平成31(ワ)9997 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和2年6月3日 東京地方裁判所
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令和2年6月3日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成31年(ワ)第9997号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和2年3月19日判決 原告エルメスアンテルナショナル同訴訟代理人弁護士高松 薫石田晃士小 熊 慎太郎 被告株式会社ティアマリア 主文 1 被告は,原告に対し,289万8468円及びうち221万6800円に対 する令和元年5月10日から,うち68万1668円に対する同年10月30日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,これを4分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,388万4800円及びうち221万6800円に対する令和元年5月10日から,うち166万8000円に対する同年10月30日から 各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,別紙2原告標章記載のかばんの形状(以下「原告標章」という。)について別紙1原告商標権目録記載の商標権(以下「原告商標権」といい,その商標を「原告商標」という。)を有し,原告標章の特徴を有する別紙3原告商品目録記載の 商品(以下「原告商品」という。)を販売する原告が,原告商品の形態は原告の周知又は著名な商品等表示でもある旨主張し,被告において販売していた別紙4被告商品目 徴を有する別紙3原告商品目録記載の 商品(以下「原告商品」という。)を販売する原告が,原告商品の形態は原告の周知又は著名な商品等表示でもある旨主張し,被告において販売していた別紙4被告商品目録記載のハンドバッグ(以下「被告商品」という。)及びそれと同様の形態上の特徴を有するハンドバッグ(その具体的な形態については争いがある。以下,当該ハンドバッグを「バーキンタイプのバッグ」といい,被告商品と併せて「被告商品 等」という。)の形状ないし形態は,原告商標と類似する標章であるとともに,原告の周知又は著名な商品等表示と類似する商品等表示(不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号,2号)に該当するとして,被告商品等を販売した被告の行為は商標権侵害又は不競法2条1項1号,2号の不正競争に当たり,被告は遅くとも平成22年8月11日から平成30年2月14日までの期間(以下,「対象期 間」という。)に被告商品等を少なくとも100個販売したと主張して,被告に対し,商標権侵害の不法行為による損害賠償請求権又は不競法4条による損害賠償請求権に基づき,次の支払を求める事案である。原告は,これらの請求につき,対象期間を通じて発生した損害について不競法4条による損害賠償請求をし,そのうち原告商標権登録後の期間に生じた損害については上記の両請求権に基づく請求を選択的 にするものである。 (1) 損害金元金①商標法38条2項ないし不競法5条2項によって算定される利益相当損害金として168万4800円,②信用毀損による無形損害として100万円及び③弁護士費用相当額として120万円の合計388万4800円 (2) 遅延損害金 上記(1)の損害金元金につき,内金221万6800円に対する訴状送達の日の翌日である令和 円及び③弁護士費用相当額として120万円の合計388万4800円 (2) 遅延損害金 上記(1)の損害金元金につき,内金221万6800円に対する訴状送達の日の翌日である令和元年5月10日から,内金166万8000円に対する同年10月25日付け訴えの変更申立書(請求拡張)送達の日の翌日である同月30日から,各支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金 2 前提事実(当事者間に争いがない事実又は後掲の証拠(以下,書証番号は特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者ア原告原告は,1837年にティエリ・エルメスによって創業された高級ブランドであ り,バッグ,高級婦人服,アクセサリー等の製造,販売を業とするフランス共和国(以下「フランス」という。)の法人である。 イ被告被告は,昭和61年8月22日に設立され,自己の経営する店舗,自己の運営するウェブサイト及び店舗外での販売会において,バッグ,装身具の販売等を行って いる法人である(弁論の全趣旨)。被告は,「TIAMARIA スタッフブログ」というタイトルを付したブログを開設しており,取り扱う商品の紹介,販売会の情報などを掲載している(甲2,40~49,62~73)。 (2) 原告商標権原告は,原告標章について,原告商標権を有する(甲3)。 (3) 原告標章及び原告商品の特徴原告標章の特徴は,別紙3原告商品目録記載の①ないし⑤のとおりであり,各特徴の具体的な態様については,別紙6原告標章解説図記載のとおりであって,原告は,当該特徴を有する原告商品を販売している。 (4) 原告商品の販売状況等 ア ①ないし⑤のとおりであり,各特徴の具体的な態様については,別紙6原告標章解説図記載のとおりであって,原告は,当該特徴を有する原告商品を販売している。 (4) 原告商品の販売状況等 ア原告の販売する商品(以下,原告商品を含めた原告が販売する商品を総称し て「エルメス商品」ということがある。)は,日本においても戦前から知られていたが,原告が昭和39年に株式会社西武百貨店と提携し,渋谷,池袋を始め,名古屋,大阪,札幌等全国に合計15店舗の専門店を出店してからは,より広くの顧客層に知られるようになり,昭和58年に原告の日本子会社であるエルメスジャポン株式会社が設立されてからは,不動の名声を獲得するに至った。 