主文 本件訴えのうち,右京税務署長が原告らに対しいずれも平成16年6月21日付けでした相続税の各更正及び無申告加算税の各賦課決定の取消しを求める部分を却下する。 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求 右京税務署長が原告Aに対して平成16年6月21日付けでした相続税の更正のうち課税価格1億3967万8000円,納付すべき税額2034万1089円を超える部分及び無申告加算税賦課決定を取り消す。 右京税務署長が原告Bに対して平成16年6月21日付けでした相続税の更正のうち課税価格5842万円,納付すべき税額850万7460円を超える部分及び無申告加算税賦課決定を取り消す。 右京税務署長が原告Cに対して平成16年6月21日付けでした相続税の更正のうち課税価格5842万円,納付すべき税額850万7460円を超える部分及び無申告加算税賦課決定を取り消す。 右京税務署長が原告Aに対して平成17年6月29日付けでした前記1記載の相続税について更正すべき理由がない旨の通知処分を取り消す。 右京税務署長が原告Bに対して平成17年6月29日付けでした前記2記載の相続税について更正すべき理由がない旨の通知処分を取り消す。 右京税務署長が原告Cに対して平成17年6月29日付けでした前記3記載の相続税について更正すべき理由がない旨の通知処分を取り消す。 国税不服審判所長が原告らに対して平成18年6月16日付けでした前記4ないし6記載の各処分に対する審査請求を棄却する旨の裁決を取り消す。 第2事案の概要本件は,被相続人の財産に係る相続税につき期限後申告を行ったところ,右京税務署長から増額更正及び無申告加算税賦課決定を受け,さらに,他の相続人との間に する旨の裁決を取り消す。 第2事案の概要本件は,被相続人の財産に係る相続税につき期限後申告を行ったところ,右京税務署長から増額更正及び無申告加算税賦課決定を受け,さらに,他の相続人との間に訴訟上の和解が成立したことに基づく後発的更正の請求についても棄却する旨の通知を受けた原告らが,上記各更正及び賦課決定には相続財産の範囲等に誤りがあり,また,上記訴訟上の和解は相続税に係る課税標準等及び税額等の計算の基礎となった事実の変更に当たるなどとして,上記各更正の一部及び各賦課決定の全部,更正の請求に理由がない旨の通知の全部並びに上記通知の取消しを求める審査請求を棄却した国税不服審判所長の裁決の各取消しを求めた事案である。なお,原告ら補助参加人は,上記訴訟上の和解において,原告らに対する上記各課税処分が維持された場合に一定の限度でその税額の負担をする旨約した者である。 前提となる事実等(当事者間に争いがないか,掲記の書証等によって容易に認定することができる。なお,特に断りがない限り書証番号は枝番を含む。)(1)法令の定めア相続税法は,相続等により財産を取得した個人で当該財産を取得した時において同法の施行地に住所を有するものは,相続税を納める義務があるとし(1条の3第1号),この場合においては,その者が当該相続等により取得した財産の全部に対し相続税が課され(2条1項),当該相続等により取得した財産の価額の合計額をもって相続税の課税価格とする旨規定する(11条の2第1項)。 イ相続税法は,相続により取得した財産に係る相続税について申告書を提出する場合又は当該財産に係る相続税について更正若しくは決定をする場合において,当該相続により取得した財産の全部又は一部が共同相続人によってまだ分割されていないときは,その分割されていない財産につ 出する場合又は当該財産に係る相続税について更正若しくは決定をする場合において,当該相続により取得した財産の全部又は一部が共同相続人によってまだ分割されていないときは,その分割されていない財産については,各共同相続人が民法(904条の2(寄与分)を除く。)の規定によ る相続分の割合に従って当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算するものとするが,その後において当該財産の分割があり,当該共同相続人が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分の割合に従って計算された課税価格と異なることとなった場合においては,当該分割により取得した財産に係る課税価格を基礎として,納税義務者において申告書を提出し,若しくは相続税法32条の更正の請求をし,又は税務署長において更正若しくは決定をすることを妨げない旨規定する(55条)。 そして,相続税法32条1号は,相続税について申告書を提出した者又は決定を受けた者は,同法55条の規定により分割されていない財産について民法(904条の2を除く。)の規定による相続分の割合に従って課税価格が計算されていた場合において,その後当該財産の分割が行われ,共同相続人が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分の割合に従って計算された課税価格と異なることとなったこと等により当該申告又は決定に係る課税価格及び相続税額が過大となったときは,当該事由が生じた日の翌日から4月以内に限り,納税地の所轄税務署長に対し,その課税価格及び相続税額につき国税通則法(以下「通則法」という。)23条1項の規定による更正の請求をすることができる旨規定する。 ウ通則法は,納税申告書を提出した者は,当該申告書に係る国税の法定申告期限から1年を経過したため,同法23条1項に基づいて当該申告書の提出により納付すべき税額(当該税 することができる旨規定する。 ウ通則法は,納税申告書を提出した者は,当該申告書に係る国税の法定申告期限から1年を経過したため,同法23条1項に基づいて当該申告書の提出により納付すべき税額(当該税額に関し更正があった場合には,当該更正後の税額)が過大であるとしてこれを更正すべき旨の請求をすることができなくなった後においても,その申告に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により,その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したときは,その確定した日の翌日から起算して2月以内に,その該当することを理由として同項の規定による更 正の請求をすることができるとする(23条2項1号)。 エ通則法は,国税に関する法律に基づく処分で不服申立てをすることができるものの取消しを求める訴えのうち,審査請求をすることができる処分については,原則として審査請求についての裁決を経た後でなければ提起することができないとする(115条1項本文)。 (2)本件の経緯ア原告らは,いずれも,平成▲年▲月▲日に死亡した亡D(以下「D」という。)の共同相続人であり,その相続に関連する人的関係は別紙系図のとおりであって,Dの死亡に先立つ平成▲年▲月▲日に死亡したその夫である亡E(以下「E」という。)の相続財産に対し,Dは4分の3の割合の法定相続分を有し,Dの相続財産に対し,原告らは各3分の1の割合の法定相続分を有していた。なお,Dの相続(以下「本件相続」という。)に係る相続税(本件相続に伴い原告らが納税義務を負うことになった相続税を以下「本件各相続税」と総称する。)の申告期限は平成12年11月14日であった。【弁論の全趣旨】イ原告らは,概要,「訴外F,訴外G,訴外H 本件相続に伴い原告らが納税義務を負うことになった相続税を以下「本件各相続税」と総称する。)の申告期限は平成12年11月14日であった。【弁論の全趣旨】イ原告らは,概要,「訴外F,訴外G,訴外H,訴外I及び訴外J(以下「別件被告ら」と総称する。)は,Dの生前に同人に無断でその財産(その内訳は別紙物件目録1記載のとおりであり,D名義の預貯金及び株式のほか,DがEから相続したE名義の預貯金,株式及び土地(以下「本件土地」という。)の持分の各4分の3が含まれる。もっとも,Dの遺産はこれだけに限らない。)の一部を領得していたことから,Dを相続した原告らは,別件被告らに対する不法行為に基づく損害賠償請求権及び共有権に基づく妨害排除請求権を有する」旨主張し,別件被告らに対する訴訟を京都地方裁判所に提起した(平成▲年(ワ)第▲号相続財産回復請求事件,以下「別件京都訴訟」という。)。これに対し,別件被告らは,①領得した財産はDの生前に同人から贈与された,②訴外HはDの生前に同人 の養子となっていた,と抗弁するなどして争ったが,京都地方裁判所は,平成15年2月3日,原告らはDの弟であるKことLを代襲して相続分各3分の1の割合でDを相続したと認定して,原告らの上記主張を認めた上(ただし,別件被告らが領得したとするE名義の預貯金の合計額を,原告ら主張に係る計881万2299円から別紙物件目録1記載のとおり別件被告ら主張に係る計728万4936円に減じた。),別件被告らの上記抗弁をいずれも排斥して,別件被告らに対し,原告らに対する金員の支払,株券の交付,土地の持分権移転登記手続等を命ずる判決をした(以下「別件京都訴訟判決」という。)。別件被告らは控訴したが,大阪高等裁判所は,同年8月22日,原告らの法定相続割合に係る別件京都訴訟判決の上記判断を 土地の持分権移転登記手続等を命ずる判決をした(以下「別件京都訴訟判決」という。)。別件被告らは控訴したが,大阪高等裁判所は,同年8月22日,原告らの法定相続割合に係る別件京都訴訟判決の上記判断を維持する旨の判決をし,同判決は同年9月9日ころ確定した。 なお,Dは,生前,原告A及び訴外Hそれぞれとの間で養子縁組の届出をしていたところ,その死後に上記各養子縁組の無効確認を求める訴訟が提起されていたが,同年4月11日ころ,いずれの養子縁組についても無効であることを確認する旨の判決が確定した。 【甲1,6,9,14,弁論の全趣旨】ウ原告らは,平成16年4月9日,訴外J及び訴外Fが,E及びD名義の株式に係る平成14年6月から平成15年12月までの配当金及び本件土地に係る平成14年5月から平成16年3月までの賃料を不当に利得していると主張して,大阪地方裁判所にその支払を求める訴訟を提起した(平成▲年(ワ)第▲号賃料及び株式配当金等請求事件,以下「別件大阪訴訟」という。)。【甲3,6,弁論の全趣旨】エ原告らは,平成16年6月8日,本件各相続税について,別紙物件目録1記載2(2)の預金計1億0674万6199円に法定相続分4分の3を乗じた計8005万9650円及び本件土地の持分4分の3に,別紙物件目録2記載の財産を加えたもののみがそれまでに原告らが現実に取得し得た 本件相続に係る相続財産であるとして,取得財産の価格計1億7510万8583円,納付すべき税額計1868万0200円などとする期限後申告(その詳細は別紙課税の経緯の「期限後申告」欄に記載のとおりであり,以下「本件各期限後申告」という。)をした。【甲8,弁論の全趣旨】オ右京税務署長は,平成16年6月21日,本件各期限後申告は,Dの相続財産の一部を申告したにすぎないとして,原告らに対 おりであり,以下「本件各期限後申告」という。)をした。