平成28年第677号仮処分命令認可決定に対する保全抗告事件(原審・大津地方裁判所平成28年第12号)(基本事件・同裁判所平成27年第6号)決定当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり平成28年7月12日付け原決定に対する保全抗告につき,当裁判所は次のとおり決定する。 主文 原決定を取り消す。 上記当事者間の大津地方裁判所平成27年第6号原発再稼働禁止仮処分申立事件について,同裁判所が平成28年3月9日にした決定を取り消す。 相手方らの本件仮処分命令申立てを却下する。 手続費用は,原審及び当審を通じて,相手方らの負担とする。 理由 第1抗告の趣旨主文同旨第2事案の概要 保全手続の経過(1)本件は,相手方らが,原子力発電所である高浜発電所3号機及び4号機(以下,3号機を「本件原子力発電所3号機」,4号機を「本件原子力発電所4号機」といい,3号機及び4号機を「本件各原子力発電所」という。)を設置している抗告人に対し,人格権に基づく妨害(予防)排除請求権に基づき,本件各原子 力発電所の運転を仮に差し止める仮処分命令申立て(本件仮処分命令申立て)をした事案である。 (2)大津地方裁判所は,平成28年3月9日,相手方らの本件仮処分命令申立てを相当と認め,本件各原子力発電所の運転を仮に差し止める決定をした(以下「本件仮処分決定」という。)。 (3)抗告人が本件仮処分決定に対し異議を申し立てたところ,大津地方裁判所は,平成28年7月12日,本件仮処分決定を認可する決定をした(原決定)。 (4)抗告人は,原決定に対して,保全抗告をし,原決定及び本件仮処分決定の取消しと本件仮処分命令申立ての却下を求めた。 前提事実疎明資料(乙21ないし23,乙76,乙273の1),下記疎明資料及び審尋の全趣旨によると次の事実 保全抗告をし,原決定及び本件仮処分決定の取消しと本件仮処分命令申立ての却下を求めた。 前提事実疎明資料(乙21ないし23,乙76,乙273の1),下記疎明資料及び審尋の全趣旨によると次の事実を認めることができる。 (1)当事者ア抗告人は,大阪府,京都府,兵庫県(一部を除く。),奈良県,滋賀県,和歌山県,三重県の一部,岐阜県の一部及び福井県の一部に,発電,送電,配電等による電力供給を行う一般電気事業者である。 イ相手方らの住所地は別紙当事者目録記載のとおりである。相手方らは,本件各原子力発電所から70km以内の距離に居住している。 (2)本件各原子力発電所ア抗告人は,福井県大飯郡高浜町田ノ浦1に高浜発電所(以下「高浜原子力発電所」という。)の原子力発電所1号機ないし4号機(加圧水型原子炉)を設置している。このうち,本件原子力発電所3号機及び4号機が「本件各原子力発電所」である。 本件各原子力発電所の原子炉設置変更許可年月日は,いずれも昭和55年8月4日であり,営業運転開始年月日は,本件原子力発電所3号機が昭和60年1月 17日,本件原子力発電所4号機が同年6月5日である。 イ高浜原子力発電所の所在地は福井県の音海半島の根元部に位置する。敷地の北側及び南側は標高100mから200mの山に囲まれ,西側は内浦湾に,東側は若狭湾にそれぞれ面している。 (3)原子力発電ア仕組み原子力発電は,核分裂反応により発生するエネルギーを熱エネルギーに転換した上,熱エネルギーにより蒸気を発生させ,蒸気でタービンを回転させることによる発電方法である。 イ核分裂の原理物質は,原子で構成され,原子は原子核(陽子と中性子の集合体)と電子から構成されている。重い原子核の中には,分裂して軽い原子核に変化しやすい傾向を有しているものがあり,中性 ある。 イ核分裂の原理物質は,原子で構成され,原子は原子核(陽子と中性子の集合体)と電子から構成されている。重い原子核の中には,分裂して軽い原子核に変化しやすい傾向を有しているものがあり,中性子を吸収すると,原子核は不安定な状態となり,分裂して2ないし3個の異なる原子核(核分裂生成物)に分かれるという核分裂を起こす(例えばウラン235)。核分裂が起きる際に,大きなエネルギーが発生し,核分裂生成物(核分裂により生み出される物質をいい,その大部分は放射性物質である。例えば,ウラン235が核分裂すると,放射性物質であるセシウム137,よう素131等が生じる。)及び2ないし3個の速度の速い中性子が生じる。この中性子の一部が他のウラン235等の原子核に吸収されて次の核分裂を起こし,連鎖的に核分裂が維持される現象を核分裂連鎖反応という。 核分裂を起こす物質として,ウラン,プルトニウム等がある。ウラン鉱石から取り出した状態のウランには核分裂しやすい性質を有するウラン235が約0.7%しか含まれておらず,残りの約99.3%は核分裂しにくい性質を有するウラン238である。本件各原子力発電所では,ウラン235の比率を3ないし5%程度に高めた低濃縮ウランのほか,プルトニウムとウランを混ぜ合わせた燃料 (ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料・MixedOxideFuel,以下「MOX燃料」という。)が使用されている。 核分裂連鎖反応を制御するためには,核分裂を起こす中性子の数を調整することが必要であり,中性子を吸収しやすい性質を持つ制御材を用いて中性子の数を調整する。 ウ原子炉の種類原子炉には,減速材及び冷却材の組合せによって次のとおりの種類がある。 減速材及び冷却材の両者の役割を果たすものとして軽水(普通の水)を用いるものを軽水型原子炉という。 軽 整する。 ウ原子炉の種類原子炉には,減速材及び冷却材の組合せによって次のとおりの種類がある。 減速材及び冷却材の両者の役割を果たすものとして軽水(普通の水)を用いるものを軽水型原子炉という。 軽水型原子炉には沸騰水型原子炉(BWR)と加圧水型原子炉(PWR)の2種類がある。 沸騰水型原子炉は,原子炉内で冷却材を沸騰させ,そこで発生した蒸気を直接タービンに送って発電する。 加圧水型原子炉は,1次冷却設備を流れる高圧の1次冷却材を原子炉で高温水とし,これを蒸気発生器に導き,蒸気発生器において,高温水の持つ熱エネルギーを2次冷却設備を流れている2次冷却材に伝えて蒸気を発生させ,この蒸気をタービンに送って発電する。 (4)本件各原子力発電所の構造等ア施設の概要(ア)発電用原子炉施設本件各原子力発電所は,加圧水型原子炉であり,1次冷却設備(原子炉,蒸気発生器,1次冷却材管等),原子炉格納容器,2次冷却設備,電気施設,補助給水設備,工学的安全施設,使用済燃料ピット(使用済燃料貯蔵槽)等により構成される(以下,上記の原子炉及びその附属施設を併せて「発電用原子炉施設」という。)。 (イ)1次冷却設備1次冷却設備は,原子炉,加圧器,蒸気発生器,1次冷却材ポンプ,1次冷却材管等から構成される。原子炉内で生じたウラン235等の核分裂による熱エネルギーで1次冷却材を高温水とした上,これを蒸気発生器に導き,蒸気発生器内において2次冷却材に熱を伝えて蒸気にする機能を果たしている。 a原子炉原子炉は,原子炉容器,燃料集合体,制御材(制御棒及びほう素),1次冷却材等から構成されている。原子炉は,核分裂連鎖反応を制御しながら安定的に持続させ,それにより発生する熱エネルギーを安全かつ有効に取り出す設備である。 (a)原子炉容器原子炉容器は,上部及び 次冷却材等から構成されている。原子炉は,核分裂連鎖反応を制御しながら安定的に持続させ,それにより発生する熱エネルギーを安全かつ有効に取り出す設備である。 (a)原子炉容器原子炉容器は,上部及び底部が半球状の縦置き円筒型の容器である。内部には,燃料集合体,制御棒等が配置され,1次冷却材で満たされている。 原子炉容器内の燃料集合体が存在する部分を炉心という。 (b)燃料集合体燃料集合体は,燃料被覆管の中にペレット(低濃縮ウラン燃料のペレットは二酸化ウランを小さな円柱形に焼き固めたものであり,MOX燃料のペレットは二酸化プルトニウムと二酸化ウランを混合して小さな円柱形に焼き固めたものである。)を詰めた燃料棒を束ねたものである。 燃料棒は,ペレットを,長さ約4mのジルコニウム基合金製の燃料被覆管の中に縦に積み重ね,密封溶接したものである。 本件各原子力発電所で用いる燃料集合体には,ウラン燃料集合体とMOX燃料集合体とがある。ウラン燃料集合体は,ウラン燃料棒264本を17行17列の正方格子状に配列したものである。また,MOX燃料集合体は,ウラン燃料集合体と同様に,MOX燃料棒264本を17行17列の正方格子状に配列したものである。 ウラン燃料棒は,ウランペレットを使用している。ウランペレットは,ウランと酸素の化合物である二酸化ウランの粉末を,直径約8mm,高さ約10mmに焼き固めたものである。 MOX燃料棒はMOXペレットを使用している。MOXペレットは,プルトニウムと酸素の化合物である二酸化プルトニウムと,二酸化ウランの粉末を,直径約8㎜,高さ約10mmに焼き固めたものである。 ウラン燃料は,ウラン235(核分裂しやすい性質を有する)を約4%含み,その余はウラン238(核分裂しにくい性質を有する)で構成されている。 MOX燃料は,プルトニ 約10mmに焼き固めたものである。 ウラン燃料は,ウラン235(核分裂しやすい性質を有する)を約4%含み,その余はウラン238(核分裂しにくい性質を有する)で構成されている。 MOX燃料は,プルトニウム239(核分裂しやすい性質を有する)等を含んだプルトニウムを約10%含み,その余はウラン238等で構成されている。 ペレットは,高温で焼き固めたセラミックであるため,化学的に安定しており,放射性物質の大部分をその中に閉じ込める機能を有している。 燃料被覆管は,ペレット外に一部出てくる気体状の放射性物質(FPガス)をその中に閉じ込める機能を有している。 (c)制御材(制御棒及びほう素)原子炉において核分裂連鎖反応を安定的に持続させ制御するためには,核分裂を起こす中性子の数を調整することが必要であり,制御材はこの調整に用いられる。 本件各原子力発電所では,制御材として制御棒及びほう素を用いている。 ①制御棒(制御棒クラスタ)制御棒には,中性子を吸収しやすい性質を有する合金が用いられている。本件各原子力発電所では,24本の制御棒を束ねて制御棒クラスタ(以下,単に「制御棒」という)とし,この制御棒を,原子炉容器の上部にある制御棒駆動装置により,炉心に出し入れできるように配置している。 本件各原子力発電所の通常運転時には,制御棒駆動装置により,制御棒を炉心からほぼ全部引き抜いた状態で保持しているが,緊急時には,自重で炉心に落下する ことで,速やかに原子炉を自動で停止できる仕組みとなっている。 ②ほう素ほう素(ほう酸)は,中性子を吸収しやすい性質を有している。ほう素(ほう酸)を1次冷却材に添加し,その濃度を調整することによって中性子の数を調整し,核分裂連鎖反応を制御することができる。 (d)1次冷却材1次冷却材は,核分裂により生じた熱エネルギーを 。ほう素(ほう酸)を1次冷却材に添加し,その濃度を調整することによって中性子の数を調整し,核分裂連鎖反応を制御することができる。 (d)1次冷却材1次冷却材は,核分裂により生じた熱エネルギーを吸収して高温水となり,蒸気発生器に導かれた上で,その熱エネルギーを2次冷却材に伝達している。 b加圧器加圧器は,原子炉で高温(約300℃)になった1次冷却材が沸騰しないよう高い圧力をかけ,かつ,1次冷却材の熱膨張及び収縮による圧力変動を調整し,1次冷却材の圧力を一定に制御するための設備であり,1次冷却材管に接続されている。 c蒸気発生器蒸気発生器は,1次冷却材の熱エネルギーを2次冷却材に伝えるための熱交換器である。蒸気発生器の内部にある伝熱管内を流れている1次冷却材が,伝熱管の外側の2次冷却材を熱し,2次冷却材が蒸気となってタービンに導かれる。 d1次冷却材ポンプ1次冷却材ポンプは,1次冷却材を循環させるための設備であり,蒸気発生器の1次冷却材出口側に設置される。蒸気発生器において2次冷却材に熱エネルギーを伝え終えた1次冷却材は,このポンプにより再び原子炉に送られる。 e1次冷却材管1次冷却材管は,1次冷却材が通るステンレス鋼製配管である。原子炉容器,蒸気発生器及び1次冷却材ポンプを相互に連絡し,回路を形成している。 (ウ)2次冷却設備2次冷却設備は,タービン,復水器,主給水ポンプ,及びそれらを接続する配管 等(主蒸気管等)から構成されている。 2次冷却設備では,蒸気発生器で蒸気となった2次冷却材をタービンに導き,蒸気の力でタービンを回転させて発電する。また,タービンを回転させた蒸気を復水器において海水で冷却して水に戻し,主給水ポンプ等で再び蒸気発生器に送っている。復水器で蒸気から熱を伝えられた海水は,放水口から海に放出される。 な せて発電する。また,タービンを回転させた蒸気を復水器において海水で冷却して水に戻し,主給水ポンプ等で再び蒸気発生器に送っている。復水器で蒸気から熱を伝えられた海水は,放水口から海に放出される。 なお,2次冷却材は,放射性物質を含む1次冷却材とは隔離されているため,放射性物質を含んでいない。 (エ)電気施設電気施設は,常用電源設備として発電機及び外部電源を備えるとともに,常用電源を喪失した場合の非常用電源設備として,非常用ディーゼル発電機を備えている。 a常用電源設備(発電機,外部電源)(a)発電機発電機は,タービンの回転エネルギーをもとに電気を発生させる設備であり,発生した電気は,変圧器を通じて原子力発電所外の送電線に送られるほか,原子力発電所内の各設備にも供給される。 (b)外部電源原子力発電所は,変圧器を通じて原子力発電所外の送電線につながっており,これにより原子力発電所外から電力の供給を受けることができる。この原子力発電所外から供給される電源を「外部電源」という。 原子力発電所内の機器を作動させるために必要な電力は,通常は原子力発電所内の発電機から供給されるが,発電機が停止している場合には,外部電源から供給される。 本件各原子力発電所に接続する送電線については,送電及び受電が可能な500kV(キロボルト)送電線を青葉線及び高浜線の2ルートで4回線,受電専用の77kV送電線を高浜連絡線の1ルートで1回線,合計で3ルート5回線を確保し ている。また,500kV送電線は約30㎞離れた新綾部変電所に連系し,77kV送電線は約9km離れた高浜変電所に連系する(さらに嶺南変電所を経由するルートとする)ことで各々独立性を持たせるとともに,地すべり等で電力の供給が全て同時に停止しないよう,送電線を同一の送電鉄塔に架設しないこととしてい た高浜変電所に連系する(さらに嶺南変電所を経由するルートとする)ことで各々独立性を持たせるとともに,地すべり等で電力の供給が全て同時に停止しないよう,送電線を同一の送電鉄塔に架設しないこととしている。 b非常用電源設備(非常用ディーゼル発電機)非常用の電源設備である非常用ディーゼル発電機は,原子力発電所の発電機が停止し,かつ外部電源を喪失した場合に,原子炉を安全に停止した状態で維持するために必要な電力を供給し,後記の工学的安全施設を作動させるための電力も供給する。 本件各原子力発電所では,1台で必要な電力を供給できる容量を持つ非常用ディーゼル発電機を各号機に2台ずつ備え,それぞれ独立した区画に分離して設置している。 (オ)原子炉停止の際に原子炉内の熱を除去する設備原子炉が停止し,核分裂連鎖反応が止まった後も,燃料集合体に内包される放射性物質の発熱は継続するため,原子炉停止後も冷却手段を確保する必要がある。 原子炉を停止する初期段階では主給水設備(主給水設備が機能喪失した場合等は補助給水設備)により冷却する。そして,1次冷却材の圧力及び温度が所定のレベルまで低下した段階で余熱除去設備による冷却に切り替えて原子炉内の残留熱を除去する。 a主給水設備及び補助給水設備(a)主給水設備原子炉停止の際は,まず2次冷却設備の主給水ポンプ等で蒸気発生器への給水を継続することにより,蒸気発生器で1次冷却材の熱を2次冷却材に伝えて原子炉内の熱(残留熱を含む)を除去する。熱を伝えられて蒸気となった2次冷却材は,復水器において海水に熱を伝えて(海水で冷却されて)水に戻り,熱を伝えられた海 水は,放水口から海に放出される。 (b)補助給水設備(電動補助給水ポンプ,タービン動補助給水ポンプ)主給水ポンプ等による給水機能が故障その他何らかの原因で失わ て)水に戻り,熱を伝えられた海 水は,放水口から海に放出される。 (b)補助給水設備(電動補助給水ポンプ,タービン動補助給水ポンプ)主給水ポンプ等による給水機能が故障その他何らかの原因で失われた場合等には,補助給水設備を用いて,復水タンクを水源として蒸気発生器への給水を維持する。 補助給水設備には,電動機により駆動する電動補助給水ポンプと,動力源として電力を必要とせず蒸気タービンにより駆動するタービン動補助給水ポンプとがあり,本件各原子力発電所の各号機には,それぞれ電動補助給水ポンプが2台,タービン動補助給水ポンプが1台設置されている。 電動補助給水ポンプの電動機は,外部電源が失われた場合でも,非常用ディーゼル発電機により電力の供給を受ける。タービン動補助給水ポンプは,動力源として電力を必要とせず,2次冷却設備である主蒸気管から分岐して取り出した蒸気の力で駆動する。 補助給水設備によって蒸気発生器に送られ,1次冷却材の熱を伝えられて蒸気となった2次冷却材(前記のとおり放射性物質を含まない)は,これを主蒸気逃がし弁又は主蒸気安全弁から大気に直接放出することによって熱を排出する設計としている。主蒸気逃がし弁及び主蒸気安全弁は設定圧力に達すると自動的に作動する(主蒸気逃がし弁は手動で開閉することも可能である。)。 b余熱除去設備余熱除去設備は,余熱除去ポンプ及び余熱除去冷却器等から構成される。 余熱除去設備では,原子炉で残留熱を伝えられた1次冷却材の一部が,余熱除去ポンプによって1次冷却材管から余熱除去冷却器へ送られ,余熱除去冷却器で冷却されてから1次冷却材管へ戻される。 原子炉の残留熱は,余熱除去冷却器で除去された後,最終的に海水に伝えられ,熱を伝えられた海水は放水口から海に放出される。 (カ)工学的安全施設 原子炉施設の故障や から1次冷却材管へ戻される。 原子炉の残留熱は,余熱除去冷却器で除去された後,最終的に海水に伝えられ,熱を伝えられた海水は放水口から海に放出される。 (カ)工学的安全施設 原子炉施設の故障や破損等による,炉心の著しい損傷及びそれに伴う多量の放射性物質放出の防止又は抑制のため,非常用炉心冷却設備(EmergencyCoreCoolingSystem,以下「ECCS」という。),原子炉格納施設,原子炉格納容器スプレイ設備等の工学的安全施設が設置されている。 工学的安全施設の各設備には,多重性,独立性を持たせ,互いに独立した2系統以上の設備で構成させることにより,同時にその機能を喪失しない設計としている。 多重性とは,同一の機能を有し,かつ,同一の構造,動作原理等を有する設備(系統又は機器)が2つ以上あることをいう。 独立性とは,2つ以上の設備(系統又は機器)を,物理的方法その他の方法によりそれぞれ互いに分離することにより,設計上考慮する環境条件及び運転状態において,共通の要因又は従属的な要因によって同時にその機能が損なわれないことをいう。 例えば,ECCSの高圧注入系の充てん/高圧注入ポンプは,1台で必要な能力を有するものを2台分離して設置し,また,ポンプの電動機は各々独立した電気系統に接続している。 外部電源が喪失した場合でも,非常用ディーゼル発電機により電力が供給される仕組みとしている。 a非常用炉心冷却設備(ECCS)ECCSは,蓄圧注入系,高圧注入系及び低圧注入系で構成され,万一,1次冷却材管の破断等により1次冷却材の喪失(LossofCoolantAccident,以下「LOCA」という。)等が発生した場合であっても,ほう酸水を原子炉容器内に注入して原子炉を冷却することで,炉心の著しい損傷を防止できる。 b原子炉格 ofCoolantAccident,以下「LOCA」という。)等が発生した場合であっても,ほう酸水を原子炉容器内に注入して原子炉を冷却することで,炉心の著しい損傷を防止できる。 b原子炉格納施設原子炉格納施設は,原子炉格納容器及びアニュラス部で構成されている。 1次冷却設備を格納する原子炉格納容器は,気密性が確保されていることから, LOCAが発生した場合等において圧力障壁となり,かつ,放射性物質の放出に対する障壁ともなる。本件各原子力発電所においては,原子炉格納容器の本体部は半球形ドームを有する円筒形の炭素鋼製であり,そのさらに外側には,鉄筋コンクリート造の外側遮へい建屋が設けられている。 アニュラス部は,原子炉格納容器の配管等貫通部の外側に設けられた密閉された空間であり,LOCAが発生した場合等に,原子炉格納容器に設けられた配管等の貫通部から漏えいした放射性物質を含む空気を閉じ込める機能を持つ。 c原子炉格納容器スプレイ設備原子炉格納容器スプレイ設備は,格納容器スプレイポンプ,スプレイリング等で構成されている。LOCAが発生した場合等に,核分裂により生成した放射性よう素を吸収しやすくする薬剤をほう酸水に添加しながら,原子炉格納容器内に水を噴霧して圧力上昇を抑えるとともに,原子炉格納容器内に浮遊する放射性よう素等を除去する機能を持つ。 (キ)使用済燃料ピット(使用済燃料貯蔵槽)本件各原子力発電所の原子炉から取り出された使用済燃料を貯蔵する設備である「使用済燃料ピット」は,使用済燃料の冷却に十分な量の使用済燃料ピット水で満たされており(水深は約12m),貯蔵した使用済燃料(長さ約4m)の上端から水面まで十分な深さを確保している。 使用済燃料ピット水は,使用済燃料ピット水浄化冷却設備により,継続的に浄化及び冷却されており, ており(水深は約12m),貯蔵した使用済燃料(長さ約4m)の上端から水面まで十分な深さを確保している。 使用済燃料ピット水は,使用済燃料ピット水浄化冷却設備により,継続的に浄化及び冷却されており,その水温は,通常約40℃以下に保たれている(冷却機能)。 また,その水位及び水温は常時監視されていることに加え,仮に冷却機能を喪失するなどして水位が低下した場合に,使用済燃料ピット水を補給するための設備も設けられている(補給機能)。 使用済燃料ピットに接続される配管は,全て使用済燃料の上端よりも高い位置で接続され,万一,これらの配管が破断しても,その配管の接続位置より水位が低 下することはなく,使用済燃料の冠水状態は維持される。 使用済燃料は,適切な間隔を空けて保管し,冠水状態を維持さえしていれば残留熱(崩壊熱)が十分除去され,放射性物質を閉じ込める役割を果たす燃料被覆管の損傷に至ることはなく,安全性を確保することができる。 (5)新規制基準以前の本件各原子力発電所の安全性審査(乙21ないし23,乙36,乙37)ア規制の概要昭和30年12月19日,原子力基本法が制定された。同時に原子力委員会設置法が制定され,原子力の研究,開発及び利用に関する行政の民主的運営を図るため総理府(当時)に原子力委員会が設置された。 原子力委員会は昭和53年9月「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」を制定し,その翌月原子力基本法の改正により総理府(当時)の審議会として原子力安全委員会が設置された。 イ経緯(ア)原子力安全委員会は,核燃料物質及び原子炉に関する規制のうち,安全確保のための規制等の企画,審議,決定等を所掌事務としていた。 原子力安全委員会は,安全審査において,同委員会が策定した各種の指針等を適用し,耐震設計の妥当性に関しては耐震設計審査指針 制のうち,安全確保のための規制等の企画,審議,決定等を所掌事務としていた。 原子力安全委員会は,安全審査において,同委員会が策定した各種の指針等を適用し,耐震設計の妥当性に関しては耐震設計審査指針を適用した。 耐震設計審査指針は,耐震設計において基準とすべき地震動(地震の発生によって放出されたエネルギーが特定の地点に到達し同地点の地盤を揺らす場合の当該揺れのこと。以下「基準地震動」という。)を定義した。 (イ)原子力安全委員会は,平成18年9月19日,耐震設計審査指針を始めとする安全審査指針類を改訂した。 (ウ)平成18年9月19日改訂前の耐震設計審査指針平成18年9月19日改訂前の耐震設計審査指針では,耐震設計において基準 とすべき地震動(基準地震動)とした上,次のとおり,「設計用最強地震」に対応する地震動を「基準地震動S1」,「設計用限界地震」に対応する地震動を「基準地震動S2」として,それぞれ策定することとした。 「設計用最強地震」は,歴史的証拠から過去において敷地又はその近傍に影響を与えたと考えられる地震が近い将来再び起こり,敷地及びその周辺に同様の影響を与えるおそれのある地震,並びに近い将来敷地に影響を与えるおそれのある活動度の高い活断層による地震のうちから,敷地の基盤に最大の地震動を与える地震を想定したものである(基準地震動S1)。 「設計用限界地震」は,地震学的見地に立てば,設計用最強地震を超える地震の発生が否定できない場合があるので,地震学上「設計用最強地震」を上回る地震が比較的近い時代に発生したことがあると判断される場合に,さらに過去の地震の発生状況,敷地周辺の活断層及び地震地体構造に基づく工学的見地からの検討を加えて,敷地の基盤に最大の地震動を与える地震を想定したものである(基準地震動S2)。 平成18年9月1 ,さらに過去の地震の発生状況,敷地周辺の活断層及び地震地体構造に基づく工学的見地からの検討を加えて,敷地の基盤に最大の地震動を与える地震を想定したものである(基準地震動S2)。 平成18年9月19日改訂前の耐震設計審査指針は,原子炉の安全性確保のために重要な役割を果たす安全上重要な施設・設備が基準地震動S1に対して損傷や塑性変形をしないこと,また,基準地震動S2に対して機能喪失しないことを確認するよう指示した。 (エ)平成18年9月19日改訂後の耐震設計審査指針(以下「平成18年耐震設計審査指針」という。)平成18年耐震設計審査指針では,基準地震動S1及び基準地震動S2が基準地震動Ssに一本化され,基準地震動の策定の際に震源として考慮する活断層の活動時期の範囲が拡張されるとともに,基準地震動の策定方法が当時の科学的・技術的知見に基づいてされ,安全上重要な施設・設備の耐震設計において基準とする地震動として,敷地周辺の地質・地質構造並びに地震活動性等の地震学的及 び地震工学的見地から施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があり,施設に大きな影響を与えるおそれがあると想定することが適切なものを策定しなければならないと定められた(基準地震動Ss)。 発電用原子炉施設のうち重要施設(耐震重要度分類がSクラスの施設)は,基準地震動Ssに対してその安全機能を保持できることが必要である旨定められた。 (オ)耐震設計審査指針の上記改訂を受け,原子力安全・保安院は,平成18年9月20日,「新耐震指針に照らした既設発電用原子炉施設等の耐震安全性の評価及び確認に当たっての基本的な考え方並びに評価手法及び確認基準について」(以下「バックチェックルール」という。)を策定した。 原子力安全・保安院は,平成18年9月20日付けで,抗告人を含む各原 の評価及び確認に当たっての基本的な考え方並びに評価手法及び確認基準について」(以下「バックチェックルール」という。)を策定した。 原子力安全・保安院は,平成18年9月20日付けで,抗告人を含む各原子力事業者に対し,本件各原子力発電所を含む稼働中及び建設中の発電用原子炉施設等について,平成18年耐震設計審査指針及びバックチェックルールによる耐震安全性評価(以下「耐震バックチェック」という。)を実施するよう指示した。 (カ)本件各原子力発電所の基準地震動は,平成18年9月19日改訂前の耐震設計審査指針により,基準地震動S1の最大加速度(地震によって地盤が振動する速度の単位時間当たりの変化の割合のうち最大のもの)が270ガル(水平方向),基準地震動S2の最大加速度が360ガル(水平方向)及び370ガル(直下地震,水平方向)とされていた。 抗告人は,耐震バックチェックの実施指示に基づき,本件各原子力発電所敷地周辺及び敷地の敷地調査,地下構造の評価検討等を行い,本件各原子力発電所の基準地震動Ssを新たに550ガル(水平方向)と策定した。なお,基準地震動の加速度は,固有周期(構造物が一揺れするのに要する時間であり,特定の揺れやすい周期)が最も短周期側の地震動(周期0.02秒)で表記される。 原子力安全・保安院及び原子力委員会は,抗告人の基準地震動策定を適切なものであるとして確認した。 (キ)平成23年3月11日に東北地方太平洋沖で発生した地震(以下「東北地方太平洋沖地震」という。)及びこれに伴う東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)福島第一原子力発電所事故(以下「福島第一原子力発電所事故」という。)を受け,原子力安全委員会は,経済産業大臣に対し,既設の発電用原子炉施設について,設計上の想定を超える外部事象に対する頑健性に関して総合的に 子力発電所事故(以下「福島第一原子力発電所事故」という。)を受け,原子力安全委員会は,経済産業大臣に対し,既設の発電用原子炉施設について,設計上の想定を超える外部事象に対する頑健性に関して総合的に評価することなどを要請した。 内閣官房長官,経済産業大臣及び内閣府特命担当大臣は,上記要請を受け,同年7月11日,新たな安全評価を実施することとし,これを受け,原子力安全・保安院は,同月22日,抗告人を含む各原子力発電事業者等に対し,福島第一原子力発電所事故を踏まえた既設の発電用原子炉施設の安全性に関する総合的評価(以下「ストレステスト」という。)を行い,その結果について報告をするよう求めた。 抗告人は,本件各原子力発電所についてのストレステスト(以下「本件ストレステスト」という。)を実施し,原子力安全・保安院に対し,平成24年4月,本件各原子力発電所の安全性に関する一次評価の結果の報告書を提出した。 ウ本件ストレステストの内容(ア)クリフエッジ及び耐震裕度抗告人は,地震,津波,地震と津波の重畳,全交流動力電源喪失及び最終ヒートシンク喪失(燃料体等から除熱するための海水を取水できない場合)の各評価項目に関し,炉心の燃料集合体及び本件各原子力発電所の使用済燃料ピットにある使用済燃料(以下「燃料体等」という。)について,本件各原子力発電所の安全上重要な施設・設備によって燃料体等の重大な損傷の発生を回避できるかを検討し,上記各評価項目に係るクリフエッジ(原子力発電所の状況が急変する地震,津波等の負荷のレベル)を特定した。 抗告人は,本件各原子力発電所の安全上重要な施設・設備の耐震性が基準地震 動Ssに対して余裕を有しており,その余裕の大きさ(以下「耐震裕度」という。)は個々の施設ごとに異なることを前提に,本件ストレステストの前に行われた緊 安全上重要な施設・設備の耐震性が基準地震 動Ssに対して余裕を有しており,その余裕の大きさ(以下「耐震裕度」という。)は個々の施設ごとに異なることを前提に,本件ストレステストの前に行われた緊急安全対策の結果も踏まえ,安全上重要な施設・設備が基準地震動Ssの何倍の地震動を受ければその機能を喪失し,事態を収束させることが不可能となるかを検討した。 その結果,抗告人は,地震による炉心損傷に係るクリフエッジを基準地震動Ssに係る最大加速度の1.77倍である973.5ガルと特定した。また,津波による炉心損傷に係るクリフエッジを津波の高さ10.8m,炉心の燃料集合体についての全交流動力電源喪失及び最終ヒートシンク喪失に係るクリフエッジを約18ないし19日と特定した。 抗告人は,本件ストレステストに際し,上記のとおり,地震と津波とが重畳する場合その他のシビアアクシデント(過酷事故)・マネジメントについても検討し,地震と津波との重畳については,基準地震動Ssの1.77倍の大きさの地震と高さ10.8mの津波とが同時に発生した場合を想定しても炉心損傷に至ることはないと判断した。 (イ)抗告人は,上記各評価項目について,起因事象(機器の損傷等に起因して生じ,有効な収束手段がとられなければ燃料体等の重大な損傷に至る可能性のある事象)を選定し,当該起因事象の影響緩和に必要な機能を抽出してイベントツリーを作成し,当該起因事象の進展を収束させる手順(以下「収束シナリオ」という。)を特定し,各収束シナリオごとにクリフエッジを検討した上,その最小のものを踏まえ,前記(ア)のクリフエッジの特定ないし判断を行った。 (6)新規制基準及び再稼働申請(乙251の1,2)ア新規制基準(ア)福島第一原子力発電所事故を契機に,原子力規制委員会設置法(以下「設置法」とい )のクリフエッジの特定ないし判断を行った。 (6)新規制基準及び再稼働申請(乙251の1,2)ア新規制基準(ア)福島第一原子力発電所事故を契機に,原子力規制委員会設置法(以下「設置法」という。)が平成24年6月27日に制定され,原子力規制委員会の組 織及び権能が規定された。 (イ)核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和32年法律第166号)が改正された(平成24年6月27日法律第47号,以下,同法律を,改正の前後を通じて「原子炉等規制法」という。)。 そして,改正された原子炉等規制法の施行に伴い,別紙「規則・告示・内規一覧表」のとおり,原子力規制委員会規則,告示及び内規等が制定又は改正され,その後も必要に応じ,内規等が制定されている(以下,これらのうち行政手続法上の命令等に該当するものを「新規制基準」という。)。 (ウ)改正後の原子炉等規制法は,「発電用原子炉を設置しようとする者は,政令で定めるところにより,原子力規制委員会の許可を受けなければならない。」(同法43条の3の5第1項)と規定し(以下,上記許可を「原子炉設置許可」という。),原子炉設置許可を受けた者(以下「発電用原子炉設置者」という。)が同条2項2号から5号まで又は8号から10号までに掲げる事項を変更しようとするときについても,「政令で定めるところにより,原子力規制委員会の許可を受けなければならない。」(同法43条の3の8第1項)と規定した(以下,上記変更許可を「設置変更許可」という。)。 同法43条の3の6第1項4号及び同号を準用する同法43条の3の8第2項は,原子炉設置許可又は設置変更許可の要件の一つとして「発電用原子炉施設の位置,構造及び設備が核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物又は発電用原子炉による災害の防止上支障がないも 8第2項は,原子炉設置許可又は設置変更許可の要件の一つとして「発電用原子炉施設の位置,構造及び設備が核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物又は発電用原子炉による災害の防止上支障がないものとして原子力規制委員会規則で定める基準に適合するものであること」を挙げている。 上記「原子力規制委員会規則」が「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置,構造及び設備の基準に関する規則」(以下「設置許可基準規則」という。)であり,その解釈を示す規程が「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置,構造及び設備の基準に関する規則の解釈」と題する規程(以下「設置許可基準規則解釈」と いう。)である。 イ用語新規制基準(設置許可基準規則,設置許可基準規則解釈等)で用いられている用語の意義は次のとおりである。 (ア)通常運転(設置許可基準規則2条2項2号)設計基準対象施設において計画的に行われる発電用原子炉の起動,停止,出力運転,高温待機,燃料体の取替えその他の発電用原子炉の計画的に行われる運転に必要な活動をいう。 (イ)運転時の異常な過渡変化(同3号)通常運転時に予想される機械又は器具の単一の故障若しくはその誤作動又は運転員の単一の誤操作及びこれらと類似の頻度で発生すると予想される外乱によって発生する異常な状態であって,当該状態が継続した場合には発電用原子炉の炉心又は原子炉冷却材圧力バウンダリの著しい損傷が生ずるおそれがあるものとして安全設計上想定すべきものをいう。 (ウ)設計基準事故(同4号)発生頻度が運転時の異常な過渡変化より低い異常な状態であって,当該状態が発生した場合には発電用原子炉施設から多量の放射性物質が放出するおそれがあるものとして安全設計上想定すべきものをいう。 (エ)安全機能(同5号)発電用原子炉施設の安全性を確保するた て,当該状態が発生した場合には発電用原子炉施設から多量の放射性物質が放出するおそれがあるものとして安全設計上想定すべきものをいう。 (エ)安全機能(同5号)発電用原子炉施設の安全性を確保するために必要な機能であって,次に掲げるものをいう。 aその機能の喪失により発電用原子炉施設に運転時の異常な過渡変化又は設計基準事故が発生し,これにより公衆又は従事者に放射線障害を及ぼすおそれがある機能b発電用原子炉施設の運転時の異常な過渡変化又は設計基準事故の拡大を防止 し,又は速やかにその事故を収束させることにより,公衆又は従事者に及ぼすおそれがある放射線障害を防止し,及び放射線物質が発電用原子炉を設置する工場又は事業所外へ放出されることを抑制し,又は防止する機能(オ)安全機能の重要度(同6号)発電用原子炉施設の安全性の確保のために必要な安全機能の重要性の程度をいう。 (カ)設計基準対象施設(同7号)発電用原子炉施設のうち,運転時の異常な過渡変化又は設計基準事故の発生を防止し,又はこれらの拡大を防止するために必要となるものをいう。 (キ)安全施設(同8号)設計基準対象施設のうち,安全機能を有するものをいう。 (ク)重要安全施設(同9号)安全施設のうち,安全機能の重要度が特に高い安全機能を有するものをいう。 (ケ)工学的安全施設(同10号)発電用原子炉施設の損壊又は故障その他の異常による発電用原子炉内の燃料体の著しい損傷又は炉心の著しい損傷により多量の放射線物質の放出のおそれがある場合に,これを抑制し,又は防止するための機能を有する設計基準対象施設をいう。 (コ)重大事故等対処施設(同11号)重大事故に至るおそれがある事故(運転時の異常な過渡変化及び設計基準事故を除く。)又は重大事故に対処するための機能を有する施設をいう。 計基準対象施設をいう。 (コ)重大事故等対処施設(同11号)重大事故に至るおそれがある事故(運転時の異常な過渡変化及び設計基準事故を除く。)又は重大事故に対処するための機能を有する施設をいう。 (サ)特定重大事故等対処施設(同12号)重大事故等対処施設のうち,故意による大型航空機の衝突その他のテロリズムにより炉心の著しい損傷が発生するおそれがある場合又は炉心の著しい損傷が発生した場合において,原子炉格納容器の破損による工場等外への放射線物質の異 常な水準の放出を抑制するためのものをいう。 (シ)設計基準事故対処設備(同13号)設計基準事故に対処するための安全機能を有する設備をいう。 (ス)重大事故等対処設備(同14号)重大事故等に対処するための機能を有する設備をいう。 (セ)重大事故防止設備(同15号)重大事故等対処施設のうち,重大事故に至るおそれがある事故が発生した場合であって,設計基準事故対処設備の安全機能又は使用済燃料貯蔵槽の冷却機能若しくは注水機能が喪失した場合において,その喪失した機能(重大事故に至るおそれがある事故に対処するために必要な機能に限る。)を代替することにより重大事故の発生を防止する機能を有する設備をいう。 (ソ)重大事故緩和設備(同16号)重大事故等対処施設のうち,重大事故が発生した場合において,当該重大事故の拡大を防止し,又はその影響を緩和するための機能を有する設備をいう。 (タ)一次冷却材(同31号)炉心において発生した熱を発電用原子炉から直接に取り出すことを目的とする流体をいう。 (チ)二次冷却材(同32号)一次冷却材の熱を熱交換器により取り出すための流体であって,蒸気タービンを駆動させることを主たる目的とする流体をいう。 (ツ)一次冷却系統(同33号)炉心を直接冷却する冷却材が循 却材(同32号)一次冷却材の熱を熱交換器により取り出すための流体であって,蒸気タービンを駆動させることを主たる目的とする流体をいう。 (ツ)一次冷却系統(同33号)炉心を直接冷却する冷却材が循環する回路をいう。 (テ)最終ヒートシンク(同34号)発電用原子炉施設において発生した熱を最終的に除去するために必要な熱の逃がし場をいう。 (ト)原子炉冷却材圧力バウンダリ(同35号)発電用原子炉のうち,運転時の異常な過渡変化時及び設計基準事故時において,圧力障壁となる部分をいう。 (ナ)原子炉格納容器(同36号)一次冷却系統に係る発電用原子炉施設の容器内の機械又は器具から放出される放射線物質の漏えいを防止するために設けられる容器をいう。 (ニ)原子炉格納容器バウンダリ(同37号)発電用原子炉施設のうち,原子炉格納容器において想定される事象が発生した場合において,圧力障壁及び放射性物質の放出の障壁となる部分をいう。 (ヌ)耐震重要施設(設置許可基準規則3条1項)設計基準対象施設のうち,地震の発生によって生ずるおそれがあるその安全機能の喪失に起因する放射線による公衆への影響の程度が特に大きいものをいう。 (ネ)基準地震動による地震力(同4条3項)耐震重要施設の供用中に,当該耐震重要施設に大きな影響を及ぼすおそれがある地震による加速度によって作用する地震力をいう。 (ノ)基準津波(同5条)設計基準対象施設の供用中に,当該設計基準対象施設に大きな影響を及ぼすおそれがある津波をいう。 ウ再稼働申請(ア)発電用原子炉設置者が発電用原子炉施設の設置又は変更の工事をしようとする場合には,「原子力規制委員会規則で定めるところにより,当該工事に着手する前に,その工事の計画について原子力規制委員会の認可を受けなければならない」(原子炉等規 設の設置又は変更の工事をしようとする場合には,「原子力規制委員会規則で定めるところにより,当該工事に着手する前に,その工事の計画について原子力規制委員会の認可を受けなければならない」(原子炉等規制法43条の3の9第1項)(以下,上記認可を「工事計画認可」という。)。 工事計画認可を受けて工事をする発電用原子炉施設は,「その工事について原子力規制委員会規則で定めるところにより原子力規制委員会の検査を受け,これに 合格した後でなければ,これを使用してはならない」(同法43条の3の11第1項)(以下,上記検査を「使用前検査」という。)。 発電用原子炉設置者は,「原子力規制委員会規則で定めるところにより,保安規定(中略)を定め,発電用原子炉の運転開始前に,原子力規制委員会の認可を受けなければならない」とされ,「これを変更しようとするときも,同様とする」(同法43条の3の24第1項)とされている(以下,上記変更認可を「保安規定変更認可」という。)。 (イ)停止中の原子炉を再稼働させるには,当該原子炉が新規制基準に適合することが必要となる。 発電用原子炉設置者は,原子力規制委員会に対し,設置変更許可の申請を行い,同委員会による新規制基準への適合性審査を経た上で設置変更許可を受けるとともに,工事計画認可及び保安規定変更認可の各申請を行ってこれらの認可を受け,さらに,工事計画認可を受けて工事をした施設について使用前検査に合格する必要がある(以下,設置変更許可,工事計画認可及び保安規定変更認可の各申請を併せて「再稼働申請」という。)。 エ本件各原子力発電所の稼働状況(ア)本件各原子力発電所のうち4号機は平成23年7月21日から,3号機は平成24年2月20日から定期検査を開始し,その後運転を停止した。 (イ)抗告人は,改正原子炉等規制法等の施行 所の稼働状況(ア)本件各原子力発電所のうち4号機は平成23年7月21日から,3号機は平成24年2月20日から定期検査を開始し,その後運転を停止した。 (イ)抗告人は,改正原子炉等規制法等の施行を踏まえ,平成25年7月8日,原子力規制委員会に対し,本件各原子力発電所の再稼働申請を行った。 原子力規制委員会は,本件各原子力発電所の新規制基準に対する適合性を審査し,本件各原子力発電所の基準地震動Ssが700ガルに引き上げられたことなどを踏まえ,平成26年12月17日,本件各原子力発電所の新規制基準への適合性を認め,「関西電力株式会社高浜発電所の発電用原子炉設置変更許可申請書(3号及び4号発電用原子炉施設の変更)に関する審査書(案)」(乙14の1) を取りまとめた。 上記審査書(案)については,同月18日から平成27年1月16日までの間,パブリックコメント(意見公募手続)が行われ,その結果も踏まえ,同年2月12日,「関西電力株式会社高浜発電所の発電用原子炉設置変更許可申請書(3号及び4号発電用原子炉施設の変更)に関する審査書(修正案)」が原子力規制委員会において了承され,設置変更許可がされた(乙14の2,乙15)。 また,遅くとも同年10月9日までに,本件各原子力発電所について工事計画認可及び保安規定変更認可がされた(乙100の1,2,乙109の1,2,乙201,乙202)。 (ウ)抗告人は,平成28年1月29日,本件各原子力発電所3号機を再稼働し,同年2月26日,本件各原子力発電所4号機を再稼働した。 (エ)本件原子力発電所4号機は,平成28年2月29日,自動停止した。 (オ)大津地方裁判所は,平成28年3月9日,相手方らの本件仮処分命令申立てに基づき,本件各原子力発電所の運転を仮に差し止める決定(本件仮処分決定)をした。 抗告人は 年2月29日,自動停止した。 (オ)大津地方裁判所は,平成28年3月9日,相手方らの本件仮処分命令申立てに基づき,本件各原子力発電所の運転を仮に差し止める決定(本件仮処分決定)をした。 抗告人は,同月10日,本件原子力発電所3号機の運転を停止した。 抗告人は,本件仮処分決定に対し異議を申し立てたところ,大津地方裁判所は,平成28年7月12日,本件仮処分決定を認可する決定をした(原決定)。 争点 (1)原子力発電所の安全性に対する審理・判断方法(2)地震に対する安全確保対策(基準地震動策定)(3)地震に対する安全確保対策(耐震安全性)(4)津波に対する安全確保対策(基準津波策定)(5)津波に対する安全確保対策(津波に対する安全性)(6)使用済燃料ピット安全確保対策 (7)原子力燃料に対する安全確保対策(8)テロリズム対策(9)原子力災害対策(10)相手方らのその他の主張(11)保全の必要性 当事者の主張(1)原子力発電所の安全性に対する審理・判断方法ア相手方ら本件各原子力発電所の安全性が欠如し,人の生命・身体を基礎とする人格権が侵害される可能性があれば,その稼働は許されないというべきである。 また,原子力事業者である抗告人は,原子力規制委員会から本件各原子力発電所が新規制基準に適合しているとの判断を得ているのであるから,抗告人が本件各原子力発電所の安全性を立証することは容易なはずである。 以上によれば,安全性についての立証責任を事実上転換するのが相当であり,抗告人において,本件各原子力発電所が安全であることの疎明をする必要があるというべきである。 イ抗告人(ア)相手方らの人格権に基づく本件各原子力発電所の運転差止めが認められるためには,本件各原子力発電所の運転に伴い,どのような機序で放射 ることの疎明をする必要があるというべきである。 イ抗告人(ア)相手方らの人格権に基づく本件各原子力発電所の運転差止めが認められるためには,本件各原子力発電所の運転に伴い,どのような機序で放射性物質の異常放出等の事故が発生し,人格権が侵害される具体的危険があるのかが明らかにされなければならない。 具体的危険の有無の判断においては,本件各原子力発電所に内在する危険が適切に管理されているか否かを検討すべきである。本件各原子力発電所は,その建設,運転及び安全性の確保に当たって,様々な分野にわたる高度の科学的・技術的知見を活用するものであるから,科学的・技術的知見を踏まえて検討すること が不可欠である。 本件仮処分命令申立ては民事裁判である以上,本件各原子力発電所の安全性に欠ける点があり,相手方らの人格権が侵害される具体的危険が生じ,これにより被害が生じる機序等の事実については,相手方らが立証責任を負うべきであり,この主張立証は,科学的・技術的知見を踏まえて具体的にされる必要がある。 (イ)新規制基準の策定過程及び本件各原子力発電所の新規制基準への適合性審査の過程を踏まえると,原子力規制委員会が,本件各原子力発電所について新規制基準に適合するものと認め,設置変更許可をしたという事実は,本件各原子力発電所に安全性があることを裏付ける重要な事情である。 (2)地震に対する安全確保対策(基準地震動策定)ア抗告人(ア)地震とは,地下の岩盤が周囲から力を受けることによってある面を境としてずれる現象である。 原子力発電所の地震に対する安全確保対策においては,当該地点の地域的な特性を踏まえつつ,原子力発電所敷地に到来し得る地震動の評価を適切に行うことが基礎となる。 具体的には,地震動は,①震源の規模,震源断層の位置・傾き,地震波の強さ等とい おいては,当該地点の地域的な特性を踏まえつつ,原子力発電所敷地に到来し得る地震動の評価を適切に行うことが基礎となる。 具体的には,地震動は,①震源の規模,震源断層の位置・傾き,地震波の強さ等といった震源に関する特徴(震源特性),②地震波の地中での伝わり方に関する特徴(伝播特性),③地盤の軟らかさ等といった地震波の増幅に関する特徴(地盤の増幅特性)という地域によって異なる特性の影響を受けるため,①ないし③の特性を十分に考慮して地震動評価を行うことが重要となる。 抗告人は,地震に対する安全性を確保すべく,新規制基準等の要求を踏まえ,本件各原子力発電所敷地周辺における地震発生状況や活断層の分布状況等を調査のうえ,上記の地域的な特性を十分に考慮して,不確かさを十分に踏まえて,本件各原子力発電所の耐震安全性を確保ないし確認するための基準となる地震動 (基準地震動)を,次のとおり策定した。 (イ)検討用地震の選定抗告人は,地震動評価に影響を与える地域性を精度よく把握するため,本件各原子力発電所敷地周辺の地震発生状況,活断層の分布状況等を含めた地質・地質構造,及び地下構造等に関して,詳細な調査・評価を実施した上で,それらの調査・評価結果に基づき,本件各原子力発電所敷地に大きな影響を与えると考えられる検討用地震として,「FO-A~FO-B~熊川断層による地震」及び「上林川断層による地震」を選定した。 (ウ)敷地ごとに震源を特定して策定する地震動a抗告人は,選定した各検討用地震について,敷地及び敷地周辺の地下構造の調査・評価結果も踏まえて,①「応答スペクトルに基づく地震動評価」②「断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価」を実施して,「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」を評価した。 ①「応答スペクトルに基づく地震動評価」では,各検討用 スペクトルに基づく地震動評価」②「断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価」を実施して,「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」を評価した。 ①「応答スペクトルに基づく地震動評価」では,各検討用地震につき,Nodaetal.(2002)の方法(甲60)という距離減衰式(以下「耐専式」という。)を用いて,地震の規模,等価震源距離等から本件各原子力発電所における地震動の応答スペクトルを評価した。その際に用いる地震の規模(マグニチュード)については,松田時彦東京大学名誉教授が「活断層から発生する地震の規模と周期について」と題する論文(乙94)で提案した,地震のマグニチュード(M)と活断層長さとの関係を表す経験式(以下「松田式」という。)により,活断層(震源断層)の長さから求められた値を用いた。 ②「断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価」では,文部科学省の地震調査研究推進本部による「震源断層を特定した地震の強震動予測手法(『レシピ』)」(乙20)等を用いて,各検討用地震につき,断層の長さ,地震発生層の幅,断 層面積,地震モーメント(Mo),短周期レベル,応力降下量等の各種の震源断層パラメータを設定し,震源断層のモデル化を行った上で,本件各原子力発電所敷地における地震動評価を行った。 b上記地震動評価に際し,例えば詳細な地質・地質構造調査等からは連動しないと考えられるFO-A~FO-B断層と熊川断層とが連動するとしたり,強震動を生起するアスペリティ(アスペリティとは,震源断層面において固着の強さが周りに比べて特に大きい領域のことをいう。この領域における地震時のすべり量〔地震により破壊された震源断層面のずれの量〕は周りよりも相対的に大きくなり,強い揺れが生起される。なお,震源断層面においてアスペリティ以外の領域を背景領域という。)の 領域における地震時のすべり量〔地震により破壊された震源断層面のずれの量〕は周りよりも相対的に大きくなり,強い揺れが生起される。なお,震源断層面においてアスペリティ以外の領域を背景領域という。)の位置を各震源断層について本件各原子力発電所の敷地近傍に配置したりするなど,地震動がより大きくなる方向での保守的な条件により「基本ケース」を設定し,その上で,さらに様々な不確かさについても保守的に考慮して,地震動の評価を行った。 (エ)震源を特定せずに策定する地震動「震源を特定せず策定する地震動」として,震源と活断層を関連づけることが困難な過去の内陸地殻内地震の震源近傍での観測記録に基づいて策定された応答スペクトル(加藤研一ほか「震源を事前に特定できない内陸地殻内地震による地震動レベル」〔2004〕)(甲64)で示されている応答スペクトル)から,本件各原子力発電所の敷地地盤の構造に適用される応答スペクトルを採用するとともに,原子力規制委員会の「基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド」(乙33,以下「地震ガイド」という。)において,観測記録の収集対象となる内陸地殻内地震(震源と活断層を関連づけることが困難な過去の内陸地殻内地震)の例から,平成12年鳥取県西部地震の地震動の観測記録,及び平成16年北海道留萌支庁南部地震の地震動の観測記録(解放基盤表面における推定値)を採用し,地震動の評価結果が大きくなるような保守的な条件で評価を行った。 (オ)基準地震動の策定上記「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」の評価結果を総合し,最も厳しい評価結果となったものを採用して,本件各原子力発電所の基準地震動(Ss-1~Ss-7)を策定した。策定した基準地震動の応答スペクトルのうち,最大加速度は,水平方向が基準地 評価結果を総合し,最も厳しい評価結果となったものを採用して,本件各原子力発電所の基準地震動(Ss-1~Ss-7)を策定した。策定した基準地震動の応答スペクトルのうち,最大加速度は,水平方向が基準地震動Ss-1の700ガル,鉛直方向が基準地震動Ss-6の485ガルである。 (カ)抗告人は,新規制基準の施行後,最新の科学的・技術的知見を踏まえて,複数の手法を併用し,保守的な条件設定や不確かさを適切に考慮した上で,本件各原子力発電所の基準地震動を策定している。したがって,本件各原子力発電所に上記基準地震動を超える地震動が到来することはまず考えられず,上記基準地震動は,本件各原子力発電所の耐震安全性を確認するための基準として適切である。 イ相手方ら(ア)「基準地震動」の策定方法についての基準の定めについて新規制基準では,基準地震動の策定方法を抽象的に定めるのみで,「適切に」,「適切な」という文言が頻出するが,何が「適切」かについての判断は原子力事業者に委ねられている。 基準地震動の策定過程に伴う不確かさの考慮についても,考慮する方法を具体的に定めずに「適切に」考慮せよとするのみで,具体的な考慮方法は原子力事業者に委ねられているから,「有効な基準」とはいえない。 (イ)基準地震動策定の限界について自然現象を扱う科学の本質的な限界として,地震の予知・予測は著しく困難である。 抗告人が基準地震動を策定する際に用いた手法は,限られた調査結果に基づく地震動の平均像を求めるものにすぎない。平均像によって原子力発電所の耐震設 計をしようとすること自体が誤りである。平均像ではない最大値を考慮すべきである。 (ウ)地震動評価に影響を与える地域特性の評価についてa設置許可基準規則3条3項及び同項に係る解釈別記1第3条3項の合理性について断層等 誤りである。平均像ではない最大値を考慮すべきである。 (ウ)地震動評価に影響を与える地域特性の評価についてa設置許可基準規則3条3項及び同項に係る解釈別記1第3条3項の合理性について断層等が露頭していなかったとしても,それらの断層等が耐震重要施設の設置された地盤にあれば,それらの断層等を原因とした地震により耐震重要施設が設置された地盤にずれが生じる可能性があるにもかかわらず,設置許可基準規則3条3項及び同項に係る解釈別記1第3条3項によれば,耐震重要施設を設置すべきでない地盤を,露頭した断層等のある地盤に限定しており,不十分な基準である。 断層等について,後期更新世以降の活動が認められなくとも,将来活動する可能性が十分認められるのであるから,設置許可基準規則が,「将来活動する可能性のある断層等」を,原則として後期更新世以降(約12~13万年前以降)の活動が否定できない断層等に限定していることは,基準として不十分である。 b「震源特性」,「伝播特性」及び「地盤の増幅特性(サイト特性)」について抗告人は,地震動評価に影響を与える地域特性の評価に関して,「震源特性」,「伝播特性」,「地盤の増幅特性(サイト特性)」を評価したと抽象的に述べるのみで,本件各原子力発電所敷地内の地震観測記録を提出するなどして,具体的に説明していない。 c平成21年駿河湾地震について平成21年駿河湾地震において,中部電力株式会社(以下「中部電力」という。)は,事前に地震動を増幅させる「低速度層」を把握しておらず,「低速度層」の存在が平均像をはるかに超える地震動を生じると認識していなかった。 d地震調査研究推進本部・地震調査委員会・強震動評価部会の「鳥取県西部地震の観測記録を利用した強震動評価手法の検証」(甲141)について 上記論文によれば,平成12年 ると認識していなかった。 d地震調査研究推進本部・地震調査委員会・強震動評価部会の「鳥取県西部地震の観測記録を利用した強震動評価手法の検証」(甲141)について 上記論文によれば,平成12年鳥取県西部地震に関して,観測記録を基にして地震動を算出した結果と実際の観測記録との間には大きな乖離がある。 e震源となる断層の評価について既に発生した地震は,現れた地表地震断層により震源断層の長さを推定することができるが,将来発生する地震については,当該断層面が過去に活動したときに生じた地表地震断層の長さから地震規模を推定するしか方法がなく,震源断層の長さが過小評価になりかねない。 fFO-A~FO-B~熊川断層の断層両端の把握についてFO-A~FO-B~熊川断層の断層両端の把握について,海域での活断層調査は困難であり,FO-B断層の端を捉えるのは容易ではない。また,上林川断層の東側端部を延長しなかった理由が明らかでないし,同断層の西側端部が把握できたとは考えられない。 g亀高正男ほかの「京都府北部,上林川断層の横ずれインバージョン」(甲257の1)について上記論文によると,上林川断層の北東端は本件各原子力発電所の敷地の南東約9㎞のおおい町笹谷付近まで追跡できる。抗告人の上林川断層の北東端の確認は保守的であるとはいえない。 (エ)応答スペクトルに基づく地震動評価についてa耐専式について内陸地殻内地震の観測値と耐専式による推定値を比較すると相当のばらつきがあり,若狭湾周辺地域におけるQ値(減衰定数)の評価を踏まえ,サイト特性に特異な構造を認めなかったとしても,ばらつきの原因を全て把握していないのであれば,耐専式の適用に問題がある。 b松田式について(a)「応答スペクトルに基づく地震動評価」の際に,耐専式による評価で必要 と めなかったとしても,ばらつきの原因を全て把握していないのであれば,耐専式の適用に問題がある。 b松田式について(a)「応答スペクトルに基づく地震動評価」の際に,耐専式による評価で必要 となる地震の規模(マグニチュード)を算定するために用いる松田式は,わずか14地震のデータを回帰分析して得られた平均値に過ぎず,そのデータもマグニチュード1前後(約32倍)の範囲でばらついているため,全くの参考値に過ぎない。これをもとに耐震設計をすることは許されない。 (b)抗告人の検証結果によっても,松田式から大きく乖離したデータが存在しており,地震ガイドの「経験式が有するばらつきも考慮されている必要がある」との定めに違反している。 (c)地震調査研究推進本部の地震調査委員会は,「地表に見えている断層の長さは,複数回の地震による痕跡がつながってできたものである可能性もあれば,地中の震源断層の一部が現れている可能性もあり,断層の長さから求められる地震の規模の推定値には大きな不確実性が含まれると考えられる」から,「松田式を用いて地震規模を設定する際には,・・・不確実性を考慮することが望ましい」と述べていることからすると,松田式から得られた値をそのまま用いることは,地震調査委員会の考え方を否定するものである。 (オ)断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価についてa入倉・三宅式入倉・三宅式は,入倉孝次郎及び三宅弘恵が「シナリオ地震の強震動予測」(乙158)で提唱した断層面積(S)と地震モーメント(Mo)との関係式(以下「入倉・三宅式」という。)である。 抗告人は,断層面積から地震モーメントを求める際に入倉・三宅式を用いているが,入倉・三宅式は,震源断層面の位置形状を十分に把握した上で定式化されているものではない。 入倉・三宅式は,武村雅之の「日 抗告人は,断層面積から地震モーメントを求める際に入倉・三宅式を用いているが,入倉・三宅式は,震源断層面の位置形状を十分に把握した上で定式化されているものではない。 入倉・三宅式は,武村雅之の「日本列島における地殻内地震のスケーリング則-地震断層の影響及び地震被害との関連-」(乙161)の提唱する関係式(以下「武村式」という。)に比べて地震モーメントの過小評価をもたらすことは明らか であるから,武村式を用いて基準地震動を策定すべきである。 b応答スペクトルに基づく地震動評価結果との比較本件各原子力発電所の応答スペクトルに基づく地震動評価結果に比べて,断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価結果の加速度が小さいのは,断層モデルを用いた手法自体に根本的な欠陥があるか,用いられているパラメータが恣意的であることを示している。 cアスペリティの応力降下量の設定抗告人は,アスペリティの応力降下量の設定について,FO-A~FO-B~熊川断層による地震に係る評価において3.1MPaの一定値に固定し,不当に小さく評価している。 地震調査研究推進本部地震調査委員会は「震源断層を特定した地震の強震動予測手法(『レシピ』)」(乙20)を平成28年6月に改訂したが,同改訂により,「静的応力降下量を3.1MPaとする取扱いは,暫定的に,断層幅と平均すべり量とが飽和する目安となるMo=1.8×1020(N・m)を上回る断層の地震を対象とする。」こととされ,これに該当しないのに上記取扱いをしている抗告人の評価の不当性が明らかとなった。 3.1MPaの値を用いない場合には,断層全体の平均応力降下量は3.1MPaから4.2MPaに,アスペリティの応力降下量は14.1MPaから19.0MPaになり,最終的な地震動は,約1.5倍に,改訂レシピに従って地震規模を松田 合には,断層全体の平均応力降下量は3.1MPaから4.2MPaに,アスペリティの応力降下量は14.1MPaから19.0MPaになり,最終的な地震動は,約1.5倍に,改訂レシピに従って地震規模を松田式で評価した場合は約1.9倍になると推定されている(甲268)。 d統計的グリーン関数法統計的グリーン関数法に基づく減衰式は,多数の地震の伝播過程の平均像でしかなく不確かさがあるのに,これが考慮されていない。 e標準偏差(σ)からのばらつきの考慮森本・富樫断層帯をモデルに強震動予測結果のばらつきを評価した結果(甲1 48の3)によると,一部のパラメータに限定しても標準偏差(σ)から倍半分程度のばらつきがある。本件各原子力発電所の地震動評価においては,2σ,3σを考慮すべきである。 (カ)不確かさの評価についてa断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価における不確かさの評価について不確かさを考慮したパラメータ(短周期の地震動レベル,断層傾斜角,すべり角,破壊伝播速度,アスペリティの配置,破壊開始点)について,不確かさの考慮として抽出すべきパラメータが他にないことの合理的な説明がなされていない。 b不確かさの考慮方法について抗告人は,不確かさを考慮したとして複数のケースを設定しているが,これらの不確かさを重複させるべきである。 c短周期レベルの地震動について地震ガイドにおいて,アスペリティの応力降下量(短周期レベル)は平成19年新潟県中越沖地震を踏まえて設定されていることを確認するとされている。 平成19年新潟県中越沖地震による柏崎刈羽原子力発電所の地震動が平均の1.5倍程度の短周期レベルを記録したことを踏まえると,地震ガイドは短周期レベルを原則的に1.5倍とすることを求めていると解すべきである。 d不確かさ及びばらつきの考慮に 子力発電所の地震動が平均の1.5倍程度の短周期レベルを記録したことを踏まえると,地震ガイドは短周期レベルを原則的に1.5倍とすることを求めていると解すべきである。 d不確かさ及びばらつきの考慮について地震ガイドは,応答スペクトルに基づく地震動評価及び断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価において,不確かさの考慮を求めているが,それとは別の条項において,経験式が有するばらつきの考慮を求めている。そうすると,不確かさの考慮とばらつきの考慮は別の概念であって,不確かさを考慮したからばらつきを考慮しなくて良いということにはならない。 (キ)震源を特定せず策定する地震動について a16倍問題について「震源を特定せず策定する地震動」は,最大Mw6.5の地震を引き起こす断層面が原子力発電所近傍にあると仮定して評価するものであるから,Mw5.7であった平成16年北海道留萌支庁南部地震の規模を16倍とする地震を想定すべき(16倍問題)である。 b2000ガル問題について地域地盤環境研究所は,平成16年北海道留萌支庁南部地震について「面的地震動評価」を実施しており(甲68),その結果によれば,抗告人が参照した観測点の観測記録1127ガルを超える2000ガルの地震動が別の地点で発生した可能性があり,さらに,Mw5.7の地震であっても,解放基盤表面の加速度は1080ガル(609×2000/1127=1080.74)である。 c原子力安全基盤機構の報告書(甲131)について上記報告書では,Mj6.5の横ずれ断層が活動した場合,敷地近傍で最大1340.6ガルの地震動を生じうるとされており,抗告人が策定した最大加速度620ガルの「震源を特定せず策定する地震動」が過小であることは明らかである。 (ク)応答スペクトルの包絡について「発電用原子炉施設 6ガルの地震動を生じうるとされており,抗告人が策定した最大加速度620ガルの「震源を特定せず策定する地震動」が過小であることは明らかである。 (ク)応答スペクトルの包絡について「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」(甲85)(原子力安全委員会昭和56年7月20日決定,以下「昭和56年耐震設計審査指針」という。)では基準地震動は振幅包絡線で定めることとされていたのであるから,本件各原子力発電所の基準地震動は,抗告人が策定した基準地震動Ss-1~Ss-7の全ての応答スペクトルを包絡した線でなければならない。 (ケ)基準地震動の年超過確率について人類が有している地震のデータは,詳細なもので過去20年余り,概括的なものでも過去千数百年程度であるから,1万年や10万年に一度の地震を評価することはできない。また,基準地震動の年超過確率の算定根拠が明らかでなく,算 定者の恣意が入り込むおそれが大きい。 (3)地震に対する安全確保対策(耐震安全性)ア抗告人(ア)耐震安全性対策の概要抗告人は,本件各原子力発電所の耐震重要施設である「安全上重要な施設・設備」について,該当する設備や設備の各部位に作用する力を評価するために,基準地震動に対する地震応答解析及び応力解析を行い,その結果得られた発生応力値等(評価値)が,基準・規格等に基づいて定められている評価基準値(許容値)を超えないことを確認し,本件各原子力発電所の耐震重要施設である「安全上重要な施設・設備」が,いずれも基準地震動に対して安全機能を維持できることを確認した。 (イ)地震応答解析及び応力解析による耐震安全性評価地震応答解析は,地震動に対して構造物がどのように揺れるかを評価するために,構造物を適切なモデル(解析モデル)に置き換え,このモデルに地震動を入力して,地震動によっ 及び応力解析による耐震安全性評価地震応答解析は,地震動に対して構造物がどのように揺れるかを評価するために,構造物を適切なモデル(解析モデル)に置き換え,このモデルに地震動を入力して,地震動によって構造物に作用する地震力(荷重)等を求める解析方法である。 応力解析は,地震応答解析によって算出された地震力(荷重)によって,構造物を構成する各部位に作用する単位面積当たりの力(応力)を算出する解析である。 抗告人は,新規制基準の施行を受けて新たな基準地震動を策定したことに伴い,耐震安全性を強化するため,本件各原子力発電所において合計約830箇所に及ぶ耐震補強工事を実施した。そして,「安全上重要な施設・設備」について,地震応答解析及び応力解析を行い,評価値を算出した結果,いずれも評価基準値(許容値)を下回ることを確認した。 (ウ)本件各原子力発電所の「安全上重要な施設・設備」に係る耐震安全性の余裕 抗告人は,「安全上重要な施設・設備」について,評価値が評価基準値(許容値)を下回ることを確認しているところ,①両者の差は,耐震安全上の余裕(基準地震動による地震力に対する余裕)ということができる(①の耐震余裕)。 抗告人は,①の耐震余裕に加えて,②評価基準値(許容値)自体が,実際に機器等が機能喪失する限界値に対して余裕を持った値が設定され,さらに,③評価値を計算する過程においても,計算結果が保守的なものとなるよう余裕を持たせている。 すなわち,抗告人は,本件各原子力発電所の耐震安全性に用いる評価基準値(許容値)を,一般社団法人日本電気協会(以下「日本電気協会」という。)が策定した民間規格に基づいて設定しているところ,そもそも上記規格に基づく評価基準値(許容値)は,材料の破壊実験の結果をもとに,実験値のばらつき等を考慮して,保守的に設定されている 協会」という。)が策定した民間規格に基づいて設定しているところ,そもそも上記規格に基づく評価基準値(許容値)は,材料の破壊実験の結果をもとに,実験値のばらつき等を考慮して,保守的に設定されている(②の耐震余裕)。 また,抗告人は,上記地震応答解析を行う際に,例えば各階床に設置されている機器・配管系に生じる揺れを大きくするような条件設定を行っている。さらに,応力解析を行う際には,例えば,実際の地震力では想定し難いことではあるが,地震の揺れによって瞬間的に作用する最大の力が,機器・配管系にとって厳しい方向に一定してかかり続けるとあえて仮定して条件設定を行っている。このように,地震応答解析及び応力解析により評価値を算出するに当たり,その前提として保守的な計算条件の設定を行っている(③の耐震余裕)。 (エ)実験等による実証①から③までの耐震余裕は,本件各原子力発電所に限らず,原子力施設の耐震設計体系において一般的に認められているところ,これらの余裕が現実に存在することについては,多度津工学試験センターにおける原子力発電施設耐震信頼性実証実験の結果や,平成19年新潟県中越沖地震により当時の基準地震動を超える地震動を受けた柏崎刈羽原子力発電所において「安全上重要な施設・設備」の健全性に特 段の問題が生じていないことからも明らかである。 (オ)以上のとおり,抗告人は,基準地震動を適切に策定した上で,基準地震動に対して「安全上重要な施設・設備」等の安全機能が損なわれないことを確認しており,本件各原子力発電所の地震に対する安全性は十分に確保されている。 イ相手方ら(ア)耐震安全性評価について本件各原子力発電所に②及び③の耐震余裕があるとはいえない。 また,①の耐震余裕は,本来必要がない余分なものではなく,様々な不確実な要素を吸収するための「 イ相手方ら(ア)耐震安全性評価について本件各原子力発電所に②及び③の耐震余裕があるとはいえない。 また,①の耐震余裕は,本来必要がない余分なものではなく,様々な不確実な要素を吸収するための「必要不可欠な安全代」であり,安全率が高いということは,安全であることを意味するのではなく,むしろ不確実な要素(材料の品質,施工精度,腐食や老朽化,想定外の地震)が多いことを示している。 (イ)耐震補強工事について平成18年9月19日改訂前の耐震設計審査指針に基づいて策定された本件各原子力発電所の基準地震動S2の最大加速度は370ガルであり,平成18年耐震設計審査指針に基づいて実施された耐震バックチェックの結果,基準地震動Ssの最大加速度は550ガルとなった。そうであるのに,抗告人は,計算上550ガルでも耐えられることを確認したにすぎず,何らの耐震補強工事をしていない。 (ウ)塑性変形の繰り返しについて地震動による応力が弾性限界を超え,設備が塑性変形を起こした場合に,その応力がある一定の範囲内(安全機能限界内)であっても,弾性限界を超える力が複数回かかり塑性変形が繰り返されれば,その部分の強度は弱くなり,想定外の機能喪失が起こる可能性がある。 (エ)基準地震動と弾性設計用地震動(弾性設計用地震動とは,施設の弾性設計に用いる地震動であり,弾性設計とは,応力を加えることにより生じたひずみ が,除去すれば元の寸法に戻る応力の限界値をいう。)の応答スペクトルの比率について本件各原子力発電所の基準地震動と弾性設計用地震動の応答スペクトル比率について,従来0.58としていたのを,基準地震動の引き上げに伴って,基準で定められた最下限の0.5に引き下げているが,原子力発電所の安全性を考えるのであれば,この比率を引き下げるべきでなかった。 (オ)評 従来0.58としていたのを,基準地震動の引き上げに伴って,基準で定められた最下限の0.5に引き下げているが,原子力発電所の安全性を考えるのであれば,この比率を引き下げるべきでなかった。 (オ)評価基準値(許容値)の定め方について設置許可基準規則解釈は,許容限界について,必ずしも厳密な弾性限界ではなく,局部的に弾性限界を超える場合を容認しつつも施設全体としておおむね弾性範囲に留まり得ることをいう(同規則解釈別記2第4条1項)と定めている。 上記定めは,設置許可基準規則4条1項が「設計基準対象施設は,地震力に十分に耐えることができるものでなければならない。」と規定し,原子炉等規制法43条の3の6第1項4号が「発電用原子炉施設の位置,構造及び設備が核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物又は発電用原子炉による災害の防止上支障がないものとして原子力規制委員会規則で定める基準に適合するものであること。」としていることに違反するし,「おおむね弾性範囲に留まり得ること」という要件も不明確である。 (カ)耐震重要度分類Bクラスの施設に係る影響について耐震重要度分類Bクラスの施設に係る設置許可基準規則解釈では,共振のおそれのある施設のみ共振による影響を検討することとされており,影響の検討に当たって弾性範囲内にとどまることを要求していない。また,影響の検討に用いる地震動は弾性設計用地震動に2分の1を乗じたもの(つまり,基準地震動に4分の1を乗じたもの)としている。 上記定め等は,設置許可基準規則4条1項の解釈として許されない。 (キ)耐震重要度分類B,Cクラスの施設に係る設計について 耐震重要度分類B,Cクラスの施設について,そもそもその分類に問題がある上,静的地震力のみで設計を行うのではなく,Sクラスの施設と同様に弾性設計用地震動を用い Cクラスの施設に係る設計について 耐震重要度分類B,Cクラスの施設について,そもそもその分類に問題がある上,静的地震力のみで設計を行うのではなく,Sクラスの施設と同様に弾性設計用地震動を用いて設計すべきである。 (ク)設計基準対象施設内の機器・構造物の材料・構造について原子炉等規制法43条の3の14及び43条の3の23により,いわゆるバックフィットが規定され,原子力規制委員会で定める技術上の基準に適合していない発電用原子炉施設については,原子力規制委員会が使用の停止等を命ずることができるようになっている。 そうであるのに,設計基準対象施設の機器・構造物の材料及び構造について定めた「実用発電用原子炉及びその附属施設の技術基準に関する規則」(以下「技術基準規則」という。)17条1号~7号及び15号は,使用前に適用が限定されており(乙184),また,同規則解釈17条10号(乙184)は,「この規則の施行の際現に施設し,又は着手した設計基準対象施設については,施設時に適用された規格(「発電用原子力設備に関する構造等の技術基準(昭和55年通商産業省告示第501号)」等)によること」と定めており,設置時の基準を満たせば良いとされているから,上記のバックフィット規定が適用されないことになり,安全性が確保されていない。 (ケ)基準地震動に相当する地震の連続発生について平成28年熊本地震は,震度7の地震が連続して一定の地域を襲う可能性があることを明らかにした。そうであるのに,新規制基準及び本件各原子力発電所の耐震安全性の審査において,基準地震動に相当する揺れが連続して発生する事態は全く想定されておらず,本件各原子力発電所の耐震安全性が確保されていない。 (コ)中性子照射脆化等による劣化について多度津工学試験センターでの原子力発電施設耐震信頼性 る揺れが連続して発生する事態は全く想定されておらず,本件各原子力発電所の耐震安全性が確保されていない。 (コ)中性子照射脆化等による劣化について多度津工学試験センターでの原子力発電施設耐震信頼性実証試験について,同試験で用いられた試験体は全て新品であるところ,実機では長年の運転による中性子照射脆化等によって劣化しているから,この実験で大幅な安全余裕が認められたと しても,実機では同様の余裕は見込めないし,どの程度の余裕を見込めるかも明らかでない。 (4)津波に対する安全確保対策(基準津波策定)ア抗告人(ア)本件各原子力発電所における基準津波の策定a津波に関する調査抗告人は,本件各原子力発電所の敷地周辺における既往津波について,日本被害津波総覧等の文献を調査し,また,若狭湾沿岸において,完新世(約1万年前から現在まで)を対象とした津波堆積物調査等を実施した結果,本件各原子力発電所の安全性に影響を及ぼすような既往津波の記録や痕跡は認められなかった(乙44,乙45)。 抗告人は,本件各原子力発電所に大きな水位変動を及ぼす津波の波源となる可能性のある敷地周辺の海域活断層等による地震,海底及び陸上の地すべり,火山活動について,海上音波探査や現地踏査等の詳細な調査を実施した。 b波源の選定及び津波水位の評価(a)地震による津波津波の波源となる地震として,本件各原子力発電所の地理的条件等を踏まえ,①敷地周辺の海域活断層による地震,及び②日本海東縁部の断層による地震について検討することとし,これらの地震によって想定される津波を評価した。 ①敷地周辺の海域活断層については,簡易予測式により本件各原子力発電所敷地に到達する推定津波高さが1m以上となるFO-A~FO-B~熊川断層等の4つの海域活断層を検討対象とした。 ②日本海東縁部の ①敷地周辺の海域活断層については,簡易予測式により本件各原子力発電所敷地に到達する推定津波高さが1m以上となるFO-A~FO-B~熊川断層等の4つの海域活断層を検討対象とした。 ②日本海東縁部の断層については,既往の検討結果を踏まえ,モーメントマグニチュード7.85の波源モデルを設定した。 上記検討対象とした4つの海域活断層と日本海東縁部の断層について,土木学 会の「原子力発電所の津波評価技術」(乙42)等に基づき,不確かさの因子である断層の位置等を合理的に変化させた数値シミュレーションを多数実施するパラメータスタディを行い,各断層について,水位変動量が最大となるケースを確認した。その結果,水位変動量の大きい波源として,大陸棚外縁~B~野坂断層及びFO-A~FO-B~熊川断層を選定した。 その上で,選定した2つの波源について,詳細な数値シミュレーションを実施し,評価点における津波水位を算出した(乙44)。 (b)地震以外の要因による津波海底地すべりによる津波について,文献調査や海上音波探査の記録の解析・評価を行い,本件各原子力発電所に大きな水位変動をもたらすと考えられる海底地すべり地形として,隠岐トラフの南東側及び南西側の水深約500~1000m付近の大陸斜面にある海底地すべり地形を抽出・選定した。その上で,当該地形について,海底地すべりの発生に伴い海面がどのように挙動するかを想定し,数値シミュレーションにより評価点における津波水位を算出した(乙44)。 陸上地すべりによる津波について,地すべり地形分布図データベース等をもとに地すべり地形を抽出・選定した。その上で,これらの地形について,地すべりによって土砂が海面にすべり落ちる際の海面の挙動を想定し,数値シミュレーションにより評価点における津波水位を算出した(乙44)。 火山活動に を抽出・選定した。その上で,これらの地形について,地すべりによって土砂が海面にすべり落ちる際の海面の挙動を想定し,数値シミュレーションにより評価点における津波水位を算出した(乙44)。 火山活動による山体崩壊に伴う津波については,津波堆積物調査,火山の活動状況等を踏まえて,本件各原子力発電所の安全性に影響を及ぼすことはないと評価した(乙44)。 (c)行政機関の波源モデルを用いた津波の検討福井県が想定した若狭海丘列付近断層を波源とするモデル,秋田県が想定した日本海東縁部の断層を波源とするモデル,国土交通省等の「日本海における大規模地震に関する調査検討会」が想定した若狭海丘列付近断層及びFO-A~FO -B~熊川断層を波源とするモデルを用いて,詳細な数値シミュレーションを実施し,評価点における津波水位を算出した(乙44,乙93,乙99)。 (d)津波の組み合わせの検討・評価地震の揺れによって地すべりが発生する可能性があることを踏まえ,地震に伴い地すべりが発生した場合に,それぞれを波源とする津波が本件各原子力発電所に同時期に到達して大きな水位変動をもたらし得る組合せとして,「若狭海丘列付近断層と隠岐トラフ海底地すべり」及び「FO-A~FO-B~熊川断層と陸上地すべり」の組合せを検討した。この検討に当たっては,地すべりの発生時間の不確かさも考慮の上,評価点における個々の津波水位の評価結果を足し合わせることで(単体組合せ),津波水位を評価した(乙44)。 (e)基準津波の策定抗告人は,前記(d)で検討した組合せの中から,各評価点で最も水位の影響が大きくなるケースを抽出し,より実現象に近く精度の高い津波計算(一体計算)を行った。その結果,「若狭海丘列付近断層(福井県モデル)と隠岐トラフ海底地すべり(エリアB)」及び「FO-A~FO-B 響が大きくなるケースを抽出し,より実現象に近く精度の高い津波計算(一体計算)を行った。その結果,「若狭海丘列付近断層(福井県モデル)と隠岐トラフ海底地すべり(エリアB)」及び「FO-A~FO-B~熊川断層と陸上地すべり(No.14)」を,本件各原子力発電所への水位変動量が最も大きくなる波源として選定し,2km程度沖合いの地点において基準津波を策定した。 以上のとおり,本件各原子力発電所の基準津波は,新規制基準の施行後,最新の科学的・技術的知見を踏まえて,様々な波源について検討した上で,複数の波源の組合せについても検討し,不確かさの適切な考慮の上で策定している。したがって,本件各原子力発電所に基準津波を超える津波が到来することはまず考えられないところであり,この基準津波は,本件各原子力発電所において津波に対する安全性を確認するための基準として適切である。 イ相手方ら(ア)津波に関する伝承について 天正地震による津波等の伝承を十分に考慮して基準津波を策定すべきである。 福井大学の山本博文教授らの調査により発見された14~16世紀の津波の痕跡とみられる堆積物が天正地震による大津波の発生を裏付ける地質学上の証拠となる可能性がある。抗告人は,この地質学上の資料を検討しておらず,その津波リスク評価には数々の盲点や意図的過小評価が存在する。 (イ)若狭湾の地盤のブロック化について若狭湾の地盤がブロック化し,このブロック境界の運動により地震が引き起こされる危険性があることが考慮されていないから,抗告人の津波評価は不十分である。 (ウ)ボーリング調査の調査地点について抗告人は,津波の伝承や戦後も高波被害を受けた痕跡があるとされる「くるみ浦」で津波堆積物調査を行っていないなど,その調査地点の選定が恣意的になされている。 (エ)波源の組合せ 査の調査地点について抗告人は,津波の伝承や戦後も高波被害を受けた痕跡があるとされる「くるみ浦」で津波堆積物調査を行っていないなど,その調査地点の選定が恣意的になされている。 (エ)波源の組合せ評価について抗告人による本件各原子力発電所の津波水位の検討において,地震又は地すべり単独の波源による津波よりも地震と地すべりを組み合わせた津波の方が津波水位が低くなっている場合があるが,仮に津波同士の干渉を考慮に入れたものであるとしても合理性がない。 (オ)保守的評価について抗告人は,「放水路(奥)」以外の全ての評価点において,単体組合せの計算結果よりも,水位変動量の小さい一体計算の結果を基準津波として策定しているが,単体組み合わせによる津波水位も,あり得る津波水位なのであるから,保守的に数値を採用するべきである。 (カ)津波予測の誤差について「地域防災計画における津波防災対策の手引き」(以下「七省庁手引き」とい う。)の作成に関わった首藤伸夫教授や阿部勝征教授の発言によれば,津波予測の精度には2倍の誤差があるから,抗告人の基準津波の策定は科学的安全性を備えたものとは到底いえない。 (キ)平均像からのばらつきの考慮について抗告人が津波高さの算出過程において用いている武村式(甲276,乙161)は,地震モーメントの平均像を示すものにすぎない。むしろ,最低限,武村雅之の上記論文における回帰式から求められる地震モーメントの上限値により計算された津波高さ20.5mを考慮すべきである。 (5)津波に対する安全確保対策(津波に対する安全性)ア抗告人(ア)本件各原子力発電所における「安全上重要な施設・設備」の津波に対する安全性確認a入力津波の設定抗告人は,基準津波の検討における単体組合せによる津波水位と,一体計算による津波水位を比 人(ア)本件各原子力発電所における「安全上重要な施設・設備」の津波に対する安全性確認a入力津波の設定抗告人は,基準津波の検討における単体組合せによる津波水位と,一体計算による津波水位を比較するなどし,評価点毎に水位変動量が最も大きくなる津波評価結果を選定した。その上で,朔望平均潮位のばらつき等を考慮して,入力津波を設定した(乙47)。 b津波の敷地への到達・流入防止抗告人は,津波防護施設として設置している,放水口側防潮堤(T.P.+8.0m)及び取水路防潮ゲート(T.P.+8.5m)が,それぞれ放水路(奥)や取水路閉塞部前面の入力津波水位を上回っていることから,津波による遡上波が,「安全上重要な施設・設備」が設置された敷地に地上部から到達・流入しないことを確認した。 抗告人は,海と直接連絡し,津波の流入の可能性のある連絡経路について,流入の可能性を評価し,必要に応じて開口部等に浸水対策を施すことによって,海と直接連絡している取水路,放水路等の経路から同敷地に津波が流入しないことを確 認した。 c漏水による影響防止抗告人は,取水・放水設備のうち,床面高さが入力津波水位より低く,床面に貫通部が存在する海水取水設備である海水ポンプ室について,床面貫通部に浸水防止蓋を設置することにより,「安全上重要な施設・設備」である海水ポンプが機能を保持できることを確認した。 d津波による影響からの隔離上記以外による津波の影響から,「安全上重要な施設・設備」を隔離するため,抗告人は,「安全上重要な施設・設備」が設置された敷地を,津波に対する浸水防護重点化範囲として明確化し,水密扉の設置等の浸水対策を施すことで,地震による溢水を想定しても同重点化範囲に影響が及ばないことを確認した。 e水位変動に伴う取水性低下による影響の防止抗告人は,原 護重点化範囲として明確化し,水密扉の設置等の浸水対策を施すことで,地震による溢水を想定しても同重点化範囲に影響が及ばないことを確認した。 e水位変動に伴う取水性低下による影響の防止抗告人は,原子炉施設の各機器で発生する熱を除去するために必要となる海水を汲み上げる機器である,海水ポンプの取水可能水位が,入力津波水位を下回っていることを確認するなど,水位変動に伴う取水性低下(引き波による水位低下)に対しても,「安全上重要な施設・設備」が,安全機能を保持できることを確認した。 (イ)抗告人は,以上のとおり,基準津波を適切に策定した上で,基準津波に対して,本件各原子力発電所の「安全上重要な施設・設備」の安全機能が損なわれないことを確認しており,本件各原子力発電所の津波に対する安全性は十分に確保されている。 イ相手方ら(ア)本件各原子力発電所の防潮堤の摩擦杭についてa摩擦杭について本件各原子力発電所の放水口側防潮堤(杭式防潮堤)に摩擦杭を採用したのは 不適切である。 b杭の支持力について抗告人は,地盤における杭の支持力について,地盤工学会の杭の鉛直載荷試験方法に基づき,杭の鉛直方向の変位が10%以内に収まることをもって足りると説明しているが,10%という数値に何ら根拠がない。 (イ)周辺地盤の液状化について抗告人が本件各原子力発電所の放水口側防潮堤(杭式防潮堤)において液状化防止のために行う地盤改良は,防潮堤の前後10mに限られる。そのため,地震が発生して隣接地盤が液状化してしまった状況で津波が押し寄せると,防潮堤はゲルによって固化された基礎部分ごと押し流されてしまう。 (ウ)地盤改良効果の確認方法について抗告人の採用した確認方法である一軸圧縮試験は,本来,せん断応力を確認するための試験であり,液状化耐性を確認するもの 固化された基礎部分ごと押し流されてしまう。 (ウ)地盤改良効果の確認方法について抗告人の採用した確認方法である一軸圧縮試験は,本来,せん断応力を確認するための試験であり,液状化耐性を確認するものではない。また,抗告人の援用する「浸透固化処理工法技術マニュアル」に掲載されている換算式に,十分な科学的根拠があるかどうか疑わしい。 (エ)地盤の沈降・陥没の考慮について「基準津波及び耐津波設計方針に係る審査ガイド」(乙43,以下「津波ガイド」という。)Ⅱ.3.2.2は,地震に起因する変状による地形,河川流路の変化が考えられる場合は,敷地への遡上経路に及ぼす影響を検討することと定めている。 抗告人は,「高浜3号炉及び4号炉津波に対する施設評価について」(乙47)において,地震による地殻変動について,基準津波1の若狭海丘列付近断層が活動した場合は±0m,基準津波2のFO-A~FO-B~熊川断層が活動した場合には,0.30mの隆起と想定し,津波に対する安全性評価に影響を及ぼすことはないと結論づけている。 しかし,海域活断層が活動した場合,「ブロック運動」により若狭地方の「地盤ブロック」が突然上昇あるいは陥没するし,若狭湾周辺で地震により地盤が陥没したケースは枚挙に暇がないから,抗告人の地震による地殻変動の想定は楽観的すぎる。 (6)使用済燃料ピット安全確保対策ア抗告人(ア)使用済燃料ピットは,使用済燃料の冷却に十分な量の使用済燃料ピット水で満たされており,使用済燃料から発生する崩壊熱により温度の上昇した使用済燃料ピット水は,使用済燃料ピットポンプによって使用済燃料ピット冷却器へ運ばれて冷却され,再び使用済燃料ピットに戻される。このように,使用済燃料から発生する崩壊熱は,使用済燃料ピット水の循環・冷却によって継続的に除去されている ットポンプによって使用済燃料ピット冷却器へ運ばれて冷却され,再び使用済燃料ピットに戻される。このように,使用済燃料から発生する崩壊熱は,使用済燃料ピット水の循環・冷却によって継続的に除去されている(冷却機能)。そして,仮に冷却機能が喪失するなどして蒸発により水位が低下した場合でも,燃料取替用水ポンプにより,燃料取替用水タンク内のほう酸水を使用済燃料ピットへ補給し,冠水状態を保つことで,使用済燃料を冷却することができる(補給機能)。 このように,使用済燃料は,冠水状態を保つことにより健全性が担保され,使用済燃料ピットの冷却設備及び使用済燃料ピット水の補給設備がこの役割を担っているが,新規制基準における使用済燃料ピットの冷却設備の耐震重要度分類がBクラスとされているのは,使用済燃料ピット水の補給設備が耐震性の高いSクラスに分類されており,この補給機能で使用済燃料ピットの冷却が可能となるためである。 原子力規制委員会も,「使用済燃料貯蔵施設の冷却系は,その機能を喪失したとしても使用済燃料貯蔵槽に・・・補給水設備により水が補給できれば崩壊熱の除去及び放射線の遮蔽等が可能であることから,補給水設備により機能を代替できるため,その影響がSクラス施設と比べ小さい施設にあたり,設置許可基準規則解釈別記2第4条2項2号にBクラスの施設として明記されている「使用済燃料を冷却するための施設」として,Bクラスに分類される」との見解を示している。 (イ)抗告人は,新規制基準の要求を超えて,本件各原子力発電所の使用済燃料ピットの冷却設備に,Sクラスの設備と同等の耐震性を持たせている。本件各原子力発電所の具体的危険の判断においては,本件各原子力発電所の設備がどの耐震重要度に分類されているかではなく,実際にどの程度の耐震性を有しているかが問題とされるべきである 性を持たせている。本件各原子力発電所の具体的危険の判断においては,本件各原子力発電所の設備がどの耐震重要度に分類されているかではなく,実際にどの程度の耐震性を有しているかが問題とされるべきである。 (ウ)なお,基準地震動に対する耐震安全性を備えている使用済燃料ピットは,格段に高い信頼性を有する「安全上重要な施設・設備」であり,大量の使用済燃料ピット水が漏洩し,水位の低下が継続するような事象に至ることは考えられないが,抗告人は,より一層の安全確保という観点から,このような事象をもあえて想定した安全性向上対策を充実させている。 すなわち,抗告人は,可搬式代替低圧注水ポンプ及びスプレイヘッダ等を配備し,これらによる使用済燃料ピットへの直接散水(スプレイ)による注水を行うことで,燃料体の著しい損傷の進行を緩和し,できる限り環境への放射性物質の放出を低減する対策も講じている。 さらに,原子炉補助建屋が損壊した場合又は原子炉補助建屋に近付けない場合等,万一,上記設備での直接散水(スプレイ)による注水が困難となる場合に備えて,大容量ポンプ及び放水砲を配備し,これらの設備を用いて使用済燃料ピットへ放水できるようにしている。 イ相手方ら(ア)本件各原子力発電所の使用済燃料ピット等の耐震性について本件各原子力発電所の使用済燃料ピットの冷却設備の耐震重要度分類はBクラスであり,過小な基準地震動を下回る地震動によってすら破損する危険性がある。 本件各原子力発電所の使用済燃料ピットは,給水が行われなければ,全交流動力電源喪失から3日を経ずして危機的状況に陥るところ,地震によって全交流動力電源喪失という危機的状況に陥る場合には,隣接する原子炉も危機的状態に陥っていることが多いことを念頭に置かなければならず,このような状況下では使 用済燃料ピットに確実に ,地震によって全交流動力電源喪失という危機的状況に陥る場合には,隣接する原子炉も危機的状態に陥っていることが多いことを念頭に置かなければならず,このような状況下では使 用済燃料ピットに確実に給水ができるとはいえない。 (イ)福島第一原子力発電所事故について本件各原子力発電所の使用済燃料ピットについても,福島第一原子力発電所事故と同様の危険性がある。 (ウ)使用済燃料の取扱いについて本件各原子力発電所では,使用済燃料を原子炉容器から取り出して使用済燃料ピットに移動させるという方法が採用されている。このような,原子炉からクレーンで縦に吊って取り出し,途中で一度横倒しにして移動し,その後再度立てて使用済燃料ピットに移動するという取扱方法は,原子炉からクレーンで縦に吊り出して使用済燃料プールへ下ろすという沸騰水型原子炉で採用される方法に比べて,作業工程が多く複雑なため,より危険性が高くなる。 (エ)使用済燃料の稠密化について抗告人は,平成16年に,本件各原子力発電所の使用済燃料ピットAエリアにおいて,貯蔵用ラックのピッチ間隔(相互の中心間の距離)を狭め,貯蔵能力を変更するという稠密化を行ったことにより危険な状態になった。 (オ)抗告人の安全対策について消防車の高台設置という仮設的な安全対策が機能するためには,少なくとも,①使用済燃料ピットに損傷がないか,あったとしても極軽微な損傷であって,消防ポンプの給水能力の範囲内での冠水維持が可能であること,②使用済燃料ピットの接続装置が無事であること,③通路や補助建屋に大規模な損壊がなく,消防ポンプが辿り着けること,④消防ポンプが正常に機能すること,⑤必要な数の作業員を必要な時期に投入できること,⑥作業員が無事であること,⑦作業員が活動出来る環境であることが必要となるが,これらが全て満たさ が辿り着けること,④消防ポンプが正常に機能すること,⑤必要な数の作業員を必要な時期に投入できること,⑥作業員が無事であること,⑦作業員が活動出来る環境であることが必要となるが,これらが全て満たされる可能性は著しく低く,その実現性がない。 (カ)過酷事故対策について 新規制基準の過酷事故対策においては,「後付の簡易な可搬型設備等による対処」しか要求しておらず,「使用済み核燃料を『閉じ込める』という発想」はないし,「原子炉格納容器の中の炉心部分と同様に」堅固に防御を固めるという発想がない。 (7)原子力燃料に対する安全確保対策ア抗告人抗告人は,本件各原子力発電所でMOX燃料を使用するに当たり,MOX燃料の特性を踏まえ,適切に燃料の設計・製造,運用・管理,使用済燃料の貯蔵・管理を行っており,本件各原子力発電所の安全性は確保されている。 イ相手方ら(ア)MOX燃料は,①融点低下による燃料ペレットの融点の低下,②熱伝導低下による燃料ペレットの中心温度の上昇,③核分裂ガス放出率の上昇による燃料棒内圧の上昇,④ウラン・プルトニウム不均衡による「プルトニウムスポット」(プルトニウムの濃度が局所的に高い部分をいう。)発生という特性があり,燃料の健全性に影響を与える。 (イ)MOX燃料はウラン燃料に比べ,高速中性子を大量に発生させることにより,中性子照射脆化が加速する。 (ウ)プルサーマルには,①プルトニウムが熱中性子を吸収しやすいので制御棒の熱中性子吸収割合が減少し制御棒の効きが低下する,②反応度係数の絶対値増加による過度事象時の急激な反応度変化,③出力キーピング増大による出力分布の隔たり,④遅発中性子割合の減少による反応度投入時の出力上昇という,原子炉運転時の不安定さを増大させる要因がある。 (エ)MOX燃料は,ウラン燃料に比 応度変化,③出力キーピング増大による出力分布の隔たり,④遅発中性子割合の減少による反応度投入時の出力上昇という,原子炉運転時の不安定さを増大させる要因がある。 (エ)MOX燃料は,ウラン燃料に比べて,①核分裂収率が異なることによるヨウ素,トリウム等の放射性核種生成の著しい増加,②崩壊熱の増加と発熱期間の長期化による使用済み核燃料の貯蔵管理,廃棄物の長期化と困難化,③アルフ ァー線放出核種生成の増加による高い発ガン性,特に内部被曝の危険性の増加がある。 (オ)MOX燃料のペレットの加工は乾式研削によらざるを得ず,加工精度が落ちるため,規格外れのペレットが多数混在する可能性がある。 (カ)MOX燃料の核分裂時の膨張速度の変化の計測値はウラン燃料とほぼ同じである等と安易に仮定して適用しているが,燃焼度や膨張速度の異なるMOX燃料では運転末期のかなり前にギャップ再開が生じる可能性がある。 ギャップ再開が生じると熱伝導性が低下し(熱が冷却剤へ伝達放散されない),過度の温度上昇が生じる。核燃料に過度の温度上昇が続くと更にFPガスが発生してギャップが拡大し続けることとなり,やがてジルコニウム合金の被覆管は強度の限界に達して破断し核燃料棒が溶融破損することとなり,炉心全体が溶融破損してメルトダウンすることにつながる。 (8)テロリズム対策ア相手方ら新規制基準が策定し,抗告人が実施するテロリズム対策は,次のとおり不合理なものである。 (ア)新規制基準のテロリズム対策は,特定重大事故対処施設の設置であり,具体的には,緊急時制御室,フィルター付きベント,緊急時注水設備,緊急時減圧設備,電源設備等であり,テロ攻撃を防止する対策ではなく,テロ攻撃を受けても過酷事故に発展させない対策にすぎない。しかし,今日の複雑な国際情勢の中では,上記のような対 ト,緊急時注水設備,緊急時減圧設備,電源設備等であり,テロ攻撃を防止する対策ではなく,テロ攻撃を受けても過酷事故に発展させない対策にすぎない。しかし,今日の複雑な国際情勢の中では,上記のような対策でテロリズムによる過酷事故への進展を防止できるというのは根拠のない楽観的見通しでしかない。 (イ)抗告人の主張する対策でテロ攻撃を防ぐことは不可能であるし,新規制基準及び抗告人の対応は,ミサイル攻撃を想定していない点で重大な欠陥がある。 イ抗告人抗告人は,安全施設を含む区域に侵入防止障壁を設置するなどして,人の接近等 の管理をしたり,原子炉施設等の防護設備や情報システムについて外部からのアクセスを遮断する設計とするなど様々なテロリズム対策を講じている。ミサイル攻撃については,国が原子力災害への対処等に当たることとされ,抗告人は国と連携して対処することにしている。 (9)原子力災害対策ア相手方ら(ア)新規制基準は,最終的に住民の生命,身体及び健康を守るために必要不可欠な,深層防護における第5層(住民防護・避難計画)を規制対象としていないが,これは確立された国際的基準に反するのみならず,原子炉等規制法の要求を満足させていない違法な基準といえる。 (イ)仮に,避難計画を規制対象に取り込んでいない新規制基準が違法とまではいえないとしても,合理性・実効性のある避難計画が策定されていることが原子力発電所の運転を許容できる条件であるから,司法審査においても,合理性・実効性のある避難計画策定の事実が認定できない限り,運転差止め請求が認容されるべきである。しかし,現行の国,地方公共団体及び原子力事業者の策定する避難計画は,前提としての事故想定が極めて甘く,前段の防護(第4層・重大事故等対策)を否定するという深層防護の考え方に根本的に違反してい ある。しかし,現行の国,地方公共団体及び原子力事業者の策定する避難計画は,前提としての事故想定が極めて甘く,前段の防護(第4層・重大事故等対策)を否定するという深層防護の考え方に根本的に違反している。また,原子力災害対策指針の示す屋内退避や段階的避難では合理的でなく,地域防災計画も不十分であるし,本件各原子力発電所周辺で策定されている避難計画にも合理性・実効性がない。 イ抗告人原子力事業者である抗告人は,高浜地域の原子力災害対策の実効性を高めるべく,平常時から,原子力防災体制の整備,国,地方公共団体等との連絡体制の整備等を行っているほか,「高浜地域の緊急時対応」に関しては,住民等の移動手段の確保,避難退域時検査や除染時の支援,放射線防護資機材の支援,緊急時モニタリングの実施等の取組みを実施することとしている。 (10)相手方らのその他の主張ア相手方ら(ア)福島第一原子力発電所事故について福島第一原子力発電所事故の原因は未だに解明されておらず,このような状況の下で合理的な内容の新規制基準を策定することは不可能である。 また,新規制基準では,福島第一原子力発電所事故で明らかとなった旧安全審査指針類の重大な不備や欠陥が放置されたままであり,その内容は著しく不合理である。 (イ)立地審査指針について新規制基準では,重大事故における敷地境界被曝線量に基づく立地条件の適否の評価が必要不可欠であり,立地審査指針の組入れが必要であるのに,組入れがなされていない。 (ウ)共通要因故障についてa福島第一原子力発電所事故を踏まえれば,地震や津波などの共通要因故障(共通要因による安全機能の一斉喪失)を想定した設計基準及び安全設計評価がなされなければならない。 ところが,設置許可基準規則12条2項は,「安全機能を有する系統のうち,安全 津波などの共通要因故障(共通要因による安全機能の一斉喪失)を想定した設計基準及び安全設計評価がなされなければならない。 ところが,設置許可基準規則12条2項は,「安全機能を有する系統のうち,安全機能の重要度が特に高い安全機能を有するものは,当該系統を構成する機械又は器具の単一故障(単一の原因によって一つの機械又は器具が所定の安全機能を失うこと〔従属要因による多重故障を含む。〕)が発生した場合であって,外部電源が利用できない場合においても機能できるよう,当該系統を構成する機械又は器具の機能,構造及び動作原理を考慮して,多重性又は多様性を確保し,及び独立性を確保するものでなければならない。」と規定し,同規則2条2項3号も同項4号の「設置基準事故」における「運転時の異常な過渡変化」を定義するに当たり,「通常運転時に予想される機械又は器具の単一の故障若しくはその誤作動又は運転員の単一の誤操作及びこれらと類似の頻度で発生すると予想される外乱によって発生す る異常な状態であって,当該状態が継続した場合には発電用原子炉の炉心又は原子炉冷却材圧力バウンダリの著しい損傷が生ずるおそれがあるものとして安全設計上想定すべきものをいう。」と規定し,共通要因故障が生じることを想定しておらず,単一故障を想定している。 また,設置許可基準規則解釈13条1項は,「運転時の異常な過渡変化及び設計基準事故に対する解析及び評価を「発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査指針」(乙86,平成2年8月30日原子力安全委員会決定,平成13年3月29日一部改訂,以下「安全評価審査指針」という。)等に基づいて実施することと規定しているが,安全評価審査指針は,今回の新規制基準には組み込まれず,依然として単一故障を想定している。 原子力発電所の設計においては,万が一にも事故が発 指針」という。)等に基づいて実施することと規定しているが,安全評価審査指針は,今回の新規制基準には組み込まれず,依然として単一故障を想定している。 原子力発電所の設計においては,万が一にも事故が発生しないよう慎重に慎重を重ねて設計すべきであり,福島第一原子力発電所事故において共通要因故障が生じた以上,共通要因故障が生じることを仮定した安全設計及び安全設計評価をすべきである。 b不合理な方法で策定された基準地震動を前提とする耐震設計をしても,地震等による共通要因故障を防止することはできない。 (エ)重大事故等対策についてa具体的起因事象の想定について新規制基準の重大事故等対策は,炉心の著しい損傷等の具体的起因事象を想定して事故シーケンスを検討することまで求めておらず,現実の事故対策と乖離しているから,実効性を欠き不合理である。 b重大事故等対処施設の耐震性について重大事故等対処施設は,設計基準事故を超える事故の場合に稼働する役割を担った施設であるから,基準地震動を超える地震動にも耐えることが基準として要求されるべきであるのに,新規制基準では基準地震動による地震力に対して機能が損なわれなければよいとされており,不合理である。 c設置許可基準規則55条について設置許可基準規則55条は,(工場等外への放射線物質の拡散を抑制するための設備)として「発電用原子炉施設には,炉心の著しい損傷及び原子炉格納容器の破損又は貯蔵槽内燃料体等の著しい損傷に至った場合において工場等外への放射線物質の拡散を抑制するために必要な設備を設けなければならない。」と規定するが,このような工場等外への放射線物質の拡散を抑制するための設備に係る対策は実効的でなく,不合理である。 d設置許可基準規則37条1項解釈について設置許可基準規則37条1項解釈は,こ 」と規定するが,このような工場等外への放射線物質の拡散を抑制するための設備に係る対策は実効的でなく,不合理である。 d設置許可基準規則37条1項解釈について設置許可基準規則37条1項解釈は,これまでの研究成果を踏まえ,有意な炉心損傷頻度をもたらす様々な事故シーケンスグループを概ね網羅すると考えられる事故シーケンスを「必ず想定する事故シーケンスグループ」として定めているが,このようなシーケンスグループを見出し得る研究成果はなく不合理であるし,IAEA安全基準「原子力発電所のシビアアクシデントマネジメント計画」(No.NS-G-2.15)(甲299)(IAEAは国際原子力機関の略称である。)が,可能性のある起因事象に基づいて起こり得ると考えられる全ての事象等を扱うべきと定めていることに照らし,「概ね網羅する」というのも不合理である。確率論的リスク評価(PRA)の使用や事故シーケンスグループを重畳させないこと等において,恣意的な適用がなされており,不合理である。 e可搬型設備について新規制基準における可搬型設備による人的対応は,重大事故等発生後の緊急事態の下においては有効に機能しないことが明白であり,重大な欠陥がある。 (オ)特定重大事故等対処施設及び所内常設直流電源設備(3系統目)(以下「特定重大事故等対処施設等」という。)に関する猶予期間の経過措置について新規制基準の経過措置は,特定重大事故等対処施設等の設置に猶予期間を設定しているが,原子力発電所が「災害の防止上支障がないもの」であるために必要な設 備の設置を猶予するものであり,不十分な規定である。 (カ)外部電源系安全確保対策外部電源の重要度分類はPS-3,耐震重要度分類はCクラスのままであり,これでは安全性が確保されない。外部電源喪失時の規定も具体的でない。膨大なコス 分な規定である。 (カ)外部電源系安全確保対策外部電源の重要度分類はPS-3,耐震重要度分類はCクラスのままであり,これでは安全性が確保されない。外部電源喪失時の規定も具体的でない。膨大なコストがかかるという経済的な理由によって外部電源を耐震Sクラスに分類しないことは許されない。 (キ)残余のリスクについて平成18年耐震設計審査指針では,地震学的見地からは,基準地震動を上回る強さの地震動が生起する可能性は否定できないとし,これを「残余のリスク」と称し,「残余のリスク」の存在を十分認識し,これを合理的に実行可能な限り小さくするための努力が払われるべきであるとされていた(解説1(2))が,新規制基準では,「残余のリスク」の概念が見当たらない。 (ク)汚染水対策について新規制基準は汚染水対策に関する考察を全く欠く極めて不十分なものであるし,本件各原子力発電所の汚染水対策も同様である。 (ケ)フィルタ付ベントについて新規制基準は,フィルタ付ベントに弁操作機構(ラプチャー・ディスク)の設置を義務付ける内容となっていない。 (コ)コアキャッチャーの装備等について欧州電力事業者要求仕様(EUR)では,コアキャッチャーの装備,航空機衝突に耐えるための格納容器の二重化,12時間規則の採用等があり,新規制基準よりもはるかに厳しい規制内容である。 (サ)有効性評価の対象となる放射線物質について新規制基準は,重大事故等対策の有効性を評価する際に放出量を確認する放射性物質をセシウム137のみとし,ヨウ素131,クリプトン85等の放射性物質を 評価対象としていないのは不合理である。 (シ)炭素偏析に関する抗告人の調査について抗告人の行った炭素偏析に関する調査は,炭素濃度を現実に計測していない点や鋳造鋼を対象としない点等において不十分であり,本 としていないのは不合理である。 (シ)炭素偏析に関する抗告人の調査について抗告人の行った炭素偏析に関する調査は,炭素濃度を現実に計測していない点や鋳造鋼を対象としない点等において不十分であり,本件各原子力発電所の原子炉容器等に使用されている鋼材に含まれる炭素濃度が高く,強度不足となっているおそれがある。 イ抗告人(ア)福島第一原子力発電所事故について新規制基準は,津波による共通要因故障が発生した福島第一原子力発電所事故の教訓や海外の規制動向等を踏まえた上で策定されており,従来の規制基準に比べて共通要因故障の原因となり得る自然現象の想定等をより厳格に要求している。 また,従来は原子力事業者の自主的取組みに委ねられていた重大事故等対策についても新規制基準では新たに義務づけることにしている。 (イ)立地審査指針について新規制基準では,立地審査指針が求めていた原則的立地条件等は,その内容に応じて新規制基準に組込まれたり,原子力災害対策特別措置法等の他の法令で規制の対象とすることにより適切に考慮,判断されている。 (ウ)共通要因故障について新規制基準では,①共通要因故障の原因となる事象(地震,津波等の外部事象)についての対策を適切に講じることで共通要因故障の防止を図っており,その上で,②設備の偶発故障によるトラブルや事故を想定した対策を講じることとされている。 ②の対策では,安全設計,安全設計評価において,トラブルや事故に対応するための機器の単一故障を仮定するなどの厳しい条件下においても必要な機能が確保されることとされている。 このように,共通要因故障の原因となる地震,津波等の外部事象については,①の対策において防止が図られており,②の対策において外部事象による共通要因故 障を条件に加える必要はない。 (エ)重大事故等対策について 要因故障の原因となる地震,津波等の外部事象については,①の対策において防止が図られており,②の対策において外部事象による共通要因故 障を条件に加える必要はない。 (エ)重大事故等対策についてa設置許可基準規則における「第二章設計基準対象施設」の定めは,放射線物質の有する潜在的危険性を顕在化させないための対策が講じられていることを確認するための基準であり,地震,津波その他の自然的立地条件に係る安全確保対策,及び多重防護(深層防護)の考え方を取り入れた事故防止に係る安全確保対策がこれに該当し,かかる対策における「安全上重要な設備」は,基準地震動,基準津波等に対する安全性を有し,多重性又は多様性及び独立性を有するなどの格段に高い信頼性を有している。 そうであるから,「第二章設計基準対象施設」の対策が適切に講じられることにより,炉心の著しい損傷等に至ることはそもそも考えられないが,新規制基準では,こうした対策が奏功しないような万一の事態をあえて想定し,このような場合においても,より一層の安全性向上対策をめざして,さらなる炉心の著しい損傷等に至ることを防止する対策(重大事故等対策)を求めている。この対策が適切に講じられていることを確認するための基準として,設置許可基準規則における「第三章重大事故等対処施設」の定めが設けられており,この対策が適切に講じられることにより,炉心の著しい損傷を防止する確実性はさらに高まるといえる。 以上によると,設置許可基準規則55条の規定する「炉心の著しい損傷及び原子炉格納容器の破損又は貯蔵槽内燃料体等の著しい損傷に至った場合」とは,設計基準対象施設及び重大事故等対処施設がいずれも奏功しないという極めて想定困難な場合に当たるが,新規制基準は,このような場合においても,なおかつ放射線物質による周辺への影 損傷に至った場合」とは,設計基準対象施設及び重大事故等対処施設がいずれも奏功しないという極めて想定困難な場合に当たるが,新規制基準は,このような場合においても,なおかつ放射線物質による周辺への影響を緩和するという観点から一定の対策を講じることを求めているものであり,合理性がある。 b新規制基準は,炉心の著しい損傷等の具体的起因事象と,この起因事象から 炉心の著しい損傷に至る事故シーケンスを網羅的に洗い出し,この事故シーケンスを類型化した「事故シーケンスグループ」を想定することを求めているが,この事故シーケンスグループの想定に当たり,これまでの研究成果等を踏まえ,全ての原子力発電所で一律に想定する「必ず想定する事故シーケンスグループ」に加えて,個々の原子力発電所ごとに,その設計情報等を踏まえて確率論的リスク評価(PRA)等の手法を用いて評価した結果,「必ず想定する事故シーケンスグループ」の他に有意な頻度又は影響をもたらす事故シーケンスグループが抽出された場合は,これを追加することを求めている。このような定めは,国際原子力機関(IAEA)の要求事項に沿うものであり,合理性がある。 c新規制基準の「必ず想定する事故シーケンスグループ」に対応する各事故シーケンスの炉心損傷頻度は,概ね10-9~10-6/炉年と極めて低い水準とされているから,「必ず想定する事故シーケンスグループ」が重畳する頻度は極めて低くなることは明らかであり,重畳させないことが不合理であるとはいえない。 新規制基準は,事故シーケンス等を抽出するに当たり,確率論的リスク評価(PRA)の手法を適用できない事象についても,それに代わる手法により個別に検討して抽出すべきものとしており,不合理であるとはいえない。 d新規制基準では,重大事故等が発生した場合における環境条件下で RA)の手法を適用できない事象についても,それに代わる手法により個別に検討して抽出すべきものとしており,不合理であるとはいえない。 d新規制基準では,重大事故等が発生した場合における環境条件下での有効性の確認を要求しており,可搬型設備による対応についても,地震発生時に想定される事態も考慮された上でその有効性の確認が行われることから,可搬型設備で対応することに何ら問題はない。常設設備を設置する場合には,必ず設計上の想定を定めなければならないため,その想定を超えた場合には効果が限定されることとなるが,可搬型設備については,対応に柔軟性があり,耐震上優れた特性がある。 なお,新規制基準は,重大事故等対策については,可搬型設備と常設設備を適切に組み合せて対策を実施することを要求することにより,重大事故等対策の信頼性を高めている。 (オ)特定重大事故等対処施設等に関する猶予期間について 特定重大事故等対処施設等の設置については,原子炉等規制法の平成25年7月8日改正以前に設置許可を受けている発電用原子炉に対して,新規制基準に適合するための本体施設等に係る工事計画認可の日から起算して5年を経過するまでの間は適用が猶予されている(設置許可基準規則附則2条)。特定重大事故等対処施設等は,重大事故等対策や大規模な損壊が生じた場合の対応が全て備えられた上で,さらにその信頼性を向上させるための対策であるから,猶予されることによって必要な対策に欠けるとまではいえず,新規制基準の上記規定が不合理であるとはいえない。 (カ)外部電源系安全確保対策について新規制基準では,事故時には,原子力発電所外部の電源に依存せず,非常用電源設備により原子力発電所の安全を保つために必要な電力を供給することとし,その非常用電源設備に高い耐震性を持たせることで地震に対する安 基準では,事故時には,原子力発電所外部の電源に依存せず,非常用電源設備により原子力発電所の安全を保つために必要な電力を供給することとし,その非常用電源設備に高い耐震性を持たせることで地震に対する安全性を確保することとしている。 外部電源系による電力供給は遠く離れた他の発電所等から供給されるものであるが,長大な電線路や経由する変電所全てについて高い信頼性を確保することは不可能であり,また,電力系統の運用の状況により,その信頼性が影響を受け,原子力発電所側からは管理できないこと等から,事故発生時には外部電源系による電力供給は期待すべきではない。 外部電源喪失時の規定については,非常用電源設備が電力供給を行う設備の種類,台数,位置関係等は原子力発電所ごとに異なるため,あらゆる原子力発電所に共通する,非常用電源設備が使用される具体的な事態を予め想定することは合理的ではない。 電源設備については,多重性又は多様性及び独立性が確保された十分な容量を有する非常用電源設備の設置が要求されているが,新規制基準では,さらに重大事故等対策として,この非常用電源設備も全て機能喪失することを想定し,その場合の電源設備として常設及び可搬型の代替電源設備等の設置が求められている。所内常 設直流電源設備の第3系統目は,この重大事故等対策が全て備えられた上でさらにその信頼性を向上させるための対策であり,その実施が猶予されるからといって不十分な規制とはいえない。 原子力発電所全体としての安全性を確保するためには,重要度に応じて要求の程度を変化させるグレーディッドアプローチの方法が有効であり,このような安全規制の方法は国際原子力機関(IAEA)の安全基準等,国際的に広く採用されている。 抗告人は,このような方法を踏まえ,事故時には原子力発電所外部の電源に依存せず原子力 法が有効であり,このような安全規制の方法は国際原子力機関(IAEA)の安全基準等,国際的に広く採用されている。 抗告人は,このような方法を踏まえ,事故時には原子力発電所外部の電源に依存せず原子力発電所内に信頼できる非常用電源を確保するとの設計思想の下,非常用ディーゼル発電機に高い耐震性を持たせているのであって,合理性がある。 (キ)残余のリスクについて新規制基準においても,策定された基準地震動を上回る強さの地震動が生起する可能性を考慮した対応が求められており,「残余のリスク」の概念を用いた規定が存在しないからといって,新規制基準が不合理であるとはいえない。 (ク)汚染水対策について本件各原子力発電所においては,様々な安全確保対策が実施されているから,福島第一原子力発電所事故のような大量の汚染水対策が必要となる状況に至ることは考えられない。なお,本件各原子力発電所における放射線物質を含んだ汚染水の処理活動を含む,重大事故の発生後の中長期的な対応に備えた体制の整備に関しては,原子力規制委員会により,重大事故等防止技術的能力基準への適合性が確認されている。 (ケ)フィルタ付ベントについて抗告人は,新規制基準の要求事項を踏まえ,原子炉格納容器内の圧力及び温度を低下させるための設備として,設置許可基準規則50条の要求を満たす「格納容器再循環ユニット」を設置しているから,フィルタ付ベントを用いていないからといって,本件各原子力発電所の安全性が欠如しているとはいえない。 (コ)コアキャッチャーの装備等について新規制基準は,コアキャッチャーのような個別の特定の「機器」の設置を要求するのではなく,炉心の溶融や格納容器の破損を防止するなどのために必要な「機能」を要求しており,規制の要求水準を満たすものであれば,特定の設備によらずに他の方法 うな個別の特定の「機器」の設置を要求するのではなく,炉心の溶融や格納容器の破損を防止するなどのために必要な「機能」を要求しており,規制の要求水準を満たすものであれば,特定の設備によらずに他の方法によって要求を満たすことも可能とする趣旨であるといえるから,新規制基準が不合理であるとはいえない。 (サ)有効性評価の対象となる放射線物質について重大事故等対策における有効性評価をセシウム137の放出量で確認するという新規制基準の定めは,諸外国の規制動向等を踏まえて作成されたものであり,また,原子力発電所で重大事故が発生した場合に放出される放射性物質の種類及び割合は概ね一定であるという科学的・技術的知見に照らして合理的なものといえる。 (シ)炭素偏析に関する抗告人の調査について抗告人は,原子力規制委員会の指示を受けて行った調査及び評価の結果,本件各原子力発電所の評価対象部位全てにおいて,炭素偏析部が残存するおそれはないことを確認しており,当該確認結果については,原子力規制委員会もこれを了承している。抗告人の本件各原子力発電所に関する炭素偏析の可能性に係る評価は妥当なものであり,本件各原子力発電所の安全性は確認されている。 (11)保全の必要性ア相手方ら本案訴訟の帰趨を待っていては,相手方らは,安全性を欠く本件各原子力発電所の運転により著しい損害を被るし,急迫な危険が生じるおそれがある。 イ抗告人争う。 第3当裁判所の判断 原子炉等規制法による規制等(1)原子炉等規制法の体系(段階的安全規制) ア原子炉等規制法は,原子炉施設の設計から運転に至る過程を段階的に区分し,それぞれの段階に対応した許認可等の規制手続を介在させ,これらを通じて原子炉施設の利用に係る安全確保を図るという,段階的安全規制の体系を採用している。 イ段 計から運転に至る過程を段階的に区分し,それぞれの段階に対応した許認可等の規制手続を介在させ,これらを通じて原子炉施設の利用に係る安全確保を図るという,段階的安全規制の体系を採用している。 イ段階的安全規制の体系原子炉等規制法は,発電用原子炉を設置しようとする者に対し,次のとおり要求している。 ①基本設計等に関し,原子力規制委員会に対し,原子炉設置許可の申請を行い,同許可処分を受けること(同法43条の3の5,同法43条の3の6)。 ②工事の着手前に,原子力規制委員会に対し,工事計画認可の申請を行い,同認可処分を受けること(同法43条の3の9)。 ③工事後,発電用原子炉の運転開始前に,原子力規制委員会の使用前検査を受け,これに合格すること(同法43条の3の11)。 ④原子炉施設の運用に関する事項を規定した保安規定を定め,同規定について原子力規制委員会の認可を受けること(同法43条の3の24)。 ⑤運転開始後,一定の時期ごとに,原子力規制委員会が行う施設定期検査を受けること(同法43条の3の15)。 ⑥原子炉設置許可を受けた者が,同許可に係る所定の事項を変更しようとする場合は,原子炉設置変更許可を受けた上で(同法43条の3の8),原子炉設置許可と同様に,工事計画認可を受け,使用前検査に合格し,保安規定変更認可を受けること。 ウ前記イの段階的安全規制のうち,①の原子炉設置許可及び⑥の原子炉設置変更許可においては,申請に係る原子炉施設の基本設計ないし基本的設計方針の安全性に関わる事項の妥当性等が審査される。 基準地震動及び基準津波の妥当性を含む耐震及び耐津波設計方針,テロリズム 対策等については,⑥の設置変更許可に当たって審査される。 ②から⑤までの規制においては,設置(変更)許可処分時に審査された基本設計ないし基本的設計方針の安 む耐震及び耐津波設計方針,テロリズム 対策等については,⑥の設置変更許可に当たって審査される。 ②から⑤までの規制においては,設置(変更)許可処分時に審査された基本設計ないし基本的設計方針の安全性に関わる事項の妥当性を前提として,原子炉施設の詳細設計等の妥当性の審査(②),認可を受けた工事計画どおりに工事が実施されたことの審査(③),運転開始後の安全性確保,運用等の審査(④,⑤)が行われる。 エ前記のとおりの段階的安全規制が設けられた趣旨は,原子炉施設の安全性が確保されないときは,当該原子炉施設の周辺住民等の生命,身体及び健康に重大な危害を及ぼし,周辺の環境を放射能によって汚染するなど,深刻な災害を引き起こすおそれがあることに鑑み,このような災害が万が一にも起こらないようにするため,原子炉施設の安全性につき,科学的・技術的見地から,多段階にわたり十分な審査を行わせることにある。 オ原子炉等規制法は,福島第一原子力発電所事故を受けて平成24年に改正されたが,上記段階的安全規制の体系自体については,改正の前後を通じて特に変更されていない。 (2)福島第一原子力発電所事故の発生と原子力規制行政の変化ア事故原因に関する調査・分析(ア)福島第一原子力発電所事故については,様々な機関により調査・検討が行われており,平成23年6月には,政府の原子力災害対策本部が,それまでに得られた事実関係をもとに事故の評価や教訓を取りまとめた暫定的な事故報告書として,「原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書-東京電力福島原子力発電所の事故について-」を作成した。 また,事故原因の究明や対応の検証を目的として,国会,政府,民間,東京電力の4つの事故調査委員会が設置され,平成24年には各委員会がそれぞれ事故調査報告書を取りまとめた。 故について-」を作成した。 また,事故原因の究明や対応の検証を目的として,国会,政府,民間,東京電力の4つの事故調査委員会が設置され,平成24年には各委員会がそれぞれ事故調査報告書を取りまとめた。他方,原子力安全・保安院も事故分析を行い,同年 3月に「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の技術的知見について」と題する報告書(乙226)を取りまとめた。 上記各報告書のうち,国会事故調報告書(東京電力福島原子力発電所事故調査委員会の「報告書」)は,「安全上重要な機器の地震による損傷はないとは確定的には言えない」としているが,他の報告書は,地震動によって福島第一原子力発電所の重要機器に機能を損なうような破損が生じたことを認めておらず,津波によって全交流動力電源と直流電源を喪失し,原子炉を安定的に冷却する機能が失われたことを,事故の直接的原因としている(乙10,乙226)。 平成26年3月に一般社団法人日本原子力学会が取りまとめた最終報告書においては,東北地方太平洋沖地震の地震動による,福島第一原子力発電所の安全機能に深刻な影響を与える損傷はなかったと判断されている(乙11)。 (イ)原子力規制委員会は,「国会事故調報告書において未解明問題として,規制機関に対し実証的な調査が求められている事項」を対象に検討を進め,同委員会としての見解を中間報告書として取りまとめた(甲7の2,乙12)。 上記中間報告書によると,「地震発生から津波到達までの間には,原子炉圧力バウンダリから漏えいが発生したことを示すプラントデータは見いだせない」(乙12),「A系非常用交流電源系統が機能喪失した原因は,津波による浸水であると考えられる」(乙12)などとされており,福島第一原子力発電所1号機での非常用交流電源系統の機能喪失等は,津波の影響によるものであるとされて 用交流電源系統が機能喪失した原因は,津波による浸水であると考えられる」(乙12)などとされており,福島第一原子力発電所1号機での非常用交流電源系統の機能喪失等は,津波の影響によるものであるとされている。 イ原子力規制行政の変遷(ア)福島第一原子力発電所事故を受けて,原子力安全行政に対する信頼回復とその機能向上を図るため,平成23年8月に,「原子力安全規制に関する組織等の改革の基本方針」が閣議決定された(乙227)。同方針には,「規制と利用の分離」の観点から,原子力安全・保安院の原子力安全規制部門を経済産業省から分離し,原子力安全委員会の機能を統合して,環境省の外局として,原子力安全 庁(仮称)を設置すること,福島第一原子力発電所事故を踏まえた新たな規制の仕組みの導入等,規制の在り方や関係制度の見直しを行うこと等が盛り込まれた。 その後,平成23年10月から12月まで,原子力安全規制に関する組織の在り方,原子力安全規制強化の在り方等に関して政府が専門家の意見を聴くために「原子力事故再発防止顧問会議」を開催した。この会議では,新しい原子力安全規制組織の独立性の確保や,原子力安全規制組織等の改革の7原則(規制と利用の分離,原子力安全規制の関係行政の一元化等)を提言として取りまとめた(乙228)。 平成24年1月には,国際原子力機関(IAEA)等の国際機関,海外の原子力安全規制組織の関係者等が日本の原子力安全規制に関する制度改革の在り方等について議論を行う「原子力安全規制に関する国際ワークショップ」が開催され,改革に向けた助言が示された(乙229の1及び2,「ReportoftheInternationalWorkshoponNuclearSafetyRegulation」)。 (イ)上記経緯を経て,平成24年6月,原子 9の1及び2,「ReportoftheInternationalWorkshoponNuclearSafetyRegulation」)。 (イ)上記経緯を経て,平成24年6月,原子力規制委員会設置法(設置法)が成立し,原子力安全規制を担う新たな行政機関として原子力規制委員会が発足し,また,同法附則15条ないし18条に基づき,原子炉等規制法の改正,施行が順次行われた。 原子力規制委員会は,国家行政組織法3条2項に基づく,いわゆる3条委員会として高度の独立性が保障されることとなった(設置法2条)。従来の原子力安全委員会及び原子力安全・保安院の事務のほか,文部科学省及び国土交通省の所掌する原子力安全の規制等に関する事務を集約して,原子炉に関する規制をはじめ原子力利用における安全の確保を図るために必要な施策の策定・実施を一元的につかさどり(同法4条),その運営に当たっては,情報の公開を徹底する(同法25条)こととされた。 原子力利用における安全確保について,設置法は,「事故の発生を常に想定し, その防止に最善かつ最大の努力をしなければならないという認識に立って,確立された国際的な基準を踏まえて原子力利用における安全の確保を図る」(同法1条)と規定しているところ,原子力規制委員会の組織理念において,「原子力規制委員会は,・・・原子力の安全管理を立て直し,真の安全文化を確立すべく,設置された。原子力にかかわる者は・・・常に世界最高水準の安全を目指さなければならない」とされた(平成25年1月9日同委員会決定)。 原子力規制委員会の下で,発電用原子炉施設の安全性に関する新たな規制基準(新規制基準)が制定され,平成25年7月に施行された。 (ウ)原子炉等規制法の改正により,いわゆるバックフィット制度が導入された。すなわち,原子炉設置 電用原子炉施設の安全性に関する新たな規制基準(新規制基準)が制定され,平成25年7月に施行された。 (ウ)原子炉等規制法の改正により,いわゆるバックフィット制度が導入された。すなわち,原子炉設置許可に係る規制基準が変更された場合等において,発電用原子炉施設の位置,構造又は設備が,原子炉等規制法43条の3の6第1項4号の設置許可基準に適合しないと認められるとき,原子力規制委員会は,その発電用原子炉設置者に対して,当該発電用原子炉施設を設置許可基準に適合させるべく必要な措置を講じるよう命じることができるとの定めが置かれた(同法43条の3の23)。 このバックフィット制度の導入により,原子力規制委員会は,既に許可を与えた発電用原子炉施設について,最新の科学的・技術的知見を踏まえた新たな基準を定めた場合には,当該施設を当該基準に適合させるよう命じることができるようになった。 (3)原子力安全規制の強化(新規制基準の策定)ア新規制基準の策定に至る経緯(ア)原子力安全委員会及び原子力安全・保安院における検討a福島第一原子力発電所事故の発生及び同事故に関する調査・検討の結果を踏まえて,原子力安全委員会及び原子力安全・保安院は,当該事故を教訓として活かすべく,安全規制に関する検討を行った。 b原子力安全委員会は,同委員会の「原子力安全基準・指針専門部会」の下に,「安全設計審査指針等検討小委員会」及び「地震・津波関連指針等検討小委員会」を設置した。前者の小委員会は,平成23年7月から平成24年2月までに計13回開催され,福島第一原子力発電所事故の教訓及び諸外国の動向を参照して,安全規制に関する検討を行った(乙231,原子力安全委員会ウェブサイト「原子力安全基準・指針専門部会安全設計審査指針等検討小委員会議事次第/速記録」,乙232 故の教訓及び諸外国の動向を参照して,安全規制に関する検討を行った(乙231,原子力安全委員会ウェブサイト「原子力安全基準・指針専門部会安全設計審査指針等検討小委員会議事次第/速記録」,乙232,「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針及び関連の指針類に反映させるべき事項について(とりまとめ)」)。 後者の小委員会は,平成23年7月から平成24年2月までに計14回開催され,平成18年耐震設計審査指針実施後の知見,福島第一原子力発電所事故の教訓等を踏まえて,地震・津波に対する安全確保対策について検討した(乙82の2~4)。 c原子力安全・保安院は,福島第一原子力発電所事故の技術的知見を体系的に抽出し,対策の方向性について検討することとし,「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の技術的知見に関する意見聴取会」を平成23年10月から平成24年2月まで計8回開催して,専門家の意見を聴きつつ検討を進めた(乙226別紙「開催実績」)。上記検討結果は,「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の技術的知見について」と題する報告書(乙226)に取りまとめられた。 また,原子力安全・保安院は,平成24年2月から8月にかけて,シビアアクシデント対策規制の基本的考え方に関する整理を行った。この過程で「発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシデント対策規制の基本的考え方に係る意見聴取会」を7回開催し,専門家や原子炉設置者からの意見を聴取したほか,これまでの知見,海外の規制情報,福島第一原子力発電所事故の技術的知見等を踏まえ,報告書として,「発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシデント対策規制の基本的考え方について(現時点での検討状況)」を取りまとめた(乙233)。 さらに,地震・津波の関係では,東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う津波に 原子炉施設におけるシビアアクシデント対策規制の基本的考え方について(現時点での検討状況)」を取りまとめた(乙233)。 さらに,地震・津波の関係では,東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う津波による原子力発電所への影響等の評価結果について,学識経験者の意見を踏まえた検討を行うこと等により,地震・津波による原子力発電所への影響に関して的確な評価を行うため,「地震・津波の解析結果の評価に関する意見聴取会」(第2回より「地震・津波に関する意見聴取会」と改称)及び「建築物・構造に関する意見聴取会」を設置し,審議を行った。これらの意見聴取会において,それぞれ報告書が取りまとめられた(乙234,「平成23年東北地方太平洋沖地震の知見を考慮した原子力発電所の地震・津波の評価について~中間取りまとめ~」,乙235,「平成23年東北地方太平洋沖地震による福島第一及び福島第二原子力発電所の原子炉建屋等への影響・評価について~中間取りまとめ~」)。 (イ)原子力規制委員会における新規制基準の策定過程a平成24年6月の原子炉等規制法改正を受けて,規制基準の見直しが行われることとなった。原子力規制委員会は,同年9月に発足した後,新たな規制基準の制定作業に着手し,同委員会の下に「発電用軽水型原子炉の新規制基準に関する検討チーム」,「発電用原子炉施設の新安全規制の制度整備に関する検討チーム」及び「発電用軽水型原子炉施設の地震・津波に関わる規制基準に関する検討チーム」を設置して検討を進めた。 各チームの会合には,原子力規制委員会担当委員や多様な学問分野の外部専門家をはじめ,原子力規制に対して造詣が深い原子力規制庁職員及び旧独立行政法人原子力安全基盤機構の職員らが出席し,それぞれ約8か月間,回数にして12回ないし23回にわたり会合が開かれ,原子力安全委員会,原子力 め,原子力規制に対して造詣が深い原子力規制庁職員及び旧独立行政法人原子力安全基盤機構の職員らが出席し,それぞれ約8か月間,回数にして12回ないし23回にわたり会合が開かれ,原子力安全委員会,原子力安全・保安院における検討結果,最新の科学的・技術的知見,海外の規制動向等も踏まえて議論が重ねられた(乙236の1ないし3,原子力規制委員会ウェブサイト「発電用軽水型原子炉の新規制基準に関する検討チーム開催一覧」等,乙237の1ないし3,原子力規制委員会ウェブサイト「発電用原子炉施設の新安全規制の制 度整備に関する検討チーム開催一覧」等,乙82の9~11)。 なお,外部専門家については,「原子力規制委員会が,電気事業者等に対する原子力安全規制等に関する決定を行うにあたり,参考として,外部有識者から意見を聴くに当たっての透明性・中立性を確保するための要件等について」(乙66)に基づき,透明性・中立性を確保するため,電気事業者等との関係について自己申告を行うことが求められ,申告内容は同委員会ウェブサイト上で公開された。 また,新規制基準の検討に当たっては,行政手続法39条1項に基づく意見公募手続(パブリックコメント)が2度にわたって行われ,原子力規制委員会規則等に加え,同委員会の内規についても,同手続の対象とされた(乙83,乙84の1及び2)。 b前記のとおり,新規制基準は,原子力規制委員会において,様々な専門分野を有する学識経験者等が,最新の科学的・技術的知見を踏まえて,相当期間,多数回にわたって行った検討を経て制定されたものであり,現在の科学技術水準を踏まえた合理的なものとされている(乙273の1)。 イ制定過程における議論と従来の規制からの変更点(ア)前記のとおり,福島第一原子力発電所事故の原因については,国会事故調報告書(東京電 水準を踏まえた合理的なものとされている(乙273の1)。 イ制定過程における議論と従来の規制からの変更点(ア)前記のとおり,福島第一原子力発電所事故の原因については,国会事故調報告書(東京電力福島原子力発電所事故調査委員会の「報告書」)のみが「安全上重要な機器の地震による損傷はないとは確定的には言えない」と指摘しているが,政府,民間,東京電力株式会社の事故調査報告書や原子力安全・保安院の報告書が,地震動による重要機器の機能を損なうような破損を認めておらず,津波によって全交流動力電源と直流電源を喪失し,原子炉を安定的に冷却する機能が失われたことを,事故の直接的原因としている。 原子力規制委員会は,これらの調査・検討結果により,福島第一原子力発電所事故の発生及び進展に関する基本的な事象は明らかにされており,同事故について解明できていない部分はあるものの,少なくとも同事故のような事故を防止す るための基準を策定することが可能な程度に事実解明が進んだものと評価した(乙73,乙273の1)。 (イ)原子力安全委員会及び原子力安全・保安院における検討a事故防止対策に係る検討(a)原子力安全委員会における検討福島第一原子力発電所では,東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う津波により全交流動力電源を喪失し,炉心の残留熱を海へ輸送する機能を喪失したことで,炉心が著しく損傷し,放射性物質を大量放出するといった深刻な事態が生じた。 このことを踏まえ,原子力安全委員会の「安全設計審査指針等検討小委員会」は,福島第一原子力発電所事故から得られた教訓のうち,「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」(乙81,平成2年8月20日原子力安全委員会決定・平成13年3月29日一部改訂,以下「安全設計審査指針」という。)及び関連指針類に反映させるべき事 発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」(乙81,平成2年8月20日原子力安全委員会決定・平成13年3月29日一部改訂,以下「安全設計審査指針」という。)及び関連指針類に反映させるべき事項として,全交流動力電源喪失対策及び最終的な熱の逃がし場である最終ヒートシンク喪失(LUHS)対策を中心に検討を行った。 検討に当たっては,深層防護(多重防護)の考え方を安全確保の基本と位置づけ,アメリカの規制動向や諸外国における事例が参照された(乙232,乙273の1)。 (b)原子力安全保安院における検討原子力安全・保安院は,福島第一原子力発電所事故の発生及び進展について,判明している事実関係を基に,工学的な観点から,出来る限り深く整理・分析することにより,技術的知見を体系的に抽出し,主に設備・手順に係る必要な対策の方向性について検討した。その結果,「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の技術的知見について」として,事故の発生及び進展に関し,当時分かる範囲の事実関係を基に,今後の規制に反映すべきと考えられる事項として,外部電源対策,所内電気設備対策,冷却・注水設備対策,格納容器破損・水素爆発対策, 管理・計装設備対策が取りまとめられた(乙226,乙273の1)。 b重大事故等対策(シビアアクシデント対策)に係る検討(a)東北地方太平洋沖地震及びそれに伴って発生した津波により,福島第一原子力発電所で炉心損傷,原子炉格納容器の破損等に至ったことを受け,政府の作成した平成23年6月の「原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書」では,従来,原子炉設置者の自主的な取組みとしていたアクシデントマネジメント対策を法規制上の要求に改めるとともに,設計要求事項の見直しを行うこと等,重大事故等対策に関する教訓が取りまとめられた 告書」では,従来,原子炉設置者の自主的な取組みとしていたアクシデントマネジメント対策を法規制上の要求に改めるとともに,設計要求事項の見直しを行うこと等,重大事故等対策に関する教訓が取りまとめられた。 (b)原子力安全委員会では,平成23年10月に「発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシデント対策について」を決定し,重大事故等の発生防止,影響緩和に対して,規制上の要求や確認対象の範囲を拡大することを含めて安全確保策を強化すべきとした。同決定では,重大事故等対策の具体的な方策及び施策について,原子力安全・保安院において検討するよう求めた。 (c)原子力安全・保安院では,平成24年3月の報告書「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の技術的知見について」(乙226)において,重大事故等対策については,福島第一原子力発電所事故で発生しなかった事象も広く包含する体系的な検討を整理する必要があることを指摘したほか,今後の規制に反映すべき視点として,深層防護(多重防護)の考え方の徹底,重大事故等対策の多様性・柔軟性・操作性,内的事象・外的事象を広く包含した重大事故等対策の必要性,安全規制の国際的整合性の向上と安全性の継続的改善の重要性が掲げられた。 また,原子力安全・保安院では,重大事故等対策規制の基本的考え方に関する整理を行い,「発電用軽水型原子炉施設における重大事故等対策規制の基本的考え方について(現時点での検討状況)」を報告書として取りまとめた(乙233)。 もっとも,この報告書は検討過程としての側面を有しており,用語や概念の厳密 な整理にはまだ完全ではない点が残っていたため,重大事故等対策規制については,今後,新たに設置される原子力規制委員会において検討が進められることとなった。その際,この報告書が原子力規制委員会での検討に当たっ はまだ完全ではない点が残っていたため,重大事故等対策規制については,今後,新たに設置される原子力規制委員会において検討が進められることとなった。その際,この報告書が原子力規制委員会での検討に当たって参考にされることが期待された(乙273の1)。 c地震及び津波に係る検討(a)原子力安全委員会における検討原子力安全委員会が平成18年9月19日に改訂した平成18年耐震設計審査指針(甲18,乙23)は,当時の地質学,地形学,地震学,地盤工学,建築工学及び機械工学等の専門家らにより検討されたものであった。 その後,平成23年に東北地方太平洋沖地震が発生したことを受けて,原子力安全委員会は,平成18年耐震設計審査指針後に蓄積された知見,平成23年3月11日以降に発生した地震及び津波に係る知見並びに福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえ,地震及び津波に対する発電用原子炉施設の安全確保対策について検討した。 上記「地震・津波関連指針等検討小委員会」において,東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う津波の分析に加えて,東北電力株式会社(以下「東北電力」という。)女川原子力発電所,東京電力福島第一原子力発電所,同福島第二原子力発電所及び日本原子力発電株式会社(以下「日本原子力発電」という。)東海第二発電所で観測された地震や津波の観測記録等の分析を行うとともに,東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う津波に係る知見並びに福島第一原子力発電所事故の教訓を整理したほか,平成18年9月19日の耐震設計審査指針改訂後に実施された耐震バックチェックによって得られた経験及び知見を整理した。 さらに,上記小委員会は,地震調査研究推進本部(文部科学省),中央防災会議(内閣府),国土交通省等の他機関における東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う津波についての検討結果に加えて,土木学会 理した。 さらに,上記小委員会は,地震調査研究推進本部(文部科学省),中央防災会議(内閣府),国土交通省等の他機関における東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う津波についての検討結果に加えて,土木学会における検討状況,世界の津波の事 例及び国際原子力機関(IAEA)やアメリカの原子力規制委員会等の規制状況,福島第一原子力発電所事故に関連した調査報告書も踏まえて検討を行った(乙82の6)。 以上の検討を踏まえ,上記小委員会は,平成24年3月に,「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針及び関連の指針類に反映させるべき事項について(とりまとめ)」(乙238)を取りまとめ,福島第一原子力発電所事故においては,津波による海水ポンプ,非常用電源設備等の機能喪失を防止するため,ドライサイトコンセプトを基本とする津波防護設計の基本的な考え方や,津波対策を検討する基礎となる基準津波の策定を義務付けるべき旨を取りまとめた(乙273の1)。 (b)原子力安全・保安院における検討原子力安全委員会は,平成23年4月,東北地方太平洋沖地震等の知見を反映して,原子力安全・保安院に対し,耐震安全性に影響を与える地震に関して評価を行うよう意見を述べた。 これを受けて,原子力安全・保安院は,平成23年9月,上記「地震・津波の解析結果の評価に関する意見聴取会」及び「建築物・構造に関する意見聴取会」を設置し,審議を行った。 地震・津波の解析結果の評価に関する意見聴取会においては,東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う津波について,福島第一原子力発電所,福島第二原子力発電所,女川原子力発電所及び東海第二発電所における地震動及び津波の解析・評価を行い,これに基づく同地震に関する新たな科学的・技術的知見について,耐震安全性評価に対する反映方針が検討された。 建築物・構造に関する意 力発電所及び東海第二発電所における地震動及び津波の解析・評価を行い,これに基づく同地震に関する新たな科学的・技術的知見について,耐震安全性評価に対する反映方針が検討された。 建築物・構造に関する意見聴取会においては,上記の各原子力発電所における建物・構築物,機器・配管系の地震応答解析の評価,津波による原子力施設の被害状況を踏まえた影響評価を行い,これに基づく東北地方太平洋沖地震に関する 新たな科学的・技術的知見について,耐震安全性評価に対する反映方針が検討された。 上記意見聴取会において,それぞれ報告書が取りまとめられ(乙234,乙235),平成24年2月,原子力安全委員会に報告された(乙273の1)。 (ウ)原子力規制委員会における議論a新規制基準の検討チームの構成平成24年6月の原子炉等規制法改正を受けて,原子炉設置許可の要件に関する規制基準の見直しが行われることとなり,原子力規制委員会は,重大事故等対策,地震及び津波以外の自然現象への対策に関する設計基準に加え,これまで原子炉設置許可の基準として用いられてきた原子力安全委員会が策定した安全設計審査指針(乙81)等の内容を見直した上で,原子力規制委員会が定めるべき基準を検討するため,「発電用軽水型原子炉の新安全基準に関する検討チーム」(第21回より発電用軽水型原子炉の新規制基準に関する検討チームと改称。以下「基準検討チーム」という。)を構成した。 また,自然現象に対する設計基準のうち,地震及び津波対策については,原子力安全委員会の地震・津波関連指針等検討小委員会における検討も踏まえた上で,原子力規制委員会が定めるべき基準を検討するため,上記「発電用軽水型原子炉施設の地震・津波に関わる規制基準に関する検討チーム」(以下「地震・津波検討チーム」という。)を構成した。 b基準検 上で,原子力規制委員会が定めるべき基準を検討するため,上記「発電用軽水型原子炉施設の地震・津波に関わる規制基準に関する検討チーム」(以下「地震・津波検討チーム」という。)を構成した。 b基準検討チームにおける検討(a)基準検討チームにおける検討は,原子力規制委員会の委員のうち,原子力安全委員会における安全設計審査指針(乙81)の見直しを検討していた安全設計審査指針等検討小委員会の構成員でもあった,更田豊志委員が中心となって,関係分野の学識経験者が参加して行われた。 福島第一原子力発電所事故については,原子力安全委員会及び原子力安全・保 安院において検討が行われたが,基準検討チームにおいては,これらの検討に参画していた有識者も含め,外部専門家として招聘して検討が進められた。 (b)基準検討チームは,新規制基準の検討の基本方針として,①福島第一原子力発電所事故の教訓の反映及び②海外の規制動向との比較を掲げた(乙236の3,「『発電用軽水型原子炉の新安全基準に関する検討チーム』について(案)」)。 具体的には,①については,福島第一原子力発電所の事故において,津波に対する設計上の想定(設計基準)に最新の知見が反映されていなかったこと,設計基準を上回る津波が来襲したこと,津波による被水・水没という共通要因により機器が同時に機能を喪失したこと等を踏まえ,地震・津波をはじめとする自然現象に対する対策の強化の必要性,多重故障,共通要因故障による事故の発生を考慮した対策の必要性,重大事故(シビアアクシデント)の発生防止,拡大防止を考慮する必要性について認識し,検討を進めることとなった。 また,②については,国際原子力機関(IAEA)等の国際機関及び米国等の主要国の安全基準等との比較を実施することとなった。 こうした方針の下,共通要因故障の原因と て認識し,検討を進めることとなった。 また,②については,国際原子力機関(IAEA)等の国際機関及び米国等の主要国の安全基準等との比較を実施することとなった。 こうした方針の下,共通要因故障の原因となりうる自然現象その他の外部事象として考慮すべき事項の抽出,各事象に対し発電用原子炉に要求されるべき性能,重大事故等対策として要求されるべき内容等について,海外の規制動向を比較参照しつつ,幅広く検討が進められた(乙273の1)。 c地震・津波検討チームにおける検討(a)地震・津波検討チームにおける検討には,原子力安全委員会における耐震設計審査指針等の報告書の検討に参画した有識者のほか,東北地方太平洋沖地震以降,耐震関係の様々な見直しの場に参画し,基準の策定に貢献した有識者らの中から地震,津波及び地盤等の各種専門分野の科学的・技術的知見を有する学識経験者6名が選抜され,検討内容に応じて,地形学,地震,津波及び建築に関する学識経験者がチームに参加した。 (b)地震・津波検討チームは,原子力安全委員会の下で地震等検討小委員会が取りまとめた耐震設計審査指針等の改訂案のうち,地震及び津波に関わる安全設計方針として求められている各要件については,新たに策定する基準においても重要な構成要素となるものと評価するとともに,基準の骨子案を策定するに当たっては,上記改訂案の安全設計方針の各要件について改めて分類・整理し,必要な見直しを行った上で基準の骨子案の構成要素とする方針を示した。 そして,地震・津波検討チームは,この検討方針に基づき,地震及び津波について,国際原子力機関(IAEA)安全基準,アメリカ,フランス及びドイツの各規制内容のほか,福島第一原子力発電所事故を踏まえた国会及び政府等の事故調査委員会の主な指摘事項のうち耐震関係基準の内容に関するも 国際原子力機関(IAEA)安全基準,アメリカ,フランス及びドイツの各規制内容のほか,福島第一原子力発電所事故を踏まえた国会及び政府等の事故調査委員会の主な指摘事項のうち耐震関係基準の内容に関するものを整理し,これらと平成18年耐震設計審査指針とを比較した上で,国や地域等の特性に配慮しつつ,我が国の規制として適切な内容を検討した。また,地震・津波検討チームは,発電用原子炉施設における安全対策への取組の実態を確認するため,原子力事業者に対するヒアリングを実施するとともに,東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う津波を受けた東北電力女川原子力発電所の現地調査を実施し,これらの結果も踏まえ,安全審査の高度化を図るべき事項についての検討を進めた(乙273の1)。 (エ)従来の規制からの変更点a新規制基準では,共通要因故障の原因となる事象を,福島第一原子力発電所事故の原因となった津波に限らず,むしろ幅広く捉えて,かつ,その考慮を手厚くし,炉心の著しい損傷を確実に防止して,発電用原子炉施設の安全確保をより確実なものとするべく,地震,津波,火山活動,竜巻,森林火災等の自然現象の想定や,電源喪失,発電所内部での火災,溢水等に対する考慮をより厳格に求めるに至った。 地震については,新規制基準施行前の平成18年耐震設計審査指針に定められ ていた,基準地震動の策定方法の基本的な枠組みや,耐震設計上の重要度分類に応じた耐震性の要求は概ね維持しつつ,新規制基準における設置許可基準規則では,①基準地震動の策定過程で考慮される地震動の大きさに影響を与えるパラメータについてのより詳細な検討や,②津波防護施設等を耐震設計上の重要度分類のSクラスと分類することが求められることとなった。 津波については,新規制基準施行前の平成18年耐震設計審査指針が,「地震随伴事象に対 てのより詳細な検討や,②津波防護施設等を耐震設計上の重要度分類のSクラスと分類することが求められることとなった。 津波については,新規制基準施行前の平成18年耐震設計審査指針が,「地震随伴事象に対する考慮」として,津波によって施設の安全機能が重大な影響を受けるおそれがないこと等を要求していた(平成18年耐震設計審査指針8)のに対し,新規制基準における設置許可基準規則は,新たに津波に対する安全性評価に用いられる基準津波の策定を要求し,その基準津波の策定に当たっては,①地震以外の津波の発生要因を考慮すること,②地震による津波と地震以外の要因による津波の組合せを考慮すること,③波源特性の不確かさの要因を踏まえて評価すること等が求められることとなった(乙273の1)。 b重大事故(シビアアクシデント)の発生防止,拡大防止という観点から,従来,原子力事業者の自主的取組みに委ねられていた重大事故対策を,規制上義務付けることとなった。すなわち,複数の「安全上重要な施設・設備」がその機能を喪失する事態も想定し,これにより生じる炉心の著しい損傷を防止する対策(全交流動力電源喪失対策,原子炉補機冷却機能〔最終ヒートシンク〕喪失対策も含む),原子炉格納容器の破損を防止する対策(水素爆発対策も含む)等のための施設(重大事故等対処施設)を設けることを求めることとした。また,重大事故時における発電所の状態把握を可能とするための計装設備等も求められることとなった(乙273の1)。 c原子炉等規制法1条に,「テロリズムその他の犯罪行為の発生も想定した必要な規制を行う」ことが目的として追加されたことから,海外の知見を踏まえて,テロリズムへの対策が強化された。具体的には,サイバーテロを含む不正アクセ ス行為等への対策が拡大されるとともに,故意による航空機衝突等のテ が目的として追加されたことから,海外の知見を踏まえて,テロリズムへの対策が強化された。具体的には,サイバーテロを含む不正アクセ ス行為等への対策が拡大されるとともに,故意による航空機衝突等のテロリズムにより生ずる事態を想定しても,原子力発電所外への放射性物質の大規模な放出を抑制する施設(特定重大事故等対処施設)を設けることが要求されることとなった。 d新規制基準は,国際原子力機関(IAEA)による総合規制評価サービス(IRRS)において,「福島第一原子力発電所の事故の教訓を日本の法的枠組みに実効的に反映させた」ものと評価されている(乙273の1)。 ウ段階的安全規制と新規制基準原子炉等規制法は,新規制基準の具体的内容について,原子力規制委員会の定める規則に委任している。 (ア)原子炉設置(変更)許可に係る規則等発電用原子炉を設置しようとする者は,原子力規制委員会の許可(原子炉設置許可)を受けなければならず(原子炉等規制法43条の3の5第1項),また,原子炉設置許可を受けた者が,同法43条の3の5第2項2号から5号まで又は8号から10号までに掲げる事項を変更しようとするときは,原子力規制委員会の許可(原子炉設置変更許可)を受けなければならない(同法43条の3の8第1項)。 原子炉設置許可及び原子炉設置変更許可の基準は,同法43条の3の6第1項1号から4号までに規定されており,同項1号には発電用原子炉の利用目的,同項2号及び3号には技術的能力等,同項4号には発電用原子炉施設の位置,構造及び設備に関する基準が設けられている。 a原子炉施設の位置,構造及び設備に関する基準原子炉等規制法43条の3の6第1項4号においては,「発電用原子炉施設の位置,構造及び設備が核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物又は発電用原子炉による 設の位置,構造及び設備に関する基準原子炉等規制法43条の3の6第1項4号においては,「発電用原子炉施設の位置,構造及び設備が核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物又は発電用原子炉による災害の防止上支障がないものとして原子力規制委員会規則で定 める基準に適合するものであること」が,原子炉設置許可の基準として定められている(以下「4号要件」という)。 同号にいう原子力規制委員会規則が設置許可基準規則である。 上記規則の解釈を示すものが「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置,構造及び設備の基準に関する規則の解釈」(設置許可基準規則解釈)であり,行政手続法の審査基準に該当する内規である。 また,4号要件の適合性を判断するに当たり,行政手続法上の命令等に当たらない審査基準に関連する内規として,別紙「規則・告示・内規一覧表」の「内規(行政手続法の審査基準に該当しないが,基準に関連するもの)」のとおり,「基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド」(地震ガイド)や「基準津波及び耐津波設計方針に係る審査ガイド」(津波ガイド)等が定められている。 b技術的能力に関する基準原子炉等規制法43条の3の6第1項2号においては,「その者に発電用原子炉を設置するために必要な技術的能力」があること(以下「2号要件」という)が,同項3号においては,「その者に重大事故(発電用原子炉の炉心の著しい損傷その他の原子力規制委員会規則で定める重大な事故をいう。)の発生及び拡大の防止に必要な措置を実施するために必要な技術的能力その他の発電用原子炉の運転を適確に遂行するに足りる技術的能力があること」(以下「3号要件」という)が,原子炉設置許可の基準として定められている。 2号要件については,「原子力事業者の技術的能力に関する審査指針」が,また,3号要件については, 足りる技術的能力があること」(以下「3号要件」という)が,原子炉設置許可の基準として定められている。 2号要件については,「原子力事業者の技術的能力に関する審査指針」が,また,3号要件については,「実用発電用原子炉に係る発電用原子炉設置者の重大事故の発生及び拡大の防止に必要な措置を実施するために必要な技術的能力に係る審査基準」(乙119)が,それぞれ定められている。 (イ)工事計画(変更)認可に係る規則等a発電用原子炉施設の設置又は変更の工事をしようとする発電用原子炉設置者 は,当該工事に着手する前に,その工事の計画について原子力規制委員会の認可を受けなければならない。また,これを変更しようとするときも同委員会の認可を受けなければならない(原子炉等規制法43条の3の9第1項,2項)。 また,同条3項においては,原子力規制委員会は,上記認可の申請が同項各号のいずれにも適合していると認めるときは,認可をしなければならないと規定されており,同項2号として,「発電用原子炉施設が第43条の3の14の技術上の基準に適合するものであること」,同項3号として「その者の設計及び工事に係る品質管理の方法及びその検査のための組織が原子力規制委員会規則で定める技術上の基準に適合するものであること」が工事計画認可の要件の1つとされている。 b同項2号にいう「第43条の3の14の技術上の基準」としては,「実用発電用原子炉及びその附属施設の技術基準に関する規則」(技術基準規則)が定められており,その解釈として,「実用発電原子炉及びその附属施設の技術基準に関する規則の解釈」が定められている(乙184)。 また,同項3号にいう原子力規制委員会規則としては,「実用発電用原子炉に係る発電用原子炉設置者の設計及び工事に係る品質管理の方法及びその検査のための組織の技術基 解釈」が定められている(乙184)。 また,同項3号にいう原子力規制委員会規則としては,「実用発電用原子炉に係る発電用原子炉設置者の設計及び工事に係る品質管理の方法及びその検査のための組織の技術基準に関する規則」が定められており,その解釈として,「実用発電用原子炉に係る発電用原子炉設置者の設計及び工事に係る品質管理の方法及びその検査のための組織の技術基準に関する規則の解釈」が定められている。 原子炉等規制法43条の3の14の技術上の基準への適合性を判断するに当たり,別紙「規則・告示・内規一覧表」の「内規(行政手続法の審査基準に該当しないが,基準に関連するもの)」のとおり,行政手続法上の命令等に当たらない審査基準に関連する内規が定められている。 c工事計画認可においては,基本設計に基づく詳細設計の妥当性と,その設計及び工事における品質管理の方法,組織について審査される。 (ウ)使用前検査に係る規則等 工事計画の認可を受けて設置若しくは変更の工事をする発電用原子炉施設等は,原則として,その工事について原子力規制委員会規則で定めるところにより原子力規制委員会の検査を受け,これに合格した後でなければ,これを使用してはならない(原子炉等規制法43条の3の11第1項)。 これを受け,「実用発電用原子炉の設置,運転等に関する規則」(以下「実用炉規則」という。)15条ないし22条において,使用前検査の詳細が定められている。 同法43条の3の11第2項2号においては,「第43条の3の14の技術上の基準に適合するものであること」が使用前検査の合格要件の1つと定められている。そして,前記のとおり,同法43条の3の14の技術上の基準として,技術基準規則が定められており,その解釈として,「実用発電用原子炉及びその附属施設の技術基準に関する規則の解釈」が定め められている。そして,前記のとおり,同法43条の3の14の技術上の基準として,技術基準規則が定められており,その解釈として,「実用発電用原子炉及びその附属施設の技術基準に関する規則の解釈」が定められている(乙184)。 行政手続法上の命令等に当たらない手続に関連する内規として,「発電用原子炉施設の使用前検査,施設定期検査及び定期事業者検査に係る実用発電用原子炉の設置,運転等に関する規則のガイド」(別紙「規則・告示・内規一覧表」(39))が定められている。 このような使用前検査では,既に認可を受けた工事計画に従って行われたものであること及び同法43条の3の14の技術上の基準(技術基準規則)に適合するものであることが検査され,原子力規制委員会は,このように発電用原子炉設置者が実際に発電用原子炉施設等を使用する前にも,それらが技術基準規則に適合しているか否かについて使用前検査を通じて確認することとされている(同法43条の3の11第2項)。 (エ)保安規定(変更)認可に係る規則等発電用原子炉設置者は,原子力規制委員会規則で定めるところにより,保安規定を定め,発電用原子炉の運転開始前に,原子力規制委員会の認可を受けなけれ ばならない(原子炉等規制法43条の3の24第1項)。保安規定を変更しようとするときも,同様に原子力規制委員会の認可を受けなければならない。 これを受けて,実用炉規則92条において,保安規定(変更)認可の詳細が定められている。 保安規定(変更)認可の判断に関して,「実用発電用原子炉及びその附属施設における発電用原子炉施設保安規定の審査基準」(別紙「規則・告示・内規一覧表」(16))が定められている。 このような保安規定(変更)認可においては,同法43条の3の24第2項に定める認可要件である「核燃料物質若しくは核燃料物質によっ 査基準」(別紙「規則・告示・内規一覧表」(16))が定められている。 このような保安規定(変更)認可においては,同法43条の3の24第2項に定める認可要件である「核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物又は発電用原子炉による災害の防止上十分でないと認めるとき」に該当するか否かを審査することとされている。 (オ)施設定期検査に係る規則等特定重要発電用原子炉施設を設置する者は,原則として,原子力規制委員会規則で定めるところにより,原子力規制委員会規則で定める時期ごとに,原子力規制委員会が行う検査を受けなければならない(原子炉等規制法43条の3の15)。 これを受けて,実用炉規則45条ないし53条において,施設定期検査の詳細が定められている。 この施設定期検査は,発電用原子炉設置者が負っている技術基準適合維持義務(同法43条の3の14)を前提とし,同適合性を担保するための手段であり,原子力規制委員会が,定期的に,特定重要発電用原子炉施設等が技術基準規則に適合しているか否かについて施設定期検査を通じて確認することとされている。 (4)本件各原子力発電所の新規制基準への適合性審査ア新規制基準施行後,施設定期検査のため運転を停止している原子炉が運転を再開する場合には,当該原子炉が新規制基準に適合することが必要となる。 具体的には,発電用原子炉設置者は,原子炉設置変更許可,工事計画認可,保安規定の変更認可を受け,さらに,使用前検査を受けて合格することが必要となる。 イ抗告人は,平成25年7月,原子力規制委員会に対して,本件各原子力発電所に係る原子炉設置変更許可,工事計画認可及び保安規定変更認可の各申請を一括して行った。 原子力規制委員会は,本件各原子力発電所の新規制基準への適合性について審査するため,専門的知見を有する担当委員, に係る原子炉設置変更許可,工事計画認可及び保安規定変更認可の各申請を一括して行った。 原子力規制委員会は,本件各原子力発電所の新規制基準への適合性について審査するため,専門的知見を有する担当委員,職員等が出席する審査会合を開催したほか(乙239の1ないし3,「高浜発電所3・4号炉関連審査会合平成25年度」等),原子力規制庁事務局によるヒアリングを行った。 審査会合は,一般傍聴及びネット中継により公開され,資料もウェブサイト等で随時公開された。また,ヒアリングについては議事概要を公開するとともに,資料もウェブサイト等で随時公開された(乙240,「新規制基準施行後の設置変更許可申請等に対する審査の進め方について」)。 そして,原子炉設置変更許可申請に対する審査結果を取りまとめた審査書案については,平成26年12月18日から平成27年1月16日までの間,科学的・技術的意見の募集(パブリックコメント)が行われ,意見が寄せられた。 上記審査書案は,これらの意見を踏まえて一部修正された上で,平成27年2月12日の第56回原子力規制委員会に付議,了承され,同日,本件各原子力発電所に係る原子炉設置変更許可がなされた(乙15)。 また,工事計画認可申請及び保安規定変更認可申請に係る手続も,原子炉設置変更許可申請に係る手続と並行し,原子炉設置変更許可後も審査が進められ,工事計画認可が,本件原子力発電所3号機について同年8月4日に,本件原子力発電所4号機について同年10月9日にそれぞれなされ(乙100の1及び2,乙109の1及び2),保安規定変更認可が同日になされた(乙201)。 原子力発電所の安全性に対する審理・判断方法(1)本件仮処分命令申立ての被保全権利相手方らの主張する被保全権利は,人格権に基づく本件各原子力発電所の運転差止請求権である。 201)。 原子力発電所の安全性に対する審理・判断方法(1)本件仮処分命令申立ての被保全権利相手方らの主張する被保全権利は,人格権に基づく本件各原子力発電所の運転差止請求権である。 個人の生命,身体及び健康という重大な保護法益が現に侵害され又は侵害される具体的危険がある場合には,当該個人は,人格権に基づく妨害排除(予防)請求権として,侵害行為の排除(予防)を請求することができると解されるところ,相手方らは,本件各原子力発電所が安全性を欠くことから,その運転により相手方らの生命,身体及び健康が侵害される具体的危険があるとして,運転の差止めを請求する権利があると主張するものである。 (2)原子力発電所の安全性ア安全性の確保原子力発電所は,核燃料を使用し,その運転により人体に有害な多量の放射線物質を原子炉内に発生させる施設であり,ひとたび事故等が発生し,放射線物質が原子炉外に放出されると,周辺地域の住民の生命,身体及び健康等に重大な危害を及ぼし,周辺の環境を長期間,広範囲にわたって汚染するおそれがある。そこで,このような深刻な被害の発生を防止するためには,重大な事故が万が一にも発生しないよう,原子力発電所の安全性を確保する必要がある。 原子力発電所の事故による被害の深刻さと安全性確保の必要性は,福島第一原子力発電所事故を契機として,改めて強く認識されるに至ったものである。 イ原子力発電所に求められる安全性の程度一般に,科学技術の分野においては,絶対的に災害発生の危険がないという「絶対的安全性」を達成することはできないと考えられており,科学技術を利用した設備,機器等は,何らかの程度において人の生命,身体,健康,財産等を侵害する危険を伴っているが,その危険性を,当該設備等の品質や安全性について の規制等により一定程度以下 り,科学技術を利用した設備,機器等は,何らかの程度において人の生命,身体,健康,財産等を侵害する危険を伴っているが,その危険性を,当該設備等の品質や安全性について の規制等により一定程度以下に管理し,管理された危険性の程度が社会通念上容認できる水準以下にとどまると考えられる場合に,いわば「相対的安全性」が認められるものとして,その利用が許容されている。 原子力発電所についても同様であり,どのような異常事態が発生しても,原子炉の放射線物質が外部の環境に放出されることが絶対にないという「絶対的安全性」を要求するのは相当ではない。しかし,前記アのとおり,事故等を原因として放射線物質による深刻な被害が広範囲かつ長期間にわたって生じるおそれがあることを考慮すると,原子力発電所に求められる安全性の程度は,他の設備,機器等に比べて格段に高度なものでなければならないのであり,原子力発電所は,放射線物質による被害発生の危険性が社会通念上無視し得る程度にまで管理されていると認められる場合に,安全性が認められる施設として運転が許されると解するのが相当である。 原子力の利用は,安全の確保を旨として行われるべきものであり(原子力基本法2条1項),原子力発電所の運転による原子力発電の利用は,上記の安全性を満たす限りにおいて許容されるものであって,原子力発電の有用性,必要性が高いか低いかによって,求められる安全性の程度が左右されるものではない。 原子力発電所が上記の安全性を欠くときは,その運転によって周辺住民等の生命,身体及び健康を侵害する具体的危険があるというべきである。 (3)原子力発電所の安全性審査に関する法制度原子力発電所の安全性の審査に関する体制,制度は,福島第一原子力発電所事故の反省と教訓を踏まえて,整備,強化された。 ア原子力規制委員会の設置 る。 (3)原子力発電所の安全性審査に関する法制度原子力発電所の安全性の審査に関する体制,制度は,福島第一原子力発電所事故の反省と教訓を踏まえて,整備,強化された。 ア原子力規制委員会の設置原子力利用における安全の確保を図るための機関として,原子力規制委員会が設置された。 原子力規制委員会設置法(設置法)は,原子力利用における事故の発生を常に 想定し,その防止に最善かつ最大の努力をしなければならないという認識に立って,確立された国際的な基準を踏まえて原子力利用における安全の確保を図るため必要な施策を策定し,又は実施する事務を一元的につかさどるとともに,その委員長及び委員が専門的知見に基づき中立公正な立場で独立して職権を行使する原子力規制委員会を設置し,もって国民の生命,健康及び財産の保護,環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的とする(同法1条)。原子力規制委員会は,国家行政組織法3条2項に基づいて設置された機関であり(同法2条),原子力利用における安全の確保を図ること(原子炉に関する規制に関することを含む。)を任務とする(同法3条)。原子力規制委員会の委員長及び委員は,原子力利用における安全の確保に関して専門的知識及び経験並びに高い識見を有する者のうちから総理大臣が任命し(同法7条),専門的知見に基づき中立公正な立場で独立して職権を行使する(同法1条,5条)。 イ原子力規制委員会による安全性の基準の策定及び安全性の審査改正原子炉等規制法は,前記のとおり,発電用原子炉(原子力発電所)の設置及び変更について,原子力規制委員会の許可を受けなければならないとし(同法43条の3の5第1項,同条の3の8第1項),これらの許可の要件の一つとして,「発電用原子炉施設の位置,構造及び設備が核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染 の許可を受けなければならないとし(同法43条の3の5第1項,同条の3の8第1項),これらの許可の要件の一つとして,「発電用原子炉施設の位置,構造及び設備が核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物又は発電用原子炉による災害の防止上支障がないものとして原子力規制委員会で定める基準に適合するものであること」(同法43条の3の6第1項4号,同条の3の8第2項)と定め,発電用原子炉施設の安全性に関する基準の策定及び安全性の審査の権限を原子力規制委員会に付与している。この権限に基づいて同委員会が制定したのが設置許可基準規則である。 ウ原子力発電所に求められる安全性の具体的基準を策定するに当たっては,地震,津波等の自然災害や人為的要因などの事故発生の原因となり得る様々な事象を想定し,それらの事象によって原子力発電所施設を構成する設備,機器等が 機能を損なうことのないよう備えるべき強度を定め,あるいは,異常事態の発生を想定した上で,その拡大を防止するために必要な設備,機器等の設置を求めるなど,多角的,総合的見地から多重的に安全性を確保するための基準を検討する必要がある。 また,策定した基準に基づいて個々の原子力発電所の安全性を審査するに当たっては,当該原子力発電所の立地の地形,地質等の自然条件を前提として,影響を及ぼし得る地震,津波等の規模を具体的に想定し,設備,機器等が想定した地震,津波等によってその機能を損なうことがないかを確認することなどが求められる。 これらの安全性の基準の策定及び基準への適合性の審査においては,対象となる事項が多岐にわたり,将来の予測に係る事項も含まれることから,原子力工学をはじめ多方面にわたる極めて高度な最新の科学的・技術的知見に基づく総合的判断が必要とされる。 原子力発電所の安全性の確保について,前記ア及び たり,将来の予測に係る事項も含まれることから,原子力工学をはじめ多方面にわたる極めて高度な最新の科学的・技術的知見に基づく総合的判断が必要とされる。 原子力発電所の安全性の確保について,前記ア及びイの制度がとられたのは,このような安全性の審査の特質を考慮し,安全性の具体的基準の策定及び個々の原子力発電所の安全性の審査を,各専門分野の学識経験者等によって構成され,専門性・独立性が確保された原子力規制委員会の科学的・技術的知見に基づく合理的判断に委ねる趣旨であると解される。そうすると,原子力規制委員会が付与された権限に基づいて策定した安全性の基準は,その策定過程及び内容に不合理な点が認められない限りは,前記(2)イの原子力発電所に求められる安全性を具体化したものと考えられる。また,原子力規制委員会が自ら策定した基準に適合するものとして安全性を認めた原子力発電所は,審査及び判断の過程に不合理な点が認められない限り,前記(2)イの原子力発電所に求められる安全性を具備するものと考えられる。 (4)人格権に基づく原子力発電所運転差止請求における安全性の主張立証責任 及び審理の在り方原子力発電所の安全性及びその審査に関する制度は前記のとおりであるところ,原子力発電所が原子力規制委員会の定めた安全性の基準に適合しないときは,原子炉等規制法の求める安全性を欠き,設置許可の要件を充足しないのであるから,その運転により周辺住民等の生命,身体及び健康を侵害する具体的危険があるというべきである。そして,人格権に基づく差止請求権の主張立証責任に鑑みれば,本件各原子力発電所が安全性の基準に適合しないことは,運転差止めを求める相手方らに主張立証責任があると解される。 もっとも,抗告人は,本件各原子力発電所の設置者として,設置及び変更の許可を取得しているのであ 子力発電所が安全性の基準に適合しないことは,運転差止めを求める相手方らに主張立証責任があると解される。 もっとも,抗告人は,本件各原子力発電所の設置者として,設置及び変更の許可を取得しているのであり,安全性の基準に関する科学的・技術的知見を有するとともに,本件各原子力発電所の施設,設備,機器等に関する資料や原子力規制委員会の安全性の審査に関する資料を全て保有していると認められる。 このような本件各原子力発電所の安全性の審査に関する科学的・技術的知見及び資料の保有状況に照らせば,まず,抗告人において,本件各原子力発電所が原子力規制委員会の定めた安全性の基準に適合することを,相当の根拠,資料に基づいて主張立証すべきであり,この主張立証が十分尽くされないときは,本件各原子力発電所が原子炉等規制法の求める安全性を欠き,相手方らの生命,身体及び健康を侵害する具体的危険のあることが事実上推認されると解される。 一方,抗告人において本件各原子力発電所が安全性の基準に適合することの主張立証を尽くしたと認められるときは,相手方らにおいて,原子力規制委員会の策定した安全性の基準自体が現在の科学的・技術的知見に照らして合理性を欠き,又は,本件各原子力発電所が安全性の基準に適合するとした原子力規制委員会の審査及び判断が合理性を欠くことにより,本件各原子力発電所が安全性を欠くことを主張立証する必要があるというべきである。 地震に対する安全確保対策(基準地震動策定) (1)新規制基準における基本方針ア基準地震動の策定における基本方針は次のとおりである。 (ア)「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」について,解放基盤表面における水平方向及び鉛直方向の地震動としてそれぞれ策定すること。 上記の「解放基盤表面」とは,基 「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」について,解放基盤表面における水平方向及び鉛直方向の地震動としてそれぞれ策定すること。 上記の「解放基盤表面」とは,基準地震動を策定するために,基盤面上の表層及び構造物がないものとして仮想的に設定する自由表面であって,著しい高低差がなく,ほぼ水平で相当な拡がりを持って想定される基盤の表面をいう。ここでいう上記の「基盤」とは,概ねせん断速度Vs=700m/s以上の硬質基盤であって,著しい風化を受けていないものとする。 (イ)「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」は,内陸地殻内地震,プレート間地震及び海洋プレート内地震について,敷地に大きな影響を与えると予想される地震(検討用地震)を複数選定し,選定した検討用地震ごとに不確かさを考慮して,応答スペクトルに基づく地震動評価及び断層モデルを用いた手法による地震動評価により,それぞれ解放基盤表面までの地震波の伝播特性を反映して策定すること。 上記の「内陸地殻内地震」とは,陸のプレートの上部地殻地震発生層に生じる地震をいい,海岸のやや沖合で起こるものを含む。 上記の「プレート間地震」とは,相接する二つのプレートの境界面で発生する地震をいう。 上記の「海洋プレート内地震」とは,沈み込む(沈み込んだ)海洋プレート内部で発生する地震をいい,海溝軸付近又はそのやや沖合で発生する「沈み込む海洋プレート内の地震」又は海溝軸付近から陸側で発生する「沈み込んだ海洋プレート内の地震(スラブ内地震)」の2種類に分けられる。 不確かさの考慮については,敷地における地震動評価に大きな影響を与えると考えられる支配的なパラメータについて分析した上で,必要に応じて不確かさを組合わせるなどの適切な手法 2種類に分けられる。 不確かさの考慮については,敷地における地震動評価に大きな影響を与えると考えられる支配的なパラメータについて分析した上で,必要に応じて不確かさを組合わせるなどの適切な手法を用いて評価すること。 (ウ)「震源を特定せず策定する地震動」「震源を特定せず策定する地震動」は,震源と活断層を関連づけることが困難な過去の内陸地殻内の地震について得られた震源近傍における観測記録を収集し,これらを基に各種の不確かさを考慮して,敷地の地盤特性に応じた応答スペクトルを設定して策定されていること。 (エ)「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」を相補的に考慮することによって,敷地で発生する可能性のある地震動全体を考慮した地震動として策定されていること。 イ敷地ごとに震源を特定して策定する地震動(ア)策定方針a「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」の策定においては,検討用地震ごとに「応答スペクトルに基づく地震動評価」及び「断層モデルを用いた手法による地震動評価」に基づき策定されている必要がある。なお,地震動評価に当たっては,敷地における地震観測記録を踏まえて,地震発生様式,地震波の伝播経路等に応じた諸特性(その地域における特性を含む。)