原告は,現在,日本全国に計32の直営店舗を有するところ,エルメス商品は,それのみを特集する女性誌が存在するほど,現在日本において高い人気を得ている。 イ原告商品は,昭和59年(1984年)に発表され,フランスの著名な女優であるジェーン・バーキンが愛用し,「バーキン」の名称で世界的に広く知られており,エルメス商品を代表する高級バッグである。 原告商品は,その主な需要者である女性を購読者層とする女性誌において頻繁に特集され,その形態についてもカラー写真で紹介されている。 具体的には,平成13年から平成19年に日本で発売された雑誌等においても,原告商品は,「究極の定番バッグ」(甲11),「最上のデザイン×最上の素材」(甲11),「名品」(甲14,28及び30),「ベストオブ名品」(甲23),「世界中の女 性が憧れるバッグの最高峰」(甲28)などと称された上,「エルメス」の「バーキン」として,多数の女性誌において,エルメス商品であることが強く印象付けられる記載がされ,その立体的形状がカラー写真で紹介 性が憧れるバッグの最高峰」(甲28)などと称された上,「エルメス」の「バーキン」として,多数の女性誌において,エルメス商品であることが強く印象付けられる記載がされ,その立体的形状がカラー写真で紹介されている(甲5ないし32)。 (5) 被告による被告商品等の販売行為被告は,平成30年2月14日,被告の店舗を訪問した原告関係者に対して,被 告商品1点を2万8080円(税抜価格2万6000円)で販売した(甲1,乙34)。 被告は,上記の販売より前に,遅くとも平成22年8月11日以降,バーキンタイプのバッグを販売していたことがあった(甲41,弁論の全趣旨。)。 被告商品等は,合成皮革など,原告商品に用いられる素材とは異なる安価な素材 が使用されていた(弁論の全趣旨)。 (6) 原告標章と被告商品の形状の一致点被告商品の形状は,以下の点において,原告標章と同一である。 ①本体正面および背面が底辺のやや長い台形状,本体各側面が縦長の二等辺三角形状であり,②略凸状となるように両サイドに切り込みを有し,横方向に略3等分する位置に 鍵穴状の縦方向の切込みが2箇所設けられた蓋部が本体背面の上端部と縫合されており,③本体背面上部に端部を縫合され,本体各側面に形成されたタックの山部を貫通し,本体正面の上部まで延在する左右一対のベルトが設けられており,④前記蓋部の凸型部分と前記左右一対のベルトとを本体正面の上部中央にて同時 に固定することができる先端にリング状を形成した固定具が設けられ,さらに,前記鍵穴状の切込みの外側の位置において,前記蓋部の凸型部分と前記各ベルトとを同時に固定することができる左右一対の補助固定具が設けられており,⑤本体正面上部及び背面上部に,円弧状をなす一対のハンドルが縫合さ 切込みの外側の位置において,前記蓋部の凸型部分と前記各ベルトとを同時に固定することができる左右一対の補助固定具が設けられており,⑤本体正面上部及び背面上部に,円弧状をなす一対のハンドルが縫合され,前記正面側のハンドルは前記鍵穴状の切込みを通るように設けられている点。 3 争点(1) 原告商標と被告商品等の形状の類似性(商標権侵害の有無)(争点1)(2) 被告商品等の販売の不正競争該当性(争点2)ア原告商品の形態の商品等表示性及びその周知性・著名性(争点2-1)イ原告商品の形態と被告商品等の形態の類似性及び混同のおそれ(争点2-2) (3) 商標権侵害及び不正競争についての被告の故意・過失(争点3)(4) 原告の損害(争点4) 4 争点に対する当事者の主張(1) 争点1(原告商標と被告商品等の形状の類似性(商標権侵害の有無))について 【原告の主張】 被告商品等に付された標章としての被告商品等の形状は,いずれも原告商標と類似する。 ア被告商品について(ア) 前記2(6)のとおり,被告商品の形状は,原告標章の有する特徴を全て有しており,商品の出所についての誤認混同を生じるおそれがあるものであるから,原 告商標と類似する。 (イ) 被告の主張する相違点について被告が,後記【被告の主張】アで指摘する原告標章と被告商品の形状の相違点①ないし④は,相違点①ないし③について被告の主張する被告商品の形状が判然としないところがあることを措いても,いずれも,相違点自体が存在しないか,少なく とも類似性を否定するだけの差異とはなり得ないものである。 イバーキンタイプのバッグについて以下のとおり,バーキンタイプのバッグは,被告商品と同一の商品又は少なくとも同様の形態上 なく とも類似性を否定するだけの差異とはなり得ないものである。 イバーキンタイプのバッグについて以下のとおり,バーキンタイプのバッグは,被告商品と同一の商品又は少なくとも同様の形態上の特徴を有する商品であり,被告商品同様に,原告商品と商品の出所についての誤認混同のおそれがあるものであった。 したがって,原告商標とバーキンタイプのバッグの形状との間にも類似性がある。 (ア) 被告は,被告が過去に販売していたバーキンタイプのバッグについて,被告商品とは別の仕入先から仕入れたものである旨主張するのみで,仕入先の違いを裏付ける証拠は一切提出しておらず,また,バーキンタイプのバッグと被告商品との形状の相違については全く説明できていない。 このような被告の態度自体が,被告が過去に販売していたバーキンタイプのバッグが,被告商品と同一の商品であるか,少なくとも同一の形態上の特徴を有する商品であることを裏付けるものである。 (イ) 被告の過去のブログ記事等に掲載されているバーキンタイプのバッグの形状からは,色彩や柄の有無など些末な違いはあるものの,いずれも被告商品と同一の 形態上の特徴を有していることが確認できる。 (ウ) 以上の点に鑑みれば,平成22年8月11日以降に被告が販売していたバーキンタイプのバッグは,被告商品と同一の仕入先から仕入れた同一ないし同種の商品であるか,少なくとも同一の形態上の特徴を有する商品であることは明白である。 【被告の主張】原告の主張は争う。 ア被告商品について原告標章と被告商品の形状を比較すると,下記①ないし④のとおり,全体的な形状が相違している。