平成17(行コ)36等 福岡県違法公金支出返還請求控訴事件,同付帯控訴事件(原審・福岡地方裁判所平成15年(行ウ)第12号)

裁判年月日・裁判所
平成20年3月24日 福岡高等裁判所 住民訴訟
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判決文本文45,204 文字)

主文 本件控訴を棄却する。 附帯控訴に基づいて,原判決主文第4項を次のとおり変更する。 (1)控訴人は,A,B,C,D及びEに対し,福岡県に対する損害賠償として,連帯して21万5038円及びこれに対する平成15年6月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。 (2)被控訴人らのその余の請求を棄却する。 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを3分し,その1を控訴人の,その余を被控訴人らの各負担とする。 事実 及び理由第1本件控訴及び附帯控訴の趣旨 控訴(1)原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 (2)本件訴えを却下する。 (3)被控訴人らの請求を棄却する。 (4)訴訟費用は第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 附帯控訴(1)原判決主文第4項を次のとおり変更する。 (2)主文2の(1)と同旨(3)訴訟費用は第1,2審とも控訴人の負担とする。 第2事案の概要等(以下,略称は原判決の表記による。) 事案の概要本件は,B教諭が,平成12年度(各年度は4月1日から翌年3月31日までをいう。)から平成14年度まで毎年度,福岡県立F高等学校(略称は「F」)に配置され(略称は「本件配置」。これは,定数に従って各学校に教 諭を配当した後,追加配当(枠外配当ともいう。)としてB教諭がFに配当されたことをいう。),平成12年4月から同年12月までの間は出張命令(略称は「本件出張命令」),平成15年1月以降は職務専念義務免除の承認(略称は「本件職免」)といった各手続をとった上で(この間の平成14年3月20日から平成15年3月19日までが本件訴訟の対象となる期間である。),福岡県同和教育研究協議会(平成14年度からは福岡県・同和教育研究協議会に改称。略称は「県同教」),福岡県高等学校 14年3月20日から平成15年3月19日までが本件訴訟の対象となる期間である。),福岡県同和教育研究協議会(平成14年度からは福岡県・同和教育研究協議会に改称。略称は「県同教」),福岡県高等学校同和教育研究協議会(平成14年度からは福岡県高等学校人権・同和教育研究協議会に改称。略称は「高同教」)及び全国同和教育研究協議会(略称は「全同教」。以上の3団体を一括した略称は「本件各団体」)に派遣されたことにつき,福岡県の住民である被控訴人ら(当初は62名であったが,当審で2名が訴えを取り下げた。)が,本件配置,本件出張命令及び本件職免(以上の3手続を一括した略称は「本件各手続」)によって本件各団体に派遣されたB教諭への給与及び旅費の支出は違法であると主張して,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,県知事である控訴人において,以下の「怠る事実に係る相手方」(主位的請求)及び「当該職員」(予備的請求)に対して損害賠償請求又は不当利得返還請求をすることを求めた事件である。 (1)主位的請求ア本件配置に関与した者として,福岡県教育委員会(略称は「県教委」)委員長G,県教委委員H,同I,同J及び同K,県教委教育長L,県教委事務局職員C,同M,同N,同O,同E及び同D,並びに本件出張命令及び本件職免に関与した者として,FのA校長に対し,福岡県に対する損害賠償として,連帯して895万1903円(給与及び旅費相当額)及びこれに対する本訴状送達日の翌日である平成15年6月25日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金を支払うよう請求することを求めた。 イ本件各手続に関与した者として,B教諭に対し,福岡県に対する損害賠償又は不当利得として,895万1903円(給与及び旅費相当額)及びこれに対する本訴状送達日の翌日である平成15年 求めた。 イ本件各手続に関与した者として,B教諭に対し,福岡県に対する損害賠償又は不当利得として,895万1903円(給与及び旅費相当額)及びこれに対する本訴状送達日の翌日である平成15年6月25日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金を支払うよう請求することを求めた。 (2)予備的請求本件出張の旅費の支出負担行為及び支出命令を行った者として,A校長に対して,福岡県に対する損害賠償として,16万2120円(旅費相当額)及びこれに対する本訴状送達日の翌日である平成15年6月25日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金を支払うよう請求することを求めた。 原審の判断とこれに対する不服申立て(1)原審の判断ア本案前の判断被控訴人番号55ないし60(原審のいう「被控訴人Pら」)の本件訴えのうち平成14年3月20日から同年8月19日までの期間に係る部分は提訴期間の徒過のため不適法であるとして却下したが,控訴人が監査請求前置の点で不適法と主張していた,被控訴人らの本件訴えのうち主位的請求に係る部分は適法であると判断した。 イ本案の判断(ア)本件出張命令を違法とした上,①これに関与したA校長及びB教諭に不法行為に基づく損害賠償義務があると判断した。 (イ)本件配置を違法とした上,②平成13年度の本件配置に関与した県教委事務局職員C(平成12年度の同和教育課長),同O(教育企画部長)及び同M(教職員課長),③平成14年度の本件配置に関与した県教委事務局職員C(平成13年度の教職員課長),同E(同和教育課 長)及び同D(教育企画部長)に不法行為に基づく損害賠償義務があると判断した(ただし,この損害賠償義務は本件職免前の平成14年12月までの分)。 (ウ)他方,本件配置に県教委事務局職員の教育 長)及び同D(教育企画部長)に不法行為に基づく損害賠償義務があると判断した(ただし,この損害賠償義務は本件職免前の平成14年12月までの分)。 (ウ)他方,本件配置に県教委事務局職員の教育振興部長(平成11年度はO,平成12年度はN,平成13年度はM),県教委委員長G,県教委委員H,同I,同J及び同K,県教委教育長L,B教諭は関与しなかったとし,平成13年度の本件配置にE及びDは関与しなかったとし,平成14年度の本件配置にO及びMは関与しなかったとし,また,平成12年度の本件配置(これに関与した者はL(平成11年度の教育企画部長),M(教職員課長)及びN(同和教育課長))と平成13年度以降の給与及び旅費支出との間の因果関係を否定して,これらの損害賠償義務を否定した。また,本件配置と本件職免期間の給与支出との間の因果関係を否定し,本件職免そのものについては,仮にこれが違法であるとしても,A校長とB教諭に過失は認められないとして,その損害賠償義務を否定した。 (エ)その上で,福岡県の損害額を実際の出張期間に相当する給与額と旅費額に限定し,上記(イ)②の損害額を14万2098円(給与12万3418円,旅費1万8680円),上記(イ)③の損害額を297万6229円(給与284万2489円,旅費13万3740円)と算定し(上記(ア)①の賠償額は(イ)②と(イ)③を合算した額),その限度で(遅延損害金を含む。)被控訴人らの請求を認容した。 (オ)そして,上記(エ)の認容額を超える,B教諭の不当利得返還義務及びA校長に対する予備的請求に係る損害賠償義務を否定した。 (2)不服申立てア控訴人は,原審が認容した部分を不服として控訴し,本案前の答弁として,本件訴えのうち主位的請求に係る部分を監査請求前置の点で不適法で あると主張して 害賠償義務を否定した。 (2)不服申立てア控訴人は,原審が認容した部分を不服として控訴し,本案前の答弁として,本件訴えのうち主位的請求に係る部分を監査請求前置の点で不適法で あると主張して却下を求め,本案の答弁として,認容部分の棄却を求めた。 イこれに対し,被控訴人らは,原審が棄却した本件職免の部分を不服として附帯控訴し,控訴人において,本件職免に関与したA校長及びB教諭,平成14年度の本件配置に関与したC,D及びEに対し,福岡県に対する損害賠償として,本件職免の期間に相当する給与額相当の21万5038円と遅延損害金を連帯して支払うよう請求することを求めた。 ウ以上によると,上記(1)アの却下部分,上記(1)イの(ウ)(ただし,本件職免の部分を除く。),(エ)のうち実際の出張期間に相当する給与額と旅費額を超える部分,(オ)の部分は,当審における審判の対象にはなっていない。 前提となる事実等以下のとおり付加訂正するほか,原判決3頁12行目から同13頁16行目に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1)原判決4頁17行目の「受ける方法であり」の後に「(なお,B教諭は,平成14年12月24日,A校長から,同月18日から平成15年3月31日まで全同教の委員長として全同教の研究活動及び運営業務を統括することを兼業内容とする,兼業の承認を得ている(甲37の9)。)」を,同18行目のかっこ内の「以下」の前に「ただし,B教諭は平成15年中も2月25日だけは出張命令に従う方法をとっている(乙50)。」をそれぞれ加える。 (2)同5頁11行目に続けて「(合計14万2098円)」を,同18行目に続けて「(合計304万9179円)」をそれぞれ加える。 (3)同6頁4行目の「給与時間」を「給与期間」に改め,同13行目の「2000円」の 行目に続けて「(合計14万2098円)」を,同18行目に続けて「(合計304万9179円)」をそれぞれ加える。 (3)同6頁4行目の「給与時間」を「給与期間」に改め,同13行目の「2000円」の後に「,以上合計6万3250円」を加える。 (4)同6頁20行目の「L」から同7頁1行目までを「県教委事務局(教育庁)の職員としては,Lが平成11年度に教育企画部長,平成13年度に教 育次長,平成14年度以降は教育長を務め,Cが平成12年度に同和教育課長,平成13年度以降は教職員課長を務め,Mが平成11年度から平成12年度まで教職員課長,平成13年度は教育振興部長を務め,Nが平成10年度から平成11年度まで同和教育課長,平成12年度に教育振興部長を務め,Oが平成11年度に教育振興部長,平成12年度に教育企画部長を務め,Eが平成13年度以降同和教育課長を務め,Dが平成13年度以降は教育企画部長を務めていた。(乙32の1ないし4,33,弁論の全趣旨)」と改める。 (5)同7頁11行目から同12行目までの「福岡県教育委員会の事務委任等に関する規則」の後に「(乙19)」を,同24行目から同25行目までの「福岡県教育庁組織規則」の後に「(乙8)」をそれぞれ加える。 (6)同8頁5行目から同6行目までの「福岡県教育庁事務分掌規程」の後に「(乙9)」を,同25行目から同末行までの「教育長の権限に属する事務の委任等に関する規程」の後に「(乙42)」をそれぞれ加える。 (7)同9頁1行目から同2行目までの「福岡県教育委員会事務決裁規程」の後に「(乙16)」を加え,同2行目の「同規定14条,」を「同規程14条,」に改め,同19行目から同20行目までのかっこ内の「以下「福岡県給与条例」という。」の前に「乙43。」を加える。 (8)同10頁1行目から同2行目 ,同2行目の「同規定14条,」を「同規程14条,」に改め,同19行目から同20行目までのかっこ内の「以下「福岡県給与条例」という。」の前に「乙43。」を加える。 (8)同10頁1行目から同2行目までのかっこ内の「以下「定数条例」という。」の前に「乙15。」を,同9行目から同10行目までのかっこ内の「以下「定数標準法」という。」の前に「甲41。」をそれぞれ加える。 (9)同11頁15行目の「福岡県職員の給与に関する条例等の施行に関する規則」の後に「(乙44)」を,同16行目から同17行目までのかっこ内の「以下「職免条例」という。」の前に「乙36。」を,同23行目から同24行目までのかっこ内の「以下「職免規則」という。」の前に「乙37。」をそれぞれ加える。 (10)同12頁7行目の「本件で」を「本件の主位的請求で」と改め,同11行目の「福岡県事務決裁規程」の後に「(乙6)」を,同12行目の「福岡県財務規則」の後に「(乙7)」を,同12行目から同13行目までの「福岡県教育庁組織規則」の後に「(乙8)」を,同15行目の「福岡県事務委任規則」の後に「(乙10)」をそれぞれ加える。 争点 (1)本件訴え(主位的請求に係る訴えのうち,当審で審判の対象となっているA校長,B教諭,C,M,O,E及びD(以下,C,M,O,E及びDを一括するときは「Cら5名」という。)を損害賠償義務者とする部分。以下同じ)は第二次監査請求によって監査請求前置の要件を満たすか。 (2)本件訴えに係る行為は住民訴訟の対象となるか。 (3)控訴人は違法に財産の管理を怠っているか。 