- 1 -主文 本件申立てを却下する。 申立費用は申立人の負担とする。 理由 第1申立て処分行政庁は,申立人に対し,本案事件の第1審判決言渡しまで,司法書士法47条に基づく懲戒処分を仮にしてはならない。 第2事案の概要 本件は,司法書士である申立人が,予定される不利益処分の内容を司法書士法47条2号による3か月の司法書士業務の停止として平成22年2月24日に処分行政庁の聴聞を受け,同年3月24日に処分行政庁から同年4月20日に処分書を交付する旨の告知を受けたため,当該業務停止処分(以下「本件処分というは懲戒事由に当たる事実がないのにもかかわらずされるもので」。),あるか,処分行政庁に許された裁量権の範囲を逸脱する過重なものであって違法であり,かつ,申立人の信用を損ない,事実上廃業に追い込まれるという重大な損害を受けるおそれがあるなどとして,本件処分の差止めを求める訴えを提起し,これを本案として,本件処分の仮の差止めを求める事案である。 関係法令等の定め(1)司法書士法ア目的(1条),,,この法律は司法書士の制度を定めその業務の適正を図ることにより登記,供託及び訴訟等に関する手続の適正かつ円滑な実施に資し,もって国民の権利の保護に寄与することを目的とする。 イ職責(2条),,,司法書士は常に品位を保持し業務に関する法令及び実務に精通して公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。 - 2 -ウ会則の遵守義務(23条)司法書士は,その所属する司法書士会及び日本司法書士会連合会の会則を守らなければならない。 エ司法書士に対する懲戒(47条)司法書士がこの法律又はこの法律に基づく命令に違反したときは,その事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長は,当該司法書士に対し, 守らなければならない。 エ司法書士に対する懲戒(47条)司法書士がこの法律又はこの法律に基づく命令に違反したときは,その事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長は,当該司法書士に対し,次に掲げる処分をすることができる。 (ア)戒告(1号)(イ)2年以内の業務の停止(2号)(ウ)業務の禁止(3号)オ法務省令への委任(72条)この法律に定めるもののほか,この法律の施行に関し司法書士の試験,資格の認定,登録及び業務執行並びに協会の設立及び業務執行について必要な事項は,法務省令で定める。 (2)司法書士法施行規則26条(依頼誘致の禁止)司法書士は,不当な手段によって依頼を誘致するような行為をしてはならない。 (3)東京司法書士会会則(疎乙3)100条(不当誘致行為の禁止)会員は,不当な金品の提供又は供応等の不当な手段により依頼を誘致してはならない。 前提事実関係記録本案事件記録を含む以下同じによれば次の事実を一応認め(。 。),ることができる(関係する疎明資料等を各末尾に掲記する。 。)(1)申立人は平成2年11月27日に司法書士の資格を取得し平成6年1,,2月に司法書士登録を受け,現在,東京司法書士会に司法書士登録をしている(疎甲1,8,15,疎乙2)。 - 3 -(2)処分行政庁は平成22年2月5日付け書面によって申立人に対し予,,,定される不利益処分の内容を3か月の司法書士業務の停止,根拠となる法令の条項を司法書士法47条2号,不利益処分の原因となる事実を別紙のとおり,聴聞の期日を同月24日午後1時として,司法書士法49条3項の規定に基づき聴聞を行う旨の通知をした上で,同日,申立人に対する聴聞を実施した(疎甲1)。 (3)処分行政庁は,平成22年3月24日, 聴聞の期日を同月24日午後1時として,司法書士法49条3項の規定に基づき聴聞を行う旨の通知をした上で,同日,申立人に対する聴聞を実施した(疎甲1)。 (3)処分行政庁は,平成22年3月24日,上記(2)の聴聞に係る処分書を交,。()付する日を同年4月20日とする旨申立人に告知した争いのない事実(4)申立人は平成22年3月30日当裁判所に対し本件処分の差止めを,,,求める本案の訴えを提起した(顕著な事実)。 