平成25(ワ)5714 損害賠償等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成27年1月21日 東京地方裁判所
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判決文本文37,708 文字)

平成25年(ワ)第5714号損害賠償等請求事件判決東京都足立区〈以下略〉原告株式会社ハートウィング東京都足立区〈以下略〉原告 A両名訴訟代理人弁護士羽根一成同橋本一成東京都渋谷区〈以下略〉被告株式会社石井式国語教育研究会同訴訟代理人弁護士鴨田哲郎同三枝充同早田由布子 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告株式会社ハートウィング(以下「原告会社」という。)に対し,3214万2184円及びこれに対する平成25年3月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Aに対し,550万円及びこれに対する平成25年3月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,原告Aが,被告による虚偽内容の文書の送付によって同原告の名誉が毀損されたと主張して,被告に対し,名誉毀損の不法行為に基づく損害賠償 金及びこれに対する不法行為の後の日(訴状送達日の翌日)である平成25年3月15日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,原告会社が,虚偽内容の文書を送付した被告の行為が名誉毀損の不法行為又は不正競争防止 の翌日)である平成25年3月15日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,原告会社が,虚偽内容の文書を送付した被告の行為が名誉毀損の不法行為又は不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項14号の不正競争に当たり,また,文書送付によって原告会社の顧客を奪取した被告の行為が不法行為に当たると主張して,被告に対し,不法行為又は不競法4条に基づく損害賠償金及びこれに対する不法行為又は不正競争の後の日である前同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(証拠等〈略〉を掲げていない事実は当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア原告会社は,平成16年に設立され,幼稚園や保育園の体育指導・課外教室,園経営コンサルティング・講演・講習・研究活動,石井式漢字教育など,主として幼児教育に関する事業を営む会社である。 原告会社は,平成24年6月25日頃から,東京都渋谷区恵比寿南所在のビルで,幼児能力開発教室を運営している。 イ原告Aは,学校法人**学園の理事長及び**幼稚園の園長を務める者である。原告Aは,平成16年頃から平成24年6月24日までは被告の代表取締役でもあった。 ウ被告は,昭和58年5月7日に設立された,学習教室の経営,出版事業,教育教材・教具等の製造・販売等を行う会社である。 被告は,石井式漢字教育法に関連する事業を展開し,幼稚園や保育園に対して絵本等の教育教材を販売したり,課外教室を提供したりするほか,平成24年6月までは東京都渋谷区恵比寿南所在のビルに事務所を置き,同所で石井式幼児能力開発教室を運営しており(以下,この事務所及び教室をそれぞれ「恵比寿南の事務所」,「恵比寿南の教室」ということがあ 月までは東京都渋谷区恵比寿南所在のビルに事務所を置き,同所で石井式幼児能力開発教室を運営しており(以下,この事務所及び教室をそれぞれ「恵比寿南の事務所」,「恵比寿南の教室」ということがあ る。),同月以降は同区恵比寿西所在のビルに事務所を置き,同様の能力開発教室を運営している(以下,この教室を「被告新教室」という。)。 (2) 石井式漢字教育ア石井式漢字教育法石井式漢字教育法は,教育学博士・故Zが長年の実践を通して提唱してきた教育法(子供たちが漢字仮名交じりの絵本に親しみ,表現豊かな絵本読み,テンポの良い読みカードやゲーム感覚の指導を楽しく受けているうちに,語彙を増やし言葉を正しく理解できるようになるというもの)であり,カリキュラムとして導入している幼稚園や保育園が,全国に600園ほどある。 イ特定非営利活動法人日本漢字教育振興協會特定非営利活動法人日本漢字教育振興協會(以下「振興協會」という。)は,石井式漢字教育法を広めるために,平成15年9月9日に認可設立された特定非営利活動法人である。 (3) 被告経営陣の交代平成24年6月24日,被告の臨時株主総会が開催され,それまで被告の代表取締役であった原告A,取締役であったC及びDがいずれも辞任し,代わりに,E,F及びGが取締役に選任され,このうちEが被告の代表取締役に就任した。 (4) 被告による書簡の送付等ア被告は,平成24年6月29日付けで,石井式漢字教育法をカリキュラムとして導入するなど,被告と取引のあった幼稚園や保育園に対して,「『株式会社ハートウイング』の書簡について重要なお知らせ」と題する文書(以下「本件文書1」という。)を送付した。 本件文書1には,原告会社が,振興協會からの委託を受けて,被告に代わって石井式漢字 会社ハートウイング』の書簡について重要なお知らせ」と題する文書(以下「本件文書1」という。)を送付した。 本件文書1には,原告会社が,振興協會からの委託を受けて,被告に代わって石井式漢字教育の業務を行う旨を記した手紙を幼稚園や保育園に対 して送っているが,その内容が事実無根であるとの趣旨の記載のほか,「『株式会社ハートウイング』は,弊社の元社員が関係している会社ですが,当社とは何の関係も取引もございません。6月末に退職した者(元取締役員と従業員数名)が幼稚園,保育園の皆様に手紙を出して混乱させております。」「この『株式会社ハートウイングは,弊社運営の恵比寿能力開発教室の生徒や幼稚園と弊社の共同運営の課外教室(青い鳥倶楽部)の保護者にも同様の手紙と授業料振込通知を送りました。この手紙を信じた保護者の方は『株式会社ハートウイング』に6月分の授業料を振り込んでしまったとの被害報告を受けております。(現在,この事は振込詐欺罪になるかどうか,弊社弁護士と法的処置をどうとるか相談しております。)」との記載がある。 イ被告は,平成24年7月28日付けで,前記幼稚園や保育園に対して,「『株式会社ハートウイング』の書簡について重要なお知らせ」と題する文書(以下「本件文書2」という。)を送付した。 本件文書2には,原告会社が,幼稚園及び保育園や課外教室の保護者に対して,被告に代わって漢字絵本の取扱い及び課外教室の運営を行うために,その絵本代金や授業料の振込先が原告会社の口座に変わったとの通知をしているが,その内容が事実に反しているとの趣旨の記載のほか,「『株式会社ハートウイング』は,去る6月24日に弊社を辞任に至った取締役ならびに,彼らに従って退職した従業員が名乗る会社です。その者たちは上記のような手紙を送るのみなら いるとの趣旨の記載のほか,「『株式会社ハートウイング』は,去る6月24日に弊社を辞任に至った取締役ならびに,彼らに従って退職した従業員が名乗る会社です。その者たちは上記のような手紙を送るのみならず,株式会社石井式国語教育研究会の財産や事務所までも不法に占拠横領している状況で,被害総額は数千万円になっております。」との記載がある。 ウ被告は,平成24年9月13日付けで,前記幼稚園や保育園に対して,被告名義の文章と「石井式漢字教育絵本『青い鳥文庫』著作権者代表 H」名義の文章を併記した文書(以下「本件文書3」という。)を送付した。 本件文書3には,被告名義の文章として,「このたび,株式会社ハートウィングより,皆様に対し,当社が製作している石井式漢字教育絵本を,株式会社ハートウィングが当社に代わって販売・配本するとの通知があったことと聞き及んでおります。しかし,これらの絵本につきましては,その著作権者であるH氏らが著作権を有しており,第三者が著作者に無断で販売・配本することは,著作権法に反し,許されません。このことは,裁判所の判決(東京地方裁判所平成24年3月24日)において確認されております。」などの記載がある。また,この被告名義の文章の下には,H名義の文章として,「我々著作権者としましても,上記の事態を重くとらえております。我々は,株式会社石井式国語教育研究会の前代表取締役であるA氏がおこなった著作権法違反行為に対して訴訟を提起し,裁判所の判決において我々の主張が認められました。・・・我々著作権者は,著作権侵害についての上記裁判所の判定以後に,株式会社石井式国語教育研究会の前代表取締役A氏及び前取締役C氏及び,株式会社ハートウィングの代表取締役B氏が,同判定に基づく強制執行を免れる目的で行った一連の行為が, ての上記裁判所の判定以後に,株式会社石井式国語教育研究会の前代表取締役A氏及び前取締役C氏及び,株式会社ハートウィングの代表取締役B氏が,同判定に基づく強制執行を免れる目的で行った一連の行為が,刑法第96条の2の『強制執行妨害』に当たると判断し,平成24年9月3日に,A,C,Bの三人を,警視庁に刑事告発したこともお知らせいたします。」などの記載がある。 エ被告は,本件文書3とともに,「お知らせ」と題する文書(以下「本件文書4」という。)を送付して,被告の新しい住所及び電話番号等を通知した。 本件文書4には,「なお上記の様に,前取締役を刑事告発にまで及ばざるを得なかった事は大変遺憾に思っております。」との記載がある。 オ被告は,平成24年6月28日付けで,恵比寿南の教室に通っていた生徒及び保護者に対して,「石井式国語教育研究会能力開発教室生徒・保護者のみなさまへ」と題する文書(以下「本件文書5」という。)を送付 した。 本件文書5には,被告新教室の所在地のほか,「新経営陣の発足に伴い,石井式国語教育研究会能力開発教室では,より通学しやすい場所に教室を移転させていただくことになりました。」と記載されている。 3 争点(1) 原告Aの請求につきア本件文書1ないし4による名誉毀損の不法行為の成否(ア) 社会的評価の低下の有無(イ) 違法性及び故意・過失の有無イ損害発生の有無及びその額(2) 原告会社の請求につきア本件文書1及び2による名誉毀損の不法行為の成否(ア) 社会的評価の低下の有無(イ) 違法性及び故意・過失の有無イ本件文書1及び2の送付が不競法2条1項14号の不正競争に当たるか否かウ本件文書5による顧客奪取の不法行為の成否エ損 社会的評価の低下の有無(イ) 違法性及び故意・過失の有無イ本件文書1及び2の送付が不競法2条1項14号の不正競争に当たるか否かウ本件文書5による顧客奪取の不法行為の成否エ損害発生の有無及びその額第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)ア(原告A関係-本件文書1ないし4による名誉毀損の不法行為の成否)について〔原告Aの主張〕(1) 社会的評価の低下の有無(争点(1)ア(ア))についてア被告は,原告Aを罪人扱いし,それを幼児教育業界に広く喧伝する内容の本件文書1ないし4を,94の幼稚園や保育園に対して送付し,原告Aの社会的評価を低下させて,その名誉を毀損した。 