争点に関する当事者の主張(1)争点(1)(監査請求前置)について(控訴人の主張)本件訴えは,以下のとおり監査請求前置の要件を欠いているから,不適法な訴えとして却下すべきである。 いるか。 争点に関する当事者の主張(1)争点(1)(監査請求前置)について(控訴人の主張)本件訴えは,以下のとおり監査請求前置の要件を欠いているから,不適法な訴えとして却下すべきである。 ア本件訴えは「怠る事実に係る相手方」に対する請求であるが,以下のとおり,これと第二次監査請求とは同一性がない。 (ア)第二次監査請求は,平成15年3月19日受付,同年3月25日受付及び同年4月11日受付の各「福岡県職員措置請求書」(乙51の1ないし3)によってB教諭に関する監査請求が行われ,この書面には,「県知事,県教育委員会各委員,教育長,F高等学校長,B教諭」に対する措置要求の要旨として,「①B教諭が教育公務員としての本務に従事すること,②民間団体での行事運営等のための公務出張を許可しないよう指導すること,③既に支給した給与・出張旅費分については,公金支出の最終権限者 たる県知事及び教育委員会各委員,教育長,同校校長,同教諭らが支出相当額を連帯して県に返還すること」,以上が記載されていたところ,福岡県監査委員は,監査対象事項をB教諭への給与及び出張旅費支給に係る「違法若しくは不当な公金の支出の有無」として監査しており(甲1),「福岡県知事が財産の管理を怠る事実」が監査請求の対象とされていなかったことは明らかである。 (イ)本件訴状には,B教諭以外の当初の損害賠償の対象者7名について,地方自治法242条の2第1項4号所定の「当該職員」であるとし,B教諭については同号所定の「公金支出の相手方」と明示されていたところ,被控訴人らは,平成16年1月29日付け第2準備書面及びその後の平成16年2月2日の原審口頭弁論において初めて,財務会計上の行為を「財産の管理を怠る事実」と特定したにすぎない。 (ウ)最高裁平成10年7月3日判決(判例時 1月29日付け第2準備書面及びその後の平成16年2月2日の原審口頭弁論において初めて,財務会計上の行為を「財産の管理を怠る事実」と特定したにすぎない。 (ウ)最高裁平成10年7月3日判決(判例時報1652号65頁)は,監査請求では,交換契約締結の違法を理由に契約の直接の相手方に対する原状回復請求と行為者に対する損害賠償請求を求めていたところ,訴訟では,所有権に基づく第三者に対する妨害排除請求に変更したしたという事案であるが,監査請求において交換契約が財務会計上の行為として明示され,訴訟でも同様に変更がなかったものである。これに対し,本件訴えでは,第二次監査請求で明示された財務会計上の行為は,B教諭に対する給与及び出張旅費の支出のみであって,A校長及びCら5名に関する怠る事実は明示されておらず,事案を異にするものである。 (エ)福岡高裁平成17年10月17日判決(乙52。この判決は平成18年9月8日に上告不受理決定により確定した。)は,現職教諭を県同教に研修名目で長期派遣したことが違法であるとして県知事に対し県教委委員長に損害賠償を請求することを求めた住民訴訟において,監査請求は「当該職員」たる県知事個人に対する損害賠償請求であったのに対し,提起さ れた訴訟は「怠る事実に係る相手方」たる県教委委員長に対する損害賠償であったところ,監査請求前置を経ていないから不適法と判断しており,その訴訟構造は本件のそれと何ら変わらないから,同様に解すべきである。 イ本件訴えではCら5名が関係職員とされているが,第二次監査請求は同人らを対象とはしていないから,同人らに係る訴えは不適法である。 (ア)住民訴訟を提起するためには,関係職員を対象とした監査請求を事前に行っておくことが法律上の要件とされている。その趣旨とするところは,訴え提起の前に,当 から,同人らに係る訴えは不適法である。 (ア)住民訴訟を提起するためには,関係職員を対象とした監査請求を事前に行っておくことが法律上の要件とされている。その趣旨とするところは,訴え提起の前に,当該地方公共団体内の機関によって監査を行い,是正すべき点があれば,当該地方公共団体内において自主的に是正せしめんとするものである。また,住民訴訟において,地方公共団体が職員に対して有する損害賠償請求権は,各人ごとにその成立要件を異にし,その責任原因につきその大筋で同一であるときでも,その地位,職務権限,関与の方法・程度を異にし,結論に及ぼすべき差異が存する。そのため,「当該職員」はもとより,「怠る事実に係る相手方」についても,監査請求の対象者としていなければ,住民訴訟において,これを請求の対象者とすることは,法の趣旨からしてできないものである。ところが,本件訴えにおいては,第二次監査請求の対象とされていたのは,「福岡県知事,福岡県教育委員会各委員,教育長,F高等学校長及びB教諭」であって,Cら5名は当時監査請求の対象となった職にあったものではないから,監査請求を経たとはいえない。 (イ)前掲(8頁)平成10年7月3日最判は,「住民訴訟においては,その対象とする財務会計上の行為又は怠る事実について監査請求を経ていると認められる限り,監査請求において求められた具体的措置の相手方とは異なる者を相手方として右措置の内容と異なる請求をすることも,許されると解すべきである。」と判示しているが,その判示からしても,どのような場合においても,監査請求の対象者と異なる者を住民訴訟の対象者と することができるとは解することができない。同最判の事案は,町有地と道路予定地との交換契約を違法として争い,監査請求においては契約の相手方を人的対象としていたのに対し る者を住民訴訟の対象者と することができるとは解することができない。同最判の事案は,町有地と道路予定地との交換契約を違法として争い,監査請求においては契約の相手方を人的対象としていたのに対し,訴訟では当該土地の一部転得者と抵当権者を人的対象としたものであって,同最判の判断は,①監査請求における財務会計上の行為として「契約の締結」が明示されており,訴訟においてもその点に変わりがなかったこと,②事件の係争対象は,不動産に係る契約の締結であるから,不動産に対する現権利者を相手方とするほうがより直截な紛争解決となることが前提となっているものと解される。ところが,本件では,そもそも,第二次監査請求の対象とされた財務会計上の行為と,本件訴えの「怠る事実」という財務会計上の行為とに同一性を認めることはできないし,また,Cら5名の損害賠償責任の根拠となる不法行為が本件配置であるとの被控訴人らの主張は,訴訟進行過程において,論理矛盾の是正のため訴えの変更がなされたことによるものであって,第二次監査請求の段階では,Cら5名の行為も存在も全く想定されていなかったものである。 (被控訴人らの主張)ア第二次監査請求と本件訴えの対象の同一性(ア)最高裁昭和62年2月20日判決(民集41巻1号122頁)は,「普通地方公共団体の住民が当該普通地方公共団体の長その他財務会計職員の財務会計上の行為を違法,不当であるとしてその是正措置を求める監査請求をした場合には,特段の事情が認められない限り,右監査請求は当該行為が違法,無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権を当該普通地方公共団体において行使しないことが違法不当であるという財産の管理を怠る事実についての監査請求をもその対象として含むと解するのが相当である。」と判示している。この判決の趣旨とすると 求権を当該普通地方公共団体において行使しないことが違法不当であるという財産の管理を怠る事実についての監査請求をもその対象として含むと解するのが相当である。」と判示している。この判決の趣旨とするところは,財務会計職員の財務会計行為が違法・不当であれば,当該財務会計行為が無効 となり,それに基づいて発生する実体法上の請求権を地方公共団体は行使するし,それが期待される。したがって,住民が財務会計行為について違法・不当であるとして監査請求をした場合には,特段の意思が認められない限り,実体法上の請求権を行使しないことの違法・不当性も監査の対象として求めているといえるし,監査委員もこの住民の意思を受けて監査を開始するのであるから,これにより実体法上の請求権を行使しないことの違法・不当性を審査する機会が与えられている。このような観点から,形式的には「公金の支出」を監査対象にしていたとしても,監査前置主義の趣旨が尽くされる以上,「怠る事実」についても監査対象に含まれると解したものである。 (イ)本件については,以下のとおりいうことができる。 Ⅰ第二次監査請求は,「既に支給した給与・出張旅費分については,公金支出の最終権限者たる県知事及び教育委員会各委員,教育長,同校校長,同教諭らが支出相当額を連帯して県に返還すること」というものである。これは,「B教諭に給与等の金銭を支給した行為は違法支出であるから支払権限者に対して損害を填補させること」はもちろん,「違法に金銭を受給した教諭,違法に金銭を給付させたことに携わった関係者に対して損害賠償の請求を行うこと」の双方を含むといえる。給与支出の違法の有無だけに絞って監査請求をするのであれば,支払権限を有する県知事以外の名を挙げて損害を填補するよう求めるはずがない。 Ⅱ監査委員は,第二次監査請求を受 こと」の双方を含むといえる。給与支出の違法の有無だけに絞って監査請求をするのであれば,支払権限を有する県知事以外の名を挙げて損害を填補するよう求めるはずがない。 Ⅱ監査委員は,第二次監査請求を受けて,B教諭の出張日数,出張業務内容,Fにおける業務内容,出張による支障の有無,県同教・高同教等の団体の活動内容,枠外配当の手続,職免等の手続等について調査・検討しており,B教諭に対する給与支出等が違法であったか否かにとどまらず,B教諭を県同教の業務に従事させることに関与した者の責任を問えるか否かを検討する機会も既に与えられている。 Ⅲしたがって,本件訴えは監査請求前置の要件を満たしている。 イ第二次監査請求における具体的措置の相手方と本件訴えにおけるCら5名(ア)前掲(8頁)平成10年7月3日最判は,「住民訴訟につき,監査請求の前置を要することを定めている地方自治法242条の1第1項は,住民訴訟は監査請求の対象とした同法242条1項所定の財務会計上の行為又は怠る事実についてこれを提起すべきものと定めるが,同項には,住民が,監査請求において求めた具体的措置の相手方と同一の者を相手方として右措置と同一の請求内容による住民訴訟を提起しなければならないとする規定は存在しない。また,住民は,監査請求をする際,監査の対象である財務会計上の行為又は怠る事実を特定して,必要な措置を講ずべきことを請求すれば足り,措置の内容及び相手方を具体的に明示することは必須ではなく,仮に,執るべき措置内容等が具体的に明示されている場合でも,監査委員は,監査請求に理由があると認めるときは,明示された措置内容に拘束されずに必要な措置を講ずることが出来ると解されるから,監査請求前置の要件を判断するために監査請求書に記載された具体的な措置の内容及び相手方を吟味する があると認めるときは,明示された措置内容に拘束されずに必要な措置を講ずることが出来ると解されるから,監査請求前置の要件を判断するために監査請求書に記載された具体的な措置の内容及び相手方を吟味する必要はないといわなければならない。そうすると,住民訴訟においては,その対象とする財務会計上の行為又は怠る事実について監査請求を経ていると認められる限り,監査請求において求められた具体的措置の相手方とは異なる者を相手方として右措置の内容と異なる請求をすることも,許されると解すべきである。」と判示する。この判決は,「財務会計上の行為又は怠る事実」が同一である限り,監査請求において求めた具体的措置の内容・相手方を問わずに,住民訴訟を提起できるという見解を示したものということができる。つまり,問題とする「財務会計上の行為又は怠る事実」が同一である限り,監査請求前置の要件を判断するに当たって,監査請求書に記載された具体的な措置の内容及び相手方を 吟味する必要はないというものである。この考え方は,監査請求により,監査前置主義の趣旨が尽くされれば,すなわち,自治体内部の自治的な解決ないし解決の機会が促されたということさえできれば,住民訴訟を提起することは広く許されるべきであるというものである。 (イ)本件についていうと,第二次監査請求は,「既に支給した給与・出張旅費分については,公金支出の最終権限者たる県知事及び教育委員会各委員,教育長,同校校長,同教諭らが支出相当額を連帯して県に返還すること」を求めているところ,これは,「B教諭に給与等の金銭を支給した行為は違法支出であるから支払権限者に対して損害を填補させること」はもちろん,「違法に金銭を受給した教諭,違法に金銭を給付させたことに携わった関係者に対して損害賠償の請求を行うこと」も求めているのであ 為は違法支出であるから支払権限者に対して損害を填補させること」はもちろん,「違法に金銭を受給した教諭,違法に金銭を給付させたことに携わった関係者に対して損害賠償の請求を行うこと」も求めているのである。 そして,被控訴人らは,本件訴えにおいて,違法に金銭を受給させたことに加担したCら5名に対して損害賠償請求を行うべきであるとの請求を行っているのであるから,監査請求においてCら5名の名前が明示されていなくとも,監査対象者の同一性は認められるべきである。 (2)争点(2)(住民訴訟の対象)について(控訴人の主張)本件のような人権・同和教育の推進・振興という行政目的達成のために行った同和教育課長の判断や,本件配置を行った教職員課長及び教育企画部長の決裁行為(判断)は,そもそも住民訴訟の対象となる行為ではない。すなわち,そもそも住民訴訟制度は,地方公共団体における財務会計システムの腐敗又は財務会計上の行為に基づく汚職を是正することを目的とする制度であり,この点について,最高裁平成2年4月12日判決(民集44巻3号431頁)は,住民訴訟の対象となる行為とは,あくまでも,地方公共団体の「財務処理を目的とする財務会計上の管理行為」としての性質を有するものに限られ,結果的に何らかの財務上の影響を及ぼすにとどまる行為,すなわ ち,「行政担当者としての行為(判断)」については,住民訴訟の対象とはならないと判断している。このことは,本件のように,公務員の不法行為について損害賠償請求を怠っているという構成をとった場合であっても,住民訴訟という形態の訴訟である以上,当然に当てはまるものであって,このような住民訴訟の制度趣旨・制度意義に照らすと,住民訴訟において問われるべき行為には,行政担当者としての行政目的達成のために行った判断までも含むと解することは 上,当然に当てはまるものであって,このような住民訴訟の制度趣旨・制度意義に照らすと,住民訴訟において問われるべき行為には,行政担当者としての行政目的達成のために行った判断までも含むと解することはできない。 (被控訴人らの主張)同最判は,請負契約締結に当たり補助的な役割を果たしたにすぎない京都市建設局長らの決裁行為が財務会計上の行為に該当するか否かという,あくまで,住民訴訟の対象が財務会計上の行為に該当するか否かという訴訟要件について判断したものであって,住民訴訟の対象となる行為は,財務会計上の行為に限られるという当然のことを確認したにすぎない。被控訴人らは,住民訴訟の対象となる事項が,財務会計上の行為,すなわち,地方自治法242条1項に定める「公金の支出」「財産の取得・管理・処分」「契約の締結・履行」「債務その他の義務の負担」「公金の負荷・徴収を怠る事実」「財産の管理を怠る事実」という事項に限られていることを前提として,本件においては,控訴人が県教委や同和教育課長らに対し,不法行為に基づく損害賠償請求権を有しているにもかかわらず,これを行使しないこと,という「財産の管理を怠る事実」があると主張しているものであって,これが住民訴訟の対象となることは明らかである。そして,真に行政目的の達成のために行った判断や決裁行為は違法と判断されないが,それが行政目的を有しない場合には,裁量権の行使に逸脱又は濫用があるものとして違法と判断されるのである(最高裁平成17年3月10日判決・判例時報1894号3頁)。 (3)争点(3)(違法に財産の管理を怠る事実)について (被控訴人らの主張)ア本件各手続の違法性(ア)地方公務員法30条,35条,24条1項違反Ⅰ最高裁平成10年4月24日判決(裁判集民事188号275頁,判例時報1640 実)について (被控訴人らの主張)ア本件各手続の違法性(ア)地方公務員法30条,35条,24条1項違反Ⅰ最高裁平成10年4月24日判決(裁判集民事188号275頁,判例時報1640号115頁)は,茅ヶ崎市が商工会議所に職員を派遣した事案において,「本件免除条例2条3号及び本件給与条例11条前段は,職務専念義務の免除及び勤務しないことについての承認について明示の要件を定めていないが,処分権者がこれを全く自由に行うことができるというものではなく,職務専念義務の免除が服務の根本基準を定める地方公務員法30条や職務に専念すべき義務を定める同法35条の趣旨に違反したり,勤務しないことについての承認が給与の根本基準を定める同法24条1項の趣旨に違反する場合には,これらは違法になると解すべきである。そして,本件においては,本件派遣の目的,被上告人会議所の性格及び具体的な事業内容並びに派遣職員が従事する職務の内容のほか,派遣期間,派遣人数等諸般の事情を総合考慮した上,本件職務専念義務の免除については,本件派遣のため本件派遣職員を市の事務に従事させないことが,また,本件承認については,これに加えて,市に勤務しない時間につき給与を支給することが,右各条項の趣旨に反しないものといえるかどうかを慎重に検討するのが相当である。」「以上の観点から本件をみると,本件派遣の目的が,前示のように被上告人会議所との連携を強めることにより市の不振な商工業の進展を図るためのものであったとしても,本件職務専念義務の免除及び本件承認を適法と判断するためには,右目的と本件派遣との具体的関連性がさらに明らかにされなければならないのであって,そのためには,被上告人会議所の実際の業務内容がどのようなものであって,それが市の商工業の振興策とどのような関連性を有してい 本件派遣との具体的関連性がさらに明らかにされなければならないのであって,そのためには,被上告人会議所の実際の業務内容がどのようなものであって,それが市の商工業の振興策とどのような関連性を有していたのか,本件派遣職員の被上告人会議所 における具体的な職務内容がどのようなものであって,それが市の企画する商工業の振興策とどのように関係したのかなどの諸点について,十分な審理を尽くした上,市の行政目的の達成のために,本件派遣をすることの公益上の必要性を検討し,これに照らして,本件職務専念義務の免除及び本件承認が前記各条項の趣旨に反しないかどうかを判断する必要があるといわなければならない。」と判示して,破棄差戻しの判決をした。 Ⅱ平成16年3月2日判決(判例時報1870号8頁)は,上記Ⅰの事件の再上告審であって,「上記事実関係によれば,市とQとの間で,本件派遣職員の職務内容について具体的な取決めがなされた形跡はなく,本件派遣職員は,市の企画する商工業振興策と直接的な関連性が認められる諸事業には具体的には関与しておらず,商業近代化地域計画の実施についての関与も間接的なものにとどまっており,実際の職務の中心はQの内部的事務であったというのである。そうすると,本件派遣当時,市は,低迷する市内の商工業の活性化等を図るための施策の一つとして商工会議所の指導及び相談体制の充実を掲げており,上記諸事業の推進等のためQとの連携を強める必要があったことのほか,本件派遣の期間は約7か月にとどまり,派遣人数も1人であったこと等を考慮しても,本件職務専念義務の免除は地方公務員法30条,35条の趣旨に反し,本件承認は同法24条1項の趣旨に反するというべきである。したがって,本件承認を是正することなく,これを前提にして行われた本件派遣職員に対する給与支出のうち 地方公務員法30条,35条の趣旨に反し,本件承認は同法24条1項の趣旨に反するというべきである。したがって,本件承認を是正することなく,これを前提にして行われた本件派遣職員に対する給与支出のうち欠勤者にも支給される期末手当全額及び勤勉手当の7割相当額を控除した残額の支給は違法とすべきである。」と判示した。 Ⅲこれらの最判の趣旨は次のとおりである。すなわち,地方公務員法30条は「すべて職員は,全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し, 且つ,職務の遂行に当たっては,全力を挙げてこれに専念しなければならない。」と,同法35条は「職員は法律又条例の定めがある場合を除く外,その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職務遂行のために用い,当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。」と,同法24条1項は「職員の給与は,その職務と責任に応ずるものでなければならない。」とそれぞれ規定しており,その趣旨とするところは,公務員は本来当該地方公共団体の職務にのみ専念すべきであって,その注意力等(労働力)を他の事柄のために(例えば他の団体等のために)費やすべきではなく,職員の給与は,職員が当該地方公共団体の職務に専念することに対して支給されるというものである。したがって,職員が職務専念義務を免除されて,例えば他の団体のための業務に従事することが許容されるのは,その業務が,当該地方公共団体の業務であるとみなしても差し支えない程度に公共性を有する場合に限られているというものである。 Ⅳ本件については,以下のとおりいうことができる。 a平成12年度から本件配置が始められた際に,その目的とされたのは,「F高等学校の定数加配について(依頼)」(甲13の2)にあるように,「県同教・高同教の副会長,及び全同教委員長として,本 る。 a平成12年度から本件配置が始められた際に,その目的とされたのは,「F高等学校の定数加配について(依頼)」(甲13の2)にあるように,「県同教・高同教の副会長,及び全同教委員長として,本県及び我が国の同和問題の解決に貢献するB教諭の業務を支援するため」というものであった。これは,B教諭が,平成元年から11年間にわたって,県同教の業務に従事するために,教育公務員特例法20条3項の「長期研修」名目で県同教に派遣されていたところ,これに対する県民の批判が高まり,県同教への派遣教員に対して支払われた給与の返還を求める住民監査請求,そして住民訴訟提起という動きがあったことから,これに対処するため,平成12年3月末をもって「長期研修」名目での派遣を終了し,それに代わる便法として採用さ れた施策である。この施策は,平成13年度も平成14年度も,同じ目的で継続された。そして,平成15年1月以降は,第一次監査請求に対する監査の結果,監査委員から出張という形態が問題であると指摘され,これを回避するためのいわば便法ないし隠れ蓑として,この出張を本件職免という形態に切り替えたものである。 bB教諭が「長期研修」の名目で行っていた活動の実態は,まさに県同教の運営業務そのものであって,到底教育公務員の本来の「研修」といえるようなものではなく,本件各手続についても,当然のことながら,民間団体である本件各団体の運営業務に従事させるためになされたものであり,このような業務は,高校教諭であるB教諭のなすべき公務とは到底いえないものである。したがって,前掲各最判の趣旨に照らしても,本件各手続が地方公務員法24条1項,30条,35条の趣旨に反する違法なものであることは明らかである。 cまた,本件配置は,地方公務員法の上記各条項の趣旨に反するだけでなく, の趣旨に照らしても,本件各手続が地方公務員法24条1項,30条,35条の趣旨に反する違法なものであることは明らかである。 cまた,本件配置は,地方公務員法の上記各条項の趣旨に反するだけでなく,同和行政の廃止とその一般行政への転換という国の施策に逆行するものであるという点においても,また,それがもともと本来の教育行政の目的のためではなく,部落解放同盟との癒着を維持するためのものであり,地方公務員は地方公共団体の住民全体の奉仕者であって,一部のものの奉仕者であってはならないとする同法30条の規定に真っ向から反するという点においても,その違法性は明らかである。 (イ)定数標準法(甲41)及び定数条例(乙15)違反定数標準法は,「この法律は,公立の高等学校に関し,配置,規模及び学級編制の適正化並びに教職員定数の確保を図るため,学校の適正な配置及び規模並びに学級編制及び教職員定数の標準について必要な事項を定め・・・もって高等学校・・・の教育水準の維持向上に資することを目的」 とし(1条),その目的を実現するために8条以下に教職員の定数を規定しているところ,これらの規定はすべて,生徒に十分な教育を施す目的で(教育水準の維持向上),必要十分な教諭等を配置するように定めたものである。ところが,本件配置の目的は,上記(ア)Ⅳのaのとおり,出張命令を発する方法によってB教諭を本件各団体に派遣し本件各団体の運営に携わらせるという違法な目的に基づくものであるから,教育水準の維持向上という定数配当の本来の趣旨に反するものであり,定数標準法及び定数条例に違反することは明白である。このように,本件配置は県教委に認められている人事政策上の裁量権を明らかに逸脱しており,この点からも本件配置が違法であることは明らかである。 (ウ)控訴人の主張に対する反論 反することは明白である。このように,本件配置は県教委に認められている人事政策上の裁量権を明らかに逸脱しており,この点からも本件配置が違法であることは明らかである。 (ウ)控訴人の主張に対する反論控訴人は,B教諭に本件各団体の役員としての活動を通じて人権・同和教育に関する情報収集等を行わせることは,県教委の人権・同和教育の推進・振興という行政目的達成のための公益上の必要性に基づいた施策であると主張する。しかし,以下のとおり,この主張には理由がない。 Ⅰまず,単に抽象的に公益上の必要性があるというだけで,公務員が本来の職務に従事せずに民間団体等の業務に従事することが当然に適法になるものではないということは,公務員制度における職務のあり方についての基本的考え方からしても,また,前掲(15頁)平成10年4月24日最判及び前掲(16頁)平成16年3月2日最判で示された判断枠組みからみても明らかなことである。