平成27年第1号損害賠償請求事件 判決 主文 被告会社D及び被告Eは,原告Aに対し,連帯して3100万8696円及びこれに対する平成27年1月14日から支払済み まで年5分の割合による金員を,うち1033万6232円及びこれに対する同年2月5日から支払済みまで年5分の割合による金員は被告宇都宮市と連帯して支払え。 ⑵ 被告宇都宮市は,原告Aに対し,1033万6232円及びこれに対する同年2月5日から支払済みまで年5分の割合による 金員を被告会社D及び被告Eと連帯して支払え。 被告会社D及び被告Eは,原告Bに対し,連帯して3100万8696円及びこれに対する平成27年1月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を,うち1033万6232円及びこれに対する同年2月5日から支払済みまで年5分の割合によ る金員は被告宇都宮市と連帯して支払え。 ⑵ 被告宇都宮市は,原告Bに対し,1033万6232円及びこれに対する同年2月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を被告会社D及び被告Eと連帯して支払え。 3 被告Eは,原告らに対し,それぞれ55万円及びこれに対する平 成27年1月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告らの被告F,被告G,被告H及び被告Iに対する各請求並びに被告会社D,被告E及び被告宇都宮市に対するその余の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用は,⑴原告らに生じた費用の4分の1と被告Eの3分の2及び被告会社Dに生じた費用を20分し,その9を原告らの,その余を被告E及び被告会社Dの各負担とし,⑵原告らに生じた費用の4分の1と被告宇都宮市に生じた費用を5分し,その1を被告宇都宮市の,その余を原 被告会社Dに生じた費用を20分し,その9を原告らの,その余を被告E及び被告会社Dの各負担とし,⑵原告らに生じた費用の4分の1と被告宇都宮市に生じた費用を5分し,その1を被告宇都宮市の,その余を原告らの各負担とし,⑶原告らに生じた費用の 4分の1と被告F,被告G,被告H及び被告Iに生じた費用はいずれも原告らの各負担とし,原告らと被告Eに生じた各その余の費用はこれを2分し,それぞれを各自の負担とする。 6 この判決は,1項⑴,2項⑴及び3項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告らは,原告Aに対し,連帯して,5601万1153円及びこれに対する被告市については平成27年2月5日から,被告会社D,被告E,被告H,被告I,被告F及び被告Gについては同年1月14日から,各支払済みまで年 5分の割合による金員を支払え。 2 被告らは,原告Bに対し,連帯して,5601万1153円及びこれに対する被告市については平成27年2月5日から,被告会社D,被告E,被告H,被告I,被告F及び被告Gについては同年1月14日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告Eは,原告らに対し,それぞれ110万円及びこれに対する平成27年1月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,原告らが,被告会社Dが経営する認可外保育施設「J」に託児していた原告らの子であるCが平成26年7月26日未明に死亡した事件(以下 「本件事件」という。)について,ア)被告会社Dに対しては保育委託契約(準 委任契約)上の債務不履行又は不法行為(民法715条又は会社法350条)に基づき,イ)被告E,被告H,被告I,被告G及び被告Fに という。)について,ア)被告会社Dに対しては保育委託契約(準 委任契約)上の債務不履行又は不法行為(民法715条又は会社法350条)に基づき,イ)被告E,被告H,被告I,被告G及び被告Fに対しては民法709条(又は被告Fにつき会社法429条)の不法行為に基づき,ウ)被告市に対しては被告市の市長が認可外保育施設に対する規制権限等の適正な行使を怠ったなどとして国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき,連 帯して,それぞれ,損害賠償として5601万1153円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日(被告市につき平成27年2月5日,それ以外の被告らにつき同年1月14日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延被告Eに対し,同被告が原告らの名誉を毀損したとして,それぞれ不法行為に基づく損害賠償として110万円及びこれに対する 平成27年1月14日から支払済みまで同法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 なお,本件各請求のうち上記⑴に係るものを「本件請求⑴」,同⑵に係るものを「本件請求⑵」という。 2 前提事実 争いのない事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ⑴ 当事者ア原告ら原告Aは,C(平成25年9月29日生)の父親であり,原告Bは,C の母親である。 イ被告会社D,被告E,被告F,被告G,被告H及び被告I 被告会社Dは,宇都宮市a町b番c号において,学習塾の経営,保育所の経営,託児所の経営などを目的として,平成10年1月6日に設立された法人である。 被告会社Dは,平成15年8月1日から,宇都宮市a町b番c号所在のdビルにおいて,「J」の名称で,児童福祉法( の経営などを目的として,平成10年1月6日に設立された法人である。 被告会社Dは,平成15年8月1日から,宇都宮市a町b番c号所在のdビルにおいて,「J」の名称で,児童福祉法(以下「法」という。)35条4項の認可を受けていない「認可外保育施設」を開設し,同年12月26日,宇都宮市に対し,法59条の2に基づき,認可外保育施設設置届を提出した。 なお,Jは,平成26年12月1日付で廃止した旨の認可外保育施設廃止届出書を被告市に提出している(甲A133)。 被告E,被告F,被告G,被告H及び被告I(以下一括して「被告Eほか4名」という。また,この被告Eほか4名と被告会社Dを一括して「被告会社Dら」という。) a 被告Eは,本件事件当時,被告会社Dの取締役であるとともに,保育士の資格を有し,Jの園長として,Jにおいて,保育業務に従事していた者である。 b 被告Fは,被告Eの実父であり,本件事件当時,被告会社Dの運営報告書上,「代表者」と記載されていた者である(甲A22)。 c 被告Gは,被告Eの実母であって,本件事件当時,保育士として,Jに勤務,保育業務に従事していた者である。 d 被告Hは,被告Eの長女であり,本件事件当時,保育士として,Jに勤務し,保育業務に従事していた者である。 e 被告Iは,被告Eの二男であり,本件事件当時,Jにおいて,保育 士としてではなく,被告Eの保育業務の手伝いをしていた者である。 ウ被告市被告市は,地方自治法252条の22第1項に定める中核都市であり,法59条の4より被告市の市長が,法59条等に基づき,被告市内に設置された認可外保育施設に対して指導監督責任を負うものである。 ⑵ 本 自治法252条の22第1項に定める中核都市であり,法59条の4より被告市の市長が,法59条等に基づき,被告市内に設置された認可外保育施設に対して指導監督責任を負うものである。 ⑵ 本件事件の発生等 ア原告らは,平成26年1月11日,被告会社Dとの間で,同人が経営するJにおいてCの保育(宿泊保育を含む)を行う旨の保育委託契約を締結した(甲A1ないし3・甲A47・以下「本件保育契約」という。)。 被告会社Dは,本件保育契約上,原告らに対し,乳幼児であるCの生命・身体の安全を確保すべき,以下の内容の安全配慮義務を負っていた。 睡眠中の子どもの顔色や呼吸の状態をきめ細かく観察すること保育中に急性期の症状が見られた場合には,保護者に連絡するとともに,適宜,嘱託医や子どものかかりつけ医等と相談し,適切な措置を行うこと特に,高熱,脱水症状といった救急対応が必要な場合,嘱託医やかか りつけ医又は適切な医療機関にその指示を求めたり,受診させるほか,必要な場合には救急車の出動を要請するなど,迅速に対応すること 被告市は,平成26年5月27日,Jについて,その利用者(保護者)から,父親が息子を迎えに行ったところ,息子の左人差し指の爪が全部剥がれていたなどとする通報を受け(丙1・以下「本件通報①」という。), その翌日の同月28日には,Jで働いている従業員の知人と名乗る匿名の人物から,電話で,Jでは人手が足りないので子どもを毛布でぐるぐる巻いて紐で縛って動けないようにしているなどといった情報提供とともに,予告無しに立入調査をして,施設の状況確認をして欲しいとの通報を受けた(丙2・以下「本件通報②」といい,本件通報①と一括し て「本件各通報」という。)。 上記の通 いった情報提供とともに,予告無しに立入調査をして,施設の状況確認をして欲しいとの通報を受けた(丙2・以下「本件通報②」といい,本件通報①と一括し て「本件各通報」という。)。 上記の通報を受け,被告市は,同月29日,事前に,Jの園長である被告Eに連絡し,予告した上,Jを訪問し,保育施設の状況等を調査した(丙2・以下「本件調査」という。)。 原告らは,同年7月23日から同月26日までの間,本件保育契約に 基づき,宿泊保育を目的として,被告会社Dが運営するJに,Cを預け た。 Cは,同月26日未明,J内において,脱水症等により死亡した。同日午前5時58分に救急隊が到着した時には,Cは全身に死後硬直,死斑が生じており,救急搬送すらされない状態であった(甲A11)。 3 関連法令の定め 別紙「関連法令の定め(抜粋)」に記載のとおりである。 4 争点及びこれに対する当事者の主張⑴ 本件請求⑴に係る被告らの責任(以下「争点⑴」という。)ア被告会社Dらの責任について(以下「争点⑴ア」という。) 責任原因 a 被告会社Dについて【原告らの主張】⒜ 債務不履行責任(安全配慮義務違反)について被告会社Dは,本件保育契約上,原告らに対し,被告Eほか4名を履行補助者として,乳幼児であるCの生命・身体の安全を確保す 安全配慮義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,猛暑の中,下痢や発熱の症状が現れているCに,保育者として当然なすべき生存に必要な措置を講じることなく放置し,平成26年7月26日午前2時頃,脱水症等を原因としてCを死亡させた。 ⒝ 使用者責任について被告 として当然なすべき生存に必要な措置を講じることなく放置し,平成26年7月26日午前2時頃,脱水症等を原因としてCを死亡させた。 ⒝ 使用者責任について被告会社Dは,Jの保育従事者として,被告E,被告H,被告G及び被告Iを雇用していたところ,これらの被告は,下記のとおり,Cに関するJの保育業務に従事していた者として,Cの死亡について民法709条の不法行為責任を負うものと解され,したがって, 被告会社Dは,Cの死亡につき使用者責任を負う。 ⒞ なお,被告Eは,被告会社Dの取締役でもあるから,被告会社Dは,被告Eの上記不法行為につき会社法350条の損害賠償責任を負う。 【被告会社Dの反論】⒜ 債務不履行責任(安全配慮義務違反)について 被告会社Dが本件保育契約に基づき原告らに対してCの生命及び身体の安全に配慮する義務を負っていたことは認めるが,その余は否認ないし争う。 ⒝ 使用者責任について被告E,被告H,被告I及び被告GがJにおいて被告会社Dの保 育業務に従事していたことは認めるが,その余は否認ないし争う。 b 被告Eの責任について【原告らの主張】被告Eは,平成26年7月23日から同月26日までの間,J内において,主としてCの宿泊保育に担当,従事していた者であるところ, 同被告は,Cが同月23日から同月25日までの3日間に計14回も水様便をしていたこと,そして,同月25日午後0時の時点で38. 1度の発熱があり,唇が乾燥し,ぐったりとするなどの顕著な脱水症状が現れていることを認識していたのであるから,遅くとも同日午後0時の時点において ていたこと,そして,同月25日午後0時の時点で38. 1度の発熱があり,唇が乾燥し,ぐったりとするなどの顕著な脱水症状が現れていることを認識していたのであるから,遅くとも同日午後0時の時点において,Cに適切な医療行為を受けさせ,その生存に必 要な措置(保護)を講じるべき注意義務を負っていた。 にもかかわらず,被告Eは,Cに対して適時適切に医師の診療を受けさせることなく,Cを漫然放置したものであり,民法709条所定の不法行為責任を負う。 【被告Eの反論】 否認ないし争う。確かに,被告Eは,Cが宿泊保育を開始した平成 26年7月23日から同月25日までの間,下痢気味であることに気付いていたが,特に体調が悪いものとは認識していなかった。そして,同被告は,同月26日午前0時以降,30分間隔でCの睡眠の妨げとならないように乳児室のドア付近からCの様子を確認しており,同日午前5時頃までは,仰向けの姿勢で静かに寝ていたことを確認した。 ところが,同日午前5時30分頃に確認したところ,Cは表情に血の気がなく,呼吸をしていないことに気づき,直ちに心臓マッサージをし,救急に通報した。以上のとおり,被告Eは,顕著な脱水症状が現れているCを認識し,これを放置したものではなく,原告らの主張は理由がない。 c 被告Iについて【原告らの主張】⒜ 被告Iは,Jにおいて,被告Eの保育業務の手伝いを通じて,被告会社Dの業務に従事していたものであるところ,平成26年7月23日午前7時頃,乳幼児を送迎するためJに赴き,dビル3階東 側にあるピンク色の乳児室においてCの状態を見ていただけでなく,以降,被告Eの指示の下で,Cにミルクを与えたり,Cのおむつを替えたり,他 前7時頃,乳幼児を送迎するためJに赴き,dビル3階東 側にあるピンク色の乳児室においてCの状態を見ていただけでなく,以降,被告Eの指示の下で,Cにミルクを与えたり,Cのおむつを替えたり,他の預かり児童と同様に,Cの身体を大人用のワイシャツ又は毛布で縛るなどしていた。 このような経過等からみて,被告Iは,同月25日午後3時頃の 時点で,Cの身体に異常が生じていること,具体的には,唇が乾燥し,ぐったりするなどの顕著な脱水状態にあり,このまま医師の診察を受けさせなければ,Cの生命身体に対して重大な危険が生じることを十分に認識し,予見することができたものとみるのが自然であるから,遅くとも同日午後9時頃までの間に,Cに医師の診察を 受けさせるべき注意義務を負っていたというべきである。にもかか わらず,被告Iは,Cに医師の診療を受けさせることなく,Cを漫然放置したものであり,民法709条の不法行為責任を負う。 ⒝ 被告Iは,第2回口頭弁論期日において,平成27年5月27日付け被告準備書面⑴をもって,「被告Iが平成26年7月23日午前7時30分から同月24日午前1時20分まで,同日午前7時4 0分から同日午後9時00分まで,同月25日午前7時30分から同月26日午前0時10分まで及び同日午前5時38分から同日午前5時58分までの間,Cの保育に関与した」ことを自認したにもかかわらず,その後の準備書面(平成27年11月24日付け被告第4準備書面)において,これを撤回している。しかし,被告I の上記自認は裁判上の自白に当たるから撤回は許されない。 【被告Iの反論】⒜ 争う。被告Iは,本件事件につき不法行為責任を負わない。 被告Iは,Cのおむつを交換したことは認めるが,Cの 判上の自白に当たるから撤回は許されない。 【被告Iの反論】⒜ 争う。被告Iは,本件事件につき不法行為責任を負わない。 被告Iは,Cのおむつを交換したことは認めるが,Cの検温を行っていないし,Cをワイシャツ又は毛布で縛った事実はない。 そもそも,被告Iは,保育士ではなく,看護保育について専門的知識を有していたわけではないから,Cのおむつ交換をした程度ではその異常を認識することはできなかった。また被告Iは,平成26年7月25日午前8時30分から午前9時30分までの間及び同日午後3時から午後8時までの間はJで預かっていた子供の送 迎をしており,また,同日午後9時から同月26日午前5時40分頃までの間は小山市に出かけたり,自室において就寝しており,Cの健康状態を把握していなかった。 そのため,被告Iは,Cの身体に異常が生じていること,具体的には唇が乾燥し,ぐったりするなどの顕著な脱水症状にあることを 認識していなかったのであるから,被告Iは,原告らが主張するよ うな,Cに医師の診察を受けさせるなどの義務を負うものではない。 ⒝ 原告らは,被告Iにおける主張に対し未だ認否をしていないのであるから,被告Iの上記主張(自認)は,裁判上の自白とはいえない。したがって,被告Iの被告第4準備書面にお ける撤回は,単なる主張の変更にすぎず,裁判上の自白の撤回には当たらない。 d 被告Hの責任原因について【原告らの主張】⒜ 被告Hは,平成26年7月23日から同月26日までの間,J内 において,Cの宿泊保育に従事していた者であって,Cが同月23日から同月25日までの3日間に計14回も水様便をしていたこと,そして,同月25日午後0時の 月23日から同月26日までの間,J内 において,Cの宿泊保育に従事していた者であって,Cが同月23日から同月25日までの3日間に計14回も水様便をしていたこと,そして,同月25日午後0時の時点で38.1度の発熱があり,唇が乾燥し,ぐったりとするなどの顕著な脱水症状が現れていることを認識することができたのであるから,遅くとも同日午後0時の時 点において,Cに適切な医療行為を受けさせ,その生存に必要な措置(保護)を講じるべき注意義務を負っていた。 にもかかわらず,被告Hは,Cに対して適時適切に医師の診療を受けさせることなく漫然放置し,Cを死亡させたものであり,民法709条所定の不法行為責任を負う。 ⒝ 被告Hは,第2回口頭弁論期日において,平成27年5月27日付け被告準備書面⑴をもって,「平成26年7月23日午後8時00分から同月24日午前1時20分まで,同日午前7時40分及び同月25日午後7時00分から同月26日午前0時10分までの間,Cの保育に関与した」ことを自認しておきながら,その後の準備書 面(被告第4準備書面)で,これを撤回している。しかし,被告H の上記自認は裁判上の自白に当たるから撤回は許されない。 【被告Hの反論】⒜ 争う。被告Hは,本件事件につき不法行為責任を負わない。 被告Hは,事件当時,社会福祉法人Kに勤務しており,平成26年7月23日から同月26日までの期間,Cの保育に全く関与して いない。そのため,Cの身体に異常が生じていること,具体的には唇が乾燥し,ぐったりするなどの顕著な脱水症状にあることを認識していなかったのであるから,被告Hには,医師の診察を受けさせるなどの作為義務は生じない。 ⒝ 原告らは,被告Hの被告 には唇が乾燥し,ぐったりするなどの顕著な脱水症状にあることを認識していなかったのであるから,被告Hには,医師の診察を受けさせるなどの作為義務は生じない。 ⒝ 原告らは,被告Hの被告準備書面⑵における主張に対し,未だ認 否をしていないのであるから,被告Hの上記主張(自認)は,裁判上の自白とはいえない。したがって,被告Hの被告第4準備書面における撤回は,裁判上の自白の撤回には当たらず,単なる主張の変更にすぎない。 e 被告Fについて 【原告らの主張】⒜ 主位的請求被告Fは,被告会社Dのパンフレット及びホームページに「代表」として表示されていた。また,被告市に対して提出する運営状況報告書にも,平成21年以降,同人が被告会社Dの「代表者」ないし 「管理者」として表示されていた。さらに,被告Fは,被告会社Dが開催するJの内覧見学会に際しても自身を被告会社Dの責任者であると紹介していたほか,平成26年8月10日,被告Eらとともに原告ら宅を訪れ,Jの代表者として挨拶した。これらの事情からみて,被告Fは,被告会社Dの業務運営・執行について,Jの実質 的な経営者として,会社登記簿上の取締役である被告Eに匹敵する 権限を有していたものと解されるから,委託を受けた乳幼児の生命・身体の安全を確保するよう指導監督すべき注意義務を負っていたものというべきである。 にもかかわらず,被告Fは,かかる指導監督義務を怠り,被告E,被告H,被告I及び被告Gらが,委託を受けた乳幼児であるCの生 命・身体の安全を確保せず,猛暑の中,下痢・発熱のあったCを適切に保護することなく漫然放置する事態を生じさせ,Cを死亡させたものであり,民法709条の不法行為責任を負う。 予備的 命・身体の安全を確保せず,猛暑の中,下痢・発熱のあったCを適切に保護することなく漫然放置する事態を生じさせ,Cを死亡させたものであり,民法709条の不法行為責任を負う。 予備的請求また,被告Fは,本件事件当時,被告会社Dの取締役である被告 Eと実質的には同じ立場にあったことから,Jの違法な保育行為を防止するための体制構築その他適切な措置を講ずべき職務上の注意義務を負っているところ,これを懈怠したため,原告ら及びCに対し,会社法429条1項の類推適用に基づく責任を負う。 【被告Fの反論】 ⒜ 主位的請求について被告Fが,被告会社DのパンフレットやホームページにJの「代表」として表示されていたこと,Jの内覧見学会に出ていたこと,Jが提供している「送迎・同行サービス」業務に従事し,Jが運行・使用する自動車の運転手として稼働していたこと,そして,平成2 6年8月10日に被告Eらとともに原告ら宅を訪れたことは認め,その余は否認する。 被告FがJの説明会等において,利用者に対して保育内容等についての説明等を行った事実はない。被告会社Dは,被告Eが実質的には設置,運営していたものであり,被告Fは名目的に代表者の地 位にあったにすぎない。被告Fが実際に被告会社Dの業務の運営, 執行について取締役に匹敵する権限を有し,これを継続的に行使していたという事実はなく,被告Fは民法709条の不法行為責任を負わない。 予備的請求について被告Fは,実際に被告会社Dの業務の運営や執行について取締役 に匹敵する権限を有し,継続的にかかる権限を行使して被告会社Dの業務執行に従事していたということはなく,被告Fは会社法42 被告Fは,実際に被告会社Dの業務の運営や執行について取締役 に匹敵する権限を有し,継続的にかかる権限を行使して被告会社Dの業務執行に従事していたということはなく,被告Fは会社法429条1項の類推適用による責任を負わされるいわれはない。 f 被告Gについて【原告らの主張】 被告Gは,平成26年7月23日から同月26日までの間,J内において,Cの宿泊保育に従事していた者であって,Cが同月23日から同月25日までの3日間に計14回も水様便をしていたこと,そして,同月25日午後0時の時点で38.1度の発熱があり,唇が乾燥し,ぐったりとするなどの顕著な脱水症状が現れていることを認識す ることができたのであるから,遅くとも同日午後0時の時点において,Cに適切な医療行為を受けさせ,その生存に必要な措置(保護)を講じるべき注意義務を負っていた。 にもかかわらず,被告Gは,Cに対して適時適切に医師の診療を受けさせることなく漫然放置し,Cを死亡させたものであり,民法70 9条所定の不法行為責任を負う。 【被告Gの主張】否認する。平成26年7月23日から同月26日までの間,Cの宿泊保育を担当していた者は被告E一人であって,被告Gは,Cの保育には関与しておらず,民法709条の不法行為責任を負わない。 被告会社Dらの責任原因とCの死亡との間の相当因果関係の有無に ついて【原告らの主張】Cの死亡原因は,暑熱環境下の脱水による熱中症であって,その死亡時刻は遅くとも平成26年7月26日午前2時頃であるところ,Cは,Jに委託保育されていた同月23日及び24日に下痢を一日に7回も 繰り返していただけでなく,同月25日午後3時の時点では38度以上の発熱 くとも平成26年7月26日午前2時頃であるところ,Cは,Jに委託保育されていた同月23日及び24日に下痢を一日に7回も 繰り返していただけでなく,同月25日午後3時の時点では38度以上の発熱があり,その後も38度以上の高熱が継続していた。