が十分に考慮されている必要がある。 b震源が地震に近く,その破壊過程が地震動評価に大きな影響を与えると考えられる地震については,断層モデルを用いた手法が重視されている必要がある。 (イ)検討用地震の選定a地震の分類(a)内陸地殻内地震,プレート間地震及び海洋プレート間内地震について,活断層の性質や地震発生状況を精査し,中・小・微小地震の分布,応力場,地震発生樣式(プレートの形状・運動・相互作用を含む。)に関する既往の研究成果等を総 合的 及び海洋プレート間内地震について,活断層の性質や地震発生状況を精査し,中・小・微小地震の分布,応力場,地震発生樣式(プレートの形状・運動・相互作用を含む。)に関する既往の研究成果等を総 合的に検討して,検討用地震が複数選定されていることを確認する。 (b)施設の構造に免震構造を採用する等,やや長周期の地震応答が卓越する施設等がある場合は,必要に応じてやや長周期の地震動が卓越するような地震が検討用地震として適切に選定されていることを確認する。 b震源として想定する断層の形状等の評価(a)内陸地殻内地震,プレート間地震及び海洋プレート間内地震について,各種の調査及び観測等により震源として想定する断層の形状等の評価が適切に行われていることを確認する。 (b)検討用地震による地震動を断層モデル等により詳細に評価した結果,断層の位置,長さ等の震源特性パラメータの設定やその不確かさ等の評価においてより詳細な情報が必要となった場合,変動地形学的調査,地表地質調査,地球物理学的調査等の追加調査の実施を求めるとともに,追加調査の後,それらの詳細な情報が十分に得られていることを確認する。 c震源特性パラメータの設定(a)内陸地殻内地震の起震断層,活動区間及びプレート間地震の震源領域に対応する震源特性パラメータに関して,既存文献の調査,変動地形学的調査,地表地質調査,地球物理学的調査の結果を踏まえ適切に設定されていることを確認する。 (b)震源モデルの長さ又は面積,あるいは1回の活動による変位量と地震規模を関連づける経験式を用いて地震規模を設定する場合には,経験式に適用範囲が十分に検討されていることを確認する。その際,経験式は平均値としての地震規模を与えるものであることから,経験式が有するばらつきも考慮されている必要がある。 (c)プレート 合には,経験式に適用範囲が十分に検討されていることを確認する。その際,経験式は平均値としての地震規模を与えるものであることから,経験式が有するばらつきも考慮されている必要がある。 (c)プレート間地震及び海洋プレート内地震の規模の設定において,敷地周辺において過去に発生した地震の規模,すべり量,震源領域の広がり等に関する地形・地質学的,地震学的及び測地学的な直接・間接的な情報が可能な限り活用されていることを確認する。国内のみならず世界で起きた大規模な地震を踏まえ,地震の発生機構やテクトニクス的背景の類似性を考慮した上で震源領域が設定されてい ることを確認する。特に,スラブ内地震についてはアスペリティの応力降下量(短周期レベル)が適切に設定されていることを確認する。 d長大な活断層については,断層の長さ,地震発生層の厚さ,断層傾斜角,1回の地震の断層変位,断層間相互作用(活断層の連動)等に関する最新の研究成果を十分考慮して,地震規模や震源断層モデルが設定されていることを確認する。 e孤立した長さの短い活断層については,地震発生層の厚さ,地震発生機構,断層破壊過程,スケーリング則等に関する最新の研究成果を十分に考慮して,地震規模や震源断層モデルが設定されていることを確認する。 (ウ)地震動評価a応答スペクトルに基づく地震動評価(a)検討用地震ごとに適切な手法を用いて応答スペクトルが評価され,それらを基に設定された応答スペクトルに対して,地震動の継続時間,振幅包絡線の経時的変化等の地震動特性が適切に設定され,地震動評価が行われていることを確認する。 ①経験式(距離減衰式)の選定[i]応答スペクトルに基づく地震動評価において,用いられている地震記録の地震規模,震源距離等から,適用条件,適用範囲について検討した上で,経験式( を確認する。 ①経験式(距離減衰式)の選定[i]応答スペクトルに基づく地震動評価において,用いられている地震記録の地震規模,震源距離等から,適用条件,適用範囲について検討した上で,経験式(距離減衰式)が適切に選定されていることを確認する。 [ii]参照する距離減衰式に応じて適切なパラメータを設定する必要があり,併せて震源断層の広がり不均質性,断層破壊の伝播や震源メカニズムの影響が適切に考慮されていることを確認する。 ②地震波伝播特性(サイト特性)の評価[i]水平及び鉛直地震動の応答スペクトルは,参照する距離減衰式の特徴を踏まえ,敷地周辺の地下構造に基づく地震波の伝播特性(サイト特性)の影響を考慮して適切に考慮されていることを確認する。 [ii]敷地における地震観測記録が存在する場合には,それらを収集・整理・解 析し,地震の発生様式や地域性を考慮して地震波の伝播特性の影響を評価し,応答スペクトルに反映させていることを確認する。 b断層モデルを用いた手法による地震動評価(a)検討用地震ごとに適切な手法を用いて震源特性パラメータが設定され,地震動評価が行われていることを確認する。 (b)観測記録がある場合には,記録の精度や想定する震源断層の特徴を踏まえ,要素地震としての適性について慎重に検討した上で,経験的グリーン関数法による地震動評価が行われていることを確認する。 (c)統計的グリーン関数法及びハイブリッド法(理論的手法と統計的あるいは経験的グリーン関数法を組合せたものをいう。)による地震動評価においては,地質・地質構造等の調査結果に基づき,各々の手法に応じて地震波の伝播特性が適切に評価されていることを確認する。 (d)経験的グリーン関数法,統計的グリーン関数法,ハイブリッド法以外の手法を用いる場合には,その手法の 調査結果に基づき,各々の手法に応じて地震波の伝播特性が適切に評価されていることを確認する。 (d)経験的グリーン関数法,統計的グリーン関数法,ハイブリッド法以外の手法を用いる場合には,その手法の妥当性が示されていることを確認する。 ①震源モデルの設定[i]震源断層のパラメータは,活断層調査結果等に基づき,地震調査研究推進本部による「震源断層を特定した地震の強震動予測手法『レシピ』」等の最新の研究成果を考慮して設定されていることを確認する。 [ii]アスペリティの位置が活断層調査等によって設定できる場合は,その根拠が示されていることを確認する。根拠がない場合は,敷地への影響を考慮して安全側に設定されている必要がある。なお,アスペリティの応力降下量(短周期レベル)については,新潟県中越沖地震を踏まえて設定されていることを確認する。 ②経験的グリーン関数法による地震動評価経験的グリーン関数法を適用する場合には,観測記録の得られた地点と解放基盤表面との相違を適切に評価する必要がある。また,経験的グリーン関数法による要素地震については,地震の規模,震源位置,震源深さ,メカニズム等の各種パラメ ータの設定が妥当であることを確認する。 ③統計的グリーン関数法及びハイブリッド法による地震動評価[i]統計的グリーン関数法やハイブリッド法による地震動評価においては,震源から評価地点までの地震波の伝播特性,地震基盤(せん断波速度Vs=3000m/s以上程度以上の地層をいう。)からの増幅特性が地盤調査結果等に基づいて評価されていることを確認する。 [ii]ハイブリッド法を用いる場合の長周期側と短周期側の接続周期は,それぞれの手法の精度や用いた地下構造モデルを考慮して適切に設定されていることを確認する。また,地下構造モデルは地震観測記録等によっ i]ハイブリッド法を用いる場合の長周期側と短周期側の接続周期は,それぞれの手法の精度や用いた地下構造モデルを考慮して適切に設定されていることを確認する。また,地下構造モデルは地震観測記録等によってその妥当性が検討されていることを確認する。 ④震源が敷地に極めて近い場合の地震動評価[i]震源が敷地に極めて近い場合の地震動評価においては,地表に変位を伴う断層全体(地表地震断層から震源断層までの断層全体)を考慮した上で,震源モデルの形状及び位置の妥当性,敷地及びそこに設置する施設との位置関係,並に震源特性パラメータの設定の妥当性について詳細に検討されていることを確認する。 [ii]これらの検討結果を踏まえた評価手法の適用性に留意の上,各種の不確かさが地震動評価に与える影響をより詳細に評価し,震源の極近傍での地震動の特徴に係る最新の科学的・技術的知見を踏まえた上で,さらに十分な余裕を考慮して地震動が評価されていることを確認する。特に,評価地点近傍に存在する強震動生成領域(アスペリティ)での応力降下量などの強震動の生成強度に関するパラメータ,強震動生成領域同士の破壊開始時間のずれや破壊進行パターンの設定において,不確かさを考慮し,破壊シナリオが適切に考慮されていることを確認する。 [iii]震源の極近傍での地震動の特徴に係る最新の科学的・技術的知見を取り込んだ手法により,地表に変位を伴う国内外被害地震の震源極近傍の地震動記録に対して適切な再現解析を行い,震源モデルに基づく短周期地震動,長周期地震動及び永久変位を十分に説明できていることを確認する。この場合,特に永久変位・変 形を十分に説明できていることを確認する。さらに,浅部における断層のずれの進展の不均質性が地震動評価へ及ぼす影響を検討するとともに,浅部における断層のずれの不確かさ この場合,特に永久変位・変 形を十分に説明できていることを確認する。さらに,浅部における断層のずれの進展の不均質性が地震動評価へ及ぼす影響を検討するとともに,浅部における断層のずれの不確かさが十分に評価されていることを確認する。 [iv]震源が敷地に極めて近い場合の地震動評価においては,破壊伝播効果が地震動へ与える影響について,十分に精査されていることを確認する。また,水平動成分に加えて上下動成分の評価が適切に行われていることを確認する。 c不確かさの考慮(a)応答スペクトルに基づく地震動の評価過程に伴う不確かさについて,適切な手法を用いて考慮されていることを確認する。地震動評価においては,用いる距離減衰式の特徴や適用性,地盤特性が考慮されている必要がある。 (b)断層モデルを用いた手法による地震動の評価過程に伴う不確かさについて,適切な手法を用いて考慮されていることを確認する。併せて,震源特性パラメータの不確かさについて,その設定の考え方が明確にされていることを確認する。 ①支配的な震源特性パラメータ等の分析震源モデルの不確かさ(震源断層の長さ,地震発生層の上端深さ・下端深さ,断層傾斜角,アスペリティの位置・大きさ,応力降下量,破壊開始点等の不確かさ,並にそれらに係る考え方,解釈の違いによる不確かさ)を考慮する場合には,敷地における地震動評価に大きな影響を与えると考えられる支配的なパラメータについて分析し,その結果を地震動評価に反映させることが必要である。特に,アスペリティの位置・応力降下量や破壊開始点の設定等が重要であり,震源モデルの不確かさとして適切に評価されていることを確認する。 ②必要に応じた不確かさの組合せによる適切な考慮[i]地震動の評価過程に伴う不確かさについては,必要に応じて不確かさを組合せるなど適切 デルの不確かさとして適切に評価されていることを確認する。 ②必要に応じた不確かさの組合せによる適切な考慮[i]地震動の評価過程に伴う不確かさについては,必要に応じて不確かさを組合せるなど適切な手法を用いて考慮されていることを確認する。 [ii]地震動評価においては,震源特性(震源モデル),伝播特性(地殻・上部マントル構造),サイト特性(深部・浅部地下構造)における各種の不確かさが含 まれるため,これらの不確実さ要因を偶然的不確実さと認識論的不確実さに分類して,分析が適切になされていることを確認する。 ウ震源を特定せず策定する地震動評価「震源を特定せず策定する地震動」とは,敷地周辺の状況等を十分考慮した詳細な調査を実施しても,なお敷地近傍において発生する可能性のある内陸地殻内地震の地震の全てを事前に評価しうるとは言い切れないことから,敷地近傍における詳細な調査の結果にかかわらず,全ての敷地(対象サイト)において共通的に考慮すべき地震動であると意味付けた地震動をいう。 (ア)策定方針a「震源を特定せず策定する地震動」は,震源と活断層を関連づけることが困難な過去の内陸地殻内の地震について得られた震源近傍における観測記録を収集し,これらを基に各種の不確かさを考慮して敷地の地盤物性に応じた応答スペクトルを設定して策定されている必要がある。 b応答スペクトルの設定においては,解放基盤表面までの地震波の伝播特性が反映されている必要がある。また,敷地及び敷地周辺の地下構造(深部・浅部地盤構造)が地震波の伝播特性に与える影響が適切に考慮されている必要がある。 c地震動の策定においては,設定された応答スペクトルに対して,地震動の継続時間,振幅包絡線の経時的変化等の地震動特性が適切に評価されている必要がある。 d「震源を特定せず策定する る必要がある。 c地震動の策定においては,設定された応答スペクトルに対して,地震動の継続時間,振幅包絡線の経時的変化等の地震動特性が適切に評価されている必要がある。 d「震源を特定せず策定する地震動」として策定された基準地震動の妥当性については,最新の科学的・技術的知見を踏まえて個別に確認する。その際には,地表に明瞭な痕跡を示さない震源断層に起因する震源近傍の地震動について,確率論的な評価等,各種の不確かさを考慮した評価が適切に行われている必要がある。 (イ)地震動評価a検討対象地震の選定と震源近傍の観測記録の収集(a)震源と活断層を関連づけることが困難な過去の内陸地殻内の地震を検討対 象地震として適切に選定し,それらの地震時に得られた震源近傍における観測記録を適切かつ十分に収集していることを確認する。 (b)検討対象地震の選定においては,地震規模のスケーリング(スケーリング則が不連続となる地震規模)の観点から,「地表地震断層が出現しない可能性がある地震」を適切に選定していることを確認する。 「地表地震断層が出現しない可能性がある地震」とは,断層破壊領域が地震発生層の内部に留まり,国内においてどこでも発生すると考えられる地震で,震源の位置も規模もわからない地震として地震学的検討から全国共通に考慮すべき地震(震源の位置も規模も推定できない地震〔Mw6.5未満の地震〕)であり,震源近傍において強震動が観測された地震を対象とする。 (c)検討対象地震の選定の際には,「事前に活断層の存在が指摘されていなかった地域において発生し,地表付近に一部の痕跡が確認された地震」についても検討を加え,必要に応じて選定していることを確認する。 「事前に活断層の存在が指摘されていなかった地域において発生し,地表付近に一部の痕跡が確認された地震」と に一部の痕跡が確認された地震」についても検討を加え,必要に応じて選定していることを確認する。 「事前に活断層の存在が指摘されていなかった地域において発生し,地表付近に一部の痕跡が確認された地震」とは,震源断層がほぼ地震発生層の厚さ全体に広がっているものの,地表地震断層としてその全容を表すまでには至っていない地震(震源の規模が推定できない地震〔Mw6.5以上の地震〕)であり,孤立した長さの短い活断層による地震が相当する。なお,活断層や地表地震断層の出現要因の可能性として,地域によって活断層の成熟度が異なること,上部に軟岩や火山岩,堆積層が厚く分布する場合や地質体の違い等の地域差があることが考えられる。このことを踏まえ,観測記録収集対象の地震としては,以下の地震を個別に検討する必要がある。 ①孤立した長さの短い活断層による地震②活断層の密度が少なく活動度が低いと考えられる地域で発生した地震③上部に軟岩や火山岩,堆積層が厚く分布する地域で発生した地震b応答スペクトル(地震動レベル)の設定と妥当性確認 震源を特定せず策定する地震動の応答スペクトル(地震動レベル)は,解放基盤表面までの地震波の伝播特性が反映され,敷地の地盤物性が加味されるとともに,個々の観測記録の特徴(周期特性)を踏まえるなど,適切に設定されていることを確認する。 エ基準地震動(ア)策定方針a基準地震動は,「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」の評価結果を踏まえて,基準地震動の策定過程に伴う各種の不確かさを考慮して適切に策定されている必要がある。 b基準地震動の策定に当たっては,敷地における地震観測記録を踏まえて,地震発生様式,地震波の伝播経路等に応じた諸特性(その地域における特性を含む。)が十分に考慮されている 定されている必要がある。 b基準地震動の策定に当たっては,敷地における地震観測記録を踏まえて,地震発生様式,地震波の伝播経路等に応じた諸特性(その地域における特性を含む。)が十分に考慮されている必要がある。 c施設の構造に免震構造を採用する等,やや長周期の地震応答が卓越する施設等がある場合は,その周波数特性に着目して地震動評価を実施し,必要に応じて他の施設とは別に基準地震動が策定されている必要がある。 (イ)基準地震動の策定a応答スペクトルに基づく手法による基準地震動は,検討用地震ごとに評価した応答スペクトルを下回らないように作成する必要があり,その際の振幅包絡線は,地震動の継続時間に留意して設定されていることを確認する。 b断層モデルを用いた手法による基準地震動は,施設に与える影響の観点から地震動の諸特性(周波数特性,継続時間,位相特性等)を考慮して,別途評価した応答スペクトルとの関係を踏まえつつ複数の地震動評価結果から策定されていることを確認する。なお,応答スペクトルに基づく基準地震動が全周期帯にわたって断層モデルを用いた基準地震動を有意に上回る場合には,応答スペクトルに基づく基準地震動で代表させることができる。 c震源を特定せず策定する地震動による基準地震動は,設定された応答スペク トルに対して,地震動の継続時間,振幅包絡線の経時的変化等の地震動特性が適切に考慮されていることを確認する。 (a)基準地震動は,最新の知見や震源近傍等で得られた観測記録によってその妥当性が確認されていることを確認する。 オ超過確率(ア)評価方針a「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」について,それぞれ策定された地震動の応答スペクトルがどの程度の超過確率に相当するかを確認する。 b超過確 価方針a「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」について,それぞれ策定された地震動の応答スペクトルがどの程度の超過確率に相当するかを確認する。 b超過確率を参照する際には,基準地震動の応答スペクトルと地震ハザード解析による一様ハザードスペクトルを比較するとともに,当該結果の妥当性を確認する。 (イ)基準地震動の超過確率a地震ハザード評価関連情報の収集・分析(a)基準地震動の策定に係る情報に加えて,広範な地震ハザード評価関連情報(地震発生頻度に係る情報等)を対象として,評価対象サイトに影響を与え得る地震の発生様式(活断層データ及び過去の地震データ等)に関する情報が収集されていることを確認する。 (b)各種のモデル化では,専門家の意見の相違をロジックツリーとして表すために,複数の専門家の情報が収集されていることを確認する。 b震源モデルの設定(a)対象サイトに将来影響を及ぼす可能性のある地震を対象に,地震発生様式を踏まえた適切な領域の範囲を設定し,対象とする地震の震源モデルが適切に設定されていることを確認する。 (b)対象とする地震の震源モデルの設定に当たっては,概略検討により震源モデルの不確実さに係る震源別寄与度を把握し,寄与度の高い震源モデルについて詳 細検討が行われていることを確認する。 (c)震源モデルに関するパラメータの選定においては,地震発生確率の算出に必要となるパラメータ,並にそれらのパラメータに関する不確実さ要因(断層の位置,長さ,幅,走向,傾斜角,すべり量,すべり角,すべり分布,破壊開始点,破壊伝播速度等)を偶然的不確実さと認識論的不確実さに分類して,分析が適切になされていることを確認する。 c地震動評価モデルの設定(a)対象サイト周辺地域の震源特性や ,すべり分布,破壊開始点,破壊伝播速度等)を偶然的不確実さと認識論的不確実さに分類して,分析が適切になされていることを確認する。 c地震動評価モデルの設定(a)対象サイト周辺地域の震源特性や地震動伝播特性を考慮して,特定位置で特定規模の地震が発生した場合に,評価対象サイトで生じる地震動強さの確率分布を評価するためのモデルが適切に設定されている確認する。 (b)震源と評価サイトの距離に応じた応答スペクトル法(距離減衰式)による地震動評価と断層モデルによる地震動評価を使い分け,それらのパラメータに関する不確実さ要因を偶然的不確実さと認識論的不確実さに分類して,分析が適切になされていることを確認する。 dロジックツリーの作成(a)不確実さ要因の分析結果に基づき,地震ハザードに大きな影響を及ぼす認識論的不確実さ(知識及び認識の不足による不確実さ)を選定してロジックツリーを作成し,ロジックツリーの分岐として考慮すべき項目が適切に設定されていることを確認する。また,ロジックツリーにおける各分岐で設定した重みの設定根拠を確認する。 (b)選定した要因を対象として技術的な難易度を判断し,作業手順の異なる3段階の専門家活用水準のいずれかを選択し明示されていることを確認する。それぞれの専門家活用水準における作成手順に従い,ロジックツリーが作成されていることを確認する。 e地震ハザード評価(a)作成したロジックツリーを用いて地震ハザード曲線群を算出し,信頼度別 ハザード曲線(フラクタイルハザード曲線)や平均ハザード曲線の妥当性を検討するとともに,それらを踏まえて一様ハザードスペクトルが適切に算定されていることを確認する。 (b)地震ハザード曲線の内訳を把握するとともに,地震ハザードに大きな影響を及ぼす地震を確認する。 f基準地震 もに,それらを踏まえて一様ハザードスペクトルが適切に算定されていることを確認する。 (b)地震ハザード曲線の内訳を把握するとともに,地震ハザードに大きな影響を及ぼす地震を確認する。 f基準地震動の超過確率の参照(a)策定された基準地震動の応答スペクトルと地震ハザード解析による一様ハザードスペクトルを比較し,地震動の超過確率を適切に参照していることを確認する。参照に当たっては,地震動の超過確率のレベルを確認するとともに,地震ハザードに大きな影響を及ぼす地震と検討用地震との対応も確認する。 (b)基準地震動の超過確率と検討用地震との対応において,地震ハザード曲線の地震別内訳に検討用地震が明示されているかを分析し,その超過確率が示されていることを確認する。 (2)地域特性の評価手法及び適用並びに検討用地震の選定ア設置許可基準規則等(ア)設置許可基準規則解釈は,震源として考慮する活断層の評価について,調査地域の地形・地質条件に応じ,既存文献の調査,変動地形学的調査,地質調査,地球物理学的調査等の特性を活かし,これらを適切に組み合わせた調査を実施した上で,その結果を総合的に評価し活断層の位置・形状・活動性等を明らかにすることを求めている(同規則解釈別記2第4条5項2号②ⅰ))。 上記調査に当たっては,目的に応じた調査手法を選定するとともに,調査手法の適用条件及び精度等に配慮することによって,調査結果の信頼性と精度を確保することを求めている(同項4号)。なお,上記の「震源として考慮する活断層」は,後期更新世以降(約12~13万年前以降)の活動が否定できない断層をいうとされている(同規則解釈別記1第3条3項〔第3段落及び第4段落〕)。 (イ)地震動評価を行うに当たっては,敷地における地震観測記録を踏まえて, 地震発生様式及び地震 が否定できない断層をいうとされている(同規則解釈別記1第3条3項〔第3段落及び第4段落〕)。 (イ)地震動評価を行うに当たっては,敷地における地震観測記録を踏まえて, 地震発生様式及び地震波の伝播経路等に応じた諸特性(その地域における特性を含む)を十分に考慮することを求めている(同規則解釈別記2第4条5項2号④)。 地震波の伝播特性に関して,敷地及び敷地周辺の地下構造(深部・浅部地盤構造)が地震波の伝播特性に与える影響を検討するため,敷地及び敷地周辺における地層の傾斜,断層及び褶曲構造等の地質構造を評価するとともに,地震基盤の位置及び形状,岩相・岩質の不均一性並びに地震波速度構造等の三次元的な地下構造及び地盤の減衰特性を評価することを求めている(同項4号①)。 (ウ)なお,地下構造の評価に関する要求事項については,従前の平成18年耐震設計審査指針等から,平成19年新潟県中越沖地震や平成21年駿河湾地震の検討から得られた,特異な地下構造によって地震動が増幅するとの知見を踏まえ,地層の傾斜,断層及び褶曲構造等の地質構造や,地震波の速度構造等の地下構造の詳細な評価が新たに求められることとなったものである(乙141)。 イ抗告人の対応(乙76)(ア)抗告人は,検討用地震の選定,及び各検討用地震による地震動の評価に当たって,設置許可基準規則等の要求事項を踏まえ,本件各原子力発電所敷地周辺の地震発生状況,地質・地質構造調査,敷地及び敷地周辺の地下構造の調査結果から,地震動に影響を与える地域的な特性である「震源特性」,「伝播特性」,「地盤の増幅特性(サイト特性)」を評価した(乙16,乙105)。 (イ)「震源特性」a震源特性とは,震源に関する特徴のことであり,震源の規模(震源断層の長さ・幅),震源断層の位置・傾き,放出される地震波の 特性(サイト特性)」を評価した(乙16,乙105)。 (イ)「震源特性」a震源特性とは,震源に関する特徴のことであり,震源の規模(震源断層の長さ・幅),震源断層の位置・傾き,放出される地震波の強さ等を示すものである(乙16)。 b震源特性に関し,抗告人は,震源として考慮する断層の位置・長さ,断層の傾き,断層の幅(地震発生層の深さ)について,次のとおり評価した。 (a)断層の位置・長さ抗告人は,文献調査,地形・地質調査,反射法地震探査,及び海上音波探査等,各種の調査を適切に組み合わせて,活断層の長さや位置を評価した。そして,このうち後期更新世以降(約12~13万年前以降)の活動が否定できないものを震源として考慮する活断層とした(乙16)。 その上で,抗告人は,震源として考慮する活断層のうち本件各原子力発電所に与える影響が大きいと考えられるFO-A~FO-B断層,熊川断層及び上林川断層について,断層の位置を詳細に把握した上で,断層の長さを,後記のとおり保守的に評価した(乙14の2,乙16,乙78,乙132,乙133の1,乙133の2,乙134の1,乙134の2,乙135)。 (b)断層の傾き①抗告人は,FO-A~FO-B断層,熊川断層,及び上林川断層について,広域応力場と断層の方向(走向)との関係に関する後記②,③の知見等に基づいて,各断層とも断層の傾きが90度(断層面が鉛直)であると評価した。 ②地球の表面を覆う岩盤の板(プレート)には,その運動によって圧縮又は引っ張りの力(応力)がかかっており,日本列島では一部の地域を除いて圧縮の応力がかかっているところ,その方向は東西方向が多い。一定の地域に加わっている力の状況を広域応力場といい,(水平方向を基準にして)両方向から圧縮されていれば圧縮応力場,逆に両方向から引っ張ら 圧縮の応力がかかっているところ,その方向は東西方向が多い。一定の地域に加わっている力の状況を広域応力場といい,(水平方向を基準にして)両方向から圧縮されていれば圧縮応力場,逆に両方向から引っ張られていれば引張応力場という。 断層は,その動き方によって,正断層,逆断層,横ずれ断層に分類されるところ,それらの動きは,上記の広域応力場(圧縮応力場なのか,引張応力場なのか)や,広域応力場と断層の走向との関係による影響を受けるとされている。 具体的には,一般的に,正断層は,引張応力場において引張方向と断層の走向が直交する場合に,逆断層は,圧縮応力場において圧縮方向と断層の走向が直交する場合に,横ずれ断層は,圧縮応力場又は引張応力場において圧縮方向又は引 張方向から見て断層の走向が斜め横方向である場合に,それぞれ形成されるとされている。 横ずれ断層の場合,一般的に断層傾斜角は,ずれによる抵抗が最も小さくなる,すなわち断層面の面積が最も小さくなる90度になると考えられ,この点,「震源断層を特定した地震の強震動予測手法(『レシピ』)」(乙20)においても,横ずれ断層の場合は断層傾斜角を90度と評価することが基本とされている(付録3-4頁)。 ③若狭湾付近の広域応力場は,圧縮方向が東西の圧縮応力場であり(乙132),一方で,各断層の走向は,FO-A~FO-B断層及び熊川断層が北西-南東方向,上林川断層が北東-南西方向である。各断層とも,圧縮応力場の圧縮方向から見て断層の走向が斜め横方向となっており,一般的に横ずれ断層が形成される場合にあたる。 国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下「産業技術総合研究所」という。)の「活断層データベース」においても,各断層とも断層傾斜角90度の横ずれ断層とされている(乙137)。 (c)断層の幅(地震発生層の深 発法人産業技術総合研究所(以下「産業技術総合研究所」という。)の「活断層データベース」においても,各断層とも断層傾斜角90度の横ずれ断層とされている(乙137)。 (c)断層の幅(地震発生層の深さ)①地震動を発生させる震源断層は,1回の地震で必ずしも断層全体が一度にずれるとは限らないが,抗告人は,保守的な評価という観点から,地震発生層の上端から下端まで一杯に広がった断層面の全体が一度にずれるものと想定して地震動評価を行った。 地震発生層の上端深さが浅いほど,断層の幅が大きくなることで震源断層が大きくなるとともに,断層から原子力発電所敷地までの距離も短くなるため,上端深さを浅く想定する方が,敷地での地震動がより大きくなり,保守的な評価となる(乙16)。 ②上端深さについて,以下のとおり評価した。 震源車などで起震して地中の地層で反射した波を,若狭湾地域を含む近畿地方を縦断・横断するような測線上に配置した受信器によって観測することにより地盤の速度構造を求めた,文部科学省の大都市大震災軽減化特別プロジェクトによる地下構造探査や,若狭湾地域を含む近畿地方において発生した地震について震源から複数の観測点までの地震波の到達する時間差を用いた解析を行うことで地盤の速度構造を求めた,地震波トモグラフィによる検討といった,既往の研究成果を参照して若狭湾周辺における地下の速度構造を把握した上で,地震発生層の上限はP波速度と良い相関があるという既往の知見や,後記「地震波干渉法」及び後記「微動アレイ観測」による地盤の速度構造の解析結果をもとに,上端深さを4kmと評価した。 その後,抗告人は,原子力規制委員会での議論を踏まえ,既往の知見では浅めに見ても上端深さは3.7kmと評価されていたところ,より一層の保守的な評価という観点から,上端深さを3k を4kmと評価した。 その後,抗告人は,原子力規制委員会での議論を踏まえ,既往の知見では浅めに見ても上端深さは3.7kmと評価されていたところ,より一層の保守的な評価という観点から,上端深さを3kmとして地震動評価を行うこととした(乙138)。 ③下端深さについて,気象庁の震源データを用いた震源深さの分布の検討等,既往の研究結果を用いて,18kmと評価した(乙138)。 (ウ)「伝播特性」a伝播特性とは,地震波の地中深くでの伝わり方の特徴のことであり,震源から敷地までの距離や地盤における減衰の大きさ等を指す。 b伝播特性には,幾何減衰と内部減衰があり,抗告人は,以下のとおりこれらを評価した。 (a)幾何減衰震源で発生した地震波は,震源を中心にしてその周囲に広がっていくため,地震波は,震源から遠ざかるほど減衰する。このように,震源距離とともに地震波の振幅が減少することを幾何減衰といい,地中を伝播する地震波の振幅は,震源距離の逆数に比例して小さくなっていく。この幾何減衰は,伝播特性のうち大き な部分を占める。 幾何減衰の程度は,地域ごとに大きな違いはなく,震源から敷地までの距離によって決まることから,震源の位置を把握することが重要となる(乙19)。 (b)内部減衰地震波は,媒質(岩石等)を伝わる間に地震波のエネルギーの一部が摩擦熱等に変換されることで,若干小さくなっていく。これを内部減衰といい,その程度は,地震波が伝わる媒質(岩石等)の影響を受けることから,幾何減衰と異なり,地域により違いがある。 内部減衰は,媒質に固有の値(Q値)で表され,Q値が小さいほど減衰の効果が大きい(乙16,乙19)。本件各原子力発電所周辺については,若狭湾付近で発生した20個の中小の内陸地殻内地震の地震記録をもとに同地域のQ値について研究した佐 で表され,Q値が小さいほど減衰の効果が大きい(乙16,乙19)。本件各原子力発電所周辺については,若狭湾付近で発生した20個の中小の内陸地殻内地震の地震記録をもとに同地域のQ値について研究した佐藤ほか(2007)の知見をもとに,抗告人は,Q値を50f(fは地震波の周波数で,周波数毎にQ値は変化する)と設定しているが,この値は,国内における平均的な値である50fと同程度である(乙16,乙139)。 (エ)「地盤の増幅特性(サイト特性)」a地震波は,固い(地震波の伝わる速さが大きい)地層から相対的に軟らかい(地震波の伝わる速さが小さい)地層へ伝播する際に増幅されるため,相対的な固さ(地震波の速度)の差があると,地震波は,相対的に軟らかい地層に伝播する際に増幅される。通常は,地表に近づくに従って地層は相対的に軟らかくなるため,地中の固い岩盤を伝わってきた地震波は,いくつかの地層を通って地表に到達するまでに順次増幅される。このような特性を地盤の増幅特性(サイト特性)といい,その増幅の程度は,速度構造(地震波の伝わる速さが異なる地層の並び)の影響を受ける(乙16,乙19)。 また,地震波の進む方向は,地震波の伝わる速さが異なる地層の境界面で変化することから,地盤の速度構造に特異な構造がある場合は,局所的に地震波が集 中する可能性が生じる。このため,地盤の増幅特性(サイト特性)を評価する上では,こうした特異な構造の有無を含めて,本件各原子力発電所敷地及び敷地周辺の地盤の速度構造を把握することが重要となる(乙19)。 b抗告人は,このような速度構造を評価するために,地下200m程度までの浅部地盤,地中の固い岩盤までの(地下4km程度までの)深部地盤について,それぞれ調査を行った(乙138)。 なお,一般的に,地震基盤面(S波速度が3km/ 造を評価するために,地下200m程度までの浅部地盤,地中の固い岩盤までの(地下4km程度までの)深部地盤について,それぞれ調査を行った(乙138)。 なお,一般的に,地震基盤面(S波速度が3km/s程度以上の層で,地震波が地盤の影響を大きく受けないところをいう。)より浅い部分では,地表に近づくにつれてS波速度の小さい層となり,地震波が増幅される一方,地震基盤面から深さ十数kmまでの部分では,地震波は増幅しないとされている(乙243)。 c浅部地盤の速度構造抗告人は,地表面近くの浅部地盤の速度構造について,①PS検層,②試掘坑弾性波探査,③反射法地震探査による調査をした(乙16,乙138)。 ①PS検層PS検層とは,縦方向に掘削したボーリング孔内で人工的に発生させた波(P波・S波)が地盤内を伝播する状況を観測,解析し,深さ方向の速度構造を把握する調査手法である。 抗告人は,ボーリング調査のために掘削した原子炉格納施設付近の穴を利用して,発振器による波を受振器で観測し,発振器から受振器までの距離と,発生させた波の伝播時間から,深さごとの波のP波速度及びS波速度を評価した(乙138)。 ②試掘坑弾性波探査試掘坑弾性波探査とは,横方向に掘削した試掘坑内で人工的に発生させた波(P波・S波)が地盤内を伝播する状況を観測,解析し,速度構造を把握する調査手法である。 抗告人は,原子炉格納施設付近の地質調査のために本件各原子力発電所の直下の地盤に掘った延長約670mの試掘坑を利用して,発振器による波を受振器で観測し,発振器から受振器までの距離と,発生させた波の伝播時間から,P波速度及びS波速度を評価した。 この結果,地表面付近にP波速度及びS波速度がそれぞれ約4.3km/s,約2.2km/sの硬質な岩盤が広がっていることを確認した(乙13 発生させた波の伝播時間から,P波速度及びS波速度を評価した。 この結果,地表面付近にP波速度及びS波速度がそれぞれ約4.3km/s,約2.2km/sの硬質な岩盤が広がっていることを確認した(乙138)。 抗告人は,この結果に基づき,原子炉格納施設直下に解放基盤表面を設定した(乙76)。 解放基板表面とは,基準地震動を策定するために,基盤面上の表層及び構造物がないものとして仮想的に設定する自由表面であり,著しい高低差がなく,ほぼ水平で相当な広がりをもって想定される基盤の表面をいい,この基盤とは,概ねせん断波速度Vs=700m/s以上の硬質地盤であり,著しい風化を受けていないものとすると規定されている(設置許可基準規則解釈別記2第4条5項1号,乙76)。 ③反射法地震探査反射法地震探査とは,発振器で地表面から人工的に波を発し,受振器で地層からの反射波を観測,解析して,波が伝わる速度が変化する境界面の位置,構造を把握する調査手法である(乙241)。 抗告人は,本件各原子力発電所敷地内に設定した測線に沿って受振器を設置した上で,発振器を搭載した震源車により振動を発生させ,地中から反射してくる波を受振器で観測した(乙138)。 本件各原子力発電所敷地での反射法地震探査では,敷地内にA,B2本の測線を配置し(乙138),各測線において,震源車に搭載した発振器から人工的に発した波を,測線上に約10m間隔で設置された受振器で観測した。この観測作業を,震源車の位置を変えながら繰り返して行い,それらのデータを解析すること で地中の反射面(すなわち波の速度が変化する境界面)の位置,構造(速度構造)を評価した(乙76)。 ④抗告人は,上記解析結果により,地中の反射面は地表面とほぼ平行となっていて,極端な起伏がないことを確認し,これにより,本件各原子力 変化する境界面)の位置,構造(速度構造)を評価した(乙76)。 ④抗告人は,上記解析結果により,地中の反射面は地表面とほぼ平行となっていて,極端な起伏がないことを確認し,これにより,本件各原子力発電所敷地の地下に,地層の極端な起伏等の地震波の伝播に影響を与えるような特異な構造が認められないことを確認した(乙138)。 d深部地盤調査抗告人は,①地震波干渉法,及び②微動アレイ観測により,本件各原子力発電所敷地内や周辺地点において,非常に小さな地震・波浪・風や,産業活動・交通に伴う振動等によって常時存在する地面の小さな揺れ(常時微動)の観測を行い,その観測記録を解析して,深部までの地盤の速度構造を評価した(乙16,乙140)。 ①地震波干渉法地震波干渉法とは,地表の離れた2点で常時微動を長期間連続的に観測してデータ解析を行い,2点間の波の伝わり方を求めることにより,2点間における地盤の速度構造を求める調査手法をいう。 抗告人は,音海半島(高浜発電所側)及び大島半島(大飯発電所側)の各5地点に地震計を設置して観測を行い,約半年間の観測記録を収集した。 抗告人は,高浜発電所側の観測点と大飯発電所側の観測点の常時微動記録を解析し,2点間の波の伝わり方(グリーン関数と呼ぶ)を求め,このグリーン関数から,波が地盤を伝わる際の波の周期ごとの速度(位相速度という)を求めた。 地震波干渉法は,広い範囲に地震計を設置する手法であるところ,地震計の間隔が広いと波長の長い長周期の波を把握しやすいことから,比較的長周期の揺れを調査するのに適している(乙140)。 ②微動アレイ観測 微動アレイ観測とは,複数の地震計を地表に直線状・放射状等に連続して配置(アレイ配置)し,常時微動を同時に観測して,データ解析により地震計を配置した付近の地盤の速度構造を求 微動アレイ観測 微動アレイ観測とは,複数の地震計を地表に直線状・放射状等に連続して配置(アレイ配置)し,常時微動を同時に観測して,データ解析により地震計を配置した付近の地盤の速度構造を求める調査手法をいう。抗告人は,本件各原子力発電所敷地内の7地点に地震計を設置して観測を行い,ここで得られた波形から位相速度を求めた。 微動アレイ観測は,比較的狭い範囲に地震計を設置する手法であるところ,地震計の間隔が狭いと波長の短い短周期の波を把握しやすいことから,比較的短周期の揺れを調査するのに適している(乙140)。 ③観測結果の解析抗告人は,地震波干渉法及び微動アレイ観測のそれぞれにより求めた位相速度に合うような地盤の一次元の速度構造モデルを求め,一次元の速度構造モデルについて,その諸元から位相速度を算出し,地震波干渉法及び微動アレイ観測による位相速度の上記観測結果と比較したところ,一次元の速度構造モデルの諸元から算出した位相速度は,観測結果による位相速度と概ね一致した。 抗告人は,上記結果から,本件各原子力発電所敷地の地盤の速度構造が,この一次元の速度構造モデル(波の速度が変化する境界面が地表面と平行となっており,局所的に地震波の集中をもたらすような特異な構造がない,成層のモデル。)によって精度良く評価されていることを確認した(乙76)。 ④抗告人は,原子力規制委員会での議論を踏まえて地震発生層の上端深さを3kmとしたことを受けて,本件各原子力発電所敷地の地盤の速度構造モデルを設定した(乙76)。 (オ)検討用地震の選定a候補活断層の選定抗告人は,本件各原子力発電所敷地に影響を及ぼすと考えられる活断層として,次のとおり15の候補を選定した(乙76)。 ①和布-干飯崎沖~甲楽城断層 長さ60km,マグニチュード7.8 定抗告人は,本件各原子力発電所敷地に影響を及ぼすと考えられる活断層として,次のとおり15の候補を選定した(乙76)。 ①和布-干飯崎沖~甲楽城断層 長さ60km,マグニチュード7.8,震央距離70km②敦賀断層長さ23km,マグニチュード7.1,震央距離50km③大陸棚外縁~B~野坂断層長さ49km,マグニチュード7.7,震央距離44km④三方断層長さ27km,マグニチュード7.2,震央距離37km⑤花折断層長さ58km,マグニチュード7.8,震央距離50km⑥琵琶湖西岸断層系長さ60km,マグニチュード7.8,震央距離53km⑦濃尾地震断層系長さ80km,マグニチュード8.0,震央距離110km⑧上林川断層長さ39.5km,マグニチュード7.5,震央距離26kmただし,上記長さは,後記のとおり,地震動評価上の長さとして設定された。 ⑨有馬-高槻構造線長さ45km,マグニチュード7.6,震央距離77km⑩山田断層長さ33km,マグニチュード7.4,震央距離38km⑪郷村断層長さ34km,マグニチュード7.4,震央距離51km⑫三峠断層長さ20km,マグニチュード7.0,震央距離35km⑬FGA3東部断層長さ29km,マグニチュード7.3,震央距離60km ⑭FO-A~FO-B~熊川断層長さ63.4km,マグニチュード7.8,震央距離15kmただし,上記長さは,後記のとおり,地震動評価上の長さとして設定された。 ⑮FO-C断層長さ20km,マグニチュード6.8,震央距離18kmただし,上記長さは地震動評価上の長さとして設定された。 また,上記断層を孤立した短い活断層として扱うため,上 設定された。 ⑮FO-C断層長さ20km,マグニチュード6.8,震央距離18kmただし,上記長さは地震動評価上の長さとして設定された。 また,上記断層を孤立した短い活断層として扱うため,上記マグニチュードの地震規模を想定した。 b検討用地震の選定抗告人は,上記調査結果等を踏まえて上記候補活断層について,耐専式により求めた応答スペクトルの比較等の分析をした結果,敷地への影響が大きいと考えられるFO-A~FO-B~熊川断層と上林川断層の2つを検討用地震として選定した(乙76)。 ウ原子力規制委員会による審査原子力規制委員会は,抗告人が行った震源として考慮する活断層の評価,本件各原子力発電所敷地及び敷地周辺の地下構造の評価及び検討用地震の選定に関して,設置許可基準規則解釈別記2に適合することを確認した(乙14の2)。 (3)検討用地震断層(FO-A~FO-B~熊川断層及び上林川断層)の評価ア設置許可基準規則等設置許可基準規則解釈は,震源として考慮する活断層を,後期更新世以降(約12~13万年前以降)の活動が否定できない断層とした上で(同規則解釈別記1第3条3項),その評価に当たっては,調査地域の地形・地質条件に応じ,既存文献の調査,変動地形学的調査,地質調査,地球物理学的調査等の特性を活かし,これらを適切に組み合わせた調査を実施した上で,その結果を総合的に評価し活断層の位置・形状・活動性等を明らかにすることを求めている(同規則解釈別記2第4条5項2号②ⅰ))。 そして,その調査については,目的に応じた調査手法を選定するとともに,調査手法の適用条件及び精度等に配慮することによって,調査結果の信頼性と精度を確保することを求めている(同項4号)。 また,震源断層の長さを含む基準地震動の策定過程に伴う各種の不確かさ(震源断 に,調査手法の適用条件及び精度等に配慮することによって,調査結果の信頼性と精度を確保することを求めている(同項4号)。 また,震源断層の長さを含む基準地震動の策定過程に伴う各種の不確かさ(震源断層の長さ,地震発生層の上端深さ・下端深さ,断層傾斜角,アスペリティの位置・大きさ,応力降下量,破壊開始点等の不確かさ,並びにそれらに係る考え方及び解釈の違いによる不確かさ)については,敷地における地震動評価に大きな影響を与えると考えられる支配的なパラメータについて分析した上で,必要に応じて不確かさを組み合わせるなど適切な手法を用いて考慮することを求めている(同項2号⑤)。 イ抗告人の対応(乙76)(ア)断層の調査抗告人は,次のとおり,断層の調査をした(乙241)。 a文献調査国内の地形,地質,地震等に関する研究者が参集した活断層研究会による「[新編]日本の活断層」,海上保安庁水路部(現「海上保安庁海洋情報部」)発行の「5万分の1沿岸の海の基本図」等の文献に記載されている既往の調査結果から,敷地から概ね半径100kmの範囲の地形及び地質・地質構造を把握するとともに,文献に記載されている活断層を抽出した。 上記文献調査により,主要な活断層の有無,位置,長さ等を把握することができ,本件各原子力発電所の基準地震動を策定する際に参照すべき活断層を把握することができる。 b陸域における調査(a)抗告人は,陸域において,変動地形学的調査を実施し,敷地周辺の変動地形・リニアメント(断層が繰り返し活動すること等により,谷や尾根において, その傾斜が急変したり,横ずれしたりする地形的な特徴が現れ,このような特徴が直線,又は直線に近い状態で配列することが知られており,このような断層活動等に伴う変動地形の可能性のある地形を「リニアメント」という。) 変したり,横ずれしたりする地形的な特徴が現れ,このような特徴が直線,又は直線に近い状態で配列することが知られており,このような断層活動等に伴う変動地形の可能性のある地形を「リニアメント」という。)を抽出した。 具体的には,抗告人及び国土地理院が撮影した空中写真を用いた空中写真判読を,本件各原子力発電所から半径30km以内の全域で行い,変動地形・リニアメントを抽出し,必要に応じて航空レーザー測量等による検討を行った。 空中写真判読においては,主に抗告人撮影の縮尺2万分の1の空中写真を用い,必要に応じて,国土地理院発行の空中写真(縮尺1万分の1,2万分の1及び4万分の1)を併用した。そして,社団法人土木学会原子力土木委員会編(1999)及び井上ほか(2002)の判読基準を参考に敷地周辺陸域の地質・地質構造を考慮して作成した変動地形・リニアメント判読基準を用いて,不明瞭なものや,断層活動によるものではないものも含め,変動地形・リニアメントを抽出した。 (b)上記の文献調査及び変動地形学的調査により,活断層又は変動地形・リニアメントの可能性があるとされた地域については,さらに地表地質調査等を実施した。稠密な地表踏査を行い,さらにトレンチ調査,ピット調査,ボーリング調査,剥ぎ取り調査,反射法地震探査といった各手法を用いて,調査を実施した。 (c)抗告人は,それらの地表地質調査等において,後期更新世以降(約12~13万年前以降)に堆積した地層における,断層活動の痕跡(断層活動による変位・変形)の有無を確認し,変位・変形が確認できた場合は,後期更新世以降に断層活動があったものと評価した。 (d)抗告人は,地表地質調査等において,上記のような変位・変形の有無を地表近くで直接確認できる場合は,トレンチ調査,ピット調査,剥ぎ取り調査を,後期更新世以降の 断層活動があったものと評価した。 (d)抗告人は,地表地質調査等において,上記のような変位・変形の有無を地表近くで直接確認できる場合は,トレンチ調査,ピット調査,剥ぎ取り調査を,後期更新世以降の地層が堆積層に厚く覆われているなどして変位・変形の有無を地表近くで直接確認できない場合には反射法地震探査を,活断層の活動性を評価 するために堆積層の分布状況や堆積した年代を把握したり,活断層の有無等を調べたりする場合にはボーリング調査を,それぞれ実施した。 c海域における調査(a)抗告人は,地質調査所(現「産業技術総合研究所」)及び海上保安庁から過去に実施した海上音波探査のデータの提供を受けて評価を行った。 (b)抗告人は,本件各原子力発電所から半径5kmの海域及び敷地に影響を与える可能性のある断層等が確認された海域について,地質・地質構造を把握するため,次のとおり,海上音波探査及び海上ボーリング調査を実施した。 海上音波探査は,調査船が曳航する発振器で海面下から音波を発し,これが海底面や海底下の地層境界で反射したものを受振器で観測することで海底下の地層の速度構造分布を把握する調査手法である。 抗告人は,海域での断層の有無や活動性を詳細に把握するため,これらの調査においても,陸域と同様に,後期更新世以降(約12~13万年前以降)に堆積した地層における,断層活動の痕跡(断層活動による変位・変形)の有無を確認した。 具体的には,海上ボーリング調査で採取した堆積物や岩石を分析することにより,海域に堆積している地層の年代と深度を把握した上で海上音波探査を行った。 d調査結果に基づく断層の位置,長さ,幅の評価(a)抗告人は,前記のとおり行った網羅的な調査の結果を基に,震源として考慮する活断層のうち本件各原子力発電所に与える影響が大きいと考えら を行った。 d調査結果に基づく断層の位置,長さ,幅の評価(a)抗告人は,前記のとおり行った網羅的な調査の結果を基に,震源として考慮する活断層のうち本件各原子力発電所に与える影響が大きいと考えられるFO-A~FO-B断層,熊川断層及び上林川断層について,活断層の位置を把握した上で,それぞれ活断層の痕跡が明瞭に無くなる箇所を端部とし,断層の長さを保守的に評価した。 また,震源として考慮する活断層が近接して分布する場合は,それらが同時に活動する(連動する)可能性を検討するため,両断層の活動状況等の異同や,両断層 間に分布する地層に断層運動の影響による変位や変形があるか等の地質の性状を確認することにより,両断層を結ぶような構造の有無を確認した。 (b)抗告人は,上記の断層の長さや幅の評価に当たって,後期更新世以降(約12~13万年前以降)の活動が明確に否定できないものについては,全て「震源として考慮する活断層」として地震動評価の対象としており,約12~13万年前以降の活動が否定できない断層については,当該断層における過去の地震の発生時期,回数(一回なのか,数回に分けて発生したのか),規模(断層面の全体が一度にずれたのか,一部がずれたのみか)にかかわらず,保守的に,断層面の全体が一回の地震でずれて地震動を惹き起こすものと想定して評価した。 (イ)各断層の具体的な評価(乙16,乙132,乙241)aFO-A~FO-B断層FO-A~FO-B断層は,本件各原子力発電所の北側の若狭湾内に北西から南東方向に延びる断層である。 抗告人は,FO-A~FO-B断層は海域にあることから,海上音波探査により,その長さを評価した。その結果,FO-A~FO-B断層の長さは約35kmと評価した。 具体的には,抗告人は,海上ボーリング調査で採取した堆積物や岩 O-B断層は海域にあることから,海上音波探査により,その長さを評価した。その結果,FO-A~FO-B断層の長さは約35kmと評価した。 具体的には,抗告人は,海上ボーリング調査で採取した堆積物や岩石を分析することによって海域に堆積している地層の年代を把握した上で,海上音波探査を行い,後期更新世以降に堆積したと考えられるB層の中で最も古く堆積した地層に断層活動による痕跡が認められない(この地層に段差がない)箇所を端部とした。 b熊川断層熊川断層は,FO-A~FO-B断層の南東側の陸上に西北西から東南東方向に延びる断層である。 熊川断層については,陸上で地中の地層構造を調査する反射法地震探査や地 形・地質の状況から,その長さを約14kmと評価した。 熊川断層の南東端については,リニアメントがなく,地上に露頭した後期更新世より前の岩盤に断層が認められない角川付近とした。 同北西端は,南東端のように露頭した岩盤が見られず,地表の痕跡から評価することができなかったことから,反射法地震探査により地下に熊川断層の存在を示唆するような断層活動の痕跡が認められない,つまり後期更新世より前の岩盤から,後期更新世以降に堆積した層を含む地表までの地層が大きな段差なく堆積している箇所の測線とした。 cFO-A~FO-B断層と熊川断層の連動(a)FO-A~FO-B断層と熊川断層については,抗告人が実施した調査では,熊川断層の北西延長上の小浜湾に後期更新世以降の活動による地質構造は認められなかったことから,抗告人は,FO-A~FO-B断層と熊川断層とは連動しないと判断した。 (b)この点について,断層の延びる方向が似かよっていることや,熊川断層の北西延長上の小浜湾内で原子力安全・保安院が実施した海上音波探査において,後期更新世以降に堆積した地層に断層 いと判断した。 (b)この点について,断層の延びる方向が似かよっていることや,熊川断層の北西延長上の小浜湾内で原子力安全・保安院が実施した海上音波探査において,後期更新世以降に堆積した地層に断層活動の痕跡の可能性が否定できない反射面の変形(堆積した地層の境界面における段差)が認められたとされたこと,また,FO-A~FO-B断層と熊川断層の間にリニアメントが認められ,そのリニアメントは,上下変位成分を有し左横ずれ断層であるこれらの断層と同様の傾向を示すとの指摘が原子力規制委員会の新規制基準適合性に係る審査会合でなされたこと等から,抗告人は,FO-A~FO-B断層と熊川断層の連動性について,平成25年に更に詳細な調査(①熊川断層西端の反射法地震探査,②小浜湾における海上音波探査及び②’小浜湾周辺のボーリング調査,③双児崎のリニアメント調査,④小浜湾東側段丘面調査)を実施した。 上記調査の結果,熊川断層が小浜湾内に延伸し,FO-A~FO-B断層と連 動しているとの結果は認められなかった。 (c)以上のとおり,両断層が連続していることを示す地質構造は確認されておらず,また,両断層の間には,過去に連動した実績が確認されている断層間の最大の離隔距離(7km)の2倍を超える離隔距離(15km以上)があることから,抗告人は,両断層は連動しないものと評価した(乙14の2,乙78,乙133の1,乙133の2,乙134の1,乙134の2,乙135,乙241)。 (d)抗告人は,地震動評価に当たっては,十分に保守的な評価を行う観点から,後記のとおり,FO-A~FO-B断層と熊川断層は連動するものとして条件設定することとした。 d上林川断層上林川断層は,本件各原子力発電所の南西側の陸域に位置し,北東から南西方向に延びる断層である。 抗告人は,上林川 ~FO-B断層と熊川断層は連動するものとして条件設定することとした。 d上林川断層上林川断層は,本件各原子力発電所の南西側の陸域に位置し,北東から南西方向に延びる断層である。 抗告人は,上林川断層の長さについて,地形・地質調査を行い,文献等に記載されている活断層の長さ約26kmよりも13km以上長い,約39.5kmと評価した。 具体的には,北東端については,リニアメントが認められなくなる故屋岡町付近よりもさらに東側の延長線上において,露頭した岩盤に後期更新世以降の活動が確実にないことが確認できた県境付近とした。 また,南西端については,文献調査で南西端とされていた付近の地域は比較的新しい年代の厚い堆積層に覆われており,活断層の痕跡の端付近で末端が確認できなかったため,後期更新世より前に形成された地層(高位段丘面)に変動地形が認められず,確実に活断層がないと確認できた福知山市付近を南西端とした(乙14の2,乙78,乙108,乙241)。 ウ原子力規制委員会による審査原子力規制委員会は,抗告人が行った震源として考慮する活断層の評価に関して,調査地域の地形・地質条件に応じて適切な手法,範囲及び密度で実施した上 で,その結果を総合的に評価し,活断層の位置,形状,活動性等を明らかにしていることから,設置許可基準規則解釈別記2に適合することを確認した(乙14の2)。 (4)「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」の評価抗告人は,本件各原子力発電所周辺の地域特性(「震源特性」,「伝播特性」,「地盤の増幅特性(サイト特性)」)を踏まえ,各検討用地震(FO-A~FO-B~熊川断層による地震,及び上林川断層による地震)について,「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」の評価として,「応答スペクトルに基づく地震動評価」及び「断層モデルを用い 震(FO-A~FO-B~熊川断層による地震,及び上林川断層による地震)について,「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」の評価として,「応答スペクトルに基づく地震動評価」及び「断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価」を行った。 ア応答スペクトルに基づく地震動評価について「応答スペクトルに基づく地震動評価」は,地震の規模と震源から敷地までの距離との関係式から地震が発生したときの敷地における地震動の応答スペクトルを求める手法により行う地震動評価である。 (ア)「耐専式」についてa設置許可基準規則等設置許可基準規則解釈は,検討用地震ごとに,適切な手法を用いて応答スペクトルを評価のうえ,それらを基に設計用応答スペクトルを設定し,これに対して,地震の規模及び震源距離等に基づき地震動の継続時間及び振幅包絡線の経時的変化等の地震動特性を適切に考慮して地震動評価を行うことを求めている(同規則解釈別記2第4条5項2号④ⅰ))。 この点について,「基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド」(地震ガイド)は,①応答スペクトルに基づく地震動評価における経験式(距離減衰式)の選定について,用いられている地震記録の地震規模,震源距離等から,適用条件,適用範囲について検討した上で,経験式(距離減衰式)が適切に選定されていること,及び,適切なパラメータを設定し,震源断層の拡がりや不均質性等が適切 に考慮されていること,②地盤の増幅特性(サイト特性)の評価について,距離減衰式の特徴を踏まえて適切に評価されていることを求めている(Ⅰ3.3.1(1))。 b抗告人の対応(乙76)(a)「耐専式」の採用①設置許可基準規則等の要求事項を踏まえ,抗告人は,応答スペクトルに基づく地震動評価において必要となる距離減衰式(地震の規模と震源からの距離との関 抗告人の対応(乙76)(a)「耐専式」の採用①設置許可基準規則等の要求事項を踏まえ,抗告人は,応答スペクトルに基づく地震動評価において必要となる距離減衰式(地震の規模と震源からの距離との関係から地震動の大きさを経験的に求める手法)について,「岩盤における設計用地震動評価手法(耐専スペクトル)について」(甲60)における「耐専式」を用いることとした。 ②耐専式は,日本電気協会の原子力発電耐震専門部会で審議され,取りまとめられた式であり,本件各原子力発電所敷地地盤と同様の岩盤上の20年間の地震記録(水平成分214個,上下成分107個)を統計的に分析すること(回帰分析)により得られた算定式である。 ③耐専式は,上記部会において,平成11年に策定されて以降,観測データを用いて適用性の検証,確認が継続的に行われている。 また,独立行政法人原子力安全基盤機構においても,「平成18年度原子力施設等の耐震性評価技術に関する試験及び調査活断層及び地震動特性に関する調査・解析に係る報告書」(乙156)において,平成18年に発生した地震の観測記録と耐専式による評価結果との比較によってその適用性が確認されるなど,耐専式は,実際に発生した地震によりその適用性が確認された,信頼性を有する地震動評価手法である。 なお,日本電気協会による最新の「原子力発電所耐震設計技術指針(JEAG4601-2015)」(乙244,以下「JEAG4601-2015」という。)は,「新規制基準との整合や2007年新潟県中越沖地震及び2011年東北地方太平洋沖地震等から得られ た知見等を反映して」(乙244,「『原子力発電所耐震設計技術指針』について」)改定されているが,この改訂後のJEAG4601-2015においても,耐専式の見直しはなされておらず(乙244,乙245 た知見等を反映して」(乙244,「『原子力発電所耐震設計技術指針』について」)改定されているが,この改訂後のJEAG4601-2015においても,耐専式の見直しはなされておらず(乙244,乙245),平成23年東北地方太平洋沖地震や福島第一原子力発電所事故を経ても,耐専式が信頼性を認められていることが示されている。 ④耐専式は,地震の規模(マグニチュード,M),等価震源距離(Xeq)及び評価地点の地盤のP波速度・S波速度から,評価地点の水平方向及び鉛直方向の地震動の応答スペクトルを評価するものである。 耐専式では,地震の規模と等価震源距離が与えられると,特定の8つの周期に対する応答値が算定され,8つの周期とその周期に対する応答値を,横軸に周期をとったグラフ上に書き出し,それら8つの点を線で結ぶことにより,応答スペクトルが求められる。 上記応答スペクトルに,評価地点の地盤のP波速度・S波速度を考慮して地盤増幅率を乗じることで,評価地点の岩盤の固さに応じた応答スペクトルに補正される。すなわち,耐専式で地震動を評価する際には,評価地点の地域性を踏まえて地震動評価を行うことが予定されている。 ⑤耐専式では,震源から敷地までの距離として等価震源距離を用いている。等価震源距離とは,震源断層面の各部から放出され敷地に到達する地震波のエネルギーの総計が,特定の1点(点震源)から放出されたものと仮定した場合に到達するエネルギーと等しくなるときの点震源から敷地までの距離をいう。実際は広がりをもった震源断層面から放出された地震波を,ある1つの震源(点震源)から放出されるものと仮想することにより,等価震源距離という1つの数値の中で,震源断層面の広がりやアスペリティ分布の効果をも考慮することができる。 ⑥耐専式においては,その開発に当たって基礎とされた地震観 出されるものと仮想することにより,等価震源距離という1つの数値の中で,震源断層面の広がりやアスペリティ分布の効果をも考慮することができる。 ⑥耐専式においては,その開発に当たって基礎とされた地震観測記録群に,等価震源距離が「極近距離」よりも著しく短い場合のデータは含まれていない。 また,等価震源距離が「極近距離」より著しく短い場合は、等価震源距離が短くなるにつれて,実際の地震動に比べて大きな評価結果が得られる傾向があるとされている。そのため,耐専式を用いることが適当ではない場合がある。 これを本件各原子力発電所の地震動評価についてみると,上林川断層は「極近距離」以上の等価震源距離がある一方,FO-A~FO-B~熊川断層は「極近距離」より若干短く(乙139),大きな評価結果になる可能性があった(乙98の2,「大飯発電所地震動評価について」)。 しかし,抗告人は,「極近距離」からの乖離の程度が小さいこともあり,保守的に評価する観点から,上林川断層のみならず,FO-A~FO-B~熊川断層についても耐専式を適用することとした(乙139)。 そして,本件各原子力発電所敷地においては,地表面付近にS波速度2.2km/s程度の硬質な岩盤が広がっており,原子炉格納施設直下に解放基盤表面を設定していることから,耐専式で用意されているS波速度2.2km/sの場合の評価方法を用いることとした。 ⑦耐専式は,評価地点の地盤のP波速度・S波速度を考慮して地盤増幅率を乗じることで,評価地点の岩盤の固さに応じた応答スペクトルに補正されるようになっており,評価地点の地域性を踏まえて地震動評価を行うことが予定されている。 抗告人は,地盤の増幅特性(サイト特性)について,上記調査に基づいて,本件各原子力発電所敷地の解放基盤表面のP波速度及びS波速度をそれぞれ約430 性を踏まえて地震動評価を行うことが予定されている。 抗告人は,地盤の増幅特性(サイト特性)について,上記調査に基づいて,本件各原子力発電所敷地の解放基盤表面のP波速度及びS波速度をそれぞれ約4300m/s,約2200m/sと評価するとともに,地震波の局所的な集中を生じさせるような特異な地下の速度構造がなく,耐専式で得られる評価結果を補正する必要がないことを確認した。 抗告人は,伝播特性について,上記調査に基づいて,影響の大きい幾何減衰には地域性がなく,また,内部減衰に関する本件各原子力発電所敷地周辺を含む若 狭湾付近の媒質(岩石等)に固有の値(Q値)は,既往の研究成果から50fと,国内における平均的な値であったことから,耐専式で得られる評価結果を補正する必要がないことを確認した。 (b)条件設定①地震の規模抗告人は,地震の規模(マグニチュード,M)は,詳細な調査に基づいて断層の長さを把握した上で,断層の長さから地震の規模を導き出す関係式(後記松田式)に長さの値を入力して評価した。 抗告人は,前記のとおり,断層の長さについて,起こりうる不確かさを織り込んで保守的に評価した上,地震の規模を評価した。 その結果,FO-A~FO-B~熊川断層による地震の規模は,FO-A~FO-B断層(2連動)が長さ35kmでマグニチュード7.4であったところ,3連動する設定とし,長さ63.4kmとしたことでマグニチュード7.8とした。 また,上林川断層による地震の規模は,文献等で記載されている活断層の長さ約26kmの場合でマグニチュード7.2であったところ,その長さを約39.5kmと評価することによりマグニチュード7.5とした。 ②等価震源距離抗告人は,等価震源距離について,次のとおり,断層の上端(地震発生層の上端)の深さやアスペリティの配置,断 その長さを約39.5kmと評価することによりマグニチュード7.5とした。 ②等価震源距離抗告人は,等価震源距離について,次のとおり,断層の上端(地震発生層の上端)の深さやアスペリティの配置,断層傾斜角等を保守的に条件設定することで,等価震源距離が短くなり,地震動が大きくなるように評価した。 [i]断層の上端(地震発生層の上端)の深さ抗告人は,断層の上端(地震発生層の上端)の深さについて,地下構造の調査結果から深さ4km程度であると評価していたが,原子力規制委員会における議論も踏まえ,より浅く(保守的に)深さ3kmと設定することで,震源断層面が発電所敷地により近づく設定とした(下端深さは18kmと設定し,これにより断層の 幅は15kmとした)。 [ii]アスペリティの配置震源断層面において周囲よりもすべり量が大きく,強い揺れが生起される部分(アスペリティ)の配置については,断層面の中央付近に設定することが基本とされている。 しかし,抗告人は,FO-A~FO-B~熊川断層及び上林川断層のいずれについても,調査に基づいてその位置を把握し,断層の長さと幅(上端深さ及び下端深さ)を保守的に評価した上で,アスペリティ位置を地震の発生前に正確に特定するのは困難であることを考慮し,等価震源距離が短く(発電所敷地に近く)なるよう,断層面のうち本件各原子力発電所敷地に近い位置にアスペリティを配置した。 そのうち,本件各原子力発電所敷地に近いFO-A~FO-B~熊川断層について,FO-A~FO-B断層と熊川断層の間の断層の存在が確認されていない区間(約15km)についてもアスペリティを設定することとし,本件各原子力発電所敷地に最も近い位置にアスペリティを配置した(乙139)。 [iii]断層傾斜角抗告人は,断層傾斜角について,FO-A~FO 約15km)についてもアスペリティを設定することとし,本件各原子力発電所敷地に最も近い位置にアスペリティを配置した(乙139)。 [iii]断層傾斜角抗告人は,断層傾斜角について,FO-A~FO-B~熊川断層,上林川断層のいずれも,断層面がほぼ鉛直で地震時のずれ方向は水平方向が主である「横ずれ断層」であると評価し,断層傾斜角は鉛直(水平面から90度下向き)と評価し,これを「基本ケース」として設定した。 しかし,断層傾斜角が鉛直から多少傾斜する可能性も考えられ,特に震源断層が本件各原子力発電所敷地に近い場合には,これらの不確かさが本件各原子力発電所敷地での地震動に影響する可能性があることから,抗告人は,本件各原子力発電所敷地に近いFO-A~FO-B~熊川断層の断層傾斜角について,保守的な観点から不確かさを想定することとした。 具体的には,断層傾斜角について,評価結果の鉛直(水平面から90度下向き)から,水平面から75度下向きにしたケースを,FO-A~FO-B~熊川断層において更に不確かさを考慮するケースの一つとして設定した。震源断層面を本件各原子力発電所敷地に近くなる方向に傾けることで等価震源距離は短くなり,保守的な条件設定となる。 [iv]等価震源距離の評価以上の条件設定により,等価震源距離は,FO-A~FO-B~熊川断層について,基本ケースで20.2km,アスペリティを一塊にしたケースで19.7km(アスペリティ正方形),19.5km(アスペリティ長方形),断層傾斜角を75度にしたケースで18.6km,上林川断層について19.9kmとなり,抗告人は,これらを地震動評価に用いることとした。 ③内陸補正係数耐専式の元データとなった地震には,プレート間地震,海洋プレート内地震,内陸地殻内地震のデータが含まれているが,そのうち mとなり,抗告人は,これらを地震動評価に用いることとした。 ③内陸補正係数耐専式の元データとなった地震には,プレート間地震,海洋プレート内地震,内陸地殻内地震のデータが含まれているが,そのうち,本件各原子力発電所に影響するものとして抗告人が対象としている内陸地殻内地震による地震動は,地震の規模の割に,地震動,特に短周期側の揺れが小さめであるとの知見が得られているため,耐専式をそのまま適用すると,実際の地震動の観測記録の方が小さく,耐専式による評価結果は過大評価となる。 そこで,内陸地殻内地震について耐専式を用いる場合には,短周期側を0.6倍にする内陸補正係数を乗じて補正する(小さくする)こととされている(乙34,「原子力発電所耐震設計技術指針(JEAG4601-2008)」)。 本件各原子力発電所に影響を与える,若狭湾周辺地域で発生する地震は内陸地殻内地震であることから,本来この内陸補正係数を用いることができるところ,抗告人は,内陸補正係数を乗じないことで地震動を大きく見積もり,保守的な地震動評価を行っている。 (c)本件各原子力発電所の「応答スペクトルに基づく地震動評価」①抗告人は,前記のとおり,調査と既往の知見に基づいて保守的にパラメータを設定した。 ②抗告人は,以上の設定をもとに,本件各原子力発電所について耐専式を用いて応答スペクトルに基づく地震動評価を行い,それらの評価結果(応答スペクトル)を踏まえて基準地震動Ss-1の応答スペクトルを策定した。 なお,抗告人は,「応答スペクトルに基づく地震動評価」の結果から,本件各原子力発電所の基準地震動Ss-1の応答スペクトルを作成するに当たっては,これらの評価結果から更に余裕を持たせた。例えば,FO-A~FO-B~熊川断層による地震の各ケースのうち,最大の地震動評価結果とな 力発電所の基準地震動Ss-1の応答スペクトルを作成するに当たっては,これらの評価結果から更に余裕を持たせた。例えば,FO-A~FO-B~熊川断層による地震の各ケースのうち,最大の地震動評価結果となった断層傾斜角75度ケースと比べると,基準地震動Ss-1の加速度は,水平方向では短周期側で約1.1~1.3倍,長周期側(横軸の右寄り)で約1.3~2.5倍,鉛直方向では短周期側で約1.3~1.5倍,長周期側で約1.6~2.3倍となっている(乙108)。 c原子力規制委員会による審査原子力規制委員会は,抗告人が行った本件各原子力発電所の「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」(「応答スペクトルに基づく地震動評価」及び後記「断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価」)について,検討用地震ごとに不確かさを考慮して策定しているとして,設置許可基準規則解釈別記2に適合することを確認した(乙14の2)。 (イ)「松田式」についてa設置許可基準規則等地震ガイドは,「震源特性パラメータの設定」に関して,「震源モデルの長さ又は面積,あるいは1回の活動による変位量と地震規模を関連づける経験式を用いて地震規模を設定する場合には,経験式の適用範囲が十分に検討されていること を確認する。その際,経験式は平均値としての地震規模を与えるものであることから,経験式が有するばらつきも考慮されている必要がある」としている(Ⅰ3.2.3(2))。 b抗告人の対応(乙76)(a)松田式とは,松田時彦東京大学名誉教授が「活断層から発生する地震の規模と周期について」(1975年)(乙94)で提案した,活断層長さLと地震のマグニチュードMとの関係を表す経験式である。松田式を用いることで,活断層の長さからその活断層が起こす地震の規模を求めることができる。 耐専式は,地 75年)(乙94)で提案した,活断層長さLと地震のマグニチュードMとの関係を表す経験式である。松田式を用いることで,活断層の長さからその活断層が起こす地震の規模を求めることができる。 耐専式は,地震の規模(マグニチュード),等価震源距離,及び地震動評価地点における地震波(P波,S波)の速度から地震動の応答スペクトルを評価する手法であり,その適用には地震の規模(マグニチュード)の想定が必要となる。 抗告人は,この地震の規模(マグニチュード)を,松田式を用いて断層長さから求めた。 松田式は,地震調査研究推進本部の「震源断層を特定した地震の強震動予測手法(『レシピ』)」(乙20)においても,地震の規模を求めるための関係式として引用されており(乙20,付録3-5頁,(d),地震規模〔地震モーメントMo〕),活断層と地震の規模との関係式として信頼性を有するものである。抗告人は,各種調査を行って「震源断層の長さ」を評価し,「震源断層の長さ」Lから松田式を用いてマグニチュードMを求めた。 (b)抗告人は,松田式を適用するに当たり,松田式の基となった14地震について,最新の知見に基づいて見直されたマグニチュードMの値を基に改めて自ら検証を行っており,これら14地震のデータが松田式に良く整合していることを確認した(乙95)。 (c)本件各原子力発電所の敷地周辺地域は,活断層の発達過程が未成熟な地域ではなく,地表地震断層を調査することにより震源断層を把握することができる 地域であると認められる(乙142~144,乙241)。そこで,抗告人は,耐専式による評価を行うに当たって必要となる地震の規模について,断層の長さから松田式を用いて評価することが相当であると判断した。 c原子力規制委員会による審査原子力規制委員会は,抗告人が行った「応答スペクトルに 価を行うに当たって必要となる地震の規模について,断層の長さから松田式を用いて評価することが相当であると判断した。 c原子力規制委員会による審査原子力規制委員会は,抗告人が行った「応答スペクトルに基づく地震動評価」について,断層長さからマグニチュードを求める際に松田式を用いた点も含め,設置許可基準規則解釈別記2に適合することを確認した(乙14の2)。 イ断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価について(ア)設置許可基準規則等断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価について,設置許可基準規則解釈は,検討用地震ごとに,適切な手法を用いて震源特性パラメータを設定し,地震動評価を行うことを求めている(同規則解釈別記2第4条5項2号④ⅱ))。 地震ガイドは,まず,震源モデルの設定について,震源断層のパラメータは,活断層調査結果等に基づき,地震調査研究推進本部による「震源断層を特定した地震の強震動予測手法」等の最新の研究成果を考慮し設定されていること,アスペリティの位置が活断層調査等によって設定できる場合は,その根拠が示されていること,根拠がない場合は,敷地への影響を考慮して安全側に設定されていること,アスペリティの応力降下量(短周期レベル)については,平成19年新潟県中越沖地震を踏まえて設定されていること等を確認するとしている(Ⅰ3.3.2(4)①②)。 地震動計算において統計的グリーン関数法等を用いる場合について,震源から評価地点までの地震波の伝播特性,地震基盤からの増幅特性が地盤調査結果等に基づき評価されていることを確認するとしている(Ⅰ3.3.2(4)③1))。 (イ)抗告人の対応(乙76)a抗告人が用いた手法 (a)評価許可基準規則等の要求事項を踏まえ,抗告人は,本件各原子力発電所について断層モデルを用いた手法に基づく地 2(4)③1))。 (イ)抗告人の対応(乙76)a抗告人が用いた手法 (a)評価許可基準規則等の要求事項を踏まえ,抗告人は,本件各原子力発電所について断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価を行った。評価に当たっては,統計的グリーン関数法等を用いることとした。 統計的グリーン関数法とは,震源断層をモデル化した上で小さな区画(要素)に分割し,その要素ごとのずれ(要素地震)による地震波によって生じる,評価地点(の解放基盤表面)での小さな地震動(要素地震による地震動)を,震源断層面上で発生した要素地震の地震波が次々に到達することによる時間差を考慮して重ね合わせることで,震源断層の「ずれ全体」による評価地点での地震動を評価する手法である。 (b)抗告人は,地震ガイドに例示された地震調査研究推進本部の「震源断層を特定した地震の強震動予測手法(『レシピ』)」(乙20)を参照して,震源断層パラメータを設定し,震源断層をモデル化した。 その上で,要素地震による評価地点での地震動は,モデル化した震源断層(の要素)から発せられる地震波に,震源断層面から評価地点地下の地震基盤までの伝播特性と,地震基盤から評価地点(の解放基盤表面)までの増幅特性(サイト特性)を乗じて設定するものであることから,抗告人は,下記のとおり,地震波の伝播特性と地盤の増幅特性(サイト特性)を評価し,これらを用いて地震動評価を行った。 上記レシピは,多数のパラメータが,パラメータ間の関係式を用いて設定されている,一連の地震動評価手法であるが,このレシピは,実際の地震動を精度よく再現できるものとして,その信頼性が確認されている(乙20,付録3-1,乙16,乙78)。 b震源断層のモデル化(震源断層パラメータの設定)(a)抗告人は,上記「震源断層を特定した地震の強震動予測 現できるものとして,その信頼性が確認されている(乙20,付録3-1,乙16,乙78)。 b震源断層のモデル化(震源断層パラメータの設定)(a)抗告人は,上記「震源断層を特定した地震の強震動予測手法(『レシピ』)」(乙20)を参照して,震源断層パラメータを設定した(乙76,乙13 9)。 (b)具体的には,以下のとおり,各種パラメータ間の関係式に基づいて震源断層パラメータを設定した。 ①断層面積(S)震源となる断層の長さ(L),及び断層の幅(W)(地震発生層の上端深さから下端深さまでの幅)から,断層面積(S)を求めた。 耐専式における設定と同様に,断層の長さについては,FO-A~FO-B~熊川断層については3連動を前提として63.4kmと設定し,上林川断層については39.5kmと設定した。 断層の幅については,FO-A~FO-B~熊川断層及び上林川断層のいずれについても,地震発生層の上端深さを3km,下端深さを18kmと設定し,断層の幅は15kmと設定とした。 この結果,断層面積は,FO-A~FO-B~熊川断層は951km2,上林川断層は592.5km2となった(乙76,乙139)。 ②地震モーメント(Mo)上記レシピに示された入倉孝次郎・三宅弘恵(2001)(乙158)で提案されている断層面積と地震モーメント(Mo)の関係式(入倉・三宅式)により,前記①の断層面積から地震モーメント(Mo)を求めたところ,FO-A~FO-B~熊川断層については5.03×1019N・m,上林川断層については1.95×1019N・mとなった(乙139。なお,FO-A~FO-B~熊川断層については,後記のとおり,断層傾斜角を75度にしたケースを設定しているところ,その場合の地震モーメント(Mo)は,5.59×1019N・mとなった〔乙139〕) 。なお,FO-A~FO-B~熊川断層については,後記のとおり,断層傾斜角を75度にしたケースを設定しているところ,その場合の地震モーメント(Mo)は,5.59×1019N・mとなった〔乙139〕)。 ③短周期レベル(A)上記レシピに示された壇ほか(2001)で提案されている地震モーメント(Mo)と短周期レベル(A)との関係式により,前記②の地震モーメント(M o)から短周期レベルを求めたところ,FO-A~FO-B~熊川断層については1.96×1019N・m/s,上林川断層については1.43×1019N・m/sとなった(乙139)。 なお,平成19年新潟県中越沖地震の短周期レベルが平均的な短周期レベルの1.5倍であったとの新たな知見については,このような現象がこれまで他の地震において一般的に見られたものではないこと,本件各原子力発電所敷地周辺では「標準的・平均的な姿」よりも大きくなる地域性が存する可能性を示すデータは特段得られていないことから,当該知見については,これを基本ケースとする必要はなく,別途不確かさとして考慮するのが適切であると判断し,短周期の地震動レベルを1.5倍とするケースも設定することとした。 ④アスペリティ面積(Sa)上記レシピに示された壇ほか(2001)等で提案されている関係式により,前記③の短周期レベルからアスペリティ面積(Sa)を求めた。 ただし,上記関係式では,断層が長大で面積が大きくなるほど,既往の調査・研究成果と比較してアスペリティ面積が過大評価となる傾向にあるとされているところ(乙20,付録3-8,(b),短周期レベルAとアスペリティの総面積Sa),FO-A~FO-B~熊川断層については,上記関係式による算定の結果,アスペリティ面積比(震源断層全体に占めるアスペリティの面積)が30%を超えたため ,短周期レベルAとアスペリティの総面積Sa),FO-A~FO-B~熊川断層については,上記関係式による算定の結果,アスペリティ面積比(震源断層全体に占めるアスペリティの面積)が30%を超えたため,中央防災会議においてアスペリティの総面積は断層総面積の20~30%に分布するとの知見が示されていることを考慮し,上記レシピに示されたSomervilleetal.(1999)で提案されている知見により,アスペリティ面積比を22%としてアスペリティ面積を求めた(乙139)。 ⑤震源断層全体の応力降下量(Δσ)上記レシピに示されたEshelby(1957)等で提案されている関係式により,前記④のアスペリティ面積から震源断層全体の応力降下量(Δσ)を求めた。 ただし,FO-A~FO-B~熊川断層については,前記④のとおり長大な断層であることから,レシピに示されたFujii&Matsu'ura(2000)で提案されている知見により,震源断層全体の応力降下量を3.1MPaとした(乙139)。 ⑥アスペリティの応力降下量(Δσa)上記レシピに示されたMadariaga(1979)で提案されている関係式により,震源断層面積(S)に占めるアスペリティ面積(Sa)の割合(Sa/S)と,前記⑤の震源断層全体の応力降下量(Δσ)から,アスペリティの応力降下量(Δσa)を求めた(乙139)。 その際,抗告人は,アスペリティが複数ある場合の各アスペリティの応力降下量は,レシピにおいて,「アスペリティが複数ある場合には,特にその震源域の詳しい情報がない限り,各アスペリティの応力降下量はアスペリティ全体の応力降下量に一致し,すべて等しいと仮定する」(乙20,付録3-10,(d),震源断層全体及びアスペリティの静的応力降下量と実行応力及び背景領域の実効応力)と リティの応力降下量はアスペリティ全体の応力降下量に一致し,すべて等しいと仮定する」(乙20,付録3-10,(d),震源断層全体及びアスペリティの静的応力降下量と実行応力及び背景領域の実効応力)とされていることを踏まえ,各アスペリティとも同じ値に設定した。 ⑦破壊伝播速度(Vr)破壊伝播速度(Vr)は,断層の破壊開始点から始まったずれ(破壊)が震源断層面上を広がっていく速さのことである。標準的には,S波速度βの0.72倍(0.72β)とされているため,抗告人は,本件各原子力発電所の地震動評価においても0.72βとしている(乙139)。 この点,破壊伝播速度が大きくなると,断層の破壊が震源断層面上でより速く広がるため,より短い時間に多くの地震波が敷地に到達することとなり,敷地での地震動も一般的には大きくなる。そこで,抗告人は,破壊伝播速度の不確かさも考慮することとし,既往の研究による,過去の地震における破壊伝播速度の不確かさも考慮して,βの0.87倍(0.87β)としたケースを設定した(乙139)。 (c)抗告人は,前記(b)のとおり,各種パラメータ間の関係式に基づいて震源断層パラメータを設定したほか,以下に挙げる震源断層パラメータを設定した。 ①アスペリティの配置抗告人は,アスペリティの位置を地震の発生前に正確に特定するのは困難であることから,保守的な観点から,FO-A~FO-B~熊川断層,上林川断層のいずれについても,アスペリティを本件各原子力発電所敷地に近い位置で,かつ断層の上端に配置することで,より大きな地震動を想定することとした(乙139)。 その上で,抗告人は,FO-A~FO-B~熊川断層について,原子力規制委員会の議論も踏まえ,不確かさを考慮したケースの1つとして,アスペリティを一塊に寄せ集め,正方形又は長方形 した(乙139)。 その上で,抗告人は,FO-A~FO-B~熊川断層について,原子力規制委員会の議論も踏まえ,不確かさを考慮したケースの1つとして,アスペリティを一塊に寄せ集め,正方形又は長方形にしたケースも設定することとした(乙139)。 ②破壊開始点震源断層面の破壊については,一度に全ての領域が破壊されるのではなく,ある点から時間の経過とともに,次第に破壊が断層面上を広がっていく。破壊開始点とは,この一連の破壊が始まる位置のことをいう。 破壊開始点については,地震の発生前に位置を予測することが難しいとされており,また,地震動の評価地点(原子力発電所敷地)から見て,遠い方から近い方に破壊が進行していく場合に評価地点での地震動が大きくなるとされている。 そこで,抗告人は,破壊開始点を,断層の端やアスペリティの端といった本件各原子力発電所敷地から遠い位置に置くなど,複数の位置(FO-A~FO-B~熊川断層について5箇所ないし9箇所,上林川断層について6箇所)に設定した(乙139)。 ③断層傾斜角及びすべり角断層傾斜角とは,震源断層面と水平面とのなす角度の小さい方をいう。すべり 角とは,震源断層の上盤側の,下盤側に対する相対的なずれの方向をいう(断層の走向から断層面に沿って反時計回りの角度で示す。)。 抗告人は,FO-A~FO-B~熊川断層は,地質調査の結果,断層傾斜角は鉛直(水平面から90度下向き)としており,すべり角(断層のずれの方向)は水平(0度)とした(乙139)。 ただし,断層傾斜角は鉛直から多少傾斜する可能性があり,また,すべり角(断層のずれの方向)についても断層面の傾きや広域応力場の向きによって水平から多少傾斜する可能性が考えられ,特に震源断層が原子力発電所敷地に近い場合には,これらの不確かさが原子力発電所敷地での り角(断層のずれの方向)についても断層面の傾きや広域応力場の向きによって水平から多少傾斜する可能性が考えられ,特に震源断層が原子力発電所敷地に近い場合には,これらの不確かさが原子力発電所敷地での地震動に影響する可能性があるため,抗告人は,本件各原子力発電所敷地に近いFO-A~FO-B~熊川断層の断層傾斜角とすべり角について,不確かさを考慮したケースとして,断層傾斜角を水平面から75度下向きにしたケース,すべり角を30度上向きにしたケースを設定した(乙139)。 c地震波の伝播特性,地盤の増幅特性(サイト特性)の評価地震波の伝播特性のうちの幾何減衰について,調査により評価した震源断層の位置に基づき敷地との距離から評価するとともに,内部減衰について,既往の文献をもとにQ値を50fと設定した。地盤の増幅特性(サイト特性)について,調査結果から,本件各原子力発電所敷地及び敷地周辺の地盤の速度構造を把握するとともに,局所的に地震波の集中をもたらすような特異な構造が見られないことを確認した(乙139)。 d地震動評価(a)前記bにより震源断層をモデル化し,前記cにより地震波の伝播特性と地盤の増幅特性(サイト特性)を設定した上で,これらをもとに,抗告人は,統計的グリーン関数法等を用いて「断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価」を行った。 震源断層パラメータについて様々な不確かさを考慮することとした結果,本件各原子力発電所敷地に近いFO-A~FO-B~熊川断層による地震については,56のケースを設定して評価した。また上林川断層による地震についても18のケースを設定して評価した(乙16,乙108)。 (b)抗告人は,以上の地震動評価結果(FO-A~FO-B~熊川断層による地震について全56ケース,上林川断層による地震について全18ケ いても18のケースを設定して評価した(乙16,乙108)。 (b)抗告人は,以上の地震動評価結果(FO-A~FO-B~熊川断層による地震について全56ケース,上林川断層による地震について全18ケース)のうち,基準地震動Ss-1の応答スペクトルを一部周期帯で上回った4つのケースについて,それぞれ基準地震動Ss-2~Ss-5として策定した(乙76,乙139)。 (ウ)原子力規制委員会による審査原子力規制委員会は,抗告人が行った本件各原子力発電所の「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」(前記アの「応答スペクトルに基づく地震動評価」及び上記「断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価」)について,検討用地震ごとに不確かさを考慮して策定しているとして,設置許可基準規則解釈別記2に適合することを確認した(乙14の2)。 ウ不確かさの考慮について(ア)設置許可基準規則等設置許可基準規則解釈は,基準地震動の策定過程に伴う各種の不確かさ(震源断層の長さ,地震発生層の上端深さ・下端深さ,断層傾斜角,アスペリティの位置・大きさ,応力降下量,破壊開始点等の不確かさ,並びにそれらに係る考え方及び解釈の違いによる不確かさ)については,敷地における地震動評価に大きな影響を与えると考えられる支配的なパラメータについて分析した上で,必要に応じて不確かさを組み合わせるなど適切な手法を用いて考慮することを求めている(同規則解釈別記2第4条5項2号⑤)。 また,地震ガイドは,不確かさの考慮について,アスペリティの位置・応力降 下量や破壊開始点の設定等が重要であり,震源モデルの不確かさとして適切に評価されていることを確認すること,また,震源特性(震源モデル),伝播特性(地殻・上部マントル構造),サイト特性(深部・浅部地下構造)における各種の不確かさが含まれ 震源モデルの不確かさとして適切に評価されていることを確認すること,また,震源特性(震源モデル),伝播特性(地殻・上部マントル構造),サイト特性(深部・浅部地下構造)における各種の不確かさが含まれるため,これらの不確実さ要因を偶然的不確実さと認識論的不確実さに分類して,分析が適切になされていることを確認することを求めている(Ⅰ3.3.3(2))。 (イ)抗告人の対応(乙76)a抗告人は,基準地震動の策定において,地震の「標準的・平均的な姿」の分析結果から構築された信頼性のある関係式や手法を用いているものの,地震等の自然現象にばらつきがあることを考慮し,上記関係式や手法を本件各原子力発電所に適用するに当たり,調査結果を踏まえ,敷地周辺の地域性を把握し,起こりうる不確かさを考慮した上で,保守的な条件設定により基準地震動を策定し,これにより自然現象のばらつきに対応した。 b抗告人は,応答スペクトルに基づく地震動評価で用いた耐専式と,断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価で参照した「震源断層を特定した地震の強震動予測手法(『レシピ』)」(乙20)における,地震動評価に大きな影響を与え得るパラメータについて不確かさを考慮し,それぞれ評価を行った。 