平成17(行コ)1 費用徴収処分取消等,債務不存在確認請求控訴事件(原審・札幌地方裁判所平成13年(行ウ)第1号(甲事件),第17号(乙事件))

裁判年月日・裁判所
平成17年7月29日 札幌高等裁判所 その他
ファイル
hanrei-pdf-14802.txt

判決文本文4,900 文字)

主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨(甲事件について) 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人保健福祉部長が控訴人に対して平成11年8月19日付けでした生活保護法78条に基づく費用徴収決定処分を取り消す。 3 被控訴人市長が控訴人に対して平成12年10月6日付けでした審査請求を却下する裁決を取り消す。 4 訴訟費用は,第1,第2審を通じ,被控訴人保健福祉部長及び被控訴人市長の負担とする。 (乙事件について) 1 原判決を取り消す。 2 控訴人と被控訴人市との間において,被控訴人保健福祉部長の平成11年8月19日付け費用徴収決定処分に基づく控訴人の被控訴人市に対する13万8390円の返還支払義務が存在しないことを確認する。 3 訴訟費用は,第1,第2審を通じ,被控訴人市の負担とする。 第2 事案の概要 1 控訴人は,生活保護を受けていたところ,転居に伴う住宅一時扶助として敷金及び仲介料(以下,単に「住宅扶助」という。)及び生活一時扶助として移送費(以下,単に「生活扶助」といい,「住宅扶助」と併せて「本件扶助」という。)の支給を受けた。被控訴人保健福祉部長は,平成11年8月19日付けで生活保護法(以下,単に「法」という。)78条に基づいて,控訴人に対し本件扶助にかかる13万8390円の支払を命ずる費用徴収決定処分(以下「本件処分」という。)をした。控訴人は,本件処分が同条の適用要件を満たさないなどの違法があるとして審査請求をしたが,被控訴人市長は,平成12年10月6日付けで,控訴人の審査請求は審査請求期間を徒過したものであるとして審査請求却下裁決(以下「本件裁決」という。)をした。 違法があるとして審査請求をしたが,被控訴人市長は,平成12年10月6日付けで,控訴人の審査請求は審査請求期間を徒過したものであるとして審査請求却下裁決(以下「本件裁決」という。)をした。 本件は,甲事件として,控訴人が,本件処分が同条の適用要件を満たさないから違法であるとして,被控訴人保健福祉部長に対してその取消しを求め,さらに,本件裁決が,行政不服審査法14条1項所定の審査請求期間の起算日を誤り,当該期間を経過したと判断していることの違法を理由に,被控訴人市長に対してその取消しを求め,乙事件として,予備的に,本件処分は,その違法が,重大かつ明白であって無効であることを前提として,控訴人の被控訴人市に対する本件処分に基づく費用支払義務が存在しないことの確認を求めたところ,原判決が,甲事件について,控訴人の被控訴人保健福祉部長に対する請求は,控訴人が,審査請求期間を経過して請求したため,適法な審査を経ていないことを理由として,訴えを却下し,被控訴人市長に対する請求は,同様の理由で棄却し,乙事件について,被控訴人市に対する請求は,本件処分が無効とはいえないとして棄却したことから,控訴人が控訴をした事案である。 2 前提事実及び争点は,以下のとおり改めるほか,原判決書「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の「2 前提事実」,「3 争点」のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決4頁19行目の次に行を改めて「なお,控訴人世帯における住宅扶助の家賃基準額は月額4万2000円である。」を加入する。 (2) 原判決書6頁21行目「原告は」から同頁23行目「であった。」までを削除し,「原告は,事情を知る不動産仲介業者が家賃月額を4万2000円と記載した重要事項説明書をAケースワーカーに渡し,同人が申請書を 判決書6頁21行目「原告は」から同頁23行目「であった。」までを削除し,「原告は,事情を知る不動産仲介業者が家賃月額を4万2000円と記載した重要事項説明書をAケースワーカーに渡し,同人が申請書を作成して,被控訴人保健福祉部長に提出した。」を加入する。 (3) 原判決書8頁17行目「転居する場合には」の次に「,その転居にかかる」を加入する。 (4) 原判決書8頁22行目「転居する場合に」の次に「は,その転居にかかる」を加入する。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の被控訴人保健福祉部長に対する請求を却下し,その余の控訴人の請求を棄却するのが相当であると判断する。その理由は,以下のとおり改めるほか,原判決書「事実及び理由」欄の「第3 争点に対する判断」の「1甲事件について」及び「2 乙事件について」のうち原判決書14頁17行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決書11頁13行目の次に行を改めて「ア控訴人世帯の担当ケースワーカーであったBは,控訴人が,本件処分にかかる保護費の返還を求めることについて,不満をもらしており任意では応じないことから,平成11年8月ころには,被控訴人保健福祉部長の名義で,本件処分を行わなければならない旨を控訴人に伝えていた。」を加入する。 (2) 原判決書11頁14行目の「ア」を「イ」に改め,「原告世帯の担当ケースワーカーであった」を削除する。 (3) 原判決書11頁17行目の「イ」を「ウ」に改める。 (4) 原判決書11頁24行目の「ウ」を「エ」に改める。 (5) 原判決書12頁3行目の「エ」を「オ」に改める。 (6) 原判決書14頁16行目から17行目までの「少なくとも」以下を「少なくとも『明白な瑕疵』に該当する 」を「エ」に改める。 (5) 原判決書12頁3行目の「エ」を「オ」に改める。 (6) 原判決書14頁16行目から17行目までの「少なくとも」以下を「少なくとも『明白な瑕疵』に該当するとはいえない。」