しかし,被告ECに対して,十分な水分を与えるとともに,その健康状態の確認を行って,その看護に必要な措置(医師への受診等)を講じていたならば,Cの上記熱中症の進行を防止する ことができ,上記時点における死亡という結果を回避することができた蓋然性は高い。したがって,被告Eらの上記義務違反とCの死亡との間に相当因果関係が認められることは明らかである。 【被告会社Dらの反論】否認ないし争う。原告らが主張するCの死因は,死体検案書(甲A2 5)に基づくものであるところ,同検案書は,飽くまで原告らの主張する事実を前提として死因を推定しているにすぎない上,その記載内容自体にも不自然な点が認められるから,同検案書に基づいて死因を認定することはできない。Cは,生後約10か月であること,死亡を予測させるような先天異常や既存疾患などは見当たらないことなどからすれば, Cの死亡は,乳幼児突然死症候群(SIDS)である可能性があり,原告らの主張するCの死亡原因には合理的な疑いを挟む余地がある。 イ被告市に対する責任(以下「争点⑴イ」という。)責任原因【原告らの主張】 a 主位的主張 ⒜ 法59条ないし同条の4は,都道府県知事(被告市においては市長)の認可外保育施設に対する指導監督権限を規定しているが,その行使は,認可外保育施設における乳幼児の事故を念頭に,児童の健やかな成長に影響を及ぼすおそれのある事態を防止すべく,悪質な認可外保育施設の排除という 育施設に対する指導監督権限を規定しているが,その行使は,認可外保育施設における乳幼児の事故を念頭に,児童の健やかな成長に影響を及ぼすおそれのある事態を防止すべく,悪質な認可外保育施設の排除という観点から行われるべきである。 都道府県知事は,①同法59条1項により,当該認可外保育施設の設置者若しくは管理者に対し,必要と認める事項の報告を求め,又は当該職員をして,その事務所若しくは施設に立ち入り,その施設の設備若しくは運営について必要な調査若しくは質問をさせることができるだけでなく(なお,認可外保育施設指導監督の指針(甲A 14)は「重大な事故が発生した場合又は利用者から苦情や相談が寄せられている場合等で,児童の処遇上の観点から施設に問題があると認められる場合」には特別立入調査を実施するものとし,その方法として「事前通告せずに実施することが適当である」旨規定している。),②当該認可外保育施設について,児童の福祉のため必要 があると認めるときは,同条5項及び6項により,都道府県児童福祉審議会の意見を聴き,その業務の停止又は施設の閉鎖を命じることができ(5項),さらに,児童の生命又は身体の安全を確保するため緊急を要する場合で,あらかじめ都道府県児童福祉審議会の意見を聴くいとまがないときは,当該手続を経ないで前項(5項)の命 令(事業停止命令又施設閉鎖命令)をすることができた(6項)。 ⒝ 被告市の市長は,本件各通報を受けており,その内容等からみて,被告会社Dの運営する託児所であるJに対して,事前通告なしによる特別立入調査を実施した上,上記事業停止命令及び施設閉鎖命令を出すことができたはずであるにもかかわらず,これらの権限を行 使していない。 確かに,かかる指導監督権限(規制権限)を行使する 調査を実施した上,上記事業停止命令及び施設閉鎖命令を出すことができたはずであるにもかかわらず,これらの権限を行 使していない。 確かに,かかる指導監督権限(規制権限)を行使するか否かは都道府県知事の裁量的判断によるものであって,その不行使が直ちに国賠法1条1項所定の「違法」を構成するものではないが,その権限を定めた法令の趣旨・目的や,その権限の性質等に照らし,その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められ るときには,国賠法1条1項の適用上「違法」と評価すべきであるとの判例法理が確立しているところ,下記のとおり,本件における被告市の市長の上記規制権限の不行使は,法59条ないし同条の4等の趣旨・目的やその権限の性質等に照らし,その許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くものであって,国賠法1条1項の適 用上「違法」と評価すべきである。 ① Jは,ⓐ従前から,違法建築の指摘を受け,被告市の建築指導課によってdビル5階部分の屋根を撤去した事実を確認されていたにもかかわらず,パンフレットや運営状況報告書には保育場所として「5階建ての1~5階」と明記し続けたこと,ⓑ二方向避 難路が設置されていない旨の改善指導に従わなかったことのほか,ⓒ年1回の立入調査においても,避難消火訓練未実施,保育従事者の研修未実施,保護者の緊急連絡票等の未整備,利用者に対する契約内容の書面交付の未実施,消防計画等の未作成,乳幼児突然死症候群予防のためのブレスチェック表の未作成,各階の消火 器の未設置等について文書指導を受けていたばかりか,ⓓ中央消防署の査察に際しても,dビルの3,4階を保育施設として使用しておきながら自室として使用していると言い張り通報を受けたことなど,諸々の違反事項等を抱えたまま認 文書指導を受けていたばかりか,ⓓ中央消防署の査察に際しても,dビルの3,4階を保育施設として使用しておきながら自室として使用していると言い張り通報を受けたことなど,諸々の違反事項等を抱えたまま認可外保育施設の運営を続けていたのであるから,被告市は,Jを要注意施設として, 関係者の理解・協力が得られない場合には法に基づき厳正に対処 するとともに,運営状況報告の内容に疑義がある場合や利用者から苦情や相談又は事故に関する情報等が寄せられている場合には,被告会社Dに随時特別に報告を求め,特別立入調査の実施を考慮する必要があった。 ② このような状況の下,被告市は,㋐平成26年5月27日,J を利用する保護者から「昨日,父親が息子を迎えに行ったところ,左人差し指の爪が全部剥がれていた。Jからは,朝の預かり時からそのような状態だったと言われたが,家ではこころあたりがない。」との通報を受けていたばかりか(本件通報①),㋑同月28日には,Jで働いている従業員の知人を名乗る匿名の人物から, ⓐ子供は30人から40人保育されているが,先生の数は1人から2人であること,ⓑ市に報告している職員は,実際には働いておらず,名前だけ借りていること,ⓒ人が足りないので,子供を毛布でぐるぐるまいて,紐で縛って動けないようにしている,今は,暑いのでワイシャツを着せ,袖の部分で体を縛っていること, ⓓ食事も飲み物も与えず,おむつも取り替えていないこと,ⓔ病児室有とうたっていながら,健康な子供と一緒に保育されていること,などの情報提供を受け,予告なしで立ち入り調査をして,施設の状況を確認してほしい,との通報を受けていた(本件通報②)。 ③ 以上のとおり,被告市は,本件各通報以前からJが特別立入調査の必要性等を検討すべき要 ,予告なしで立ち入り調査をして,施設の状況を確認してほしい,との通報を受けていた(本件通報②)。 ③ 以上のとおり,被告市は,本件各通報以前からJが特別立入調査の必要性等を検討すべき要注意施設であったことに加え,本件各通報の内容が保育中の乳幼児に対する虐待行為を十分にうかがわせるものであったことなどに照らすと,被告市は,J内において被告Eらによって保育中の乳幼児に対して体を紐等で縛り付け るなどの虐待行為が行われていることを具体的に予見することが 可能であったはずであるから,本件各通報後,速やかに,Jに対し,事前通告なしの特別立入調査を実施した上,事業停止命令ないし緊急閉鎖命令を行うべきであったにもかかわらず,事前予告を伴う本件調査の実施にとどまったものである。 そうすると,かかる被告市の,被告会社D(J)に対する指導 監督権限(事前予告を伴わない特別立入調査を前提とする事業停止命令ないし緊急閉鎖命令の発令)の不行使は,上記法59条ないし同条の4等の趣旨・目的やその権限の性質等に照らし,その許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くものであって,国賠法1条1項の適用上「違法」と評価すべきである。 b 予備的主張⒜ 仮に,被告市市長が本件各通報を受けていたにもかかわらず事前なしで特別立入調査を実施せず,事業停止命令ないし緊急閉鎖命令を発令しなかったことが国賠法1条1項の適用上「違法」と評価されないとしても,被告市による本件調査の具体的な内容等 は極めてずさんかつ不十分なものであって,法59条1項等によって付与された指導監督権限の行使を著しく怠ったものということができるから,かかる規制権限の不行使は,被告市市長に付与された裁量を著しく逸脱するものとして,国賠法1条1項の適用上「 9条1項等によって付与された指導監督権限の行使を著しく怠ったものということができるから,かかる規制権限の不行使は,被告市市長に付与された裁量を著しく逸脱するものとして,国賠法1条1項の適用上「違法」と評価されるべきである。 ⒝ すなわち,被告市は,Jがdビルの1階から3階のみならず4階部分も保育事業に使用している蓋然性が高いことを指摘されていたこと,届出によれば30ないし40人保育されているはずの子どもが本件調査時には5人しか見当たらなかったことに照らすと,平成26年5月29日に実施した本件調査においては, dビルの4階及び5階の使用状況についても確認することが必 要不可欠であったにもかかわらず,1階から3階部分のみを調査するにとどめた。また,その調査内容も,職員の不足について法令上備え付けが義務付けられている資料を確認せず,本件各通報に係る拘束具としてのワイシャツ等を意識的に捜索しなかっただけでなく,本件通報②にあった保育中の子に対する食事や飲み 物の不提供という事実についても冷凍保存してある給食と献立表との照合を怠るなど極めて杜撰かつ不十分な対応を行った。そして,本件各通報の内容からみて,それ以降も,本件各通報内容の真偽を確認すべく,その疑念が払拭されるまで立入調査等を繰り返し,疑念が解消されないのであれば必要な改善を求め,事業 停止命令,閉鎖命令の発令を真剣に検討すべきであったにもかかわらず,被告市は,そうした調査を一切行わなかったものであり,かかる被告市の本件調査における法59条1項の指導監督権限の不行使は,その具体的な内容からみて,被告市の市長に付与された裁量を逸脱し,著しく合理性に欠けるものであって,国賠法 1条1項の適用上「違法」と評価すべきである。 【 督権限の不行使は,その具体的な内容からみて,被告市の市長に付与された裁量を逸脱し,著しく合理性に欠けるものであって,国賠法 1条1項の適用上「違法」と評価すべきである。 【被告市の主張】a 原告らの上記主位的主張について⒜ 法59条は,立入調査,勧告,公表及び命令につき,「することができる」と規定しているにとどまり,被告市は,直ちに 法59条所定の各指導監督権限の行使を義務づけられているものではない。 ⒝ 確かに,パンフレットや平成21年4月1日付け運営状況報告書(甲A17)中には保育場所として「5階建ての1~5階」と明記されていた。にもかかわらず被告市が指導監督に至ら なかったのは,被告市の子ども部保育課は,dビル5階部分の 構造が建築基準法に違反すると認識していなかったからである。また,被告市は,平成24年8月の立入調査で避難設備(オリロー緩降機)の設置を確認したことから,他の認可外施設の場合と同様に二方向避難経路が確保されたものと判断し,それ以上の指導監督を行わなかったものであって,いずれの場合も ,いたずらに違法状態を放置したものではない。 ⒞ 平成26年5月27日の通報(本件通報①)については,当該子の負傷がJの保育中に発生したものか,保育中であっても子自らの過失によるものなのか,又は第三者の加害行為によるものなのかを十分に確認することができず,また,同月28日 の通報(本件通報②)も口頭のみによる通報であって,Jを快く思っていない人物からの誹謗中傷か否かも確認ができなかった。しかし,被告市は,それでもなお,「認可外保育施設指導監督の指針」(甲A14)に則り,「利用者から苦情や相談が寄せられている場合等で,児童の処遇上の観点から施設に問題 かも確認ができなかった。しかし,被告市は,それでもなお,「認可外保育施設指導監督の指針」(甲A14)に則り,「利用者から苦情や相談が寄せられている場合等で,児童の処遇上の観点から施設に問題 があると認められる」と判断し,その翌日の同月29日,本件調査を実施したものであるところ,その具体的な内容は,法59条1項及び上記国の指針には何ら示されていないのであるから,事前予告を伴うものであったとしても本件調査は上記「特別立入調査」に当たるものということができる。 そうすると,被告市は,法59条1項所定の調査権限を適正に行使していたというべきであるから,本件調査の結果を前提に,Jに対して法59条5項及び6項所定の事業停止命令ないし緊急閉鎖命令を発しなかったことをもって,直ちに国賠法1条1項の適用上「違法」と評価することはできない。 ⒟ よって,原告らの上記主位的主張は理由がない。 b 原告らの上記予備的主張について⒜ 本件調査は,児童が怪我をする環境があるかどうか,匿名通報の内容を裏付ける物証(紐やワイシャツ等)があるかどうかを確認するため実施されたものであるところ,立入調査の際Jにいた児童は皆落ち着き機嫌よく遊んでおり,オドオドしたり助けを求め たり,保育者の顔色をうかがうなど被虐待児によく見られる様子は見られなかった上,各部屋とも整理整頓されており,通報を裏付けるような紐やワイシャツなど不審なものは見当たらなかった。また,届出上保育児童数は30人ないし40人であるが,非認可保育施設においては短時間の保育もその数に含まれることか ら,立入調査の際にJにいた児童が5名であったとしても必ずしも不自然ではなかったし,認可外保育施設は食品衛生法に基づく であるが,非認可保育施設においては短時間の保育もその数に含まれることか ら,立入調査の際にJにいた児童が5名であったとしても必ずしも不自然ではなかったし,認可外保育施設は食品衛生法に基づく「大量調理施設衛生管理マニュアル」の適用対象となる施設ではなく,被告市は,同施設に対して給食の冷凍保存を義務づけていなかった。 そうすると,被告市が法59条1項に基づき実施した本件調査は,その具体的な内容からみても,被告市の市長に付与された裁量を逸脱するものではなく,国賠法1条1項の適用上「違法」であるとの評価は成り立たない。 ⒝ なお,原告らは,被告市の担当職員が,本件調査時に当たって, 30分程度の簡単な事情聴取にとどめ,dビルの4階及び5階を調査しなかったことを問題視するが,それは,被告市の担当者が,Jに対して,4階及び5階の使用状況について確認をしたところ「自宅として使用している」との説明があったため,それ以上の調査を強行することは住居侵入罪に該当しかねないことをおそれ たからである。いずれにしても,かかる説明を受けた被告市の職 員が,dビル4階ないし5階に紐やワイシャツで緊縛された児童が隠されていることを予測することは不可能であり,また,仮に,そうした園児の存在を予測することができたとしても,園児(C)の死亡という結果の発生まで予測することができたとはいえない。 ⒞ よって,原告らの上記予備的主張も理由がない。 c 以上のとおり,原告らの主位的及び予備的主張は,いずれも理由がない。 被告市の規制権限の不行使とCの死亡との間の相当因果関係【原告らの主張】 a 主位的 及び予備的主張は,いずれも理由がない。 被告市の規制権限の不行使とCの死亡との間の相当因果関係【原告らの主張】 a 主位的主張を前提とした相当因果関係被告市が,上記虐待通報を受けて,特別立入調査又は事前通告のもと適切な立入調査を行っていれば,指導監督に違反して保育士が不足していることだけでなく,乳幼児に対する縛り付け行為(虐待行為)など「児童の生命又は身体の安全を確保するために緊急を要 する場合」に該当する事実が存在することを容易に把握し,Jに対して緊急業務停止命令ないし緊急施設閉鎖命令を発出していたはずであり,そして,かかる命令が出されていたならば,平成26年7月26日にCがJで死亡することはなかったということができる。 そうすると,原告らの上記主位的主張に係る被告市の指導監督権 限の不行使とCの死亡との間には相当因果関係が認められるものというべきである。 b 予備的主張を前提とした相当因果関係被告市が,本件各通報を踏まえ,とりわけ保育中の乳幼児を紐等で縛り付けている事実や保育士不足の有無を確認のために,繰り返 し詳細な立入調査を実施していたならば,被告Eらは,Jにおいて 宿泊保育中のCに対して上記のような紐等による虐待を行うことはできなかったはずであるし,また,保育士不足から,衰弱状態にあるCを無人のJ内に放置することもなかったはずであるから,原告らの上記予備的主張に係る被告市の指導監督権限の不行使とCの死亡との間にも相当因果関係が認められるものというべきである。 【被告市の反論】争う。そもそも,本件調査時において,Jのあるdビル4階ないし5階において,紐等 の不行使とCの死亡との間にも相当因果関係が認められるものというべきである。 【被告市の反論】争う。そもそも,本件調査時において,Jのあるdビル4階ないし5階において,紐等で縛り付けられた保育中の乳幼児がいたかどうかは不明であるし,dビルの1階のJの玄関は,オートロックによる施錠がされていたため,内部から開けなければ中に入ることは できなかったのであるから,事前通告なしの特別立入調査を行っていたとしても,必ずしも被告EらのCに対する上記虐待行為を確認することができたとは限らない。いずれにせよ仮に被告市が,本件調査により保育中の乳幼児が紐等で縛り付けられていることを認識したとしても,そのことから本件のような保育中の乳幼児の死亡と いう結果まで通常予見することが不可能であったというよりほかないから,原告らの上記各主張は,いずれにしても被告市の指導監督権限の不行使とCの死亡との間には相当因果関係は認められないものというべきである。 ウ損害(以下「争点⑴ウ」という。) 【原告の主張】 死亡に伴う逸失利益 4955万8770円(計算式)472万6500円(平成24年の賃金センサス男女学歴計)×(1-0.3〔生活控除率30%〕)×(28.733〔67年3%ライ プニッツ係数〕)-13.754(18年3%ライプニッツ係数)= 4955万8770円 死亡慰謝料 3500万円 遺族固有の慰謝料合計1500万円(各人750万円) 葬儀関連費用 227万9690円 弁護士費用 1018万3846円 【被告会社D,同E,被告F,被告Gの主張】 人750万円) 葬儀関連費用 227万9690円 弁護士費用 1018万3846円 【被告会社D,同E,被告F,被告Gの主張】 損害額は争う。死亡に伴う逸失利益につき,基礎収入額を全労働者平均賃金472万6500円を採用するのであれば,生活費控除率を45%とするべきである。 ライプニッツ係数につき,改正民法が施行されていない現下におい て,中間利息の割合を年3%とするのは不合理である。 【被告I,被告Hの主張】損害額は争う。 【被告市の主張】 損害額は争う。 原告がライプニッツ係数を年3%で計算したとする理由は不合理である。 ⑵ 本件請求⑵に係る被告Eの責任(以下「争点⑵」という。)【原告らの主張】ア名誉毀損行為 被告Eは,平成26年9月20日頃,当時Jを利用していたLから,Jの今後の営業等について問い合わせがあった際,実際は原告らは平成26年7月7日から同月12日までと同月23日から同月26日までの間,いずれも業務上の都合によりCについてJの宿泊保育を利用していたにもかかわらず,ことさら,「本当は関東圏のご旅行に行 かれていたんですよ」(以下「本件表現1①」という。)であるとか, 「ここだけの話,先週にも5日間,海外旅行に行っていたんですよ。」などと虚偽の事実を述べ(以下「本件表現1②」という。),さらに,③「Cちゃんは突然死なんですよ。自宅で亡くなられていたら問題なかったんですよ。」「今回の亡くなられた三日間の保育の時も,ご旅行に行かれてて,前の週も海外の旅行に五日間も行っていたので,だか ③「Cちゃんは突然死なんですよ。自宅で亡くなられていたら問題なかったんですよ。」「今回の亡くなられた三日間の保育の時も,ご旅行に行かれてて,前の週も海外の旅行に五日間も行っていたので,だか らスタッフの間でも言っちゃいけないんですけど,ネグレクトだと思っていたんですけどね」と虚偽の事実を述べ(以下「本件表現1③」という。),原告らの社会的評価を低下させた。 被告Eは,直接又はJの保育スタッフを通じて,元夫のMに対し,「原告らは,本件事件が起きた平成26年7月23日から同月26日 までの間,ベトナム旅行に行っていた」などと虚偽の事実を述べ(以下「本件表現2」という。),Mをして,平成26年9月21日午後6時10分頃及び同日午後7時20分頃,インターネット上の掲示板に,本件死亡事故に関して,「出張ではなく両親のベトナム旅行のためです。」,「私はJの身内です。ここでEの14年前に離婚した元夫で歯科 医師です。(中略)ご不幸になってしまわれたご両親のベトナム旅行を叶えさせようと考慮したことがサービス誇大で残念でした。もっと教育的な立場で」などといった書き込みを行わせ,不特定多数人に上記の各虚偽事実を流布,伝播させ,原告らの社会的評価を低下させた。 被告Eは,平成26年10月頃,電話で,Cの死亡事故の件 はどうなっているかと尋ねたLに対し,原告Bのことを「いやもう大変でヒステリーな方なんですよ」と述べたほか(以下「本件表現3①」という。),その当時Jを利用していたNら保護者2名に対し,原告らを評して,「非常に迷惑,みんな言ってる,とんでもないって,相手のやましさ,自分のことしか考えてない,警察,行政,マスコミを使っ て」などと述べ(以下「本件表現3②」といい,本件表 し,原告らを評して,「非常に迷惑,みんな言ってる,とんでもないって,相手のやましさ,自分のことしか考えてない,警察,行政,マスコミを使っ て」などと述べ(以下「本件表現3②」といい,本件表現1①ないし ③及び本件表現2と一括して「本件各表現」という。),原告らの社会的評価を低下させた。 イ伝播可能性(公然性)について被告Eは,本件各表現が特定の者に対してされていることから公然性に欠け原告らの名誉を毀損するものではない旨主張するが,名誉毀損に よる不法行為の成立において,事実の適示ないし意見論評が公然となされたといえるためには,必ずしも不特定多数に対して事実の適示ないし意見論評がなされることは必要とされず,特定少数人に対して事実の適示ないし意見論評がなされた場合であっても,不特定多数人に伝播する可能性があれば足りるのであるから,本件各表現が特定の者(L等)に 対してされたものであっても,公然性が認められるものというべきである。 ウ損害慰謝料原告A及び原告Bにそれぞれ100万円弁護士費用 20万円 【被告Eの主張】ア本件各表現を行ったことは,いずれも否認する。 イ仮に,被告Eが,本件表現1及び3を行ったことがあるとしても,それらは,いずれも特定の者(L)に対してされたものであって伝播可能性がなく,公然性に欠けるから,原告らの名誉を毀損する行為には当た らない。 第3 当裁判所の判断 1 認定した事実前提事実のほか,争いのない事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ⑴ 被告会社D(J)の概要,業務の運営状況等について ア被告会社Dは,平成15 ほか,争いのない事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ⑴ 被告会社D(J)の概要,業務の運営状況等について ア被告会社Dは,平成15年8月1日から,宇都宮市a町b番c号のdビル(以下「本件ビル」という。)