むしろ,仮にB教諭が人権・同和教育に関する情報収集等を行っていたとしても,それは,本件各団体の運営維持のためであるとしか評価することができず,これが福岡県及び県教委の本来なすべき業務と同一視できないことは明らかである。 Ⅱまた,以下のとおり,そもそも「人権・同和教育の推進」ということ自体が,今日において公益上の必要性ですらない。 a昭和28年,全国同和教育研究会が結成されて,民主的な教師たちによる同和教育運動が全国的に広がったが,昭和45年以降,部落解放運動の分裂と部落解放同盟による教育支配が始まった。部落解放同盟は,従来行われてきた民主的な同和教育に反対し,部落排外主義(社会意識としての差別観念は一般的普遍的に存在するという主張が土台となり,部落住民以外はすべて差別者として敵視する考え方)のもとに,「解放教育」と称して,同和 主的な同和教育に反対し,部落排外主義(社会意識としての差別観念は一般的普遍的に存在するという主張が土台となり,部落住民以外はすべて差別者として敵視する考え方)のもとに,「解放教育」と称して,同和教育を反教育的な運動に変質させた。昭和42年7月に結成された全国解放教育研究会の会則は,自らを「部落解放同盟の方針に沿い,解放教育の推進をはかる自主的な組織」とし,「部落出身教師と部落解放運動にかかわる教育関係者によって構成され,部落解放同盟中央本部の指導と援助によって,部落解放運動の一環としての解放教育をすすめようとするものである。」としていた。この「解放教育」とは,日本国憲法や教育基本法,学校教育法等に基づく民主的な教育とは無縁のものであり,具体的には「語り」「部落民宣言」「狭山教育」等が「解放教育」の名で全国的に行われるようになった。県同教が「同和教育」の名のもとに進めているのも,まさにこの「解放教育」である。 b部落解放同盟は,昭和51年,矢田事件,八鹿高校事件を契機に分裂し,部落解放同盟正常化全国連絡会議が結成され,これが全国部落解放運動連合会に改組された。一方,部落解放同盟は,矢田事件,八鹿高校事件で行われた「確認・糾弾」(部落解放同盟から一方的に差別者の烙印を押された者に,多人数で問答無用の罵声をあびせ,侮辱し,威圧し,ときには暴力を加えて相手を屈服させること)を,「部落解放基本法の制定」及び「狭山差別裁判粉砕」とともに,三大闘争のひとつに掲げ,ますます暴力を振るうようになった。 c部落解放同盟は,狭山事件はえん罪であり,部落に対する予断と偏 見に基づく「差別裁判」であると決めつけ,県同教に指導された教師たち(特に,昭和45年に同和対策事業特別措置法に基づいて配置された同和教育推進教員)は,このような部落解放同盟の立 する予断と偏 見に基づく「差別裁判」であると決めつけ,県同教に指導された教師たち(特に,昭和45年に同和対策事業特別措置法に基づいて配置された同和教育推進教員)は,このような部落解放同盟の立場を学んで,児童生徒にこの立場から狭山教育を行うようになった。この狭山教育とは,殺人事件として裁判で争われてきた刑事事件を部落解放同盟の理論を用いて,「部落差別が根底にあるえん罪事件」であり「差別裁判」であるとして小中学校で教えてきた偏向教育であって,同和教育の名のもとに,「解放こども会」「部落民宣言」「狭山ゼッケン登校」「人の痛みを知る教育」という手法で一運動団体の理論で子どもを洗脳するものである。このように,同和教育の実態は狭山偏向教育であり,部落解放同盟という一団体の運動論が教育現場に持ち込まれてきたものである。 d「部落対策基本法」の制定というのは,同和地区だけを対象にした同和施策を半永久的に実施させようとするものであり,これは部落差別の解決を永遠の彼方に押しやるものである。しかし,総務省大臣官房地域改善対策室が平成13年1月26日付けで発表した「今後の同和行政について」では,「平成9年の地対財特法の改正(平成9年経過措置法)により,同和地区(対象地域)・同和関係者に対象を限定して実施してきた特別対策は基本的に終了し,着手済みの物的事業等一部の事業について平成13年度までに経過措置として実施」「平成14年度以降同和地区の施策ニーズに対しては,他の地域と同様に地域の状況や事業の必要性の的確な把握に努めた上で,所要の一般対策を講じていくことによって対応する」「一般対策とは,同和地区・同和関係者に対象を限定しない通常の施策のこと」と説明しており,部落解放同盟や県同教が進めている「部落解放基本法」の制定の趣旨に真っ向から反するもので とによって対応する」「一般対策とは,同和地区・同和関係者に対象を限定しない通常の施策のこと」と説明しており,部落解放同盟や県同教が進めている「部落解放基本法」の制定の趣旨に真っ向から反するものである。ところが,県同教は,「部落解放基本 法」の制定を強く国に迫るとして,そのためには教育と運動の結合が必要であるとし,「部落解放基本法」制定の「運動」化を進めており,県同教が研究機関ではなく運動団体であることは明らかである。 e県同教は,規約上,「部落解放の教育を確立する『同和』教育の研究と実践につとめ,真の民主教育の実現を期することを目的とする」団体であるが,その実体は,「部落解放運動」について特異かつ誤った理論と運動に固執し続けている部落解放同盟と一体となって,その「同和教育」についての理論と運動を福岡県内の教育に持ち込み,教育現場に混乱をもたらし,児童生徒に多大の被害を及ぼしてきた団体である。したがって,控訴人の主張する「人権・同和教育の推進・振興」というものは,教育現場に重大な弊害をもたらしてきたものであり,公益上の必要性なない。 fその上,昭和40年に同和対策審議会の答申が出され,これに基づいて昭和44年に同和対策事業特別措置法が制定され,その後の日本の社会・経済の変化・発展,長年にわたる同和行政・施策,16兆円以上の同和特別対策事業,部落住民の運動等によって,社会問題としての同和問題は基本的に解決した。国も,平成8年5月17日の地域改善対策協議会の「同和問題の早期解決に向けた今後の方策に基本的な在り方について(意見具申)」において,同和教育・同和啓発に代わって,「差別意識」解消のための人権教育・人権啓発を提起していたほか,上記の総務省大臣官房地域改善対策室が平成13年1月26日付けで発表した「今後の同和行政について」 いて,同和教育・同和啓発に代わって,「差別意識」解消のための人権教育・人権啓発を提起していたほか,上記の総務省大臣官房地域改善対策室が平成13年1月26日付けで発表した「今後の同和行政について」において,「同和地区(対象地域)・同和関係者に対象を限定して実施してきた特別対策は基本的に終了」「平成13年度末(平成14年3月31日)に地域改善対策特定事業に関わる国の財政上の特別措置に関する法律(地対財特法)の有効期限が到来することにより,特別対策の法令上の根拠が なくなる」として,特別対策の終了を都府県に通知している。このような社会情勢の中で「同和教育」という教育の特別の教育の必要性は消滅した。貧困,学力不足等「同和地区」の子どもたちが抱える問題は「同和地区」の子どもたちに特有のものではなく,子どもたち一般にみられる問題となっている。このような状況の中に「同和教育」という特別の教育を持ち込むことは教育現場に無用な混乱を引き起こすだけである。「同和教育」なるものは必要でなくなったばかりでなく,有害でさえある。その意味では,県同教等の本件各団体はその存在理由を失っているというべきであり,なおさら,控訴人の主張する「人権・同和教育の推進・振興」に公益上の必要性はない。 イ本件各手続に関与した者と各関与者の不法行為責任等(ア)本件各手続に関与した者Ⅰ教育企画部長,教職員課長,同和教育課長の職にあった者a平成12年度の本件配置(なお,同配置については,当審での審判の対象にはなっていない。)平成12年4月からB教諭をFに配置するため,同年1月20日,同和教育課長Nは,教職員課長Mに対して,「県同教・高同教の副会長及び全同教委員長として本県及び我が国の同和問題の解決に貢献するB教諭の業務を支援するため」との理由で,Fの追加配当につ 1月20日,同和教育課長Nは,教職員課長Mに対して,「県同教・高同教の副会長及び全同教委員長として本県及び我が国の同和問題の解決に貢献するB教諭の業務を支援するため」との理由で,Fの追加配当について依頼をした。教職員課長Mは,追加配当を行うこととし,その決裁を教育企画部長Lに求め,同Lは,本件配置の専決処分をした。 b平成13年度の本件配置平成13年1月25日,同和教育課長Cは,教職員課長Mに対して,「B教諭の本件各団体への団体役員としての業務に従事することを支援するため」との理由で,Fの追加配当の依頼をした。 教職員課長Mは,追加配当を行うこととし,その決裁を教育企画部長 Oに求め,同Oは,本件配置の専決処分をした。 c平成14年度の本件配置平成14年1月31日,同和教育課長Eは,教職員課長Cに対して,前年度と同様の理由により,同様の依頼をした。教職員課長Cは,追加配当を行うこととし,その決裁を教育企画部長Dに求め,同Dは,本件配置の専決処分をした。 ⅡFの校長の職にあったA校長A校長は,B教諭を直接指揮監督すべき立場にあり,かつ,B教諭が本件各団体の活動に従事し,本来の教諭としての職務に従事していない事実をよく知りながら,本件出張命令及び本件職免を行い,本件各団体の活動に専念することを支援・容認した。 ⅢB教諭B教諭は,部落解放同盟や本件各団体の構成員とともに,本件各団体の活動に闇で専従することを擁護する政策をとるよう県教委や県教委事務局に要求して,本件配置を実施させ,それ以降,教諭としての本務に全く従事することなく,本件各団体の役員としての活動に専念し,また,上記活動に専念するため,本件出張命令,本件職免の承認及び兼業の承認の各申請を行った。 (イ)各関与者の不法行為責任と福岡県の損害Ⅰ本件各手続は上記ア 件各団体の役員としての活動に専念し,また,上記活動に専念するため,本件出張命令,本件職免の承認及び兼業の承認の各申請を行った。 (イ)各関与者の不法行為責任と福岡県の損害Ⅰ本件各手続は上記アのとおりいずれも違法であるところ,A校長は本件出張命令及び本件職免に関与し,B教諭は本件各手続全部に関与し,Cら5名は本件配置に関与して,いずれも,部落解放同盟と癒着し或いはその意に沿って,故意又は過失により,福岡県をして,公務に従事していなかったR教諭に対し,ノーワークノーペイの原則(地方自治法204条の2,地方公務員法24条1項,30条,35条,福岡県給与条例(乙43)14条,18条)に反するにもかかわらず,後記Ⅱのとお り給与と旅費を支払わせた。したがって,A校長,B教諭及びCら5名は,福岡県に対して不法行為責任(共同不法行為)を負う。 Ⅱ福岡県は,本件各手続がなされたことにより,B教諭に対し,平成14年3月20日から平成15年3月19日までの間に,給与878万9783円,旅費16万2120円(合計895万1903円)を支払い,同額の損害を被った(なお,このうち,附帯控訴に係る本件職免の期間における減額すべき給与額は,合計21万5028円である。)。 (ウ)控訴人の主張に対する反論控訴人は,本件各手続に関与した各職員には故意又は過失が認められないと主張するが,これらの職員はいずれも,本件各手続が,公務とは無関係の,B教諭の民間団体運営の業務遂行のためになされるものであることを認識した上で,その便宜を図ったものであるから,これらの職員に故意又は過失が認められるのは,当然のことである。 ウ怠る事実控訴人は,地方公共団体の財務会計行為の最終責任者として,B教諭への給与等の違法な支払により生じた損害等を是正し,地方公共団体の財産を 意又は過失が認められるのは,当然のことである。 ウ怠る事実控訴人は,地方公共団体の財務会計行為の最終責任者として,B教諭への給与等の違法な支払により生じた損害等を是正し,地方公共団体の財産を適正に管理すべき権限と義務を負っている(地方自治法2条14項,138条の2,240条2項,地方財政法4条1項,8条)。ところが,控訴人は,これらの財務会計法規に違反して,違法に,上記不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠っている。 (控訴人の主張)ア本件各手続の適法性(ア)人権・同和教育の必要性Ⅰ福岡県は同和地区数及びその世帯数においては全国最多,人口数において全国で2番目に多いという実態があり,同和問題の早期解決を県政の重要施策として様々な同和対策事業を推進してきた。その結果,物的 な基盤整備が進展し,同和地区の生活環境の劣悪な実態は相当程度改善されてきている。さらに,奨学金等を中心とした経済的な支援のための施策によって,同和地区児童生徒の経済的理由による不就学,長期欠席の問題は大幅に解消してきたものの,今もって,大学進学率の相違の現状や,学校現場における差別事象は解消していない実態がある。その上,福岡県が行った意識調査の結果においては,同和地区に対する差別意識は依然として残っていることが指摘されている。このように,依然として残っている教育課題の解決に向けて,同和地区児童生徒を初めとしたすべての児童生徒の学力と進路の保障や,すべての県民の人権意識を向上させるための人権・同和教育の充実・促進は今後とも福岡教育行政の重要な責務ということができる。 Ⅱ県教委における人権・同和教育の施策方針は,国の同和対策事業特別措置法の立法精神と軌を一にし,地域改善対策特別措置法において財政的側面からの支援を受け,一層の推進が図られてきたとこ とができる。 