平成22(行コ)8 損害賠償請求控訴事件(原審・熊本地方裁判所平成13年(行ウ)第9号,差戻し前の控訴審・福岡高等裁判所平成16年(行コ)第22号)

裁判年月日・裁判所
平成23年5月24日 福岡高等裁判所 住民訴訟
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判決文本文49,654 文字)

- 1 - 主文 1 第1審判決のうち,控訴人敗訴部分を取り消す。 2 前項の部分に関する被控訴人P1を除くその余の被控訴人らの請求を棄却する。 3 訴訟の総費用(参加により生じた費用を含む。)は,被控訴人P1を除くその余の被控訴人らの負担とする。 4 本件訴訟のうち被控訴人P1に関する部分は,平成▲年▲月▲日同被控訴人の死亡により終了した。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨主文1ないし3項同旨第2 事案の概要(略語は第1審判決の表記による。) 1 事案の要旨本件は,八代市(市)が経営していたと畜場である八代市食肉センター(食肉センター)を廃止するに当たり,市が食肉センターの利用業者等に対してした支援金(本件支援金)の支出が違法であるなどとして,市の住民である被控訴人ら(第1審原告ら)が,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの)242条の2第1項4号に基づき,市に代位して,当時市長の職にあった控訴人(第1審被告)に対し,損害賠償として3億1209万5000円及びこれに対する不法行為の日(損害が発生した日)である平成12年8月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた住民訴訟の事案である。本件では,本件支援金の法的性格等が争点となり,この法的性格については,控訴人及び控訴人を被参加人として参加した控訴人参加人(控訴人ら)は,本件支援金は,行政財産である食肉センターの使用許可の取消しに伴う,国有財産法19条,24条2項の類推適用又は憲法29条3項に基づく損失補償金(以下,単に「補償- 2 -金」ということがある。)であり,仮にそうでないとしても地方自治法232条の2所定の補助金と解されるから,いずれにせよ,その支出は適法であ 法29条3項に基づく損失補償金(以下,単に「補償- 2 -金」ということがある。)であり,仮にそうでないとしても地方自治法232条の2所定の補助金と解されるから,いずれにせよ,その支出は適法であると主張し,他方,被控訴人らは,損失補償金又は補助金のいずれの要件も欠くものであり,その支出は違法であると主張した。 2 審理の経過(1) 第1審判決は,本件支援金は,補償金としての要件を欠き,また,これを地方自治法232条の2所定の補助金の支出として見ても,公益上の必要性という実体法上の要件を欠くほか,その支出は,八代市の市費補助等取扱要綱(市費補助等取扱要綱)に反し,流用が認められない場合であるから,手続上の要件も欠いているとして,本件支援金の支出は違法であり,利用業者等に対する3億1209万5000円の支出について控訴人には過失があるとした上で,遅延損害金の始期は本件支援金の利用業者等に対する各支払日であるとして,被控訴人らの請求について,3億1209万5000円及びうち3億0397万8000円に対する平成12年8月28日から,うち52万1000円に対する同年10月11日から,うち643万7000円に対する同年11月22日から,うち60万7000円に対する平成13年4月17日から,うち55万2000円に対する同年7月27日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容した。 これに対し,控訴人がその敗訴部分を不服として控訴したところ(被控訴人らの敗訴部分は,被控訴人らが控訴又は附帯控訴をしていないため,審理の対象とはならない。),控訴審(福岡高等裁判所平成16年(行コ)第22号。以下「差戻前の控訴審」という。)は,利用業者等は,食肉センターの業務休止当時,その利用に関し法的利益を有するといえる ,審理の対象とはならない。),控訴審(福岡高等裁判所平成16年(行コ)第22号。以下「差戻前の控訴審」という。)は,利用業者等は,食肉センターの業務休止当時,その利用に関し法的利益を有するといえるところ,控訴人が公益上の必要があるとして利用業者等に対してした本件支援金の支出は,その裁量権を逸脱し,不合理なものであると認めることはで- 3 -きず,違法とはいえないとして,被控訴人らの請求を棄却した。 (2) これに対し,被控訴人らが上告受理の申立てを行ったところ,最高裁判所は,上告を受理した上,次のとおり判断した。 ア国有財産法は,普通財産を貸し付け,その貸付期間中に契約を解除した場合の損失補償を規定し(同法24条2項),これを行政財産に準用しているところ(同法19条),同規定は地方公共団体の行政財産の使用許可の場合に類推適用されることはあるとしても,差戻し前の控訴審が確定した事実関係等によれば,行政財産である食肉センターの利用資格に制限はなく,利用業者等と市との間に委託契約,雇用契約等の継続的契約関係はないから,単に利用業者等が食肉センターを事実上,独占的に使用する状況が継続していたという事情をもって,その使用関係を国有財産法19条,24条2項を類推適用すべき継続的な使用関係と同視することはできない。 また,財産上の犠牲が一般的に当然受忍すべきものとされる制限の範囲を超え,特別の犠牲を課したものである場合には,憲法29条3項を根拠としてその補償請求をする余地がないではないが,上記のとおり,利用業者等は,市と継続的契約関係になく,食肉センターを事実上独占的に使用していたにとどまるから,利用業者等がこれにより享受してきた利益は,基本的には,食肉センターが公共の用に供されたことの反射的利益にとどまるものと考えられる。そして,前記 センターを事実上独占的に使用していたにとどまるから,利用業者等がこれにより享受してきた利益は,基本的には,食肉センターが公共の用に供されたことの反射的利益にとどまるものと考えられる。そして,前記事実関係等によれば,食肉センターは,と畜場法施行令の改正等に伴い必要となる施設の新築が実現困難であるためにやむなく廃止されたものであり,そのことによる不利益は住民が等しく受忍すべきものであるから,利用業者等が食肉センターを利用し得なくなったという不利益は,憲法29条3項による損失補償を要する特別の犠牲には当たらないというべきである。 そうすると,本件支援金の支出は,国有財産法19条,24条2項の- 4 -類推適用又は憲法29条3項に基づく損失補償の支出としては,適法なものであるとはいえない。 したがって,差戻前の控訴審が本件支援金の法的性格を損失補償と解していたとすれば,その支出が違法であるといえないとした同控訴審の判断には,法令の違反がある。 イ他方,本件支援金の支出が実質的には補助金の支出としてされたものであり,その支出に公益上の必要があることがうかがわれるとしても,それが補助金の支出として適法なものであるというためには,「補償,補填及び賠償金」の節に計上されていた本件支援金を補助金と解することにより,実質的に議会による予算統制の潜脱となるような違法な予算執行を許容するに等しい結果をもたらさないか否か等について審理,判断する必要があり,本件支援金が他に流用されるおそれがないとする点も,本件支援金の支出方法が市費補助等取扱要綱の趣旨を損なうものではないかという点を含めて説示されるべきである。したがって,上記控訴審が本件支援金の法的性格を補助金と解していたとすれば,その支出に合理性及び公益上の必要があることなど上記控訴審摘示の諸 うものではないかという点を含めて説示されるべきである。したがって,上記控訴審が本件支援金の法的性格を補助金と解していたとすれば,その支出に合理性及び公益上の必要があることなど上記控訴審摘示の諸事情のみを理由に,本件支援金の支出が違法であるといえないとした上記控訴審の判断には,審理不尽の結果,法令の解釈の適用を誤った違法がある。 ウ以上のとおり,差戻前の控訴審の判断には,いずれにせよ判決に影響を及ぼすことが明らかな違法があり,同控訴審の判決は破棄を免れず,上記説示した点等を踏まえて審理・判断を尽くさせるため,本件を控訴審に差し戻すこととする。 (3) 以上からすると,当審において判断すべき争点は,次の点であり,本件支援金を補償金として支払うことを前提とする争点(本件支援金を補償金として支払う人的対象が適切であったか,本件支援金を補償金として支出する- 5 -際の算出方法が適切であったか)については判断を要しない。 ア本件支援金の支出が,補助金(地方自治地方232条の2)の支出として適法であるか否か(争点4)イ本件支援金の支出により,市に損害が発生したか(争点5)ウ控訴人の故意,過失の有無(争点6) 3 争いのない事実等並びに争点及び争点に関する当事者の主張(1) 争いのない事実等並びに争点及び争点に関する当事者の主張は,後記(2)で補正し,同4で差戻前の控訴審及び当審で付加された当事者の主張を加えるほか,第1審判決の「事実及び理由」欄の第2の1,2(ただし,①ないし③を除く。),第3の4ないし6のとおりであるから,これを引用する(以下,第1審判決を摘示ないし引用するときは,「第1審判決第2の1」のように表示する。なお,当審で補正があるときは,それによる。)。 (2) 第1審判決の補正ア 3頁4行目の「平 を引用する(以下,第1審判決を摘示ないし引用するときは,「第1審判決第2の1」のように表示する。なお,当審で補正があるときは,それによる。)。 (2) 第1審判決の補正ア 3頁4行目の「平成14年3月1日まで」を「平成2年4月13日から平成14年3月1日まで」と,4頁9行目の「市農政課」を「市産業振興部農政課」と,同15行目の「利用業者ら」を「利用業者」と,5頁1行目の「存続してもらいたい旨の」を「存続してもらいたい旨」と,同3行目の「平成12年3月31日,」を「前記(原判決第2の1(2)エ)のとおり,改正されたと畜場法施行令に定められた基準を期限である平成12年3月31日までに満たすことができなくなったため,同日,」と,同5行目の「決済し」を「決裁し」と,同6行目の「及びと殺業務従事者ら」を「並びに食肉センターで稼働すると殺業務従事者及び内臓洗い従事者(以下,「と殺業務従事者ら」といい,利用業者とと殺業務従事者らとを併せて「利用業者等」という場合がある。)」と,同21行目の「と畜場法」を「と畜場法(平成15年法律第55号- 6 -による改正前)」と,同22行目の「食肉に」を「食用に」とそれぞれ改め,6頁2行目の末尾に改行の上,次のとおり加える。 「(6) 八代市の市費補助等取扱要綱(以下「市費補助等取扱要綱」ということがある。)について(甲8の1ないし3)ア市は,次の内容の市費補助等取扱要綱(昭和26年10月5日庁達第5号(改正・昭和37年5月25日訓令甲第8号))を定めている。 第1条市費の補助等をなす場合においては、法令に定めるものの外、本要綱によって取扱うものとする。 第2条市費の補助を受けようとするものは、補助申請書に、次に掲げる書類、若しくは之に準ずる書類を添付して市長に提出しなければならない。 、法令に定めるものの外、本要綱によって取扱うものとする。 第2条市費の補助を受けようとするものは、補助申請書に、次に掲げる書類、若しくは之に準ずる書類を添付して市長に提出しなければならない。 (1) 当該年度に属する収支予算書(2) 事業の計画並、その実施方法の説明書(3) 前号各号の外定款、会則、その他事業経営に関する書類及び市長において必要と認める書類第3条市長において公益上補助支出を必要と認めたときは,次の事項を記載した指令書(同要綱の別紙様式第1又は第2)を交付する。 (1) 補助金額(2) 補助交付の目的(3) 執行及び監督上必要と認めた事項第4条補助金の交付を受けたものに対しては、会計年度経過後2か月以内に精算書を提出させなければならない。 イ市費補助等取扱要綱の第3条の「指令書」の「別紙様式第1」には,補助の条件として,(1)本補助金は目的以外に使用してはな- 7 -らない,(2)本事業の計画変更等がある場合は事前に承認を受けなければならない,(3)本補助金の使途が不適当と認めたときは,本補助金の全部又は一部の返還を命ずることがある,(4)本補助金の精算書は速やかに提出しなければならない,(5)本補助金については八代市監査委員の監査がある旨記載され,「別紙様式第2」には,補助の条件として,上記(2)を除く条項が記載されている。」イ 6頁8行目の「地方自治地方」を「地方自治法」と,12頁24行目の「明か」を「明らか」と,13頁24行目の「地方自治地方」を「地方自治法」とそれぞれ改め,19頁8行目及び同12行目の各「被告」をいずれも「控訴人ら」と改める。 ウ 34頁(別表)の番号8,9の各「内蔵洗い従事者」をいずれも「内臓洗い従事者」と改める。 4 差戻前の控訴審及び当審で付加さ 8行目及び同12行目の各「被告」をいずれも「控訴人ら」と改める。 ウ 34頁(別表)の番号8,9の各「内蔵洗い従事者」をいずれも「内臓洗い従事者」と改める。 4 差戻前の控訴審及び当審で付加された当事者の主張(1) 本件支援金の支出が,補助金(地方自治地方232条の2)の支出として適法であるか否か(争点4)について(控訴人ら)ア本件支援金を損失補償金として支出することの法的根拠がないとしても,次のとおり,本件支援金の支出は,地方自治法232条の2所定の補助金としての要件を充足する。 イ公益上の必要性について本件支援金の支出について,次のとおり,公益上の必要性が認められる。 (ア) 食肉の安定供給利用業者等に本件支援金を支出したことが八代市民への食肉の安定供給という目的があったといえることは,第1審判決第3の4(被告らの主張)(1)のとおりである。 - 8 -(イ) 小売価格への転嫁の防止食肉センターの廃止により,利用業者らが営業を継続しようとする場合,遠方のと畜場を利用せざるを得ないなどの状況が生じ,その結果経費が増大して,その負担の全部又は一部が一般消費者の小売価格に転嫁されることが容易に推測されるところ,この点から一般消費者の利益を害する可能性があり,他方,八代市内の業者が廃業し,遠方の業者が食肉を供することになった場合も同様の可能性があったため,これを防ぐ必要があった。 (ウ) 産業の衰退の防止等利用業者等は,先代ないし先々代から引き続いて食肉センターを利用して,と殺業ないし食肉供給業に従事して生計を立ててきたこと,食肉センターの施設設備の歴史的経緯(同和対策事業対象地域),食肉センターは八代市唯一のものであり,同市外における他のもので代替できないことからすれば,市としては,食肉センター 計を立ててきたこと,食肉センターの施設設備の歴史的経緯(同和対策事業対象地域),食肉センターは八代市唯一のものであり,同市外における他のもので代替できないことからすれば,市としては,食肉センターの廃止により経費が増大等することによって,廃業の方向に追い込まれていく利用業者等を漫然と放置し,同和対策事業対象地域の産業が衰退していくことを行政として座視することはできず,同地域の産業の振興や職業の安定のため,ひいては対象地域住民の社会的経済的地位の向上のため,利用業者等を救済することは,行政としての役割であるというべきである。 (エ) 財政負担の回避従前,食肉センターの特別会計は,毎年一般会計からの繰入れにより,赤字を補填していた状況にあり,市としては,財政健全化のために何らかの対策を講ずることが必要であったところ,本件支援金の支出により,利用業者等から食肉センターの廃止について同意を得ることができ,円満にその廃止が可能となり,これによって上記繰入れが- 9 -不要となったため,将来にわたり,食肉センターに対する市の財政的負担がなくなったことからすると,本件支援金の支出は,市の財政健全化に大きく寄与したといえる。 ウ本件支援金を補助金と解することにより,実質的に議会による予算統制の潜脱となるような違法な予算執行を許容するに等しい結果をもたらさないことについて(ア) 本来補助金として予算計上して議会において説明された内容が,予算議決を得たいがための虚偽のものであった場合には,本件支援金の支出が違法であると認められる余地もあり得るが,本件支援金についてはこれに当たらず,補助金として支出することが議会による予算統制の潜脱とならないことは,市議会経済企業委員会や市議会における担当部課長らの詳細かつ真摯な説明内容(乙19,40, ,本件支援金についてはこれに当たらず,補助金として支出することが議会による予算統制の潜脱とならないことは,市議会経済企業委員会や市議会における担当部課長らの詳細かつ真摯な説明内容(乙19,40,47,52,59,61)から明白である。 (イ) 市(農政課)が,本件支援金の歳出予算の節を損失補償金として計上するに至った理由は,①本件支援金は,利用業者の責めに帰することのできない事由(市側の事由)により,利用業者において通常ならば必要なかった負担を生じさせるものであることから,その負担に対する市の支援として支出するものであり,その本質は補償に相当すると考えられる,②補助金としての支出についても議論されたが,利用実績が少ない業者については,他の業者に依頼して業務を行うものと予想されるが,食肉センターの業務休止により業務を止めざるを得ない事例も考えられるため,補助事業として捉えることは困難である,③業務を継続する業者(利用実績の多い業者)に対しては補助金,業務を止めざるを得ない業者に対しては補償金を支給することとした場合,業務を継続するか否かは将来の事柄に属する問題であって,市においてその判断判別は困難を極めることから,一律に補償金- 10 -として扱うというものであって,相応の合理性があり,この点からも議会による予算統制を潜脱しようとしたものではないことが認められる。 (ウ) 市議会経済企業委員会や市議会において,議員らは,本件支援金が補助金としての性質を併有することを十分に了解の上,それを前提として審議したことがうかがわれる。例えば,議会における審議の際の文言には,「補助」(乙19の9,10・16頁),「支度金的な意味合い」(乙47・88頁,乙52・7頁),補助金(乙40・8頁,乙52・10頁)という表現が使用されている。こ 議会における審議の際の文言には,「補助」(乙19の9,10・16頁),「支度金的な意味合い」(乙47・88頁,乙52・7頁),補助金(乙40・8頁,乙52・10頁)という表現が使用されている。このような議論の中,一部の議員から本件支援金が一括支払とされていることや支給された本件支援金の使途について市による確認が行われないことを疑問とする意見も述べられたが(乙40・7頁ないし9頁),これに対し,産業振興部長等は,本件支援金は,各利用業者がその事業を継続するに当たって,必要とされる施設整備の範囲や事情が異なるため,かかる施設整備に必要として試算される相当額を算定するものであるから,一括支払が適当であると考えており,また,本件支援金は,事後の精算や使途の確認を要する補助金とは異なるもので,利用業者が他地域のと畜場を利用して事業継続していく上では,想定しない経費等が生じることもあるから,市が本件支援金の使途について最終的な確認をすることはできない旨説明した(乙40・8,9頁)。 このような実質的な議論を経た上で,本件支援金に関する歳出予算案が最終的に市議会において可決されたものであり,本件支援金を補助金と解することが,決して実質的に議会による予算統制の潜脱となるような違法な予算執行を許容するに等しい結果をもたらすものではないというべきである。 エ本件支援金が他に流用されるおそれがなく,本件支援金の支出方法が- 11 -市費補助等取扱要綱の趣旨を損なうものではないことについて(ア) 市費補助等取扱要綱の趣旨について市費補助等取扱要綱は,その制定及び改正について,関係書類が保存されていないため,その経緯等が不明である。しかしながら,地方公共団体が補助金を支出するに当たって要綱等を制定する趣旨は,一般的には,手続を明確にすること ,その制定及び改正について,関係書類が保存されていないため,その経緯等が不明である。しかしながら,地方公共団体が補助金を支出するに当たって要綱等を制定する趣旨は,一般的には,手続を明確にすることによって,地方公共団体の公金の支出がずさんになることを防止することにあると考えられ,市費補助等取扱要綱の趣旨も基本的にこの点にあると考えられる。同要綱の各条項を見ると,第2条の1,2号は,補助事業の目的,内容及び実施方法が妥当か否か並びに補助金の算出金額が適正か否かを調査する趣旨,同3号は,事業者が公金の支出対象者として問題がないか否かを確認する趣旨,第3条は,補助金交付の目的を明らかにするとともに,補助金がその目的に沿って使用することを担保する趣旨,第4条は,補助金が交付の目的に沿って適正に使用されたことを事後的に確認する趣旨であると解される。 (イ) 本件支援金の支出方法が市費補助等取扱要綱の趣旨を損なうものでないことについてa 本件支援金は,損失補償金として支出されたものであるため,市費補助等取扱要綱第2条ないし第4条の手続はとられていない。しかしながら,本件支援金は実質的には補助金として支出されたものであるところ,次のとおり,本件支援金の支出方法は,同要綱の各条項の趣旨を損なうものではないというべきである。 b 第2条関係(a) 本件支援金支出の直接の目的は,食肉センターを利用してきた業者が事業を継続するための支援と,食肉センターの廃止により失業を余儀なくされると殺業務従事者らの生活の支援であ- 12 -る。このことは,本件支援金の支払に関する各契約書(乙66ないし71。以下「本件各契約書」という。)に明記されている。 (b) 市は,利用業者等と食肉センター廃止について協議をしたが,その中で,利用業者等は事業継続のた 援金の支払に関する各契約書(乙66ないし71。以下「本件各契約書」という。)に明記されている。 (b) 市は,利用業者等と食肉センター廃止について協議をしたが,その中で,利用業者等は事業継続のための支援として公金の支出を求めているが,これは,第2条の補助申請に相当する。 (c) 市は,本件支援金の額を算定するために,利用業者らが事業を継続する場合に必要となる設備や経費について聞き取り調査を行っているが,これは,事業者から事業計画や実施方法の説明を受けたものということができ,2号の事業計画書及び実施方法説明書の添付に相当する。 (d) 市は,事業継続のため必要となる設備等の経費を,利用業者への聞き取り調査を参考にしつつ,独自に調査・検討して本件支援金の額を決定しているが,これは支援金額の適正を図ったものということができる。 (e) 食肉センターを利用していた事業者は,長年にわたり利用してきた特定の利用業者に限られており,市としても,事業者の事業遂行能力,事業実績,経営形態等についてよく承知しており,公金の支出対象者として何ら問題がないことは既知の事柄であった。 c 第3条関係(a) 上記b(a)のとおり,本件各契約書には本件支援金の目的が記載されているが,これは,第3条に規定する指令書における「補助交付の目的」の記載に相当する。 (b) 本件各契約書に,本件支援金はその趣旨に沿って使用するものとする旨記載されているが,これは,上記指令書における「執行及監督上必要と認めた事項」の記載に相当し,本件支援金の支- 13 -出の趣旨が損なわれないよう使途に関する制限を設けたものである。 d 第4条関係市は,平成15年11月10日から17日にかけて本件支援金の支給を受けた業者のうち,施設整備等,均等・頭数割で支給を受け が損なわれないよう使途に関する制限を設けたものである。 d 第4条関係市は,平成15年11月10日から17日にかけて本件支援金の支給を受けた業者のうち,施設整備等,均等・頭数割で支給を受けた6業者に対し,本件支援金の使途について聞き取り調査を実施したが,これは第4条の精算書の提出に相当する。 なお,上記調査の結果は,本件支援金が事業継続に必要な設備費や諸経費に支出されたことを示すものであった。 (ウ) 本件支援金の目的外使用禁止への配慮について本件支援金は,事業継続に必要な設備・経費等をあらかじめ調査した上で,一括して交付されたことから,本件支援金の支出時にはその使途が確定していなかったため,上記(イ)bのとおり,本件支援金支出の趣旨が損なわれないように本件各契約書に使途の制限に関する記載がされた。 さらに,市は,本件各契約書の別紙において,車両等の施設設備を要する規模の大きな事業者に対しては,支援金の額の算定根拠となった事業継続に必要な各種運搬車,冷凍車等の購入費用等の例を示し,この趣旨に沿って使用するよう求めている。 なお,と殺業務従事者らには,失業に伴う生活支援として支出しているため使途に関する記載はない。 (エ) 本件支援金の使途についての調査について市は,平成15年11月に利用業者に対して聞き取り調査を行ったが,これは,本件支援金が補助金の形式で交付されたものではなかったため,精算手続が課されなかったこと,また,一括交付により実際の使途が確認されないことの懸念が市議会で問題となったこと,さら- 14 -に,本件各契約書において使途に関する記載があることから,本件支援金の支出から一定期間を置いて,その使途の調査,確認を行ったものである。 また,市は,平成22年4月末に改めて利用業者等に対し詳細な調査 件各契約書において使途に関する記載があることから,本件支援金の支出から一定期間を置いて,その使途の調査,確認を行ったものである。 また,市は,平成22年4月末に改めて利用業者等に対し詳細な調査を行ったところ(丙11ないし25),調査が不能な者もいたが,本件支援金は,他に流用されることなく,ほぼ適正に使用されており,その支出が市費補助等取扱要綱の趣旨を損なうものでなかったことが判明した。なお,この調査により,本件支援金を受給した後,利用業者等10名はいずれも事業を継続したが,うち3名は死亡により廃業し(丙17,19,20),2名は本人は死亡したものの,家族により事業が継続されていること(丙15,21)が判明し,このことは,本件支援金の支給について,事業の継続に対する支援という所期の目的が達成されたことを意味している。 (オ) 市議会経済企業委員会委員長の「使途への確認を考えていない」旨の答弁について市議会定例会における委員会の審議報告の中で,市議会経済企業委員会委員長が,市議会経済企業委員会で,市の執行部から使途への確認は考えていない旨の答弁があった旨報告し,また,総務委員会委員長が,総務委員会で,市の執行部から最終的な支出を市がチェックすることができない旨の意見があった旨報告している。市議会経済企業委員会において,市の執行部は支援金を一括交付する旨の発言を行っているところ,同委員会の議事録に,執行部が市議会経済企業委員会委員長が述べるような発言をした記録はなく,議員から「一括交付をすれば実際の使途を確認せずに支払うことになる」旨の意見があったことから,同委員長が,執行部の上記発言を上記のとおり意訳したものとも考えられるが,総務委員会委員長の上記報告内容に照らす- 15 -と,市の執行部が上記のような発言をした可能性を否 意見があったことから,同委員長が,執行部の上記発言を上記のとおり意訳したものとも考えられるが,総務委員会委員長の上記報告内容に照らす- 15 -と,市の執行部が上記のような発言をした可能性を否定することはできない。 そこで,市の執行部の上記発言の趣旨について検討するのに,本件支援金の一括交付は,将来必要となると予想される経費に対する支援金をあらかじめ支払うものであるから,支出時点で実際の使途を確認することができないのは当然であり,また,本件支援金の給付を受けた者がその受領後直ちに使用を完了するとも限らず,むしろ相当期間にわたって使用することも予想されることから,後に使途を確認するとしても,完全に確認することは時間的な問題からほとんど困難と考えられるなど,使途の完全な確認が不可能と考えられることから,そのような趣旨で,「使途への確認は考えていない」,「チェックすることができない」といった発言をしたものと解するのが自然である。 実際には,市は,本件支援金の支出後一定期間が経過した後に,平成13年1月の八代市監査委員会の検査結果における指摘や本件各契約書の使途制限に関する記載を踏まえた上で,可能な範囲で本件支援金の使途の調査・確認を行っている。 (被控訴人ら)ア控訴人は,差戻前の控訴審において,本件支援金の支出は,補助金支出の要件を備えているから適法である旨の主張を撤回した(以下「本件第1撤回」という。)にもかかわらず,その後,本件第1撤回自体を撤回(「本件第2撤回」という。)して,上記主張を維持したところ,これは信義則に違反する上,時機に後れた攻撃防禦方法の提出であるから,被控訴人らは本件第2撤回について同意しない。 