争点 行政事件訴訟法37条の5によれば,本案訴訟(差止めの訴え)の提起があった場合において仮の差止めが認められるためには,①処分がされることにより生ずる「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要」があること(同),(),条2項②本案について理由があるとみえるときであること同項を要しまた,③公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときはこれをすることができないとされているところ同条3項次のとおり本件申立てがこれら(),,の要件を満たしているか否かが本件における争点となる。 (1)償うことのできない損害を避けるための緊急の必要があるか否か。 (2)本案について理由があるとみえるときに当たるか否か。 (3)公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるか否か。 争点に対する当事者の主張の要旨(1)争点(1)(償うことのできない損害を避けるための緊急の必要があるか否か)について。 (申立人)ア申立人は,平成6年12月に司法書士の登録を受けた後,司法書士業務- 4 -を15年にわたり続けている。 司法書士の業務内容は書類作成,登記業務が中心となり,報酬も司法書士報酬基準が平成14年に撤廃されたものの,それ以後も当該基準に準じて定める場合が多く,どの司法書士に依頼してもほ わたり続けている。 司法書士の業務内容は書類作成,登記業務が中心となり,報酬も司法書士報酬基準が平成14年に撤廃されたものの,それ以後も当該基準に準じて定める場合が多く,どの司法書士に依頼してもほぼ同様の報酬になる場合が多い。このように業務内容・報酬の両面で他の司法書士と差別化しにくい業界において,最も重要なのが社会的評価や信用である。それゆえ,いったん懲戒処分,しかも,業務停止という重い処分を受けそれが公表されてしまうと,申立人の社会的評価や信用に重大な影響を及ぼし,信用が顧客獲得の重要部分を占めている司法書士業界において,申立人の司法書士生命を奪うことになりかねない。 イ申立人には,いわゆる飛び込みの顧客というものがほとんどおらず,そ,,の業務のほぼ100%が以前勤めていた生命保険会社の知人や金融機関葬儀会社等からの継続的な紹介に基づくものである。業務停止となった場合には,これらの企業・金融機関等からの顧客の紹介が途絶えるだけでなく,競争の激しい司法書士業界において,いったん信用を失った後に再び顧客の紹介を受けることは極めて困難である。そうすると,飛び込みの顧客がいない申立人としては,仮に懲戒処分を受け,業務停止期間が終了しても,事実上司法書士としての業務ができない状況に追い込まれることになる。このことは,本件処分が実質的には懲戒処分として最も重い業務禁止処分に匹敵することを意味する。 したがって,本件処分がされると,申立人は信用を失う結果,仮に司法書士としての業務を再開できたとしても,顧客の紹介を受ける関係先を失い,新規の顧客獲得も極めて困難となるため,申立人は事実上廃業を余儀なくされる。また,収入も途絶えるため,申立人の生活も困窮することになるのは明白である。 ウこのような償うことのできない損害を生じさせる本件処分は 得も極めて困難となるため,申立人は事実上廃業を余儀なくされる。また,収入も途絶えるため,申立人の生活も困窮することになるのは明白である。 ウこのような償うことのできない損害を生じさせる本件処分は,平成22- 5 -年4月20日に差し迫っており,仮の差止めをすべき緊急の必要性が存在する。 エ相手方は,申立人の顧客が縁故者等からの紹介によるものというのであれば,本件処分に至る経緯等を十分説明することにより,信頼を回復することが可能であるなどというが,それは理想論にすぎない。 確かに縁故者が申立人を普段から好意的にみている親戚・友人等であれば,十分説明することによって信頼を回復することが場合によっては可能かもしれない。しかしながら,申立人が依頼を受けているのは,金融機関や企業であり,そのようなビジネスの世界において,他に司法書士がいく,,らでもいる現状では仮に当該懲戒処分が事後的に取り消されたとしてもいったん業務停止になった司法書士をわざわざ使おうとする者は存在しない。当該金融機関あるいは企業自体が一度懲戒処分を受けた司法書士を顧客に紹介することは信用問題にかかわるからである。 