令和7年3月13日宣告令和6年(わ)第54号、第81号、第107号、第148号、第218号詐欺、有印公文書偽造等被告事件 主文 被告人Aを懲役4年に、被告人Bを懲役3年に処する。 被告人Aに対し、未決勾留日数中40日をその刑に算入する。 被告人Bに対し、この裁判確定の日から5年間その刑の執行を猶予する。 被告人Aから、押収してある「抗菌コーティングならびに除菌水の導入について」と題する文書1通(令和6年押第5号の1)の偽造部分を没収する。 理由 (罪となるべき事実)第1 被告人Aは、インターネットサービスの企画、開発及び運用等を目的とする株式会社Cの実質的経営者である取締役であり、被告人Bは、同社の代表取締役であるが、被告人両名は、 1 同社が公益社団法人D主催の「第16回大分県ビジネスプラングランプリ」において優秀賞を受賞し、大分県所管の大分発ニュービジネス発掘・育成事業費補助金交付制度の対象者に選出されたことに乗じて、同補助金名目で現金をだまし取ろうと考え、共謀の上、真実は、同社が開発した「子ども難病ナビ」システムのAI化に向けたディープニューラルネットワークの構築・開発業務を有限会社Eに委託し、同社に委託料を支払った事実はないのに、これらがあるかのように装い、令和元年9月12日頃から令和2年1月頃までの間に、大分県内又はその周辺において、行使の目的で、ほしいままに、パーソナルコンピュータを使用して、「子ども難病ナビ」システムのAI化に向けたディープニューラルネットワークの開発を内容とする「子ども難病ナビレファレンスシステムディープニューラルネットワーク開発仕様書」と題する書面に「有限会 社E」と記入し、もって有限会社E作成名義の書面1通を偽造した上、同年1月30日頃、大 する「子ども難病ナビレファレンスシステムディープニューラルネットワーク開発仕様書」と題する書面に「有限会 社E」と記入し、もって有限会社E作成名義の書面1通を偽造した上、同年1月30日頃、大分市a 町b 丁目c 番d 号所在の大分県商工観光労働部経営創造・金融課の担当職員に対し、メールでの送信又は窓口での提出のいずれかの方法により、前記補助金500万円の支払を請求する旨の内容を記載した補助金精算払請求書等とともに前記偽造に係る書面1通を真正に成立したもののように装って提出し、その頃、同課課長Fらに閲覧させて同書面1通を行使して、同人らをして前記補助金の請求が正当なものである旨誤信させてその交付を決定させ、よって、同年2月21日、大分県会計管理局会計課の担当職員をして、G信用金庫H支店に開設された株式会社C名義の普通預金口座に500万円を振込入金させ、もって人を欺いて財物を交付させ、 2 IoT、AI等の先端技術を開発又は活用する地域課題解決型プロジェクトを支援する大分県所管のおおいたIoTプロジェクト推進事業費補助金制度を利用して、同制度の補助金名下に現金をだまし取ろうと考え、共謀の上、真実は、同社が有限会社Eに対して医師向け医療レファレンスサービスにおけるAI開発と事業化に向けたAIチャットボット様式ディープニューラルネットワークの開発業務を委託した事実はないのに、これがあるかのように装い、令和元年9月頃から令和2年2月28日頃までの間に、大分県内又はその周辺において、行使の目的で、ほしいままに、パーソナルコンピュータを使用して、医師向け医療レファレンスサービスにおけるAI開発と事業化に向けたAIチャットボット様式ディープニューラルネットワークの開発を内容とする「AIチャットボット様式ディープニューラルネットワーク開発仕様書 師向け医療レファレンスサービスにおけるAI開発と事業化に向けたAIチャットボット様式ディープニューラルネットワークの開発を内容とする「AIチャットボット様式ディープニューラルネットワーク開発仕様書」と題する書面に「有限会社E」と記入し、もって有限会社E作成名義の書面1通を偽造した上、同日頃、前記大分県商工観光労働部の情報政策課の担当職員に対し、メールでの送信又は窓口での提出のいずれかの方法により、前記補助金1000万円の支払を請求する旨の内容を記載した補助金交付請求書等とともに前記偽造に係る書面1通を真正に成立したもののように装って提出し、その頃、同課課 