大きいのである。ことに原告のように現金仕入が主であれば、仕入原価は低くなるから、なおさら利益率は大きくなる。 なお、出張販売でも原告のように多数の固定客を擁するものは条件の悪い店舗販売より売上額は多いと考えられるか、かかる条件の良否を平均化によつて捨象したところに前記推計方法を採用する合理性の根拠がある。 四被告局長の主張 1 審査法二二条一項は「審査庁は・・・・・・・・・・・・相当の期間を定めて、弁明書の提出を求めることができる」と定めているが、右規定の形式、法律の趣旨を総合すれば、審査庁が処分庁に対して弁明書の提出を求めるか否かは、審査庁の自由裁量に属する事項であると解されるから めて、弁明書の提出を求めることができる」と定めているが、右規定の形式、法律の趣旨を総合すれば、審査庁が処分庁に対して弁明書の提出を求めるか否かは、審査庁の自由裁量に属する事項であると解されるから、被告局長が弁明書の提出を求めることなくして審査請求に対する裁決をしたことは違法ではない。更に、国税に関する法律に基づく処分で、所得税にかかる審査請求の審理は、事案が大量に発生し、かつ、当該処分に対する不服が要件事実の認定にかかるものであるから、右審査請求について、被告署長から弁明書を徴取し、これを審査請求人に送付して同人からこれに対する反論書の提出を待ち、これらの書面を資料として審理するよりも、協議官が自ら進んで必要な調査を行ない、税務署関係職員および審査請求双方から口頭で意見を聴取する方が、はるかに迅速で適正な処理をはかることができ、この方法は、いわゆる書面による審理方式にくらべ、より一層不服審査制度の趣旨に合致する。従つて、被告局長が本件審査請求について弁明書の提出を求めなかつたことは、裁量権の範囲を超えるものではなく、裁量権の濫用とはならない。 2 本件審査手続において、原告は処分の理由となつた事実を証する書類の閲覧を請求したので、被告局長は、確定申告書、更正決議書、異議申立書、異議申立決定決議書の閲覧を許可したが、これに対して原告は、右各書類が処分の理由となつた事実を証するものにあたらないので、右閲覧許可は全く無に等しく閲覧拒否と同視されるべきであると主張する。これは、被告署長が作成した所得調査書の閲覧を許可しなかつたためであると思われるが、本件の場合、原告から閲覧請求のあつた当時処分庁である被告署長から審査庁である被告局長に提出されていた書類は、被告局長が原告に閲覧を許可した前記書類のみで、所得調査書は含まれていなかつたから、被告 本件の場合、原告から閲覧請求のあつた当時処分庁である被告署長から審査庁である被告局長に提出されていた書類は、被告局長が原告に閲覧を許可した前記書類のみで、所得調査書は含まれていなかつたから、被告局長が原告の書類閲覧請求を拒否したことにはならない。 更に、書類閲覧請求権は審査法三三条の規定に基づくが、右規定によれば、処分庁がいかなる書類等を審査庁に提出するかは処分庁の裁量に委ねられており、審査請求人が閲覧を求めうるのは「処分庁から審査庁に提出された書類その他の物件」に限定され、審査請求人が審査庁に対し、処分庁から新たに書類等の提出を求めるよう請求できるものではない。とくに、本件の如く、国税に関する法律に基づく所得税の課税は、事案が大量かつ回帰的に発生し、また、継続的に要件事実を認定する必要上、処分庁は所得調査書を常に手許に保管していなければ円滑な税務行政の運営が期し難いため、審査手続においても所得調査書は処分庁に保管し、審査庁の審理担当協議官が処分庁に出向いて直接閲覧する方法をとつており、本件の場合も右の理由から所得調査書は審査庁に提出されなかつたものである。 なお、右のとおり審査庁の審理担当協議官が直接所得調査書の閲覧をした場合、調査メモを作成し資料を収集していることもあるが、これらは審査庁において自ら収集した資料そのものであり、処分庁から提出された書類と同視することはできず、右メモは審査法三三条の閲覧請求の対象となるものではない。 3 被告局長は、原告から昭和四一年三月九日に提出された本件更正処分に対する審査請求書を直ちに大阪国税局協議団に回答した。そこで、同国税局の担当協議官は原告から必要事項を聴取する等の調査を行なつて審理した結果、本件更正処分は相当であると認められたから、他の二名の協議官と合議のうえ右審査請求を棄却する議決をなし した。そこで、同国税局の担当協議官は原告から必要事項を聴取する等の調査を行なつて審理した結果、本件更正処分は相当であると認められたから、他の二名の協議官と合議のうえ右審査請求を棄却する議決をなし、右協議団本部長が右議決内容を被告局長に報告した。被告局長はこれに基づいて本件裁決をなしたものであつて、審理不尺の違法はない。 4 よつて、本件審査手続にはなんらの瑕疵もなく、本件裁決は適法である。 五被告らの主張に対する原告の認否ならびに反論 1 被告署長の主張1はすべて争う。 2 同2(本件更正処分における課税の根拠)について(一) 同2(一)の事実のうち、雇人費、支払利子および専従者控除の各金額がそれぞれ一二万五〇〇〇円、二万七三二八円および八万六三〇〇円であることは認めるが、その余は否認する。 (二) 同2(二)(推計の必要性)の事実のうち、(1)は認めるが、(2)は否認する。 原告は調査担当官と一回面談しただけであり、しかも調査担当官の質問に対しては素直に答えたのであつて、帳簿等の呈示要求もしないで実額調査が不可能であると判断したのは誤りであり、かりに帳簿等がなかつたとしても原告の協力により実額調査をなしえたのであるから、推計の必要性はなかつたものといわなければならない。 (三) 同2(三)(推計の方法)のうち、(1)の事実は不知。(2)の事実のうち、(ロ)は否認するが、その余は認める。(3)の事実は否認する。 昭和三九年当時の原告宅は表にガラス戸があつて中は見えず、看板もなかつたから、近隣の者も原告宅で洋品雑貨の販売をしていることはほとんど知らなかつたのであつて、これをもつて店舗販売とみるのは明らかに誤りである。かりに、原告宅に店舗があつたとしても、原告は売上のほとんどすべてを出張販売に依存していた。 更に、従事員数を三人と認定したこと かつたのであつて、これをもつて店舗販売とみるのは明らかに誤りである。かりに、原告宅に店舗があつたとしても、原告は売上のほとんどすべてを出張販売に依存していた。 更に、従事員数を三人と認定したことは誤りである。Aは小学校一年生位の知能しかなく、一人で販売に従事することはとうてい不可能であつたし、原告の母も高齢で留守番ができるぐらいであつて、この二人は従事員数に加えるべきではなかつたのである。従つて、原告の当時の従事員数は二人未満であつた。 (四) 同2(四)(推計の合理性)のうち、別表記載の同業者の営業形態が不明であるとの事実は認めるが、その余の点は争う。 原告の出張販売の主たる売上先は電気通信共済会(前出各電報電話局)であつたが、その近畿支部長との契約によつて、市価より一割位安く販売し、かつ売上高の三パーセントを右共済会に納めなければならなかつたばかりか、出張販売は自動車の維持費等営業経費もかなりかかるのであつて、被告署長は本件推計をなす前提として別表記載の同業者が原告と同程度の営業形態ないし営業規模であることを明らかにしなければならない。しかるに、右のとおりこれは明らかではないから、別表記載の数値等の合理性を検討するまでもなく、本件推計は合理性を欠くものである。 更に、別表記載の数値について、それが正確なものであるとしても、従事員一人当りの収入金額は最低は番号三九の一〇二万二〇〇〇円から最高は番号三四の七八五万六〇〇〇円と七倍もの差があり、標準外経費控除前所得率も最低は番号三七の一二・四七パーセントから最高は番号二八の二八・四六パーセントと二倍以上の差があるのであつて、その平均値が真実に近似するとはとうていいえないのであるから、これをそのまま適用すること自体合理性を欠くものである。 3 被告局長の主張1と2は争う。3の事実のうち、被告 倍以上の差があるのであつて、その平均値が真実に近似するとはとうていいえないのであるから、これをそのまま適用すること自体合理性を欠くものである。 3 被告局長の主張1と2は争う。3の事実のうち、被告局長がその主張のとおり審査請求書を回付したこと、担当協議官が原告から必要事項を聴取したことは認めるが、その余は争う。 第三証拠(省略)○ 理由一請求原因1の事実(本件更正処分および裁決の経過)については当事者間に争いがない。 二原告は、本件更正処分のうち総所得金額が原告の確定申告額を超える部分は被告署長の過大認定であつて違法である旨主張するので、まず被告署長主張の課税根拠について判断する。 1 (推計の必要性)中京税務署の調査担当官が、原告の昭和三九年分所得税に関する調査のため昭和四〇年夏頃に三回ほど原告方へ赴いたが、原告と面談できるのは一回だけであつたことは当事者間に争いなく、証人Bの証言ならびに弁論の全趣旨によれば、右面談の際、右調査担当官が原告に帳簿、伝票等営業関係の書類の提示を求めたが、原告は「知人関係を巡回して出張販売しているから記帳の必要はなく、また仕入も室町方面とか大阪の丼池筋での現金仕入であるから、営業関係の書類はない」と答えて帳簿等を提示しなかつたことが認められ、原告本人尋問の結果中右認定に反する部分は措信できず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。 右認定事実によれば、原告の取引先からする調査(反面調査)を含めて実額調査は極めて困難であることが認められるから、被告署長が総所得金額の算定根拠のうち(雇人費、支払利子および専従者控除の各金額については当事者間に争いがない)収入金額と売上原価および一般経費を推計により算出したものもやむをえなかつたものというべきである。 2 (推計の合理性)次に、実調資料による右推計の合理性 控除の各金額については当事者間に争いがない)収入金額と売上原価および一般経費を推計により算出したものもやむをえなかつたものというべきである。 2 (推計の合理性)次に、実調資料による右推計の合理性について検討を加えることとする。 (一) 成立に争いのない乙第一号証、第五三号証、その方式および趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるからいずれも真正な公文書と推定すべき乙第二号証、第三、第四号証の各一、二、第五号証の一ないし五、第六号証、第七号証の一、二、第八ないし第一〇号証、第一一号証の一、二、第一二号証の一ないし八、第一三、第一四号証の各一、二、第一五号証の一ないし五、第一六号証、第一七号証の一ないし三、第一八、第一九号証、第二〇号証の一、二、第二一号証の一ないし四、第二二、第二三号証の各一、二、第二四ないし第三〇号証、第三一号証の一、二、第三二号証の一ないし三、第三三号証の一、二、第三四、第三五号証、第三六号証の一、二、第三七号証、第三八号証の一ないし三、第三九号証、第四〇号証の一ないし四、第四一、第四二号証、第四三号証の一ないし三、第四四号証の一、二、第四五号証の一ないし三、第四六号証、第四七号証の一ないし一二、第四八ないし第五二号証によれば、被告局長は大阪国税局管内の全税務署八三署のうちA級税務署四三署(大阪、京都、神戸の各市内署およびその周辺の一定規模以上の大きな税務署である)に対し「所得税同業者調査票の提出について」と題する昭和四四年九月二日付通達を発したこと、A級税務署の管内に属する納税者数は大阪国税局管内の納税者数の約八〇パーセントに達すること、A級税務署は右通達に基つき、自署管内で洋品雑貨(販売小売)業を営む個人事業者の昭和三九年分所得内容につき、青色申告者については帳簿の実施調査を、白色申告者については収支実 〇パーセントに達すること、A級税務署は右通達に基つき、自署管内で洋品雑貨(販売小売)業を営む個人事業者の昭和三九年分所得内容につき、青色申告者については帳簿の実施調査を、白色申告者については収支実績調査を行なつたもの(推計によるものは含まない)のうち当該年度中に開廃業したもの、洋品雑貨(販売小売)業以外の業種と兼業していて会計上その兼業との区分が不可能なものおよび作成時に不服申立ないし訴訟で係争中のものを除外したうえ、同業者調査票という形式に整理して被告局長に報告したこと、右調査票を基礎として集計整理すれば別表のとおりとなることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。 右認定事実によれば、別表記載の同業者は大阪国税局管内の大多数の納税者が属するA級税務署管内から客観的な基準によつて選択されたものであるからその選択にあたつて恣意の介在する余地はなく、また所得内容についても、実額を基礎として実地に調査したうえ、年度途中の開廃業などの不確定要素を除去したものであるから、その数値に関しては一般性を有しかつ正確なものであるといえる。従つて、右数値は同業者の従事員一人当りの収入金額等を推計するに際して参考に値するものである(もつとも、その平均値が、同業者間の営業形態、営業規模ないし従事員数等の個別的条件を全く捨象しても、通有性を有するというものではない)。 (二) ところで、原告が昭和三九年当時、洋品雑貨(販売小売)業を営んでいたこと、その頃の営業形態が、烏丸三条の市外電話局ほか五か所(いずれも京都市内)の電報電話局へ平日に一か所ずつ出張して販売するほか、安井病院とか知人宅を巡回訪問して販売する出張販売であつたことは当事者間に争いがなく、証人Cの証言および原告本人尋問の結果によれば、右各局においては、食堂の前の廊下とか入口附近にある階段の下な か、安井病院とか知人宅を巡回訪問して販売する出張販売であつたことは当事者間に争いがなく、証人Cの証言および原告本人尋問の結果によれば、右各局においては、食堂の前の廊下とか入口附近にある階段の下などで各局から借りた机(半坪位)の上に出張の都度自宅から自動車で運んできた商品を並べて販売していたこと、原告はその収入のほとんどすべてを出張販売によつて得ていたことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。右認定事実によれば、原告の営業形態は出張販売であつたというべきである。 なお、被告署長は原告が自宅で店舗販売もしていたと主張するので判断するに、証人Cの証言により昭和三〇年頃に原告方を撮影した写真であると認められる検甲第一号証、同じく同四一年頃の原告方の写真であると認められる同第二号証、原告本人尋問の結果により昭和三九年頃の原告方の写真であると認められる同第四号証、成立に争いのない乙第五五号証、証人Cおよび同Bの各証言ならびに原告本人尋問の結果によれば、昭和三九年当時の原告宅は道路から臨んで右側に透明ガラス戸の出入口があつて、これを入ると半坪位の土間があり、その右側に巾一間位で三段ないし四段の陳列棚が設けてあり、その左側にある四坪位の畳または板敷の間は商品置場になつていたこと、そこでの販売小売を全くしなかつたわけではなく、主として留守番をしている原告の母がこれを担当して毎日三〇〇円位(稀に一〇〇〇円ないし二〇〇〇円)の売上があつたものの、原告告の道路側は右出入口を除いて磨ガラスの窓と壁であり、看板等もなかつたため、その客も原告宅で洋品雑貨を販売していることを知つている近隣の者に限られていたことが認められ、証人Cの証言および原告本人尋問の結果中右認定に反する部分はいずれも措信でぎす、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。 