平成16(行ウ)17 違法確認等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成17年5月16日 徳島地方裁判所 住民訴訟
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判決文本文6,237 文字)

主文 1 被告は,Aに対して6467万2100円の支払を請求せよ。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文と同旨第2 事案の概要本件は,徳島県鳴門市(以下「鳴門市」という。)の住民である原告らが,鳴門市長であるAにおいて市税の徴収に関して善管注意義務を負うにもかかわらず,三井住友建設株式会社(旧商号は「三井建設株式会社」。以下,新旧商号を通じて「三井建設」という。)が鳴門市に対して納税義務を負う特別土地保有税について,適切な法的措置等を採らずに時効消滅させ,上記義務を怠った結果,鳴門市に上記税額合計3757万2300円及びこれに対する各納期限の日の翌日から時効消滅の日の前日までの延滞金合計2709万9800円の損害を与えたのであるから,Aが鳴門市に対して不法行為に基づき上記損害額の合計6467万2100円について損害賠償責任を負うと主張し,地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項4号に基づき,被告に対して,Aに対する損害賠償請求権を行使するよう求めた住民訴訟である。 1 争いのない事実等(認定事実については文末に証拠を掲記する。)(1) 当事者等ア原告らは,いずれも鳴門市の住民である。 イ Aは,平成11年4月30日以降,鳴門市長の職にある者である。 (2) 特別土地保有税の課税等ア鳴門市は,三井建設に対し,以下のとおり,平成10年度の特別土地保有税を課税した(以下「本件各保有税」という。)。 (ア) 平成9年12月取得分税額 492万3100円納期限平成10年8月31日(イ) 平成9年12月保有分税額 230万0400円納期限平成10年6月1日(ウ) 平成10年2月及び5月取得分税額 3034万8800円納期限 0年8月31日(イ) 平成9年12月保有分税額 230万0400円納期限平成10年6月1日(ウ) 平成10年2月及び5月取得分税額 3034万8800円納期限平成10年8月31日(エ) 合計 3757万2300円イ本件各保有税についての納期限の日の翌日から時効消滅の日の前日までの延滞金は,以下のとおりである(その計算方法は別紙のとおりである。)。 (ア) 平成9年12月取得分 355万0900円(イ) 平成9年12月保有分 165万8900円(ウ) 平成10年2月及び5月取得分 2189万0000円(エ) 合計 2709万9800円(3) 監査請求ア原告らは,鳴門市監査委員に対し,平成16年5月28日付けで,法242条1項に基づき,A及び鳴門市徴税吏員が本件各保有税の徴収を怠り,鳴門市に本件各保有税の合計税額3720万円及びこれに対する延滞金相当額の損害を与えたとして,被告がA及び鳴門市徴税吏員に対して上記合計税額,延滞金相当額及びこれらに対する支払済みまでの遅延損害金の損害賠償を請求することを求める監査請求をした(甲1)。 イ鳴門市監査委員は,平成16年7月22日,鳴門市に損害が発生していないことを理由に前記アの監査請求を却下する決定をした(甲2。 以下「本件監査結果」という。)。 (4) 本訴の提起原告は,本件監査結果を不服として,平成16年8月2日,本件訴えを提起した。 (5) 本件各保有税の払込み三井建設は,鳴門市に対し,平成16年8月6日,還付請求をすることを予告した上,以下のとおり,本件各保有税の合計税額,督促手数料及び同日までの延滞金を納付した(甲4の1。乙3,4。以下「本件納付」 三井建設は,鳴門市に対し,平成16年8月6日,還付請求をすることを予告した上,以下のとおり,本件各保有税の合計税額,督促手数料及び同日までの延滞金を納付した(甲4の1。乙3,4。以下「本件納付」という。)。 ア平成9年12月取得分(乙1の2)税額 492万3100円督促手数料 100円延滞金 407万8900円合計 900万2100円イ平成9年12月保有分(乙1の1)税額 230万0400円督促手数料 100円延滞金 198万9300円合計 428万9800円ウ平成10年2月及び5月取得分(乙1の3)税額  3034万8800円督促手数料 100円延滞金  2514万4500円合計  5549万3400円(6) 誤納金返還請求ア三井建設は,鳴門市に対し,平成16年9月3日付けの内容証明郵便により,本件納付が誤納であるとして,本件納付に係る金員について還付請求をした(甲4の1)。 イ三井建設は,鳴門市を被告として,本件納付に係る金員について返還を請求する訴えを東京地方裁判所に提起し(平成16年(行ウ)第562号),現在係属中である(以下「別件返還請求訴訟」という。)。 