令和4(行ケ)21 選挙無効請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年11月14日 東京高等裁判所 棄却
ファイル
hanrei-pdf-91760.txt

判決文本文10,802 文字)

主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求令和4年7月10日に行われた参議院議員通常選挙中、比例代表選出議員選挙を無効とする。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は、令和4年7月10日に施行された参議院議員通常選挙(以下、単に「通常選挙」という。)のうち比例代表選出議員の選挙(以下「本件選挙」という。)について、選挙人である原告らが、議員定数の定め(公職選挙法4条2項)及びいわゆる特定枠制度(同法86条の3第1項柱書き後段)は、憲法に違反し無効であるから、これに基づいて施行された本件選挙は無効であり、また、本件選挙と同日に施行された参議院の選挙区選出議員の選挙は無効であるから本件選挙も無効であると主張して、公職選挙法204条に基づいて提起した選挙無効訴訟である。 2 前提となる事実原告らは、いずれも本件選挙の選挙人である。 ⑵ 本件選挙は、平成30年法律第75号によって改正された公職選挙法(以下「平成30年改正法」といい、上記改正を「平成30年改正」という。)の下で、令和4年7月10日、施行された。 ⑶ 平成30年改正は、①参議院選挙区選出議員の定数を2人増加させて148人とした上で、増加分を埼玉県選挙区に配分するとともに、②参議院比例代表選出議員の定数を4人増加させて100人とした(公職選挙法4条2項)ほか、③参議院比例代表選出議員の選挙において、非拘束名簿式比例代表制を維持しつつも、政党その他の政治団体(以下「政党等」という。)の判断により、優先的に当選人と なるべき候補者(以下「特定枠の候補者」という。)を定めることができるものとするいわゆる特定枠制度を導入するものであった。すなわち、政 以下「政党等」という。)の判断により、優先的に当選人と なるべき候補者(以下「特定枠の候補者」という。)を定めることができるものとするいわゆる特定枠制度を導入するものであった。すなわち、政党等が当該政党等の名称及び候補者とする者の氏名を記載した参議院名簿の届出をする場合に、候補者とする者のうちの一部の者について、特定枠の候補者として、その氏名及び特定枠の候補者の間における当選人となるべき順位をその他の候補者(以下「特定枠以外の候補者」という。)とする者の氏名と区分して当該参議院名簿に記載することができることとされ(平成30年改正後の公職選挙法86条の3第1項柱書き後段)、特定枠の候補者がある場合の参議院名簿登載者の間における当選人となるべき順位につき、特定枠の候補者の当選人となるべき順位は、特定枠以外の候補者の当選人となるべき順位より上位とし、特定枠以外の候補者の間における当選人となるべき順位は、その得票数の最も多い者から順次に定めることとされた(同法95条の3第4項)。 3 争点平成30年改正法ないし本件選挙について、以下の無効事由があるか否かが争点である。 ⑴ 特定枠制度の代表民主制違背⑵ 国民の信託に対する違反⑶ 国会の討議違反⑷ 立法目的の不存在⑸ 選挙区選出議員選挙の無効による本件選挙の無効 4 争点に関する当事者の主張⑴ 争点1(特定枠制度の代表民主制違背)について〔原告らの主張〕特定枠制度は、選挙区選出議員選挙において合区とされた「鳥取県及び島根県選挙区」及び「徳島県及び高知県選挙区」において候補者を擁立した県でない方の県の候補者各1名を、比例代表選出議員選挙の特定枠によって当選させるという現職 議員の救済ないし自由民主党議席の維持を目的として設けられたも 高知県選挙区」において候補者を擁立した県でない方の県の候補者各1名を、比例代表選出議員選挙の特定枠によって当選させるという現職 議員の救済ないし自由民主党議席の維持を目的として設けられたものであって、国民の意思を反映させる目的はないから、選出された議員は「全国民の代表者」(憲法43条1項)に該当しない。 また、平成30年改正の下で令和元年7月21日に施行された通常選挙における比例代表選出議員の選挙(以下「令和元年選挙」という。)