において,認可外保育施設として,Jの名称で託児室を開設,経営していた。 イ本件ビルの概要,所有関係及びJの設備等 検察事務官作成の「Jに関する統合捜査報告書」(甲A44)によれ ば,本件ビル及びJの設備等の状況は,以下のとおりである。 a 本件ビルは,5階建ての住居兼仕事場であり,被告Eが本件ビル全体を所有していた。 bJの所在している本件ビル3階の状況について⒜ 中央の廊下を挟んで,部屋が3室あった。 ⒝ 北東側には,壁がピンクに塗られた乳児室があった。 ⒞ 北西側には,壁が水色で塗られた保育室があった。 ⒟ 南側には,壁が黄緑色に塗られた保育室があった。 ⒠ その他,本件ビル3階には,東側にダイニングキッチン,南側にエレベーター,西側に浴室,脱衣室等があった。 被告会社Dの広告等の記載(甲A5)被告会社Dが発行しているパンフレット(以下「本件パンフレット」という。)には,以下の内容が記載されていた。 a 代表者の記載D 代表被告F b ご利用概要Jが実施している保育の内容は,月ぎめ保育,時間保育,1日保育,宿泊保育,学童保育,病児保育,障がい児保育,出張保育(ベビーシッター)である。 Jは,会員制であり,保育のサービスを利用する場合には,月ぎめ会員,時間会員,幼稚園入園準備会員,学童会員のいずれかを選ぶ必要がある。 また,24時間保育業務を行っている )である。 Jは,会員制であり,保育のサービスを利用する場合には,月ぎめ会員,時間会員,幼稚園入園準備会員,学童会員のいずれかを選ぶ必要がある。 また,24時間保育業務を行っている。 c サービスの特徴 ⒜ 乳幼児の子供に関しては,連絡帳を用意し,食事の時間や食事内容,睡眠や排便,遊びの状況などを細かく報告すること⒝ 託児室内で子供が食べる食事(給食)は,専門スタッフである栄養士と調理師が作ること⒞ 発熱や風邪などの症状がある子どもやけがなどの理由で通常 の保育ができない子供も,看護師,保育士,栄養士等の専門家集団によって保育と看護を行うこと,専用の病児室を完備していること等があることd 設備関係⒜ 本件ビルの1階から5階までが,Jの設備とされている。 ⒝ 1階は,エントランスとなっており,総合玄関,J玄関,Jエントランスホール,待ち合わせロビー,相談室等が設置されている。 ⒞ 2階は,学習教室になっており,AないしC教室等が設置されている。 ⒟ 3階は,乳児室(ピンク),保育室(ブルー・グリーン),食堂,視聴覚コーナー等が設置されている。 ⒠ 4階は,多目的ホール,浴室,洗面所,茶室,病児室A・B,図書室が設置されている。 ⒡ 5階は,人工芝を敷き詰めた庭等が設置されている。 eJの説明会等の状況 Jは,入園を希望する者を対象に内覧見学会を開催しており,その際,被告FをJの理事長であり責任者であると紹介していた(原告B・7項,甲A63・7頁,甲A28・2,3頁)。 被告会社Dの運営状況の報告と被告市の立入調査についてア本件事件前5年間における被告会社Dの被告市に対する運営状況報告 7項,甲A63・7頁,甲A28・2,3頁)。 被告会社Dの運営状況の報告と被告市の立入調査についてア本件事件前5年間における被告会社Dの被告市に対する運営状況報告 平成21年4月1日現在の運営状況報告書(甲A17)a 「Jの設置者名」,「代表者名」,「管理者名」欄には被告Fの氏名が記載されている。 b 「施設・設備」欄には,建物の形態を専用建物とし,5階建ての1階から5階まで(合計31室,合計面積558.28㎡)が Jの施設である旨記載されている。 c 「保育している児童の人数」としては,1歳児が2人,2歳児が2人,3歳児が3人,学童が2人の「計9人」であり,いずれも在園時間は午後8時まで,「職務に従事している職員の配置数」は,①施設長,②保育従事者として,常勤の者が,保育 士2人及びその他2人,非常勤の者が保育士2人及びその他2人,③その他職員として非常勤の調理1人であると記載されている。 平成22年4月1日現在の運営状況報告書(甲A18)a 「Jの設置者名」,「代表者名」,「管理者名」欄には被告F の氏名が記載されている。 b 「施設・設備」欄には,建物の形態を専用建物とし,5階建ての2階から5階まで(合計面積557.32㎡)がJの施設である旨記載されている。 また,「保育している児童の人数」としては,0歳児が1人,1 歳児が2人,2歳児が3人,3歳児が1人の「計7人」であり,い ずれも在園時間は午後8時までであるとされ,「職務に従事している職員の配置数」は,①施設長,②保育従事者として,常勤の者が,保育士3人及びその他1人,非常勤の者が保育士3人,③その他職員として,常勤の調理2人,非常勤の調理1人であるとされると 務に従事している職員の配置数」は,①施設長,②保育従事者として,常勤の者が,保育士3人及びその他1人,非常勤の者が保育士3人,③その他職員として,常勤の調理2人,非常勤の調理1人であるとされると記載されている。 平成23年4月1日現在の運営状況報告書(甲A19)a 「Jの設置者名」,「代表者名」,「管理者名」欄には被告Fの氏名が記載されている。 b 「施設・設備」欄には,建物の形態を専用建物とし,5階建ての3階(合計面積113.37㎡)がJの施設である旨記載され ている。 c 「保育している児童の人数」としては,0歳児が1人,1歳児が3人,2歳児が4人,3歳児が2人,4歳児から就学前の児童が1人の計11人であり,いずれも在園時間は午後8時まで,「職務に従事している職員の配置数」は,①施設長,②保育従事者と して,常勤の者が,保育士3人及びその他2人,非常勤の者が保育士3人及びその他2人である旨記載されている。 平成24年4月1日現在の運営状況報告書(甲A20)a 「代表者名」欄に被告Fの氏名が,「管理者名」欄に被告Eの氏名が記載されている。 b 「施設・設備」欄には,建物の形態を専用建物とし,5階建ての2階から5階まで(合計面積557.32㎡ )がJの施設である旨記載されている。 c 「保育している児童の人数」としては,1歳児が4人,2歳児が5人,3歳児が3人,4歳児から就学前の児童が1人,学童が 10人の計23人であり,いずれも在園時間は午後8時までで, 「職務に従事している職員の配置数」は,①施設長,②保育従事者として,常勤の者が,保育士4人及びその他1人,非常勤の者が保育士3人である旨記載されている。 平成25年4月1日現在の運 「職務に従事している職員の配置数」は,①施設長,②保育従事者として,常勤の者が,保育士4人及びその他1人,非常勤の者が保育士3人である旨記載されている。 平成25年4月1日現在の運営状況報告書(甲A21)a 「代表者名」欄に被告Fの氏名が,「管理者名」欄に被告Eの氏 名が記載されている。 b 「施設・設備」欄には,建物の形態を専用建物とし,合計面積557.32㎡がJの施設である旨記載されている。 c 「保育している児童の人数」としては,1歳児が4人,2歳児が5人,3歳児が3人,4歳児から就学前の児童が1人,学童が 10人の計23人であり,いずれも在園時間は午後8時までで,「職務に従事している職員」の配置数は,①施設長,②保育従事者として,常勤の者が,保育士4人及びその他1人,非常勤の者が保育士3人である旨記載されている。 平成26年4月1日現在の運営状況報告書(甲A22) a 「Jの設置者」名,「代表者名」欄にそれぞれ被告Fの氏名が,「管理者名」欄には被告Eの氏名が記載されている。 b 「施設・設備」欄には,建物の形態を専用建物とし,5階建ての3階(合計面積557.32㎡)がJの施設である旨記載されている。 c 「保育している児童の人数」としては,1歳児が2人,2歳児が4人,3歳児が2人,4歳児から就学前の児童が3人,学童が12人の計23人であり,いずれも在園時間は午後8時まで,「職務に従事している職員の配置数」は,①施設長,②保育従事者として,常勤の者が,保育士3人及びその他1人,非常勤の者が保 育士3人及びその他2人である旨記載されている。 イ被告市の被告会社Dに対する従前の立入調査について 被告市は,平 ,保育士3人及びその他1人,非常勤の者が保 育士3人及びその他2人である旨記載されている。 イ被告市の被告会社Dに対する従前の立入調査について 被告市は,平成21年7月22日(甲A77の1),平成22年7月30日(甲A78の1),平成23年7月21日(甲A79の1),平成24年8月3日(甲A80の1),被告会社D(J)に対し立入調査を実施した。 その各立入調査の内容と結果等は以下のとおりである。 平成21年7月22日実施の立入調査の結果a 被告市の保育課保育グループ(係長)と保育課(主査)は,被告会社D(J)に対し,上記立入調査を実施したところ,被告会社(J)には下記の「是正改善を要する事項(文書指摘)」が認められたため, 文書又は口頭により,その旨を指摘した(甲A77の1,甲A77の2)。 記⒜ 「施設運営管理」に関しては,①防災訓練が未実施であったため,防災訓練を定期的に実施すべきこと,②出入り口が1カ所しかなく, 他に災害発生時の避難に有効な設備等もなかったため,避難器具の設置を検討するとともに,防災訓練の実施等非常災害対策に配慮すべきこと⒝ 「入所児処遇」に関しては,①保育従事者の質の向上を図るための研修が実施されていなかったこと,②緊急時に備えた保護者の緊 急連絡表が整備されていなかったこと,③在籍乳幼児に関する書類等の整備がされていなかったことb これを受けて,被告会社Dは,同年10月7日,「改善を要する事項に対する措置状況(回答)」(甲A77の3)を提出し,要旨以下のとおり回答した。 ⒜①については,緊急避難訓練等を実施したこと ⒝ 同⒜②については,隣の土地を貸 する事項に対する措置状況(回答)」(甲A77の3)を提出し,要旨以下のとおり回答した。 ⒜①については,緊急避難訓練等を実施したこと ⒝ 同⒜②については,隣の土地を貸してもらえないかどうか話し合い中であり,しばらく時間がかかること⒞ 同⒝②については,園児名簿で緊急連絡先も兼ねていること⒟ ⒝③については,入会申込書を添付したこと 平成22年7月30日実施の立入調査の結果 a 被告市の保育課保育グループ(課長補佐)と保育課(係長)は,被告会社D(J)に対し,上記立入調査を実施したところ,被告会社D(J)には下記の「是正改善を要する事項(文書指摘)」が認められたため,文書により,その旨を指摘した(甲A78の1,甲A78の2)。 記 災害等の発生時に備えて,屋外階段,屋外特別避難階段等による2以上の避難経路の確保が必要であるが,非難等に有効な設備等がなかった。 乳幼児の非難に適した構造の建築基準法などに基づく耐火構造の傾斜路や屋外階段などを,避難上有効な位置に設置し,かつ,保育室の 各部分からその一つに至る歩行距離がいずれも30M以下となるよう設備等の設置を検討する。 b これを受けて,被告会社Dは,同年9月27日に,「改善を要する事項に対する措置状況(回答)」(甲A78の3)を提出し,上記指導に対して,「屋外階段は,隣の土地を借りるか,購入するかしないと建築 できない。前向きの姿勢で対処しているが,相手のあることなのでどうにもならない。自分のところで改善できる問題ではないので,もう少し時間が欲しい」旨回答した(甲A78の3)。 平成23年7月21日実施の立入調査の結果a 被告市の保育 どうにもならない。自分のところで改善できる問題ではないので,もう少し時間が欲しい」旨回答した(甲A78の3)。 平成23年7月21日実施の立入調査の結果a 被告市の保育課事業支援グループ(専任主査)と保育課保育グルー プ(主事)は,被告会社D(J)に対し,上記立入調査を実施したと ころ,被告会社D(J)には前回と同様の「是正改善を要する事項(文書指摘)」が認められたため,文書により,その旨を指摘した(甲A79の1,甲A79の2)。 b これを受けて,被告会社D(代表者名として被告Fが記載されている)は,同年9月9日に,改善を要する事項に対する措置状況(回答) (甲A79の3)を提出し,上記指導に対して,「隣接している土地を借りる方向であるが,交渉が思うよう進まない。時間は少しかかると思われるが,前向きの方向で改善に向けて話を進めている」旨回答した(甲A79の3)。 平成24年8月3日実施の立入調査の結果について a 被告市の保育課管理グループ(保育士)と保育課事業支援グループ(総括主査)は,被告会社D(J)に対し,上記立入調査を実施したところ,被告会社D(J)には下記の「是正改善を要する事項(文書指摘)」が認められたため,文書又は口頭により,その旨を指摘した(甲A80の1,甲A80の2)。 記⒜ 非常災害に対する具体的計画(消防計画)の策定に関して,防火管理者の選任と消防計画の策定がされていない。Jは,学習塾を含め30人以上の収容があることから,消防法8条1項により,防火管理者の選任と消防計画の策定が必要となる。速やかに防火管理者 の選任・届出を行うとともに,消防計画の届出など防災管理上必要な措置を講じて防災 の収容があることから,消防法8条1項により,防火管理者の選任と消防計画の策定が必要となる。速やかに防火管理者 の選任・届出を行うとともに,消防計画の届出など防災管理上必要な措置を講じて防災対策に努めること⒝ 午睡の時にうつぶせ寝にさせないような配慮はなされていたが,ブレスチェック表などの確認の記録がなかった。万が一の事態に備えるためにも書類を残しておくことが有効である。また,確認もれ の防止という観点からもブレスチェック表を作成するなどし,適切に記録,保管することb これを受けて,被告会社Dは,同年9月19日に,「改善を要する事項に関する対して,「宇都宮市消防本部に行き,防火・防災管理について話を聞き, 書類をもらってきた。講習を受講することになった。同講習を受講後に消防計画,防火管理者の選任と消防計画の策定がされるため,書類がそろったら送る」旨回答した(甲A80の3)。 平成25年8月6日実施の立入調査の結果についてa 被告市の保育課保育グループ(主任)と保育課事業支援グループ(副 主幹)は,被告会社D(J)に対し,上記立入調査を実施したところ,被告会社D(J)には下記の「是正改善を要する事項(文書指摘)」が認められたため,文書により,その旨を指摘した(甲A81の1,甲A81の2)。 記 消火器について,1階から5階の施設内に2K程度の家庭用消火器が1個置いてあるだけであるから,消防法に基づき適切な措置を行うことb これを受けて,被告会社Dは,同年10月4日に,「改善を要する事項に対する措置状況(回答)」(甲A81の3)を提出し,上記指導に 対して,「消火器については各階に設置した。宇都 b これを受けて,被告会社Dは,同年10月4日に,「改善を要する事項に対する措置状況(回答)」(甲A81の3)を提出し,上記指導に 対して,「消火器については各階に設置した。宇都宮市中央消防署から立入検査を受けた」旨回答した(甲A81の3)。 以上のほか,被告市の保育課副主幹は,平成25年8月27日,予防課指導グループに対し,消火器の設置要件について問い合わせをしたところ,Jの本件ビルは消防が管理する台帳に記載されていないことが判 明した。 そして,同年9月3日,中央消防署予防グループ係長は,査察員2名と本件ビルに消防法4条に基づく立入検査を行った上,査察指摘事項として,「①建物内で使用している暖簾,絨毯は防災物品を使用しその旨の表示を附すること,②設置している消火器,避難器具(緩降機)について消防用設備等(特殊消防用設備等)設置届出書を届け出ること,③自 動火災報知設備を設置すること,④消防機関へ通報する火災報知設備を設置すること,⑤誘導灯を設置すること,⑥防火対象物使用開始届を届出ること,⑦建築基準法等による確認が必要となるため,本市建築指導課に相談し指導を受けること」を指摘した(甲A116)。 同日,中央消防署から,被告市保育課に対し,「立入検査時,Jの施設 職員が,3階及び4階は自宅だと言い張っている。」「明らかに建物の中を検査のために片づけた形跡があり,保育室ではないかと思われる。」との連絡があった(甲A81の1)。 本件事件発生直前におけるJの運営状況等についてア保育状況 Jは,平成26年4月頃,被告Eと被告Iのみが保育を行っており,預かっていた児童は合計30人から40人で,人手が足りない状況であった(甲 けるJの運営状況等についてア保育状況 Jは,平成26年4月頃,被告Eと被告Iのみが保育を行っており,預かっていた児童は合計30人から40人で,人手が足りない状況であった(甲A52・6~9項)。 被告Iは,本件事件以前から,Jに入所している児童の送迎を行っていた(被告I・45項)。送迎は,午前中は,約午前7時から 午前10時30分まで行い,午後は,約午後3時から午後8時頃まで行っていた(被告I・50項)。 同年5月2日午前9時頃,孫をJに預けるため本件ビル内に入った女性は,2階から4階にかけ,各階0歳から3,4歳くらいの幼児が数人おり,泣き叫んでいる児がいるのを見かけた(甲A65)。 被告Eは,Jで預かっている子どもに対し,その体を紐や毛布 でぐるぐる巻きにし,あるいはワイシャツを前後逆さまに着せて袖を縛り付けるなどして,身動きができない状態にしたり,あるいは,ベッドを檻代わりにして,その中に子どもを長時間閉じ込めるなどの行為を日常的に行っていた(甲A52・12~14項,甲A67・2~7枚目,甲A68)。そして,後に行われた被告 Eに対する刑事被告事件において,こうした預かり保育中の子どもに対する暴行等は,平成25年4月頃の時点でも既に行われていたことが判明している(甲A62)。 また,Jでは,子どもの食事に関して,お惣菜等をぐちゃぐちゃにしたものを与えていたほか,連絡帳には,実際に子どもに与 えていないものを記載していた(甲A52・15,34~49項)。 イ連絡帳の虚偽記載等についてJでは,保育の状況を連絡帳に記載し,保護者との間で連絡帳のやり取りを行っていたが,実際に子どもに与えている食事や水分の量や回数等は,連絡帳の記載と異なっているところが多くあった。 記載等についてJでは,保育の状況を連絡帳に記載し,保護者との間で連絡帳のやり取りを行っていたが,実際に子どもに与えている食事や水分の量や回数等は,連絡帳の記載と異なっているところが多くあった。 連絡帳中J側の記載欄は,主として,被告Eが,乳児や小さい子供に関する連絡事項に記載をし,大きい子に関する連絡事項は,被告Eの指示により被告Iがこれを記載していた。 連絡帳における体温の欄は,体調が良い子については検温をせず保護者が書いてくる連絡帳の体温を元に少しずらして記入するように していた(なお,病気の子供については検温をして記入をしていた。)。 また,排便についても,下痢などといわれた場合には,おむつの様子等もこまめに確認しているかような記載をしていた。 風邪を引いた子どもを預かった場合には,脱衣所等に隔離し,検温以外の風邪の手当てなどは行っていなかった。 (以上につき甲A52・73頁以下) 本件各通報とこれに対する被告市の対応等についてア本件通報①と被告市の対応等 二児の母であるOは,平成21年頃から,長男(平成▲年▲月▲日生)と次男(同▲年▲月▲日生)をJに預けていた(甲A64)。 同26年1 月20日,Oは,長男が右眼の上に青あざができた状態 でJから帰宅したため,眼科を受診させたところ,長男は眉毛と目じりの2か所に傷があり,充血もしていたことから,眼球を強打したのだろうとの診断を受けたため,Jの責任者である被告Eに対して事情を尋ねた。同被告は,「転んで怪我をした」と説明したが,そのようなことは連絡帳に記載されておらず,Oは,Jの保育態勢に疑念を抱 かざるを得なかった(甲A64)。 そして,同年5月27日,Oの夫が,Jに二男を迎えに行ったところ,二男の左人差し ,そのようなことは連絡帳に記載されておらず,Oは,Jの保育態勢に疑念を抱 かざるを得なかった(甲A64)。 そして,同年5月27日,Oの夫が,Jに二男を迎えに行ったところ,二男の左人差し指の爪が全部剥がされていた(甲A64)。 そこで,Oは,同日,被告市の保育課窓口を訪れ,保育課事業支援グループ総括主査の(以下「P総括主査」という。)に対し,要旨, 下記の通報を行った上,二男の指の状態と兄のあざが写っている携帯写真を示した(丙1,甲A64,証人P)。 記a 同月27日,同施設に預けている息子を,父親が迎えに行ったところ,息子の左人差し指の爪が全部はがれていた。Jからは,朝の 預かり時からそのような状態だったと言われたが,家ではこころあたりがない。1月に(息子の)兄が右目の上に青あざを作ったことがあったが,その時と今回の担当者がE’先生(被告Eのこと)だった。今日は,先生が休みということを知り預けた。 b 息子は,発達がゆっくりで,現在療育施設にも通っている。ミル クを飲んでおり,幼稚園の入園は難しい。1年様子をみて来年の幼 稚園入園を考えている。県外まで新幹線通勤をしているので,Jは延長保育もあり通勤途中の施設なので,利用している。2度も大きなけがをしているので今後も心配である。 本件通報①を受けたP総括主査は,同通報の内容を踏まえ,通報者であるOに対し,①認可保育所の発達支援児保育について説明し,併せ て2歳児クラスに空きが少ないことを伝えるとともに,②施設(J)に対しては,今回のけがについて状況確認を行い,必要に応じ指導することを伝えた。 そして,Pは,事業支援グルーブの係長Q(以下「Q係長」という。)に対し,本件通報①の内容を報告し,対応を 設(J)に対しては,今回のけがについて状況確認を行い,必要に応じ指導することを伝えた。 そして,Pは,事業支援グルーブの係長Q(以下「Q係長」という。)に対し,本件通報①の内容を報告し,対応を相談した上,同日午後4 時30分頃,Jに電話を入れ,対応に出た被告Eに対し,本件通報①に係るOの二男の怪我について確認した。 これらに対し,被告Eは,①保育時間は午前10時から午後4時であり,送迎は父親であること,②朝の預かり時に本児が指を出し,訴えるしぐさをしたので確認すると,爪の周りがピンク色になっていた が,剥がれてはいなかったこと,③教室(幼児教育)を嫌がっているサインと思い,気休めにマキュロンで消毒をしたこと,④日中は痛がる様子はなく,手洗いも普通に行っていたこと,⑤帰りも指の状態を確認し,降園させたこと,⑥この時も爪の周りは赤くなっていたが剥がれていなかったこと,⑦携帯写真を見たが,なぜこのような状態に なってしまったのかむしろ不思議なくらいであること,⑧(通報者の)母は医師として経済力もあるが,父は立場が弱そうな印象がある。疑うわけではないが,父がJのせいにしているのかもしれないことを回答した。 これを受けて,P総括主査は,被告Eに対し,ⓐ親に丁寧に事実を 説明し,食い違う点についてもよく話し合うこと,ⓑ預かり時の健康 観察をしっかり行うこと,ⓒ降園時に日中の様子をきちんと伝えること,ⓓ常に安全に配慮して,保育をすること,ⓔE’先生に対し不信感が強いため,必ず複数で保育にあたることを指導した。 その後,P総括主査は,本件通報①とその対応等について報告書(丙1)を起案,作成し,Q係長の押印をもらった上,これを保育 課のR課長(以下「R課長」という。),課長補佐,副主幹及び同 その後,P総括主査は,本件通報①とその対応等について報告書(丙1)を起案,作成し,Q係長の押印をもらった上,これを保育 課のR課長(以下「R課長」という。),課長補佐,副主幹及び同課内の他グループ係長に供覧した。 (丙1,丙14,15,証人P,同Q)イ本件通報②とその対応等についてP総括主査は,平成26年5月28日午前10時頃,保育課執務室 において,Jで働いている従業員の知人と名乗る匿名の男性から,電話で,Jの保育状況について,下記内容の通報を受けた(本件通報②・なお通し番号①ないし⑫は当裁判所が付記した。)。 記① 年に1度立ち入り調査を行っているようだが,予告なく立ち入 り調査をすることはできないか。 ② 子どもは,30~40人保育されているが,先生の数は1~2人③ 市に報告している職員は,実際には働いていない。名前だけ借りている。 ④ 人が足りないので,子どもを毛布でぐるぐるまいて,紐で縛って動けないようにしている。 ⑤ 今は,暑いのでワイシャツを着せ,袖の部分で体を縛っている。 食事も飲み物も与えない。 ⑥ オムツを取り替えない。 ⑦ 子供の腰に紐をつけ,動きを制限している。 ⑧ 給食代,飲み物代を徴収しているが,提供されていない。 ⑨ 連絡帳は朝のうちに記入。内容は虚偽⑩ 月に1度見学日があるが,その時は人を雇う。 ⑪ 病児室有とうたっていながら,健康な子どもと一緒に保育されている。 ⑫ 以上のようなことが,恒常的に行われているが,立入調査は日程の予告があり,体裁はいくらでも整えられる。だから,予告なしで,施設の状況を確認してほしい。 これに対し,P総括主査は,本件通報②の 以上のようなことが,恒常的に行われているが,立入調査は日程の予告があり,体裁はいくらでも整えられる。だから,予告なしで,施設の状況を確認してほしい。 これに対し,P総括主査は,本件通報②の内容が余りに具体的なものであったことから,上記匿名の通報者に対し,「なぜ施設内の状 況をそこまで知っているのか,お近くにお住まいなのか,縛られたり,空腹であれば,子どもは保護者に訴えるのではないか」旨尋ねたところ,上記通報者は,「取り繕うのがうまい。保護者を言いくるめている。知人がJで働いている。その知人から聞いた。職員が1~2名しかいないので,知人が特定されてしまうので,あくまで も匿名で扱ってほしい」などと答えたため,Pは,そのまま電話を切った(丙2,14,証人P)。 その直後の同日午前10時20分頃,P総括主査は,保育課執務室で,被告Eから電話を受けた。被告Eからの用件は,「毎年,保育課が情報提供している事故防止等について示した厚生労働省の通 知(以下「国通知」という。)を再度提供してほしい」というものであった。P総括主査は,被告Eに対し,「国通知を直接渡す」旨回答して電話を切った。 そして,P総括主査は,Q係長に対し,本件通報②を報告した(丙14,15,証人P)。 Q係長は,同月29日,本件通報②について,児童虐待対策の担当部署である「子ども家庭支援室」に相談をもちかけたところ,同室からは,園での虐待は傷害罪の可能性があり,警察による立入りとなるが,子ども家庭支援室は,家庭での虐待でないので,立入りすることはできないとの回答であった(証人Q・60~65項)。 ウ Jに対する立入調査P総括主査は,同月29日午前11時15分頃,被告Eに電話をかけ,同被告に対し,これからJを訪 立入りすることはできないとの回答であった(証人Q・60~65項)。 ウ Jに対する立入調査P総括主査は,同月29日午前11時15分頃,被告Eに電話をかけ,同被告に対し,これからJを訪問し,書類のお渡しと保育室の確認をしたい旨伝えると,被告Eは,「副園長をしているeの幼稚園にでかける。」として訪問を拒んだ(丙14,証人P)。 そこで,P総括主査は,被告Eに対し,訪問の日時について,再度連絡をするとして電話を切り,直ちに,Q係長に対し,被告Eとのやりとりについて報告した。そして,同係長と共に,同課部長,R課長,課長補佐及び副主幹にも同様の報告を行い,対応を協議した結果,被告Eが不在の上であっても,施設内を確認すべきであるということに なり,R課長は,Q係長とP総括主査に対し,その旨を指示した(丙14,15,証人P,同Q)。 そうしたところ,同日午後0時頃,被告Eの息子と思われる男性(被告I)が,書類を取りに来庁した(丙14,15)。 P総括主査は,上記書類を取りに来た男性に国通知を交付した(丙 14,15,証人P)。 そして,同日午後1時15分頃,P総括主査は,被告Eに対し,携帯電話をかけ,本日中に施設確認をするようにとの上司命令が出たとして,同被告が不在でも訪問をすることを伝えたが,その際,同被告に対し,本件通報②があったことまでは知らせなかった(証人Q・8 3項)。 しかし,上記P総括主査の電話連絡により立入調査が行われることを察知した被告Eは,直ちに,息子の被告Iに電話をかけ,同被告に指示して,その時点で3階にいた30名ほどの託児を4階と5階に移動させた。その中には紐やワイシャツで体を縛られた状態の幼児も含まれていた(被告I・344項)。 一方,保育課のQ係長 被告に指示して,その時点で3階にいた30名ほどの託児を4階と5階に移動させた。その中には紐やワイシャツで体を縛られた状態の幼児も含まれていた(被告I・344項)。 一方,保育課のQ係長とP総括主査は,本件ビルにおいて児童がけがをする環境があるかどうかや虐待に係る物証があるか否かを確認するため,Jの過去の運営状況報告書や立入調査結果報告書等を下調べすることなく,直ちに,本件ビルに向け出発し,同日午後1時30分頃,同ビルに到着し,インターホンを押したところ,数分 して,被告Eが応対に出てきた(証人Q・89項)。 Q係長らは,まず1階に通され,被告Eから,5分間くらいをかけ,本件通報①に係る男児の怪我はJ内で負ったものではない旨の説明を受けた(証人Q・90項)。次に,2階に通され,5~10分をかけ,英語教室・モンテッソリー教育のための部屋・学習塾用の部屋を 見分したが,いずれも整理・整頓されており,危険を感じるところはなかった(証人Q・91項)。更に,3階に通され,保育室・ベビーベッドが設置してある部屋・キッチンを見分した。保育室では,被告Eの息子で書類を取りに来た被告Iが,2歳児位の子5名を保育していた。皆,機嫌よく遊んでおり落ち着いているように見えた。また, 各部屋も整理整頓されていたが,子どもが自由に遊べる遊具は見当たらなかった。1階はアロマの香りがしたが,2~3階については少々悪臭がした。 このようにしてQ係長らが3階までの確認を終えたところ,被告Eの方から,4階及び5階については,保育室として使っておらず,住 居として使っている旨の申告があった(証人P・147頁)。そのた め,Q係長らは,4階と5階に対する立入調査を行わなかった(証人P147項)。 そのほか,Q係長らは,この ず,住 居として使っている旨の申告があった(証人P・147頁)。そのた め,Q係長らは,4階と5階に対する立入調査を行わなかった(証人P147項)。 そのほか,Q係長らは,この立入調査に際して,連絡帳,給食に係る事項,職員の勤務状況(職員名簿や賃金台帳等)に係る事項を確認せず(証人P・140項,証人Q・111項),託児されている子供 のブレスチェック表の確認もしていない(P証言167項)。また,児童票や児童出席表の提示を求めることもなかった(証人Q・102~103項)。 結果的に,Q係長らは,この日の立入調査において,本件通報②の裏付けとなるような物証の発見には至らず,むしろ,確認することが できた5名の児童の様子が落ち着いているように見えたことから,P総括主査は,虐待は行われていないものと感じた(証人P・211項)。 以上のとおり,Q係長らのJに対する立入調査は,同日午後2時頃終了した。所要時間は30分程度であった。 Q係長らは,帰庁後,保育課のR課長,課長補佐及び副主幹に対 し,口頭で,上記立入調査の状況を踏まえ,Jの中には,託児の怪我につながるような危険な場所や不審なところ,気になるところはなかった旨を報告した(丙15)。 以降,保育課においては,新たな通報がないことも相俟って,本件各通報との関係で,改めて,Jに対する「特別の立入調査」等を実施 することはせず,「通常の」立入調査における確認を念頭に,事態の推移をうかがうにとどめた(証人Q・132項以下,167項,186項以下)。 本件事件の発生についてア本件保育契約の締結から発生までの経緯 原告らは,宇都宮市内の託児施設で,Cの保育先を探していたところ,Jのホームページやパンフレット )。 本件事件の発生についてア本件保育契約の締結から発生までの経緯 原告らは,宇都宮市内の託児施設で,Cの保育先を探していたところ,Jのホームページやパンフレット,見学会における事前説明で,Jには提携医師がいること,看護師が常駐していること,離乳食は栄養士管理の下,全て手作りしていること等の説明を受けたことから(甲A47),Jへの入会を決め,平成26年1月11日,被告会社Dとの間で,Cついての本件 保育契約を締結した。 その後,原告らは,同月28日から同年7月22日までの間のうち多い時は週に5回程度,日数にして合計96日,本件保育契約に基づき,Jに対し,Cの保育を委託していた(甲A47,甲A51の2)。この間に,Cの連絡帳に記載されていた排便及び検温の状況は,排便が普通12回,普 通と軟便の中間7回,軟便68回,水様便と軟便の中間4回,水様便なしであり,検温は36度1分から37度1分の間(平均36度47分)で記録されている(甲A47)。 イ本件事件の端緒原告らは,同人らが経営する旅館のトラブル対応,新規プロモーション のため,平成26年7月23日から同月26日までの間,3泊4日の予定で,CをJに預けた(甲A47,甲A123)。 平成26年7月23日から同月26日までの間,Jの保育業務に従事していたのは,被告Eと被告Iの2名のみであり,Cの保育を担当していたのは被告Eであった(甲A47,甲A58の1・115項)。 Jでは,この間,基本的にエアコンをつけていなかった(甲A52・105~121項)。 ウ本件事件の被害児童の健康状態Cは,標準的な体形で出生し,先天性の病気はなく,定期検診でも異常はなく,健康な9か月児であった(甲A46)。 し 2・105~121項)。 ウ本件事件の被害児童の健康状態Cは,標準的な体形で出生し,先天性の病気はなく,定期検診でも異常はなく,健康な9か月児であった(甲A46)。 しかし,初日の平成26年7月23日,Cには,午前6時35分に大 量の水様便,午前7時30分に中量の水様便,午前10時40分に大量の水様便,午後0時30分に少量の水様便,午後3時10分に少量の水様便,午後5時50分に少量の水様便,午後7時10分に少量の水様便が確認された(甲A9)。 2日目の平成26年7月24日にも,午前1時20分に少量の水様 便,午前4時30分に少量の水様便,午前8時40分に中量の水様便,午前11時30分に少量の水様便,午後2時40分に中量の水様便,午後4時30分に少量の水様便,午後7時10分に少量の水様便が確認された(甲A9)。 また,3日目の平成26年7月25日の時点におけるCの体温は, 午前7時30分には37度6分,午後0時00分には,38度1分,午後3時00分には38度1分,午後8時00分には,38度0分であった(甲A47別紙7)。 エ本件事件の内容とその後の経過このように,被告Eは,本件保育契約に基づき,同月23日から 3泊4日の約束で,Cを預かり保育していたところ,同日と同月24日の2日間にわたり,少なくとも14回の水様便を催すなど,Cに継続的な下痢症状が認められたばかりか,同月25日午後0時頃には38度を超える発熱があったことだけでなく,同日午後3時頃にはCの元気がなくなったにもかからず,適時適切に医師の診察を 受けさせることなくCを放置したところ(甲A47ないし50,58の1・2,60ないし62),同月26日午前2時頃,Cは,本件ビル3階の北東側乳児室(以下 にもかからず,適時適切に医師の診察を 受けさせることなくCを放置したところ(甲A47ないし50,58の1・2,60ないし62),同月26日午前2時頃,Cは,本件ビル3階の北東側乳児室(以下「本件乳児室」という。)において,熱中症により死亡した(甲A25,49,53)。 被告Eは本件乳児室において,心肺停止状態のCを発見し,同日 午前5時51分頃,119番通報をし,これを受けて救急隊員が同 日午前5時58分頃にJに臨場した。 このときのCは,心肺停止状態で,瞳孔に反応がなく,口唇部にチアノーゼ(血液中の酸素が欠乏して鮮紅色を失い,皮膚や粘膜が青色になることである。)が出ており,下あごや両肘,両ひざに死後硬直が認められた。 その後,同日午前6時30分頃に警察官が同所に臨場したところ,本件乳児室は窓が設置されていたが,警察官の臨場時は閉まっており,蒸し暑い状態であった。また,同所にはエアコンが設置されていたが,電源は入っておらず作動していない状態であった。前の晩から同日にかけ最低気温が25度以上の熱帯夜で,同室の室温は29度であった。 (以上につき甲A23の1ないし4,甲A48)オ被告Iの関与の程度被告Iは,平成26年7月23日から同月25日にかけて,Jにおいて,子供の送迎や子供の遊び相手などの手伝いをしており(甲A52・3~5項),被告Eから,Cがちょっと下痢気味である旨の話を 聞いていた(甲A52・130項)。また,平成26年7月25日の午前10時頃,被告Iは,Cのおむつを確認した際,Cの髪の毛がまとまってぺっとりおでこにくっつくような感じに濡れており,脇や股も湿っぽく汗をかいていることを認めたが,連絡帳に記載されている便の回数等の内容については把握していなかっ を確認した際,Cの髪の毛がまとまってぺっとりおでこにくっつくような感じに濡れており,脇や股も湿っぽく汗をかいていることを認めたが,連絡帳に記載されている便の回数等の内容については把握していなかった(甲A52・461 項)。 本件事件発生後の立入調査等について被告市は,本件事件の発生後,Jに対して,以下の立入調査を実施した。 ア平成26年7月28日実施の特別立入調査(甲A82) イ平成26年9月5日実施の立入調査(甲A106) ウ平成26年9月8日実施の立入調査(甲A107)エ平成26年9月10日実施の立入調査(甲A108)オ平成26年9月12日実施の立入調査(甲A128)カ平成26年9月16日実施の立入調査(甲A129)キ平成26年9月26日に実施の立入調査(甲A130) ク平成26年10月9日に実施の立入調査(甲A110)ケ平成26年10月20日に実施の立入調査(甲A131)コ平成26年10月25日に実施の立入調査(甲A132)本件事件後の被告Eの言動等についてア Jに子ども託児していたLは,本件事件のことを詳しく知らなかっ たことから,Jに対する自身の子の託児を続けてよいものか不安となり,平成26年9月20日,電話で,Jの責任者である被告Eに対し,本件事件の内容等を問い合わせたところ,同被告は,Lに対し,原告らについて,「本当は関東圏のご旅行に行かれていたんですよ。ここだけの話,先週にも5日間,海外旅行に行っていたんですよ。」「今 回の亡くなられた三日間の保育の時もご旅行に行かれてて,前の週も海外の旅行に五日間も行っていたので,だからスタッフの間でも言っちゃいけないんですけど,ネグ 外旅行に行っていたんですよ。」「今 回の亡くなられた三日間の保育の時もご旅行に行かれてて,前の週も海外の旅行に五日間も行っていたので,だからスタッフの間でも言っちゃいけないんですけど,ネグレクトだと思っていたんですけどね。」などと述べた(甲A28)。 イまた,同年10月頃,Lが,被告Eに対し,電話で,本件事件はど うなっているのかを尋ねたところ,同被告は,原告Bについて,「いやもう大変でヒステリーな方なんですよ」と述べた(甲A28)。 ウ被告Eは,同年11月5日,Jの利用者であったNらに対し,「非常に迷惑,みんな言ってる,とんでもないって,相手のやましさ,自分のことしか考えない,警察,行政,マスコミを使って」と述べ,暗 に原告らを批判した(甲A36,37)。 2 本件請求⑴に係る被告らの責任⑴ 前提事項-Cの死因について本件請求⑴に係る被告らの責任について検討する前提として,本件におけるCの死亡原因について検討しておく。 この点,上記Cは,平成26年 7月26日午前2時頃,本件ビル3階のJ(本件乳児室内)において,暑熱環境下の脱水による熱中症により死亡したことが認められるところ,被告会社Dらは,乳幼児突然死症候群(SIDS)の発症に起因する可能性があり,上記Cの死因認定には合理的な疑いを挟む余地がある旨主張する。 しかし,上記1⑸イないしエによれば,Jは,同年7月23日,原告らから3泊4日の予定でC(生後9か月)を預かったが,摂氏25度を超える熱帯夜が続いていたにもかかわらず,室内に設置されたエアコンを作動させずに託児業務を行っていたこと,託児保育初日の同月23日から24日にかけ記録があるものだけでも14回下痢症状が認められ, 同月25日の ていたにもかかわらず,室内に設置されたエアコンを作動させずに託児業務を行っていたこと,託児保育初日の同月23日から24日にかけ記録があるものだけでも14回下痢症状が認められ, 同月25日の午後0時頃には38度を超える発熱があったにもかかわらず,適時適切な医師の診療を受けていなかったことなどからみて,Cの死亡原因は,暑熱環境下の脱水による熱中症であるとみるのが自然かつ合理的であるから,乳幼児突然死症候群(SIDS)の発症が原因である可能性は極めて低く,上記認定に合理的な疑いを生じさせるものでは ない。そして,他に上記認定を覆すに足りる証拠はない。 以下,Cの死亡原因は,暑熱環境下の脱水による熱中症死であることを前提に,被告らの責任について検討する。 ⑵ 争点⑴ア-被告会社Dらの責任ア被告会社D及び被告Eの各責任について 前提事実⑵及び上記1⑸のとおり,被告会社Dの代表者でもある被告 Eは,保育士として,被告会社Dの保育業務に従事していたものであるところ,託児初日の平成26年7月23日から3日間,生後9か月の乳幼児であるCを暑熱環境下に置き続け,同月25日の正午頃には体温が38度を超え,熱中症の症状を呈していることを認識していたのであるから,遅くとも,その頃までに,Cに対し,水分の補給等の熱中 症の緩和措置を講じるとともに,医師の診断,治療を受けさせる義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,漫然とCを本件乳児室内に放置し,死亡させるに至ったものであって,この認定を覆すに足りる証拠はない。 そうすると,被告Eは,Cの上記熱中症死について,原告らに対し, 不法行為に基づき損害賠償責任を負い,また,被告会社Dは,取締役兼保育従事者(従業員)である被告Eが行った上記不法行為について,民 うすると,被告Eは,Cの上記熱中症死について,原告らに対し, 不法行為に基づき損害賠償責任を負い,また,被告会社Dは,取締役兼保育従事者(従業員)である被告Eが行った上記不法行為について,民法715条又は会社法350条に基づき損害賠償責任を負う。 したがって,原告らは,被告E及び被告会社Dに対し,連帯して,共同不法行為に基づく損害賠償を請求することができる(民法719条1 項)。 イ被告Iの責任について のとおり,被告Iは,平成26年7月23日から同月25日にかけて,Jにおいて,子供の送迎や子供の遊び相手などの手伝いをしており,被告Eから,Cがちょっと下 痢気味である旨の話を聞いていたこと,平成26年7月25日の午前10時頃,被告Iは,Cのおむつを確認した際,Cの髪の毛がまとまってぺっとりおでこにくっつくような感じで濡れており,脇や股も湿っぽく汗をかいていることを認識していたことが認められるが,他方で,被告Iは,Jの保育従事者ではなく,母親である被告Eの託児に 対する保育業務の手伝いをしていた者にすぎないのであって,Cの水 様便の回数等の健康状態を正確に把握し得る立場にはなく,また,そのための専門的知識も十分にあったとはいい難く,実際,Cに熱中症の症状が現れていることをどの程度認識していたかは不明であること,そして,被告E記載の不法行為(要救護状態のCを漫然放置した不行為)を容易にし,あるいはこれを助長したことをうか がわせる形跡も見当たらないことなどの事情を合わせ考慮すると,被告Iは,生後9か月の乳幼児であるCが暑熱環境下で託児保育を受けていることを認識していたことは否定し難いものの,託児3日目の正午頃から体温が38度を超え,熱中症の症状を呈していたことを黙示的にも認 告Iは,生後9か月の乳幼児であるCが暑熱環境下で託児保育を受けていることを認識していたことは否定し難いものの,託児3日目の正午頃から体温が38度を超え,熱中症の症状を呈していたことを黙示的にも認識していたと推認することはできないし,また,認識予見す べきであったということもできない。 なお,原告らは,「被告Iが平成26年7月23日午前7時30分から同月24日午前1時20分まで,同日午前7時40分から同日午後9時00分まで,同月25日午前7時30分から同月26日午前0時10分まで及び同日午前5時38分から同日午前5時58分までの間,Cの保 育に関与したこと」を一旦は認めており裁判上の自白が成立するから,これを後に撤回することは許されない旨主張する。しかし,「Cの保育に関与した」といっても,その態様は具体的に明らかでなく,被告Iの権利侵害行為ないし過失を基礎付ける事実としは不十分であって単なる抽象的な間接事実レベルの主張にとどまる上,その撤回前に原告らはこれ を援用していないのであるから,いずれにしても裁判上の自白は成立しないものというべきである。 以上によれば,被告Iは,Cの熱中症死について,原告らに対し,(共同)不法行為に基づく損害賠償を請求することはできない。 よって,原告らの被告Iに対する請求は理由がない。 ウ被告H及び被告Gの責任について c及びdのとおり,被告Hは被告Eの長女,被告Gは被告Eの実母であって,本件事件の発生当時,被告Hと被告Gは,保育士として,被告会社D(J)に勤務していた。 しかのとおり,平成26年7月23日から同月26日までの間,Jにおいて保育業務に従事していた者は,被告Eと被告 Iのみであり,被告Hと被告Gが,実際に,Jにおい 会社D(J)に勤務していた。 しかのとおり,平成26年7月23日から同月26日までの間,Jにおいて保育業務に従事していた者は,被告Eと被告 Iのみであり,被告Hと被告Gが,実際に,JにおいてCに対する保育業務に従事していたと認めるに足りる証拠はない。 なお,原告らは,「被告Hが平成26年7月23日午後8時00分から同月24日午前1時20分まで,同日午前7時40分及び同月25日午後7時00分から同月26日午前0時10分までの間,Cの保育に関与 したこと」を一旦は認めており裁判上の自白が成立するから,これを後に撤回することは許されない旨主張する。しかし,「Cの保育に関与した」といっても,その態様は具体的に明らかでなく,被告Hの権利侵害行為ないし過失を基礎付ける事実としは不十分であって単なる抽象的な間接事実レベルの主張にとどまる上,その撤回前に原告らはこれを援用して いないのであるから,いずれにしても裁判上の自白は成立しないものというべきである。 そうすると,被告Hと被告Gは,上記のとおり,Cが要救護状態にあったことを認識予見していたとはいえないし,また,認識予見することが可能であったともいえないから,Cの熱中症死につ いて,原告に対し,共同不法行為に基づく損害賠償責任を負わない。 よって,原告らの被告H及び被告Gに対する請求はいずれも理由がない。 エ被告Fの責任について 主位的請求について a【原告らの主張】のとおり,被告Fは被告会社Dの実質的な経営者として,会社登記簿上の取締役である被告Eに匹敵する権限を有していたものと解されるから,委託を受けた乳幼児の生命・身体の安全を確保するよう指導監督すべき注意義務を負っていたのに,これを怠ったとして,被告Fに対し, 簿上の取締役である被告Eに匹敵する権限を有していたものと解されるから,委託を受けた乳幼児の生命・身体の安全を確保するよう指導監督すべき注意義務を負っていたのに,これを怠ったとして,被告Fに対し,不法行為 に基づく損害賠償を請求する。 b 確かに,上記1のとおり,①被告Fは,被告会社Dのパンフレット及びホームページに「代表」として表示され,②被告市に提出する運営状況報告書にも「代表者」ないし「管理者」として表示されているだけでなく,③被告会社Dが開催するJの内覧見学会にお いても被告会社Dの代表である旨紹介されている。しかし,その一方で,被告Fは,被告会社D(J)が運行,使用する自動車の運転手としての業務をしていたというのであるから(争いなし),上記①ないし③の各事実をもって被告Fが被告会社Dの実質的経営者としての地位にあったものとみることはできないし,他に,この実質的経営者性 を基礎付ける足りる事実が認められる証拠はない。 