2 争点(1) Aの不法行為責任の有無【原告らの主張】鳴門市長であるAは,市税の徴収について善管注意義務を負うにもかかわらず,本件各保有税について適切な法的措置を採ることを怠ったために,本件各保有税の徴収権をいずれも納期限の翌日から5年の経過により時効消滅させ(地方税法18条1項),上記義務に違反したのであるから,鳴門市に対して不法行為責任を負う。 【被告の主張】否認ないし争う。 有税の徴収権をいずれも納期限の翌日から5年の経過により時効消滅させ(地方税法18条1項),上記義務に違反したのであるから,鳴門市に対して不法行為責任を負う。 【被告の主張】否認ないし争う。 (2) 鳴門市の損害の有無及び損害額【原告らの主張】ア前記(1)【原告らの主張】のとおり,Aが本件各保有税の徴収を怠った結果,本件各保有税の徴収権はいずれも各納期限の翌日から5年が経過した時点で消滅時効が完成し,三井建設においてその時効の利益を放棄することはできない(地方税法18条2項)。三井建設が鳴門市に対して本件納付に係る金員について還付請求権を行使するか否かにかかわらず,上記時効消滅の時点で鳴門市に本件各保有税の徴収権が時効消滅したことによる損害が発生し,確定したというべきである。このことは,別件返還請求訴訟の結果とは関係がない。 イ鳴門市は,本件各保有税の徴収権がいずれも時効消滅したことにより,合計税額相当額である3757万2300円の損害を被ったほか,Aが徴収を怠らなければ本件各保有税に係る各延滞金についても徴収することができたのであるから,本件各保有税がそれぞれ時効消滅した日の前日までの各延滞金相当額である2709万9800円についても損害を被ったというべきである。 【被告の主張】三井建設は,鳴門市に対し,平成16年8月6日,本件各保有税の合計税額及びこれに対する同日までの延滞金について本件納付をしている。 鳴門市は,鳴門市会計規則及び鳴門市公金収納事務取扱規則に基づき,本件納付について鳴門市の歳入として適正に処理しているから,鳴門市には何ら損害が発生していない。三井建設による本件納付が存在する以上,現時点では別件返還請求訴訟で決せられるべき三井建設の鳴門市に対する本件納付に係る徴収金についての還付請求権の存否 るから,鳴門市には何ら損害が発生していない。三井建設による本件納付が存在する以上,現時点では別件返還請求訴訟で決せられるべき三井建設の鳴門市に対する本件納付に係る徴収金についての還付請求権の存否が明らかではないのであるから,原告らの請求は失当というべきである。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(Aの不法行為責任の有無)について(1) 地方税の徴収権は,法定納期限の翌日から起算して5年間行使しないことによって,時効により消滅し(地方税法18条1項),その場合には,時効の援用を要せず,また,その利益を放棄することはできない(同条2項)。 前記争いのない事実等によれば,鳴門市は,三井建設に対する本件各保有税の徴収権を有していたものの,本件各保有税については,平成9年12月保有分の納期限が平成10年6月1日であり,平成9年12月取得分及び平成10年2月及び5月取得分の納期限がいずれも平成10年8月31日であるから,消滅時効の中断がなければ,本件各保有税の徴収権は,上記各納期限の翌日から起算して5年間行使しないことによって時効により消滅するものである。被告は,本訴において,本件各保有税の徴収権の時効の中断については主張しないというのであるから,本件各保有税の徴収権は,三井建設が時効を援用するか否か,本件納付をしたか否かにかかわらず,平成9年12月保有分については平成15年6月1日の経過により,平成9年12月取得分及び平成10年2月及び5月取得分については平成15年8月31日の経過によって,いずれも時効により消滅したということができる。 (2) 鳴門市における市民税の徴収に係る権限の専決,委任の有無,その内容等の詳細については明らかでないものの,鳴門市長であるAは,鳴門市を代表する者として,その事務を自らの判断と責任において誠実 (2) 鳴門市における市民税の徴収に係る権限の専決,委任の有無,その内容等の詳細については明らかでないものの,鳴門市長であるAは,鳴門市を代表する者として,その事務を自らの判断と責任において誠実に管理し,執行する義務を負うというべきであるから,本来的に市税を徴収する権限を有し,その義務を負うということができる。Aは,自ら市税を徴収する場合には,法242条の2第1項4号の「当該職員」として適正に市税を徴収する義務を負うほか,その権限を鳴門市の職員に委任し,又は専決により処理させている場合であっても,同号の「当該職員」として鳴門市の職員が違法に市税の徴収を怠ることを阻止すべき指揮監督上の義務を負い,これらの義務を怠った場合には鳴門市に対して損害賠償責任を負うというべきである。 