応答スペクトルに基づく地震動評価では,地震規模と等価震源距離を用いて地震動評価を行うところ,地震規模の設定(松田式)に影響する断層の長さ(①),等価震源距離に影響する地震発生層(震源断層面)の上端深さ(②),アスペリティの位置(③),断層傾斜角(④)が,地震動評価に大きな影響を与え得るため,これらについて不確かさを考慮した評価を行った。 断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価では,地震モーメント(⑤)の設定に影響する断層の長さ,地震発生層の上端・下端深さ(断層の幅),断層傾斜角(傾斜により断層 て不確かさを考慮した評価を行った。 断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価では,地震モーメント(⑤)の設定に影響する断層の長さ,地震発生層の上端・下端深さ(断層の幅),断層傾斜角(傾斜により断層の幅が広がる)や,応力降下量(⑥),短周期の地震動レベル (⑦),アスペリティの位置,破壊開始点の位置(⑧),すべり角(⑨),破壊伝播速度(⑩)等が,地震動評価に大きな影響を与えるため,これらについて不確かさを考慮した評価を行った。 c応答スペクトルに基づく地震動評価においては,断層の長さ(①)について,それに基づいて設定される地震の規模がより大きくなるよう,詳細な調査に基づき,より長く評価した。また,等価震源距離がより短い(近い)設定となるよう,地震発生層の上端深さ(②)について,調査に基づき,より浅く評価するとともに,アスペリティの位置(③)については,詳細な調査によってもその位置を事前に特定することはできないことから,本件各原子力発電所敷地により近い位置に設定した。 抗告人は,更に,震源として考慮する活断層のうちFO-A~FO-B~熊川断層については,アスペリティの位置(③)について,現実に起こるとは想定し難いような配置として,アスペリティを一塊に集めるケースを設定するとともに,等価震源距離の設定に影響する断層傾斜角(④)について,詳細な調査と既往の知見から鉛直(90度)と評価していたものを,原子力発電所敷地に近づくよう,あえて75度に傾斜させるケースを設定した(乙78,乙108)。 d断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価において,断層の長さ(①),地震発生層の上端深さ(②)・下端深さ(断層の幅)について,詳細な調査に基づき保守的に評価して,震源断層面積をより広く設定し,また本件各原子力発電所敷地により近い位置になるように設 層の長さ(①),地震発生層の上端深さ(②)・下端深さ(断層の幅)について,詳細な調査に基づき保守的に評価して,震源断層面積をより広く設定し,また本件各原子力発電所敷地により近い位置になるように設定した。 地震モーメント(⑤),応力降下量(⑥),短周期の地震動レベル(⑦)等について,前記のとおり,断層の長さや幅を保守的に設定したことにより,震源断層の面積は大きくなり,断層の面積に基づいて算定される地震モーメント,応力降下量,短周期の地震動レベル等も,これに合わせて保守的な値となった。 アスペリティの位置(③),破壊開始点の位置(⑧)については,調査によって もその位置を事前に把握することは困難であるため,アスペリティを原子力発電所敷地により近い位置に設定するとともに,破壊開始点については,原子力発電所敷地に地震波が短い時間でより多く重なり合うように,震源断層面又はアスペリティの下端に複数配置した。 抗告人は,更に,短周期の地震動レベル(⑦)について,平成19年新潟県中越沖地震で得られた知見を踏まえ,1.5倍とする,断層傾斜角(④)について,調査と既往の知見から鉛直(90度)と評価していたものを,75度に傾斜させることで,震源断層を更に広く,かつ,本件各原子力発電所敷地に更に近い位置になるようにする,アスペリティの位置(③)について,現実に起こるとは想定し難いような配置として,アスペリティを一塊に集めるケースを設定した。 その上で,抗告人は,「断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価」において大きな影響を与え得るパラメータのうち,断層傾斜角(④),短周期の地震動レベル(⑦),すべり角(⑨),破壊伝播速度(⑩)については,それぞれ独立して不確かさを考慮することとした。 すなわち,上記各パラメータは,その性質上,事前の詳細な調査や,地震に関 ),短周期の地震動レベル(⑦),すべり角(⑨),破壊伝播速度(⑩)については,それぞれ独立して不確かさを考慮することとした。 すなわち,上記各パラメータは,その性質上,事前の詳細な調査や,地震に関する過去のデータによる経験則等から地震発生前におおよそ把握できるものであるが,上記各パラメータについて,既に相当な保守性を持たせた値,場合によっては科学的・専門技術的知見から合理的に考慮できる範囲を超えた値を設定して不確かさの考慮を行っているため,これらの複数のパラメータが同時に基本ケースを超えて大きな値になることは考えにくいことから,それぞれ独立して考慮することとした。 これに対し,アスペリティの位置(③),破壊開始点の位置(⑧)については,性質上,地震発生後の分析等により初めて把握できるものであり,地震発生前の把握が困難(事前の詳細な調査等からは特定が困難)なもの(偶然的な不確かさ)であることから,不確かさを重畳させて考慮することとした(乙16,乙7 8,乙108,乙139)。 (ウ)原子力規制委員会による審査原子力規制委員会は,不確かさを考慮して行った抗告人の地震動評価について,設置許可基準規則解釈別記2に適合することを確認した(乙14の2)。 (5)「震源を特定せずに策定する地震動」の評価ア設置許可基準規則等(ア)設置許可基準規則解釈は,「震源を特定せず策定する地震動」について,震源と活断層を関連づけることが困難な過去の内陸地殻内の地震について得られた震源近傍における観測記録を収集し,これらを基に,各種の不確かさを考慮して敷地の地盤物性に応じた応答スペクトルを設定して策定すること,また,その妥当性については,申請時における最新の科学的・技術的知見を踏まえて個別に確認することと,その際には,地表に明瞭な痕跡を示さない震源 の地盤物性に応じた応答スペクトルを設定して策定すること,また,その妥当性については,申請時における最新の科学的・技術的知見を踏まえて個別に確認することと,その際には,地表に明瞭な痕跡を示さない震源断層に起因する震源近傍の地震動について,確率論的な評価等,各種の不確かさを考慮した評価を参考とすることを求めている(同規則解釈別記2第4条5項3号)。 (イ)地震ガイドは,観測記録の収集に関して,「地表地震断層が出現しない可能性がある地震」と「事前に活断層の存在が指摘されていなかった地域において発生し,地表付近に一部の痕跡が確認された地震」を対象とすることとして,収集対象となる16の内陸地殻内地震を例示している(Ⅰ4.2.1)。 イ抗告人の対応(乙76)抗告人は,設置許可基準規則等の要求事項を踏まえ,「震源を特定せず策定する地震動」について,次のとおり評価を行った。 (ア)加藤研一ほか「震源を事前に特定できない内陸地殻内地震による地震動レベル」(2004)(甲64)で示されている応答スペクトルについて検討した。 加藤研一ほか「震源を事前に特定できない内陸地殻内地震による地震動レベル」(2004)では,日本や米国のカリフォルニアで発生した内陸地殻内地震を対象 に,文献調査,空中写真判読によるリニアメント調査,地表踏査等の詳細な地質学的調査によってもなお,震源位置と地震規模を前もって特定できなかったと考えられる地震を選定し,選定された地震の震源近傍の観測記録等を概ね上回るような地震動の応答スペクトルが示されている。 本件各原子力発電所敷地の地盤はS波速度2.2km/sであるところ,「震源を事前に特定できない内陸地殻内地震による地震動レベル」(2004)では,S波速度2.2km/s以上の地盤についての「地震基盤」の応答スペクトルが設定されてい 波速度2.2km/sであるところ,「震源を事前に特定できない内陸地殻内地震による地震動レベル」(2004)では,S波速度2.2km/s以上の地盤についての「地震基盤」の応答スペクトルが設定されていることから,抗告人は,この応答スペクトルを採用することとした。 (イ)抗告人は,地震ガイドに例示されている16地震について,下記のとおり検討した。 a地震ガイドに例示された16地震(乙33,8頁の表-1)は,兵庫県南部地震を契機として強震動観測網が整備されて以降に国内で発生した内陸地殻内地震から,原子力規制委員会及び多数の専門家による検討の結果,最新の科学的・技術的知見に照らして,「震源を特定せず策定する地震動」において考慮すべき地震として選定されたものである。 b抗告人は,地震ガイドに示された「事前に活断層の存在が指摘されていなかった地域において発生し,地表付近に一部の痕跡が確認された地震」と「地表地震断層が出現しない可能性がある地震」の区別に従い,上記16地震のうち,Mw6.5以上の2地震とMw6.5未満の14地震とに分けて検討を行った。 cMw6.5以上の地震として,地震ガイドは,平成20年岩手・宮城内陸地震と平成12年鳥取県西部地震を示している。 抗告人は,地震ガイドにおいて,「活断層や地表地震断層の出現要因の可能性として,地域によって活断層の成熟度が異なること,上部に軟岩や火山岩,堆積層が厚く分布する場合や地質体の違い等の地域差がある」ことを考慮して個別に検討する必要があるとされている(Ⅰ4.2.1解説(2))ことを踏まえ,これらの地震の震源 域周辺と本件各原子力発電所敷地周辺の地域性等を比較するなどした。 その結果,本件各原子力発電所敷地周辺において,平成12年鳥取県西部地震と同規模の地震を発生させる活断層を事前に見出せな 震源 域周辺と本件各原子力発電所敷地周辺の地域性等を比較するなどした。 その結果,本件各原子力発電所敷地周辺において,平成12年鳥取県西部地震と同規模の地震を発生させる活断層を事前に見出せないことは考えにくいと評価したものの,原子力規制委員会における議論も踏まえ,抗告人は,平成12年鳥取県西部地震の観測記録を採用することとした。そして,平成12年鳥取県西部地震の観測記録は,複数の地点で観測されているが,抗告人は,震源近傍に位置する賀祥ダムでの地震動の観測記録を用いることとした。 賀祥ダムが設置されている地盤は,S波速度が1.2~1.3km/sと速く十分な固さがあるが,本件各原子力発電所敷地の解放基盤表面は,S波速度が2.2km/sと賀祥ダムよりも更に速く固い地盤である。このため,仮に本件各原子力発電所敷地近傍で同様の地震が発生した場合でも,地震波の増幅の程度は賀祥ダムの地盤よりも本件各原子力発電所敷地の地盤の方が小さくなり,その結果,本件各原子力発電所敷地の解放基盤表面で観測される揺れは,この賀祥ダムでの観測記録よりも小さい揺れになると考えられる。 しかし,抗告人は,保守的な観点から,地震動がより大きくなる条件とするために,賀祥ダムにおける観測記録について,地盤の特性による補正等は行わず,観測記録をそのまま用いて応答スペクトルを設定した。 すなわち,設置許可基準規則解釈では,観測記録をもとに,「敷地の地盤物性に応じた応答スペクトルを設定」することが求められている(同規則解釈別記2第4条5項3号)。これは,観測記録から表層の軟らかい地盤の影響を取り除いた上で,原子力発電所敷地の解放基盤表面相当の岩盤での揺れに補正する作業等,観測記録が得られた地盤と原子力発電所敷地の地盤との間における増幅特性(サイト特性)の差異を踏まえた地震動の補正 を取り除いた上で,原子力発電所敷地の解放基盤表面相当の岩盤での揺れに補正する作業等,観測記録が得られた地盤と原子力発電所敷地の地盤との間における増幅特性(サイト特性)の差異を踏まえた地震動の補正作業を行うことを要求するものと解されるが,抗告人は,前記のとおり,保守的な観点から,あえて補正を実施しないこととした。 d上記16地震のうち,Mw6.5未満の14地震については,これらの地震の震 源近傍における観測記録のうち,地盤が著しく軟らかいと考えられる地盤上の記録を,表層の観測点を除外するための「はぎとり解析」の精度の観点から除外し,95の観測記録を抽出した。 そして,これらの観測記録のうち,加藤研一ほか「震源を事前に特定できない内陸地殻内地震による地震動レベル」(2004)の応答スペクトルとの比較において,特に影響が大きいと考えられ,かつ,はぎとり解析により,観測点において地下の岩盤面(基盤面)における地震動を推定するために必要な精度の高い地盤情報が得られている記録は,平成16年北海道留萌支庁南部地震のみであったことから,平成16年北海道留萌支庁南部地震の記録を採用することとした。 平成16年北海道留萌支庁南部地震では,震源近傍の比較的軟弱な地盤の地表面上に地震計が設置されたHKD020(港町観測点)における観測記録があるが,佐藤浩章ほか「物理探査・室内試験に基づく2004年留萌支庁南部の地震によるK-NET港町観測点(HKD20)の基盤地震動とサイト特性評価(2013)」(乙166)では,同観測点におけるボーリング調査やPS検層の結果をもとに,地表から解放基盤表面と評価できる固さを有する岩盤面(基盤面)の深さ(地下41m)までの地下構造を検討・評価した上で,同観測点の基盤面(S波速度938m/s)における地震動の推定がなされてい とに,地表から解放基盤表面と評価できる固さを有する岩盤面(基盤面)の深さ(地下41m)までの地下構造を検討・評価した上で,同観測点の基盤面(S波速度938m/s)における地震動の推定がなされていた(最大加速度は,水平方向585ガル,鉛直方向296ガル)。 評価に当たって,抗告人は,佐藤浩章ほか「物理探査・室内試験に基づく2004年留萌支庁南部の地震によるK-NET港町観測点(HKD20)の基盤地震動とサイト特性評価(2013)」において,震源近傍の観測点における地下構造や地震動の推定について十分検討されていたことに鑑み,上記で推定された地震動を採用することとした。 そうすると,本件各原子力発電所敷地の解放基盤表面(S波速度2.2km/s)は,HKD020(港町観測点)の基盤面(S波速度938m/s)に比べて地震波の伝播速度 が速く,固い地盤であるため,仮に本件各原子力発電所敷地近傍で同様の地震が発生した場合でも,地震波の増幅の程度はHKD020(港町観測点)の地盤よりも本件各原子力発電所敷地の地盤の方が小さくなり,その結果,本件各原子力発電所敷地の解放基盤表面で観測される揺れは,このHKD020(港町観測点)での観測記録よりも小さい揺れになると考えられる。 しかし,抗告人は,より保守的に評価するため,HKD020(港町観測点)の基盤面において推定された地震動を,地盤の特性により補正等することなく採用することとした。 その上で,抗告人は,HKD020(港町観測点)の地下構造(地震波の減衰)についての不確かさを考慮して,基盤面から地表までの間の減衰をより大きく,すなわち基盤面における地震動をより大きく評価し(最大加速度は,水平方向609ガル,鉛直方向306ガルとした),さらに,この地震動の評価結果を保守的により大きく(最大加速度を, の減衰をより大きく,すなわち基盤面における地震動をより大きく評価し(最大加速度は,水平方向609ガル,鉛直方向306ガルとした),さらに,この地震動の評価結果を保守的により大きく(最大加速度を,水平方向を609ガルから620ガルに,鉛直方向306ガルから320ガルに)して,本件各原子力発電所の「震源を特定せず策定する地震動」として評価し,応答スペクトルを設定した(乙139)。 (ウ)抗告人は,以上のように設定した応答スペクトルのうち,加藤研一ほか「震源を事前に特定できない内陸地殻内地震による地震動レベル」(2004)(甲64)による応答スペクトルは,水平・鉛直方向ともに,全周期帯で基準地震動Ss-1の応答スペクトルを下回ったことから採用しなかった。 また,基準地震動Ss-1の応答スペクトルを一部の周期帯で上回った平成12年鳥取県西部地震及び平成16年北海道留萌支庁南部地震による応答スペクトルについては,前者を基準地震動Ss-6とし,後者を基準地震動Ss-7として,それぞれ本件各原子力発電所の「震源を特定せず策定する地震動」として策定した。 以上について,抗告人が,日本原子力学会の「原子力発電所の地震を起因とし た確率論的安全評価実施基準:2007」(以下「実施基準」という。)の方法に基づいて本件各原子力発電所の基準地震動の年超過確率を参照したところ,基準地震動Ss-6及びSs-7の年超過確率は10-4~10-5程度となった(乙170)。 ウ原子力規制委員会による審査原子力規制委員会は,抗告人による本件各原子力発電所の「震源を特定せず策定する地震動」の評価について,過去の内陸地殻内の地震について得られた震源近傍における観測記録を審査し,各種の不確かさ及び敷地の地盤物性を考慮して策定しているとして,設置許可基準規則解釈別記2に適合 定する地震動」の評価について,過去の内陸地殻内の地震について得られた震源近傍における観測記録を審査し,各種の不確かさ及び敷地の地盤物性を考慮して策定しているとして,設置許可基準規則解釈別記2に適合することを確認した(乙14の2)。 (6)基準地震動の策定ア抗告人は,上記「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」の評価結果を総合し,最も厳しい評価結果となったものを採用して,本件各原子力発電所の基準地震動(Ss-1~Ss-7)を策定した。策定した基準地震動の応答スペクトルのうち,最大加速度は,水平方向が基準地震動Ss-1の700ガル,鉛直方向が基準地震動Ss-6の485ガルである(乙76)。 イなお,基準地震動(Ss-1~Ss-7)の具体的数値は次のとおりである(乙76)。 (ア)Ss-1aNS方向700ガルbEW方向700ガルcUD方向467ガル(イ)Ss-2aNS方向376ガルbEW方向248ガル cUD方向334ガル(ウ)Ss-3aNS方向396ガルbEW方向240ガルcUD方向313ガル(エ)Ss-4aNS方向255ガルbEW方向205ガルcUD方向218ガル(オ)Ss-5aNS方向180ガルbEW方向374ガルcUD方向320ガル(カ)Ss-6aNS方向528ガルbEW方向531ガルcUD方向485ガル(キ)Ss-7aNS方向620ガルbEW方向620ガルcUD方向320ガル(7)基準地震動の年超過確率ア設置許可基準規則等設置許可基準規則解釈は,「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」について,それぞれ UD方向320ガル(7)基準地震動の年超過確率ア設置許可基準規則等設置許可基準規則解釈は,「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」について,それぞれが対応する超過確率を参 照し,それぞれ策定された地震動の応答スペクトルがどの程度の超過確率に相当するかを把握することとしている(同規則解釈別記2第4条5項4号)。 地震ガイドは,超過確率を参照する際には,基準地震動の応答スペクトルと地震ハザード解析による一様ハザードスペクトルを比較するとともに,当該結果の妥当性を確認すること等として,一様ハザードスペクトルの作成について,日本原子力学会の「原子力発電所の地震を起因とした確率論的安全評価実施基準:2007」(実施基準)を例示している(Ⅰ6.1及び6.2)。 イ抗告人の対応(乙76)(ア)抗告人は,設置許可基準規則等の要求事項を踏まえ,適宜、実施基準を用いて本件各原子力発電所の基準地震動の年超過確率を参照した(乙170)。 a実施基準は,日本原子力学会の標準委員会が,原子力発電所の安全性と信頼性を確保してその技術水準の維持・向上を図る観点から,原子力発電所の設計・建設・運転・廃止活動において実現すべき技術のあり方を定めた原子力標準の一つであり,その策定に当たっては,標準委員会・発電炉専門部会の下に地震PSA分科会が設置され,さらに地震ハザード評価作業会等の作業会が設けられて,検討の結果,取りまとめられたものである。 これらの委員会,専門部会,分科会,作業会にはそれぞれ学界の有識者・産業界の専門的技術者等が数十名規模で参集し,約3年にわたる議論を重ね,さらには,関係者の意見をパブリックコメントを通じて聴取するなどして,公平,公正,公開の原則を維持しながら審議が行われた。 b原子力規制委員会 術者等が数十名規模で参集し,約3年にわたる議論を重ね,さらには,関係者の意見をパブリックコメントを通じて聴取するなどして,公平,公正,公開の原則を維持しながら審議が行われた。 b原子力規制委員会は,有識者による検討とパブリックコメントを経た上で地震ガイドを策定しているところ,前記aの実施基準を,地震ハザードの解析手法として地震ガイドに採用し(Ⅰ6.1解説(1)),その信頼性を認めている。 (イ)抗告人は,以下の手順により,本件各原子力発電所の基準地震動の年超過確率を参照した。 a本件各原子力発電所の敷地に将来影響を及ぼす可能性のある地震の発生について,地震発生様式を考慮し,対象とする地震の位置,規模,発生頻度が事前にどの程度特定して設定できるかに応じて特定震源モデルと領域震源モデルに分類し,各々の地震の規模,発生頻度等を設定することにより,震源モデルを設定する。 b本件各原子力発電所の周辺地域の震源特性や地震動の伝播特性を考慮して,特定の位置で特定の規模の地震が発生した場合に本件各原子力発電所で生じる地震動強さの確率分布を評価するための地震動伝播モデルを設定する。 c上記モデル設定において選定した本件各原子力発電所の地震ハザード評価に大きな影響を与える不確さの要因によって分岐するロジックツリーを作成する。 d上記ロジックツリーを用いて地震ハザード曲線群を算出し,その結果をもとに一様ハザードスペクトルを作成する。 e上記一様ハザードスペクトルを基準地震動の応答スペクトルと比較することによって,基準地震動の年超過確率を確認する。 f本件各原子力発電所の一様ハザードスペクトルと,基準地震動Ss-1の応答スペクトルを比較したところ,Ss-1の年超過確率は,短周期側では10-4~10-5程度,長周期側では10-5~10-6程度と 本件各原子力発電所の一様ハザードスペクトルと,基準地震動Ss-1の応答スペクトルを比較したところ,Ss-1の年超過確率は,短周期側では10-4~10-5程度,長周期側では10-5~10-6程度となった。 また,基準地震動Ss-6及びSs-7の応答スペクトルと比較したところ,それらの年超過確率は,10-4~10-6程度となった(乙16,乙170,乙171)。 ウ原子力規制委員会による審査原子力規制委員会は,抗告人の地震ハザード評価に基づく一様ハザードスペクトルの作成,基準地震動の年超過確率の参照結果に関して,新規制基準適合性を確認した(乙14の2)。 (8)まとめ以上によれば,抗告人は,本件各原子力発電所の「基準地震動策定」に関する 新規制基準適合性について,新規制基準の策定内容を含めて,不合理な点がないことを,相当の根拠及び資料に基づいて疎明したものといえる。 そこで,相手方らの主張について次に検討する。 (9)基準地震動の策定方法についての基準の定めについてア相手方らの主張新規制基準では,基準地震動の策定方法を抽象的に定めるのみで,「適切に」,「適切な」という文言が頻出するが,何が「適切」かについての判断は原子力事業者に委ねられている。 基準地震動の策定過程に伴う不確かさの考慮についても,考慮する方法を具体的に定めずに「適切に」考慮せよとするのみで,具体的な考慮方法は原子力事業者に任せられているから,「有効な基準」とはいえない。 イ検討原子炉等規制法は,発電用原子炉施設の安全性審査が,高度の科学的・技術的内容にかかわる判断であることを考慮して,審査の主体である原子力規制委員会に対し,審査の判断基準である新規制基準の策定を委任したものといえる。 設置許可基準規則等の新規制基準において「適切」という文言が使用されているの あることを考慮して,審査の主体である原子力規制委員会に対し,審査の判断基準である新規制基準の策定を委任したものといえる。 設置許可基準規則等の新規制基準において「適切」という文言が使用されているのは,原子力規制委員会の委員が,その有する高度の科学的・技術的な専門的知見に基づいて,判断の基準の策定とともに,同基準適合性の判断を,上記専門的知見に基づいて行使することを規定したものといえるから,不合理であるとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (10)基準地震動策定の限界についてア相手方らの主張自然現象を扱う科学の本質的な限界として,地震の予知・予測は著しく困難である。 抗告人が基準地震動を策定する際に用いた手法は,限られた調査結果に基づく 地震動の平均像を求めるものにすぎない。平均像によって原子力発電所の耐震設計をしようとすること自体が誤りである。平均像ではない最大値を考慮すべきである。 イ検討(ア)抗告人が基準地震動を策定するに当たって用いた手法(耐専式,松田式,入倉・三宅式等)は,いずれも過去の地震データ等を統計的に分析(回帰分析)して求めた,パラメータ間における経験的な関係式を,その主要な内容とするものである。 回帰分析とは,多数のデータに基づいて統計的な分析を行い,複数のパラメータ間の最も確からしい関係式(回帰式)を導く手法であり,地震学・地震工学を含む,自然現象を研究の対象とする科学においては,様々な自然現象から基本的な原理・法則・傾向を探求するに当たって,幅広く行われ,科学的な合理性が認められた信頼性のある手法である。 そうすると,抗告人が用いた上記手法も,地震という自然現象についての多数のデータについて,これらのデータに関する複数のパラメータ間の最も確からしい標準的な関係式(回帰 られた信頼性のある手法である。 そうすると,抗告人が用いた上記手法も,地震という自然現象についての多数のデータについて,これらのデータに関する複数のパラメータ間の最も確からしい標準的な関係式(回帰式)を求め,地震という自然現象についての「最も確からしい姿」,換言すれば「標準的・平均的な姿」を明らかにした手法であるといえる。 (イ)上記手法は,いずれも実際に発生した地震の観測結果によって,その適用性が確認されている信頼性がある手法であり,原子力規制委員会も,新規制基準の策定及び同基準適合性判断において,抗告人が上記手法を用いて基準地震動を策定することを是認している。 (ウ)以上によれば,抗告人が上記手法を用いて基準地震動の策定をしたことが不合理であるとはいえない。 (エ)上記手法は「標準的・平均的な姿」を明らかにする関係式であるといえ る。 そうすると,上記手法を本件各原子力発電所敷地における基準地震動の策定に用いるに当たっては,当該敷地の「標準的・平均的な姿」からの「乖離」を考慮すべきであるところ,上記「乖離」の主要なものは,は本件各原子力発電所敷地の「震源特性」に該当する。 本件各原子力発電所については,敷地周辺の地震発生状況,敷地周辺における活断層の分布状況等の地質・地質構造,敷地周辺の地下構造等に関する調査・評価結果から,本件各原子力発電所敷地周辺の「震源特性」に関して,過去の多数の地震の「標準的・平均的な姿」よりも大きくなるような地域性が存する可能性を示すデータが存在するとは認められない。 抗告人は,本件各原子力発電所敷地周辺の「震源特性」についても適切に考慮して基準地震動を策定しており,抗告人の上記手法の適用方法が不合理であるとはいえない。 (オ)したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (11)地震 の「震源特性」についても適切に考慮して基準地震動を策定しており,抗告人の上記手法の適用方法が不合理であるとはいえない。 (オ)したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (11)地震動評価に影響を与える地域特性の評価についてア相手方らの主張(ア)設置許可基準規則3条3項及び同項に係る解釈別記1第3条3項の合理性について断層等が露頭していなかったとしても,それらの断層等が耐震重要施設の設置された地盤にあれば,それらの断層等を原因とした地震により耐震重要施設が設置された地盤にずれが生じる可能性があるにもかかわらず,設置許可基準規則3条3項及び同項に係る解釈別記1第3条3項によれば,耐震重要施設を設置すべきでない地盤を,露頭した断層等のある地盤に限定しており,不十分な基準である。 断層等について,後期更新世以降の活動が認められなくとも,将来活動する可能性が十分認められるのであるから,設置許可基準規則が,「将来活動する可能性のあ る断層等」を,原則として後期更新世以降(約12~13万年前以降)の活動が否定できない断層等に限定していることは,基準として不十分である。 (イ)「震源特性」,「伝播特性」及び「地盤の増幅特性(サイト特性)」について抗告人は,地震動評価に影響を与える地域特性の評価に関して,「震源特性」,「伝播特性」及び「地盤の増幅特性(サイト特性)」を評価したと抽象的に述べるのみで,本件各原子力発電所敷地内の地震観測記録を提出するなどして,具体的に説明していない。 (ウ)平成21年駿河湾地震について平成21年駿河湾地震において,中部電力は,事前に地震動を増幅させる「低速度層」を把握しておらず,「低速度層」の存在が平均像をはるかに超える地震動を生じると認識していなかった。 (エ)地震調査研究推進本部・地震 湾地震において,中部電力は,事前に地震動を増幅させる「低速度層」を把握しておらず,「低速度層」の存在が平均像をはるかに超える地震動を生じると認識していなかった。 (エ)地震調査研究推進本部・地震調査委員会・強震動評価部会の「鳥取県西部地震の観測記録を利用した強震動評価手法の検証」(甲141)について上記論文によれば,平成12年鳥取県西部地震に関して,観測記録を基にして地震動を算出した結果と実際の観測記録との間には大きな乖離がある。 (オ)震源となる断層の評価について既に発生した地震は,現れた地表地震断層により震源断層の長さを推定することができるが,将来発生する地震については,当該断層面が過去に活動したときに生じた地表地震断層の長さから地震規模を推定するしか方法がなく,震源断層の長さが過小評価になりかねない。 (カ)FO-A~FO-B~熊川断層の断層両端の把握についてFO-A~FO-B~熊川断層の断層両端の把握について,海域での活断層調査は困難であり,FO-B断層の端を捉えるのは容易ではない。また,上林川断層の東側端部を延長しなかった理由が明らかでないし,同断層の西側端部が把握 できたとは考えられない。 (キ)亀高正男ほかの「京都府北部,上林川断層の横ずれインバージョン」(甲257の1)について上記論文によると,上林川断層の北東端は本件各原子力発電所の敷地の南東約9㎞のおおい町笹谷付近まで追跡できる。抗告人の上林川断層の北東端の確認は保守的であるとはいえない。 イ検討(ア)設置許可基準規則3条3項及び同項に係る解釈別記1第3条3項の合理性「将来活動する可能性のある断層等」と評価すべき年代について,原子力規制委員会は,「我が国の活断層の活動周期がおおむね千年から長いもので5~10万年程度であると考えられていること」等か 3項の合理性「将来活動する可能性のある断層等」と評価すべき年代について,原子力規制委員会は,「我が国の活断層の活動周期がおおむね千年から長いもので5~10万年程度であると考えられていること」等から設定したとしており,米国の基準については,「米国NRCの基準では,活断層は3万5千年前以降に一度動いたもの,又は50万年前以降に複数回動いているものとなっています」としつつも,「国際原子力機関(IAEA)が各国に示している基準によると,地震活動が活発ではない地域では,数百万年単位で断層の活動可能性を評価することが望ましいとされていますが,我が国のように地震活動が活発な地域では,数万年単位で断層の活動可能性を評価することとされています。国や地域により地殻変動様式や活断層の活動周期等に違いがあることから,我が国の特徴を踏まえた上で基準化するのが適切である」との見解を示している(乙87の2)。 そうすると,新規制基準の規定内容は,我が国の活断層の活動周期等を踏まえたものであるといえる(乙118)。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (イ)「震源特性」,「伝播特性」及び「地盤の増幅特性(サイト特性)」本件各原子力発電所敷地及び敷地周辺の地盤の増幅特性を評価する上で重要となるのは,敷地地盤の速度構造を把握し,地震波の局所的な集中を生じさせるよ うな特異な速度構造がないことを確認することである。 その際必ずしも強震動の観測記録による必要はなく,他の方法により敷地地盤の地中を伝播する地震波を観測,分析することによって把握できる。 前記のとおり,抗告人は,PS検層,試掘坑弾性波探査,反射法地震探査,地震波干渉法,微動アレイ観測といった多様な手法を用いて,発振器又は震源車により人工的に生じさせた弾性波や常時微動を観測,分析することにより り,抗告人は,PS検層,試掘坑弾性波探査,反射法地震探査,地震波干渉法,微動アレイ観測といった多様な手法を用いて,発振器又は震源車により人工的に生じさせた弾性波や常時微動を観測,分析することにより,本件各原子力発電所敷地及び敷地周辺における地震波の速度構造を評価している。 また,原子力規制委員会は,本件各原子力発電所敷地及び敷地周辺の地下構造の評価に関して,抗告人が用いた手法は地震ガイドに適合しているとして,新規制基準適合性を判断している(乙14の2)。 そうすると,地盤の増幅特性(サイト特性)を評価するに当たっては,必ずしも強震動の観測記録がなければならないというものではなく,他の科学的方法により地域特性を合理的に把握することができるといえる。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (ウ)平成21年駿河湾地震新規制基準においては,平成19年新潟県中越沖地震や平成21年駿河湾地震から得られた「特異な地下構造によって地震動が増幅するとの知見」を踏まえ,地層の傾斜,断層及び褶曲構造等の地質構造や,地震波の速度構造等の地下構造の詳細な評価が新たに要求されることになった(乙141)。 このように,新規制基準は,上記の評価を詳細に実施することにより,地震動の増幅要因となる特異な地下構造の有無を確認しているといえる。 抗告人は,新規制基準の上記要求事項を踏まえ,本件各原子力発電所敷地及び敷地周辺の地下構造について,多角的で詳細な評価及び検討を行い,地震動を増幅させるような特異な構造がないことを確認している。 そうすると,相手方らの主張は,本件各原子力発電所の地下構造の調査及び検 討について,その妥当性を否定するような具体的な問題事項を指摘するものとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 なお,上記の「低 原子力発電所の地下構造の調査及び検 討について,その妥当性を否定するような具体的な問題事項を指摘するものとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 なお,上記の「低速度層」の存在といった,浜岡原子力発電所における地盤の増幅特性(サイト特性)に関する指摘は,立地条件の異なる本件各原子力発電所に当てはまるものではなく,この点からみても,相手方らの主張を採用することができない。 (エ)地震調査研究推進本部・地震調査委員会・強震動評価部会の「鳥取県西部地震の観測記録を利用した強震動評価手法の検証」(甲141)上記論文は,強震動評価手法の妥当性やその基盤となる震源の特性化(モデル化)手法の有効性について考察したものであり,その結果として,「パラメータを的確に設定できれば,複雑な震源特性をアスペリティ領域と背景領域の2つの領域に単純化しても地震波形(速度波形)をある程度再現でき,震源の特性化手法の有効性が確認できた」,「アスペリティの位置や破壊開始点の位置が概ね合っていれば,地点の位置にもよるが,現状の強震動評価手法においてスペクトルレベルではある程度観測記録を説明できることが確認できた」(12頁)として,この検証結果により,「強震動評価手法の妥当性や震源特性化手法そのものの妥当性が検証できたことになる。」としている(2頁)。 このように,上記論文は,強震動評価手法の妥当性や,震源特性化手法の有効性を確認したものであり,相手方らの主張を根拠付けるものとはいえない。 なお,この検証は,平成14年に行われたものであるが,地震調査研究推進本部・地震調査委員会の「震源断層を特定した地震の強震動予測手法(『レシピ』)」(乙20)は,その後の研究成果の積み重ねの上に作成されたものである上,抗告人は,単に上記レシピに則るだけでな 研究推進本部・地震調査委員会の「震源断層を特定した地震の強震動予測手法(『レシピ』)」(乙20)は,その後の研究成果の積み重ねの上に作成されたものである上,抗告人は,単に上記レシピに則るだけでなく,震源断層を保守的に広く設定した上で,アスペリティを本件各原子力発電所敷地近くに配置し,さらに,本件各原子 力発電所へ到達する地震動が大きくなるように破壊開始点を震源断層やアスペリティの下端に複数配置して評価を行うなど,保守的な条件設定を重ねた上で基準地震動を策定している。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (オ)震源となる断層の評価について本件各原子力発電所敷地の周辺地域は,明瞭な活断層が本件各原子力発電所の周囲に分布し,活断層に関連付けられる地震も数多く見られることが確認されており,震源断層が地表地震断層として地表に現れている地域である。すなわち,1回の地震では,地中の震源断層と同じ長さの地表地震断層が出現するとは限らないが,活断層は繰り返し地震を起こすことで,長い年月の間に地表に現れた地盤のずれやたわみが蓄積して,明瞭な痕跡が現れるようになり,地表に現れたこのような地形を調査することで活断層を把握できると考えられている(乙143,乙144)。 そして,前記のとおり,抗告人は,本件各原子力発電所敷地周辺の活断層について,詳細な調査を行い,その結果に基づいて,十分な保守性をもって活断層の長さを把握しているといえる。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (カ)FO-A~FO-B~熊川断層の断層両端の把握前記のとおり,抗告人は,海域において,海上音波探査,ボーリング調査等の調査技術を適切に組み合わせて活断層調査を実施しており,海上音波探査については,調査範囲内の活断層を正確に把握できる測線配置となっ 記のとおり,抗告人は,海域において,海上音波探査,ボーリング調査等の調査技術を適切に組み合わせて活断層調査を実施しており,海上音波探査については,調査範囲内の活断層を正確に把握できる測線配置となっているとともに,調査深度(浅部又は深部)に応じて音源を使い分けるなど目的に応じた調査仕様とし,さらに,得られたデータからノイズ等を適切に除去できるなど信頼性の高いデータ処理技術を用いている。その上で,抗告人は,FO-A~FO-B断層について,詳細な調査に基づき,断層の存在を明確に否定できる箇所を端部として,FO-A~FO-B断層の長さを約35kmと設定している。 抗告人は,陸域において,地表地質調査,ボーリング調査,トレンチ調査,反射法地震探査等を実施し,震源として考慮する活断層の存在が確認されれば,断層の存在を明確に否定できる場所を確認している。その上で,抗告人は,上林川断層の北東端及び南西端について,活断層がそれ以上延長しないことが確認できる場所を端部としている。 相手方らは,池田安隆の「変動帯に立地する原子力関連施設の耐震安全性評価に関わる地質学的問題」(甲138)を援用して,被害を起こすような規模の内陸直下型地震を発生させる断層は,顕在活断層以外にも上部地殻内に多数伏在しており,断層面の上端が地下浅部(数km以浅)まで達している断層(浅部伏在断層)は物理探査やボーリング調査等によって位置や活動性を評価できる可能性があるが,より深部に伏在する断層については評価できないと主張する。 しかし,上記論文は,相手方らが援用する箇所に続けて,「日本列島の伏在活断層のマッピングはまだ十分行われていないので,その全貌はわからない。」としながらも,「規模の大きな地震(島﨑によればM7.5以上)は,震源断層面の大きさが地震発生層の厚さに比べて十分大 島の伏在活断層のマッピングはまだ十分行われていないので,その全貌はわからない。」としながらも,「規模の大きな地震(島﨑によればM7.5以上)は,震源断層面の大きさが地震発生層の厚さに比べて十分大きいから,断層面が地表まで達している可能性が高い。 したがって,地形・地質学的方法で認識される活断層(顕在断層と浅部伏在断層)以外に,規模の大きな内陸型直下地震(M7.5以上)の発生源となり得る深部伏在断層が存在する可能性は,一般的には小さいと言ってよいだろう。」としているから,深部に伏在する断層が調査対象とされないからといって,規模の大きな地震(M7.5以上)の評価が困難であることを根拠づけるものとはいえない。 また,本件各原子力発電所敷地周辺地域は,明瞭な活断層が本件各原子力発電所の周囲に分布し,活断層に関連付けられる地震も数多く見られるところ,このような地域では,活断層が繰り返し地震を起こすことで,長い年月の間に地表に現れた地盤のずれやたわみが蓄積して,明瞭な痕跡が現れるようになり,地表に現れたこのような地形を調査することで活断層を把握できるといえるところ,抗告人は,前 記のとおり,詳細な調査に基づき,保守的に,確実に活断層がないと確認できる地点まで端部を延長し,震源断層の長さにつき,保守的な評価を行っているから,抗告人の断層両端の評価が相当でないとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (キ)亀高正男ほかの「京都府北部,上林川断層の横ずれインバージョン」(甲257の1)上記論文は,「上林川断層(活断層)」,「活断層としての上林川断層」という文言を用いる一方,「上林川断層(地質断層)」,「地質断層としての上林川断層」という文言が用いており,「活断層」と「地質断層」とを明確に使い分けて用いている。 抗告人は 層としての上林川断層」という文言を用いる一方,「上林川断層(地質断層)」,「地質断層としての上林川断層」という文言が用いており,「活断層」と「地質断層」とを明確に使い分けて用いている。 抗告人は,確実に活断層が存在しないと確認できた県境付近を上林川断層の北東端としているところ,相手方らは,上記論文を根拠として,「上林川断層」は,この北東端を通過し,北東方向に延びると想定されると主張する。 しかし,抗告人は,上林川断層の北東端よりも北東側では,この断層に沿ってリニアメント(前記のとおり,断層が繰り返し活動すること等により,谷や尾根において,その傾斜が急変したり,横ずれしたりする地形的な特徴が現れ,このような特徴が直線,又は直線に近い状態で配列することが知られており,このような断層活動等に伴う変動地形の可能性のある地形をリニアメントという。)が認められないことや,上記北東端地点の露頭した岩盤に見られる断層面に,後期更新世以降(約12~13万年前以降)の活動が認められないこと等を確認したことに基づいて,相手方らが指摘する断層は活断層ではないと評価していることが認められる(乙132)。 なお,「京都府北部,上林川断層の横ずれインバージョン」(甲257の1)には,「変形ステージとして古い順に,D1:右横ずれ・逆断層センス,D2:左横ずれ・逆断層センス,D3:右横ずれ・正断層センスの変形構造がみられた」,「D3は伸張場での形成が示唆され,第三紀における活動と考えられる」との記載 があるが,「地質断層としての上林川断層」の最新の活動は,右横ずれ・正断層センス(センスとは,断層面の動く方向をいう。)であり,第三紀(約6600万年前~約260万年前)における活動と考えられるところ,活断層としての上林川断層は後期更新世以降(約12~13万年前以降) センス(センスとは,断層面の動く方向をいう。)であり,第三紀(約6600万年前~約260万年前)における活動と考えられるところ,活断層としての上林川断層は後期更新世以降(約12~13万年前以降)も活動している右横ずれ・逆断層センス(乙132)であり,両者は一致しないことからすると,上記記載は,「地質断層としての上林川断層」が活断層に当たらないことを記述しているものといえる。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (12)敷地ごとに震源を特定して策定する地震動についてア応答スペクトルに基づく地震動評価について(ア)耐専式についてa相手方らの主張内陸地殻内地震の観測値と耐専式による推定値を比較すると相当のばらつきがあり,若狭湾周辺地域におけるQ値(減衰定数)の評価を踏まえ,サイト特性に特異な構造を認めなかったとしても,ばらつき原因を全て把握していないのであれば,耐専式の適用に問題がある。 b検討耐専式については,日本電気協会の原子力発電耐震設計専門部会において,平成11年に策定されて以降,観測データを用いて適用性の検証,確認が継続的に行われており,独立行政法人原子力安全基盤機構(当時,以下「原子力安全基盤機構」という。)においても,「平成18年度原子力施設等の耐震性評価技術に関する試験及び調査活断層及び地震動特性に関する調査・解析に係る報告書」(乙156)において,平成18年に発生した地震の観測記録と耐専式による評価結果との比較により,その適用性が確認されている。 また,地震動の大きさを左右するのは,地震の震源特性,地震波の伝播特性,地盤の増幅特性(サイト特性)であることからすると,相手方らが指摘する観測 値と耐専式による推定値とのばらつきは,これらの特性が反映されたものとみるべきである。 本件各原 ,地震波の伝播特性,地盤の増幅特性(サイト特性)であることからすると,相手方らが指摘する観測 値と耐専式による推定値とのばらつきは,これらの特性が反映されたものとみるべきである。 本件各原子力発電所敷地及び敷地周辺の地域特性について,抗告人が調査に基づいて評価した結果,本件各原子力発電所の敷地の地下構造としては,敷地浅部にはS波速度が2.2km/s程度の硬質な岩盤がほぼ均質に広がっており,敷地深部の速度構造についても地盤の特異な構造の影響は見られず,過去の多数の地震の「標準的・平均的な姿」よりも大きくなるような特異な構造が見られないことが確認されている。 また,伝播特性についても,影響の大きい幾何減衰には地域性がないし,内部減衰に関する本件各原子力発電所周辺の媒質(岩石等)に固有の値(Q値)は,既往の研究成果から50fと設定されており,これは国内における平均的な値であるところ,過去の多数の地震の「標準的・平均的な姿」よりも大きくなるような地域性が存する可能性を示すデータは特段得られていない。 これに加えて,抗告人は,前記のとおり,地震動が大きくなるような保守的な条件設定により地震動評価を行い,基準地震動を設定している。その結果,FO-A~FO-B~熊川断層及び上林川断層の耐専式による地震動評価結果をもとに策定した基準地震動Ss-1の地震動のレベルは,各断層の保守的な条件設定を想定しない場合に比べ,約2~5倍(水平方向)となっていると認められる(乙108)。 以上によれば,抗告人が耐専式を採用したことや,その適用方法に不合理な点があるとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (イ)松田式についてa相手方らの主張(a)「応答スペクトルに基づく地震動評価」の際に,耐専式による評価で必要 となる いえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (イ)松田式についてa相手方らの主張(a)「応答スペクトルに基づく地震動評価」の際に,耐専式による評価で必要 となる地震の規模(マグニチュード)を算定するために用いる松田式は,わずか14地震のデータを回帰分析して得られた平均値に過ぎず,そのデータもマグニチュード1前後(約32倍)の範囲でばらついているため,全くの参考値に過ぎない。これをもとに耐震設計をすることは許されない。 (b)抗告人の検証結果によっても,松田式から大きく乖離したデータが存在しており,地震ガイドの「経験式が有するばらつきも考慮されている必要がある」との定めに違反している。 (c)地震調査研究推進本部の地震調査委員会は,「地表に見えている断層の長さは,複数回の地震による痕跡がつながってできたものである可能性もあれば,地中の震源断層の一部が現れている可能性もあり,断層の長さから求められる地震の規模の推定値には大きな不確実性が含まれると考えられる」から,「松田式を用いて地震規模を設定する際には,・・・不確実性を考慮することが望ましい」と述べていることからすると,松田式から得られた値をそのまま用いることは,地震調査委員会の考え方を否定するものである。 b検討(a)松田式は,松田時彦東京大学名誉教授が「活断層から発生する地震の規模と周期について」(1975)(乙94)で提案した,活断層長さLと地震のマグニチュードMとの関係を表す経験式である。松田式を用いることで,活断層の長さからその活断層が起こす地震の規模を求めることができる。 抗告人が各種調査を行って評価しているのは,震源断層の長さであり,震源断層の長さLから松田式を用いてマグニチュードMを求めている。 抗告人は,松田式を適用するに当たり, 震の規模を求めることができる。 抗告人が各種調査を行って評価しているのは,震源断層の長さであり,震源断層の長さLから松田式を用いてマグニチュードMを求めている。 抗告人は,松田式を適用するに当たり,松田式の基となった14地震について,最新の知見に基づいて見直されたマグニチュードMの値を基に改めて検証しており,これら14地震のデータが松田式に良く整合していることが確認されており(乙95),その信頼性は高い。また,松田式は,地震調査研究本部の「震源断層 を特定した地震の強震動予測手法『レシピ』」及びその改訂版及び修正版(甲267,乙20,乙370)において,地震の規模を求めるための関係式として引用されるなど,活断層と地震の規模(マグニチュードM)との関係式として,その信頼性が一般的に認められている。 (b)上記レシピのうちの平成28年6月改訂版(甲267)及び同年12月修正版(乙370)には,松田式について「活断層長さがおおむね80kmを超える場合は,松田(1975)の基になったデータの分布より,松田(1975)の適用範囲を逸脱するおそれがあるため,・・・過去の地震の例を参考にしながら,適宜適切な方法でマグニチュード(地震モーメント)を算定する必要がある。」との註記をしている。 また,地震調査研究本部の「『活断層の長期評価手法』報告書」(平成22年11月25日,乙371)は,「従来の長期評価においては,活断層で発生する地震の規模は,原則として松田(1975)の経験式を用いて断層の長さもしくは1回のずれの量に基づき算出されている。しかし,この経験式は,過去に生じた地表地震断層などのデータを基本とした断層長とマグニチュードの関係式であるが,長さ20km(M7.0に相当)から80km(M8.0に相当)の範囲のデータから導かれたものであり, 験式は,過去に生じた地表地震断層などのデータを基本とした断層長とマグニチュードの関係式であるが,長さ20km(M7.0に相当)から80km(M8.0に相当)の範囲のデータから導かれたものであり,20km未満の活断層に適用する際には,その他の情報を含めて地震規模を想定する必要がある。」としている。 しかし,本件各原子力発電所における検討用地震の断層であるFO-A~FO-B~熊川断層及び上林川断層は,いずれも20kmを超える長さの断層であるから(前者は評価上の断層長さ63.4km,後者は同39.5km),松田式についての上記問題点を考慮しても,松田式を用いた本件各原子力発電所の地震動の評価の妥当性が損なわれるとはいえない。 (c)抗告人は,前記のとおり,松田式を適用する基となる断層長さについて,より安全側に長くなるように考慮している。具体的には,FO-A~FO-B~熊川断層について,FO-A~FO-B断層と熊川断層の両断層について,より 安全側に考えて,断層の存在が確認されていない区間(約15km)を含めて,FO-A~FO-B断層(約35km)と熊川断層(約14km)との連動(3連動)(63.4km)を考慮した。また,上林川断層についても,断層の存在が明確な範囲は約26kmであるが,西端部が不明瞭であることから,断層の存在を明確に否定できる福知山市付近まで延長して,安全側に39.5kmと評価した。 抗告人が,このように断層長さを安全側に考えて評価した結果,活断層の長さから想定される地震の規模は,FO-A~FO-B断層の2連動のみ(35km)ではマグニチュード7.4であるのに対し,3連動を考慮したFO-A~FO-B~熊川断層(63.4km)ではマグニチュード7.8となり,また,上林川断層も,26kmではマグニチュード7.2であるのに対 ではマグニチュード7.4であるのに対し,3連動を考慮したFO-A~FO-B~熊川断層(63.4km)ではマグニチュード7.8となり,また,上林川断層も,26kmではマグニチュード7.2であるのに対して,39.5kmではマグニチュード7.5の評価となっている。 以上によれば,松田式に基づく抗告人の地震規模(マグニチュードM)の評価が過小であるとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (d)抗告人は,前記のとおり,松田式の基となった14地震について,最新の知見に基づいて改めて検証し,震源断層の長さと地震規模(マグニチュードM)が松田式に良く整合していることを確認している(乙94,乙95)。 また,本件各原子力発電所敷地周辺地域は,活断層が繰り返し活動していることが確認されており,震源断層が地表地震断層として現れている地域であるところ,このような地域では,地表に現れた活断層の明瞭な痕跡を調査することで活断層を把握できると考えられている。 そうすると,抗告人が,これらの知見や調査結果を踏まえ,保守的に余裕をもって震源断層の長さを設定した上で,断層の長さから松田式を用いて地震の規模を求め,それをもとに耐専式によって地震動評価をしたことは,妥当な判断であるといえるし,抗告人は,松田式のばらつきを考慮した上で,十分な調査結果を 保守的にその適用して,地震動評価をしたものといえる。 原子力規制委員会も,本件各原子力発電所の応答スペクトルに基づく地震動評価について,新規制基準や地震ガイド等の要求事項を踏まえて適切に地震動評価を行ったものであることを確認している。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (e)地震調査委員会の「地表に見えている断層の長さは,複数回の地震による痕跡がつながってできたものである可能 たものであることを確認している。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (e)地震調査委員会の「地表に見えている断層の長さは,複数回の地震による痕跡がつながってできたものである可能性もあれば,地中の震源断層の一部が現れている可能性もあり,断層の長さから求められる地震の規模の推定値には大きな不確実性が含まれると考えられる」(甲139)との指摘は,地表地震断層から震源断層を把握する際には不確実さが伴うことを一般的に述べたものである。 本件各原子力発電所の敷地周辺地域は,活断層が繰り返し活動していることが確認されており,震源断層が地表地震断層として現れている地域であり,このような地域では,地表に現れた明瞭な痕跡を調査することで活断層を把握できると考えられている。 また,抗告人は,本件各原子力発電所敷地周辺の活断層について,詳細な調査により十分な保守性をもってその長さを把握しており,その上で,松田式を適用して地震の規模を算出している。 そうすると,抗告人は,地震調査委員会の指摘する不確実さを十分に考慮した上で,地震動評価をしているといえる。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 イ断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価について(ア)相手方らの主張a入倉・三宅式入倉・三宅式は,入倉孝次郎及び三宅弘恵が「シナリオ地震の強震動予測」(乙158)で提唱した断層面積(S)と地震モーメント(Mo)との関係式である。 抗告人は,断層面積から地震モーメントを求める際に入倉・三宅式を用いているが,入倉・三宅式は,震源断層面の位置形状を十分に把握した上で定式化されているものではない。 入倉・三宅式は,武村雅之の「日本列島における地殻内地震のスケーリング則-地震断層の影響及び地震被害との関連-」(乙161)の提唱する関係 位置形状を十分に把握した上で定式化されているものではない。 入倉・三宅式は,武村雅之の「日本列島における地殻内地震のスケーリング則-地震断層の影響及び地震被害との関連-」(乙161)の提唱する関係式(武村式)に比べて地震モーメントの過小評価をもたらすことは明らかであるから,武村式を用いて基準地震動を策定すべきである。 b応答スペクトルに基づく地震動評価結果との比較本件各原子力発電所の応答スペクトルに基づく地震動評価結果に比べて,断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価結果の加速度が小さいのは,断層モデルを用いた手法自体に根本的な欠陥があるか,用いられているパラメータが恣意的であることを示している。 cアスペリティの応力降下量の設定抗告人は,アスペリティの応力降下量の設定について,FO-A~FO-B~熊川断層による地震に係る評価において3.1MPaの一定値に固定し,不当に小さく評価している。 地震調査研究推進本部地震調査委員会は「震源断層を特定した地震の強震動予測手法(「レシピ」)」(乙20)を平成28年6月に改訂したが,同改訂により,「静的応力降下量を3.1MPaとする取扱いは,暫定的に,断層幅と平均すべり量とが飽和する目安となるMo=1.8×1020(N・m)を上回る断層の地震を対象とする。」こととされ,これに該当しないのに上記取扱いをしている抗告人の評価の不当性が明らかとなった。 3.1MPaの値を用いない場合には,断層全体の平均応力降下量は3.1MPaから4.2MPaに,アスペリティの応力降下量は14.1MPaから19.0MPaになり,最終的な地震動は,約1.5倍に,改訂レシピに従って地震規模を松田式で評価した場合は約1.9 倍になると推定されている(甲268)。 d統計的グリーン関数法統計的グリーン関数法に基づく り,最終的な地震動は,約1.5倍に,改訂レシピに従って地震規模を松田式で評価した場合は約1.9 倍になると推定されている(甲268)。 d統計的グリーン関数法統計的グリーン関数法に基づく減衰式は,多数の地震の伝播過程の平均像でしかなく不確かさがあるのに,これが考慮されていない。 e標準偏差(σ)からのばらつきの考慮森本・富樫断層帯をモデルに強震動予測結果のばらつきを評価した結果(甲148の3)によると,一部のパラメータに限定しても標準偏差(σ)から倍半分程度のばらつきがある。本件各原子力発電所の地震動評価においては,2σ,3σを考慮すべきである。 (イ)検討a入倉・三宅式(a)入倉・三宅式について(乙158,乙326)①活断層に起因する地震に関する研究の進展により,地震動を生じさせるのは,地下にある断層面(震源断層面)の動きであって,地表に現れる断層の変位(地表地震断層)は,震源断層面の運動の結果にすぎず,地表地震断層の動きのみから断層運動全体を特性化する(特定の活断層についてモデル化する)ことは困難であることが明らかにされた。 その上で,強震動を予測する上で重要なのは断層運動と強震動の関係にあるところ,震源断層に適当なすべり分布と破壊伝播を想定して求められる強震動と実際の地震観測記録とを比較することで大地震の破壊過程を推定する,震源インバージョンの研究が発展したことで,大地震のときには,震源断層面の全ての部分が一様に同じずれ幅・向きでずれるのではなく,震源断層面上のすべり分布は不均質である(大きくずれる部分もあればそうでない部分もある)ことや,地震災害に関係する強震動の生成はこの断層運動の不均質性によるものであることが明らかになってきた。なお,「インバージョン」とは,データ処理技術の一つであり,結果を用いてそ でない部分もある)ことや,地震災害に関係する強震動の生成はこの断層運動の不均質性によるものであることが明らかになってきた。なお,「インバージョン」とは,データ処理技術の一つであり,結果を用いてその要因を解析的に推定する方法であることから,「逆解析」とも呼称されるもの である。また,「震源インバージョン」とは,地震のデータ(結果)を用いて,当該地震の震源断層(要因)のパラメータ(すべり量の分布等)を推定(逆解析)する手法であり,推定に用いるデータには,地震波の観測記録や,地表の変位のデータ等があるが,特に地震波の観測記録(波形)から推定する場合には,「波形インバージョン」と呼称される。 そして,地震災害軽減のために必要とされる強震動を評価するためには,断層の長さや幅など,断層運動の外的な要素を表す巨視的断層パラメータと同時に,震源断層面での不均質なすべり分布,すなわちアスペリティの分布のような微視的断層パラメータがより重要になることが明らかにされた。 ②入倉孝次郎・三宅弘恵の「シナリオ地震の強震動予測」(2001,乙158)は,上記のような科学的知見に基づき,強震動予測の方法論(強震動予測のレシピ)として,巨視的断層パラメータ(震源断層の位置,長さ,幅,地震モーメント等),微視的断層パラメータ(アスペリティの位置,大きさ,アスペリティ及び背景領域〔アスペリティ以外の領域〕の応力降下量等)等の設定方法を提案するものである。 ③入倉・三宅式は,その「強震動予測のレシピ」(乙158)において,震源断層面上のすべり分布は不均質であることを前提として,「強震動データを用いた波形インバージョン」,すなわち震源インバージョン等に基づいて,震源断層面積(S)と地震モーメント(Mo)の関係を表す関係式として,下記のとおり示されている(乙158, して,「強震動データを用いた波形インバージョン」,すなわち震源インバージョン等に基づいて,震源断層面積(S)と地震モーメント(Mo)の関係を表す関係式として,下記のとおり示されている(乙158,861頁,図8)。 S=4.24×10-11×Mo1/2(Mo≧7.5×1025dyne・cmの場合)1dyne・cm=1×10-7N・mであるので,「7.5×1025dyne・cm」は「7.5×1018N・m」と同じ値である。 なお,本件各原子力発電所の検討用地震である,FO-A~FO-B~熊川断層による地震(5.03×1019N・m)及び上林川断層による地震(1.95×1019N・m)は,いずれもMo≧7.5×1025dyne・cmの場合に当たる。 (b)震源断層を特定した地震の強震動予測手法(「レシピ」)との関係について①地震調査研究推進本部のレシピは,同本部の地震調査委員会において実施してきた強震動評価に関する検討結果から,強震動予測手法の構成要素となる震源特性,地下構造モデル,強震動計算等の手法や震源特性パラメータ(震源断層パラメータ)の設定に当たっての考え方を取りまとめたものである(甲267,乙20,乙370)。 ②上記レシピは,入倉孝次郎・三宅弘恵の「シナリオ地震の強震動予測」(2001)の強震動予測の方法論を採り入れ,強震動を予測するための震源断層モデルについては,「断層の不均質性を示す微視的震源特性」を考慮したモデルを採用している。 上記レシピは,震源断層モデルにおける震源特性パラメータ,すなわち震源断層モデルの長さ,幅,面積及び地震の規模(地震モーメント)等について,「(ア)過去の地震記録などに基づき震源断層を推定する場合や詳細な調査結果に基づき震源断層を推定する場合」(乙20,付録3-3頁)の設定方法(以下「( 面積及び地震の規模(地震モーメント)等について,「(ア)過去の地震記録などに基づき震源断層を推定する場合や詳細な調査結果に基づき震源断層を推定する場合」(乙20,付録3-3頁)の設定方法(以下「(ア)の方法」という)を提案しているところ,入倉・三宅式は,「(ア)の方法」において,震源断層面積(S)から地震モーメント(Mo)を求めるための関係式として採用されている(甲267・4頁・(3)式,乙20・付録3-4頁・(3)式,乙370・4頁・(3)式)。 なお,上記「(ア)過去の地震記録などに基づき震源断層を推定する場合や詳細な調査結果に基づき震源断層を推定する場合」(乙20)は,最新のレシピでは,「(ア)過去の地震記録や調査結果などの諸知見を吟味・判断して震源断層モデルを設定する場合」(乙370)と記載されている。 (c)本件各原子力発電所の地震動評価の際の入倉・三宅式の適用①本件各原子力発電所の基準地震動の策定においては,震源として考慮する活断層の評価に当たって,調査地域の地形・地質条件に応じ,既存文献の調査,変動地形学的調査,地質調査,地球物理学的調査等の特性を活かし,これらを適切に組 み合わせた調査を実施した上で,その結果を総合的に評価し活動層の位置・形状・活動性等を明らかにすることが要求されている(設置許可基準規則解釈別記2第4条5項2号②)。 そのため,前記のとおりの調査・評価から得られた詳細な活断層の情報をより直接的に地震動評価に反映できる,「(ア)の方法」が採用され,地震モーメントの算定に入倉・三宅式を適用すべきものとされている(乙376)。 ②抗告人も,本件各原子力発電所の基準地震動を策定するに当たっては,敷地周辺の地域性を踏まえ,活断層を詳細に調査し,震源断層の位置・形状等を適切に評価できていることから,「(ア いる(乙376)。 ②抗告人も,本件各原子力発電所の基準地震動を策定するに当たっては,敷地周辺の地域性を踏まえ,活断層を詳細に調査し,震源断層の位置・形状等を適切に評価できていることから,「(ア)の方法」を参照して地震動評価を行い,地震モーメント(Mo)の算定に入倉・三宅式を適用している。 (d)島﨑邦彦氏の主張島﨑氏は,「最大クラスではない日本海『最大クラス』の津波-過ちを糺さないままでは『想定外』の災害が再生産される」と題する論文(甲260の2)において,入倉・三宅式について,以下の問題があり,他の関係式と比べて地震モーメントを過小に評価することから,地震動の推定には用いるべきではないと主張している。 ①関係式の問題断層面が垂直又は垂直に近い場合,入倉・三宅式から得られる地震モーメントの値は,武村式等から得られる値の1/3.5~1/4程度と,はるかに小さくなる。 ②震源断層の把握の問題断層の面積や長さは,地震発生後に確定するもので,その値は,事前に推定できる値と等しいとは限らないし,実際には事前の推定値より大きくなることがある。 (e)島﨑氏の主張の検討(関係式の問題)①他の関係式との比較入倉・三宅式や武村式は,それぞれ異なる観点から,異なる既往の研究結果や地震観測記録等に基づいて,経験的・帰納的に得られた関係式であるから,それらを 比較するに際して各関係式に与える断層長さ,震源断層面積は,各関係式の成り立ちを踏まえたものでなければならない。 入倉・三宅式は,震源断層面上のすべり分布は不均質であることを前提として,震源インバージョン等をもとに震源断層面積と地震モーメントの関係を表したものであるが,その妥当性について検証が行われており,平成7年以降に国内で発生した内陸地殻内地震の記録を基に震源インバージョンで得られ ンバージョン等をもとに震源断層面積と地震モーメントの関係を表したものであるが,その妥当性について検証が行われており,平成7年以降に国内で発生した内陸地殻内地震の記録を基に震源インバージョンで得られた震源断層面積と地震モーメントの関係は,「地震モーメントが7.5E+18[Nm](7.5×1018N・m,Mw6.5)・・・より大きい地震に対しては,平成28年熊本地震(M7.3)を含めて,入倉・三宅式の経験的スケーリング則と調和的である」とされている(乙326)。 ちなみに,前記のとおり,FO-A~FO-B~熊川断層による地震(5.03×10 N・m)及び上林川断層による地震(1.95×1019N・m)は,地震モーメントが7.5E+18[Nm],7.5×1018N・m,Mw6.5)より大きい地震に該当する。 他方,武村式は,断層長さと地震モーメントとの関係式であるところ,基となったデータにおける断層長さは,震源インバージョンで得られた震源断層の長さとは異なるものとなっている。すなわち,武村雅之の「日本列島における地殻内地震のスケーリング則-地震断層の影響および地震被害との関連-」(1998,乙161)が武村式を提案する際に参考としたデータについては,平成7年以降に整備された強震観測網で得られた観測データをもとに震源インバージョンにより再評価された震源断層長さとの比較が行われている(乙326)。この比較においては,武村雅之の上記論文(1998)が用いたMw6.5以上の10個の地震のうち6個の地震について再評価されており,その結果,再評価した6個の中のほとんどについて,武村雅之の上記論文の基となったデータにおける断層長さよりも再評価後の断層長さの方が長くなる結果となっている。 以上によれば,入倉・三宅式が震源インバージョン等をもとに震源断層 中のほとんどについて,武村雅之の上記論文の基となったデータにおける断層長さよりも再評価後の断層長さの方が長くなる結果となっている。 以上によれば,入倉・三宅式が震源インバージョン等をもとに震源断層面積と地震モーメントの関係を表したものであるのに対し,武村式は,震源インバージョンで得られた震源断層の長さとは異なる断層長さのデータが基となっていることから, 両関係式によって算出される地震モーメントを比較するには,両関係式の基となったデータの違いによって生じる,震源断層の評価の違いが考慮されなければならないといえる。 島﨑氏の主張は,各関係式に,断層の長さ等について同一の数値を与えた上で,その算定結果の比較をすることによって論じたものであるが,各関係式の比較に当たっては,前記のとおり,各関係式の成り立ちを考慮した値が与えられなければならないのに,そのような考慮もなく行われた比較結果において差異が生じたからといって,当該関係式が過小評価(又は過大評価)をもたらすと結論づけることはできないから,科学的に見て合理性がある主張であるとはいえない。 ②熊本地震におけるデータに基づく分析[i]島﨑氏は,上記論文(甲260の2)において,熊本地震について検討した結果,同地震における地震モーメントの実測値は,同地震の解析結果から得られた断層長さを入倉・三宅式に与えることで算定された地震モーメントの値(推定値)の3.4倍あり,他の関係式による推定値と比較しても,入倉・三宅式による推定値が過小評価となっていることは明らかであると主張している。 [ii]島﨑氏は,各関係式を比較するために,国土地理院が公表したモデル(以下「国土地理院均質モデル」という。)及び熊本地震で地表に表れた地表地震断層を用いたモデル(以下「地表地震断層を用いたモデル」という。)を は,各関係式を比較するために,国土地理院が公表したモデル(以下「国土地理院均質モデル」という。)及び熊本地震で地表に表れた地表地震断層を用いたモデル(以下「地表地震断層を用いたモデル」という。)を用いている。 具体的には,国土地理院均質モデルは,断層の長さ27.1km,幅12.3km,面積333km2の「暫定解1」と,面積416km2の「暫定解2」の2種類のモデルである(甲260の2)。 また,地表地震断層を用いたモデルは,熊原康博の発表(乙379,「第211回地震予知連絡会記者会見資料」,「2016年熊本地震の地表地震断層の分布とその特徴」)における地表地震断層長さ31kmを用いて,島﨑氏が幅を16kmと設定し,面積を496km2としたモデルである(甲260の2)。 [iii]国土地理院均質モデルは,均質な断層すべりを仮定して震源断層の長 さ・幅・面積を設定したモデルである。 しかし,前記のとおり,入倉・三宅式は,震源断層面上のすべり分布は不均質であることを前提として,震源インバージョン等を基にして得られた震源断層面積と地震モーメントの関係を表したものであり,そうである以上,入倉・三宅式の妥当性を実際の地震の観測,解析結果によって検証するのであれば,同関係式が前提としている,実際の断層運動をより精緻に捉えた,不均質なすべり分布を仮定したモデルを用いるべきであり,均質な断層すべりを仮定したモデルを用いてもその妥当性を検証することはできない。 強震動データを用いた震源インバージョンにより得られる震源断層面積は,震源断層内で不均質となる実際の断層の動きを反映するものであるために,均質すべりを仮定したモデルに比べて顕著に大きくなることが知られており(乙325),島﨑氏が用いた国土地理院均質モデルの面積は,震源インバージョンによる震源 際の断層の動きを反映するものであるために,均質すべりを仮定したモデルに比べて顕著に大きくなることが知られており(乙325),島﨑氏が用いた国土地理院均質モデルの面積は,震源インバージョンによる震源断層面積を前提とする入倉・三宅式に与えるものとしては小さすぎるといえる。 [iv]地表地震断層を用いたモデルは,熊本地震という1回の地震で現れた地表地震断層の長さ(31km)に,島﨑氏が断層幅を16kmと設定して,震源断層面積を求めたモデルである。 しかし,その地表地震断層の長さは,震源インバージョンにより得られた震源断層の長さよりも短く(島﨑氏の用いた断層長さ31km等に対して,震源インバージョンにより得られた震源断層長さは42~60kmとされている〔乙326〕。),入倉・三宅式に与えるものとしては不適当であるといえる。 [v]国土地理院は,島﨑氏が引用する国土地理院均質モデル(「暫定解1」,「暫定解2」)だけでなく,不均質なすべり分布を伴うモデル(以下「国土地理院不均質モデル」という。)も公表している(乙379)。 この国土地理院不均質モデルは,地震動の観測記録である強震動データを用いたものではなく,地表面に現れた地震の痕跡である地殻変動を「SAR(だいち2号)及びGNSSで観測」して捉えた測地データを用いており,断層長さは60km, 幅は20kmで,面積は1200km2に達するモデルである。 入倉・三宅式の妥当性を検証するに当たっては,当該関係式が前提としている,不均質なすべり分布を仮定したモデルを用いるべきであるから,仮に,国土地理院が公表したモデルを用いて入倉・三宅式を検証するのであれば,この国土地理院不均質モデルを用いるのが適切であり,均質なすべりを仮定した国土地理院均質モデルを用いるべきではない。 [vi]以上のとおり, 公表したモデルを用いて入倉・三宅式を検証するのであれば,この国土地理院不均質モデルを用いるのが適切であり,均質なすべりを仮定した国土地理院均質モデルを用いるべきではない。 [vi]以上のとおり,島﨑氏が行った入倉・三宅式と武村式等の比較は,各関係式の基となったデータの違い,すなわち震源断層の評価の違いを考慮しない不適切なものであり,熊本地震を対象とした比較検討についても,入倉・三宅式が前提としている震源断層の不均質なすべり分布を伴うモデルを用いずに行った不適切なものであって,島﨑氏の主張は科学的に見て合理性を欠くものというべきである。 これに対し,入倉・三宅式は,熊本地震を含む近時の内陸地殻内地震の震源断層面の不均質なすべり分布を伴う解析を通じてその合理性が検証されており,島﨑氏の主張を採用することができない。 (f)島﨑氏の主張の検討(震源断層の把握の問題)①原子力発電所の基準地震動の策定に当たっては,地域性を踏まえ,多様な手法による詳細な調査に基づいて震源断層を把握した上で,その長さや面積を保守的に評価することが要求されている。 ②熊本地震の震源となった布田川・日奈久断層帯について,九州電力株式会社(以下「九州電力」という。)は,川内原子力発電所の基準地震動の評価において,震源として考慮する活断層として,布田川・日奈久断層帯を長さ約92kmの一続きの断層として(しかも全体が一度にずれるものとして)評価しており,その結果,同断層帯の地震の規模としてM8.1を想定しているところ(乙336),この地震規模の想定は,熊本地震の規模を上回るものである(前震のM6.5の約250倍,本震のM7.3の約16倍のエネルギーに相当する)。 ③抗告人は,本件各原子力発電所に係る基準地震動の評価に当たって,前記の とおり,震源断層を保守的に評 である(前震のM6.5の約250倍,本震のM7.3の約16倍のエネルギーに相当する)。 ③抗告人は,本件各原子力発電所に係る基準地震動の評価に当たって,前記の とおり,震源断層を保守的に評価している。 本件各原子力発電所の地震動評価で対象としているFO-A断層は,既存文献では18kmとされていたものを約24kmとし,FO-B断層は,既存文献に記載がなかったところを約11kmの断層があると評価し,熊川断層は,既存文献では9km又は12kmとされていたものを約14kmとし(乙376),上林川断層も,既存文献では26kmとされていたものを39.5kmとしている(乙76)。 さらに,FO-A~FO-B断層と熊川断層については,両断層の離隔区間15kmを含む,長さ63.4kmの断層と評価している。 したがって,このようにして評価された震源断層に入倉・三宅式を適用して地震動を評価することが,地震動の過小評価となるものとはいえない。 (g)島﨑氏の主張に対する原子力規制委員会の見解原子力規制委員会の島﨑氏の主張に対する評価は以下のとおりである。 ①関係式の問題原子力規制委員会は,入倉・三宅式を用いた熊本地震の地震モーメントの評価が,入倉・三宅式の欠陥により過小になったとの島﨑氏の主張は,根拠がないものと評価している。 すなわち,原子力規制委員会は,各関係式を提唱する各論文の論拠を十分に検討すれば,各関係式に与えるデータの捉え方も異なるものとすべきであるから,各関係式の成り立ちに留意して関係式に与えるデータを評価すべきであるところ,インバージョン解析による東京大学地震研究所の評価(長さ54km×深さ16km),京都大学防災研究所の評価(長さ56km×深さ24km)や国土地理院の解析結果(面積は1200㎢)等の複数の研究機関の震源断層に関する解析 よる東京大学地震研究所の評価(長さ54km×深さ16km),京都大学防災研究所の評価(長さ56km×深さ24km)や国土地理院の解析結果(面積は1200㎢)等の複数の研究機関の震源断層に関する解析結果を検討した結果,これらのデータを前提とすれば,入倉・三宅式による地震モーメントの評価が過小であるとはいえないことから,島﨑氏の主張が科学的合理性に欠けると判断した。 ②震源断層把握の問題原子力規制委員会は,入倉・三宅式を用いた熊本地震の地震モーメントの評価が, 震源断層の事前把握の困難性により過小になったとの島﨑氏の主張は,根拠がないものと評価している。 すなわち,原子力規制委員会は,抗告人が,単純に同じ断層長さを与えた場合には,入倉・三宅式が他の関係式に比べて地震モーメントを小さく算出する可能性を認識した上で,本件各原子力発電所の地震モーメントを評価していること,抗告人が,検討用断層に関する十分な調査により震源断層の状況を具体的に把握していること,その上で,抗告人が,適切な震源断層のパラメータを入力するように安全側の評価を行っていることを根拠として,抗告人が入倉・三宅式を用いて地震モーメントを評価することにより過小評価がされているとはいえないと判断し,島﨑氏の主張を採用しなかった。 ③入倉・三宅式を含む「(ア)の方法」を用いて地震動を評価することについて島﨑氏は,原子力規制委員会に対し,入倉・三宅式は地震モーメントを過小評価することから,「地震モーメントを武村式(1998)で算出し,その他は関西電力と同じ手法で地震動を評価する」(乙376,以下「武村式を用いた試算」という。)など,入倉・三宅式を用いるレシピの「(ア)の方法」によらずに地震動評価を行うべきであると主張した。 これに対し,原子力規制委員会は,下記のとおり,詳細な調 76,以下「武村式を用いた試算」という。)など,入倉・三宅式を用いるレシピの「(ア)の方法」によらずに地震動評価を行うべきであると主張した。 これに対し,原子力規制委員会は,下記のとおり,詳細な調査と保守的な評価に基づく震源断層を用いる地震動評価は,レシピの「(ア)の方法」により行うのが合理的であって,他の方法による理由はないとし(下記〔レシピの「(ア)の方法」を用いることの合理性〕),武村式を用いた試算は,地震学の知見と矛盾した結果となって適切ではないとした(下記〔武村式を用いた試算〕)。 (レシピの「(ア)の方法」を用いることの合理性)[i]レシピの「(ア)の方法」は,「過去の地震記録や調査結果などの諸知見を吟味・判断して震源断層モデルを設定する場合」(乙370)に用いる方法として提案されているのに対し,「(イ)の方法」は,「長期評価された地表の活断層長さ 等から地震規模を設定し震源断層モデルを設定する場合」(同),すなわち地震本部の長期評価で示されている活断層の長さ等のデータから地震規模を設定する場合に用いる方法として提案されている。 このように,「(イ)の方法」は,地震本部の長期評価のように「約100余りの主要活断層帯で発生する地震の強震動を一括して計算するような場合,『レシピ』に基づきながらも,一部の断層パラメータの設定をやや簡便化した方法が作業上有効と考えられる」(乙20,付録3-1頁)として提案されたものである。 [ii]「(イ)の方法」では,断層長さから地震規模(地震モーメント)を求め,その地震規模に合うように震源断層モデルの形状が決定されるが,その際,必要に応じて震源断層の幅と長さが調整される。具体的には,まず,断層長さから地震規模を求め,既往の知見により地震規模に合うように震源断層面積が算定される。次に,こ デルの形状が決定されるが,その際,必要に応じて震源断層の幅と長さが調整される。具体的には,まず,断層長さから地震規模を求め,既往の知見により地震規模に合うように震源断層面積が算定される。次に,この算定された震源断層面積から,既に得られている断層長さを用いて断層幅を算定するが,仮にこの断層幅が広く,地震発生層の下端深さを大きく越えてしまう場合は,断層幅は地震発生層を越える一定限度(2km)まで拡幅される。そして,この一定限度(2km)を越えた部分(長さは当該断層の長さ)については,震源断層面積に合うように,震源断層長さを仮想的に延長することにより調整され,震源断層モデルが設定される。すなわち,一定限度(2km)を越えた部分(長さは当該断層の長さ)が震源断層面の長さ方向に付加される結果,震源断層長さは当初得られた地表の活断層とは異なる長さが設定され,断層幅も地震発生層の下端を越えて,2km広く(深く)設定される(乙376)。 [iii]中央防災会議の方法とは,「松田式(松田,1975)を出発点にして地震モーメントMoを算出する点では,地震調査研究推進本部の(イ)方法と同じ」(乙376)とされているとおり,「(イ)の方法」と同じく,断層長さから地震規模(地震モーメント)を求める方法であるが,震源断層の形状(「起震断層の形状」)については,地震本部の調査結果等をもとにしてモデル化するとされている(同)。 [iv]「(イ)の方法」と中央防災会議の方法は,いずれも断層長さから地震モーメントを求める方法であるが(乙376),基準地震動を策定する際には,震源断層の詳細な情報が得られることから,その情報を,より直接的に地震動評価に反映できる「(ア)の方法」を用いて地震動評価を行う方が合理的であるといえる。 すなわち,原子力発電所の基準地震動を には,震源断層の詳細な情報が得られることから,その情報を,より直接的に地震動評価に反映できる「(ア)の方法」を用いて地震動評価を行う方が合理的であるといえる。 すなわち,原子力発電所の基準地震動を策定する際には,活動層の位置・形状・活動性等を明らかにすることが求められることから,そのような調査・評価により,震源として考慮する活断層の長さだけでなく,震源断層の長さ,幅,傾斜角等の詳細な情報が得られる。そうであるのに,「(イ)の方法」等では,そのようにして得られた詳細な情報があるにもかかわらず,断層長さの情報から地震の規模(マグニチュードや地震モーメント)を算出する結果,詳細な情報から得られた震源断層(長さ,幅等)とは異なる震源断層面を設定することになる。この点,「(ア)の方法」では,震源断層の長さに限らず,得られた情報は全て地震動評価に活用することができ,直接的に地震動評価に反映することができる。 また,「(ア)の方法」は,震源断層の詳細な調査結果をもとに断層モデルを用いて最終的に強震動計算を行うまでの一連の手法として,その合理性が検証され広く用いられていること(乙376)も考慮すると,原子力発電所の地震動評価においては,「(イ)の方法」等ではなく,「(ア)の方法」を用いる方がより合理的といえる。 [v]原子力規制委員会は,入倉・三宅式を用いる「(ア)の方法」,「(イ)の方法」及び中央防災会議の方法のそれぞれの方法について検討した結果,原子力発電所の審査においては,震源断層の詳細な調査を求めており,これにより震源断層の形状についての情報を入手することができるので,レシピの「(ア)の方法」を用いるべきであり,「(ア)の方法」が,綿密な調査をして,地表面だけではなくて,地下の震源断層まで想定して地震動評価をする方法であるのに対して,「(イ) ることができるので,レシピの「(ア)の方法」を用いるべきであり,「(ア)の方法」が,綿密な調査をして,地表面だけではなくて,地下の震源断層まで想定して地震動評価をする方法であるのに対して,「(イ)の方法」及び中央防災会議の方法は,文献調査のみに基づいて断層を想定して地震動評価を行う方法といえるから,十分な調査により,地表面のみならず,地下の広が りについてまで把握する震源断層の調査を実施する原子力発電所審査の際には,これらの方法を用いるべきではないと判断した。 (武村式を用いた試算)[i]原子力規制委員会の武村式を用いた試算は,次のような手順で行われた(乙376)。 武村式を使う場合には,地表の断層の長さを用いるのが適切であると考えられるところ,抗告人はFO-A~FO-B~熊川断層の長さを,地表で確認できない長さ(武村式に与えるのが適切ではない長さ)も含めて63.4kmと設定していることから,同じ条件で計算を行うために,あえて,FO-A~FO-B~熊川断層の長さを63.4kmと設定して地震モーメントの計算を行った。 地震モーメントは,入倉・三宅式の場合に比べて3.49倍となったが,レシピに従って計算を進めたところ,本来,震源断層の一部であるはずのアスペリティの面積が,震源断層の面積を上回る矛盾が生じた。 レシピには,このような矛盾への対応は規定されていないが,抗告人と同じ条件での試算を続けるために,アスペリティの面積を震源断層面積の22%に固定してその応力降下量を算出するとともに,震源断層全体の地震モーメントが変わらないように,アスペリティ以外の背景領域の応力降下量を算出したところ,今度は,背景領域の応力降下量が通常の約3倍という,非現実的な値となった。 [ii]前記のとおり,武村式を用いた試算では,アスペリティの総面積が震源断 ティ以外の背景領域の応力降下量を算出したところ,今度は,背景領域の応力降下量が通常の約3倍という,非現実的な値となった。 [ii]前記のとおり,武村式を用いた試算では,アスペリティの総面積が震源断層よりも大きくなって,地震学の知見(震源断層面のすべり面は不均質であって,すべり量の大きいアスペリティは震源断層全体の一部を占める)と矛盾したり,あるいは,背景領域(アスペリティ以外の部分)の応力降下量が通常の約3倍という非現実的に大きな値となったりするなど,地震動評価に用いる震源断層モデルとしては不適切なものとなった。 レシピは,多数のパラメータがパラメータ間の関係式を用いて設定された,一連の地震動評価手法であり,各パラメータが複数のパラメータと同時に相関関係を持 っているため,そのような相関関係を無視して一部の関係式を他の式に置き換えれば,パラメータ間の相関関係が損なわれ,地震動評価手法としての合理性も失われることになるところ,上記の試算は,そのようにして合理性が失われた手法を用いた結果,不適切な震源断層モデルとなったといえる。 [iii]原子力規制委員会は,レシピで用いられている関係式は,過去の地震記録に基づく,断層面積と地震モーメントの関係を示す経験則を数式で示したものであるから,このような関係式の成り立ちを無視して,今までの観測記録により断層面積Sから算出される地震モーメントよりも3.49倍という大きな値を算入することにより,全体の構造を崩すことになったと判断するとともに,このように,レシピの想定するモデルの中で,無理やり大きな地震モーメントの発生する地震波を発生させようとしたことで,最終的に背景領域の応力降下量という,通常はほとんど強震動が発生しない領域からも強い波が出るようなモデル化をするという不都合が生じたと判断した。 ーメントの発生する地震波を発生させようとしたことで,最終的に背景領域の応力降下量という,通常はほとんど強震動が発生しない領域からも強い波が出るようなモデル化をするという不都合が生じたと判断した。 その上で,原子力規制委員会は,武村式が断層の長さから地震モーメントを求めるという関係式であるものの,さらに同関係式から強震動を計算するという方法は確立されておらず,武村式を用いた試算について,地震学の知見と矛盾した結果となって適切ではないと判断し,武村式から算出された地震モーメントの値だけを無理に入倉・三宅式に当てはめて試算することにより,様々な矛盾が生じたことも,上記判断を根拠づけるとした。 [iv]以上のとおり,原子力規制委員会は,入倉・三宅式を用いると地震モーメントは過小評価となるため,入倉・三宅式を用いるのではなく,武村式を用いるなど,他の方法での地震動評価を検討すべきとの島﨑氏の主張について,根拠がないとした。 そして,原子力規制委員会は,熊本地震の布田川・日奈久断層帯について,十分な保守的な評価をしているし,FO-A~FO-B~熊川断層についても,本来FO-A~FO-B断層と熊川断層とを連動すると評価しなくてもよいのに,保 守的な評価をしているとして,武村式による試算結果を検討しても,大飯発電所の基準地震動を見直す必要はないと判断した。 [v]以上によれば,武村式を用いた試算結果により,最新の科学的・技術的知見を踏まえて適切なものとして策定されるべき基準地震動(設置許可基準規則解釈別記2第4条5項)の地震動評価の当否を論じることはできないことは明らかである。 (h)相手方らの主張に対する検討①相手方らは,入倉・三宅式と武村式に同一の断層面積を与えた場合,地震モーメントは4倍も異なる結果となり,入倉・三宅式を用いると過 できないことは明らかである。 (h)相手方らの主張に対する検討①相手方らは,入倉・三宅式と武村式に同一の断層面積を与えた場合,地震モーメントは4倍も異なる結果となり,入倉・三宅式を用いると過小評価となると主張する。 しかし,入倉・三宅式,武村式等の関係式に入力される断層長さ,震源断層面積は,各関係式の成り立ちに応じたものでなければならない。そして,入倉・三宅式の妥当性を実際の地震の観測・解析結果によって検証するのであれば,同関係式が前提としている,地中での実際の断層運動を捉えた,不均質なすべり分布を伴うモデルを用いなければならない。 また,入倉・三宅式を他の関係式と比較するに当たっては,上記の点を適切に考慮すべきであり,そのような考慮をすることなく,各関係式に,断層の長さ等について単純に同一の数値を与えたときの比較結果に差異が生じたからといって,そのことのみから当該関係式が過小評価(又は過大評価)をもたらすものであると結論づけることはできない。 むしろ,入倉・三宅式は,熊本地震を含む近時の内陸地殻内地震の震源断層面の不均質なすべり分布を伴う解析を通じて,その合理性が検証されている。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 ②相手方らは,中央防災会議の「東南海,南海地震等に関する専門調査会」が入倉・三宅式を採用せず,武村式に近い結果となる独自の式を採用したことが重視されるべきであると主張する。 しかし,この方法は,レシピの「(イ)の方法」と同じく,松田式等を用いて長期評価の断層長さから地震規模(地震モーメント)を求める方法であるところ(甲126,乙376),中央防災会議は,18の断層帯(甲126)の地震を想定し,断層の長さ・幅は既往の知見を参照するなど,詳細な現地調査等に基づかない簡易な方法で設定した上で,断層 法であるところ(甲126,乙376),中央防災会議は,18の断層帯(甲126)の地震を想定し,断層の長さ・幅は既往の知見を参照するなど,詳細な現地調査等に基づかない簡易な方法で設定した上で,断層帯ごとに同一の値を各関係式に与え,これを18断層帯で一括して行い,比較している。 他方,抗告人は,本件各原子力発電所の地震動評価において,周辺で詳細な調査を行い,その結果をもとに震源として考慮する活断層の長さや幅を評価していることから,レシピの「(ア)の方法」により震源断層面積や地震モーメントを求めているのであり,抗告人が中央防災会議の方法ではなく「(ア)の方法」を参照していることは合理的であるといえる。 