平成8(行ウ)8 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成11年4月7日 名古屋地方裁判所 住民訴訟
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判決文本文33,054 文字)

- 1 -H11. 4. 7 名古屋地裁平成08(行ウ)8損害賠償請求事件◆主文一本件訴えはいずれもこれを却下する。 二訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第一請求一被告富士電機株式会社及び被告株式会社日立製作所は連帯して、愛知県に対し、金三億九三一五万一〇〇〇円及びこれに対する被告富士電機株式会社については平成八年三月八日から、被告株式会社日立製作所については平成八年三月七日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 二被告愛知県公営企業管理者企業庁長が、被告富士電機株式会社、同株式会社日立製作所、訴外横河電機株式会社、同山武ハネウエル株式会社及び同株式会社島津製作所に対して、安城浄水場計装設備工事及び尾張東部浄水場計装設備工事の談合に関する不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠る事実が違法であることを確認する。 三被告愛知県知事が、被告富士電機株式会社、同株式会社日立製作所、訴外横河電機株式会社、同山武ハネウエル株式会社及び同株式会社島津製作所に対して、安城浄水場計装設備工事、尾張東部浄水場計装設備工事及び幸田浄水場計装設備更新工事の談合に関する不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠る事実が違法であることを確認する。 第二事案の概要(争いのない事実等)一当事者 原告らは、いずれも愛知県の住民である。 被告富士電機株式会社(以下「被告富士電機」という)及び被告株式会。 社日立製作所(以下「被告日立製作所」という)は、デジタル計装制御シス。 テムなどの計装設備の製造及び販売を営む会社である。 (「」。)、 被告愛知県公営企業管理者企業庁長以下被告企業庁長というは愛知県公営企業の管理者であり、浄水場計装設備工事について愛知県(以下「県」という)を代表する者である る。 (「」。)、 被告愛知県公営企業管理者企業庁長以下被告企業庁長というは愛知県公営企業の管理者であり、浄水場計装設備工事について愛知県(以下「県」という)を代表する者である。 。 二請負契約の締結県は、次の三つの浄水場計装設備工事に関し、指名競争入札を実施し、落札した被告富士電機、被告日立製作所と各請負契約を締結し(以下「本件各請負契約」という、工事代金を支出した。各工事の請負者、契約締結日、契約金。)額、代金支払日は、以下のとおりである。 安城浄水場計装設備(その1)工事(以下「安城請負契約」という)。 (一)請負者被告富士電機(二)契約締結日平成三年一一月二二日(三)契約金額七七二五万円(四)代金支払日平成四年四月三〇日七七二五万〇〇〇〇円完了払()(「」。) 尾張東部浄水場計装設備その1工事以下尾張請負契約という(一)請負者被告日立製作所(二)契約締結日平成四年五月一五日(三)契約金額一七億〇九八〇万円(四)代金支払日平成四年六月三〇日一億八七九三万二四〇〇円前払平成五年五月一三日三億三九九六万七六〇〇円前払同日九億五八三〇万〇〇〇〇円部分払同年七月三〇日二億二三六〇万〇〇〇〇円完了払 幸田浄水場計装設備更新工事(以下「幸田請負契約」という)。 (一)請負者被告日立製作所(二)契約締結日平成五年九月二七日- 2 -(三)契約金額九億七〇二六万円(四)代金支払日平成五年一〇月二九日六七九三万二〇〇〇円前払平成六年四月二八日二億三八〇六万八〇〇〇円前払同日一億二五九〇万〇〇〇〇円部分払同年九月三〇日三億二三九〇万〇〇〇〇円部分払平成七年三月三一日二億一四四六万〇〇〇〇円完了払三公正取引委員会 年四月二八日二億三八〇六万八〇〇〇円前払同日一億二五九〇万〇〇〇〇円部分払同年九月三〇日三億二三九〇万〇〇〇〇円部分払平成七年三月三一日二億一四四六万〇〇〇〇円完了払三公正取引委員会は、平成七年八月八日、訴外横河電機株式会社、被告日立製作所、被告富士電機、訴外山武ハネウエル株式会社、同株式会社島津製作所(以下「被告両会社ら入札参加者」という)が、共同して、地方公共団体が。 指名競争入札の方法により発注する特定計装設備工事について、受注予定者を、、、決定し受注予定者が受注できるようにすることにより公共の利益に反して地方公共団体が指名競争入札の方法により発注する特定計装設備工事の取引分野における競争を実質的に制限していたとして、訴外横河電機株式会社、被告日立製作所、被告富士電機、訴外山武ハネウエル株式会社に対し、独占禁止法(以下「独禁法」という)七条の二に基づく課徴金納付命令を課した(以下。 「本件課徴金納付命令」という。同課徴金納付命令の課徴金算定の基礎とな。)った特定計装設備工事には、本件各請負契約が含まれていた。 四原告らは、平成七年一一月二七日、愛知県監査委員に対し「被告両会社、ら入札参加者らは、本件各請負契約について、談合という共同不法行為によって契約金額を不当につり上げることにより、工事発注者である県に対して、談合によってつり上げられた契約金額と公正な競争が確保されていた場合の契約金額との差額に相当する損害を与えたところ、被告愛知県知事(以下「被告知事」という)若しくは被告企業庁長は、県が被告両会社ら入札参加者らに対。 して有する損害賠償請求権(以下「本件損害賠償請求権」という)を行使し。 て県の被った損害を補填する措置を講ずる責任があるのにこれを怠っているので、被告知事若しくは被告企業庁長に対して 者らに対。 して有する損害賠償請求権(以下「本件損害賠償請求権」という)を行使し。 て県の被った損害を補填する措置を講ずる責任があるのにこれを怠っているので、被告知事若しくは被告企業庁長に対して、この措置を講ずべきことを勧告」(「」。)、することを求めて住民監査請求を行ったが以下本件監査請求という、、(「」。)愛知県監査委員は平成八年一月二六日地方自治法以下自治法という二四二条二項に違反する請求であるとして、本件監査請求を却下した。 (事案の概要)本件は、県が、本件損害賠償請求権を有していることを前提に、原告らが、次の請求を求めた事案である。 県に代位して、被告富士電機及び同日立製作所に対し、本件損害賠償請求権のうち安城請負契約及び尾張請負契約にかかる部分の損害賠償請求(損害額は契約金額の二〇パーセント相当額(実損害)及び同相当額の一〇パーセント相当額(弁護士費用)の合計金額。自治法二四二条の二第一項四号の怠る事実の相手方に対する請求。 ) 被告企業庁長に対し、同被告が、被告両会社ら入札参加者らに対する、本件損害賠償請求権のうち安城請負契約及び尾張請負契約にかかる部分の損害賠償請求権の行使を怠っていることの違法確認請求(自治法二四二条の二第一項三号。 ) 被告知事に対し、同被告が、被告両会社ら入札参加者らに対する、本件損害賠償請求権の行使を怠っていることの違法確認請求(自治法二四二条の二第一項三号。 )なお、本件訴え提起当初、本件訴訟には、原告らの、①県に代位して、被告富士電機及び同日立製作所に対する、本件損害賠償請求権のうち幸田請負契約にかかる部分の損害賠償請求、②被告企業庁長に対する、同被告が、被告両会社ら入札参加者らに対する、本件損害賠償請求権のうち幸田請負契約にかかる部分の損害賠 する、本件損害賠償請求権のうち幸田請負契約にかかる部分の損害賠償請求、②被告企業庁長に対する、同被告が、被告両会社ら入札参加者らに対する、本件損害賠償請求権のうち幸田請負契約にかかる部分の損害賠償請求権の行使を怠っていることの違法確認請求も含まれていたが、右請求にかかる弁論は、平成一一年三月一六日、本件訴訟の弁論から分離された。 (争点)一被告知事に被告適格はあるか。 二本件監査請求は、自治法二四二条二項の監査請求期間の制限を受けるか。 また、本件監査請求が、監査請求期間の制限を受けるとした場合、その起算点はいつか。 - 3 -三本件監査請求が、監査請求期間を徒過しているとした場合、正当な理由はあるか。 四被告知事及び被告企業庁長に対する違法確認の訴えは訴えの利益があるか。 (争点に対する当事者の主張)一争点一(被告適格)について(被告知事の主張)地方公営企業については、地方自治法の特別法である地方公営企業法が適用されるのであり、普通地方公共団体の資産の中でも地方公営企業の用に供する資産については、地方公営企業法そのものによって、公営企業管理者が業務執行権限を有し、当該業務の執行に関し、当該業務の執行に管理者が普通地方公共団体を代表するとされているのである(地方公営企業法七条、八条。 )そして、また、地方公営企業法によって、逆に、知事には、地方公営企業の用に供する資産の取得、管理、処分については、業務執行の権限はないとされているところである(同法九条。 )したがって、被告知事は、本件損害賠償請求権を行使しうる者ではなく、本件訴えにつき被告適格を有しない。 (原告らの主張) 本件は、県に加えられた不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠る事実が違法であることの確認を求めるものであって、右県の財産ないし債権である損害 訴えにつき被告適格を有しない。 (原告らの主張) 本件は、県に加えられた不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠る事実が違法であることの確認を求めるものであって、右県の財産ないし債権である損害賠償請求権の取得、管理及び処分については、被告知事が県を代表する(自治法二三七条一項、二四〇条一項、一四九条六号。 )したがって、被告知事は被告適格を有する。 仮に、右損害賠償請求権の行使が、県の行う水道事業にかかる業務の執行に関するものであったとしても、被告知事は、自治法二四二条の二第一項三号の「当該執行機関」に該当し被告適格を有する。 なぜなら、地方公共団体の長は、当該地方公共団体を代表するものであり、当該地方公共団体の条例、予算その他の議会の議決に基づく事務その他公共団体の事務を自らの判断と責任において誠実に管理し及び執行する義務を負い(自治法一三八条の二、予算の執行、地方税の賦課徴収、分担金、使用料、)加入金又は手数料の徴収、財産の取得、管理及び処分等の広範な権限を有する者であって(自治法一四九条、地方公営企業についてもその管理者の任免権)を有し(地方公営企業法七条の二第一項、七項、管理者に対し当該地方公共)団体の住民の福祉のために必要な指示をすることができる等、その職責及び権限の内容に鑑みると、長は「当該執行機関」に該当するというべきだからで、ある。 二争点二(自治法二四二条二項適用の有無及びその起算点)について(被告らの主張) 本件監査請求は、本件損害賠償請求権の不行使を怠る事実と構成しているが、違法、無効な財務会計上の行為に基づいて発生する請求権の不行使を怠る事実と構成した場合には、当該住民監査請求については、財務会計上の行為が行われた日、本件に即していえば、本件損害賠償請求権の発生原因たる本件各請負契約の締結 為に基づいて発生する請求権の不行使を怠る事実と構成した場合には、当該住民監査請求については、財務会計上の行為が行われた日、本件に即していえば、本件損害賠償請求権の発生原因たる本件各請負契約の締結日を基準として、自治法二四二条二項が適用される(昭和六二年二月二〇日最高裁第二小法廷判決(以下「六二年判決」という。 。))本件各請負契約は、平成三年一一月二二日(安城請負契約、平成四年五月)一五日(尾張請負契約)及び平成五年九月二七日(幸田請負契約)にそれぞれ締結されているところ、原告らは平成七年一一月二七日に本件監査請求を行っているから、自治法二四二条二項の定める「当該行為のあった日又は終わった日から一年」の住民監査請求期間を徒過するものである。 原告らは、本件において財務会計上の行為は違法でないから、自治法二四二条二項は適用されないと主張する。 しかし、同項の適用に当たっては、法的安定性の見地から、原告らが自らの主張をどう構成しようと、その依って立つ事案そのものが問題なのであって、実際に違法な財務会計上の行為があり、その財務会計上の行為を基礎とする損害賠償請求が可能な場合には、原告らの請求について、同項が適用されるべきである。 - 4 -本件監査請求は、本件各請負契約の契約金額が被告両会社ら入札参加者らの談合に基づき不当に高額になったというものであるから、右が事実であれば、本件各請負契約は、被告両会社ら入札参加者らの談合に基づくものとして違法であり、民法九〇条及び九一条に基づき無効ということになる。また、地方財政法四条一項、自治法二三二条の三、同法二三二条の四第二項に反するものとしても違法ということになる。 したがって、本件監査請求において原告らが主張している本件損害賠償請求「、」権は当該行為が違法無効であることに基づいて 条の三、同法二三二条の四第二項に反するものとしても違法ということになる。 したがって、本件監査請求において原告らが主張している本件損害賠償請求「、」権は当該行為が違法無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権に該当するということができる。 このことは、原告らの主張するとおり本件各請負契約が被告らの談合に基づき不当に高額なものとなっていたとすれば、原告らは本件各請負契約締結直後から右事実を指摘し、監査請求が可能であり、さらに支払前であれば差止請求訴訟(自治法二四二条の二第一項一号)が、支払後であれば被告らに対する損害賠償請求訴訟(自治法二四二条の二第一項四号後段)が可能であったこととの均衡からも首肯できるものである。 なお、財務会計上の行為の違法とは、当該行為が是正されるべき客観的な違法性を有することをいうのであり、本件において被告両会社ら入札参加者らが行ったとされる談合の存在や、その結果不当に高額な契約金額を支出することになったという事実を、偶々、当該地方公共団体の長若しくは担当職員が知っていたか否かという主観的な事情により左右されるべきものではない。 原告らは、平成九年一月二八日最高裁判所第三小法廷判決(以下「平成九年判決」という)を援用して、仮に本件監査請求に自治法二四二条二項が適。 用されるとしても、本件監査請求は適法な住民監査請求であると主張する。 しかし、同判決は、①財務会計上の行為の時点では損害賠償請求権が発生しないという特別な事情が存する場合において、②監査請求期間の起算点を判断するに当たって、茅ヶ崎市が損害賠償義務の存否を訴訟で争っているという、損害賠償請求権を行使するについての法律上の障害若しくはこれと同視し得るような客観的な障害のある場合について、行使し得るようになった時点を監査請求期間の起算点とした の存否を訴訟で争っているという、損害賠償請求権を行使するについての法律上の障害若しくはこれと同視し得るような客観的な障害のある場合について、行使し得るようになった時点を監査請求期間の起算点としたものであって、極めて特殊な事案に関するものとして限定的に解されるべきである。 本件監査請求が対象としている、本件損害賠償請求権は本件各請負契約の締結と同時に発生しているのであって、右①を満たさず、特別な事情は存在しない。また、本件監査請求において、右②を満たす事情は存在しない。 したがって、本件監査請求については、本件各請負契約締結の時をもって監査請求期間の起算点とすべきである。 (原告らの主張) 本件監査請求は、本件各請負契約の締結に当たって、被告両会社ら入札参加者らが、談合という不法行為を行い、これによって、県に対して損害を与えたところ、被告知事若しくは被告企業庁長が被告両会社ら入札参加者らに対する本件損害賠償請求権の行使を怠っているから損害賠償請求など適当な措置を求めるというものである。 したがって、本件監査請求は「怠る事実」についての監査を求めるもので、あり、自治法二四二条二項の期間制限の適用はない。 被告らは、六二年判決を理由に、本件監査請求にも自治法二四二条二項の適用があると主張する。 、、、、しかし被告らの主張は昭和六二年判決を曲解するものであり同判決は本件とは事案を異にし、本件の先例とはならないものである。 (一)自治法二四二条一項の「当該行為」の違法性は内部関係における違法であり、本件各請負契約の締結は違法でない。 談合に基づく業者と自治体との請負契約が違法であり、白治体の選択によっ。 、、て取り消しうべきものであることは論をまたない本件においても原告らは被告らの談合行為から自治体の工事代金の支払までの全体 合に基づく業者と自治体との請負契約が違法であり、白治体の選択によっ。 、、て取り消しうべきものであることは論をまたない本件においても原告らは被告らの談合行為から自治体の工事代金の支払までの全体を不法行為として構成している。その意味では「違法」の主張をしている。 、しかし、県と被告富士電機又は同日立製作所との間で締結された契約に対する評価と「違法な財務会計上の行為」という場合の「違法」の評価とは、場、面・性質を異にし、同一のものではない。すなわち、住民訴訟は、長や職員の- 5 -職務義務違反行為を是正して、もって財政の健全性を確保しようとするものであり、財務会計行為を行うに当たって長や職員の職務義務違反が認められる場合は、違法な当該行為の是正を求めることになる一方、長や職員に職務義務違、、反が認められない場合には違法な状態を是正すべき義務を怠っているとして怠る事実のみが問題となる。そして、当該行為の違法性は、行為者たる執行機関又は職員の当該地方公共団体に対する関係での違法性(行為者が当該地方公共団体に対する関係で当該行為をしない義務を負っているにもかかわらず、右義務に違反したことを意味する)であり、当該行為の対外的関係における違法性とは必ずしも一致しない。 そして、自治法二四二条一項にいう「違法な財務会計行為」の「違法」は、この内部関係における違法、自治体に対する長や職員らの義務違反行為を指す。 、、ものである本件各請負契約の締結に当たり長や職員は談合の事実を知らず同人らに義務違反行為はない。六二年判決は、当該行為が違法でない場合についてまで、不真正怠る事実として、当該行為のあった日又は終わった日から一年以内に監査請求することを要するとしたものではない。 (二)本件監査請求においては、当該行為の違法性は判断する必要がな 合についてまで、不真正怠る事実として、当該行為のあった日又は終わった日から一年以内に監査請求することを要するとしたものではない。 (二)本件監査請求においては、当該行為の違法性は判断する必要がない。 不真正怠る事実にかかる住民監査請求において、自治法二四二条二項が適用されるのは、住民監査請求の対象たる怠る事実が存するか否かの前提として必然的に「当該行為」の違法の有無を問題とせざるを得ないのであり、当該行為が違法とされ、これに基づく請求権の発生が認められて初めて怠る事実の違法が問題となるからである。したがって「不真正怠る事実」に該当するかどう、かは「怠る事実が存するか否かの前提として必然的に『当該行為』の違法の、有無を問題とせざるを得ない」場合に該当するかどうかで区別すべきである。 