前記争いのない事実等並びに証拠(甲4の1,乙1の1ないし乙3,5)及び弁論の全趣旨によれば,三井建設は,平成10年ないし11年ころから,本件各保有税の納税義務の有無を争い,仮に納税義務があるとしても同義務が時効により消滅していると認識していたものの,鳴門市から,平成16年7月20日付けで,本件各保有税及びこれに対する延滞金を納付しないかぎり,その財産を差し押さえるとの予告を受けたために,同年8月6日,本件各保有税の合計税額,督促手数料及び同日までの延滞金について本件納付をしたことが認められる。そうすると,鳴門市長であるA又はAから市税の徴収の権限を委任され,又は専決させられた鳴門市の職員は,三井建設が任意に本件各保有税等を納付することを期待することができない状況にあったものの,その担税能力には特段問題がなかったものといえるから,本件各保有税等の徴収権が時効消滅する以前に三井建設に対して適切な法的措置等を採るべきであり,これをすれば三井建設から本件各保有税を ったものの,その担税能力には特段問題がなかったものといえるから,本件各保有税等の徴収権が時効消滅する以前に三井建設に対して適切な法的措置等を採るべきであり,これをすれば三井建設から本件各保有税を徴収することができたということができる。それにもかかわらず,A又は鳴門市の職員は,前記(1)のとおり,本件各保有税の徴収権を法的措置等を採ることなく時効により消滅させ,その後に三井建設から本件納付を受けたにすぎないのであるから,Aには,三井建設から本件各保有税を徴収する義務又は上記鳴門市の職員が徴収を怠ることを阻止する指導監督上の義務を怠った重大な過失があるというべきである。 (3) 以上によれば,Aが自ら本件各保有税を徴収する義務又は鳴門市の職員が徴収を怠ることを阻止すべき指導監督上の義務を怠り,本件各保有税の徴収権を時効により消滅させたことは違法であり,Aは,鳴門市に対し,上記違法行為により鳴門市が被った損害を賠償する責任を負う。 2 争点(2)(鳴門市の損害の有無及び損害額)について(1) 鳴門市は,Aが本件各保有税の徴収権を時効により消滅させたことにより,本件各保有税の合計税額相当額である3757万2300円及び本件各保有税の徴収権がそれぞれ時効により消滅した日の前日までの各延滞金相当額である2709万9800円の合計額6467万2100円の損害を被ったということができるから,Aは,鳴門市に対し,上記損害を賠償する責任を負うというべきである。 (2) これに対し,被告は,三井建設が鳴門市に対して本件納付をし,鳴門市において鳴門市会計規則及び鳴門市公金収納事務取扱規則に基づきこれを歳入として適正に処理している以上,別件返還請求訴訟で決せられるべき三井建設の鳴門市に対する本件納付に係る徴収金についての還付請求権の存否が明らかで 規則及び鳴門市公金収納事務取扱規則に基づきこれを歳入として適正に処理している以上,別件返還請求訴訟で決せられるべき三井建設の鳴門市に対する本件納付に係る徴収金についての還付請求権の存否が明らかではない現時点では,鳴門市には何ら損害が発生していないと主張する。 しかしながら,既に認定説示したとおり,被告が本件各保有税の徴収権の時効の中断について主張しない以上,本件各保有税の徴収権は,その各納期限の翌日から5年の経過によって時効により消滅したというほかはなく,その場合には,三井建設による時効の援用を要せず,三井建設がその利益を放棄することもできない。鳴門市には,本件各保有税の徴収権が時効により消滅した時点で,その消滅による損害が発生したというべきである。本件納付は,本件各保有税の徴収権が時効により消滅した後にされたものであって,本件納付に係る金員は,鳴門市が三井建設に対して誤納金として返還すべきものである上,前記争いのない事実等によれば,三井建設が鳴門市に対して同金員について誤納金として返還を求める別件返還請求訴訟を提起しているのであるから,三井建設の鳴門市に対する上記金員の返還請求権が時効により消滅(地方税法18条の3)するとも考え難い。そうである以上,鳴門市は,現時点において,三井建設により本件納付がされ,本件納付に係る金員を返還していないとしても,本件各保有税の徴収権が時効により消滅したことにより損害を被っており,その損害が填補されていないというのが相当である。被告の上記主張は採用することができない。 (3) 以上のとおりであるから,Aは,鳴門市に対し,6467万2100円を賠償する責任を負う(なお,本件監査結果は,原告らの監査請求が適法であるにもかかわらず,これを却下したものにすぎないから,本件訴えは監査請求前置主義に反 ,Aは,鳴門市に対し,6467万2100円を賠償する責任を負う(なお,本件監査結果は,原告らの監査請求が適法であるにもかかわらず,これを却下したものにすぎないから,本件訴えは監査請求前置主義に反するものではない。)。 第4 結論以上によれば,原告らの請求は理由があるから認容することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 徳島地方裁判所第2民事部裁判長裁判官阿部正幸裁判官池町知佐子裁判官高橋信慶

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