令和8年1月26日判決言渡令和7年(ネ)第10065号 DMCAカウンターノーティスに基づくURL回復請求控訴事件(原審・東京地方裁判所令和6年(ワ)第70601号)口頭弁論終結日令和7年11月20日 判決 控訴人X 被控訴人GoogleLLC 日本における代表者グーグル・テクノロジー・ジャパン株式会社 同訴訟代理人弁護士赤川圭同山内真之 同白石佳壽朗同下田真央 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 本判決において用いる主な略語は、次のとおりである(原判決において定義しているものを含む。)。 原告控訴人(1審原告)X被告被控訴人(1審被告)GoogleLLC DMCA 米国デジタルミレニアム著作権法 原告サイト原告の管理運営するウェブサイト本件検索サイト被告がインターネット上で管理運営する検索サイト本件URL 原判決別紙記載の原告サイトのURL本件措置被告が令和6年3月29日までに講じた、本件検索サイトに表示される検索結果から本件URLを削除し非表示とする措 置テイクダウン申請著作権侵害を理由とするウェブサイトのURLやコンテンツの削除の申立 年3月29日までに講じた、本件検索サイトに表示される検索結果から本件URLを削除し非表示とする措 置テイクダウン申請著作権侵害を理由とするウェブサイトのURLやコンテンツの削除の申立て削除申立人テイクダウン申請を行った者異議申立て通知テイクダウン申請によりURLを削除し非表示とする措置が 講じられた者による再審査請求の手続異議申立人異議申立て通知を行った者前訴判決原告の被告に対する東京地方裁判所令和6年(ワ)第6602号損害賠償等請求訴訟の判決第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 虚偽のDMCAに基づく削除申請によって検索結果から削除された原告対策サイト4581URL(本件URL)の原状回復を求める。 第2 事案の概要1⑴ 被告は、本件検索サイトの検索結果から、複数の原告サイトのURL(本 件URL)を削除し、これらを非表示とする措置(本件措置)を講じた。 本件は、原告が、被告に対し、DMCA512条⒢項⑵節に基づき、本件URLの原状回復(復元)を求める事案である。 被告は、本件訴訟において、被告に本件URLを復元する義務があることを争うとともに、① 原告と被告との間でカリフォルニア北部地区を管轄す る連邦地方裁判所を管轄裁判所とする旨の専属的国際裁判管轄合意が成立し ていることから、日本の裁判所に管轄権はない、② DMCA512条は、URLを削除されたウェブサイトの管理運営者(以下「利用者」という。)に対し、当該ウェブサイトのURLの回復をサービス・プロバイダに請求する権利を付与する規定ではないとする前訴判決が確定しており、本件訴訟の提起は、同一の争点について紛争を蒸し返すもので、訴訟上の信義則に反す る サイトのURLの回復をサービス・プロバイダに請求する権利を付与する規定ではないとする前訴判決が確定しており、本件訴訟の提起は、同一の争点について紛争を蒸し返すもので、訴訟上の信義則に反す る旨の主張をしている。 ⑵ 原審は、① 原告と被告との間に専属的国際裁判管轄合意があるとはいえない、② 原告による本件訴訟の提起は信義則に反するものではないとして被告の主張を排斥する一方、原告が本件URLの回復請求権の根拠として主張するDMCA512条⒢項⑵節の規定は、サービス・プロバイダがテイク ダウン申請に基づいてURLやコンテンツ(以下、併せて「コンテンツ等」という。)を削除した場合における免責条件を定めるものであり、サービス・プロバイダに一定の義務が発生することを定めるものではないとして、原告の請求を棄却し、原告は、これを不服として、控訴を提起した。 2 前提事実及び関係法令 前提事実及び関係法令は、原判決4頁2行目末尾を改行の上、次のとおり付加するほかは、原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1及び2(原判決2頁5行目から5頁13行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 「⑻ 当事者が本件に係る法律行為の当時に選択した地の法は、米国法であ る。」