イ本件文書1の「現在,この事は振込詐欺罪になるかどうか,弊社弁護士と法的処置をどうとるか相談しております。」との記載は,あたかも原告らが「振込詐欺罪」を犯している犯罪者であるかのように印象付け,その社会的評価を低下させる。 ウ本件文書2の「その者たちは・・・,株式会社石井式国語教育研究会の財産や事務所までも不法に占拠横領している状況で,被害総額は数千万円になっております。」との記載は,原告らが横領罪を犯している犯罪者であるかのように印象付け,その社会的評価を低下させる。 エ本件文書3の「我々著作権者は,著作権侵害についての上記裁判所の判定以後に,株式会社石井式国語教育研究会の前代表取締役A氏・・・が,同判定に基づく強制執行を免れる目的で行った一連の行為が,刑法第96条の2の『強制執行妨害』に当たると判断し,平成24年9月3日に,A,・・・を,警視庁に刑事告発した」との記載は,原告Aが強制執行妨害罪を犯している犯罪者と印象付け,その社会的評価を低下させる。 オ本件文書4の「なお上記の 判断し,平成24年9月3日に,A,・・・を,警視庁に刑事告発した」との記載は,原告Aが強制執行妨害罪を犯している犯罪者と印象付け,その社会的評価を低下させる。 オ本件文書4の「なお上記の様に,前取締役を刑事告発にまで及ばざるを得なかった」との記載は,原告Aが犯罪者であると印象付け,その社会的評価を低下させる。 (2) 違法性及び故意・過失の有無(争点(1)ア(イ))についてア公共の利害,公益目的及び公正な論評につき本件文書1ないし4は,被告の原告会社に対する取引競争(顧客奪取)において,原告らの業務を妨害する一連の過程で送付されたものであり,被告には,原告Aに対する私怨こそあれ,公益を図る目的はなかった。 取引競争(顧客奪取)において原告らを犯罪者に仕立て上げることは,被告の関心事であり,幼稚園や保育園の正当な関心事ではない。また,保護者による授業料の振込みに関する事実は,幼稚園や保育園には関係がない。 被告が公共の利害及び公益目的について主張する点は,本件文書1ないし4を送付した一般的な事情にすぎず,それらの文書に殊更に「振込詐欺罪」「不法に占拠横領」「強制執行妨害」「刑事告発」などと記載して,原告らを犯罪者扱いすることには,何ら公共性及び公益性がない。そして,これらの記載は,誹謗中傷の類であり,必要性もないのに原告らを犯罪者扱いするものであるから,意見ないし論評としての域を逸脱した,相当性を欠くものである。 イ真実性又は真実相当性につき(ア) 本件文書1被告は振興協會からの経営委託を受けて恵比寿南の教室を運営していたのであるから,振興協會が被告への経営委託を解除し,原告会社に経営委託したことにより,同教室の生徒は,被告の顧客ではなく,原告会社の顧客となった。したが 経営委託を受けて恵比寿南の教室を運営していたのであるから,振興協會が被告への経営委託を解除し,原告会社に経営委託したことにより,同教室の生徒は,被告の顧客ではなく,原告会社の顧客となった。したがって,生徒は授業料を原告会社に支払うべきであるから,原告会社がその案内をすることが,「振込詐欺」になることはない。 (イ) 本件文書2原告会社は,振興協會から能力開発教室の経営委託を受け,商品や備品を含む教室の引渡しを受けたのであるから,「不法に占拠横領」した事実はない。また,被告の被害総額が数千万円であることの根拠はない。 (ウ) 本件文書3及び4振興協會からの経営委託の解除を受けて,当時被告代表者であった原告Aは,不要となった絵本を不良在庫として適正対価以上の金額で原告会社に売却し,原告会社は実際に代金を支払ったのであるから,それが「強制執行妨害」に当たる余地はない。なお,上記売買の対象には,絵本の著作権者らが申し立てた仮処分命令申立事件における決定によって販売等が差し止められていた絵本は含まれていなかった。また,告発状 が受理されたのは平成25年3月14日であるから,平成24年9月当時に刑事告発された事実はない。 〔被告の主張〕(1) 社会的評価の低下の有無(争点(1)ア(ア))についてア被告が,原告らの主張する94の幼稚園や保育園のうち一部に対して,本件文書1ないし4を送付したことは認めるが,それらが名誉毀損に当たるとの主張は争う。 被告は,平成24年6月24日の株主総会における経営陣の交代後,従来からの取引先である幼稚園や保育園を訪問して,事情を報告したが,全ての取引先を訪問できなかったため,訪問できなかった取引先の一部に対して,その後,上記各文書を送 株主総会における経営陣の交代後,従来からの取引先である幼稚園や保育園を訪問して,事情を報告したが,全ての取引先を訪問できなかったため,訪問できなかった取引先の一部に対して,その後,上記各文書を送付した。 イ本件文書1の記載は,原告会社が,幼稚園及び保育園や石井式能力開発教室の生徒の保護者に対し,原告会社が被告に代わって石井式能力開発教室の運営を行うこととなり,授業料の振込先も原告会社名義の銀行口座に変更された旨の通知を行ったことを前提として,被告が,この原告会社の行為について,振り込め詐欺に類する犯罪ではないかとの疑いを表明したものであり,法的見解の表明として論評に当たる。また,弁護士に相談しているとの事実は,原告らの社会的評価を低下させるものではない。 ウ本件文書2の記載は,被告が従前能力開発教室又は事務所として使用していた賃貸物件が,原告Aによる賃借人たる地位の譲渡や解除によって使用できなくなったこと,被告の備品や商品(絵本)等の財産が,原告Aによって原告会社に売却されて使用できなくなったこと,その備品や商品等の価額が原告Aの評価によっても約1664万円に及ぶものであり,しかも,被告が従来の賃貸物件を使用できなくなり,新たな賃貸物件を用意するために支出を余儀なくされたことを前提に,原告らの行為につき「不法な占拠横領」であるとの法的評価を加えたものであり,「被害総額」に関 する部分は,不法な占拠横領によって生じた損害を評価しているものであり,論評に該当する。 エ本件文書3及び4は,Hらを原告として著作権侵害を理由とする絵本の印刷,出版,販売及び頒布の差止め並びに損害賠償を求めた訴訟について,Hらの主張を認容する判決がされた後に,原告Aが原告会社に対して被告の在庫絵本を譲渡して引き渡したこと 作権侵害を理由とする絵本の印刷,出版,販売及び頒布の差止め並びに損害賠償を求めた訴訟について,Hらの主張を認容する判決がされた後に,原告Aが原告会社に対して被告の在庫絵本を譲渡して引き渡したことを前提として,原告Aらの行為が強制執行妨害に当たるという著作権者Hの法的見解について,被告も賛意を示して,H名義の文章を含んだ本件文書3を送付し,また,同様に,Hの法的見解について賛意を示す趣旨で本件文書4を送付したものであって,いずれも,法的見解の表明として論評に当たる。 (2) 違法性及び故意・過失の有無(争点(1)ア(イ))についてア問題となる表現が意見・論評である場合,①その前提としている事実が重要な部分において真実であることの証明があるか,又は真実と信じるについて相当の理由があること,②論評が公共の利害に関する事実に関すること,③論評の目的が専ら公益を図るものであること,④人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでないこと,との4要件が満たされれば,名誉毀損の不法行為責任は免責される。 イ公共の利害,公益目的及び論評の域を逸脱しないこと被告は,原告会社が被告の顧客らに対して送付した振込口座変更の通知や被告に代わり原告会社が絵本の販売・配本を行うとの通知について,保護者らから複数の問い合わせを受け,しかも,これに従って実際に振り込んでしまった者もいたため,原告会社の虚偽の通知について注意を喚起して被害拡大を防いだり,絵本の著作権者と原告会社の関係を説明して原告会社の行為に関与しないよう注意喚起したりするために,本件文書1ないし4を送付したのであり,専ら公益を図る目的に出たものである。 そして,本件文章1ないし4の記述は,いずれも犯罪行為や不法行為に 関わることについ するために,本件文書1ないし4を送付したのであり,専ら公益を図る目的に出たものである。 そして,本件文章1ないし4の記述は,いずれも犯罪行為や不法行為に 関わることについて,上記の事情の下で記載されたものであるから,社会,公衆の正当な関心事に関するものであり,公共の利害に関する事実である。 また,本件文書1ないし4は,「振込詐欺罪である」などと断定的な表現を用いたものではないし,原告らに対する人格攻撃に及んだものではないから,論評としての域を逸脱したものではない。 ウ真実性又は真実相当性につき(ア) 本件文書1被告は,教室の生徒の保護者らから,原告会社が被告に代わって石井式漢字教育の業務を行うので授業料を原告会社に支払うよう指示するよう記載された文書が原告会社から届いた旨の連絡を受け,中には実際に原告会社の口座に授業料を振り込んだ保護者らもいた。 よって,被告が論評の前提とした事実について,真実又は真実と信じるにつき相当な理由がある。 なお,被告が,振興協會からの委託で能力開発教室事業を実施していたという事実はなく,能力開発教室の生徒らが授業料の支払義務を負う相手は,被告であって,原告会社ではない。 (イ) 本件文書2被告が恵比寿南で運営していた能力開発教室の事業主体は,被告であり,振興協會の原告会社に対する経営委託は無効であるから,原告会社が被告から商品,備品,事務所等の引渡しを受けたことは,根拠がなく違法である。また,原告Aが被告の代表者としてした商品,備品,事務所などの譲渡は,株主総会の決議を経ずにされた事業譲渡の一環であり,また,被告の資産をもぬけの殻として悪意により被告の経営の継続を困難にするものであって,忠実義務及び善管注意義務に違反するから,違法である 譲渡は,株主総会の決議を経ずにされた事業譲渡の一環であり,また,被告の資産をもぬけの殻として悪意により被告の経営の継続を困難にするものであって,忠実義務及び善管注意義務に違反するから,違法である。 そして,被告が論評の前提とした事実は,いずれも真実であるか,又 は真実であると信じるにつき相当な理由がある。 (ウ) 本件文書3及び4著作権侵害訴訟において絵本の印刷,出版,販売及び頒布の差止め並びに損害賠償を認容する判決がされたこと,同判決の言渡し後に原告Aが被告の絵本を原告会社に売却したことはいずれも真実である。 なお,Hらは,平成24年9月3日,原告A及び原告会社代表者Bらを強制執行妨害罪で警視庁に告発し,同告発状は,平成25年3月14日に正式に受理されている。 2 争点(1)イ(原告A関係-損害発生の有無及びその額)について〔原告Aの主張〕本件文書1ないし4による被告の名誉毀損行為により,原告Aは多大な精神的苦痛を受けており,これを慰謝するに足りる額は500万円を下らない。