本件監査請求のように、談合によってつり上げられた価格に相当する損害の填補を不法行為として請求する場合には、地方財政法四条一項の要件に含まれない談合に固有の要件事実(入札参加者相互の間に、落札予定者を特定しかつ落札予定者以外の者は予定者の入札価格以下の札は入れない旨の合意とその合意の実施があったという要件)の主張立証責任を住民が負担する反面、談合の結果形成された価格が、後述する地方財政法四条一項違反の要件である「目的・効果との均衡を著しく欠く」程度に至らなくても、談合なかりせば落札価格は現実のそれよりも低下しえた、ということが立証されれば(低下の程度の大小にかかわらず、その限度で損害が発生したものとして、損害賠償請求権が)成立するのである。 したがって、本件損害賠償請求権が存するか否かの前提として必然的に本件各請負契約の違法性の有無を問題とする必要はないから、本件損害賠償請求権の不行使は「不真正怠る事実」に該当しない。 ()、、。 三本件監査請 賠償請求権が存するか否かの前提として必然的に本件各請負契約の違法性の有無を問題とする必要はないから、本件損害賠償請求権の不行使は「不真正怠る事実」に該当しない。 ()、、。 三本件監査請求において原告らは当該行為の違法を主張していない六二年判決は、住民監査請求自体が、時価に比して著しく低額の代金による土地売却処分を違法・無効なものであると主張していた事案に関するものであり、住民監査請求の対象である怠る事実が、住民監査請求の文理上「当該地、方公共団体の長その他の財務会計職員の特定の財務会計上の行為が違法であるとし、当該行為が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としている」場合には、怠る事実についての住民監査請求でありながら、自治法二四二条二項の適用を受けると判示しているものである。 これに対し、原告らは、本件監査請求において、財務会計上の行為を違法であるとは何ら主張していないし、本訴においても同じであって、あくまで「真」。 、正怠る事実としての監査・判断を求めているのであるこのような場合には監査委員・裁判所は、財務会計上の行為の違法、無効を前提としない請求権の有無(本件の場合は不法行為に基づく損害賠償請求権)を判断すればよいのである。 (四)本件各請負契約は私法上有効である。 地方公共団体の契約は、公益目的遂行のため、原則的に一般競争入札により行うことなど一定の規制が必要となり、地方自治法、同法施行令、契約に関する条例、地方公共団体の財務に関する規則など一連の会計法令などにより、規制を行っている。しかし、これらの会計法令の規定はほとんどが地方公共団体- 6 -の内部に関する訓令的性質をもつ手続的規定であり、一般に契約の効力自体に影響を及ぼさないのを建前とする。 により、規制を行っている。しかし、これらの会計法令の規定はほとんどが地方公共団体- 6 -の内部に関する訓令的性質をもつ手続的規定であり、一般に契約の効力自体に影響を及ぼさないのを建前とする。 入札は、契約の相手方を決定する手続であるから(自治法二三四条三項、)談合による入札により請負契約を締結しても、その契約が無効になるわけではない。 運用上も、愛知県企業庁が、契約締結後に談合があったと認めた場合には、契約が当然無効になるのではなく、契約を解除することができるにすぎないとする取扱いとなっている。 よって、談合という不法行為に基づく損害賠償請求権は、契約自体の有効性を維持した上でなお行使することのできる請求権であることに疑問を挟む余地はない。 (五)本件各請負契約は、地方財政法四条一項に違反しない。 地方公共団体は、その事務を処理するに当たっては、最少の経費で最大の効果を上げるようにしなければならず(自治法二条一三項、経費はその目的を)達成するために必要かつ最少の限度を超えて出してはならないとされている(地方財政法四条一項)から、不当に高い契約金額の支払は、右各法条に対する適合性を問擬しうる。 しかし、何をもって「必要かつ最少の限度」というべきかについては第一次的には、予算の執行権限を有する財務会計職員の社会的、政策的または経済的見地からする裁量に委ねられており、具体的な支出が当該事務の目的、効果と関連せず、又は社会通念に照らして目的、効果との均衡を著しく欠き、予算の執行権限を有する財務会計職員に与えられた前記裁量を逸脱してされたものと認められるときに初めて違法と評価される。 談合の結果、落札価格は入札に先立って設定される予定価格に(競争が行なわれた場合に比べて)接近することになるが、予定価格を超えることは入札制度の約束事とし と認められるときに初めて違法と評価される。 談合の結果、落札価格は入札に先立って設定される予定価格に(競争が行なわれた場合に比べて)接近することになるが、予定価格を超えることは入札制度の約束事としてありえない。そして予定価格とは「契約の目的となる物件又は役務について、取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短を考慮して適正に定めなければならない(予算決算及び会計令」八○条二項参照)という趣旨で設定されるものであるから、価格形成がその範囲内にある限り当否の問題が生じることはあっても「目的・効果との均衡を著しく欠」く違法があるとされることはありえない。 したがって、本件監査請求は、怠る事実にかかる請求であって、かつ財務会計上の行為が違法・無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の行使等の措置を求めるものではないから、本件監査請求については自治法二四二条二項は適用されない。 仮に、本件監査請求に対し、自治法二四二条二項が適用されるとしても、、、その起算点は本件損害賠償請求権を行使することができるようになった時点すなわち平成七年八月九日付け新聞により「公正取引委員会が、談合企業に、対し、上水道計装設備工事を巡り課徴金納付命令を出したこと」が報道された後、相当期間が経過したにもかかわらず県が被告両会社ら入札参加者らに対し本件損害賠償請求権を行使しなかった時点と解すべきである。 この点に関し、平成九年判決は、財務会計上の行為が違法・無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実とする監査請求については、右請求権が右財務会計上の行為のされた時点においてはいまだ発生しておらず、又はこれを行使することができない場合には、右実体法上の請求権が発生し、これを行使することができる とする監査請求については、右請求権が右財務会計上の行為のされた時点においてはいまだ発生しておらず、又はこれを行使することができない場合には、右実体法上の請求権が発生し、これを行使することができることになった日を基準として自治法二四二条二項の適用があるものと解するのが相当であると判示した。 同判決がこのように判示したのは、損害賠償請求権がいまだ発生していない場合、又は損害賠償請求権を行使することができない場合には「監査請求の、対象となるべき右損害賠償請求権の行使を怠る事実も存在しないというほかはない。それにもかかわらず、当該怠る事実を対象とする監査請求につき、転売行為の日を基準として自治法二四二条二項の規定を適用し、同項本文の期間が進行するものと解することはできない」からにほかならない。すなわち、自治法二四二条第一項、二四二条の二第一項各号が定める住民訴訟は、地方自治体の長若しくは職員の非違行為を中心にした職務違反行為を是正するために住民に付与されている請求権である。したがって、住民が地方公共団体に代わって- 7 -住民訴訟を提起するためには、地方自治体の長若しくは職員の違法な行為がなければならない。ところが、損害賠償請求権がいまだ発生していない場合、又は損害賠償請求権を行使することができない場合には、地方自治体の長若しく。 、は職員が損害賠償請求を違法に怠っているという状態は生じていないつまり地方自治体の長若しくは職員の自治体に対する義務違反行為が存在しない状態である。にもかかわらず、自治法二四二条二項の規定を適用し、同項本文の期間が進行して一年が経過してしまうともはや住民は監査請求ができなくなるということになれば、明らかに法の趣旨に反する事態が生じることになるからである。 、、そして抽象的には地方公共団体に損害賠償請求 が進行して一年が経過してしまうともはや住民は監査請求ができなくなるということになれば、明らかに法の趣旨に反する事態が生じることになるからである。 、、そして抽象的には地方公共団体に損害賠償請求権が発生していたとしても地方自治体の長若しくは職員が損害賠償請求が存することを知ることができない場合においても、長若しくは職員に右損害賠償請求権を行使しないことに職務違反行為が存在しないことは明らかである。すなわち、この場合にも監査請求の対象となるべき右損害賠償請求権の行使を怠る事実は存在しないのであるから、平成九年判決の基準によるならば、自治法二四二条二項本文の期間が進行するものと解することはできないはずである。 以上より、平成七年一一月二七日になされた本件監査請求は、住民監査請求期間の制限の起算点である同年八月九日より相当期間が経過した日から一年以内であることは明らかであるから、適法な住民監査請求である。 三争点三(正当な理由の有無)について(原告らの主張) 自治法二四二条二項ただし書は、住民監査請求期間を経過するという意味では法的安定性を害してもなお、監査請求を求めるべき必要性があることを認めたものである。 したがって、この「正当な理由」の解釈に当たっては、自治法が住民監査請求を認めた趣旨を十分尊重すべきであり、客観的に請求者が法定期間内に監査請求を申し立てることが不可能又は困難であるときには、正当な理由があるといわざるを得ず、その正当な理由の有無の判断は、自治法二四二条二項本文の規定する住民監査請求期間経過後であっても、住民監査請求を認めなければ正義に反し、当該事例において住民監査請求ひいては住民訴訟の制度を無意味なものにするかどうかを基準として判断されなければならない。 