第3 争点及びこれに関する当事者の主張 1 争点及びこれに関する当事者の主張は、2のとおり、本件URLの回復請求権の有無に関する当審における補充主張を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の3(原判決5頁14行目から7頁2行目 まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 2 当審における本件URLの回復請求権の有無に関する補充主張(原告の主張)⑴ 米国著作権局は、「S 目から7頁2行目 まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 2 当審における本件URLの回復請求権の有無に関する補充主張(原告の主張)⑴ 米国著作権局は、「Section 512 ofTitle 17: ResourcesonOnlineServiceProviderSafeHarborsandNotice-and-TakedownSystem」と題する記事(甲23。以下「本件記事」という。)のとおり、DMCA512条 について、サービス・プロバイダにコンテンツ等の復元義務があることを前提に、異議申立て通知後、削除申立人が異議申立人に対し著作権の侵害行為の差止めを求める訴訟を提訴しない場合、サービス・プロバイダは所定期間内にコンテンツ等を復元しなければならないとして、コンテンツ等の復元までを免責の条件とする解釈を示している。 ⑵ 米国判例「Lenzv. UniversalMusicCorp.(2015)」(甲33。以下「判例1」という。)において、異議申立て通知がされた場合、サービス・プロバイダは所定期間内にコンテンツ等を復元しなければならず、これが免除されるのは、削除申立人が異議申立人に対し著作権の侵害行為の差止めを求める訴訟を提起した旨の通知をサービス・プロバイダが受領したときに限られ る旨の判断が示されている。DMCA512条⒢項⑴節に規定する「免責」と同項⑵節に規定する「義務」は不可分一体のものであるところ、手続的均衡の観点(削除申立人が原告に対し訴訟を提起した事実はない。)においても、また、虚偽のテイクダウン申請に対する表現の自由の保護の観点においても、被告には本件URLを復元する義務があるというべきである。 また、米国判例 を提起した事実はない。)においても、また、虚偽のテイクダウン申請に対する表現の自由の保護の観点においても、被告には本件URLを復元する義務があるというべきである。 また、米国判例「OnlinePolicyGroupv. DieboldInc.(2004)」(甲34。以下「判例2」という。)においては、虚偽のテイクダウン申請による悪意ある削除の場合や手続違反がある場合には、削除申立人に損害賠償責任がある旨の判断が示されている。本件において、原告が著作権を侵害した事実はなく、正当な削除申立人が存在しないことの確認を怠った被告に責任が 生ずるのは明らかであり、これに対応して、原告にはコンテンツ等の回復を サービス・プロバイダに請求する権利があるというべきである。 ⑶ 米国著作権局の「A2P2 ISSUEBRIEF: USCOPYRIGHTOFFICEREPORTONSECTION 512 MAY 2020」と題する報告書(甲35。以下「本件報告書」という。)においては、DMCA512条は、コンテンツの再掲載を要求する異議申立て通知を送信する機会を利用者に付与するもので、利用者は、その利 益を保護するためコンテンツの再掲載を要求できるとされているのであって、原告にコンテンツ等の回復をサービス・プロバイダに請求する権利がないとするのは誤りである。 ⑷ 仮に、虚偽のテイクダウン申請によるコンテンツ等の削除に対し異議申立て通知をしても、コンテンツ等を復元するか否かは事業者の任意であるとい うのであれば、利用者の権利や表現の自由が保障されないことになるし、著作権と表現の自由の保護をいうDMCAの趣旨にも反する。 (被告の主張)⑴ 本件の争点は、DMCA512条⒢項⑵節の規定がコ のであれば、利用者の権利や表現の自由が保障されないことになるし、著作権と表現の自由の保護をいうDMCAの趣旨にも反する。 (被告の主張)⑴ 本件の争点は、DMCA512条⒢項⑵節の規定がコンテンツ等の復元を免責の要件としているか否かではなく、原告が上記規定に基づきコンテンツ 等の回復を請求できるか否かである。本件記事は、DMCA512条⒢項⑵節の規定が、サービス・プロバイダがテイクダウン申請に基づいてコンテンツ等を削除した場合における、サービス・プロバイダの免責条件を定めていることをいうもので、サービス・プロバイダに一定の義務が生ずることをいうものではなく、原告の主張の根拠とはなり得ない。 ⑵ 判例1及び判例2に関する原告の主張内容は、意味不明といわざるを得ない。 