また,原告Aは,本件訴訟の提起,追行を弁護士に委任しており,その弁護士費用のうち,上記慰謝料額の1割に相当する50万円は,被告の不法行為と相当因果関係のある損害である。 よって,被告は原告Aに対し,550万円の損害賠償義務を負う。 〔被告の主張〕否認ないし争う。 3 争点(2)ア(原告会社関係-本件文書1及び2による名誉毀損の不法行為の成否)について〔原告会社の主張〕(1) 社会的評価の低下の有無(争点(2)ア(ア))について前記1〔原告Aの主張〕(1)アないしウのとおり,被告は,94の幼稚園や保育園に対して,原告らを罪人扱いし,それを幼児教育業界に広く喧伝する 的評価の低下の有無(争点(2)ア(ア))について前記1〔原告Aの主張〕(1)アないしウのとおり,被告は,94の幼稚園や保育園に対して,原告らを罪人扱いし,それを幼児教育業界に広く喧伝する内容の本件文書1及び2を送付して,原告会社の社会的評価を低下させ,その名誉を毀損した。 (2) 違法性及び故意・過失の有無(争点(2)ア(イ))について前記1〔原告Aの主張〕(2)のとおり,被告の名誉毀損行為について,違法性や故意・過失が阻却されることはない。 〔被告の主張〕(1) 社会的評価の低下の有無(争点(2)ア(ア))について前記1〔被告の主張〕(1)アないしウのとおり,被告が原告らの主張する94の幼稚園や保育園のうちの一部に対して,本件文書1及び2を送付したことは認めるが,それらが名誉毀損に当たるとの主張は争う。 (2) 違法性及び故意・過失の有無(争点(2)ア(イ))について前記1〔被告の主張〕(2)のとおり,被告の行為には違法性又は故意・過失がない。 4 争点(2)イ(原告会社関係-本件文書1及び2の送付が不競法2条1項14号の不正競争に当たるか否か)について〔原告会社の主張〕被告が本件文書1及び2を幼稚園や保育園に送付したことは,競争関係にある原告会社の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し,又は流布する行為であり,不競法2条1項14号の不正競争に該当する。 上記各文書の記載が虚偽であることは,前記1〔原告Aの主張〕(2)イ(ア)及び(イ)に記載のとおりである。 〔被告の主張〕被告が原告らの主張する94の幼稚園や保育園のうちの一部に対して,本件文書1及び2を送付したことは認めるが,それらが原告会社に対する不正競争に当たるとの主張は争う。 5 争点(2 被告の主張〕被告が原告らの主張する94の幼稚園や保育園のうちの一部に対して,本件文書1及び2を送付したことは認めるが,それらが原告会社に対する不正競争に当たるとの主張は争う。 5 争点(2)ウ(原告会社関係-本件文書5による顧客奪取の不法行為の成否)について〔原告会社の主張〕 被告は,本件文書5に,「新経営陣の発足に伴い,石井式国語教育研究会能力開発教室では,より通学しやすい場所に教室を移転させていただくことになりました。」との虚偽の記載をして,これを能力開発教室の生徒及び保護者に対して送付することにより,その生徒及び保護者をして,被告が別途新設した類似教室(被告新教室)が,原告会社の運営する能力開発教室と同一のものであると誤信させた。これは,原告会社の顧客を奪取する不法行為である。 なお,被告は,振興協會から経営委託を受けて恵比寿南の教室を運営していたにすぎず,その経営委託が解除された後は,原告会社が振興協會から経営委託を受けて,同教室を運営していたのであるから,被告が別途新設した被告新教室は,従前の教室とは別のものであり,本件文書5の上記記載は,虚偽の事実の告知・流布である。 〔被告の主張〕被告が能力開発教室の生徒及び保護者に対して,本件文書5を送付したことは認めるが,それが不法行為に当たるとの原告会社の主張は争う。 恵比寿南の教室は,被告自身が運営していた教室であるから,その教室の生徒及び保護者に対して,同教室が移転した旨を通知することは,原告会社の顧客を奪取したとの評価を受けるものではない。 6 争点(2)エ(原告会社関係-損害発生の有無及びその額)について〔原告会社の主張〕(1) 名誉毀損又は不正競争に基づく損害被告による本件文書1及び2に係る名誉毀損又は い。 6 争点(2)エ(原告会社関係-損害発生の有無及びその額)について〔原告会社の主張〕(1) 名誉毀損又は不正競争に基づく損害被告による本件文書1及び2に係る名誉毀損又は不正競争により,原告会社は多大な無形損害を被った。すなわち,幼児教育業界は信用第一であり,顧客対象も限られているところ,被告の行為により,原告会社の社会的,経済的信用が失墜させられ,原告会社の顧客から取引中止の申出を受けて顧客を喪失し,経営が破綻しかねない危機的状況になっている。これによる原告会社の損失は,1000万円を下らない。 (2) 顧客奪取に基づく損害原告会社は,振興協會からの経営委託を受けて恵比寿南の能力開発教室を運営しているが,被告による顧客奪取の不法行為により,生徒が被告新教室に引き抜かれ,本来得られるべき授業料収入を得られなかった。ここで,原告が運営する能力開発教室の授業料収入と同教室を被告が運営していた時期の授業料収入との差額について,少なくとも当初の1年分(平成24年8月から平成25年7月まで)は,上記不法行為と相当因果関係のある原告会社の損害であるところ,その額は1922万0168円である。 (3) 弁護士費用原告会社は,本件訴訟の提起,追行を弁護士に委任しており,その弁護士費用のうち,前記(1)及び(2)の合計2922万0168円の1割に相当する292万2016円は,被告の不法行為又は不正競争と相当因果関係のある損害である。 (4) 合計よって,被告は原告会社に対し,3214万2184円の損害賠償義務を負う。 〔被告の主張〕事実は全て不知ないし否認し,主張は争う。 第4 当裁判所の判断 1 認定事実前記第2,2の前提事実並びに後掲各 対し,3214万2184円の損害賠償義務を負う。 〔被告の主張〕事実は全て不知ないし否認し,主張は争う。 第4 当裁判所の判断 1 認定事実前記第2,2の前提事実並びに後掲各証拠〈略〉及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 被告の設立及びその事業ア被告は,昭和58年5月7日に設立され,東京都渋谷区恵比寿で能力開発教室を開設し,幼稚園等における課外教室を運営し始めた。同能力開発教室は,遅くとも平成2年には,同区恵比寿南所在のビルにあった。 イ平成2年頃,被告は,石井式漢字教育の絵本の製作・販売等を行っていた株式会社登龍館(以下「登龍館」という。)と業務提携し,平成3年1月には,登龍館との間で営業譲渡等に関する契約を締結して,登龍館に対して能力開発教室などの営業を譲渡する代わりに,その対価として登龍館の株式を取得した。同営業譲渡により,恵比寿南の教室は,登龍館が経営することとなった。 しかし,平成14年頃から被告と登龍館の関係が悪化し,平成15年7月,被告が登龍館に対して訴訟(当庁平成15年(ワ)第20429号)を提起したものの,被告及び登龍館は,その後の平成16年9月6日,裁判上の和解に至り,そこで,両社間の平成3年1月27日締結の営業譲渡等に関する契約を合意解除すること,被告が保有する登龍館の株式を登龍館に有償譲渡すること,登龍館は恵比寿南の教室の賃借権を被告に譲渡してその運営から撤退し,以後被告が同教室を運営することなどが合意された。 被告は,同和解に基づいて,登龍館から恵比寿南の教室の引渡しを受け,そこに勤務していた登龍館の元従業員らを雇用し,平成16年11月から,同教室の運営を再開した。 ウ被告は,学習教室の経営 被告は,同和解に基づいて,登龍館から恵比寿南の教室の引渡しを受け,そこに勤務していた登龍館の元従業員らを雇用し,平成16年11月から,同教室の運営を再開した。 ウ被告は,学習教室の経営,出版事業,教育教材・教具等の製造・販売等を行う会社であるところ,その主たる事業は,以下のとおり,能力開発教室事業,石井式漢字教育絵本の販売事業,幼稚園や保育園での課外教室事業である。 (ア) 能力開発教室事業能力開発教室事業は,2歳から小学校3年生程度までの生徒を対象に,教室において,石井式漢字教育法に従って日本語教育を行うものである。 同事業における直接の契約当事者は,被告と能力開発教室に通う生徒の保護者である。 (イ) 石井式漢字教育絵本の販売事業石井式漢字教育絵本の販売事業は,全国の幼稚園や保育園に対し,石井式漢字教育絵本を販売するものである。絵本を購入した幼稚園や保育園は,その絵本を園児に配布し,当該幼稚園や保育園が主体となって,石井式漢字教育法に従って日本語教育を行っている。同事業における直接の契約当事者は,被告と石井式漢字教育絵本の販売先である幼稚園や保育園である。 (ウ) 幼稚園や保育園での課外教室事業課外教室事業とは,幼稚園や保育園の開園時間終了後,被告が,幼稚園や保育園から教室を借り,当該教室に講師を派遣して,原則として当該幼稚園や保育園の園児を対象に,石井式漢字教育法に従って日本語教育を行うものである。同事業における直接の契約当事者は,被告と課外教室の生徒の保護者である。 (2) 振興協會振興協會は,平成15年9月9日に認可設立された特定非営利活動法人であり,東京都渋谷区恵比寿南所在のビルに主たる事務所を置いている。 振興協會の前身は,昭和43年に発足し (2) 振興協會振興協會は,平成15年9月9日に認可設立された特定非営利活動法人であり,東京都渋谷区恵比寿南所在のビルに主たる事務所を置いている。 振興協會の前身は,昭和43年に発足した幼年国語教育会であり,同団体は,平成6年に日本漢字教育振興協會と改称し,石井式漢字教育法を広める活動や,幼稚園や保育園における漢字の指導,絵本・教材の監修,園の教諭への指導,全国漢字かるた大会などのイベントの開催などを行ってきた。 原告A及び原告会社代表者は,いずれも振興協會の理事を務めている。 (3) 絵画の著作者らとの紛争被告が販売していた絵本には,画家であるHらが著作した絵画が挿絵として用いられていたところ,絵画の著作者であったHを含む14名の画家らは,平成23年,被告に対し,被告がHら著作者に無断で絵本を増刷し,販売しているとして,絵本の印刷,出版等の差止め及び損害賠償金の支払を求める 訴訟(当庁平成23年(ワ)第8228号出版差止等請求事件。以下「別件出版差止等請求事件」という。)を提起するとともに,同事件を本案とする仮処分命令申立て(当庁平成23年(ヨ)第22012号)をしたところ,同仮処分命令申立事件において,裁判所は,平成23年5月12日,Hら著作者の申立てを認めて,被告に対して絵本の印刷,出版,販売及び頒布を仮に禁ずる旨の決定(以下「別件出版禁止等仮処分決定」という。)をした。 その後,裁判所は,平成24年3月29日に,本案である別件出版差止等請求事件においても,Hら著作者の主張を認めて,被告に対し,絵本の印刷,出版等の差止め及び損害賠償金の支払を命じる判決(損害賠償金の支払に係る部分については仮執行宣言付き。)を言い渡した。 (4) 被告内部の対立と経営陣の交代ア原告Aは,被告の設立当初か 印刷,出版等の差止め及び損害賠償金の支払を命じる判決(損害賠償金の支払に係る部分については仮執行宣言付き。)