Ⅱ県教委における人権・同和教育の施策方針は,国の同和対策事業特別措置法の立法精神と軌を一にし,地域改善対策特別措置法において財政的側面からの支援を受け,一層の推進が図られてきたところ,平成12年に制定された「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」5条において,「地方公共団体は,基本理念にのっとり,国との連携を図りつつ,その地域の実情を踏まえ,人権教育及び人権啓発に関する施策を策定し,及び実施する責務を有する。」と規定されたことと相まって,依然として,県教委の重要課題として位置づけられている。したがって,県教委の人権・同和教育に関する施策は国の方針と合致するだけでなく,責務として義務づけられた教育行政の方針なのであって,県教委はこれらの立法の精神を遵守して,人権・同和教育の推進を図っているのである。 (イ)本件出張命令の適法性公益上の必要性と給与支給との関係について,公務員の民間団体への派遣に関する前掲(15頁)平成10年4月24日最判は,地方公共団体が行政目的の達成のために実施する行政施策については,まずもって,その 公益上の必要性を検討し,これに照らして法令の趣旨に反しないかどうかを判断する必要がある旨を判示し,さらに,同判決は,派遣された公務員が地方公共団体の事務に全く従事しない「専ら専従」の場合についてさえ,公益上の必要性が認められる場合には,派遣職員に対する給与の支給が可能である旨を判示している。この観点からすると,以下のとおり,本件出張命令は適法というべきである。 Ⅰ本件出張命令の目的a本件出張命令の目的は,人権・同和教育の推進・振興という重要施策を実現することであって,福岡県の教育行政にとって不可欠な施策のひとつである。 b本件各団体は,民間の教育研究団体とはいっても,株式会社のような営 目的は,人権・同和教育の推進・振興という重要施策を実現することであって,福岡県の教育行政にとって不可欠な施策のひとつである。 b本件各団体は,民間の教育研究団体とはいっても,株式会社のような営利を目的とした団体ではなく,人権・同和教育について,高度な専門性を有する団体であって,地域の実情を把握し,これに見合った施策を検討していくために,情報収集等の活動を反復・継続的に行うことに最も適した一定の公益性を有する団体である。 Ⅱ本件出張の用務内容aB教諭は,本件各団体の役員としての活動を通じて,生徒に対する指導方法の開発や指導体制,教職員の研修や指導者の育成及び他都道府県の人権・同和教育の状況等についての情報収集を行ったり,人権・同和教育に関する学習会に参加したり,人権・同和教育に秀でた教員として講話を行ったりするなど,まさに,福岡県の人権・同和教育の発展のための活動に従事していたものであって,団体の運営業務には従事していなかった。 b具体的には,平成12年4月より前に県同教で研修員として勤務していた際の業務内容は,自らの研究課題についての研修に加えて,この成果を広く県内に普及するための研究会等の企画立案にかかわる業 務があったが,同月以降の本件出張においては,研修員が作成した原案に意見を述べるにとどまり,県同教の主催する研究会等の運営にかかわることはなくなった。まして,B教諭が県同教の会計事務等に従事することはなかった。 Ⅲ前掲(16頁)平成16年3月2日最判は,①派遣職員の職務内容について具体的な取決めがされた形跡はないこと,②派遣職員は,市の企画する商工業振興策と直接的な関連性が認められる諸事業には具体的に関与しておらず,派遣職員の実際の職務の中心がQの内部事務であったこと,これらの点から派遣職員に対する職務専念義 ②派遣職員は,市の企画する商工業振興策と直接的な関連性が認められる諸事業には具体的に関与しておらず,派遣職員の実際の職務の中心がQの内部事務であったこと,これらの点から派遣職員に対する職務専念義務の免除が,地方公務員法30条,35条の趣旨に反し,「本件承認」は同法24条1項の趣旨に反するとしているが,B教諭による本件各団体における業務は,あくまでも県教委の人権・同和教育の推進・振興という行政目標を達成することを目的とした公益上の必要性に基づくものであって,本件各団体の内部的事務,つまり,団体の運営業務のために出張命令が発せられたものではない。 (ウ)本件配置の適法性Ⅰ県立学校の教職員定数は,定数条例(乙15)によって,その総数が定められており,この定数条例によって定められた教職員定数の範囲内で,各学校へ教職員定数の配当が行われる。各学校の教職員定数は,各学校の生徒数・学級数及び設置学科の種類等によって配当されるとともに,福岡県の様々な教育施策を進め,福岡県の教育の充実や振興に資するために,必要に応じて定数条例に定められた定数の範囲内で配当される。このように,条例の範囲内で,各学校へ教職員定数の配当を行うことは,あくまで,県教委における人事政策上の裁量行為であって,裁量権の逸脱や濫用が認められない限り,本件配置は適法といわなければならない。 Ⅱ本件配置は,あくまで,福岡県の人権・同和教育の推進・振興という行政目的を達成するために,教職員定数の側面からの施策として公益上の必要性から判断されたものである。まず,本件配置の決定の前提として,福岡県の人権・同和教育施策を所管する同和教育課の判断,すなわち,B教諭に,本件各団体の役員としての活動を通じて人権・同和教育に関する情報収集等を行わせることが,福岡県の人権・同和教育施策 として,福岡県の人権・同和教育施策を所管する同和教育課の判断,すなわち,B教諭に,本件各団体の役員としての活動を通じて人権・同和教育に関する情報収集等を行わせることが,福岡県の人権・同和教育施策に資するという判断がある。そうした判断を踏まえて,教職員定数を所管する教職員課が,このようなB教諭の活動によって,Fの生徒への教育指導体制や学校運営に支障が生じることがないようにするために,Fへ1名分の定数配当を行うという判断をしたものである。このような,人権・同和教育の推進・振興という行政目的には,上記(ア)のとおり公益上の必要性が認められる以上,こうした行政目的を達成するために,しかも,直接には,B教諭の活動によって,Fの生徒への教育指導体制や学校運営に支障が生じることがないようにするためになされた本件配置をもって,裁量権の逸脱や濫用があったとすることはできない。 (エ)本件職免の適法性地方公共団体の職員は,法律又は条例に特別の定めがある場合に,職務専念義務が免除されるところ(地方公務員法35条),福岡県においては,職免条例(乙36)2条及び職免規則(乙37)2条が具体的にこれを規定している。本件各団体への出張については,これらの団体が県政推進のため指導育成を要する公益を目的とする団体であり,職免規則2条10号に該当するものである。具体的な職免の態様も,B教諭からの全同教委員長についての兼業承認申請を承認した上で,B教諭が全同教委員長としての活動に従事する必要がある都度,これを承認をし,その日数も平成15年1月が5日間と7.5時間,同年2月が3日間と7時間と必要最小限度であった。したがって,本件職免は適法というべきである。なお,本件職 免の期間は,福岡県給与条例(乙43)14条,福岡県職員の給与に関する条例等の施行に関する規則 が3日間と7時間と必要最小限度であった。したがって,本件職免は適法というべきである。なお,本件職 免の期間は,福岡県給与条例(乙43)14条,福岡県職員の給与に関する条例等の施行に関する規則(乙44)12条の38第1号により,給与が減額されないことになっている。 イ各関与者の故意又は過失(ア)A校長,B教諭及びCら5名が損害賠償責任を負うのは,以下のとおり,故意又は重過失があった場合に限られる。 Ⅰ最高裁平成15年1月17日判決(民集57巻1号1頁)は,「普通地方公共団体の支出負担行為又は支出命令をする権限を有する職員の損害賠償責任については,故意又は重大な過失により法令の規定に違反して当該行為をした場合に限り責任を負うものとされている(法243条の2第1項,9項)。そうすると,上告人Sが議員及び議会事務職員に支給する旅費の支出負担行為及び支出命令をしたことにつき県に損害賠償責任を負うというためには,同上告人に故意又は重大な過失があることが確定されなければならない。」と判示し,地方自治法242条の2第1項4号の「当該職員」の損害賠償責任を認定するに当たって,同法243条の2第1項を適用して判断している。 ⅡA校長,B教諭及びCら5名は,支出負担行為及び支出命令をする権限を有する職員として,その賠償責任を問われているわけではないから,上記最判がそのまま妥当するわけではないが,国家賠償法1条2項の規定の適用は当然考慮されるべきである。すなわち,この規定は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員の職務行為に基づく損害の賠償責任については,その公務員に故意又は重大な過失がある場合に限って,国又は公共団体がその公務員に対して求償権を有することを定めたものであるところ,上記7名の職員の行為は,公権力の行使に当たる職務行為であ ついては,その公務員に故意又は重大な過失がある場合に限って,国又は公共団体がその公務員に対して求償権を有することを定めたものであるところ,上記7名の職員の行為は,公権力の行使に当たる職務行為であるから,地方自治法242条の2第1項4号の「怠る事実に係る相手方」として地方公共団体に対する損害賠償責任を認めるに当たって は,その「相手方」が当該地方公共団体の公務員であって,その行為が地方公共団体の職務行為に基づくものであれば,国家賠償法1条2項の規定を適用し,故意又は重過失という主観的要件を要すると解すべきである。 Ⅲ仮に国家賠償法1条2項が適用されないとしても,同項及び地方自治法243条の2第1項を類推適用して,公務員に故意又は重大な過失がある場合にのみ,個人として損害賠償責任があると解するのが,合理的な法解釈である。なぜなら,多岐にわたり相互に関連しあう行政施策の執行に当たっては,非財務会計職員の行為であっても,「行政担当者の行為(判断)」によって,結果として巨額の金額が支出されることがあるのが公務員の職務の特質であるところ,通常の行政担当者の行為について,単なる過失によって個人として損害賠償責任を負うとすることは,公務員個人にとって過酷であり,行政担当者の行為(判断)を萎縮させることになるからである。 Ⅳなお,原判決の引用する最高裁昭和61年2月27日判決(民集40巻1号88頁)は,普通地方公共団体の長の賠償責任について,「その職責に鑑みると,普通地方公共団体の長の行為による賠償責任については,他の職員と異なる取扱をされることもやむを得ないものであり,右のような普通地方公共団体の長の職責並びに前記のような法242条の2の規定の趣旨及び内容に照らせば,同条1項所定の職員には当該地方公共団体の長は含まれず,普通地方公共団体 やむを得ないものであり,右のような普通地方公共団体の長の職責並びに前記のような法242条の2の規定の趣旨及び内容に照らせば,同条1項所定の職員には当該地方公共団体の長は含まれず,普通地方公共団体の長の当該地方公共団体に対する賠償責任については民法の規定によるものと解するのが相当である。」と判示しているのであって,非財務会計職員の職務行為に係る不法行為については,すべて,民法709条等に従い故意又は過失が存するときは損害賠償責任を負うとしているものではない。 (イ)A校長,B教諭及びCら5名には,以下のとおり,過失も認められな い。 Ⅰ第一次,第二次監査請求に対する各監査結果(甲1,乙38)は,いずれも,「B教諭の出張のうち団体業務に係る部分については,公務性及び教諭の本務についての適切さを欠く判断に基づくものではあるが,校長権限である兼業の承認,職免の承認が可能なものである。このことから,B教諭が給与の支給を受けながら団体業務に従事したことは適切さを欠くが違法とはいえない。」としており,福岡県の歳出入に係る監査をつかさどる監査委員も,こうした手法をとることについて違法であるとは認識していなかったものである。このことは,本件出張命令が,その手法として適切さを欠く点があったとしても,当時においては,手続上もその目的においても違法であると断ずる根拠はなく,関係した職員に違法の認識がなかったことに過失がないことを端的に示すものである。 Ⅱ最高裁昭和49年12月12日判決(民集28巻10号2028頁)は,「ある事項に関する法律解釈につき異なる見解が対立して疑義を生じ,拠るべき明確な判例,学説がなく,実務上の取扱いも分かれていて,そのいずれについても一応の論拠が認められる場合に,公務員がその一方の解釈に立脚して公務を執行したときは なる見解が対立して疑義を生じ,拠るべき明確な判例,学説がなく,実務上の取扱いも分かれていて,そのいずれについても一応の論拠が認められる場合に,公務員がその一方の解釈に立脚して公務を執行したときは,後にその執行が違法と判断されたからといって,ただちに右公務員に過失があったものとすることは相当でない。」