本件において、本件各請負契約に先立ち談合が行われていた なければ正義に反し、当該事例において住民監査請求ひいては住民訴訟の制度を無意味なものにするかどうかを基準として判断されなければならない。 本件において、本件各請負契約に先立ち談合が行われていたことを住民が知らなかったことについては疑問の余地はない。 知り得た時期その1談合企業は、談合の事実を否認し、課徴金を納付したのは談合を認めたからではなく争う手間を避けたためであるなどと主張するのが常である。したがって、少なくとも公正取引委員会の課徴金納付命令の決定後、現実に談合企業が課徴金を納付するか、あるいは課徴金納付命令に対する異議申立期間(一月)を経過して初めて、住民にとって違法な談合(とこれに基づく損害の発生)があったと判断ができるといえる。本件において、住民は監査請求の提起に当たっては、慎重にその結果を予測し、場合によっては、その後の住民訴訟の立証手段の探索、準備、帰趨等も検討する余裕が認められるべきであるから「知、ることができたとき」とは住民にとって確実に違法行為の存在が認められる時期と解すべきであり、少なくとも談合企業が明確に談合を認める態度を取ったことが明らかになるまでは「当該行為を知ることができたとき」とはいえないと考えられる。 知り得た時期その2原告らが、本件各請負契約が公正取引委員会の発した課徴金納付命令の対象工事であることを知り、本件監査請求を行った経過は以下のとおりである。 (一)平成七年七月二九日、第二回全国オンブズマン大会において、横浜弁護士会A弁護士は「下水道談合」に関する住民訴訟の提起を提案した。この、時点では、原告らは「上水道談合」についての情報を入手していない。 (二)同年九月三〇日、全国市民オンブズマン連絡会議幹事会において、A弁護士から「上水道談合」についても住民訴訟を提起すべきとの提 時点では、原告らは「上水道談合」についての情報を入手していない。 (二)同年九月三〇日、全国市民オンブズマン連絡会議幹事会において、A弁護士から「上水道談合」についても住民訴訟を提起すべきとの提案があっ、た。このとき「横河電機株式会社外3名に対する課徴金納付命令について」、及び対象工事一覧表が資料として配布された。同幹事会において、全国の市民- 8 -オンブズマンに呼びかけることが承認された。 なお、A弁護士が右資料を公正取引委員会から入手したのは、同年九月はじめころである。 (三)右幹事会に出席していた原告代理人西野弁護士(リブレ法律事務所)は、同年一〇月三日、課徴金納付命令の対象に県が発注した本件各請負契約が含まれていたため、右幹事会において配布された資料を「下水道談合」を担、当していた原告代理人平井弁護士にファックスで送信した。 (四)同月一七日、名古屋市民オンブズマン、同タイアップグループの会議においてとりあえず上水道談合についても情報公開請求を行うことを決定した。 名古屋市民オンブズマンタイアップグループのメンバーである原告らは、このとき初めて「上水道談合」の対象工事に本件各請負契約が含まれているこ、とを知った。 (五)平井弁護士は、同月二四日、情報公開請求により、本件各請負契約の契約書の写しの交付を請求した。 (六)右契約書の写しは、同年一一月一四日に交付された。 (七)原告らは、同月二七日、本件監査請求を行った。 以上の経過からすると、原告らが、公正取引委員会が課徴金納付命令を課した対象工事に県発注分が含まれることを知ったのは、公正取引委員会の「横河電機株式会社ほか3名に対する課徴金納付命令について」という文書の別紙を受け取った、平成七年一〇月三日ころである。 、、、、。 しかし右文書には発注 とを知ったのは、公正取引委員会の「横河電機株式会社ほか3名に対する課徴金納付命令について」という文書の別紙を受け取った、平成七年一〇月三日ころである。 、、、、。 しかし右文書には発注者物件名入札年月日の記載があるのみである右記載からは談合による入札が影響を与える本件各請負契約の日時、相手方、内容、金額など一切明らかでない。右の事実からすれば、平成七年一〇月ごろには、住民監査請求の対象となる怠る事実の相手方さえ明らかでなく、住民監査請求が不可能であることは明らかである。 被告らは平成七年八月九日の時点で住民監査請求を行うに足る情報は取得することが可能であったというが、住民監査請求の実情を無視した机上の空論である。怠る事実の相手方や、損害額が不明なまま住民監査請求をすれば、その特定を欠くものとして却下されることは明白である。そのような曖昧な住民監査請求を強要することは無意味な住民監査請求の乱発を招き、ひいては制度自体の崩壊に繋がりかねない。 そして契約内容が明らかになったのは、原告ら代理人の情報公開請求により契約書が公表された、平成七年一一月一四日である。この時になってはじめて住民監査請求が可能になったのである。 相当な期間(一)公正取引委員会の課徴金納付命令の決定後、現実に談合企業が課徴金を納付するか、あるいは納付命令に対して異議が申し立てられることなく申立()、、て期間一月を経過した時点を知り得た時期と捉えた場合本件監査請求は知ることができたときから相当期間内になされたことは明らかである。 (二)平成七年一一月一四日に原告ら代理人の情報公開請求により契約書が公表された時点を知り得た時期と捉えた場合には、本件監査請求はそれから一か月後になされているので、相当期間内になされたことは明らかである。 (三)仮 一四日に原告ら代理人の情報公開請求により契約書が公表された時点を知り得た時期と捉えた場合には、本件監査請求はそれから一か月後になされているので、相当期間内になされたことは明らかである。 (三)仮に、平成七年八月九日をもって、知り得た時期と解するとしても、住民監査請求は本来地方自治体の長が自主的に行うべき違法な財務会計行為の是正をし、補充的に行う権能を住民に認めた趣旨と解されるところ、本件は、担当職員も新聞報道までは談合の事実を知らなかったという特殊性が存在するのであるから、新聞報道後相当の期間を経過して初めて住民が監査請求を提起すべきであったとされるべきであり、通常の場合と同様に三か月を相当とした被告らの主張は、この点からも正当理由の解釈を誤るものである。 したがって、本件監査請求においては、住民監査請求期間徒過について正当な理由がある。 (被告らの主張) 正当な理由の有無は、特段の事情がない限り、普通地方公共団体の住民が相当の注意力を持って調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたかどうか、また、当該行為を知ることができたと解されるときから相当な期- 9 -間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきである。 通常、客観的に住民が当該行為を知り得ないか、又は知ることが困難な状況におかれていたことがまず必要であり、その後当該行為を知り得るようになったときから相当期間内に監査請求をすることが必要とされるのである。 本件では、平成六年三月二六日、朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、産経新聞等の各新聞紙上において「本件被告らを含む大手電機・計器メーカー、八社に対し、各地の自治体発注の上下水道の処理システムの入札をめぐる談合を行っていた疑いにより、公正取引委員会が立入検査を行った」旨の報道が、平成七年八月八日には、公正 む大手電機・計器メーカー、八社に対し、各地の自治体発注の上下水道の処理システムの入札をめぐる談合を行っていた疑いにより、公正取引委員会が立入検査を行った」旨の報道が、平成七年八月八日には、公正取引委員会が本件課徴金納付命令を行うとともに対象工事を公表し、同月九日には、中日新聞、朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、産経新聞等の各新聞紙上に、その旨を記載する記事が掲載され、中日新聞においては、県が発注した工事が対象となっていることが報道された。したがって、原告らは、平成七年八月九日には、公正取引委員会ないしその中部事務所に赴くことにより「横河電機株式会社ほか3名に対する課徴金納付命令、について」と題する文書を入手し、本件各工事が右課徴金納付命令の対象となっていることを知ることができた。 さらに、いわゆる「市民オンブズマン」の一員ないし関係者である、原告ら及び原告ら代理人らにとって、平成七年八月九日に、右文書を入手することは可能であったはずである。すなわち、全国市民オンブズマン連絡会議は、既に平成七年七月二七日時点で、日本下水道事業団発注にかかる工事に関する公正取引委員会の課徴金納付命令の対象工事の全リストを入手したことを明らかにするとともに、同月三〇日の時点で、すでに平成六年三月二六日以降の新聞報道で公正取引委員会により立入調査が行われていることが明らかとなっていた浄水場の計装設備工事に関する談合事件についても、具体的な工事名を洗い出して全国規模による住民訴訟を提起する方針を決していた。このような状況のもとで、前記のとおり、平成七年八月八日、本件課徴金納付命令が発せられ、翌九日には、その旨の新聞報道がなされた。全国市民オンブズマン連絡会議のメンバーの一員である原告ら及び原告ら代理人らは、公正取引委員会から、本件課徴金納付命令の内容を 本件課徴金納付命令が発せられ、翌九日には、その旨の新聞報道がなされた。全国市民オンブズマン連絡会議のメンバーの一員である原告ら及び原告ら代理人らは、公正取引委員会から、本件課徴金納付命令の内容を記載した書面、すなわち「横河電機株式会社ほか3名に対する課徴金納付命令について」と題する書面を取得できることを熟知していた。 