したがって,3か月の業務停止とする本件処分を受けることは,申立人にとって正に司法書士生命にかかわる問題なのであり,これにより生じる損害は償うことのできない損害といえる。 (相手方)ア司法書士法の目的(同法1条)を達成するため,同法47条以下には,不当誘致行為(司法書士法施行規則26条において禁止されている不当な手段によって依頼を誘致するような行為をいう以下同じのような行為。 。)について戒告,2年以内の業務停止又は業務禁止の処分を可能とする規定が置かれており,当該処分によって当該司法書士に一定の損害が生じるおそれがあるとしても,そのことから直ちに のような行為。 。)について戒告,2年以内の業務停止又は業務禁止の処分を可能とする規定が置かれており,当該処分によって当該司法書士に一定の損害が生じるおそれがあるとしても,そのことから直ちに同処分の差止めが認められることになれば,司法書士法が予定する公益目的の実現が著しく害されることは明らかである。 イ本件処分は3か月の業務停止処分であり,この間司法書士としての業務- 6 -をすることができないものの,その期間等に照らし,申立人の司法書士生命を奪うようなものであるということはできないし申立人の主張する社,「会的評価や信用に重大な影響」とは具体的にどのような影響をいうのか明らかではなく,その主張をもっても申立人の司法書士生命を奪うことになりかねないということは困難である。申立人は,その顧客が縁故者等からの紹介によるものであるというのであり,そうだとすれば,本件処分に至る経緯などを十分に説明することにより,信頼を回復することは可能であ,。 りそれが不可能あるいは著しく困難であると直ちにいうことはできない申立人は,極端な事態を抽象的かつ何らの根拠もなく主張しているにすぎず,その主張に理由はない。 また,収入の点は,経済的損害にすぎず,本件処分がされた後,万が一その取消しの訴えが認容された場合であっても,その損害は,社会通念上その後の金銭賠償による回復をもって満足させるとすることもやむを得ない性質のものというべきである。 ウしたがって,償うことのできない損害を避けるための緊急の必要があるということができないことは明らかである。 (2)争点(2)本案について理由があるとみえるときに当たるか否かについ(。)て(申立人)ア処分行政庁は,別紙のとおりの事実に基づき,申立人の行為を不当誘致行為に当たるものとして,司法書 )争点(2)本案について理由があるとみえるときに当たるか否かについ(。)て(申立人)ア処分行政庁は,別紙のとおりの事実に基づき,申立人の行為を不当誘致行為に当たるものとして,司法書士法47条による懲戒処分を行う蓋然性が極めて高いが,申立人がAに支払った業務協力費は,Aが申立人の業務について負担した費用を支払うものであり,いわゆるリベートではない。 それにもかかわらず,これをリベートであると誤認してされる本件処分が違法であることは明らかである。申立人は,迅速なサービスの提供が可能である点,司法書士報酬が一般的な水準より低く設定できる点において,- 7 -Aが従来依頼していた司法書士に比べて市場競争力に優れていたため,業務提携に至ったのであり,この業務提携は,司法書士法施行規則26条の趣旨にかないこそすれ,これに反するものではない。 イまた,仮に,この業務協力費がリベートに当たるとしても,他の懲戒事例との比較において3か月の業務停止は重きに失するし,複数の他の司法書士が同じ相手に対し,同じ期間,同じ内容の業務協力費の支払をした事実があるのに,申立人のみが本件処分を受け,処分行政庁は当該他の司法書士を不処分とすることを明らかにしていることや,申立人が業務協力費のリベート該当性について東京司法書士会に照会したものの,その後約1年が経過するまで回答がなかったという事情があること等を考慮すれば,3か月の業務停止という本件処分は裁量権の範囲を逸脱するものであり,違法である。 ウさらに上記(1)において主張したところによれば申立人に重大な損害,,を生じ,その損害は,事実上,申立人を司法書士業務廃業に追い込んでしまうというものであるから,当該損害を避けるために他に適当な方法がない。 エしたがって,本案には十分な理由があり 大な損害,,を生じ,その損害は,事実上,申立人を司法書士業務廃業に追い込んでしまうというものであるから,当該損害を避けるために他に適当な方法がない。 