と判示しているところ(最高裁昭和46年6月24日判決・民集25巻4号574頁,前掲(16頁)平成16年3月2日最判も同旨),当時,出張命令によってこのような業務に携わることの適否について確定した解釈がなかったこと,上記Ⅰのとおり,福岡県監査委員が違法と判断していないことからすると,A校長,B教諭及びCら5名に過失を認めることはできない。また,上記平成16年3月2日最判は,商工会議所に派遣した職員に対する給与の支出は違法としながら, 上記昭和46年6月24日最判を引用し,当時,定説がなく,下級裁判所の判断も分かれていたことから,市長の給与支出に故意又は過失はなかったとして,原判決を破棄している。 Ⅲ各関与者の個別事情aA校長本件出張命令は,A校長独自の判断で行ったものではなく,同和教育課から,「B教諭には本件各団体の役員として,人権・同和教育に関する情報の収集を行い,福岡県の同和教育の充実に向けて職責を果たしてもらいたいと考えている。」旨の説明を受けた上で,「B教諭の活動が,本県の人権・同和教育の充実に資するものである」(乙35)という認識のもとに,本件出張命令を行ったものである。したがって,A校長は,本件出張命令がB教諭を本件各団体に派遣してその運営に携わせることを認識していなかったのであるから,A校長に過失を認めることはできない。 bB教諭B教諭には,民間団体の運営に携わっているという認識は全くなく,福岡県の人権・同 に派遣してその運営に携わせることを認識していなかったのであるから,A校長に過失を認めることはできない。 bB教諭B教諭には,民間団体の運営に携わっているという認識は全くなく,福岡県の人権・同和教育に貢献するという認識のもとに出張していたものである。しかも,A校長による適法な職務命令としての出張命令を受けて出張していたのであるから,本件出張が違法であると認識しておらず,B教諭に過失を認めることはできない。 cCら5名教育企画部長が専決する「県立学校における定数の配分の決定」(県教委事務決裁規程(乙16)別表8・九の9)の対象は,学校数にして132校,人数にしておよそ8000人を数えるものであって,教育企画部長や教職員課長が,定数配当後,個々の教職員の出張状況までも認識することは困難である。そもそも,本件配置は,人権・同 和教育の推進・振興という行政目的を達成するために,教職員定数の側面から,公益上の必要性を判断した上で行われたものであって,B教諭が本件各団体に派遣されてその運営に携わることを認識しておらず,Cら5名に過失を認めることはできない。 ウ怠る事実の不存在財産的価値の減少がなければ,財産の管理を怠る事実に当たらないところ,本件においては,財産的価値の減少は生じていないから,財産の管理を怠る事実は存在しない。 第3争点に対する判断 争点(1)(監査請求前置)について(1)第二次監査請求の対象と怠る事実ア証拠(甲1,乙51の1ないし3)によれば,第二次監査請求は,平成15年3月19日,同年3月25日及び同年4月11日,それぞれ「福岡県職員措置請求書」と題する書面が監査委員事務局に提出されることによりなされたところ,これらの書面には,「B教諭は平成12年4月にFに復帰したが,同教諭の出張の大部分が県同教及 1日,それぞれ「福岡県職員措置請求書」と題する書面が監査委員事務局に提出されることによりなされたところ,これらの書面には,「B教諭は平成12年4月にFに復帰したが,同教諭の出張の大部分が県同教及び全同教の行事運営に係っており,教諭の本務に従事していないことから,福岡県が教育公務員としての給与を支払うことは違法・不当なものであることは明らかである。」旨の記載に加え,「よって,監査委員は,県知事及び福岡県教育委員会各委員,教育長,同校校長,当該教諭に,次のとおり行うことを勧告されたい。」「今後,右教諭が①教育公務員としての本務に従事すること②民間団体での行事運営等のための公務出張を許可しないよう指導すること③既に支給した給与・出張費分については,右,公金支出の最終権限者たる県知事及び教育委員会各委員,教育長,同校校長,同教諭らが支出相当額を連帯して県に返還することを求めること。」と記載(なお,被控訴人Pら提出分請求書では,第一次監査請求の監査結果を踏まえた上での職免の不 当性についても言及がされている。)されていたこと,監査委員は,監査対象事項を平成14年3月20日以降平成15年3月19日の間におけるB教諭への給与・旅費支給に係る違法若しくは不当な公金支出の有無とし,監査対象機関を福岡県教育庁教職員課,人権・同和教育課,高校教育課,財務課,Fとして監査を実施し,前記のとおり,第一次監査請求の監査結果報告がされる以前の出張のうちの団体業務に係る部分は,適切さを欠くが,違法とはいえず,監査結果報告後の団体業務従事は本務支障がないことを前提とした兼業従事承認等であり,適切な服務管理であるとの結論としたことが認められる。 イところで,普通地方公共団体の住民が当該普通地方公共団体の長その他財務会計職員の財務会計上の行為を違法,不当である した兼業従事承認等であり,適切な服務管理であるとの結論としたことが認められる。 イところで,普通地方公共団体の住民が当該普通地方公共団体の長その他財務会計職員の財務会計上の行為を違法,不当であるとしてその是正措置を求める監査請求をした場合には,特段の事情が認められない限り,上記監査請求は当該行為が違法,無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権を当該普通地方公共団体において行使しないことが違法不当であるという財産の管理を怠る事実についての監査請求をもその対象として含むと解するのが相当である(前掲(10頁)昭和62年2月20日最判参照)。これは,住民が当該行為の違法・無効を主張して監査を求めている場合には,その監査請求に,当該行為の違法・無効であることに基づいて普通地方公共団体が有すべき請求権等の行使につき適切な措置を勧告するよう求める趣旨が当然に含まれているものと解されるからである。本件についてこれをみると,上記アの③に挙げられた役職等には「当該職員」や「当該職員の相手方」とは解されない役職も含まれており,その他上記にいう特段の事情を認めるに足りる証拠もないから,第二次監査請求には財産の管理を怠る事実についての監査請求をその対象として含んでいるものと解すべきである。そうすると,この点において,本件訴えは監査請求前置に欠けるところはない。 ウこれに対し,控訴人は,①第二次監査請求を受けた監査委員は怠る事実を監査の対象としていなかった,②本件訴訟において被控訴人らが財務会計上の行為を「財産の管理を怠る事実」と特定するのが遅滞した,③前掲(8頁)平成10年7月3日最判とは事案を異にする,④前掲(9頁)福岡高判は同種事案について監査請求前置を否定している,と主張する。 しかしながら,①②の各事情があったというだけでは,A校長 ,③前掲(8頁)平成10年7月3日最判とは事案を異にする,④前掲(9頁)福岡高判は同種事案について監査請求前置を否定している,と主張する。 しかしながら,①②の各事情があったというだけでは,A校長,B教諭及びCら5名に対する損害賠償請求権等の不行使という怠る事実が監査請求の内容に含まれていなかったものと解することはできないし,また,③の最判は後記(2)の争点に関して判示するものであり,本争点に関して参考とすることはできない。さらに,④の福岡高裁の判決は,監査請求書に,「県知事及び県教育長に関する措置請求の要旨として,本件派遣は研修名目とされているが,県同教の運営に従事しているのが実際であり,長期研修規則にいう研修にはおよそ該当しないといえるとするとともに,県知事は,今後,派遣教諭らへの給与支払いはやめること,既に支給した分については,公金支出の最終権限者たる県知事に対して支出相当額の損害賠償を求めること,教育長は現職職員の県同教派遣の一切をただちに取りやめることが記載されていたが,G(県教委委員長)に関する記載は何らなかった。」ところ,「監査委員は,監査対象事項を丙事件の派遣教諭の給与支給に係る『違法若しくは不当な公金の支出の有無』として監査し」,「丙事件被控訴人らは,原審においては,Gを新規定の『当該職員』に当たるとしてその財務会計上の行為による損害賠償義務を主張するのみで,新規定の『怠る事実』に当たる主張はしていなかったが,当審になって,新規定の『怠る事実』として,Gの違法な本件派遣を維持,推進し,放置してきたことについての不法行為に基づく損害賠償義務を主張するに至った」という事案において,「上記監査請求において,他の事項から区別し特定して認識することができるように,個別的,具体的に適示されている 財務会計上の行為は,上 基づく損害賠償義務を主張するに至った」という事案において,「上記監査請求において,他の事項から区別し特定して認識することができるように,個別的,具体的に適示されている 財務会計上の行為は,上記認定の監査請求書の記載内容,監査委員の監査対象事項,さらには原審における丙事件被控訴人らの主張内容からすると,T(県知事個人)に対する丙事件の派遣教諭への給与支出の中止と既支給分についての支出相当額の損害賠償であるといわざるを得ない。すなわち,Gに対する損害賠償請求権の不行使という怠る事実が上記監査請求の内容になっているとは,到底認めることができない。」と判示したものであって(乙52),監査請求の内容になっていたのは,県知事による派遣教諭に対する給与の支給であって,訴訟の対象とされている,県教委委員長による派遣の維持・推進・放置については監査請求の対象とはされていなかったものである。本件においては,第二次監査請求及び本件訴えのいずれにおいても,対象となっている財務会計上の行為は本件派遣におけるB教諭への給与・旅費の支出であって,上記福岡高判とは明らかに事案を異にするものである。 (2)第二次監査請求における具体的措置の相手方と本件訴えにおけるCら5名住民訴訟においては,その対象とする財務会計上の行為又は怠る事実について監査請求を経ていると認められる限り,監査請求において求められた具体的措置の相手方とは異なる者を相手方として同措置の内容と異なる請求をすることも,許されると解すべきである(前掲(8頁)平成10年7月3日最判参照)。本件についてこれをみると,上記(1)アのとおり,第二次監査請求において監査の対象となっている財務会計上の行為は,本件派遣におけるB教諭への給与・旅費の支出であり,本件訴えでは,上記給与・旅費の支出に関与した者に対 みると,上記(1)アのとおり,第二次監査請求において監査の対象となっている財務会計上の行為は,本件派遣におけるB教諭への給与・旅費の支出であり,本件訴えでは,上記給与・旅費の支出に関与した者に対する損害賠償請求権等の不行使という怠る事実を内容としており,いずれも,対象とする財務会計上の行為は同じであり,しかも,第二次監査請求では,返還すべき者として「教育委員会各委員,教育長」といった県教委の職員が挙げられていること,監査対象機関も福岡県教育庁教職員課,人権・同和教育課,F等として監査実施がされていることに照らすと, 県教委事務局の職員であるCら5名が第二次監査請求に明示的に挙げられていなかったとしても,「怠る事実に係る相手方」として本件訴えの相手方にすることは許されるというべきである。したがって,この点においても,本件訴えは監査請求前置に欠けるところはない。 争点(2)(住民訴訟の対象)について控訴人は,住民訴訟の対象は財務会計上の行為であって,本件のような人権・同和教育の推進・振興という行政目的達成のために行った同和教育課長の判断や本件配置を行った教職員課長及び教育企画部長の決裁行為(判断)は住民訴訟の対象となる行為には当たらないと主張する。 なるほど,地方自治法242条の2に定める住民訴訟は,地方財務行政の適正な運営を確保することを目的とし,その対象とされる事項は同法242条1項に定める事項,すなわち,公金の支出,財産の取得・管理・処分,契約の締結・履行,債務その他の義務の負担,公金の賦課・徴収を怠る事実,財産の管理を怠る事実に限られるのであり,上記事項はいずれも財務会計上の行為又は事実としての性質を有するものであって,これらの財務会計上の行為又は事実を対象としない住民訴訟は不適法として却下されることになる(前掲(14 限られるのであり,上記事項はいずれも財務会計上の行為又は事実としての性質を有するものであって,これらの財務会計上の行為又は事実を対象としない住民訴訟は不適法として却下されることになる(前掲(14頁)平成2年4月12日最判参照)。しかしながら,本件請求の当否を判断するに当たって,上記のような非財務会計行為の違法性の有無を判断するのが不可避であるとしても,本件訴えの対象となっているのは,福岡県のA校長,B教諭及びCら5名らに対する損害賠償請求権等の不行使という財産の管理を怠る事実であって,これはまさに財務会計上の行為ないし事実であり,本件訴えをもって住民訴訟の対象とはなし得ない行為又は事実を対象にしたものとはいえない。ちなみに,上記最判は,建設局長と建設企画室長が建設会社に保安Sの中に道路を建設させたことは違法な財産の管理に当たるとして,「当該職員」である建設局長及び建設企画室長に対して原状回復費用相当額の損害賠償を求めた事案について,建設局長及び建設企画室長の行為は,「市道予定地を 道路状の形状にすることにより道路整備計画の円滑な遂行・実現を図るという道路建設行政の見地からする道路行政担当者としての行為(判断)であって,本件土地の森S(保安S)としての財産価値に着目し,その価値の維持,保全を図る財務的処理を直接の目的とする財務会計上の財産管理行為には当たらない」と判示したものであって,そこで取り上げられた財務会計上の行為又は事実は財産の管理であり,本件と事案を異にすることは明らかである。 