を言い渡した。 (4) 被告内部の対立と経営陣の交代ア原告Aは,被告の設立当初からその経営に携わってきており,平成16年には,その代表取締役に就任していた。 平成22年3月頃,原告Aは,原告会社代表者であるBを,被告の社長代行に就任させ,定期会議における原告Aからの伝達事項の伝令やその結果の報告,新規顧客の開拓,振興協會との連絡調整などの職務に当たらせた。 イ平成22年3月,当時被告の代表者であった原告Aは,被告の従業員であったI対して,30日後に解雇する旨の予告をし,また,同年5月,当時社長室長の肩書きで被告の業務に携わっていたJに対して,被告事務所への出入りを禁じ,同人が被告と無関係である旨を通告した。 I及びJは,平成23年4月に,被告に対して,労働契約上の地位の保全及び賃金仮払を求める仮処分命令申立て(当庁平成23年(ヨ)第21068号地位保全等仮処分命令申立事件)を行い,裁判所は,同年8月24日,被告に対して,I及びJへの賃金の仮払を命じる決定をした。被告は,同決定のうちIに係る部分に対して,保全異議(当庁平成23年(モ) 第40034号保全異議申立事件)を申し立てたが,裁判所は,同年11月21日,原決定を認可する旨の決定をした。しかし,同異議決定後も,被告が賃金の仮払を履行しなかったため,I及びJは,同年12月21日,被告に対しては,労働契約上の地位の確認並びに賃金及び慰謝料等の支払を求め,また,当時被告の代表者であった原告Aに対しては,不当解雇及び賃金仮払に係る仮処分決定に従わないことを理由として損害賠償を求める訴えを提起した(当庁平成23年(ワ)第41021号地位確認等請求事 ,また,当時被告の代表者であった原告Aに対しては,不当解雇及び賃金仮払に係る仮処分決定に従わないことを理由として損害賠償を求める訴えを提起した(当庁平成23年(ワ)第41021号地位確認等請求事件)。 ウその後も,被告内部における原告Aと同原告の経営に反対する者らとの対立は強まり,平成24年6月24日開催予定の臨時株主総会の議案として,原告Aら取締役3名の解任に係る議案が提案されるに至った。 同臨時株主総会の開催に先立って,原告Aは,原告A及び同原告の長男であるaがそれぞれ賃貸人として被告に賃貸し,被告が事務所及び倉庫として使用していた東京都足立区所在の2件の賃貸物件について,被告(当時の代表者は原告A)に対し,同年6月24日をもって各賃貸借契約を解約する旨の申し入れ書を作成した(なお,同申し入れ書には,作成日が「平成24年4月24日」と記載されているが,同日付は,原告Aが実際の作成日よりも遡らせて記載したものである。)。 また,原告Aは,同年5月25日,被告の代表者として,恵比寿南の事務所及び教室の賃貸物件に係る賃貸借契約上の賃借人の地位を,敷金返還請求権も含めて,被告から振興協會に譲渡した。 さらに,原告Aは,同月31日,被告の代表者として,原告会社との間で,被告の商品である絵本や教育教材を,同年6月20日付けで一括して1647万6893円で売却する旨の売買契約をした。なお,同売買契約に係る売買基本契約書には,対象商品の一部が販売禁止の差止訴訟の対象となっていることを考慮して売買代金額を算出する旨が明記された。上記 売買代金は,同年6月20日に,原告会社から被告の銀行預金口座に振込入金されたが,同日,同口座から1650万円が原告Aの銀行預金口座に振込送金された。 旨が明記された。上記 売買代金は,同年6月20日に,原告会社から被告の銀行預金口座に振込入金されたが,同日,同口座から1650万円が原告Aの銀行預金口座に振込送金された。 原告Aは,同年6月20日,被告の代表者として,東京都足立区の上記事務所及び倉庫並びに恵比寿南の事務所及び教室に所在した被告の備品(机,椅子,書庫,教材・教具,事務用品,パソコン,冷蔵庫,電子レンジ,洗濯機,棚など)を,原告会社に17万円で売却した。なお,上記パソコンには,被告の会計帳簿や顧客名簿等のデータが保存されていた。 エ平成24年6月24日,被告の臨時株主総会が開催され,そこでは,当時代表取締役であった原告A,取締役であったC及びDを解任する旨の議案が決議されることとなっていたが,同日,原告Aは,自ら代表取締役を退任するとともに取締役を辞任し,C及びDも,取締役を辞任した。原告Aは,同臨時株主総会に出席したが,上記のとおり被告の事務所や教室に所在した備品を売却したこと,被告の絵本等を売却したこと,恵比寿南の賃貸物件の賃借人の地位を振興協會に譲渡したこと等について何ら説明をしなかった。 辞任した原告Aら3名に代わり,同日,E,F及びGの3名が被告の取締役に就任し,このうちEが代表取締役に選任された。 同月25日,原告Aは,代理人弁護士を通じて,被告の新代表者のEに対して,被告の印鑑,銀行預金通帳,借用書,議事録などの物品を引き渡した。この引継ぎの時点で,被告の預金口座にはほとんど残高がなく,そのほかにも被告には資産がない状態であった。また,同日,被告の新役員らが恵比寿南の事務所及び教室に赴いたところ,その権利が原告会社に移っているとの理由で立ち入りを拒まれた。 Eら新役員は,同日付けで,従前 資産がない状態であった。また,同日,被告の新役員らが恵比寿南の事務所及び教室に赴いたところ,その権利が原告会社に移っているとの理由で立ち入りを拒まれた。 Eら新役員は,同日付けで,従前取引のあった幼稚園や保育園に対して,「株式会社石井式国語教育研究会新体制発足についてのご挨拶」と題す る書面を送付し,同月24日の臨時株主総会で原告Aら旧役員が解任され,代わりにEらが役員に就任したことを報告するとともに,石井式漢字教育と能力開発事業に取り組んでいくことを表明した。 (5) 原告会社及び被告による各文書の送付等ア原告Aが恵比寿南の事務所及び教室の賃貸物件に係る賃借人の地位を振興協會に譲渡し,同事務所及び教室の備品等を原告会社に売却するなどしたために,平成24年6月25日以降,被告は,それまでの事務所や教室を使用することができず,急きょ,東京都渋谷区恵比寿西所在のビルの賃貸物件を教室兼事務所として賃借し,同月28日頃から同所で能力開発教室(被告新教室)の運営を始めた。 また,当時被告には全く資産がなかったため,被告は,上記の教室兼事務所の賃借費用,絵本の印刷費用,従業員の給与,その他の運営費のために,役員や関係者から約1500万円の借入れ・支援を受けなければならなかった。 イ一方,原告会社は,平成24年6月25日以降,それまで被告が恵比寿南の教室を運営していた賃貸物件で,能力開発教室を運営するようになった。そして,同日から同月末までの間に,従前被告と取引のあった幼稚園や保育園に対して,「平成24年6月吉日」付けの「ご挨拶」と題する書面を送付した。同書面には,「この度,日本漢字教育振興協會より委託されておりました『石井式漢字教育』は株式会社石井式国語教育研究会に代わり,この6 ,「平成24年6月吉日」付けの「ご挨拶」と題する書面を送付した。同書面には,「この度,日本漢字教育振興協會より委託されておりました『石井式漢字教育』は株式会社石井式国語教育研究会に代わり,この6月25日より株式会社ハートウィング石井式事業部が行うことになりました。・・・弊社に移行しましても従前の通り毎月の絵本の配本や研修会,能力開発教室(恵比寿),各園の課外教室(青い鳥倶楽部)の開催など,社員・講師も引き続き担当致しますのでどうぞご安心ください。」と記載されていた。 また,原告会社は,従前被告が運営していた教室の生徒の保護者に対し て,振興協會と連名で,「平成24年6月吉日」付けの書面を送付した。 同書面には,「この度,日本漢字教育振興協會が『石井式漢字教育』を委託しておりました株式会社石井式国語教育研究会に代わって,この6月25日より株式会社ハートウィング石井式事業部が行うことになりました。・・・つきましては,新しい委託先になりましても毎月の絵本の配本,能力開発教室(恵比寿),各園の課外教室(青い鳥倶楽部など)の開催はもちろんのこと,社員・講師も変わることなく引き続き担当する事となり,・・・」と記載されていた。また,原告会社は,上記書面と同時に,「教室授業料について」と題する書面を送付したところ,同書面には,「別紙にもありますようにハートウィング石井式事業部が,新しい教室の委託先になりました。それに伴い授業料振込先も新しくなります。」との文章とともに,授業料振込先として原告会社の郵便口座が記載されていた。 これらの書面を受領した能力開発教室及び課外教室の生徒の保護者らの中には,従前被告が運営していた教室が原告会社の運営になったと考え,原告会社の指示のとおり,授業料を原告会社の口座に振り込む保護者 これらの書面を受領した能力開発教室及び課外教室の生徒の保護者らの中には,従前被告が運営していた教室が原告会社の運営になったと考え,原告会社の指示のとおり,授業料を原告会社の口座に振り込む保護者もいたが,その後,同保護者らは,原告会社への振込みが誤りであったと考え,平成24年7月頃,警察に相談をし,そのアドバイスに従って,原告会社に対して,「振込詐欺まがいのお手紙におどろきました」と記載し,振り込んだ授業料の返還を求める内容の書面を送り,原告会社から授業料の返還を受けた。 ウ被告は,平成24年6月28日付けで,恵比寿南の教室に通っていた生徒の保護者に対して,本件文書5を送付した。また,被告は,同月29日付けで,従前取引のあった幼稚園や保育園のうち少なくとも30ないし40の園に対して,本件文書1を送付した。 エ原告会社は,平成24年7月12日付け「ご確認とお願い」と題する書面を,従前被告と取引のあった幼稚園や保育園に対して送付した。同書面 には,「7月より株式会社ハートウィング石井式事業部とのお取引となりました。」などと記載されていた。 また,原告会社は,同月17日頃までに,「平成24年7月吉日」付けの書面を幼稚園や保育園に対して送付した。同書面には,「このたびは,当ハートウィング石井式事業部より絵本教材の注文をいただきまして誠にありがとうございます。・・・尚,(株)ハートウィング石井式事業部と会社が変わりましたので,お振込先も変わりましたのでお間違えの無いように確認をお願い申し上げます。」との文章と,原告会社名義の振込先口座が記載されていた。 オ被告は,平成24年7月28日付けで,従前取引のあった幼稚園や保育園のうち少なくとも30ないし40の園に対して,本件文書2を送付した。 原告会社名義の振込先口座が記載されていた。 オ被告は,平成24年7月28日付けで,従前取引のあった幼稚園や保育園のうち少なくとも30ないし40の園に対して,本件文書2を送付した。 カ原告会社は,「『育み能力開発教室』のご案内」と題する平成24年9月11日付け書面を,同年6月まで被告運営の恵比寿南の教室に通っていたがその後原告会社運営の教室に通っていない生徒の保護者宛てに送付した。同書面には,「ご子息・・・が6月までお通いいただきました教室は,『育み能力開発教室』と名称を改め,授業を再開致しました。」と記載されている。 キ被告は,平成24年9月13日頃,従前取引のあった幼稚園や保育園のうち少なくとも30ないし40の園に対して,本件文書3及び本件文書4を同時に送付した。 (6) Hらによる強制執行等ア別件出版差止等請求事件で,出版等差止め及び損害賠償金の支払を命ずる勝訴判決を得たHらは,同判決の金銭支払命令に係る仮執行宣言に基づいて,被告が賃借していた東京都足立区の倉庫に所在する動産に対して強制執行を申し立てた。同執行は,平成24年7月3日に行われたが,執行官らが同所に臨場した際,被告の元取締役で,当時原告会社の従業員とな っていたCは,執行官に対し,同倉庫に係る被告と賃貸人との賃貸借契約が解除されており,同所に所在する絵本や備品等が既に原告会社に売却済みであることを申し述べた。このため,執行官は,被告が同倉庫を占有していないと判断し,同執行は不能となった。 イ別件出版差止等請求事件の原告であったHら14名は,警視総監宛ての平成24年9月3日付けA,原告会社代表者及びCの3名を強制執行妨害罪(刑法96条の2)で告発する旨の申出をした。 Hらの告発状は,平成25 の原告であったHら14名は,警視総監宛ての平成24年9月3日付けA,原告会社代表者及びCの3名を強制執行妨害罪(刑法96条の2)で告発する旨の申出をした。 Hらの告発状は,平成25年3月14日,警視庁において正式に受理された。 2 被告の事業と振興協會及び原告会社との関係について(1) 原告らは,被告による恵比寿南の教室の運営が,振興協會からの経営委託に基づくものであったから,振興協會による同経営委託の解除及び振興協會から原告会社への経営委託によって,同教室は原告会社が運営するものとなり,同教室の生徒は被告の顧客ではなく,原告会社の顧客となったと主張する。 この点,平成16年10月15日付け「合意書」(以下「本件合意書」という。)には,振興協會が恵比寿南の教室の経営を被告(当時の代表者は原告A)に委託するとの内容が記載されている(なお,被告は,本件合意書は後日作成されたものであるとして,その成立の真正を争っている。)。また,振興協會は,平成24年5月10日付け書面により,被告(当時の代表者は原告A)に対して,「業務委託契約を即時解除する」旨を通知し,一方で,同月31日付け「経営委託契約書」により,原告会社との間で,上記教室の経営を原告会社に委託する旨の合意をしたことが認められる。 (2) しかし,前記1(1)のとおり,被告は,昭和58年5月7日の設立時から能力開発教室を開設し,平成2年には恵比寿南の教室を運営していたのであっ て,その後,平成3年に,一旦その営業を登龍館に譲渡したものの,平成16年9月6日成立の被告と登龍館との裁判上の和解により,その営業譲渡契約を解除して,能力開発教室を再び被告が運営することとされ,それ以後は,実際に,被告が恵比寿南の教室を運営して,そこに通う生徒の保護者 9月6日成立の被告と登龍館との裁判上の和解により,その営業譲渡契約を解除して,能力開発教室を再び被告が運営することとされ,それ以後は,実際に,被告が恵比寿南の教室を運営して,そこに通う生徒の保護者らとの間で契約を締結し,同教室において生徒に対する日本語教育を行っていたと認められるのであるから,被告による同教室の経営・運営が,上記和解より後の同年10月15日付け本件合意書に基づいて振興協會から委託されたものであったと認めることはできない。 この点,本件合意書の作成日付に先立つ,平成16年1月27日付け「経営委託契約書」には,被告(当時の代表者は原告A)と振興協會との間で,恵比寿南の教室の経営を,被告が振興協會に委託するとの内容が記載されているが,そもそも同作成日付の当時は,登龍館が同教室を経営していたのであるから,被告が同教室の経営を振興協會に委託することはできなかったはずである。また,上記のとおり,同教室は,同年9月の裁判上の和解によって,登龍館から被告に移管され,その後も被告がこれを運営していたのであるから,上記「経営委託契約書」に基づく振興協會への経営委託が現実に実行されたとの事実は認められない。さらに,同教室の経営について,わずか9か月足らずの間に,被告から振興協會へ,振興協會から被告へと,相互に二回の経営委託がされたことについては,その合理的な理由を見出すことはできない。 当時被告の代表者であった原告Aは,上記二回の経営委託に関して,「被告から振興協會への経営委託は,登龍館との裁判で,石井式の普及がどうなるか,被告の立場がどうなるか,全く不明であったことから,Zが先を見越して,振興協會の立場を明確にするということで整えた」,「振興協會から被告への経営委託は,登龍館との裁判が和解で終わり,Zが実際の運営の方法を考えたとき るか,全く不明であったことから,Zが先を見越して,振興協會の立場を明確にするということで整えた」,「振興協會から被告への経営委託は,登龍館との裁判が和解で終わり,Zが実際の運営の方法を考えたときに,石井式を使って,石井式の漢字教育の普及を図りたいと いうことで整えた」などとの趣旨の供述をするが,その説明内容は到底合理的であるということはできない。また,原告Aは,被告の代表者と振興協會の理事を兼ねており,しかも,前記1(4)ウのとおり,他に作成日付を遡らせた書類を作成していることも勘案すると,本件合意書についても,そこに記載された作成日付(平成16年10月15日)の当時に作成されたものであるかについては疑わしいといわざるを得ない。 そうすると,被告と振興協會との間のこれらの二つの経営委託に関する書面は,当事者間で現にその記載内容どおりの法的効力を持たせる趣旨のものとして作成されたものであると認めることはできない。しかも,仮にこれらの二つの書面がその記載内容どおりの趣旨のものとして真正に成立したものであるとしても,両書面の内容を併せれば,恵比寿南の教室の本来的な経営主体は,振興協會ではなく,被告であったというべきである。 なお,被告の能力開発教室の入会規定には,同教室の入会者が,入会金や授業料,テキスト代等とは別に,振興協會の会費(月額100円)を支払う必要がある旨の記載があり,また,被告が,同教室の生徒や被告の社員に係る会費を振興協會に支払っていたことも窺われるが,能力開発教室事業の主体が本来的に振興協會であるならば,端的にその事業収入を振興協會に帰属させれば足り,会費名目で金銭を移動させる必要はないのであるから,仮に両者間で会費名目の支払がされていたとすれば,それは,被告の事業が振興協會からの経営委託によるものでな の事業収入を振興協會に帰属させれば足り,会費名目で金銭を移動させる必要はないのであるから,仮に両者間で会費名目の支払がされていたとすれば,それは,被告の事業が振興協會からの経営委託によるものでなかったことを窺わせる事情であるというべきである。 以上によれば,被告による恵比寿南の教室の経営は,振興協會からの経営委託に基づくものではなく,被告自らが本来の経営主体として,これを経営し,運営していたものであると認めるのが相当である。 よって,被告が振興協會からの委託により恵比寿南の教室を経営していたこと,及び,その経営委託が解除されて,新たに原告会社に経営委託がされ たことを根拠として,被告が運営していた当時の教室の顧客が,原告会社の運営する教室の顧客になったとの原告らの上記主張は採用することができない。 (3) また,仮に被告が,本件合意書による振興協會からの経営委託に基づいて,恵比寿南の教室を経営していたとしても,前記(2)のとおり,同教室に通う生徒の保護者らとの間で契約を締結して,その契約主体となったのは,振興協會ではなく被告であり,また,その契約に基づいて生徒に対して日本語教育を提供していたのも,振興協會ではなく被告である。しかも,本件合意書においても,教室の経営は,あくまで被告の責任と計算で行うこととされているのである(第2条)から,仮に同合意書に基づいたとしても,教室に通う生徒の保護者と契約を締結し,その契約に基づく債権債務を負担するのは被告であることが前提とされていたことになる。 そうすると,仮に振興協會から被告への経営委託が存在し,その委託関係が両者間で終了したとしても,それによって,被告と保護者らとの間の契約における被告の地位が,当然に振興協會ないし原告会社に移転することはなく,原告会社が,被告に代わ の経営委託が存在し,その委託関係が両者間で終了したとしても,それによって,被告と保護者らとの間の契約における被告の地位が,当然に振興協會ないし原告会社に移転することはなく,原告会社が,被告に代わって従前の契約関係を引き継ぐことになるわけでないことは明らかである。 したがって,本件合意書に基づく振興協會から被告への経営委託とその解除及び振興協會から原告会社への新たな経営委託を理由に,被告が運営していた当時の教室の顧客が,原告会社の運営する教室の顧客になったとの原告らの上記主張は,いずれにせよ採用の限りでない。 (4) なお,被告が行う絵本の販売事業や課外教室事業については,そもそも本件合意書にも何ら記載がないのであって,そのほかにも,これらの被告の事業が振興協會からの経営委託に基づくものであることを窺わせる証拠はない。 そして,前記1(1)ウのとおり,これらの事業においても,能力開発教室と同様に,幼稚園,保育園又は生徒の保護者に対する契約の主体となったのは被 告であるから,原告らが主張するような事情によって,これらの事業における被告の契約上の地位が原告会社に移転したり,当該契約を,被告に代わって原告会社が引き継いだりすることはないものと認められる。 3 争点(1)ア(原告A関係-本件文書1ないし4による名誉毀損の不法行為の成否)について(1) 名誉毀損とは,公然と事実を摘示し,又は意見ないし論評を表明して,人の品性,徳行,名声,信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価を低下させる行為をいうところ,その表現が人の社会的評価を低下させるか否かについては,当該表現に係る文書等の受け手の普通の注意と読み方とを基準として判断すべきである。 また,当該表現が,受け手の普通の注意と読み方を基準として,証拠等 の社会的評価を低下させるか否かについては,当該表現に係る文書等の受け手の普通の注意と読み方とを基準として判断すべきである。 また,当該表現が,受け手の普通の注意と読み方を基準として,証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を明示的又は黙示的に主張するものと理解されるときは,当該特定の事項についての事実を摘示するものと解するのが相当である(最高裁平成6年(オ)第978号同9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3804頁参照)。他方,ある事実を基礎としてされる意見ないし論評の表明は,それ自体は,証拠等をもってその存否を決することが可能な事項ではないから,仮にその意見ないし見解の当否を,裁判所が判決等により公権的に判断することがあるとしても,それを事実の摘示ということはできず,例えば,法的な見解の表明については,その前提として特定の事項を明示的又は黙示的に主張するものと解されるために事実の摘示を含むものといえる場合があるとしても,法的な見解それ自体は,証拠等をもってその存否を決することが可能とはいえないから,意見ないし論評の表明に当たるものというべきである(最高裁平成15年(受)第1793号,第1794号同16年7月15日第一小法廷判決・民集58巻5号1615頁参照)。 