したがって,中央防災会議において独自の式が用いられているからといって,入倉・三宅式の信頼性に問題があるとはいえず,相手方らの主張を採用することができない。 b応答スペクトルに基づく地震動評価結果との比較抗告人が,応答スペクトルに基づく地震動評価において,断層モデルを用いた手法と同様に保守的に条件設定した上で,さらに耐専式で内陸補正係数を用いずに地震動評価を行い,その結果得られた各応答スペクトルを全て上回るように基準地震動Ss-1を設定することで十分大きな値となるように設定していることを考慮すると,断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価の応答スペクトルが大半の周期で基準地震動Ss-1の応答スペクトルに届かないとしても,断層モデルを用いた手法に基づく基準地震動の評価が不合理であるとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 cアスペリティの応力降下量の設定(a)地震調査研究推進本部において,平成28年6月,断層長さが概ね80kmを超え,断層幅と平均すべり量が飽和する活断層に対応できるように震源断層を特 定した アスペリティの応力降下量の設定(a)地震調査研究推進本部において,平成28年6月,断層長さが概ね80kmを超え,断層幅と平均すべり量が飽和する活断層に対応できるように震源断層を特 定した地震の強震動予測手法(「レシピ」)(乙20)の内容を見直し,改訂をした(乙327,「全国地震動予測地図2016年版」の概要)。以下,改訂後のレシピ(甲267)を「改訂レシピ」という。 改訂レシピでは,その記載内容が一部変更され,地震モーメントが1.8×1020N・mを上回る地震については,断層面積と地震モーメントの関係についてMurotanietal.(2015)の関係式が採用されることとなった。 なお,改訂レシピも,改訂前のレシピと同様に,地震モーメントが7.5×1018N・m以下の地震には,「Δσ=(7/16)×M0/R3」の関係式(以下「円形クラックの式」という。)を適用している。 (b)レシピは,震源断層全体の応力降下量やアスペリティの応力降下量を求める方法として,アスペリティの形状を円形のもの(円形破壊面)と仮定し,等価半径(円形破壊面の面積と等価となる半径)を求めた上で算出する方法(乙20,付録3-10頁の(20-2)式,付録3-11頁の(21-2)式)を提案している。 他方,レシピは,アスペリティの総面積について,「震源断層の長さが震源断層の幅に比べて十分に大きい長大な断層」の場合には「震源断層全体の面積が大きくなるほど・・・過大評価となる傾向にある」ことから,「円形破壊面を仮定することは必ずしも適当でないことが指摘されて」いるとしている(乙20,付録3-9頁)。ちなみに,レシピは,「最近の研究成果から,内陸地震によるアスペリティ総面積の占める割合は,断層総面積の平均22%(Somervilleetal.,1999), いる(乙20,付録3-9頁)。ちなみに,レシピは,「最近の研究成果から,内陸地震によるアスペリティ総面積の占める割合は,断層総面積の平均22%(Somervilleetal.,1999),15%~27%(宮腰・他,2001)であり,拘束条件にはならないが,こうした値も参照しておく必要がある」として,アスペリティの総面積の比率(アスペリティ面積比)に関する知見を示している(乙20,付録3-9頁)。 (c)レシピは,そのような「震源断層の長さが震源断層の幅に比べて十分に大きい長大な断層」の場合について,まず,アスペリティの面積(Sa)を,Somervilleetal.,1999)に示された,震源断層全体の面積(S)に対するアスペリティの総面積の比率(アスペリティ面積比(Sa/S))約22%から推定する 方法があるとしている(乙20,付録3-9頁)。 震源断層全体の応力降下量(Δσ)について,Fujii&Matsu’ura(2000)により3.1MPaと設定し,アスペリティの応力降下量(Δσa)について,Madariaga(1979)の関係式(Δσa=(S/Sa)・Δσ)により算定するとの方法を示している(乙20,付録3-10~3-11頁)。 以上については,改訂レシピにおいても同じである(甲267・10~12頁)。 (d)その上で,改訂レシピでは,上記の「震源断層の長さが震源断層の幅に比べて十分に大きい長大な断層」の場合の算定方法に関して,「円形破壊面を仮定せずアスペリティ面積比を22%,静的応力降下量を3.1MPaとする取扱いは,暫定的に,断層幅と平均すべり量とが飽和する目安となるMo=1.8×1020を上回る断層の地震を対象とする。断層幅のみが飽和するような規模の地震に対する設定方法については,今後の研究成果に応じて改良 的に,断層幅と平均すべり量とが飽和する目安となるMo=1.8×1020を上回る断層の地震を対象とする。断層幅のみが飽和するような規模の地震に対する設定方法については,今後の研究成果に応じて改良される可能性がある」との註記を加えた(甲267,12頁)。 (e)地震調査研究本部は,改訂レシピについて,「表記の誤り等を訂正」した修正版を公表した(乙370,「震源断層を特定した地震の強震動予測手法『レシピ』12月修正版,以下,改訂レシピと区別して用いる場合は「修正版レシピ」という。)。 この修正版レシピでは,Fujii&Matsu’ura(2000)による3.1MPaの取扱いについて,以下のとおり,改訂レシピでの記載(甲267・12頁)がより正確なものに改められた(乙370・12頁)。 「*円形破壊面を仮定せずアスペリティ面積比を22%,静的応力降下量を3.1MPaとする取扱いは,暫定的に,以下のいずれかの断層の地震を対象とする。 (ⅰ)断層幅と平均すべり量とが飽和する目安となるMo=1.8×10 (N・m)を上回る断層(ⅱ)Mo=1.8×1020(N・m)を上回らない場合でも,アスペリティ面積比が大きくなったり背景領域の応力降下量が負になるなど,非現実 的なパラメータ設定になり,円形クラックの式を用いてアスペリティの大きさを決めることが困難な断層等なお,断層幅のみが飽和するような規模の地震に対する設定方法に関しては,今後の研究成果に応じて改良される可能性がある。」上記(ⅰ)が,相手方らのいう「双方飽和断層」に当たり,上記(ⅱ)が相手方らのいう「一方飽和断層」に当たる。 (f)FO-A~FO-B~熊川断層の地震モーメントは5.03×1019N・mであり,上記(ⅱ)の「M0=1.8×1020(N・m)を上回らない場合 が相手方らのいう「一方飽和断層」に当たる。 (f)FO-A~FO-B~熊川断層の地震モーメントは5.03×1019N・mであり,上記(ⅱ)の「M0=1.8×1020(N・m)を上回らない場合」にあたる。そして,FO-A~FO-B~熊川断層は,評価上,断層幅が15kmなのに対して断層長さが63.4kmの「震源断層の長さが震源断層の幅に比べて十分に大きい長大な断層」であり,円形破壊面を仮定して算出するとアスペリティの総面積の比率が37%という過大な値になる(既往知見では20~30%に分布)のであり,上記(ⅱ)の「アスペリティ面積比が大きく・・・なるなど,非現実的なパラメータ設定になり,円形クラックの式を用いてアスペリティの大きさを決めることが困難な断層」に当たるといえる。 以上によれば,抗告人がFO-A~FO-B~熊川断層についてアスペリティ面積比22%,震源断層全体の応力降下量3.1MPaとしたことは,最新のレシピである修正版レシピの記載に準拠したものであるといえる。 (g)相手方らは,Fujii&Matsu’ura(2000)を用いない方法でアスペリティの応力降下量を計算すると,14.1MPaから19.0MPaに大きくなったことなどから,本件各原子力発電所の基準地震動の見直しは不可避であると主張するが,下記①,②のとおり,同主張を採用することができない。 ①レシピは,震源断層全体の応力降下量及びアスペリティの応力降下量を求める方法として,[i]アスペリティの形状を円形のもの(円形破壊面)と仮定し,等価半径(円形破壊面の面積と等価となる半径)を求めた上で算出する方法(乙370・11頁 の(21-2)式,12頁の(22-2)式)を提案するとともに(以下「前者の算定方法」という。),[ii]「震源断層の長さが震源断層の幅 る半径)を求めた上で算出する方法(乙370・11頁 の(21-2)式,12頁の(22-2)式)を提案するとともに(以下「前者の算定方法」という。),[ii]「震源断層の長さが震源断層の幅に比べて十分に大きい長大な断層」の場合は,「円形破壊面を仮定することは必ずしも適当ではないことが指摘されて」いることから,まず,アスペリティの面積(Sa)を,震源断層全体の面積(S)に対するアスペリティの総面積の比率(アスペリティ面積比(Sa/S))約22%から推定した上で(同10頁),震源断層全体の応力降下量(Δσ)について,Fujii&Matsu’ura(2000)により3.1MPaと設定し,アスペリティの応力降下量(Δσa)について,Madariaga(1979)の関係式(Δσa=(S/Sa)・Δσ)により算定するとの方法(同11~12頁)を提案(以下「後者の算定方法」という。)している。 すなわち,震源断層全体の応力降下量及びアスペリティの応力降下量を算定するに当たって,レシピは,震源断層の長さ・幅に応じて,上記各方法のいずれかの方法により両者の応力降下量を算定すべきことを示している(平成28年6月の改訂前のレシピ,改訂レシピ,修正版レシピのいずれも同様である。)。 そうであるところ,相手方らは,震源断層全体の応力降下量については,前者の算定方法を採用しておきながら,アスペリティの応力降下量については,この方法によらずに後者の算定方法で算定しており,レシピに依拠しない方法で算定している。 その結果,アスペリティの応力降下量の算定結果(19.0MPa)は,抗告人の算定結果(11.4MPa)と異なるものになっている。 相手方らも,この算定結果の不一致は,「抗告人が断層総面積とアスペリティの面積比に『22%』を採用していないことが原因である」と a)は,抗告人の算定結果(11.4MPa)と異なるものになっている。 相手方らも,この算定結果の不一致は,「抗告人が断層総面積とアスペリティの面積比に『22%』を採用していないことが原因である」として,抗告人が,相手方らの方法と異なり,震源断層全体の応力降下量及びアスペリティの応力降下量の両方について前者の方法で計算している点が,計算結果の相違の理由であることを自認している。 相手方らは,前者の算定方法と後者の算定方法を混在させて計算している根拠として,改訂レシピが,「アスペリティ面積比を22%,静的応力降下量を3.1MPaとする取扱い」は,暫定的に,双方飽和断層の地震(地震モーメントがMo=1.8×1 20(N・m)を上回る地震)を対象とすることとした趣旨は,アスペリティ面積比と静的応力降下量の両方の取扱いを同時にする場合の趣旨であり,双方飽和断層でなければアスペリティ面積比22%を採用できないという趣旨ではないと主張するが,相手方らのいう「一方飽和断層」についても,震源断層全体の応力降下量は円形破壊面を仮定して求めつつ,アスペリティの応力降下量は円形破壊面を仮定せずにアスペリティ面積比22%を用いて求めるような方法は,レシピでは提案されていないから,相手方らの主張を採用することができない。 ②Fujii&Matsu’ura(2000)を用いず,レシピないし改訂レシピにおいて長大な断層でない断層のアスペリティの応力降下量を求める方法として示されている,壇ほか(2001)の関係式等によって算定すると,次のとおり,FO-A~FO-B~熊川断層のアスペリティ面積比(Sa/S)は30%超となるところ,アスペリティの応力降下量(Δσa)は11.4MPaとなり,長大な断層として評価した場合よりもかえって小さな値となる。 [i]震源断 熊川断層のアスペリティ面積比(Sa/S)は30%超となるところ,アスペリティの応力降下量(Δσa)は11.4MPaとなり,長大な断層として評価した場合よりもかえって小さな値となる。 [i]震源断層の長さが震源断層の幅に比べて十分に大きい長大な断層として取扱う場合Δσa=(S/Sa)・Δσ改訂レシピ(21-1)式この関係式に,アスペリティ面積比Sa/S=22%震源断層全体の応力降下量Δσ=3.1MPaをそれぞれ与えると,Δσa=14.1MPaとなる。 [ii]震源断層の長さが震源断層の幅に比べて十分に大きい長大な断層ではない断層として取扱う場合Δσa=(7/16)・Mo/(r2・R)改訂レシピ(21-2)式 この関係式に,地震モーメントMo=5.03×1019N・m(乙139,73頁)アスペリティ面積の等価半径r=10.51kmアスペリティ面積(Sa)の等価半径(r)は,改訂レシピ(13)式(r=(7π/4)・{M0/(A・R)}・β2)から求める。短周期レベル(A)として1.96×1019N・m/s2(乙139,73頁参照),S波速度(β)として,β=3.6km/s(乙139,73頁)を与えている。 断層面積Sに対する等価半径R=17.40km断層面積(S)に対する等価半径(R)は,レシピのR=(S/π)1/2(甲267,11頁)から求め,断層面積(S)は951km2としている(乙139,73頁)。 をそれぞれ与えると,Δσa=11.4MPaとなる。 以上のとおり,FO-A~FO-B~熊川断層について,相手方らの主張するとおりにレシピにおける長大な断層と評価しない場合,アスペリティの応力降下量はかえって小さくなるから,この点からみても,抗告人が策定した基準地震動が妥当性を欠くとはいえない。 ,相手方らの主張するとおりにレシピにおける長大な断層と評価しない場合,アスペリティの応力降下量はかえって小さくなるから,この点からみても,抗告人が策定した基準地震動が妥当性を欠くとはいえない。 (h)以上によれば,抗告人のFO-A~FO-B~熊川断層の地震動評価におけるアスペリティの応力降下量の設定が不合理であるとはいえない。 (i)したがって,相手方らの主張を採用することができない。 d統計的グリーン関数法統計的グリーン関数法と経験的グリーン関数法とは,いずれも信頼性の高い手法として一般に用いられている。 このことは,地震ガイドでも「経験的グリーン関数法,統計的グリーン関数法,ハイブリッド法以外の手法を用いる場合には,その手法の妥当性が示されていることを確認する」(Ⅰ3.3.2(4))と規定されており,統計的グリーン関数法についてはその合理性が前提とされていることからも裏付けられる。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 e標準偏差(σ)からのばらつきの考慮相手方らが援用するばらつき評価の検討(山田雅行ほかの「強震動予測レシピに基づく予測結果のばらつき評価の検討~逆断層と横ずれ断層の比較~」,甲148の3,乙165)は,「森本・富樫断層帯をモデルとした仮想の断層(逆断層,横ずれ断層)」を対象に,①アスペリティの位置,②アスペリティの強度(平均すべり量の比),③アスペリティの強度(短周期レベル),④破壊伝播速度,⑤破壊開始点の各パラメータに,一様分布,正規分布等で表される統計学的なばらつきを与え,レシピとは異なる「地震調査委員会:森本・富樫断層帯の地震を想定した強震動評価について」の方法の一部を用いた強震動予測結果について,どの程度のばらつきが生じるかを評価したものである。 そうすると,上記検討は,抗告人が 地震調査委員会:森本・富樫断層帯の地震を想定した強震動評価について」の方法の一部を用いた強震動予測結果について,どの程度のばらつきが生じるかを評価したものである。 そうすると,上記検討は,抗告人が地震動評価に用いた断層モデルと異なるモデルを用いており,パラメータのばらつきの設定方法も,抗告人が詳細な調査や既往の研究をもとに設定しているのに対し,上記は統計学的なばらつきをもとにしており,抗告人の採用した方法とは異なるものであるから,上記検討結果をもって,本件各原子力発電所の基準地震動の策定の妥当性の判断に影響を及ぼすものとはいえない。 また,上記検討で対象とされたパラメータは,前記①ないし⑤であるところ,②アスペリティの強度(平均すべり量)以外は,抗告人は,断層モデルを用いた手法による地震動評価において,その評価が大きくなるように設定している。すなわち,全ての地震動評価ケースにおいて,①アスペリティ位置を発電所敷地近くに配置し,⑤破壊開始点は,発電所敷地での地震動が大きくなるように断層やアスペリティの下端に複数配置して評価しており,さらに,不確かさの考慮として,③アスペリティの強度(短周期レベル)については平成19年新潟県中越沖地震の知見を踏まえて短周期の地震動レベルを1.5倍とし,④破壊伝播速度を大きく評価している。 また,抗告人が地震動評価で考慮していない②アスペリティの強度(平均すべり量)のばらつきについては,上記検討において,地震動予測結果にほとんど影響を与えないことが示されている。 そうすると,上記検討は,抗告人の地震動評価が不合理であることを裏付けるものとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 ウ不確かさの評価について(ア)相手方らの主張a断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価にお 合理であることを裏付けるものとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 ウ不確かさの評価について(ア)相手方らの主張a断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価における不確かさの評価について不確かさを考慮したパラメータ(短周期の地震動レベル,断層傾斜角,すべり角,破壊伝播速度,アスペリティの配置,破壊開始点)について,不確かさの考慮として抽出すべきパラメータが他にないことの合理的な説明がなされていない。 b不確かさの考慮方法について抗告人は,不確かさを考慮したとして複数のケースを設定しているが,これらの不確かさを重複させるべきである。 c短周期レベルの地震動について地震ガイドにおいて,アスペリティの応力降下量(短周期レベル)は平成19年新潟県中越沖地震を踏まえて設定されていることを確認するとされている。 平成19年新潟県中越沖地震による柏崎刈羽原子力発電所の地震動が平均の1.5倍程度の短周期レベルを記録したことを踏まえると,地震ガイドは短周期レベルを原則的に1.5倍とすることを求めていると解すべきである。 d不確かさ及びばらつきの考慮について地震ガイドは,応答スペクトルに基づく地震動評価及び断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価において,不確かさの考慮を求めているが,それとは別の 条項において,経験式が有するばらつきの考慮を求めている。そうすると,不確かさの考慮とばらつきの考慮は別の概念であって,不確かさを考慮したからばらつきを考慮しなくて良いということにはならない。 (イ)検討a断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価における不確かさの評価について抗告人は,地震ガイドにおいて「震源モデルの不確かさ(震源断層の長さ,地震発生層の上端深さ・下端深さ,断層傾斜角,アスペリティの位置・大き 用いた手法に基づく地震動評価における不確かさの評価について抗告人は,地震ガイドにおいて「震源モデルの不確かさ(震源断層の長さ,地震発生層の上端深さ・下端深さ,断層傾斜角,アスペリティの位置・大きさ,応力降下量,破壊開始点等の不確かさ,並びにそれらに係る考え方,解釈の違いによる不確かさ)を考慮する場合には,敷地における地震動評価に大きな影響を与えると考えられる支配的パラメータについて分析し,その結果を地震動評価に反映させることが必要である」(Ⅰ3.3.3(2)①1))と規定されていることを受け,それらのパラメータについて,各種の詳細な調査や既往の知見に基づいて保守的な条件設定を行い,またその不確かさを考慮している。 すなわち,震源断層の長さ,幅(地震発生層の上端深さ・下端深さ)等については,前記のとおり,各種の詳細な調査と既往の知見をもとに,不確かさを考慮して保守的に条件を設定し,アスペリティの面積,応力降下量,破壊伝播速度等については,レシピや既往の知見を参照して設定し,これらを基本ケースとして設定した。その上で,抗告人は,短周期の地震動レベル,断層傾斜角,すべり角,破壊伝播速度,アスペリティの配置,破壊開始点について,各種の詳細な調査と既往の知見を踏まえ,(一部については科学的・技術的知見から合理的に考慮できる範囲を超えて)さらに不確かさを考慮して,より保守的な条件設定を行った。 このように,抗告人は,新規制基準の要求事項を踏まえつつ,各種の調査結果や既往の科学的・技術的知見も参照しながら,パラメータの設定や不確かさの考慮を行っている。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 b不確かさの考慮方法について(a)新規制基準の設置許可基準規則解釈において「基準地震動の策定過程に伴う各種の不確かさ(震源断層の長さ したがって,相手方らの主張を採用することができない。 b不確かさの考慮方法について(a)新規制基準の設置許可基準規則解釈において「基準地震動の策定過程に伴う各種の不確かさ(震源断層の長さ,地震発生層の上端深さ・下端深さ,断層傾斜角,アスペリティの位置・大きさ,応力降下量,破壊開始点等の不確かさ,並びにそれらに係る考え方及び解釈の違いによる不確かさ)については,敷地における地震動評価に大きな影響を与えると考えられる支配的なパラメータについて分析した上で,必要に応じて不確かさを組み合わせるなど適切な手法を用いて考慮すること」(設置許可基準規則解釈別記2第4条5項2号⑤)と規定されている。 (b)抗告人は,本件各原子力発電所敷地周辺の地震発生状況や敷地周辺の活断層の分布状況等について詳細な調査を実施した上で,本件各原子力発電所の検討用地震としてFO-A~FO-B~熊川断層及び上林川断層を選定した。 そして,これらの断層による地震を評価するための震源断層モデルを設定する際には,この地質・地質構造の調査結果に加え,本件各原子力発電所敷地及び敷地周辺の地下構造の調査・評価結果も考慮して,本件各原子力発電所敷地の地震動に大きな影響を与える地震の規模,震源からの距離,強震動を発生させるアスペリティの配置等について,「基本ケース」の設定段階から十分安全側に評価した。 すなわち,FO-A~FO-B~熊川断層について,震源断層長さを長く,断層幅を広く評価し,震源断層面積から算定される地震の規模(地震モーメント)をより大きく評価した。地震動は震源からの距離に応じて減衰しながら伝播していくところ,発電所敷地から震源断層までの距離をより近く評価することにより,より地震動が大きくなるよう安全側に考慮した。 また,①強震動を発生させるアスペリティについて,断層 じて減衰しながら伝播していくところ,発電所敷地から震源断層までの距離をより近く評価することにより,より地震動が大きくなるよう安全側に考慮した。 また,①強震動を発生させるアスペリティについて,断層の存在が明確に否定できる区間を除いた発電所敷地に最も近い位置に配置し,②破壊開始点について,発電所敷地における地震動が大きくなるよう,破壊が発電所敷地に向かって近づ いてくるようなケースを含め,複数のケースを設定して評価した。 (c)本件各原子力発電所の地域特性を考慮した上で,自然現象として起こり得る不確かさの種類を選定し,科学的な根拠に基づいてその不確かさの幅(数値)を設定して評価した。 すなわち,平成19年新潟県中越沖地震の知見を踏まえ「③短周期の地震動レベルを1.5倍にするケース」,FO-A~FO-B~熊川断層は,横ずれ断層であるものの,縦ずれの変位が含まれることから「④断層傾斜角を75度にするケース」及び「⑤すべり角を30度にするケース」,既往の研究におけるばらつきを考慮して「⑥破壊伝播速度を0.72βから0.87βに引き上げるケース」,強震動を発生させるアスペリティの配置について「⑦アスペリティを敷地近傍に一塊にして配置するケース」の各ケースについて,追加的に検討した。 この追加的な検討を行うに際しては,①アスペリティの配置及び②破壊開始点を含めて,事前の詳細な調査や経験式(地震に関する過去のデータによる経験則)等から地震発生前におおよそ把握できるパラメータ(認識論的な不確かさ)と,地震発生後の分析等では把握できるが地震発生前の把握が困難(事前の詳細な調査等からは特定が困難)なパラメータ(偶然的な不確かさ)に分類し,その重畳を含めた評価を行った。 その際,地震発生前におおよそ把握できるパラメータの全てが地震動を大きくする方向に 難(事前の詳細な調査等からは特定が困難)なパラメータ(偶然的な不確かさ)に分類し,その重畳を含めた評価を行った。 その際,地震発生前におおよそ把握できるパラメータの全てが地震動を大きくする方向にばらついて「基本ケース」を大きく上回る地震動レベルとなることは現実の現象としては考えくいことから,地震発生前におおよそ把握できるパラメータについては,各々独立して検討することとした。 具体的には,③短周期の地震動レベル,④断層傾斜角,⑤すべり角,⑥破壊伝播速度については,いずれも事前の詳細な調査や経験式(地震に関する過去のデータによる経験則)等から,地震発生前におおよそ把握できるものであり,これらの複数のパラメータが同時に,地震動を大きくする方へ極端にばらつくことは 考えにくいことから,これらのパラメータについては,各々独立して不確かさを考慮して検討を行った。 これに対し,①アスペリティの配置及び②破壊開始点については,地震発生前の把握が困難(事前の詳細な調査等からは特定が困難)なパラメータ(偶然的な不確かさ)であることから,「基本ケース」と同様に発電所敷地における地震動が大きくなるように設定して,③ないし⑥と重畳させて評価した。 なお,⑦アスペリティの一塊の配置については,アスペリティは震源断層面におけるすべり量が大きな領域であって,断層の存在が明確に否定できる区間内に存在することや,その区間を挟んで並ぶ複数の断層のアスペリティが一方の断層に寄せられて存在することはなく,現実に生じ得るとは考えられないため独立して検討し,②破壊開始点と重畳させて評価した。 (d)安全側の評価により作成された「基本ケース」の地震動レベルは,既に平均的なレベルよりもかなり大きなものとなっており,地震発生前におおよそ把握できるパラメータ(認識論的な不確かさ)の 価した。 (d)安全側の評価により作成された「基本ケース」の地震動レベルは,既に平均的なレベルよりもかなり大きなものとなっており,地震発生前におおよそ把握できるパラメータ(認識論的な不確かさ)の全てが地震動を大きくする方向にばらついて,「基本ケース」を大きく上回る地震動レベルとなることは,現実の現象としては考えにくい。 また,抗告人による不確かさの考慮の考え方を含む地震動評価については,原子力規制委員会により新規制基準への適合性が認められている。さらには,抗告人の地震動評価の結果得られた基準地震動の年超過確率は極めて低い値となっている。このように,抗告人の地震動評価は,科学的に合理的で十分なものであるといえる。 以上によれば,全ての不確かさを重畳させる必要があるとはいえないし,不確かさを重畳として考慮することについて前記のとおり対応したことが不合理であるとはいえない。 (e)したがって,相手方らの主張を採用することができない。 c短周期レベルの地震動について地震ガイドの当該部分は,「アスペリティの応力降下量(短周期レベル)については,新潟県中越沖地震を踏まえて設定されていることを確認する」(Ⅰ3.3.2(4)①2))と規定しており,平成19年新潟県中越沖地震の知見を踏まえるべきことを求めているが,相手方らのいうように,短周期レベルを1.5倍という一定倍率で大きくすることまで求めているわけではない。 抗告人は,平成19年新潟県中越沖地震の知見について,地震ガイドが,他方において,「特にアスペリティの位置・応力降下量や破壊開始点の設定等が重要であり,震源モデルの不確かさとして適切に評価されていることを確認する」(Ⅰ3.3.3(2)①1))として応力降下量についての不確かさの考慮を求めていることを受け,本件各原子力発電所周辺の若 が重要であり,震源モデルの不確かさとして適切に評価されていることを確認する」(Ⅰ3.3.3(2)①1))として応力降下量についての不確かさの考慮を求めていることを受け,本件各原子力発電所周辺の若狭湾地域では前述した震源特性に係る平成19年新潟県中越沖地震のような知見はないものの,不確かさを考慮するケースの一つとして,短周期の地震動レベルを基本ケースの1.5倍とするケースを設定した。 このように,抗告人は平成19年新潟県中越沖地震の知見を踏まえて本件各原子力発電所の基準地震動を評価しており,相手方らの主張するような地震ガイド違反はない。原子力規制委員会も,この点について,新規制基準適合性を確認している。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 d不確かさ及びばらつきの考慮について「経験式が有するばらつき」(Ⅰ3.2.3(2))とは,経験式の基となった地震に関するデータのばらつきのことであり,そのデータは,各地震が発生した地域の地域性(震源特性,伝播特性,地盤の増幅特性(サイト特性))が現れたものであり,データのばらつきは,地震の「標準的・平均的な姿」に各地域の地域性が反映された結果に他ならないといえる。 抗告人は,本件原子力発電所の基準地震動の策定において,詳細な調査結果を踏まえて敷地周辺の地域性を把握した上で,保守的な条件でパラメータを設定し,さらに不確かさを考慮して地震動評価を行っている。原子力規制委員会も,この点について,新規制基準適合性を確認している。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (13)震源を特定せず策定する地震動についてア相手方らの主張(ア)16倍問題について「震源を特定せず策定する地震動」は,最大Mw6.5の地震を引き起こす断層面が原子力発電所近傍にあると仮定して評 震源を特定せず策定する地震動についてア相手方らの主張(ア)16倍問題について「震源を特定せず策定する地震動」は,最大Mw6.5の地震を引き起こす断層面が原子力発電所近傍にあると仮定して評価するものであるから,Mw5.7であった平成16年北海道留萌支庁南部地震の規模を16倍とする地震を想定すべき(16倍問題)である。 (イ)2000ガル問題について地域地盤環境研究所は,平成16年北海道留萌支庁南部地震について「面的地震動評価」を実施しており(甲68),その結果によれば,抗告人が参照した観測点の観測記録1127ガルを超える2000ガルの地震動が別の地点で発生した可能性があり,さらに,Mw5.7の地震であっても,解放基盤表面の加速度は1080ガル(609×2000/1127=1080.74)である。 (ウ)原子力安全基盤機構の報告書(甲131)について上記報告書では,Mj6.5の横ずれ断層が活動した場合,敷地近傍で最大1340.6ガルの地震動を生じうるとされており,抗告人が策定した最大加速度620ガルの「震源を特定せず策定する地震動」が過小であることは明らかである。 イ検討(ア)16倍問題についてa昭和56年耐震設計審査指針では,マグニチュード6.5程度以下の地震で あれば地表地震断層が出現しないこともあることを踏まえ,マグニチュード6.5の直下地震といった一定規模の「地震」を想定して地震動を設定していたが,平成18年耐震設計審査指針では,そのように「地震」を想定してするのではなく,直接「地震動」を設定することとされた。 これは,平成18年耐震設計審査指針の制定の際に,兵庫県南部地震等の震源過程の研究により,アスペリティが浅いときには地表地震断層が出現するが,アスペリティが深いときには地表地震断層が出現しないとの新 これは,平成18年耐震設計審査指針の制定の際に,兵庫県南部地震等の震源過程の研究により,アスペリティが浅いときには地表地震断層が出現するが,アスペリティが深いときには地表地震断層が出現しないとの新たな知見が得られており,活断層を事前に特定できるかどうかを「地震」の規模で規定するのは問題があるとの指摘がなされたことによるものである。 すなわち,同じ規模の「地震」でも,アスペリティの位置が浅いと,地表地震断層が出現し,地震動も大きくなるが,アスペリティの位置が深いと,地表地震断層は出現せず,地震動も大きくならないことが分かってきた。そこで,平成18年耐震設計審査指針では,「震源を特定せず策定する地震動」として,マグニチュード6.5の直下地震といった一定規模の「地震」を想定してそこから地震動を評価するのではなく,直接「地震動」のレベルから算定することとされ,具体的には,震源と活断層を関連付けることが困難な内陸地殻内地震について,地震動の観測記録を収集し,それを基にして地震動を策定することとされた(乙167)。 新規制基準も,平成18年耐震設計審査指針のこのような考え方を承継しており,一定規模の「地震」を想定して地震動を評価するのではなく,震源と活断層を関連づけることが困難な過去の内陸地殻内の地震について得られた,震源近傍における観測記録を基にして,直接「地震動」のレベルから「震源を特定せず策定する地震動」を策定し,その妥当性について,申請時における最新の科学的・技術的知見を踏まえて個別に確認するとしている。 b以上の経緯のもとで,設置許可基準規則解釈は,「震源を特定せず策定する地 震動」について,「震源と活断層を関連づけることが困難な過去の内陸地殻内の地震について得られた震源近傍における観測記録を収集し,これらを基に,各種の不確かさ 釈は,「震源を特定せず策定する地 震動」について,「震源と活断層を関連づけることが困難な過去の内陸地殻内の地震について得られた震源近傍における観測記録を収集し,これらを基に,各種の不確かさを考慮して敷地の地盤物性に応じた応答スペクトルを設定して策定すること」と規定している(設置許可基準規則解釈別記2第4条5項3号)。 上記規定は,震源と活断層を関連付けることができず,地震の規模及び位置を事前に想定できないことから,実際に観測された観測記録に基づいて,発電所敷地の地盤物性(すなわち「地盤の増幅特性(サイト特性)」)を加味した地震動レベルを設定するものといえる。 原子力規制委員会は,「『震源を特定せず策定する地震動』の策定に当たっては,その規模及び位置は事前に想定できないことから,マグニチュードや震源距離を規定する方法ではなく,国内外の震源近傍の強震観測記録に基づいて地震動レベルを直接設定することとしており,仮想的な地震動を評価することを要求しているものではありません」(乙40)と説明している。 c相手方らは,震源を特定せず策定する地震動は,一定の規模以下の震源断層面については,原子力発電所敷地周辺の詳細な調査によっても発見できない可能性があるとの認識を前提に,その規模をMw6.5と定め,最大Mw6.5の地震を引き起こす断層面が当該原子力発電所近傍にあると仮定して,その断層面が活動したときの地震動を考慮して定めるべきであると主張する。 しかし,地震ガイドは,検討対象地震の選定について,「震源と活断層を関連付けることが困難な過去の内陸地殻内の地震を検討対象地震として適切に選定し,それらの地震時に得られた震源近傍における観測記録を適切かつ十分に収集していることを確認する」(4.2.1(1)),「検討対象地震の選定においては,地震規模のス 震を検討対象地震として適切に選定し,それらの地震時に得られた震源近傍における観測記録を適切かつ十分に収集していることを確認する」(4.2.1(1)),「検討対象地震の選定においては,地震規模のスケーリング(スケーリング則が不連続となる地震規模)の観点から,『地表地震断層が出現しない可能性がある地震』を適切に選定していることを確認する」(4.2.1(2))とした上で,その「地表地震断層が出現しない可能性がある 地震」について,「断層破壊領域が地震発生層の内部に留まり,国内においてどこでも発生すると考えられる地震で,震源の位置も規模もわからない地震として地震学的検討から全国共通に考慮すべき地震(震源の位置も規模も推定できない地震(Mw6.5未満の地震))であり,震源近傍において強震動が観測された地震を対象とする」(4.2.1の解説(1))と解説している。 また,地震ガイドでは,「検討対象地震」の選定について,「地表地震断層が出現しない可能性がある地震」とともに,必要に応じて「事前に活断層の存在が指摘されていなかった地域において発生し,地表付近に一部の痕跡が確認された地震」についても検討を加え,必要に応じて選定することとされている(4.2.1(3))。 そうすると,地震ガイドは,「震源を特定せず策定する地震動」の策定に当たり,震源の位置も規模も推定できない地震としてMw6.5「未満」の地震の観測記録を収集することを求めているのであって,相手方らのいうように,地震の規模をMw6.5という一定値にする(Mw6.5より小さいものはMw6.5に引き上げる)ことを求めているものではない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (イ)2000ガル問題についてa相手方らの援用する地域地盤環境研究所の平成16年北海道留萌支庁南部地 る)ことを求めているものではない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (イ)2000ガル問題についてa相手方らの援用する地域地盤環境研究所の平成16年北海道留萌支庁南部地震に関する報告書(乙168,「震源を特定せず策定する地震動に関する計算業務報告書」)は,平成16年北海道留萌支庁南部地震における強震動について検討したMaedaandSasatani(2009)に基づく震源モデルを用いて面的地震動評価を行った上,その震源モデルのうち,すべり角,破壊開始点の条件を仮想的に変更して評価したものである。相手方らが援用する「S2破壊」は,「破壊開始点を変えた場合」の検討事例の一つに該当する。 b上記報告書は,「震源域近傍の留萌周辺における詳細な3次元地盤構造モデ ルがないため,ここでの地盤構造モデルはHKD020の1次元地盤構造モデル(MaedaandSasatani,2009)を参照し,表2.2-1に示す地盤構造モデルを3次元地盤構造モデルに拡張した」(乙168,2-2頁)としている。 地表面の揺れの大きさは,地盤の増幅特性(サイト特性),すなわち地盤構造(速度構造)により大きな影響を受けるところ,上記報告書では,表2.2-1(乙168,2-5頁)に示された単一の地盤構造モデル(表中の「Vp」はP波速度,「Vs」はS波速度,「Density」は密度,「Depth」は深さを表す)を,HKD020(港町観測点)以外の地盤構造(速度構造)を調査することなく,20km四方(乙168,2-2頁)という広域に拡張して,面的地震動評価を行っている。 そうすると,上記報告書は「震源断層モデルを用いて地震観測点以外の震源域内での地震動を再現解析」しているとはいえない。 c上記報告書も,「本検討ではHKD020の観測記録を上回 動評価を行っている。 そうすると,上記報告書は「震源断層モデルを用いて地震観測点以外の震源域内での地震動を再現解析」しているとはいえない。 c上記報告書も,「本検討ではHKD020の観測記録を上回るPGV(最大速度)が他の地点で得られている」と記載する一方,「ただし,検討ではHKD020の地盤構造モデルを仮定して,それを3次元的に拡張していることに注意が必要である」(乙168,4-1頁)と記載し,上記報告書に示された数値には客観的なデータの裏付けがないことを認めている。 d以上のとおり,上記報告書で用いられた地盤構造モデル(MaedaandSasatani(2009)。乙168,2-2頁)においては,現地での詳細な調査結果が反映されているとはいえない。 他方,上記報告書の後に発表された佐藤浩章ほか「物理探査・室内試験に基づく2004年留萌支庁南部の地震によるK-NET港町観測点(HKD20)の基盤地震動とサイト特性評価(2013)」(乙166)では,HKD020(港町観測点)においてPS検層等の詳細な調査を実施し,上記報告書とは異なる地盤構造モデルが提案されており(乙166,6頁,表1。表2.2-1〔乙168,2-5頁〕と異なる数値となっている。),この地盤構造モデルを基にして抗告人が行った「震源を 特定せず策定する地震動」の評価に対し,原子力規制委員会は新規制基準適合性を認めている。 e以上によれば,相手方らが援用する「最大加速度2000ガル」の試算条件から,平成16年北海道留萌支庁南部地震の「最大加速度が2000ガル以上であった可能性がある」ものと認めることはできない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (ウ)原子力安全基盤機構の報告書(甲131)についてa相手方らは,原子力安全基盤機構の報告書( た可能性がある」ものと認めることはできない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (ウ)原子力安全基盤機構の報告書(甲131)についてa相手方らは,原子力安全基盤機構の報告書(「震源を特定しにくい地震による地震動の検討に関する報告書(平成16年度)」。甲131,乙169)を援用し,上記報告書に横ずれ断層モデルによる加速度応答値の分布を示す複数の表から「1340.6」との数値を取り上げ,「JNES報告書によれば,Mj6.5の横ずれ断層が活動した場合,震源近傍で最大1340.6ガルの地震動が生じ得る」と主張する。 b上記報告書は,地震動と年超過確率の関係を評価する目的の下,仮想の断層モデルに種々の仮定的条件を与えて解析による計算値を算出し,その結果を考察の対象としたものである。 そうすると,本件各原子力発電所の地震動評価とは,断層モデルや条件を異にしているから,上記報告書における計算値が本件各原子力発電所の地震動評価に適用されるものとはいえない。例えば,相手方らが援用する算定例は,アスペリティの上限深さが2kmに設定されたものであるが,これに対し,本件各原子力発電所周辺での地震発生層は,保守的に余裕を見て評価した場合でも上限深さを3kmとすべきであるから,条件が異なるといえる。 c上記報告書には,中部・近畿地方における,震源を特定しにくい地震による地震動の年超過確率の解析結果が示されている(乙169,付2.1-12頁)。これによると,最大加速度1340.6ガルの地震動は,年超過確率が10-6よりもさ らに小さい確率となり,現実にはまず考えられないものといえる。 ウ以上によれば,上記報告書の記載から本件各原子力発電所敷地における「震源地を特定せずに策定する地震動」が過小であると認めることはできない。 エしたがっ り,現実にはまず考えられないものといえる。 ウ以上によれば,上記報告書の記載から本件各原子力発電所敷地における「震源地を特定せずに策定する地震動」が過小であると認めることはできない。 エしたがって,相手方らの主張を採用することができない。 (14)応答スペクトルの包絡についてア相手方らの主張「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」(甲85)(昭和56年耐震設計審査指針)では基準地震動は振幅包絡線で定めることとされていたのであるから,本件各原子力発電所の基準地震動は,抗告人が策定した基準地震動Ss-1~Ss-7の全ての応答スペクトルを包絡した線でなければならない。 イ検討(ア)地震動(時々刻々の地盤の揺れ)について,横軸に時間,縦軸に振幅や加速度等をとって表したものが時刻歴波形であり,縦軸に振幅をとった時刻歴波形において,地震動の振幅を包み込むように引かれた曲線が振幅包絡線である。 振幅包絡線とは,応答スペクトルを包絡する線のことではない。 また,昭和56年耐震設計審査指針は,基準地震動の策定において,既往の知見により得られた地震動の振幅の時間経過に伴う変化を示した振幅包絡線に沿った時刻歴波形を作成することを求めていたにすぎず,地震動評価によって策定した複数の基準地震動の応答スペクトルを包絡させることを要求していたものではない。 (イ)抗告人は,地震動評価に当たり,基本ケースの段階から保守的な条件を設定し,さらに不確かさを考慮して地震動評価を行い,基準地震動Ss-1~Ss-7の応答スペクトルを作成しており,それらの応答スペクトルをさらに包絡するような応答スペクトルを作成する必要があるとはいえない。 なお,抗告人は,新規制基準下での基準地震動の策定においても,振幅包絡線 の経時的変化を考慮して時刻歴波形を作成している(乙 らに包絡するような応答スペクトルを作成する必要があるとはいえない。 なお,抗告人は,新規制基準下での基準地震動の策定においても,振幅包絡線 の経時的変化を考慮して時刻歴波形を作成している(乙76)。 (ウ)したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (15)基準地震動の年超過確率についてア相手方らの主張人類が有している地震のデータは,詳細なもので過去20年余り,概括的なものでも過去千数百年程度であるから,1万年や10万年に一度の地震を評価することはできない。また,基準地震動の年超過確率の算定根拠が明らかでなく,算定者の恣意が入り込むおそれが大きい。 イ検討(ア)前記のとおり,実施基準は,日本原子力学会の標準委員会が,原子力発電所の安全性と信頼性を確保してその技術水準の維持・向上を図る観点から,原子力発電所の設計・建設・運転・廃止活動において実現すべき技術のあり方を定めた原子力標準の一つであり,その策定に当たり,標準委員会・発電炉専門部会の下に地震PSA分科会が設置され,さらに地震ハザード評価作業会等の作業会が設けられて,検討された結果,取りまとめられたものである。 また,原子力規制委員会は,有識者による検討とパブリックコメントを経た上で地震ガイドを策定しているところ,実施基準は,地震ハザードの解析手法として地震ガイドに採用されている。 この点につき,原子力規制委員会は,実施基準の信頼性に関して,「国内の地震ハザード評価では,地震調査研究推進本部(地震本部)により,各地域の海域を含む活断層の地震活動性や地震動の評価に基づく地震ハザードマップが公表され,広く一般防災に活用されるとともに,原子力分野でも地震本部の情報・データ及び評価手法等を活用し,これと整合を図っています。地震本部のプロジェクトで評価している地震ハ く地震ハザードマップが公表され,広く一般防災に活用されるとともに,原子力分野でも地震本部の情報・データ及び評価手法等を活用し,これと整合を図っています。地震本部のプロジェクトで評価している地震ハザードは,地震・地震動の情報や評価手法から見て,世界的な標準以上の広域かつ詳細な評価といえます。」とした上で,「日本原子力学会の 確率論的安全評価実施基準における地震ハザード評価は,地震本部のデータや手法との整合を取りながら,サイト近傍の評価や不確実さ評価手法をより詳細化したものであり,評価データやプロセスの透明性・説明性を明確化するよう規定されています。」と評価している(乙110)。 以上のとおり,実施基準は,学識者,実務者の長年にわたる議論と公正な手続きを経て作成されたものであり,原子力規制委員会も,新規制基準に係る審査基準に採用するなど,その信頼性が認められている。 (イ)実施基準は,確率論的リスク評価(PRA)に関する国際的な調査をもとに策定されたものである。 すなわち,各国でPRAの技術開発及び事例適用,応用研究が進められてきた結果,PRAは,安全評価手法として安全設計・運転管理・安全規制等の広い分野における意思決定プロセスを支援する効果的な手段と認識されるようになっている。地震PRAを含む外的事象のPRAについて,米国では,原子力規制委員会(NRC)が作成したNUREG-1150(1990年最終版発行)で代表プラント評価が実施され,1991年のNRCの要求によって,外的事象に対する個別プラント評価(IPEEE)が実施されており,2003年には米国原子力学会(ANS)から外的事象のPRA標準(ANSI/ANS-58.21-2003)が公表されている。日本原子力学会は,地震PRAを実施する場合の考え方,満足すべき要件及び具体的な 3年には米国原子力学会(ANS)から外的事象のPRA標準(ANSI/ANS-58.21-2003)が公表されている。日本原子力学会は,地震PRAを実施する場合の考え方,満足すべき要件及び具体的な方法について調査検討を行い,関連する分野の専門家の意見を踏まえて,地震PRAの実施基準を策定している(甲142,ⅰ頁,まえがき)。 (ウ)抗告人が本件各原子力発電所における基準地震動の年超過確率の算出に当たって参照している確率論的地震ハザード評価手法は,国際原子力機関(IAEA)が定める安全基準類のうち確率論的地震ハザード評価の指針を規定しているSSG−9や,米国において確率論的地震ハザード評価に当たっての手順等を取りまとめた米国電力研究所(EPRI)の報告書(EPRI30020000709)において採 用されている算定手法と基本的に合致したものである(乙170)。 (エ)新規制基準においては,地震動評価の基本的な考え方は平成18年耐震設計審査指針から変わっていないものの,平成17年8月16日の宮城県沖地震,平成19年能登半島地震,平成19年新潟県中越沖地震,東北地方太平洋沖地震による知見等が反映されているし,地震動評価における地震波の伝播特性や地盤の増幅特性(サイト特性)の考慮も十分になされている。 (オ)本件各原子力発電所の基準地震動は,原子力規制委員会の審査を経たものであるところ,抗告人は,その審査において原子力規制委員会により確認された科学的知見を用いて本件各原子力発電所の基準地震動の年超過確率を参照しているし,原子力規制委員会もその相当性を確認している。 (カ)以上によれば,基準地震動の年超過確率の算定に関する新規制基準や地震ガイドの定めが不合理であるとはいえないし,抗告人の行った上記算定が不合理であるともいえない。 (キ) 当性を確認している。 (カ)以上によれば,基準地震動の年超過確率の算定に関する新規制基準や地震ガイドの定めが不合理であるとはいえないし,抗告人の行った上記算定が不合理であるともいえない。 (キ)したがって,相手方らの主張を採用することができない。 地震に対する安全確保対策(耐震安全性)(1)新規制基準における基本方針及び設置許可基準規則等ア設置許可基準規則4条1項は,設計基準対象施設は,地震力に十分に耐えることができるものでなければならないと規定し,同条2項は,前項の地震力は,地震の発生によって生ずるおそれがある設計基準対象施設の安全機能の喪失に起因する放射線による公衆への影響の程度に応じて算定しなければならないと規定し,同条3項は,耐震重要施設は,その供用中に当該耐震施設に大きな影響を及ぼすおそれがある地震による加速度によって作用する地震力(基準地震動による地震力)に対して安全機能が損なわれるおそれがないものでなければならないと規定している。 イ設置許可基準規則解釈別記2第4条2項は,設計基準対象施設について,耐震重要度に応じ,Sクラス,Bクラス,Cクラスの耐震重要度分類に分類することを求めている。 そのうち,耐震重要度分類Sクラスの施設である耐震重要施設(同規則解釈別記1第3条1項)について,設置許可基準規則4条3項は,「基準地震動による地震力」に対して安全機能が損なわれるおそれがないものでなければならない」ことを求めている。 また,設置許可基準規則解釈は,「安全機能が損なわれるおそれがないものでなければならない」ことを満たすため,建物・構築物については,「常時作用している荷重及び運転時に作用する荷重と基準地震動による地震力との組合せに対して,当該建物・構築物が構造物全体としての変形能力(終局耐力時の変形)につい 満たすため,建物・構築物については,「常時作用している荷重及び運転時に作用する荷重と基準地震動による地震力との組合せに対して,当該建物・構築物が構造物全体としての変形能力(終局耐力時の変形)について十分な余裕を有し,建物・構築物の終局耐力に対し妥当な安全余裕を有していること」を求め,また,機器・配管系については,「通常運転時,運転時の異常な過渡変化時及び事故時に生じるそれぞれの荷重と基準地震動による地震力を組み合わせた荷重条件に対して,その施設に要求される機能を保持すること。なお,上記により求められる荷重により塑性ひずみが生じる場合であっても,その量が小さなレベルに留まって破断延性限界に十分な余裕を有し,その施設に要求される機能に影響を及ぼさないこと」等を求めている(設置許可基準規則解釈別記2第4条6項1号)。 ウ設置許可基準規則及び同規則解釈は,上記のような基準地震動に対する耐震安全性評価に加えて,弾性設計用地震動及び静的地震力に対する耐震安全性評価を行うことも求めている(設置許可基準規則4条1項及び2項,同規則解釈別記2第4条1項ないし3項)。 弾性設計用地震動は,発電用原子炉施設が地震力に対して耐えるために,ある地震力に対して建物・構築物及び機器・配管系がおおむね弾性範囲になるように設計する際に用いる地震動をいい,基準地震動との応答スペクトルの比率の値が,目安として0.5を下回らないような値で,工学的判断に基づいて設定する(設置許可基準規則解釈別記2第4条4項1号)。 また,静的地震力は,発電用原子炉施設に作用する地震力を一定の力(静的な力)として考え,その地震力に対して建物・構築物及び機器・配管系がおおむね弾性範囲になるように設計する際に用いる地震力をいい,一般建築物の設計に適用される地震層せん断力係数Ciに耐震重要 力(静的な力)として考え,その地震力に対して建物・構築物及び機器・配管系がおおむね弾性範囲になるように設計する際に用いる地震力をいい,一般建築物の設計に適用される地震層せん断力係数Ciに耐震重要度分類に応じた所定の係数等を用いて算定する(同条4項2号)。そして,これらの地震動及び地震力に対する「許容限界」の評価においては,必ずしも厳密な弾性限界ではなく,局部的に弾性限界を超える場合を容認しつつも「施設全体としておおむね弾性範囲に留まり得ること」を求めている(同条1項)。 エ弾性設計用地震動及び静的地震力は,耐震重要施設以外の耐震安全性評価にも用いられている。具体的には,耐震重要度分類Bクラスの設計基準対象施設であって共振のおそれのあるものについて,弾性設計用地震動に2分の1を乗じたもので評価することを求めており(同条3項2号,乙31,124頁),また,全ての設計基準対象施設について,静的地震力に対する評価を求めている(同条3項)。 (2)抗告人の対応ア基準地震動等に対する耐震安全性評価(ア)基準地震動に対する耐震安全性評価抗告人は,上記の要求事項を踏まえ,本件各原子力発電所の設備のうち,原子炉の安全性を確保するために重要な役割を果たす「安全上重要な施設・設備」について,耐震重要施設として耐震重要度分類Sクラスに分類した。 その上で,この「安全上重要な施設・設備」について基準地震動に対する耐震安全性評価を行い,基準地震動による地震力が各設備に作用した際の評価値(建物・構築物の耐震壁のせん断ひずみや機器・配管系に生じる応力値等)を算出して,これが評価基準値を下回ることを確認した。 a耐震安全性評価における解析 抗告人は,基準地震動Ss-1~Ss-7に対する耐震安全性評価において,地震応答解析及び応力解析を行い,その結果 て,これが評価基準値を下回ることを確認した。 a耐震安全性評価における解析 抗告人は,基準地震動Ss-1~Ss-7に対する耐震安全性評価において,地震応答解析及び応力解析を行い,その結果得られた評価値が,基準・規格等に基づいて定められている評価基準値を超えないことを確認した。 地震応答解析とは,地震動に対して構造物がどのように揺れるかを評価するために,構造物を適切なモデル(解析モデル)に置き換え,このモデルに地震動を入力して,地震動によって構造物に作用する地震力(荷重)を求める解析方法をいう。また,応力解析とは,地震応答解析により得られた構造物に作用する地震力(荷重)によって,当該構造物を構成する各部位に作用する単位面積当たりの力(応力)を求める解析方法をいう。このような解析を各耐震重要施設について行い,評価値(建物・構築物の耐震壁のせん断ひずみや機器・配管系に生じる応力値等)が評価基準値を超えないことをもって,耐震重要施設の耐震安全性を確認するものである。 b建物・構築物の解析建物・構築物については,日本電気協会が策定した民間規格である「原子力発電所耐震設計技術指針(JEAG4601-1987)」(乙177,以下「JEAG4601-1987」という。)に定める手法を用いて解析を行った。 具体的には,構成部位ごとに質量・剛性・減衰を考慮して,水平2方向及び鉛直方向の方向ごとに適切な解析モデル(1次元質点系モデル)を構築し,各モデルの方向に対応する基準地震動を入力するなどして解析を行った。 本件各原子力発電所の原子炉建屋,補助一般建屋,中間建屋,ディーゼル建屋及び燃料取替用水タンク建屋について,基準地震動Ss-1~Ss-7による解析を行った結果,各建屋のせん断ひずみの最大値(評価値)は,いずれもJEAG4601-1987に定め 中間建屋,ディーゼル建屋及び燃料取替用水タンク建屋について,基準地震動Ss-1~Ss-7による解析を行った結果,各建屋のせん断ひずみの最大値(評価値)は,いずれもJEAG4601-1987に定める評価基準値2.0×10-3を下回っており,各建屋が基準地震動に対して耐震安全性を有することが確認された。 c機器・配管系の解析 抗告人は,機器・配管系については,各機器等の振動性状に応じて1次元又は3次元の解析モデルを構築し,この解析モデルに水平2方向及び鉛直方向の方向ごとに基準地震動を入力するなどして解析を行い,算出された評価値が評価基準値を超えないことを確認する,構造強度評価を行った。 また,抗告人は,上記の構造強度評価に加えて,ポンプ,制御棒等の動的機器については,地震により発生する加速度又は荷重に対して,当該設備が要求される機能(例えば,ポンプであれば,所定の送水機能が確保されていること。)を保持すること(動的機能維持)を確認する,動的機能維持評価も行った。 本件各原子力発電所の安全上重要な機器・配管系について,構造強度評価及び動的機能維持評価を行った結果,発生応力値等(評価値)は,いずれも評価基準値(許容値)を下回っており,本件各原子力発電所の安全上重要な機器・配管系が,基準地震動に対して機能が損なわれない(耐震安全性を有する)ことを確認した。 (イ)弾性設計用地震動及び静的地震力に対する耐震安全性評価抗告人は,弾性設計用地震動及び静的地震力に対する耐震安全性評価についても,JEAG4601-1987及び「原子力発電所耐震設計技術指針重要度分類・許容応力編(JEAG4601・補-1984)」(乙178,以下「JEAG4601-1984」という。)に定める手法を用いている。 抗告人は,弾性設計用地震動に対する耐震安全性評価にお 重要度分類・許容応力編(JEAG4601・補-1984)」(乙178,以下「JEAG4601-1984」という。)に定める手法を用いている。 抗告人は,弾性設計用地震動に対する耐震安全性評価において,弾性設計用地震動を入力した際の評価値が弾性設計用の評価基準値を下回ることを確認した。 また,抗告人は,静的地震力に対する耐震安全性評価においては,弾性設計用地震動に対する耐震安全性評価と異なり,耐震重要度分類に応じた所定の係数等を用いて算定される静的地震力を入力して応力解析を行うことで評価値を算出し,これが弾性設計に係る評価基準値を下回ることを確認した。評価基準値は,弾性設計用地震動による地震力に対する耐震安全性評価におけるものと同じである。 (ウ)耐震安全性評価結果を踏まえた耐震補強工事 抗告人は,新規制基準施行に伴い,本件各原子力発電所の新たな基準地震動(最大加速度700ガル)を策定したが,その策定に伴って耐震補強が必要となるもの等について,平成25年から,本件各原子力発電所の配管サポート類,原子炉補機冷却水冷却器(原子炉補機冷却水クーラ)等,合計約830箇所に及ぶ補強工事を実施しており,これらの工事は,平成27年秋に完了している(乙247)。 なお,抗告人は,耐震バックチェックの実施に際して本件各原子力発電所の基準地震動Ss(最大加速度550ガル)を策定したときにも,平成20年から21年にかけて,本件各原子力発電所の配管サポート類約50箇所について補強工事を実施している(乙248,乙249)。 イ耐震安全上の余裕の存在前記のとおり,抗告人は,本件各原子力発電所の各耐震重要施設について,地震応答解析及び応力解析を行い,これによって得られた評価値が評価基準値を下回ることを確認しているが,この耐震安全性評価においては,3つの耐震 ,抗告人は,本件各原子力発電所の各耐震重要施設について,地震応答解析及び応力解析を行い,これによって得られた評価値が評価基準値を下回ることを確認しているが,この耐震安全性評価においては,3つの耐震余裕が存在する。 すなわち,評価値の評価基準値に対する余裕(以下「①の耐震余裕」という。)に加えて,下記のとおり,評価基準値自体が,実際に機器等が機能喪失する限界値に対して余裕(以下「②の耐震余裕」という。)を持った値に設定されており,評価値を計算する過程においても,計算結果が保守的なものとなるよう,計算条件の設定等で余裕(以下「③の耐震余裕」という。)を持たせていることが認められる。 (ア)評価基準値自体の持つ余裕(②の耐震余裕)a抗告人は,本件各原子力発電所の耐震安全性評価に用いている評価基準値を,日本電気協会が策定した民間規格であるJEAG4601-1987(乙177)及びJEAG4601-1984(乙178)に基づいて設定している。 b建物・構築物の評価基準値は,JEAG4601-1987(乙177)に定められているところ,同指針には,Asクラス(新規制基準における耐震重要度分類Sクラスに相当)の施設に係る耐震設計の基本方針として,「基準地震動S2に基づいた動的解析から求められる地震力に対して,その安全機能が保持できるように設計する」と定められている。そして,評価基準値については,地震力と他の荷重とを組み合わせた状態に対し,「建物・構築物が構造物全体として十分変形能力(ねばり)の余裕を有し,終局耐力に対して安全余裕をもたせることとする」とされている。 すなわち,上記評価基準値は,終局せん断ひずみに対して余裕を持たせた値であり,仮に基準地震動による地震力が作用した際の評価値がこの評価基準値に等しくても,実際に耐震壁がせん断 する」とされている。 すなわち,上記評価基準値は,終局せん断ひずみに対して余裕を持たせた値であり,仮に基準地震動による地震力が作用した際の評価値がこの評価基準値に等しくても,実際に耐震壁がせん断力により破壊に至る限界値までにはなお余裕が存在することとなる。 c機器・配管系の評価基準値は,JEAG4601-1987(乙177)に原則的事項が記載され,その詳細はJEAG4601-1984(乙178)に定められているが,機器・配管系に使われる材料の材質のばらつきについては,その材料の破壊実験結果をもとに,実験値のばらつきや実験値の下限値を考慮して,これに余裕を見込んだ保守的な値が評価基準値として設定されている。 なお,抗告人は,本件各原子力発電所の機器等に用いられる材料について,材料メーカーが発行する材料証明書により,適切に製造された材料であることや,その材料の品質が規格等により定められた範囲内であることを確認することによって,所定の「ばらつきの下限」を上回るものであることを確認している(乙179)。 (イ)評価値の計算条件における余裕(③の耐震余裕)抗告人は,本件各原子力発電所の耐震安全性評価において,地震応答解析及び応力解析を行う際にも,評価値の計算結果が保守的なものとなるよう,下記のと おり,計算条件の設定等で考慮を加えた。 a解析モデルを構築する段階では,原子炉容器等の重要な機器等をモデル化する際に,材料の公称値を用いず,製造上定められた仕様の中で最小となるような寸法を設定することで,応力解析で求める応力(単位面積当たりに作用する荷重)が大きくなるようにした。(乙180)。また,タンク等の機器の解析モデルを構築する際に,その重量について,最大重量(満水時重量)を用いることで重心を高くし,機器に作用する応力を大きく見積もっ 荷重)が大きくなるようにした。(乙180)。また,タンク等の機器の解析モデルを構築する際に,その重量について,最大重量(満水時重量)を用いることで重心を高くし,機器に作用する応力を大きく見積もった(乙181の1,乙181の2)。 b地震応答解析を行う段階においては,各階床に設置されている機器・配管系に生じる揺れ(床応答波)のスペクトル(床応答スペクトル)を全体的に拡幅して大きくし,機器等にかかる荷重を保守的に見積もるようにした(乙179,乙182の1,乙182の2)。 実際の地震の揺れによる力は,特定の方向にかかり続けるものではなく,また,瞬間的に大きな力がかかることがあっても,それで機器・配管系が破損に至るほどの大きな変形が直ちに生じるわけではない。応力解析において,その地震の揺れによる最大の力が,機器・配管系にとって厳しい方向に一定してかかり続けるとあえて仮定して評価を行った(乙16)。 c機器・配管系の解析に際し,材料が塑性変形することによりエネルギーが吸収され,設備の揺れが抑制される効果(エネルギー吸収効果)を考慮しなかった(乙179)。 すなわち,機器・配管系に力が加わることで,これらを構成する材料が変形するが,材料に発生する応力が降伏点(弾性限界)を越えると,変形は,弾性変形から塑性変形に変わる。材料が塑性変形した場合、より大きなエネルギー吸収が期待でき,機器・配管系の揺れを抑制する効果(エネルギー吸収効果)が生じる。 この効果は,建設省告示(昭和55年建設省告示第1792号)において採用さ れ,建築物では活用可能な知見として考慮されている。エネルギー吸収効果の程度は,塑性エネルギー吸収係数として表されるが,例えば,配管等を支える支持構造物で用いられる一般鋼材については,塑性エネルギー吸収係数は約2と評価される。 して考慮されている。エネルギー吸収効果の程度は,塑性エネルギー吸収係数として表されるが,例えば,配管等を支える支持構造物で用いられる一般鋼材については,塑性エネルギー吸収係数は約2と評価される。これは,塑性エネルギー吸収係数を考慮した場合には,考慮しない場合に比べて,応力は約2分の1と評価できることを示している。 本件各原子力発電所の機器・配管系の解析に際しては,このようなエネルギー吸収効果を織り込んでおらず,このような保守的な取扱いは,計算される評価値に余裕を生じさせることになる。 (3)原子力規制委員会による審査原子力規制委員会は,本件各原子力発電所の耐震設計方針に関して,地震応答解析による地震力の算定方針が設置許可基準規則解釈別記2等に適合すること(乙14の2)を確認した。 また,原子力規制委員会は本件各原子力発電所の詳細な耐震設計に関して,地震力の算定方針が技術基準規則及び同規則解釈に適合すること等を確認し(乙100の2,乙109の2),本件各原子力発電所の工事計画について認可した(乙100の1,乙109の1)。 なお,原子力規制委員会は,上記耐震安全上の余裕についても,「建物・構築物,機器・配管系のそれぞれの強度評価における許容限界については,安全上適切と認められる規格及び基準等に基づき,施設の機能を維持又は構造強度を確保できる設定としていること・・・を確認した」(乙100の2,乙109の2),「動的地震力の算定に当たって,建物・構築物の剛性及び地盤の剛性のばらつき等を適切に考慮していることを確認した」(乙100の2,乙109の2)などと評価し,評価基準値(許容限界)が安全上適切な規格・基準の下で余裕を持たせて設定されていることや,評価値(動的地震力)が種々のばらつきを考慮して適切に算出されていることを確認した。 などと評価し,評価基準値(許容限界)が安全上適切な規格・基準の下で余裕を持たせて設定されていることや,評価値(動的地震力)が種々のばらつきを考慮して適切に算出されていることを確認した。 (4)まとめ以上によれば,抗告人は,本件各原子力発電所の「耐震安全性」に関する新規制基準適合性について,新規制基準の策定内容を含めて,不合理な点がないことを,相当の根拠及び資料に基づいて疎明したものといえる。 そこで,相手方らの主張について次に検討する。 (5)耐震安全性評価についてア相手方らの主張本件各原子力発電所に②及び③の耐震余裕があるとはいえない。 また,①の耐震余裕は,本来必要がない余分なものではなく,様々な不確実な要素を吸収するための「必要不可欠な安全代」であり,安全率が高いということは,安全であることを意味するのではなく,むしろ不確実な要素(材料の品質,施工精度,腐食や老朽化,想定外の地震)が多いことを示している。 イ検討(ア)①の耐震余裕a甲第144号証には,「もはやその余裕は真の余裕ではなく,さまざまな「不確実な要素」を吸収するための見かけの余裕ということにならないか。」(30頁)と記載されている一方で,「法的に根拠をもつ安全余裕とはどういうものか。 法的に定められている材料の許容応力と,構造設計者が詳細な応力解析によって理論的に推定している応力との差,である。それは,設計技術者が社会に対して責任をもって量的に提示できる唯一の安全余裕である。」,「そしてこれが,・・・『発生応力が許容力に対して有する余裕』でもある。これに関してのみ,異存はない」と記載されている(68頁)。 上記「法的に定められている材料の許容応力」とは評価基準値(許容値)のことであり,上記「構造設計者が詳細な応力解析によって理論的に推定している応 してのみ,異存はない」と記載されている(68頁)。 上記「法的に定められている材料の許容応力」とは評価基準値(許容値)のことであり,上記「構造設計者が詳細な応力解析によって理論的に推定している応力」とは評価値のことである。そうであるから,上記「法的に定められている材 料の許容応力と,構造設計者が詳細な応力解析によって理論的に推定している応力との差」とは,評価値の評価基準値(許容値)に対する耐震余裕(①の耐震余裕)に該当する。 そうすると,甲第144号証は,評価値の評価基準値(許容値)に対する耐震余裕(①の耐震余裕)が不確定要素を含まない余裕であることを否定する趣旨のものとはいえない。 b「材料の品質」原子力発電所の機器等に使われる材料は,高品質のものが用いられるものの,その強度等にばらつきが存在する。そこで,抗告人は,材質のばらつきについて,機器等の評価基準値(許容値)に影響を与える不確定要素として,評価基準値(許容値)の設定過程で考慮している。すなわち,本件各原子力発電所の機器・配管系については,そこで用いられている材料の破壊実験結果をもとに,実験値のばらつきや実験値の下限値を考慮した上で,これに余裕を見込んだ数値を評価基準値(許容値)として設定しており,材料の品質のばらつきの考慮は,実験値のばらつきや実験値の下限値の考慮によってなされている(乙179)。 c「施工精度」抗告人は,機器等の施工の際に生じうるばらつきについては,機器等の評価値に影響を与える不確定要素として,評価値の計算過程において考慮している。原子炉機器等の重要な機器等をモデル化するに当たっては,公称値を用いず,製造上定められた仕様の中で最小となるような寸法を設定することで応力が大きくなるよう,保守的な考慮を行っているのは,その一例である(乙179)。 d 機器等をモデル化するに当たっては,公称値を用いず,製造上定められた仕様の中で最小となるような寸法を設定することで応力が大きくなるよう,保守的な考慮を行っているのは,その一例である(乙179)。 d「腐食や老朽化」抗告人は,機器等の劣化等に対する保守管理について,機器等の性能が維持されるよう,機器等の性質に応じた保守管理方針とそれに基づく目標,実施計画を定め,定期的な検査等を実施し,必要に応じて修繕や取替えを行っている。 抗告人は,このようにして,劣化等が機器等の健全性に影響を与えていないことを確認し,技術基準に適合した状態を維持している。 また,上記の保守管理のプロセスについては,品質保証活動をすることにより,保守管理の不備による影響を排除している(乙179)。 (イ)②及び③の耐震余裕本件各原子力発電所においては,材料のばらつき等も考慮して限界値を判断した上,さらに保守的に余裕を持たせて評価基準値(許容値)を設定しているから,機器等が機能喪失する限界値に対して評価基準値(許容値)が持つ耐震余裕(②の耐震余裕)が存在するといえる。 また,評価値を計算する過程においても,評価値の計算結果が保守的なものとなるよう,計算条件の設定等で様々な保守的な評価を行っているから,評価値を計算する過程の耐震余裕(③の耐震余裕)が存在するといえる。 (ウ)以上のような耐震余裕は,本件各原子力発電所に限らず,原子力施設の耐震設計体系において一般的に認められており,原子力安全・保安院が平成24年9月に作成した「関西電力(株)高浜発電所3号機及び4号機の安全性に関する総合的評価(一次評価)に関する審査結果取りまとめ」においても,「設備等の応答評価(地震応答解析及び応力解析)の段階では,入力する地震動に対して応答を保守的に算出するような評価方法,評価条 に関する総合的評価(一次評価)に関する審査結果取りまとめ」においても,「設備等の応答評価(地震応答解析及び応力解析)の段階では,入力する地震動に対して応答を保守的に算出するような評価方法,評価条件が採用されていることに,また,許容限界(評価基準値)の設定の段階では,実際に機能喪失する限界に対して相当の裕度をもった限界が設定されていることに,保守性が存在する」(乙101)と明示されている。 (エ)耐震安全上の余裕を実証した事例原子力発電所における耐震安全上の余裕が現実に存在することについては,財団法人原子力発電技術機構(当時。以下「原子力発電技術機構」という。)の多度津工学試験センターにおける原子力発電施設耐震信頼性実証試験の結果,及び平 成19年新潟県中越沖地震により当時の基準地震動を超える地震動を受けた柏崎刈羽原子力発電所において,「安全上重要な施設・設備」の健全性に特段の問題が生じていない事実からも明らかにされている。 a多度津工学試験センターでの原子力発電施設耐震信頼性実証試験(a)原子力発電技術機構の多度津工学試験センターにおいて1982年度から2004年度まで実施された実証実験(原子力発電施設耐震信頼性実証試験)により,「安全上重要な施設・設備」の耐震安全性評価における余裕の存在が実証されている(乙35,乙106,乙107)。 この実証試験では,耐震設計上の余裕の確認,巨大地震の際に所要の機能が発揮できることの実証,耐震設計手法の妥当性の確認のため,大型高性能振動台に原子力発電所の実機に近い縮尺模型試験体を設置して,強度実証試験,設計手法確認試験,限界加振試験等が行われた。 (b)試験対象設備には,110万kW級の加圧水型(PWR)及び沸騰水型(BWR)原子力発電所における原子炉格納容器,一次冷却設備(蒸気発生 実証試験,設計手法確認試験,限界加振試験等が行われた。 (b)試験対象設備には,110万kW級の加圧水型(PWR)及び沸騰水型(BWR)原子力発電所における原子炉格納容器,一次冷却設備(蒸気発生器等),原子炉容器,炉内構造物(燃料集合体等),非常用ディーゼル発電機等が選定された(乙106)。 また,試験用の揺れ(入力波)については,試験体に最も大きい応答を与え,より厳しい試験が期待できる地震波が選定された。例えば,加圧水型(PWR)原子力発電所の原子炉格納容器については,当時運転中の全原子力発電所の基準地震動S1及び基準地震動S2を踏まえて設定された地震動による原子炉格納容器基礎における応答波とされた。 以上をもとに,強度実証試験において,基準地震動S1及び基準地震動S2をもとにした揺れにより加振して,各機器の強度,機能の健全性を確認した上で,限界加振試験では,強度実証試験で用いた揺れから加速度を上げて加振し,基準地震動S2を超える地震動に対する各機器の余裕について確認した。 (c)加圧水型(PWR)原子力発電所の設備に関する強度実証試験及び限界加振試験の結果,いずれの機器も地震時に強度及び機能が維持されていること,基準地震動S2を超える地震動に対しても十分な耐震余裕を持っていること,原子力発電所の設計手法の妥当性が確認できたとされている(乙106)。 b平成19年新潟県中越沖地震における柏崎刈羽原子力発電所の原子炉機器の健全性(a)有限責任中間法人日本原子力技術協会(現「一般社団法人原子力安全推進協会」,以下「日本原子力技術協会」という。)による原子炉機器の健全性評価①平成19年7月,新潟県中越沖で地震が発生し,北陸地方を中心に,東北地方から近畿・中国地方にかけての広い範囲で地震動が観測された。震源距離約23kmに 会」という。)による原子炉機器の健全性評価①平成19年7月,新潟県中越沖で地震が発生し,北陸地方を中心に,東北地方から近畿・中国地方にかけての広い範囲で地震動が観測された。震源距離約23kmに位置する柏崎刈羽原子力発電所(同地震の際,運転開始後約10~22年を経ていた)は,この地震発生により,基準地震動を超える大きな地震動を受けたにもかかわらず,安全上の重要機器に外観上の大きな損傷は認められなかった。 しかし,設計基準を超える地震荷重を受けた重要機器の健全性を確認し,対策を着実に実施するとともに,災害から得られた教訓を関係者が広く共有するため,平成19年9月,構造強度・検査・耐震等を専門的分野とする学識経験者及び電力・メーカー等の関係者によって,日本原子力技術協会に「中越沖地震後の原子炉機器の健全性評価委員会」が発足し,地震荷重を受けた機器の健全性評価について,解析的評価と点検結果との両面から検討が行われた。 この検討のうち,平成20年度の検討成果を中間的な報告として取りまとめたのが「中越沖地震後の原子炉機器の健全性評価平成20年度中間報告」(乙113)である。 ②上記報告書では,東京電力が実施した地震応答解析に関して,解析の有する保守性の評価結果とともに,「新潟県中越沖地震により,柏崎刈羽原子力発電所は設計用地震動を超える地震動を受けたにも関わらず,重要設備に有意な損傷は 認められなかった。この結果は,原子力発電設備の耐震設計の有する裕度が大きいことを示すものである」とされている(乙113)。 (b)国際原子力機関(IAEA)の調査報告書柏崎刈羽原子力発電所については,国際原子力機関(IAEA)の調査報告書においても,同発電所の安全上重要な施設・設備に被害が見られなかったことに関し,「安全に関連する構造,システム及び機器 査報告書柏崎刈羽原子力発電所については,国際原子力機関(IAEA)の調査報告書においても,同発電所の安全上重要な施設・設備に被害が見られなかったことに関し,「安全に関連する構造,システム及び機器は大地震であったにも関わらず,予想より非常に良い状態であり,目に見える損害はなかった。この理由として,設計プロセスの様々な段階で設計余裕が加えられていることに起因していると考えられる」との見解が示されている(乙102)。 (オ)以上によれば,本件各原子力発電所の耐震重要施設について,評価値の評価基準値(許容値)に対する耐震余裕(①の耐震余裕)に加えて,実際に機器等が機能喪失する限界値に対して評価基準値(許容値)が有する耐震余裕(②の耐震余裕),評価値を計算する過程の耐震余裕(③の耐震余裕)が存在するといえる。 (カ)本件各原子力発電所の耐震重要施設に係る評価基準値(許容値)や評価値の算出に当たって不確定要素が適切に考慮されていることは,原子力規制委員会による新規制基準適合性審査において確認されている。 (キ)したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (6)耐震補強工事についてア相手方らの主張平成18年9月19日改訂前の耐震設計審査指針に基づいて策定された本件各原子力発電所の基準地震動S2の最大加速度は370ガルであり,平成18年耐震設計審査指針に基づいて実施された耐震バックチェックの結果,基準地震動Ssの最大加速度は550ガルとなった。そうであるのに,抗告人は,計算上550ガルでも耐えられることを確認したにすぎず,何らの耐震補強工事をしていな い。 イ検討(ア)抗告人は,新規制基準を踏まえ,本件各原子力発電所の新たな基準地震動(最大加速度700ガル)を策定し,その策定に伴い耐震補強が必要となるもの等について, 事をしていな い。 イ検討(ア)抗告人は,新規制基準を踏まえ,本件各原子力発電所の新たな基準地震動(最大加速度700ガル)を策定し,その策定に伴い耐震補強が必要となるもの等について,平成25年から,同発電所の配管サポート類,原子炉補機冷却水冷却器,使用済燃料ピット冷却器等,合計約830箇所について補強工事を実施しており,これらの工事は,平成27年秋に完了している(乙247)。 また,抗告人は,平成18年9月19日の耐震設計審査指針の改訂を受けた耐震バックチェックの実施に際して,本件各原子力発電所の基準地震動Ss(最大加速度550ガル)を策定したときにも,平成20年から21年にかけて,本件各原子力発電所の配管サポート類約50箇所について補強工事を実施している(乙248,乙249)。 (イ)抗告人は,上記の工事を含む,新規制基準を踏まえた本件各原子力発電所の工事計画について,平成25年7月に原子力規制委員会にその認可を申請し,その後,平成27年8月,本件原子力発電所3号機の工事計画について,同年10月,本件各原子力発電所4号機の工事計画について,それぞれ,設置変更許可において確認された,新たな基準地震動とそれに基づく基本設計に整合したものであることが確認され,原子力規制委員会の認可を受けた(乙76,乙100の1・2,乙109の1・2)。 (ウ)以上のとおり,抗告人は,基準地震動の見直しの際に,新たな基準地震動による耐震安全性評価を実施し,その評価結果を踏まえて,必要に応じて耐震補強工事を行い,安全上重要な施設・設備の耐震安全性を確保している。 (エ)したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (7)塑性変形の繰り返しについてア相手方らの主張 地震動による応力が弾性限界を超え,設備が塑性変形を起こした場合 している。 (エ)したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (7)塑性変形の繰り返しについてア相手方らの主張 地震動による応力が弾性限界を超え,設備が塑性変形を起こした場合に,その応力がある一定の範囲内(安全機能限界内)であっても,弾性限界を超える力が複数回かかり塑性変形が繰り返されれば,その部分の強度は弱くなり,想定外の機能喪失が起こる可能性がある。 イ検討一般に,物の疲労破壊は,一定量以上の応力が一定回数以上繰り返しかかる場合に発生することが知られている。「耐震設計に係る工認審査ガイド」(乙99,以下「工認審査ガイド」という。)では,耐震重要度分類Sクラスの機器の構造強度に関する耐震設計について,評価対象部位の疲労評価を行うことが求められており(工認審査ガイド4.6.1の確認内容(1)),評価に当たって参照すべき民間規格(日本電気協会のJEAG4601-1987等又は一般社団法人日本機械学会(以下「日本機械学会」という。)の「発電用原子力設備規格設計・建設規格」)が示されている。 抗告人は,工認審査ガイドの要求事項に基づき,各機器に生じる応力が上記民間規格に定める評価基準値を下回ることを確認するなどして,適切に疲労評価を行っており,各機器が疲労破壊しないことを確認している。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (8)基準地震動と弾性設計用地震動の応答スペクトルの比率についてア相手方らの主張本件各原子力発電所の基準地震動と弾性設計用地震動の応答スペクトル比率について,従来0.58としていたのを,基準地震動の引き上げに伴って,基準で定められた最下限の0.5に引き下げているが,原子力発電所の安全性を考えるのであれば,この比率を引き下げるべきでなかった。 イ検討弾性設計用地震動については ,基準地震動の引き上げに伴って,基準で定められた最下限の0.5に引き下げているが,原子力発電所の安全性を考えるのであれば,この比率を引き下げるべきでなかった。 イ検討弾性設計用地震動については,設置許可基準規則解釈及び地震ガイドにおいて, 基準地震動との応答スペクトルの比率の値が,目安として0.5を下回らないような値で,工学的判断に基づいて設定することが要求されている(設置許可基準規則解釈別記2第4条4項1号,地震ガイドⅡ4)ところ,工学的判断として,原子炉施設の安全機能限界と弾性限界に対する入力荷重の比率が0.5程度であるという技術的知見があることからすると,上記基準が不合理であるとはいえない。 抗告人は,上記要求事項及び上記技術的知見を踏まえ,本件各原子力発電所の弾性設計用地震動について,昭和56年耐震設計審査指針における本件各原子力発電所の基準地震動S1の応答スペクトルをおおむね下回らないよう配慮して余裕を持たせた値とすることとし,基準地震動に係数0.5を乗じて設定することとした(乙76,添付資料八8-1-126)。 原子力規制委員会は,弾性設計用地震動と基準地震動の比率を0.5とすることについて,設置許可基準規則解釈及び地震ガイドに適合することを確認した(乙14の2)。 以上によれば,新規制基準の基準が不合理であるとはいえないし,抗告人は,本件各原子力発電所の弾性設計用地震動を適切に設定しているといえる。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (9)評価基準値(許容値)の定め方についてア相手方らの主張設置許可基準規則解釈は,許容限界について,必ずしも厳密な弾性限界ではなく,局部的に弾性限界を超える場合を容認しつつも施設全体としておおむね弾性範囲に留まり得ることをいう(同規則解釈別記2第4条1項)と定め 基準規則解釈は,許容限界について,必ずしも厳密な弾性限界ではなく,局部的に弾性限界を超える場合を容認しつつも施設全体としておおむね弾性範囲に留まり得ることをいう(同規則解釈別記2第4条1項)と定めている。 上記定めは,設置許可基準規則4条1項「設計基準対象施設は,地震力に十分に耐えることができるものでなければならない。」と規定し,原子炉等規制法43条の3の6第1項4号が「発電用原子炉施設の位置,構造及び設備が核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物又は発電用原子炉による災害の防止上 支障がないものとして原子力規制委員会規則で定める基準に適合するものであること。」としていることに違反するし,「おおむね弾性範囲に留まり得ること」という要件も不明確である。 イ検討(ア)設置許可基準規則4条3項は,耐震重要施設は,その供用中に当該耐震重要施設に「基準地震動による地震力」に対して「安全機能が損なわれるおそれがないものでなければならない」と定めている。 設置許可基準規則解釈は,「安全機能が損なわれるおそれがないものでなければならない」ことを満たすため,建物・構築物については,「常時作用している荷重及び運転時に作用する荷重と基準地震動による地震力との組合せに対して,当該建物・構築物が構造物全体としての変形能力(終局耐力時の変形)について十分な余裕を有し,建物・構築物の終局耐力に対し妥当な安全余裕を有していること」を要求し,機器・配管系については,「通常運転時,運転時の異常な過渡変化時及び事故時に生じるそれぞれの荷重と基準地震動による地震力を組み合わせた荷重条件に対して,その施設に要求される機能を保持すること。なお,上記により求められる荷重により塑性ひずみが生じる場合であっても,その量が小さなレベルに留まって破断延性限界に十分な余裕 組み合わせた荷重条件に対して,その施設に要求される機能を保持すること。なお,上記により求められる荷重により塑性ひずみが生じる場合であっても,その量が小さなレベルに留まって破断延性限界に十分な余裕を有し,その施設に要求される機能に影響を及ぼさないこと」等を要求している(同別記2第4条6項1号)。 (イ)前記のとおりの基準地震動に対する耐震安全性評価に加えて,弾性設計用地震動及び静的地震力に対する耐震安全性評価も行うものとされている(設置許可基準規則4条1項及び2項,同規則解釈別記2第4条1項~3項)。 弾性設計用地震動とは,発電用原子炉施設が地震力に対して耐えるために,ある地震力に対して建物・構築物及び機器・配管系がおおむね弾性範囲になるように設計する際に用いる地震動をいい,基準地震動との応答スペクトルの比率の値が,目安として0.5を下回らないような値で,工学的判断に基づいて設定することが求められている(同規則解釈別記2第4条4項1号)。また,静的地震力とは,発電 用原子炉施設に作用する地震力を一定の力(静的な力)として考え,その地震力に対して建物・構築物及び機器・配管系がおおむね弾性範囲になるように設計する際に用いる地震力をいい,一般建築物の設計に適用される層せん断力係数Ciに耐震重要度分類に応じた所定の係数等を用いて算定することが求められている(同規則解釈別記2第4条4項2号)。 そして,設置許可基準規則解釈別記2第4条1項は,「4条1項に規定する『地震力に十分に耐える』とは,ある地震力に対して施設全体としておおむね弾性範囲の設計がなされることをいう。この場合,上記の『弾性範囲の設計』とは,施設を弾性体とみなして応力解析を行い,施設各部の応力を許容限界以下に留めることをいう。また,この場合,上記の『許容限界』とは,必ずしも厳密 されることをいう。この場合,上記の『弾性範囲の設計』とは,施設を弾性体とみなして応力解析を行い,施設各部の応力を許容限界以下に留めることをいう。また,この場合,上記の『許容限界』とは,必ずしも厳密な弾性限界ではなく,局部的に弾性限界を超える場合を容認しつつも施設全体としておおむね弾性範囲に留まり得ることをいう。」と規定している。 (ウ)前記のとおり,新規制基準は,最新の科学的・技術的知見を踏まえて策定される基準地震動による地震力に対して耐震安全上重要な施設の安全機能が保持されることを,耐震安全上の要求事項としている。 設置許可基準規則解釈は,このような基準地震動に対する施設の安全機能保持をより高い精度で確認するため,別途,弾性設計用地震動を設定し,この弾性設計用地震動による地震力に対して施設全体としておおむね弾性範囲に留まっていることを要求している。すなわち,構造物の弾性設計では,地震入力と構造物の応答は比例関係にあり,算定される応答値の精度も比較的高い上,構造物の弾性限界と終局強度との間には大きな差があるため,弾性設計された構造物は,弾性設計で考慮した地震動を超過する地震動に対しても余裕をもった設計となるところ,これにより基準地震動による弾塑性解析結果の信頼性を担保し,安全機能の保持を高い精度で確認することができるといえる。 また,設置許可基準規則解釈は,一般建築物で広く用いられている静的地震力による設計手法が,原子力施設の設計においても古くから用いられており,設計実績 も豊富であり,一般建築物の構造基準である建築基準法との対比をすることも容易であることから,基準地震動や弾性設計用地震動による動的な解析と併せてSクラス施設の耐震設計の信頼性を高める役割を担わせることとし,耐震重要度に応じて,上位のクラスには大きい静的地震力を設 とも容易であることから,基準地震動や弾性設計用地震動による動的な解析と併せてSクラス施設の耐震設計の信頼性を高める役割を担わせることとし,耐震重要度に応じて,上位のクラスには大きい静的地震力を設定し,静的地震力に対して施設全体としておおむね弾性範囲に留まるように設計することを求めている。 (エ)前記のとおり,新規制基準は,設計基準対象施設(建物・構築物及び機器・配管系)について,各施設の耐震重要度分類や当該施設の有する具体的な機能に応じて,検討を要すべき地震力についても定めた上,耐震性の確認をすることを定めている。 原子力発電所施設は,様々な施設が有機的一体となった構造物であるところ,同施設の安全性について,地震の発生によって生ずるおそれがある安全機能の喪失に起因する放射線の放出を防止する機能を有するという観点から検討すべきであることを考慮すると,その耐震性については,施設全体としての安全機能を維持することが求められているといえる。 そうであるから,施設全体としての安全機能を維持するためには,施設の全部について厳密に弾性限界の範囲内である必要はなく,施設を弾性体とみなして応力解析を行い,施設各部の応力について,局部的に弾性限界を超える場合を容認しつつも施設全体としておおむね弾性範囲に留まり得ることを要求するのが合理的であるといえる。 (オ)以上によれば,設置許可基準規則解釈別記2第4条1項の定めが,設置許可基準規則4条1項又は原子炉等規制法43条の3の6第1項4号に違反するとはいえないし,「おおむね弾性範囲に留まり得ること」という要件が不明確であり,不合理であるともいえない。 (カ)したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (10)耐震重要度分類Bクラスの施設に係る影響についてア相手方らの主張 耐震重要度分 確であり,不合理であるともいえない。 (カ)したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (10)耐震重要度分類Bクラスの施設に係る影響についてア相手方らの主張 耐震重要度分類Bクラスの施設に係る設置許可基準規則解釈では,共振のおそれのある施設のみ共振による影響を検討することとされており,影響の検討に当たって弾性範囲内にとどまることを要求していない。また,影響の検討に用いる地震動は弾性設計用地震動に2分の1を乗じたもの(つまり,基準地震動に4分の1を乗じたもの)としている。 上記定め等は,設置許可基準規則4条1項の解釈として許されない。 イ検討(ア)設置許可基準規則解釈別記2第4条3項2号は,耐震重要度分類Bクラスの施設について,静的地震力に対しておおむね弾性範囲にとどまる範囲で耐えることを求めるとともに,共振するおそれのあるBクラスの施設については,その影響について検討することを求め,その検討において用いる地震動は,弾性設計用地震動に2分の1を乗じたものであることを要求している。 相手方らは,上記要求事項が設置許可基準4条1項の「設計基準対象施設は,地震力に十分に耐えることができるものでなければならない。」の解釈として許されないと主張するが,その根拠が明らかでなく,採用することができない。 (イ)抗告人は,共振による影響の検討対象に関して,共振のおそれがない施設はそもそも影響の検討の必要性がないために,その検討をしていないところ,相手方らは,共振のおそれがない施設についてまで共振による影響を検討すべきであることについて,その具体的な理由を疎明しない。 なお,静的地震力に対しておおむね弾性範囲にとどまる範囲で耐えるべきとの要求事項については,耐震重要度分類Bクラスの全ての施設が対象となっている(設置許可基準規則 て,その具体的な理由を疎明しない。 なお,静的地震力に対しておおむね弾性範囲にとどまる範囲で耐えるべきとの要求事項については,耐震重要度分類Bクラスの全ての施設が対象となっている(設置許可基準規則解釈別記2第4条3項2号)。 (ウ)弾性設計用地震動に2分の1を乗じた地震動による共振の影響の検討に当たって,当該施設が弾性範囲内にとどまるべきことについては,工認審査ガイドにおいて参照されている日本電気協会のJEAG4601-1984(乙178)では,「耐 震Bクラスの設計地震荷重に対して弾性設計をすることを前提として,許容応力を定めた」(乙178)とした上で,個別の施設の許容応力(応力についての評価基準値〔許容値〕のこと)についても,例えば容器について「Sy」(降伏点〔弾性限界〕のこと)としており(乙178),実際の新規制基準適合性審査においては,弾性範囲内にとどまることが要求されている。 (エ)したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (11)耐震重要度分類B,Cクラスの施設に係る設計についてア相手方らの主張耐震重要度分類B,Cクラスの施設について,そもそもその分類に問題がある上,静的地震力のみで設計を行うのではなく,Sクラスの施設と同様に弾性設計用地震動を用いて設計すべきである。 イ検討(ア)相手方らの上記主張は,本件各原子力発電所の耐震性に係る具体的危険性を根拠付けるものとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (イ)なお,抗告人は,設置許可基準規則及び同規則解釈,並びに地震ガイド等の要求事項を踏まえ,本件各原子力発電所の設計基準対象施設について,各機能の安全機能が喪失した場合の影響の相対的な程度に応じて耐震重要度分類を行い,原子力発電所の安全確保のために必要な機能を持つ施設に 要求事項を踏まえ,本件各原子力発電所の設計基準対象施設について,各機能の安全機能が喪失した場合の影響の相対的な程度に応じて耐震重要度分類を行い,原子力発電所の安全確保のために必要な機能を持つ施設については,耐震重要度分類Sクラスに分類している。 その上で,耐震重要度分類Sクラスの各施設が弾性設計用地震動による地震力又は静的地震力のいずれか大きい方の地震力におおむね弾性状態にとどまる範囲で耐えること,並びに耐震重要度分類B,Cクラスの設備が静的地震力に対しておおむね弾性範囲にとどまる範囲で耐えることを確認することで,本件各原子力発電所の耐震安全性を確認している。 このように,原子炉の安全性を確保するのに重要な役割を果たすものと,原子炉の通常運転に必要であるがその安全性確保に不可欠とはいえないものを区別し,前者を耐震重要度分類Sクラスとして高度の耐震安全性を持たせるという考え方は,原子力発電所全体の安全性を確保するという観点から十分な合理性があるものといえる。 (12)設計基準対象施設内の機器・構造物の材料・構造についてア相手方らの主張原子炉等規制法43条の3の14及び43条の3の23により,いわゆるバックフィットが規定され,原子力規制委員会で定める技術上の基準に適合していない発電用原子炉施設については,原子力規制委員会が使用の停止等を命ずることができるようになっている。 そうであるのに,設計基準対象施設の機器・構造物の材料及び構造について定めた技術基準規則17条1~7号及び15号は使用前に適用が限定されており,また,同規則解釈17条10号は,「この規則の施行の際現に施設し,又は着手した設計基準対象施設については,施設時に適用された規格(「発電用原子力設備に関する構造等の技術基準(昭和55年通商産業省告示第501号)」等)によ 10号は,「この規則の施行の際現に施設し,又は着手した設計基準対象施設については,施設時に適用された規格(「発電用原子力設備に関する構造等の技術基準(昭和55年通商産業省告示第501号)」等)によること」と定めており,設置時の基準を満たせば良いとされているから,上記のバックフィット規定が適用されないことになり,安全性が確保されていない。 イ検討(ア)原子炉等規制法43条の3の23第1項は,発電用原子炉施設が同法43条の3の14の技術上の基準に適合していないと認める場合等に,原子力規制委員会が,その発電用原子炉設置者に対し,当該発電用原子炉施設の使用の停止等,保安のために必要な措置を命ずることができるとしており,これがバックフィット規定であるまた,同法43条の3の14は,発電用原子炉設置者に対し,発電用原子炉施 設を原子力規制委員会規則で定める技術上の基準に適合するように維持すべきことを義務づけているところ,この原子力規制委員会規則で定める技術上の基準が技術基準規則(原子力規制委員会規則)であり,その解釈として技術基準規則解釈(原子力規制委員会決定)が定められている。 (イ)技術基準規則17条は,設計基準対象施設(一部の例外を除く)に属する容器,管,ポンプ,弁やこれらの支持構造物等の材料及び構造に関し,1~7号でそれらの材料について,8~14号でそれらの構造及び強度について,15号でそれらの溶接部について,それぞれ要求事項を定めている。 同条1~7号及び15号については,使用前のものに適用することとされている。 技術基準規則解釈17条10号及び14号は,同規則17条1~14号の規定に適合する材料及び構造について参照すべき規格を示した上で,同規則の施行の際現に施設し,又は着手した設計基準対象施設については,施設時に適用された 条10号及び14号は,同規則17条1~14号の規定に適合する材料及び構造について参照すべき規格を示した上で,同規則の施行の際現に施設し,又は着手した設計基準対象施設については,施設時に適用された規格によることとしている。 (乙184)(ウ)相手方らは,原子炉等規制法43条の3の23第1項のバックフィット規定が,技術基準規則17条及び同規則解釈17条に対しては適用が除外されていると主張する。 しかし,バックフィット規定の適用が除外されるのは,技術基準規則53条(特定重大事故等対処施設に係る要求事項)及び技術基準規則72条2項(重大事故等対処施設における常設の直流電源設備に係る要求事項)のみとされており(技術基準規則附則4項),技術基準規則17条及び同解釈17条は,バックフィット規定の適用除外とされていない。 (エ)確かに,技術基準規則17条及び同解釈17条は,新規制基準の施行前から設置されている原子力発電所(以下「既設の発電所」という)と施行後に新 たに設置される原子力発電所(以下「新設の発電所」という)について,機器等の材料及び構造物に関する要求事項について,異なる規定をしている。 そして,技術基準規則解釈17条10号及び14号は,既設の発電所に対しては「発電用原子力設備に関する構造等の技術基準(昭和55年通商産業省告示第501号)」(以下「告示501号」という。)等の規格によることを求め,新設の発電所に対しては日本機械学会「発電用原子力設備規格設計・建設規格(2005年版(2007年追補版を含む。))(JSMESNC1-2005/2007)」(以下「設計・建設規格2005」という。)等の規格によることを要求している(乙184)。 しかし,設計・建設規格2005は,国による告示501号に相当するものとして平成13年に制定さ /2007)」(以下「設計・建設規格2005」という。)等の規格によることを要求している(乙184)。 しかし,設計・建設規格2005は,国による告示501号に相当するものとして平成13年に制定され,平成17年に改訂されたものであるところ,設計・建設規格2005を経済産業省令(現「技術基準規則」)で引用した国(原子力安全・保安院)は,平成13年の制定当初の規格について,「設計・建設規格2005における各項目の細部においては,ASMECodeSectionIIIの最新情報や国内における試験研究の成果を取り込んだ規定であり,『告示501号』と異なる部分があるものの,基本的な考え方は『告示501号』と同様であり,技術的に妥当であると判断できる」(乙185)とした上で,平成17年の改訂版(設計・建設規格2005)について,「2001年版で告示501号との対応関係を確認していることから,規制の要求範囲との整合性は確保されている」と評価していることが認められる(乙185)。 そうすると,既設の発電所に対して新設の発電所と異なる規格を適用する定めをしていることが不合理であるとはいえない。 なお,技術基準規則解釈17条の規定について,原子力規制委員会は,同規則解釈に係るパブリックコメントにおいて,「現行の技術基準をバックフィットし,補強などの対策を加えて,現行基準相当の強度に達していることを証明すべき」との意見に対し,「適用する規格については施設時のものとなりますが,設計基準 地震動の見直し等により設備に対する入力が変更になった場合には,それに対し基準を満足することの評価が求められます」と回答している(乙186)。 (オ)したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (13)基準地震動に相当する地震の連続発生についてア相手方らの 基準を満足することの評価が求められます」と回答している(乙186)。 (オ)したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (13)基準地震動に相当する地震の連続発生についてア相手方らの主張平成28年熊本地震は,震度7の地震が連続して一定の地域を襲う可能性があることを明らかにした。そうであるのに,新規制基準及び本件各原子力発電所の耐震安全性の審査において,基準地震動に相当する揺れが連続して発生する事態は全く想定されておらず,本件各原子力発電所の耐震安全性が確保されていない。 イ検討(ア)平成28年熊本地震a平成28年熊本地震とは,同年4月14日に発生したM6.5の地震(以下「前震」という。)以降の一連の地震活動を指し,前震の2日後の同月16日には,M7.3の地震(以下「本震」という。)が発生した。今回の一連の地震活動領域には,布田川断層帯,日奈久断層帯等が存在するが,地震調査研究推進本部は,前震が日奈久断層帯(高野-白旗区間,日奈久区間,八代海区間の3区間によって構成される。)の高野-白旗区間の活動によるもの,本震が布田川断層帯(布田川区間,宇土区間,宇土半島北岸区間の3区間から構成される。)の布田川区間の活動によるものと評価した(乙323)。 また,地震調査研究推進本部は,平成28年熊本地震発生前の平成25年に公表した布田川断層帯及び日奈久断層帯の長期評価において,「本評価では,各断層帯の活動区間が同時に活動する場合や布田川断層帯の布田川区間と日奈久断層帯の全体が同時に活動する場合が否定できないことから,複数の活動区間が連動した場合の地震規模を評価した」とし,日奈久断層帯及び布田川断層帯を構成する各区間の断層長さや地震規模を想定するだけでなく,日奈久断層帯の全体(長さ約81km)及び布田川断層帯の布田川区間(長さ約 した場合の地震規模を評価した」とし,日奈久断層帯及び布田川断層帯を構成する各区間の断層長さや地震規模を想定するだけでなく,日奈久断層帯の全体(長さ約81km)及び布田川断層帯の布田川区間(長さ約19km)が同時に活動して,震源断層の長 さが合計約100kmに達する場合も想定しており,その場合の地震規模について,「M7.8-8.2程度の地震が発生する可能性がある」と評価していた(乙324)。 b平成28年熊本地震の前震において,KMMH16(益城)観測点の「地表」の地震計で1580ガルが観測されたが,「地表」の地震計は,表層の柔らかい地盤(S波速度110m/s程度)の上に設置されているものである(乙329,「土質図」)。 上記観測点には,地下252m付近の固い岩盤にも地震計が設置されており(乙330,KiK-net観測点一覧),上記地震計での観測値は約237ガル(南北方向)であり,「地表」における観測値と比較して,小さい値であった(乙331,「2016年4月14日熊本県熊本地方の地震による強震動」)。 以上によれば,上記観測点において「地表」と「地下」で観測値の差異が生じたのは,地震波が地盤の相対的に固いところから柔らかいところへ伝わる際に増幅されて大きくなるという特性(地盤の増幅特性〔サイト特性〕)の現れと考えられる(乙16)。 (イ)本件各原子力発電所において基準地震動に相当する地震が連続発生する危険性(a)抗告人は,本件各原子力発電所の基準地震動の策定に当たって,詳細な調査に基づき十分に保守的な条件設定の下で地震動評価を行った。 その結果,FO-A~FO-B~熊川断層による地震及び上林川断層による地震をもとにした基準地震動は,十分な大きさとなっている。 そのため,基準地震動(Ss-1)の年超過確率は10-4~10-5と非常 その結果,FO-A~FO-B~熊川断層による地震及び上林川断層による地震をもとにした基準地震動は,十分な大きさとなっている。 そのため,基準地震動(Ss-1)の年超過確率は10-4~10-5と非常に低い。また,本件各原子力発電所の「震源を特定せず策定する地震動」の基準地震動(Ss-6,Ss-7)についても,その年超過確率は10-4~10-5と非常に低い。 以上によれば,本件各原子力発電所が基準地震動に相当する大きさの地震動に襲われる可能性は非常に低いといえるし,さらに,短期間のうちに再び基準地震動に相当する地震動が本件各原子力発電所を襲うことは,ほぼ考えられない。 (b)大地震は,長期間にわたって岩盤に蓄えられたひずみが限界に達して,断層面を境にしてずれることによって生じる。地震が発生するとひずみに蓄えられていたエネルギーが解放されることから,次にひずみが限界に達するまでには長期間を要する。 本件各原子力発電所の基準地震動は,FO-A~FO-B~熊川断層による地震と上林川断層による地震を想定することにより策定されているところ,この想定に際しては,保守的な評価とするために,地震発生層全体に広がった断層面全体が一度にずれ動くものと想定している。 以上によれば,基準地震動を生じさせる地震が生じた場合,その際に当該規模の地震を発生させるのに必要なエネルギーが解放されるため,同一の活断層で次に基準地震動を生じさせる地震が発生するためには,同程度のエネルギーが蓄積するために相当の長期間を要することになる。そうすると,同一の活断層に起因して,基準地震動と同等程度の地震動が短期間に続けて発生することは,ほぼ考えられない。 (c)平成28年熊本地震は,布田川・日奈久断層帯の一部が震源となって発生したものであり,断層面全体が強い地震を複数回惹き起こ 動と同等程度の地震動が短期間に続けて発生することは,ほぼ考えられない。 (c)平成28年熊本地震は,布田川・日奈久断層帯の一部が震源となって発生したものであり,断層面全体が強い地震を複数回惹き起こした事例ではない。 前記のとおり,地震調査研究推進本部は,平成28年熊本地震発生前の時期における布田川断層帯及び日奈久断層帯の長期評価において,「本評価では,各断層帯の活動区間が同時に活動する場合や布田川断層帯の布田川区間と日奈久断層帯の全体が同時に活動する場合が否定できないことから,複数の活動区間が連動した場合の地震規模を評価した」とし,両断層帯を一連の断層として評価していた。 平成28年熊本地震では,前震(M6.5)と本震(M7.3)が短い間隔をおいて発生したものの,それらは,布田川・日奈久断層帯の一部が震源となって発生したものである。すなわち,一連のものと評価されている活断層の一部がそれぞれ破壊されたものであり,本件各原子力発電所の基準地震動の策定で想定しているような,活断層の全体が一度にエネルギーを放出するような地震が短期間に続けて発生したものではないといえる。 (d)相手方らは,平成28年熊本地震の際,益城町において震度7の揺れが2回発生したことを指摘するが,前記のとおり,震度7が観測されたのは,KMMH16(益城)観測点の地震計のうち,表層の柔らかい(S波速度約110m/s程度)地盤上の地震計であり,地下252m付近の硬い岩盤に設置された地震計の観測値は,約237ガル(南北方向)と,地上における観測値より小さい値であった。 本件各原子力発電所が,硬質な(S波速度約2200m/s)岩盤上に直接施設されていることからすると,KMMH16(益城)観測点のように柔らかい地盤上において震度7の揺れが観測されたという事実は,硬質な岩盤上に 力発電所が,硬質な(S波速度約2200m/s)岩盤上に直接施設されていることからすると,KMMH16(益城)観測点のように柔らかい地盤上において震度7の揺れが観測されたという事実は,硬質な岩盤上に施設されている本件各原子力発電所の地震に対する安全性の判断に影響を及ぼすべきものとはいえない。 (e)前記のとおり,地震調査研究推進本部は,布田川・日奈久断層帯を一連の断層として評価しているところ,九州電力も,川内原子力発電所の基準地震動の評価において,震源として考慮する活断層として,布田川・日奈久断層帯を,長さ約92kmの一続きの断層として(しかも全体が一度にずれるものとして)評価しており,その結果,同断層帯の地震の規模としてM8.1(前震のM6.5の約250倍,本震のM7.3の約16倍のエネルギーに相当する。)を想定している(乙336,「平成28年熊本地震における九州電力川内原子力発電所への影響と見解について(1)」)。 前記のとおり,平成28年熊本地震における前震と本震は,川内原子力発電所の基準地震動の策定に当たって想定していた地震よりも規模の小さなものであった。 原子力規制委員会は,前記のとおりの検討をした結果,川内原子力発電所の基準地震動の策定方法を見直す必要はないと判断している(乙337)。 (f)本件各原子力発電所では,詳細な調査により断層活動を示す痕跡が明確になくなる地点を端部と評価するなど,断層の長さを保守的に評価し,FO-A~FO-B断層と熊川断層については,連動するものと条件設定して,規模の大きな地震を想定し,これらを基準地震動の策定に反映している。 そうすると,平成28年熊本地震のように,地震動評価上,ひと続きのものとし ている断層の一部が破壊される場合に発生する地震は,想定している検討用地震よりも規模の小さいもの 策定に反映している。 そうすると,平成28年熊本地震のように,地震動評価上,ひと続きのものとし ている断層の一部が破壊される場合に発生する地震は,想定している検討用地震よりも規模の小さいものになるといえる。 (g)以上によれば,抗告人が本件各原子力発電所について策定した基準地震動は,本件各原子力発電所敷地周辺の地域性を踏まえ,詳細な調査をもとに保守的な条件設定の下で策定したものであることから,そのような基準地震動が連続して発生することは,ほぼあり得ないといえる。 (ウ)本件各原子力発電所の耐震安全性前記のとおり,本件各原子力発電所が基準地震動に連続して襲われることは,ほぼあり得ないところであるが,大きな地震動に連続して襲われたとしても,次のとおり,本件各原子力発電所の安全性は確保されるといえる。 a機器・配管系(a)新規制基準における要求事項等新規制基準において,疲労評価については,以下のとおり要求されている。 ①工事計画認可申請にかかる審査基準である「実用発電用原子炉及びその附属施設の技術基準に関する規則」(技術基準規則)は,5条2項において,耐震重要施設につき,基準地震動による地震力に対してその安全性が損なわれるおそれがないように施設すべきことを求め,技術基準規則解釈5条2項は,耐震重要施設が基準地震動の地震力に対して施設の機能を維持していること又は構造強度を有していることを求めている(乙290)。 ②これを受けて,「耐震設計に係る工認審査ガイド」(工認審査ガイド)は,「機器・配管系の構造強度に関する耐震設計においては,規制基準の要求事項に留意して,JEAG4601又は発電用原子力設備規格設計・建設規格(日本機械学会,2005/2007)の規定を参考に,評価対象部位の応力評価,疲労評価及び座屈評価を行っていること」 基準の要求事項に留意して,JEAG4601又は発電用原子力設備規格設計・建設規格(日本機械学会,2005/2007)の規定を参考に,評価対象部位の応力評価,疲労評価及び座屈評価を行っていること」(4.6.1(1),乙99)を要求し,参照すべき民間規格として,日本機械学会の「発電用原子力設備規格設計・建設規格」(乙338,「繰返し地震に対する耐震安全性確認結果(機器・配管系の耐震安全性評価結果)」添付資料1, 以下「設計・建設規格」という。)並びに日本電気協会の「原子力発電所耐震設計技術指針(JEAG4601-1987)」(乙338,添付資料2,JEAG4601-1987)及び「原子力発電所耐震設計技術指針重要度分類・許容応力編(JEAG4601・補-1984)」(乙338,添付資料2及び乙178,JEAG4601-1984,JEAG4601-1987とJEAG4601-1984を合わせて「JEAG4601」という)を示している。 ③設計・建設規格では,運転状態Ⅰ(発電用原子炉施設の通常運転時の状態をいう。)及び運転状態Ⅱ(設計基準事故時及び設計基準事故に至るまでの間に想定される環境条件において,運転状態Ⅰ,運転状態Ⅲ〔発電用原子炉施設の故障,誤動作等により原子炉の停止が緊急に必要とされる状態〕,運転状態Ⅳ〔異常な事態が生じている状態〕及び試験状態以外の状態をいう。)における疲労累積係数(以下「強度UF」という。)を評価することが求められている(乙338,添付資料1)。また,JEAG4601では,基準地震動1回あたりの疲労累積係数(「疲れ累積係数」,以下「地震UF」という。)を評価することが求められている(乙338,添付資料2)。 疲労累積係数(強度UF,地震UF)とは,機器・配管系に加えられる荷重(地震力等)の実際の繰返し回数 累積係数」,以下「地震UF」という。)を評価することが求められている(乙338,添付資料2)。 疲労累積係数(強度UF,地震UF)とは,機器・配管系に加えられる荷重(地震力等)の実際の繰返し回数(想定繰返し回数)と,繰返しピーク応力強さ(地震等によって生じる一次応力,二次応力及びピーク応力の和を基に得られる応力振幅の,プラス方向の最大値とマイナス方向の最大値を足して半分の値としたものをいう。)に対応する許容繰返し回数の比である。耐震安全性評価では,強度UFと地震UFの合計の疲労累積係数(以下「UF」という。)が評価基準値1.0を超えないことが求められている。 (b)抗告人による評価(乙338,乙339)上記要求事項を踏まえ,抗告人は,次のとおり本件各原子力発電所の「疲労評価」を行っている。 ①疲労評価の概要[i]想定繰返し回数の設定の考え方 強度UFについては,運転状態Ⅰ及び運転状態Ⅱにおける設計過渡条件(建設時の機器設計において運転状態〔起動や停止,異常な過渡等〕ごとに想定する,1次冷却材等の温度・圧力の推移をいい,構造強度に関する評価において入力条件として用いられる。)のうち,構造強度の評価の観点から考慮すべき各設計過渡条件を選定し,それぞれの設計過渡条件に対して繰返し回数(想定繰返し回数)を設定している。 選定した各設計過渡条件における繰返し回数(想定繰返し回数)は,発電所の供用期間を考慮した疲労評価に対して安全側の回数となるように設定する必要がある。 本件各原子力発電所の設計過渡条件における想定繰返し回数は,例えばプラントの起動及び停止については,本件原子力発電所3号機における実績が29回,本件原子力発電所4号機における実績が27回であるのに対して,各々120回と想定し,原子炉の自動停止については,同じく実績が3 の起動及び停止については,本件原子力発電所3号機における実績が29回,本件原子力発電所4号機における実績が27回であるのに対して,各々120回と想定し,原子炉の自動停止については,同じく実績が3回,2回であるのに対して各々400回と想定するなど,実績に対して安全側の回数としている。 また,地震UFについては,想定繰返し回数が基準地震動Ss-1~Ss-7に基づく最大の繰返しピーク応力強さの発生回数を包絡するように設定しており,安全側の回数(200回)としている。 [ii]許容繰返し回数の設定の考え方許容繰返し回数の設定については,まず,各機器・配管系に生じる応力等から繰返しピーク応力強さを算定し,その上で,設計疲労線図から,上記で算定した繰返しピーク応力強さに対応する値を読み取ることで設定する。 設計疲労線図は,機器の設計において疲労破壊を防止するため,設計・建設規格において材料に応じて規定されている線図であり,繰返しピーク応力強さと許容繰返し回数の関係が示されている。 [iii]疲労評価(疲労累積係数)の考え方疲労評価では,上記で求められた設計過渡条件における繰返し回数(想定繰返し回数)を,その事象の許容繰返し回数で除することにより,疲労係数を求める。 このようにして求めた各設計過渡条件に対する各々の疲労係数を合計したものが強度UFであり,これに地震UFを加算したものが,耐震安全性評価で確認する疲労累積係数(UF)であり,これが1.0を超えないことを確認している。 ②疲労評価の結果本件各原子力発電所の機器・配管系の,工事計画認可申請に対する審査に係る疲労評価の結果によると,疲労累積係数(UF)は,全ての機器・配管系について1.0以下となり,評価基準値を満たすことが確認された。 また,上記評価結果によると,「加圧器安全弁及び逃 に対する審査に係る疲労評価の結果によると,疲労累積係数(UF)は,全ての機器・配管系について1.0以下となり,評価基準値を満たすことが確認された。 また,上記評価結果によると,「加圧器安全弁及び逃がし弁用管台」以外の全ての機器・配管系について,「基準地震動に相当する揺れが連続して2度も襲う事態」においても(すなわち,強度UFに地震UFの2倍の値を合算しても),疲労累積係数(UF)が1.0を超えることはなく,2回の基準地震動に耐えることが確認できる。 なお,「加圧器安全弁及び逃がし弁用管台」とは,加圧器と加圧器逃がし弁(又は加圧器安全弁)とを結ぶ配管を,加圧器の本体に接続するために設けている,加圧器の頂部に溶接構造で取り付けられた台座である。 加圧器とは,高温の1次冷却材が沸騰しないよう高い圧力をかけ,かつ,1次冷却材の圧力変動を調整し,1次冷却材の圧力を一定に制御するための設備であり,加圧器安全弁及び加圧器逃がし弁とは,いずれも,1次冷却材圧力が過度に高くなった場合に開いて,過圧による設備の損傷を防止する機能を持つ弁である。 (c)原子力規制委員会による確認原子力規制委員会は,抗告人が行った上記疲労評価を含む本件各原子力発電所の詳細な耐震設計に関して,工事計画認可申請に係る審査を経ることで,技術基準規則及び同規則解釈に適合すること等の確認をし(乙100の2,乙109の2),本件各原子力発電所の工事計画について認可をした(乙100の1,乙109の1)。 (d)地震時の疲労評価における保守的な考慮 前記のとおり,疲労評価は,基準地震動1回を想定した疲労累積係数(UF,強度UFと地震UFとの和)が評価基準値1.0を超えないことを確認するものであるところ,その評価に際しては,解析を効率的に行うため,多数の機器・配管系の評価条件を包絡 を想定した疲労累積係数(UF,強度UFと地震UFとの和)が評価基準値1.0を超えないことを確認するものであるところ,その評価に際しては,解析を効率的に行うため,多数の機器・配管系の評価条件を包絡できるように保守的にパラメータを設定しており,疲労累積係数(UF)の評価値は大きな値となっている。 下記のとおり,地震UFの評価に当たって,繰返しピーク応力強さを大きく想定することで許容繰返し回数を小さく想定したり,想定繰返し回数を大きな値としたりする評価条件の保守的な考慮により,地震UFの評価値が大きくなり,疲労累積係数(UF)の評価値は大きく算定される。 ①許容繰返し回数の設定における保守的な考慮地震UFの評価においては,地震動により各機器・配管系に生じる応力から繰返しピーク応力強さを評価し,設計疲労線図から,その繰返しピーク応力強さに対応する許容繰返し回数を得て,これを評価に用いている。 抗告人は,この繰返しピーク応力強さについて,複数の基準地震動の応答スペクトル(床応答スペクトル)を包絡した床応答スペクトルを用いて評価するなどして,保守的に大きな値となるようにしている。これにより,設計疲労線図から求められる許容繰返し回数は,実際の許容繰返し回数に比べて小さく算出され,地震UFを大きく評価することになる。 ②想定繰返し回数の設定における保守的な考慮抗告人は,想定繰返し回数について,1回の地震で,前記のとおり評価した繰返しピーク応力強さが200回繰り返すものと設定している。 この設定回数については,本件各原子力発電所の機器・配管系が基準地震動により揺すられた場合に想定される繰返し回数を上回る値となっており,これにより,地震UFを大きく評価することになる。 基準地震動により機器・配管系に生じる揺れ(応答)の振幅には大小があるが,その床応答波 り揺すられた場合に想定される繰返し回数を上回る値となっており,これにより,地震UFを大きく評価することになる。 基準地震動により機器・配管系に生じる揺れ(応答)の振幅には大小があるが,その床応答波形をもとに最大の繰返しピーク応力強さの回数に換算すると,その回 数は200回を下回ることから,一律200回との設定は保守的な取扱いとなるといえる。 ③以上のとおり,抗告人は,本件各原子力発電所の機器・配管系について,保守的な条件設定で疲労評価を行っており,疲労累積係数(UF)の評価値が大きく算定されるが,このような評価においても,前記のとおり,「加圧器安全弁及び逃がし弁用管台」以外の全ての機器・配管系について,「基準地震動に相当する揺れが連続して2度も襲う事態」においても(すなわち,強度UFに地震UFの2倍の値を合算しても),疲労累積係数(UF)が1.0を超えることはなく,2回の基準地震動に耐えることを確認している。 (e)実際の状況により近づけた方法による疲労累積係数の算定①前記のとおり,本件各原子力発電所の機器・配管系のうち,「加圧器安全弁及び逃がし弁用管台」のみ,疲労評価上,2回の基準地震動に耐えることまでは確認できなかった(強度UFに地震UFの2倍の値を合算すると,疲労累積係数〔UF〕が1.0を超えた。本件原子力発電所3号機については1.02135,本件原子力発電所4号機については1.05618。)。 そこで,抗告人は,工事計画認可申請に当たって用いた疲労評価手法に基づき,各機器・配管系が実際に置かれる状況により近づけた方法で疲労累積係数(UF)を算定した。 具体的には,地震UFの許容繰返し回数を実際の状況により近づけて評価し,それを基に疲労累積係数(UF)を算定した(なお,前記のとおり,本件原子力発電所4号機の「加圧器安全 係数(UF)を算定した。 具体的には,地震UFの許容繰返し回数を実際の状況により近づけて評価し,それを基に疲労累積係数(UF)を算定した(なお,前記のとおり,本件原子力発電所4号機の「加圧器安全弁及び逃がし弁用管台」の方が本件原子力発電所3号機の同設備より地震UFの値が大きいため,本件原子力発電所4号機について算定した。)。 その結果,抗告人は,下記のとおり,複数回の基準地震動に耐えることを確認した。 ②前記のとおり,繰返しピーク応力強さの評価に必要な応力の算出に当たって は,複数の基準地震動の応答スペクトル(床応答スペクトル)を包絡した床応答スペクトルを用いているところ,実際に置かれる状況により近づけるため,「加圧器安全弁及び逃し弁用管台」について,個別の基準地震動の床応答スペクトルを用いて繰返しピーク応力強さを算出し,許容繰返し回数を算出した。 ③上記の許容繰返し回数をもとに評価した結果,「加圧器安全弁及び逃がし弁用管台」の地震UFは,複数の基準地震動の床応答スペクトルを包絡した床応答スペクトルを用いた場合で0.527であったのに対し,個別の基準地震動による床応答スペクトルを用いた場合で0.048と,10分の1以下に小さくなり,疲労累積係数(UF)が評価基準値1.0を大きく下回ることとなったことから,複数回の基準地震動に耐えることが確認できた。 ④抗告人は,以上のとおり,「加圧器安全弁及び逃がし弁用管台」を含め,本件各原子力発電所の各機器・配管系は全て,2回の基準地震動に耐えることを確認した。 なお,今回行った評価は,「加圧器安全弁及び逃がし弁用管台」を対象に,許容繰返し回数についてのみ,実際の状況により近づけた方法で評価を行ったものである。 そうすると,当該機器について,上記の評価に加えて想定繰返し回数についても実際 全弁及び逃がし弁用管台」を対象に,許容繰返し回数についてのみ,実際の状況により近づけた方法で評価を行ったものである。 そうすると,当該機器について,上記の評価に加えて想定繰返し回数についても実際の状況により近づけた方法で評価を行った場合,評価基準値1.0と疲労累積係数(UF)との差はさらに増える結果になると考えられる。 (f)以上のとおり,抗告人は,本件各原子力発電所の安全上重要な機器・配管系について,新規制基準の要求事項等を踏まえ,適切に疲労評価を実施し,その妥当性は原子力規制委員会にて審査され認可されている。 また,抗告人の疲労評価には十分な保守性が考慮されているところ,この保守性が考慮されている評価においても,一部の機器・配管系を除き,複数回の基準地震動に耐えることが確認できた上,実際の状況により近づけた評価を行ったところ,全ての機器・配管系について,「基準地震動に相当する揺れが連続して2度も襲う事態」においても安全性が確保されることが確認されているといえるから,大きな 地震動に繰り返し襲われても,本件各原子力発電所の機器・配管系の耐震安全性は確保されているといえる。 b建物・構築物(a)規制における要求事項等新規制基準において,建物・構築物の評価については,以下のとおり要求されている。 ①工事計画認可申請にかかる審査基準である技術基準規則は,5条2項において,耐震重要施設につき,基準地震動による地震力に対してその安全性が損なわれるおそれがないように施設すべきことを求め,技術基準規則解釈5条2項は,耐震重要施設が基準地震動の地震力に対して施設の機能を維持していること又は構造強度を有していることを求めている(乙290)。 ②これを受けて,工認審査ガイドは,「Sクラスの建物・構築物については,基準地震動Ssによる地震 の地震力に対して施設の機能を維持していること又は構造強度を有していることを求めている(乙290)。 ②これを受けて,工認審査ガイドは,「Sクラスの建物・構築物については,基準地震動Ssによる地震力と地震力以外の荷重の組合せに対して,構造物全体としての変形能力(終局耐力時の変形)について十分な余裕を有し,建物・構築物の終局耐力に対し妥当な安全余裕を有していること」(3.6(1),乙99)を要求し,参照すべき民間規格としてJEAG4601-1987(乙339,「繰返し地震に対する耐震安全性確認結果(建物・構築物の耐震安全性評価結果)」添付資料1)他を示している。 そして,JEAG4601-1987では,最大せん断ひずみ(せん断ひずみとは,外力を受けて物体内部で生じる,ずれを生じさせる力〔せん断力〕によって変形〔せん断変形〕する際の変形の割合をいい,耐震壁のせん断変形〔長さ〕を高さで除することで求められる。)の評価基準値2.0×10-3が示されている(乙339,添付資料1)。 (b)抗告人による評価抗告人は,本件各原子力発電所の建物・構築物について,解析モデルを構築し,基準地震動を用いた地震応答解析を行い,耐震壁において生じる最大応答せん断ひずみが,評価基準値2.0×10-3以内に収まることを確認している。 具体的には,基準地震動による最大応答せん断ひずみの評価結果は,最も厳しい評価値となった原子炉建屋においても1.05×10-3となり,評価基準値2.0×10-3に対して十分な余裕があることを確認している(乙339)。 (c)上記の評価における保守性上記の評価に用いたJEAG4601-1987に示されている,耐震壁のせん断ひずみの評価基準値2.0×10-3は,終局せん断ひずみ4.0×10-3に対し余裕を持たせて設定されたものである ける保守性上記の評価に用いたJEAG4601-1987に示されている,耐震壁のせん断ひずみの評価基準値2.0×10-3は,終局せん断ひずみ4.0×10-3に対し余裕を持たせて設定されたものである。 また,終局せん断ひずみ4.0×10-3は,実験結果に基づき設定されたものであり,耐震壁の損傷限界点に対して余裕がある。 以上によれば,上記のせん断ひずみの評価基準値2.0×10-3は,十分な安全余裕を有したものとなっている。 そうすると,上記の最大応答せん断ひずみの評価値(原子炉建屋について1.05×10-3)は,耐震壁のせん断ひずみの評価基準値2.0×10-3や,終局せん断ひずみ4.0×10-3に対して十分な余裕があり,建物・構築物の復元力(変形後に元の形状に戻ろうとする力)が期待できる範囲内にあることから,同程度の地震力が繰り返し作用したとしても,最大応答せん断ひずみの評価値は大きく進展しないと考えられる。 (d)基準地震動の繰返しに対する安全性の確認抗告人は,「基準地震動に相当する揺れが連続して2度襲う事態」を仮定した条件で解析を行った。 すなわち,工事計画認可申請に当たって用いた評価手法に基づき,継続時間が約80秒(基準地震動Ss-2~Ss-7の継続時間は,それぞれ10秒前後である。)と長い基準地震動Ss-1に2回襲われるとの条件をあえて設定し,解析を行った。 その結果,最大応答せん断ひずみの評価結果は,最も厳しい評価値となった原子炉建屋においても1.24×10-3となり,評価基準値2.0×10-3に対して十分な余裕があるとの結果が得られた。 (e)以上のとおり,抗告人は,本件各原子力発電所の建物・構築物について,新規制基準の要求事項等を踏まえ,工事計画認可申請においてせん断ひずみの評価を行っており,その妥当性は原子力規制委 (e)以上のとおり,抗告人は,本件各原子力発電所の建物・構築物について,新規制基準の要求事項等を踏まえ,工事計画認可申請においてせん断ひずみの評価を行っており,その妥当性は原子力規制委員会にて審査され認可されている。 また,抗告人の評価においては十分な保守性が考慮されているし,「基準地震動に相当する揺れが連続して2度も襲う事態」を仮定した条件で解析した場合においても,安全性が確保されることが確認されている。 以上によれば,大きな地震動に繰り返し襲われても本件各原子力発電所の建物・構築物の耐震安全性は確保されているといえる。 c原子炉格納容器の伸縮式配管貫通部主給水系統配管(乙399の1)(a)原子炉等規制法43条の3の22第1項及び「実用発電用原子炉の設置,運転等に関する規則」(実用炉規則)82条は,原子炉の運転を開始した日から30年を経過するまでに高経年化技術評価を行うことを要求している。 実用発電用原子炉施設における高経年化対策実施ガイド(別紙「規則・告示・内規一覧表(41),以下「高経年化対策実施ガイド」という。)では,経年劣化を考慮して,機器・構築物ごとに「実用発電用原子炉及びその附属設備の技術基準に関する規則」(技術基準規則)に照らして耐震安全性を評価していることを要求し,同規則5条2項は,耐震重要施設は基準地震動に対して安全機能が損なわれるおそれがないものであることを要求している。 また,高経年化対策実施ガイドでは,耐震安全性評価の実施の際の参考規格として,JEAG4601及び設計・建設規格を挙げている。 (b)原子炉格納容器の伸縮式配管貫通部主給水系統配管(主給水配管)抗告人は,原子炉格納容器の伸縮式配管貫通部主給水系統配管のうちの「伸縮継手」について,高経年化技術評価の対象について,次のとおり,繰り返し地震に 納容器の伸縮式配管貫通部主給水系統配管(主給水配管)抗告人は,原子炉格納容器の伸縮式配管貫通部主給水系統配管のうちの「伸縮継手」について,高経年化技術評価の対象について,次のとおり,繰り返し地震に対する耐震安全性を確認している。 ①伸縮継手の構造について伸縮継手は,配管に生じる変位を吸収することができる構造となっている継手 (配管のジョイント)のことであり,本件各原子力発電所の伸縮継手はベローズ(蛇腹)の伸縮・屈曲によって変位を吸収する構造の機器である。地震発生の際,伸縮継手の両端部で原子炉格納容器と配管が時々刻々独立して動くことで,伸縮継手が伸び縮みして変位が生じ,この変位によって伸縮継手は疲労していく。 ②伸縮継手に係る疲労評価前記のとおり,伸縮継手における疲労累積係数(強度UF,地震UF)とは,1回の地震に対して想定される最大変位の繰返し回数(想定繰返し回数)と,変位により発生する応力に対応する許容繰返し回数の比である。 また,抗告人は,想定繰返し回数の設定のうち,地震UFの想定繰返し回数については,基準地震動(Ss-1~Ss-7)に基づく最大変位の発生回数を包絡するように設定しており,安全側の回数(200回)としている。 なお,抗告人は,伸縮継手については,他の機器・配管系の設定方法と異なる方法で許容繰返し回数を設定している。すなわち,変位量(伸縮継手の伸び縮みの量)から当該部位に作用する応力を算出し,「発電用原子力設備規格設計・建設規格(2005年版)<第Ⅰ編軽水炉規格>」(乙399の2)に基づく数式から許容繰返し回数を算出する。 ③疲労評価における保守性[i]許容繰返し回数の保守性伸縮継手は,時々刻々と変化する地震波により,伸縮継手の両端部で接続する原子炉格納容器及び配管が地震動の影響を受けて独立して動く 算出する。 ③疲労評価における保守性[i]許容繰返し回数の保守性伸縮継手は,時々刻々と変化する地震波により,伸縮継手の両端部で接続する原子炉格納容器及び配管が地震動の影響を受けて独立して動くことで,伸び縮みする(変位が生じる)。伸縮継手の変位量は,貫通部における原子炉格納容器の変位と配管の変位の差で算出する。 伸縮継手に発生する応力は,変位量の増加に応じて増加することから,実際の変位量よりも大きく変位量を算出して,これを変位量と応力の換算式に与え,伸縮継手の応力を大きく算出している。これをもとに許容繰返し回数を算出すると,実際に地震が発生した状態よりも許容繰返し回数を評価上少なく見積もることになる。 [ii]想定繰返し回数の保守性抗告人は,想定繰返し回数(1回の地震に対して想定される最大変位の繰返し回数)を200回と設定している。この設定回数については,本件各原子力発電所の機器・配管系が基準地震動により揺すられた場合に想定される繰返し回数を上回る値となっており,これにより,地震UFを大きく評価することになる。 ④高経年化技術評価での結果高経年化技術評価における地震UFは,前記のとおり,許容繰返し回数を実際よりも小さく設定していること,また想定繰返し回数を機器・配管系に発生する実際の繰返し回数よりも大きく設定していることから,保守的に算出されたものである。 その結果,伸縮継手(主給水系統)については,高経年化技術評価上では,基準地震動2回に耐えることまでは確認できなかった。 ⑤実際の状況により近づけた方法による疲労累積係数の算定抗告人は,高経年化技術評価に当たって用いた疲労評価手法に基づき,伸縮継手が実際に置かれる状況により近づけた方法で疲労累積係数(UF)を算定した。 具体的には,地震UFの想定繰返し回数を実際の状況によ 抗告人は,高経年化技術評価に当たって用いた疲労評価手法に基づき,伸縮継手が実際に置かれる状況により近づけた方法で疲労累積係数(UF)を算定した。 具体的には,地震UFの想定繰返し回数を実際の状況により近づけて評価し,それを基に疲労累積係数(UF)を算定した。想定繰返し回数については,前記のとおり,本件各原子力発電所の機器・配管系が基準地震動により揺すられた場合に想定される繰返し回数を上回る200回と設定しているところ,伸縮継手の評価において想定すべき想定繰返し回数を個別に設定し,これを用いて地震UFを算定した。 すなわち,基準地震動によって伸縮継手が時々刻々に受ける応答波形を決定し,その地震による歪みエネルギー量の総和を算出した上で,これを最大変位量を振幅とする正弦波に換算したときにエネルギー量として等価になるように繰返し回数を決定した。 上記方法により伸縮継手の想定繰返し回数を算出したところ,200回だったものが55回となり,これをもとに算定した結果,地震UFは0.485から0.134と小さな値になり,疲労累積係数(UF)も評価基準値1.0を大きく下回るこ ととなった。例えば,本件原子力発電所3号機については,強度UF(0.203)に地震UF(0.134)の5倍(0.67)を合算しても疲労累積係数(UF)は0.873となり,評価基準値1.0を下回った。 ⑥以上によれば,伸縮継手についても,繰り返し地震に対する耐震安全性が確認されている。 (エ)したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (14)中性子照射脆化等による劣化についてア相手方らの主張多度津工学試験センターでの原子力発電施設耐震信頼性実証試験について,同試験で用いられた試験体は全て新品であるところ,実機では長年の運転による中性子照射脆化等によって劣化して てア相手方らの主張多度津工学試験センターでの原子力発電施設耐震信頼性実証試験について,同試験で用いられた試験体は全て新品であるところ,実機では長年の運転による中性子照射脆化等によって劣化しているから,この実験で大幅な安全余裕が認められたとしても,実機では同様の余裕は見込めないし,どの程度の余裕を見込めるかも明らかでない。 イ検討(ア)抗告人は,機器等の劣化等に対する保守管理について,機器等の性能が維持されるよう,機器等の性質に応じた保守管理方針とそれに基づく目標,実施計画を定め,定期的な検査等を実施し,必要に応じて修繕や取替えを行っており,このようにして,劣化等が機器等の健全性に影響を与えていないことを確認し,技術基準に適合した状態を維持している(乙179)。 抗告人は,本件各原子力発電所における中性子照射脆化等を含む経年劣化事象について,高経年化技術評価(運転開始から30年を経過するまでに行う経年劣化に関する技術的な評価)において,60年の運転期間を想定した経年劣化評価を実施している。また,上記評価結果をもとに,以降10年間で実施していくべき保守管理の方針(長期保守管理方針)を策定している。 原子力規制委員会は,高経年化技術評価の審査において,上記方針の妥当性を確認し(乙332,「『高浜発電所原子炉施設保安規定変更認可申請』(3号炉の高経 年化技術評価等)に係る審査について」,乙333,「『高浜発電所原子炉施設保安規定変更認可申請』(4号炉の高経年化技術評価等)に係る審査について」),同方針の内容につき保安規定の一部として保安規定変更認可をしている(乙334,「関西電力株式会社高浜発電所の原子炉施設保安規定の変更認可について」(高浜発電所3号機),乙335,同(高浜発電所4号機))。 (イ)以上のとおり,抗告人は,機 規定変更認可をしている(乙334,「関西電力株式会社高浜発電所の原子炉施設保安規定の変更認可について」(高浜発電所3号機),乙335,同(高浜発電所4号機))。 (イ)以上のとおり,抗告人は,機器等の劣化等に対する保守管理について適切な品質保証活動を行い,その性能が技術基準を下回らないよう適切に管理するとともに,経年劣化事象を適切に評価しており,その評価結果及び保守管理の方針については原子力規制委員会の確認も受けている。 そうすると,実機の機器等の経年劣化事象が耐震安全性に有意な影響を与えることはなく,長年の運転を経た実機においても耐震安全上の余裕の減少は限定的なものにとどまるものといえる。 (ウ)したがって,相手方らの主張を採用することができない。 津波に対する安全確保対策(基準津波策定)(1)新規制基準における基本方針ア設置許可基準規則は,設計基準対象施設は,その供用中に当該設計基準対象施設に大きな影響を及ぼすおそれがある津波(基準津波)に対して安全機能が損なわれるおそれがないものでなければならないと規定している。 設置許可基準規則解釈及び津波ガイドは,設置許可に係る審査において,上記基本方針に関して,次の事項を確認するものと定めている。 (ア)基準津波は,最新の科学的・技術的知見を踏まえ,波源海域から敷地周辺までの海底地形,地質構造及び地震活動性等の地震学的見地から想定することが適切なものを策定すること。 (イ)基準津波は,地震のほか,地すべり,斜面崩壊等地震以外の要因,及びこれらの組合せによるものを複数選定し,不確かさを考慮して数値解析を実施し,策定すること。 (ウ)基準津波の時刻歴波形を示す際は,敷地前面海域の海底地形の特徴を踏まえ,時刻歴波形に対して施設からの反射波の影響が微小となるよう,施設から離れ して数値解析を実施し,策定すること。 (ウ)基準津波の時刻歴波形を示す際は,敷地前面海域の海底地形の特徴を踏まえ,時刻歴波形に対して施設からの反射波の影響が微小となるよう,施設から離れた沿岸域における津波を用いること。 (エ)なお,基準津波の策定に当たっての調査については,目的に応じた調査手法を選定するとともに,調査手法の適用条件及び精度等に配慮することによって,調査結果の信頼性と精度を確保すること。 (2)津波に関する調査ア設置許可基準規則等設置許可基準規則解釈は,津波の調査においては,調査地域の地形・地質条件に応じ,既存文献の調査,変動地形学的調査,地質調査及び地球物理学的調査等の特性を活かし,これらを適切に組み合わせることを求めている(設置許可基準規則解釈別記3第5条2項七)。 イ抗告人の対応(乙76)抗告人は,設置許可基準規則等の要求事項を踏まえ,基準津波の波源とする波源モデルの設定等に必要な調査を,次のとおり実施した。 (ア)過去の津波に関する文献調査抗告人は,本件各原子力発電所の敷地周辺で過去に発生した津波(既往津波)について,文献調査を実施した(乙44)。 具体的には,既往津波に関する主要な文献である羽鳥(1984),理科年表,日本被害地震総覧,羽鳥(2010),日本被害津波総覧,地震・火山月報等といった様々な文献を調査し,日本海における既往津波,その津波の波源となった地震の位置・規模・発生様式,津波の規模,日本海沿岸での痕跡高(津波の発生後,建物や斜面上に残された変色部や漂着部までの高さであり,基準面〔津波襲来時の海面の高さである汀線〕から測った高さをいう。),被害状況等を確認した。 上記調査により,日本海沿岸に大きな被害をもたらした津波としては,昭和58 年日本海中部地震及び平成5年北海道南 襲来時の海面の高さである汀線〕から測った高さをいう。),被害状況等を確認した。 上記調査により,日本海沿岸に大きな被害をもたらした津波としては,昭和58 年日本海中部地震及び平成5年北海道南西沖地震による津波が認められたが,これらの津波を含めても,本件各原子力発電所の安全性に影響を及ぼすような津波の記録は認められなかった(乙44)。 (イ)津波堆積物調査津波が陸地に到達すると,海域の砂や泥,生物の遺骸等が津波により運搬され,陸地に堆積する。このような堆積物を津波堆積物といい,ボーリング等により津波堆積物の有無を確認し,津波堆積物が採取された場合には詳細に観察・分析することにより,津波の発生した時代や到達範囲等を明らかにすることができる。 そこで,抗告人は,若狭湾周辺に原子力施設を有する日本原子力発電及び独立行政法人日本原子力研究開発機構と,若狭湾沿岸の三方五湖周辺,久々子湖東方陸域及び猪ヶ池において,完新世(約1万年前から現在まで)を調査対象とした津波堆積物調査を実施した。 その結果,本件各原子力発電所の安全性に影響を及ぼすような津波の痕跡は認められなかった(乙44,乙45)。 (ウ)活断層,地すべり等の調査抗告人は,基準津波の波源となり得るものの選定に当たり,本件各原子力発電所に大きな水位変動を及ぼす津波の波源となる可能性のある敷地周辺の海域活断層等による地震,地すべり,火山活動について,国や大学等の信頼できる機関による調査・研究結果を参照するとともに,変動地形学的調査,海上音波探査,現地踏査等の詳細な調査を実施した。 ウ原子力規制委員会による審査原子力規制委員会は,津波に関する調査について,抗告人が波源モデルの設定等に必要な調査を実施しており,設置許可基準規則解釈別記3の規定に適合していることを確認した(乙14の2)。 制委員会による審査原子力規制委員会は,津波に関する調査について,抗告人が波源モデルの設定等に必要な調査を実施しており,設置許可基準規則解釈別記3の規定に適合していることを確認した(乙14の2)。 (3)波源の選定及び津波水位の評価 ア設置許可基準規則等設置許可基準規則解釈は,津波を発生させる要因として,海域の活断層による地殻内地震だけでなく,地震以外の要因である陸上及び海底での地すべり及び斜面崩壊,火山現象等を考慮して,敷地に大きな影響を与えると予想される要因を複数選定することを求めている(設置許可基準規則解釈別記3第5条2項1号)。 そして,基準津波の策定の過程に伴う不確かさの考慮に当たっては,策定に及ぼす影響が大きいと考えられる波源特性の不確かさの要因及びその大きさの程度並びにそれらに係る考え方等による不確かさを十分踏まえることを求めている(設置許可基準規則解釈別記3第5条2項6号)。 また,安全側に立って評価を実施するとの観点から,行政機関により敷地又はその周辺の津波が評価されている場合には,必要な科学的・技術的知見を基準津波の策定に反映することを求めている(設置許可基準規則解釈別記3第5条2項5号)。 イ抗告人の対応(乙76)設置許可基準規則等の要求事項を踏まえ,抗告人は,次のとおり,津波の発生要因として考えられる,地震,地すべり,火山活動による山体崩壊による影響を評価し,その中から,本件各原子力発電所に大きな影響を及ぼす可能性のある①地震及び②地すべりの各波源を選定し,これらについて不確かさを十分に考慮して,評価点における津波水位を算定した。 また,抗告人は,より安全側に立って評価するとの観点から,③行政機関である福井県が想定した波源モデル,秋田県が想定した波源モデル,国土交通省等の「日本海における大規模地震に ける津波水位を算定した。 また,抗告人は,より安全側に立って評価するとの観点から,③行政機関である福井県が想定した波源モデル,秋田県が想定した波源モデル,国土交通省等の「日本海における大規模地震に関する調査検討会」(以下「検討会」という。)が想定した波源モデルについても評価対象とし,津波水位を算定した。 (ア)地震による津波津波を発生させる要因(波源)となる地震としては,敷地周辺の海域活断層に よる地震,日本海東縁部の断層による地震,海溝型のプレート境界で発生するプレート間地震及び海洋プレート内地震がある。この点,太平洋側に想定される海溝型のプレート間地震及び海洋プレート内地震については,本件各原子力発電所に大きな水位変動を及ぼすような津波の痕跡が認められず,そもそも日本海側には影響しないと考えられることから,抗告人は,本件各原子力発電所の津波評価に当たっては,敷地周辺の海域活断層による地震及び日本海東縁部の断層による地震について検討した。 具体的には,文献調査及び敷地周辺の活断層調査結果を踏まえ,本件各原子力発電所に大きな水位変動をもたらす津波の波源となり得る断層として,①発電所敷地前面及び敷地周辺海域において,後期更新世以降(約12~13万年前以降)の活動が否定できない活断層(19の活断層),及び,②日本海で大きな地震が発生している日本海東縁部の断層のそれぞれについて,土木学会の「原子力発電所の津波評価技術」(乙42)に基づき,敷地への影響が最も大きくなるような波源を検討対象として選定した上で,数値シミュレーションを実施し,津波水位を算出した。なお,津波水位の算出に当たっては,潮位,海水ポンプ等の稼動状況,地震に伴う発電所敷地地盤の変動量等についても考慮した。 a上記①発電所敷地前面及び敷地周辺の海域活断層については,阿部 を算出した。なお,津波水位の算出に当たっては,潮位,海水ポンプ等の稼動状況,地震に伴う発電所敷地地盤の変動量等についても考慮した。 a上記①発電所敷地前面及び敷地周辺の海域活断層については,阿部(1989)に示される,津波を発生させる地震の規模を表すモーメントマグニチュードと津波の伝播距離により津波高を概算する簡易予測式を用いて,発電所敷地に到達する推定津波高さを算定し,推定津波高さが1m以上となるFO-A~FO-B~熊川断層等の4つの海域活断層を検討対象とした(乙44)。 なお,FO-A~FO-B断層と熊川断層が連続していることを示す地質構造は確認されていないものの,抗告人は,原子力規制委員会における議論を踏まえ,地震動評価だけでなく津波評価においても,より安全側に立って(本件各原子力発電所敷地に到達する津波がより高くなるように),FO-A~FO-B断層と熊 川断層が連動した場合を考慮して評価することとした。 b上記②日本海東縁部の断層については,地震調査研究推進本部地震調査委員会(2003)など,この領域で発生した地震に伴う津波に関する既往の検討結果を踏まえ,モーメントマグニチュード7.85の波源モデルを設定した(乙44)。 これは,日本海東縁部で発生した地震に伴う津波を再現する波源モデルのうち,モーメントマグニチュードが最大である,平成5年北海道南西沖地震による津波に対して設定された波源モデルを上回るものである。 c上記検討対象とした4つの海域活断層と日本海東縁部の断層について,土木学会の「原子力発電所の津波評価技術」(乙42)等に基づき,不確かさの因子である断層の位置,広域応力場等を合理的と考えられる範囲で変化させた数値シミュレーションを多数実施するパラメータスタディを行い,各断層について,断層のずれによる海底地形の変 に基づき,不確かさの因子である断層の位置,広域応力場等を合理的と考えられる範囲で変化させた数値シミュレーションを多数実施するパラメータスタディを行い,各断層について,断層のずれによる海底地形の変化やこれに伴う海面の挙動の伝播状況を計算して,水位変動量が最大となるケースを確認した。その結果,水位変動量の大きい波源として,大陸棚外縁~B~野坂断層及びFO-A~FO-B~熊川断層を選定した。 その上で,選定した2つの波源について,上記パラメータスタディにおいて水位変動量が最大となったケースの諸元を用いて,海底地形等をさらに詳細にモデル化した詳細な数値シミュレーションを実施し,地震発生時の断層のずれに伴う海面の挙動がどのように伝わるかを計算して,評価点における津波水位を算出した(乙44)。 (イ)地震以外の要因による津波a海底地すべりによる津波海底地すべりによる津波については,本件各原子力発電所に大きな水位変動をもたらすと考えられる海底地すべり地形を選定した上で,津波水位の検討を行った。 徳山英一ほか「日本周辺海域の中新世最末期以降の構造発達史」(2001)に は,日本海側に存在する海底地すべり地形として,本件各原子力発電所の北西海域に広がる海底盆地である隠岐トラフ付近に分布する海底地すべり地形群が示されているほか,地質調査所(現「産業技術総合研究所地質調査総合センター」)が作成した海底地質図にも,隠岐トラフ付近の広範囲に,海底地すべり地形と考えられる崩落崖の記載がある(乙44)。 抗告人は,想定される地すべりの崩壊規模,本件各原子力発電所との位置関係等から,これらの隠岐トラフ付近に分布する海底地すべり地形群が,日本海に存在する海底地すべり地形のうち本件各原子力発電所に大きな水位変動をもたらし得るものと考え,文献調査や地質調査所が との位置関係等から,これらの隠岐トラフ付近に分布する海底地すべり地形群が,日本海に存在する海底地すべり地形のうち本件各原子力発電所に大きな水位変動をもたらし得るものと考え,文献調査や地質調査所が実施した海上音波探査の記録の解析・評価を行い,海底地すべり地形の有無を詳細に確認して,隠岐トラフの南東側及び南西側の水深約500~1000m付近の大陸斜面にある38の海底地すべり地形を抽出した。 そして,地すべりの発生する位置や崩落していく方向によって,発生する波の形状等が異なることから,抽出した海底地すべり地形について,その位置及び向きにより,大きく3つのエリア(エリアA~C)に分けた上で,エリア毎に最も規模の大きな海底地すべり地形を選定した。 その上で,これらのエリア毎に選定した最大規模の海底地すべり地形について,崩壊の態様を推定することで,海底地すべりの発生に伴い海面がどのように挙動するかを想定し,数値シミュレーションによりその海面の挙動がどのように伝わるかを計算して,評価点における津波水位を算出した(乙44)。 b陸上地すべりによる津波陸上地すべりによる津波について,本件各原子力発電所に大きな水位変動をもたらすと考えられる陸上地すべり地形を選定した上で,津波水位の検討を行った。 まず,国立研究開発法人防災科学技術研究所の地すべり地形分布図データベースをもとに,崩壊規模,本件各原子力発電所との位置関係等から,本件各原子力 発電所に影響を及ぼす津波を発生させ得る陸上地すべりが存在すると考えられる3つのエリア(内浦湾東方,内浦湾南方及び大島半島西方)を抽出した上で,空中写真・航空レーザー測量による地形判読及び現地踏査を実施し,それぞれのエリアにおける地すべり地形を抽出した(乙44)。この抽出された地すべり地形について,水位予測式を用い 西方)を抽出した上で,空中写真・航空レーザー測量による地形判読及び現地踏査を実施し,それぞれのエリアにおける地すべり地形を抽出した(乙44)。この抽出された地すべり地形について,水位予測式を用いて,内浦湾南方(青葉山北側斜面),内浦湾東方,及び大島半島西方の各ポイントを,検討対象の地すべり地形として選定した(乙44)。 そして,選定した地すべり地形について,詳細な地形判読及び現地踏査の結果から地すべり地形範囲の詳細な判読を行い,福井県による地すべり調査結果も参考に,崩壊範囲,崩壊土砂量を想定した。なお,内浦湾南方(青葉山北側斜面)のNo.1の地すべりについては,周囲の領域は古い地すべりと考えられたものの,明確な新旧区分が困難であったことから,No.1とその周囲のNo.2及びNo.3の領域を一体とした地すべりを想定した。 その上で,地すべりによる土砂が海面にすべり落ちる際の海面の挙動を想定し,数値シミュレーションによりその海面の挙動がどのように伝わるかを計算して,評価点における津波水位を算出した(乙44)。 c火山現象による津波火山現象による津波としては,本件各原子力発電所に大きな水位変動をもたらす可能性のある火山活動による山体崩壊に伴う津波について,日本海における活火山等に関して検討を行った。 地質調査総合センターの活火山データベース等によると,日本海で認められる活火山としては,渡島大島,利尻島及び鬱陵島があるが,若狭湾沿岸における津波堆積物調査の結果から,本件各原子力発電所敷地周辺の沿岸に大きな水位変動をもたらした津波の痕跡は認められない(乙44)。 また,活火山以外の第四紀火山としては隠岐島後があるが,直近の噴火年から既 に約55万年が経過しており,過去の最大活動休止期間(約47万年)を上回ることから,今後,活動する可能性 (乙44)。 また,活火山以外の第四紀火山としては隠岐島後があるが,直近の噴火年から既 に約55万年が経過しており,過去の最大活動休止期間(約47万年)を上回ることから,今後,活動する可能性は低いし,この火山については,噴火形態が爆発的な噴火ではなく溶岩流であることからも,山体崩壊による津波を引き起こすとは考えにくいと認められる(乙44)。 抗告人は,以上により,火山現象による津波が,本件各原子力発電所の安全性に影響を及ぼすことはないと評価した。 (ウ)行政機関の波源モデルを用いた津波の検討日本海に面する各自治体及び国土交通省等では,様々な波源モデルを用いて津波の検討を行っている。その中でも本件各原子力発電所に大きな水位変動をもたらす可能性のあるものとして,福井県が想定した若狭海丘列付近断層を波源とするモデル,秋田県が想定した日本海東縁部の断層を波源とするモデル,国土交通省等の検討会が想定した若狭海丘列付近断層及びFO-A~FO-B~熊川断層を波源とするモデルがあり,これらについて検討した。 a福井県が想定した波源モデルの検討福井県の津波想定においては,若狭海丘列付近断層について,長さ90kmの波源モデルが想定されているが,抗告人が当該断層の位置及び長さの評価を行うために,文献調査及び地質調査所等が実施した海上音波探査の記録の解析・評価を行ったところ,福井県が想定するような90kmに及ぶ一連の海域活断層とは認められなかった。 すなわち,活断層研究会編「新編日本の活断層」(1991)には,福井県が若狭海丘列付近断層を想定している海域に2条の断層(FAR21,FAR22)が示されているところ,抗告人は,これらの断層について,地質調査所等の海上音波探査記録等に基づき解析・評価を行った。その結果,FAR21については,上記文献が示 2条の断層(FAR21,FAR22)が示されているところ,抗告人は,これらの断層について,地質調査所等の海上音波探査記録等に基づき解析・評価を行った。その結果,FAR21については,上記文献が示すFAR21の位置の北西側に数条の後期更新世以降の活動を否定できない断層が認められた。そこで,抗告人は,これらを長さ約38kmの一連の活断 層と評価した。 また,同様の解析・評価の結果,上記文献が示すFAR22の位置の北西側に2条の断層が認められた。このうち,東側に認められた断層については,後期更新世以降の地層に断層による変位・変形が認められないことから,検討対象とすべき活断層ではないと評価した。また,西側に認められた断層については,後期更新世以降の活動を否定できない部分があり,これを,断層長さ約12kmの活断層として評価した。 以上により,抗告人は,福井県が若狭海丘列付近断層を想定している海域には,断層長さ約38kmの活断層及び断層長さ約12kmの活断層(両活断層の離隔距離は約26km)があると評価した。しかし,抗告人は,より安全側に立った津波評価という観点から,福井県が想定した断層長さ90kmの波源モデルによる詳細な数値シミュレーションを実施した(乙44)。 b秋田県が想定した波源モデルの検討秋田県,福井県等の複数の自治体においては,日本海東縁部の断層を波源とする津波の検討が実施されており,このうち,最も断層長さを長く想定しているのは,秋田県の波源モデルである。同波源モデルは,複数の領域の断層が連動するとして断層長さを350km,地震発生層の下端の深さを海底面下46kmと設定するものである(乙44)。 しかし,これらの領域ではプレートのひずみの解消につながる地震が近年発生しており,ひずみの大きな蓄積によって350kmもの長大な断層を の下端の深さを海底面下46kmと設定するものである(乙44)。 しかし,これらの領域ではプレートのひずみの解消につながる地震が近年発生しており,ひずみの大きな蓄積によって350kmもの長大な断層を震源とする巨大な地震が本件各原子力発電所の供用期間中に発生する可能性は極めて低い。 また,国立研究開発法人防災科学技術研究所の観測・研究によれば,日本海東縁部の地殻厚さは厚いところでも海底面下25km程度とされているところ,地震発生層は地殻内の地震が発生する領域であることから,地震発生層の下端が,地殻厚さ(地殻下端の深さ)を超えて,海底面下46kmもの深さに達するとはおよ そ考え難い。この点,大竹政和ほか編「日本海東縁の活断層と地震テクトニクス」(2002)においても,日本海東縁部では,太平洋側とは異なり,プレートの沈み込みは生じておらず,地震発生層は概ね15km以浅であるとされている(乙44)。 したがって,秋田県が想定するような地震が発生する可能性は極めて低く,また,秋田県が想定した波源モデルの地震発生層下端は日本海東縁部の地質構造から推定される地殻厚さとはおよそ整合しないものである。しかし,抗告人は,より安全側に立った津波評価という観点から,秋田県が想定した波源モデルによる数値シミュレーションを実施した。 c国土交通省等の検討会が想定した波源モデルの検討上記検討会では,道府県による津波浸水想定の策定を支援するため,日本海における最大クラスの津波断層モデル等の設定に関する検討が行われている。検討会の想定した波源モデルのうち,本件各原子力発電所に大きな水位変動を及ぼす可能性のある波源は,若狭海丘列付近断層及びFO-A~FO-B~熊川断層であるところ(乙44),抗告人は,津波波源となるこれらの断層について,断層全体が一様に(均質に)す 所に大きな水位変動を及ぼす可能性のある波源は,若狭海丘列付近断層及びFO-A~FO-B~熊川断層であるところ(乙44),抗告人は,津波波源となるこれらの断層について,断層全体が一様に(均質に)すべるモデルを設定している。 これに対して,上記検討会では,これらの断層について不均質にすべるモデルが想定されていることから,抗告人は,それぞれのモデルによる津波水位を比較検討することとし,概略計算を実施した。その結果,若狭海丘列付近断層について,評価点における津波水位が,福井県の想定した波源モデルを前提として抗告人が行った検討結果と同等もしくはそれ以上となった3つのケースが確認された。 そこで,抗告人は,この3つのケースについて数値シミュレーションを実施し,評価点における津波水位を算出した。 ウ原子力規制委員会による審査原子力規制委員会は,波源の選定について,抗告人が,波源モデルの設定等に 必要な調査を実施するとともに,行政機関が行った津波シミュレーションも適切に反映し,不確かさを考慮して海域活断層及び波源の特性や位置等から考えられる適切な規模の津波波源を設定しているとして,設置許可基準規則解釈別記3の規定に適合していることを確認した(乙14の2)。 (4)津波の組合せの検討・評価ア設置許可基準規則等設置許可基準規則解釈では,基準津波の策定に当たっては,津波発生要因に係る敷地の地学的背景及び津波発生要因の関連性を踏まえ,地震及び地すべり若しくは斜面崩壊等の組合せについて考慮することを求めている(設置許可基準規則解釈別記3第5条2項1号)。 イ抗告人の対応(乙76)抗告人は,設置許可基準規則等の要求事項を踏まえ,地震とその地震に起因する地すべりが重畳することで発生する津波について,次のとおり検討した。 すなわち,地すべりが,その周辺 イ抗告人の対応(乙76)抗告人は,設置許可基準規則等の要求事項を踏まえ,地震とその地震に起因する地すべりが重畳することで発生する津波について,次のとおり検討した。 すなわち,地すべりが,その周辺の活断層を震源とする地震の揺れによって発生する可能性を考慮し,前記(3)で検討した波源のうち,断層と地すべりの位置が近接しており,地震に伴い地すべりが発生した場合に,それぞれを波源とする津波が本件各原子力発電所に同時期に到達して大きな水位変動をもたらし得る組合せとして,「若狭海丘列付近断層と隠岐トラフ海底地すべり」及び「FO-A~FO-B~熊川断層と陸上地すべり」を選定し,次の①~③の組合せを検討した。 ①若狭海丘列付近断層(福井県モデル)と隠岐トラフ海底地すべり②若狭海丘列付近断層(検討会モデル)と隠岐トラフ海底地すべり③FO-A~FO-B~熊川断層と陸上地すべり組合せの検討に当たっては,地震に起因する津波と,それに組み合わせる地すべりに起因する津波の計算を個別に行い,個々の津波水位評価結果を評価点において足し合わせて(単体組合せ),最も厳しい組合せのケースを抽出した。なお, 地震に伴う地すべりは,必ずしも地震と同時に発生するわけではないことから,地すべり発生時間の不確かさについても考慮した。 具体的には,ケース①及び②の検討については,本件各原子力発電所に大きな水位変動をもたらす海底地すべりが発生すると考え得る3つのエリアのうちのいずれかにおいて,海底地すべりの発生時間の不確かさを考慮し,若狭海丘列付近断層の地震動が継続する間(エリアAでは87秒間,エリアBでは81秒間,エリアCでは102秒間)のいずれかのタイミングで,海底地すべりが発生するとの条件を設定した。 ケース②の地震動については,検討会が想定した波源モデルの検討におい では87秒間,エリアBでは81秒間,エリアCでは102秒間)のいずれかのタイミングで,海底地すべりが発生するとの条件を設定した。 ケース②の地震動については,検討会が想定した波源モデルの検討において数値シミュレーションを実施した,若狭海丘列付近断層を波源とする3つのケースの全てについて検討した。 ケース③の検討については,陸上地すべりの発生時間の不確かさを考慮し,本件各原子力発電所に大きな水位変動をもたらす陸上地すべりが発生すると考え得る大島半島西方(1箇所)及び内浦湾南方(3箇所)のそれぞれにおいて,FO-A~FO-B~熊川断層の地震動が継続する間のいずれかのタイミングで,陸上地すべりが発生するとの条件を設定した。 その結果,本件各原子力発電所への影響が最大となる地すべりが発生した場合の,それぞれの組合せにおける評価点での津波水位を評価した(乙44)。 ウ原子力規制委員会による審査原子力規制委員会は,津波の組合せの評価について,抗告人が,敷地の地学的背景及び津波発生要因の関連性を踏まえて波源を適切に組合せ,適切な手法で評価を行っているとして,設置許可基準規則解釈別記3の規定に適合していることを確認した(乙14の2)。 (5)基準津波の策定ア設置許可基準規則等 設置許可基準規則解釈は,基準津波の策定に当たっては,敷地前面海域の海底地形の特徴を踏まえ,施設からの反射波の影響が微少となるよう,施設から離れた沿岸域における津波を用いることを求めている(設置許可基準規則解釈別記3第5条1項)。 そして,策定した基準津波については,対応する超過確率を参照し,策定された津波がどの程度の超過確率に相当するかを把握することとされている(設置許可基準規則解釈別記3第5条2項9号)。 イ抗告人の対応(乙76)(ア)設置許可基準規則等の要 超過確率を参照し,策定された津波がどの程度の超過確率に相当するかを把握することとされている(設置許可基準規則解釈別記3第5条2項9号)。 イ抗告人の対応(乙76)(ア)設置許可基準規則等の要求事項を踏まえ,抗告人は,前記(4)で検討した津波の組合せの中から,各評価点で最も水位の影響が大きくなるものを基準津波の波源として選定して,施設からの反射波の影響が微少となる沿岸域において基準津波を策定し,基準津波の年超過確率を確認した。 具体的には,抗告人は,地震及び地すべりによる津波について,それぞれ単独で計算した結果を足し合わせた水位を算出し(以下「単体組み合わせ」という。),その上で,単体組み合せによる津波水位評価結果を踏まえ,より実現象に近く精度の高い津波計算を実施するため,各評価点で最も水位の影響が大きい波源(6ケース)を対象に,断層と地すべりによる初期水位を同一の伝播計算上で考慮した津波シミュレーション(一体計算)を実施した。なお,津波シミュレーションとは,実際の海底と海岸線の地形を再現したモデルを作成し,津波の発生源となる領域に波源モデルを設定した上で,地盤の隆起・沈降(海面の押し上げ・引き上げ)を発生させ,波の伝播計算を行うことにより,敷地における津波の高さ等を評価する手法をいう。 そして,抗告人は,津波シミュレーション(一体計算)による津波水位評価の結果,本件各原子力発電所への影響が大きい「若狭海丘列付近断層(福井県モデル)と隠岐トラフ海底地すべり(エリアB)の組み合せ」を基準津波1,「FO- A~FO-B~熊川断層と陸上地すべり(No.14)の組み合せ」を基準津波2として選定した。 なお,基準津波は時刻歴波形に対して施設からの反射波の本件各原子力発電所への影響が微小となるよう,音海半島から北方に約2km離れた海域で定 べり(No.14)の組み合せ」を基準津波2として選定した。 なお,基準津波は時刻歴波形に対して施設からの反射波の本件各原子力発電所への影響が微小となるよう,音海半島から北方に約2km離れた海域で定義した。 a基準津波1(最大水位上昇)取水路閉塞部前面(+5.5),3・4号炉循環水ポンプ室(+1.3),3・4号炉海水ポンプ室(+1.7),放水口前面(+5.3),放水路(奥)(+6.2)b基準津波2(水位上昇)取水路閉塞部前面(+2.2),3・4号炉循環水ポンプ室(+2.4),3・4号炉海水ポンプ室(+2.5),放水口前面(+2.7),放水路(奥)(+2.7)c基準津波2(最大水位下降)3・4号炉海水ポンプ室(-2.0)d下線は,各評価点における最高又は最低水位を示す。 (イ)その上で,抗告人は,策定した基準津波についての年超過確率を,「津波審査ガイド」(乙43)を踏まえて算定し,その確率が水位上昇側で10-4~10-5/年程度,水位下降側で10-4~10-7/年程度となったことを確認した(乙14の2)。 ウ原子力規制委員会による審査原子力規制委員会は,抗告人が適切な位置で基準津波の時刻歴波形を策定しているとしているとして,設置許可基準規則解釈別記3の規定に適合していることを確認した。また,基準津波の年超過確率の参照結果に関しては,原子力規制委員会の新規制基準の適合性審査において審議され,同委員会によりその内容が確認された(乙14の2)。 (6)まとめ以上によれば,抗告人は,本件各原子力発電所の「基準津波策定」に関する新規制基準適合性の判断について,新規制基準の策定内容を含めて,不合理な点が ないことを,相当の根拠及び資料に基づいて疎明したものといえる。 そこで,相手方らの主張について次に検討する。 (7)津波に関す 合性の判断について,新規制基準の策定内容を含めて,不合理な点が ないことを,相当の根拠及び資料に基づいて疎明したものといえる。 そこで,相手方らの主張について次に検討する。 (7)津波に関する伝承についてア相手方らの主張天正地震による津波等の伝承を十分に考慮して基準津波を策定すべきである。 福井大学の山本博文教授らの調査により発見された14~16世紀の津波の痕跡とみられる堆積物が天正地震による大津波の発生を裏付ける地質学上の証拠となる可能性がある。抗告人は,この地質学上の資料を検討しておらず,その津波リスク評価には数々の盲点や意図的過小評価が存在する。 イ検討(ア)設置許可基準規則解釈は,基準津波による遡上津波は,敷地周辺における津波堆積物等の地質学的証拠及び歴史記録等から推定される津波高及び浸水域を上回っていることと定め(同規則解釈別記3第5条2項5号),基準津波の策定に当たっては,敷地周辺に襲来した可能性のある津波に係る調査,津波の伝播経路に係る調査等の必要な調査を行うことと定めている(同7号)。 また,津波ガイドは,地質学的証拠及び歴史記録等による確認として,次のとおり定めている(3.6.1)。 a基準津波を選定する際には,その規模が,敷地周辺における津波堆積物等の地質学的証拠や歴史記録等から推定される津波の規模を超えていることを確認する。 b歴史記録については,震源像が明らかにできない場合であっても規模が大きかったと考えられるものについて十分に考慮されていることを確認する。 c歴史記録や伝承の信頼性については,複数の専門家による客観的な評価が参照されていることを確認する。 d津波の観測記録,古文書等に記された歴史記録,伝承,考古学的調査の資料等の既存文献等の調査・分析により,敷地周辺において過去に来襲した可能性の による客観的な評価が参照されていることを確認する。 d津波の観測記録,古文書等に記された歴史記録,伝承,考古学的調査の資料等の既存文献等の調査・分析により,敷地周辺において過去に来襲した可能性のある津波の発生時期,規模,要因等について,できるだけ過去に遡って把握できてい ることを確認する。 (イ)前記のとおり,抗告人は,過去の津波や痕跡高等についてまとめられた「日本被害地震総覧」(乙49),「日本被害津波総覧」等の文献により,本件各原子力発電所敷地周辺の既往津波の調査を実施したほか,若狭湾沿岸の三方五湖等において津波堆積物調査を実施するなどして,約1万年前以降に本件各原子力発電所の安全性に影響を与えるような規模の津波の痕跡がなかったことを確認している。 (ウ)「日本被害地震総覧」によれば,吉田兼見の「兼見卿記」やルイス・フロイスの「日本史」で示されている天正地震は,記録に残る被害状況から推定される震源は内陸部であると認められる(乙49)。そうすると,この天正地震から津波が発生するおそれは通常ないといえる。 神社は,その歴史が古く,若狭湾沿岸においても,西暦700年代前後に建立されたものが多いし,第二次大戦以前から,その多くが国家の管理下にあった神社は,現在も各都道府県の神社庁が宗教法人として一元的に管理していることから,古い建物や文書,宝物に関する情報が豊富に存在し,天正地震によって津波被害が生じていたとすれば,その手掛りが何らかの形で保管されている可能性が高い。そこで,抗告人は,若狭湾沿岸の市町(高浜町,小浜町,若狭町,美浜町,敦賀市)に現存する神社13箇所を対象として,過去の津波被害についての聞き取りや現地調査を行った(標高は低いもので約2m,海岸からの距離は近いもので約50m,創建年代は古いもので西暦700年代)。そ 賀市)に現存する神社13箇所を対象として,過去の津波被害についての聞き取りや現地調査を行った(標高は低いもので約2m,海岸からの距離は近いもので約50m,創建年代は古いもので西暦700年代)。その結果,天正地震によるものも含め,津波による被害記録は認められなかった。また,抗告人は,福井県内に限らず,宮津市,京丹後市等の若狭湾沿岸の県市町村史誌を対象に文献調査を行ったが,天正地震による津波の被害記録は認められなかった(乙50)。 原子力安全・保安院も,これまでに得られた文献調査や水月湖(三方五湖の1つ)等での調査等の結果を踏まえると,古文書に記載されているような天正地震による大規模な津波を示唆するものはないと判断している(乙51)。 (エ)抗告人は,原子力安全・保安院が,さらなる追加調査の必要性を示唆したことを受け,若狭湾における津波発生の痕跡に関するデータの拡充を図ることを目的として,津波堆積物の追加調査を実施した。 抗告人は,三方五湖及びその周辺や久々子湖東方の陸域において,ボーリング調査により円柱状に地層を採取し,採取した地層に対するX線CTスキャンを併用した肉眼観察や,地層中に存在した微小生物の化石の分析等を実施したが,津波により海から運ばれるような砂の地層や化石等は確認されなかった(乙45)。 また,抗告人は,敦賀半島の猪ヶ池において同様の調査を実施し,採取した地層の一部から高波浪又は津波により形成された可能性のある堆積物を確認したが,その堆積物の範囲や量は,相手方らが想定している津波の範囲内のものであることを確認した(乙45)。 (オ)相手方らが援用する山本博文教授らの調査は,同調査により発見された痕跡が天正地震の際に生じた津波によるものであるとの明確な調査結果は得られておらず,その生成原因や規模ははっきりしていない 。 (オ)相手方らが援用する山本博文教授らの調査は,同調査により発見された痕跡が天正地震の際に生じた津波によるものであるとの明確な調査結果は得られておらず,その生成原因や規模ははっきりしていないのであるから,上記調査結果をもって抗告人の津波評価が不相当であるとはいえない。 なお,前記のとおり,抗告人が実施した神社聞き取り調査では,若狭湾沿岸の比較的標高が低く海岸に近い,創建年代の古い神社に対して聞き取り調査や現地調査を実施しており,調査対象には山本博文教授らの調査地点に近い高浜町内の2箇所や小浜市内の1箇所も含まれているが,いずれの神社においても,天正地震によるものを含め,津波による被害記録は認められなかった。ちなみに,この小浜市内にある八幡神社は,標高が2.7mと低く,同地点よりも海に近い場所(海岸から約300m)に位置しているにもかかわらず,同神社にも,天正地震があったとされる西暦1586年より前に建築された蔵や,その収蔵品である文書や太刀が現存しているが,同神社によれば,これらの文書や太刀は,津波が襲来していれば流失したと考えられる境内の蔵に保存されていたが,文書には水に濡れた形跡はなく,また,津波に関する記録もなく,伝承に接したこともないこ とが認められる(乙50)。 (カ)以上によれば,天正地震を含めて,本件各原子力発電所の安全性に影響を及ぼすような津波が過去に発生したものとは認められない。 (キ)したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (8)若狭湾の地盤のブロック化についてア相手方らの主張若狭湾の地盤がブロック化し,このブロック境界の運動により地震が引き起こされる危険性があることが考慮されていないから,抗告人の津波評価は不十分である。 イ検討抗告人は,活断層調査により本件各原子力発電所敷地周 ブロック化し,このブロック境界の運動により地震が引き起こされる危険性があることが考慮されていないから,抗告人の津波評価は不十分である。 イ検討抗告人は,活断層調査により本件各原子力発電所敷地周辺の海域活断層を波源として検討し,海底地形・海岸線の地形等をモデル化した津波のシミュレーションを実施することで,断層のずれによる発電所敷地地盤の隆起,海底地形の変形やこれに伴う海面の挙動等も適切に考慮して,基準津波を評価している。 また,抗告人は,海域活断層の調査に際し,地質調査所(現「産業技術総合研究所」)及び海上保安庁が過去に実施した海上音波探査データの提供を受けて評価するとともに,自らも,詳細に地質・地質構造を把握するため海上音波探査及び海上ボーリング調査を行っている。上記調査の結果,相手方らが主張する「ブロック化」による「局所的に異常に高い波」を引き起こすような特殊な地質・地質構造は確認されなかったことが認められる。 そうすると,抗告人の津波評価が不合理であるということはできない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (9)ボーリング調査の調査地点についてア相手方らの主張抗告人は,津波の伝承や戦後も高波被害を受けた痕跡があるとされる「くるみ 浦」で津波堆積物調査を行っていないなど,その調査地点の選定が恣意的になされている。 イ検討津波堆積物は津波によって海域から運搬される砂や泥が標高の低い平野部を中心に堆積したものであり,津波堆積物の調査を行うには,河川等の陸上の水の流れや海の波浪による浸食の影響を堆積物が受けない静穏な堆積環境を維持している潟湖,湖沼や湿地帯が望ましいとされている。 そうであるから,「くるみ浦」があったとされている常神半島付近は,海岸線と山が近接しており,上記潟湖等ではなく,陸上の水の流れ 静穏な堆積環境を維持している潟湖,湖沼や湿地帯が望ましいとされている。 そうであるから,「くるみ浦」があったとされている常神半島付近は,海岸線と山が近接しており,上記潟湖等ではなく,陸上の水の流れや海の波浪による浸食の影響が考えられるため,津波堆積物調査に適した地点とはいえない。 抗告人は,津波堆積物の調査に適した条件と原子力安全・保安院の地震・津波に関する意見聴取会委員からの指摘を踏まえ,三方五湖周辺及び猪ヶ池等を調査地点として選定している(乙45)。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (10)波源の組合せ評価についてア相手方らの主張抗告人による本件各原子力発電所の津波水位の検討において,地震又は地すべり単独の波源による津波よりも地震と地すべりを組み合わせた津波の方が津波水位が低くなっている場合があるが,仮に津波同士の干渉を考慮に入れたものであるとしても合理性がない。 イ検討津波は,押し波と引き波が長時間にわたって繰り返し継続し,その間に水位が時々刻々と上下に変動する現象であるため,地震による津波と地震に起因して発生する地すべりによる津波を組み合わせるに当たっては,時々刻々の水位変動を考慮する必要がある。 そうすると,組み合わせる津波のうちの一方が最高水位となる時刻付近で,もう一方が下降側の水位である場合は,組み合わせた数値が組み合わせる前の数値よりも小さくなるため,波源単独の場合よりも,組み合わせた場合の方が津波水位が低くなるといえるから,抗告人による組み合わせの考慮が不合理であるとはいえない。 なお,抗告人は,基準津波の策定過程では,評価点ごとに,組み合わせる前の波源単体の水位と,組合せ(単体組合せ)による水位とを比較した上で,最も水位の影響が大きい波源を抽出している。その上で,抽出した波源に対 告人は,基準津波の策定過程では,評価点ごとに,組み合わせる前の波源単体の水位と,組合せ(単体組合せ)による水位とを比較した上で,最も水位の影響が大きい波源を抽出している。その上で,抽出した波源に対して一体計算を行って,原子力発電所への水位の影響が最も大きくなるものを基準津波の波源として選定している。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (11)保守的評価についてア相手方らの主張抗告人は,「放水路(奥)」以外の全ての評価点において,単体組合せの計算結果よりも,水位変動量の小さい一体計算の結果を基準津波として策定しているが,単体組み合わせによる津波水位も,あり得る津波水位なのであるから,保守的に数値を採用するべきである。 イ検討単体組合せによる計算と一体計算とで水位変動量が異なるのは,単体組合せでは,地震と地すべりの2つの波源について別々の解析モデルを用いた数値シミュレーションで計算した波形を,評価点において単純に足し合わせているのに対して,一体計算では,2つの波源を1つの解析モデルを用いて同時に数値シミュレーションで計算することで,波源から評価点までの伝播過程における波形の重なり合いを考慮しているためである。 単体組合せによる水位が波形の重なり合いを考慮しない仮想的なものであるの に対して,一体計算による津波水位の方がより実現象に近く,精度が高いのであるから,抗告人が一体計算による津波水位をもとに基準津波を策定していることが不合理であるとはいえない。 なお,抗告人は,安全上重要な施設・設備の津波に対する安全性を評価する際には,津波の伝播特性,浸水経路等を考慮して,評価対象とする施設ごとに,津波に対する安全性を評価するための「入力津波」を設定して評価を行っている。 そして,入力津波の設定に当たっては,一体計算 する際には,津波の伝播特性,浸水経路等を考慮して,評価対象とする施設ごとに,津波に対する安全性を評価するための「入力津波」を設定して評価を行っている。 そして,入力津波の設定に当たっては,一体計算のみならず,単体組合せによる津波水位を含む全ての評価結果の中から,評価点ごとに水位変動量が最も大きくなるものを選定するなど,より安全側に立って評価結果を選定した上で,津波発生時の潮位として考えられる朔望平均潮位のばらつき等を考慮している。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (12)津波予測の誤差についてア相手方らの主張「地域防災計画における津波防災対策の手引き」(七省庁手引き)の作成に関わった首藤伸夫教授や阿部勝征教授の発言によれば,津波予測の精度には2倍の誤差があるから,抗告人の基準津波の策定は科学的安全性を備えたものとは到底いえない。 イ検討七省庁手引き及び「太平洋沿岸部地震津波防災計画手法調査報告書」は,北海道東端から九州南端までの太平洋側沿岸部における津波の傾向を概略的に把握することを目的として策定されたものであり,その目的から計算モデル,計算条件が簡略化されている。 これに対して,抗告人が基準津波の策定に用いた「原子力発電所の津波評価技術」(乙42)(以下「津波評価技術」という。)は,特定地点における津波想定を目的としたものであり,より計算精度が高められ,また,パラメータスタディを行うことにより不確かさを十分に考慮する結果,算出される津波水位は,平均的に既往 最大津波の痕跡高の約2倍になることが確認されている。 また,抗告人は,FO-A~FO-B断層と熊川断層等,海上音波探査等の結果からは連動性・連続性が認められない活断層の連動性・連続性を考慮して,保守的に,より津波が大きくなる波源モデルを設定した上で また,抗告人は,FO-A~FO-B断層と熊川断層等,海上音波探査等の結果からは連動性・連続性が認められない活断層の連動性・連続性を考慮して,保守的に,より津波が大きくなる波源モデルを設定した上で,パラメータスタディを実施して,評価地点である本件各原子力発電所に最も大きな水位変動をもたらす津波を選定し,基準津波を策定している。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (13)平均像からのばらつきの考慮についてア相手方らの主張抗告人が津波高さの算出過程において用いている武村式(甲276,乙161)は,地震モーメントの平均像を示すものにすぎない。