争点(3)(違法に財産の管理を怠る事実)について(1)当裁判所が認定した事実は,以下のとおり付加訂正するほか,原判決30頁8行目から同38頁16行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。 ア原判決の付加訂正(ア)原判決31頁1 (1)当裁判所が認定した事実は,以下のとおり付加訂正するほか,原判決30頁8行目から同38頁16行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。 ア原判決の付加訂正(ア)原判決31頁11行目及び同13行目の「勤めていた」をいずれも「務めていた。」に,同33頁19行目の「勤めた」を「務めた」にそれぞれ改める。 (イ)同34頁5行目の「会長」を「委員長」に改め,同14行目の「平成12年度から平成14年度にかけて」の後に「毎年度」を加える。 (ウ)同38頁1行目から同3行目までを削除し,同6行目の「福岡県教育委員会会議規則2条」の後に「。乙17」を,同8行目の「福岡県教育委員会の事務委任等に関する規則3条1項」の後に「(乙19)」をそれぞれ加える。 イ当審で新たに認定した事実(ア)本件各団体の活動等(甲1,6,11,62,77,乙38,46,62ないし90,当審証人B)Ⅰ県同教a会則によると,目的,事業及び構成は次のとおりである。 (a)目的(2条) 部落解放の教育を確立する「同和教育」の研究と実践に努め,真の民主主義の実現を期する。ただし,平成14年に「この会は,人権と共生の社会を実現するために部落問題の解決をめざす同和教育の内実を基盤にすえ,人権教育の確立に向けた研究と実践につとめる。」と改正された。 (b)事業(3条)①「同和」教育推進に必要な事項の研究調査②「同和」教育の内容・方法の研究,並びに実践の交流③研究成果,研究資料の交換,収集および発行④関係諸団体との連絡交渉⑤その他,目的達成に必要な事項(c)構成(4条)第2条の目的に賛同する郡市町村単位の「同和」教育研究団体,公立高等学校・私立学校同和教育研究団体(高同教のこと)及び特別会員をもって構成する。 b具体的な活動は次 要な事項(c)構成(4条)第2条の目的に賛同する郡市町村単位の「同和」教育研究団体,公立高等学校・私立学校同和教育研究団体(高同教のこと)及び特別会員をもって構成する。 b具体的な活動は次のとおりである。 (a)学力と進路の保障・人権意識の育成を図るための研究実践を深化・充実するためとして,各種研究集会を実施している。主なものに,福岡県人権・同和教育研究大会(福岡県,県教委及び部落解放同盟福岡県連合会等が後援している。),福岡県高等学校県立学校人権・同和教育分野別実践交流会(高同教と共催するもので,県教委,部落解放同盟福岡県連合会及び福岡県高等学校教職員組合が後援している。),福岡県人権・同和教育夏期講座(部落解放同盟福岡県連合会,福岡県教職員組合及び福岡県高等学校教職員組合等と共催するもので,福岡県及び県教委等が後援している。),福岡県同和教育副読本「かがやき」実践研修会 (県教委,部落解放同盟福岡県連合会,福岡県教職員組合及び福岡県高等学校教職員組合等が後援している。)及び進路保障学習会がある。 (b)同和教育・人権教育の深化・充実に必要かつ専門的な研究実践を行うためとして,専門部会として,同和教育推進教員部会,社会教育部会及び解放保育研究部会を,専門委員会として,進路保障専門委員会及び在日韓国・朝鮮人教育専門委員会をそれぞれ設置している。 (c)定期的に「かいほう」及び「ドゥ」等の機関紙を発行している。 Ⅱ全同教a会則によると,目的及び構成は次のとおりである。 (a)目的(2条)この会は,部落を解放する教育の内容を創造し,真の民主主義を確立するため,同和教育の研究と実践を目的とする。 (b)構成(3条)この会は,前条の目的に賛同し,同和教育を推進する各都道府県ごとに設立された同和教育研究協議会( の内容を創造し,真の民主主義を確立するため,同和教育の研究と実践を目的とする。 (b)構成(3条)この会は,前条の目的に賛同し,同和教育を推進する各都道府県ごとに設立された同和教育研究協議会(県同教はそのひとつ)をもって構成する。ただし,既設の京都市,大阪市,神戸市は,それぞれを単位同教とする。 b具体的な活動は,全国人権・同和教育研究大会や同和教育講座を開催し,また,定期的に「であい」等の機関紙を発行しているというものである。 Ⅲ高同教a会則によると,目的及び構成は次のとおりである。 (a)目的(2条) この会は人権教育の確立を図るために,部落問題の解決をめざす同和教育を基盤に,人権教育の研究と実践に努める。 (b)構成(4条)この会の会員は,第2条の目的に賛同する高等学校・県立学校の関係者及び委員会の承認した者とする。この会の会員は福岡県人権・同和教育研究協議会(県同教のこと)の会員となる。この会に各地高同教を置くことができる。 b上記の県同教共催に係る福岡県高等学校県立学校人権・同和教育分野別実践交流会のほか,福岡県高等学校県立学校人権・同和教育研究集会(県同教,福岡県高等学校教職員組合及び部落解放同盟福岡県連合会と共催)を開催している。 (イ)本件派遣中のB教諭の業務等(甲1,3の3,4,6,40,乙41,50,92,原審及び当審証人B)Ⅰ本件出張県同教や高同教の用務で出張した場合には,上記の各種研究集会の企画立案とこれへの出席が主たる業務であって(出張命令書の用務内容は「事務局学習会」と記載されている。),その終了後同じ日に,役員会が開かれることもあった。全同教の用務で出張した場合には,常任委員会,代表委員会及び総会といった組織運営に関わる会議への出席のほか,上記の各種研究集会の打合せ(出張命 ),その終了後同じ日に,役員会が開かれることもあった。全同教の用務で出張した場合には,常任委員会,代表委員会及び総会といった組織運営に関わる会議への出席のほか,上記の各種研究集会の打合せ(出張命令書の用務内容は「事務局会」「事務局会議」「事務局打合せ」と記載されている。)と同集会への出席が主たる業務であった。 Ⅱ本件職免本件職免の期間は6日間であるところ,そのうち2日間は常任委員会・事務局会・代表委員会といった用務を行い,4日間はそれぞれ北陸,東海,島根県及び東日本で行われた同和教育講座に出席した。 (2)そこで,上記の前提となる事実等と認定事実を前提に検討することとする。 ア本件各手続の違法性(ア)本件配置についてⅠ県教委は,地方教育行政の組織及び運営に関する法律(「地教行法」と略称)23条3号によって,教職員の配置に関する権限を有しているが,その権限は福岡県教育委員会の事務委任等に関する規則(乙19)2条により教育長に委任され,さらに,福岡県教育委員会事務決裁規程(乙16)2条1項2号,14条別表8の九の9により,教育企画部長が専決を任されている(なお,地教行法31条3項に基づいて制定された定数条例(乙15)は,2条で学校職員の定数を定めるとともに,3条で学校別の配分を任命権者に委ね,福岡県教育庁組織規則(乙8)6条7号により,教育企画部がこれを分掌している。)。ところで,地教行法25条は,「教育委員会及び地方公共団体の長は,それぞれ前二条の事務を管理し,及び執行するに当たっては,法令,条例,地方公共団体の規則並びに地方公共団体の機関の定める規則及び規程に基かなければならない。」と規定しており,専決を任せられている教育企画部長は,教育行政機関として大幅な裁量権を有するのであるが,これらの法令等の趣旨に照らし 地方公共団体の機関の定める規則及び規程に基かなければならない。」と規定しており,専決を任せられている教育企画部長は,教育行政機関として大幅な裁量権を有するのであるが,これらの法令等の趣旨に照らして,その裁量権の行使に逸脱又は濫用があると認められるときには,当該人事権の行使は違法になるというべきである。 Ⅱこれを本件についてみると,本件配置当時,B教諭が本件各団体の役員(県同教及び高同教については副会長,全同教については委員長)を務めていた事実のほか,本件内規(原判決添付の別紙「教育関係団体等に係る加配について(内規)」と題する平成5年4月付け及び平成13年4月1日付けの2通の文書で,いずれの文書にも「趣旨」として,「教育関係団体等の活動を支援し,もって県立学校教育の振興を図るため,県立学校教職員が教育関係団体等の役員に就任する場合等において,必 要に応じ加配措置を講じることとする。」旨が記載されていた。)と,毎年度の本件配置の直前に同和教育課長から教職員課長宛てに提出された「F高等学校に定数加配について(依頼)」と題する文書(本件判決添付の別紙1ないし3。甲13の2ないし4)の各内容を総合すると,各年度の本件配置は,本件出張命令或いは本件職免といった手続により給与を支給しながら,B教諭を本件各団体の役員として活動させることを直接の目的としていたものと認めるのが相当である。 これに対し,控訴人は,本件配置の目的は,B教諭に本件各団体の役員としての活動を通じて人権・同和教育に関する情報収集等を行わせることにより,福岡県の人権・同和教育の推進・振興という行政目的を達成することにあったと主張し,B教諭は,当審証人として,本件各団体での活動の中で県外での先進的な取組み,例えば奨学金制度を早期に周知させるといった施策を知り,これをFに持 進・振興という行政目的を達成することにあったと主張し,B教諭は,当審証人として,本件各団体での活動の中で県外での先進的な取組み,例えば奨学金制度を早期に周知させるといった施策を知り,これをFに持ち帰って実践したと供述する。しかしながら,このような取組みが恒常的に行われていたと認めるに足りる証拠はない上,本件各団体は同和教育の研究と実践を目的とする民間団体であって,毎年多数の研究集会を開催することが主たる活動になっているところ,本件派遣において,B教諭は,①平成12年1月から同年12月までは174日,②平成13年1月から同年12月までは204日,③平成14年1月から同年12月まで153日,④平成15年1月から同年3月19日まで7日という長い期間にわたって本件各団体に派遣され(④のうち6日は本件職免によるもので,その余は本件出張に当たる。),本件各団体の事務所で各種研修集会の準備に参加したり,同集会の会場に出向いてこれに参加し,また,役員会に出席したりしていたものであって,B教諭が本件派遣において専ら本件各団体の役員として活動していたことは明らかである。このような事実に照らすと,本件配置の目的が,控訴人の主張するように福岡県の人権・同和教育の 推進・振興を図ることを主としていたものとは到底認めることができない。 ところで,学校教育法51条,28条6項は,高等学校の教諭の職務につき,「教諭は,児童の教育をつかさどる。」と規定しているところ,ここにいう「教育」とは授業を初めとする直接的な教育活動のみならず,それを支える教材研究,成績評価,保護者との懇談,研修といった間接的な教育活動等をも含むのであるが,少なくとも,本件各団体のような民間団体の役員としての活動が教諭の職務に含まれないことは明らかである(仮に,本件各団体が福岡県ないし 護者との懇談,研修といった間接的な教育活動等をも含むのであるが,少なくとも,本件各団体のような民間団体の役員としての活動が教諭の職務に含まれないことは明らかである(仮に,本件各団体が福岡県ないし県教委が認識するように県政推進のため育成を要する公益を目的とする団体であったとしても,同様である。)。そうすると,本件配置は,B教諭に,本来教諭の職務ではない民間団体の役員としての活動をさせることを目的としたものであって,同条項の趣旨に反することは明らかであり,その裁量権の行使に逸脱又は濫用があり,違法というべきである。 (イ)本件出張命令についてⅠ県教委は,地教行法23条3号によって,教職員に対する出張命令に関する権限を有しているが,その権限は,福岡県教育委員会の事務委任等に関する規則(乙19)2条により教育長に委任され,さらに,教育長の権限に属する事務の委任等に関する規程(乙42)7条1項3号により出先機関の長(本件ではF校長)に委任されており,A校長はこの委任された権限に基づいて本件出張命令を発したものである。そして,職務上の命令(地方公務員法32条)であるこの出張命令は,県教委の公務を遂行するために合理的な必要性があり,かつ,当該教職員の職務に関するものであれば,その裁量によってこれを発することができるが,その裁量権の行使に逸脱又は濫用があるときは,当該出張命令は違法となると解すべきである(前掲(15頁)平成17年3月10日最判は, 「普通地方公共団体の長は,当該普通地方公共団体の公務を遂行するために合理的な必要性がある場合には,その裁量により,補助機関である職員に対して旅行命令を発することができるが,上記裁量権の行使に逸脱又は濫用があるときは,当該旅行命令は違法となるというべきである。」と判示する。)。 Ⅱこれを本件 その裁量により,補助機関である職員に対して旅行命令を発することができるが,上記裁量権の行使に逸脱又は濫用があるときは,当該旅行命令は違法となるというべきである。」