エしたがって,本案には十分な理由があり,本案について理由があるとみえるときに当たることが明らかである。 (相手方)ア司法書士法施行規則26条が不当誘致行為を禁止しているのは,次のような理由による。すなわち,平成14年法律第33号による司法書士法の改正により,各司法書士が自由に報酬の額を定めることができるようになり,個々の司法書士及び司法書士法人において,良質なサービスを維持しつつ,合理化に向けた努力によって利用者に対しより低廉なサービスを提供することが求められるようになった。これを実現するためには,司法書士間の公正な競争を確保することが不可欠であるが,司法書士が顧客の紹- 8 -介を受けたことに対する謝礼等の金員を紹介者に支払う行為が行われることとなれば,司法書士間の公正な競争を妨げ,資質の向上による低廉なサービスの提供を困難なものとし,ひいては,登記,供託及び訴訟等に関する手続を円滑かつ適正に行うことができなくなるおそれがある。そこで,同条はそのような誘致行為を禁止することとしたものである。 ,,,イ申立人は個人あるいは本件法人の代表者としてAとの合意に基づきAから相続登記業務等に関し顧客の紹介を受け,顧客から受け取った報酬額の20%に相当する金員をAに支払っていたものであるところ,Aがした業務の内容のいかんを問わず,申立人が顧客から受け取った報酬額の一定割合をAに支払う報酬の額として定めていたことに照らすと,Aに支払われた報酬は,Aがした業務に対する対価ではなく(申立人は,Aに対する負担費用分の支払であるとも主張するが,申立人が負担費用分として説明する内容は, 報酬の額として定めていたことに照らすと,Aに支払われた報酬は,Aがした業務に対する対価ではなく(申立人は,Aに対する負担費用分の支払であるとも主張するが,申立人が負担費用分として説明する内容は,これを申立人が負担する必要があるのか疑問があるばかりか,その点をおいても,いずれの費用も,申立人が顧客から受ける報酬額によって左右されるものでなく,当該報酬額の20%相当額を一律に支払うという方法は,上記負担費用分の清算方法として到底合理的なものとはいえない,申立人がAから顧客を紹介してもらったことに対する謝礼と。)みるほかない。申立人の上記行為は,不当誘致行為に該当することが明ら,,かであり司法書士制度の根幹にかかわる重大な違反行為であるばかりかそれが長年にわたり続けられ,支払われた額も相当額に上ると考えられることからすれば,十分に悪質な行為というべきであって,3か月の業務停止という本件処分は相当であり,過重なものとはいえない。 ウ本件処分に向けた手続は適正に行われており,違法は何ら存しないし,本件処分は,もとより処分要件の認定及び要件が存した場合の処分の選択について処分行政庁に裁量が与えられているものであるから,その処分について裁量権の範囲の逸脱又は濫用があった場合に限り,違法と評価され- 9 -るものであるところ,申立人の行為が十分に悪質な行為であることに照らして,本件処分をすることが処分行政庁の裁量権の範囲の逸脱又は濫用を来すものではないことは明らかであって,本案について理由があるとみえるときに当たるとはいえない。 (3)争点(3)公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるか否かについ(。)て(相手方)本件は,申立人が長年にわたり不当誘致行為を繰り返してきたという悪質な事案であり,この不当誘致行為は,司法書士 3)公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるか否かについ(。)て(相手方)本件は,申立人が長年にわたり不当誘致行為を繰り返してきたという悪質な事案であり,この不当誘致行為は,司法書士制度の根幹である業務の適正を揺るがすものであり,重大な違反であることが明らかである。このような事案において,本件申立てが認められることとなれば,処分行政庁に司法書士に対する懲戒権限を付与した司法書士法の趣旨が没却され,司法書士制度や司法書士に対する国民の信頼を失わせることとなるのは明らかである。 