そして,原告商品が高品質で1個100万円以上の価格であるのに対して,被告商品は安価な合成皮革等を用いて価格も1個 章と被告商品の形状を比較すると,下記①ないし④のとおり,全体的な形状が相違している。そして,原告商品が高品質で1個100万円以上の価格であるのに対して,被告商品は安価な合成皮革等を用いて価格も1個2万8000円とはるかに安価であったことなどからすれば,原告商品と被告商品とを誤認混同するお それはなく,原告商標と被告商品の形状との間に類似性はない。 ①原告商品は直線的な台形状であるが,被告商品は石垣の反りのようなカーブのある形状であり,蓋上部の形状も原告商品が直線的であるのに対し,被告商品は湾曲している。 ②原告商品と被告商品はハンドルの形状及び長さが相違し,蓋部の縦の長さが相 違する。 ③原告商品は本体側面が縦長直線的な二等辺三角形状であるのに対し,被告商品は縦部分にカーブがあり,なおかつ面部分にはゆとりがなく凹んでいる変形の二等辺三角形で,蓋部分との取り付け位置が相違するため,横から見たときに空き空間ができている。 ④被告商品は,原告商品と比較して革も薄く柔らかい素材を用いている上に,正面,側方から見て下部が丸く袋状に仕立ててあるため,バランスとしては全体に縦に潰れたような形状であり,持ち手の長さ,つけ方も原告商品とは異なった仕様であった。 イバーキンタイプのバッグについて 被告商品が大韓民国(以下「韓国」という。)で製造されたものであるのに対して, バーキンタイプのバッグは,中華人民共和国(以下「中国」という。)で製造されたものであり,被告商品とは若干形状が相違している。ただし,バーキンタイプのバッグの実物は現存しておらず,どのような形状のハンドバッグであったかを説明することは困難である。 上記アのとおり,原告商標と被告商品の形状との間にも類似性がないこと,バー キンタイプのバ バッグの実物は現存しておらず,どのような形状のハンドバッグであったかを説明することは困難である。 上記アのとおり,原告商標と被告商品の形状との間にも類似性がないこと,バー キンタイプのバッグに被告がその商号である「ティアマリア」の刻印を押したり,ネームプレートを付けたりしていたこと,被告が,バーキンタイプのバッグの他に,正面から写真撮影をした場合にはバーキンタイプのバッグと見分けがつかない形状だが,蓋部のような形状の革を張り付けたデザインのハンドバッグや,蓋部を有しないデザインのハンドバッグも販売していたことからすれば,バーキンタイプのバ ッグについても,原告商品との誤認混同を生じるおそれはない。 したがって,原告商標とバーキンタイプのバッグの形状との間に類似性はない。 (2) 争点2(被告商品等の販売の不正競争該当性)についてア争点2-1(原告商品の形態の商品等表示性及びその周知性・著名性)について 【原告の主張】原告商品の販売状況等については,前記2(4)の事実のほか,以下の事実があり,これらの原告による長年の販売活動及び広告宣伝活動等によって,原告商品の形態は,遅くとも平成21年には,それ自体が原告の商品等表示として,周知性・著名性を獲得しているものである。 (ア) 原告は,これまで多数の雑誌広告等を通じて原告商品の販売促進を図り,原告商品に関し,昭和60年から平成8年までに費やした広告宣伝費が約6200万円にも及ぶ。 (イ) 原告商品は,そのほとんどが1個100万円を超える高級バッグであるにもかかわらず,年々売上を伸ばし,平成10年(1998年)には販売個数は年間3 000個を超え,平成15年(2003年)には販売個数が前年の倍近い年間80 00個超となり,その後も現 もかかわらず,年々売上を伸ばし,平成10年(1998年)には販売個数は年間3 000個を超え,平成15年(2003年)には販売個数が前年の倍近い年間80 00個超となり,その後も現在に至るまで急激に売上を伸ばしている。さらに,その売上高は,平成9年(1997年)には10億円を,平成19年(2007年)には100億円をそれぞれ超え,平成21年(2009年)には192億円となった。 【被告の主張】 前記2(4)の事実は認めるが,前記【原告の主張】(ア)及び(イ)の事実は不知であり,原告商品の形態が,平成21年の時点で,原告の商品等表示として周知性・著名性を獲得していたとの事実も不知。 イ争点2-2(原告商品の形態と被告商品等の形態の類似性及び混同のおそれ)について 【原告の主張】前記(1)【原告の主張】のとおり,原告商品の形態と被告の商品等表示である被告商品等の形態とは類似しており,需要者が原告商品と被告商品等とを誤認混同するおそれがある。 【被告の主張】 前記(1)【被告の主張】のとおり,原告商品の形態と被告商品等の形態とは類似しておらず,原告商品と被告商品等とを誤認混同するおそれもない。 (3) 争点3(商標権侵害及び不正競争についての被告の故意・過失)について【原告の主張】ア商標権侵害について 原告は平成23年9月9日付で原告標章について商標登録を受けているため,商標法39条及び特許法103条に基づき,同日以降の商標権侵害行為について,被告には過失が推定されるところ,被告は単にその時点で原告標章の商標登録を知らなかった旨主張するのみで,かかる推定を覆すに足りる事情を一切主張していない。 また,仮に被告が原告標章の商標登録を知ったのが平成25年2月頃であった ろ,被告は単にその時点で原告標章の商標登録を知らなかった旨主張するのみで,かかる推定を覆すに足りる事情を一切主張していない。 また,仮に被告が原告標章の商標登録を知ったのが平成25年2月頃であったと すれば,少なくとも平成25年2月以降の商標権侵害行為につき故意があったこと は明らかである。 イ不正競争について原告商品の形態は,遅くとも平成21年には,それ自体が原告の商品を示す表示として広く認識されていたところ,昭和61年の設立以来女性向けのハンドバッグや装身具の販売等を業として行っている被告が,原告商品の形態が原告の商品等表 示として周知ないし著名であることを知っていたことは明らかであり,平成22年8月11日以降の被告商品等の販売による不正競争につき被告には故意又は少なくとも過失が存在する。 