以上のことからすると「正当な理由」の有無の判断における相当な期間の、開始時点としての監査請求の対象となる違法な財務会計行為を知ることができたと解されるときは、遅くとも、平成七年八月九日と認められるのである。 、「」 原告らは横河電機株式会社ほか3名に対する課徴金納付命令についてと題する文書には、発注者、物件名及び入札年月日の記載があるのみで、契約当事者、契約金額が明らかでなく、住民監査請求はなしえないと主張する。 しかし、住民監査請求を行うためには対象となる財務会計上の行為を他の事項から区別して特定認識できるように個別的、具体的に摘示すれば足りると解されており(最高裁判所第二小法廷平成二年六月五日判決、発注者、物件名)及び入札年月日を特定することにより、財務会計上の行為の特定は十分可能である。 原告らは「怠る事実」として構成するためには、相手方及び損害額(契、約金額)を知ることが必要であると主張する。 しかしながら、住民監査請求期間の制限を免れるために「怠る事実」として構成し、そのために入手すべき情報が増加したとしても考慮するに値しない。 また「怠る事実」として構成するとしても、右の例によれば「平成四年五月、一四日入札にかかる愛知県企業庁発注の尾張東部浄水場計装設備(その1)工事の請負契約の代金は談合により不当に高額なものとなっており、愛知県は右代金額の二割に相当する額の損害を被っているところ、愛知県は談 日入札にかかる愛知県企業庁発注の尾張東部浄水場計装設備(その1)工事の請負契約の代金は談合により不当に高額なものとなっており、愛知県は右代金額の二割に相当する額の損害を被っているところ、愛知県は談合を行った五社に対する損害賠償請求権の行使を怠っているので是正措置を求める」と。 、。 いう監査請求を行えば特定としては十分でありこれ以上に特定の必要はない また、契約当事者及び契約金額についても知ることは容易であった。右に述べたとおり、住民監査請求を行う上で契約当事者及び契約金額を知る必要はないが、入札に関する情報は公開されており、入手することは容易である。平成四年五月一二日、同月一五日、平成五年九月一七日、同月二八日の各中部建- 10 -通新聞には、尾張東部浄水場計装設備(その1)工事及び幸田浄水場計装設備更新工事について、指名業者、落札業者及び落札金額が記載してある。落札業者が契約当事者であり、落札金額に消費税三%を加算した金額が契約金額である。このように、契約当事者と契約金額を知るために、原告ら代理人が行ったような情報公開請求など行う必要はない。 自治法二四二条二項は、法律関係の早期安定の要請に基づく規定であり、監査請求期間は一年間と定められているところ「正当な理由」がある場合に、限り、例外的に右期間を徒過した後の住民監査請求を適法と認めたものであることからすると、右知り得た時期から三か月半以上経過した後に行われた、本件監査請求は、相当な期間内になされたということはできず、正当な理由は認められない。 四争点四(訴えの利益)について(被告知事及び企業庁長の主張) 原告らは、被告富士電機及び被告日立製作所に対し、自治法二四二条の二第一項四号に基づき、県に代位して不法行為による損害賠償(以下、この項においては「四号請求」 て(被告知事及び企業庁長の主張) 原告らは、被告富士電機及び被告日立製作所に対し、自治法二四二条の二第一項四号に基づき、県に代位して不法行為による損害賠償(以下、この項においては「四号請求」という)を求めている。 。 右直截な四号請求がなされている以上、被告知事及び同企業庁長に対する同法二四二条の二第一項三号による違法確認請求(以下、この項においては「三号請求」という)を並立させる訴訟上の意義ないし必要性は存在しない。 。 また、四号請求により損害賠償請求権の代位行使がなされた場合には、地方公共団体としてはもはや相手方に対して当該損害賠償請求権を行使して同一の請求をすることはできないのであるから、三号請求を求める実質的な意味はない。 なお、訴外横河電機株式会社、同山武ハネウエル株式会社及び同株式会社島津製作所との間で、県は本件各請負契約を締結しておらず、その結果何らの公金の支出も行われていない。 (原告らの主張) 三号請求は、地方公共団体の手による積極的な職務執行の行使を期待していわば間接的な方法により、怠る事実の違法状態を解消し、地方公共団体の損害を防止し、回復する目的を実現しようとするものであるのに対し、四号請求は、住民自らの手で地方公共団体に代位して請求権を行使して、直接的に右目的を実現しようとするものであり、それぞれの請求が独自の存在意義を有するものである。 さらに、自治法二四二条の二は、各号の請求の間に優先関係を定めていないし、複数の請求を禁じていないこと、実質的にも地方公共団体の執行機関などの違法な財務会計行為を是正しその権利行使の実効性を確保する手段としてどちらが有効適切であるかは一概にはいえない。 したがって、三号請求と四号請求は競合すると解すべきである。 原告らの三号請求は、被告知事及び同企業庁長が、 しその権利行使の実効性を確保する手段としてどちらが有効適切であるかは一概にはいえない。 したがって、三号請求と四号請求は競合すると解すべきである。 原告らの三号請求は、被告知事及び同企業庁長が、被告富士電機及び同日立製作所のみならず、訴外横河電機株式会社、同山武ハネウエル株式会社及び同株式会社島津製作所に対して有する損害賠償請求権の不行使が違法であることの確認を求めるものであって、原告らの四号請求とは損害賠償請求の相手方を異にする。 第三当裁判所の判断一争点一(被告適格)について原告らは、被告知事に対して怠る事実の違法確認請求(自治法二四二条の二第一項三号の訴えを提起しているところ同号の被告適格を有する者は当)、、「該執行機関又は職員」である。 本件は地方公営企業が締結した契約に関して問題となっているところ、地方公営企業については、地方自治法の特別法である地方公営企業法が適用されるのであり、普通地方公共団体の資産の中でも地方公営企業の用に供する資産については、地方公営企業法そのものによって、公営企業管理者が業務執行権限を有し、当該業務の執行に関し、当該業務の執行に管理者が普通地方公共団体を代表するとされ(地方公営企業法七条、八条、地方公営企業の業務の執行)に関し、地方公営企業の用に供する資産の取得、管理、処分等についての事務を担任することとされている(同法九条。 )- 11 -そして、本件損害賠償請求権の行使は、愛知県公営企業の取得した債権の管理にかかるものであるから、愛知県公営企業の管理者である被告企業庁長が、地方公営企業法によって、本来その権限を有する者となり、被告知事は、本件損害賠償請求権を行使しうる者ではない。 したがって、被告知事は、本件訴えにつき被告適格がない。 二争点二(監査請求期間制限適用の有 公営企業法によって、本来その権限を有する者となり、被告知事は、本件損害賠償請求権を行使しうる者ではない。 したがって、被告知事は、本件訴えにつき被告適格がない。 二争点二(監査請求期間制限適用の有無及びその起算点)について以下では、安城請負契約及び尾張請負契約を「本件各請負契約」といい、本件損害賠償請求権のうち安城請負契約及び尾張請負契約にかかる部分のみを「本件損害賠償請求権」という。 自治法二四二条二項は「当該行為のあった日又は終わった日から一年を、経過したとき」は住民監査請求をすることができないと規定している。 同条項は、財務会計上の行為がたとえ違法、不当なものであったとしても、いつまでも住民監査請求の対象となりうるものとしておくことは、法的安定性を損ない好ましくないとの考えから、財務会計上の行為の法的安定及び地方財政の円滑な執行と普通地方公共団体の財政を健全ならしめるという住民監査請求の目的との調和を図るため、住民監査請求をすることができる期間を制限したものである。 もっとも、住民監査請求の対象行為の内「怠る事実」については、その請求中に財務会計上の積極的行為の違法、不当を観念し得ないから、一般に、自治法二四二条二項の適用はないと解される(最高裁判所昭和五三年六月二三日第三小法廷判決参照。 )しかし、違法な財務会計上の行為が行われた場合、普通地方公共団体は、当該行為を行った普通地方公共団体の長その他の職員や、当該行為の相手方等に対して、損害賠償請求権等の実体法上の請求権を取得することが往々にしてあるところ、当該実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実として、住民監査請求をした場合、当該実体法上の請求権は、違法な財務会計上の行為に基づいて発生しているため、監査委員は、当該実体法上の請求権の存否を判断する過程で、 行使をもって財産の管理を怠る事実として、住民監査請求をした場合、当該実体法上の請求権は、違法な財務会計上の行為に基づいて発生しているため、監査委員は、当該実体法上の請求権の存否を判断する過程で、その発生原因である当該行為の違法性を判断せざるを得な。 、、、いそうすると住民が当該行為のあった日又は終わった日から一年経過後当該行為が違法であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実として住民監査請求をすることを許容すると、自治法二四二条二項の趣旨を没却してしまう。 そこで、普通地方公共団体において違法に財産の管理を怠る事実があるとして自治法二四二条一項の規定による住民監査請求があった場合に、右監査請求が、当該普通地方公共団体の長その他の財務会計職員の特定の財務会計上の行為が違法であるとし、当該行為が違法であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としているものであるときは、当該監査請求については、原則として、右怠る事実にかかる請求権の発生原因たる当該行為のあった日又は終わった日を基準として、同条二項が適用されるものと解される。 