そして,事実を摘示して名誉毀損に当たる行為がされたとしても,その行 為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあった場合に,その摘示された事実がその重要な部分について真実であることの証明があったときには,その行為には違法性がなく,仮に同事実が真実であることの証明がないときでも,行為者において同事実を真実と信ずるについて相当の理由があれば,その故意又は過失は否定される。また,ある事実を基礎とし は,その行為には違法性がなく,仮に同事実が真実であることの証明がないときでも,行為者において同事実を真実と信ずるについて相当の理由があれば,その故意又は過失は否定される。また,ある事実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損については,その意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには,人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り,その行為には違法性がなく,仮に同事実が真実であることの証明がないときでも,行為者において同事実を真実と信ずるについて相当の理由があれば,その故意又は過失は否定されるものと解するのが相当である(最高裁昭和37年(オ)第815号同41年6月23日第一小法廷判決・民集20巻5号1118頁,最高裁昭和56年(オ)第25号同58年10月20日第一小法廷判決・裁判集民事140号177頁,最高裁昭和60年(オ)第1274号平成元年12月21日第一小法廷判決・民集43巻12号2252頁,前掲最高裁平成9年9月9日判決,前掲最高裁平成16年7月15日判決参照)。 (2) 社会的評価の低下の有無(争点(1)ア(ア))についてア本件文書1につき(ア) 本件文書1は,被告と取引のあった幼稚園や保育園に対して送付されたものであるところ,かかる文書の受領者の普通の注意と読み方を基準にすれば,本件文書1は,原告会社が,被告に代わって原告会社が石井式漢字教育の業務を行うと記載した手紙と授業料振込通知を,能力開発教室や課外教室の生徒の保護者に対して送ったが,同記載内容が真実でないこと,これを信じた保護者が原告会社に授業料を振り込んでしまったとの事実を前提として,このような行為が「振込詐欺罪」に当たる可 能性があるとの被告の法的 ったが,同記載内容が真実でないこと,これを信じた保護者が原告会社に授業料を振り込んでしまったとの事実を前提として,このような行為が「振込詐欺罪」に当たる可 能性があるとの被告の法的な見解を表明したものであると解される。 この点に関して原告らは,本件文書1が,原告らが「振込詐欺罪」を犯した犯罪者であると印象付けるものであると主張する。 しかし,本件文書1は,上記のとおり,原告会社が授業料振込通知を保護者らに対して送付し,これを信じた保護者が原告会社に授業料を振り込んだとの具体的事実を摘示した上で,「現在,この事は振込詐欺罪になるかどうか,弊社弁護士と法的処置をどうとるか相談しております。」と記載しているのであるから,これを受領した者は,同文書において,原告らが振込詐欺罪を犯したとの事実が明示的又は黙示的に主張されているものと理解することはないというべきである。 (イ) そして,本件文書1における,原告会社が「振込詐欺罪」に当たる可能性のある行為をしたとの法的見解の表明は,原告会社の社会的評価を低下させるものと認められる。 なお,本件文書1の標題は「『株式会社ハートウイング』の書簡について重要なお知らせ」であり,そこには,原告会社が上記授業料振込通知を送付して,保護者に授業料を振り込ませたことが記載されているが,本件文書1には,それ以外にも,原告会社が被告の元社員が関係している会社であること及び平成24年6月末に退社した元取締役と従業員数名が幼稚園や保育園に同様の手紙を出していることも記載されているところ(前記第2,2(4)ア),被告が,本件文書1の送付に先立つ同月25日付けで,幼稚園や保育園に対して,同月24日をもって原告Aら旧役員を解任した旨の通知をしていたこと(前記1(4)エ)も併せ るところ(前記第2,2(4)ア),被告が,本件文書1の送付に先立つ同月25日付けで,幼稚園や保育園に対して,同月24日をもって原告Aら旧役員を解任した旨の通知をしていたこと(前記1(4)エ)も併せて考慮すれば,本件文書1の記載は,原告会社の上記行為に原告Aが関与しているとの印象を与えるものと認められるから,本件文書1は,原告会社のみならず,原告Aの社会的評価も低下させるものといえる。 イ本件文書2につき (ア) 本件文書2は,被告と取引のあった幼稚園や保育園に対して送付されたものであるところ,かかる文書の受領者の普通の注意と読み方を基準にすれば,本件文書2は,平成24年6月24日に被告の取締役を辞任した原告Aを含む者らが,原告会社を名乗って,被告の財産を取得し,事務所を占有しており,それによって被告が数千万円の損害を被っているとの事実を摘示するとともに,これを前提として,その財産取得や事務所の占有が不法なものであるとの被告の法的な見解を表明したものと解するのが相当である。 この点に関して被告は,本件文書2は,原告らの行為により被告の教室及び事務所が使用できなくなり,被告の備品や商品等の財産も売却されて使用できなくなったことを前提に,「不法な占拠横領」であるとの法的評価を加えるものであり,被害総額についても損害の評価という論評であると主張する。 しかし,本件文書2のうち,原告らによる財産取得や事務所占有が不法であるか否かは,それ自体証拠等をもってその存否を決することができない事項であるから,法的な見解として意見ないし論評の表明に当たるといえるものの,そこで前提とされている財産取得や事務所占有は,証拠等によって存否を決することが可能な事実であり,また,原告らの行為によって被告が数千 ,法的な見解として意見ないし論評の表明に当たるといえるものの,そこで前提とされている財産取得や事務所占有は,証拠等によって存否を決することが可能な事実であり,また,原告らの行為によって被告が数千万円の損害を被ったことも,同様に証拠等によって存否を決することが可能な事実であるというべきである。 (イ) そして,本件文書2の上記記載は,原告らが不法に他人の財産及び事務所を取得・占有し,多額の損害を与えているとの印象を与えるものであるから,原告らの社会的評価を低下させるものと認められる。 ウ本件文書3及び4につき(ア) 本件文書3及び4は,被告と取引のあった幼稚園や保育園に対して同時に送付されたものであるところ,かかる文書の受領者の普通の注意と 読み方を基準にすれば,本件文書3及び4は,平成24年3月24日に言い渡された判決において,Hらの著作権に係る絵本を第三者が無断で販売・配本することが著作権法に反することが確認され,原告Aが被告の代表者として行った行為がその著作権法違反に当たることが認められたこと,その後原告Aらが裁判所の判断に基づく強制執行を免れる目的の行為を行ったとの事実を前提として,原告Aらの行為が強制執行妨害に当たると判断するとのH及び被告の法的な見解を表明したものであり,また,Hらが,その判断に従って,同年9月3日に原告Aらを刑事告発したとの事実を摘示するものであると解するのが相当である。 この点に関して原告Aは,本件文書3及び4が,原告Aが強制執行妨害罪を犯した犯罪者であると印象付けるものであると主張する。 しかし,本件文書3及び4では,原告Aらが裁判所の判断に基づく強制執行を免れる目的の行為を行ったとの事実を明示した上で,著作権者らがその行為を強執行妨害に当たると判断した るものであると主張する。 しかし,本件文書3及び4では,原告Aらが裁判所の判断に基づく強制執行を免れる目的の行為を行ったとの事実を明示した上で,著作権者らがその行為を強執行妨害に当たると判断した旨が記載されているのであるから,著作権者らの判断を示した部分は,自己の法的見解を表明したものであると理解されるというべきであり,この記載が,原告Aらが強制執行妨害罪を犯したとの確定的事実を明示的又は黙示的に主張したものであると解することはできない。 (イ) そして,本件文書3及び4の上記記述は,原告Aらが裁判所の判断に基づく強制執行を免れる目的の行為をしたこと,それについて刑事告発がされたことを摘示しつつ,上記行為が強制執行妨害という犯罪に当たるとの法的見解を伝えることで,原告Aの社会的評価を低下させるものであると認められる。 (3) 違法性及び故意・過失の有無(争点(1)ア(イ))についてア公共の利害及び公益の目的につき(ア) 前記1の認定事実によれば,被告は,恵比寿南の教室において能力開 発教室を営み,幼稚園や保育園に対して石井式漢字教育絵本を販売し,また,幼稚園や保育園で課外教室を実施していたところ,平成24年6月24日の被告経営陣の交代をきっかけに,一方では,原告会社が,幼稚園及び保育園や教室の生徒の保護者に対して,被告に代わって原告会社が絵本の配本,能力開発教室及び課外教室の事業を行うことや,それに伴って振込口座が変更されたことを通知し,他方では,被告も,幼稚園及び保育園や教室の生徒の保護者に対して,従前の事業を継続していること及び能力開発教室を移転したことを通知するようになり,それらの通知のために,教室の生徒の保護者らがその運営主体を正確に認識できず,誤って授業料を振り込むなどの混乱が生じていた 事業を継続していること及び能力開発教室を移転したことを通知するようになり,それらの通知のために,教室の生徒の保護者らがその運営主体を正確に認識できず,誤って授業料を振り込むなどの混乱が生じていたことが認められる。 そうすると,従前被告との間で契約をしていたにもかかわらず,その契約について,突然,原告会社及び被告からそれぞれ相矛盾する内容の通知を受けた幼稚園及び保育園や生徒の保護者からすれば,被告と原告会社との関係,そのような混乱が生じた理由並びにその混乱に対する原告会社及び被告の対応等の事情は,自己の契約の相手方や同契約に基づく債務の履行先についての判断に影響を与える,重大な関心事であったことが明らかである。 そして,本件文書1ないし4は,いずれも被告と取引のあった幼稚園や保育園に送付されたものであって,その内容は,いずれも原告会社と被告との関係や両者間に混乱が生じた事情を説明し,誤って振込みをした保護者らがいることや,Hらの著作権に係る絵本を無断で販売等することが著作権法に反することについての注意を喚起するほか,原告らの行為に対する被告の見解を表明しつつ,原告らの行為への対応についての被告の考えなどを伝えるものであると認められるから,被告が本件文書1ないし4を送付した行為は,その送付先との関係において,公共の 利害に関するものというべきであり,また,このような本件文書1ないし4の内容及び当時の状況等に照らせば,その目的は,原告会社と被告との間の対立に巻き込まれた幼稚園や保育園に対して事情を説明し,その混乱を収束するところにあったものと認めることができるから,専ら公益を図る目的に出たものというに妨げない。 (イ) この点に関して原告らは,被告が本件各文書を送付したのは,原告会社の顧客を奪取して原告らの業務を妨 ころにあったものと認めることができるから,専ら公益を図る目的に出たものというに妨げない。 (イ) この点に関して原告らは,被告が本件各文書を送付したのは,原告会社の顧客を奪取して原告らの業務を妨害するためであって,原告Aに対する私怨に出たものであり,また,本件各文書に殊更に「振込詐欺罪」,「不法に占拠横領」,「強制執行妨害」,「刑事告発」などと記載して,原告らを犯罪者扱いしたことには,公共性も公益性もないと主張する。 しかし,前記2で認定したとおり,被告が本件文書1ないし4を送付した幼稚園や保育園はいずれも被告の取引先であって,その取引関係が原告会社に移転していたわけではないから,被告が自己の取引先に対して文書を送付することが,原告会社の顧客を奪取し,その業務を妨害するためのものであったとは認めることができないし,それが原告Aに対する私怨によるものであったことを裏付けるに足りる証拠もない。 また,被告が,原告Aや原告代表者の行為について,振込詐欺罪になるかどうか検討していること,強制執行妨害に当たると判断して刑事告訴したことを伝え,また,その財産の取得や事務所の占有が不法なものであるとの法的見解を表明したとしても,それらは原告会社と被告との間の問題状況を明らかにし,それによってもたらされた混乱についての被告の見解や,これに対する被告の対応を説明するものということができるから,これが上記混乱とは無関係に殊更原告らを犯罪者であることを印象付けるために行われたものであると認めることもできない。 原告は,保護者による授業料の振込みに関する事実は幼稚園や保育園には関係がないとも主張するが,前記1(5)イのとおり,原告会社は,平 成24年6月に,被告の取引先であった幼稚園や保育園及び被告の運営していた教室の生徒の保護者らに対 幼稚園や保育園には関係がないとも主張するが,前記1(5)イのとおり,原告会社は,平 成24年6月に,被告の取引先であった幼稚園や保育園及び被告の運営していた教室の生徒の保護者らに対して,同様の文面で,絵本の配本,能力開発教室及び課外教室の事業がいずれも原告会社に移行したことを通知しており,また,その通知によって誤って授業料を振り込んだ保護者らは,幼稚園や保育園で行われる課外教室の生徒の保護者でもあったことからすれば,保護者による振込みに関する事実が,幼稚園や保育園にとって無関係なものであったとはいうことができない。 よって,原告らの上記主張はいずれも採用することができない。 イ本件文書1の真実性等につき(ア) 前記(2)アのとおり,本件文書1は,原告会社が,被告に代わって原告会社が石井式漢字教育の業務を行うと記載した手紙と授業料振込通知を,能力開発教室や課外教室の生徒の保護者に対して送ったが,同記載内容が真実でないこと,これを信じた保護者が原告会社に授業料を振り込んでしまったとの事実を前提として,このような行為が「振込詐欺罪」に当たる可能性があるとの被告の法的な見解を表明したものである。 そして,前記1(5)イ及び2によれば,被告の行っていた石井式漢字教育の事業が原告会社に引き継がれたという事実がないにもかかわらず,原告会社が,生徒の保護者に対して,被告に代わって原告会社が石井式漢字教育を行うことになり,それに伴い授業料の振込先も変わる旨を通知したこと,これを信じた保護者らが実際に授業料を原告会社に振り込み,後にその返還を求めたことが認められるから,被告の見解の前提とされた上記事実は,その重要な部分について真実であるといえる。 また,上記事実が「振込詐欺罪」に当たる可能性があるとの被告による法的見解の表明 の返還を求めたことが認められるから,被告の見解の前提とされた上記事実は,その重要な部分について真実であるといえる。 また,上記事実が「振込詐欺罪」に当たる可能性があるとの被告による法的見解の表明は,その表現の内容や上記事実関係に照らして,人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものではないというべきである。 よって,本件文書1の表現は,名誉毀損の違法性を欠くものと認められる。 (イ) この点に関して原告らは,必要もなく原告らを犯罪者扱いする記載は誹謗中傷であり,意見ないし論評の域を逸脱していると主張する。 しかし,公訴提起に至っていない犯罪行為に関する事実は,一般に,公共の利害に関するものとされていること(刑法230条の2第2項参照)に鑑みれば,犯罪に関する事実摘示や見解の表明が,一般的に誹謗中傷に当たり,違法であるということはできない。しかも,本件文書1の具体的な記載内容は,原告らの行為が犯罪に当たると断定するものではなく,犯罪かどうか等を弁護士と相談しているというものにすぎないから,このような表現が,原告らに対する誹謗中傷であって,意見ないし論評の域を逸脱しているということはできない。 よって,原告らの上記主張は採用することができない。 ウ本件文書2の真実性等につき(ア) 前記(2)イのとおり,本件文書2は,被告の取締役を辞任した原告Aを含む者らが,原告会社を名乗って,被告の財産を取得し,事務所を占有しており,それによって被告が数千万円の損害を被っているとの事実を摘示するとともに,これを前提として,その財産取得や事務所の占有が不法なものであるとの被告の法的な見解を表明するものである。 そして,前記1(4)及び(5)によれば,原告Aは,平成24年6月24日に被告の代表取締役を退任し, ,その財産取得や事務所の占有が不法なものであるとの被告の法的な見解を表明するものである。 そして,前記1(4)及び(5)によれば,原告Aは,平成24年6月24日に被告の代表取締役を退任し,さらに取締役を辞任したが,それに先だって,被告が事務所及び倉庫として使用していた賃貸物件の賃貸借契約を解約し,恵比寿南の教室及び事務所が入る賃貸物件の賃借人の地位を,敷金返還請求権も含めて振興協會に譲渡し,被告の商品である絵本や教育教材を原告会社に約1648万円で売却して,その代金を含む1650万円を被告の銀行預金口座から自己の銀行預金口座に送金し,被 告が使用していた教材・教具,事務用品,パソコン等の全ての備品を原告会社に売却し,また,上記辞任後は,原告会社が,恵比寿南の教室及び事務所の賃貸物件を上記備品等とともに占有していたこと,それによって,被告は,少なくとも上記代金相当額の財産と顧客名簿等の重要なデータを失った上,事務所及び教室の賃貸物件の使用権限を失い,その資産がほぼ皆無となったこと,さらに,被告がその事業継続のために約1500万円という多額の借入れ・支援を受けざるを得なくなったことが認められる。そうすると,被告の見解の前提とされている上記各事実は,その重要な部分について真実であると認めるのが相当である。 また,原告らによる財産取得及び事務所占有が不法なものであるとの被告による法的見解の表明は,その表現の内容及び上記事実関係に照らして,人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものであるということはできない。 よって,本件文書2の表現は,名誉毀損の違法性を欠くものと認められる。 (イ) この点に関して原告らは,原告会社は振興協會から能力開発教室の経営委託を受けて,商品や備品を含む教室の引渡しを 。 よって,本件文書2の表現は,名誉毀損の違法性を欠くものと認められる。 (イ) この点に関して原告らは,原告会社は振興協會から能力開発教室の経営委託を受けて,商品や備品を含む教室の引渡しを受けたから,「不法に占拠横領」した事実はないと主張する。 しかし,そもそも,原告らによる上記の財産や事務所の取得・占有が不法であるか否かは,法的な評価に属する問題であるから,それ自体について真実であることの証明が必要とされることはない。 また,前記のとおり,原告Aは,被告の代表者を辞するに当たって,被告の全財産を処分し,被告の資産をほぼ皆無にしたところ,これについて,原告Aは,振興協會から委託契約を解約されたために被告では事業ができなくなると考えて,賃貸借契約を解消し,その事業用資産を処分した上,被告の預金を貸付金の返済として自己の口座に送金したと陳 述ないし供述するが,前記2のとおり,被告が,振興協會からの経営委託に基づいてその事業を行っていたとの事実はそもそも認められず,また,仮にそのような経営委託があったとしても,振興協會からの経営委託の終了によって,被告の事業が振興協會ないし原告会社に移転するわけではないから,いずれにせよ,被告がその事業を継続することが不可能であったということはできない。しかも,原告らの主張を前提としても,能力開発教室の事業は,もともと被告が振興協會に経営委託したものであり,それをさらに振興協會から被告に経営委託していたというのであるから,仮に振興協會から被告への委託が終了するのであれば,被告としては,振興協會への委託を終了させることも当然考慮し得たはずであるが,原告Aが,このような被告の事業を継続するための方策を検討した形跡は見当たらない。 そうすると,原告Aが,被告の事業継続が十 としては,振興協會への委託を終了させることも当然考慮し得たはずであるが,原告Aが,このような被告の事業を継続するための方策を検討した形跡は見当たらない。 そうすると,原告Aが,被告の事業継続が十分可能であるにもかかわらず,被告の事業を継続しないことを前提に,被告の全財産を処分し,しかも,それについて何ら説明することなく被告の代表取締役を辞任し,これによってその後の被告の事業継続に著しい支障をもたらしたことは,被告の代表取締役としての善管注意義務(会社法330条・民法644条)及び忠実義務(会社法355条)に照らして妥当なものではなかったといわざるを得ない。 したがって,原告Aの上記行為が法律上違法となるか否かは措くとしても,本件文書2において,被告の意見ないし論評として用いられた「不法に占拠横領」との表現は,当時の事実関係を踏まえると十分に合理性を有する評価であったと認めるのが相当である。 よって,被告が「不法に占拠横領」と表現したことについては,違法性を認めることはできない。 エ本件文書3及び4の真実性等につき (ア) 前記(2)ウのとおり,本件文書3及び4は,判決において,Hらの著作権に係る絵本を第三者が無断で販売・配本することが著作権法に反することが確認され,原告Aが被告の代表者として行った行為がその著作権法違反に当たることが認められたこと,その後原告Aらが裁判所の判断に基づく強制執行を免れる目的の行為を行ったとの事実を前提として,原告Aらの行為が強制執行妨害に当たると判断するとのH及び被告の法的な見解を表明したものであり,また,Hらが,その判断に従って,平成24年9月3日に原告Aらを刑事告発したとの事実を摘示するものである。 