また,被告は,平成23年5月頃に原告がバーキンタイプのバッグと類似するハンドバッグを販売していた業者に対して不競法に基づいて損害賠償請求を行った旨 の情報を得て,「何らかの対応が必要」と認識していたというのであるから,被告の主張を前提としても,平成23年5月以降の不正競争につき故意又は少なくとも過失があったことは明らかである。 【被告の主張】原告の主張はいずれも争う。 なお,原告が購入した被告商品は,販売用としてショールームに置いてあった商品ではなく,商品開発のためのサンプル品として保管していたものであり,被告のアルバイト従業員が誤って原告に有償で譲渡してしまったものであるから,被告商品の販売について,被告に商標権侵害及び不正競争の故意及び過失はない。 ア商標権侵害について 被告代表者は,原告標章については,立体商標の申請が却下されているという情報を得ていたので,商標登録されること ,被告に商標権侵害及び不正競争の故意及び過失はない。 ア商標権侵害について 被告代表者は,原告標章については,立体商標の申請が却下されているという情報を得ていたので,商標登録されることはないと認識していた。さらには,バーキンタイプのバッグと同様のバッグが,他の業者によって堂々と販売されていた状況であったため,原告商標権の登録がされたからといって,過失は推定されない。 なお,被告代表者が,原告標章の商標登録を知ったのは平成25年2月頃である。 イ不正競争について 被告は,30年以上前からバーキンタイプのバッグを販売していたが,他の業者によっても,同様のバッグはその当時から現在まで公然と販売されており,原告が原告標章を商標登録する以前のバーキンタイプのバッグの販売について,不正競争であると認識することは困難であった。 なお,被告代表者は,平成23年5月頃に,原告が,バーキンタイプのバッグと 類似するハンドバッグを販売していた業者に対し,不競法に基づいて損害賠償請求をしたとのうわさを聞いたことがあったが,その真偽も明らかでなく,どのような業者のどのような形状のハンドバッグであったのかも知らなかったので,そのようなうわさを聞いていたとしても,被告商品等の販売に関し不正競争についての故意・過失があったとはいえない。 (4) 争点4(原告の損害)について【原告の主張】被告商品等の販売という,原告商標権の侵害行為ないし不正競争によって,原告は以下の損害(合計388万4800円)を被った。 ア利益相当損害金(168万4800円) 被告は,対象期間中に,バーキンタイプのバッグを継続的に販売しており,上記期間中に被告が販売した被告商品等の個数は少なくとも100個を下らない。 被告が被告商 損害金(168万4800円) 被告は,対象期間中に,バーキンタイプのバッグを継続的に販売しており,上記期間中に被告が販売した被告商品等の個数は少なくとも100個を下らない。 被告が被告商品等の販売実績等に係る情報を開示しないため,被告商品等の通常販売価格及び仕入価格は明らかではないが,上記期間中に被告が販売した被告商品等の平均販売価格は被告商品の販売価格である2万8080円(税込価格)を下ら ないものと考えられる。 そして,少なくとも被告商品等の販売価格の60%については,被告商品等の販売により被告が得た利益であると考えられる。被告が主張する粗利益の額や,梱包費用及び送料については,いずれもこれを裏付ける証拠が一切提出されておらず,理由がない。 このため,被告が被告商品等の販売により得た利益は,以下のとおり,少なくと も168万4800円を下らず,商標法38条2項又は不競法5条2項により,同金額が,被告の行為により原告が受けた損害と算定される。 販売価格2万8080円×利益率60%×販売個数100個=168万4800円イ信用毀損による無形損害(100万円) (ア) 原告は,200年近くの歴史を持つフランスの高級ブランドであり,特に原告商品は,エルメス商品を代表する高級バッグである。 原告は,その高級ブランドとしての価値,名声を維持すべく,フランスで専門の職人が製造した商品のみを,直営店及び一部の特約店においてのみ販売する手法により商品の品質保護に努めているほか,ブランドイメージの維持のため多年にわた り多大な広告宣伝費用を費やしている。 (イ) 他方,被告商品等は,原告商品に使用されることのない安価な合成皮革等を素材とし,1個約2万8080円というはるかに廉価で販売されている。 にわた り多大な広告宣伝費用を費やしている。 (イ) 他方,被告商品等は,原告商品に使用されることのない安価な合成皮革等を素材とし,1個約2万8080円というはるかに廉価で販売されている。このように,原告商品の形状に酷似した質の低い被告商品等が廉価で販売されることにより,原告の高級ブランドとしてのイメージ及び原告商品に対する顧客の信用が著しく毀 損された。 (ウ) 以上のとおり,被告商品等の販売行為により原告商品に対する信用が低下させられた被害は甚大であり,これによる無形損害は少なくとも金100万円を下らない。 ウ弁護士費用(120万円) 原告は本件紛争解決のため,代理人弁護士に対して訴訟委任を行い,その報酬として金120万円の支払いを約した。 【被告の主張】ア利益相当損害金について原告の主張は争う。 (ア) 被告商品について 被告商品は,販売用商品ではないサンプルを誤って販売したものであり,被告は,原告から指摘を受けた後に,原告に対して,被告商品の返品を依頼し,代金の返還を申し出た。 (イ) バーキンタイプのバッグについて被告が,バーキンタイプのバッグを最後に仕入れたのは,平成22年夏か秋頃で あり,バーキンタイプのバッグ100個を仕入れた。 当該100個のバーキンタイプのバッグについて,原告商標権の登録がされた直後の平成23年10月頃の在庫は30個程度であったが,被告は,その頃からバザーに出品するなどして在庫処分を開始しており,平成25年4月には在庫処分をほぼ終了し,平成26年1月か2月頃に,最後の1点を販売した。 被告が,平成22年から平成25年にかけて販売していたバーキンタイプのバッグの小売価格は,被告商品と同額の2万6000円程度(税抜価格であり, 成26年1月か2月頃に,最後の1点を販売した。 被告が,平成22年から平成25年にかけて販売していたバーキンタイプのバッグの小売価格は,被告商品と同額の2万6000円程度(税抜価格であり,販売の際には消費税相当額を付していた。)