なお、六二年判決は「当該行為が違法、無効であることに基づいて発生す、る実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としているものであるとき」に自治法二四二条二項の適用を認めているが、財務会計上の行為が違法でありさえすれば、本来、当該財務会計上の行為のあった日又は終わった日から住民監査請求をすることが可能であること、同判決の事案は、監査請求人が、財務会計上の行為が違法、無効であることにより発生した損害賠償請求権の不行使は違法であると主張していた事案であることからすると、当該行為が無効であることは必ずしも必要でないものと解される。 求人が、財務会計上の行為が違法、無効であることにより発生した損害賠償請求権の不行使は違法であると主張していた事案であることからすると、当該行為が無効であることは必ずしも必要でないものと解される。 本件監査請求において、原告らは、被告両会社ら入札参加者らの談合により、本件各請負契約の契約金額が不当につり上げられたから、県は、被告両会社ら入札参加者らに対し、本件損害賠償請求権を取得しているが、同請求権の行使を怠っているとして、その是正措置を求めている。 本件損害賠償請求権は、被告両会社ら入札参加者らの談合という財務会計上の行為ではない行為を不法行為ととらえているが、右不法行為により損害が発生するのは、本来談合が行われなければ形成されたであろう金額を超えた契約金額で、本件各請負契約に基づく支出がなされたからである。そして、その場- 12 -合、本件各請負契約に基づく支出は、客観的に本件各請負契約が目的とした工事を達成するための必要かつ最少の限度の経費を超えたものとなるから、地方財政法四条一項に違反することとなる。 このように、本件各請負契約に基づく支出の違法は、本件監査請求が怠る事実と構成する損害賠償請求権の違法原因ではなく、損害発生原因ではあるが、損害賠償請求権の存否を判断する上で、財務会計上の行為の違法性を判断することとなることに変わりはないから、本件監査請求が怠る事実と構成する損害賠償請求権は、本件各請負契約に基づく支出の違法に基づき発生する実体法上の請求権であり、本件監査請求については、自治法二四二条二項が適用されるものである。 以上によれば、本件監査請求期間の始期は、本件損害賠償請求権が発生した財務会計行為があった日又は終わった日であり、本件各請負契約の代金が完済された日をもって財務会計行為があった日となる。 この点につ 以上によれば、本件監査請求期間の始期は、本件損害賠償請求権が発生した財務会計行為があった日又は終わった日であり、本件各請負契約の代金が完済された日をもって財務会計行為があった日となる。 この点について、被告らは、本件損害賠償請求権は、本件各請負契約締結と同時に発生すると主張する。 確かに、本件各請負契約の締結によって、県は、契約金額の支払債務を負うが、不法行為に基づく損害賠償請求権が発生するための損害とは、現実の損害でなければならず、債務の負担をもって損害が発生したと評価するためには、被害を受けたとされる者が当該債務を弁済することが確実でなければならないと解される。 しかしながら、原告らの主張を前提とすれば、本件各請負契約の契約金額が地方財政法四条一項に違反することとなったのは、同契約の請負者を含む被告両会社ら入札参加者らの談合によるものであったというのであるから、同契約の契約金支払債権の債権者である請負者は、同契約が同条項に違反することを当然に知っていたこととなる。そうだとすると、仮に県が本件各請負契約に基づく支出前に、同契約の締結の契約金額が談合に基づき不当に高いものとなっていることを知ったならば、地方財政法四条一項違反を理由に、請負者に対する同契約に基づく支出を拒むことができたものと解される。他方、県は、本件各請負契約に基づく支出前に、本件損害賠償請求権が発生したとして、被告両会社ら入札参加者らに対し、損害賠償請求権を行使することは許されないものと解される。 そうすると、本件各請負契約の締結がなされただけの段階では、本件損害賠償請求権の発生原因である談合行為に基づく不当に高い契約金額の形成を理由、、として本件各請負契約に基づく支出がなされない可能性があったこととなり県が本件各請負契約の契約金支払債務を弁済することが確実であっ 発生原因である談合行為に基づく不当に高い契約金額の形成を理由、、として本件各請負契約に基づく支出がなされない可能性があったこととなり県が本件各請負契約の契約金支払債務を弁済することが確実であったとは解されない。したがって、本件各請負契約の締結に基づく契約金支払債務の負担をもって、県に現実の損害が発生したとして、同契約の締結と同時に本件損害賠償請求権が発生していると解することはできない。 よって、被告らの右主張は採用することができない。 なお、本件各請負契約に基づく支出が地方財政法四条一項に違反するとすれば、それは、同契約の締結が被告両会社ら入札参加者らの談合により不当に高い契約金額が形成され地方財政法四条一項に違反したことに原因がある。そこで、本件損害賠償請求権の住民監査請求の制限期間の起算点を本件各請負契約に基づく支出の時と解すると、本件各請負契約の締結という財務会計上の行為を対象として住民監査請求を行う場合よりも監査請求期間の終期が遅くなることとなり、均衡を欠くように思われるかもしれない。 しかし、住民監査請求の制限期間の起算点は、当該住民監査請求が何を対象としているかという観点から検討すべきである。そうすると、本件監査請求の対象は本件損害賠償請求権であるから、本件損害賠償請求権が発生する前から。 、住民監査請求の期間制限が進行を開始すると解することは不合理であるまた本件損害賠償請求権の有無を判断するに当たって、本件各請負契約締結の違法性も判断することとなるのは、仮に、住民が本件各請負契約に基づく支出を住民監査請求の対象とし、その支出が違法であることを理由に住民訴訟を提起した場合には、支出の違法性の理由として本件各請負契約締結の違法性も主張することができると解される(被告企業庁長は、契約締結と出納の権限を有しているのであるか が違法であることを理由に住民訴訟を提起した場合には、支出の違法性の理由として本件各請負契約締結の違法性も主張することができると解される(被告企業庁長は、契約締結と出納の権限を有しているのであるから(地方公営企業法九条八号、一一号、二七条、自ら行った)- 13 -本件各請負契約の締結が違法であり、同契約に基づく支出を差し止めることができる場合には、自らその支出を差し止める権限を有しているから、当該支出の適法要件には、本件各請負契約の締結が適法であることも含まれる)こと。 と対比しても、何ら不合理ではない。 原告らは、住民訴訟は、長や職員の職務義務違反行為を是正して、もって財政の健全性を確保しようとするものであり、財務会計行為を行うに当たって長や職員の職務義務違反が認められる場合は、違法な当該行為の是正を求めることになる一方、長や職員に職務義務違反が認められない場合には、違法な状態を是正すべき義務を怠っているとして、怠る事実のみが問題となるとの前提に立ち、当該行為の違法性は、行為者たる執行機関又は職員の当該地方公共団体に対する関係での違法性(行為者が当該地方公共団体に対する関係で当該行為をしない義務を負っているにもかかわらず、右義務に違反したことを意味する)に限られるから、本件各請負契約を締結するに当たって長や職員に職務義務違反がない本件においては、違法な当該行為があったとはいえないから、本件各請負契約の締結や代金の支出のあった日若しくは終わった日が、監査請求期間の始期となることはないと主張する。 しかしながら、住民監査請求は普通地方公共団体の財政を健全ならしめるために認められた制度であるから「当該行為が違法であることに基づいて発生、する実体法上の請求権」という場合の違法とは、当該行為が客観的に財務会計上の正当性を欠いていれば 団体の財政を健全ならしめるために認められた制度であるから「当該行為が違法であることに基づいて発生、する実体法上の請求権」という場合の違法とは、当該行為が客観的に財務会計上の正当性を欠いていれば足りるものであり、それ以上に、当該行為を行った者が行為当時に職務義務違反を認識していたか、故意・過失等があったか等の主観的要件を必要とするものではない。 このことは、住民監査請求においては「当該行為を防止し、若しくは是正、し・・・・又は当該行為・・・によって当該普通地方公共団体の被った損害、を補填するために必要な措置を講ずべきことを請求することができる」とさ。 れていること(自治法二四二条一項、監査委員は、原告らが主張するような)長や職員の主観的要件を欠く場合においても、当該財務会計上の行為が客観的に財務会計上の正当性を欠いていると判断すれば「当該普通地方公共団体の、議会、長その他の執行機関又は職員に対し期間を示して必要な措置を講ずべきことを勧告する」ことができるのであり(同条三項、監査委員が求める措置)は、行為者たる執行機関又は職員の主観的要件を要する行為者に対する損害賠償請求に限られないことから明らかである。 したがって、原告らの右主張を採用することはできない。 原告らは、自治法二四二条二項の適用がある怠る事実か否かは、監査請求自体が、財務会計上の行為の違法・無効という法律構成をとっているかどうかによって判断すべきであると主張する。 しかし、同条項が監査請求期間に制限を設けたのは、財務会計行為の法的安定及び地方財政の円滑な執行と地方公共団体の財政を健全ならしめるという住民監査請求の目的との調和を図ったものであるから、当該住民監査請求において、客観的に、その怠る事実が財務会計上の行為の違法に基づき発生しているものと解される場合に 団体の財政を健全ならしめるという住民監査請求の目的との調和を図ったものであるから、当該住民監査請求において、客観的に、その怠る事実が財務会計上の行為の違法に基づき発生しているものと解される場合には、請求人がどのような法律構成をとっているかにかかわらず、同条項が適用されるべきである。