そして,前記1(3),(4)ウ及び(6)によれば,絵本の著作者であるHら したものであり,また,Hらが,その判断に従って,平成24年9月3日に原告Aらを刑事告発したとの事実を摘示するものである。 そして,前記1(3),(4)ウ及び(6)によれば,絵本の著作者であるHらが,当時原告Aが代表者を務めていた被告に対し,Hら著作者に無断で絵本を増刷し販売しているとして,その印刷,出版等の差止め等を求めた仮処分命令申立事件において,裁判所が,被告に対して絵本の印刷,出版,販売及び頒布の差止めを命じる別件出版禁止等仮処分決定を出し,また,その本案である別件出版差止等請求事件においても,裁判所が,同様の差止めと損害賠償請求を認容したこと,その後,裁判所の決定及び判決に反して,原告Aが被告の代表者として,被告の商品である絵本等を原告会社に売却したこと,Hら著作者が,平成24年9月3日付け,原告会社代表者及びCの3名を強制執行妨害罪(刑法96条の2)で告発する旨の申出をしたことが認められるから,原告Aらの行為が強制執行妨害に当たると判断するとのHらの法的な見解の前提となった事実及びHらが原告Aらを刑事告発した事実は,いずれもその重要な部分において真実であると認めることができる。 また,原告Aらの行為が強制執行妨害に当たると判断するとのH及び被告の法的な見解の表明は,その表現の内容や上記事実関係に照らして, それが人身攻撃に及ぶようなものであって,意見ないし論評としての域を逸脱したものであるということはできない。 よって,本件文書3及び4の表現は,名誉毀損の違法性を欠くものと認められる。 (イ) この点に関して原告Aは,原告会社に売却された絵本等の中には,別件出版禁止等仮処分決定で差止めの対象となった絵本は含まれていないと主張する。 しかし,被告が所有していた絵本等の商品を原告会社に売却する際に作 て原告Aは,原告会社に売却された絵本等の中には,別件出版禁止等仮処分決定で差止めの対象となった絵本は含まれていないと主張する。 しかし,被告が所有していた絵本等の商品を原告会社に売却する際に作成された売買基本契約書には,売買対象となる商品の一部が販売禁止の差止訴訟の対象となっており,そのことを前提に売買代金額を算出したことが明記されていること(第2条),同契約締結の当時,その当事者である被告の代表者であった原告A及び原告会社代表者の双方が,上記認識を有していたこと,原告会社代表者も,その陳述書(3頁)には,絵本が出版差止めの対象となっていたと記載していること,上記売買契約の商品一覧表には,別件出版差止等請求事件の判決で販売等の差止めの対象となった絵本と同じ名称の絵本が多数含まれていることからすれば,上記売買契約の対象となった絵本には,別件出版差止等請求事件の判決及びその保全事件の別件出版禁止等仮処分決定において販売,頒布等が禁止された絵本が含まれていたことは明らかというべきである。 なお,原告会社代表者は,その尋問において,上記売買契約の中には差止対象の絵本が入っていなかったと供述しているところ,証拠(略)によれば,別件出版差止等請求事件の仮執行宣言付き判決に基づく強制執行の際に,Cが,出版等が禁止された絵本は雨に濡れたので廃棄した旨の説明をしていたとの事実が認められ,これは,原告会社代表者の上記供述に沿うものといえる。しかし,Cの上記説明は,それ自体が合理的な内容とは認め難く,その裏付けもない上,上記売買契約書の記載と 齟齬することが明らかであって採用できず,また,原告会社代表者の上記供述も,自ら作成した陳述書の記載と相反しており,そのように供述が変遷した理由も合理的なものとは認められないから,到底採用するこ 齟齬することが明らかであって採用できず,また,原告会社代表者の上記供述も,自ら作成した陳述書の記載と相反しており,そのように供述が変遷した理由も合理的なものとは認められないから,到底採用することができない。 そうすると,上記売買契約締結の当時の被告代表者であった原告Aと原告会社代表者は,いずれも当該商品の売却が上記仮処分決定及び判決の差止命令に反することを知りながら,あえてこれを売却したものと認めることができるところ,かかる行為は,その売買代金支払の有無,その金額の相当性,又は,それが法律上刑法96条の2の強制執行妨害罪の構成要件に該当するか否かにかかわらず,上記決定及び判決における裁判所の命令に反し,その結果,差止命令の効力を損ない,その執行を事実上不可能にするものであるから,これをもって,「裁判所の判定に基づく強制執行を免れる目的の行為」というに差し支えないと認めるのが相当である。 よって,前記(ア)で認定判示したとおり,原告Aらが裁判所の判断に基づく強制執行を免れる目的の行為を行ったとの,本件文書3及び4の摘示は,その重要な部分において真実であると認めるのが相当である。なお附言すれば,上記売買契約書の文言や,同契約の当事者自身がその文言どおり差止対象の絵本を売買しているとの認識を有していたこと等からすれば,Hら著作者及び被告が,原告A及び原告会社代表者が差止対象の絵本を故意に売買したと信じたことには相当の理由があるということができるから,仮に差止対象の絵本が上記売買契約の対象に含まれていなかったとしても,そのように信じた被告には,名誉毀損の故意及び過失がないというべきである。 (ウ) また,原告Aは,絵本を適正対価以上の金額で原告会社に売却し,原告会社は実際に代金を支払ったのであるから,それが強制執行妨害に当 は,名誉毀損の故意及び過失がないというべきである。 (ウ) また,原告Aは,絵本を適正対価以上の金額で原告会社に売却し,原告会社は実際に代金を支払ったのであるから,それが強制執行妨害に当 たることはないと主張する。 しかし,原告Aらが別件出版差止等仮処分決定及び別件出版差止等請求事件の判決の差止命令に反することを知りながら,絵本を売却したことが,「裁判所の判定に基づく強制執行を免れる目的の行為」といい得ることは上記のとおりであって,その売却に係る代金が支払われたか否かは,その結論を左右するものではない。 (エ) このほか,原告Aは,Hらの告発状が受理されたのは平成25年3月14日であるから,本件文書3及び4が送付された平成24年9月当時は刑事告発されていなかったと主張する。 しかし,Hらが平において,原告A及び原告会社代表者らを強制執行妨害罪で告発する旨の申出をしたことは,前記(ア)のとおりであるから,同申出の時点で告発状が正式に受理されなかったとしても,原告A及び原告会社代表者らを刑事告発したとの事実は,その重要な部分において真実であるというのが相当である。 (4) 小括以上によれば,本件文書1ないし4の表現は,いずれも原告Aの社会的評価を低下させるものであるとはいい得るが,被告が本件文書1ないし4を送付したことは,いずれも名誉毀損についての違法性又は故意・過失を欠くものと認められるのであるから,被告の上記行為は,原告Aに対する名誉毀損の不法行為を構成しないというべきである。 よって,名誉毀損の不法行為に係る原告Aの請求は理由がない。 4 争点(2)ア(原告会社関係-本件文書1及び2による名誉毀損の不法行為の成否)について(1) 社会的評価の低下の有無(争点(2)ア(ア))について 原告Aの請求は理由がない。 4 争点(2)ア(原告会社関係-本件文書1及び2による名誉毀損の不法行為の成否)について(1) 社会的評価の低下の有無(争点(2)ア(ア))について前記3(2)ア及びイのとおり,本件文書1及び2の表現は,いずれも原告A 及び原告会社の社会的評価を低下させるものであると認められる。 (2) 違法性及び故意・過失の有無(争点(2)ア(イ))について前記3(3)アないしウのとおり,被告が本件文書1及び2を送付したことは,いずれも名誉毀損についての違法性を欠くものと認められる。 (3) 小括以上によれば,被告が本件文書1及び2を送付した行為は,原告会社に対する名誉毀損の不法行為を構成しないというべきである。 よって,名誉毀損の不法行為に係る原告会社の請求は理由がない。 5 争点(2)イ(原告会社関係-本件文書1及び2の送付が不競法2条1項14号の不正競争に当たるか否か)原告会社は,被告が本件文書1及び2を幼稚園や保育園に送付したことが,競争関係にある原告会社の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知・流布に当たり,これが不競法2条1項14号の不正競争に該当すると主張する。 しかし,本件文書1及び2に記載された事実が虚偽であることは,何ら具体的に立証されておらず,かえって,前記3(3)イ及びウのとおり,本件文書1及び2に記載された事実の重要な部分は,いずれも真実であると認められる。 よって,被告による本件文書1及び2の送付が不競法2条1項14号の不正競争に該当するとの原告会社の主張は採用することができない。 6 争点(2)ウ(原告会社関係-本件文書5による顧客奪取の不法行為の成否)について原告会社は,被告による恵比寿南の教室の運営が振興協會 するとの原告会社の主張は採用することができない。 6 争点(2)ウ(原告会社関係-本件文書5による顧客奪取の不法行為の成否)について原告会社は,被告による恵比寿南の教室の運営が振興協會からの経営委託によるものにすぎず,その経営委託が解除されて,原告会社が振興協會から同教室の経営委託を受けたとの事実を前提に,被告が,恵比寿南の教室の生徒及び保護者に対して,恵比寿南の教室が被告新教室に移転したと記載した本件文書5を送付したことが,原告会社の顧客を奪取する不法行為であると主張する。 しかし,前記2のとおり,被告による恵比寿南の教室の運営が振興協會から の経営委託によるものであったとの,原告会社の主張の前提となる事実は,認めることができない。しかも,前記2のとおり,振興協會からの経営委託の有無,その解除の有無又は振興協會から原告会社に対する新たな経営委託の有無にかかわらず,恵比寿南の教室の生徒の保護者らとの契約関係についての被告の地位が,原告会社に移転したということはできない。 そうすると,被告が,恵比寿南の教室の所在した賃貸物件を使用できなくなったために,別の場所で被告新教室を運営するようになったことについて,上記契約関係にある保護者らに対して,「教室の移転」との表現を用いて通知をしたからといって,それが,原告会社の顧客を奪取したものと評価できないことは明らかである。 よって,顧客奪取の不法行為に係る原告会社の主張は,その前提を欠くものであって,採用することはできない。 7 結論以上によれば,その余の点を判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官東海林保 主文 余の点を判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 理由 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 東海林保 裁判官 今井弘晃 裁判官 足立拓人

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