【甲8,弁論の全趣旨】オ右京税務署長は,平成16年6月21日,本件各期限後申告は,Dの相続財産の一部を申告したにすぎないとして,原告らに対し,取得財産の価格計3億1211万1386円,納付すべき税額計6468万1800円などとする各更正処分及び無申告加算税の各賦課決定処分(その詳細は別紙課税の経緯の「更正処分」欄に記載のとおりであり,以下両者を併せて「本件各更正処分等」と総称する。)をした。【甲4】カ原告らは,平成16年8月17日,本件各期限後申告の内容は正当であるとして,本件各更正処分等について,右京税務署長に対する異議申立てをした。 これに対し,右京税務署長は,同年11月12日,原告らの異議申立てをいずれも棄却する旨の決定(その詳細は別紙課税の経緯の「異議決定」欄に記載のとおりであり,以下「本件異議決定」という。なお,納付すべき税額等が本件更正処分等よりも増加しているが,これは理由中の判断にすぎない。)をした。 【甲9,乙5,弁論の全趣旨】キ原告らは,平成16年12月9日,本件各期限後申告の内容は正当であるとして,本件各更正処分等について,国税不服審判所長に対する審査請求をした(以下「本件第一審査請求」という。)。【乙6】ク原告らと別件被告ら(ただし,訴外G,訴外H及び訴外Iは利害関係人)とは,平成17年1月31日午後5時の別件大阪訴訟弁論準備手続期日において,以下の内容を骨子とする和解(以下「別件大阪訴訟和解」という。)を成立させた。 ①原告らと別件被告らとは,長年の争訟による精神的苦痛,物質的消耗を終焉させるため本和解に及び,別件京都訴訟によって確定されたEの相続財産について,原告らがそのうちの7103万6000円を取得するものと変更する。 ②別件被 年の争訟による精神的苦痛,物質的消耗を終焉させるため本和解に及び,別件京都訴訟によって確定されたEの相続財産について,原告らがそのうちの7103万6000円を取得するものと変更する。 ②別件被告らは,原告らに対し,各自連帯して解決金4000万円の支払義務があることを認め,本日これを支払い,原告らはこれを受領した。 ③別件被告らは,原告らに対し,別紙株券目録記載の株券が原告らの所有であることを確認し,本日これを引渡し,原告らはこれを受領した。 ④原告らは,訴外F及び訴外Jに対し,本件土地が同訴外人らの所有であることを確認し,原告らの同訴外人らへの持分権移転登記手続に協力する。 ⑤別件京都訴訟判決に基づいてされている本件各更正処分等が,「原告らが適正公正な申立てをしたことに基づいても」上記①の変更に適応した税額3865万8000円に更正されなかった場合には,「その更正決定による税額と3865万8000円との差額」については,1524万3600円を限度として,補助参加人(別件大阪訴訟における別件被告ら代理人)がその支払の責に任じる。 ⑥原告らと別件被告らとは,E及びDの相続に関し,別件京都訴訟判決の存在にもかかわらず,本和解条項に定める以外,相互に債権債務が存在しないことを確認する。 【甲3】ケ原告Aは平成17年3月1日,その余の原告は同月22日,本件第一審査請求をいずれも取り下げた(その効力については争いがある。)。 コ原告らは,平成17年3月29日,右京税務署長に対し,本件各相続税に係る更正の請求(その詳細は別紙課税の経緯の「更正の請求」欄に記載のとおりであり,以下「本件各更正の請求」という。)をした。 サ右京税務署長は,平成17年6月29日,原告らに対し,概要,①別件大阪訴訟和解は賃料及び株式配当金の不当利得による 請求」欄に記載のとおりであり,以下「本件各更正の請求」という。)をした。 サ右京税務署長は,平成17年6月29日,原告らに対し,概要,①別件大阪訴訟和解は賃料及び株式配当金の不当利得による返還請求訴訟に係るものであり,通則法23条2項1号にいう「計算の基礎となった事実に関する訴え」には当たらないこと,②京都市α×-74の土地及び葬式費用に係る請求は,通則法23条2項1号の理由には当たらないこと,を理由として付記した上,更正の請求に理由がない旨の通知(以下「本件各通知処分」という。)をした。なお,上記理由中には,本件各通知処分に対して異議申立てをすることができる旨は記載されていなかった。【甲5,6】シ原告らは,平成17年8月25日,本件各通知処分を不服として,異議申立てを経ることなく国税不服審判所長に対する審査請求をしたが(通則法75条4項2号),同所長は,平成18年6月6日,上記審査請求をいずれも棄却する旨の裁決(以下「本件裁決」という。)をした。【甲6】ス原告らは,平成18年7月26日,本件各更正処分等,本件各通知処分及び本件裁決に不服があるとして,当裁判所に対し,本件訴訟を提起した。 【当裁判所に顕著な事実】 争点 (1)本件各更正処分等の取消しを求める訴えが適法か否か(本案前の争点)。 (2)本件各更正処分等が適法であるか否か(仮定的争点)。 (3)別件大阪訴訟和解が通則法23条2項1号に規定する「判決と同一の効力を有する和解」に該当するか否か。 (4)本件各通知処分が適法であるか否か。 (5)本件裁決が適法であるか否か。 当事者の主張(1)争点(1)(本件各更正処分等の取消しを求める訴えの適法性)について(原告ら) 原告らによる本件第一審査請求の取下げは,以下のとおり,いずれも要素の錯誤に基 るか否か。 当事者の主張(1)争点(1)(本件各更正処分等の取消しを求める訴えの適法性)について(原告ら) 原告らによる本件第一審査請求の取下げは,以下のとおり,いずれも要素の錯誤に基づくものであって無効であるから,本件各更正処分等の取消しを求める訴えの妨げとなることはない。 すなわち,原告Aは,平成17年2月中旬,大阪国税不服審判所京都支所の担当官(以下「審判所担当官」という。)より,別件大阪訴訟和解が成立した以上,本件各更正の請求をすれば当然に本件各更正処分等は全部取り消され,別件大阪訴訟和解の内容に合致した新たな更正がされるところ,本件第一審査請求は別件大阪訴訟和解とは関連がないので取り下げるべきである旨の説明を受け,さらに,同年3月1日,審査請求取下書用の印刷済み用紙の交付を受け,その書き込むべき内容についても一字一句全文を示して教示された。これによって,原告らは,本件第一審査請求の取下げは本件各更正処分等の取消し及び別件大阪訴訟和解の内容に沿う新たな更正のために必要であり,本件各更正処分等の取消しにとって何らの障害ともなり得ないとの錯誤に陥り,本件第一審査請求を取り下げたものである。なお,本件裁決の「審査請求に至る経緯及び内容」と題する一覧表には,本件第一審査請求の取下げの事実が記載されていないが,このことは,税務当局自身も,本件第一審査請求の取下げが法的に重要な意味を有するとは認識していなかったことを示すものである。 これに対し,被告は,原告らが審判所担当官から本件第一審査請求を取り下げれば本件各更正処分等の基礎とされた事実を争い得なくなる旨の説明を受けた上で取下げを行ったものである旨主張する。しかしながら,原告らは,本件各更正処分等を争って異議申立て及び本件第一審査請求を行っていたのであり,自ら十分に納得し た事実を争い得なくなる旨の説明を受けた上で取下げを行ったものである旨主張する。しかしながら,原告らは,本件各更正処分等を争って異議申立て及び本件第一審査請求を行っていたのであり,自ら十分に納得し得る結論に至るべき明らかな根拠がなければ本件第一審査請求を造作もなく取り下げ,不合理であると信じている本件各更正処分等を確定させる理由はなかったのであるから,被告の主張するような経緯は人間のとる行動として極めて不自然である。また,被告が依拠する,審 判所担当官が原告らとのやり取りを記載したという記録(乙2,以下「本件聴取書等」という。)の記載内容も不正確な点が多く,作為の介在した可能性がある。 したがって,本件各更正処分等の取消しを求める訴えは適法である。 (被告)原告らは,いずれも本件第一審査請求を取り下げているから,本件各更正処分等の取消しを求める訴えを提起するに当たり,通則法115条1項本文に規定する,審査請求についての裁決を経ていることという要件を満たしていない。 これに対し,原告らは,原告らが本件第一審査請求を取り下げたのは,新たな更正の請求をしさえすれば本件各更正処分等は全部取り消されるとの旨の審判所担当官の教示に従ったからであって,本件第一審査請求の取下げは要素の錯誤により無効である旨主張する。しかしながら,審判所担当官が原告らが主張するような教示をした事実がないことは,本件聴取書等の記載からも明らかである上,原告らが通則法23条2項1号に基づく更正の請求をしたとしても,それに先立つ本件各更正処分等が全部取り消されるわけではないことは審判所担当官には自明のことであり,まして,本件各更正の請求をしたとしても別件大阪訴訟和解の内容に合致した新たな更正が当然にされるわけではないから,審判所担当官が原告らが主張するような「教示」を とは審判所担当官には自明のことであり,まして,本件各更正の請求をしたとしても別件大阪訴訟和解の内容に合致した新たな更正が当然にされるわけではないから,審判所担当官が原告らが主張するような「教示」を行うとはにわかに考え難い。加えて,原告らが受けたと主張する「教示」の内容は極めて抽象的であり,実際に審判所担当官から「教示」を受けたとする原告A自身のその内容に関する供述も極めてあいまいなものにすぎない。かえって,本件聴取書等によれば,原告らは,本件第一審査請求を取り下げれば,本件各更正処分等において基礎とされた事実を争うことができなくなる旨の説明を受け,その事実を認識していたと認められるし,別件大阪訴訟和解の条項(前記1ク⑤)に照らせば,原告ら自身も,本件各更正の請求が容 れられない可能性があると認識していたことが明らかである。 したがって,本件各更正処分等の取消しを求める訴えは不適法である。 (2)争点(2)(本件各更正処分等の適法性)について(被告)本件相続に係る相続財産を財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資56ほか国税庁長官通達,ただし,平成12年4月24日付課評2-3による改正前のもの。以下「評価通達」という。)及び各国税局長が定める財産評価基準(以下「評価基準」といい,評価通達と併せて「評価通達等」という。)に基づいて改めて評価すると,別紙「本件相続財産の明細表」の合計欄記載のとおり,3億1297万0534円となり,本件各更正処分等において認定された本件相続に係る相続財産の価額3億1211万1386円を上回る。 これに対し,原告らは,本件各更正処分等が相続開始後に発生した法定果実を相続財産として認定している旨主張する。確かに,本件各更正処分等においては,本件相続に係る相続財産として,D名義株式の配当金37万71 ,原告らは,本件各更正処分等が相続開始後に発生した法定果実を相続財産として認定している旨主張する。確かに,本件各更正処分等においては,本件相続に係る相続財産として,D名義株式の配当金37万7115円,E名義株式の配当金48万0590円の合計85万7705円が認定されているが,別紙「本件各更正処分等において認定した未収配当金の明細表」に記載のとおり,これらはいずれも本件相続開始前(平成11年2月,3月,8月及び9月)における配当金である。