c よって,被告FがJの実質的経営者であるとの主張を前提とする原告らの主位的請求は理由がない。 予備的請求について原告らは,㋐被告Fが本件ビルの増築工事に深く関与していたことや ㋑本件ビルの屋外階段設置について指導監督権限を有する被告市に対して口利き行ったことがあるなどを理由に,同被告は,被告会社Dの取締役である被告Eと実質的に同じ立場にあったとして,会社法429条の類推適用により,委託を受けた乳幼児の生命・身体の安全を確保するよう指導監督すべき任務を負っていた旨主張するが,被告Fの被告会社D における地位等については, 認められるにとどまる上,仮に,上記㋐及び㋑の各事実が認められるとしても,それらは被告会社Dの取締役の地位にある者ならではの行為で 被告Fの被告会社D における地位等については, 認められるにとどまる上,仮に,上記㋐及び㋑の各事実が認められるとしても,それらは被告会社Dの取締役の地位にある者ならではの行為であるとまでいい難い。そうすると,被告Fが被告会社Dの取締役である被告Eと実質的に同じ立場にあったとまでは認められず,したがって,かかる主張を前提とする原告らの予備的請求も理由がない。 よって,原告らの被告Fに対する請求は,いずれも理由がない。 ⑶ 争点⑴イ-被告市の責任ア緒言 原告らの被告市に対する請求を基礎付ける主位的・予備的主張は,いずれも被告市の市長(以下「被告市市長」という。)の認可外保 育施設(被告会社Dの運営するJ)に対する指導監督権限の行使の在り方(不作為も含む。)が国賠法1条1項の適用上「違法」と評価とすべきであるとする点で共通するところ,同条項にいう「違法」とは,「公務員が個別の国民に対して負担する職務上の注意義務に違反する」ことをいうものと解されるから,その「違法」評価は当 該公務員の職務行為を基準に判断されるべきである(いわゆる職務行為基準説・最高裁昭和60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁参照)。 そこで以下,別紙「関連諸法令」等に基づき,被告市市長の職務行為(認可外保育施設に対する調査・指導監督権限の行使)の前提 となる法及び関連諸法令の内容等を概観した上,被告市市長の上記職務行為は①国賠法1条1項の適用上「違法」と評価されるか,②評価されるとして同項の「過失」が認められるか,③認められるとして本件事件の発生(Cの死亡)との間に因果関係が認められるか否かについて順次,検討する。 a 国及び地方公共団 ②評価されるとして同項の「過失」が認められるか,③認められるとして本件事件の発生(Cの死亡)との間に因果関係が認められるか否かについて順次,検討する。 a 国及び地方公共団体は,児童の保護者とともに,児童を心身ともに健やかに育成する責任を負っており(法2条),これは児童の福祉を保障することを目的とする原理であって,全ての児童に関する法令の施行に当たって常に尊重されなければならない原理であるところ(法3条),都道府県知事は,児童の福祉のため必要があ ると認めるときは,いわゆる認可外保育施設について,その施設の設置者若しくは管理者に対し,必要と認める事項の報告を求め,又は当該職員をして,その事務所若しくは施設に立ち入り,その施設の設備若しくは運営について必要な調査若しくは質問をさせることができる(法59条1項本文)。そして,児童の福祉のため必要 があると認めるときは,施設の管理者に対し,その施設の設備又は運営の改善その他の勧告をすることが(同条3項),また,施設の設置者がその勧告に従わなかったときは,その旨を公表することができ(同条4項),児童の福祉のため必要があると認めるときは,都道府県児童福祉審議会の意見を聴き,又は,緊急を要する場合で, あらかじめ都道府県児童福祉審議会の意見を聴くいとまがないときは,当該手続を経ないで,その事業の停止又は施設の閉鎖を命ずることができる(同条5項,6項)。 b ところで,認可外保育施設における児童の処遇に関する問題及びこれに対する監督行政庁の指導の在り方については,従来から, いわゆるベビーホテルといわれる夜間保育,宿泊を伴う保育又は時間単位での一時預かりのいずれかを行う乳幼児保育施設などを中心に問題点が指摘され,昭和56年には厚生省児童家庭局 ては,従来から, いわゆるベビーホテルといわれる夜間保育,宿泊を伴う保育又は時間単位での一時預かりのいずれかを行う乳幼児保育施設などを中心に問題点が指摘され,昭和56年には厚生省児童家庭局長により「認可外保育施設に対する指導監督の実施について」と題する通達が各都道府県知事及び各指定都市市長あてに発せられた(昭和56 年7月2日児発第566号厚生省児童家庭局長通知・以下「昭和5 6年通達」という。)。この昭和56年通達の基本方針は,劣悪な認可外保育施設を排除するため,当面の対策として最低基準とは別に認可外保育施設の指導基準を定め,少なくともこれ適合するように指導するとともに,適合しない施設については事業停止又は施設閉鎖の措置を講じることとした。しかし,依然として劣悪な保育環 境下において乳幼児の死亡事件の発生がみられ,とりわけ平成12年2月に神奈川県大和市の認可外保育施設で発生した同保育所園長のせっかんによる園児の死亡事件などを契機として,別紙「関連諸法令」2記載のとおり,厚生労働省雇用均等・児童家庭局長により「認可外保育施設に対する指導監督の実施について」と題する通 知(平成13年3月29日雇児発第177号厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知・以下「平成13年通達」という。)が各都道府県知事,各指定都市市長及び各中核都市市長あてに発せられ,そのより効果的な指導監督を図る観点等から,「認可外保育施設指導監督の指針」(以下「平成13年指針」という。)及び「認可外保育 施設設置監督基準」(以下「平成13年基準」という)が策定された(なお,この平成13年指針と平成13年基準とを一括して「平成13年指針等」といい,平成13年通達と平成13年指針等を一括して用いる場合には「平成13年通達等」という。 年基準」という)が策定された(なお,この平成13年指針と平成13年基準とを一括して「平成13年指針等」といい,平成13年通達と平成13年指針等を一括して用いる場合には「平成13年通達等」という。)。 c 被告市は,かかる法及び平成13年通達等に基づく認可外保育施 設に対する規制強化の要請等を踏まえ,従前の認可外保育施設に対する指導監督実施要領を廃止し,平成14年10月1日施行の「宇都宮市認可外保育施設指導監督実施要領」(以下「平成14年実施要領」という。)を策定した上,その3条及び5条において,認可外保育施設に対する指導監督は,その他の関連法令及び平成13年 通達及び「認可外保育施設指導監督基準を満たす旨の証明書の交付 について」(平成17年1月21日府県発第0121002号厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知)に基づき実施し,立入調査においては平成13年基準に適するか否かを調査することを宣明した。 以上の経過に照らすと,被告市市長の認可外保育施設に対する 指導監督権限(職務行為)は,法及びその関連法令の下,その趣旨,目的を踏まえ,平成13年通達等に則り行使されることが予定されていたものというべきである。 イ国賠法上の「違法」要件について原告らの主位的主張について a 原告らは,主位的に,被告市市長は,本件各通報を受けた時点において,託児施設Jに対し,速やかに事前予告なしの特別立入調査を実施して法59条5項及び6項に基づく事業停止命令権ないし施設閉鎖命令権(以下この2つの権限を一括して「事業停止命令権等」という。)を行使すべきであったのに,これを行使しなかった のは,国賠法1条1項の適用上「違法」と評価すべきである旨主張するので,以下,検討する。 b 国又は公共団体の公務 業停止命令権等」という。)を行使すべきであったのに,これを行使しなかった のは,国賠法1条1項の適用上「違法」と評価すべきである旨主張するので,以下,検討する。 b 国又は公共団体の公務員による規制権限の不行使は,その権限を定めた法令の趣旨,目的や,その権限の性質等に照らし,具体的事情の下において,その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合 理性を欠くと認められるときは,その不行使により被害を受けた者との関係において,国賠法1条1項の適用上「違法」と評価されるものと解するのが相当である(最高裁平成元年11月24日第二小法廷判決・民集43巻10号1169頁,最高裁平成7年6月23日第二小法廷判決・民集49巻6号1600頁,最高裁平成16年 10月15日第二小法廷判決・民集58巻7号1802頁等各参照)。 そして,上記判例法理にいう「不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠く」か否かは,一般的に,①危険の切迫,②予見可能性,③補充性,④期待可能性,⑤回避可能性などを重要な要 素として,これらを総合考慮して判断すべきであるから,被告市市長の上記規制権限(事業停止命令権等)の不行使が国賠法1条1項の適用上「違法」と評価することができるか否かを判断するに当たっても,目的やその権限の性質に照らし,⓵Jが同施設の園児の生命,身体に対し 重大な危険性を加える危険性が存在し,その危険が切迫しているか否か,⓶被告市市長(被告市の保育課)において上記危険の存在及び切迫性を予見し又は予見し得たか否か,⓷結果を防止するには上記事業停止命令権等を行使するよりほかなかったか否か,⓸かかる事業停止命令権等の行使を期待し得る状況が存在した否か,⓹上記 事業停止命令権等を行使することにより容易に結果 結果を防止するには上記事業停止命令権等を行使するよりほかなかったか否か,⓸かかる事業停止命令権等の行使を期待し得る状況が存在した否か,⓹上記 事業停止命令権等を行使することにより容易に結果を回避することができたか否か等の諸事情を総合考慮することにより,被告市市長の上記事業停止命令等の不行使が「許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠く」ものと認められる場合には,国賠法1条1項の適用上「違法」と評価すべきものと解される。 c そこで以上の観点に基づき検討すると,上記の各事実によれば,被告市の保育課に本件各通報が行われた平成26年5月27,28日の時点でJの保育業務を実質的に差配している被告Eは,保育業務を行う人手が足りなかったことから,託児に対し,その体を紐や毛布でぐるぐる巻きにし,あるいはワイシャツを前後逆さま に着せて袖を縛り付けるなどして,身動きができない状態にしたり, あるいは,ベッドを檻代わりにして,その中に子どもを長時間閉じ込めるなどの行為を日常的に行っており,かかる虐待的な保育業務は,本件事件が発生した同年7月23日から同月26日頃にかけても平然と行われていたことがうかがわれるのであるから,少なくとも本件各通報が行われた上記時点において,客観的には被告Eの上 記虐待的保育業務によって,Jの託児の生命・身体に対して重大な危害が及ぶ可能性が存在しており,かつ,その危険は,本件事件のような被害がいつ発生しても不自然ではないという意味において切迫した状況にあったというべきである(⓵危険の切迫性)。また,Jのような認可外保育施設によって保育されている乳幼児は,保育 士等から虐待に対しては,これを回避したり防御することは事実上不可能であって,その生命,身体に対する危険を回避するため )。また,Jのような認可外保育施設によって保育されている乳幼児は,保育 士等から虐待に対しては,これを回避したり防御することは事実上不可能であって,その生命,身体に対する危険を回避するための自助努力を期待することは困難であるから,侵害が予想される法利益の重大性や法の趣旨・目的に照らし,認可外保育施設を指導監督する責務を負っている被告市市長(被告市の保育課)においては,認 可外保育施設としての不適格施設を速やかに排除して上記危害の発生を回避するための措置を講じることが期待され,かつ,法及び平成13年通達等の規定に則り,かかる措置を講じることが可能な状況にあったものということができるし(⓸期待可能性),仮に,本件各通報があった上記時点で,被告市市長がJに対して上記事業 停止命令権等を発動していたならば,本件事件の発生を容易に回避することができたことも否定し難い(⓹回避可能性)。 しかし,以上の状況等の下においても,被告市市長による上記事業停止命令権等の不行使が国賠法1条1項の適用上「違法」か否かを判断するための重要な要素である「予見可能性」の程度は,被告 市市長(被告市保育課)が,本件各通報を受けた時点において,具 体的な状況の下,高度の蓋然性をもって上記切迫した状態の危険を認識し得る程度のものであることが必要と解される。 そこで,この点につき検討すると,上記1ア・イの各事実によれば,確かに,本件各通報は,いずれも具体的で,かつリアリティーに富む内容のものである。すなわち,上記1ア・イによれば, 本件通報①は,Jの利用者で医師でもある保護者が,自ら被告市の保育課を尋ね実名を名乗った上,Jに託児していた2歳になったばかりかの二男が左人差し指の爪を全て剥がすという看過し難い怪我を負ってJか 本件通報①は,Jの利用者で医師でもある保護者が,自ら被告市の保育課を尋ね実名を名乗った上,Jに託児していた2歳になったばかりかの二男が左人差し指の爪を全て剥がすという看過し難い怪我を負ってJから帰宅したというものであり,しかも,その数か月前にも同じくJに託児していた4歳の長男が右眼の上に眼球強打 を疑わせる青あざを作って帰宅した事実も合わせて報告されていたというのであるから,以上の本件通報①は,J内において託児の身体に危害を及ぼすおそれのある保育(託児)業務が恒常的に行われていたことをうかがわせる。 また,本件通報②は,匿名の通報者によるものとはいえ,上記1 その内容は,正に虐待的託児業務が平然と行われていることを具体的かつ詳細に報告するものであって,Jの保育業務の実態を悉知していた者からの情報提供がなければ語り得ない事実を含むものということができる。 で認定したとおり,被告市の保育課は本件各通 報を受けた時点において,これらの徴表を客観的に裏付ける物証等の存在までは把握していなかったのであるから,本件通報②の翌日にJに対して行われた立入調査(以下「本件立入調査」という。)やその後の対応(特別報告の徴求等)等が「職務上通常尽くすべき注意義務」を尽くしたものであるか否かはともかく,本件各通報を 受けた時点において,被告市市長(被告市保育課)がJの保育業務 に上記切迫した危険が存在することを高度の蓋然性をもって認識することができたものとはいい難く(⓶予見可能性),むしろ,直ちに事業停止命令権等といった最も強力な規制権限を行使するのではなく,迅速かつ的確な「特別の報告」の徴求や立入調査を継続的に実施する中で,改善指導,改善勧告を繰り返し,必要に応じて, 平成13年指針所定の手順に則り事業 た最も強力な規制権限を行使するのではなく,迅速かつ的確な「特別の報告」の徴求や立入調査を継続的に実施する中で,改善指導,改善勧告を繰り返し,必要に応じて, 平成13年指針所定の手順に則り事業停止命令等を発動する方法も,本件各通報時における選択肢の1つとして存在したものというべきであるから(⓷補充性),本件各通報があった時点において,被告市市長がJに対して事前予告なしの特別立入調査を実施し事業停止命令権等を行使しなかったことは,法の趣旨,目的や,その 権限の性質等に照らし,具体的事情の下,上記⓵⓸⓹の各事情を考慮にいれたとしても,許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くものであったとまでは認められず,その不行使により被害を受けた者(原告ら,被害児童)との関係において,国賠法1条1項の適用上「違法」と評価することはできない。 d 以上のとおりであるから,原告らの主位的請求は,その余の点を検討するまでもなく理由がない。 原告らの予備的主張についてa 原告らは,仮に,被告市市長において事業停止命令ないし緊急閉鎖命令を発令しなかったことが国賠法1条1項の適用上「違法」と評価 されないとしても,被告市市長(被告市の保育課)による本件調査の具体的な内容等は極めてずさんかつ不十分なものであって,法59条1項等によって付与された指導監督権限の行使を著しく怠るものであるから,かかる規制権限の不行使は,被告市の市長に付与された裁量を著しく逸脱するものとして,国賠法1条1項の適用上「違法」と評 価されるべきである旨主張するので,以下,検討する。 b被告市市長が認可外保育施設に対して法59条1項等に基づく指導監督権限を行使せず,その結果として当該施設内における虐待的保育等違法行為を防 ある旨主張するので,以下,検討する。 b被告市市長が認可外保育施設に対して法59条1項等に基づく指導監督権限を行使せず,その結果として当該施設内における虐待的保育等違法行為を防止することができなかったとしても,そのことから直ちに国賠法1条1項の適用上「違法」であったとの評価を受けるものではなく, 被告市市長が同市保育課職員の調査活動等を通じて,当該施設の保育状況等を把握し,これに基づき指導監督権限の行使を決する上において,職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然とこれを行使したと認め得るような事情がある場合に限り,上記「違法」評価を受けるものと解するのが相当であるところ(最高裁平成5年 3月11日第一小法廷判決・民集47巻4号2863頁,最高裁平成11年1月21日第一小法廷判決・集民191号,最高裁平成19年11月1日第一小法廷判決・民集61巻8号2733頁等各参照),上記アで検討したとおり,被告市市長の認可外保育施設に対する指導監督権限は,法及びその関連法令の趣旨,目的を踏まえ, 平成13年通達等に則り行使されるべきものである。 そうすると,被告市市長は,認可外保育施設に対する指導監督権限を行使するに当たって,法及びその関連法令の趣旨・目的を踏まえ,平成13年通達等に則り当該施設に対する調査・指導監督権限を行使すべき職務上の注意義務を負っていたものというべきであ るから,かかる義務を尽くすことなく漫然と当該調査・指導監督権限を行使したと認め得るような事情がある場合には,国賠法1条1項の適用上「違法」と評価されるべきものと解される。 c 以下,上記観点に基づき,本件における被告市市長の調査・指導監督権限の行使に上記国賠法上の「違法」評価を根拠付ける事情が 認められるか否 の適用上「違法」と評価されるべきものと解される。 c 以下,上記観点に基づき,本件における被告市市長の調査・指導監督権限の行使に上記国賠法上の「違法」評価を根拠付ける事情が 認められるか否かにつき検討する。 ⒜ この点,別紙「関連諸法令の定め(抜粋)」の2及び3のとおり,平成14年実施要領の第3条と5条及び平成13年通達等によれば,被告市市長は,「利用者の苦情や相談又は事故に関する情報等が行政庁に寄せられている場合等で,児童の処遇上の観点から施設に問題があると考えられる場合」には,⒜随時,施設の 設置者又は管理者(以下「設置者等」という。)あるいは必要に応じて保育従事者に対し,「特別の報告」を徴求するとともに(同,⒝届出対象施設であるか否かにかかわらず,「保育士,児童福祉司,心理判定士等の専門的知識を有する者」を指事前通告をせずに「特別に 立入調査を実施」することにより(同2⑴イ年基準に適合するものであるか①),⒞これらの立入調査の結果,「指導監督基準に照らして改善を求める必要があると認められる場合は,改善指導,改善勧告,公表,事業停止命令又は施設閉鎖命令の措置を通じて改善を図ること」が 求められているところ(同これらの諸規定(職務行為基準)は,上記bで述べたとおり,被告市市長が,Jに対し指導監督権限を行使するに当たっての「職務上通常尽くすべき注意義務」を構成しているものというべきである。 ⒝ 上記1⑷の事実によれば,被告市市長(被告市の保育課)は, 平成26年5月27日にJを利用している保護者(母親・医師)から,「託児していた二歳の子が爪を全て剥がして帰宅し,Jからは十分な説明を受けていない」という本件通報①を受けたばかりか,立て続けに,その翌日である同月28日には,Jの職員 る保護者(母親・医師)から,「託児していた二歳の子が爪を全て剥がして帰宅し,Jからは十分な説明を受けていない」という本件通報①を受けたばかりか,立て続けに,その翌日である同月28日には,Jの職員の知人と称する匿名者からないし⑫のとおり,実 際にJの虐待的な保育状況を目の当たりにした者でなければ語 り得ないほどの具体性と現実性を備えた内容の本件通報②を受けていたものであって,その内容等は,本件各通報時において,J内で平成13年基準に抵触するものであるばかりか,虐待的な保育業務が行われていることを相当程度の可能性をもって示唆するものと考えられるから,本件各通報により生じた状況等は, 上記平成13年指針にいう「利用者の苦情や相談又は事故に関する情報等が行政庁に寄せられている場合等,児童の処遇上の観点から施設に問題があると認められる場合」に該当するものというべきである(ちなみに平成13年指針に関する留意事項18は,本件のような「利用者から苦情や相談が寄せられており不適切な 処遇が窺われるもの」は「問題を有すると考えられる施設」に当たるものとする。 ①参照)。 そうすると,被告市市長(被告市の保育課)は,本件各通報からうかがわれるJの保育状況等に関する疑義や虐待的託児業務 の有無を明らかにするため,平成13年指針等に基づき,Jの設置者又は保育従事者等に対し,随時,①「特別の報告」を徴求し,保育従事者等からの事情聴取を行うとともに,②「特別の立入調査」を実施するなどして,平成13年基準違反の事実の有無を調査,確認すべき職務上の注意義務(以下「本件職務上の注意義務」 という。)を負っていたものと解するのが相当である。 なお,この法理の適用につき若干付言すると,上記判断枠組みを前提にしたとして 確認すべき職務上の注意義務(以下「本件職務上の注意義務」 という。)を負っていたものと解するのが相当である。 なお,この法理の適用につき若干付言すると,上記判断枠組みを前提にしたとしても,そこでいう「特別の報告」徴求や「特別の立入調査」の具体的な内容等の決定については,被告市市長(被告市の保育課)の裁量が働く余地があることは否定し難い。しか し,これらの「特別の報告」徴求等は,別紙「関連法令の定め(抜 のとおり,「児童の処遇上の観点から施設に問題があると考えられる場合」に行われるものであるから,年1回以上文書により行われている「運営状況報告」や「通常の」立入調査をもって代替することができないことはもとより,その内容も,上記のとおり「児童の処遇上の観点から」当該施設 の問題性(平成13年基準の不適合性)を解明する上で著しく不合理なものであってはならず,したがって,上記「特別の報告」徴求等に関する被告市市長の裁量は上記観点からの一定の制約に服しているものというべきである。 ⒞ そこで,まず本件職務上の注意義務のうち,被告市市長(被告 市の保育課)は,平成13年基準違反の有無を調査確認するため,被告会社D(J)に対し,上記「特別の報告」を徴求し,保育従事者等からの事情を聴取すべき義務(以下「本件職務上の注意義務①」という。)を尽くしたか否かにつき考察する。 