平成28年9月8日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成27年(ワ)第2690号不正競争行為差止等請求事件口頭弁論終結日平成28年6月7日判決 原告A (以下「原告A社」という。) 原告B (以下「原告B社」という。) 上記両名訴訟代理人弁護士大竹健嗣 加藤隆太郎 被告C (以下「被告C」という。) 被告D (以下「被告D社」という。) 上記両名訴訟代理人弁護士萱場健一郎 片山律 上坂こずえ 清水信寿 主文 原告らの請求をいずれも棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 1 被告らは,別紙営業秘密目録記載の内容を用いて,顧客に対し,電話をし,郵便物を送付し,又は電子メールを送信する等して占いに関する契約(物品の購入契約を含む。)の締結及びその勧誘をしてはならない。 2 被告らは,別紙営業秘密目録記載の顧客名簿に係る内容(以下「本件顧客情報」という。)が記録されたコンピュータ(サーバを含む。)内の記録媒体,CD-ROM,DVD-ROM,USBメモリ等の電磁的記録媒体等から同記録内容を抹消し,同記録媒体若しくは電磁的記録媒体を廃棄し,又は同記録媒体若しくは電磁的記録からの印刷物を廃棄せよ。 3 被告らは,原告A社に対し,連帯して4000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(被告Cにつき平成27年2月22日,被告D社につき同月21日)から支払済みま 磁的記録からの印刷物を廃棄せよ。 3 被告らは,原告A社に対し,連帯して4000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(被告Cにつき平成27年2月22日,被告D社につき同月21日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告らは,原告B社に対し,連帯して1000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(被告Cにつき平成27年2月22日,被告D社につき同月21日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告らが,被告らに対し,被告Cが不正の手段により原告らの営業秘密である本件顧客情報を取得し,被告らがこれを使用した行為又は第三者が不正の手段により本件顧客情報を取得し,被告らがこれを取得して使用した行為がそれぞれ不正競争(前者につき不正競争防止法2条1項4号及び5号,後者につき同項5号又は6号)に当たると主張して,①同法3条1項及び2項に- 3 -基づく本件顧客情報を用いた顧客勧誘行為等の差止め及び記録媒体等からの本件顧客情報の抹消等,②同法4条,民法709条に基づく損害賠償金5000万円(原告A社につき4000万円,原告B社につき1000万円。いずれも内金請求)及びこれに対する不正競争行為の後の日である訴状送達の日の翌日(被告D社につき平成27年2月21日,被告Cにつき同月22日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いがない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 原告ら及び被告D社は,いずれも占いによるカウンセリング業等を目的とする株式会社又は有限会社である。 被告Cは,原告A社の代表取締役であったが,平成22年6月13日までに同社を退社し,その後,平成23年2月 被告D社は,いずれも占いによるカウンセリング業等を目的とする株式会社又は有限会社である。 被告Cは,原告A社の代表取締役であったが,平成22年6月13日までに同社を退社し,その後,平成23年2月2日に被告D社を設立して同社の代表取締役となり,現在もその地位に就いている者である。 (2) 原告ら及び被告D社は,電話占いサービスを提供しており,その宣伝のためにダイレクトメールを利用している。 (3) 原告らは,自社の電話占いサービスの利用者である顧客の氏名,住所,電話番号,過去の問合せ内容等の顧客情報(本件顧客情報)を保有し,これをコンピュータ上の顧客情報管理システムにおいて管理している(甲29の1及び2)。 2 争点(1) 不正競争行為の有無ア本件顧客情報が営業秘密(不正競争防止法2条6項)に当たるか。 イ被告Cが不正の手段により本件顧客情報を取得し,被告らがこれを使用したか(同条1項4号及び5号)。 ウ第三者が不正の手段により本件顧客情報を取得し,被告らがこれを取得- 4 -して使用したか(同項5号又は6号)。 (2) 損害額 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(不正競争行為の有無)についてア本件顧客情報が営業秘密に当たるか。 (原告らの主張)①本件顧客情報が原告A社の就業規則において秘密保持義務の対象となっていたこと,②本件顧客情報をダウンロードするために必要なパスワード(管理者パスワード)を知ることができる者を限定していたこと,③本件顧客情報を用いて作成したタックシールについては厳重に管理していたことからすれば,本件顧客情報は秘密管理性の要件を満たす。また,本件顧客情報は,悪質な顧客の利用を断るためや販売促進のために有用な情報であっ を用いて作成したタックシールについては厳重に管理していたことからすれば,本件顧客情報は秘密管理性の要件を満たす。また,本件顧客情報は,悪質な顧客の利用を断るためや販売促進のために有用な情報であって,公開を予定したものでないから,有用性及び非公知性の要件を満たす。したがって,本件顧客情報は営業秘密に当たる。 (被告らの主張)本件顧客情報は,原告らの運営管理部の社員及びパート社員全員で共有されており,パスワードによる厳重管理などされていなかった。したがって,本件顧客情報は営業秘密に当たらない。 イ被告Cが不正の手段により本件顧客情報を取得し,被告らがこれを使用したか。 (原告らの主張)原告A社の代表取締役であった被告Cは,本件顧客情報をダウンロードするために必要な管理者パスワードを知っていたことから,同社を退社する直前(平成22年6月13日の直前)に,上記管理者パスワードを用いて顧客情報管理システムにアクセスし,本件顧客情報をダウンロードして不正に取得した。また,被告D社は上記不正取得行為があることを知って- 5 -被告Cを通じて本件顧客情報を取得し,被告らはこれを用いて運営する電話占いサービスに関するダイレクトメールを1月当たり数千通送付した。 被告Cは,上記退社の直前に,電話占いサービスに関するウェブサイトのドメイン登録をし,原告らの従業員に対して電話応対マニュアルを送るように指示しており,被告Cが上記サービスの新規顧客獲得のために本件顧客情報を不正に取得したことは明らかである。また,被告らは原告らがトラップデータとして本件顧客情報に登録していた架空人物(「E」)に上記ダイレクトメールを送付しており,被告らが本件顧客情報を使用したことも明らかである。 したがって,被告らの行為は不正競争(被告Cにつき不正競 として本件顧客情報に登録していた架空人物(「E」)に上記ダイレクトメールを送付しており,被告らが本件顧客情報を使用したことも明らかである。 したがって,被告らの行為は不正競争(被告Cにつき不正競争防止法2条1項4号,被告D社につき同項5号)に当たる。 (被告らの主張)被告らが電話占いサービスに関するダイレクトメールを多数送付していることは認めるが,被告Cは顧客情報管理システムから本件顧客情報をダウンロードしていない。上記ダイレクトメールは,名簿業者から購入した名簿を使用して送付したものである。また,原告らがトラップデータを本件顧客情報として登録した日は被告Cの退社より後の平成22年6月23日であるから,被告Cが上記トラップデータを含む本件顧客情報を取得することは不可能である。 ウ第三者が不正の手段により本件顧客情報を取得し,被告らがこれを取得して使用したか。 (原告らの主張)仮に被告Cが本件顧客情報を不正取得していないとしても,前記イ(原告らの主張)のとおり,被告らが本件顧客情報を使用していることは明らかであるから,被告らは本件顧客情報を不正取得した第三者から本件顧客情報を取得した。そして,本件顧客情報はその性質上公開が予定されてい- 6 -ないから,被告らには本件顧客情報について不正取得行為が介在したことにつき悪意又は重過失がある。したがって,被告らの行為は不正競争(不正競争防止法2条1項5号又は6号)に当たる。 (被告らの主張)前記イ(被告らの主張)のとおり, 被告らは本件顧客情報を取得していない。 (2) 争点(2)(損害額)について(原告らの主張)被告らの不正競争行為によって,原告A社は新たなシステムの開発費用として2992万5000円及び新たに採用したアルバイトの人件費として (2) 争点(2)(損害額)について(原告らの主張)被告らの不正競争行為によって,原告A社は新たなシステムの開発費用として2992万5000円及び新たに採用したアルバイトの人件費として年間1800万円,原告B社は追加のダイレクトメールの送付費用として年間3500万円をそれぞれ支出せざるを得なくなった。これらの費用はいずれも被告らの不正競争行為と相当因果関係のある損害である。 (被告らの主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 まず,争点(1)イ及びウ(本件顧客情報の取得及び使用)について判断する。 (1) 前記前提事実に加えて,後掲の証拠(書証の枝番の記載は省略する。)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。 ア原告らは,顧客情報管理システムを用いて本件顧客情報を管理していた。この顧客情報管理システムは,原告A社の本店事務所内に置かれたサーバ上で運営されており,約15万件の顧客に関する情報が登録されていた。ここから本件顧客情報に係るデータをダウンロードするためにはパスワード(管理者パスワード)が必要となるところ,被告Cは,管理者パスワードを知っていたが,遅くとも平成22年6月13日に原告A社を退社して以降,原告A社の本店事務所へ立ち入っていない。(甲29,34)- 7 -イ原告らは,被告Cが退社した後である同月23日に,氏名を「E」,住所を原告A社の従業員の住所とする架空の顧客情報を顧客情報管理システムに登録した。(甲17,29,30)ウ被告Cは,同月7日にドメイン名「(省略)」の登録を受けて,同年8月にこのドメイン名を利用した電話占いサービスに関するウェブサイト「F」の運営を開始した。また,平成23年2月2日に被告D社が設立され,被告らは「G」,「H」,「I」といっ 」の登録を受けて,同年8月にこのドメイン名を利用した電話占いサービスに関するウェブサイト「F」の運営を開始した。また,平成23年2月2日に被告D社が設立され,被告らは「G」,「H」,「I」といった名称で電話占いサービスの提供を始めた。被告らは,同年8月以降,上記サービスの宣伝のために毎月約5000通のダイレクトメールを送付した。被告らが送ったダイレクトメールの宛先には上記「E」が含まれていた。(甲6~8,12,19)エ原告らは,平成23年9月頃~平成24年11月頃の間,10名余りの顧客から,「G」,「H」又は「I」のダイレクトメールが届いており,個人情報が漏れているのではないかなどといった苦情を受けた。上記顧客のうち半数余りは被告Cが原告A社を退社した後に本件顧客情報に登録されたものであった。(甲18,20,21,29)(2) 原告らは,被告らによる本件顧客情報の取得について,①被告Cが原告A社を退社する直前に原告らの顧客情報管理システムにアクセスして本件顧客情報をダウンロードして取得した(争点イ),②第三者が本件顧客情報を不正に取得したものを被告らが取得した(争点ウ)旨主張する。 そこで判断するに,原告らの顧客情報管理システムに架空人物として登録されていた「E」に被告らのダイレクトメールが送付されたことからすれば,本件顧客情報の少なくとも一部が何らかの形で原告らの社外へ流出していたことがうかがわれる。しかし,まず,上記①の主張についてみるに,「E」に係る氏名,住所等の情報が本件顧客情報として登録されたのは被告Cが原告A社を退社した後であり,さらに,その後に登録された別の顧客に対してもダイレクトメールが送付されており,被告Cがこれらの送付先に係るデー- 8 -タを原告らの顧客情報管理システムから入手する機会が 社を退社した後であり,さらに,その後に登録された別の顧客に対してもダイレクトメールが送付されており,被告Cがこれらの送付先に係るデー- 8 -タを原告らの顧客情報管理システムから入手する機会があったとは認められない。したがって,上記①の主張は採用できないというほかない。次に,上記②の主張についてみるに,本件顧客情報が約15万件に及ぶのに対し,被告らによるダイレクトメールの送付数はこれを相当下回ると解される上,本件の証拠上,これらが重複すると認められるのは10名余りにとどまることに照らすと,被告らがダイレクトメールの送付その他宣伝広告活動をするに当たり本件顧客情報を使用したとは認め難い。そうすると,被告らが名簿を購入したと主張する名簿業者や名簿の詳細,購入の具体的経緯等を何ら明らかにせず,その主張を裏付ける証拠を提出していないことを考慮しても,第三者が本件顧客情報を不正に入手した事実を認めるに足りる証拠はなく,上記②の主張についても失当とみるべきものである。 以上によれば,被告C又は第三者による本件顧客情報の不正取得行為があったと認めることはできないから,その余の点を判断するまでもなく,これらの不正取得行為を前提とする原告らの不正競争防止法に基づく請求はいずれも理由がない。 2 よって,原告らの請求をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官長谷川 浩 二 裁判官萩原孝基 - 9 - 裁判官中嶋邦人 (別紙省略) 中嶋邦人
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