むしろ,最低限,武村雅之の上記論文(甲276,乙161)における回帰式から求められる地震モーメントの上限値により計算された津波高さ20.5mを考慮すべきである。 イ検討抗告人は,基準津波の策定に際し,原子力発電所における津波想定を目的に策定された「原子力発電所の津波評価技術」(乙42,津波評価技術)を参考に,敷地周辺の海域活断層における地震等に伴って発生すると考えられる津波を想定し,数値シミュレーションを実施して,津波水位を算出している。津波評価技術では,地震モーメントを算出するスケーリング則として上記武村式が採用されている。 津波評価技術は,津波想定が過小とならないようにするため,津波の波源モデルごとに広域応力場等のパラメータを設定した上で,その値を合理的と考えられる範囲で変化させ,様々なケースでの津波水位等を算出するパラメータスタディを多数行い,その結果の中から評価点での津波水位が最も高くなるケースを選定することが示されている。また,伝播過程の計算精度を高めるため,地形データは,最新の海底地形図等を用いるのに加えて,対象地点における海底・海岸地形 の特徴等に応じた大き も高くなるケースを選定することが示されている。また,伝播過程の計算精度を高めるため,地形データは,最新の海底地形図等を用いるのに加えて,対象地点における海底・海岸地形 の特徴等に応じた大きさの計算格子を設定することとされている。 このように,津波評価技術においては,不確かさの存在を考慮すること等によって,算出される津波水位が,平均的に既往最大津波の痕跡高(津波の発生後,建物や陸上に残された変色部や漂着物までの高さであり,基準面から測った高さをいう。)の約2倍となること,及び既往最大津波の痕跡高を100%超過することが確認されている(乙42,乙341)。 以上によれば,上記武村式を用いた津波評価技術によって算出された津波水位は,十分に保守的な数値となることが確認されているから,上記武村式で算定された地震モーメントについて,元データのばらつきを考慮してより大きな数値を用いなければ,津波水位が過小評価となるとはいえない。 以上に,抗告人が,波源モデルの設定の際にも,FO-A~FO-B断層と熊川断層等,海上音波探査等の結果からは連動性・連続性が認められない活断層の連動性・連続性を考慮して,安全側に立った,より津波が大きくなる波源モデルを設定していること,行政機関の波源モデルを用いた津波についても検討した上で,行政機関の波源モデルを含む海域活断層による津波と地すべりによる津波の組合せについても検討していることを考え併せると,抗告人が策定した基準津波は,十分保守的なものといえる。 そうすると,抗告人は,上記武村式を適切に適用して津波評価をしているといえる。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 津波に対する安全確保対策(津波に対する安全性)(1)新規制基準における基本方針ア原子炉施設の耐津波設計の基本方針は,「重要な安 える。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 津波に対する安全確保対策(津波に対する安全性)(1)新規制基準における基本方針ア原子炉施設の耐津波設計の基本方針は,「重要な安全機能を有する施設は,施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があり,施設に大きな影響を与えるおそれがある津波(基準津波)に対して,その安全機能を損なわな い設計である」ということであり,この基本方針に関して,設置許可に係る安全審査において,次の要求事項を満たした設計方針であることを確認する。 (ア)津波の敷地への流入防止重要な安全機能を有する施設の設置された敷地において,基準津波による遡上波を地上部から到達,流入させない。また,取水路,放水路等の経路から流入させない。 (イ)浸水による安全機能への影響防止取水・放水施設,地下部において,漏水可能性を考慮の上,漏水による浸水範囲を限定して,重要な安全機能への影響を防止する。 (ウ)津波防護の多重化前記(ア),(イ)の方針に加えて,重要な安全機能を有する施設については,浸水防護をすることにより津波による影響等から隔離する。 (エ)水位低下による安全機能への影響防止水位変動に伴う取水性低下による重要な安全機能への影響を防止する。 イ基準津波に対する設計基準対象施設の設計に当たっては,以下の方針によること。 (ア)Sクラスに属する施設(津波防護施設,浸水防止設備及び津波監視設備を除く。)の設置された敷地において,基準津波による遡上波を地上部から到達又は流入させないこと。また,取水路及び排水路等の経路から流入させないこと。そのため,以下の方針によること。 aSクラスに属する設備(浸水防止設備及び津波監視設備を除く。)を内包する建屋及びSクラスに属する設備(屋外に設置するも 路及び排水路等の経路から流入させないこと。そのため,以下の方針によること。 aSクラスに属する設備(浸水防止設備及び津波監視設備を除く。)を内包する建屋及びSクラスに属する設備(屋外に設置するものに限る。)は,基準津波による遡上波が到達しない十分高い場所に設置すること。なお,基準津波による遡上波が到達する高さにある場合には,防潮堤等の津波防護施設及び浸水防止設備を設置すること。 b上記の遡上波の到達防止に当たっては,敷地及び敷地周辺の地形及びその標 高,河川等の存在並びに地震による広域的な隆起・沈降を考慮して,遡上波の回込みを含め敷地への遡上の可能性を検討すること。また,地震による変状又は繰り返し襲来する津波による洗掘・堆積により地形又は河川流路の変化等が考えられる場合は,敷地への遡上経路に及ぼす影響を検討すること。 c取水路又は放水路等の経路から,津波が流入する可能性について検討した上で,流入の可能性のある経路(扉,開口部及び貫通口等)を特定し,それらに対して浸水対策を施すことにより,津波の流入を防止すること。 (イ)取水・放水施設及び地下部等において,漏水する可能性を考慮の上,漏水による浸水範囲を限定して,重要な安全機能への影響を防止すること。そのため,以下の方針によること。 a取水・放水設備の構造上の特徴等を考慮して,取水・放水施設及び地下部等における漏水の可能性を検討した上で,漏水が継続することによる浸水範囲を想定(以下「浸水想定範囲」という。)するとともに,同範囲の境界において浸水の可能性のある経路及び浸水口(扉,開口部及び貫通口等)を特定し,それらに対して浸水対策を施すことにより浸水範囲を限定すること。 b浸水想定範囲の周辺にSクラスに属する設備(浸水防止設備及び津波監視設備を除く。)がある場合は,防水区画化 及び貫通口等)を特定し,それらに対して浸水対策を施すことにより浸水範囲を限定すること。 b浸水想定範囲の周辺にSクラスに属する設備(浸水防止設備及び津波監視設備を除く。)がある場合は,防水区画化するとともに,必要に応じて浸水量評価を実施し,安全機能への影響がないことを確認すること。 c浸水想定範囲における長期間の冠水が想定される場合は,排水設備を設置すること。 (ウ)上記に規定するものの他,Sクラスに属する施設(津波防護施設,浸水防止設備及び津波監視設備を除く。)については,浸水防護をすることにより津波による影響等から隔離すること。そのため,Sクラスに属する設備(浸水防止設備及び津波監視設備を除く。)を内包する建屋及び区画については,浸水防護重点化範囲として明確化するとともに,津波による溢水を考慮した浸水範囲及び浸水量を保守的に想定した上で,浸水防護重点化範囲への浸水の可能性のある経路及び浸水口 (扉,開口部及び貫通口等)を特定し,それらに対して浸水対策を施すこと。 (エ)水位変動に伴う取水性低下による重要な安全機能への影響を防止すること。 そのため,非常用海水冷却系については,基準津波による水位の低下に対して海水ポンプが機能保持でき,かつ冷却に必要な海水が確保できる設計であること。また,基準津波による水位変動に伴う砂の移動・堆積及び漂流物に対して取水口及び取水路の通水性が確保でき,かつ取水口からの砂の混入に対して海水ポンプが機能保持できる設計であること。 (オ)津波防護施設及び浸水防護施設については,入力津波(施設の津波に対する設計を行うために,津波の伝播特性及び浸水経路等を考慮して,それぞれの施設に対して設定するものをいう。)に対して津波防護機能及び浸水防止機能が保持できること。また,津波監視設備については,入力津波に対 計を行うために,津波の伝播特性及び浸水経路等を考慮して,それぞれの施設に対して設定するものをいう。)に対して津波防護機能及び浸水防止機能が保持できること。また,津波監視設備については,入力津波に対して津波監視機能が保持できること。そのため,以下の方針によること。 a上記の「津波防護施設」とは,防潮堤,盛土構造物及び防潮壁等をいう。 上記の「浸水防止設備」とは,水密扉及び開口部・貫通部の浸水対策設備等をいう。 上記の「津波監視設備」とは,敷地の潮位計及び取水ピット水位計,並びに津波の襲来状況を把握できる屋外監視カメラ等をいう。 これら以外には,津波防護施設及び浸水防止設備への波力による影響を軽減する効果が期待される防波堤等の津波影響軽減施設・設備がある。 b入力津波については,基準津波の波源からの数値計算により,各施設・設備等の設置位置において算定される時刻歴波形とすること。 数値計算に当たっては,敷地形状,敷地沿岸域の海底地形,津波の敷地への侵入角度,河川の有無,陸上の遡上・伝播の効果及び伝播経路上の人工構造物等を考慮すること。また,津波による港湾内の局所的な海面の固有振動の励起を適切に評価し考慮すること。 c津波防護施設については,その構造に応じ,波力による侵食及び洗掘に対す る抵抗性並びにすべり及び転倒に対する安定性を評価し,越流時の耐性にも配慮した上で,入力津波に対する津波防護機能が十分に保持できるよう設計すること。 d浸水防止設備については,浸水想定範囲等における浸水時及び冠水後の波圧等に対する耐性等を評価し,越流時の耐性にも配慮した上で,入力津波に対して浸水防止機能が十分に保持できるよう設計すること。 e津波監視設備については,津波の影響(波力及び漂流物の衝突等)に対して,影響を受けにくい位置への設置及び影響の防止策・ した上で,入力津波に対して浸水防止機能が十分に保持できるよう設計すること。 e津波監視設備については,津波の影響(波力及び漂流物の衝突等)に対して,影響を受けにくい位置への設置及び影響の防止策・緩和策等を検討し,入力津波に対して津波監視機能が十分に保持できるよう設計すること。 f津波防護施設の外側の原子力発電所敷地内及び近傍において建物・構築物及び設置物等が破損,倒壊及び漂流する可能性がある場合には,防潮堤等の津波防護施設及び浸水防止設備に波及的影響を及ぼさないよう,漂流防止措置又は津波防護施設及び浸水防止設備への影響の防止措置を施すこと。 g前記c,d及びfの設計等においては,耐津波設計上の十分な裕度を含めるため,各施設・設備の機能損傷モードに対応した荷重(浸水高,波力・波圧,洗掘力及び浮力等)について,入力津波から十分な余裕を考慮して設定すること。また,余震の可能性を検討した上で,必要に応じて余震による荷重と入力津波による荷重との組合せを考慮すること。さらに,入力津波の時刻歴波形に基づき,津波の繰り返しの襲来による作用が津波防護機能及び浸水防止機能へ及ぼす影響について検討すること。 h津波防護施設及び浸水防止設備の設計に当たって,津波影響軽減施設・設備の効果を考慮する場合は,このような施設・設備についても,入力津波に対して津波による影響の軽減機能が保持されるよう設計するとともに,前記f,gを満たすこと。 (2)入力津波の設定ア設置許可基準規則等設置許可基準規則解釈は,施設の津波に対する設計を行うに当たっては,津波 の伝播特性,浸水経路等を考慮して,それぞれの施設に対して基準津波をもとに,入力津波を設定することを求めている(設置許可基準規則解釈別記3第5条3項5号)。 イ抗告人の対応(乙76)設置許可基準規則等 特性,浸水経路等を考慮して,それぞれの施設に対して基準津波をもとに,入力津波を設定することを求めている(設置許可基準規則解釈別記3第5条3項5号)。 イ抗告人の対応(乙76)設置許可基準規則等の要求事項を踏まえ,抗告人は,基準津波の検討における単体組合せによる津波水位と,一体計算による津波水位を比較し,水位変動量が最も大きくなる評価結果を選定するなど,より安全側に立って,評価点毎に水位変動量が最も大きくなる津波評価結果を選定した。その上で,津波発生時の潮位として考えられる朔望平均潮位のばらつき等を考慮して,入力津波を設定した(乙47)。 ウ原子力規制委員会による審査原子力規制委員会は,抗告人の入力津波の設定について,抗告人が,各施設,設備等の設置位置において,海水面からの水位変動量を時刻歴波形で設定すること等としているとして,設置許可基準規則解釈別記3の規定に適合していることを確認した(乙14の2)。 (3)津波の敷地への到達,流入防止ア設置許可基準規則等設置許可基準規則解釈では,耐震重要度分類Sクラスの設備は基準津波による遡上波が到達しない十分高い場所に設置することを求めており,遡上波が到達する高さにある場合には,防潮堤等の津波防護施設等を設置することを求めている。 そして,遡上波の到達を防止するに当たっては,耐震重要度分類Sクラスの設備が設置された敷地及び敷地周辺の地形及びその標高,地震による広域的な隆起・沈降等を考慮して,遡上波が津波防護施設等を回り込むことを含め敷地への遡上の可能性を検討することを求めている(設置許可基準規則解釈別記3第5条3項1号①②)。 また,海と直接連絡している取水路又は放水路等の経路から,津波が流入する可能性について検討した上で,流入の可能性のある経路(扉,開口部及び貫通口等)を特定 解釈別記3第5条3項1号①②)。 また,海と直接連絡している取水路又は放水路等の経路から,津波が流入する可能性について検討した上で,流入の可能性のある経路(扉,開口部及び貫通口等)を特定し,それらに対して津波対策を施すことにより,津波の流入を防止することを求めている(設置許可基準規則解釈別記3第5条3項1号③)。 イ抗告人の対応(乙76)設置許可基準規則等の要求事項を踏まえ,抗告人は,次のとおり,「安全上重要な施設・設備」が設置された敷地において,津波が地上部から到達,流入しないことを確認するとともに,海と直接連絡している取水路,放水路等の経路から同敷地に津波が流入しないことを確認した。 (ア)津波の地上部からの到達,流入の防止本件各原子力発電所敷地は,東側は高浜湾に,西側は内浦湾に面し,南側及び北側は標高150~200m程度の山に囲まれている。本件各原子力発電所の敷地は,大きく,T.P.+3.5mとそれを上回る標高とに分かれているところ,「安全上重要な施設・設備」は,T.P.+3.5mの敷地に原子炉格納施設,原子炉補助建屋,制御建屋,中間建屋,海水ポンプ及び燃料油貯油そうが,T.P.+15.0mの敷地に復水タンクが設置されている。 抗告人は,津波防護施設として,放水口側の敷地に放水口側防潮堤(T.P.+8.0m),取水路上に取水路防潮ゲート(T.P.+8.5m)を設置しており,津波による遡上波が,「安全上重要な施設・設備」が設置された敷地に地上部から到達,流入することはない。具体的には,放水口側については,評価点のうち,放水路(奥)における入力津波水位が最も高く,T.P.+6.7mである(平常時の海水面の高さと比較して,最大で水位が6.7m上昇する可能性がある)のに対して,放水口側防潮堤の天端高さがT.P.+8.0mであ )における入力津波水位が最も高く,T.P.+6.7mである(平常時の海水面の高さと比較して,最大で水位が6.7m上昇する可能性がある)のに対して,放水口側防潮堤の天端高さがT.P.+8.0mであり,これを上回っていることから,津波が放水口側防潮堤を超えて,地上部から敷地に到達,流入することはない。 また,取水路側については,取水路閉塞部前面の入力津波水位が,T.P.+6.2mで あるのに対して,取水路防潮ゲートの天端高さがT.P.+8.5mであり,これを上回っていることから,津波が取水路防潮ゲートを超えて到達,流入することはない。 他方,取水路防潮ゲートが閉じるまでに津波が到達する可能性があるが,津波の影響による取水路の水面変動を考慮しても,海水ポンプ室前面及び循環水ポンプ室前面の入力津波水位は,それぞれ,T.P.+2.8m,T.P.+2.9mであるのに対して,「安全上重要な施設・設備」が設置された敷地の高さ(T.P.+3.5m,+15.0m)がいずれもこれを上回っていることから,津波が地上部から敷地に到達,流入することはない(乙47)。 (イ)取水路,放水路等の経路からの津波の流入防止海と直接連絡している経路である取水路,放水路及び屋外排水路を通じて津波が流入することも防止しなければならない。 そこで,抗告人は,前記(ア)で評価した経路以外に,流入の可能性のある連絡経路について,それぞれの設置位置における入力津波高さと,経路の開口部高さの比較等によって流入の可能性を評価し,必要に応じて開口部等に浸水対策を施した。 具体的には,入力津波高さが開口部高さを上回る,高浜原子力発電所1号機及び同2号機の放水ピットの開口部に止水板を設置し,また,放水口側防潮堤の下部を貫通する屋外排水路に逆流防止設備を設置する等の浸水対策を施し,いずれの連絡 が開口部高さを上回る,高浜原子力発電所1号機及び同2号機の放水ピットの開口部に止水板を設置し,また,放水口側防潮堤の下部を貫通する屋外排水路に逆流防止設備を設置する等の浸水対策を施し,いずれの連絡経路からも,「安全上重要な施設・設備」が設置された敷地に津波が流入することがないことを確認した(乙47)。 ウ原子力規制委員会による審査原子力規制委員会は,抗告人が,遡上波の地上部からの到達について,基準津波による敷地への浸水を防止する方針とし,遡上波が到達する可能性のある設備の周囲に津波防護施設等を設置することとしていること,また,取水路又は放水路等の経路からの流入について,これらの経路から津波の流入する可能性を網羅的に検討して流入経路を特定した上で,津波防護施設等を設置すること等により 津波の流入を防止しているとして,それぞれ設置許可基準規則解釈別記3の規定に適合していることを確認した(乙14の2)。 (4)漏水による影響防止ア設置許可基準規則等設置許可基準規則解釈は,取水・放水施設及び地下部等において,漏水する可能性を考慮の上,漏水による浸水範囲を限定して,重要な安全機能への影響を防止することを求めている(設置許可基準規則解釈別記3第5条3項2号)。 イ抗告人の対応(乙76)設置許可基準規則等の要求事項を踏まえ,抗告人は,取水・放水設備のうち,床面高さが入力津波水位より低く,床面に貫通部が存在する海水取水設備である海水ポンプ室について,床面貫通部に浸水防止蓋を設置することにより,「安全上重要な施設・設備」である海水ポンプが機能を保持できることを確認した(乙47)。 ウ原子力規制委員会による審査原子力規制委員会は,抗告人が,漏水による影響防止について,海水ポンプエリアを浸水想定範囲として設定した上で,同エリアへの浸水経 保持できることを確認した(乙47)。 ウ原子力規制委員会による審査原子力規制委員会は,抗告人が,漏水による影響防止について,海水ポンプエリアを浸水想定範囲として設定した上で,同エリアへの浸水経路である床面の貫通部に浸水防止蓋を設置することにより浸水範囲を限定することとしているとして,設置許可基準規則解釈別記3の規定に適合していることを確認した(乙14の2)。 (5)津波による影響からの隔離ア設置許可基準規則等設置許可基準規則解釈は,耐震重要度分類Sクラスの設備を津波による影響から隔離するため,浸水防護重点化範囲を明確化するとともに,浸水防護重点化範囲への浸水の可能性のある経路及び浸水口(扉,開口部及び貫通口)を特定し,それらに対して浸水対策を施すことを求めている(設置許可基準規則解釈別記3 第5条3項3号)。 イ抗告人の対応(乙76)設置許可基準規則等の要求事項を踏まえ,前記(3)及び(4)以外による津波の影響から「安全上重要な施設・設備」を隔離するために,抗告人は,津波に対する浸水防護重点化範囲を明確にし,浸水対策を施すことで地震による溢水を想定しても同範囲に影響が及ばないことを確認した。 具体的には,まず,「安全上重要な施設・設備」が設置された敷地を,浸水防護重点化範囲として明確化した(乙47)。 そして,前記のとおり,津波が浸水防護重点化範囲に到達,流入することは考えられないものの,地震により,同範囲に隣接するタービン建屋内で循環水管等の設備が破損する事態を想定し,破損箇所からの津波による流入量や破損した設備に内包される水量がタービン建屋内に滞留すること等を考慮して水位評価を行った。その結果,浸水防護重点化範囲とタービン建屋との連絡通路に水密扉を設置するなどの浸水対策を施すことにより,同範囲への浸水がないことを る水量がタービン建屋内に滞留すること等を考慮して水位評価を行った。その結果,浸水防護重点化範囲とタービン建屋との連絡通路に水密扉を設置するなどの浸水対策を施すことにより,同範囲への浸水がないことを確認した(乙47,乙48)。 ウ原子力規制委員会による審査原子力規制委員会は,抗告人が,津波による影響からの隔離について,発電所の施設の配置,基準津波の特性に応じて,浸水の可能性のある津波の流入や溢水を保守的に評価して隔離をすることとしているとして,設置許可基準規則解釈別記3の規定に適合していることを確認した(乙14の2)。 (6)水位変動に伴う取水性低下による影響の防止ア設置許可基準規則等設置許可基準規則解釈は,水位変動に伴う取水性低下に対して,非常用海水冷却系は,海水ポンプが機能維持でき,かつ冷却に必要な海水が確保できる等の設計であることを求めている(設置許可基準規則解釈別記3第5条3項4号)。 イ抗告人の対応(乙76)設置許可基準規則等の要求事項を踏まえ,抗告人は,これまで述べた津波に伴う水位上昇のほか,水位変動に伴う取水性低下に対しても,「安全上重要な施設・設備」が安全機能を保持できることを確認した。 具体的には,「安全上重要な施設・設備」を含む,原子炉施設の各機器で発生する熱を除去するために必要となる海水を汲み上げる海水ポンプが,基準津波による水位変動(引き波による水位低下)に対しても取水機能を保持できる必要があるところ,地震に伴う本件各原子力発電所敷地の地盤の隆起を考慮しても,海水ポンプ室前面における入力津波水位がT.P.-2.5mであるのに対し,海水ポンプの取水可能水位がT.P.-3.2mであることから,水位低下に対しても海水ポンプの取水機能に影響が生じることはないことを確認した(乙47)。 ウ原子力規制委員会 -2.5mであるのに対し,海水ポンプの取水可能水位がT.P.-3.2mであることから,水位低下に対しても海水ポンプの取水機能に影響が生じることはないことを確認した(乙47)。 ウ原子力規制委員会による審査原子力規制委員会は,抗告人が,海水ポンプ取水可能水位と,引き波時の下降側の水位を比較して取水性を評価し,水位変動に伴う取水性低下に対して海水ポンプの機能を保持できるように設計されているとして,設置許可基準規則解釈別記3の規定に適合していることを確認した(乙14の2)。 (7)重大事故等対処施設に対する安全性の確認抗告人は,重大事故等対処施設についても,「安全上重要な施設・設備」と同様に,上記の津波防護に係る基本設計(「津波の敷地への到達,流入防止」,「漏水による影響防止」,「津波による影響からの隔離」,「水位変動に伴う取水性低下による影響の防止」)に従って評価を行い,重大事故等対処施設が,基準津波に対して重大事故等に対処するために必要な機能が損なわれないことを確認した。 ア設置許可基準規則等設置許可基準規則は,重大事故等対処施設は,基準津波に対して重大事故等に対処するために必要な機能が損なわれないものであることを求めており(設置許 可基準規則40条),その適用に当たっては,設置許可基準規則解釈別記3に準ずるものとされている(設置許可基準規則解釈40条1項)。 また,可搬型重大事故等対処設備は,津波による影響等を考慮した保管場所に保管することを求めている(設置許可基準規則43条3項5号)。 イ抗告人の対応(乙76)設置許可基準規則等の要求事項を踏まえ,抗告人は,重大事故等対処施設が,基準津波に対して重大事故等に対処するために必要な機能を損なわれないことを確認した。 重大事故等対処施設(緊急時対策所及び空冷式非常用発電装置並び の要求事項を踏まえ,抗告人は,重大事故等対処施設が,基準津波に対して重大事故等に対処するために必要な機能を損なわれないことを確認した。 重大事故等対処施設(緊急時対策所及び空冷式非常用発電装置並びに屋外に設置された可搬型重大事故等対処設備を除く)は,「安全上重要な施設・設備」と同じ敷地にあり,「安全上重要な施設・設備」と同様に,津波による影響は受けない(乙76)。 一方,緊急時対策所及び空冷式非常用発電装置,並びに屋外に設置された可搬型重大事故等対処設備(大容量ポンプ,消防ポンプ等)については,いずれも「安全上重要な施設・設備」が設置された敷地よりも高く,津波の影響を受けない位置にあることから基準津波による遡上波がこれらの区画に到達・流入することはなく,また,漏水による影響を受けることはない。そして,津波による影響からの隔離については,これらの設備を,屋外の高台に設置するなどしていることから,津波による溢水の影響を受けることはない。 さらに,水位変動に伴う取水性低下による影響については,重大事故等の際に使用する大容量ポンプ及び消防ポンプは取水ホース等を海に投込んで取水するものであり,水位が低下した場合でもホース等を調整することで取水ができることから,水位変動により取水性に影響が生じることはない。 ウ原子力規制委員会による審査原子力規制委員会は,重大事故等対処施設について,耐震重要度分類Sクラス の設備に準じた耐津波設計されているとして,重大事故等に対処するために必要な機能が損なわれるおそれはなく,設置許可基準規則に適合することを確認した(乙14の2)。 なお,高浜原子力発電所1号機及び同2号機の設置変更許可申請では,本件各原子力発電所を含む高浜原子力発電所1~4号機が同時に運転することを想定して,取水路防潮ゲートの運用方法を変 (乙14の2)。 なお,高浜原子力発電所1号機及び同2号機の設置変更許可申請では,本件各原子力発電所を含む高浜原子力発電所1~4号機が同時に運転することを想定して,取水路防潮ゲートの運用方法を変更したことにより,一部の評価内容の数値等に軽微な変更が生じているが,津波評価自体に影響はないことを確認しており,この津波評価の内容については,原子力規制委員会も,妥当であると判断している(乙251の2)。 (8)まとめ以上によれば,抗告人は,本件各原子力発電所の「津波に対する安全性」に関する新規制基準適合性の判断について,新規制基準の策定内容を含めて,不合理な点がないことを,相当の根拠及び資料に基づいて疎明したものといえる。 そこで,相手方らの主張について次に検討する。 (9)本件各原子力発電所の防潮堤の摩擦杭についてア相手方らの主張(ア)摩擦杭について本件各原子力発電所の放水口側防潮堤(杭式防潮堤)に摩擦杭を採用したのは不適切である。 (イ)杭の支持力について抗告人は,地盤における杭の支持力について,地盤工学会の杭の鉛直載荷試験方法に基づき,杭の鉛直方向の変位が10%以内に収まることをもって足りると説明しているが,10%という数値に何ら根拠がない。 イ検討(ア)摩擦杭について 杭基礎の設計に当たり,地形・地質,地盤や荷重を適切に設定するとともに,上部構造の荷重規模等を検討した上で,支持杭と摩擦杭を適切に使い分けることとされているところ(乙188),本件各原子力発電所の杭式防潮堤においては,上部構造により杭にかかる荷重が軽量であることから摩擦杭を採用しているものであり(乙189),抗告人が摩擦杭を採用したことが不適切であるとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (イ)杭の支持力について「 あることから摩擦杭を採用しているものであり(乙189),抗告人が摩擦杭を採用したことが不適切であるとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (イ)杭の支持力について「杭の鉛直方向の変位が10%以内に収まる」とは,荷重を加えた際の杭の鉛直方向の変位量が杭径(杭の直径)の10%以内に収まることを確認するという意味であるところ,この10%という数値は,公益社団法人地盤工学会の「杭の鉛直載荷試験方法・同解説」(乙190)や公益社団法人日本道路協会の「道路橋示方書・同解説Ⅰ共通編・Ⅳ下部構造編」(乙191)等に記載されており,杭の極限支持力を評価するための妥当な指標であるといえる。 本件各原子力発電所の杭式防潮堤では,実際の試験において,地震や津波によって杭にかかる荷重を大きく上回るよう設定した試験荷重に対する杭の鉛直方向の変位量は杭径の約0.5~0.6%と,10%をはるかに下回る結果が得られており,抗告人は,地盤における杭の支持力に問題がないことを確認している(乙189)。 原子力規制委員会は,地盤における杭の支持力に関して,「規制庁は・・・放水口側防潮堤の杭基礎形式部の耐震性評価については,今回の申請において,許容支持力はその設置地盤において実施した杭への載荷試験の結果等に基づき保守的に設定されており,この支持力を地震応答解析で得た杭基礎形式部に生じる荷重が下回ることから,放水口側防潮堤の杭基礎形式部の支持性能が維持されること・・・を確認した」としている(乙109の2)。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (10)周辺地盤の液状化についてア相手方らの主張抗告人が本件各原子力発電所の放水口側防潮堤(杭式防潮堤)において液状化防止のために行う地盤改良は,防潮堤の前後10mに限られる。 い。 (10)周辺地盤の液状化についてア相手方らの主張抗告人が本件各原子力発電所の放水口側防潮堤(杭式防潮堤)において液状化防止のために行う地盤改良は,防潮堤の前後10mに限られる。そのため,地震が発生して隣接地盤が液状化してしまった状況で津波が押し寄せると,防潮堤はゲルによって固化された基礎部分ごと押し流されてしまう。 イ検討抗告人は,地震や津波による防潮堤とその周辺地盤の変位を解析により評価し,求められた構造物間に生じる相対変位に対して,構造物間に止水ジョイントを設置することで,防潮堤が止水機能を保持できることを確認している。この解析では,地盤改良を行わない範囲の地震による液状化や,津波による荷重を考慮しており,地震や津波によって防潮堤とその周辺地盤には変位が生じるものの,地盤改良された基礎部分ごと押し流されることはないといえる(乙192)。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (11)地盤改良効果の確認方法についてア相手方らの主張抗告人の採用した確認方法である一軸圧縮試験は,本来,せん断応力を確認するための試験であり,液状化耐性を確認するものではない。また,抗告人の援用する「浸透固化処理工法技術マニュアル」に掲載されている換算式に,十分な科学的根拠があるかどうか疑わしい。 イ検討抗告人は,原子力規制委員会における議論を踏まえ,一軸圧縮試験ではなく,相手方らが「液状化耐性を確認する・・・最も直接的な方法」と評価する繰返し非排水三軸圧縮試験(液状化試験)を実施するとともに,シリカ含有量試験を併せて実施することとしている(乙189)。 また,「浸透固化処理工法技術マニュアル」に掲載されている換算式は一軸圧縮試験に用いられるものであるが,抗告人は一軸圧縮試験は実施しないこととしているため 施することとしている(乙189)。 また,「浸透固化処理工法技術マニュアル」に掲載されている換算式は一軸圧縮試験に用いられるものであるが,抗告人は一軸圧縮試験は実施しないこととしているため,このような換算式は用いていない。 なお,抗告人の実施する地盤改良に関して,原子力規制委員会は,「放水口側防潮堤のうち杭基礎形式部の設置地盤は地盤改良による液状化対策を行うことにより,耐震重要度に応じた地震力が作用した場合においても,杭基礎への作用荷重に対して十分な支持力を有すること・・・を確認した」としている(乙109の2)。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (12)地盤の沈降・陥没の考慮についてア相手方らの主張津波ガイドⅡ.3.2.2は,地震に起因する変状による地形,河川流路の変化が考えられる場合は,敷地への遡上経路に及ぼす影響を検討することと定めている。 抗告人は,「高浜3号炉及び4号炉津波に対する施設評価について」(乙47)において,地震による地殻変動について,基準津波1の若狭海丘列付近断層が活動した場合は±0m,基準津波2のFO-A~FO-B~熊川断層が活動した場合には,0.30mの隆起と想定し,津波に対する安全性評価に影響を及ぼすことはないと結論づけている。 しかし,海域活断層が活動した場合,「ブロック運動」により若狭地方の「地盤ブロック」が突然上昇あるいは陥没するし,若狭湾周辺で地震により地盤が陥没したケースは枚挙に暇がないから,抗告人の地震による地殻変動の想定は楽観的すぎる。 イ検討(ア)抗告人は,詳細な活断層調査の結果に基づき,津波の波源として,本件各原子力発電所敷地周辺の海域活断層を検討しており,海底地形・海岸線の地形 等をモデル化した津波のシミュレーションを実施している。この検討におい 活断層調査の結果に基づき,津波の波源として,本件各原子力発電所敷地周辺の海域活断層を検討しており,海底地形・海岸線の地形 等をモデル化した津波のシミュレーションを実施している。この検討においては,断層のずれによる本件各原子力発電所敷地地盤の隆起,海底地形の変化やこれに伴う海面の挙動等が適切に考慮されている(乙44)。 また,相手方らが地盤が陥没したとして挙げる事例は,いずれも本件各原子力発電所周辺におけるものではなく,断層の活動による影響が適切に考慮された本件各原子力発電所における地殻変動の想定について問題点を具体的に指摘するものとはいえない。 なお,原子力規制委員会は,本件各原子力発電所における津波防護の方針設定に当たっての考慮事項に関して,「地震によって発生する広域的な地殻変動(隆起)を下降側の水位変動に対して考慮し保守的な評価をすることとしており,これらの方針が解釈別記3(設置許可基準規則解釈別記3)の規定に適合していること及び津波ガイドを踏まえていることを確認した」としている(乙14の2)。 (イ)相手方らは,地表地震断層が出現しない可能性がある地震による本件各原子力発電所敷地地盤の沈降・陥没を考慮した上で,本件各原子力発電所の防潮堤の高さを決める必要があると主張する。 しかし,そもそも,「地表地震断層が出現しない可能性がある地震」は,断層破壊領域が地震発生層の内部に留まるものである(乙33)から,同地震によって発電所敷地地盤に大きな隆起や沈降が生じるとは考えにくく,相手方らの主張はその前提が相当であるとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 使用済燃料ピット安全確保対策(1)使用済燃料ピットア設計基準対象施設に関する要求事項の概要(乙76,乙273の1)(ア)使用済燃料の特徴使用 相手方らの主張を採用することができない。 使用済燃料ピット安全確保対策(1)使用済燃料ピットア設計基準対象施設に関する要求事項の概要(乙76,乙273の1)(ア)使用済燃料の特徴使用済燃料とは,原子炉内で使用した燃料であり,原子炉の運転中に消費され なかった核分裂性物質があるので,臨界に達することがないように臨界管理が必要である。また,使用済燃料には運転中に生成,蓄積された核分裂生成物等が存在するため,崩壊熱及び放射線が発生している。この崩壊熱は,時間とともに減少する。例えば,ウラン燃料の場合,原子力発電所が発電をしている定格出力時に発生する熱と比べると,崩壊熱は原子炉の停止直後に約7%,24時間後に1%未満になる。 (イ)使用済燃料の特徴を踏まえた設計基準対象施設に対する要求事項以上の特徴より,使用済燃料を保管する施設は,使用済燃料の臨界を防止する設計であること,使用済燃料からの放射線を遮蔽する設計であること,使用済燃料の損傷を防止するために崩壊熱を除去する設計であることが求められる。 そこで,設置許可基準規則16条2項では,発電用原子炉施設には,使用済燃料の貯蔵施設を設けることを求め,その具体的な設計に対する要求として,使用済燃料が臨界に達するおそれがないものとすること(同規則16条2項1号ハ),使用済燃料からの放射線に対して適切な遮蔽能力を有するものとすること(同規則16条2項2号イ),貯蔵された使用済燃料が崩壊熱により溶融しないものであって,最終ヒートシンクへ熱を輸送できる設備及びその浄化系を有するものとすること(同規則16条2項2号ロ)などを要求している。 また,使用済燃料の貯蔵施設は,設計基準対象施設であり,安全機能を有することから安全施設に区分しており,地震による損傷の防止(同規則4条),津波による損 同規則16条2項2号ロ)などを要求している。 また,使用済燃料の貯蔵施設は,設計基準対象施設であり,安全機能を有することから安全施設に区分しており,地震による損傷の防止(同規則4条),津波による損傷の防止(同規則5条),外部からの衝撃による損傷の防止(同規則6条)などの設計基準対象施設,安全施設に係る事項も要求している。 なお,使用済燃料の貯蔵施設については,放射性物質を閉じ込める役割を果たす燃料被覆管の健全性を維持するため,使用済燃料の貯蔵槽の水位,水温,放射線量の監視,制御を求めており,臨界の防止,冠水状態の維持による遮蔽能力の確保及び崩壊熱の除去を行えば,放射性物質が放出されるような事態は考えられ ないため,原子炉格納容器のような堅固な容器による閉じ込めることまでは要求していない。 (ウ)福島第一原子力発電所事故を踏まえた要求事項福島第一原子力発電所事故における教訓としては,事故発生時に外部電源が利用できなくなった際に使用済燃料貯蔵槽の水位が把握できなかったことが挙げられる。そこで,この教訓を踏まえ,設置許可基準規則16条3項2号は,外部電源が利用できない場合においても,使用済燃料貯蔵槽の温度,水位その他の発電用原子炉施設の状態を示す事項を監視することができるものとすることを要求している。 イ重大事故等対処施設に関する要求事項の概要(乙76,乙273の1)使用済燃料貯蔵槽内の水が喪失し使用済燃料が冷却できない状態になると,核燃料を覆う燃料被覆管が高温になり,破損し,放射性物質が放出されるおそれがある。ただし,使用済燃料は炉内の燃料と比較すると発熱量が小さく,使用済燃料貯蔵槽への補給水系が失われた場合においても損傷が生じるような事態に至るには長時間を要する。 福島第一原子力発電所事故における教訓の一つとして,使用済燃料の貯 料と比較すると発熱量が小さく,使用済燃料貯蔵槽への補給水系が失われた場合においても損傷が生じるような事態に至るには長時間を要する。 福島第一原子力発電所事故における教訓の一つとして,使用済燃料の貯蔵施設の補給水系が損傷した場合の代替手段が用意されていなかったことがある。 この教訓を踏まえ,設置許可基準規則では,重大事故等対処施設として,補給水系が損傷することなどにより使用済燃料貯蔵槽の冷却機能若しくは注水機能が喪失し,又は使用済燃料貯蔵槽からの水の漏えいその他の要因により当該使用済燃料貯蔵槽の水位が低下した場合を想定し,代替注水設備として可搬型代替注水設備を配備するなど,貯蔵槽内燃料体等を冷却し,放射線を遮蔽し,及び臨界を防止するための設備を求めている(設置許可基準規則54条1項)。 さらに,同規則54条2項は,使用済燃料貯蔵槽の損壊による水の喪失など,大量の水の漏えいその他の要因により当該使用済燃料貯蔵槽の水位が異常に低下 した場合において,ポンプ車,スプレイヘッダ等の可搬型スプレイ設備を配備し,放水することにより貯蔵槽内燃料体等の著しい損傷の進行を緩和することを求めている。また,使用済燃料が臨界状態にならないように,水位低下,放水等により変化するいかなる水の状態においても,臨界にならない設計とすることを要求している。 ウ使用済燃料の貯蔵施設等に関する耐震重要度分類について(乙76,乙273の1)耐震重要度分類は,地震による損傷の防止について定める設置許可基準規則4条が規制する事項であり,使用済燃料の貯蔵施設にも適用される。設置許可基準規則4条第2項に基づき,設計基準対象施設が耐えなければならない地震力は,地震の発生によって生ずるおそれがある設計基準対象施設の安全機能の喪失に起因する放射線による公衆への影響の程度に応じて算定 準規則4条第2項に基づき,設計基準対象施設が耐えなければならない地震力は,地震の発生によって生ずるおそれがある設計基準対象施設の安全機能の喪失に起因する放射線による公衆への影響の程度に応じて算定しなければならないとされており,同条の解釈別記2によれば,設計基準対象施設は,それぞれの耐震重要度に応じて,Sクラス,Bクラス,Cクラスに分類される。 上記分類において,Sクラスは,地震により発生するおそれがある事象に対して,原子炉を停止し,炉心を冷却するために必要な機能を持つ施設,自ら放射性物質を内蔵している施設,当該施設に直接関係しておりその機能喪失により放射性物質を外部に拡散する可能性のある施設,これらの施設の機能喪失による事故に至った場合の影響を緩和し,放射線による公衆への影響を軽減するために必要な機能を持つ施設及びこれらの重要な安全機能を支援するために必要となる施設,並びに地震に伴って発生するおそれがある津波による安全機能の喪失を防止するために必要となる施設であって,その影響が大きいものとしている。 またBクラスは,安全機能を有する施設のうち,機能喪失した場合の影響がSクラス施設と比べ小さい施設としている。 Cクラスは,Sクラスに属する施設及びBクラスに属する施設以外の一般産業 施設または公共施設と同等の安全性が要求される施設としている。 上記の分類に従えば,使用済燃料貯蔵槽は自ら放射性物質を内蔵している施設であり,同解釈別記2にSクラスの施設として明記されている「使用済燃料を貯蔵するための設備」として,Sクラスに分類される。また,補給水設備は,使用済燃料貯蔵槽の安全機能を維持するために必要な「使用済燃料を貯蔵するための設備」の補助設備として,同じくSクラスに分類される。 一方,使用済燃料貯蔵施設の冷却系は,その機能を喪失したとして 備は,使用済燃料貯蔵槽の安全機能を維持するために必要な「使用済燃料を貯蔵するための設備」の補助設備として,同じくSクラスに分類される。 一方,使用済燃料貯蔵施設の冷却系は,その機能を喪失したとしても使用済燃料貯蔵槽に上記の補給水設備により水が補給できれば崩壊熱の除去及び放射線の遮蔽等が可能であることから,補給水設備により機能を代替できるため,その影響がSクラス施設と比べ小さい施設に当たり,同解釈別記2にBクラスの施設として明記されている「使用済燃料を冷却するための施設」として,Bクラスに分類される。 エ使用済燃料の貯蔵施設等に関する安全重要度分類について(乙76,乙273の1)安全重要度分類は,安全施設,すなわち設計基準対象施設のうち,安全機能を有するものに関して設置許可基準規則12条が規制する事項であり,使用済燃料の貯蔵施設にも適用される。設置許可基準規則12条1項に基づき,安全施設は,その安全機能の重要度に応じて,安全機能が確保されたものでなければならないとされている。同条の解釈第1項によると,安全機能の重要度に応じて,安全機能が確保されたものとは,発電用軽水型原子炉施設の安全機能の重要度分類に関する審査指針(以下「重要度分類審査指針」という。)によるとされている。 重要度分類審査指針では,安全施設を,それが果たす安全機能の性質に応じて2種に分類している。具体的には,その機能の喪失により,原子炉施設を異常状態に陥れ,もって一般公衆ないし従事者に過度の放射線被ばくを及ぼすおそれのあるもの(異常発生防止系。以下「PS」という。)と,原子炉施設の異常状態に おいて,この拡大を防止し,又はこれを速やかに収束せしめ,もって一般公衆ないし従事者に及ぼすおそれのある過度の放射線被ばくを防止し,又は緩和する機能を有するもの(異常影響緩和 設の異常状態に おいて,この拡大を防止し,又はこれを速やかに収束せしめ,もって一般公衆ないし従事者に及ぼすおそれのある過度の放射線被ばくを防止し,又は緩和する機能を有するもの(異常影響緩和系。以下「MS」という。)に分類している。 そして,PS及びMSのそれぞれに属する構築物,系統及び機器を,その有する安全機能の重要度に応じ,それぞれ重要なものから,クラス1,クラス2及びクラス3に分類する。なお,PSでクラス1である安全施設は,PS-1,MSでクラス2である安全施設は,MS-2のように標記される。 使用済燃料の貯蔵施設は,設置許可基準規則12条1項の解釈で引用する重要度分類審査指針において,原子炉冷却材圧力バウンダリに直接接続されていないものであって,放射性物質を貯蔵する機能を有する安全施設であり,その損傷又は故障により発生する事象によって,炉心の著しい損傷又は燃料の大量の破損を直ちに引き起こすおそれはないが,敷地外への過度の放射性物質放出のおそれのある構築物,系統及び機器としてPS-2に分類されている。また,補給水設備は,燃料プール水の補給機能を有する安全施設であり,PS-2の構築物,系統及び機器の損傷又は故障により敷地周辺公衆に与える放射線の影響を十分小さくするようにする構築物,系統及び機器としてMS-2に分類されている。 (2)本件各原子力発電所の使用済燃料ピットア本件各原子力発電所の使用済燃料ピットは,使用済燃料の冷却に十分な量の使用済燃料ピット水で満たされており(水深は約12メートル),貯蔵した使用済燃料(長さ約4メートル)の上端から水面まで十分な深さが確保されている。 イ使用済燃料ピットに接続される配管は,全て使用済燃料の上端よりも高い位置で接続され,万一,これらの配管が破断しても,その配管の接続位置より水位が低 の上端から水面まで十分な深さが確保されている。 イ使用済燃料ピットに接続される配管は,全て使用済燃料の上端よりも高い位置で接続され,万一,これらの配管が破断しても,その配管の接続位置より水位が低下することはなく,使用済燃料の冠水状態は維持される。使用済燃料は,適切な間隔を空けて保管し,冠水状態を維持さえしていれば残留熱(崩壊熱)が十分除去され,放射性物質を閉じ込める役割を果たす燃料被覆管の損傷に至ること はなく,安全性を確保することができる(乙76)。 ウ本件各原子力発電所の使用済燃料ピットは,耐震重要度分類がSクラスであり,基準地震動に対して安全性を確保している(乙15,乙221)。 エ使用済燃料から発生する崩壊熱により温度の上昇した使用済燃料ピット水は,使用済燃料ピットポンプによって使用済燃料ピット冷却器へ運ばれて冷却され,再び使用済燃料ピットに戻される。使用済燃料から発生する崩壊熱は,使用済燃料ピット水の循環・冷却によって継続的に除去されている(冷却機能)。 オ仮に冷却機能が喪失するなどして蒸発により水位が低下した場合でも,燃料取替用水ポンプにより,燃料取替用水タンク内のほう酸水を使用済燃料ピットへ補給し,冠水状態を保つことで,使用済燃料を冷却することができる(補給機能)(乙76,乙273の1)。 カ使用済燃料ピットの冷却機能対策(乙76,乙273の1)抗告人は,使用済燃料ピット水の冷却機能及び補給機能を喪失した場合や,使用済燃料ピットからの水の漏えいその他の要因により使用済燃料ピットの水位が低下した場合において,使用済燃料ピット内の燃料体の冷却等を行うため,消防ポンプ等による海水の注水や,可搬式代替低圧注水ポンプ及び同ポンプ専用の電源車並びにスプレイヘッダ等を配備し,これらを用いた直接散水(スプレイ)による海水の注 ット内の燃料体の冷却等を行うため,消防ポンプ等による海水の注水や,可搬式代替低圧注水ポンプ及び同ポンプ専用の電源車並びにスプレイヘッダ等を配備し,これらを用いた直接散水(スプレイ)による海水の注水などを行うことにより,燃料体の著しい損傷の進行を緩和し,できる限り環境への放射性物質の放出を低減する対策も講じている。 また,抗告人は,原子炉補助建屋が損壊した場合又は原子炉補助建屋に近付けない場合等,万一,上記設備での直接散水(スプレイ)による注水が困難となる場合に備えて,大容量ポンプ及び放水砲を配備し,これらの設備を用いて使用済燃料ピットへ放水できるようにしている。 キ原子力規制委員会は,使用済燃料ピットの安全性について,新規制基準に適合することを確認した(乙14の2,乙76)。 (3)まとめ以上によれば,抗告人は,本件各原子力発電所の「使用済燃料ピットの安全性」に関する新規制基準適合性について,新規制基準の策定内容を含めて,不合理な点がないことを,相当の根拠及び資料に基づいて疎明したものといえる。 そこで,相手方らの主張について次に検討する。 (4)本件各原子力発電所の使用済燃料ピット等の耐震性についてア相手方らの主張本件各原子力発電所の使用済燃料ピットの冷却設備の耐震重要度分類はBクラスであり,過小な基準地震動を下回る地震動によってすら破損する危険性がある。 本件各原子力発電所の使用済燃料ピットは,給水が行われなければ,全交流動力電源喪失から3日を経ずして危機的状況に陥るところ,地震によって全交流動力電源喪失という危機的状況に陥る場合には,隣接する原子炉も危機的状態に陥っていることが多いことを念頭に置かなければならず,このような状況下では使用済燃料ピットに確実に給水ができるとはいえない。 イ検討(ア)前記のとおり,使 場合には,隣接する原子炉も危機的状態に陥っていることが多いことを念頭に置かなければならず,このような状況下では使用済燃料ピットに確実に給水ができるとはいえない。 イ検討(ア)前記のとおり,使用済燃料ピットは,使用済燃料の冷却に十分な量の使用済燃料ピット水で満たされており,使用済燃料から発生する崩壊熱は,使用済燃料ピット水の循環・冷却によって継続的に除去されている(冷却機能)。仮に冷却機能が喪失するなどして蒸発により水位が低下した場合でも,燃料取替用水ポンプにより,燃料取替用水タンク内のほう酸水を使用済燃料ピットへ補給し,冠水状態を保つことで,使用済燃料を冷却することができる(補給機能)(乙76)。 このように,使用済燃料は,冠水状態を保つことにより健全性が担保され,使用済燃料ピットの冷却設備及び使用済燃料ピット水の補給設備がこの役割を担っている。 新規制基準における使用済燃料ピットの冷却設備の耐震重要度分類がBクラス であるのは,使用済燃料ピット水の補給設備が耐震性の高いSクラスに分類されており,この補給機能で使用済燃料ピットの冷却が可能となるためである(乙15,乙76,乙79)。 原子力規制委員会も,「使用済燃料貯蔵施設の冷却系は,その機能を喪失したとしても使用済燃料貯蔵槽に上記の補給水設備により水が補給できれば崩壊熱の除去及び放射線の遮蔽等が可能であることから,補給水設備により機能を代替できるため,その影響がSクラス施設と比べ小さい施設に当たり,別記2(設置許可基準規則解釈別記2第4条2項2号)にBクラスの施設として明記されている「使用済燃料を冷却するための施設」として,Bクラスに分類される」との見解を示している(乙273の1)。 (イ)そうすると,新規制基準において使用済燃料ピットの冷却設備がBクラスであっても,使用 「使用済燃料を冷却するための施設」として,Bクラスに分類される」との見解を示している(乙273の1)。 (イ)そうすると,新規制基準において使用済燃料ピットの冷却設備がBクラスであっても,使用済燃料ピット水の補給設備がSクラスであることから,使用済燃料ピットの冷却機能は基準地震動によって損なわれることはない。 なお,本件各原子力発電所の使用済燃料ピットの冷却設備は,その評価値に対する評価基準値の割合が最も小さいものでも,使用済燃料ピット冷却器の基礎ボルトの構造強度(応力:MPa)が「評価値・298,評価基準値400」,使用済燃料ピットポンプの動的機能維持(加速度〔水平〕:G)が「評価値・0.99,評価基準値1.4」であり,Bクラスの設備の耐震性を有することはもとより,それを大幅に超える耐震性を有していることが認められる(乙203)。 (ウ)新規制基準において,地震時に原子力発電所の安全性を確保するために必要な電力の供給は,外部電源ではなく,非常用ディーゼル発電機が担うこととされており,抗告人は,非常用ディーゼル発電機について,原子力発電所の安全性を確保するために重要な役割を果たす「安全上重要な施設・設備」として,基準地震動に対する耐震安全性を確認している。これに対し,外部電源については「安全上重要な施設・設備」には当たらず,基準地震動に対する耐震安全性を確認すべき対象と されてはいない。 相手方らは,安全設計審査指針の指針48の1における「重要度の特に高い安全機能を有する構築物,系統及び機器が,その機能を達成するために電源を必要とする場合においては,外部電源又は非常用所内電源のいずれからも電力の供給を受けられる設計であること」との規定を根拠として,外部電源が非常用電源と「並列的に」電気が供給される設計が要求される重要な系統であ 合においては,外部電源又は非常用所内電源のいずれからも電力の供給を受けられる設計であること」との規定を根拠として,外部電源が非常用電源と「並列的に」電気が供給される設計が要求される重要な系統であると主張する。 しかし,上記指針においても,非常用電源と同等の重要度を外部電源について要求する旨の規定はない。前記のとおり,新規制基準は,原子力発電所の設備を「安全上重要な施設・設備」とそれ以外の設備に分けて考え,「安全上重要な施設・設備」が原子炉の安全性確保に係る機能を担うこととし,この「安全上重要な施設・設備」に格段に高い信頼性を持たせることで原子炉の安全性を担保するという基本的枠組みを採用しているところ,外部電源は上記「安全上重要な施設・設備」に該当しない。 (エ)したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (5)福島第一原子力発電所事故についてア相手方らの主張本件各原子力発電所の使用済燃料ピットについても,福島第一原子力発電所と同様の危険性がある。 イ検討福島第一原子力発電所の使用済燃料プールは構内道路から約30m上方に設置されているために,事故時には給水のための車両や要員のアクセス性が悪く,屋外からの高圧放水車等による給水によらなければならないなどの困難が生じたところ,本件各原子力発電所の使用済燃料ピットは,構内道路に近接し,道路と同じ高さに設置されているため,建屋の扉を開放するだけで給水要員が容易に,かつ,短時間でアクセスすることができ,給水活動を実施できる(乙193)。 また,福島第一原子力発電所事故では,隣接する3号機から共用排気ラインを 通じて水素が流入し,使用済燃料プールのある原子炉建屋内で爆発が発生したとされているが,本件各原子力発電所の使用済燃料ピットには,このような他号機との共用の排気ラインがな ら共用排気ラインを 通じて水素が流入し,使用済燃料プールのある原子炉建屋内で爆発が発生したとされているが,本件各原子力発電所の使用済燃料ピットには,このような他号機との共用の排気ラインがなく,同様の爆発が起こるおそれはない(乙76,乙122)。 そうすると,福島第一原子力発電所に比べて,本件各原子力発電所の使用済燃料の冠水状態を維持することは,より容易であり,安全性が高いといえる。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (6)使用済燃料の取扱いについてア相手方らの主張本件各原子力発電所では,使用済燃料を原子炉容器から取り出して使用済燃料ピットに移動させるという方法が採用されている。このような,原子炉からクレーンで縦に吊って取り出し,途中で一度横倒しにして移動し,その後再度立てて使用済燃料ピットに移動するという取扱方法は,原子炉からクレーンで縦に吊り出して使用済燃料プールへ下ろすという沸騰水型原子炉で採用される方法に比べて,作業工程が多く複雑なため,より危険性が高くなる。 イ検討相手方らは,工程が多く複雑であると主張するものにすぎず,危険な状態に至る機序やその蓋然性について具体的に主張及び疎明しているとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 なお,使用済燃料ピットについては,設置許可基準規則及びその解釈により,「新燃料の搬入から使用済燃料の搬出までの取り扱いにおいて,関連する機器間を連携し,当該燃料を搬入,搬出又は保管できる能力があること」が要求される(設置許可基準16条,同解釈)ところ,本件各原子力発電所では,原子炉停止後,原子炉より取り出す使用済燃料は,燃料取替クレーン,燃料移送装置,使用済燃料ピットクレーン等を使用して,ほう酸水を張った原子炉キャビティ,燃料 取替キャナ 件各原子力発電所では,原子炉停止後,原子炉より取り出す使用済燃料は,燃料取替クレーン,燃料移送装置,使用済燃料ピットクレーン等を使用して,ほう酸水を張った原子炉キャビティ,燃料 取替キャナル及び燃料移送管を通して使用済燃料ピットへ移動する設計としている(乙76)。また,燃料移送装置を含む燃料取扱設備は,設置時に国の使用前検査を受け,その後も定期事業者検査(原子炉等規制法43条の3の16第1項ないし第3項)や施設定期検査(同法43条の3の15)において機能に問題ないことが確認されている。 本件各原子力発電所では,燃料移送装置を用いて燃料集合体を水平に倒して,ほう酸水を張った原子炉キャビティと本件使用済燃料ピットの間の燃料取替キャナル及び燃料移送管内を移送している。すなわち,本件各原子力発電所における燃料移送装置を用いた燃料の移送は,移送用のバスケットに燃料集合体を1体ずつ収納し,これを水平状態にして移送レール上を約20m移動させた後,垂直状態に戻して取り出すというものである。 仮に,燃料移送中に何らかの不具合が発生して燃料移送装置での移載作業及び同装置による搬送作業が停止したとしても,燃料集合体はほう酸水の中に安定した状態でとどまるため,臨界のおそれはなく,また,崩壊熱も除去される。 以上によれば,本件各原子力発電所における使用済燃料の移送が危険であり,安全性が欠如しているとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (7)使用済燃料の稠密化についてア相手方らの主張抗告人は,平成16年に,本件各原子力発電所の使用済燃料ピットAエリアにおいて,貯蔵用ラックのピッチ間隔(相互の中心間の距離)を狭め,貯蔵能力を変更するという稠密化を行ったことにより危険な状態になった。 イ検討(ア)米国ANSI/ANS57 済燃料ピットAエリアにおいて,貯蔵用ラックのピッチ間隔(相互の中心間の距離)を狭め,貯蔵能力を変更するという稠密化を行ったことにより危険な状態になった。 イ検討(ア)米国ANSI/ANS57.2は,米国原子力学会(ANS)が作成し,米国国家規格協会(ANSI)が米国国家規格として承認した,軽水炉を持つ原子力 発電所の使用済燃料貯蔵施設の設計に関する規格であり,米国原子力規制委員会(NRC)がエンドース(是認)しているものである。 上記規格では,使用済燃料ピットが臨界に至るか否かの評価について,①実効増倍率の評価基準については,0.95から0.98の間の値を採用することを許容すること,②0.95より大きな値を採用する場合は,解析上の不確定性を詳細に評価することが定められている(乙195)。 なお,実効増倍率とは,核分裂反応で発生した中性子の個数に対する,次の核分裂反応で発生する中性子の個数の割合をいい,使用済燃料ピット内の燃料集合体が臨界に至らないことを確認する指標としても用いられる。実効増倍率が1未満の場合,発生する中性子は時間の経過とともに減り,核分裂連鎖反応は持続しない。また,実効増倍率が1の場合,発生する中性子の増減はなく,核分裂連鎖反応は持続する(この状態を「臨界」という)。一方で,実効増倍率が1より大きい場合,発生する中性子は増えてゆき,核分裂連鎖反応は拡大する(この状態を「超臨界」という)。 (イ)抗告人は,上記規格の定めを踏まえ,解析上の不確定性を詳細に評価することとして評価基準を0.98に設定した上で(乙195),詳細な解析を実施し,本件使用済燃料ピットAエリアについては0.977,同Bエリアについては0.948という評価値を得て,評価基準0.98を下回ることを確認した(乙195)。 また,抗告人は,上記評価 細な解析を実施し,本件使用済燃料ピットAエリアについては0.977,同Bエリアについては0.948という評価値を得て,評価基準0.98を下回ることを確認した(乙195)。 また,抗告人は,上記評価値の算出に当たり,保守的な評価条件,具体的には,核分裂しやすい性質を有するウラン235の含有率が使用済ウラン燃料や使用済MOX燃料より高い新燃料の集合体が全貯蔵容量まで貯蔵されたと想定し,使用済燃料ピット水に含まれるほう素の存在は考慮しない(純水中に貯蔵される)等の評価条件を設定した上で,解析上の不確定性について,稠密化を実施する以前から考慮してきた,臨界計算上の不確定性,燃料ラック間隔やラック辺(内寸)といった燃料ラックの製作公差(工作物の許容される誤差の最大寸法と最小寸法の差)及び燃 料ラック内の燃料集合体の偏り(偏心)による不確定性に加えて,新たに燃料製作上の公差,具体的には,燃料ペレットの直径,密度,燃料被覆管の外径,内径及び燃料集合体の外寸の製作公差も考慮して解析を実施した(乙195)。 (ウ)抗告人の上記評価基準の設定及び上記評価値の算出を前提とした使用済燃料ピットAエリア及び同Bエリアの安全性については,原子炉設置変更許可申請に係る経済産業省原子力安全・保安院における審査で確認されている(乙196,乙197)。 (エ)以上によれば,抗告人は,本件各原子力発電所の使用済燃料ピットの稠密化に当たり,米国の規格を参考にして適切に評価基準の設定及び評価値の算出を行って臨界に至らないことを確認しているのであり,稠密化により臨界事故の発生の危険性が高まる状況にあり,安全性が欠如しているとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (8)抗告人の安全対策についてア相手方らの主張消防車の高台設置という仮設的な 危険性が高まる状況にあり,安全性が欠如しているとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (8)抗告人の安全対策についてア相手方らの主張消防車の高台設置という仮設的な安全対策が機能するためには,少なくとも,①使用済燃料ピットに損傷がないか,あったとしても極軽微な損傷であって,消防ポンプの給水能力の範囲内での冠水維持が可能であること,②使用済燃料ピットの接続装置が無事であること,③通路や補助建屋に大規模な損壊がなく,消防ポンプが辿り着けること,④消防ポンプが正常に機能すること,⑤必要な数の作業員を必要な時期に投入できること,⑥作業員が無事であること,⑦作業員が活動出来る環境であることが必要となるが,これらが全て満たされる可能性は著しく低く,その実現性がない。 イ検討(ア)抗告人は,上記①について,使用済燃料ピットの基準地震動に対する耐震安全性を確認しており,津波等に対しても安全機能が維持できることを確認してい る(乙76)。 上記④の消防ポンプは,本件各原子力発電所に複数台分散して,地震により生じる周辺斜面の崩落,敷地下斜面のすべり等によって影響を受けない位置に設置しており,さらに予備をも設置している(乙76)。 (イ)抗告人は,上記②について,本件各原子力発電所の使用済燃料ピットへの注水ラインの接続口は建屋の異なる面の隣接しない位置に距離をとって複数設置しており(乙76),仮に,ある接続口が何らかの原因により使用できないとしても,他の接続口を使用することができる。また,接続口を介さないでも消防ポンプを用いて使用済燃料ピット開口部に直接注水することもできる。 (ウ)抗告人は,上記③について,本件各原子力発電所における地盤の耐震安全性を確認しており,本件各原子力発電所の原子炉建屋周辺斜面について, いて使用済燃料ピット開口部に直接注水することもできる。 (ウ)抗告人は,上記③について,本件各原子力発電所における地盤の耐震安全性を確認しており,本件各原子力発電所の原子炉建屋周辺斜面について,基準地震動によっても崩壊のおそれがないことを確認している(乙76)。 また,抗告人は,原子炉補助建屋等も基準地震動に対する耐震安全性を有することを確認している(乙76)。 仮に構内道路(通路)に損壊が生じたとしても,重機により車両運行ルートの復旧を図ることとしていることに加え,ルートは複数確保されており,消防ポンプは人力で敷設することが可能であるから,段差が生じてもそれを乗り越えることが可能である(乙76,乙199)。 (エ)抗告人は,上記⑤ないし⑦について,本件各原子力発電所又はその近傍に,十分な数の初動対応要員を常時駐在させており(乙76),緊急事態に対しても機動的に対応できる。 また,本件各原子力発電所近傍に駐在する召集要員について,仮に何らかの事情で本件各原子力発電所への進入路が確保できなくなった場合でも,ヘリコプターや船舶による輸送手段を確保している。さらに,万一の緊急事態への対応に備え,悪天候,夜間,高放射線環境等の厳しい条件を想定し訓練を繰り返し行っている(乙 76)。 (オ)設置許可基準規則及び重大事故等防止技術的能力基準(乙119)においては,消防ポンプを含む重大事故等対処設備について,必要な機能が地盤の変位等,地震,津波及び火災によって損なわれるおそれがないこと,また,必要な容量,保管場所及びアクセスルートの確保等が要求されており,重大事故等に対処するために必要な手順等に関して規定する方針であることが要求されている。 原子力規制委員会は,抗告人の上記対策がこれらの要求内容に適合していることを確認している(乙14の2) ており,重大事故等に対処するために必要な手順等に関して規定する方針であることが要求されている。 原子力規制委員会は,抗告人の上記対策がこれらの要求内容に適合していることを確認している(乙14の2)。 また,重大事故等に対処するために必要な手順等については,これらの方針を満足するように保安規定を定めることが要求されている(乙200)。 原子力規制委員会は,抗告人の定めた上記対策に係る保安規定がこの要求内容に適合していることを確認している(乙201,乙202)。 (カ)以上によれば,抗告人は,相手方らが主張する危険性について適切に対応しており,安全性が欠如しているとはいえない。 (キ)したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (9)過酷事故対策についてア相手方らの主張新規制基準の過酷事故対策においては,「後付の簡易な可搬型設備等による対処」しか要求しておらず,「使用済み核燃料を『閉じ込める』という発想」はないし,「原子炉格納容器の中の炉心部分と同様に」堅固に防御を固めるという発想がない。 イ検討(ア)使用済燃料は,冠水状態を保つことにより健全性が確保され,使用済燃料ピットから周辺環境への放射性物質の放出を防止することができるから,使用済燃料ピットの水位及び水温の監視機能や,冷却・注水機能が重要となるところ, 新規制基準は,使用済燃料ピットの冷却機能又は注水機能が喪失し,又は使用済燃料ピットからの水の漏えいその他の要因により水位が低下するような異常な事態においても,これらが有効に機能することを求めており,合理的なものといえる(乙76,乙273の1)。 (イ)すなわち,使用済燃料は,使用済燃料ピットにおいて,大気圧(1気圧)の下,通常約40℃以下に保たれた使用済燃料ピット水により,冠水状態で貯蔵されている。使用済 る(乙76,乙273の1)。 (イ)すなわち,使用済燃料は,使用済燃料ピットにおいて,大気圧(1気圧)の下,通常約40℃以下に保たれた使用済燃料ピット水により,冠水状態で貯蔵されている。使用済燃料は,冠水さえしていれば崩壊熱が十分除去され,放射性物質を閉じ込める役割を果たす燃料被覆管の損傷に至ることはなく,その健全性が維持されることから,使用済燃料ピットから周辺環境への放射性物質の放出を防止するためには,使用済燃料の冠水状態を保つ必要があるといえる。そして,このような状態では,放射性物質を含む高温,高圧の水蒸気(水)が瞬時に発生,流出するような事態はおよそ起こり得ないことから,原子炉等と異なり,使用済燃料ピットは,耐圧性能を有する原子炉格納容器のような堅固な施設による閉じ込めを必要としない(乙76,乙273の1)。 (ウ)新規制基準では,使用済燃料の冠水状態を保つことについて,福島第一原子力発電所事故では,使用済燃料貯蔵槽が破損する可能性が危惧されたことや,使用済燃料貯蔵槽の水温,水位等の把握が困難であったことを踏まえ,重大事故等対策として,使用済燃料ピットの冷却機能又は注水機能が喪失し,又は使用済燃料ピットからの水の漏えいその他の要因により当該使用済燃料ピットの水位が低下した場合において,燃料体又は使用済燃料を冷却し,放射線を遮へいし,及び臨界を防止するために必要な設備を設けることを要求している。また,使用済燃料ピットからの大量の水の漏えいその他の要因により当該使用済燃料ピットの水位が異常に低下した場合において燃料体又は使用済燃料の著しい損傷の進行を緩和し,及び臨界を防止するために必要な設備を設けることを要求するとともに,使用済燃料ピットの監視のために,水位,水温等について測定可能な設備の設置を要求 している(設置許可基 い損傷の進行を緩和し,及び臨界を防止するために必要な設備を設けることを要求するとともに,使用済燃料ピットの監視のために,水位,水温等について測定可能な設備の設置を要求 している(設置許可基準規則54条及び同解釈54条)。 (エ)使用済燃料の冠水状態を保つことにより,使用済燃料の健全性が確保され,使用済燃料ピットから周辺環境への放射性物質の放出を防止することができるのであるから,使用済燃料ピットの水位及び水温の監視機能や,使用済燃料ピットの冷却・注水機能が重要であり,設置許可基準規則の重大事故等対策に関する要求内容は合理的なものといえる。 相手方らは,新規制基準は可搬型設備等による対応しか求めておらず,使用済燃料を「閉じ込める」という発想がないと批判するが,使用済燃料の管理で必要な機能という観点からすると,同主張を採用することができない。 (オ)設置許可基準規則は,使用済燃料ピットについて,設計基準対象施設として,地震,津波,その他の外部事象からの衝撃による損傷の防止を求め(設置許可基準規則4~6条),さらに,取扱中の燃料体や重量物の落下に対して,その機能が損なわれることがないことを要求している(同16条2項2号ニ)のであるから,外部の事象に対する防御の発想がないという相手方らの主張を採用することができない。 そうすると,新規制基準は,使用済燃料ピットの防護について適切な配慮をしており,安全性が欠如しているとはいえない。 (カ)したがって,相手方らの主張を採用することができない。 原子力燃料に対する安全確保対策(1)原子力燃料ア燃料の設計・製造(乙59,乙76,乙283の1,2,乙284の1,2)(ア)燃料の設計a原子炉設置(変更)許可を得るに当たり,燃料について,原子炉等規制法43条の3の6第1項4号,及び設 燃料の設計・製造(乙59,乙76,乙283の1,2,乙284の1,2)(ア)燃料の設計a原子炉設置(変更)許可を得るに当たり,燃料について,原子炉等規制法43条の3の6第1項4号,及び設置許可基準規則15条5項,同条6項1号等に 適合することを要求している。 また,原子炉等規制法は,原子力規制委員会規則で定めるところにより,加工の工程ごとに原子力規制委員会の検査を受け,合格した後でなければ,発電用原子炉設置者は,これを使用してはならない(原子炉等規制法43条の3の12第1項)と規定するとともに,その検査を受けようとする者は,あらかじめ,原子力規制委員会規則で定めるところにより,その燃料の設計について原子力規制委員会の認可を受けなければならないと規定している(同条第2項)。 上記認可に当たっては,燃料の健全性を維持するために設定されている技術上の基準(技術基準規則23条1項,実用発電用原子炉に使用する燃料体の技術基準に関する規則〔以下「実用炉燃料規則」という。〕,及び「発電用軽水型原子炉の燃料設計手法について」〔昭和63年5月12日原子力安全委員会了承〕)に適合することが要求されている。 なお,輸入した燃料の検査についても,輸入した燃料体は,原子力規制委員会の検査を受け,これに合格した後でなければ,発電用原子炉設置者は,これを使用してはならない(原子炉等規制法43条の3の12第4項)とされ,上記検査においては,燃料の健全性を維持するために設定されている技術上の基準(実用炉燃料規則)に適合することが要求されている(原子炉等規制法43条の3の12第5項)。 b原子力発電所で使用する燃料は,原子炉内での使用期間を通じ,燃料棒の内外圧差,負荷の変化により起こる圧力・温度の変化,ペレットの変形等を考慮して,十分な強度を有するように の3の12第5項)。 b原子力発電所で使用する燃料は,原子炉内での使用期間を通じ,燃料棒の内外圧差,負荷の変化により起こる圧力・温度の変化,ペレットの変形等を考慮して,十分な強度を有するように設計されている。これにより,ペレットや燃料被覆管は,放射性物質を閉じ込める機能を保持することができる。 具体的には,燃料棒設計において,以下の5項目を考慮して設計されている。 すなわち,①燃料棒内圧について,サーマルフィードバックによる燃料温度の過大な上昇を防ぎ得る範囲に留めること,②運転中に最も温度の上がりやすい燃料 中心について,最高温度がペレットの溶融点(ウランペレットの場合,二酸化ウランの溶融点)未満となるようにすること,③燃料被覆管応力及び④燃料被覆管歪みについて,その健全性を確保し得る値とすること,並びに⑤周期的な燃料被覆管歪みについて,燃料の使用期間中に予想される負荷に対して燃料被覆管の健全性を確保し得る値とすることをそれぞれ考慮して設計されている。 c燃料棒内圧に係る考慮燃料棒の燃焼初期においては,燃料棒の内圧が1次冷却材圧力(以下「外圧」という。)よりも低いため,燃料被覆管の径が減少して燃料被覆管とペレットが接触する場合がある。その場合,燃焼が進むに従ってペレットが膨張するため,ペレットによる押し出しにより燃料被覆管は径が増加する。更に燃焼が進むと,ペレットから放出される気体状の放射性物質(FPガス)の蓄積により燃料棒の内圧が上昇し,燃焼が進んだ燃料棒では内圧が外圧を超えて,ある一定の圧力を超えると,内圧により燃料被覆管の径が増加して,一旦は接触していたペレットと燃料被覆管との間に隙間(ギャップ)が生じる可能性がある。 このように,燃料被覆管に外向きのクリープ変形(比較的低い応力を受けて,徐々に燃料被覆管が変形する現象。 加して,一旦は接触していたペレットと燃料被覆管との間に隙間(ギャップ)が生じる可能性がある。 このように,燃料被覆管に外向きのクリープ変形(比較的低い応力を受けて,徐々に燃料被覆管が変形する現象。)が生じてペレットと燃料被覆管との間にギャップが生じると,ペレットの熱が1次冷却材に伝わりにくくなり,ペレット温度が上昇しやすくなる。ペレット温度が上昇すると,ペレットから更に気体状の放射性物質(FPガス)が放出され,燃料棒の内圧が上昇し,その結果,更にギャップが広がる可能性が生じる。この現象を「サーマルフィードバック」といい,サーマルフィードバックが生じた状態で燃料集合体の使用を継続すると,ペレット温度の過大な上昇を招くことになる。 そこで,このようなサーマルフィードバックの発生を避けるべく,新規制基準は,燃料棒内圧が,上記のギャップを増加させる圧力を超えない設計であることを要求している。 d燃料中心温度に係る考慮ペレットが溶融すると,ペレットの体積が膨張して燃料被覆管に大きな圧力がかかる事態が想定される上,ペレットから放射性物質が過度に放出される事態も想定される。 このような事態を防止するため,新規制基準は,ペレットの中心温度がペレットの溶融点未満(ウランペレットの場合,二酸化ウランの溶融点未満)となる設計であることを要求している。すなわち,ペレットの溶融点は燃焼に伴って低下し,ペレットの中心温度も燃焼に伴って変化するが,溶融点とペレットの中心温度の差が最も小さくなるときにも,ペレットの中心温度は,ペレットの溶融点未満となる設計であることを要求している。 e燃料集合体の製造原料(ウランペレットの場合は二酸化ウラン)を焼き固めて,ペレットを製造し,ペレットを燃料被覆管に封入して燃料棒を製造し,燃料棒を組み上げて燃料集合体とする とを要求している。 e燃料集合体の製造原料(ウランペレットの場合は二酸化ウラン)を焼き固めて,ペレットを製造し,ペレットを燃料被覆管に封入して燃料棒を製造し,燃料棒を組み上げて燃料集合体とする。 国内で燃料集合体を製造する場合,原子力規制委員会規則で定める加工の工程ごとに原子力規制委員会の検査を受け,組成,寸法,形状等が,原子力規制委員会規則で定める技術基準に適合していることの確認を受ける。 イ燃料の運用・管理(乙59,乙76,乙283の1,2,乙284の1,2)前記のとおり設計・製造された燃料集合体は,その使用に当たっても,健全性を確保し,機能を損なわないよう,管理された状態で使用しなければならない。 そこで,新規制基準は,原子炉に燃料を装荷するに当たっては,新旧の燃料集合体を炉心の中心部と周辺に適切に配置すること等を通じて出力分布を平坦化し,ペレットが溶融するような過度な線出力密度(燃料集合体を構成する燃料棒1本の単位長さ当たりの出力をいい,kW/mで表す。)にならないようにする等,燃料の 健全性確保を考慮して燃料を配置するよう要求している。 なお,この炉心設計の妥当性については,原子炉起動時に,炉物理検査(実際の燃料取替後の炉心において,ほう素濃度や出力分布を測定することにより炉心設計の妥当性を確認する検査をいう。)により確認することができる。 また,原子炉の運転中においては,原子炉容器外部側面に配置された中性子束(単位時間に単位面積を通過する中性子の数を表す尺度)検出器により原子炉出力を監視することにより,異常な出力に至っていないことを常時監視するとともに,1次冷却材の温度,圧力等の値を監視することにより燃料棒表面が膜沸騰状態(運転中に何らかの原因で燃料棒の出力が大きくなり過ぎ,燃料棒表面が蒸気の泡で覆われる状態をいう いことを常時監視するとともに,1次冷却材の温度,圧力等の値を監視することにより燃料棒表面が膜沸騰状態(運転中に何らかの原因で燃料棒の出力が大きくなり過ぎ,燃料棒表面が蒸気の泡で覆われる状態をいう。この状態になると,1次冷却材への熱の伝わり方が悪くなり,燃料被覆管表面の温度が上がって燃料被覆管を損傷するおそれがある。)にならず,正常に冷却されていることを常時監視することにより,安全性を確認することができる。 さらに,原子炉容器の下部から中性子束検出器を挿入し,定期的に原子炉内の立体的な出力分布を測定し,この測定結果から,原子炉内の出力分布に異常な偏りがないこと,燃料棒表面が膜沸騰状態になっていないこと等を確認することができる。 ウMOX燃料の設計・製造(乙59,乙76,乙283の1,2,乙284の1,2)(ア)プルサーマルプルサーマルとは,プルトニウムの「プル」と熱中性子炉(サーマルリアクター)の「サーマル」を合成した和製英語であり,ウランとプルトニウムを混合したMOX燃料を軽水炉等の熱中性子炉に装荷して原子力発電を行う手法である。 原子力発電で用いるウラン燃料は,発電後の使用済燃料においても,まだ燃料として使用できるウラン,プルトニウムが約95%残存しているため,これらを 再処理して分離,回収し,MOX燃料として再利用するという手法である。 本件各原子力発電所3号機においては,平成22年12月25日からプルサーマルの調整運転を開始し,平成23年1月21日から営業運転を開始し,平成24年2月20日に運転を停止するまでの間,燃料集合体157体のうち,8体はMOX燃料集合体を使用し,残り149体はウラン燃料集合体を使用した(乙56~58)。 (イ)MOX燃料の設計について,「MOX燃料の特性,挙動は,ウラン燃料と大きな差はなく 57体のうち,8体はMOX燃料集合体を使用し,残り149体はウラン燃料集合体を使用した(乙56~58)。 (イ)MOX燃料の設計について,「MOX燃料の特性,挙動は,ウラン燃料と大きな差はなく,また,MOX燃料及びその装荷炉心は従来のウラン燃料炉心と同様の設計が可能である」(乙59)とされていることから,抗告人は,MOX燃料とウラン燃料との差を考慮して,MOX燃料の設計を行っている。新規制基準も,前記のとおり,MOX燃料についても,ウラン燃料と同様に,原子力規制委員会規則で定めるところにより検査を受け,合格した後でなければ,使用してはならない等と規定している。 新規制基準は,燃料棒設計において,ウラン燃料の場合と同様に,①燃料棒内圧,②燃料中心温度,③燃料被覆管応力,④燃料被覆管歪み,及び⑤周期的な燃料被覆管歪みの5項目を考慮して設計することとし,その際に,MOX燃料の物性及び照射挙動に関する特性,すなわち,[i]ペレットの融点及び熱伝導率(物質内に同じ温度分布が生じる場合の熱の伝わり易さを表す尺度をいう。)がプルトニウム含有率(プルトニウム富化度)の増加に伴って低下すること,[ii]気体状の放射性物質(FPガス)放出率がウランペレットよりも若干高めであることを考慮して設計することを要求している。 [i]ペレットの融点及び熱伝導率がプルトニウム含有率(プルトニウム富化度)の増加に伴って低下することMOXペレットは,プルトニウム含有率の増加に伴い,ウランペレットに比べ,ペレットの融点が低下するとともに,熱伝導率が低下することで燃料中心温度が 高くなる。一方,抗告人は,MOXペレットにおけるプルトニウム含有率を一定値以下に抑える設計としていることから,プルトニウム含有率の増加に伴うペレット融点及び熱伝導率の低下の度合いは小さく 高くなる。一方,抗告人は,MOXペレットにおけるプルトニウム含有率を一定値以下に抑える設計としていることから,プルトニウム含有率の増加に伴うペレット融点及び熱伝導率の低下の度合いは小さくなる。その結果,通常運転時及び運転中の異常発生時のMOXペレットの最高温度は,厳しく評価しても約2260℃であり,MOXペレットの融点の最小値と評価される約2520℃を大きく下回っており,溶融することがないことを確認している。 [ii]気体状の放射性物質(FPガス)放出率がウランペレットよりも若干高めであることMOXペレットは,FPガス放出率がウランペレットよりも若干高いことにより,燃焼が進んだ際に,FPガスの蓄積による燃料棒の内圧の上昇の度合いが,ウランペレットに比べて若干高くなる。そこで,抗告人は,この点を踏まえた上でなお,燃料棒内圧が前記のサーマルフィードバックを生じさせない範囲に留まるように,すなわちペレットと燃料被覆管のギャップを増加させる圧力を超えることがないように燃料を設計している。そして,運転期間中におけるMOX燃料棒内圧を評価した結果,当該圧力を超えないことを確認している。 (ウ)MOX燃料の製造MOX燃料の製造については,ウラン燃料の製造と同様に,原料(二酸化プルトニウム,二酸化ウラン)を混合して焼き固め,MOXペレットを製造し,MOXペレットを燃料被覆管に封入してMOX燃料棒を製造し,MOX燃料棒を組み上げてMOX燃料集合体とする。 MOX燃料集合体を輸入して使用する場合は,製造前及び製造後に輸入燃料体検査申請書を原子力規制委員会に提出し,国内で製造する場合と同様に検査を受け,組成,寸法,形状等が原子力規制委員会規則で定める技術基準に適合していることの確認を受ける。 抗告人は,フランスのメロックス社で製造されたMOX 委員会に提出し,国内で製造する場合と同様に検査を受け,組成,寸法,形状等が原子力規制委員会規則で定める技術基準に適合していることの確認を受ける。 抗告人は,フランスのメロックス社で製造されたMOX燃料を使用していると ころ,同社では,原料の二酸化ウラン粉末と二酸化プルトニウム粉末を2段階で混合することで原料を十分に混合し,ペレット内のプルトニウム含有率の不均一が十分に小さくなる製法で製造している。 抗告人は,メロックス社から輸入したMOX燃料について輸入燃料体検査を申請し,ペレット内のプルトニウムの均一性も含め,原子力規制委員会の確認を受けている。 エMOX燃料の運用・管理(乙76)(ア)原子炉の制御プルトニウムはウランに比べて中性子を吸収しやすいため,制御棒やほう素に吸収される中性子の割合が低くなり,①制御棒や②ほう素による制御能力が若干低くなる傾向にある。 そこで,抗告人は,①制御棒による制御能力については,MOX燃料集合体とウラン燃料集合体を適切に配置することにより,本件各原子力発電所の停止余裕(制御棒の制御能力から,原子炉を停止するために必要な制御能力を差し引いたものをいう。)が一定の制限値を上回ることをもって,所要の制御能力が確保されていることを確認している。 なお,本件各原子力発電所の保安規定では,取替炉心の安全性評価を行うこと,また,その評価の中で停止余裕について確認することを定めており,抗告人は,定期的な検査において,停止余裕が確保されていることを確認している。新規制基準では,原子力規制委員会規則に定めるところにより保安規定を定め,原子力規制委員会の認可を受けること,また,その保安規定に取替炉心の安全性評価を行う旨を定めることを要求している(原子炉等規制法43条の3の24第1項,及び「実用発電用原子炉及びそ 保安規定を定め,原子力規制委員会の認可を受けること,また,その保安規定に取替炉心の安全性評価を行う旨を定めることを要求している(原子炉等規制法43条の3の24第1項,及び「実用発電用原子炉及びその附属施設における発電用原子炉施設保安規定の審査基準」)。 また,②ほう素による制御能力については,1次冷却材に添加するほう素の濃度を調整することによって中性子の数を調整し,所要の制御能力を確保している。また,本件各原子力発電所においては,万一,LOCA等が発生した場合にECCS により原子炉容器に注入するほう酸水について,燃料取替用水タンク及びほう酸水注入タンク内のほう酸水のほう素濃度を上昇させており,原子炉停止時に臨界(中性子の生成と消失の均衡が保たれ,核分裂する数が一定〔出力が一定〕である状態をいう。)とならないようにするために必要な能力を確保している。 MOX燃料は,ウラン燃料と比べて遅発中性子(核分裂の際に放出される中性子のうち,即時に出てくる中性子〔即発中性子という〕より,いくらか遅れて出てくる中性子をいう。核分裂が生じてから中性子が吸収されるまでの時間が長いことから,急激な出力変化を抑制する効果がある。)の割合が小さいため,正の反応度(反応度とは,原子炉が臨界からずれている程度を表す指標をいい,正の反応度が加わるとは,制御棒を引き抜いたり,1次冷却材に添加するほう素の濃度を減らしたりすることで,反応度を正の方向へ変化させることをいう。)が加わった場合,ウラン燃料と比べて出力上昇が早くなる傾向となる。他方,燃料のドップラー効果に関して,MOX燃料を構成するプルトニウムは,ウラン燃料を構成するウラン238(核分裂しにくい性質を持つ)と同様に,燃料温度の上昇により中性子を吸収しやすくなるという特性を有するため,MOX燃料は,ウラン燃 MOX燃料を構成するプルトニウムは,ウラン燃料を構成するウラン238(核分裂しにくい性質を持つ)と同様に,燃料温度の上昇により中性子を吸収しやすくなるという特性を有するため,MOX燃料は,ウラン燃料と比べて温度上昇による核分裂の増加抑制効果(ドップラー効果)は大きい。そして,この抑制効果は前者の出力上昇傾向を相殺するものであるから,結局のところ,反応度が加わった場合の原子炉の出力変化は,MOX燃料もウラン燃料も同程度となる。 抗告人は,原子炉起動時の制御棒の異常な引き抜き等の事象においても,ドップラー効果によりMOX燃料の急速な出力上昇が抑制され,原子炉を緊急停止させることで安全性が確保されることを確認している。 (イ)燃料集合体の配置抗告人は,ウラン燃料の場合と同様に,原子炉に燃料を装荷する(定期的な検査の際に一部の燃料を取り替える場合を含む。)に当たって,MOX燃料の特性を考慮して,下記のとおり,燃料の配置を決定し,燃料の健全性を確保している。 なお,本件各原子力発電所の保安規定では,燃料を原子炉に装荷する際の配置等 について計画を定めることとしており,抗告人は,定期的な検査において,その計画のとおり燃料の配置がなされていることを確認している。新規制基準では,前記のとおり,原子力規制委員会規則に定めるところにより保安規定を定め,原子力規制委員会の認可を受けることが要求されている(原子炉等規制法43条の3の24第1項)。 原子炉内でMOX燃料集合体とウラン燃料集合体が隣接する場合,プルトニウムは,ウランより熱中性子を吸収しやすいため,燃料内の(ウランやプルトニウムに吸収されないでいる)熱中性子の密度が相対的に低くなることから,ウラン燃料集合体内の熱中性子の一部が,相対的に密度の低いMOX燃料集合体に向かって流入する結果,ウラン 料内の(ウランやプルトニウムに吸収されないでいる)熱中性子の密度が相対的に低くなることから,ウラン燃料集合体内の熱中性子の一部が,相対的に密度の低いMOX燃料集合体に向かって流入する結果,ウラン燃料集合体と隣接するMOX燃料集合体の外縁部の出力が,MOX燃料集合体の中心部より相対的に高くなる。抗告人は,これを緩和するため,MOX燃料集合体については,燃料集合体を構成する264本のMOX燃料棒のプルトニウム含有率に3段階の変化をつけて配列し,燃料集合体周辺部の出力を抑制することにより,燃料集合体における出力の分布が平坦化するように設計している。 (ウ)被ばく対策原子力発電所では,核分裂反応によって生じるエネルギーを利用して発電を行っているため,核分裂に伴って核分裂生成物(多くは放射性物質)が発生することから,抗告人は,事故防止に係る安全確保対策だけではなく,事故等とは関係なく原子力発電所の平常運転時に放出せざるを得ない微量の放射性物質による周辺公衆の被ばくをできるだけ低減するための対策を講じている。 すなわち,①燃料被覆管内に生じた放射性物質が1次冷却材に漏えいするのを極力防止し,②1次冷却材中に漏えいした放射性物質については,これをできる限り1次冷却設備内に封じ込めるとともに,これをできるだけ捕捉し,③1次冷却材中の放射性物質については,その形態に応じて適切に処理することによって,周辺環境に放出する放射性物質の量を最小限に抑制している。また,放射性物質を放出するに当たっては,放射性物質の放出量を厳重に管理するとともに,周辺環境中の放 射線の線量等を監視している。 本件各原子力発電所の平常運転に伴って,周辺環境へ放出する放射性物質からの放射線により周辺公衆が受ける実効線量の評価値は,MOX燃料の使用を前提として評価しても,最大で 射線の線量等を監視している。 本件各原子力発電所の平常運転に伴って,周辺環境へ放出する放射性物質からの放射線により周辺公衆が受ける実効線量の評価値は,MOX燃料の使用を前提として評価しても,最大で年間約0.012mSvであるが,これは,線量限度等を定める告示(「実用発電用原子炉の設置,運転等に関する規則の規定に基づく線量限度等を定める告示」〔平成13年経済産業省告示第187号〕)に定める線量限度(1年間につき実効線量1mSv),さらには,線量目標値指針(「発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に関する指針」〔昭和50年5月13日原子力委員会決定〕)に定める線量目標値(1年間につき実効線量0.05mSv)よりも十分に低い値である。 実効線量とは,放射線の人体に対する影響の度合い(発がんなどのリスク)を定量的に定義したものである。 実効線量の値は,人体の一部の組織が放射線に被ばくしたときの影響の度合いを,全身の組織がある線量を均等に被ばくすることによりもたらされるそれと同等であるとしたときの,その全身に対する線量として求められ,単位としてはSv(シーベルト)が用いられる。実効線量への換算については,組織ごとに換算係数が定められており,例えば,肺(換算係数は0.12)だけに100mSv(ミリシーベルト)被ばくした場合,その影響の度合いは,全身の組織が均等に12mSv被ばくしたのに等しく,この値が実効線量となる。 抗告人は,MOX燃料の運用・管理において,MOX燃料の特性を考慮した遮へい対策を施す等することにより,MOX燃料をウラン燃料と同様に安全に取り扱うことができ,本件各原子力発電所の作業員が,法律で定められた基準を超えて被ばくすることがないよう,管理している。 オ使用済燃料の貯蔵・管理(乙76)本件各原子力発電所の使用済燃料ピットは,そ 扱うことができ,本件各原子力発電所の作業員が,法律で定められた基準を超えて被ばくすることがないよう,管理している。 オ使用済燃料の貯蔵・管理(乙76)本件各原子力発電所の使用済燃料ピットは,その全貯蔵容量まで使用済燃料を貯蔵した場合にも使用済燃料から発生する崩壊熱を十分除去する能力を有してい るが,抗告人は,使用済MOX燃料を実際の使用状況を踏まえた貯蔵量よりも大きく増やした条件においてもなお,使用済燃料から発生する崩壊熱を十分除去する能力を有していることを確認している。 