であり,1個当たりの粗利益はその45%に当たる1万1700円程度であった。 ただし,被告がバザーなどで在庫品を販売している場合,小売価格の20%相当 額を寄付することとなっていたので,1個当たりの粗利益は小売価格の25%に相当する6500円程度であった。 また,会計資料がないため立証できないが,その他の販売経費として,ハンドバッグ1個当たりの梱包費用・送料として約1000円が発生していた。 イ信用毀損による無形損害について 原告が高級ブランドであり,原告商品が,エルメス商品を代表する高級バッグであることは認め,原告が,高級ブランドとしての価値を維持するために行っている活動については不知。 信用毀損による無形損害の発生は争う。 原告標章と類似するハンドバッグは,被告以外の業者によって大量に販売されて おり,原告商品の価値は被告以外の多数の第三者によって毀損されており,被告商 品等の販売によって毀損されたものではない。また,被告商品を原告の調査員に販売したことによって原告商品の価値は毀損されない。 ウ弁護士費用について訴訟委任の事実は認め,報酬の約束は不知であり,損害の発生は争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(原告商標と被告商品等の形状の類似性(商標権侵害の有無))について(1) 被告商品についてア前記第2の2(3)のとおり,原告標章の特徴は別紙3原告商品目録記載の①ないし⑤のとおりであるところ,前記第2の2(6)のとおり,被告商品の形状は, 無))について(1) 被告商品についてア前記第2の2(3)のとおり,原告標章の特徴は別紙3原告商品目録記載の①ないし⑤のとおりであるところ,前記第2の2(6)のとおり,被告商品の形状は,前記 ①ないし⑤の特徴の全ての点で原告標章と一致している。 被告は,原告標章と被告商品の形状とでは全体的な形状が異なり,前記第2の4(1)【被告の主張】ア記載の①ないし④のとおり,本体や蓋上部の形状が直線的か否か,ハンドルの形状や長さ及び蓋部の縦の長さ,本体側面の二等辺三角形状が凹んでいるか否かや蓋上部との空き空間の有無,用いられている革の薄さや柔らかさな どの点で形状に相違があると主張するが,別紙2原告標章と別紙5被告商品写真の各写真からすれば,被告の指摘する各点は,本体や蓋上部の形状及び本体側面の形状について相違するともいえず,その他についてもそれぞれのハンドバッグを構成する各部材の寸法や形状が若干異なる程度の差にとどまるものであって,外観上の類似性を否定するような相違点とは認められない。 したがって,原告標章と被告商品の形状とは,外観上類似する。 イ原告商標及び被告商品の形状において,何らかの観念ないし称呼が生じるとは認められないから,これらの点で相違するとはいえない。 ウ被告は,原告商品が高品質で1個100万円以上の価格であるのに対して,被告商品は安価な合成皮革等を用いて価格も1個2万8000円とはるかに安価で あったことなどからすれば,原告商品と被告商品とを誤認混同するおそれはないと 主張するが,そのような事情をもって誤認混同のおそれがないとはいえず,その他,本件証拠上,原告商標と被告商品の形状につき,上記の外観の類似性にかかわらず,商品の出所を誤認混同するおそれがないとするような取引 が,そのような事情をもって誤認混同のおそれがないとはいえず,その他,本件証拠上,原告商標と被告商品の形状につき,上記の外観の類似性にかかわらず,商品の出所を誤認混同するおそれがないとするような取引の実情等があるとは認められない。 エしたがって,原告商標と被告商品の形状との間には,類似性があるというべ きである。 (2) バーキンタイプのバッグについてア被告はバーキンタイプのバッグを一度に100個単位で仕入れており,最後の仕入れは平成22年夏ないし秋頃に100個仕入れたものであったと主張しているところ,被告が平成22年8月頃と平成26年1月頃に販売したバーキンタイプ のバッグの写真(甲40,41)を検討しても,それらの間には,色や素材の違いを除いて外観上の大きな違いは認められず,被告が平成22年以降の販売について,時期によってバーキンタイプのバッグの形状に違いがあったとの具体的な主張立証をしていないことも考え合わせれば,対象期間中に販売されたバーキンタイプのバッグは,いずれも同様の外観上の特徴を有していたものと推認するのが相当である。 イ被告は,バーキンタイプのバッグは,平成30年に販売された被告商品とは別の仕入先から仕入れたものであり,被告商品とは若干形状が相違すると主張するが,バーキンタイプのバッグを正面方向から撮影した写真(甲40,41)を検討すると,原告標章と被告商品の形状とが共通して有する前記第2の2(6)の各特徴のうち,正面方向から観察した際に視覚に映る特徴については,バーキンタイプのバ ッグにも認められ,正面方向から観察した姿に被告商品との明らかな差異は認められない。 ウまた,被告は,バーキンタイプのバッグの他に,正面から写真撮影をした場合にはバーキンタイプのバッグと見分けがつかな も認められ,正面方向から観察した姿に被告商品との明らかな差異は認められない。 ウまた,被告は,バーキンタイプのバッグの他に,正面から写真撮影をした場合にはバーキンタイプのバッグと見分けがつかない形状であるが,原告標章の有する特徴である蓋部を有せず,蓋部のような形状の革を張り付けたデザインのハンド バッグを販売していたと主張しているが,このように,正面方向から観察した姿が 類似する当該ハンドバッグとバーキンタイプのバッグとの立体的な構成の違いについて具体的に説明する一方で,被告商品とバーキンタイプのバッグとの立体的な構成の違いについては具体的な主張立証をしていない。 このような被告の主張立証の状況からすれば,バーキンタイプのバッグは,単に,正面方向から観察した姿が,前記第2の2(6)の原告標章及び被告商品の形状の特徴 と共通するのみならず,これらの特徴に係る,蓋部,一対のハンドル並びに左右一対のベルトとそれを固定する左右一対の補助固定具及び中央の固定具といった立体的な構成においても,原告商品及び被告商品と同様の構成を有するものであったと推認するのが相当である。 