1139号 不正競争防止法違反被告事件主 文被告人を懲役2年及び罰金100万円に処する。 その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 この裁判が確定した日から4年間その懲役刑の執行を猶予する。 理 由(犯罪事実)被告人は,合成樹脂製品の製造及び売買等を目的とするA株式会社の従業員として,同社B工場(所在地は省略)C部D課等で勤務し,Eの製造に係る設備機器及び同社が管理するサーバコンピュータにアクセス可能なパーソナルコンピュータが設置されている関係者以外立入禁止の前記工場並びに同社F研究所(所在地は省略)への立入りを許可され,かつ,同社の営業秘密であるEの製造情報が蔵置された前記サーバコンピュータへのアクセスを許可されるなどして,同社の営業秘密を示されていたものであるが第1 不正の利益を得る目的で,その営業秘密の管理に係る任務に背き,平成30年8月7日,前記工場C部事務所において,被告人が使用するパーソナルコンピュータから,同社の営業秘密であるE製造におけるGに必要な設備機器が記載された「H」と題する被告人作成のファイルデータを,中華人民共和国のI有限公司の担当者であるJに不正の利益を得る目的で同国において被告人からの開示によって同ファイルデータを取得して使用をする目的があることの情を知って,前記Jに対し,送信して開示し,第21 不正の利益を得る目的及び日本国外において使用する目的で,その営業秘密の管理に係る任務に背き,平成31年1月24日,前記事務所において,同社から貸与されていた業務用パーソナルコンピュータを操作して前記サーバコ ンピュータにアクセスし,同サーバコンピュータ内に記録されていた同社の営業秘密であるE製造に 日,前記事務所において,同社から貸与されていた業務用パーソナルコンピュータを操作して前記サーバコ ンピュータにアクセスし,同サーバコンピュータ内に記録されていた同社の営業秘密であるE製造におけるK工程で使用するL装置の作業手順等を内容とする別表(省略)記載の「M」等6件のファイルデータを前記パーソナルコンピュータに接続した被告人所有のUSBメモリに記録させて複製を作成する方法により,同社の営業秘密を領得し,2 不正の利益を得る目的で,その営業秘密の管理に係る任務に背き,同月25日,前記F研究所において,被告人が使用するパーソナルコンピュータで作成した「N」と題するファイルデータに,前記1記載の犯行により領得した「M」及び「O」と題するファイルデータに貼り付けられていた同社の営業秘密であるL装置の構造を示す画像6枚を複写した上で貼り付け,同画像6枚が貼り付けられた前記「N」と題するファイルデータを,前記Iに不正の利益を得る目的で中華人民共和国において被告人からの開示によって同ファイルデータを取得して使用をする目的があることの情を知って,前記パーソナルコンピュータから,前記Jに対し,送信して開示したものである。 (証拠)省略(法令の適用)罰 条第1の行為について平成30年法律第33号(以下「改正法」という。)附則17条により同法による改正前の不正競争防止法(以下「改正前不正競争防止法」という。)21条3項2号,1項5号第2の1の行為について改正法附則17条により改正前不正競争防止法21条3項1号,1項3号ロ第2の2の行為について 改正法附則17条により改正前不正競争防止法21条3項2号,1項4号,3号ロ科刑上の一罪の処理第2について 刑法54条1項後段,10条(第 項3号ロ第2の2の行為について 改正法附則17条により改正前不正競争防止法21条3項2号,1項4号,3号ロ科刑上の一罪の処理第2について 刑法54条1項後段,10条(第2の1の国外使用目的営業秘密記録媒体等不法領得と同2の国外使用目的を有する相手方に対する営業秘密不正領得後開示の間には手段結果の関係があるので,1罪として犯情の重い国外使用目的を有する相手方に対する営業秘密不正領得後開示罪の刑で処断)刑種の選択 懲役刑及び罰金刑を選択併合罪の処理刑法45条前段懲役刑について 刑法47条本文,10条(犯情の重い第2の罪の懲役刑に法定の加重)罰金刑について 刑法48条2項(各罪所定の罰金の多額を合計)労役場留置 刑法18条(金5000円を1日に換算する。)刑の執行猶予 刑法25条1項(懲役刑)なお,検察官は,第2の1の国外使用目的営業秘密記録媒体等不法領得と同2の国外使用目的を有する相手方に対する営業秘密不正領得後開示の各行為につき,併合罪の関係となると主張する。 