ⅰ本件各通報は,平成13年 基準が規定する,①Jにおける保育に従事する者の数及び資格(別紙「関連法令の定めア),②保育内容(同),③保育従事者としての保育姿勢(同2),④ないしc)のほか,⑤給食の衛生管理及び内容等(ウ),⑥ 託児の健康管理・安全確保(エ)全般にわたるものである上,その内容は,本件各通報が行われた 育従事者としての保育姿勢(同2),④ないしc)のほか,⑤給食の衛生管理及び内容等(ウ),⑥ 託児の健康管理・安全確保(エ)全般にわたるものである上,その内容は,本件各通報が行われた時点(平成26年5月27,28日)で,J内において平成13年基準に抵触し,かつ,託児の生命身体に重大な危害を及ぼしかねない虐待的な保育業務が行われていることを相当程度の可能性をもって示 唆するものであること,そして以上に加え, よれば,Jは,年1回の通常の立入調査等においても,避難消火訓練未実施,保育従事者の研修未実施,保護者の緊急連絡票等の未整備,利用者に対する契約内容の書面交付の未実施,消防計画等の未作成,乳幼児突然死症候群予防のためのブレスチェック表の未作成,各階の消火器の未設置等について文書指摘を受けてい たにもかかわらず諸々の違反事項等を抱えたまま認可外保育施設の運営を続けていたものであって,法59条及び平成13年指針等に照らしても被告市市長の指導監督上,保育従事者の保育姿勢や安全意識の点で相当注意を有する託児施設であったことは,これまでの立入調査の結果や消防局等との情報交換により認識 することが可能であったこと(別紙「関連法令の定め(抜粋)」及び留意事項17参照)など事情を合わせ考慮すると,被告市市長は,上記1⑵アで認定したような「通常の」運営状況報告を求めるだけでは不十分であって,本件各通報の内容を踏まえ,当該施設の管理者等に対し,少なくとも平成13年基準 に基づき,㋐保育従事者数及びその資格,㋑保育中の託児数とその年齢構成,㋒J内の保育場所及び面積,㋓託児に対する健康・安全管理の方法について「特別の報告」徴求を行い,かつ,必要に応じて保育従事者等から事情を聴取することが求められていた 保育中の託児数とその年齢構成,㋒J内の保育場所及び面積,㋓託児に対する健康・安全管理の方法について「特別の報告」徴求を行い,かつ,必要に応じて保育従事者等から事情を聴取することが求められていたというべきである。 ⅱ にもかかわらず,被告市市長(被告市とおり,本件通報①に関して,Jの責任者である被告Eから電話で事情を聴取した上,口頭で簡単な指導を行っただけで,の直後はもとより,それ以降も本件事件発生までの間,上記「特 別の報告」の徴求や保育従事者等からの事情聴取というに値する ものは一切実施していないのであるから,かかる被告市市長(被告市の保育課)の対応は,「特別の報告」徴求に関して付与された権限を著しく逸脱するものであって,本件職務上の注意義務①を尽くしたものとはいえない。 ⒟ 次に,本件職務上の注意義務のうち,被告市市長(被告市の保 育課)は,平成13年基準違反の有無を調査確認するため,被告会社D(J)に対し,「特別の立入調査」を実施すべき義務(以下「本件職務上の注意義務②」という。)を尽くしたか否かにつき考察する。 ⅰ 上記①ないし⑥のとおり,本件各通報は,平成13 年基準が規定する諸事項全般に及ぶものである上,その内容は,(高度の蓋然性をもって予見できたか否かはともかく),託児の生命身体に重大かつ致命的な危害を及ぼしかねない虐待的な保育業務が行われていることを相当程度の可能性をもって示唆するものであることに加え,被告市市長の指導監督上,施 設の安全面や遵法意識の点で相当注意を有する託児施設であったことなどの事情を合わせ考慮すると,被告市市長(被告市の保育課)は,可及的に速やかに「特別の立入調査」の要否を検討し,「特別の報告」徴求の結果等を踏まえ,随時,保育士等の専門的な 託児施設であったことなどの事情を合わせ考慮すると,被告市市長(被告市の保育課)は,可及的に速やかに「特別の立入調査」の要否を検討し,「特別の報告」徴求の結果等を踏まえ,随時,保育士等の専門的な知識を有する者を加えた,事前通告なしの「特別の立入調査」 を敢行した上,少なくとも,㋐保育従事者数,㋑保育中の託児数とその年齢構成,㋒J内の保育場所,㋓託児に対する健康・安全管理の方法等の実状を調査することが求められていたというべきである。 ⅱ しかるに,被告市市長(被告市の保育課)は,本件各通報の あった日の翌日(平成26年5月29日),本件立入調査を実 のとおり,対象届出施設(J)の責任者(被告E)に対して,事前に当該施設への立入調査の実施を知らせた上,保育士等の専門的知見を有する者を立入調査班に加えることなく実行されたものであって(なお,P統括主任は経歴からみて保育士等の資格を有してい るようにもみえるが(被告市の準備書面10参照),同人は飽くまで保育課統括主任の立場で立入調査を行っているにとどまり,これでは保育士等の専門的知見を有する者を参加させたことにならない。),事前通告なしの「特別の立入調査」というに値しないものである上,その対象も本件通報②にある虐待的 な保育状況の有無及びその裏付けとなる物証確認に限られており,その所要時間も僅か30分程度であったこと,調査に保育士等の専門的知見を有する者を立ち会わせておらず,確認することができた託児に異常は見られなかったとする保育課職員の見立ては必ずしも専門的知見に裏付けられた客観性のあ るものとはいえないことなどの事情を合わせ考慮すると,本件立入調査は,実質的に「通常の」立入調査の域を出ない暫定的ないしは応急的なものであって,「児童の処遇上 的知見に裏付けられた客観性のあ るものとはいえないことなどの事情を合わせ考慮すると,本件立入調査は,実質的に「通常の」立入調査の域を出ない暫定的ないしは応急的なものであって,「児童の処遇上の観点から」当該施設の問題性(平成13年基準の不適合性)を解明し,本件通報②にあるような虐待的保育を防止する上で極めて不十 分なものであったといわざるを得ない。 そうすると,平成13年指針にいう「児童の処遇面で問題を有すると考えられる」状態は,本件立入調査以降も基本的にその性質を変じることなく継続していたものというべきである。 にもかかわらず,ウころによれば, 被告市市長(被告市の保育課)は,そうした「児童の処遇面で 問題を有すると考えられる」状態が継続していることを見誤り,新たな通報がないことも相俟って,本件立入調査以降も,改めて事前通告なしの「特別の立入調査」を一切実施することなく,「通常の立入調査」における再調査を念頭に事態の推移をうかがうにとどめたものであり,かかる被告市市長(被告市の保育 課)の対応は,事態を漫然と傍観するに等しいものといわざるを得ず,「特別の立入調査」に関して付与された権限を著しく逸脱するものであって,本件職務上の注意義務②を尽くしたものとはいえない。 ⒠ 以上のとおりであるから,被告市市長は,平成13年通達等に則 り当該施設に対する指導監督権限を行使すべき義務(=本件職務上の注意義務)を負っていたにもかかわらず,漫然とその行使を怠ったものというべきであるから,本件における被告市市長のJに対する指導監督権限の行使は,国賠法1条1項の適用上「違法」と評価されるべきものであって,これと同旨の原告らの予備的主張は理由 がある。 もっとも,この点につき,被告市は,本件各 市長のJに対する指導監督権限の行使は,国賠法1条1項の適用上「違法」と評価されるべきものであって,これと同旨の原告らの予備的主張は理由 がある。 もっとも,この点につき,被告市は,本件各通報に対して,いかなる立入調査及び報告徴求を行うかは法59条1項等には何ら具体的な定めは存在せず,平成13年通達等や平成14年実施要領が行政機関内部の通達等をどのように解釈し適用するかは被告市市 長の広範な裁量的な判断に委ねられている旨主張している。 しかし,平成13年通達等は,上記アで詳述したとおり,法2条,3条及び59条等による認可外保育施設に対する法的規制強化の要請を受け,より効果的な指導監督権限の行使を可能にするため策定されたものであるから,かかる平成13年通達等によって具体化 された行政庁(本件においては被告市市長)の行為規範(その具体 的内容は上記⒜の説示参照)は,個々の国民(児童)の権利利益の保護を目的とする法59条等に具体的かつ直接的な根拠があるものというべきであって,単なる行政機関内部の取決め(内規)にとどまるものではない。 そして,被告市 を策定した上,その3条及び5条において,認可外保育施設に対する指導監督権限の行使は平成13年指針等に基づき行うことを明文をもって規定しているのであって,このことは,被告市市長が,個々の国民(児童)との関係において,自ら,その裁量権の行使に縛りをかけたものと解するのが合理的であるから,そうである以上, かかる平成13年指針等は,被告市市長が上記指導監督権限を行使するに当たって上記「職務上通常尽くすべき注意義務」の内実を構成しているというべきであって,その裁量権の行使には上記⒝のとおり一定の制約があるものというべきである。 被告市の上記主張は,当裁 行使するに当たって上記「職務上通常尽くすべき注意義務」の内実を構成しているというべきであって,その裁量権の行使には上記⒝のとおり一定の制約があるものというべきである。 被告市の上記主張は,当裁判所の上記判断を左右するものではな い。 ウ国賠法上の「過失」要件について 被告市は,本件立入調査の結果等を踏まえると,本件各通報をもって,Jにおいて虐待的な保育業務が行われていることはもとより,本件事件の発生を具体的に予見することは不可能であり,また,仮 に,そうでないとしても,本件事件の発生を回避することは不可能であった旨主張するので,以下,検討する。 この点,国賠法上の「違法」判断につき職務行為基準説を前提にしたとしても,被告市に国賠法1条1項にいう「過失」が認められるためには,被告市市長が,①損害の発生することを予見し,又は 予見すべきであったと認められること(予見可能性)及び②被害の 発生を未然に防止する措置を執ることができ,かつ,そうすべき義務があったにもかかわらず,これを懈怠したこと(結果回避可能性)が必要と解される(最高裁昭和58年10月20日第一小法廷判決・民集37巻8号1148頁参照)。 a そこで,まず上記予見可能性の有無につき考察する。 ⒜ 確かに,上記イで検討したとおり,本件各通報があった時点で,Jにおいて託児虐待が行われていることを高度の蓋然性をもって認識し得る状況が存在していたとまではいい難い。 しかし,上記のとおり,被告市市長は,認可外保育施設に対する指導監督権限を行使するに当たって依拠すべき「職務上 通常尽くすべき注意義務」として,法及びその関連法令の趣旨・目的を踏まえ,平成13年通達等に則り当該施設に対する指導監督権限を 設に対する指導監督権限を行使するに当たって依拠すべき「職務上 通常尽くすべき注意義務」として,法及びその関連法令の趣旨・目的を踏まえ,平成13年通達等に則り当該施設に対する指導監督権限を行使すべき義務を負っているものと解されるところ,本件各通報の内容は,託児の生命身体に重大かつ致命的な危害を及ぼしかねない虐待的な保育業務が行われている可能性を相当程 度の確かさをもって示唆するものである上,本件立入調査も,客観的にみる限り,実質的に「通常の」立入調査の域を出ない暫定的ないし応急的なものであって,「児童の処遇上の観点から」当該施設の問題性(平成13年基準の不適合性)を解明し,本件通報②にあるような虐待的保育を防止する上で極めて不十分なも のであったことなどからみて,平成13年指針等に基づきJに対して随時「特別の報告」徴求や「(事前通告なし)の特別の立入調査」を継続的に実施する必要性があることをうかがわせるに足りる程度の「虐待的保育業務の徴表」は本件立入調査によっても払拭されることなく存在していたものというべきであるから,被 告市市長は,そうした虐待的保育業務の存在を予見し,又は予見すべきであったものというべきである(予見可能性)。 ⒝ もっとも,被告市は,「本件通報①については,当該子の負傷がJの保育中に発生したものか,保育中であっても子自らの過失によるものなのか,又は第三者の加害行為によるものなのかを十分に 確認することができず,また,本件通報②も口頭のみによる通報であって,Jを快く思っていない人物からの誹謗中傷か否かも確認ができなかった」と主張し,P総括主査らもその尋問でこれに沿う供述をしている。 確かに,本件各通報の時点では,これらを客観的に裏付ける物証 の類いまでは提出さ 人物からの誹謗中傷か否かも確認ができなかった」と主張し,P総括主査らもその尋問でこれに沿う供述をしている。 確かに,本件各通報の時点では,これらを客観的に裏付ける物証 の類いまでは提出されていなかったのであるから,被告市の上記指摘は少なくとも抽象的な可能性としては考慮に入れる必要がある。 しかし,繰り返し述べるとおり,本件通報①は,Jの利用者で医師でもある保護者が,自ら被告市の保育課を尋ね実名を名乗った上,Jに託児していた2歳になったばかりかの二男が左人差し 指の爪を全て剥がすという看過し難い怪我を負ってJから帰宅したというものであり,しかも,その数か月前にも同じくJに託児していた4歳の長男が右目の上に眼球強打を疑わせる青あざを作って帰宅した事実も合わせて報告されていたというのであるから,以上の本件通報①は,それ自体,J内において託児の身 体に危害を及ぼすおそれのある保育(託児)業務が恒常的に行われていたことをうかがわせるものである上,かかる本件通報①に対する被告E何らの客観的な資料(特に連絡帳)も示さずに,Jにおける託児時間中に既にOの二男にはその爪の周辺が赤くなるという異常が現れていたこ とを認めつつ,その一方で事もあろうに当該託児の爪が全部剥が れたことの理由を同託児の父親の不始末が原因であるかのように仕向ける内容のものであって,それ自体,本件通報①によって生じた自己の保育業務に対する虐待等の疑いを払拭するに足りるものでは全くないことなどを合わせ考慮すると,本件通報①は,Jにおいて虐待的な保育業務が行われていた相当程度の可能性 を示唆するものであるということができる。 また,本件通報②の内容は,①ないし⑫のとおりであって,この種の通報としては,Jの責任者である被告Eによっ 保育業務が行われていた相当程度の可能性 を示唆するものであるということができる。 また,本件通報②の内容は,①ないし⑫のとおりであって,この種の通報としては,Jの責任者である被告Eによって虐待的託児業務が平然と行われていることを相当具体的かつ詳細に報告し,事前通告なしの立入調査の実施まで懇請するも のである上,その内容を精査するならば,当該通報時においても,Jの保育業務の実態を悉知していた者からの情報提供がなければ語ることができないものとみられる事実が多々記載されているほか自己の氏名を名乗ることができないことにつき,それなりに合理的な理由を説明してい ることなどに照らすと,本件各通報は,育児室とJ内に上記切迫した危険が存在していたことを予見させる重要な徴表とみることができる。 そして以上に加え,上記Jは,通常の立入調査等においても,単なる避難消火設備等の消防上の不 備が指摘されていただけでなく,保育従事者の研修未実施,保護者の緊急連絡票等の未整備,利用者に対する契約内容の書面交付の未実施,乳幼児突然死症候群予防のためのブレスチェック表の未作成などといった託児・保育業務上の問題点についても多々指摘され続けていたことなど被告市保育課において当然認識すべき事情を合わ せ考慮するならば,本件各通報の内容は,託児の生命身体に重大 かつ致命的な危害を及ぼしかねない虐待的な保育業務が行われている可能性を相当程度の確かさをもって示唆するものというべきであるから,被告の上記主張は単なる抽象的な可能性を指摘するものにとどまり,採用することはできない。 ⒞ なお,被告市は,仮に,Jの虐待的保育状況を予見することが できたとしても,本件事件の発生(本件被害児童の死亡)まで具体的に予見することは困 するものにとどまり,採用することはできない。 ⒞ なお,被告市は,仮に,Jの虐待的保育状況を予見することが できたとしても,本件事件の発生(本件被害児童の死亡)まで具体的に予見することは困難であったと主張するが,被告市長のJに対する指導監督権限が適正な行使され,Jの虐待的保育状況の改善等が図られるならば,当然に本件事件が発生する可能性は著しく低下し,最悪の事態は回避される可能性は高まるのであるか ら,本件における予見可能性の判断は,J内における虐待的保育の存在を対象に行うことで足り,本件事件の発生についてまでは不要であると解される。 b 次に,上記結果回避可能性の有無について考察する。 ⒜ 上記のとおり,被告市市長は,認可外保育施設に対する指導監 督権限を行使するに当たって依拠すべき「職務上通常尽くすべき注意義務」として,法及びその関連法令の趣旨・目的を踏まえ,平成13年通達等に則り当該施設に対する指導監督権限を行使すべき義務(本件職務上の注意義務)を負っているものと解され被告市市長(被告 市の保育課)が本件職務上の注意義務を尽くしていたならば,平成26年7月26日の時点において,本件事件(Cの熱中症死)おり,これを怠ったものであるから,被告市市長は,本件事件の発生を未然に防止する措置を執ることができ,かつ,そうすべき義 務があったにもかかわらず,これを懈怠したものというべきである(結果回避可能性)。 ⒝ これに対し,被告市は,①仮に抜き打ち的立入調査を実施したとしても,被告市保育課の職員は,強制的かつ即時に対象施設に立ち入る権限を有するものではなく,当該施設側の協力がなけれ ば施設内に立ち入ることはできないのであるから,Jの責任者(被告E)は託児を本件ビルの4階等に移動させ は,強制的かつ即時に対象施設に立ち入る権限を有するものではなく,当該施設側の協力がなけれ ば施設内に立ち入ることはできないのであるから,Jの責任者(被告E)は託児を本件ビルの4階等に移動させるなどして虐待的保育状況を隠ぺいすることが可能であったであるとか,②仮に,被告市保育課の職員がその本件ビル4階等を調査しようとしても,責任者の被告Eが「(本件ビル4,5階は)自宅として使用し ている」との説明がなされている以上,これを無視して調査を強行することは住居侵入罪となりかねず困難であるなどとして,本件立入調査をも含め事前通告なしの特別の立入調査を実施したとしても,結局,Jの虐待的保育状況の発見には至らず,本件事件の発生を回避することは不可能であったなどと主張する。 しかし,被告市の保育課職員による「特別の立入調査」が,事前通告なしの抜き打ち的方法により実施されるのと,そうではなく「通常の立入調査」と同様に事前通告をした上で実施される場合とでは,当該施設(J)内における虐待的保育状況ないしはこれを裏付ける有力な物証が発見される可能性の点で有意な差異があることは社会 通念上明らかであるから,本件事件について被告市に回避可能性がなかったとはいえない。 また,上記1月1日現在の運営状況報告書によれば,Jの施設は,「5階建ての3階(557.32㎡)」にあるものとされるが,その面積は,上 の各4月1日現在の運営状況報告書に記載された「5階建て2階から5階」までの合計面積と一致していること,そして,上記1⑵アのとおり,被告市保育課は,本件事件の前年である平成25年9月3日に,本件ビルに消防法4条に基づき立入検査を行った中央消防署から,「立入検査時,Jの施設職員が,3階及び4階は自宅だ と言い張っ のとおり,被告市保育課は,本件事件の前年である平成25年9月3日に,本件ビルに消防法4条に基づき立入検査を行った中央消防署から,「立入検査時,Jの施設職員が,3階及び4階は自宅だ と言い張っている。」「明らかに建物の中を検査のために片づけた形跡があり,保育室ではないかと思われる。」との情報提供がされていたことなどからみて,本件立入調査を行った被告市保育課の職員は,被告Eの「(本件ビル4,5階は)自宅として使用している」との説明が少なくとも虚偽である可能性を容易に認識することができた はずである。にもかかわらず,被告市保育課の職員は,上記運営状況報告書の記載内容や他の行政機関からの重要な情報提供を十分に調査,確認しないまま漫然と本件立入調査を開始したため,被告Eの上記虚偽弁明に適切に対応することができなかったばかりか,「特別の報告」徴求や事前通告なしの「特別の立入調査」を実施する重 要な契機を失ったものということできるから,被告Eの上記説明は,少なくとも客観的にみる限り,本件ビル4,5階への立入調査の続行を直ちに断念する理由とは到底なり得ないものである。 c なお,被告市は,本件立入調査によってJ内で虐待的な保育が行われていることの確証を得られず,被告市の保育課は中途半端な状態に 置かれていたことや,それ以降,Jに対して苦情等の申立てがされなかったことなどから再度の立入調査に踏み切ることはできなかったものであるとか,本件立入調査時に託児数を確認するため被告Eに対し帳簿等の提示を求めるに足りる理由はなかったため次回の通常の立入調査の際に改めて確認することとしたなどと縷々主張する。 しかし,上記のとおり,本件各通報は,上記平成13年指針にいう「利用者の苦情や相談又は事故に関する情報等が行政 通常の立入調査の際に改めて確認することとしたなどと縷々主張する。 しかし,上記のとおり,本件各通報は,上記平成13年指針にいう「利用者の苦情や相談又は事故に関する情報等が行政庁に寄せられている場合等,児童の処遇上の観点から施設に問題があると認められる場合」に該当するものというべきである。被告市は,本件立入調査によってJ内に虐待的保育が行われている確証を得 られなかった以上,上記「児童の処遇上の観点から施設に問題があると認められる場合」には当たらないと主張するかのようであるが,繰り返し述べるとおり,本件各通報の内容は,託児の生命身体に重大かつ致命的な危害を及ぼしかねない虐待的な保育業務が行われている可能性を相当程度の確かさをもって示唆するもの である上,本件立入調査も,実質的に「通常の」立入調査の域を出ない暫定的ないしは応急的なものであって,「児童の処遇上の観点から」当該施設の問題性(平成13年基準の不適合性)を解明し,本件通報②にあるような虐待的保育を防止する上で極めて不十分なものであったといわざるを得ないのであるから(被告市 においても本件立入調査によって本件通報②に係る疑いが晴れたわけではないことを自認している。準備書面12(被告市)11頁),本件立入調査によって上記確証を得られなかったことを主たる理由として,本件各通報によって生じた事態が,上記「児童の処遇上の観点から施設に問題があると認められる場合」に当たらない ものと解することはできない。そうすると,被告市市長(被告市の保育課)は,本件立入調査後も,平成13年指針等に則り,速やかに,Jに対する「特別の報告」徴求や事前通告なしの「特別の立入調査」の実施を検討し,これを実施する必要があったものというべきであり,これらの調査等を 本件立入調査後も,平成13年指針等に則り,速やかに,Jに対する「特別の報告」徴求や事前通告なしの「特別の立入調査」の実施を検討し,これを実施する必要があったものというべきであり,これらの調査等を傍観したり,あるいは「通 常の」立入調査に先送りすることは,法及び平成13年通達等の解釈を誤るものであって是認されるものではない。 以上のとおりであるから,被告市市長は,①本件事件の発生することを予見し,又は予見すべきであったと認められるところ(予見可能性)②本件事件の発生を未然に防止する措置を執ることができ, かつ,そうすべき義務があったにもかかわらず(結果回避可能性),これを懈怠したものということができるから,被告市には国賠法1条1項の「過失」があるといわざるを得ない。 エ本件事件発生との間の因果関係の有無について訴訟上の因果関係の立証は,経験則に照らして全証拠を総合検討し, 特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり,その判定は,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし,かつ,それで足りるものと解されるところ(最高裁昭和50年10月24日第二小法廷判決・民集29巻c号1417頁等参照),この理は,被告市市長のJに 対する監督指導権限の不行使と本件事件の発生(Cの熱中症による死亡)との間の因果関係の存否の判断においても異なるところはなく,経験則に照らして全証拠を総合的に検討し,被告市市長の上記調査・監督指導権限の不行使(ここでは「不行使」とは本件職務上の注意義務を尽くしていない状態をいい,不十分な本件立入調査も含む。)