同様に,本件相続に係る相続財産として認定されている本件土地の賃料124万8750円は,別紙「本件各更正処分等において認定した未収地代の明細表」に記載のとおり,Eが死亡してからDが死亡するまでの期間である平成▲年▲月から同年▲月までの間に係るものである。よって,本件各更正処分等において本件相続に係る相続財産として認定されたD及びE名義株式の配当金並びに本件土地の賃料は,いずれも本件相続開始前のものであることは明らかである。 したがって,いずれにせよ,本件各更正処分等は適法である。 (原告ら)本件各更正処分等において認定された相続財産の範囲及び額は,いずれも実体に合致していない。 すなわち,本件各更正処分等がDの遺産として認定した現金及び預金の一部には,別件京都訴訟判決においては認定されていないものが含まれており,その認定根拠や計算が不明確である。また,同じく本件各更正処分等がDの遺産として認定した所有株式売却や配当金に係る不当利得返還請求権及び損害賠償請求権についても,別件京都訴訟判決においては認定されておらず,本件異議決定における理由に照らすと,本件相続開始後に生じた法定果実(Dの死亡後である平成13年12月までの同人名義株式に係る配当金及びEの死亡後である平成14年4月までの賃料収入)を相続財 らず,本件異議決定における理由に照らすと,本件相続開始後に生じた法定果実(Dの死亡後である平成13年12月までの同人名義株式に係る配当金及びEの死亡後である平成14年4月までの賃料収入)を相続財産に算入していたことが明らかである。この点につき,被告は,本訴において初めて,本件各更正処分等が認定した未収配当金は平成11年2月,3月,8月及び9月のD名義株式及びE名義株式の配当金であって相続財産に属する旨の詳細な主張立証をしたが,本件各更正処分等から3年以上を経て初めてその内訳について詳細な説明と根拠とを示されたとしても,多額の徴税を受ける納税者としては納得できるものではない。同様に,本訴において初めて被告からされた説明によれば,本件各更正処分等は,Eが死亡した後でDが死亡する前までの9か月間の本件土地の賃料合計の4分の3を未収地代として相続財産に含めて認定しているとのことであるが,原告らは上記未収地代債権の存在を否認する。 これに対し,被告は,別紙「本件相続財産の明細表」に依拠して,本件各更正処分等において認定された相続財産の額は結果的に正当であると主張する。しかしながら,別紙「本件相続財産の明細表」の明細表3「有価証券」中のD名義株式の数量は別件京都訴訟判決の認定とは一致しておらず,同表10「その他の財産」中のD名義株式の売買代金請求権も,その売買時期が Dの死亡の前であるか否かが判然としないから,同表3の単価を別件京都訴訟判決の認定した株式数に乗じて計算すべきであり,これによると相続財産の価格は15万0841円減額となる。さらに,同表9「その他の財産」中の預貯金等の返還請求権についても,その一部384万3541円はDの生存中にその生活費等として支弁されたと解し得るため,別件被告らによって取り込まれたと明らかに評価することが 表9「その他の財産」中の預貯金等の返還請求権についても,その一部384万3541円はDの生存中にその生活費等として支弁されたと解し得るため,別件被告らによって取り込まれたと明らかに評価することができない部分が含まれている(別件京都訴訟判決も上記金額についてはDの相続財産とは認めていない。)。加えて,Dの相続財産からは,別件被告らがDのために支出し,平成16年5月19日に相殺の意思表示をした①DのM病院に対する治療費立替金320万7629円並びに②平成11年分及び同12年分の固定資産税の一部121万9000円が控除されるべきである。これらを合算すると,別紙「本件相続財産の明細表」記載の合計額から計842万1011円が控除されなければならない計算となり,Dに係る相続財産の合計額は3億0454万9523円にすぎないこととなるから,結局,本件各更正処分等において認定された額を下回るのである。 したがって,本件各更正処分等は違法である。 (3)争点(3)(別件大阪訴訟和解の通則法23条2項1号該当性)について(被告)通則法23条2項の趣旨及び同項各号列挙事由の内容に照らすと,同項1号にいう「判決」とは,訴訟が申告当時の基礎事実の存否,効力等を直接審判の対象とし,これによって基礎事実と異なることが確定されるものでなければならず,さらに,納税者が,同条1項所定の期間内に更正の請求をしなかったことにつきやむを得ない理由がある場合でなければ,同条2項に基づく更正はできないと解すべきである。そして,このような「判決」と「同一の効力を有する和解」とは,当事者間に権利関係についての争いがあり,確定申告当時その権利関係の帰属が明確となっていなかった場合に,その後当 事者間の互譲の結果権利関係が明確となり,確定申告当時の権利関係と異なった権利関係 事者間に権利関係についての争いがあり,確定申告当時その権利関係の帰属が明確となっていなかった場合に,その後当 事者間の互譲の結果権利関係が明確となり,確定申告当時の権利関係と異なった権利関係が生じたような場合,すなわち,課税標準等又は税額等の基礎となった事実関係にさかのぼって異動を来した場合にされた和解をいい,和解の内容が,将来に向かって新たな権利関係等を創設する趣旨のものであって,従前の権利関係等に異同を来すものではないと認められるときは,ここにいう「和解」には該当しないものと解される。しかるところ,本件各更正処分等においては,既に確定していた別件京都訴訟判決によって判示された事実関係(原告らがDの相続財産(D名義の預貯金及び株式並びにEの相続財産に対する4分の3の割合の持分)を各3分の1の割合で相続したこと等)を基礎として課税標準等又は税額の計算が行われているのであり,本件各相続税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実は明確になっていたといえるから,たとい別件被告らが別件京都訴訟判決の内容に従った履行をしなかったとしても,そのことを理由に本件各更正処分等又は本件各期限後申告の各時点において権利関係の帰属が明確となっていなかったとは到底いうことができない。加えて,別件大阪訴訟和解には,Eの相続財産について原告らがそのうちの7103万6000円を取得するものと変更するとの旨の条項,訴外Hらの原告らに対する解決金の支払条項,一定の場合に補助参加人から原告らの代理人弁護士に対する金銭の支払を約する条項,「長年の争訟による精神的苦痛,物質的消耗を終焉させるため」に和解を成立させたとの条項,原告ら及び別件被告らとの間に存在する争訟を取下げ等により終了させる旨の条項,別件京都訴訟判決によって原告らが取得した本件土地の持分移転登 ,物質的消耗を終焉させるため」に和解を成立させたとの条項,原告ら及び別件被告らとの間に存在する争訟を取下げ等により終了させる旨の条項,別件京都訴訟判決によって原告らが取得した本件土地の持分移転登記を再度訴外Fらに移転するとの条項がそれぞれ存在すること等からすれば,別件京都訴訟判決において明確になっていた権利関係等を前提に,原告らが同判決どおりの相続財産の取得を断念するとともに,原告らと別件被告らとの間における一連の法的紛争を一挙に解決する目的で,将来に向かって新たな権利関係等を創設する趣旨で合意されたものというべき であって,従来の権利関係等に異同を来すものではないことは明らかである。 これに対し,原告らは,別件大阪訴訟和解は,原告らと別件被告らが,原告らが取得するEに係る相続財産の相続分を法定相続分である4分の3から7103万6000円に変更する合意をしたものであり,実質的には遺産分割協議にほかならないから,通則法23条2項1号の和解に該当する旨主張する。しかしながら,7103万6000円の算出過程に関する原告らの主張は変遷している上,その算定根拠も不明であって,Eに係る相続財産が分割された結果具体的にいかなる財産が原告ら又は別件被告らに帰属することとなったかについて原告らが何ら主張しないことなどからみても,別件大阪訴訟和解は,Eに係る相続財産の遺産分割の実質を有するとは到底いうことができない。 また,補助参加人は,別件大阪訴訟和解は,原告らと別件被告らが,Eの相続分を法定相続分からそれぞれ2分の1ずつに変更する旨の合意をしたものであって,通則法23条2項1号の「和解」に該当する旨主張するようであるが,別件大阪訴訟和解には,2分の1ずつに相続分を変更するといった文言は存在しないし,7103万6000円の算出過程に関する原告らの って,通則法23条2項1号の「和解」に該当する旨主張するようであるが,別件大阪訴訟和解には,2分の1ずつに相続分を変更するといった文言は存在しないし,7103万6000円の算出過程に関する原告らの主張とも整合しないこと,別件被告らは,別件大阪訴訟和解によって,相続権を全く有しないD固有の相続財産の一部をも取得したものと考えられることなどからすれば,補助参加人の上記主張も失当である。 したがって,別件大阪訴訟和解は,通則法23条2項1号に規定する「判決と同一の効力を有する和解」には該当しない。 (原告ら)通則法23条2項1号にいう「和解」とは,納税者が確定申告時に予想し得なかった事態が後発的に生じ,課税標準等又は税額等の計算の基礎に変更を来した場合において,申告当時とは異なった権利関係が生じたような和解を指すと解すべきである。もっとも,その和解は,専ら当事者間で税金を免 れる目的のもとになれ合いでされたものなど,客観的・合理的根拠を欠くものは含まれないというべきである。他方,被告は,同号にいう和解の要件として,更に「当事者間に権利関係についての争いがあり,確定申告当時その権利関係の帰属が明確となっていなかった場合」であることを要するかのように主張するが,上記のような要件は,当該和解がなれ合い目的のものであるか否かに関する判断のうちに解消されるから,同号の「和解」一般の要件として更に付加されるべきものではない。 しかるところ,別件大阪訴訟和解は,原告らDの親族と別件被告らEの親族との間に生じた紛争において,別件京都訴訟判決が確定した後もE及びDの相続財産に係る権利関係の事実的・社会的確定が達せられなかったことから,裁判所の助言を得て原告らと別件被告らとの間でようやく成立したEに係る相続財産の実質的に最初の遺産分割合意であって,別件京 Dの相続財産に係る権利関係の事実的・社会的確定が達せられなかったことから,裁判所の助言を得て原告らと別件被告らとの間でようやく成立したEに係る相続財産の実質的に最初の遺産分割合意であって,別件京都訴訟判決の認定した法定相続分に基づく権利関係(Dの遺産は,Eの遺産の4分の3(計1億3950万0948円相当)を包含する。)を「Dの遺産は,Eの遺産のうち7103万6000円(これは,原告らが現実に入手し得たEの遺産計1億3581万3345円から別件被告らによる相続侵害額計6477万7345円を控除した額である。)