において、れいわ新選組は2名の当選枠を得て、特定枠に指名された2名が当選し、同党で最高得票を獲得した者が落選したが、このことは、投票した国民の意思が無視され、政党の都合で当選者が決まることを意味する。 したがって、特定枠を認める選挙制度は、公正かつ効果的な代表を選ぶ制度ということができず、憲法に違反し、無効である。 〔被告の主張〕特定枠制度は、投票の結果すなわち選挙人の総意により当選人が決定される点において、選挙人が候補者個人を直接選択して投票する方式と異なるところはないから、憲法43条1項に違反するものではない。 ⑵ 争点2(国民の信託に対する違反)について〔原告らの主張〕ア国会は、公職選挙法の一部を改正する平成24年法律第94号(以下「平成24年改正法」という。)の附則において、平成28年に行われる通常選挙に向けて、選挙制度の抜本的な見直しについて検討し結論を出すものとすると約束した。 しかし、平成27年法律第60号(以下「平成27年改正法」という。)による公職選挙法の改正(以下「平成27年改正」という。)では、4県2合区を含む10増10減の是正をしたのみで、抜本的改正には至らず、その附則において、平成31年に行われる通常選挙に向けて、選挙制度の抜本的な見直しについて必ず結論 成27年改正」という。)では、4県2合区を含む10増10減の是正をしたのみで、抜本的改正には至らず、その附則において、平成31年に行われる通常選挙に向けて、選挙制度の抜本的な見直しについて必ず結論を得るものと約束した。ところが、令和元年選挙までに抜本的改革は行われず、平成30年改正では、議員数が6人増加(選挙区2人、比例代表4人)されるにとどまった。 そうすると、国会は、法律の附則において、抜本的改革を行う旨、期限を定めて2度も国民に約束しておきながら、これを履行していないことになる。これは、国民との約束違反(信託違反)であり、平成30年改正法は、憲法前文の「国政は、国民の厳粛な信託による」との規定に違反し、無効である。 イ自由民主党の安倍晋三総裁(当時)は、平成24年11月の国会における党首討論で、当時の野田佳彦首相に対し、国会議員が「身を切る改革」を進めること、すなわち国会議員の定数削減を約束した。野党第1党の党首と与党の党首との約束は、国民が注視する中での約束であるから、国民との約束でもある。ところが、国会は、本件選挙まで定数削減を行わず、平成30年改正において、逆に6人増加(選挙区2人、比例代表4人)させた。 そうすると、平成30年改正は、国民との約束違反(信託違反)であり、平成30年改正法は、前記アと同様に、憲法前文に違反し、無効である。 〔被告の主張〕原告らの上記主張は、独自の見解であり失当である。平成30年改正に当たって手続的瑕疵が存在しないことは、令和元年選挙に係る最高裁令和2年(行ツ)第78号同年11月18日大法廷判決・民集74巻8号2111頁(以下「令和2年大法廷判決」という。)が判示するとおりである。 ⑶ 争点3(国会の討議違反)について〔原告らの主張〕平成30年改正法につ 11月18日大法廷判決・民集74巻8号2111頁(以下「令和2年大法廷判決」という。)が判示するとおりである。 ⑶ 争点3(国会の討議違反)について〔原告らの主張〕平成30年改正法については、自由民主党案が平成30年6月14日に提出され、野党から最後の改正案が提出されたのは同年7月9日開催の参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会(以下「特別委員会」という。)の当日であった。 ところが、自由民主党案以外の野党案は、同日及び同月11日の特別委員会で全て否決又は審議未了となり、自由民主党案だけが本会議に送られた。 国会は、国民の代表者である議員を通じて(憲法前文)、議題を討論し、表決する場所である(憲法51条)から、平成30年改正に際し、野党案について上記の ような取扱いをしたことは、憲法が国会に与えた「討論」の権能を放棄するものとして、重大な手続違反に当たる。したがって、平成30年改正法は無効である。 〔被告の主張〕平成30年改正法に至る経緯や同改正の趣旨に照らせば、特別委員会の審理の経過のみを理由とする原告らの上記主張は前提を欠くものである。