が本件事件の発生 (Cの熱中症死)を招来したこと,言い換えるならば,被告市 権限の不行使(ここでは「不行使」とは本件職務上の注意義務を尽くしていない状態をいい,不十分な本件立入調査も含む。)が本件事件の発生 (Cの熱中症死)を招来したこと,言い換えるならば,被告市市長が本件職務上の注意義務を尽していたならば,少なくとも平成26年7月26日の時点で,本件事件(Cの熱中症死)が発生しなかったであろうことを是認し得る高度の蓋然性が認められる場合には,被告市市長の本件職務上の注意義務と本件事件の発生との間の因果関係は肯定されるもの というべきである(最高裁平成11年2月25日第一小法廷判決・民集53巻2号235頁参照)。 そこで検討すると,被告市市長が本件職務上の注意義務を尽くし被告市市長(被告市の保育課)は,平成13年指針等に基づき,Jの設置者(特に被告E)又は保 育従事者等(本件通報②の基となった情報を提供した同託児施設の従業員等)に対し,随時,少なくとも,①㋐Jの保育従事者数及びその資格,㋑本件ビル内における保育施設の設置場所やその状況,㋒Jにおる託児保育の方法,安全・衛生管理等について「特別の報告」徴求や保育従事者等からの事情聴取を行うとともに,②本件立 入調査を含め,専門的知見を有する者の参加を得て,事前通告なしの「特別の立入調査」を実施し,虐待的な託児保育の有無だけでなく,上記㋐ないし㋒等の各事項についても実態調査等が行われるのが通常であるから,社会通念に照らし客観的にみる限り,その過程において当然,Jにおける虐待的な託児保育の状況の一端ないしは これを裏付ける物証等が発見される蓋然性が高く,そうなれば,被告会社D(J)に対して,法59条及び平成13年指針(第3 問題を有すると認められる場合の指導監督・別紙「関連法令の定め(抜粋)」2ウ)に基づき,改 物証等が発見される蓋然性が高く,そうなれば,被告会社D(J)に対して,法59条及び平成13年指針(第3 問題を有すると認められる場合の指導監督・別紙「関連法令の定め(抜粋)」2ウ)に基づき,改善指導,改善勧告,公表はもとより,これにも応じない場合には事業停止命令又は施設閉鎖命令の措置が 講じられ,Jの託児の生命・身体に対する切迫した危険な状況は排除されていたものということができ,しかも,本件各通報時から本件事件の発生日までは50日余りの期間があり,これだけの時間的余裕があれば,上記「特別の報告」徴求や「特別の立入調査」義務を尽くすことは決して困難な職務遂行であったとはいえないことな どを合わせ考慮すると,被告市市長(被告市の保育課)が本件職務 上の注意義務を尽していたならば,平成26年7月26日の時点において,本件事件(Cの熱中症死)が発生しなかった蓋然性が高かったものということができ,したがって,被告市市長の本件職務上の注意義務違反と本件事件(Cの熱中症死)の発生との間には因果関係の存在を肯認することができるものというべきである。 なお以下,上記因果関係の判断に関し,上記1ないしらし,以下の2点につき付言する。 a まず,上記1⑹のとおり,本件事件発生後,被告市市長(被告市の保育課)は,被告会社D(J)に対し,「特別の立入調査」等を行い,これを前提に指導監督権限を行使しているが,それでもなお依然とし てJにおいては虐待的な保育業務が行われていた形跡がうかがわれることから(甲A108),本件事件の発生以前に,被告市市長によってJに対して適正な調査・指導監督権限が行使されていたとしても本件事件を防ぐことができなかった可能性があるとして上記因果関係の判断に疑いを挟む向きもあり得よう。しかし の発生以前に,被告市市長によってJに対して適正な調査・指導監督権限が行使されていたとしても本件事件を防ぐことができなかった可能性があるとして上記因果関係の判断に疑いを挟む向きもあり得よう。しかし,本件事件の発生後もJに 虐待的な保育状況がうかがわれたとしても,その内容が本件事件の発生前に行われていたものと同程度のものであったかは不明であり,むしろ,一度,被告市市長によって適正に調査・監督指導権限が行使されたならば,Jの責任者である被告Eがいかに特異な人物であったとしても,当然,一定の自制ないし自重的な効果が働くことは否定でき ないのであるから,上記調査・監督指導権限が適正に行使されていたとしても本件事件と同レベルの虐待的な保育業務が行われていたものとみることはできない。いずれにしても,上記因果関係の判断は,社会通念に照らし客観的に行われるべきものであるから,Jないし被告Eの上記異常性それ自体は,上記因果関係の判断に合理的な疑いを生 じさせるようなものではない。 b また,本件事件は,被告会社Dが運営するJの責任者であった被告Eが,託児を暑熱環境下に置き,然るべき熱中症対策や医療的措置を講じることなくこれを放置し託児を死亡させたというものであって,本件通報②にあるような託児の体を紐や毛布でぐるぐる巻きにして身動きができない状態にするといった積極的な虐待行為とはやや性質が 異なるが,その背景には,いずれもJの責任者である被告Eの託児の生命・身体に対する安全意識の欠如と保育業務に従事する者の恒常的な不足状態が存在しており,被告市市長のJに対する調査・指導監督権限が適正に行使され,本件通報②にあるようなJにおける保育業務の実態に対し適正な措置(メス)が講じられていたならば,当然,本 件事件は発 が存在しており,被告市市長のJに対する調査・指導監督権限が適正に行使され,本件通報②にあるようなJにおける保育業務の実態に対し適正な措置(メス)が講じられていたならば,当然,本 件事件は発生しなかった蓋然性は高いものというべきであるから,本件事件の内容が本件通報②にある虐待行為とは異なり消極的なものであることは,上記因果関係の認定に合理的な疑いを生じさせる筋合いのものではない。 オ小括 以上によれば,被告市は,原告らに対し,Cの熱中症死について,国賠法1条1項に基づく損害賠償義務を負う。 そこで以下,原告ら及びCに生じた損害につき検討する。 ア逸失利益 1991万7392円 上記C(平成25年9月29日生)は,本件事件当時,生後9か月の女児であったのであるから,その逸失利益の額は,下記計算式のとおり上記金額が相当である。 (計算式)479万6800円(基礎収入・平成26年男女学歴計)×(1―0. 45〔生活費控除〕)×(19.2391(67年5%ライプニッツ係数) -11.6896(18年5%ライプニッツ係数))=1991万7392円 なお,原告は中間利息控除につき,利率を3%として算出するべきである旨主張するが,本件請求⑴においては,民法419条,404条(いずれも平成30年7月13日号外法律第72号による改正前のもの)の 適用が前提となるから,原告の上記主張は採用できない。 イ死亡慰謝料 2500万円Cは,上記のとおり,生後9か月の乳幼児であり,託児の初日である平成26年7月23日から多数回にわたる水様便がみられ明らかな下痢症状を呈していただけでなく,託児3日目の同月25日の正午頃にはそ Cは,上記のとおり,生後9か月の乳幼児であり,託児の初日である平成26年7月23日から多数回にわたる水様便がみられ明らかな下痢症状を呈していただけでなく,託児3日目の同月25日の正午頃にはその体温 が38度を上回り明らかに熱中症の症状が現れていたにもかかわらず,Cの託児保育を担っていた被告Eは,Cに水分を十分に与えることもなく,エアコンもつけずに,熱帯夜の本件ビル3階にあるJ内に,Cを長時間放置し,熱中症により死亡させたものであり,かかる理不尽な死亡に至る過程等に照らすと,Cが受けた精神的苦痛の程度は極めて大きいものという べきであるから,かかるCの死亡慰謝料の額は上記金額が相当である。 ウ遺族固有の慰謝料各500万円本件事件により,理不尽にも最愛の子を失った原告らの悲しみや怒りの大きさは察するに余りあるから,これに伴って生じた原告らの精神的苦痛を慰謝するに相当な慰謝料の額は,上記金額が相当である。 エ葬儀関連費用 150万円本件事件(被告Eらの共同不法行為)と相当因果関係が認められるCの葬儀関連費用の額は,上記金額が相当である。 オ小計(アないしエの合計額)5641万7392円 カ弁護士費用 560万円 本件事件(被告Eらの共同不法行為)と相当因果関係が認められる弁護士費用の額は,上記金額が相当である。 キ合計額(オ+カ)6201万7392円 被告市と被告会社D及び被告Eとの間の責任関係等 アまず,被告会社D及びEと被告市との責任関係について考察する。 Cの熱中症死は,直接的には被告会社D及びEの上記⑵ア記載の不法行為によって招来されたものであるが,上記⑶エで検 責任関係等 アまず,被告会社D及びEと被告市との責任関係について考察する。 Cの熱中症死は,直接的には被告会社D及びEの上記⑵ア記載の不法行為によって招来されたものであるが,上記⑶エで検討したとおり,被告市市長が同⑶ウ記載のJに対する調査・指導監督義務を尽くしていれば高度の蓋然性をもって本件事件(Cの熱中症死)の発生を 回避することができたのであるから,被告会社D及びEの上記不法行為と被告市市長の上記調査・指導監督義務の不尽は,いずれもCの死亡という不可分の1個の結果の発生に向けられていたものではある。 しかし,そもそも被告市の上記調査・指導監督権は,法及び関連法令の趣旨,目的を達成するため,私人たる被告会社D(J)の自由な活動を規 制し,これに不利益を与えるものであるから,その規制の対象である被告会社Dの事業に伴う違法行為と,かかる違法行為を規制する被告市市長の上記調査・指導監督義務の不尽は次元を異にする問題であって,両者について相関連・共同する1個の違法行為を想定することは困難であるから,被告会社D及びEと被告市は「共同の不法行為によって」(民法719条 1項前段)Cと原告らに損害を加えたものと解することはできない(ちなみに,行政の規制監督責任と私企業の責任について共同不法行為の成立を否定した裁判例として福岡地裁昭和53年11月14日判決・判例時報910号33頁,広島地裁昭和54年2月22日判決・判例時報920号19頁,東京地裁昭和53年8月3日判決・判例時報89c号48頁,福岡 高裁昭和59年3月16日判決・判例時報110c号24頁参照)。 そうすると,被告市は,被告会社D及び被告Eと共同不法行為者の関係には立たないことになるが,ただ,被告市市長の上記調査・指導監督義務の不尽が 6日判決・判例時報110c号24頁参照)。 そうすると,被告市は,被告会社D及び被告Eと共同不法行為者の関係には立たないことになるが,ただ,被告市市長の上記調査・指導監督義務の不尽が国賠法1条1項の適用上「違法」と評価される場合において,その賠償の対象となる損害は,Cの死亡という不可分の1個の結果から生じたものとして被告会社D及び被告Eのそれと同一であるから,被告市の損 害賠償債務と被告会社D及び被告Eのそれは不真正連帯債務の関係に立つものと解するのが相当である(以下上記各裁判例は,いずれも行政の責任と私企業のそれを「不真正連帯債務」関係と解している。)。 イそこで次に,以上の解釈を前提として,被告市の損害賠償責任の範囲について考察する。 上記のとおり被告市市長の上記調査・指導監督義務の不尽(被告市の不法行為)と被告会社D及び被告Eの不法行為は競合し,かつ,その各債務は不真正連帯債務の関係に立つが,ただ,その効果として被告市と被告会社D及び被告Eは当然に全額不真正連帯の責任を負うものとは解されないところ,本件のような被告市の調査・指導監督権限の不尽の違法が問題と される事案においては,その規制の対象者である被告会社Dが一次的,最終的責任を負担すべきものであって,被告市の損害賠償責任は,規制対象者である被告会社Dが損害賠償責任を負うことを前提として初めて認められる二次的,補充的な性質のものにとどまることに加え,被告会社Dの責任者である被告Eの不法行為は犯罪行為そのもので極めて違法性の高い行 為であるのに(刑法218条後段),被告市の上記不法行為は,飽くまで被告市市長の上記調査・指導監督権限の不尽という過失行為にとどまり,その違法性の程度は原告らとの関係においても大きな差異があること,一方,被 に(刑法218条後段),被告市の上記不法行為は,飽くまで被告市市長の上記調査・指導監督権限の不尽という過失行為にとどまり,その違法性の程度は原告らとの関係においても大きな差異があること,一方,被告市市長(被告市保育課)は上記調査・指導監督権限を全く行使しなかったものではなく,暫定的であってかつ不十分なものとはいえ一応立 入調査を実施していることなどの事情を合わせ考慮すると,損害の公平な 分配の観点から,被告市は,原告らに対し,その全損害の3分の1(計算上端数が生じる場合は円未満を切り捨てる。以下同じ)を限度として賠償すべき義務があるものとするのが相当である(このような一部不真正連帯を認める裁判例として前掲東京地裁昭和53年8月3日判決,福岡高裁昭和59年3月16日判決参照)。 結論 以上のとおり,本件請求は,原告らが,それぞれ,連帯して,⑴被告会社D及び被告Eに対し,民法709条,715条1項,719条1項前段に基づく損害賠償として3100万8696円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である平成27年1月14日から支払済みまで民法所定の年5分 の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,また,⑵被告市に対し,国賠法1条1項に基づく損害賠償として1033万6232円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である同年2月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 被告Eの責任 ⑴ 責任原因ア上記⑺によれば,被告Eは,①平成26年9月20日,電話で,本件事件の内容等について問い合わせてきた,Jの利用保護者であるLに対し,(本件事件当日の原告らの行動について)「本当は関東圏のご旅行に行かれていたんですよ。ここだけ 平成26年9月20日,電話で,本件事件の内容等について問い合わせてきた,Jの利用保護者であるLに対し,(本件事件当日の原告らの行動について)「本当は関東圏のご旅行に行かれていたんですよ。ここだけの話,先週にも5日間,海 外旅行に行っていたんですよ。」「今回の亡くなられた三日間の保育の時もご旅行に行かれてて,前の週も海外の旅行に五日間も行っていたので,だからスタッフの間でも言っちゃいけないんですけど,ネグレクトだと思っていたんですけどね。」などと虚偽の説明をしただけでなく,②同年10月頃にも,電話で,本件事件はどうなっているの かを尋ねるLに対し,(原告Bについて)「いやもう大変でヒステリ ーな方なんですよ」と人格非難めいた発言をしたほか,③同年11月5日には,Jの利用保護者であるNらに対し,「非常に迷惑,みんな言ってる,とんでもないって,相手のやましさ,自分のことしか考えない,警察,行政,マスコミを使って」と述べ原告らの人格を批判する発言をしたことが認められ,これらの認定を左右するに足りる証拠 はない。 上記認定によれば,被告Eの上記各発言は,本件事件の発生(Cの死)が,自らが運営する託児施設の保育の在り方等に原因があるのではなく,保護者である原告らがCに対する養育監護を怠ったこと,すなわち原告らのCに対するネグレクトに原因があり,その死因も熱中 症によるものではないことを装うとともに,暗に原告らが人格的に相当問題のある人物であるかのような発言を行って,自らや被告会社Dに対する批判の矛先を原告らに向けさせることを狙いとしたものであって,その内容等からして,原告らの社会的評価を同程度に低下させるものであることは明らかである。 イそして,被告Eの上記各発言内容は,本件事件の内容とり せることを狙いとしたものであって,その内容等からして,原告らの社会的評価を同程度に低下させるものであることは明らかである。 イそして,被告Eの上記各発言内容は,本件事件の内容とりわけ発生原因に関わるものであって,いずれもJの利用者にとっては極めて関心の高い事柄である上,Jの利用保護者は警察やマスコミから事情聴取を受けていたこと(甲A36,37)などを合わせ考慮すると,そのような発言を,本件事件に関心を抱きJの保育状況等に不安を抱く 利用保護者に対して行った場合,託児室Jの利用保護者間はもとより,それ以外の者にも伝播する可能性があったものというべきである。 ウ以上によれば,被告Eの上記発言は,原告らの名誉を棄損するだけでなく,伝播性,公然性も有していることになるから,原告らに対し,民法709条の不法行為を構成するものというべきである。 損害について ア慰謝料について被告Eの上記各発言(名誉毀損行為)の内容,伝播性等を考慮すると,原告らは,被告Eの上記一連の名誉毀損行為によって相当の精神的苦痛を受けたものというべきであるから,これに伴う原告らの慰謝料の額は,いずれも50万円が相当である。 イ弁護士費用について被告Eの上記不法行為と相当因果関係が認められる弁護士費用の額は,原告らにつきそれぞれ5万円が相当である。 結論 以上によれば,被告Eに対し,不法行為に基 づく損害賠償として,それぞれ55万円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日(平成27年1月14日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 第4 結語以上のとおり,本件各請求は,原告らが,それぞれ,連帯して,⑴① 日の翌日(平成27年1月14日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 第4 結語以上のとおり,本件各請求は,原告らが,それぞれ,連帯して,⑴①被 告会社D及びEに対し,民法709条,715条1項,719条1項前段にの支払(被告会社D及びEは連帯支払の義務を負う。)を,また,②被告市に対し,国賠法1条1項に基づく前記記載の損害賠償金等の支払(被告市は認容額の限度で被告会社D及びEと連帯支払の義務を負う。)を求める限度で理由があり,さらに,⑵被告 E支払を求める限度で理由があるから,これらを認容し,被告H,被告I,被告F及び被告Gに対する各請求並びに被告会社D,被告E及び被告市に対するその余の請求はいずれも理由がないから棄却し,主文1項⑵及び同2項⑵については,事案にかんがみ相当でないから仮執行宣言を付さないこととして,主文のとお り判決する。 宇都宮地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官伊良原恵吾 裁判官南部潤一郎 裁判官平古場郁弥は退官につき署名押印することができない。 裁判長裁判官伊良原恵吾 別紙「関連法令の定め(抜粋)」 1 児童福祉法(平成26年法律第47号による改正前のもの) 35条ア第1項国は,政令の定めるところにより,児童福祉施設(助産施設,母子生活支 援施設,保育所及び幼保連携型認定こども園を除く。)を設置するものとする。 イ第2項都道府県は,政令の定めるところにより,児童福祉施設(幼保連携型認定こ 助産施設,母子生活支 援施設,保育所及び幼保連携型認定こども園を除く。)を設置するものとする。 イ第2項都道府県は,政令の定めるところにより,児童福祉施設(幼保連携型認定こども園を除く。以下この条,第45条,第46条,第49条,第50条第c号,第51条第7号,第56条の2,第57条及び第58条において同じ。) を設置しなければならない。 ウ第3項市町村は,厚生労働省令の定めるところにより,あらかじめ,厚生労働省令で定める事項を都道府県知事に届け出て,児童福祉施設を設置することができる。 エ第4項国,都道府県及び市町村以外の者は,厚生労働省令の定めるところにより,都道府県知事の認可を得て,児童福祉施設を設置することができる。 59条ア第1項 都道府県知事は,児童の福祉のため必要があると認めるときは,第6条の3第9項から第12項まで若しくは第36条から第44条まで(第39条の2を除く。)に規定する業務を目的とする施設であつて第35条第3項の届出若しくは認定こども園法第16条の届出をしていないもの又は第34条の15第2項若しくは第35条第4項の認可若しくは認定こども園法第17条第 1項の認可を受けていないもの(前条の規定により児童福祉施設若しくは家 庭的保育事業等の認可を取り消されたもの又は認定こども園法第22条第1項の規定により幼保連携型認定こども園の認可を取り消されたものを含む。)については,その施設の設置者若しくは管理者に対し,必要と認める事項の報告を求め,又は当該職員をして,その事務所若しくは施設に立ち入り,その施設の設備若しくは運営について必要な調査若しくは質問をさせることが できる。この場合においては,その身分を証明する 事項の報告を求め,又は当該職員をして,その事務所若しくは施設に立ち入り,その施設の設備若しくは運営について必要な調査若しくは質問をさせることが できる。この場合においては,その身分を証明する証票を携帯させなければならない。 イ第2項第18条の16第3項の規定は,前項の場合について準用する。 ウ第3項 都道府県知事は,児童の福祉のため必要があると認めるときは,第1項に規定する施設の設置者に対し,その施設の設備又は運営の改善その他の勧告をすることができる。 エ第4項都道府県知事は,前項の勧告を受けた施設の設置者がその勧告に従わなか ったときは,その旨を公表することができる。 オ第5項都道府県知事は,第1項に規定する施設について,児童の福祉のため必要があると認めるときは,都道府県児童福祉審議会の意見を聴き,その事業の停止又は施設の閉鎖を命ずることができる。 カ第6項都道府県知事は,児童の生命又は身体の安全を確保するため緊急を要する場合で,あらかじめ都道府県児童福祉審議会の意見を聴くいとまがないときは,当該手続を経ないで前項の命令をすることができる。 キ第7項 都道府県知事は,第3項の勧告又は第5項の命令をした場合には,その旨 を当該施設の所在地の市町村長に通知するものとする。 59条の2第6条の3第9項から第12項までに規定する業務又は第39条第1項に規定する業務を目的とする施設(少数の乳児又は幼児を対象とするものその他の厚生労働省令で定めるものを除く。)であつて第34条の15第2項若しくは第 35条第4項の認可又は認定こども園法第17条第1項の認可を受けていないもの(第58条の規定により児童福 るものその他の厚生労働省令で定めるものを除く。)であつて第34条の15第2項若しくは第 35条第4項の認可又は認定こども園法第17条第1項の認可を受けていないもの(第58条の規定により児童福祉施設若しくは家庭的保育事業等の認可を取り消されたもの又は認定こども園法第22条第1項の規定により幼保連携型認定こども園の認可を取り消されたものを含む。)については,その施設の設置者は,その事業の開始の日(第58条の規定により児童福祉施設若しくは家庭 的保育事業等の認可を取り消された施設又は認定こども園法第22条第1項の規定により幼保連携型認定こども園の認可を取り消された施設にあっては,当該認可の取消しの日)から一月以内に,次に掲げる事項を都道府県知事に届け出なければならない。 ① 施設の名称及び所在地 ② 設置者の氏名及び住所又は名称及び所在地③ 建物その他の設備の規模及び構造④ 事業を開始した年月日⑤ 施設の管理者の氏名及び住所⑥ その他厚生労働省令で定める事項 59条の2の5ア第1項第59条の2第1項に規定する施設の設置者は,毎年,厚生労働省令で定めるところにより,当該施設の運営の状況を都道府県知事に報告しなければならない。 イ第2項 都道府県知事は,毎年,前項の報告に係る施設の運営の状況その他第59条の2第1項に規定する施設に関し児童の福祉のため必要と認める事項を取りまとめ,これを各施設の所在地の市町村長に通知するとともに,公表するものとする。 