と判示する。)。 Ⅱこれを本件についてみると,上記(ア)Ⅱのとおり,B教諭は本件出張において専ら本件各団体の役員として活動していたのであるから,これをもって,県教委の公務とか教諭の職務に関するものということはできず,本件出張命令は,その裁量権の行使に逸脱又は濫用があり,違法というべきである。 (ウ)本件職免についてⅠ県教委は,地教行法23条3号によって,職務専念義務免除の承認に関する権限を有しているが,その権限は,福岡県教育委員会の事務委任等に関する規則(乙19)2条により教育長に委任され,さらに,教育長の権限に属する事務の委任等に関する規程(乙42)7条1項3号により出先機関の長(本件ではF校長)に委任されており,A校長はこの委任された権限に基づいて本件職免を行ったものである。ところで,地方公務員法24条6項及び地方自治法204条3項に基づいて制定された福岡県給与条例(乙43)14条は,「職員が勤務しないときは,・・その勤務しないことにつき任命権者・・の承認があった場合を除き,その勤務しない1時間につき,・・勤務1時間当たりの給与額を減額して給与を支給する。」と定め,福岡県職員に給与に関する条例等の施行に関する規則(乙44)12条の38第1号は,福岡県給与条例14条の承認があった場合として,職免条例(乙36)2条による職務に専念する義務を免除された場合を掲げており,本件職免により当然に福岡県給与条例14条の承認があったものとみなされることになる。そして, 職免条例(乙36)2条4号を受けて定められた職免規則(乙37)2条10号は,職務専念義務を免除できる場 職免により当然に福岡県給与条例14条の承認があったものとみなされることになる。そして, 職免条例(乙36)2条4号を受けて定められた職免規則(乙37)2条10号は,職務専念義務を免除できる場合のひとつとして,「職員があらかじめ任命権者の承認を得て県政推進のため指導育成を要する公益を目的とする団体の非常勤の役員又は非常勤の職員となり,その職務に従事する場合」と規定しているところ,控訴人は本件職免は同号に該当すると主張する。しかしながら,仮に本件職免が職免規則2条10号の場合に該当したとしても,職務専念義務の免除が,服務の根本基準を定める地方公務員法30条や職務に専念すべき義務を定める同法35条の趣旨に違反したり,勤務をしないことについての承認(上記の福岡県給与条例14条が規定する「承認」)が給与の根本基準を定める同法24条1項の趣旨に違反する場合には,これらは違法になると解すべきである(前掲(15頁)平成10年4月24日最判,前掲(16頁)平成16年3月2日最判参照)。 Ⅱこれを本件についてみると,上記(ア)Ⅱのとおり,本件派遣の目的は,本件出張及び本件職免を通じて,B教諭を本件各団体の役員として活動させることにあったものであり(ただし,本件職免の期間中は全同教だけに派遣されていた。なお,本件職免の期間は6日間と短期間ではあるが,B教諭の全同教における業務内容は本件出張の期間中と同じであるから,これらは全体としてみるべきであって,期間の長短を過大に評価すべきではない。),そのため,本件全証拠によっても,控訴人が主張するような情報収集等による福岡県の人権・同和教育の推進・振興といった行政目的の達成と,本件派遣との間の具体的な関連性は全く見い出すことができない。そうすると,本件職免は,B教諭に県教委の公務とも教諭の職務とも関連 等による福岡県の人権・同和教育の推進・振興といった行政目的の達成と,本件派遣との間の具体的な関連性は全く見い出すことができない。そうすると,本件職免は,B教諭に県教委の公務とも教諭の職務とも関連性のない全同教の委員長としての活動をさせるためになされたものであって,地方公務員法30条,35条,24条1項の趣旨に反し,違法というべきである。 イ本件各手続に関与した者と各関与者の不法行為責任(ア)本件出張命令は本件各団体の派遣依頼どおりに発せられ,また,本件職免は全同教の派遣依頼どおりになされており,これにB教諭が本件各団体の役員であったことをも考え併せると,B教諭は本件出張命令及び本件職免についてA校長と共同の行為者であったことが認められる。また,本件配置については,県教委事務局において同和教育課長が教職員課長に依頼し,同課長が必要と判断して教育企画部長の決裁に上げて同部長が専決で処理したものであるから,同和教育課長,教職員課長及び教育企画部長は共同の行為者であったと認めることができる(平成13年度の配置に関与したのは同和教育課長のC,教職員課長のM,教育企画部長のOであり,平成14年度の配置に関与したのは同和教育課長のE,教職員課長のC,教育企画部長のDであった。)。 (イ)そこで,本件各手続を行ったことにつき上記各関与者に故意又は過失があった否かについて検討するに,本件各手続は,県教委の公務とも教諭の職務とも関連性のないことの明らかな本件各団体の役員としての活動をB教諭の職務として許容するものであって,これが違法であるとの認識を持つことはそれほど困難であったとは考えられない。しかも,当時すでに,前掲(15頁)平成10年4月24日最判が,商工会議所への派遣職員に対する市の給与支出に関する事案について,派遣が市のどのような 持つことはそれほど困難であったとは考えられない。しかも,当時すでに,前掲(15頁)平成10年4月24日最判が,商工会議所への派遣職員に対する市の給与支出に関する事案について,派遣が市のどのような行政目的によるものかとか,この目的達成と派遣との具体的関連性を明らかにして,目的達成のために派遣をすることの公益上の必要性を検討し,職務専念義務の免除等が地方公務員法30条,35条,24条1項の趣旨に反しないかどうかを判断する必要があるとして,この種の事案の違法性の判断基準を示していたのであるから,なおさら,違法性の認識を持つことができたものと考えられる。このような事情のもとでは,本件各手続の上記各関与者には,本件各手続を行ったことにつき過失があったものと認めるの が相当である。 他方,県教委は,従来から,本件各団体を県政推進のため育成を要する公益を目的とする団体と認識して,本件内規(原判決添付の別紙「教育関係団体等に係る加配について(内規)」と題する平成5年4月付け及び平成13年4月1日付けの2通の文書)を定めており,本件各手続もこのような県教委の方針に沿ってなされたものであること,本件職免については,職免規則(乙37)2条10号が,職務専念義務を免除できる場合のひとつとして,「職員があらかじめ任命権者の承認を得て県政推進のため指導育成を要する公益を目的とする団体の非常勤の役員又は非常勤の職員となり,その職務に従事する場合」を規定している上,本件職免がなされた契機も,第一次監査請求に対する平成14年10月18日付けの監査結果で,「今後,県の職務以外に従事させる場合,教育委員会として,教諭の本務である生徒の教育に従事することに支障がないことを前提にした兼業従事の承認や職免等の手続を行った上で,B教諭の団体役員としての業務に係る出張命 職務以外に従事させる場合,教育委員会として,教諭の本務である生徒の教育に従事することに支障がないことを前提にした兼業従事の承認や職免等の手続を行った上で,B教諭の団体役員としての業務に係る出張命令のあり方を見直すように勧告する。」との勧告を受けたからであったこと(乙38,当審証人U),以上のような事情も認められるが,本件各手続が適法といえるか否かは,その従事した業務の実態にかかわるというべきところ,その間のB教諭の活動等は団体の役員のそれであり,本件各手続についての違法性を認識できる状況にあったものと認められるから,これらの事情があったとしても,なお,上記各関与者の過失を否定することはできない。 (ウ)そして,本件各手続が行われたため,福岡県給与条例(乙43)14条は適用されず,給与が減額されないまま支出され,また,本件出張命令が発せられたため,B教諭に旅費が支出されたのであるから,それぞれの間には相当因果関係があるものと認められる。そうすると,福岡県が被った損害額は,①平成14年3月20日から同月31日までの本件出張の給 与・旅費支出額合計14万2098円,②同年4月1日から平成15年3月19日までの本件出張の給与・旅費支出額合計297万6229円(給与につき290万5739円-6万3250円=284万2489円,旅費につき14万3440円-9700円=13万3740円),③平成15年1月から同年3月19日までの本件職免の給与支出額21万5038円となり,A校長,B教諭,C,O及びMは上記①について,A校長,B教諭,C,D及びEは上記②及び③について,それぞれ不法行為に基づく損害賠償義務を負い,それぞれが共同不法行為となる。 (エ)これに対し,控訴人は,①A校長,B教諭及びCら5名が損害賠償責任を負うのは故意又は重過失が 上記②及び③について,それぞれ不法行為に基づく損害賠償義務を負い,それぞれが共同不法行為となる。 (エ)これに対し,控訴人は,①A校長,B教諭及びCら5名が損害賠償責任を負うのは故意又は重過失があった場合に限られる,②仮に過失で足りるとしても,同人らにはこれが認められない,と主張する。 しかしながら,①の点については,前掲(30頁)平成15年1月17日最判が故意又は重大な過失があることを要するとしたのは,控訴人も自認するとおり,地方自治法243の2第1項に規定する,普通地方公共団体の支出負担行為及び支出命令をする権限を有する職員の損害賠償責任について判示したものにすぎないし,また,同条項は,同条項所定の職員の職務にかんがみて,民法上の債務不履行又は不法行為による損害賠償責任よりも責任発生の要件及び責任の範囲を限定して,これら職員がその職務を行うに当たり畏縮し消極的となることなく,積極的に職務を遂行することができるように配慮したものであって(前掲(31頁)昭和61年2月27日最判参照),これらの職員とは異なるA校長,B教諭及びCら5名についてこれを類推適用することは相当でない。また,控訴人は国家賠償法1条2項の類推適用を主張するが,同条項は,公務員が他人に違法に加えた損害につき国又は公共団体がこれを賠償したとき,公務員に故意又は重大な過失があったときに限り求償権を有するとの規定であって,被害者に対する損害賠償義務を規定するものではなく,直ちにこれを類推適用す ることはできない。また,②の点について,控訴人は,前掲(33頁)昭和46年6月24日最判,前掲(32頁)昭和49年12月12日最判,前掲(16頁)平成16年3月2日最判は,「ある事項に関する法律解釈につき異なる見解が対立して疑義を生じ,拠るべき明確な判例,学説がなく,実務 24日最判,前掲(32頁)昭和49年12月12日最判,前掲(16頁)平成16年3月2日最判は,「ある事項に関する法律解釈につき異なる見解が対立して疑義を生じ,拠るべき明確な判例,学説がなく,実務上の取扱いも分かれていて,そのいずれについても一応の論拠が認められる場合に,公務員がその一方の見解を正当と解しこれに立脚して公務を執行したときは,後にその執行が違法と判断されたからといって,ただちに右公務員に過失があったとものとすることは相当ではない。」と判示しており,本件もこれに該当すると主張するのであるが,上記(イ)のとおり,本件各手続に関与したA校長,B教諭及びCら5名には本件各手続が違法であるとの認識を持つことはできたものと考えられるのであって,控訴人主張の上記判断基準に照らしても,A校長,B教諭及びCら5名には過失があったものといわざるを得ない。 ウ怠る事実福岡県は,上記のとおり,A校長,B教諭及びCら5名に対して損害賠償請求権を有するところ,地方自治法240条2項,同法施行令171条以下の規定に照らすと,普通地方公共団体の長には,債権について,同法施行令171条の5に定める事由がない限り債権の行使をするかしないかの裁量権がないため,長が正当な理由もないのに相当の期間債権の履行請求をしないときは,財産の管理を怠るものとして違法となるというべきである。本件においては,上記にいう正当の理由は認められないので,控訴人は違法に財産の管理を怠っているということができる。 第4 結論 よって,被控訴人らの請求は,①A校長,B教諭,C,O及びMに対し,福岡県に対する損害賠償として,連帯して14万2098円と遅延損害金を支払うよう請求する部分,②A校長,B教諭,C,D及びEに対し,福岡県に対す る損害賠償として,連帯して297万6229円と 福岡県に対する損害賠償として,連帯して14万2098円と遅延損害金を支払うよう請求する部分,②A校長,B教諭,C,D及びEに対し,福岡県に対す る損害賠償として,連帯して297万6229円と遅延損害金を支払うよう請求する部分,③A校長,B教諭,C,D及びEに対し,福岡県に対する損害賠償として,連帯して21万5038円と遅延損害金を支払うよう請求する部分の限度において認容すべきところ,上記①及び②についての本件控訴は理由がないからこれを棄却し,上記③については原判決と結論を異にするから,附帯控訴に基づいて原判決主文4項を変更することとする。 福岡高等裁判所第4民事部裁判長裁判官牧弘二裁判官川久保政徳裁判官増田隆久

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