平成30年改正に当たって手続的瑕疵が存在しないことは、令和元年選挙に係る令和2年大法廷判決が判示するとおりである。 ⑷ 争点4(立法目的の不存在)について〔原告らの主張〕特定枠制度は、選挙区選出議員選挙において合区とされた「鳥取県及び島根県選挙区」及び「徳島県及び高知県選挙区」において候補者を擁立した県でない方の県の候補者各1名を、比例代表選出議員選挙の特定枠によって当選させることを目的として設けられたものであり、そのために必要となる4人分のみ定数を増加させたものであって、このような議員定数の増加は、自由民主党の「党利党略」に基づくものである。 によって当選させることを目的として設けられたものであり、そのために必要となる4人分のみ定数を増加させたものであって、このような議員定数の増加は、自由民主党の「党利党略」に基づくものである。 したがって、平成30年改正によって比例代表選出議員の定数を4人増加させたのは、不当な動機によるものであり、正当な立法目的が存在しないから、無効であり、これに基づいて施行された本件選挙も無効である。 〔被告の主張〕平成30年改正法に至る経緯や同改正の趣旨に照らせば、原告らの上記主張は前提を欠くものである。平成30年改正に当たって手続的瑕疵が存在しないことは、令和元年選挙に係る令和2年大法廷判決が判示するとおりである。 ⑸ 争点5(選挙区選出議員選挙の無効による本件選挙の無効)について〔原告らの主張〕現在、通常選挙には選挙区選出によるものと比例代表選出によるものとがあるが、これらは一つの通常選挙である。憲法は、参議院議員につき、選挙区選出であろう と比例代表選出であろうと、その地位、任期及び権能に何ら差を設けておらず、議員の議決権の価値及び内容に違いはない。このように、憲法上、選挙区選出議員選挙と比例代表選出議員選挙とは、1つの通常選挙であるから、これらのうちどちらかに無効原因があれば、もう一方も無効となり、通常選挙全体が無効となる。 そして、令和4年7月10日施行の通常選挙中の選挙区選出議員選挙は、議員定数が選挙区人口に比例して配分されていない等の理由により、違憲無効であるから、これにより同通常選挙中の比例代表選出議員選挙である本件選挙も無効となる。 〔被告の主張〕選挙区選出議員選挙及び比例代表選出議員選挙は、それぞれ選挙制度としての趣旨及び選挙の方法が異なるものであり、両者は異なる選挙であるから、後者の無効を求め 件選挙も無効となる。 〔被告の主張〕選挙区選出議員選挙及び比例代表選出議員選挙は、それぞれ選挙制度としての趣旨及び選挙の方法が異なるものであり、両者は異なる選挙であるから、後者の無効を求める訴訟において、前者の憲法適合性を問題とすることはできない。 第3 当裁判所の判断 1 事実認定前記前提となる事実のほか、証拠(本文中に掲記する。書証の枝番号は省略する。)及び弁論の全趣旨によれば、平成30年改正の経緯について、以下の事実が認められる。 ⑴ 平成29年2月、参議院の組織及び運営に関する諸問題を調査検討するため、各会派代表で構成される参議院改革協議会が設置され、同年4月、同協議会の下に、参議院選挙制度改革について集中的に調査検討を進めるために、各会派代表で構成される選挙制度に関する専門委員会(以下「専門委員会」という。)が設置された。 専門委員会は、同年5月から平成30年4月にかけて17回にわたり参議院の選挙制度に関する協議を行い、同年5月7日、参議院の在り方、一票の較差、選挙制度の枠組み(選挙区制、比例代表制、ブロック選挙区制、奇数配当の可否、連記制の導入など)や議員定数の在り方といった論点ごとの意見を取りまとめ、参議院選挙制度改革に関する具体的な方向性についての各会派の意見を併記する形で作成した「参議院改革協議会選挙制度に関する専門委員会報告書」を、参議院改革協議会 に提出した(乙1ないし7)。 ⑵ 参議院改革協議会においては、専門委員会から前記⑴の報告書の提出を受けて協議をしたが、各会派の意見に隔たりがある中で、平成30年7月4日、各会派代表者懇談会において、各会派において法案を提出し、特別委員会に付託することとなった。 そして、各会派において検討が進められた結果、①選挙区選出議員の定数を2人 中で、平成30年7月4日、各会派代表者懇談会において、各会派において法案を提出し、特別委員会に付託することとなった。 