昭和47(う)3111 建造物侵入被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和49年2月27日 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      原判決を破棄する。      被告人両名は無罪。          理    由  本件控訴の趣意は、弁護人中島通子及び同永野貫太郎が連名で作成した控訴趣意 書(ただし、両弁護

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判決文本文2,966 文字)

主文 原判決を破棄する。 被告人両名は無罪。 理由 本件控訴の趣意は、弁護人中島通子及び同永野貫太郎が連名で作成した控訴趣意書(ただし、両弁護人は、第一回公判調書に記載のとおり訂正補充した。)並びに被告人両名が連名で作成した控訴趣意補充書に記載されたとおりであり、これらに対する答弁は、東京高等検察庁検察官検事安西温が作成した答弁書に記載されたとおりであるから、これらを引用する。これら所論にかんがみ、控訴趣意に対し、当裁判所は、つぎのとおり判断する。 弁護人らの控訴趣意第二点の一について。 所論は、被告人らが侵入したとされる土地はA大学B研究所の建物を囲繞する、客観的に同研究所の構内と見られる土地ではないのであるから、被告人両名が同研究所構内に侵入した旨認定判示し、被告人らに対し建造物侵入罪の成立を認めた原判決には、判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認及び法令の解釈・適用の誤り等があるというのである。 そこで、原審記録を精査し、当審における事実取調の結果を合わせて考察するに、原判決挙示の各証拠、原審第八回公判調書中証人C、同第九回公判調書中証人Dの各供述記載、被告人E、同Fの当公判廷における各供述及び当裁判所受命裁判官の検証調書並びに裁判所書記官作成の写真撮影報告書によれば、A大学B研究所及びその附近の状況は、およそつぎのとおりである。即ち、A大学B研究所(以上地震研という)の建物は、A大学構内のほぼ西北端に位置し、その西側及び北側にはA大学の敷地を囲むコンクリート塀があり、右建物から見て北東及び南西に当たる部分にはそれぞれ通用門が設けられているが、これらには地震研の門であることはもとより何らの表示もなく、右建物の南側には約二五メートル離れて金網で囲まれたテニスコートが作ら ら見て北東及び南西に当たる部分にはそれぞれ通用門が設けられているが、これらには地震研の門であることはもとより何らの表示もなく、右建物の南側には約二五メートル離れて金網で囲まれたテニスコートが作られ、さらにその南側にはサツカーグラウンドを挾んでG研究所の建物が、また東側には野球場がそれぞれ存在している。そして、地震研の建物の南側、テニスコートを囲む金網の北側の部分及びその延長線に至る約二五メートル幅の土地(以下本件土地という。)は、従来永く前記各通用門からA大学構内の各建物やグラウンドヘの通路及び大学職員、学生、さらには外来者の駐車場として利用されてきており、地震研の建物の管理権者が地震研所長であつたのに対し、本件土地を含む右建物周辺の土地の管理権者はA大学総長であつた。而して、原判決認定のような経緯により、昭和四五年一一月二一日付で地震研所長がA大学総長から右建物周辺の土地の管理権の委任を受け、同月二九日地震研所長事務取扱Hにおいて右権限に基づき原判示のとおり金網柵を構築し、地震研の建物の周辺の通路を遮断し、地震研の職員以外の者の本件土地への立入りを禁止した。 <要旨>以上の事実経過に基づき、本件土地の性質について考えてみるに、一般に建物の敷地であつて門塀を設け、</要旨>外部との交通を制限し、守衛、警備員等を置き、外来者がみだりに出入することを禁止した場所は、その建物に附属する囲繞地として刑法一三〇条にいう人の看守する建造物に当たるのであるが、本件土地は、金網柵構築前においては、前記のとおり、外界との間の塀やテニスコートの金網等で多くの部分を取り囲まれた形になつているものの、A大学構内全体におけるその客観的位置関係、本件土地とその周辺の地形地物の状況、外界との関係、本件土地の利用及び管理の状況等を洞察すれば、到底地震研の建物の固有 分を取り囲まれた形になつているものの、A大学構内全体におけるその客観的位置関係、本件土地とその周辺の地形地物の状況、外界との関係、本件土地の利用及び管理の状況等を洞察すれば、到底地震研の建物の固有の敷地とは認め難く、むしろ、広く同大学の関係者一般に利用されていた同大学の構内の一部であつたと見るべきものであり、同大学構内の他の部分と特に異つた性質のものであつたとは認め難い。そして、本件当時にあつては、金網柵が構築されていたとはいえ、右金網柵は、通常、建物の敷地と外部とを区劃するに用いられる門塀等とは異り、性質上一時的に本件土地への立入を阻止するためのものに過ぎないと考えられるのであるから、金網柵の設置の当不当は別として、右金網柵が構築されたからといつて、それまでの本件土地の前記性質が変わり、地震研の建物の固有の敷地になつたとまでは認めることはできず、したがつて、本件土地を地震研の建物に附属する囲繞地と見ることはできない。原判決は、本件土地が地震研の建物を囲繞する土地であり、A大学の敷地の一部であるとともに、客観的には地震研の構内とみられる土地である旨説示し、同所への立入りを建造物侵入罪に問擬しているが、この判断は首肯し難いといわなければならない。もつとも、本件土地はA大学の構内の一部であるから、この意味において人の看守する建造物に当たると解する余地があると考えられるのであるが、被告人らが、A大学の学生として、同大学の職員及び他の学生と同様に、特定の範囲の者に専ら利用が許されている施設を除き、大学構内への立入りを許されていた者であつて、本件当日も、適法に大学構内に入つた者であるから、本件土地が、前記のとおり一時的な立入禁止の措置がとられていたとはいえ、これにより大学構内の他の部分と性質を変ずるに至つたものとは認められない以上、被告人らが 、適法に大学構内に入つた者であるから、本件土地が、前記のとおり一時的な立入禁止の措置がとられていたとはいえ、これにより大学構内の他の部分と性質を変ずるに至つたものとは認められない以上、被告人らが大学構内から同じく大学構内の一部である本件土地に立入つたとしても、直ちに建造物侵入罪を構成すると見ることはできない。 以上のとおりであるから、被告人らの所為につき建造物侵入罪の成立を認めた原判決は、事実を誤認したか法令の解釈・適用を誤つたかのいずれかであつて、この誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、原判決は破棄を免れない。この点において論旨は理由がある。 よつて、刑事訴訟法三九七条一項、三八〇条、三八二条により原判決を破棄し、同法四〇〇条但書により、さらにつぎのとおり判決する。 本件公訴事実は、「被告人らは、ほか百数十名の学生らとともに、昭和四五年一一月三〇日午後一時三八分ころ、正門を閉鎖し通路を金網柵で遮断したうえ、部外者の立入りを禁止していた東京都文京区ab丁目c番d号所在のA大学B研究所(同所所長事務取扱H管理)構内へ、同所南側通路の金網柵(高さ二・二四メートル、幅一六・三メートル)を引き倒して乱入し、もつて人の看守する建造物に故なく侵入したものである。」というのであるが、被告人らの所為は前記のとおり罪とならないから、刑事訴訟法四〇四条、三三六条前段により、被告人両名に対し無罪の言渡をすることとし、主文のとおり判決する。 (裁判長判事平野太郎判事寺内冬樹判事和田啓一)

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