相当のみを包含する。」と変更することにより,執拗に続いた両者間の紛争を終息させたものであり,なれ合いという評価を受ける余地も全くない。なお,別件大阪訴訟和解において,Eに係る相続財産についての原告らの取得分が割合ではなく確定金額をもって表示されているのは,原告らが少しでも不確定な要素を残したくないと考えたためにその内容を一義的な数値とすることを求めたからであり,解決金4000万円の授受が行われたのも,既に別件被告らが余りに多くのD遺産を不当に取り込んでいたことに基づく一部返還金の実質を有するためであって,いずれも別件大阪訴訟和解がEの相続財産に係る遺産分割合意であることと全く矛盾せず,むしろその実質を裏付けるものである。 したがって,別件大阪訴訟和解は,通則法23条2項1号に規定する「判決と同一の効力を有する和解」に該当する。 (補助参加人)別件京都訴訟判決は,Eの遺産に係る原告らと別件被告らの法定相続分がそれぞれ4分の3と4分の1であることを理由中の判断として示しているが,上記判決の後に両当事者間で法定相続分とは異なる相続分を定める遺産分割協議が成立することによって,当然にその効力を失う。そして,補助参加人は,別件大阪 1であることを理由中の判断として示しているが,上記判決の後に両当事者間で法定相続分とは異なる相続分を定める遺産分割協議が成立することによって,当然にその効力を失う。そして,補助参加人は,別件大阪訴訟の過程において,EとDのいずれが先に死亡するかによって両当事者の相続割合に大きな差が出るのは不合理極まる上,争訟の頻発による経済的,精神的な消耗と疲弊とを断つためにも,Eの相続分については原告らと別件被告らとの間で4分の3と4分の1となる法定相続分を変更してそれぞれ2分の1ずつとする趣旨の和解を申し入れたところ,原告らもこれを受け容れ,原告らが取得すべきEの遺産の2分の1相当額を7103万6000円と評価したことで,別件大阪訴訟和解が成立したのである。このように,別件大阪訴訟和解によって,Eの遺産についてはその相続分が各2分の1に変更されたことになるのであり,上記和解は実質的には遺産分割協議にほかならない。 ところで,通則法23条2項1号にいう「税額等の計算の基礎となった事実」とは,本件においてはEの遺産に係る原告らと別件被告らの相続割合をいうところ,このような「事実」に「関する訴え」であるためには,当該事実を訴訟物とする訴えである必要はなく,当該事実が攻撃防御方法となる訴えであれば足りると解すべきである。そして,別件大阪訴訟はその請求原因に別件京都訴訟判決に基づく法定相続分割合を含んでおり,広くEの相続分に関する訴えといえるのであるから,正に通則法23条2項1号にいう「税額等の計算の基礎となった事実に関する訴え」に該当する。 (4)争点(4)(本件各通知処分の適法性)について (被告)通則法23条2項は,租税債務を可及的速やかに確定させるという国家財政上の要請から更正の請求をすることができる期間を限定するとともに,他方で,納税 (本件各通知処分の適法性)について (被告)通則法23条2項は,租税債務を可及的速やかに確定させるという国家財政上の要請から更正の請求をすることができる期間を限定するとともに,他方で,納税申告時には予想し得なかった事由が後発的に生じ,これにより課税標準等又は税額等の計算の基礎に変更を生じ税額の減額をすべき場合にも更正の請求を認めないとすると帰責事由のない納税者に酷な結果が生じる場合等があると考えられるため,例外的に一定の場合に更正の請求を認めることによって,保護されるべき納税者の救済の途を拡充した規定であるところ,同項に基づく更正の請求をし得る理由は,同項1号ないし3号に限定的に列挙されている。そして,税務署長は,同項1号ないし3号に規定する理由があるとしてされた更正の請求に対して,同理由が存在するか否かを判断し,その結果,これらの理由が存在しなければ,真実の課税標準等又は税額等を判断するまでもなく,税務署長が更正をすべき理由がない旨の通知をすることは適法というべきである。 しかるところ,別件大阪訴訟和解が通則法23条2項1号に規定する「判決と同一の効力を有する和解」に該当しないことは前記のとおりである。 これに対し,原告らは,本件相続開始後に発生した法定果実がDの相続財産に含まれることを前提に本件各更正処分等がされたとした上,このことを本件各通知処分の違法事由としても主張するようであるが,上記のような事由は,通則法23条2項1号ないし3号が規定する理由のいずれにも該当しないことは明らかである。なお,本件各更正処分等と本件各通知処分とは,いわゆる先行行為と後行行為との関係に立つものとは解し難い上,先行行為の違法が当然に後行行為に承継されないのが原則であることからすれば,本件各更正処分等の違法性が本件各通知処分に承継されると解す ,いわゆる先行行為と後行行為との関係に立つものとは解し難い上,先行行為の違法が当然に後行行為に承継されないのが原則であることからすれば,本件各更正処分等の違法性が本件各通知処分に承継されると解すべき法的根拠もない。実質的にみても,原告らは,本件各更正処分等について,自ら不服申立てを取り下げて争わないことを明らかにしておきながら,本件各通知処 分に関する訴訟手続において本件各更正処分等の適法性に関する争いを不当に蒸し返すものであり,到底容認できるものではない。 また,原告らは,本件各通知処分の適法性に係る被告の主張が,本件各通知処分に付記された理由と異なっていることが違法であるとの趣旨の主張もする。しかしながら,課税庁は,課税処分によって存在するものとされた額の課税標準等が存在することを根拠付けるため,当該処分の理由とした会計事実や法的評価に拘束されることなく,それ以外の新たな会計事実や法的評価を主張することができるのであるから,被告が右京税務署長の付記した理由と異なる主張をしたとしても,何ら問題はないというべきである。 したがって,原告らが主張する本件各通知処分の違法事由のうち,法定果実に関する部分は主張自体失当であり,他の違法事由も存在しないことが明らかである。 (原告ら)別件大阪訴訟和解は,通則法23条2項1号に規定する「判決と同一の効力を有する和解」に該当すること,本件各更正処分等は,別件被告らによる妨害の結果として原告らがその法定相続分に従った遺産を回復していないとの事実を無視し,上記のような妨害がなかったものとして課税すべき金額及び税額を計算している点,本件相続が開始した後の法定果実である非相続財産までもが算入されている点において違法事由があるので更正されるべきであることは,いずれも前記のとおりである。 また,本訴に 額及び税額を計算している点,本件相続が開始した後の法定果実である非相続財産までもが算入されている点において違法事由があるので更正されるべきであることは,いずれも前記のとおりである。 また,本訴において本件各通知処分の適法性の根拠として被告が主張する理由は本件各通知処分の付記理由とは異なっているが,行政処分に付記されているのとは異なった理由を,その不服申立手続において断りなく事後的に主張することにも異議がある。そもそも,被告がこのように本件各通知処分の処分理由を差し替えること自体,その理由が理論的に誤っていたことを自認している趣旨といわざるを得ない。 したがって,本件各通知処分は違法である。 (5)争点(5)(本件裁決の適法性)について(被告)本訴において原告らは本件裁決固有の瑕疵,すなわち,本件裁決の手続的瑕疵について何ら主張しないから,本件裁決の取消しを求める請求についての原告らの主張は,それ自体失当である。また,本件裁決は,通則法及び行政不服審査法の規定に基づき,適法かつ適正な手続を経て行われたものであるから,裁決固有の瑕疵は存在しない。 (原告ら)本件各通知処分が違法である以上,その是正を求めた審査請求を棄却した本件裁決は違法である。 第3当裁判所の判断 争点(1)(本件各更正処分等の取消しを求める訴えの適法性)について(1)通則法115条1項本文は,国税に関する法律に基づく処分で不服申立てをすることができるものの取消しを求める訴えのうち,審査請求をすることができる処分については,原則として審査請求についての裁決を経た後でなければ提起することができないとしているところ,原告らが本件各更正処分等に対する本件第一審査請求を平成17年3月に取下げ済みであることは,既に前記前提となる事実等において摘示したとおりである 後でなければ提起することができないとしているところ,原告らが本件各更正処分等に対する本件第一審査請求を平成17年3月に取下げ済みであることは,既に前記前提となる事実等において摘示したとおりである。 しかしながら,原告らは,本件第一審査請求の取下げは審判所担当官の誤った教示によって錯誤に陥ったためであり,仮にその取下げが本件各更正処分等の取消しを求めるについて法的障害になるのであれば,錯誤により無効である旨主張する。しかるところ,通則法には審査請求の取下げに係る特別の手続的規定等は見当たらないから,仮に納税者による取下げの意思表示が要素の錯誤に基づくものである場合には,民法95条により納税者に重過失がない限り当該取下げが無効になり,結果的に審査請求がなお係属している ものと評価し得るというべきである。この場合,納税者は,「審査請求がされた日の翌日から起算して三月を経過しても裁決がないとき」に該当するとして,通則法115条1項1号に基づき,不服申立ての対象となっていた処分の取消しを求めて出訴することができるものと解される。 また,審査請求の取下げが税務官署の責任ある者の誤った教示に起因するなど特段の事情がある場合には,当該取下げをした納税者は,「裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき」に該当するとして,同項3号に基づき,やはり審査請求についての裁決を経ることなく,適法に当該処分の取消訴訟を提起することができると解する余地がある(原告らの主張は,このような趣旨を含むものと善解することができる。)。 (2)そこで,原告らによる本件第一審査請求の取下げに至る経緯を検討するに,証拠(甲1ないし4,6ないし9,12ないし14,乙1,2,5,6,丙1,原告A本人)及び弁論の全趣旨によれば,この点に関して以下のような事実関係を認めることがで 求の取下げに至る経緯を検討するに,証拠(甲1ないし4,6ないし9,12ないし14,乙1,2,5,6,丙1,原告A本人)及び弁論の全趣旨によれば,この点に関して以下のような事実関係を認めることができる(なお,既に前記前提となる事実等において摘示した事実も適宜含める。)。 ア京都地方裁判所が,原告らは相続分各3分の1の割合でDを相続したと認定して,別件被告らに対し,別件被告らが領得したDの遺産について原告らへの返還を命じた別件京都訴訟判決の主要部分は,平成15年9月9日ころ確定した。また,Dが,生前,訴外Hとの間でしていた養子縁組の届出については,同年4月11日ころ,無効であることを確認する旨の判決が確定していた。 