そして、各会派において検討が進められた結果、①選挙区選出議員の定数を2人増加して148人とした上で、2人を埼玉県選挙区に配分してその改選定数を4人とし、選挙区間の最大較差を2.985倍とするとともに、比例代表選出議員の定数を4人増加して100人とした上で、比例代表選挙において、名簿にあらかじめ順位を付する拘束式の特定枠を設けることができるとの制度を導入することなどを内容とする自由民主党、こころ及び無所属クラブによる法律案(以下「本件改正案」という。)や、②現行の制度に代えて、全国を11の区域に分けて大選挙区制を採用する公明党案、③選挙区選出議員の定数を2人増加した上で、これを埼玉県選挙区に配分するとともに、比例代表選出議員の定数を2人削減する国民民主党・新緑風会案、④参議院議員の定数を218人にするとともに、全国を11の区域に分けて大選挙区制を採用する日本維新の会案、⑤選挙区選出議員について、福井県と石川県を合区することによって定数を2人削減し、埼玉県選挙区を2人増加する立憲民主党・民友会及び希望の党案が、特別委員会に付託され、同月6日以降、質疑が行われた。 その結果、同月11日、特別委員会において、本件改正案が多数をもって可決すべきものと決定され、その際、「今後の参議院選挙制度改革については、憲法の趣旨にのっとり、参議院の役割及び在り方を踏まえ引き続き検討を行うこと」についてその実現に努めるべきこと等を内容とする附帯決議がされた。 その後、同月18日、本件改正案に係る公職選挙法の一部を改正する法律案が成立し(平成30年改正法)、同年10月25日に施行された(乙7、10ないし12)。 ⑶ 本件 決議がされた。 その後、同月18日、本件改正案に係る公職選挙法の一部を改正する法律案が成立し(平成30年改正法)、同年10月25日に施行された(乙7、10ないし12)。 ⑶ 本件改正案の提出者は、特別委員会における立法趣旨説明において、今回の改正案は、平成27年改正公職選挙法の附則や同改正を合憲とした最高裁平成29年(行ツ)第47号同年9月27日大法廷判決・民集71巻7号1139頁の趣旨を踏まえ、選挙区間の最大較差を更に縮小すると同時に、合区解消に関する地方六団体による決議や35もの県議会の意見書を受けて、都道府県単位の地方の声を国政に届けるとともに、現代社会における様々な民意の多様化の中で、少数意見や多様な民意を代表する参議院議員を選出することを可能にすることを目的としていること、そのため、4県2合区の単純な解消は見送りつつも、合区対象県の拡大については、合区により、異なる生活圏・経済圏が含まれる選挙区となることや、人口規模が大きく異なるため吸収合併的となることが懸念されることから、これを行うことなく選挙区の較差拡大を抑制するべく、選挙区選挙においては、埼玉県と福井県との間で3.07倍になっている最大較差を3倍未満の2.985倍にするために、定数を2人増加させて埼玉県選挙区にこれを配分したこと、比例代表選挙においては、平成27年改正において4県2合区が導入され、人口減少県の民意を国政に届けることを求める声も高まっており、現代社会において民意の多様化が著しいことを踏まえて、参議院創設以来、多様な民意を酌み取ってきた全国比例区の定数を4人増加させたこと、さらに、比例代表選挙において、現行の非拘束名簿について拘束式の特定枠を設けることができることとして、全国的な支持基盤や知名度を有するとはいえないが国政上有為な人材や、様 定数を4人増加させたこと、さらに、比例代表選挙において、現行の非拘束名簿について拘束式の特定枠を設けることができることとして、全国的な支持基盤や知名度を有するとはいえないが国政上有為な人材や、様々な意味での少数意見や多様性を代表する者、政党が民意反映の役割を果たす上で必要な人材などが当選しやすくなることで、人口的に少数派ともいうべき条件不利地域をも含めた地域の住民の生活や安全を守るという観点などからも、国政上有為といい得る人材の当選の機会を高めることを可能とし、合区問題にある程度対応し得るものとして活用できるようにしたところである旨述べている(乙10の1、乙11)。 