長Iらに閲覧させて同書面1通を行使して、同人らをして前記補助金の請求が正当なものである旨誤信させてその交付を決定させ、よって、同年3月31日、前記会計課の担当職員をして、J銀行K支店に開設された株式会社C名義の普通預金口座に1000万円を振込入金させ、もって人を欺いて財物を交付させ、 3 L株式会社から株式投資名目で現金をだまし取ろうと考え、共謀の上、真実は、株式会社Cが開発した「子ども難病ナビ」システムには、子供の難病に関する国内外の医療情報を人工知能を利用して収集・整理し、翻訳した上で提供する機能は備わっておらず、同システムを運用して子供の難病に関する情報を病院等に提供しておらず、同システムによる売上げもないのに、これらがあるかのように装い、同月頃から同年7月13日頃までの間に、L株式会社社員Mに対し、同システムには同機能が備わっている旨の内容虚偽の会社説明資料及び同システムの運用による病院等への売上げ等を記載した内容虚偽の決算報告書等を提出するなどした上、同月13日、大分市ef 丁目g 番h 号N銀行O館所在のL株式会社において、被告人Aが、L株式会社の運用するL株式会社 による病院等への売上げ等を記載した内容虚偽の決算報告書等を提出するなどした上、同月13日、大分市ef 丁目g 番h 号N銀行O館所在のL株式会社において、被告人Aが、L株式会社の運用するL株式会社乙組合における投資の最終決定を行う投資委員会の投資委員であるL株式会社代表取締役P及び前記Mらに対し、同システムには同機能が備わっており、同システムを運用して子供の難病に関する情報を病院等に提供しており、同システムによる売上げを上げている旨のうそを言うなどして3000万円の投資を申し込み、前記Pらをしてその旨誤信させ、同月20日、同組合における同委員会において、同人ら投資委員の全員の賛成をもって同組合と株式会社Cとの投資契約の締結を決定させ、同年8月17日、前記L株式会社において、同組合に株式会社Cとの同投資契約を締結させ、同月20日、L株式会社社員をして、同投資契約に基づき、大分県臼杵市ij 番地kN銀行Q支店に開設された株式会社C名義の普通預金口座に3000万円を振込入金させ、もって人を欺いて財物を交付させ、第2 被告人Aは、 1 医用及び医学生物学研究用薬剤の研究、開発、製造、輸出入並びに販売等を行う株式会社Rの代表取締役であり、同社の発行済株式の総数3000株のうち1600株を保有していたものであるが、同社が第三者割当ての方法により募集株式を発行するに際し、同社の発行済株式総数の過半数の保有を維持するため、募集株式数が1580株であり、そのうち900株を被告人A自身が取得したかのように装い、令和4年4月28日、大分市荷揚町7番5号大分地方法務局において、情を知らない株式会社S社員Tを介して、同局登記官に対し、真実は、募集株式数は680株であり、その全てを株式会社Uが取得したのに、募集株式数が1580株であり、そのうち90 大分地方法務局において、情を知らない株式会社S社員Tを介して、同局登記官に対し、真実は、募集株式数は680株であり、その全てを株式会社Uが取得したのに、募集株式数が1580株であり、そのうち900株を被告人Aが取得したかのような内容虚偽の株式会社変更登記申請書を、被告人Aが1株当たり6万2500円の金額の払込みを行ったかのように改ざんした預金通帳の写し等とともに提出して虚偽の申立てをし、前記登記官をして、即時、同所の公正証書の原本として用いられる電磁的記録である登記情報システムにその旨の不実の記録をさせた上、これを同所に備え付けさせて公正証書の原本としての用に供し、 2 同年7月17日頃から同月27日頃までの間に、大分県内又はその周辺において、行使の目的で、ほしいままに、パーソナルコンピュータ等を使用して、あらかじめ作成・保存していた大分県国東市内の小学校への抗菌コーティング及び除菌水の導入決定等の通知を内容とする株式会社V代表取締役W宛ての「抗菌コーティングならびに除菌水の導入について」と題する文書データを印刷した上、その記名押印欄に、真正な国東市長丙作成名義の書面の写しから切り取った「国東市長丙」「国東市長之印」の記名押印部分を貼り付け、これを複写し、もって同市長作成名義の「抗菌コーティングならびに除菌水の導入について」と題する文書1通(令和6年押第5号の1)を偽造した上、同日頃、福岡市l 区mn 丁目o 番p 号XビルY株式会社において、情を知らない同社マネージャーZを介して、前記株式会社V顧問甲に対し、前記偽造に係る公文書1通を、あたかも真正な文書の写しのように装って交付して行使した。 (量刑の理由) 1 量刑判断の中心となる判示第1の各犯行は、被害総額が4500万円(大分県につき合計1500万円、L株式会社につ あたかも真正な文書の写しのように装って交付して行使した。 (量刑の理由) 1 量刑判断の中心となる判示第1の各犯行は、被害総額が4500万円(大分県につき合計1500万円、L株式会社につき3000万円)と多額である上、その手口は、重要書面の偽造・行使を伴ったり、内容虚偽の複数の書類を提出したり、担当者の面前で完成済みの「子ども難病ナビ」システムを装ったパソコン画面を示したりするなど、総じて巧妙で悪質性が高い。 これらの各犯行において、被告人Aは、一貫して主導的役割を果たしており、「うそを重ねたせいで、架空の売上げに対する税金の納付や人脈をつなぎ止めるための支払等に窮したことから、補助金等をだまし取った」旨の動機に酌むべき点はない。のみならず、被告人Aは、単独で判示第2の1、2の各犯行を重ねているところ、前者は、自己が代表取締役を務める株式会社の募集株式発行に際し、同社の関係者から発行済株式総数の過半数の保有の維持を要請されたが、新たに株式を取得する金銭的余裕がないとの身勝手な動機から及んだもの、後者は、行使の相手方から脅迫めいた働き掛けを受けていたことが背景にあるとはいえ、判示第1の各犯行等の発覚を恐れて警察に相談するなどせず、同人との関わりを絶つため、安易に市長名義の精巧な文書を偽造・行使したものであって、いずれも公文書等に対する社会の公共的信用性を損なっている。以上の犯情に照らせば、被告人Aの刑事責任は重く、実刑を免れない。 他方、被告人Bは、判示第1の各犯行において、株式会社Cの代表取締役として、内容虚偽の書類を完成させて提出するなどしたものであり、その刑事責任を軽くみることはできないが、終始被告人Aに指示されるまま行動しており、果たした役割が形式的、名目的なものにとどまっていたことを考慮すると、刑の執行猶予を選 て提出するなどしたものであり、その刑事責任を軽くみることはできないが、終始被告人Aに指示されるまま行動しており、果たした役割が形式的、名目的なものにとどまっていたことを考慮すると、刑の執行猶予を選択する余地がある。 2 その上で、一般情状についてみると、被告人両名が、大分県及びL株式会社との間で損害賠償金を分割弁済する旨の合意を成立させ、これまで、大分県に対して合計209万円(被告人Aが200万円、被告人Bが9万円)、L株式会社に対 して合計412万円(被告人Aが400万円、被告人Bが12万円)を支払っていること、株式会社Cの破産手続を通じ、破産財団から大分県に対して約466万円、L株式会社に対して約690万円が配当される見込みであること、被告人両名が自己の関与した犯行を認めて反省の態度を示していること、それぞれの妻が出廷して更生に協力する旨証言していることが認められる。さらに、被告人Bについては、前科がなく、被告人Aが行方をくらまして対応に窮する状況にあったためではあるが、警察に出頭して自首し、被告人Aが不在の中、捜査に協力するとともに、前記破産手続を申し立てて破産財団の形成に貢献したことも認められる。 3 そこで、前記2の諸事情を考慮して、被告人Aについては主文の刑を量定し、被告人Bについては主文の刑に処した上でその刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。 (求刑:被告人Aにつき懲役6年、本件偽造文書の偽造部分の没収、被告人Bにつき懲役3年)令和7年3月14日大分地方裁判所刑事部 裁判長裁判官辛島靖崇 裁判官北島聖也 裁判官山西健太 靖崇 裁判官北島聖也 裁判官山西健太
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