イ原告らは,平成16年4月9日,訴外J及び訴外Fが,E及びD名義の株式に係る平成14年6月から平成15年12月までの配当金及び本件土地に係る平成14年5月から平成16年3月までの賃料を不当に利得していると主張して,別件大阪訴訟を提起した。 ウ原告らは,平成16年6月8日,本件各相続税について,別紙物件目録 1記載2(2)の預金計1億0674万6199円に法定相続分4分の3を乗じた計8005万9650円及び本件土地の持分4分の3に,別紙物件目録2記載の財産を加えたもののみがそれまでに原告らが本件相続によって現実に取得し得た相続財産であるとして,取得財産の価格計1億7510万8583円,納付すべき税額計1868万0200円などとする本件各期限後申告をした。 エ右京税務署長は,平成16年6月21日,原告らに対し,取得財産の価格計3億1211万1386円,納付すべき税額計6468万1800円などとする本件各更正処分等をした。 オ原告らは,平成16年8月17日,本件各更正処分等に対し,別件京都訴訟判決の存在にもかかわらず 計3億1211万1386円,納付すべき税額計6468万1800円などとする本件各更正処分等をした。 オ原告らは,平成16年8月17日,本件各更正処分等に対し,別件京都訴訟判決の存在にもかかわらず,現実にはなお取得していない財産について課税されたことに不服があるとして,右京税務署長に対する異議申立てをした(なお,原告らは,本件各期限後申告を行う際には税理士の協力を得たが,上記異議申立て以降の不服申立手続については,そうした援助を受けることなく,その都度,右京税務署や審判所審判官らに相談しながら独力で行っていた。)。その異議申立書にも,以下のように理由が記されていた。 「私共は平成15年2月3日に京都地方裁判所において私共の相続権に対して判決を受けました。被相続人D(故)の相続人として,故Dが所有した財産(故Dがその夫故Eから相続した財産を含む)について私共に相続する権利があると云うものです。 然るに故EのD以外の相続人(Hら)らが前述裁判々決以前に勝手に処分や名儀換えを行って居り,上記判決に基きHらに引渡しを求めていますが未だ引渡しを受けて居らないのが大半であります。これらについては現在差し押え等々可能な限りの手段でその引渡を求めて居る所ですが,その実現はみられて居りません。つまりその実態は相続をしていないのと同様 の結果となっています。 従いまして私共の手元に引渡しをうけていない財産について,相続財産として私共が課税をうけることは納得出来ません。…(以下略)」これに対し,右京税務署長は,同年11月12日,Dの死亡により,本件相続の開始時からDの財産に属した一切の権利義務を承継することとなり,実際に当該財産の一部の引渡しを受けていないとしても,これを本件相続に係る相続税の課税の対象から除外することはできないなどとして,原告らの 時からDの財産に属した一切の権利義務を承継することとなり,実際に当該財産の一部の引渡しを受けていないとしても,これを本件相続に係る相続税の課税の対象から除外することはできないなどとして,原告らの異議申立てを棄却する旨の本件異議決定をした。 カ原告らは,平成16年12月9日,本件各期限後申告の内容は正当であるとして,本件各更正処分等について,本件第一審査請求をした。その審査請求書にも,前記オ記載の異議申立てとほぼ同一の理由が記載されていた。なお,原告らは,同日,原告Aを本件第一審査請求における総代に選任し,その旨を国税不服審判所長に届け出た。 原告らは,本件第一審査請求の過程を通じ,本件各更正処分等が対象としている相続財産の範囲や評価については特段争わず,専ら,別件被告らの妨害によって現実には取得していない相続財産に対して課税されることが違法不当である旨を主張していた。 キ原告Cは,別件京都訴訟判決を債務名義として,訴外Fの自宅土地建物の強制競売を申し立てていたところ(京都地方裁判所平成▲年(ヌ)第▲号強制競売事件,以下「本件競売事件」という。),上記不動産については平成17年1月19日から同月26日までを入札期間とする期間入札が実施され,同年2月2日午前9時30分がその開札期日に指定されていた。 このため,別件被告らは,遅くとも同日以前に原告に本件競売事件を取り下げさせる必要があることを強く認識し,別件大阪訴訟の和解による終結を急いだ。別件被告らは,平成16年の秋ころより,原告らに対し,相次いで死亡したEとD夫婦の遺産に係る法定相続分につき,後に死亡した側 の代襲相続人が4分の3,先に死亡した側の代襲相続人が4分の1となるのは不合理であるとして,Eの遺産についての法定相続割合による各相続分をDが2分の1,別件被告らが計2分の1 ,後に死亡した側 の代襲相続人が4分の3,先に死亡した側の代襲相続人が4分の1となるのは不合理であるとして,Eの遺産についての法定相続割合による各相続分をDが2分の1,別件被告らが計2分の1と変更することを申し入れ,平成17年1月28日午後4時55分に開かれた別件大阪訴訟の弁論準備手続期日までに,その旨の具体的な和解条項案を提案していた。しかしながら,原告らは,紛争の終局的解決を目指す観点からEの遺産を等分するという別件被告らの意向には賛同するに至ったものの,相続分を割合的に表示する和解条項では,将来的に別件被告らとの紛争が再燃する懸念があることから,上記期日において,Eの遺産からの原告らの取得分を金額で表示することが望ましいとの意見を述べた。原告らは,D名義の株式のうち別件被告らがなお占有を続けているものの返還を受けた上に,別件被告らによる他のD名義財産に対する相続侵害分についてはE名義財産のうち原告らが現実に取得した分の一部で埋め合わせた上で,更に別件被告らから4500万円を解決金の名目で受領することとすれば,原告らがEの遺産のおおむね半分を取得する計算になるとして別件被告らにその支払を求めるとともに,原告ら及び別件被告らの双方がEの遺産から取得することになる財産の金額を具体的に表示する和解条項案を提案した。しかしながら,別件被告らは,解決金4500万円の支払については資力不足を理由に応じず,最終的にはその額を4000万円とすることで双方が折り合った。また,別件被告らは,Eの遺産からの別件被告らの取得分を金額的に表示することについては難色を示し,その部分の削除を求めたが,本件競売事件の開札期日前における取下げを最優先させるとの見地から,双方の取得分の割合的表示を行わないこと及び原告らの取得分を金額的に表示することについ いては難色を示し,その部分の削除を求めたが,本件競売事件の開札期日前における取下げを最優先させるとの見地から,双方の取得分の割合的表示を行わないこと及び原告らの取得分を金額的に表示することについては異議を述べなかった。 なお,原告らの提案に係る解決金4500万円の計算過程は必ずしも明らかではないが,おおむね以下のようなものであったと推認される。 [E名義の財産の評価額]E名義の株式(甲9・付表2)約2852万円本件土地(甲9・付表3)約790万円E名義の預貯金債権等(甲2・3条)約1億1339万円計約1億4981万円(①)①の半額約7490万円(②)[原告らが現実に入手したE名義の財産の評価額](別件被告らが別途取得することになる本件土地を除く。)E名義の預貯金(別紙物件目録1記載2(2))の一部約9429万円本件土地の賃料18.5万円×3/4×11か月(平成16年3月から平成17年1月まで)約152万円計約9581万円(③)[別件被告らのD名義財産に対する相続侵害相当額]D名義の預貯金(別紙物件目録1記載1(1)及び(2))約4961万円D名義株式の配当金(別紙物件目録1記載1(3))約209万円同上(平成14年1月から平成16年6月まで)約184万円D名義株式のうち処分したものの代金約285万円上記合計額に係る損害金(年5パーセント×3年弱) 約839万円計約6478万円(④)③-④(原告らが取得したE名義の財産によって別件被告らによるD名義財産への相続侵害分を埋め合わせたとして計算した場合,原告らの手元に残るE名義の財産の評価額)約3103万円(⑤)②-⑤(E名義の財産からの取得割合を原告らと別件被告らとの間で等分とするために原告らが別件被告らから移転を受けるべき額)約4 場合,原告らの手元に残るE名義の財産の評価額)約3103万円(⑤)②-⑤(E名義の財産からの取得割合を原告らと別件被告らとの間で等分とするために原告らが別件被告らから移転を受けるべき額)約4387万円なお,上記計算によれば,原告らが解決金等の名目で別件被告らから移転を受けるべき額と上記⑤の合計額(解決金額を4000万円とした場合には約7103万円)が,E名義の財産からD,ひいては原告らが取得した財産の評価額と一致することになる。 ク別件大阪訴訟の期日は,平成17年1月31日だけで午前9時45分,午後12時25分及び午後5時の3回が指定された。原告らと別件被告ら代理人弁護士(補助参加人)との間においては,同日の2回目の期日までに和解条項について合意が成立したが,別件被告ら代理人弁護士が期日に出頭していなかった別件被告ら本人の意思を最終的に確認し,その結果を踏まえるために設けられた午後5時の弁論準備手続期日において,以下の内容を骨子とする別件大阪訴訟和解が成立した。 ①原告らと別件被告らとは,長年の争訟による精神的苦痛,物質的消耗を終焉させるため本和解に及び,別件京都訴訟によって確定されたEの相続財産について,原告らがそのうちの7103万6000円を取得するものと変更する。 ②別件被告らは,原告らに対し,各自連帯して解決金4000万円の支払義務があることを認め,本日これを支払い,原告らはこれを受領した。 ③別件被告らは,原告らに対し,別紙株券目録記載の株券が原告らの所有であることを確認し,本日これを引き渡し,原告らはこれを受領した。 ④原告らは,訴外F及び訴外Jに対し,本件土地が同訴外人らの所有であることを確認し,原告らの同訴外人らへの持分権移転登記手続に協力する。 ⑤別件京都訴訟判決に基づいてされている本件各更正処 た。 ④原告らは,訴外F及び訴外Jに対し,本件土地が同訴外人らの所有であることを確認し,原告らの同訴外人らへの持分権移転登記手続に協力する。 ⑤別件京都訴訟判決に基づいてされている本件各更正処分等が,「原告らが適正公正な申立てをしたことに基づいても」上記①の変更に適応した税額3865万8000円に更正されなかった場合には,「その更正決定による税額と3865万8000円との差額」については,1524万3600円を限度として,補助参加人がその支払の責に任じる(なお,その際の実際の出捐者は別件被告らである。)。 ⑥原告らと別件被告らとは,E及びDの相続に関し,別件京都訴訟判決の存在にもかかわらず,本和解条項に定める以外,相互に債権債務が存在しないことを確認する。 ケ原告Aは,平成17年2月23日,国税不服審判所京都支所を訪れ,別件大阪訴訟和解の和解調書を提出した上,審判所担当官(N国税審査官)に対し,上記和解の結果,原告らが本件各相続によって取得する相続財産の額は約2億6000万円となったとして,通則法23条2項に基づく更正の請求を行った場合における本件第一審査請求への影響について尋ねた。 