2 争点1(特定枠制度の代表民主制違背)について原告らは、特定枠制度は、選挙区選出議員選挙において合区をしたために候補者 を擁立できなかった県の候補者を、比例代表選出議員選挙の特定枠によって当選させるという現職議員の救済ないし自由民主党議席の維持を目的するものであり、国民の意思を反映させる目的はないから、選出された議員は「全国民の代表者」(憲法43条1項)に該当せず、また、投票した国民の意思が無視され、政党の都合で当選者が決まるものであるから、公正かつ効果的な代表を選ぶ制度ということができず、憲法に違反し、無効である旨主張する。 しかし、前記のとおり、特定枠制度は、全国的な支持基盤や知名度を有するとはいえないが国政上有為な人材や、様々な意味での少数意見や多様性を代表する者、政党が民意反映の役割を果たす上で必要な人材などが当選しやすくなることで、人口的に少数派ともいうべきいわゆる条件不利地域をも含めた地域の住民の生活や安全を守るという観点などからも、国政上有為といい得る人材の当選の機会を高めることを可能とし、合区問題にある程度対応し得るものとして活用でき もいうべきいわゆる条件不利地域をも含めた地域の住民の生活や安全を守るという観点などからも、国政上有為といい得る人材の当選の機会を高めることを可能とし、合区問題にある程度対応し得るものとして活用できるようにしたものと説明されているのであって、国民の意思を反映しないものであるとはいえないし、立法目的及び立法手段が正当でないとはいえない。そして、本件改正後の参議院(比例代表選出)議員の選挙制度は、政党等にあらかじめ候補者の氏名及び特定枠の候補者を定める場合にはその氏名等を記載した名簿を届け出させた上、選挙人が名簿登載者又は政党等を選択して投票を行い、各政党等の得票数(当該政党等に係る各参議院名簿登載者の得票数を含む。)に基づきその当選人数を決定した上、各政党等の名簿に記載された特定枠の順位及び各候補者の得票数の多寡に応じて当選人を決定する選挙制度であるから、投票の結果すなわち選挙人の総意により当選人が決定される点において、選挙人が候補者個人を直接選択して投票する方式と異なるところはない。そうすると、本件改正後の参議院(比例代表選出)議員の選挙に関する公職選挙法の規定は憲法43条1項等の憲法の規定に違反するものではない(最高裁平成11年(行ツ)第8号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1577頁及び最高裁平成15年(行ツ)第15号同16年1月14日大法廷判決・民集58巻1号1頁参照)。 したがって、原告らの上記主張は、採用することができない。 3 争点2(国民の信託に対する違反)について原告らは、①国会は、平成24年改正法の附則及び平成27年改正法の附則において、いずれも選挙制度の抜本的な見直しについて検討を行い結論を得る旨規定したにもかかわらず、平成27年改正及び平成30年改正のいずれにおいても抜本的改革を行っ の附則及び平成27年改正法の附則において、いずれも選挙制度の抜本的な見直しについて検討を行い結論を得る旨規定したにもかかわらず、平成27年改正及び平成30年改正のいずれにおいても抜本的改革を行っておらず、法律の附則において、抜本的改革を行う旨、期限を定めて2度も国民に約束しておきながら、これを履行していないから、国民との約束違反(信託違反)であり、また、②自由民主党の安倍晋三総裁(当時)は、平成24年11月の党首討論で、当時の野田佳彦首相に対し、国会議員の定数削減を約束したにもかかわらず、平成30年改正において、逆に定数を6人増加させたことも、国民との約束違反(信託違反)であるから、平成30年改正法は違憲無効である旨主張する。 しかし、①については、参議院における全都道府県の区域を通じた比例代表選出議員選挙においては、投票価値の較差ないし不平等の問題は存在しないから、原告らの主張は、結局、選挙区選出議員選挙について平成30年改正法が抜本的改正をしていないことをもって、比例代表選出議員選挙である本件選挙も無効であることを主張するものと解される。しかし、比例代表選出議員選挙と選挙区選出議員選挙とは選挙制度としての趣旨及び方法や選挙区割りが異なる選挙であるから、同じ参議院議員を選出する選挙であるからといって、比例代表選出議員選挙の無効を求める訴訟において、選挙区選出議員選挙の仕組みの憲法適合性を問題とすることは認められないというべきである(前掲最高裁平成11年11月10日大法廷判決参照)。 ②については、約10年前に行われた党首討論において当時の自由民主党総裁が定数削減の意向を表明していたからといって、それだけでは、所定の手続にのっとって国会で成立した平成30年改正法による参議院議員の定数の規定を無効とする根拠とはなり得ない。 時の自由民主党総裁が定数削減の意向を表明していたからといって、それだけでは、所定の手続にのっとって国会で成立した平成30年改正法による参議院議員の定数の規定を無効とする根拠とはなり得ない。 したがって、原告らの上記主張は、いずれも採用することができない。 4 争点3(国会の討議違反)について原告らは、平成30年改正の際の野党案の取扱いについて、憲法が国会に与えた「討論」の権能を放棄するものとして重大な手続違反に当たるから、平成30年改正法は無効である旨主張する。 しかし、平成30年改正法が成立した経緯は前記1で認定したとおりであるところ、所定の手続にのっとって成立した法律の効力が、国会における審議の内容、経過により左右される余地はないから、国会による審議経過の不当をいう原告らの主張は採用することができない(前掲最高裁平成16年1月14日大法廷判決参照)。 5 争点4(立法目的の不存在)について原告らは、平成30年改正によって比例代表選出議員の定数を4人増加させたのは、選挙区選出議員選挙において合区をしたために候補者を擁立できなかった県の候補者を比例代表選出議員選挙の特定枠によって当選させることを目的として、そのために必要となる4人分のみ定数を増加させたものであり、このような議員定数の増加は、自由民主党の「党利党略」に基づくものであって、不当な動機によるものであり、正当な立法目的が存在しないから、無効であり、これに基づいて施行された本件選挙も無効である旨主張する。 しかし、前記1⑶で認定したとおり、比例代表選出議員の定数の増加については、平成27年改正において4県2合区が導入され、人口減少県の民意を国政に届けることを求める声も高まっており、現代社会において民意の多様化が著しいことを踏まえて、参議院創 出議員の定数の増加については、平成27年改正において4県2合区が導入され、人口減少県の民意を国政に届けることを求める声も高まっており、現代社会において民意の多様化が著しいことを踏まえて、参議院創設以来、多様な民意を酌み取ってきた全国比例区の定数を4人増加させたものであると説明されており、かかる説明自体に不合理な点があるとはいえない。 そうすると、平成30年改正によって比例代表選出議員の定数を4人増加させたことについて、立法目的及び立法手段が正当でないとはいえない。 したがって、原告らの上記主張は、採用することができない。 6 争点5(選挙区選出議員選挙の無効による本件選挙の無効)について 原告らは、憲法上、選挙区選出議員選挙と比例代表選出議員選挙とは1つの通常選挙であるから、これらのうちどちらかに無効原因があれば、もう一方も無効となり、通常選挙全体が無効となるところ、令和4年7月10日施行の通常選挙中の選挙区選出議員選挙は、議員定数が選挙区人口に比例して配分されていない等の理由により、違憲無効であるから、これにより同通常選挙中の比例代表選出議員選挙である本件選挙も無効となる旨主張する。 しかし、前記3で説示したとおり、同じ参議院議員を選出する選挙であるからといって、比例代表選出議員選挙の無効を求める訴訟において、選挙区選出議員選挙の仕組みの憲法適合性を問題とすることはできない。 したがって、原告らの上記主張は、採用することができない。 7 小括以上のとおり、平成30年改正法について原告らが主張する無効事由は、いずれも認められない。 第4 結論よって、原告らの請求はいずれも理由がないからこれをいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第5民事部 主文 よって、原告らの請求はいずれも理由がないからこれをいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 理由 東京高等裁判所第5民事部 裁判長裁判官木納敏和 裁判官和久田雄 裁判官上原卓也

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る