に改める。 2 なお,控訴理由にかんがみ,付言する。 (1) 控訴人は,本件処分を知った日について,平成11年8月21日であるから,本件処分の審査請求をした同年10月19日は,審査請求期間内であったと主張する。 しかしながら,控訴人は,当時の担当ケースワーカーであったBなどから,再三にわたり,本件扶助にかかる保護費の返還を求められていたこと,本件通知書を交付することについて,Bから同年8月18日と19日に知らされていること,同月19日には,控訴人自らが玄関ドアの郵便受けから投函することを求めていること,現実に,同日,本件通知書が投函されたことが認められるところ,控訴人は,同日の帰宅時には,本件通知書の投函のことを失念しており,後日,下駄箱の下から発見して,本件通知書を見たとするが,上記認定のとおり,本件扶助にかかる保護費の返還を求められており,本件通知書に関しても,前日と当日の2回,その交付を告げられ,自ら投函することを求めていたことからすると,本件扶助にかかる保護費の返還を命じられるか否かは,控訴人にとっては重要な問題になっていたと考えるのが相当であり,それにもかかわらず,同日,控訴人が本件通知書の不存在に気がつかなかったとは到底考えられない。控訴人からBらに,本件通知書がどうなっているかの問い合わせがなかったこと,同月23日にC係長とBが控訴人宅を訪問し,審査請求についての教示を行った際にも,控訴人から,審査請求がいつまでできるかの点について質問がなかったことなどからすると,控訴人は,同月19日に ったこと,同月23日にC係長とBが控訴人宅を訪問し,審査請求についての教示を行った際にも,控訴人から,審査請求がいつまでできるかの点について質問がなかったことなどからすると,控訴人は,同月19日に本件通知書を受領したと考えるのが相当である。 なお,控訴人は,教示の際,同月20日を起算点とする旨説明がなされていないとするが,Bらは,同月19日に本件通知書を投函しているのであり,控訴人から特に起算点について質問を受けた様子はないから,同月20日を起算点とすることが当然の前提となっていたというべきであり,仮に審査期間の始期についての発言がなかったとしても,教示として違法なものとはいえない。 そうすると,審査請求の期限は,同年10月18日となるから,控訴人が同月19日にした審査請求は,期間を徒過した不適法なものというべきであって,控訴人の主張には理由がない。 さらに,控訴人は,本件通知書の投函が,玄関の郵便受けから行われるという常識を欠いたものであり,慎重さを欠いたものであることを指摘しているが,控訴人とBとの間で,本件通知書を玄関の郵便受けから投函することについては,前記のとおり,事前にやり取りをした上で決めていたのであるから,本件において,不相当であったということはできない。 (2) また,控訴人は,控訴理由として,本件処分の違法性について縷々主張しているが,これらは,いずれも,本件処分の取消事由になる余地があるとしても,少なくとも,本件処分について,いずれも明白な瑕疵があるということはできないから,これを採用できないことは明らかである。 すなわち,本件において,控訴人は,控訴人の主張によっても,Aケースワーカーから持ちかけられ,転居を決め,家賃基準額に合うように,事実とは から,これを採用できないことは明らかである。 すなわち,本件において,控訴人は,控訴人の主張によっても,Aケースワーカーから持ちかけられ,転居を決め,家賃基準額に合うように,事実とは異なる月額家賃4万2000円の重要事項説明書を持参のうえ,被控訴人保健福祉部長に対して生活保護変更申請書を提出して,本件扶助にかかる13万8390円の保護費を受領したのであり,控訴人が,実際の月額家賃は5万8000円であることを認識していたことは明らかであるから,家賃基準額を超過する住居に転居することの認識があるというべきである。そして,わざわざ家賃基準額に合わせる重要事項説明書を持参したのは,家賃基準額を超える住居であれば転居が認められないからであり,転居が認められない場合,転居に関連する給付(住宅扶助や生活扶助)も当然受けられないことになるのであって,控訴人には,そのことの認識もあったというべきである。控訴人の子供のぜんそく被害を回避するという転居の必要性があり,実質的に控訴人に利得が生じていないとしても,家賃基準額を超える住居への転居が認められない本件において,その転居のために支出した費用に充てるものとして支給された本件扶助にかかる保護費の返還を求めることが,明白に誤っているということはできず,被控訴人保健福祉部長の本件処分について,その瑕疵が明白であるということはできない。 3 また,控訴人は,控訴人が,生活保護の申請をした当初,被控訴人市のケースワーカーが控訴人に70万円を渡し,後に,その回収をしたこと(以下「70万円問題」という。)について,本件処分の背景になっている旨主張する。確かに,70万円問題については,被控訴人らにおいても,上記金銭の行き来があったことについて認めており,控訴人と当該ケースワーカーとの間で,不明朗な金 について,本件処分の背景になっている旨主張する。確かに,70万円問題については,被控訴人らにおいても,上記金銭の行き来があったことについて認めており,控訴人と当該ケースワーカーとの間で,不明朗な金銭の移動が行われた事実を認めることができる。しかし,70万円問題は,それ自体が当該ケースワーカーや被控訴人市等に何らかの責任を生じさせる余地がある問題であるとしても,控訴人において,結果として生活保護の申請が認められ,現実に扶助が行われている中で起きた本件処分とは別問題というべきであるから,本件訴訟において,70万円問題を採り上げる必要性は認められない。 4 以上によれば,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 札幌高等裁判所第2民事部 裁判長裁判官末永進 裁判官千葉和則 裁判官杉浦徳宏

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る