右認定の原告宅の外観、 いることを知つている近隣の者に限られていたことが認められ、証人Cの証言および原告本人尋問の結果中右認定に反する部分はいずれも措信でぎす、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。 右認定の原告宅の外観、構造および販売設備と原告の販売商品が洋品雑貨であること(前示のとおり)を併せ考えると、原告宅における右の程度の販売小売をもつて、販売のため商品を陳列展示する設備のある建物(店舗)において来集する不特定多数の客に対して販売することを要素とする通常の店舗販売とみることは困難である(成立に争いのない乙第五四号証によれば、原告宅を「店舗」として損害保険をかけたことが認められるが、これは右判断を左右しうるに足りるものではない)。 (三) しかるに、前示同業者調査票の作成にあたり調査の対象とされた洋品雑貨(販売小売)業者の中に出張販売を営業形態としている者が含まれているかどうか明らかでないことは被告署長の自認するところであり、出張販売は通常の店舗販売と営業形態を全く異にするものであるから、出張販売による売上金額、必要経費等について通常の店舗販売と同視することには疑問を呈せざるをえない。従つて、原告のような出張販売による洋品雑貨業者に前示同業者調査票に基づく数値を適用することに合理性が認められるためには、被告署長において、業種の同一性のほかに少くとも、出張販売によつた場合の所得率および従事員一人当りの収入金額が一般的に、通常の店舗販売による場合に劣るものではないことを主張立証しなければならないというべきである。この点につき被告署長は出張販売の方が通常の店舗販売による場合よりも一般的に利益率は大きい旨主張するが、本件全証拠によつてもこれを認めることはできないうえ、従事員一人当りの収入金額が通常の店舗販売の場合に較べて一般的に劣るものではないことの主張はない( る場合よりも一般的に利益率は大きい旨主張するが、本件全証拠によつてもこれを認めることはできないうえ、従事員一人当りの収入金額が通常の店舗販売の場合に較べて一般的に劣るものではないことの主張はない(むしろ、通常の店舗販売に較べて売上額の少いことは被告署長の自認するところである)。 そうである以上、右の点を明らかにしないまま、別表記載の同業者らの従事員一人当りの収入金額および標準外経費控除前所得率の平均値を漫然原告に適用して算出された本件推計所得額を原告の所得実額に近似するものと推定することは、合理的根拠に欠けることになり、結局本件推計の合理性は認められないというべきであるから、被告署長のなした本件更正処分は、その余の争点について判断するまでもなく、違法なものとして取消を免れない。 三次に、原告の被告局長に対する請求について検討する。 行政事件訴訟法三三条一項は「処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、当事者たる行政庁その他の関係行政庁を拘束する」と規定する。 右規定の趣旨は、取消判決の実効性を担保するため行政庁に対し判決の趣旨に従つて行動すべき実体法上の義務を課したものと解すべきである。更に、右規定における「その他の関係行政庁」とは、取消された処分または裁決を基礎または前提とし、これに関連する処分または附随する行為を行なう行政庁をいうと解すべきところ、本件における被告局長は、被告署長のなした原処分の適否を審査する裁決庁であるから、右規定における「その他の関係行政庁」に該当するものといわなければならない。 そうすると、被告局長は、被告署長のなした原処分を違法として取消した判決と抵触する判断はできないこととなるから、原告の被告局長に対する裁決取消の訴えは、その利益を喪失し、却下を免れない。 四以上の次第であつて、原告の被告署長に対する した原処分を違法として取消した判決と抵触する判断はできないこととなるから、原告の被告局長に対する裁決取消の訴えは、その利益を喪失し、却下を免れない。 四以上の次第であつて、原告の被告署長に対する本訴請求は理由があるからこれを認容し、被告局長に対する本件訴えは不適法であるからこれを却下することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条本文を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官上田次郎孕石眞則松永孟明)<略>
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