六二年判決が「右監査請求が、当該普通地方公共団体の長その他の財務会計職員の特定の財務会計上の行為を違法であるとし、当該行為が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としているものであるとき」と判示しているのは、その事案が、住民監査請求において、特定の財務会計行為を違法、無効なものであるとし、これに基づき普通地方公共団体が財務会計職員に対し損害賠償請求権を行使しうるのに、これをしないでいるのは違法に財産管理を怠る事実に該当すると主張されていたからに過ぎないものと解される。 したがって、原告らの右主張は採用することができない。 原告らは、予定価格は「契約の目的となる物件又は役務について、取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短を考慮して適正に定めなければならない(予算決算及び会計令八○条二項参照)という」趣旨で設定されるものであるから、価格形成がその範囲内にある限り当否の問題が生じることはあっても目的・効果との均衡を著しく欠く違法はありえない- 14 -から、地方財政法四条一項に違反することはないと主張する。 しかし、一般論として、地方財政法四条一項に違反するか否かの判断において、一定の裁量権が、財務会計上の行為を担当する職員に与えられているとしても、談合によって不当に高い契約金額が形成されることも許容するような裁量権が財務会計職員に与えられていないことはいうまでもない。 したが 裁量権が、財務会計上の行為を担当する職員に与えられているとしても、談合によって不当に高い契約金額が形成されることも許容するような裁量権が財務会計職員に与えられていないことはいうまでもない。 したがって、原告らの右主張は採用できない。 7(一)原告らは、平成九年判決を援用して、本件の場合、自治法二四二条二項の起算点は、本件損害賠償請求権を行使することができるようになった時点、すなわち平成七年八月九日付け新聞により「公正取引委員会が、談合企、業に対し、上水道計装設備工事を巡り課徴金納付命令を出したこと」が報道された後、相当期間が経過したにもかかわらず県が被告両会社ら入札参加者らに対し本件損害賠償請求権を行使しなかった時点であると主張する。 (二)しかし、同判決は、買主である地方公共団体が、売買の目的物である土地を第三者に転売した場合には、売主は売買契約を解除することができ、その場合には、地方公共団体は売主に対して違約金を支払うとの転売禁止特約付売買契約に基づき、地方公共団体が土地を取得したところ、同団体の市長が、、、右特約に違反し当該土地を第三者に転売し売主から当該契約を解除されたが地方公共団体が売主との間で、当該特約の有効性を争い、特約違反に基づく違、。 約金支払債務の負担を否認し裁判上の和解により解決したという事案である、、、右事案では客観的には売主が地方公共団体との売買契約を解除した時点で地方公共団体は違約金支払債務を負担すると同時に、当該土地を第三者に転売した市長に対し、損害賠償請求権を行使することが可能であったといえなくもないが、地方公共団体が、違約金支払債務という地方公共団体が第三者に対して負担する債務の存在そのものを否定していたのであり、その一方で、地方公共団体が市長に対して損害賠償請求権を行使することは矛盾 ないが、地方公共団体が、違約金支払債務という地方公共団体が第三者に対して負担する債務の存在そのものを否定していたのであり、その一方で、地方公共団体が市長に対して損害賠償請求権を行使することは矛盾する行為であるから、地方公共団体の市長に対する損害賠償請求権の行使は、およそ期待できないという特殊な事案であったことが認められる。 、、「、右のような特殊な事案の下で平成九年判決は財務会計上の行為が違法無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実とする住民監査請求において、右請求権が右財務会計上の行為のされた時点においてはいまだ発生しておらず、又はこれを行使することができない場合には、右実体法上の請求権が発生し、これを行使することができることになった日を基準として同項の規定を適用すべきものと解するのが相当である」と判示したのであり、右判示にいう「これを行使することができない。 場合」とは、普通地方公共団体が損害賠償請求権を行使することを要求することが、同団体に矛盾した行為を強いることとなるなど客観的にもその当該行為の執行機関又は職員に職務懈怠が認められない場合を意味するものと解され、単に普通地方公共団体が損害賠償請求権の発生を知らないため、事実上行使することができないという程度のものは、同判決の射程範囲ではないものと解される。 (三)本件において、県は、本件各請負契約の締結自体を否認しているものではなく、仮に、原告らの主張どおり被告両会社ら入札参加者らによる談合があったとした場合に、県が、その者らに対して損害賠償請求権を行使することは、何ら矛盾する行為になるわけではなく、その損害賠償請求権の行使を、およそ期待できないという関係にはないものと認められる。 よって、原告らの右主張は採用することが 対して損害賠償請求権を行使することは、何ら矛盾する行為になるわけではなく、その損害賠償請求権の行使を、およそ期待できないという関係にはないものと認められる。 よって、原告らの右主張は採用することができない。 以上より、本件監査請求について、自治法二四二条二項本文の適用を検討すると、本件監査請求が対象とする本件各請負契約に基づく支出は、安城請負契約については、平成四年四月三〇日に完了し、尾張請負契約については、平成五年七月三〇日に完了しているところ、本件監査請求は平成七年一一月二七日になされている。 よって、本件監査請求のうち、本件損害賠償請求権を怠る事実としているものについては、住民監査請求期間を徒過するものである。 三争点三(正当な理由)について 財務会計上の行為を対象として住民監査請求をするためには、当該財務会計上の行為を特定し、その不当、違法事由を指摘しなければならないが(自治- 15 -法二四二条一項、同法施行令一七二条二項、同法施行規則一三条参照、自治)法二四二条二項本文が「当該行為のあった日又は終わった日」を住民監査請、求期間の起算点とし、現行制度上、当然に個別的な財務会計上の行為を開示することは要求されていないにもかかわらず、財務会計上の行為の時から監査請求期間が進行するものと定められていることからすると、単に当該財務会計上の行為の存在又はその違法性が住民にとって認識しがたいという事情があるだけで「正当な理由がある」と解することはできない。 すなわち「正当な理由がある」というためには、当該財務会計上の行為を、担当した職員又はその相手方等による隠蔽等の通常とは異なる行為が行われているため、住民が当該財務会計上の行為の存在又はその違法性を認識しがたいという事情があるときに、住民が、相当な注意力を持って調査をした た職員又はその相手方等による隠蔽等の通常とは異なる行為が行われているため、住民が当該財務会計上の行為の存在又はその違法性を認識しがたいという事情があるときに、住民が、相当な注意力を持って調査をしたとすれば当該財務会計上の行為の存在又はその違法性を知り得たと客観的に認められる、、「」時から相当な期間内に住民監査請求を請求していれば正当な理由があると認められるものと解される。また、当該財務会計上の行為が違法性を有するか否かの最終的な判断は司法の判断に委ねざるを得ないから、当該財務会計上、、の行為の違法性を知り得たと客観的に認められる時とは相当な資料に基づき当該財務会計上の行為が違法性を有するとの合理的疑いを持つことができた時をいうものと解される。 本件各請負契約に基づく支出自体が、当該財務会計行為を担当した職員又はその相手方等の通常とは異なる行為に起因して住民にとって認識しがたいものとなっていたと認めるに足る証拠はない。 しかし、本件監査請求によれば、本件各請負契約に基づく支出の違法性(地方財政法四条一項違反)は、被告両会社ら入札参加者らの談合に起因しているのであるから、仮にそのような事実があれば、その違法性は、当該財務会計上の行為の相手方等の談合という通常とは異なる行為に起因して、住民にとって認識しがたいものとなっていたものと認められる。 そこで、次に、住民が、相当な注意力を持って調査をしたとすれば当該財務会計上の行為の違法性を知り得たと客観的に認められる時はいつかを検討する。なお、右検討に当たっては、本件監査請求を行った原告らについて特に認められる事情があれば、それらも判断の基礎事情とすべきである。このように解すると、誰が住民監査請求を行ったかによって、自治法二四二条二項により住民監査請求が違法となるか否かの判断 告らについて特に認められる事情があれば、それらも判断の基礎事情とすべきである。このように解すると、誰が住民監査請求を行ったかによって、自治法二四二条二項により住民監査請求が違法となるか否かの判断が区々となるおそれはあるものの、異なる者が同一の財務会計上の行為を対象として住民監査請求をすることは可能であるから、特に原告らに認められる事情を正当理由の有無の判断において検討することは、何ら不当ではない。 証拠(甲七ないし九の各一ないし三、二三、乙イ一、二、三、九、乙ロ一の一)と弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 (一)平成六年三月二六日、朝日新聞に「被告富士電機及び同日立製作所、を含む大手電機、計器メーカー八社が各地の自治体が発注する上下水道の処理システムの入札をめぐって談合を繰り返し、受注予定業者や落札金額などを決めていた疑いがあるとして、公正取引委員会が、同月二四日、一斉に立入検査をしていた」との記事が掲載された(乙イ一。 )右記事には「各地の自治体が発注する上下水道の処理システムの入札」に、本件各請負契約が含まれるとも、愛知県が発注する上下水道の処理システムの入札が含まれるとも記載されていない。 (二)公正取引委員会は、平成七年七月一二日、日本下水道事業団発注の電気設備工事の請負業者に対し、課徴金納付命令を行った(乙ロ一の一。 )全国市民オンブズマン連絡会議の世話役である横浜弁護士会所属の弁護士Aは、同月二四日、公正取引委員会審査部から、右課徴金納付命令の課徴金算定の基礎となった工事の一覧表をファクシミリで入手した(甲二三。 )同月二九日、第二回全国オンブズマン大会において、弁護士Aは、右一覧表を添付した「下水道談合」に関する住民訴訟の提案」と題する書面を配布し「た(甲二三。 )原告らは、市民オンブズマンタイア )同月二九日、第二回全国オンブズマン大会において、弁護士Aは、右一覧表を添付した「下水道談合」に関する住民訴訟の提案」と題する書面を配布し「た(甲二三。 )原告らは、市民オンブズマンタイアップグループのメンバーである。 (三)公正取引委員会は、平成七年八月八日「本件課徴金納付命令を行った(乙イ三。 )- 16 -(四)同月九日、中日新聞に「全国の自治体などが発注する上水道施設の、計装設備工事をめぐり、入札で談合を繰り返していたとして、公正取引委員会は同月八日、大手電機メーカーの日立製作所、富士電機、大手計器メーカーの横河電機、山武ハネウエルの四社に対し、独占禁止法に基づき、計五億四四七九万円の課徴金の納付を命じる行政処分をした。談合は遅くとも平成元年に始まっており、昨年三月に公正取引委員会が五社に立入検査を行うまで継続。全国で発注される工事の約八割が五社の談合で落札されていたという。今回は三年三月から六年三月までの三年間に、東京都、愛知、三重、長野県など全国の自治体や企業団計一八団体が発注した二七件の工事が対象になった」との記。 事が掲載された(乙イニ。 )(五)公正取引委員会では、本件課徴金納付命令の新聞発表文の写しである「横河電機株式会社ほか3名に対する課徴金納付命令について」と題する書面及び同命令の課徴金額算定の基礎となった工事の一覧表(発注者、物件名、入札年月日が記載されたもの)を、平成七年八月八日以降、一般に公表・配布していた(乙イ九。 )右一覧表には、次の記載があった。 (1)発注者愛知県公営企業管理者物件名安城浄水場計装設備(その1)工事入札年月日平成三年一一月二一日(2)発注者愛知県企業庁物件名尾張東部浄水場計装設備(その1)工事入札年月日平成四年五月一四日(六)原告ら代理 件名安城浄水場計装設備(その1)工事入札年月日平成三年一一月二一日(2)発注者愛知県企業庁物件名尾張東部浄水場計装設備(その1)工事入札年月日平成四年五月一四日(六)原告ら代理人平井宏和は、平成七年一〇月二四日、被告企業庁長に対し、本件各請負契約の工事請負契約書の公文書公開請求を行い、同被告は、同年一一月一四日、本件各請負契約の相手方の印影を除く契約書を部分公開した(甲七ないし九の各一ないし三。 )右事実からすると、原告らは、平成七年七月二九日ころ「下水道談合」に、「関する住民訴訟の提案」と題する書面に添付されていた課徴金納付命令の課徴金算定の基礎となった工事の一覧表を受領していたことが認められるところ、同一覧表はファクシミリ文書であり、送信元として公正取引委員会審査部の記載があったのであるから、原告らは、遅くとも、そのころには、課徴金納付命令がなされた後に公正取引委員会に問い合わせれば、課徴金算定の基礎となった工事の一覧表を入手することができることを知っていたものと認められる。 したがって、原告らは、平成七年八月九日に、本件課徴金納付命令がなされ、右命令の対象工事に愛知県が発注する工事も含まれていたとの新聞報道に接すれば、公正取引委員会に問い合わせ、同委員会が一般に公表・配布していた本件課徴金納付命令の課徴金算定の基礎となった工事の一覧表を入手することにより、本件各請負契約が、談合により不当に高い契約金額となっていたとの合理的疑いを持つことができたものと認められる。 原告らは、右一覧表には、発注者、物件名、入札年月日の記載があるのみであり、談合による入札が影響を与える工事契約の日時、相手方、内容、金額など一切明らかでないから、監査請求が不可能であったと主張する。 しかし、本件において、被告両会社ら入札参加者らの談 載があるのみであり、談合による入札が影響を与える工事契約の日時、相手方、内容、金額など一切明らかでないから、監査請求が不可能であったと主張する。 しかし、本件において、被告両会社ら入札参加者らの談合により、住民が認識しがたくなっていたと認められるのは、財務会計上の行為の存在そのものではなく、財務会計上の行為の違法性である。 したがって、本件各請負契約の財務会計上の行為に関する情報が明らかにならなくとも、本件各請負契約の財務会計上の行為が被告両会社ら入札参加者らの談合に基づくものであったということについて、客観的な資料に基づき合理的疑いを持つことができるようになれば、当該財務会計行為の違法性を知り得たということができるものと解される。 そして、公正取引委員会による課徴金納付命令は、本件各請負契約に基づく支出が談合によって不当に高額なものとなっていたとの合理的疑いを持つに足る相当な資料ということができるから、結局、原告らが、本件各請負契約に基づく支出の違法性について、相当な注意力を持って調査すれば知り得たと客観的に認められる時とは、平成七年八月九日であると認められる。 そうすると、原告らは、平成七年八月九日から三か月一八日後である平成- 17 -七年一一月二七日に、本件監査請求をしており、本件監査請求のうち本件損害賠償請求権を対象とする部分は、財務会計上の行為の違法性を知り得たと客観的に認められる時から相当な期間内になされた請求であるとは認められない。 原告らは、住民監査請求が、本来地方自治体の長が自主的に行うべき違法な財務会計行為の是正をし、補充的に行う権能を住民に認めた趣旨と解されるところ、本件は、担当職員も新聞報道までは談合の事実を知らなかったという特殊性が存在するから、本件監査請求は相当な期間内になされた請求であると主張する。 補充的に行う権能を住民に認めた趣旨と解されるところ、本件は、担当職員も新聞報道までは談合の事実を知らなかったという特殊性が存在するから、本件監査請求は相当な期間内になされた請求であると主張する。 しかし、普通地方公共団体の長その他の財務会計職員の特定の財務会計上の行為が違法であるとし、当該行為が違法であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としているものであるときには、当該行為に自治法二四二条二項が適用されることとの均衡上、右怠る事実についても、当該行為のあった日又は終わった日を基準に自治法二四二条二項が適用されるのであるから、同項ただし書の正当な理由の解釈においても、当該行為を対象として住民監査請求をする場合との間に差異を設けるべきではない。 よって、当該行為について監査請求ができる期間が経過した後に、当該行為が違法であることが住民が知り得る状態になったとき、住民のみならず自治体の担当職員もそれまで当該行為が違法であることを知らなかったような場合には、自治体と住民との問で適法性について行為の当初から見解が分かれていた場合と比較して、監査請求をしたのが遅くなったとしても相当な期間内において監査請求をしたとして正当事由があるといえるかが、問題となる。 相当な期間内に監査請求がされたか否かは、基本的には適法な監査請求といえる程度の資料を収集するためにどの程度の期間を要するかという観点から、個々の事例ごとに具体的に判断されるべきであり、まず、自治体において違法な財務会計行為の是正を図るために監査請求前置が求められていること、住民監査請求及び住民訴訟は、住民と自治体に見解の相違がある場合に最も意義があることからすると、自治体が当該財務会計行為についてどのような態度をとっていたかも、相当性の判断に当たって れていること、住民監査請求及び住民訴訟は、住民と自治体に見解の相違がある場合に最も意義があることからすると、自治体が当該財務会計行為についてどのような態度をとっていたかも、相当性の判断に当たっての一要素となり得るものである。 しかしながら、原告らは、単に自治体の担当者も行為の違法性を監査請求期間が経過した後に知ったと主張するだけであり、本件において、自治体がどのような対応をしていたか、そのような対応が原告らが監査請求をするについてどのような影響を及ぼしたかについては、全く主張しない。 そして、前記認定によれば、原告らの監査請求が遅れた事情として、自治体側の対応が影響したような事実はうかがわれない。 よって、原告らの右主張は採用できない。 、、 したがって本件監査請求のうち本件損害賠償請求権を対象とする部分は自治法二四二条二項に違反する違法な住民監査請求であるから、右部分を前提とする被告富士電機、同日立製作所及び同企業庁長に対する訴えは、適法な住民監査請求を経ていないこととなり、不適法な訴えとなる。 四 結論 よって、その余の争点について判断するまでもなく、本件訴えは、いずれも不適法な訴えであるから、主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第九部裁判長裁判官野田武明裁判官佐藤哲治裁判官安永武央は、転補につき署名押印することができない。 裁判長裁判官野田武明

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