イ本件支援金の支出は,次のウ,エのとおり,これが補助金として支出されたものであるとしても,違法である 上,時機に後れた攻撃防禦方法の提出であるから,被控訴人らは本件第2撤回について同意しない。 イ本件支援金の支出は,次のウ,エのとおり,これが補助金として支出されたものであるとしても,違法である。 ウ公益上の必要性について- 16 -本件支援金の支出に公益上の必要性があるといえるためには,補助金の目的・必要性・目的達成のために効果があるかについて厳密に検討する必要があるところ,このような見地からすれば,次のとおり,本件支援金の支出について,公益上の必要性は認められない。 (ア) 食肉の安定供給本件支援金の支出に上記目的がないことは,第1審判決第3の4(原告らの主張)(1)アないしエのとおりである。 (イ) 小売価格への転嫁の防止控訴人は,小売価格への転嫁の防止の必要性を強調するが,実際にそのための調査も検証の指示もされていない。上記(ア)のとおり,食肉センターで処理される肉牛の量は,八代市民への食肉供給量のわずかを占めるにすぎないから,利用業者等が別の施設を利用することによりその経費が増大しても,八代市民への影響は少ない上,仮に価格に転嫁されれば,自由競争市場においては,八代市民がその商品を選択しなくなるだけにすぎず,食肉価格への転嫁をもって,公益上の必要性があることにはならない。 (ウ) 産業の衰退の防止等本件支援金の支出が同和対策事業の一環として行われたのであれば,その支出に当たって,八代市同和対策事業審議会設置条例で設置された同和対策事業審査会で審議されることを要するところ,同審査会での審議は一切行われていない。 また,P2産業振興部長(以下「P2」又は「P2産業振興部長」という。なお,同人が産業振興部長の地位にあったのは平成11年4月から平成14年3月までの間である。),P3産業振興部農政課長(以 。 また,P2産業振興部長(以下「P2」又は「P2産業振興部長」という。なお,同人が産業振興部長の地位にあったのは平成11年4月から平成14年3月までの間である。),P3産業振興部農政課長(以下「P3」又は「P3農政課長」という。なお,同人は平成10年5月以降同課長の地位にある。)及び控訴人本人も,本件支援金の- 17 -支出が同和対策事業に関するものである旨証言又は供述をしていない。同人らの市の執行部は,本件支援金支出の当時,同和対策事業との関連を全く認識しておらず,そのため,上記条例の適用を全く検討していない。 利用業者等への本件支援金の支給が同和対策事業の一環としてされたものではないことは,弁護士照会に対し,市が,これを否定する回答をしていること(甲13の1),上記事業が本件支援金の支出の根拠であることについて,控訴人が第1審において本件に関する内部書類の全部であるとして提出した書証の中にその旨の記載がなく,また,控訴人らが第1審において主張することもなかったこと,控訴人又は市において,本件支援金の支給対象者が同和対策事業の対象者であることを確認したり,支給対象者をそれらの者に限定する旨検討しておらず,本件支援金の受給者の中には同和対策事業の対象地域とは無関係の者がいること等から見て,明らかである。 以上のとおり,控訴人ら主張の産業の衰退の防止等をもって,公益上の必要性があるとすることはできない。 (エ) 財政負担の回避食肉センターは,前記(第1審判決第2の1(2)キ)のとおり,施設としての稼働が平成12年3月31日時点で既に休止し,と畜場法施行令等により,その再開が予定されておらず,利用業者等による利用も停止していたから,同日時点で,食肉センターを稼働させることによって,これ以上の赤字が発生し,市の一般会計か で既に休止し,と畜場法施行令等により,その再開が予定されておらず,利用業者等による利用も停止していたから,同日時点で,食肉センターを稼働させることによって,これ以上の赤字が発生し,市の一般会計からこれを補填することを要する事態は消滅しており,さらに,市には食肉センターを新施設として建て直す義務が利用業者等との関係でもなかったことからすると,財政負担の回避は本件支援金の支出の根拠となるものではない。 - 18 -むしろ,本件支援金は,法令上の根拠がないにもかかわらず,食肉センターの利用業者等から繰り返された金銭の要求を封じるために支払われるものにすぎず,その支出について公益上の必要性は認められない。 エ当初,議会で歳出承認を得た支出内容が違法であったこと控訴人らは,本件支援金の支出が損失補償金の支出としては法的根拠を欠くものであったとしても,歳出予算の区分のうち節間の流用となる補助金の支出としては,適法であると主張する。 しかし,予算の流用の場合,議会で歳出承認を得た支出内容は適法であることを前提とする。ところが,本件では,本件支援金を損失補償金とすることは違法であり,本件支援金を損失補償金として市議会で承認すること自体が,支出の根拠を欠く歳出を認めたという意味で,違法・無効であるというべきである。したがって,本件支援金の支出は,議会の適法な歳出予算の承認を経ずにされたものであるから,違法である。 オ議会の予算統制の潜脱について(ア) 控訴人は,本件支援金について,これを歳出予算の費目のうち節間の流用により補助金として支出するものではなく,損失補償金として支出しているが,このような支出方法は,実質的に議会による予算統制の潜脱となる違法な予算執行を許容する結果となるものであって,違法である。 (イ)a 控訴人ら 出するものではなく,損失補償金として支出しているが,このような支出方法は,実質的に議会による予算統制の潜脱となる違法な予算執行を許容する結果となるものであって,違法である。 (イ)a 控訴人らは,議決科目が共通であれば,執行科目が異なっても,議会の議決は有効であると主張するが,その主張は,次のとおり失当である。 b 地方自治法は,220条2項において,歳出予算の経費の金額につき,各款の間又は各項の間において流用できないと規定し,目節間における予算の流用を一般的に禁止する規定を設けていないもの- 19 -の,これを積極的に許容する規定を設けるものではないところ,その趣旨は,執行機関が,予算その他の議会の議決に基づく事務等を誠実に管理し,執行する義務を負っていること(同法138条の2)を前提とした上で,予算議決時の事情がその後変化し,あるいは,その後新たな事情が判明したことにより,予算の流用を一定の範囲で許容しなければ,臨機に適切な予算執行を実現することができない場合に対処するために,予算の流用を目節間に限りやむを得ない手段として許容したものと解される。 c 本件における検討(a) 予算審議について損失補償金と補助金とでは,予算案の審理におけるその提案根拠及びその対象が異なることは,第1審判決第3の4(原告らの主張)(2)イのとおりである。 本件支援金については,市議会の歳出予算審議では,一貫して補助金ではなく,損失補償金として審議されていたのであり,これを補助金として扱うことは,議会の予算統制を潜脱して議決がされたことになり,その違法性は,これを払拭できない程度に重大であるというべきである。 (b) 決算の認定について控訴人は,本件支援金について,平成12年7月31日に損失補償金の支出として決裁しており,また り,その違法性は,これを払拭できない程度に重大であるというべきである。 (b) 決算の認定について控訴人は,本件支援金について,平成12年7月31日に損失補償金の支出として決裁しており,また,議会に対し,同年度の決算において「補償,補填及び賠償金」として支出した旨報告し,市議会からその旨の認定を受けている。しかし,市議会による上記のような認定は,市議会において本件支援金が補助金として支出されたことの当否を審議する機会を奪われ,議会の予算統制機能が事後的にも阻害された結果によるものである。 - 20 -なお,本件支援金は翌年度に繰越があったが,これについても,損失補償金として,議会による予算の承認及び決算の認定を受けている。 (c) 以上によれば,本件支援金を補助金としてその支出を認めることになれば,議会の予算統制の潜脱となるものである。 カ本件支援金の支出方法が市費補助等取扱要綱の趣旨を損なうこと(ア) 市費補助等取扱要綱の趣旨について市費補助等取扱要綱は,補助金の支出に当たって,補助を受ける者に対し,公益上補助金の支出の必要性を判断させる資料を提出させる(第2条)とともに,補助金交付の目的外使用の禁止,不適切使途の場合の返還義務,精算書の提出義務,監査委員による監査応諾義務を了解することを条件とすること(第3条,第4条)を定めている。 これによれば,市費補助等取扱要綱は,市が市費から補助金を支出するに際しては,その公益性,必要性を判断するために補助を受ける者が市に提出すべき必要書類を定め,補助金支出の判断の公平性・透明性を高めるとともに,恣意性を排除する機能を有する。 また,目的外使用を禁じ,不適切な使途の場合に返還義務を課すことにより,補助金支出の公益性を確保する機能を有する。 さらに,会計年度経過後2か 明性を高めるとともに,恣意性を排除する機能を有する。 また,目的外使用を禁じ,不適切な使途の場合に返還義務を課すことにより,補助金支出の公益性を確保する機能を有する。 さらに,会計年度経過後2か月以内の精算書の提出並びに自治体の財務に関する事務の執行及び経営に係る事業の管理を監査することを職務とする監査委員(地方自治法199条1項)による監査の対象とすることで(同条7項),補助金支出の適正を確保することとしている。また,監査委員は,監査の結果を議会に報告し,かつ公表しなければならないから(同条9項),議会は,補助金支出の適法性について,事後的な検証を行うことも可能となり,これによって,補助金支出に対する議会の予算統制権をより強固にする機能も果たしている。 - 21 -(イ) 本件における検討a 本件支援金の支出について,これが補助金の支出として議会に提案され,審議される場合,議会は,本件支援金が,市費補助等取扱要綱に従って取り扱われることを前提に審議をし,目的外使用の禁止や不適切な使途の場合の返還義務の制約があり,事後的にも精算書の提出や監査委員による監査により補助金が適法に使用されたか否かの報告を受けることを前提に,審議することになる。 しかし,本件支援金は,市議会に補償金の支出予算案として提案され,また,利用業者等から,市費補助等取扱要綱2条に規定する補助申請書が提出されていないため,本件支援金の支出時における公益性の審議が行われず,本件支援金の受給者に対し,補償金の目的外使用を防止する義務,その使途の報告義務が課されず,監査委員の監査の対象から除外される結果,議会において補助金が適法に使用されたか否かを確認することを不可能としている。 結局,本件支援金を補助金と解したとしても,その支出に当たって,議会の補助金支出 委員の監査の対象から除外される結果,議会において補助金が適法に使用されたか否かを確認することを不可能としている。 結局,本件支援金を補助金と解したとしても,その支出に当たって,議会の補助金支出に対する予算統制権を潜脱する違法な予算執行をもたらしている。 加えて,本件支援金を補助金として扱わなかったため,本件支援金の受給者に対し,上記各義務を課すことができず,監査委員による監査が行われないことになっており,本件支援金の支出は,公益上の必要がある場合に限ってその支出を認めた地方自治法232条の2及びその具体化である市費補助等取扱要綱の趣旨を没却する違法な行為である。 b なお,控訴人らは,本件各契約書(乙66ないし71)に本件支援金の使途が明記されている旨主張するが,本件各契約書は平成12年8月2日付けで起案されており,議会で本件支援金の支出予算- 22 -案が可決されたのがこれに先立つ同年6月23日であるから,本件各契約書をもって,議会の予算統制権を潜脱していないことの根拠とはならない。 また,控訴人らは,平成15年11月に行った聞き取り調査が市費補助等取扱要綱第4条の精算書の提出に相当する旨主張するが,同規定は会計年度経過後2か月以内に精算書を提出するよう定めるものであって,上記聞き取りは時期的に遅きに失し,同要綱の趣旨に適合しない。さらに,平成22年5月のアンケートによる調査については,本件支援金の受給者から提出されるべき補助申請書に事業の計画等の記載がないため,アンケートの回答内容をもって適正な補助金の支出か否かの判断ができない上,調査対象者のうち1名を除き,その領収証等が保管されていない状態であったことからして,本件において市費補助等取扱要綱の趣旨に沿った取扱いがされているものとはいえない。また,控訴人が本件支 きない上,調査対象者のうち1名を除き,その領収証等が保管されていない状態であったことからして,本件において市費補助等取扱要綱の趣旨に沿った取扱いがされているものとはいえない。また,控訴人が本件支援金を補助金として予算計上をし,監査委員の監査を受けていれば,本件支援金の受給者のもとに支援金の一部が残存し,10年近く経過した後になって,これを返却したいとの申し出がされること(丙18)はなかったというべきであって,このことからしても,本件支援金を補助金として予算計上し,執行しなかった行為の違法性が強いことが示されているというべきである。 (2) 控訴人の故意,過失について(争点6)(控訴人ら)仮に,本件支援金の支出が違法であったとしても,これについて控訴人には,故意がないことは明らかであり,また,次のとおり,過失も認められない。 すなわち,本件支援金の支出については,控訴人が,市長として,市の- 23 -担当部署等にその検討等を委嘱し,担当部署が十分な法的検討や調査を行い,これを正当なものと判断した上で,市議会経済企業委員会や市議会における十分な審議を経てその支出を決定したものである。そして,本件支援金の支出の適法性については,本件で第1審,差戻前の控訴審及び上告審でそれぞれ判断が分かれたほど,高度で微妙な法的判断であったといえる。したがって,事後的,結果的にその支出が違法と判断されたからといって,このような場合にまで,控訴人に結果回避可能性が存在し,かつ,その結果回避義務の違反があったということはできない。また,不法行為責任の成立には,違法性の認識可能性を要するところ,上記の事情に照らせば,控訴人には本件支援金の支出が違法であることについて,認識可能性がなかったというべきである。 (被控訴人ら)争う。被控訴人らの主 立には,違法性の認識可能性を要するところ,上記の事情に照らせば,控訴人には本件支援金の支出が違法であることについて,認識可能性がなかったというべきである。 (被控訴人ら)争う。被控訴人らの主張の詳細は,第1審判決第3の6(原告らの主張)のとおりである。 本件支援金が仮に補助金として支出されたとの前提に立った場合であっても,控訴人が本件支援金の支出についてこれを補助金としては議会に提案,説明していないこと,本件支援金が市費補助等取扱要綱第2,第3条の要件を欠いたまま支払われるものであることを容易に認識し得たのであるから,少なくともこの点について重大な注意義務違反があるというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 経緯等前記争いのない事実等に加えて,証拠(甲2,16,乙15ないし37,40,42,47ないし62,81,82,85,丙1,2,4ないし25,第1審証人P2,同P3,同P4。なお,認定に用いた証拠を当該箇所に再掲する場合がある。)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認める- 24 -ことができる。 (1) 食肉センターに関係する法制度の趣旨内容,食肉センターの施設整備の経緯,利用業者の食肉センター利用状況等についてア昭和44年7月10日に同和対策事業特別措置法(昭和54年3月31日までの時限立法)が公布・施行された。同法には,その目的として,「すべての国民に基本的人権の享有を保障する日本国憲法の理念にのっとり,歴史的社会的理由により生活環境等の安定向上が阻害されている地域(以下「対象地域」という。)について国及び地方公共団体が協力して行う同和対策事業の目標を明らかにするとともに,この目標を達成するために必要な特別の措置を講ずることにより,対象地域における経済力の培養,住民の生活の安定及び福祉の向上等に寄 地方公共団体が協力して行う同和対策事業の目標を明らかにするとともに,この目標を達成するために必要な特別の措置を講ずることにより,対象地域における経済力の培養,住民の生活の安定及び福祉の向上等に寄与すること」(同法1条),同和対策事業の目標として,「対象地域における生活環境の改善,社会福祉の増進,産業の振興,職業の安定,教育の充実,人権擁護活動の強化等を図ることによって,対象地域の住民の社会的経済的地位の向上を不当にはばむ諸要因を解消することにある」こと(同法5条)がそれぞれ規定され,国の施策として,上記目的(同法1条)を達成するため,「対象地域における農林漁業の振興を図るため,農林漁業の生産基盤の整備及び開発並びに経営の近代化のための施設の導入等の措置を講ずること」(同法6条3号),「対象地域における中小企業の振興を図るため,中小企業の経営の合理化,設備の近代化,技術の向上等の措置を講ずること」(同条4号),「対象地域の住民の雇用の促進及び職業の安定を図るため,職業指導及び職業訓練の充実,職業紹介の推進等の措置を講ずること」(同条5号)などについて,その政策全般にわたり,必要な施策を総合的に講じなければならず(同条本文),地方公共団体の施策として,「国の施策に準じて必要な施策を講ずるように努めなければならない」こと(同法8条),同和対策事業で- 25 -これに要する経費について,国の負担又は補助による特別の助成がされること(同法7条)及び地方債を財源とすることができること(同法9条)がそれぞれ規定されている。 なお,同法は,同和対策事業特別措置法の一部を改正する法律により,上記時限立法の期間が昭和57年3月31日まで延長され,同年4月1日以降については,地域改善対策特別措置法が昭和62年3月31日までの時限立法として公布・ 事業特別措置法の一部を改正する法律により,上記時限立法の期間が昭和57年3月31日まで延長され,同年4月1日以降については,地域改善対策特別措置法が昭和62年3月31日までの時限立法として公布・施行され,同法の失効後である同年4月1日以降については,地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律が平成4年3月31日までの時限立法として公布・施行され,その後,地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(一部改正)が公布・施行された(平成9年3月31日までの時限立法)。 イ昭和52年10月14日に八代市のうちαの一部及びβが同和対策事業の対象地域として認定されたことから,市は,同月,熊本県市町村同和対策事業推進協議会に加入し,同年12月22日に八代市同和対策事業審議会設置条例を施行して,同日,市における同和対策事業について必要な事項を調査審議するための,八代市同和対策事業審議会を設置し,昭和53年3月には八代市同和対策事務連絡委員会を設置した。そして,同月以降,市同和対策事業施設として,対象地域であるα内及びβ内に,公営住宅及び小集落地区改良住宅などの住宅施設,八代市β・α集会所(教育集会所),納骨堂及びα児童公園等の公共施設を建設した。 食肉センターは,前判示(第1審判決第2の1(2)イ)のとおり,もともと個人経営のと畜施設であったが,大正3年にこれを譲り受けた当時のγ村によって,γ村立と畜場として運営され,昭和30年にγ村が市へ編入合併されたことにより,以後は,市によって,八代市営と畜場と- 26 -して運営されてきた。その後,昭和39年から昭和40年にかけて,市により,牛馬のと殺,解体を行う大動物と室の施設改善がされていたところ,上記のとおり同和対策事業特別措置法に基づく同和対策事業の一環 して運営されてきた。その後,昭和39年から昭和40年にかけて,市により,牛馬のと殺,解体を行う大動物と室の施設改善がされていたところ,上記のとおり同和対策事業特別措置法に基づく同和対策事業の一環として,いずれも地域改善対策事業費(国庫補助金,地方債,一般財源及び熊本県の補助金を財源とするもの)により,昭和53年度にと畜場浄化槽が整備され(総事業費5940万円。旧設備75トンに新設備200トンが増設され275トンとなる。),その後,昭和56年2月,用地買収の上,旧来の施設(大動物と室)に加えて,豚等のと殺を行う小動物専用と室が新設されて(総事業費2億4838万7304円),と畜施設が拡充された結果,1日当たり牛30頭,豚139頭の処理能力を有する食肉センターとして竣工した。その後も,地域改善対策事業費により昭和58年度までに,汚物焼却炉,加圧浮上槽,管理棟が順次建設され,施設全体についての整備が進められた。昭和53年から昭和58年までの上記施設整備総事業費は,3億6658万4000円余りであった。また,同和対策事業対象地域における食肉流通の改善合理化及び同地域住民の生活の安定を図る目的で,昭和56年3月,地域改善対策事業費により,食肉センター敷地内に,食肉センターでと殺,解体した食肉のカット肉加工,カット肉冷蔵等を行うための食肉流通施設が併設されたが,その総事業費は2億8541万1473円であった。 さらに,地域改善対策事業費により,昭和55年2月,市内βに食肉のカット処理,内臓物処理等を事業内容する共同処理加工施設(本体)が,同年3月,市内αに食肉のカット処理,パック加工,ハム,コロッケ等の製造を事業内容とする大型共同作業場がそれぞれ建設された。また,同年10月,P5協同組合が設立され,昭和56年8月から,市と同組合との管 月,市内αに食肉のカット処理,パック加工,ハム,コロッケ等の製造を事業内容とする大型共同作業場がそれぞれ建設された。また,同年10月,P5協同組合が設立され,昭和56年8月から,市と同組合との管理委託契約締結による共同処理加工施設(本体)の稼働が- 27 -開始したほか,同月,P6協同組合が設立され,同年12月から,市と同組合との管理委託契約締結による大型共同作業場の稼働が開始した。もっとも,昭和60年4月に上記組合が解散したため,上記管理委託契約も解除された。 ウ食肉センターを利用してきた食肉業者らは,そのほとんどが,旧γ村地域において,先代ないし先々代から引き続いて,と殺業ないし食肉供給業に従事して生計を立ててきた者であり,食肉センターは,その前身である民営及び村営の期間を含めると,約1世紀にわたり,旧γ村地域である現在の市内α及びβの伝統産業であると殺業や食肉供給業に従事する住民らが,地域のと畜場として繰り返し利用するなどしてきたものであって,これら住民の生計を支える施設として長年稼働してきた経緯と実態がある。 食肉センターの利用状況を,食肉センターにおける業者別と畜頭数の記録が存する平成元年度から平成11年度までの11年間について見ても,食肉センターの利用業者数は,毎年,20業者前後(このうち市外の業者は5名前後である。)で推移しており,業者の入れ替わりなどの変動は少なく(丙7ないし10),旧γ村地域の食肉業者を中心とする,ほぼ一定の利用業者が,食肉センターを地域のと畜場として長期間繰り返し利用してきた上記実態に異なるところはなかった。そして,本件支援金を受給した10業者(P4,有限会社P7(P8),有限会社P9(P10),P11,有限会社P12(P13),P14,有限会社P15(P16),P17,P18,P19 ろはなかった。そして,本件支援金を受給した10業者(P4,有限会社P7(P8),有限会社P9(P10),P11,有限会社P12(P13),P14,有限会社P15(P16),P17,P18,P19)も,先代から引き続いて,と殺業ないし食肉供給業に従事して生計を立ててきた者であり,上記期間中,先代が利用していた期間が存したり,途中で法人化したことがうかがわれる業者が存するものの,いずれも毎年継続して食肉センターを利用してきた。 - 28 -(2) 市(農政課)は,P20から食肉センターの経営問題に係る報告書(第1審判決第2の1(2)オ)が提出され,さらに,P20から,処理能力を1日牛40頭とすると場新築案の概算建設費は8億3080万円であるとする試算結果が示されたことから,利用業者との間で,食肉センターの施設建築(上記と畜法施行令の一部改正により,一般と畜場の構造設備の基準に適合しなくなった大動物と室を撤去し,上記基準に適合する新と畜場を建築すること)及び今後の管理運営について協議を開始した。 農政課は,食肉センターの上記施設建築後は,食肉センターの管理運営を民間に委託する方針であり,利用業者が加入する組合が主体となって新たに会社組織を設立し,同会社と市との間で食肉センターについて,期間を20年程度とする管理委託契約を締結し,同会社が食肉センターを管理運営し,その収益から市が地方債により調達した建設費を償還していくこと等を内容とする構想を立て,利用業者に対し,これを示した上で協議したが,利用業者は,食肉センターの管理運営を民間により行うことは,リスクが大きいなどとしてこの構想を受け入れなかった。そして,利用業者は,平成11年11月4日の協議において,市に対し,仮に食肉センターを廃止した場合は,経営存続のための補償が絶対に必要であ とは,リスクが大きいなどとしてこの構想を受け入れなかった。そして,利用業者は,平成11年11月4日の協議において,市に対し,仮に食肉センターを廃止した場合は,経営存続のための補償が絶対に必要であるなどという意見を出した(乙15)。 農政課は,利用業者との補償問題に対応するため,同月11日,公営のと畜場を廃止した別府市の事例について調査を実施し,結果は次のとおりであった(乙16,第1審証人P3)。 ア別府市における年間処理頭数は牛約62頭,利用業者数は32業者であり,市は,と畜場廃止に当たって,利用業者と1年間に約15回協議を重ねた。 イ施設の老朽化に伴い,処理頭数はピーク時の2パーセント足らずに減った。もともと大分県では,県の指導により,老朽化が進み非衛生的で需- 29 -要に対応できなくなった県内のと畜場についてはこれを統合する計画が持ち上がっており,そのためにP21公社が設立され,昭和53年から操業していたが,別府市としては,と畜場閉鎖後はP21公社にその受入れを依頼し,その条件として,同市が1億3000万円を同社に出資することとした。 ウ別府市は,また,と畜場廃止に伴う補償金(協力金)を利用業者に支払うこととなったが,その金額及び算定方法につき,一般会計から繰り入れしている過去5年間とこの先負担するであろう5年間の計10年間分1億4000万円をその上限としたところ,交渉の結果1億3000万円とすることで利用業者が加入する利用組合の了承を得た。また,場内作業員(と殺業務従事者)1名は別枠で600万円を支払うことで了承を得た。 (3)ア農政課は,平成11年12月16日,P2産業振興部長も同席の上,利用業者と協議し,食肉センターの施設建築は,その後の食肉センターの管理運営を,利用業者などに 払うことで了承を得た。 (3)ア農政課は,平成11年12月16日,P2産業振興部長も同席の上,利用業者と協議し,食肉センターの施設建築は,その後の食肉センターの管理運営を,利用業者などによる民間機関によって行うことが条件であり,そうでなければ,施設を建築することはできないから,平成12年4月1日以降は食肉センターの業務を存続することができない旨通告した。その際,利用業者から,食肉センターが廃止されても,営業継続及び生活維持ができるよう配慮してほしい旨の要望が出され,P2産業振興部長は,利用業者の経営継続のため,食肉センターで処理できなくなる牛馬の受入れ先となる他地域のと畜場のあっせん及び他地域のと畜場を利用するのに伴い必要となる施設(運搬車,冷蔵庫など)の整備等のための補助について考えていかなければならない旨述べた。 農政課は,平成11年12月20日,控訴人にこの協議結果を報告した(乙17,18)。 イ平成11年12月24日に開催された市議会経済企業委員会(市議会- 30 -から付託されるなどして,食肉センターに係る議案の審査等を行う委員会)において,農政課(同課を所管するP2産業振興部長等が同委員会に出席した。)が,上記アの農政課と利用業者との協議の進捗状況を報告した。その際,食肉センターの地元出身である委員から,食肉センターの存廃は,食肉業の長い歴史を有する地域の住民である利用業者の死活問題であり,今後の食肉センターの管理運営において赤字を避けられないとしても,上記基準に適合する施設建築を行い,食肉センターを存続させるべきであるとの意見が述べられたり,他方,食肉センターが廃止される場合は,行政の立場として,利用業者及びと殺業務従事者らの営業継続や生活保障が問題になるとして,この点に関する利用業者との協議を行う べきであるとの意見が述べられたり,他方,食肉センターが廃止される場合は,行政の立場として,利用業者及びと殺業務従事者らの営業継続や生活保障が問題になるとして,この点に関する利用業者との協議を行うことの確認が求められ,農政課は,利用業者が平成12年4月1日以降の食肉センターの業務休止後も営業を継続するため,他地域のと畜場を利用するのに必要な施設整備の費用補助や補償について,今後協議を行っていく方針であることを利用業者に伝えた旨説明した。 (4) 農政課は,平成12年1月18日から同月24日まで,利用業者に対して,現在の経営状況,食肉センターが廃止された場合の経営の方向性,経営を継続するとした場合の設備投資の内容等について調査した(乙20ないし25)。 (5) 農政課は,また,平成12年1月25日以降,利用業者の食肉センター利用状況をまとめるとともに,上記(2)の別府市の事例を参考に,食肉センター廃止に伴い支援金を支出することとした場合の対象範囲,算定方法及び支援金総額等について,次のとおりの案をまとめた(乙26,乙85の22項)。 ア対象範囲については,平成11年4月1日から同年12月末日までの間に食肉センターを利用したことがあり,同年1月1日の時点において市内在住の者で現在も畜産業又は食肉流通業を営むもの及びと殺業務従事- 31 -者らとする。 イ算定方法については,利用業者については,今後の事業の継続に不可欠な冷蔵庫,冷凍庫及び家畜運搬車の整備に要する費用等について,これまでの利用実績を基に算出するが,場内作業者であると殺業務従事者らについては,これまで得ていた収入を基に雇用保険制度を参考にして算出する。 ウ支援金の総額については,他の施設を利用する場合の移行に伴う利用業者の負担を可能な限り軽減 あると殺業務従事者らについては,これまで得ていた収入を基に雇用保険制度を参考にして算出する。 ウ支援金の総額については,他の施設を利用する場合の移行に伴う利用業者の負担を可能な限り軽減できるよう配慮する必要があるとの認識に立ち,考え方として,平成9年度以降の3年間において,一般会計からの繰入金年平均4987万円から,今後も市が償還を行う必要がある公債費充当分1922万9000円を差し引いた3063万8000円について,その10年分を利用業者の支援金の総額とすることを目安とする。また,と殺業務従事者らについては別枠で計算する。 (6) 農政課は,控訴人及び助役に対し,平成12年1月31日から同年2月16日までの間計3回,同課において支援金支出の要否,可否,範囲及び基準等について検討した結果を報告したが(乙27ないし29),その際,控訴人及び助役から,更に財政課と協議するよう指示を受けた。そこで,農政課は,同月10日,財政課との間で,支援金の支出方針,その額及び支出方法について,別府市の事例などを参考に協議し(乙30,31),さらに,別府市以外の事例についても調査することとなった(乙85)。 (7) 農政課は,平成12年2月16日,財政課と協議したが,財政課による他都市の調査により,愛知県豊川市(P22組合)の民事調停の事例及び民事調停に基づく支出について監査請求事例(平成9年9月17日監査。と畜場廃止に伴う損失補償金の額及び支出について,監査委員としては,これらが違法,不当に決定され,支出されたとは認められないとし- 32 -て,住民の請求は棄却された。)があることが判明した。豊川市の事例は,利用業者数20団体・個人,年間利用頭数(豚)3万3014頭(平成7年度),牛換算1万1005頭,補償額18億6100万 32 -て,住民の請求は棄却された。)があることが判明した。豊川市の事例は,利用業者数20団体・個人,年間利用頭数(豚)3万3014頭(平成7年度),牛換算1万1005頭,補償額18億6100万円(再建築費の20億円を超えない範囲)というものであった(乙32ないし34,85,第1審証人P3)。 そこで,この豊川市の事例も併せて慎重に検討した結果,市としても支援金を上記(5)の基準で支払うべきであるとの案が固まった(乙35,85)。 農政課は,同月17日,上記(5)の支出案について,控訴人及び助役に具申した結果,その了承を得て,その旨決定された。同時に,支援金額について控訴人及び助役は今後一切これを変更しないことを確認した(乙36,37)。 農政課は,同月21日から同年3月3日までの間に,本件支援金の支給対象とされた利用業者10名に対し,順次,支給金の内示額を提示し,同月15日及び同年4月20日に開催された市議会経済企業委員会において,上記支援措置方針案の内容を説明し,食肉センター廃止後の牛馬の受入れ先として熊本市食肉センター(年間4000頭)及び株式会社P23(年間3000頭)をあっせん中である旨報告した。上記報告に対し,委員から質問や異論は出されなかった。 (8) 農政課は,同年4月17日,熊本県健康福祉部生活衛生課から同年1月ころ入手した九州内のと畜場の廃止に関する資料(乙81)の中で,同年4月1日に公営と畜場が廃止されることが判明していた宇佐市,杵築市,唐津市,本渡市,阿久根市及び鹿児島県δ町について調査することにした。このうち前4市から回答があったが,阿久根市及びδ町からは回答できないとの返事があり,調査できなかった。なお,公営と畜場を廃止するに当たって,補償をしなかった自治体については調査の対象 ことにした。このうち前4市から回答があったが,阿久根市及びδ町からは回答できないとの返事があり,調査できなかった。なお,公営と畜場を廃止するに当たって,補償をしなかった自治体については調査の対象としなかったため,どのような根拠により補償をしなかったのかについては,これを- 33 -検討するに至らなかった(乙81,82,85,第1審証人P3)。 (9) 農政課は,財政課との間で,支援金を予算計上する場合の費目である「節」について協議,検討した結果,考えられる「節」としては「負担金補助及び交付金」と「補償,補填及び賠償金」とがその候補に挙げられたが,以下の理由により,これを補償金とすることにした(乙53ないし55,85の34項)。 ア今回の支出は,相手方(利用業者等)の責めに帰することができない事由(市側の事由)により,相手方に対し通常であれば必要なかった負担(例えば,冷蔵庫,保冷庫,運搬車等の購入)を生ぜしめ,その負担に対して市として支出するものであり,その本質は補償に相当するものである。 イ支援金を補助金とすることも考えられるが,利用実績が少ない業者については,他の業者に依頼し,業務を行うものと予想されるところ,食肉センターの廃止により,業務を止めざるを得ないケースも考えられるため,補助事業と捉えることは困難であり,補助金としての支出はできない。 ウ業務を継続する業者(利用実績の多い業者)については「補助金」,業務を止めざるを得ない業者(利用実績の少ない業者)については「補償金」とすると,現時点で将来のことを判断し,判別することになるところ,その判別は困難を極める。 (10) 農政課は,平成12年5月30日,助役との間で,支援金支出に係る予算案を補正予算として6月議会に提出するに当たり,支 ことを判断し,判別することになるところ,その判別は困難を極める。 (10) 農政課は,平成12年5月30日,助役との間で,支援金支出に係る予算案を補正予算として6月議会に提出するに当たり,支援金の額や予算の費目である「節」を「補償,補填及び賠償金」とすることを最終的に確認した(乙56,57)。 (11) 平成12年6月5日から,平成12年度一般会計補正予算案等を議案とする平成12年6月市議会定例会が開催された(会期は同日から同月23- 34 -日までである。)。控訴人は,支援金支出に係る予算案(以下「本件予算案」という。)を補正予算として議会に上程し,あわせて提出された一般会計予算に関する説明書では,本件支援金は,「食肉センター業務休止に伴う支援」と説明されていた(乙58,59)。本件予算案は,その後市議会経済企業委員会に付託された。 (12)ア平成12年6月19日に開催された市議会経済企業委員会において,平成12年度一般会計補正予算案のうち食肉センターの業務休止に伴う利用業者等への支援金の支出(本件予算案)について歳出審査が行われ,P2産業振興部長等が本件予算案について説明した。これに対し,委員から,食肉センターが存在する地域の伝統的産業であると殺業ないし食肉供給業に長年従事し,生計の糧を得てきた利用業者に対し,食肉センターの業務休止後も営業を継続できるよう支援措置を行うべきであるが,市が支援措置としての支援金の支給対象者とした10業者のうち5業者が提示額を不満として合意に達していないなど,利用業者内部の合意形成ができていない現状において,本件予算を計上することは,地元を二分しかねない危惧があり時期尚早であるとの意見が述べられたり,他方,食肉センターの業務休止以後,既に県外のと畜場を利用し,経費が増大してい きていない現状において,本件予算を計上することは,地元を二分しかねない危惧があり時期尚早であるとの意見が述べられたり,他方,食肉センターの業務休止以後,既に県外のと畜場を利用し,経費が増大している利用業者もいるから,早期に支援金を支払うのが相当であるとする意見が述べられたほか,支援金が一括支払とされている点や支給された支援金の使途について市による確認が行われないことを疑問とする意見が出された。具体的には,P24委員が,「私は支給の方法にですね,ちょっとこだわるんですが,一括してぽんとおあげになるのか,それとも支援金という名目ですから,その支援金がきちっとした形でその何が何に対してどういう対価が払われるのかということが明確な追跡があっての支援金なのか,そこがですね,執行部の御答弁でちょっとまだ明確に聞こえてこないんですね。」「ただ一括し- 35 -て,ぽんとおあげになった場合,その人についての追跡が行われないというのであるとするならば,かなり今回の支援金の出し方については市民の間で論議を醸し出すかもしれませんね。」と発言し,P25委員も,「税金ですから私も申し上げますけど,冷凍車を買ったか,買わなかったか,運搬車の費用,冷凍庫をつくった,つくらなかったか,そういうのはどうしますか。」と述べ,本件支援金の使途を明確にせず,その後の調査もしないで一括で支払うことは問題があるという趣旨の質問をした。これに対し,P2産業振興部長等は,支援金は,各利用業者がその事業を継続するに当たって,必要とされる施設整備の範囲や事情が異なるため,かかる施設整備に必要として試算される相当額を算定するものであるから,一括支払が適当であると考えており,また,支援金は,事後の精算や使途の確認を要する補助金とは異なるもので,利用業者が他地域のと畜場を利用して事 に必要として試算される相当額を算定するものであるから,一括支払が適当であると考えており,また,支援金は,事後の精算や使途の確認を要する補助金とは異なるもので,利用業者が他地域のと畜場を利用して事業継続する上では,想定しない経費等が生じることもあることから,市が支援金の使途について最終的に確認することはできない旨説明した。 なお,委員からは,本件予算案により計上された支援金を支出すること自体や支出の法的根拠を問題とする意見は述べられなかった(乙40)。 イその後,市長である控訴人の答弁を求めることになり,P24委員が,控訴人に対し,「一つどうかなと思うのは,支払の方法なんですね。執行部の御説明は一括ということでございましたけれども,一括に対してやっぱりいろんな異論が出てるわけでございます。」「私が聞いているのは,支援の方法をですよね,だからその対価の支払という方法もあるわけでして,どの部分がどういうふうに要るから,ほかの遠隔地でですね,ほかの部分で業務を遂行していくには,これが幾らかかるから,これに対して幾らということの支援策が打ち出されていいんじゃな- 36 -いかなと思うんですけれども。」と質問したが,控訴人から,この質問に応える内容の答弁はされなかった。 結局,本件予算案は3対4の賛成少数で否決された(乙40,60,61)。 (13) 平成12年6月23日の市議会定例会において,市議会経済企業委員会委員長が,本件予算案に関する同委員会における審議経過を報告した。同委員長は,その報告の中で,「委員から,支援金の支給方法及び使途方法について質疑があり,市の執行部から,議会の議決を経た後,個々の事業者と書面をもって契約していきたい,また,従前施設を利用していた場合と比較して,冷蔵庫等の整備費や市外施設への搬入に 法及び使途方法について質疑があり,市の執行部から,議会の議決を経た後,個々の事業者と書面をもって契約していきたい,また,従前施設を利用していた場合と比較して,冷蔵庫等の整備費や市外施設への搬入に伴う経費,今まで以上に多額の経費が必要となることが予想され,事業を続けていくための支援としての支出を考えているもので,使途への確認は考えていない旨の答弁がありました。」と述べた。 また,総務委員会委員長が,総務委員会において,市の執行部から,「支払方法及び使途については,予算上は補償補填としているが,今後も事業を続けるための支援金を行政として手助けするもので,冷蔵庫等必要な設備等を業者に聞き取りした上で,メーカーからの見積もりをもとに積算していること。支援金の使途が不透明との指摘があったが,事業を継続していく上で我々が想定しない経費等も考えられ,最終的な支出を市がチェックできないこと。また,市のと場を3月31日で閉鎖することに伴い,市が施設をつくり,民間で運営する公設民営方式も提案したが,業者からは運営できないとの回答であった。そこで,市としては民営できないからといって何もせずに済む問題ではなく,他自治体の状況等も検討し,長期的な観点から提案したものであるとの報告でございます。次に,施設閉鎖に伴い,毎年8000頭から9000頭の牛を受け入れていたものを熊本とε町の食肉センター及びζ町にお願いしているが,(中- 37 -略),本市処理分を熊本市でも十分に受け入れてもらえなくなり,久留米や鹿児島まで運ばざるを得ない状況となっているので,業者への早急な支援金の支払が必要であること等の説明があっております。」旨報告した。 その後,一部議員から,利用業者に対する支援金支払につき論議が未成熟であるとして,本件予算案について,と殺業務従事者らに対す な支援金の支払が必要であること等の説明があっております。」旨報告した。 その後,一部議員から,利用業者に対する支援金支払につき論議が未成熟であるとして,本件予算案について,と殺業務従事者らに対する支援金の限度に減額する旨の修正案が動議として提出されたが,同修正案は否決された。これに引き続いて,同日,本件予算案について採決が行われ,賛成多数により可決された(乙61)。 (14) 市は,平成15年11月10日より前において,本件支援金を受給した利用業者が何を購入したのか正式に調査しておらず,一応運搬車等を購入したという話を聞いているにとどまる(第1審証人P2)。 (15) 本件支援金を利用業者に支出するに当たり,利用業者が解体した食肉が市民にどの程度供給されたか調査したことはない(第1審証人P2)。最も多く食肉センターを利用していた利用業者は,P26やP27などに出荷していた(第1審証人P4)。 (16) 市と利用業者等との間の本件支援金についての契約内容について(乙66ないし71)市と各利用業者等との間において,本件支援金について,いずれも平成12年8月2日付けで契約書(本件各契約書)が作成された。本件各契約書には,いずれも,支援金額,支援金の支払方法及び「甲(市)と乙(各利用業者等)は,と畜業務休止に伴う支援策については,本契約によってすべて解決したことを確認し,乙は甲に対し,今後名目の如何を問わず何らの請求をしないことを確認する。」旨の条項が記載されている。 そのほかに,第1審判決別表番号1ないし5,12の各利用業者については,契約書の柱書きに「甲(市)と乙(利用業者)は,甲が平成12年3月31日限りでと畜業務を休止したことに伴う支援策として甲が乙に支- 38 -払う支援金について,次のとおり契約を締結する。」 ては,契約書の柱書きに「甲(市)と乙(利用業者)は,甲が平成12年3月31日限りでと畜業務を休止したことに伴う支援策として甲が乙に支- 38 -払う支援金について,次のとおり契約を締結する。」旨記載され,「支援金の趣旨及び使途」として,「甲が乙に支払う支援金の趣旨は,甲のと畜場休止に伴い,乙が今後の経営を継続していくため,施設設備に必要な各種運搬車の購入,冷蔵庫等の使用に要する費用相当額及び他施設を利用するための経費を根拠として算定した金額であり,乙はその趣旨に添って(原文のまま)使用するものとする。」と記載されている。また,同番号10,11,13,14の各利用業者については,契約書の柱書きに,上記と同旨の記載がされ,「支援金の趣旨及び使途」として,「甲が乙に支払う支援金の趣旨は甲のと畜場休止に伴い乙が今後の経営を継続していくための費用相当額を算定した金額であり,その趣旨に添って使用するものとする。」と記載されている。そして,同番号6ないし9のと殺業務従事者又は内臓洗い従事者については,契約書の柱書きに「甲(市)と乙(と殺業務従事者又は内臓洗い従事者)は,平成12年3月31日限りで,八代市食肉センターにおけると畜業務を休止したことにより,日常的に行っていた職が失われ,収入が途絶えたことに対する支援策として,雇用保険制度を算定根拠として甲が乙に支払う支援金について,次のとおり契約を締結する。」旨記載されている。 (17) 市の利用業者等に対する説明・指導について市は,平成12年4月6日,同年7月17日,同年8月2日,同月15日,同月17日,同年11月13日に,市役所庁舎内又は食肉センターにおいて,利用業者等に対し,本件支援金の趣旨及び使途についての説明・指導を行った(甲2・15,16頁)。 (18) 本件支援金に関する決算 17日,同年11月13日に,市役所庁舎内又は食肉センターにおいて,利用業者等に対し,本件支援金の趣旨及び使途についての説明・指導を行った(甲2・15,16頁)。 (18) 本件支援金に関する決算の決議について平成12年度八代市一般会計歳入歳出決算書には,農林水産業費の歳出の予算現額の欄のうち節の区分の欄に「補償,補填及び賠償金」,その金額欄に3億1209万5000円と記載され,また,支出済額の欄に3億- 39 -1154万3000円と,翌年度繰越額(繰越明許費)の欄に55万2000円と,備考欄に「食肉センター業務休止に伴う食肉流通業者等支援事業」とそれぞれ記載され,市議会は同決算について承認及び認定の決議をした(甲16)。 上記翌年度繰越額55万2000円については,平成13年度に開催された市議会において,平成12年度と同様,歳出予算の承認及び決算の認定の各決議がされた(弁論の全趣旨[被控訴人らの第2次控訴審第3準備書面23頁])。 (19) 八代市の住民等による市の監査委員に対する八代市職員措置請求について(甲2)八代市の住民等が,平成12年11月20日,市の監査委員に対し,地方自治法242条1項に基づき八代市職員措置請求を行い,本件支援金の支出は不当な公金の支出であり,その金額を一般会計へ返還するよう求めた(その後,一部の者が請求を取り下げた。)。 これに対し,監査委員は,その一部の者についての請求を却下したほか,その余の者による請求を次の理由等を掲げた上で棄却し,その結果を平成13年1月18日公表した。 ア本件支援金については,生業の基盤を失うことに対する生活再建補償であり,市費補助等取扱要綱の規定は適用されず,本件支援金を受給した者について,法的には実績報告の義務は存在しない。 法的には実績報告の義務はな については,生業の基盤を失うことに対する生活再建補償であり,市費補助等取扱要綱の規定は適用されず,本件支援金を受給した者について,法的には実績報告の義務は存在しない。 法的には実績報告の義務はないとしても,公金が支出されたことを考慮して,支援金の使途やそれに基づいた適切な指導を行っていくことは当然必要である。 本件各契約書には,契約内容の履行についての報告義務が規定されていないが,契約書の「乙はその趣旨に添って使用するものとする」との規定によって,契約の履行を確保するための調査や指導をすることは可- 40 -能であると考える。 したがって,その支援金支出のために該当業者との間で交わされた契約書に,契約内容の履行についての報告の義務を有さないことをもって,契約そのものがずさんでかし瑕疵あるものとは認められない。 イ本件支援金は,食肉センターが休止された後も引き続き,食肉を市民へ安定的に供給していく措置として,業務休止による利用業者等の経営圧迫の緩和と経営継続のため,他地域の施設の利用を余儀なくされることによる経費(交通費・利用料金の増大,時間的ロス)及び枝肉冷蔵庫・冷凍庫・家畜運搬車等への新たな設備投資に対する支援のため,並びに食肉センターにおいて個人で利用業者からと殺業務又は内臓洗いを請け負い,その仕事により収入を得ていた人が,食肉センターの休止によってその職を失い,収入が途絶えたことに対する支援のために支出されたものである。 また,本件支援金支払に至る経緯,支援措置の対象者の決定,支援金算定の基礎及びその配分方法の決定は,一部事務処理に不備な点が見受けられたものの(地元説明会が実施されたなかった周辺住民への周知方法や利用業者との協議における通知方法,出席者の確認等について,一部に不適切な事務処理が見受けられた。 ,一部事務処理に不備な点が見受けられたものの(地元説明会が実施されたなかった周辺住民への周知方法や利用業者との協議における通知方法,出席者の確認等について,一部に不適切な事務処理が見受けられた。),市長の裁量権の範囲で行われたものであり,合理性,相当性が認められ,その後の契約締結から支払に至る一連の財務事務も合規的,合理的に行われていることが認められた。 以上のことと,上記ア等を総合的に考慮すると,食肉センター休止に伴う支援金を市長が一部該当業者に支払ったことは,不当な公金の支出であるとは言えず,市民に損害を与えたとは認められない。 ウ請求人のいうような不当な点は認められないとしても,今後は更に適正な市政執行に配慮するとともに,特に,市の畜産業・食肉流通業の健- 41 -全な発展のため,支援金の使いみちについての十分な調査を行い,趣旨に沿った支援金の使途を指導していくことが必要である。 (20) 市による利用業者等に対する調査についてア市(農政課)は,本件訴訟提起時(平成13年7月16日)より後である平成15年11月10日から同月17日までの間,本件支援金の支給を受けた利用業者のうち,施設整備等,均等・頭数割で支給を受けた6業者(第1審判決別表番号1ないし同5及び同12の業者。同人らに対する支給額は合計3億0470万6000円である。)に対し,支援金の使途について聞き取り調査を実施した。同業者らの報告によると,諸経費及び新規施設整備費の合計額について,P14(同表の番号12)については支給された支援金額を下回っていたが(丙第4号証の「食肉センター業務休止に伴う支援金」使途調査集計票記載の業者「E」は,支援金の支給額に照らし,P14であると認められる。),それ以外の業者は支給された支援金額を上回り,本件支援金がこれら 号証の「食肉センター業務休止に伴う支援金」使途調査集計票記載の業者「E」は,支援金の支給額に照らし,P14であると認められる。),それ以外の業者は支給された支援金額を上回り,本件支援金がこれらに使用されたことが確認された(丙4)。 イ市は,平成22年4月末に,本件支援金の支給を受けた利用業者等の全員(14名)に対し,アンケート調査を実施した。業務の継続の有無については,利用業者(11名)のうち,P18(平成▲年▲月▲日死亡)について不詳であり,P14(平成▲年▲月▲日死亡),P17(平成▲年▲月▲日死亡)は,各人の死亡時まで業務を継続し,その余の利用業者はアンケート時点で事業を継続し(なお,有限会社P9は,P28株式会社として事業を継続し,P19は平成▲年▲月▲日に死亡しているが,その後継者が事業を継続している。),と殺業務従事者ら(4名)は,いずれも食肉センターが廃止された平成12年3月に廃業している。支給された本件支援金の使用の有無については,P18について不詳であり,有限会社P15は,残金があるから返却したいと- 42 -の回答をしたが,その余の者(12名)については,全額使用したとの回答であった。使途の詳細については,上記アの利用業者のうち,P14を除く5名においてはこれを明らかにしているが,他の者についてはこれが明らかになっていない(丙12ないし25)。 2 本件支援金の支出が補助金の支出として適法であるか否か(争点4)について(1) 時機に後れた攻撃防禦方法等であるとの被控訴人らの主張について一件記録によれば,控訴人及び控訴人参加人は,第1審において,本件支援金の支出が補助金の支出として適法である旨主張したが(第1審判決第3の4(被告らの主張)参照),控訴人は,本件支援金は損失補償金であるから,これが補 訴人及び控訴人参加人は,第1審において,本件支援金の支出が補助金の支出として適法である旨主張したが(第1審判決第3の4(被告らの主張)参照),控訴人は,本件支援金は損失補償金であるから,これが補助金である旨の主張を撤回する(本件第1撤回)旨記載した控訴理由書を差戻前の控訴審の第1回口頭弁論期日(平成17年1月19日)で陳述し,さらに,本件第1撤回の主張を撤回し(本件第2撤回),本件支援金は,仮に損失補償金としての要件を満たさなくとも,補助金としての要件を満たしていると予備的に主張する旨記載した同年2月25日付け準備書面を,同第2回口頭弁論期日(同年3月30日)で陳述したことが認められる。 被控訴人らは,本件第2撤回は,信義則に違反する上,時機に後れた攻撃防禦方法の提出であるから,これについて同意しない旨主張する。 しかしながら,控訴人参加人が本件支援金の支出は補助金の支出として適法である旨記載した平成16年9月17日付け第1準備書面を上記第1回口頭弁論期日において陳述し,被控訴人らが控訴人参加人の上記主張に対する反論が記載された平成17年1月17日付け第1準備書面を同期日において陳述していることからすると,控訴人による本件第2撤回によって,被控訴人らに訴訟の準備等の負担が増大したとはいえないこと,控訴人が上記第1回口頭弁論期日後,再度上記主張をするまでの期間は比較的- 43 -短期間であったことからすると,控訴人の補助金についての再度の主張が,信義則に違反し,時機に後れているとまでいうことはできない。被控訴人らの主張は採用できない。 (2) 公益上の必要性についてア地方公共団体が補助をするための「公益上必要がある場合」(地方自治法232条の2)の要件については,様々な行政目的をしんしゃくした政策的な考慮が求められること (2) 公益上の必要性についてア地方公共団体が補助をするための「公益上必要がある場合」(地方自治法232条の2)の要件については,様々な行政目的をしんしゃくした政策的な考慮が求められることからすると,基本的には,各地方公共団体,最終的には支出の権限を有する地方公共団体の長等の判断によらざるを得ず,この要件の具備についての各地方公共団体の判断は,特に社会通念上不合理である場合又は特に不公正な点がある場合でない限り,これを尊重するのが相当である。 イ本件支援金の支出と公益上の必要性について(ア) 市の利用業者等に対する施策について前記争いのない事実等(2)及び上記1(1)によると,食肉センターは,個人が経営していたと畜施設を,大正3年に当時のγ村が譲り受けて,村営と畜場として管理運営し,昭和30年にγ村が市に合併されて以降は,市営と畜場として市が管理運営してきたこと,食肉センターの利用業者は,そのほとんどが旧γ村地域において先代ないし先々代から引き続いて,同地域の伝統産業であると殺業ないし食肉供給業に従事して生計を立ててきた者であり,食肉センターは,民営及び村営の期間を含めると,約1世紀にわたり,地域のと殺業ないし食肉供給業に従事する住民らの生計を支える施設として稼働してきたこと,市は,昭和53年以降,同和対策事業の一環として施設の整備及び拡充を進めていたことが認められる。 以上に加えて,上記1(1)のとおり,同和対策事業においては,対象地域の経済力の培養,住民の生活の安定等のため必要な特別の措置を- 44 -講ずることとされ,同事業の目標として対象地域の産業の振興,職業の安定を図ること等が掲げられていること,国及び地方公共団体は,同和対策事業により,農林漁業や中小企業の経営の合理化及び近代化,設備の近代化,対象 され,同事業の目標として対象地域の産業の振興,職業の安定を図ること等が掲げられていること,国及び地方公共団体は,同和対策事業により,農林漁業や中小企業の経営の合理化及び近代化,設備の近代化,対象地域の住民の雇用促進及び職業の安定等について,必要な施策を総合的に講じることとされていることに照らすと,昭和53年以降,同和対策事業の対象地域であるα及びβにおいて実施された,食肉センター施設及び食肉加工施設等の建設・整備拡充並びに関係組合に対する委託による食肉加工施設等の管理運営体制の施行等は,同和対策事業特別措置法及びその後に公布・施行された地域改善対策特別措置法等に基づく同和対策事業の一環として,上記地域の伝統産業として,これに従事する住民らの生計を支えてきたと殺業ないし食肉供給業について,公費である地域改善対策事業費をもって上記施設を建設・整備拡充することなどにより,上記地域の伝統産業の経営の合理化,近代化を図り,上記地域の産業の振興及び職業の安定を達成するため行われた施策であるということができる。 (イ) 遠方に存する他地域のと畜場を使用することから生じる利用業者の負担等について前判示(第1審判決第2の1(5))のとおり,と畜業務には,牛馬のと殺や解体等を必ずと畜場で行わねばならないという制約を受ける特殊性があるから,利用業者は,と畜場である食肉センターの業務休止後も,その営業を継続するためには,他地域のと畜場を利用することを要する。 上記1(7)及び証拠(乙15,20ないし25,49ないし51,73,74,85,第1審証人P3,同P2及び同P4)によると,食肉センターの業務休止後,利用業者が実際に利用可能な状況にあると畜場としては,熊本県内に,公営の熊本市所在の熊本市食肉センター- 45 -及び民営の菊池郡ε町所在の 同P2及び同P4)によると,食肉センターの業務休止後,利用業者が実際に利用可能な状況にあると畜場としては,熊本県内に,公営の熊本市所在の熊本市食肉センター- 45 -及び民営の菊池郡ε町所在の株式会社P23の2か所が存するところ,これらの施設は,年間約9000頭の牛馬を食肉センターで処理してきた利用業者が,新規に両施設の利用を開始するについては,施設の物的人的処理能力の限界等の理由から事実上制限があり,市が,熊本市食肉センターに年間4000頭の,株式会社P23に年間3000頭の受入れについてあっせんを行ったものの,食肉センターの業務休止に至るまでに,両施設から上記頭数の受入れについて確答を得るには至らなかったこと,また,県外のと畜場はもとより,県内の両施設も市内βからは遠く離れた地域にあるため,食肉センターを利用する場合と異なり,牛馬の生体及びと殺,解体後の枝肉の運搬並びに保管のための経費負担が避けられないこと,食肉センターの業務休止後も業務を継続している利用業者の中には,県内の上記2か所のと畜場を利用している者があるが,利用頭数は制限されており,福岡県や鹿児島県のと畜場を利用している者もあることが認められる。 このように,利用業者が食肉センターの業務休止後も営業を継続するためには,遠方に存する他地域のと畜場を利用せざるを得ないこととなるところ,利用業者には,そのために冷蔵車(冷凍車),家畜運搬車,大型保冷車,冷蔵庫等の施設整備が必要となり,その経費を要するほか,高速道路料金,燃料費等の経費が増加することが認められる。 (ウ) 上記(ア),(イ)からすると,利用業者に対する本件支援金の支出は,長期間食肉センターに依存しながら,生計を立ててきた利用業者について,同和対策事業の一環として,また,地域の産業の振興及び職業の安定 記(ア),(イ)からすると,利用業者に対する本件支援金の支出は,長期間食肉センターに依存しながら,生計を立ててきた利用業者について,同和対策事業の一環として,また,地域の産業の振興及び職業の安定等を図るために,その業務の継続のための資金を補助するために行われたものであるということができる。 また,と殺業務従事者らに対する本件支援金の支出は,と殺業務従- 46 -事者らは利用業者からと殺又は内臓洗いの業務を請け負い,食肉センター内で勤務し,利用業者と同様,長期間食肉センターに依存しながら,生計を立ててきた者であるところ,食肉センターでの事業が休止したことにより,と殺業務従事者らが日常的に行っていた職が失われた結果,収入が途絶えたことに対する支援策として行ったものであるということができる。 以上からすると,本件支援金は補助金としての性質を有しており,その支出については,同和対策事業の目的及び地域の産業の振興及び職業の安定等を図る目的に照らし,特に社会通念上不合理な点や特に不公正な点は見受けられず,公益上の必要性があると認められる。 (エ) これに対し,被控訴人らは,①本件支援金の支出について,同和対策事業審査会で審議がなかったこと,②本件支援金の支出と同和対策事業の関連について,第1審において,P2産業振興部長等が証言等をせず,市の執行部は,上記支出の当時,その関連を全く認識していなかったこと,③上記の関連について,第1審において,控訴人らから主張や書証の提出がなく,弁護士照会の際にも,市は上記関連を否定する回答をしていること(甲13の1),④控訴人又は市において,損失補償の支払対象者が同和対策事業の対象者であることを確認したり,支給対象者をそれらの者に限定することが検討されておらず,本件支援金の受給者の中には同和対策事業の対 1),④控訴人又は市において,損失補償の支払対象者が同和対策事業の対象者であることを確認したり,支給対象者をそれらの者に限定することが検討されておらず,本件支援金の受給者の中には同和対策事業の対象地域とは無関係の者がいることからすれば,本件支援金が同和対策事業の一環として支出されたものではないということができる旨主張する。 しかしながら,本件支援金の支出が,市の同和対策事業と関連することは,上記(ア)ないし(ウ)のとおりである。上記①ないし③の点について,同和対策事業審査会における審議がなかったり,上記関連について,第1審において,P2産業振興部長等が証言していなかった- 47 -り,主張や証拠の提出がなかったとしても,これらをもって,本件支援金の支出が同和対策事業と関連するものであることを否定することはできない。また,P2産業振興部長等が証言等していなかったことから直ちに,市の執行部が,上記支出の当時,上記関連性を全く認識していなかったと認めることはできない。さらに,弁護士照会に対する市の回答(甲13の1)は,同和対策事業を主管する部署である市民環境部人権啓発課が,本件支援金の支出について,同事業に基づく支出として検討したことがないとの内容であって,他の部署(農政課等)が上記関連について検討していたことを否定するものではない。同④の点について,仮に本件支援金の受給者の中に同和対策事業の対象地域とは無関係の者がおり,控訴人又は市が本件支援金の受給者が同和対策事業の対象者であることの確認等に不十分な点があったとしても,本件支援金の支出が同和対策事業の一環として行われること,及び地域の産業の振興及び職業の安定等を図るという目的を有するものであること自体が否定されるものではない。上記①ないし④の各点(市の執行部が,上記支出当時, が同和対策事業の一環として行われること,及び地域の産業の振興及び職業の安定等を図るという目的を有するものであること自体が否定されるものではない。上記①ないし④の各点(市の執行部が,上記支出当時,上記関連について認識していなかったことを除く。)を総合しても,本件支援金の支出について,公益の必要性があったことを否定することはできず,被控訴人らの主張は採用できない。 (3) 本件支援金を補助金と解することにより,実質的に議会による予算統制の潜脱となるような違法な予算執行を許容するに等しい結果をもたらさないか否かについてア損失補償金として議決された予算を補助金として予算執行をすることができるか(ア) 普通地方公共団体の議会は,予算を定める権限を有し(地方自治法96条1項2号),執行機関に対し,説明を求め,又は意見を述べ- 48 -ることができる(同法98条1項,99条)。普通地方公共団体の歳出予算は,その目的に従って款項の予算科目に区分され(同法216条),普通地方公共団体の長は,毎会計年度予算を調整して,年度開始前に議会の議決を経なければならない(同法211条1項)。普通地方公共団体の長は,予算を議会に提出するときは,各項の内容を明らかにするために,予算に関する説明書をあわせて提出することを要するが,この説明書においては,各項を更に目節の予算科目に区分することを要する(同法211条2項,同法施行令144条1項1号,150条1項3号)。そして,歳出予算の経費の金額は,各款の間で相互に流用してはならず,各項の間においても原則として流用が禁止されるが,目節の間においては流用を禁ずる定めはない(同法220条2項)。 上記各規定からすると,目節は,予算執行のために定められる科目であり(同法施行令150条1項),予算議決の対象とな が禁止されるが,目節の間においては流用を禁ずる定めはない(同法220条2項)。 上記各規定からすると,目節は,予算執行のために定められる科目であり(同法施行令150条1項),予算議決の対象とならないから,普通地方公共団体の長において目節の間の流用を実施することは,普通地方公共団体の長の予算執行における裁量の範囲内の行為として原則として許容されるというべきであるが,他方,歳出予算について目節が設けられたのは,議会による予算統制の一環であることからすると,実質的に議会による予算統制の潜脱となるような違法な予算執行を許容するに等しい結果をもたらすような執行(目節間の予算の流用)は,裁量権の逸脱,濫用として許されないというべきである。 (イ) 地方自治法施行規則15条2項は歳出予算に係る節の区分につき規定し,損失補償金は「補償,補填及び賠償金」の節に,補助金は「負担金,補助及び交付金」の節にそれぞれ分類される。 本件支援金は,上記(2)のとおり,補助金の性質を有し,公益上の必要性も認めることができるところ,平成12年の市議会における予算- 49 -決議において,歳出予算上,損失補償金の節に計上され,補助金として議決されていないため,本件支援金を補助金と解することにより,実質的に議会による予算統制の潜脱となるような違法な予算執行を許容するに等しい結果をもたらさないかを検討する必要がある。 (ウ) なお,被控訴人らは,予算の流用の場合,議会での歳出承認を得た支出内容は適法であることを前提とするが,本件支援金を損失補償金とすることは違法であり,本件支援金を損失補償金として市議会で承認すること自体が支出の根拠を欠く歳出を認めたという意味で,違法・無効である旨主張する。しかしながら,上記(ア)のとおり,目節自体は予算議決の対象となるもので 本件支援金を損失補償金として市議会で承認すること自体が支出の根拠を欠く歳出を認めたという意味で,違法・無効である旨主張する。しかしながら,上記(ア)のとおり,目節自体は予算議決の対象となるものではなく,本件支援金を損失補償金の節で予算決議したからといって,その決議自体が直ちに違法無効なものとなると解することはできない。そして,本件支援金を補助金であると解することにより,実質的に議会による予算統制の潜脱となるような違法な予算執行を許容するに等しい結果をもたらさない場合,補助金として支出することは適法であると解することができるのであるから,この場合に本件支援金を補助金として支出することが許容されないということはできず,被控訴人らの主張は採用できない。 また,被控訴人らは,流用について,予算議決時の事情がその後変化し,又はその後新たな事情が判明したことにより,予算の流用を一定の範囲で許容しなければ,臨機に適切な予算執行を実現することができない場合に対処するために,予算の流用を目節間に限りやむを得ない手段として許容したものと解される旨主張するが,地方自治法において目節については流用を禁ずる定めはないことからすると,被控訴人らの主張する流用が可能とされる範囲は狭きに失するものといわざるを得ず,採用できない。 イ本件支援金を補助金と解することにより,実質的に議会による予算統- 50 -制の潜脱となるような違法な予算執行を許容するに等しい結果をもたらさないか(ア) 控訴人を含めた市の執行部が,予算上本件支援金を損失補償金の節に計上した理由について控訴人を含めた市の執行部が,市議会に予算を提出する際,本件支援金について損失補償金の節に計上したのは,上記1(1)ないし(10)のとおり,控訴人の委嘱を受けた農政課が調査,検討した結果に ついて控訴人を含めた市の執行部が,市議会に予算を提出する際,本件支援金について損失補償金の節に計上したのは,上記1(1)ないし(10)のとおり,控訴人の委嘱を受けた農政課が調査,検討した結果に基づくものであり,本件支援金が損失補償金であるとする判断について理由がないわけではなく,少なくとも,控訴人を含めた市の執行部の者に,補助金の性質を有する本件支援金を損失補償金として予算計上することにより,不当に予算を取得する目的があった等の事情は認められない。 (イ) 本件支援金の支出を含む歳出予算の審議について平成12年6月の市議会経済企業委員会における本件支援金の支出を含む歳出予算の審議に際し,議員(委員)からは,支援金を支出すること自体について反対する意見はなく,かえって,議員から「食肉センターが存在する地域の伝統産業であると殺業ないし食肉供給業に長年従事し,生計の糧を得てきた利用業者に対し,食肉センターの業務休止後も営業を継続できるよう支援措置を行うべきである。」(もっとも,同議員は,利用業者内部の合意形成が得られない状態で,本件予算を計上するのは時期尚早であるとの意見を述べた。),「食肉センターの業務休止以後,既に県外のと畜場を利用し,経費が増大している利用業者もいるから,早期に支援金を支払うのが相当である。」といった意見が出され,議員らは,本件支援金の支出が利用業者に対する支援措置であることを了解していたことが認められること,本件支援金の金額(市議会定例会で,議員から減額修正すべきで- 51 -あるとの動議が出されるなどした。),支払方法(市議会経済企業委員会で,議員から一括払や支給された支援金の使途について市による使途の確認がされないとの意見が出された。市の執行部は,同委員会で,従前の施設を利用していた場合に比較し ),支払方法(市議会経済企業委員会で,議員から一括払や支給された支援金の使途について市による使途の確認がされないとの意見が出された。市の執行部は,同委員会で,従前の施設を利用していた場合に比較して,今まで以上に多額の経費が必要となることが予想され,事業を継続するための支援としての支出を考えているもので,使途の確認は考えていない旨説明し,また,総務委員会においても,同旨の説明をし,市執行部の上記の説明内容は,市議会定例会において,市議会経済企業委員会及び総務委員会の各委員長からその報告がされた。)