エ原告標章と被告商品の形状が外観上類似することは前記(1)アのとおりである ところ,上記アないしウからすれば,原告標章とバーキンタイプのバッグの形状も外観上類似するというべきである。 そして,前記(1)イ及びウで検討したのと同様に,原告商標及びバーキンタイプのバッグの形状についても,何らかの観念ないし称呼が生じるとは認められず,これらの点で相違するとはいえない上,販売価格,材質等の違い,被告が付していたと する被告の商号の刻印等や,被告が同時期に販売していたバッグの形状などの被告が主張する各点を考慮しても,本件証拠上,上記の外観の類似性にか えない上,販売価格,材質等の違い,被告が付していたと する被告の商号の刻印等や,被告が同時期に販売していたバッグの形状などの被告が主張する各点を考慮しても,本件証拠上,上記の外観の類似性にかかわらず,商品の出所を誤認混同するおそれがないとするような取引の実情等があるとは認められない。 オしたがって,原告商標とバーキンタイプのバッグの形状との間には,類似性 があるというべきである。 (3) 商標権侵害についての小括以上によれば,原告商標権の登録後の期間における,被告による被告商品等の販売行為は,原告商標権の指定商品であるハンドバッグについて,原告商標に類似する商標を付したものを販売する行為として,原告商標権を侵害する行為とみなされ る(商標法2条3項2号,37条1号)。 2 争点2(被告商品等の販売の不正競争該当性)について(1) 争点2-1(原告商品の形態の商品等表示性及びその周知性・著名性)についてア原告商品の形態には,別紙3原告商品目録記載①ないし⑤の特徴があり,その組合せにより,他の商品と識別し得る特徴を有しているといえる。 そして,前記第2の2(4)のとおり,原告商品は,「エルメス」の「バーキン」として知られる,高級ブランドである原告を代表する高級バッグであり,平成13年から平成19年に日本で発売された雑誌においても,原告商品は,「究極の定番バッグ」(甲11),「最上のデザイン×最上の素材」(甲11),「名品」(甲14,20,28及び30),「ベストオブ名品」(甲23),「世界中の女性が憧れるバッグの最高 峰」(甲28)などとして,カラー写真付きで繰り返し取り上げられていた。 また,証拠(甲4,33)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,原告商品に関し,多数の雑誌広告 の女性が憧れるバッグの最高 峰」(甲28)などとして,カラー写真付きで繰り返し取り上げられていた。 また,証拠(甲4,33)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,原告商品に関し,多数の雑誌広告等の広告宣伝費を費やしており,原告商品は,そのほとんどが1個100万円を超える高級バッグであるにもかかわらず,平成21年までの期間を見ても,その販売数は年々増加する傾向にあり,販売個数は,平成10年(1998 年)には年間3000個,平成15年(2003年)には年間8000個,平成21年(2009年)には1万7000個をそれぞれ超えるに至ったことが認められる。 イ以上によれば,原告商品の形態は,原告による販売,広告宣伝活動を通じて,遅くとも,平成21年までには,原告の出所標識として,著名なものとして,独立 して出所識別力を獲得したというべきである。 したがって,原告商品の形態は,原告の著名性のある商品等表示(不競法2条1項2号)に該当するというべきである。 (2) 争点2-2(原告商品の形態と被告商品等の形態の類似性及び混同のおそれ)について 前記1で検討したところからすれば,原告標章と同内容である原告商品の形態と, 被告商品等の形態との間には,いずれも類似性があると認められる。 (3) 不正競争該当性についての小括以上によれば,原告商品と被告商品等との誤認混同のおそれを認定するまでもなく,被告による被告商品等の販売行為は,原告の著名な商品等表示と類似した商品等表示を使用した商品を譲渡するものとして,不競法2条1項2号の不正競争に該 当する。 3 争点3(商標権侵害及び不正競争についての被告の故意・過失)について(1) 商標権侵害について被告には,商標法39条及び特許法103条により,前記1 項2号の不正競争に該 当する。 3 争点3(商標権侵害及び不正競争についての被告の故意・過失)について(1) 商標権侵害について被告には,商標法39条及び特許法103条により,前記1の商標権侵害について過失が推定される。 被告が主張する,原告標章について商標登録が認められなかった旨を聞いたことがあったとの事情や,バーキンタイプのバッグと同様のバッグが,被告以外の業者によっても販売されていたとの事情は,過失の推定を覆すべき事情とはいえず,その他,本件全証拠によっても,上記の推定を覆すべき事情は認められない。 (2) 不正競争について 前記2のとおり,原告商品の形態は,遅くとも平成21年には,原告の商品等表示としての著名性を獲得していたものといえるところ,その著名性の獲得の経緯に照らせば,それ以前からバッグの販売等を業として行っていた被告には,平成22年8月11日以降の被告商品等の販売に係る不正競争について,少なくとも過失が存在したものと認めるのが相当である。 被告は,平成22年以前からバーキンタイプのバッグを販売しており,他の業者も同様のバッグの販売を継続していたと主張するが,そのような事情は,上記の認定を左右するものとはいえず,その他,本件全証拠によっても,上記認定を覆すべき事情は認められない。 (3) 被告商品の販売について 被告は,被告商品等のうち,特に被告商品の販売については,販売用としてショ ールームに置いてあった商品ではなく,平成27年に韓国出身の服飾デザイナーから謝礼として安価に購入し,商品開発のためのサンプル品として保管していたものを,被告のアルバイト従業員が誤って原告に有償で譲渡してしまったものであるから,商標権侵害及び不正競争の故意及び過失はないと主張 礼として安価に購入し,商品開発のためのサンプル品として保管していたものを,被告のアルバイト従業員が誤って原告に有償で譲渡してしまったものであるから,商標権侵害及び不正競争の故意及び過失はないと主張する。 