審判所担当官は,別件大阪訴訟和解によって後発的に争う金額が変更になったというのであれば,本件第一審査請求における主張とは別個のものになるので,まず右京税務署に更正の請求をすべき旨を教示した。審判所担当官は,本件各更正処分等において右京税務署長が認定している相続財産の範囲や評価額について尋ねたが,原告Aは,異議がない,ないし,弁護 士に任せていたのでよく分からないなどと回答した。 コ原告Aは,平成17年3月1日に審判所担当官の面前で,その余の原告は原告Aから取下書の記入方法について説明を受けた上で同月22日までに取下書を郵送する方法で,本件第 く分からないなどと回答した。 コ原告Aは,平成17年3月1日に審判所担当官の面前で,その余の原告は原告Aから取下書の記入方法について説明を受けた上で同月22日までに取下書を郵送する方法で,本件第一審査請求をいずれも取り下げた。少なくとも,原告Aは,上記取下げに先立ち,審判所担当官より,本件第一審査請求を取り下げれば,本件各更正処分等については確定することになる旨の説明を受けていた。 サ原告らは,平成17年3月29日,右京税務署長に対し,通則法23条2項に基づく本件各更正の請求をした。その「相続税がかかる財産の明細書」によると,原告らが本件相続によって取得した財産の価額は計2億5746万4990円であり,その内訳は,別紙物件目録2記載の財産(原告らは,本件各期限後申告から一貫して原告らがこれらを相続するものとしていた。)及びO株式会社の株式1020株(本件異議決定においてDの遺産である旨認定されており,別件大阪訴訟和解でも別件被告らが原告らに対して返還すべきものとされた株券に含まれていた。)のほかは,別件京都訴訟判決がDの遺産と認定した別紙物件目録1記載(1)の預貯金及び同(3)の株式,並びに同目録2記載(2)イのE名義のP銀行Q支店に係る定期預金9900万円の4分の3相当額である7425万円(その後に「▲3,214,000(調整)」との記載がされ,本件各更正の請求において原告らが取得するE名義の遺産は額面上7103万6000円となっていた。),から成っていた。 原告らが本件各更正の請求に際して提出した更正の請求書には,いずれも別件大阪訴訟和解に係る和解調書が添付されており,「更正の請求をする理由」の欄には「H▲.▲.▲相続開始の被相続人Dよりの相続財産に付,H17.1.31その相続分が最終決定がなされた為」との,「更正の請求を 訟和解に係る和解調書が添付されており,「更正の請求をする理由」の欄には「H▲.▲.▲相続開始の被相続人Dよりの相続財産に付,H17.1.31その相続分が最終決定がなされた為」との,「更正の請求をするに至った事情の詳細,その他参考となるべき事項」の欄には 「H▲.▲.▲相続開始したが相続財産の取分に付,抗争,非相続人が被相続人の財産を隠とく。法律上の相続財産が確保出来ず,訴訟を繰り返し,今回最終結着をみたものである。」との各記載がされていた。 (3)前記認定事実を総合すれば,原告らは,本件第一審査請求を取り下げるまでは,別件被告らの相続権侵害によって現実に取得することができていない相続財産に課税されることの違法不当性を一貫して訴える一方,本件各相続によって取得したとされた相続財産の範囲(特に,被相続人の死後に生じた法定果実が含まれているか否か)やその評価等については特段争っていなかったことが明らかであり,別件大阪訴訟和解により,原告らがDの遺産から計約2億6000万円を最終的に取得する計算になるとして,相続税の課税上も本件各相続による原告らの相続財産の価額をこの限度にまで縮減させ,もって現実に取得した相続財産と課税上の相続財産とのそごを解消することを意図して本件各更正の請求を行うとともに,別件大阪訴訟和解という後発的理由によってではあれ,上記のような不一致が解消されることになるのであれば,本件相続時における法定相続分に基づく財産状態についてはこれを争う実益がなくなったとの認識の下に,本件各更正処分等を確定させても特段の弊害はなく,むしろ手続的により簡明になり望ましいとの趣旨で本件第一審査請求を取り下げたものと推認することができる。 (4)これに対し,原告らは,本件各更正処分等を争って異議申立て及び本件第一審査請求を行っていたも 手続的により簡明になり望ましいとの趣旨で本件第一審査請求を取り下げたものと推認することができる。 (4)これに対し,原告らは,本件各更正処分等を争って異議申立て及び本件第一審査請求を行っていたものである以上,原告らには自ら十分に納得し得る結論に至るべき明らかな根拠がなければ本件第一審査請求を造作もなく取り下げ,不合理であると信じている本件各更正処分等を確定させる理由はなかったのであり,本件第一審査請求の取下げは審判所担当官の誤った教示に基づくものである旨主張する。しかしながら,本件各更正の請求に至るまでの前記認定のような経過に加え,原告A自身,本訴において,原告らは現に取得していない財産に課税されたことを除けば,本件各更正処分等に対する不 服はなかった旨繰り返し供述する一方で,審判所担当官から具体的に本件第一審査請求の取下げをいかなる文言で教示されたのかについては明確に供述することができないこと,原告Aの陳述書(甲14)の記載中にも,本件各更正処分等がDの死後に生じた配当をDの遺産に含まれるものと認定しているとの点は,本訴の提起直前になって浮上してきた問題であったとの部分があること(4頁・21行目以下)等に照らしても,原告らの上記主張のうち,原告らが個々の相続人による相続財産の取得割合ではなく,相続財産自体の範囲及び評価等についても本件各更正処分等の認定が不合理である旨信じていたとの部分,及び審判所担当官の誤った教示により本件第一審査請求の取下げに至ったとする部分のいずれについても採用することはできず,他にこれらを認めるに足りる的確な証拠もない。 さらに,原告らは,本件聴取書等の記載に不正確な点があると主張するが,前記認定に係る別件大阪訴訟和解成立前後の経緯に照らすと,その記載が原告Aら被聴取者の確認を逐一得てされたものではな 証拠もない。 さらに,原告らは,本件聴取書等の記載に不正確な点があると主張するが,前記認定に係る別件大阪訴訟和解成立前後の経緯に照らすと,その記載が原告Aら被聴取者の確認を逐一得てされたものではないことを勘案しても,少なくとも本件聴取書等のうち,本件第一審査請求の取下げの有効性に関わる部分,すなわち,原告らが本件各更正処分等のうち相続財産の範囲及び評価については上記取下げ時までは不服を有していなかったことをうかがわせる部分(乙2の7),及び原告Aが本件各更正処分等が法的に確定することを知って本件第一審査請求を取り下げたことに係る部分(乙2の9)については,その記載内容に特段不自然不合理な点はないというべきである。 (5)したがって,原告らによる本件第一審査請求の取下げには要素の錯誤に基づくものとは認められず,その取下げは無効とは評価することができない。 そうであるとすれば,本件訴えのうち本件各更正処分の取消しを求める部分は,審査請求前置の要件を欠くものといわざるを得ず,しかも,前記認定に係る経過に照らし,原告らが審査請求を経ずにその取消しを求めることについて正当な理由となるべき事情も特段認められないから,不適法というべき である。 争点(2)(本件各更正処分等の適法性)について(1)前記1において既に認定説示したとおり,本件訴えのうち本件各更正処分等の取消しを求める部分は不適法として却下を免れないが,念のため,以下,その適法性についても判断することとする。 (2)証拠(乙4)及び弁論の全趣旨によれば,大阪国税局課税第一部国税訟務官室が,平成19年10月24日までに,別件京都訴訟判決並びにR銀行,S銀行,P銀行,T,U銀行,V銀行及びW銀行に対する各照会の結果に基づき,評価通達等に従って本件相続に係る相続財産の価額を確認し直 室が,平成19年10月24日までに,別件京都訴訟判決並びにR銀行,S銀行,P銀行,T,U銀行,V銀行及びW銀行に対する各照会の結果に基づき,評価通達等に従って本件相続に係る相続財産の価額を確認し直したところ,別紙「本件相続財産の明細表」の合計欄記載のとおり,その価額は3億1297万0534円となり,本件各更正処分等において認定された本件相続に係る相続財産の価額3億1211万1386円を上回ったことが認められる。 (3)これに対し,原告らは,同表9「その他の財産」中の預貯金等の返還請求権は,その一部384万3541円(同表別紙7の順号5,7及び11)はDの生存中にその生活費等として支弁されたと解し得るため,別件被告らによって取り込まれたと明らかに評価することができない部分が含まれており,別件京都訴訟判決も上記金額についてはDの相続財産とは認めていない旨主張する。しかしながら,前記前提となる事実(2)イにおいて摘示したとおり,別件京都訴訟判決の訴訟物は,原告らがDから相続した,別件被告らの個別具体的な財産領得行為を不法行為とする損害賠償請求権等であり,同判決は,本件相続による相続財産はもとより,別件被告らに対するDの損害賠償請求権についても,その範囲ないし限界を画する効力を有するものではない上,証拠(甲1,乙4)によっても,原告らが別件京都訴訟において前記預貯金等(①郵便局X局のD名義の担保定額定期251万2030円,②U銀行Y支店のD名義の普通預金90万5345円及び③同支店のE名義の普 通預金56万8222円の4分の3相当額である42万6166円)に係る損害賠償請求権を審判の対象として提示していなかったことが明らかであるから,別件京都訴訟判決が前記預貯金等についてその理由中でDの財産として認定しなかったことは,いわば処 る42万6166円)に係る損害賠償請求権を審判の対象として提示していなかったことが明らかであるから,別件京都訴訟判決が前記預貯金等についてその理由中でDの財産として認定しなかったことは,いわば処分権主義の当然の帰結であるにすぎない。 加えて,証拠(甲1,乙4,原告A本人)によれば,Eが平成▲年▲月に死亡した際,Dは入院中であったが,ほぼ連日別件被告らがDの自宅を訪問し,D及びEの印鑑や通帳を管理していたこと,上記①については,Tに対する平成14年1月15日付け照会により,平成11年10月5日に出金されている事実が把握されているところ,別件京都訴訟判決は,訴外Fが,同日,上記①が出金されたのと同じ郵便局から,同じ郵便局X局のD名義の通常郵便貯金32万4651円をDに無断で引き出している事実を認定していること(別件被告らも,別件京都訴訟において,訴外Fによる上記通常郵便貯金の引出し自体は争っていなかった。),上記②については,本件各更正処分時の調査において,訴外Fが,平成11年9月29日に出金し,同日,これとほぼ同額の90万5000円をP銀行Z支店の同人名義の口座に入金している事実が把握されていること,上記③については,U銀行に対する平成14年1月15日付け照会により,平成11年4月5日に出金されている事実が把握されているところ,別件京都訴訟判決は,Dには同年5月ころまで痴呆及び栄養不良の状態が続いていたと認定していること,がそれぞれ認められ,以上によれば,上記①ないし③の預貯金等については,別件京都訴訟判決が別件被告らによってDに無断で引き出されたと認定した他の預貯金等と同様,Dの生活費等のために支弁されたのではなく,別件被告らが不法に領得したものと推認され,これを覆すに足りる的確な証拠はない。