したがって,本件申立てを認めることとなれば,公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれを生じさせるものというべきである。 (申立人)本件処分を仮に差し止めたとしても,申立人が司法書士業務を継続することができること以外に何らの影響も生じないから,公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれはない。 申立人が長年にわたり不当誘致行為を繰り返してきた事実がないことは,既に主張したとおりである。 第3当裁判所の判断 争点(1)(償うことのできない損害を避けるための緊急の必要があるか否か)。 について(1)行政事件訴訟法は本案判決前における仮の救済に関し行政庁の処分そ,,の他公権力の行使に当たる行為については,民事保全法による仮処分を排除- 10 -し(同法44条,取消訴訟及び無効等確認の訴えが本案となる場合につい)て,執行停止(処分の効力,処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停。 。)(,),止をいう以下同じの制度を定め同法25条ないし29条38条3項義務付けの訴え及び差止めの訴えが本案となる場合について,それぞれ仮の義務付け及び仮の差止めの制度を定めている同法37条の5そして執()。 ,行停止においては,積極要件として「重大な 3項義務付けの訴え及び差止めの訴えが本案となる場合について,それぞれ仮の義務付け及び仮の差止めの制度を定めている同法37条の5そして執()。 ,行停止においては,積極要件として「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき同法25条2項との要件を消極要件執行停止が否定される」(),(要件として本案について理由がないとみえるとき同条4項との要件)「」()を定めているのに対し,仮の義務付け及び仮の差止めにおいては,積極要件につき「重大な損害」に代えて「償うことのできない損害」を掲げるとともに本案について理由があるとみえるときをも積極要件とし同法37条,「」(,),。 ,の5第1項第2項執行停止よりも厳格な要件を定めているこのように仮の救済の制度の中でも,仮の義務付け又は仮の差止めにつき,より厳格な要件が定められているのは,これらが,本案の厳格な要件の審査を経て行政庁が具体的な処分をすべきこと又はすべきでないことを命ずる本案判決の前に裁判所が仮にこれを命ずる裁判でありながら,実質的には本案訴訟の裁判と同様の内容を仮の裁判で実現するものであることによるものと解される。 そうすると,仮の差止めは,処分がされた後の執行停止又は損害賠償等によるのでは救済の実を挙げることができない場合に,その処分がされることにより生ずる損害をあらかじめ避けるために認められるものであって,処分がされることにより生ずる「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要」があると認められるためには,当該処分により生ずる損害の回復の困難の程度を考慮し,当該損害の性質及び程度並びに当該処分の内容及び性質をも勘案して同法37条の4第2項参照処分後の執行停止又は損害賠償等(),の事後の救済手段によるのでは救済が著し 回復の困難の程度を考慮し,当該損害の性質及び程度並びに当該処分の内容及び性質をも勘案して同法37条の4第2項参照処分後の執行停止又は損害賠償等(),の事後の救済手段によるのでは救済が著しく困難又は不相当であることが一応認められる必要があると解すべきである。 - 11 -そこで,こうした観点から,申立人において,行政事件訴訟法37条の5第2項所定の仮の差止めの要件として,処分がされることにより生ずる「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要」があると認められるか否かを検討する。 (2)この点申立人は①司法書士の業務内容は書類作成登記業務が中心と,,,なり,どの司法書士に依頼してもほぼ同様の報酬になる場合が多く,業務内容・報酬の両面で差別化しにくい業界において,最も重要なのは社会的評価・信用であるところ,業務停止という重い処分を受けてそれが公表されてしまうと,申立人の社会的評価・信用に重大な影響を及ぼし,申立人の司法書士生命を奪うことになりかねない,②申立人は,いわゆる飛び込みの顧客がほとんどおらず,その業務のほぼ100%が以前勤めていた生命保険会社の知人や,金融機関,葬儀会社等からの継続的な紹介に基づくものであるところ,業務停止となった場合,これらの紹介が途絶えるばかりか,いったん信用を失った後に再び顧客の紹介を受けることは極めて困難であり,本件処分を受けると,これによる業務停止期間が終了しても,事実上司法書士としての業務ができない状況に追い込まれることになるなどと主張している。 しかし,関係記録によれば,司法書士報酬基準が平成14年に撤廃され,現在,司法書士は自由に報酬の額を定めることができるものと認められるところであり,申立人自身,平成22年4月8日付け相手方意見書に対する反論書において,Aとの業務提携 酬基準が平成14年に撤廃され,現在,司法書士は自由に報酬の額を定めることができるものと認められるところであり,申立人自身,平成22年4月8日付け相手方意見書に対する反論書において,Aとの業務提携に至る経緯について,申立人が司法書士報酬を一般的な水準より低く設定できる点等で市場競争力に優れていたからであると説明していること等にかんがみても,報酬面で他の司法書士と差別化することが困難であるとの申立人の主張をにわかに認めることはできない。また,司法書士法47条に定められた司法書士に対する懲戒処分には,戒告及び2年以内の業務の停止のほかに,業務の禁止があるところ,3か月の業務停止の処分は,業務の禁止の処分よりも軽いことは明らかであり,さらに,- 12 -最長期を2年とする業務停止の処分の中でも,比較的軽い処分ということができるのであって,業務停止の期間が経過すれば当然に業務を再開することができること(期間を定めて業務停止とするとの処分には,その内容それ自体によって,業務停止とされた期間が経過すれば業務を再開できるとの趣旨が表示されているともいうことができるにかんがみても司法書士が3か。),月の業務停止の処分を受けた場合,当該処分を受けることによって,後述のとおりその社会的評価・信用の低下を来すことがあることは格別,直ちにその司法書士生命を奪われる結果に至るとは認めることができない。そして,申立人は,この点について特段の事情があることの主張も疎明もしていないから,結局,本件処分によって申立人の司法書士生命が奪われる結果を来す。 。 とは認められない申立人の上記①の主張は理由がないといわざるを得ないまた,申立人の上記②の主張を前提としても,その顧客のほとんどは,以前勤めていた生命保険会社の知人や,金融機関,葬儀会社等からの継続的な められない申立人の上記①の主張は理由がないといわざるを得ないまた,申立人の上記②の主張を前提としても,その顧客のほとんどは,以前勤めていた生命保険会社の知人や,金融機関,葬儀会社等からの継続的な紹介に基づくものであるというのであるから,その顧客の相当程度は縁故による紹介であるとうかがえるところ,申立人が3か月の業務停止の処分を受けることによってそうした人間関係が直ちに途絶するとはにわかに認められない。この点,申立人は,申立人が依頼を受けているのは,金融機関や企業であり,そのようなビジネスの世界において,他に司法書士がいくらでもいる現状では,仮に当該懲戒処分が事後的に取り消されたとしても,一度懲戒処分を受けた司法書士を顧客に紹介することは信用問題にかかわるから,いったん業務停止になった司法書士をわざわざ使おうとする者は存在しないなどと主張している。しかし,申立人が従来,具体的にどのような関係に基づきどのような顧客の紹介を受けていたのかをつまびらかにする疎明資料は見当たらないところ前示第2の5(2)申立人アのとおり申立人は司法書,(),士報酬が一般的な水準より低く設定できる点等においてAが従来依頼していた司法書士に比べて市場競争力に優れていたというのであり,また,本件処- 13 -分において,申立人がした司法書士としての業務そのものの内容に遺漏があるといったことが問題とされているわけではないことにかんがみても,申立人が依頼を受けていたのが金融機関や企業であるとの一事から,本件処分を受けることによって,今後,申立人が顧客の紹介を一切受けられなくなるとはにわかに認められない(さらに,申立人は,これまでのところいわゆる飛び込みの顧客はほとんどいない旨を主張しているところ,このことを逆にいえば,飛び込みの顧客を取るまでもなく 一切受けられなくなるとはにわかに認められない(さらに,申立人は,これまでのところいわゆる飛び込みの顧客はほとんどいない旨を主張しているところ,このことを逆にいえば,飛び込みの顧客を取るまでもなく業務を続けることができていた可能性が高いところ,そうだとすれば,今後,飛び込みの顧客を取るようにすることも考えることができるのであって,そうする上で支障となる事情があることの疎明はない。