しかしながら,被告の主張する被告商品の入手状況を裏付ける的確な証拠はなく, また,被告商品の販売状況に関し,これが店舗内の扉の閉められた棚の中に保管されていたこと,被告従業員が原告関係者に対して「これはインターネットでは販売していない」との説明をしたことは争いがないものの,これらの事実は被告商品が販売用商品でなかったことを裏付けるものとはいえず,その他,誤って販売用でない商品を販売したとの被告の主張を認めるに足りる証拠はない。 したがって,被告商品の販売についても,上記(1)及び(2)の認定は左右されない。 4 争点4(原告の損害)について被告商品等の販売による,前記1の原告商標権の侵害行為及び前記2の不正競争のうち,不正競争の方がその対象となる販売期間が長いため,以下では,まず,不正競争による原告の損害額を検討する。 (1) 利益相当損害金についてア被告商品等の販売個数原告は,被告において,対象期間中に,被告商品等を少なくとも100個販売したと主張するところ,前記第2の2(5)のとおり,被告は平成22年8月11日にはバーキンタイプのバッグを販売し,平成30年2月14日には被告商品を販売した ことのほか,被告において,バーキンタイプのバッグは一度に100個単位で仕入れ,最後の仕入れは平成22年夏ないし秋頃に100個仕入れたものであった,最後に仕入れた商品は全て販売した旨主張していることからすれば,原告の主張するとおり,被告は,対象期間中に,少なくとも100個の被告商品等を販売したものと認めるのが に100個仕入れたものであった,最後に仕入れた商品は全て販売した旨主張していることからすれば,原告の主張するとおり,被告は,対象期間中に,少なくとも100個の被告商品等を販売したものと認めるのが相当である。 イ被告商品等の販売価格 前記第2の2(5)のとおり,被告商品は,平成30年2月に2万8080円(税抜価格2万6000円)で販売されたものであることに加え,バーキンタイプのバッグの販売価格に関する当事者双方の主張,被告が保管期間の経過により廃棄済みとしてバーキンタイプのバッグの販売に関する資料を提出していないことなどの本件の審理に現れた事情を総合すれば,被告商品等の1個当たりの販売価格は,平均す ると,被告商品の販売価格と同じく税抜価格2万6000円程度であったものと認めるのが相当である。 ウ被告商品等の総販売額被告は前記イの税抜価格に消費税を付して被告商品等を販売していたところ(甲1,弁論の全趣旨),被告の総販売額を算定するに当たって適用すべき消費税率につ いては,被告がバーキンタイプのバッグの販売を平成26年2月頃までに終了したと主張していることや平成30年2月14日に販売された被告商品のほかに平成26年3月以降に被告商品等が販売されたことを示す証拠がないことを踏まえ,販売に係る100個のうち99個については平成26年2月までの5%とし,1個については8%とすることが相当である。 そして,前記ア及びイによれば,対象期間中の被告商品等の販売によって,被告は,以下のとおり,合計273万0780円の売上を上げたものと認めるのが相当である。 2万7300円(税抜価格2万6000円+5%の消費税分)×99個+2万8080円(税抜価格2万6000円+8%の消費税分)×1個=273万0780 0円の売上を上げたものと認めるのが相当である。 2万7300円(税抜価格2万6000円+5%の消費税分)×99個+2万8080円(税抜価格2万6000円+8%の消費税分)×1個=273万0780 円エ被告商品等の販売に係る限界利益率(ア) 仕入費用被告は,被告商品はサンプル品であって仕入処理が行われておらず,購入した際の領収証等の資料もないと主張し,また,バーキンタイプのバッグの仕入れに関す る資料は保管期間経過によって全て廃棄処分済みであるとして,これを提出してい ない。 被告は,バーキンタイプのバッグの仕入価格について,同程度の価格のハンドバッグの仕入価格が販売価格の55%程度であったから,バーキンタイプのバッグの仕入価格も同様であったと主張し,販売価格の55%の価格で仕入れを行った平成29年1月の取引の納品書(乙31)を提出するが,被告が平成22年に中国のハ ンドバッグ製造業者から100個単位で仕入れたと主張するバーキンタイプのバッグとは,仕入の時期,取引先,仕入数が異なり,どのような商品の仕入れであったかも明らかではないから,上記の納品書に係る取引は,バーキンタイプのバッグの仕入価格が販売価格の55%であったことを裏付けるものとはいえず,その他,被告が主張する仕入価格を裏付ける的確な証拠はない。 (イ) その他の経費被告が,その他の経費として主張するバザーへの寄付金,梱包費用,送料については,具体的な支出の有無や額を裏付ける的確な資料はない。 (ウ) 限界利益率このような被告の主張立証の状況を含めた弁論の全趣旨によれば,被告商品等の 販売による被告の限界利益は,原告の主張するように,平均して販売価格の60%程度であったものと認めるのが相当である。 オ被告が賠 の主張立証の状況を含めた弁論の全趣旨によれば,被告商品等の 販売による被告の限界利益は,原告の主張するように,平均して販売価格の60%程度であったものと認めるのが相当である。 オ被告が賠償すべき利益の額以上によれば,対象期間中の被告商品等の販売によって,被告には,以下のとおり,少なくとも163万8468円の限界利益が発生したものと認めるのが相当で あり,同額が,不競法5条2項により被告が賠償すべき損害額となる。 273万0780円×60%=163万8468円(2) 信用毀損による無形損害について前記2及び前記(1)で検討したところからすれば,原告商品は,高級ブランドである原告を代表する高級バッグとして著名なものであり,そのほとんどが1個100 万円を超える価格で販売される高級品であったところ,被告は,原告商品と類似す る形態を持ちながら,原告商品には使用されない合成皮革等の安価な素材が使用された被告商品等を,原告商品と比べて著しい廉価の1個2万7300円程度で,平成22年8月から平成30年2月までの期間に少なくとも100個販売したものである。 