平成12年(行ケ)第499号特許取消決定取消請求事件(平成13年7月18日口頭弁論終結)判決原告シチズン時計株式会社訴訟代理人弁理士高宗寛暁被告特許庁長官及川耕造指定代理人小澤和英同小泉順彦同番場得造同大野覚美同宮川久成 主文 特許庁が平成11年異議第73182号事件について平成12年11月7日にした決定を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告主文と同旨 2 被告原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 第2 当事者間に争いのない事実 1 特許庁における手続の経緯(1) 原告は、名称を「印字ヘッド」とする特許第2860117号発明(平成元年8月25日出願、平成10年12月4日設定登録、以下、この特許を「本件特許」といい、本件特許に係る発明を「本件発明」という。)の特許権者である。 本件特許につき特許異議の申立てがされ、平成11年異議第73182号事件として特許庁に係属したところ、原告は、平成12年3月30日、願書に添付した明細書(以下、単に「明細書」という。)の記載を訂正する旨の訂正請求をし、さらに、同年6月27日に訂正請求書の補正をした。 特許庁は、同特許異議の申立てにつき審理した上、同年11月7日、訂正請求書の補正及び訂正請求をいずれも認めず、「特許第28601 正請求をし、さらに、同年6月27日に訂正請求書の補正をした。 特許庁は、同特許異議の申立てにつき審理した上、同年11月7日、訂正請求書の補正及び訂正請求をいずれも認めず、「特許第2860117号の請求項1に係る特許を取り消す。」との決定(以下「本件決定」という。)をし、その謄本は、同年12月4日、原告に送達された。 (2) 原告は、平成12年12月27日、本件決定の取消しを求める本件訴えを提起した後、平成13年5月30日、明細書の記載を訂正する旨の訂正審判の請求をしたところ、特許庁は、同請求を訂正2001-39081号事件として審理した上、同年7月3日、上記訂正を認める旨の審決(以下「訂正審決」という。)をし、その謄本は、同年7月13日、原告に送達された。 2 設定登録時の明細書の特許請求の範囲の記載【請求項1】 環状に配置された複数のソレノイドと、一端が縦2列に配置され他端が前記複数のソレノイドのそれぞれに対応して配置された複数のニードルとを有し、前記環状に配置された複数のソレノイドを半円の2つのブロックに分割し、一方のブロックに属するソレノイドと前記一方の列のニードルとをそれぞれ一端から他端に向けて順に対応させ、同様に他方のブロックに属するソレノイドと前記他方の列のニードルとをそれぞれ一端から他端に向けて順に対応させてある印字ヘッドにおいて、それぞれのブロックのソレノイドは一端から他端に向けて順に、励磁されたときの磁束の方向が交互に逆になるように配置されるとともに、前記ソレノイドの各ブロックの間で隣接する一方のブロックにおける一端のソレノイドと他方のブロックにおける一端のソレノイド、及び一方のブロックにおける他端のソレノイドと他方のブロックにおける他端のソレノイドとを、どちらのソレノイドも励磁したときの磁束の方向 ける一端のソレノイドと他方のブロックにおける一端のソレノイド、及び一方のブロックにおける他端のソレノイドと他方のブロックにおける他端のソレノイドとを、どちらのソレノイドも励磁したときの磁束の方向を同じにしてあることを特徴とする印字ヘッド。 3 訂正審決によって訂正された明細書の特許請求の範囲(以下「訂正審決に係る特許請求の範囲」という。)の記載(下線部が訂正部分である。)【請求項1】 環状に配置された複数のソレノイドと、一端が縦2列に配置され他端が前記複数のソレノイドのそれぞれに対応して配置された複数のニードルとを有し、前記環状に配置された複数のソレノイドを半円の2つのブロックに分割し、一方のブロックに属するソレノイドと前記一方の列のニードルとをそれぞれ一端から他端に向けて順に対応させ、同様に他方のブロックに属するソレノイドと前記他方の列のニードルとをそれぞれ一端から他端に向けて順に対応させてある印字ヘッドにおいて、それぞれのブロックのソレノイドは一端から他端に向けて順に、励磁されたときの磁束の方向が交互に逆になるように配置されるとともに、前記ソレノイドの各ブロックの間で隣接する一方のブロックにおける一端のソレノイドと他方のブロックにおける一端のソレノイド、及び一方のブロックにおける他端のソレノイドと他方のブロックにおける他端のソレノイドとを、どちらのソレノイドも励磁したときの磁束の方向を同じにしてあり、前記一方のブロックにおける一端のソレノイドへの通電のOFF時は、前記ニードルの最大突出時より前であり、且つ前記一方のブロックにおける一端のソレノイドによる磁束と前記他方のブロックにおける一端のソレノイドによる磁束は、相互に磁気干渉がない場合に、通電のOFF後、前記ニードルの最大突出時より後に残留磁束が残らないように消滅するよう 端のソレノイドによる磁束と前記他方のブロックにおける一端のソレノイドによる磁束は、相互に磁気干渉がない場合に、通電のOFF後、前記ニードルの最大突出時より後に残留磁束が残らないように消滅するように構成し、さらに、前記一方のブロックにおける一端のソレノイドと前記他方のブロックにおける一端のソレノイドへの通電ONと通電OFFによる通電時間を1部重ねて、前記一方のブロックにおける一端のソレノイドの磁束を前記他方のブロックにおける一端のソレノイドの磁束の磁気干渉により減少させる構成とし、前記通電時間の重なりの量は、前記一方のブロックにおける一端のソレノイドにより駆動されるニードルの最大突出時が前へシフトしない量であるようにしたことを特徴とする印字ヘッド。 