59条の4 ア第1項この法律中都道府県が処理することとされている事務で政令で定めるものは,指定都市及び中核市並びに児童相談所を設置する市(特別区を含む。以 する。 59条の4 ア第1項この法律中都道府県が処理することとされている事務で政令で定めるものは,指定都市及び中核市並びに児童相談所を設置する市(特別区を含む。以下この項において同じ。)として政令で定める市(以下「児童相談所設置市」という。)においては,政令で定めるところにより,指定都市若しくは中核市 又は児童相談所設置市(以下「指定都市等」という。)が処理するものとする。 この場合においては,この法律中都道府県に関する規定は,指定都市等に関する規定として指定都市等に適用があるものとする。 イ第2項前項の規定により指定都市等の長がした処分(地方自治法第2条第9項第 1号に規定する第一号法定受託事務(次項及び第59条の6において「第一号法定受託事務」という。)に係るものに限る。)に係る審査請求についての都道府県知事の裁決に不服がある者は,厚生労働大臣に対して再審査請求をすることができる。 ウ第3項 指定都市等の長が第1項の規定によりその処理することとされた事務のうち第一号法定受託事務に係る処分をする権限をその補助機関である職員又はその管理に属する行政機関の長に委任した場合において,委任を受けた職員又は行政機関の長がその委任に基づいてした処分につき,地方自治法第255条の2第2項の再審査請求の裁決があつたときは,当該裁決に不服がある 者は,同法第252条の17の4第5項から第7項までの規定の例により,厚生労働大臣に対して再々審査請求をすることができる。 エ第4項都道府県知事は,児童相談所設置市の長に対し,当該児童相談所の円滑な運営が確保されるように必要な勧告,助言又は援助をすることができる。 オ第5項この法律に定める エ第4項都道府県知事は,児童相談所設置市の長に対し,当該児童相談所の円滑な運営が確保されるように必要な勧告,助言又は援助をすることができる。 オ第5項この法律に定めるもののほか,児童相談所設置市に関し必要な事項は,政令で定める。 2 「認可外保育施設に対する指導監督の実施について」(雇児発第177号平成13年3月29日・甲A14),「認可外保育施設指導監督の指針」(抜粋)及び 「認可外保育施設設置監督基準」(甲A13・丙9)(抜粋)保育需要の増加や多様化等への対応については,新エンゼルプラン(平成11年12 月19 日大蔵・文部・厚生・労働・建設・自治6 大臣合意)等に基づき,保育施策の拡充に御尽力いただいているところである。 ベビーホテル等の認可外保育施設については,昭和56年の児童福祉法の改正 により,行政庁の報告徴収及び立入調査の権限が規定され,これらに基づき,指導監督に配意願っていたところであるが,今般,より効果的な指導監督を図る観点等から,別紙のとおり「認可外保育施設指導監督の指針」及び「指導監督基準」を策定したので,より適切な指導監督が図れるようお願いする。 ・・・・・・・・・・・・・・・・略・・・・・・・・・・・・・・・・・ おって,この通知は,地方自治法(昭和22 年法律第67 号)第245号の4第1項に規定する技術的な助言に当たるものである。 「認可外保育施設指導監督の指針」(甲A14)(抜粋)ア (第1)総則 目的及び趣旨 この指針は,児童福祉法等に基づき,認可外保育施設について,適正な保育内容及び保育環境が確保されているか否かを確認し,改善指導,改善勧告,公表,事業停止命令,施設閉鎖命令等 この指針は,児童福祉法等に基づき,認可外保育施設について,適正な保育内容及び保育環境が確保されているか否かを確認し,改善指導,改善勧告,公表,事業停止命令,施設閉鎖命令等を行う際の手順,留意点等を定めるものであること。 この指針の対象となる施設 この指針の対象となる施設は,児童福祉法第39条[保育所の定義]に規定する業務を目的とする施設であって第35条第4項の規定により都道府県知事,政令指定都市市長又は中核市市長の認可を受けていないものをいい,第58条の規定により都道府県知事,政令指定都市市長又は中核市市長の認可を取り消された施設を含むものであり,第59条の2により届 出が義務づけられている施設に限られるものでないこと。 (児童福祉法第59条第1項参照) 指導監督の事項及び方法a 指導監督の事項指導監督は,指導監督基準に基づき,児童の処遇等の保育内容,保育 従事者数,施設設備等について,行うものであること。ただし,1日に保育する乳幼児が5人以下である小規模な施設であって,都道府県知事,政令指定都市市長又は中核市市長が必要と認めた場合は,指導監督基準の一部を適用しないことができること。 b 指導監督の方法(括弧書きは当裁判所が付記したもの) 指導監督は,第2(通常の指導監督)から第6(情報提供)までに定めるところに従って,行うものであること。 認可外保育施設の把握省略イ (第2)通常の指導監督 通則 通常の指導監督は,報告徴収及び立入調査により行うこと。指導監督に当たっては,児童福祉法に基づく指導監督の趣旨及び内容等を明らかにし, 常の指導監督 通則 通常の指導監督は,報告徴収及び立入調査により行うこと。指導監督に当たっては,児童福祉法に基づく指導監督の趣旨及び内容等を明らかにし,関係者の理解及び協力が得られるよう努めることを旨とするが,保育内容,保育環境等に問題があると認められる又は推定されるにもかかわらず,関係者の理解,協力等が得られない場合には,児童福祉法に基づき厳正に対 処すること。 報告徴収a 運営状況報告の対象全ての認可外保育施設の設置者又は管理者に対して,運営状況の報告を,年1回以上,文書により,回答期限を付して求めること。その際, 次のような場合にも報告するよう併せて指示すること。 ①事故等が生じた場合の報告(臨時の報告)②長期滞在児がいる場合の報告(長期滞在児の報告)③届出事項に変更が生じた場合の報告④事業を廃止し,又は休止した場合の報告 b 運営状況報告がない場合の取扱い上記aによる報告がない場合については,文書により期限を付して求めること。 c 特別の報告徴収の対象当初の届出事項からの変更が認められる場合,運営状況報告の内容に 疑義がある場合,臨時の報告又は長期滞在児の報告はないがその事実が判明又は強く疑われる場合,利用者から苦情や相談又は事故に関する情報等が行政庁に寄せられている場合等で,児童の処遇上の観点から施設に問題があると考えられる場合には,随時,特別に報告を求めること。 慮すること。 立入調査a 立入調査の対象① 通常の立入調査の対象届出対象施設につい 報告を求めること。 慮すること。 立入調査a 立入調査の対象① 通常の立入調査の対象届出対象施設については,年1回以上行うことを原則とすること。 届出対象外施設についても,できる限り立入調査を行うよう努力する こととし,定期的な立入調査の実施が難しい場合は,市町村の協力を得て,当該施設に訪問するなどして状況を確認すること。 ② 特別立入調査の対象重大な事故が発生した場合又は利用者から苦情や相談が寄せられている場合等で,児童の処遇上の観点から施設に問題があると認められ る場合には,届出対象施設であるか否かにかかわらず,随時,特別に立入調査を実施すること。 ③ 事務所への立入調査認可外保育施設への立入調査だけでは,運営状況等が十分に把握できない場合は,当該施設の設置者等の事務所に対して立入調査を実施 し,必要な報告徴収をすること。(児童福祉法第59条第1項参照)(留意事項16)立入調査については,認可外保育施設への立ち入り及び施設長や保育従事者への聴取を基本とするが,施設側に施設の運営状況等をは把握するうえで必要な報告や書類の提出を求めてもこれがなされない場合や管理者等が質問に対して明確な応答 ができない場合においては事務所への立入調査や報告徴収を検討すること。 b 立入調査の手順① 実施計画の策定立入調査の実施計画は,届出対象施設であるか否かにかかわらず,問題を有すると考えられる施設について重点的に指導ができるように 配慮して策定すること。また,策定に当たっては,必要に応じて,消 実施計画は,届出対象施設であるか否かにかかわらず,問題を有すると考えられる施設について重点的に指導ができるように 配慮して策定すること。また,策定に当たっては,必要に応じて,消 防部局,衛生部局等と施設リストや既実施の立入調査結果の情報交換を行う等の連携を図ることが望ましいこと。 (留意事項17)行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律」第9 条第2 項においては,他の部局や他の行政機関に対し,業務の遂行に必要な限度にお いて,処理情報を保有目的以外の目的のために利用し又は提供することが認められており,この趣旨を踏まえれば,法人情報についても所掌事務の遂行に必要な限度で,他の部局や他の行政機関との間で,認可外保育施設に関する行政情報を交換することは差し支えないと考えられること。 (留意事項18) 以下のいずれかに該当する施設は,「問題を有すると考えられる施設」に該当すると考えられること・著しく保育従事者数が少ないもの,又は著しく有資格者数が少ないもの ・著しく施設が狭隘なもの ・連続して改善指導を行っているにもかかわらず改善されないもの ・著しく低料金又は利用者から苦情や相談が寄せられており不適切な処遇が窺われ るもの ・管理者や保育従事者が都道府県等が開催する研修会等へ参加していないもの ・通常の報告の徴収の指示に対して回答がないもの又は報告内容が空疎なもの ・事実発生に関わらず,臨時の報告又は長期滞在児の報告を怠っているもの ・設置後の届出義務,設置者の氏名等の掲示義務,利用者に対する書面交付義務等 法令に定める義務の履行を怠っているもの,が例示されている。 ② 立入調査の指導監督班 の ・設置後の届出義務,設置者の氏名等の掲示義務,利用者に対する書面交付義務等 法令に定める義務の履行を怠っているもの,が例示されている。 ② 立入調査の指導監督班の編成等 立入調査の指導監督班は,関係法令等に係る十分な知識と経験を有する者2名以上で編成すること。ただし,やむを得ない場合は,知識と経験を有する者を含む2名以上で編成すること。 また,児童の処遇面で問題を有すると考えられる場合は,保育士,児童福祉司,心理判定員,児童指導員,保健師,看護師,医師等の専 門的知識を有する者を加えること。 立会調査により指導監督を行う職員は,身分を証明する証票を携帯すること。また,この証票は,緊急の立入調査等を備え,あらかじめ交付しておくこと。(児童福祉法第59条第1項参照)③ 市区町村との連携 略④ 関係部局との連携防災上,衛生上の問題等があると考えられる施設については,消防部局,衛生部局等と連携して指導を行うこと。 ⑤ 新規把握施設への対応 略⑥ 事前通告立入調査に当たっては,当該施設における帳票等の準備のために,設置者又は管理者に対し,期日を事前通告することを通例とするが,特別立入調査が必要な場合等には,事前通告せずに実施することが適 当であること。 【留意事項】問題を有すると考えられる施設に対する取扱い留意事項18に掲げる「問題を有すると考えられる施設」については,通常の立入調査を実施する場合であっても,事前通告せずに実施することや,事前通告期間を短くするなどの工夫が必要である 留意事項18に掲げる「問題を有すると考えられる施設」については,通常の立入調査を実施する場合であっても,事前通告せずに実施することや,事前通告期間を短くするなどの工夫が必要であること。 ⑦ 保育従事者及び保護者からの聴取等 立入調査における調査,質問等は,設置者又は管理者に対して行うことを通例とするが,必要に応じて,保育従事者からも事情を聴取すること。施設内での虐待や虚偽報告が疑われる場合等は,利用児童の保護者等から事情を聴取すること。また,施設内での虐待が疑われる場合は,利用児童の様子を確認すること。 ⑧ 口頭の助言,指導等改善指導は文書で行うことを原則としているが,これに先立ち立入調査の際においても,必要と認められる助言,指導等を口頭により行うこと。 ⑨ 指導監督結果の検討 立入調査により行った指導監督の結果については,指導監督担当職員の所見や現地における状況等に基づき,施設の問題点を明らかにした上で,これに対する措置を具体的に決定し,速やかに問題点の解消に努めるよう必要な措置を講じること。具体的には,第3(問題を有すると認められる場合の指導監督)から第5(緊急時の対応)までに 規定するところによること。 ウ (第3)問題を有すると認められる場合の指導監督 通則立入調査の結果,指導監督基準等に照らして改善を求める必要があると認められる場合は,改善指導,改善勧告,公表,事業停止命令又は施設閉 鎖命令の措置を通じて改善を図ること。 改善指導a 改善指導の対象立入調査の結果,指導監督基準に照らして,改善を求める必要があると認 停止命令又は施設閉 鎖命令の措置を通じて改善を図ること。 改善指導a 改善指導の対象立入調査の結果,指導監督基準に照らして,改善を求める必要があると認められる認可外保育施設については,文書により改善指導を行うこ と。 b 改善指導の手順① 改善指導の内容立入調査実施後概ね1か月以内に,改善されなければ児童福祉法第59条第3項に基づく改善勧告及び同法第59条第4項に基づく公表等の対象となり得ることを示した上で,改善すべき事項を文書により 通知すること。 この場合,概ね1か月以内の回答期限を付して,文書により報告を求めること。また,改善に時間を要する事項については,概ね1か月以内に改善計画の提出を求めること。 ② 改善指導結果の確認 改善指導に係る回答又は提出があった場合は,その改善状況を確認するため,必要に応じ,設置者又は管理者に対する出頭要請や施設又は事務所に対する特別立入調査を行うこと。回答期限又は提出期限が経過しても報告又は提出がない場合についても,同様であること。 改善勧告 a 改善勧告の対象改善指導を繰り返し行っているにもかかわらず改善されず,改善の見通しがない場合には,改善指導に止めずに,児童福祉法第59条第3項に基づく改善勧告を行うこと。 b 改善勧告の手順 ① 改善勧告の内容文書による改善指導における報告期限後(改善指導を経ずに改善勧告を行う場合にあっては立入調査実施後)概ね1か月以内に,改善されなければ,公表,事業停止命令又は施設閉鎖命令の対象となり得ることを明示した上,改善勧告を文書により通知するこ 改善指導を経ずに改善勧告を行う場合にあっては立入調査実施後)概ね1か月以内に,改善されなければ,公表,事業停止命令又は施設閉鎖命令の対象となり得ることを明示した上,改善勧告を文書により通知すること。 この場合,概ね1か月以内の回答期限を付して文書で報告を求めること。なお,建物の構造等から速やかな改善が不可能と認められる場合は,移転に要する期間を考慮して適切な期限(この期限は,3 年以内とすること)を付して移転を勧告すること。 ② 関係機関との調整 ③ 確認改善勧告を受けた設置者又は管理者から,当該改善勧告に対する報告があった場合は,その改善状況等を確認するため,速やかに特別立入調査を行うこと。回答期限が経過しても報告がない場合についても,同様であること。 また,必要に応じて改善勧告に対する回答の期限内においても,当該施設の状況の確認に努めること。 c 利用者に対する周知及び公表① 利用者に対する周知改善勧告にもかかわらず改善が行われていない場合には,当該施設 の利用者に対し,改善勧告の内容及び改善が行われていない状況について個別通知等により周知し,当該施設の利用を控える等の勧奨を行うとともに,利用児童に対する福祉の措置等を講ずる必要があること。 ② 公表改善勧告にもかかわらず改善が行われていない場合には,改善勧告 の内容及び改善が行われていない状況について報道機関等を通じて公表すること。また,地元市区町村に対し,その内容を通知するとともに,公表するよう要請すること。(児童福祉法第59条第4項及び第7項参照)エ (第4)事業停止命令又は施設閉鎖命令 業務停止命令又は 区町村に対し,その内容を通知するとともに,公表するよう要請すること。(児童福祉法第59条第4項及び第7項参照)エ (第4)事業停止命令又は施設閉鎖命令 業務停止命令又は施設閉鎖命令の対象 改善勧告を行ったにもかかわらず改善が行われていない場合であって,かつ,改善の見通しがなく児童福祉に著しく有害であると認められるとき,又は,改善指導,改善勧告を行う時間的余裕がなく,かつ,これを放置することが児童福祉に著しく有害であると認められるときは,弁明の機会を付与し,児童福祉審議会の意見を聴き,事業停止又は施設閉鎖を命ずるこ と。(児童福祉法第59条第5項参照) 事業停止命令又は施設閉鎖命令の手順①関係機関との調整②弁明の機会の付与③児童福祉審議会からの意見聴取 ④業務停止命令又は施設閉鎖命令の発令 公表事業停止又は施設閉鎖命令を行った場合は,その名称,所在地,設置者及び管理者名,処分の内容等について報道機関等を通じて公表すること。 また,地元市区町村に対し通知するとともに,その内容を公表するよう要 請すること。(児童福祉法第59条第7項参照)オ (第5)緊急時の対応 緊急時の手順児童の福祉を確保すべき緊急の必要があるときは,第3(ウ問題を有すると認められる場合の指導監督)及び第4(エ事業停止命令又は施設 閉鎖命令)までの手順によらず,文書による改善指導を経ずに改善勧告を行う,改善指導・改善勧告を経ずに事業停止命令若しくは施設閉鎖命令の措置を行うなど,児童の安全の確保を第一に考え,迅速な対応を行うこと。 緊急時の改善勧告児童の福祉を確保す 行う,改善指導・改善勧告を経ずに事業停止命令若しくは施設閉鎖命令の措置を行うなど,児童の安全の確保を第一に考え,迅速な対応を行うこと。 緊急時の改善勧告児童の福祉を確保するため,次の場合は,改善指導を経ることなく,改 善勧告を行うこと。 ① 著しく不適正な保育内容や保育環境である場合② 著しく利用児童の安全性に問題がある場合③ その他児童の福祉のため特に必要があると認められる場合 緊急時の業務停止命令又は施設閉鎖命令児童の生命又は身体の安全を確保するために緊急を要する場合で,あら かじめ都道府県児童福祉審議会の意見を聴くいとまがないときは,当該手続きを経ないで,事業停止又は施設閉鎖を命じることができるものであること。この場合,弁明の機会の付与は事後的に行う必要はなく,また,児童福祉審議会に対しては事後速やかに報告すれば足りること。 (児童福祉法第59条第6項参照) カ (第6)情報提供 市区町村などに対する情報提供市区町村及び消防部局や衛生部局等との連携により指導監督に当たる必要があるため,法令に定める市区町村への通知事項以外にも,報告徴収及び立入調査等の状況や改善指導を行った後の当該施設の状況等については, 適宜,市区町村等に情報の提供を行うこと。 一般への情報提供地域住民に対して,認可外保育施設を担当する窓口について周知するとともに,認可外保育施設の状況についての情報を提供すること。管内市区町村に対しても,同様に地域住民への情報提供を求めること。 ⑵ 「認可外保育施設設設置監督基準」(甲A13・丙9)(抜粋)「認可外保育施設設置監督基準」における保育内容及び給食に係 村に対しても,同様に地域住民への情報提供を求めること。 ⑵ 「認可外保育施設設設置監督基準」(甲A13・丙9)(抜粋)「認可外保育施設設置監督基準」における保育内容及び給食に係る定めの要旨は,以下のとおりであるア保育に従事する者の数及び資格 保育に従事する者の数は,主たる開所時間である11時間(施設の開所 時間が11時間を下回る場合にあっては,当該時間)については,概ね児 童福祉施設最低基準(以下「最低基準」という。)第33条第2項に定めた数以上であること。ただし,2人を下回ってはならないこと。また,11時間を超える時間帯については,現に保育されている児童が1人である場合を除き,常時2人以上配置すること 児童福祉施設最低基準第33条第2項に規定する数 乳児3人につき保育に従事する者1人1,2歳児―幼児6人につき保育に従事する者1人3歳児―幼児20人につき保育に従事する者1人4歳以上児―幼児30人につき保育に従事する者1人イ保育内容 保育内容a 児童一人一人の心身の発育や発達の状況を把握し,保育内容を工夫することb 乳幼児の安全で清潔な環境や健康的な生活リズム(遊び,運動,睡眠等)に十分配慮がなされた保育の計画を定めること。 c 児童の生活リズムに沿ったカリキュラムを設定するだけでなく,実行することが必要であること。 d 漫然と児童にテレビやビデオを見せ続けるなど,児童への関わりが少ない「放任的」な保育になっていないこと。 e 必要な遊具,保育用品等を備えること。 保育従事者の保育姿勢a 児童の最善の利益を考 けるなど,児童への関わりが少ない「放任的」な保育になっていないこと。 e 必要な遊具,保育用品等を備えること。 保育従事者の保育姿勢a 児童の最善の利益を考慮し,保育サービスを実施する者として適切な姿勢であること。特に,施設の運営管理の任にあたる施設長については,その職責に鑑み,脂質の向上,適格性の確保が求められること。 b 保育所保育指針を理解する機会を設ける等,保育従事者の人間性及び 専門性の向上に努めること。 c 児童に身体的苦痛を与えたり人格を辱めることがない等,児童の人権に十分配慮すること。 d 児童の身体及び保育中の様子並びに家族の態度等から虐待等不適切な養育が疑われる場合は児童相談所等の専門的期間と連携する等の体制をとること。 保護者との連絡等a 保護者との密接な連絡を取り,その意向を考慮した保育を行うこと。 b 保護者との緊急時の連絡体制をとること。 c 保護者や利用希望者等から児童の保育の様子や施設の状況を確認する要望があった場合には,児童の安全確保等に配慮しつつ,保育室などの 見学が行えるように適切に対応すること。 ウ給食 衛生管理の状況調理室,調理,配膳,食器等の衛生管理を適切に行うこと。 食事内容等の状況 a 児童の年齢や発達,健康状態(アレルギー疾患等を含む)等に配慮した食事内容とすること。 b 調理は,あらかじめ作成した献立に沿って行うこと。 エ健康管理・安全確保児童の健康状態の観察 登園,降園の際,体温,排便,食事,睡眠,表情,皮膚の異常の有無や機嫌等についての健康状態の観察 作成した献立に沿って行うこと。 エ健康管理・安全確保児童の健康状態の観察 登園,降園の際,体温,排便,食事,睡眠,表情,皮膚の異常の有無や機嫌等についての健康状態の観察を行うとともに,保護者から児童の状態の報告を受けること(適切に記載された連絡帳を活用することも考えられる。)が必要であること。 3 宇都宮市認可外保育施設指導監督実施要領の定め(丙5) ⑴ 第1条 この要領は,認可外保育施設に対し,指導監督を実施することにより,適正な保育内容及び保育環境の確保に寄与することを目的とする。 ⑵ 第2条指導監督の対象は,法39条項に規定する業務を目的として宇都宮市内に設置されている施設であって,同法第35条第4項の認可を受けていないものと する。 ⑶ 第3条指導監督は,法,その他の関連法令及び「認可外保育施設に対する指導監督の実施について」(甲A14)並び「認可外保育施設指導監督基準を満たす旨の証明書の交付について」に基づき実施する。 第4条認可外保育施設の設置者に対しては,原則として年1回,運営状況の報告等を求めるものとする。 第5条ア立入調査の実施においては,指導監督通知(甲A14)で定めた認可外保 育施設指導監督基準に適しているかを調査する。 イ法59条の2に定める施設の立入調査については,原則として年1回実施し,他の施設については実施に努めることとする。 ウ特に,児童の処遇上の観点から問題があると認められる場合には,随時,必要と認める報告を求め,立入調査を実施する。 れる場合には,随時,必要と認める報告を求め,立入調査を実施する。
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