そうすると,本件処分による業務停止期間が終了して。)も,事実上司法書士としての業務ができない状況に追い込まれることになるとの申立人の主張は,その前提を欠き失当であるといわざるを得ず,結局,申立人の上記②の主張も理由がない。 その他,申立人は,本件処分がされると,申立人は信用を失う結果,仮に司法書士としての業務を再開できたとしても,顧客の紹介を受ける関係先を失い,新規の顧客獲得も極めて困難となるため,申立人は事実上廃業を余儀なくされるなどとも主張しているが,以上に説示したところに加え,何ゆえ新規の顧客獲得が極めて困難となるのか,その理由はつまびらかではなく,また,このことに関する疎明もないことに照らして,この主張も理由がないといわざるを得ない。 (3)もっとも司法書士法51条が司法書士に対する懲戒処分をした場合に処,分行政庁にその旨を官報をもって公告するよう義務付けていることによれば,申立人が本件処分を受けることにより,3か月間司法書士業務をすることができなくなり,また,本件処分をした旨の処分行政庁による官報公告がされることによって,申立人の社会的評価・信用が一定程度低下することは否めないというべきであり(ただし,その結果,申立人の司法書士生命が奪- 14 -われ,あるいは,申立人が事実上司法書士としての業務ができない状況に追い込まれるとまで認めるこ 定程度低下することは否めないというべきであり(ただし,その結果,申立人の司法書士生命が奪- 14 -われ,あるいは,申立人が事実上司法書士としての業務ができない状況に追い込まれるとまで認めることができないことは既に説示したとおりである,これらの結果,申立人が業務停止期間に応じた一定の経済的損失を被。)り,また,相応の精神的損害を受けるであろうことは十分に想定できるところである。しかし,懲戒処分を受けることに伴う社会的評価・信用の低下それ自体については,本案について理由があることが一見明白であるような場合や当該具体的事案の内容からみて社会的評価・信用の低下が極めて著しいような場合はともかく,後述のとおり,一般的にいって当然に償うことのできない損害に当たるとみることはできないし,本件処分がされた後においても,その取消しの訴え等をもって本件処分の違法を争い,勝訴判決を得ることができれば,そのことを関係先に周知することで相当程度回復可能であるというべきである。また,上記の経済的損失や精神的損害については,3か,,月という業務停止期間に照らし特段の疎明資料がないことにかんがみてもこれが申立人に極めて重大な打撃を与えるものであり,損害賠償等によるこ(,とではその回復が著しく困難であるとまで認めることはできない申立人は収入が途絶えるため,その生活は困窮すると主張しているが,3か月間の収入がないことによって申立人の生活が困窮することの疎明はない。 。)他方,司法書士法は,司法書士の制度を定め,その業務の適正を図ることにより,登記,供託及び訴訟等に関する手続の適正かつ円滑な実施に資し,もって国民の権利の保護に寄与することを目的としており1条司法書士(),が同法又は同法に基づく命令に違反したときは,その事務所の所在地を管轄す 訴訟等に関する手続の適正かつ円滑な実施に資し,もって国民の権利の保護に寄与することを目的としており1条司法書士(),が同法又は同法に基づく命令に違反したときは,その事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長が当該司法書士に対し懲戒処分をすることができることとして47条司法書士の業務の適正を担保しようとしている(),のであって,当該法務局等の長が同法又は同法に基づく命令への違反行為があったとして懲戒処分をしようとする場合に,当該懲戒処分により当該司法書士に社会的評価・信用の低下その他の一定の損害が生じるおそれがあると- 15 -しても,そのことから直ちに当該処分の仮の差止めが認められることとなれば,上記司法書士法の目的の実現が害されることになる。