よって,Dの相続財産中には,別件被告ら されたと認定した他の預貯金等と同様,Dの生活費等のために支弁されたのではなく,別件被告らが不法に領得したものと推認され,これを覆すに足りる的確な証拠はない。よって,Dの相続財産中には,別件被告らに対する上記預貯金等の領得行為に対する損害賠償請求権も含まれていたと解すべきである。 また,原告らは,Dの相続財産からは,別件被告らがDのために支出し, 平成16年5月19日に相殺の意思表示をした①DのM病院に対する治療費立替金320万7629円並びに②平成11年分及び同12年分の固定資産税の一部121万9000円が控除されるべきである旨主張する。しかしながら,上記①及び②のいずれの相続債務についても,その存在を認めるに足りる的確な証拠は提出されていない上,仮にDが生前別件被告らに対する上記各債務を負っていた事実があるとしても,これらは本件各期限後申告の時点において既に存在していたはずの債務であるところ,証拠(甲8)によれば,原告らは本件各期限後申告において,上記①及び②のいずれについてもDの相続債務に含めてはいないことが明らかであるから,通則法23条1項の規定に基づき,法定申告期限から1年以内に更正の請求を行うことによってのみその存在を主張することができるものと解すべきであり,同条2項その他の規定に基づいて主張することができる後発的更正の請求の事由には当たらない。よって,この点に関する原告らの主張も採用することができない。 そして,他に,本件各更正処分等において認定されていた本件相続に係る相続財産の価額がその客観的な価額を上回っていたことを認めるに足りる的確な証拠も存在しない。 (4)したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件相続に係る相続財産の価額は,本件各更正処分等において認定されていた3億1211万1386円を 認めるに足りる的確な証拠も存在しない。 (4)したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件相続に係る相続財産の価額は,本件各更正処分等において認定されていた3億1211万1386円を客観的に上回っていたことが明らかであり,他に本件各更正処分等が違法であったことをうかがわせるような主張及び証拠もない。 (5)以上によれば,本件各更正処分等は適法というべきである。 争点(3)(別件大阪訴訟和解の通則法23条2項1号該当性)について(1)本件において,原告ら及び補助参加人は,別件大阪訴訟和解は実質的にはEの遺産を巡る原告らと別件被告らとの最初の遺産分割合意にほかならず,通則法23条2項1号にいう「判決と同一の効力を有する和解」に該当する 旨主張している。 前記前提となる事実等及び証拠(甲3,6)によれば,別件大阪訴訟は,別件京都訴訟判決が確定し,本件各更正処分等に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎とされた,DがEの遺産を4分の3の割合で相続し,原告らがDの遺産を各3分の1の割合で相続した旨の事実に基づき,訴外J及び訴外FがDの遺産であるE及びD名義の株式に係る平成14年6月から平成15年12月までの配当金及び本件土地に係る平成14年5月から平成16年3月までの賃料を不当に利得していると主張して,上記訴外人らに対し,その支払を求めたものであると認められるから,別件大阪訴訟は,通則法23条2項1号にいう「その申告,更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴え」に当たると解する余地がある。そうすると,別件大阪訴訟和解が原告らの主張するとおりEの相続人ないしその地位の承継者である原告らと別件被告らとの間のEの遺産についての最初の遺産分割合意であるとすれば,当該合意は課税標準等又は税額等の計算の ,別件大阪訴訟和解が原告らの主張するとおりEの相続人ないしその地位の承継者である原告らと別件被告らとの間のEの遺産についての最初の遺産分割合意であるとすれば,当該合意は課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に変動を来すものということができるから,少なくとも文理上は別件大阪訴訟和解は同号にいう「判決と同一の効力を有する和解」に当たるということができる。 確かに,別件大阪訴訟和解の和解条項には,別件京都訴訟判決によって確定されたEの相続財産について原告らがその中の7103万6000円を取得するものと変更する旨記載されている上,前記認定の別件大阪訴訟和解の成立に至る経過事実にかんがみると,別件大阪訴訟和解は,原告らがEの遺産をDの法定相続分である4分の3の割合ではなく2分の1の割合で取得することを基本とし,Eの遺産である本件土地が別件被告ら(訴外J及び訴外F)の所有に属することを確認した上,それまで原告らが回復したEの遺産は原告らに,別件被告らが処分等したEの遺産は別件被告らにそれぞれ帰属することを前提として,解決金の支払による調整を図ったものと解する余地 がなくもない。 しかしながら,前記認定事実によれば,別件大阪訴訟和解においては,Eの遺産について本件土地を除いて具体的にどの財産をだれが相続するのかについて何ら明らかにされていないのみならず,被告の主張するとおり,Dの遺産のうち同人がEから相続により取得した財産以外のD固有の財産についても,別件被告らが処分等したものについてはその結果を追認し(すなわち,結果的に当該財産を別件被告らが取得したことを前提とし),他方で,原告らはDから相続したDの別件被告らに対する損害賠償請求権を放棄することを前提とした処理がされていることに加えて,和解条項において,和解を成立させる目的について 取得したことを前提とし),他方で,原告らはDから相続したDの別件被告らに対する損害賠償請求権を放棄することを前提とした処理がされていることに加えて,和解条項において,和解を成立させる目的について「原告らと被告ら及び被告利害関係人…は,長年の争訟による精神的苦痛,物質的消耗を終焉させるため本和解に及び,」と明記され,原告らと別件被告らとの間に当時存在した競売申立事件,保全事件及び訴訟事件の取下げによる終了が約された上,「原告らと被告ら(別件被告ら)は,被相続人E及び同Dの相続に関し,第1項の京都地方裁判所平成▲年(ワ)第▲号確定判決(別件京都訴訟判決)の存在にも拘らず,本和解条項に定める以外,相互に債権債務が存在しないことを確認する。」との条項が置かれ,しかも,相続税に係る紛争を後日に残さない趣旨で前記1(2)ク⑤(前記前提となる事実等(2)ク⑤)の条項まで設けられているのであって,このことに前記認定の別件大阪訴訟和解に至る経緯をも併せ考えると,別件大阪訴訟和解は,E及びDの死亡を契機に原告らと別件被告らとの間に発生した遺産をめぐる一連の法的紛争を最終的に解決することを目的として,E及びDの各遺産に関する原告らと別件被告らとの間の権利関係の一切を不可分的に整理,確定させたものと解される。そうであるとすれば,被告の主張するとおり,別件大阪訴訟和解は,Eの遺産に係る部分をも含めて,別件京都訴訟判決が確定した事実関係(DがEの遺産を4分の3の割合で相続し,原告らがDの遺産を各3分の1の割合で相続した旨の事実関係)に基づく法的 帰結と異なる限りにおいて,上記の目的を達するため,当該事実関係に基づく権利関係を将来に向かって不可分的に変更する趣旨のものであると解するのが合理的かつ自然というべきであり,同和解中Eの遺産に係る部分のみを抽出し において,上記の目的を達するため,当該事実関係に基づく権利関係を将来に向かって不可分的に変更する趣旨のものであると解するのが合理的かつ自然というべきであり,同和解中Eの遺産に係る部分のみを抽出して,その法的性質を遺産分割合意ないしこれと同視すべきものと評価する余地はないというべきである。そして,以上認定説示したところからすれば,別件大阪訴訟和解により,本件各更正処分等に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎とされた事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したということはできない。 なお,前記認定のとおり,本件各更正の請求によれば,原告らは,Eの遺産から別紙物件目録1記載2(2)イのE名義に係るP銀行Q支店の定期預金9900万円のうち4分の3相当額である7425万円を3分の1ずつ取得したものとされているが,別件大阪訴訟和解に係る和解条項からそのような具体的取得分が合理的に導き出されるとは解し難い上,本件各更正の請求において,上記金額の後に「▲3,214,000(調整)」との記載がされ,その正確な趣旨は不明ながら,結果的に原告らが最終的に取得するE名義の遺産が合計で額面上7103万6000円となるように減額されていたことからみても,別件大阪訴訟和解におけるEの遺産からの取得金額と平仄を合わせるためにされた便宜上の記載にすぎないと解するのが自然である。 以上によれば,原告らの前記主張を採用することはできない。 (2)なお,既に本判決の冒頭で摘示したように,相続税法55条は,相続により取得した財産に係る相続税について申告書を提出する場合又は当該財産に係る相続税について更正若しくは決定をする場合において,当該相続により取得した財産の全部又は一部が共同相続人によってまだ分割されていないときは,その分割されていない財産については,各共同相 該財産に係る相続税について更正若しくは決定をする場合において,当該相続により取得した財産の全部又は一部が共同相続人によってまだ分割されていないときは,その分割されていない財産については,各共同相続人が民法(904条の2(寄与分)を除く。)の規定による相続分の割合に従って当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算するものとし,ただし,その後にお いて当該財産の分割があり,当該共同相続人が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分の割合に従って計算された課税価格と異なることとなった場合においては,当該分割により取得した財産に係る課税価格を基礎として,納税義務者において申告書を提出し,若しくは相続税法32条の更正の請求をすることを妨げない旨規定し,同条1号は,相続税について決定を受けた者は,同法55条の規定により分割されていない財産について民法(904条の2を除く。)