平成7(オ)1413 債務不存在確認等

裁判年月日・裁判所
平成10年11月24日 最高裁判所第三小法廷 判決 破棄差戻 大阪高等裁判所 平成6(ネ)1704
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判決文本文2,683 文字)

主文 原判決を破棄する。 本件を大阪高等裁判所に差し戻す。 理由 上告代理人浜田次雄の上告理由について一本件は、被上告人の上告人に対する貸金債務が時効により消滅したことを理由として、被上告人がその不存在確認を求める事件である。原審の確定した事実関係は、次のとおりである。 1 上告人の亡夫D(以下「D」という。)は、被上告人に対し、昭和四八年一月一〇日から同年六月五日までの間、五回にわたり、合計二七五〇万円を貸し渡した(弁済期は、内金一〇〇〇万円につき昭和五〇年四月末日、内金一七五〇万円につき昭和五元年四月末日)。 2 Dは、昭和五一年一一月二二日、右金銭消費貸借契約に基づく債権(以下「本件貸金債権」という。)の内金一〇〇〇万円を被保全債権として、被上告人所有の原判決別紙物件目録記載(一)ないし(五)の各不動産に対する仮差押命令(以下「本件仮差押え」という。)を得て、同月二五日、仮差押えの登記を了した。 3 Dは、昭和五四年、被上告人に対し、本件貸金債権について支払を求める本案訴訟を提起し(京都地方裁判所昭和五四年(ワ)第五九二号貸金請求事件)、昭和五五年三月一八日、Dの請求どおり、二七五〇万円及び内金一〇〇〇万円に対する昭和五〇年五月一日から、内金一七五〇万円に対する昭和五一年五月一日から、各支払済みまで年三割の割合による遅延損害金の支払を命ずる判決(以下「本件判決」という。)が言い渡され、同年四月三日ころ、本件判決は確定した。 4 原判決別紙物件目録記載(一)及び(二)の各不動産について、昭和五五年一〇月、Dの申立てにより、本件判決を債務名義として、強制競売手続が開始され、- 1 -その後、昭和五七年一〇月一四日ころ、Dが配当を受けたことによって右手続は終了した。 ついて、昭和五五年一〇月、Dの申立てにより、本件判決を債務名義として、強制競売手続が開始され、- 1 -その後、昭和五七年一〇月一四日ころ、Dが配当を受けたことによって右手続は終了した。 5 原判決別紙物件目録記載(三)ないし(五)の各不動産については、仮差押えの登記が存しており、本件仮差押命令の執行保全の効力が、仮差押命令の取消し、申請の取下げ等によって消滅した事実はない。 6 Dは、平成五年九月三〇日に死亡し、相続により上告人が本件貸金債権を承継した。 7 被上告人は、平成六年一月一一日、本件訴訟を提起し、本件貸金債権につき、消滅時効を援用した。 二原審は、右事実関係の下において、次のとおり判示して、本件仮差押えの被保全債権につき、消滅時効の完成を肯定して、被上告人の債務不存在確認請求を認容すべきものとした。 1 時効中断事由としての不動産仮差押えの手続は、仮差押えの登記と仮差押命令の債務者への送達とが終わった時に終了し、その時から新たな時効が進行を開始するというべきであり、仮に、そうでないとしても、仮差押え後、被保全債権について本案の勝訴判決が確定した場合には、仮差押えによる時効中断の効力は、確定判決の時効中断の効力に吸収され、判決確定後一〇年の時効期間の経過により右債権は消滅すると解すべきである。 2 本件貸金債権については、本件仮差押えの登記及びその直後に終了したと推認される仮差押命令の被上告人への送達により、いったん中断された時効が進行を開始し、本案訴訟提起により再び時効が中断されて(そうでないとしても、その時まで本件仮差押えによる時効中断の効力が存続した後)、昭和五五年四月三日ころ、本件判決の確定により時効が進行を開始し、その後、同年一〇月、原判決別紙物件目録記載(一)及び(二)の各不動産に対する差押えによ 件仮差押えによる時効中断の効力が存続した後)、昭和五五年四月三日ころ、本件判決の確定により時効が進行を開始し、その後、同年一〇月、原判決別紙物件目録記載(一)及び(二)の各不動産に対する差押えによって時効が中断し、昭和- 2 -五七年一〇月一四日ころ、右執行手続が終了した後、新たに時効が進行を開始し、その後一〇年を経過することにより、時効が完成した。 三しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。 1 仮差押えによる時効中断の効力は、仮差押えの執行保全の効力が存続する間は継続すると解するのが相当である(最高裁昭和五八年(オ)第八二四号同五九年三月九日第二小法廷判決・裁判集民事一四一号二八七頁、最高裁平成二年(オ)第一二一一号同六年六月二一日第三小法廷判決・民集四八巻四号一一〇一頁参照)。 けだし、民法一四七条が仮差押えを時効中断事由としているのは、それにより債権者が、権利の行使をしたといえるからであるところ、仮差押えの執行保全の効力が存続する間は仮差押債権者による権利の行使が継続するものと解すべきだからであり、このように解したとしても、債務者は、本案の起訴命令や事情変更による仮差押命令の取消しを求めることができるのであって、債務者にとって酷な結果になるともいえないからである。 また、民法一四七条が、仮差押えと裁判上の請求を別個の時効中断事由と規定しているところからすれば、仮差押えの被保全債権につき本案の勝訴判決が確定したとしても、仮差押えによる時効中断の効力がこれに吸収されて消滅するものとは解し得ない。 2 これを本件についてみると、前記の事実関係によれば、原判決別紙物件目録記載(三)ないし(五)の各不動産については、本件仮差押えの執行保全の効力が現在まで存続しているのであるから、本件仮差 い。 2 これを本件についてみると、前記の事実関係によれば、原判決別紙物件目録記載(三)ないし(五)の各不動産については、本件仮差押えの執行保全の効力が現在まで存続しているのであるから、本件仮差押えの被保全債権について時効は中断しているものといわなければならない。したがって、以上と異なり、右債権について消滅時効の完成を肯定した原判決の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があり、その違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由が- 3 -あり、原判決は破棄を免れない。そして、本件仮差押えの被保全債権の残存額について、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととする。 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官千種秀夫裁判官園部逸夫裁判官尾崎行信裁判官元原利文裁判官金谷利廣- 4 -

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