4 本件決定の理由本件決定は、①訂正請求書の補正につき、補正事項が訂正請求書の要旨を変更するものであるから、上記補正は特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号、以下「平成6年改正法」という。)附則6条1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法131条2項の規定(注、「平成11年法律第41号による改正前の特許法120条の4第3項において準用する同法131条2項の規定」の趣旨と解される。)に適合しないので認めないとし、②訂正請求につき、訂正に係る明細書記載の発明が特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができるものと認められないため、上記訂正は、平成6年改正法附則6条1項の規定によりなお従前の例とされる、平成11年改正前の特許法120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法126条3項の規定(注、「平成11年法律第41号による改正前の特 条1項の規定によりなお従前の例とされる、平成11年改正前の特許法120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法126条3項の規定(注、「平成11年法律第41号による改正前の特許法120条の4第3項において準用する同法126条4項の規定が、平成6年改正法による特許法の改正の際に改正の上同法126条3項から同条4項とされたことに伴う平成6年改正法附則6条1項所定の経過措置により、上記訂正に対しなお適用されることとなる同改正前の特許法126条3項の規定」の趣旨と解される。)に適合しないので、当該訂正を認めないとし、③特許異議の申立てにつき、本件発明の要旨を設定登録時の明細書の特許請求の範囲のとおり認定した上、本件発明は、特開昭63-102952号公報に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができないとした。 第3 当事者の主張 1 原告本件決定が、本件発明の要旨を設定登録時の明細書の特許請求の範囲のとおり認定した点は、訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が訂正審決に係る特許請求の範囲のとおり訂正されたため、誤りに帰したことになるので否認する。 本件決定が本件発明の要旨の認定を誤った瑕疵は、その結論に影響を及ぼすものであるから、本件決定は、違法として取り消されるべきである。 2 被告訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が訂正審決に係る特許請求の範囲のとおり訂正されたことは認める。 第4 当裁判所の判断訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が訂正審決に係る特許請求の範囲のとおり訂正されたことは当事者間に争いがないところ、訂正審決に係る特許請求の範囲は、これを設定登録時の明細書の特許請求の範囲と対比すると、新たな構成要件が付加され、特許請求 決に係る特許請求の範囲のとおり訂正されたことは当事者間に争いがないところ、訂正審決に係る特許請求の範囲は、これを設定登録時の明細書の特許請求の範囲と対比すると、新たな構成要件が付加され、特許請求の範囲が減縮されたものであることが認められる。 そうすると、本件決定が、本件発明の要旨を設定登録時の明細書の特許請求の範囲のとおり認定した点は、結果的に誤りであったことに帰し、この要旨認定を前提として、本件発明が、特開昭63-102952号公報に記載された発明に該当すると判断したことも誤りであったといわざるを得ない。そして、この誤りが、本件決定の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、本件決定は、瑕疵があるものとして、取消しを免れない。 よって、原告の請求は理由があるから認容し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第13民事部裁判長裁判官篠原勝美裁判官石原直樹裁判官宮坂昌利
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