の規定による相続分の割合に従って課税価格が計算されていた場合において,その後当該財産の分割が行われ,共同相続人が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分の割合に従って計算された課税価格と異なることとなったこと等により当該申告又は決定に係る課税価格及び相続税額が過大となったときは,当該事由が生じた日の翌日から4月以内に限り,納税地の所轄税務署長に対し,その課税価格及び相続税額につき通則法23条1項の規定による更正の請求をすることができる旨規定している。しかるところ,前記前提となる事実等によれば,原告らは,別件大阪訴訟和解の成立から4月以内に本件各更正の請求をしているのであるから,本件各更正の請求をもって相続税法55条,32条1号に基づく更正の請求と解する余地がなくもない(通則法23条2項に規定する更正の請求は,後発的に課税要件事実に変動が生じた 求をしているのであるから,本件各更正の請求をもって相続税法55条,32条1号に基づく更正の請求と解する余地がなくもない(通則法23条2項に規定する更正の請求は,後発的に課税要件事実に変動が生じた場合に,確定した租税法律関係を変動した状況に適合させるために認められた手続であり,申告時には予知し得なかった事態その他やむを得ない事由がその後に生じたことにより,さかのぼって税額の減額等をすべきこととなった場合に,これを税務官署の一方的な更正にゆだねることなく,同条1項所定の期間(法定申告期限から1年以内)を経過した納税者からの更正の請求であっても特に認めることとして,納税者の権利救済を拡充するための規定であると解されるところからすれば,相続税法55条,32条1号のように他の国税に関する法律において更正の請求に関する特則が設けられている場合には,通則法所定の更正の 請求の要件を満たすときであっても,専ら当該更正の請求に関する特則の手続によるべきものと解するのが,むしろ素直な解釈というべきであろう。)。 しかしながら,前記のとおり,別件大阪訴訟和解中Eの遺産に係る部分のみを抽出して,その法的性質を遺産分割合意ないしこれと同視すべきものと評価する余地はないというべきであるから,本件各更正の請求は相続税法55条,32条1号の要件をも満たさないというべきである。 (3)したがって,いずれにせよ,別件大阪訴訟和解をもって通則法23条2項1号にいう「判決と同一の効力を有する和解」に当たるということはできない。 争点(4)(本件各通知処分の適法性)について(1)通則法23条2項は,租税債務を可及的速やかに確定させるという国家財政上の要請から更正の請求をすることができる期間を限定するとともに,他方で,納税申告時等には納税者において予知し得なかった (1)通則法23条2項は,租税債務を可及的速やかに確定させるという国家財政上の要請から更正の請求をすることができる期間を限定するとともに,他方で,納税申告時等には納税者において予知し得なかった事態その他やむを得ない事由が後発的に生じ,これによって課税標準等又は税額等の計算の基礎に変更を生じたため,本来であれば税額の減額をすべき場合,納税者の側からする更正の請求を認めないとすると帰責事由のない納税者に酷な結果が生じる場合等があると考えられるため,このような一定の場合に後発的事由に基づく更正の請求を認めることによって,租税債務の可及的速やかな確定という前記のような要請を犠牲にしてもなお保護されるべき納税者の救済を認めた例外規定と解すべきである。そして,同項に基づく更正の請求をし得る理由は,同項1号ないし3号に限定的に列挙されているが,別件大阪訴訟和解が同項1号に規定する「判決と同一の効力を有する和解」に該当しないと解されることは,前記3において認定説示したとおりであり,これが同項2号ないし3号に該当すると認めるに足りる証拠もない。 しかるところ,通則法23条2項が定める更正の請求が,同項1号ないし3号の事由が認められる場合にのみ納税者の救済を例外的に認める趣旨の規 定であることからすると,税務署長は,同項各号に規定する理由があるとしてされた更正の請求に対して,同理由が存在するか否かのみを判断し,これらの理由が存在しなければ,納税者に対して直ちに更正をすべき理由がない旨の通知をすれば足り,上記のような更正の請求がされた機会に,同理由に限定されることなく,改めて当該納税者の租税債務の範囲を検証しなければならない義務まではなく,納税者の側もこれに対応して上記理由以外の事由に基づく自己の租税債務の減額を求める権利を有するものとは認められ されることなく,改めて当該納税者の租税債務の範囲を検証しなければならない義務まではなく,納税者の側もこれに対応して上記理由以外の事由に基づく自己の租税債務の減額を求める権利を有するものとは認められないというべきである。 (2)もっとも,仮に,税務署長が,後発的更正の請求の一部又は全部に理由があるものの,これとは別途課税標準等又は税額等を増額すべき事由を新たに発見したとして,いわば理由の差替えによって納税者による更正の請求の一部又は全部について更正すべき理由がない旨の通知をするようなことがあれば,その場合には,実質的に新たな増額更正をしたのと同視して,通則法23条2項各号が定める理由に限定されることなく,納税者においてその適法性一般を争うことができるものと解する余地はある。しかしながら,証拠(甲5,7)及び弁論の全趣旨によれば,本件各通知処分の理由として記載されていたのは,①別件大阪訴訟は賃料及び株式配当金の不当利得による返還請求訴訟に係るものであり,通則法23条2項1号にいう「計算の基礎となった事実に関する訴え」には当たらないこと,②京都市α×-74の土地の一部についてはDの生前に贈与を受けていた旨の主張及び葬式費用として94万円余を支出した旨の主張はいずれも同号に規定する理由には当たらないこと,の2点であり(なお,原告らは,上記②の事由については本訴では主張しないとしている。),原告らによる本件各更正の請求の理由をすべて否認するにとどまり,その一部を認容すると同時に新たな増額更正がされたものとみる余地もない。 (3)これに対し,原告らは,本訴において本件各通知処分の適法性の根拠とし て被告が主張する理由は本件各通知処分の付記理由とは異なっているところ,処分の不服申立手続における事後的な理由の差替えは違法であるとの趣旨の 告らは,本訴において本件各通知処分の適法性の根拠とし て被告が主張する理由は本件各通知処分の付記理由とは異なっているところ,処分の不服申立手続における事後的な理由の差替えは違法であるとの趣旨の主張をする。しかしながら,そもそも,税務署長は,更正の請求があった場合,調査の結果更正をすべき理由がないと判断したときは,請求者にその旨を通知すれば足り(通則法23条4項),その通知書に理由を付記すべきことは法律上要求されていない(通則法74条の2第1項)。また,一般に,取消訴訟における訴訟物は処分の違法性一般であるから,別異に解すべき特段の理由のない限り,行政庁は当該処分の効力を維持するための一切の法律上及び事実上の根拠を主張することが許されると解すべきところ(最高裁昭和51年(行ツ)第113号同53年9月19日第三小法廷判決・判例時報911号99頁参照),通則法の規定をみても,同法23条2項の更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分において理由が付された場合に,その差替えを認めないこととしなければ,行政庁の恣意を抑制し,かつ,不服申立ての便宜を図るという理由付記の機能が阻害されると解すべきような根拠はない。さらにいえば,実質的にも,本件各通知処分に付記された前記(2)①の理由と,本訴における本件各通知処分に係る被告の主張とは,いずれも別件大阪訴訟和解が通則法23条2項1号にいう判決と同一の効力を有する和解に該当しないとの範囲で共通であって,その差替えを認めることに特段の不都合があるとは考えられない。よって,原告らの上記主張は失当である。 また,原告らは,本件各更正処分等は,①別件被告らによる妨害の結果として原告らがその法定相続分に従った遺産を回復していないとの事実を無視し,上記のような妨害がなかったものとして課税すべき金 ある。 また,原告らは,本件各更正処分等は,①別件被告らによる妨害の結果として原告らがその法定相続分に従った遺産を回復していないとの事実を無視し,上記のような妨害がなかったものとして課税すべき金額及び税額を計算している点,②本件相続が開始した後の法定果実である非相続財産までもが算入されている点,において違法事由があるので更正されるべきであるとの趣旨の主張をするようである。しかしながら,これらの各事由は,通則 法23条2項各号に規定する事由ではないから,右京税務署長がこうした点を考慮することなく本件各通知処分を行ったとしても違法の問題が生じないものと解されるのは,既に説示したとおりである。仮にこの点を措くとしても,①については,相続自体は法的に被相続人の死亡によって開始している以上,我が国に居住している原告らは,Dの遺産のすべてをその法定相続割合に従って3分の1ずつ取得したことになるのであるから,その取得した財産の全部に対し相続税を課されるのはやむを得ないというべきであり(相続税法1条の3第1号,2条1項),別件被告らが原告らによる相続財産に対する支配を実力で妨害しているのであれば,原告らは別途その排除を求める法的措置等を執ることができる一方(前記認定のとおり,原告らは現に複数の民事訴訟を別件被告らに対して提起している。),相続財産に対する占有支配を及ぼしていないという事実だけでは,直ちに当該財産が相続財産に属さないとはいえないことは明らかである。さらに,②についても,既に前記2において認定説示したとおり,本件相続に係る相続財産の価額は本件各更正処分等における認定額を客観的に上回っていたものと認められることからすれば,原告らの主張が結局において失当であることは明らかというべきである。 (4)したがって,いずれにせよ,本件各 は本件各更正処分等における認定額を客観的に上回っていたものと認められることからすれば,原告らの主張が結局において失当であることは明らかというべきである。 (4)したがって,いずれにせよ,本件各通知処分は適法というべきである。 争点(5)について処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には,裁決の取消しの訴えにおいては,処分の違法を理由として取消しを求めることができないとされているところ(行政事件訴訟法10条2項),原告らは,本件各通知処分が違法である以上,その是正を求めた審査請求を棄却した本件裁決は違法である旨主張するのみであって,本件裁決固有の瑕疵を何ら具体的に主張しないから,本件裁決の取消しを求める請求はその主張自体失当というべきである。 第4 結論 以上のとおりであるから,本件訴えのうち本件各更正処分等の取消しを求める部分は不適法であるので却下し,原告らのその余の請求はいずれも理由がないので棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第2民事部裁判長裁判官西川知一郎裁判官岡田幸人裁判官石川慧子
▼ クリックして全文を表示