等について具体的に議論された上で,上記予算案が審議・可決されていることに照らすと,上記審議において,議員からその法的根拠を問題とする意見はなかったものの,議員らは,本件支援金が利用業者等に対する支援措置であること,すなわち補助金としての法的性質を有することを了解していたことが認められるとともに,使途については,市において調査できないとしてもやむを得ないと認識した上で,本件支援金についての予算を可決したことがうかがわれる。 (ウ) 本件支援金の決算決議等について本件支援金が補助金として支出された場合,決算書の支出の節は,「負担金,補助及び交付金」の節となるはずであるところ,本件支援金については,平成12年度と平成13年度の決算書において,「補償,補填及び賠償金」の節で,予算現額である3億1209万5000円全額が支出された旨記載され,市議会がその決算を認定したことが認められるが,本件支援金の支出が補助金としてのものであることが明らかにされた上で決算の決議がされたわけではない。 しかしながら,控訴人は,歳出予算として認められた本件支援金の全額をその趣旨で支出し,さらに,決算書の備考欄には,「食肉セン- 52 -ター業務休止に伴う食肉 で決算の決議がされたわけではない。 しかしながら,控訴人は,歳出予算として認められた本件支援金の全額をその趣旨で支出し,さらに,決算書の備考欄には,「食肉セン- 52 -ター業務休止に伴う食肉流通業者等支援事業」と明示され,市議会議員もそのような支出であることを了解して決算決議をしている上,予算決議における議員の上記(イ)の認識の状況からすれば,本件支援金の支出の節が補助金とされずに決算の決議がされたことをもって,実質的に議会による予算統制の潜脱となるような違法な予算執行を許容するに等しい結果が生じたということはできない。 (エ) 市費補助等取扱要綱の趣旨との関係についてa 市費補助等取扱要綱の趣旨は,同要綱に前判示(第1審判決第2の1⑹)のとおり定めがあることからすると,補助金の給付を求める者が提出する申請書類等をもって補助金の支出の必要性や金額の相当性等を判断するとともに(同第2条),支出された補助金が他に流用されることを防止すること(同第3条,第4条)にあると解される。 b 本件においては,本件支援金が名目上補助金として支出されたわけではないため,利用業者等から控訴人に対し,上記要綱に定める補助申請の際に提出すべき書類は提出されておらず,また,控訴人は,利用業者に対して指令書を交付しておらず,利用業者から会計年度2か月以内に精算書の提出をさせていない。 c しかしながら,本件では,市の職員が利用業者に対して直接調査を行い,また,本件支援金の支出や金額等について検討されており(上記1(4),(5)等),その支出の必要性や金額の相当性等についての判断が行われていると認められる。 d また,利用業者等と市との間で作成された本件支援金についての本件各契約書には,指令書に記載すべき支給金額,支給の目的が明記されている(上 の相当性等についての判断が行われていると認められる。 d また,利用業者等と市との間で作成された本件支援金についての本件各契約書には,指令書に記載すべき支給金額,支給の目的が明記されている(上記1(16))。そして,本件各契約書には,本件支援金の支給の目的に加え,利用業者については,その趣旨に沿って- 53 -使用するものとする旨の条項があること,及びと殺業務従事者らに対しては失業に対する支援策として本件支援金が給付されるものであることからすると,明文上,と殺業務従事者らに対しては給付された支援金の使途についての制限はないが,控訴人又は市は,利用業者等に対しては,契約上,契約の履行を確保するための調査や指導をすることが可能であるほか,本件支援金について趣旨に反した支出をした場合等において,その金員の返還を求める等の措置を採ることが可能であると解される。利用業者のうちの1名である有限会社P15が,市による平成22年のアンケート調査の際に,本件支援金のうち残金を返還したい旨申出をしているのは(上記1(20)イ),利用業者等においても,本件支援金の使途が制限されていることを了解していたことを示しているものというべきである。そして,市は,利用業者等に対し,本件支援金を給付するにつき,本件支援金の趣旨及び使途についての説明・指導を行っている。 以上からすると,本件支援金支出の前後において,本件支援金が他の目的に流用されることを防止する措置が講じられているということができる。 e さらに,監査委員は,住民等からの監査請求を受けて,市が支援金の使途を調査し,受給者に対してそれに基づいた適切な指導を行っていくことは必要であり,本件各契約書の規定によって,契約の履行を確保するための調査や指導をすることは可能であるなどと判断して,住民等の の使途を調査し,受給者に対してそれに基づいた適切な指導を行っていくことは必要であり,本件各契約書の規定によって,契約の履行を確保するための調査や指導をすることは可能であるなどと判断して,住民等の監査請求を棄却等し,その結果を平成13年1月18日に公表しているが,監査委員も,本件支援金の使途について調査の対象であることを認識し,これについて監査ができる状況にあったということができる。 f 以上に加えて,市は,控訴人が市長を退任した後である平成15- 54 -年に本件支援金(3億1209万5000円)のうち合計3億0470万6000円を受領した利用業者6者に対して聞き取り調査を行っているところ,その調査結果からは,上記6業者が本件支援金についてその支給の趣旨に反した支出をしたとは認められなかったこと(5業者は領収書の提出をしていないが,市費補助等取扱要綱上,補助金の受領者に領収書の提出まで求めていない。また,同業者からの聴取内容に照らすと,上記5業者が虚偽の報告をしているとまではいえない。)を併せ考えると,上記6業者以外の利用業者等に対する市の調査が平成22年に行われ,その調査時期が遅れていることを考慮してもなお,本件支援金を補助金と解することによって,支出した補助金の他への流用の防止という市費補助等取扱要綱の趣旨が損なわれているものとはいえないというべきである(なお,事後的な調査方法が適切でないとしても,それによって,本件支援金の支出が違法となるということはできない。)。 (オ) 以上からすると,本件支援金を補助金と解することにより,実質的に議会による予算統制の潜脱となるような違法な予算執行を許容するに等しい結果をもたらしたものとはいえず,また,その支出方法が市費補助等取扱要綱の趣旨を損なうものとはいえないというべきである 実質的に議会による予算統制の潜脱となるような違法な予算執行を許容するに等しい結果をもたらしたものとはいえず,また,その支出方法が市費補助等取扱要綱の趣旨を損なうものとはいえないというべきである。 (カ) 被控訴人らは,①損失補償金と補助金では,予算案の審理の提案根拠及び審議の対象が異なるところ,本件支援金については,市議会の歳出予算審議では,一貫して補助金ではなく,損失補償金として審議されたのであり,議会の予算統制を潜脱して議決がされたものというべきであり,②市議会の決算決議に際し,本件支援金が補助金として支出されたことの当否を審議する機会が奪われ,議会の予算統制機能が事後的にも阻害されており,③本件支援金の支出方法が市費補助- 55 -等取扱要綱の各条項に反し,同要綱の趣旨を損なうものである旨主張する。 しかし,上記①の点については,予算案の審議においては,本件支援金について,公益の必要性や支出の方法等について具体的に議論がされ,市の議員らにおいて本件支援金が利用業者等に対する支援措置であることを了解していたことが認められるとともに,その使途についても市において調査ができないとしてもやむを得ないものと認識していたことがうかがわれることは上記(イ)のとおりである。同②の点についても,上記(ウ)のとおりであり,本件支援金を補助金と解することによって,決算決議における議会の予算統制を潜脱しているとまではいえない。また,同③の点については,本件支援金を補助金と解することによって市費補助等取扱要綱の趣旨を損なうものでないことは,上記(エ)のとおりである。この点に関して,被控訴人らは,本件各契約書は,議会で本件支援金の支出予算案が可決された後に作成されているところから,その記載内容をもって,議会の予算統制権を潜脱していないことの )のとおりである。この点に関して,被控訴人らは,本件各契約書は,議会で本件支援金の支出予算案が可決された後に作成されているところから,その記載内容をもって,議会の予算統制権を潜脱していないことの根拠とはならない旨主張するが,市費補助等取扱要綱において重要とされるのは,支出された金員が目的外の使途に流用されることを防止することにあり,本件各契約書の内容もこのような目的外の使途への流用の防止を図ろうとするものであることに変わりはなく,同要綱の趣旨に適合するものである上,市の議会においては,支給された本件支援金の使途について市が確認を取ることができない点について議論され(上記1(12)ア),その上で,最終的に本件支援金についての予算が可決されているのであって,市費補助等取扱要綱を意識した審議がされていないとはいえず,本件支援金の支出が議会の予算統制を潜脱しているとはいえない。 被控訴人らの主張はいずれも採用できない。 - 56 -(4) 小括以上によれば,本件支援金の支出は,補助金の支出として適法であると認められる。 3 控訴人の故意,過失について(争点6)(1) 上記2のとおり,本件支援金の支出は適法であるため,控訴人は市に対して賠償責任を負うものではないが,仮に,本件支援金の支出が,補助金の支出としてその手続的要件に欠けるため(本件支援金を補助金と解することにより,実質的に議会による予算統制の潜脱となるような違法な予算執行を許容するに等しい結果をもたらす。),適法な補助金の支出と評価することができない場合につき,控訴人に故意,過失が認められるかどうかについて検討する。 (2) 故意の有無について本件支援金の支出につき,これが損失補償金としての支出である場合,又は,補助金としての支出ではあるが,その手続的要件に欠ける 失が認められるかどうかについて検討する。 (2) 故意の有無について本件支援金の支出につき,これが損失補償金としての支出である場合,又は,補助金としての支出ではあるが,その手続的要件に欠ける場合には,その支出は,いずれも違法な公金の支出となるが,前判示のその支出に至る経緯(第1審判決第2の1,上記1)に照らして,控訴人が上記の点について認識していたとは認められず,控訴人に故意があるということはできない。 (3) 過失の有無についてある事項に関する法律解釈につき異なる見解が対立し,実務上の取扱いも分かれていて,そのいずれについても相当の根拠が認められる場合に,公務員がその一方の見解を正当と解しこれに立脚して公務を執行したときは,後にその執行が違法と判断されたからといって,直ちに上記公務員に過失があったものとすることは相当ではない(最高裁判所昭和46年6月24日第一小法廷判決・民集25巻4号574頁参照)。 本件において,本件支援金の支出について補助金を支出するための手続- 57 -的要件が具備されていないとすれば,その原因は,控訴人が本件支援金の法的性質を損失補償金であると解したことにあると認められる。 しかしながら,前判示(上記1(2),(7))の別府市や豊川市の事例のように,公営と畜場の廃止に当たって,利用業者及びと殺業務従事者らに損失補償金を支払った自治体が存在する一方,食肉センターとほぼ同じ時期に廃止された公営と畜場は多くあるが,中には,損失補償金等を一切支払っていない自治体も存在するなど(甲3ないし7),公営と畜場の廃止に当たっての自治体の対応は分かれている。控訴人は,市長として,市の担当部署(農政課等)にその検討等を委嘱したところ,農政課は財政課とも協議しながら,複数の自治体の実情を調査し,損失補償金を支出 止に当たっての自治体の対応は分かれている。控訴人は,市長として,市の担当部署(農政課等)にその検討等を委嘱したところ,農政課は財政課とも協議しながら,複数の自治体の実情を調査し,損失補償金を支出した別府市や豊川市の事例(豊川市の監査請求事例では,住民の請求が棄却されている。)などを検討した上で,市が本件支援金を支出するのが相当との方針を立て,さらに,支出に係る節については,検討の上,損失補償金としたこと,しかしながら,市議会における審議の際,支出に係る節について議員から意見が何ら出なかったこと,本件支援金を補助金として支出する場合には公益上の必要性の要件を満たしていることからすると,確かに,本件支援金を損失補償金として支出する法的根拠として国有財産法19条,24条類推適用,憲法29条3項とすることについて,控訴人が十分に検討をしていたとはいえないが,他方,行政財産の使用許可の取消しに伴う公法上の損失補償としてされた支出の適法性に関しては,先例となるべき最高裁判所の判断事例が乏しい分野であること,控訴人は公営と畜場の廃止に当たって損失補償金が利用業者等に支払われない例について認識を有していなかったが(第1審控訴人本人58項),これについても,市の担当部署等から控訴人に対して上記例について報告があったとは認められないこと(同59項)からして,やむを得なかったと考えられることなどを併せ考えると,本件支援金を損失補償金として支出したことに- 58 -ついて相当の根拠があったというべきであり,控訴人が本件支援金を損失補償金と解して,これを支出したことについて過失があったとまで認めることはできない。 以上に反する被控訴人らの主張は採用できない。 4 以上によれば,被控訴人らの請求は,その余の点(損害の有無,額)を検討するまでもなく,理 たことについて過失があったとまで認めることはできない。 以上に反する被控訴人らの主張は採用できない。 4 以上によれば,被控訴人らの請求は,その余の点(損害の有無,額)を検討するまでもなく,理由がないから棄却すべきであり,その請求を一部認容した第1審判決は失当であるから,これを取り消して,被控訴人らの請求を棄却することとし,本件訴訟のうち被控訴人P1に関する部分は,平成▲年▲月▲日同被控訴人死亡により終了したから,その旨を明らかにすることとして,主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第5民事部 裁判長裁判官西謙二 裁判官脇由紀及び同桂木正樹は,いずれも転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官西謙二

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