国外使用目的営業秘密記録媒体等不法領得罪は,営業秘密記録媒体等不法領得罪(不正競争防止法21条1項3号)の,国外使用目的を有する相手方に対する営業秘密不正領得後開示罪は,営業秘密不正領得後開示罪(同項4号)の,それぞれの目的に着目した加重類型である。営業秘密記録媒体等不法領得罪は,営業秘密を,図利・加害目的で,その管理に係る任務に背いて所定の方法により領得する犯罪であり,営業秘密不正領得後開示罪は,その管理に係る任務に背いて所定の方法によ り領得した営業秘密を,領得後に図利・加害目的でその管理に係る任務に背いて開示する犯罪である。その罪質上,営業秘密記録媒体等不 秘密不正領得後開示罪は,その管理に係る任務に背いて所定の方法によ り領得した営業秘密を,領得後に図利・加害目的でその管理に係る任務に背いて開示する犯罪である。その罪質上,営業秘密記録媒体等不法領得罪と営業秘密不正領得後開示罪とは,前者が後者の手段となっているのが通例となっていると解される。 本件においても,被告人が第2の2でI有限公司側に開示している営業秘密は,被告人が第2の1においてI有限公司側に開示する目的で領得していたものである。 以上によれば,第2の1と同2とは手段結果の関係にあり,牽連犯の関係にあると解するのが相当である。 (量刑の理由)本件において,被告人が領得ないし開示した営業秘密は,被害会社が高いシェアを持つ製品に係る特殊かつ独自のものであり,これが流出した場合,被害会社が製造等している製品と同程度の品質のものが開発され,被害会社のシェアが奪われ,その営む事業に大きな影響を与えるおそれがあったものである。 被害会社は,秘密情報管理規則を定めて情報漏えいの防止を図っている上,当該製品の製造設備の設置場所の出入口にセキュリティロックを設置したり,当該製品の製造に係るデータが保存された共有フォルダについてアクセス制限をかけたりするなど,本件営業秘密について厳重な管理を行っていた。 にもかかわらず,被告人は,従業員として順守すべき秘密保持の任務に背き,本件各犯行に及んだ。また,本件各犯行は一時的な犯意に基づくものではなく,被告人は,中華人民共和国内の企業の勧誘を受けて,同企業が進める当該製品の開発に継続的に協力する中,その一環として本件各犯行を敢行したものである。営業秘密の領得・開示という犯罪類型の中で,本件は悪質な部類に属するというべきである。 被告人は,相手方企業との間で,当該製品の開発に協力する見返りとして,被害 として本件各犯行を敢行したものである。営業秘密の領得・開示という犯罪類型の中で,本件は悪質な部類に属するというべきである。 被告人は,相手方企業との間で,当該製品の開発に協力する見返りとして,被害会社での新製品開発に有用な技術に関する情報等を教示してもらうことなどを約束していた。そのような情報等を取得することが被害会社への貢献につながるという側面があったのだとしても,そのために重要な営業秘密を相手方企業に渡し,被害会社に看過できない損害のおそれを生じさせることが許容されないのは当然である。 以上によれば,被告人の刑事責任を軽く見ることはできない。もっとも,本件各犯行の結果,被害会社に具体的な損害が発生したことを認めるに足る証拠はないことに照らすと,これまで前科のない被告人につき,懲役刑の執行を猶予する余地がないとはいえない。もっとも,営業秘密が国外へと流出するリスクが高まる中,営業秘密が国外に流出した場合の悪影響を考慮し,国外流出に対して強い抑止力を働かせる必要があるとの観点から,国外流出に係る営業秘密侵害罪については罰金刑の上限額が引き上げられていることに鑑みれば,被告人が本件各犯行によって経済的な利益を得たとは認められないことを踏まえても,一般予防の見地から,被告人に対しては,罰金刑を併科するのが相当である。 その上で,被告人が事実を認めた上で,反省の態度を示していること,母親が情状証人として出廷して被告人のために証言したことなどの事情も考慮し,懲役刑については主文のとおりの刑期を量定し,また,主文のとおりの額の罰金刑の併科をもって臨むのが相当であると認め,懲役刑についてはその執行を猶予することとしたものである。 (求刑・懲役2年及び罰金100万円)令和3年8月30日大阪地方裁判所第15刑事部 裁判官 って臨むのが相当であると認め,懲役刑についてはその執行を猶予することとしたものである。 (求刑・懲役2年及び罰金100万円)令和3年8月30日大阪地方裁判所第15刑事部 裁判官 栗 原 保
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