したがって,被告商品等の販売という不正競争によって,原告は原告商品に係る 信用を毀損されたものというべきであり,原告商品の形態と類似する外見のハンドバッグが被告以外の業者によっても販売されていること(乙1~17)といった被告の主張する事情を考慮しても,被告商品等の販売に係る,信用毀損による無形損害の額は100万円を下らないというべきである。 (3) 弁護士費用について 上記(1)及び(2)に照らし,被告の不正競争と相当因果関係のある弁護士費用は,26万円と認めるのが相当である。 (4) 小括(被告が賠償すべき額)以上によれば,被告の不正 用について 上記(1)及び(2)に照らし,被告の不正競争と相当因果関係のある弁護士費用は,26万円と認めるのが相当である。 (4) 小括(被告が賠償すべき額)以上によれば,被告の不正競争により原告が受けた損害は,上記(1)ないし(3)の合計の289万8468円と認められる。 したがって,被告は,不競法4条に基づき,原告に対して,損害金元金289万8468円及びうち221万6800円に対する訴状送達の日の翌日である令和元年5月10日から,うち68万1668円に対する同年10月25日付け訴えの変更申立書(請求拡張)送達の日の翌日である同月30日から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。 そして,上記(1)ないし(3)からすれば,原告が原告商標権の登録以降の期間選択的に請求する,商標権侵害による不法行為に基づく損害賠償額は,同期間における不正競争による損害額を超えるものではないと認められるから,判断を要しない。 5 文書提出命令の申立てについて原告は,令和元年10月25日付け文書提出命令申立書によって,被告に対して, 商標法39条及び特許法105条1項並びに不競法7条1項に基づき,被告商品等 の販売によって被告が得た利益額の立証に必要であるとして,被告商品等の仕入個数及び仕入価格が記載された文書,並びに被告商品等の販売個数及び販売価格が記載された文書について文書提出命令の申立て(当庁令和元年(モ)第3545号)をするが,上記4(1)の販売個数,販売価格,仕入価格その他の経費についての認定判断に照らせば,現時点において,上記申立てに係る文書の取調べの必要性はない と認められるから,上記申立てについては却下する。 6 結論以上によれば,原告の請求は, の経費についての認定判断に照らせば,現時点において,上記申立てに係る文書の取調べの必要性はない と認められるから,上記申立てについては却下する。 6 結論以上によれば,原告の請求は,不競法4条に基づき,主文第1項の支払を命じる限度で理由があるから,同限度でこれを認容し,認容部分について商標権侵害による不法行為に基づく損害賠償請求は判断を要せず,原告のその余の請求はいずれも 理由がないので棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判官 矢野紀夫 裁判長裁判官山田真紀は転補のため,裁判官神谷厚毅は配置換えのため,署名押印することができない。 裁判官 矢野紀夫 別紙一覧別紙1 原告商標権目録別紙2 原告標章別紙3 原告商品目録別紙4 被告商品目録 別紙5 被告商品写真別紙6 原告標章解説図 別紙1 原告商標権目録登録番号第5438059号出願日平成20年3月6日登録日平成23年9月9日商品区分第18類 指定商品ハンドバッグ登録商標別紙2原告標章記載の形状 別紙2 原告標章 別紙3 原告商品目録 ①本体正面および背面が底辺のやや長い台形状,本体各側面が縦長の二等辺三角形状をなし 別紙2 原告標章 別紙3 原告商品目録 ①本体正面および背面が底辺のやや長い台形状,本体各側面が縦長の二等辺三角形状をなし,②略凸状となるように両サイドに切り込みを有し横方向に略3等分する位置に鍵 穴状の縦方向の切込みが2箇所設けられた蓋部が本体背面の上端部と縫合され,③本体背面上部に端部を縫合され,本体各側面に形成されたタックの山部を貫通し,本体正面の上部まで延在する左右一対のベルトが設けられ,④前記蓋部の凸型部分と前記左右一対のベルトとを本体正面の上部中央にて同時に固定することができる先端にリング状を形成した固定具が設けられ,さらに,前 記鍵穴状の切込みの外側の位置において,前記蓋部の凸型部分と前記各ベルトとを同時に固定することができる左右一対の補助固定具が設けられ,⑤本体正面上部及び背面上部に,円弧状をなす一対のハンドルが縫合され,前記正面側のハンドルは前記鍵穴状の切込みを通るように設けられる ことを特徴とする別紙2原告標章記載の形状のかばん(ハンドバッグ) 別紙4 被告商品目録 ①本体正面および背面が底辺のやや長い台形状,本体各側面が縦長の二等辺三角形状をなし,②略凸状となるように両サイドに切り込みを有し横方向に略3等分する位置に鍵 穴状の縦方向の切込みが2箇所設けられた蓋部が本体背面の上端部と縫合され,③本体背面上部に端部を縫合され,本体各側面に形成されたタックの山部を貫通し,本体正面の上部まで延在する左右一対のベルトが設けられ,④前記蓋部の凸型部分と前記左右一対のベルトとを本体正面の上部中央にて同時に固定することができる先端にリング状を形成した固定具が設けられ,さらに,前 で延在する左右一対のベルトが設けられ,④前記蓋部の凸型部分と前記左右一対のベルトとを本体正面の上部中央にて同時に固定することができる先端にリング状を形成した固定具が設けられ,さらに,前 記鍵穴状の切込みの外側の位置において,前記蓋部の凸型部分と前記各ベルトとを同時に固定することができる左右一対の補助固定具が設けられ,⑤本体正面上部及び背面上部に,円弧状をなす一対のハンドルが縫合され,前記正面側のハンドルは前記鍵穴状の切込みを通るように設けられる ことを特徴とする別紙5被告商品写真記載の形状の,商品名「V1172S(RB)」のかばん(ハンドバッグ) 別紙5 被告商品写真 写真1 写真2 写真3

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