特に,前提事実及び当事者の主張によれば,本件においては,申立人が長年にわたり不当誘致行為に当たる行為を繰り返してきたか否かが当事者間において争われているところ,仮にこれが認められるとすれば,その行為は司法書士の業務の適正の確保上,重大な支障を来すものであって,本件処分の仮の差止めをすることは,司法書士法の目的の実現を著しく阻害することになるといわざるを得ない。 以上のとおり,本件処分によって申立人に生ずるであろう損害について,その回復の困難の程度を考慮し,当該損害の性質及び程度を勘案しても,これが申立人に極めて重大な打撃を与えるものであり,損害賠償等によることではその回復が著しく困難であるとまでは認められず,上記のような本件処分の内容及び性質を勘案しても,本件処分後の執行停止又は損害賠償等の事後の救済手段によるのでは救済が著しく困難又は不相当であるとは認めることができない。そして,他にこの点の疎明はないから,申立人について,本件処分がされることにより生ずる「償うことの は損害賠償等の事後の救済手段によるのでは救済が著しく困難又は不相当であるとは認めることができない。そして,他にこの点の疎明はないから,申立人について,本件処分がされることにより生ずる「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要」があると認めることはできない。 結論 よって,その余の点について判断するまでもなく,本件申立ては仮の差止めの要件を欠くから,これを却下することとして,主文のとおり決定する。 平成22年4月12日東京地方裁判所民事第2部裁判長裁判官川神裕- 16 -裁判官小海隆則裁判官須賀康太郎- 17 -(別紙)不利益処分の原因となる事実 申立人は,平成2年11月27日司法書士試験に合格し,平成6年12月▲日神奈川第○号にて司法書士の登録を受けた後,同日から平成13年8月22日まで東京第○号,同日から平成18年3月10日まで神奈川第○号,同日から現在に至るまで東京第○号の登録をそれぞれ受けて,現在,東京都新宿区α×番8号において司法書士業務に従事している者であるが,次に掲げるとおり,司法書士法及び東京司法書士会会則に違反する行為を行ったものである。 なお,申立人は,平成16年9月7日に司法書士法人B(以下「本件法人」という。平成18年5月1日名称を「司法書士法人C」と変更)を設立し,平成18年2月2日に退社するまで本件法人の代表社員として在籍していた。 申立人は平成15年10月15日株式会社A以下Aというとの間,,(「」。)で,Aは申立人の業務拡大のため支援指導すること,申立人はAの協力により得られた登記業務等の報酬からその20%をAに業務協力費として支払うことなどを内容とする覚書を締結し,Aから顧客の紹介を受けて登記業務等を行い,その報酬の20%に当たる業務協 申立人はAの協力により得られた登記業務等の報酬からその20%をAに業務協力費として支払うことなどを内容とする覚書を締結し,Aから顧客の紹介を受けて登記業務等を行い,その報酬の20%に当たる業務協力費を支払っていた。 その後,申立人は,本件法人を設立したことに伴い,平成17年10月1日,本件法人の代表社員として,Aとの間で,Aから相続の登記申請を希望する顧客の紹介を受け,その対価として報酬の20%を業務協力費としてAに支払うことを内容とする提携基本契約を締結し,Aから顧客の紹介を受けて登記業務等を行い,その報酬の20%に当たる業務協力費を支払っていた。 申立人は平成18年2月2日に本件法人を退社した後,平成18年4月1日,Aから相続の登記申請を希望する顧客の紹介を受け,その対価として報酬の20%を業務協力費としてAに支払うことを内容とする基本協定(以下「D協定書」。)。 ,というを同社と締結した申立人が平成18年4月から平成19年4月の間- 18 -D協定書に基づきAから紹介を受けた登記申請の件数は合計117件,Aに支払った業務協力費の金額は約193万円である。
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