原告は、判例1に関連して、DMCA512条⒢項⑴節に規定する「免責」と同項⑵節に規定する「義務」は不可分一体のものである旨の主張をするが、DMCA512条⒢項⑴節の規定は、責任免除が原則であることを、同項⑵ 節の規定は、例外的に責任免除の原則が適用されない場合があることを定め るもので、いずれもサービス・プロバイダの免責に関する規定である。 また、判例2は、サービス・プロバイダに対するコンテンツ等の回復請求とは無関係である。 ⑶ 本件報告書(甲35)は、米国著作権局が作成したものではなく、非営利団体(AuthorsAlliance)が同局の報告をまとめたもののようである。 いずれにせよ、本件報告書は、テイクダウン申請をサービス・プロバイダに送信することにより、サービス・プロバイダに対しコンテンツ等の削除を要求できることを説明するにすぎない。 第4 当裁判所の判断 1 当裁判所も、原告の請求は理由がなく、本件控訴は棄却す ロバイダに送信することにより、サービス・プロバイダに対しコンテンツ等の削除を要求できることを説明するにすぎない。 第4 当裁判所の判断 1 当裁判所も、原告の請求は理由がなく、本件控訴は棄却すべきものと判断 する。その理由は、原判決8頁22行目末尾を改行の上、次のとおり付加し、2のとおり、当審における補充主張に対する判断を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の1から3まで(原判決7頁4行目から9頁20行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 「 当事者が本件に係る法律行為の当時に選択した地の法が、米国法であることは、前記のとおりであり、本件においては、米国著作権法が準拠法となる(法の適用に関する通則法7条)。」 2 当審における本件URLの回復請求権の有無に関する補充主張に対する判断⑴ 原告は、利用者は、サービス・プロバイダに対し、DMCA512条⒢項 ⑵節に基づき、サービス・プロバイダの削除したコンテンツ等の回復を請求できることが、本件記事(甲23)や、判例1(甲33)、判例2(甲34)、本件報告書(甲35)において示されている旨の主張をする。 ⑵ しかしながら、DMCA512条⒢項は、同項⑴節において、コンテンツが著作権の侵害に当たると最終的に判断されるか否かにかかわらず、サービ ス・プロバイダが善意で行ったコンテンツ等の削除については原則として免 責されることを、同項⑵節は、サービス・プロバイダがテイクダウン申請に基づいて行ったコンテンツ等の削除については、原則として同項⑴節の適用はないが、サービス・プロバイダにおいて、異議申立て通知を受領し、そのことを速やかに削除申立人に通知した上、所定期間内にコンテンツ等の復元を行った場合(ただ 削除については、原則として同項⑴節の適用はないが、サービス・プロバイダにおいて、異議申立て通知を受領し、そのことを速やかに削除申立人に通知した上、所定期間内にコンテンツ等の復元を行った場合(ただし、サービス・プロバイダにおいて、削除申立人が異議 申立人に対し侵害行為の差止めを求める訴訟を提起した旨の通知を受領したときを除く。)には、同節の適用を認めることなどをそれぞれ規定するのであり、そうすると、DMCA512条⒢項⑵節の規定が、サービス・プロバイダにコンテンツを復元する義務があることを定めるものと解するのは困難である。 そして、このことは、本件記事(甲23)の内容(本件記事は、DMCA512条⒢項⑴節及び⑵節の規定するサービス・プロバイダの免責について説明するものである。)、判例1(甲33。判例1は、削除申立人の義務、損害賠償責任に関するもので、異議申立て通知後のコンテンツ等の復元に係るサービス・プロバイダの義務について明確な判断を示すものではない。) 及び判例2(甲34。判例2は、悪意で虚偽のテイクダウン申請をした削除申立人の責任に関するもので、サービス・プロバイダに対するコンテンツ等の回復請求について判断を示すものではない。)において示された各判断、本件報告書(甲35)の内容(本件報告書は、DMCA512条が、利用者にコンテンツの再掲載を要求する異議申立て通知を送信する機会を付与して いることをいうものである。)によって、左右されるものではない。 第5 結論よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官 主文 がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。 理由 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官森冨義明 裁判官菊池絵理 裁判官頼晋一
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