カ抗告人は,原子力規制委員会における本件各原子力発電所の新規制基準適合性審査において,MOX燃料を使用することを前提に,MOX燃料とウラン燃料の差異を適切に考慮して安全確保対策を講じており,本件各原子力発電所の燃料の健全性が確保されていることを説明した。 原子力規制委員会は,「3号炉及び4号炉でのMOX燃料の使用は,既に許可されたものであり,本審査は,MOX燃料の使用を前提としている」とした上で,「審査では,重大事故等の進展に影響する核的特性,物性,照射挙動等に係る諸特性は,ウラン燃料とMOX燃料を炉心へ装荷する運用などを踏まえた条件のもとで,重大事故等時における炉心損傷防止対策,格納容器破損防止対策,使用済燃料貯蔵槽における燃料損傷防止対策等が有効であることなどを確認しています」(乙40)と判断した。 (2)まとめ以上によれば,抗告人は,本件各原子力発電所の「原子力燃料の安全確保対策」に関する新規制基準適合性について,新規制基準の策定内容を含めて,不合理な点がないことを,相当の根拠及び資料に基づいて疎明したものといえる。 そこで,相手方らの主張について次に検討する。 (3)相手方らの主張アMOX燃料は,①融点低下による燃料ペレットの融点の低下,②熱 がないことを,相当の根拠及び資料に基づいて疎明したものといえる。 そこで,相手方らの主張について次に検討する。 (3)相手方らの主張アMOX燃料は,①融点低下による燃料ペレットの融点の低下,②熱伝導低下による燃料ペレットの中心温度の上昇,③核分裂ガス放出率の上昇による燃料棒内圧の上昇,④ウラン・プルトニウム不均衡によるプルトニウムスポット発生という特性があり,燃料の健全性に影響を与える。 イMOX燃料はウラン燃料に比べ,高速中性子を大量に発生させることによ り,中性子照射脆化が加速する。 ウプルサーマルには,①プルトニウムが熱中性子を吸収しやすいので制御棒の熱中性子吸収割合が減少し制御棒の効きが低下する,②反応度係数の絶対値増加による過度事象時の急激な反応度変化,③出力キーピング増大による出力分布の隔たり,④遅発中性子割合の減少による反応度投入時の出力上昇という,原子炉運転時の不安定さを増大させる要因がある。 エMOX燃料は,ウラン燃料に比べて,①核分裂収率が異なることによるヨウ素,トリウム等の放射性核種生成の著しい増加,②崩壊熱の増加と発熱期間の長期化による使用済み核燃料の貯蔵管理,廃棄物の長期化と困難化,③アルファー線放出核種生成の増加による高い発ガン性,特に内部被曝の危険性の増加がある。 オMOX燃料のペレットの加工は乾式研削によらざるを得ず,加工精度が落ちるため,規格外れのペレットが多数混在する可能性がある。 カMOX燃料の核分裂時の膨張速度の変化の計測値はウラン燃料とほぼ同じである等と安易に仮定して適用しているが,燃焼度や膨張速度の異なるMOX燃料では運転末期のかなり前にギャップ再開が生じる可能性がある。 ギャップ再開が生じると熱伝導性が低下し(熱が冷却剤へ伝達放散されない),過度の温度上昇が生じる。核燃料に過 度や膨張速度の異なるMOX燃料では運転末期のかなり前にギャップ再開が生じる可能性がある。 ギャップ再開が生じると熱伝導性が低下し(熱が冷却剤へ伝達放散されない),過度の温度上昇が生じる。核燃料に過度の温度上昇が続くと更にFPガスが発生してギャップが拡大し続けることとなり,やがてジルコニウム合金の被覆管は強度の限界に達して破断し核燃料棒が溶融破損することとなり,炉心全体が溶融破損してメルトダウンすることにつながる。 (4)検討ア前記のとおり,抗告人は,本件各原子力発電所でMOX燃料を使用するに当たり,MOX燃料の特性を踏まえ,適切に設計・製造,運用・管理,使用済燃料の貯蔵・管理を行い,本件各原子力発電所のMOX燃料の安全性を確認してい る。また,原子力規制委員会も,新規制基準適合性を確認し,MOX燃料の安全性を確認している。 相手方らの上記主張は,MOX燃料がプルサーマルについて一般的な危険性を述べるにとどまり,本件各原子力発電所のMOX燃料が有している危険性について具体的に主張するものとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 イなお,付言すると以下のとおりである(乙59,乙76,乙283の1,2,乙284の1,2)。 (ア)MOXペレットは,プルトニウム含有率の増加に伴い,ウランペレットに比べ,ペレットの融点が低下するとともに,燃料中心温度が高くなるが,抗告人は,MOXペレットのプルトニウム含有率を一定値以下に抑える設計とし,ペレット融点及び熱伝導率の低下の度合いが小さくなるようにしており,その結果,MOXペレットが溶融することがないことを確認している。原子力規制委員会も,新規制基準適合性を確認している。 また,抗告人が使用するMOX燃料を製造するフランスのメロックス社では,原料を十分に混合し, OXペレットが溶融することがないことを確認している。原子力規制委員会も,新規制基準適合性を確認している。 また,抗告人が使用するMOX燃料を製造するフランスのメロックス社では,原料を十分に混合し,ペレット内のプルトニウム含有率の不均一(プルトニウムスポット)が十分に小さくなる製法で製造しており,抗告人は,メロックス社から輸入したMOX燃料について,ペレット内のプルトニウムの均一性も含め,原子力規制委員会の確認を受けている。 (イ)原子炉容器に用いられる材料(以下「鋼材」という。)が中性子の照射を受けることによって,ねばり強さ(靭性)が低下する(脆化する)現象のことを中性子照射脆化という。 抗告人は,原子炉の運転に伴う中性子の照射により鋼材の靭性が低下することを考慮し,検査によってき裂が認められないにもかかわらず,き裂の存在を想定し,事故時の温度変化を実際の温度変化と比べて急激に変化すると仮定するなど, 保守性を備えた破壊力学(工学の一分野であり,欠陥又はき裂を有する部材・材料について,破壊現象を定量的に扱う工学的手法の一つをいう。)評価により,原子炉容器の健全性(脆性破壊が起こらないこと)を確認している。 また,MOX燃料ではウラン燃料より中性子線が多く発生するところ,抗告人は,本件各原子力発電所の原子炉容器の健全性評価において,原子炉容器が受ける中性子照射量をウラン燃料の場合より大きく想定して,中性子の照射による鋼材の靭性低下を評価し,原子炉容器の健全性を確認している。 以上によれば,抗告人がMOX燃料を使用していることに基づき,中性子照射脆化が加速するとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (ウ)抗告人は,制御棒の制御能力から原子炉を停止するために必要な制御能力を差し引いた停止余裕が,制限値を上回 射脆化が加速するとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (ウ)抗告人は,制御棒の制御能力から原子炉を停止するために必要な制御能力を差し引いた停止余裕が,制限値を上回ることをもって,制御棒の制御能力が確保されていることを確認している。 抗告人は,MOX燃料集合体とウラン燃料集合体を適切に配置することにより,制限値に対する停止余裕を十分に確保している。 MOX燃料は,反応度が加わった場合,ウラン燃料と比べて遅発中性子の割合が小さいため,ウラン燃料と比べて出力上昇が早くなる傾向となる一方,ウラン燃料と比べて温度上昇による核分裂の増加抑制効果(ドップラー効果)が大きいことから,反応度が加わった場合の原子炉の出力変化は,MOX燃料もウラン燃料も同程度となるため,反応度が加わった場合でも急速な出力上昇となることはない。 MOX燃料集合体を構成するMOX燃料棒のプルトニウム含有率に変化をつけて配列し,燃料集合体周辺部の出力を抑制することにより,燃料集合体における出力の分布が平坦化するように設計している。 (エ)抗告人は,事故防止に係る安全確保対策,被ばく低減対策を講じ,MO X燃料の特性を適切に考慮して運用・管理し,ウラン燃料を用いた場合と同様に,本件各原子力発電所の安全性が確保されることを確認している。 また,抗告人は,プルトニウムの特性を適切に考慮して,遮へい等の被ばく対策を講じることで,MOX燃料を,ウラン燃料と同様に安全に取り扱うことができるようにしている。 (オ)ペレットは,原料(MOXペレットの場合,二酸化ウラン粉末と二酸化プルトニウム粉末)を混合し,プレスで圧力を加え,円筒形に整形し,これを焼結炉にて焼結してセラミックとした後,所定の寸法にするため研削機で研削することにより製造するところ,抗告人は ラン粉末と二酸化プルトニウム粉末)を混合し,プレスで圧力を加え,円筒形に整形し,これを焼結炉にて焼結してセラミックとした後,所定の寸法にするため研削機で研削することにより製造するところ,抗告人は,MOX燃料の特性を適切に考慮して製造されたMOX燃料を使用することとしており,燃料の組成,寸法,形状等については原子力規制委員会の確認を受けている。 (カ)燃料棒は,その燃焼初期においては,燃料棒の内圧が外圧より低いことにより燃料被覆管とペレットが接触する場合があるところ,燃焼が進むと,ペレットから放出される気体状の放射性物質(FPガス)の蓄積により燃料棒の内圧が上昇して外圧より高くなり,更に一定の圧力を超えると内圧により燃料被覆管の径が増加して,一旦は接触していたペレットと燃料被覆管との間に隙間(ギャップ再開)が生じる可能性がある。 しかし,抗告人は,ギャップ再開を防止するため,MOXペレットについて,気体状の放射性物質(FPガス)放出率がウランペレットよりも若干高く,燃焼が進んだ際に,FPガスの蓄積による燃料棒内圧の上昇の度合いが,ウランペレットに比べて若干高くなるとの特性を考慮し,燃料棒内圧が,ペレットと燃料被覆管のギャップが増加する圧力を超えない設計とし,運転期間中におけるMOX燃料棒の内圧を評価した結果,燃料棒内圧が,ペレットと燃料被覆管のギャップを増加させる圧力を超えないことを確認している。 (キ)抗告人は,本件各原子力発電所の使用済燃料ピットについて,使用済MO X燃料を実際の使用状況を踏まえた貯蔵量よりも大きく増やした,厳しい条件においてもなお,使用済燃料から発生する崩壊熱を十分除去する能力を有していることを確認している。 すなわち,抗告人は,MOX燃料の特性を適切に考慮して使用済燃料の貯蔵・管理を行っている。 (ク 条件においてもなお,使用済燃料から発生する崩壊熱を十分除去する能力を有していることを確認している。 すなわち,抗告人は,MOX燃料の特性を適切に考慮して使用済燃料の貯蔵・管理を行っている。 (ク)以上によれば,本件各原子力発電所のMOX燃料の安全性が欠如しているとはいえない。 テロリズム対策(1)原子炉等規制法等による規制内容原子力基本法2条は,原子力利用における安全確保の目的の1つとして,我が国の安全保障に資することを掲げ,また,原子炉等規制法1条は,原子炉の設置及び運転等に関し,テロリズムその他の犯罪行為の発生も想定した必要な規制を行い,我が国の安全保障に資することを同法の目的として掲げている。 これを受けて,原子炉等規制法は,原子炉設置(変更)許可の基準の一部としてテロリズム対策に関する基準を設けているほか,保安や核燃料物質に対する所定の防護措置を義務付けている。 前者の原子炉設置(変更)許可に係るテロリズム対策に関する基準については,同法43条の3の6第1項3号及び同項4号並びに設置許可基準規則及び「実用発電用原子炉に係る発電用原子炉設置者の重大事故の発生及び拡大の防止に必要な措置を実施するために必要な技術的能力に係る審査基準」(別紙「規則・告示・内規一覧表(14))に定められ,後者の保安,防護措置については,同法43条の3の22第1項及び第2項並びに「実用発電用原子炉の設置,運転等に関する規則」(同1(1),実用炉規則)に定められている。 (2)法体系上の位置づけ我が国の法制上,テロリズムを含む犯罪行為の予防及び鎮圧は警察の責務とされ(警察法2条1項),ミサイル攻撃等の大規模テロ攻撃に対しては,「武力攻撃事態 等における国民の保護のための措置に関する法律」(以下「国民保護法」という。)等に基づき,緊急対処事 の責務とされ(警察法2条1項),ミサイル攻撃等の大規模テロ攻撃に対しては,「武力攻撃事態 等における国民の保護のための措置に関する法律」(以下「国民保護法」という。)等に基づき,緊急対処事態として国が対策本部を設置し,原子力災害への対処,放射性物質による汚染への対処等に当たり,原子力事業者は,国と連携して対処することとされている。 原子力災害対策特別措置法も,3条において,「原子力事業者は,この法律又は関係法律の規定に基づき,原子力災害の発生の防止に関し万全の措置を講ずるとともに,原子力災害(原子力災害が生ずる蓋然性を含む。)の拡大の防止及び原子力災害の復旧に関し,誠意をもって必要な措置を講ずる責務を有する。」と規定し,原子力災害の発生の防止に関し事業者に万全の措置を講ずる責務を課す一方で,同法4条の2において,「国は,大規模な自然災害及びテロリズムその他の犯罪行為による原子力災害の発生も想定し,これに伴う被害の最小化を図る観点から,警備体制の強化,原子力事業所における深層防護の徹底,被害の状況に応じた対応策の整備その他原子力災害の防止に関し万全の措置を講ずる責務を有する。」と規定している。 以上のとおりの原子力利用に関する法令の規定からすれば,発電用原子炉施設を含む原子炉施設のテロリズムその他の犯罪行為に対する安全性の確保については,国の責務であることを基本としつつ,施設の構造及び設備並びに重大事故等対策の観点からの規制を通じて原子力事業者にも一定の責務を課しているものということができ,設置許可基準規則等の以下の定めは,以上のような法の趣旨を具体化したものということができる。 (3)大規模損壊の定義等(乙273の1)大規模損壊とは,「大規模な自然災害又は故意による大型航空機の衝突その他のテロリズムによる発電用原子炉施設の大 の趣旨を具体化したものということができる。 (3)大規模損壊の定義等(乙273の1)大規模損壊とは,「大規模な自然災害又は故意による大型航空機の衝突その他のテロリズムによる発電用原子炉施設の大規模な損壊」のことと定められている(実用炉規則86条)。 このうち,「大規模な自然災害」とは,設置許可基準規則で想定する自然現象を超える大規模な自然災害であり,「故意による大型航空機の衝突その他のテロリズ ム」は設置許可基準規則42条の「故意による大型航空機の衝突その他のテロリズム」と同義である。 大型航空機の衝突などによる大規模な損壊は,原子炉施設の一定の範囲が著しく損壊すると考えられ,特定の事故シーケンスを想定した対策を講じるのではなく,損壊を前提に,放射性物質の放出を低減することなどが全くできなくなることを避けることが重要である。大規模損壊という極限的な状態をあらかじめ想定し,施設や設備を柔軟に用いることができるよう手順等を準備するとともに,工場等外への放射性物質の放出を低減するために有効な設備が一切機能しないことにならないよう要求することが合理的である。 (4)対応方針に対する要求事項(乙273の1)技術的能力基準2.1において,大規模損壊時における炉心の著しい損傷を緩和するための対策や放射性物質の放出を低減するための対策などに関する手順書が適切に整備されていること,又は整備される方針が適切に示されていることに加えて,当該手順書に従って活動を行うための体制及び資機材が適切に整備されていること,又は整備される方針が適切に示されていることが要求される。すなわち,いわゆるソフト面において,大規模損壊に対応する手順,体制及び資機材等の整備が求められる。 (5)設備に対する要求事項(乙273の1)設置許可基準規則は,設計基準として,事 要求される。すなわち,いわゆるソフト面において,大規模損壊に対応する手順,体制及び資機材等の整備が求められる。 (5)設備に対する要求事項(乙273の1)設置許可基準規則は,設計基準として,事故の誘因を排除する目的で想定すべき自然現象を含む外部事象による損傷の防止を要求することに加え,事故防止対策を講じることを要求し,さらに深層防護の観点から,重大事故等対策を講じることを要求している。 そして,重大事故等対策においては,原子炉施設について,炉心の著しい損傷の防止や格納容器の破損の防止および工場等外への放射性物質の異常な水準の放出の防止を要求し,さらに講じた対策について有効性評価を実施させることとし ている。 これらの対策が講じられることによって,事故防止対策及び重大事故等対策に関する要求は十分高い水準になっているが,さらに,設置許可基準規則は,想定を大幅に上回る外部事象による大規模損壊への対策を求めることによって,放射線による影響緩和のための対処をすることを求めるものである。 大規模損壊への対処として,設備面においては対処に必要となる設備が共に機能しなくなることを避けることが合理的である。そこで,設置許可基準規則は,重大事故等対処設備として要求する設備のうち,可搬型重大事故等対処設備については,要求事項(同規則43条1項,3項)の一つとして,「地震,津波その他の自然現象又は故意による大型航空機の衝突その他のテロリズムによる影響,設計基準事故対処設備及び重大事故等対処設備の配置その他の条件を考慮した上で,常設重大事故等対処設備と異なる保管場所に保管すること。」を要求している(同規則43条3項5号)。これにより,可搬型重大事故等対処設備の保管場所は,故意による大型航空機の衝突も考慮することとされ,例えば,原子炉建屋から100㎞以 管場所に保管すること。」を要求している(同規則43条3項5号)。これにより,可搬型重大事故等対処設備の保管場所は,故意による大型航空機の衝突も考慮することとされ,例えば,原子炉建屋から100㎞以上離隔をとり,原子力建屋と同時に影響を受けないこと,又は故意による大型航空機の衝突に対して頑健性を有することを求めている(同規則43条の解釈7項)。 すなわち,可搬型重大事故等対処設備は,分散配置が求められるなどしており,大規模損壊を招く,想定を大幅に超える自然現象や故意による大型航空機の衝突があったとしても,同時に故障することがないような措置が求められている。 具体的には,炉心注水活動や航空機燃料火災の消火活動(設置許可基準規則55条の解釈の第1項b))といった対処のほか,想定を大幅に超える自然災害により,道路等のアクセスルートが損壊した場合には,分散配置されている重機でアクセスルートの復旧を行うこと(設置許可基準規則43条3項6号,技術的能力基準1.0),航空機の衝突により原子炉建屋の片側に大規模損壊が発生し,その 周辺にある設備や炉心注水のための接続口等が損壊した場合に備え,分散配置されている給水ポンプや電源車などの可搬型設備を,損壊している部分の反対側の,健全な接続口等から接続できるようにすること(設置許可基準規則43条3項3号)などが想定されている。 (6)以上の要求を踏まえ,大規模損壊時においては,残存した設備を用いて,大規模損壊が発生した場合への対応のための手順や体制等に基づき,炉心の著しい損傷や格納容器の破損などを緩和するための対策や放射性物質の放出を低減するための対策を講じることができることが求められる。 (7)抗告人は,従前から,本件各原子力発電所において防護区域,周辺防護区域,警備区域を設定し,各区域の境界で本人確 策や放射性物質の放出を低減するための対策を講じることができることが求められる。 (7)抗告人は,従前から,本件各原子力発電所において防護区域,周辺防護区域,警備区域を設定し,各区域の境界で本人確認や物品検査といった出入管理を行っていたところ,新規制基準の施行を受けて,防護区域では出入管理としてさらに爆発物検査を実施するとともに,警備区域を立入制限区域として,センサー・監視カメラ等の監視装置を充実させた。また,防護区域内外の枢要設備の防護を強化した。 抗告人は,新規制基準の施行を受けて,故意による大型航空機の衝突その他のテロリズムによって本件各原子力発電所の大規模な損壊が発生した場合に備えた体制の整備等を行った。具体的には,テロリズムによる大規模損壊によって本件各原子力発電所が受ける被害範囲は不確定性が大きく,予めシナリオを設定した対応操作は困難であると考えられることなどから,周辺環境への放射性物質の放出低減を最優先に考えた対応を行うこととし,可搬型設備による対応を中心とした対策手順を整備した。抗告人のこれらのテロリズム対策は,原子力規制委員会から新規制基準への適合性の確認を受けている(乙76,乙122)。 (8)以上によれば,「テロリズム対策」に関する新規制基準が不合理であるとはいえないし,抗告人の本件各原子力発電所におけるテロリズム対策の状況を考慮しても,本件各原子力発電所の安全性が欠如しているとはいえない。 (9)相手方らの主張に対する検討ア相手方らの主張新規制基準が策定し,抗告人が実施するテロリズム対策は,次のとおり不合理なものである。 (ア)新規制基準のテロリズム対策は,特定重大事故対処施設の設置であり,具体的には,緊急時制御室,フィルター付きベント,緊急時注水設備,緊急時減圧設備,電源設備等であり,テロ攻撃 なものである。 (ア)新規制基準のテロリズム対策は,特定重大事故対処施設の設置であり,具体的には,緊急時制御室,フィルター付きベント,緊急時注水設備,緊急時減圧設備,電源設備等であり,テロ攻撃を防止する対策ではなく,テロ攻撃を受けても過酷事故に発展させない対策にすぎない。しかし,今日の複雑な国際情勢の中では,上記のような対策でテロリズムによる過酷事故への進展を防止でできるというのは根拠のない楽観的見通しでしかない。 (イ)抗告人の主張する対策でテロ攻撃を防ぐことは不可能であるし,新規制基準及び抗告人の対応は,ミサイル攻撃を想定していない点で重大な欠陥がある。 イ検討(ア)前記のとおり,原子炉設置(変更)許可に係るテロリズム対策に関する基準については,原子炉等規制法43条の3の6の第1項3号及び4号並びに設置許可基準規則及び「実用発電用原子炉に係る発電用原子炉設置者の重大事故の発生及び拡大の防止に必要な措置を実施するために必要な技術的能力に係る審査基準」に定められ,テロリズム対策に関する保安,防護措置については,同法43条の3の22第1項及び第2項並びに実用炉規則に定められ,これらに基づいて実施されている。 これらのテロリズム対策により,本件各原子力発電所への不正アクセスや不審者の侵入等の防止対策を実施している上,テロによる本件各原子力発電所の大規模な損壊が生じた場合を想定して,そのような場合に放射線物質の放出を防ぐための対策や特定重大事故等対処施設の機能を維持するための体制が整備されている。さらに,ミサイル攻撃等の大規模テロ攻撃に対しては,国民保護法等に基づき,緊急対処事態として国が対策本部を設置し,原子力災害対策への対処,放射線物質による 汚染への対処等に当たり,原子力事業者は,国と連携して対処することとされている。 ては,国民保護法等に基づき,緊急対処事態として国が対策本部を設置し,原子力災害対策への対処,放射線物質による 汚染への対処等に当たり,原子力事業者は,国と連携して対処することとされている。抗告人は,国民保護業務計画を定め(乙123),これに基づいて国と連携して対処することとしている。 (イ)前記のとおり,抗告人は,テロによる原子力発電所の大規模な損壊が発生した場合における体制の整備等に関して,大規模損壊によって原子力発電所が受ける被害範囲は不確定性が大きく,予めシナリオを想定した対応操作は困難であると考えられることなどから,周辺環境への放射線物質の放出低減を最優先に考えた対応を行うこととし,可搬型設備による対応を中心とした対策手順を整備した上,大規模損壊発生時の体制について,要員への教育,体制の整備,大規模損壊発生時の対応に必要な設備及び資機材を整備しており(乙121,「高浜発電所原子炉施設保安規定」),原子力規制委員会は,抗告人の上記テロリズム対策について重大事故等防止技術的能力基準への適合性を確認している(乙14の2,乙122)。 (ウ)以上によれば,新規制基準が策定し,抗告人が実施するテロリズム対策が不合理なものであるとはいえない。 (エ)したがって,相手方らの主張を採用することができない。 原子力災害対策(1)深層防護とは(乙273の1)深層防護とは,一般に,安全に対する脅威から人を守ることを目的として,ある目標を持った幾つかの障壁(防護レベル)を用意して,各々の障壁が独立して有効に機能することを求めるものである。 原子力発電所は,炉心に大量の放射性物質を内蔵しており,人と環境に対して大きなリスク源が存在し,かつ,どのようなリスクが顕在化するかの不確かさも大きいという点で,不確実さに対処しつつリスクの顕在化を 原子力発電所は,炉心に大量の放射性物質を内蔵しており,人と環境に対して大きなリスク源が存在し,かつ,どのようなリスクが顕在化するかの不確かさも大きいという点で,不確実さに対処しつつリスクの顕在化を着実に防ぐため,従来から深層防護の考え方を適用することが有効とされており,国際原子力機関(IAEA)においても採用されてきた。 例えば,国際原子力機関(IAEA)の最上位の安全基準である「基本安全原則」(SF-1)においては,原子力発電所において事故を防止し,かつ,発生時の事故の影響を緩和する主要な手段は,深層防護の考え方を適用することであるとされている。この深層防護は,複数の連続かつ独立したレベルの防護の組合せによって主に実現されるとし,ひとつの防護レベル又は障壁が万一機能しなくても,次の防護レベル又は障壁が機能するとされている。そして,各防護レベルが独立して有効に機能することが,深層防護の不可欠な要素であるとされている(基本安全原則3.31.)。 (2)原子力発電所における5層の深層防護(乙273の1)国際原子力機関(IAEA)の安全基準の一つである「原子力発電所の安全:設計」(SafetyofNuclearPowerPlants:Design,SpecificSafetyRequirementsNo.SSR-2/1(Rev.1))では,深層防護の考え方を設計に適用し,5つの異なる防護レベルにより構築している。 具体的には,第1層の防護レベルは,通常運転状態からの逸脱と安全上重要な機器等の故障を防止することを目的として,品質管理及び適切で実証された工学的手法に従って,発電所が健全でかつ保守的に立地,設計,建設,保守及び運転されることを要求するものである。 第2層の防護レベルは,発電所で運転期間中に予期される事象(設計上考 及び適切で実証された工学的手法に従って,発電所が健全でかつ保守的に立地,設計,建設,保守及び運転されることを要求するものである。 第2層の防護レベルは,発電所で運転期間中に予期される事象(設計上考慮することが適切な,原子炉施設の運転寿命までの間に,少なくとも一度は発生することが予想される,通常の運転状態から逸脱した操作手順が発生する事象である。 この事象は,安全上重要な機器に重大な損傷を引き起こしたり,事故に至るおそれがないものをいう。設置許可基準規則では「運転時の異常な過渡変化」と定義している。)が事故状態に拡大することを防止するために,通常運転状態からの逸脱を検知し,管理することを目的として,設計で特定の系統と仕組みを備えること,それらの有効性を安全解析により確認すること,さらに運転期間中に予期さ れる事象を発生させる起因事象を防止するか,さもなければその影響を最小に留め,発電所を安全な状態に戻す運転手順の確立を要求するものである。 第3層の防護レベルは,運転期間中に予期される事象又は想定起因事象が拡大して前段のレベルで制御できず,また,設計基準事故に進展した場合において,固有の安全性及び工学的な安全の仕組み又はその一方並びに手順により,事故を超える状態に拡大することを防止するとともに原子力発電所を安全な状態に戻すことができることを要求するものである。 第4層の防護レベルは,第3層の防護レベルでの対策が失敗した場合を想定し,事故の拡大を防止し,重大事故等の影響を緩和することを要求するものである。 重大事故等に対する安全上の目的は,時間的にも適用範囲においても限られた防護措置のみで対処可能とするとともに,敷地外の汚染を回避又は最小化することである。また,早期の放射性物質の放出又は大量の放射性物質の放出を引き起こす事故シーケンスの発 も適用範囲においても限られた防護措置のみで対処可能とするとともに,敷地外の汚染を回避又は最小化することである。また,早期の放射性物質の放出又は大量の放射性物質の放出を引き起こす事故シーケンスの発生の可能性を十分に低くすることによって実質的に排除できることを要求するものである。 第5層の防護レベルは,重大事故に起因して発生しうる放射性物質の放出による影響を緩和することを目的として,十分な装備を備えた緊急時対応施設の整備と,所内と所外の緊急事態の対応に関する緊急時計画と緊急時手順の整備が必要であるというものである。 (3)設置許可基準規則は,深層防護の考え方を踏まえて策定されたものであること(乙273の1)設置許可基準規則は,深層防護の考え方を踏まえ,設計基準対象施設(同規則第2章)と重大事故等対処施設(同規則第3章)を明確に区別している。これを国際原子力機関(IAEA)の安全基準との関係で整理すれば,同規則第2章には「設計基準対象施設」として第1から第3層の防護レベルに相当する事項を,同規則第3章には「重大事故等対処施設」として主に第4層の防護レベルに相当 する事項をそれぞれ規定している。 (4)国際原子力機関(IAEA)の「原子力発電所の安全:設計」等における避難計画の位置づけ(乙273の1)国際原子力機関(IAEA)の安全基準「原子力発電所の安全:設計」(SSR-2/1(Rev.1))においては,避難計画に関する事項は,第5層の防護レベルにおける「所内と所外の緊急事態の対応に関する緊急時計画と緊急時手順の整備」に含まれるが,国際原子力機関(IAEA)の「原子力発電所の安全:設計」においては,深層防護の概念を原子力発電所の設計に適用すべきとされているにとどまり,必ずしもその第1層から第5層に係る全ての対応を設置許可基準規則 原子力機関(IAEA)の「原子力発電所の安全:設計」においては,深層防護の概念を原子力発電所の設計に適用すべきとされているにとどまり,必ずしもその第1層から第5層に係る全ての対応を設置許可基準規則等の原子力事業者に対する規制に規定することが求められているわけではない。 また,国際原子力機関(IAEA)の安全基準「原子力又は放射線の緊急事態に対する準備と対応」(GSRpart7)においても,政府は,規定を設け,原子力又は放射線源による緊急事態に対する準備と対応に関する役割と責任を明示し,割り当てることを確実なものとしなければならないとされており,避難計画に関する事項を含む緊急事態に対する準備と対応について原子力事業者に対する規制として規定することは求められていない。 (5)我が国の法体系における避難計画の位置づけ(乙273の1)ア原子炉等規制法について原子炉等規制法全体としては,国際原子力機関(IAEA)が示す深層防護のうち,第1層から第4層の防護レベルまでに関する事項については,核原料物質,核燃料物質及び原子炉の利用を行う者に対する事業の規制を通じて担保されており,設置許可基準規則においては,重大事故等対策を講じること(深層防護のうち第4層の防護レベル)を要求事項としている。一方,所内及び所外の緊急事態の対応に関する緊急時計画等の整備(深層防護のうち第5層の防護レベル)等は要求事項とされていない。 イ災害対策基本法及び原子力災害対策特別措置法について第5層の防護レベルに関する事項については,我が国の法制度上,「災害」の一形態としての「原子力災害」に対し,国,地方公共団体,原子力事業者等がそれぞれの責務を果たすこととされており,災害対策基本法及び原子力災害対策特別措置法によって措置されている。 (ア)災害対策基本法につい ての「原子力災害」に対し,国,地方公共団体,原子力事業者等がそれぞれの責務を果たすこととされており,災害対策基本法及び原子力災害対策特別措置法によって措置されている。 (ア)災害対策基本法について災害対策基本法は,国土並びに国民の生命,身体及び財産を災害から保護するため,防災に関し,基本理念を定め,国,地方公共団体及びその他の公共機関を通じて必要な体制を確立し,責任の所在を明確にするとともに,防災計画の作成,災害予防,災害応急対策,災害復旧及び防災に関する財政金融措置その他必要な災害対策の基本を定めることにより,総合的かつ計画的な防災行政の整備及び推進を図り,もって社会の秩序の維持と公共の福祉の確保に資することを目的とする法律である(災害対策基本法1条)。この場合の災害には,原子力災害を含んでいる(同法2条1号,同法施行令1条)。 そして,内閣府に設置される中央防災会議は,防災に関する総合的かつ長期的な計画や防災業務計画及び地域防災計画において重点をおくべき事項等を定める防災基本計画を作成することとされている(災害対策基本法11条,34条,35条)。 (イ)原子力災害対策特別措置法について原子力災害対策特別措置法は,原子力災害の特殊性に鑑み,原子力災害の予防に関する原子力事業者の義務等,原子力緊急事態宣言の発出及び原子力災害対策本部の設置等並びに緊急事態応急対策の実施その他原子力災害に関する事項について特別の措置を定めることにより,原子炉等規制法,災害対策基本法その他原子力災害の防止に関する法律と相まって,原子力災害に対する対策の強化を図り,もって原子力災害から国民の生命,身体及び財産を保護することを目的とする法 律である(原子力災害対策特別措置法1条)。 原子力災害対策特別措置法において,「原子力災害」とは,原子力緊急事態 り,もって原子力災害から国民の生命,身体及び財産を保護することを目的とする法 律である(原子力災害対策特別措置法1条)。 原子力災害対策特別措置法において,「原子力災害」とは,原子力緊急事態により国民の生命,身体又は財産に生ずる被害をいい(同法2条1号),「原子力緊急事態」とは,原子力事業者の原子炉の運転等により放射性物質又は放射線が異常な水準で当該原子力事業者の原子力事業所外へ放出された事態をいうものとされている(同条2号)。 (ウ)国及び地方公共団体の防災計画国は,原子力災害対策特別措置法又は関係法律の規定に基づき,原子力災害対策本部の設置,地方公共団体への必要な指示その他緊急事態応急対策の実施のために必要な措置並びに原子力災害予防対策及び原子力災害事後対策の実施のために必要な措置を講ずること等により,原子力災害についての災害対策基本法3条1項の責務を遂行しなければならないとされている(原子力災害対策特別措置法4条1項)。 そして,専門的・技術的事項については,原子力規制委員会が,原子力事業者,国の各機関,地方公共団体等による原子力災害対策の円滑な実施を確保するための指針(原子力災害対策指針)を定めることとされている(原子力災害対策特別措置法6条の2)。 地方公共団体は,原子力災害対策特別措置法又は関係法律の規定に基づき,緊急事態応急対策などの実施のために必要な措置を講ずること等により,原子力災害についての災害対策基本法4条1項及び5条1項の責務を遂行しなければならないとされている(原子力災害対策特別措置法5条)。そして,都道府県に設置される都道府県防災会議は,原子力災害についても,防災基本計画及び原子力災害対策指針に基づく都道府県地域防災計画を作成することとされており(原子力災害対策特別措置法28条,災害対策基本法14 に設置される都道府県防災会議は,原子力災害についても,防災基本計画及び原子力災害対策指針に基づく都道府県地域防災計画を作成することとされており(原子力災害対策特別措置法28条,災害対策基本法14条,40条),この地域防災計画として,PAZ(PrecautionaryActionZone〔予防的防護措置を準備する区域〕の 略。予防的防護措置を準備する区域とは,急速に進展する事故を考慮し,重篤な確定的影響〔一定の放射線量以上でなければ医学的に検知できないとされている影響〕等を回避するため,緊急事態区分に基づき,直ちに避難を実施するなど,放射性物質の環境への放出前の予防的防護措置〔避難等〕を準備する区域であり,発電用原子炉では,施設からおおむね半径5kmの区域をいう。)及びUPZ(UrgentProtectiveActionPlanningZone〔緊急時防護措置を準備する区域〕の略。 国際基準等に従って,確率的影響〔放射線の量に比例して発生する確率が高くなると考えられている影響〕のリスクを最小限に抑えるため,環境モニタリング等の結果を踏まえた運用上の介入レベル〔OIL:OperationalInterventionLevel〕,緊急時活動レベル〔EAL:EmergencyActionLevel〕に基づき,避難,屋内退避,安定ヨウ素剤の予防服用等を準備する区域であり,発電用原子炉施設では,施設からおおむね半径30kmの区域をいう。)圏内の住民の避難の基本フレームとなる広域避難計画の作成等を行っている。また,市町村に設置される市町村防災会議(市町村防災会議が設置されない場合は市町村長)は,原子力災害についても,防災基本計画及び原子力災害対策指針に基づく市町村地域防災計画を作成することとされており(原子力災害対策特別措置 町村防災会議(市町村防災会議が設置されない場合は市町村長)は,原子力災害についても,防災基本計画及び原子力災害対策指針に基づく市町村地域防災計画を作成することとされており(原子力災害対策特別措置法28条,災害対策基本法16条,42条),この地域防災計画として,広域避難計画にのっとったPAZ及びUPZの設定に基づく避難計画の作成等を行っている。 (エ)原子力事業者の防災計画原子力事業者は,その原子力事業所ごとに,当該原子力事業所における原子力災害予防対策,緊急事態応急対策及び原子力災害事後対策その他の原子力災害の発生及び拡大を防止し,並びに原子力災害の復旧を図るために必要な業務に関し,原子力事業者防災業務計画を作成等しなければならないとされている(原子力災害対策特別措置法7条1項)。 この原子力事業者に係る義務については,立法過程で原子炉等規制法の体系に 位置づけることも検討されたが,地方公共団体が防災に関して基本的な責務を有していることや緊急時における原子力事業者と地方公共団体との連携といった観点に鑑み,原子力災害対策特別措置法において,災害対策基本法に係る特別の措置と併せて規定されたものである。 そして,同条1項の義務を実効化するため,内閣総理大臣及び原子力規制委員会は,原子力事業者が同項の規定に違反していると認めるとき,又は,原子力事業者防災業務計画が当該原子力事業所に係る原子力災害の発生若しくは拡大を防止するために十分でないと認めるときは,原子力事業者に対し,同計画の作成又は修正を命ずることができ(同条4項),仮に,原子力事業者である発電用原子炉設置者がこれに違反した場合,原子力規制委員会は,設置許可の取消し又は1年以内の期間を定めて発電用原子炉の運転の停止を命ずることができるとされている(原子炉等規制法43条の3の2 である発電用原子炉設置者がこれに違反した場合,原子力規制委員会は,設置許可の取消し又は1年以内の期間を定めて発電用原子炉の運転の停止を命ずることができるとされている(原子炉等規制法43条の3の20第2項22号)。 (6)原子力災害対策についての各当事者の役割(乙273の1)避難計画を含む原子力災害対策は,原子力発電所における安全対策が講じられてもなお,放射性物質が周辺環境へ異常放出される事態が生じた場合に,国民の生命,身体,財産を保護するために講じられる対策であることから,原子力事業者だけではなく,国及び地方公共団体が主体となり,相互に連携・協力して実施される必要がある。 そのため,原子力災害対策については,原子炉設置変更許可手続等の原子炉等規制法に基づく原子力事業者に対する規制とは異なり,災害対策基本法に基づいて中央防災会議が策定する「防災基本計画(原子力災害対策編)」(災害対策基本法34条1項)と,災害対策基本法の特別法である原子力災害対策特別措置法に基づいて原子力規制委員会が策定する「原子力災害対策指針」(原子力災害対策等別措置法6条の2第1項)の両者により制度枠組みが設定されている。前者の防災基本計画(原子力災害対策編)には,国,地方公共団体及び原子力事業者の役 割分担,責任関係が規定され,後者の原子力災害対策指針には,原子力災害対策の実施に必要な専門的・技術的事項が規定されている(乙60)。 (7)原子力災害対策指針について(乙273の1)ア原子力災害対策指針は,原子力規制委員会が,福島第一原子力発電所事故の経験を踏まえ,緊急事態における原子力施設周辺の住民等に対する放射線の影響を最小限に抑える避難その他の防護措置を確実なものにすることを目的として,国際原子力機関(IAEA)の安全基準等を参考にして策定したもので ,緊急事態における原子力施設周辺の住民等に対する放射線の影響を最小限に抑える避難その他の防護措置を確実なものにすることを目的として,国際原子力機関(IAEA)の安全基準等を参考にして策定したもので,国,地方公共団体及び原子力事業者が原子力災害対策を立案,実施する際の科学的,客観的判断を支援するものである(乙61)。 原子力災害対策指針では,原子力災害における放射性物質の拡散態様,被ばくの経路等を考慮した防護措置や意思決定の枠組みが新たに設けられ,国,地方公共団体及び原子力事業者による迅速な意思決定に基づく,短期間で効率的な防護措置の実現が図られている(乙61,乙62)。 イ国,地方公共団体及び原子力事業者は,防災基本計画(原子力災害対策編)を受けて,専門的,技術的な事項については原子力災害対策指針によりつつ,原子力災害対策を実施している。 国は,国民の生命,身体及び財産を原子力災害から保護するため万全の措置を講じる責務を有し,原子力災害対策本部の設置,地方公共団体への指示等に必要な措置を実施している。 地方公共団体は,住民の生命,身体及び財産を原子力災害から保護するため,避難計画を含む地域防災計画(原子力災害対策編)を作成するなどの責務を有し,応急対策を実施するための体制構築,緊急時における情報連絡体制の整備等を行っている。 原子力事業者は,原子力災害の発生防止に万全の措置を講じるとともに,原子力災害の発生に備えて,本件各原子力発電所周辺の地方公共団体の地域防災計画 (原子力災害対策編)と整合する「原子力事業者防災業務計画」を作成し,原子力防災組織を整備し,原子力防災資機材を確保するなどしている。 (8)避難計画について(乙273の1)ア避難計画を含む地域防災計画(原子力災害対策編)については,避難計画の具体化,充実化を進め 力防災組織を整備し,原子力防災資機材を確保するなどしている。 (8)避難計画について(乙273の1)ア避難計画を含む地域防災計画(原子力災害対策編)については,避難計画の具体化,充実化を進めるに当たって,関係省庁,関係する地方公共団体等を構成員とする地域原子力防災協議会が設置された(乙205)。 地域原子力防災協議会は,国の主導の下,府県域を越えた住民避難等の緊急時対応に係る広域的な課題について検討し,また,その結果が原子力災害対策指針等に照らして具体的かつ合理的であることを確認する。そして,この確認結果については,内閣総理大臣を含む全閣僚及び原子力規制委員会委員長等で構成される原子力防災会議にて報告され,了承を得るものとされている(乙64の1,乙92)。 イ本件各原子力発電所を含む福井エリアの原子力災害対策は,福井エリア地域原子力防災協議会において広域的な課題に係る検討が行われている。本件各原子力発電所において原子力災害が発生した際の緊急時対応に係る課題と対応については,住民の避難等の防護措置の実施順序,避難先・避難経路・輸送手段の確保等に係る国,地方公共団体及び抗告人の対応,自衛隊,警察等の関係機関の役割等が,「高浜地域の緊急時対応」(乙207)として取りまとめられている。そして,「高浜地域の緊急時対応」は,福井エリア地域原子力防災協議会において,原子力災害対策指針等に照らして具体的かつ合理的であることが確認され,その確認結果について,原子力防災会議において,了承されている(乙208)。 ウ原子力事業者である抗告人は,高浜地域の原子力災害対策の実効性を高めるべく,平常時から,原子力防災体制の整備,国,地方公共団体等との連絡体制の整備等を行っているほか,「高浜地域の緊急時対応」に関しては,住民等の移動手段の確保,避難退域時検 力災害対策の実効性を高めるべく,平常時から,原子力防災体制の整備,国,地方公共団体等との連絡体制の整備等を行っているほか,「高浜地域の緊急時対応」に関しては,住民等の移動手段の確保,避難退域時検査や除染時の支援,放射線防護資機材の支援,緊急時モニタ リングの実施等の取組みを実施することとしている。 (9)高浜地域合同原子力防災訓練について(乙317,乙318の1,2)ア原子力災害対策は,策定された後も,防災訓練の実施による実効性の検証等を通じ,更なる改善・強化に継続的に取り組むことが重要である。このため,地方公共団体が実施する防災訓練についても,訓練の目的,実施項目,反省点の抽出方法等について地域原子力防災協議会において検討を行うほか,国が防災訓練に参加するなどの支援を行っている。そして,これらの訓練の実施結果,成果,抽出された反省点等については,地域原子力防災協議会において検討,共有がなされ,地域防災計画等の改善,強化につなげられている。 イ「高浜地域の緊急時対応」についても,平成28年8月27日,広域避難等を検証することを目的として,国,地方公共団体及び原子力事業者等が合同で実施する「高浜地域における3府県及び関西広域連合との合同原子力防災訓練」が行われた。 上記訓練では,福井県の住民が,県外の避難先である兵庫県(宝塚市,三田市等)まで,府県域を越えた広域避難を実施し,避難経路上における安定ヨウ素剤の配布,警察による主要交差点等での交通整理・避難誘導,避難先施設における受入訓練等も実施された。また,家屋倒壊により屋内退避できない住民による指定避難所への退避訓練や,道路の寸断等の複合災害を想定した実動組織のヘリコプター等による住民避難訓練等も実施された。 上記訓練結果については,教訓事項が抽出され,国,地方公共団体等の緊急 住民による指定避難所への退避訓練や,道路の寸断等の複合災害を想定した実動組織のヘリコプター等による住民避難訓練等も実施された。 上記訓練結果については,教訓事項が抽出され,国,地方公共団体等の緊急時対応等の改善が図られることとされており,福井エリア地域原子力防災協議会においても,訓練の実施結果,成果,抽出された反省点等が協議され,訓練に参加した国の関係省庁,地方公共団体等で共有し,関係省庁,地方公共団体等が行う計画やマニュアルの改善等について,フォローアップが行われ(乙205),「高浜地域の緊急時対応」は,より合理的,実効的なものに改善されていくものとされている。 (10)安定ヨウ素剤の服用について 安定ヨウ素剤の服用については,原則として,原子力規制委員会が服用の必要性を判断し,原子力災害対策本部又は地方公共団体が服用を指示することが,原子力災害対策指針において規定されており,PAZ内においては,放射性物質が放出される前の全面緊急事態に至った時点で,直ちに原子力災害対策本部又は地方公共団体が服用を指示し,PAZ外においては,全面緊急事態に至った時点で予防的に屋内退避(建物に退避して放射性物質の吸入抑制やガンマ線を遮へいすることにより,被ばくの低減を図る防禦措置のことをいう。)を実施して被ばくを低減した上で(なお,UPZ外においては,事態の進展等に応じて屋内退避を行う。),原子力施設の状況や緊急時モニタリングにより計測される空間放射線量率(ある空間における単位時間当たりの放射線の量のことをいう。)等に応じて,避難や一時移転等と併せて原子力規制委員会が必要性を判断し,原子力災害対策本部又は地方公共団体が服用を指示すると規定されている。 PAZ外において服用時期が規定されていないのは,安定ヨウ素剤の効果は放射性ヨウ素による内部被ば 子力規制委員会が必要性を判断し,原子力災害対策本部又は地方公共団体が服用を指示すると規定されている。 PAZ外において服用時期が規定されていないのは,安定ヨウ素剤の効果は放射性ヨウ素による内部被ばくに限定されるため,被ばくを低減するには避難や一時移転等による外部被ばくに対する防護措置の実施と併せて服用する必要があることや(乙212),効果が時間の経過とともに低下するため,適切な時期に服用することで被ばくを低減する必要があること等によるものである。 以上のとおり,原子力災害対策指針では,専門的知見を有する原子力規制委員会が安定ヨウ素剤の服用の必要性を判断することや,服用の考え方について明確に規定されている。 (11)相手方らの主張に対する検討ア相手方らの主張(ア)新規制基準は,最終的に住民の生命,身体及び健康を守るために必要不可欠な,深層防護における第5層(住民防護・避難計画)を規制対象としていないが,これは確立された国際的基準に反するのみならず,原子炉等規制法の要求を満足させていない違法な基準といえる。 (イ)仮に,避難計画を規制対象に取り込んでいない新規制基準が違法とまではいえないとしても,合理性・実効性のある避難計画が策定されていることが原子力発電所の運転を許容できる条件であるから,司法審査においても,合理性・実効性のある避難計画策定の事実が認定できない限り,運転差止め請求が認容されるべきである。しかし,現行の国,地方公共団体及び原子力事業者の策定する避難計画は,前提としての事故想定が極めて甘く,前段の防護(第4層・重大事故対策)を否定するという深層防護の考え方に根本的に違反している。また,原子力災害対策指針の示す屋内退避や段階的避難では合理的でなく,地域防災計画も不十分であるし,本件各原子力発電所周辺で策定されて 故対策)を否定するという深層防護の考え方に根本的に違反している。また,原子力災害対策指針の示す屋内退避や段階的避難では合理的でなく,地域防災計画も不十分であるし,本件各原子力発電所周辺で策定されている避難計画にも合理性・実効性がない。 イ検討(ア)深層防護における第5層(住民防護・避難計画)の規制a前記のとおり,新規制基準は,設置許可基準規則第2章の「設計基準対象施設」として第1から第3層までの防護レベルに相当する事項を,同規則第3章の「重大事故等対処施設」として,主に第4層の防護レベルに相当する事項をそれぞれ規定している。 新規制基準は,第1から第4層の防護レベルを規制対象とすることにより,原子力発電所について,自然立地条件に係る安全確保対策及び事故防止に係る安全確保対策(多重防護の考え方に基づく設計等,第1から第3層の防護レベル)といった万全の安全確保対策を講じること,さらに,これらの信頼性の高い安全確保対策が奏功しない場合をもあえて想定した,より一層の安全確保対策(重大事故等対策,第4層の防護レベル)を講じることを,それぞれ求めており,これらの規制により,炉心の著しい損傷等が防止される確実性は高度なものとなっている。 b深層防護の考え方の基礎である「前段否定」,「後段否定」という概念は,異 常や事故の発生・拡大を防止し,その影響を低減するために多段的な対策を立案するにあたって,あえて,各々を独立した対策として捉え,前段階の対策は奏功せず,後続の対策には期待できないとの前提を無条件に置くものであり,このような無条件の前提をあえて置くことにより,各段階における対策がそれぞれ充実した十分な内容となるようことを意図したものといえる。 原子力災害対策は,このような深層防護の考え方に基づいて,その第5層のレベルとして定められ あえて置くことにより,各段階における対策がそれぞれ充実した十分な内容となるようことを意図したものといえる。 原子力災害対策は,このような深層防護の考え方に基づいて,その第5層のレベルとして定められるべきものであり,前記のとおりの様々な安全確保対策及び重大事故等対策が十分に講じられた原子力発電所において,炉心の著しい損傷が生じ,原子炉格納容器が大規模破損するなどして放射性物質が周辺環境へ異常放出される事態が生じた場合をあえて想定し,このような場合に,周辺環境へ異常放出される放射性物質からの防護を目的として講じられる対策であるといえる。 また,前記のとおり,避難計画を含む原子炉災害対策は,原子力発電所における安全確保対策が講じられてもなお,放射線物質が周辺環境へ異常放出される事態が生じた場合に,国民の生命,身体,財産を保護するために講じられる対策であることから,原子力事業者だけではなく,国及び地方公共団体が主体となり,相互に連携・協力して,それぞれの立場からの責務を果たすことにより適切に実施されるべきものといえる。 そうすると,新規制基準が,深層防護の第1から第4層のレベルまでを規制の対象とし,第5層のレベルでに当たる原子力災害対策を規制の対象としなかったことが不合理であるとはいえない。また,このような新規制基準の内容が,確立された国際的基準や原子炉等規制法の要求を満足させていない違法な基準であるとはいえない。 cしたがって,相手方らの前記(ア)の主張を採用することができない。 (イ)本件各原子力発電所の安全性a前記のとおり,本件各原子力発電所においては,自然的立地条件に係る安全確保対策及び事故防止に係る安全確保対策(多重防護の考え方に基づく設計等)と いった安全確保対策が講じられており,これらの対策により,炉心の著しい損傷や周 においては,自然的立地条件に係る安全確保対策及び事故防止に係る安全確保対策(多重防護の考え方に基づく設計等)と いった安全確保対策が講じられており,これらの対策により,炉心の著しい損傷や周辺環境への放射性物質の異常な放出に至ることは,まず想定しがたいといえる。 さらに,前記のとおり,本件各原子力発電所では,新規制基準を踏まえ,信頼性の高い上記の安全確保対策が奏功しない事態をもあえて想定した,より一層の安全確保対策(重大事故等対策)を充実させている。すなわち,事故防止に係る安全確保対策が奏功しない事態に至った場合であっても,事象の進展,拡大を防ぎ,かかる状況においてもなお炉心の著しい損傷を防止する対策が講じられ,また,炉心の著しい損傷に至っても,原子炉格納容器の破損を防止するための対策が講じられている。 これらの対策が適切に講じられることにより,炉心の著しい損傷等を防止する確実性はさらに高まっており,本件各原子力発電所の安全性は疎明されているといえる。 b前記のとおり,原子力災害対策は,原子力事業者だけでなく,国及び地方公共団体が主体となり,他の関係機関等を含めて相互に連携・協力して,それぞれの立場からの責務を果たすことにより適切に実施されるべきものであるところ,本件各原子力発電所についても,福井エリア地域原子力防災協議会において,国,地方公共団体及び抗告人の各対応,自衛隊,警察等の関係機関の各役割等が,「高浜地域の緊急時対応」として取りまとめられ,抗告人は,高浜地域の原子力災害対策の実効性を高めるべく,平常時から,原子力防災体制の整備,国,地方公共団体等との連絡体制の整備等を行っているほか,「高浜地域の緊急時対応」に関しては,住民等の移動手段の確保,避難退域時検査や除染時の支援,放射線防護資機材の支援,緊急時モニタリングの実施 国,地方公共団体等との連絡体制の整備等を行っているほか,「高浜地域の緊急時対応」に関しては,住民等の移動手段の確保,避難退域時検査や除染時の支援,放射線防護資機材の支援,緊急時モニタリングの実施等の取組みを実施している。 また,「高浜地域の緊急時対応」を検証することを目的とする避難訓練が行われるとともに,その訓練結果に基づき「高浜地域の緊急時対応」をより合理性・実効性のあるものに改善するための取り組みも行われている。 これらの避難計画等の原子力災害対策については,様々な点において未だ改善 の余地があり,現に避難訓練を踏まえた改善策等が検討されているものの,その取組み姿勢や避難計画等の具体的内容は適切なものであり,不合理な点があるとは認められない。 cしたがって,相手方らの前記(イ)の主張を採用することができない。 相手方らのその他の主張(1)福島第一原子力発電所事故についてア相手方らの主張福島第一原子力発電所事故の原因は未だに解明されておらず,このような状況の下で合理的な内容の新規制基準を策定することは不可能である。 また,新規制基準では,福島第一原子力発電所事故で明らかとなった旧安全審査指針類の重大な不備や欠陥が放置されたままであり,その内容は著しく不合理である。 イ検討(ア)福島第一原子力発電所事故の原因解明について(乙10~12,乙38,乙226,乙273の1)a平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により,当時原子炉が運転中であった福島第一原子力発電所1~3号機は,地震動を検知して直ちに全ての制御棒が挿入され,原子炉は正常に自動停止した。 地震による送電鉄塔の倒壊等にり同発電所の外部電源喪失状態となったものの,直ちに,非常用ディーゼル発電機が起動し所内電源を確保するとともに,炉心冷却系が起 棒が挿入され,原子炉は正常に自動停止した。 地震による送電鉄塔の倒壊等にり同発電所の外部電源喪失状態となったものの,直ちに,非常用ディーゼル発電機が起動し所内電源を確保するとともに,炉心冷却系が起動したことにより,原子炉は正常に冷却された。 後の調査により,福島第一原子力発電所2,3,5号機において観測された地震動は,基準地震動Ssを一部の周期帯において上回ったものの,概ね同程度のレベルであったと評価されている。 bところが,福島第一原子力発電所1~5号機においては,非常用ディーゼル発電機,配電盤,蓄電池等の電気設備の多くが,海に近いタービン建屋等の1階及 び地下階に設置されていたため,地震随伴現象として地震発生から約50分後に襲来した津波という共通要因により,建屋の浸水とほとんど同時に水没又は被水して機能を停止した。このように外部電源喪失後に作動していた非常用ディーゼル発電機が停止したため,交流電源を供給する全ての設備の機能を喪失(全交流動力電源喪失)した。これにより,交流電源を駆動電源として作動するポンプ等の注水・冷却設備が使用できない状態となった。加えて,監視,制御等に用いられる直流電源も津波によりそのほとんどを喪失し,津波襲来後も機能を維持していた同発電所3号機の直流電源も,全交流動力電源喪失により最終的にはバッテリーが枯渇したため,非常用ディーゼル発電機が水没を免れ,かつ,接続先の非常用電源盤も健全であった6号機から電力の融通ができた5号機を除く,1~4号機において完全電源喪失の状態となった。また,海側に設置されていた冷却用のポンプ類も津波により全て機能喪失したために,原子炉内の残留熱や機器の使用により発生する熱を海水へ逃がす,最終ヒートシンクへの熱の移送手段が喪失した。その結果,運転中であった1~3号機においては,冷 ンプ類も津波により全て機能喪失したために,原子炉内の残留熱や機器の使用により発生する熱を海水へ逃がす,最終ヒートシンクへの熱の移送手段が喪失した。その結果,運転中であった1~3号機においては,冷却機能を失った原子炉の水位が低下し,炉心の露出から最終的には炉心溶融に至った。その過程で,燃料被覆管のジルコニウムと水が反応することなどにより大量の水素が発生し,格納容器を経て原子炉建屋に漏えいし,1・3号機の原子炉建屋で水素爆発が発生した。3号機で発生した水素が4号機の原子炉建屋に流入し,4号機の原子炉建屋においても水素爆発が発生した。2号機では,ブローアウトパネルが偶然開いたことから水素爆発には至らなかったものの,放射性物質が放出され,周辺の汚染を引き起こした。 また,全交流動力電源の喪失及び海水冷却機能の喪失によって,1~3号機の使用済燃料プール(本件各原子力発電所における「使用済燃料ピット」に相当する。)に加え,定期検査中であった4号機の使用済燃料プールを冷却する全ての設備の機能を喪失した。なお,使用済燃料プールが冷却機能を喪失したものの,同プール内の燃料については冠水状態が維持された。 c前記のとおり,福島第一原子力発電所事故の原因については,様々な機関に より調査・検討が行われ,平成23年6月,原子力安全に関する国際原子力機関(IAEA)閣僚会議に対する日本国政府の報告書,平成24年7月,東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)による調査報告書,平成24年7月,東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会(政府事故調)による調査報告書がまとめられ,原子力安全・保安院においても,平成24年3月,福島第一原子力発電所事故の技術的知見について検討結果が取りまとめられ,これらの調査・検討結果により,当該事故の発生 調)による調査報告書がまとめられ,原子力安全・保安院においても,平成24年3月,福島第一原子力発電所事故の技術的知見について検討結果が取りまとめられ,これらの調査・検討結果により,当該事故の発生及び進展に関する基本的な事象は解明されている。 もっとも,事故が発生した原子炉施設の内部の線量が高いため,内部の状況に関する調査は限られた部分で行われているにすぎず,そのため,具体的な設備の損傷状態や詳細な原因等については未解明な部分が残されていると認められる。 (イ)新規制基準策定の経緯前記のとおり,福島第一原子力発電所事故の調査・検討を踏まえ,我が国は,原子力安全委員会及び原子力安全・保安院において,基準地震動及び基準津波の評価等の地震及び津波に係る検討,原子力発電所の建築物・構築物及び機器・配管系についての耐震安全性や津波に対する安全性の評価等の検討をそれぞれ行うとともに,事故防止対策や重大事故等対策に係る検討を行った。 そして,原子力規制委員会発足後は,原子炉施設等基準検討チームや地震等検討チームを構成して,福島第一原子力発電所事故の調査・検討を踏まえ,原子力安全委員会及び原子力安全・保安院における検討を踏まえた検討を継続した。 原子炉施設等基準検討チームや地震等検討チームは,以上の検討結果を踏まえ,新規制基準の骨子案を作成し,これらについて,原子力規制委員会が行った意見公募手続の結果も踏まえて基準案を取りまとめた。さらに,原子力規制委員会は,基準案に対し,行政手続法に基づいて意見公募手続を行い,その上で,設置許可基準規則等の規則及び設置許可基準規則解釈等の解釈を策定するとともに,発電用原子炉の設置許可に係る基準適合性審査で用いる地震ガイド,津波ガイド等の各種審査 ガイドを策定した。 (ウ)新規制基準の合理性a前記のとおり, 準規則解釈等の解釈を策定するとともに,発電用原子炉の設置許可に係る基準適合性審査で用いる地震ガイド,津波ガイド等の各種審査 ガイドを策定した。 (ウ)新規制基準の合理性a前記のとおり,福島第一原子力発電所事故で発生した全ての設備の故障,破損が具体的な位置や状態までは調査できない状況であるため,原子力発電所設備の具体的な損傷状態や,その損傷の具体的な原因等については,未解明な部分が残されている。 しかし,各種の調査・検討の結果により,福島第一原子力発電所事故の発生及び進展に関する基本的な事象は明らかにされているところ,当該事故の発生及び進展は,最新の科学的・技術的知見に基づく重大事故等に関する研究結果と大きく異なるところはなかったと認められる上,これらの調査・検討の結果について,原子力安全委員会及び原子力安全・保安院や原子力規制委員会(検討チーム)が綿密に検討を行い,福島第一原子力発電所事故で起きたような事故を再度起こさないためには何が必要であるかを十分に検討することにより,地震,津波等の外部事象の的確な評価手法等を含めた,共通要因に起因する設備の故障等の事故防止対策の強化や,万全な重大事故等対策を行うために不可欠な教訓は十分に得られたものと認めることができる。 bすなわち,共通要因に起因する設備の故障等の事故防止対策のうちの,地震,津波等の外部事象の的確な評価手法については,福島第一原子力発電所事故における具体的な損傷設備や損傷箇所の完全な解明がなされなくても,地震学,地震工学,地質学等の科学的・技術的知見に基づいて検討をすることが可能であるし,施設,設備等の耐震安全性や津波に対する安全性等についても,福島第一原子力発電所事故における調査・検討の結果を踏まえた基準地震動や基準津波等の想定をして,事故防止の観点から綿密な分 が可能であるし,施設,設備等の耐震安全性や津波に対する安全性等についても,福島第一原子力発電所事故における調査・検討の結果を踏まえた基準地震動や基準津波等の想定をして,事故防止の観点から綿密な分析を行うことにより,検討をすることが可能であり,前記(イ)のとおり,新規制基準の策定に当たり,十分な検討が行われている。 cまた,重大事故等対策は,設計基準対象施設を設計する際に想定する状況を超える事態を想定し,対策するものであるから,その原因となる施設・設備がどの ように故障・損傷するかを具体的に想定できない状態でも,炉心の著しい損傷や格納容器の破損に至り得るような様々な事態をあえて想定し,それらを防止するための対策をとることが要求されるべきであるところ,このような対策を策定するに当たり,機能喪失のあらゆる具体的な原因を全て特定することや,その原因を完全に排除することは,現実的に著しく困難である上,どのように調査を尽くしたとしても,機能喪失の具体的な原因は無数に考えられるため,想定外の事象により機能喪失することを完全に否定することはできない。そうであるから,新規制基準を策定するに際し,機能喪失の原因を全て特定し,機能喪失の可能性を完全に排除し得ると考えることは不適当であり,むしろ,重大事故等対策では,原因を問わず,設計基準対象施設の持つ安全機能が喪失することをあえて仮定し,その場合でも,重大事故等対処施設等により,炉心の著しい損傷や格納容器の破損を防止すること等を要求するのが合理的であるといえる。 前記(イ)のとおり,新規制基準の策定に当たっても,このような見地に立った上,さらに福島第一原子力発電所事故における調査・検討の結果を踏まえて,十分な検討が行われている。 d以上によれば,福島第一原子力発電所事故における具体的な損傷設備や損傷 も,このような見地に立った上,さらに福島第一原子力発電所事故における調査・検討の結果を踏まえて,十分な検討が行われている。 d以上によれば,福島第一原子力発電所事故における具体的な損傷設備や損傷箇所の解明自体は,新規制基準を策定する上で必ずしも必要ではないといえるし,また,解明された事故の発生・進展状況から得られる教訓に加え,最新の科学的・技術的知見,海外の規制に関する最新知見等を十分に検討することにより,新規制基準を策定することは可能であるというべきであるところ,上記のとおり十分な検討が行われた結果,新規制基準が策定されているものと認められる。そうであるから,新規制基準が福島第一原子力発電所事故の教訓等や原因究明を踏まえていない不合理なものとはいえない。 (エ)したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (2)立地審査指針についてア相手方らの主張 新規制基準では,重大事故における敷地境界被曝線量に基づく立地条件の適否の評価が必要不可欠であり,立地審査指針の組入れが必要であるのに,組入れがなされていない。 イ検討立地審査基準と新規制基準との関係については,以下のとおりと認められる。 (ア)立地審査指針(甲102,乙273の1)a立地審査指針の概要原子炉立地審査指針及びその適用に関する判断のめやすについて(以下「立地審査指針」という。)は,原子力委員会が昭和39年5月27日に決定し,原子力安全委員会が平成元年に一部改訂した。 これは,平成24年に改正する前の原子炉等規制法24条1項4号(現「43条の3の6第1項4号」に相当)における「災害の防止上支障がないものであること」の基準を具体的に記載した指針の一つで,「陸上に定置する原子炉の設置に先立って行う安全審査の際,万一の事故に関連して,その立地条件の適否を 号」に相当)における「災害の防止上支障がないものであること」の基準を具体的に記載した指針の一つで,「陸上に定置する原子炉の設置に先立って行う安全審査の際,万一の事故に関連して,その立地条件の適否を判断するためのもの」であった。 立地審査指針は,「原則的立地条件」として,次のとおり規定した。 ①大きな事故の誘因となるような事象が過去においてなかったことはもちろんであるが,将来においても考えられないこと。また,災害を拡大するような事象も少ないこと(立地審査指針1.1(1))②原子炉は,その安全防護施設との関連において十分に公衆から離れていること(立地審査指針1.1(2))③原子炉の敷地は,その周辺も含めて,必要に応じ公衆に対して適切な措置を講じうる環境にあること(立地審査指針1.1(3))立地審査指針は,事故時に公衆の安全を確保するために必要な「原則的立地条件」を踏まえて達成すべき「基本的目標」を設定し, (a)敷地周辺の公衆に放射線による確定的影響を与えないため,(旧)重大事故を仮定したうえで,めやすとして,甲状腺(小児)に対し1.5Sv,全身に対して0.25Svを超える範囲は非居住区域であること(立地審査指針別紙2の1)(b)防災活動を講じうる環境にある地帯とするため,(旧)仮想事故を仮想したうえで,めやすとして,甲状腺(成人)に対し3Sv,全身に対して0.25Svを超える範囲は低人口地帯であること(立地審査指針別紙2の2)(c)社会的影響を低減するため,(旧)仮想事故を仮想したうえで,めやすとして,全身線量の人口積算値が例えば2万人Svを下回るように,原子炉敷地が人口密集地帯から離れていることを要求していた。 b深層防護との関係改正前原子炉等規制法においては,深層防護の第4の防護レベルである重大事故等対策 が例えば2万人Svを下回るように,原子炉敷地が人口密集地帯から離れていることを要求していた。 b深層防護との関係改正前原子炉等規制法においては,深層防護の第4の防護レベルである重大事故等対策については,法的要求事項とされておらず,事業者の自主的な対応という位置付けに留まっていた。 これについて,立地審査指針は,(旧)重大事故を想定した上で,人に対するめやす線量を設定し,その条件を満たす離隔距離を確保することで,放射線リスクの抑制という目標を達成することにより,深層防護の第4の防護レベルの重大事故等対策が法的要求事項とされていないなかで,一定の役割を担ってきた。 また,立地審査指針において要求している低人口地帯は,急性障害を避けるための非居住区域と異なり,避難など適切な措置を講じることにより放射線による影響を低減することが想定されている地域であり,そのような地域において防災を考える際の,避難のしやすさを考慮したものである。これは,深層防護の第5層の防護レベルそのものではないものの,深層防護の第5層の防護レベルの領域である防災活動を容易にする効果を意図するものであった。 c既許可の原子炉施設に対する立地審査指針の適用結果本件各原子力発電所を含む既許可の原子炉施設に立地審査指針の基本的目標を適用した結果は,以下のとおりであった。 (a)(旧)重大事故の発生を仮定した上で,めやす線量(甲状腺〔小人〕に対して1.5Sv,全身に対して0.25Sv)を超える区域,すなわち敷地周辺の公衆に放射線による確定的影響を与えないための区域である「非居住区域」は,原子力発電所敷地内におさまっていたため,敷地外において「非居住区域」の設定はされず,敷地境界ではめやす線量未満となっていた。 (b)(旧)仮想事故の発生を仮想した上で,めやす線量(甲状腺 域」は,原子力発電所敷地内におさまっていたため,敷地外において「非居住区域」の設定はされず,敷地境界ではめやす線量未満となっていた。 (b)(旧)仮想事故の発生を仮想した上で,めやす線量(甲状腺〔成人〕に対して3Sv,全身に対して0.25Sv)を超える地帯,すなわち適切な措置を講じうる環境にある地帯である「低人口地帯」は,原子力発電所敷地内におさまっていたため,敷地外は「低人口地帯」である必要はなく,敷地境界ではめやす線量未満となっていた。 (c)(旧)仮想事故の発生を仮想した上で,めやす線量(全身線量の人口積算値は2万人Sv)を超える人口密集地帯は,日本国内に存在しなかった。なお,大都市である東京や大阪が含まれる方位に放射性物質が流れるという想定をする場合が,全身線量の人口積算値が最大となることが多いが,その場合においてもめやす線量未満となっていた。 (イ)新規制基準(乙273の1)a新規制基準策定後の立地審査指針の位置付け福島第一原子力発電所事故の教訓により,原子炉等規制法の改正,新規制基準の策定が行われ,深層防護の考え方をより厳格に適用し,重大事故等対策が法的要求事項となり,新規制基準である設置許可基準規則等では,重大事故等対策を具体的に要求することとなった。 原子炉等規制法43条の3の6第1項4号は,「発電用原子炉施設の位置,構造 及び設備が核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物又は発電用原子炉による災害の防止上支障がないものとして原子力規制委員会規則で定める基準に適合するものであること」と規定され,同号の要件の審査基準は,原子力規制委員会が定める規則に委任された。この同号の委任を受けて原子力規制委員会が策定した設置許可基準規則においては,立地審査指針は採用されず,また,同規則の解釈においても立地審査 の審査基準は,原子力規制委員会が定める規則に委任された。この同号の委任を受けて原子力規制委員会が策定した設置許可基準規則においては,立地審査指針は採用されず,また,同規則の解釈においても立地審査指針は引用されていない。 すなわち,立地審査指針自体は,福島第一原子力発電所事故後においても,規制機関によって改廃されていないが,規則ではないため,平成24年改正原子炉等規制法の施行後においては,同法43条の3の6第1項4号の審査基準ではなく,また,設置許可基準規則の解釈においても引用されていない。 b立地審査指針の内容と設置許可基準規則等の関係現在,立地審査指針は,審査基準として使用されていないが,立地審査指針における原則的立地条件は設置許可基準規則等の現在の法体系において,以下のように考慮・判断された。 (a)原則的立地条件①について立地審査指針の原則的立地条件のうち,上記原則的立地条件①「大きな事故の誘因となるような事象が過去においてなかったことはもちろんであるが,将来においても考えられないこと。また,災害を拡大するような事象も少ないこと」については,設置許可基準規則においては,原子炉施設の敷地及び周辺の外部事象に関する審査事項として,地盤(設置許可基準規則3条),地震(設置許可基準規則4条),津波(設置許可基準規則5条)及びその他火山,洪水,台風,竜巻などの外部事象(設置許可基準規則6条)などによる損傷防止の観点で,個別具体的に要求されている。例えば,耐震重要施設を断層の露頭の存する地盤に設置しようとする場合や火砕物密度流が到達する恐れがある場所等は,立地不適と評価する(設置許可基準規則3条3項,同規則の解釈別記1第3条3項,原子力発電所 の火山影響評価ガイド6.2)。 また,これらの外部事象により安全機能が損なわれると評価さ る場所等は,立地不適と評価する(設置許可基準規則3条3項,同規則の解釈別記1第3条3項,原子力発電所 の火山影響評価ガイド6.2)。 また,これらの外部事象により安全機能が損なわれると評価される場合には,許可されないことにより,立地が制限される。 したがって,上記原則的立地条件①の事項は,設置許可基準規則においては,地盤の安定性や地震等による損傷防止など,自然的条件ないし社会的条件に係る個別的な規定との関係で考慮されているといえる。 (b)原則的立地条件②について立地審査指針の原則的立地条件②「原子炉は,その安全防護施設との関連において十分に公衆から離れていること」は,立地評価に係る事項であるが,設置許可基準規則においては採用されていない(設置許可基準規則第1章・第2章)。 新規制基準策定以前については,原子炉施設を構成する安全上重要な構築物・系統・機器は,安全設計審査指針によりその信頼性が担保されており,かつ,原子炉施設全体としての安全設計は発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査指針(安全評価審査指針)により安全評価を行うことで,その適切性が担保されていた。さらにその上で,設計基準事故より厳しい解析条件を(旧)重大事故の想定において設定して立地評価を実施していた。 しかし,福島第一原子力発電所事故の発生を契機に,深層防護の考え方をより厳格に適用することとされ,原子炉等規制法43条の3の6第1項によって,従前,自主的対策として強く推奨されていた原子炉施設の重大事故等対策が,新たに設置(変更)許可にかかる規制要求事項として追加された。そして,同項4号の委任を受けた設置許可基準規則は,設計基準対象施設(同規則第2章)と重大事故等対処施設(同規則第3章)についての要求事項を定めた。 このように,改正原子炉等規制法により重大事故等対 そして,同項4号の委任を受けた設置許可基準規則は,設計基準対象施設(同規則第2章)と重大事故等対処施設(同規則第3章)についての要求事項を定めた。 このように,改正原子炉等規制法により重大事故等対策が法的な要求事項として追加されたことから,従前,立地審査指針及び安全評価審査指針を用いて設計基準事故を超える事象の想定をしていた内容が再検討された。立地審査指針に基 づく上記原則的立地条件②については,無条件に原子炉格納容器が健全であることを前提に評価しているとの批判もあり,他方,福島第一原子力発電所事故を踏まえて重大事故等対策を法的要求事項としたことから,そのような前提による評価よりも,炉心の著しい損傷や原子炉格納容器破損に至りかねない事象を具体的に想定した上で重大事故等対策自体の有効性を評価することが,より適切に,「災害の防止上支障がないこと」について判断できると評価した。 このような経緯により,設置許可基準規則においては,上記原則的立地条件②の事項は,基準として採用されなかった。 (c)原則的立地条件③について改正原子炉等規制法は,深層防護の第4層の防護レベルに相当する重大事故等対策を法的要求事項とし,設置許可基準規則は,重大事故等対策について規定した。 また,原子力災害対策特別措置法等により,我が国の法体系は,深層防護の考え方の第5層の防護レベルにも対応しており,国際原子力機関(IAEA)作成の安全基準である「原子力発電所の安全:設計」における深層防護の考え方に整合している。 立地審査指針により要求していた(旧)仮想事故の発生を仮想した上で,めやす線量(甲状腺(成人)に対して3Sv,全身に対して0.25Sv)を超える地帯,すなわち適切な措置を講じうる環境にある地帯である「低人口地帯」は,前記のとおり,既許可の原子炉施設では原 た上で,めやす線量(甲状腺(成人)に対して3Sv,全身に対して0.25Sv)を超える地帯,すなわち適切な措置を講じうる環境にある地帯である「低人口地帯」は,前記のとおり,既許可の原子炉施設では原子力発電所敷地内におさまっていた。また,立地審査指針策定時には制定されていなかった原子力災害対策特別措置法等により原子力災害防止対策の強化がなされていることなどから,原則的立地条件③はその役割を終えたものと判断された。 また,立地審査指針が,社会的影響の観点から,集団線量を考慮して「原子炉敷地は,人口密集地帯からある距離だけ離れていること」を要求することについ ては,合理的ではないものと判断された。 したがって,現在の原子炉等規制法において,原則的立地条件③の事項は,基準として採用されなかった。 (ウ)以上によると,新規制基準では,立地審査指針の趣旨を改めて検討した上,合理的なものについては新規制基準に反映させ,不合理なものについてはその内容を変更したものといえるから,新規制基準が不合理であるとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (3)共通要因故障についてア新規制基準(乙76,乙87の2,乙273の1)(ア)共通要因・安全施設の概念共通要因とは,2つ以上の系統又は機器に同時に影響を及ぼすことによりその機能を失わせる要因であって,例えば環境の温度,湿度,圧力又は放射線等による影響因子,系統若しくは機器に供給される電力,空気,油,冷却水等による影響因子及び地震,溢水又は火災等の影響をいう(設置許可基準規則解釈2条3項)。 安全施設とは,設計基準対象施設のうち,安全機能を有するものをいう(設置許可基準規則2条2項8号)。 同規則12条1項は,安全施設について,その安全機能の重要度に応じて,安全機能が確保さ 項)。 安全施設とは,設計基準対象施設のうち,安全機能を有するものをいう(設置許可基準規則2条2項8号)。 同規則12条1項は,安全施設について,その安全機能の重要度に応じて,安全機能が確保されるものであることを要求しているが,その具体的内容については,発電用軽水型原子炉施設の安全機能の重要度分類指針のとおりである。 (イ)共通要因に起因する設備の故障の防止安全施設の機能が喪失する原因には,ある安全施設を構成する設備の偶発故障(ランダム故障)とそれ以外の故障がある。後者は,地震などの自然現象と外部人為事象(故意によるものは除く。)といった発電所外の事象(以下「外部事象」という。)による故障と,内部火災,内部溢水などの原子力発電所内の事象による 故障である。 設備の偶発故障に対しては,設備に高い信頼性を要求して,そもそも,設備が偶発的に故障をしないようにするとともに,複数の設備が同時に偶発故障することを防ぐために,その要因を排除することを要求している。 設備の偶発故障以外による設備の故障に対しては,その原因となる外部事象や内部火災などの発電所内の事象が,共通要因故障を発生させ得るものであることから,共通要因故障が発生すること自体を防ぐための対策を求めている(設置許可基準規則3条~9条)。 (ウ)外部事象に対する安全性の確保前記のとおり,設置許可基準規則第2章は,設計基準対象施設の外部事象に係る要求事項についても規定している(同規則3条~9条)。 自然現象については,地震及び津波に対する要求事項について規定しているほか(設置許可基準規則4条,5条),「安全施設は,想定される自然現象(地震及び津波を除く。)が発生した場合においても安全機能を損なわないものでなければならない。」と規定し(同規則6条1項),洪水,風(台風),竜巻,凍結 4条,5条),「安全施設は,想定される自然現象(地震及び津波を除く。)が発生した場合においても安全機能を損なわないものでなければならない。」と規定し(同規則6条1項),洪水,風(台風),竜巻,凍結,降水,積雪,落雷,地滑り,火山の影響,生物学的事象又は森林火災等の想定される自然現象が発生した場合においても安全機能が維持できることを求めている(同規則6条1項,同規則の解釈同条部分)。 次に,外部人為事象については,「安全施設は,工場等内又はその周辺において想定される発電用原子炉施設の安全性を損なわせる原因となるおそれがある事象であって人為によるもの(故意によるものを除く。)に対して安全機能を損なわないものでなければならない。」と規定し,例えば,飛来物(航空機落下等),ダムの崩壊,爆発,近隣工場等の火災,有毒ガス,船舶の衝突又は電磁的障害等が発生した場合においても安全機能が維持できることを求めている(同規則6条3項,同規則の解釈同条部分)。 このように,設置許可基準規則第2章は,設計基準対象施設の基本設計ないし基本的設計方針として,想定される外部事象が発生した場合に,安全機能を損なうおそれがないことを要求している。そして設置許可基準規則への適合性に関する審査では,原子炉施設について,想定される外部事象が発生した場合においても複数の安全機能が一斉に失われる誘因とならない基本設計ないし基本的設計方針となっているかを含めて審査することとされている。 すなわち,設置許可基準規則第2章は,共通要因となることが想定される外部事象について設計上の考慮を要求することによって,「止める」,「冷やす」,「閉じ込める」といった安全上の重要度の特に高い安全機能を有する構築物,系統及び機器が,設計上想定される外部事象によって機能を失うことを防止することとし 求することによって,「止める」,「冷やす」,「閉じ込める」といった安全上の重要度の特に高い安全機能を有する構築物,系統及び機器が,設計上想定される外部事象によって機能を失うことを防止することとしている。このようにして,外部事象による影響が原子炉施設に及んだ場合において,設計上期待される安全機能を果たせる状態を維持することができる。 (エ)安全施設についての安全性の確保(多重性,多様性,独立性)a安全設計要求事項設置許可基準規則12条1項は,「安全施設は,その安全機能の重要度に応じて,安全機能が確保されたものでなければならない。」と規定している。 ここにいう「安全機能」とは,「発電用原子炉施設の安全性を確保するために必要な機能」であって,「その機能の喪失により発電用原子炉施設に運転時の異常な過渡変化又は設計基準事故が発生し,これにより公衆又は従事者に放射線障害を及ぼすおそれがある機能」(以下「異常発生防止機能」という。)及び「発電用原子炉施設の運転時の異常な過渡変化又は設計基準事故の拡大を防止し,又は速やかにその事故を収束させることにより,公衆又は従事者に及ぼすおそれがある放射線障害を防止し,及び放射性物質が発電用原子炉を設置する工場又は事業所外へ放出されることを抑制し,又は防止する機能」(以下「異常影響緩和機能」という。)とされている(設置許可基準規則2条2項5号)。 b異常発生防止機能を有する系統については,高度の信頼性を確保し,そもそも,異常な過渡変化又は設計基準事故の発生を防止するが,さらに,事故が発生した場合においても,事故を収束させるため,次のとおり,異常影響緩和機能を有する系統を要求している。 異常影響緩和機能を有する系統については,機器として高度の信頼性を確保するのみならず,システム(系統)としての高度の信頼 故を収束させるため,次のとおり,異常影響緩和機能を有する系統を要求している。 異常影響緩和機能を有する系統については,機器として高度の信頼性を確保するのみならず,システム(系統)としての高度の信頼性を確保するために,「単一故障の仮定」(後記c)を適用した場合においても機能できるよう,その系統に多重性又は多様性及び独立性を確保することを要求している。 c単一故障の仮定(a)設置許可基準規則12条2項は,「安全機能を有する系統のうち,安全機能の重要度が特に高い安全機能を有するものは,当該系統を構成する機械又は器具の単一故障が発生した場合であって,外部電源が利用できない場合においても機能できるよう,当該系統を構成する機械又は器具の機能,構造及び動作原理を考慮して,多重性又は多様性を確保し,及び独立性を確保するものでなければならない。」と規定しているところ,同項は,「単一故障」について,「単一の原因によって一つの機械又は器具が所定の安全機能を失うこと(従属要因による多重故障を含む。)と規定している。なお,「安全機能を有する系統のうち,安全機能の重要度が特に高い機能を有するもの」とは,主として,原子炉の緊急停止機能,格納容器の冷却機能,非常用交流電源機能などの異常影響緩和機能を有する系統であると定められている(設置許可基準規則解釈12条3項)。 また,前記のとおり,「多重性」とは,同一の機能を有し,かつ,同一の構造,動作原理その他の性質を有する二以上の系統又機器が同一の発電用原子炉施設に存在することといい(設置許可基準規則2条2項17号),「多様性」とは,同一の機能を有する二以上の系統又は機器が,想定される環境条件及び運転状態において,これらの構造,動作原理その他の性質が異なることにより,共通要因(二 以上の系統又は機器に同時に影響を とは,同一の機能を有する二以上の系統又は機器が,想定される環境条件及び運転状態において,これらの構造,動作原理その他の性質が異なることにより,共通要因(二 以上の系統又は機器に同時に影響を及ぼすことによりその機能を失わせる要因をいう。)又は従属要因(単一の原因によって確実に系統又は機器に故障を発生させることとなる要因をいう。)によって同時にその機能が損なわれないことをいい(同項18号),「独立性」とは,二以上の系統又は機器が,想定される環境条件及び運転状態において,物理的方法その他の方法によりそれぞれ互いに分離することにより,共通要因又は従属要因によって,同時にその機能が損なわれないことをいう(同項19号)と定められている。 (b)単一故障とは,前記のとおり,単一の原因によって一つの機械又は器具が所定の安全機能を失うことをいい,従属要因による多重故障をも含むものであるが,「単一故障の仮定」の考え方は,安全機能を有する系統のうち,安全機能の重要度が特に高い機能を有するものについて,多重性又は多様性の要件を満たすかを確認するための解析手法であり,評価すべき系統の中の一つが原因を問わず故障した場合を仮定し,その場合でも当該系統が所定の機能を確保できることを確認するものである。 (c)なお,外部事象や内部火災などの原子力発電所内の事象は,設備に対して高度の信頼性を求め,多重性又は多様性及び独立性を求めたとしても,複数の設備を一度に同時に故障させる要因となりうるものであって,これらの場合について,単一故障の仮定による解析を行う意味はないことから,これらの事象により設備が故障しないような設計を要求している。また,重大事故等対策では,複数の系統が同時に故障したことを前提とした安全機能の喪失を想定した対策を行っている。 d以上のとおり, ら,これらの事象により設備が故障しないような設計を要求している。また,重大事故等対策では,複数の系統が同時に故障したことを前提とした安全機能の喪失を想定した対策を行っている。 d以上のとおり,新規制基準では,地震等の自然現象に対しては,「共通要因故障」を防止するための設計要求が規定され(設置許可基準規則4条等),これにより「共通要因故障」が防止される。そして,このような「共通要因故障」を防止する設計が行われていることを前提にして,偶発的な機器の故障,破損等に対 する信頼性を確保するために,「単一故障」を仮定して設計,評価が行われる。 (オ)原子力規制委員会は,「設計基準事故時の拡大の防止について,設計基準事故の原因を内部事象に限定した安全設計評価を改め,自然現象等外部事象を原因とする設計基準事故評価も入れた基準を策定すべき」との意見に対し,「設計基準においては,外部事象に対する原子炉施設の安全性の確保として,自然現象や外部人為事象に対する防護を安全設計上求めています(設計許可基準規則3条から6条)。設計基準における安全設計の評価は,外部事象に対する防護設計がなされていることを前提とするものとしています」との見解を示している(乙87の2)。 (カ)以上のとおり,設置許可基準規則は,共通要因故障を防止するために,自然現象に関する要求事項を強化しているから,共通要因故障が防止されることを前提として,偶発的な機器の故障,破損等のいわゆる「内部事象」に対する信頼性を確保するために,「単一故障」を仮定して安全設計,安全設計評価を行うことは,合理的といえる。 新規制基準における共通要因故障や単一故障等についての考え方や定めが不合理であるとはいえない。 イ相手方らの主張(ア)福島第一原子力発電所事故を踏まえれば,地震や津波などの共通要 理的といえる。 新規制基準における共通要因故障や単一故障等についての考え方や定めが不合理であるとはいえない。 イ相手方らの主張(ア)福島第一原子力発電所事故を踏まえれば,地震や津波などの共通要因故障(共通要因による安全機能の一斉喪失)を想定した設計基準及び安全設計評価がなされなければならない。 ところが,設置許可基準規則12条2項は,「安全機能を有する系統のうち,安全機能の重要度が特に高い安全機能を有するものは,当該系統を構成する機械又は器具の単一故障(単一の原因によって一つの機械又は器具が所定の安全機能を失うこと〔従属要因による多重故障を含む。〕)が発生した場合であって,外部電源が利用できない場合においても機能できるよう,当該系統を構成する機械又は器具の機能,構造及び動作原理を考慮して,多重性又は多様性を確保し,及び独立性を確 保するものでなければならない。」と規定し,同規則2条2項3号も同項4号の「設置基準事故」における「運転時の異常な過渡変化」を定義するに当たり,「通常運転時に予想される機械又は器具の単一の故障若しくはその誤作動又は運転員の単一の誤操作及びこれらと類似の頻度で発生すると予想される外乱によって発生する異常な状態であって,当該状態が継続した場合には発電用原子炉の炉心又は原子炉冷却材圧力バウンダリの著しい損傷が生ずるおそれがあるものとして安全設計上想定すべきものをいう。」と規定し,共通要因故障が生じることを想定しておらず,単一故障を想定している。 また,設置許可基準規則解釈13条1項は,「運転時の異常な過渡変化及び設計基準事故」に対する解析及び評価を「発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査指針」(安全評価審査指針)等に基づいて実施することと規定しているが,安全評価審査指針は,今回の新規制基準には組み込ま 基準事故」に対する解析及び評価を「発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査指針」(安全評価審査指針)等に基づいて実施することと規定しているが,安全評価審査指針は,今回の新規制基準には組み込まれず,依然として単一故障を想定している。 原子力発電所の設計においては,万が一にも事故が発生しないよう慎重に慎重を重ねて設計すべきであり,福島第一原子力発電所事故において共通要因故障が生じた以上,共通要因故障が生じることを仮定した安全設計及び安全設計評価をすべきである。 (イ)不合理な方法で策定された基準地震動を前提とする耐震設計をしても,地震等による共通要因故障を防止することはできない。 ウ相手方らの主張に対する検討(ア)設置許可基準規則12条2項についてa前記のとおり,設置許可基準規則は,その第2章において,想定すべき外部事象を起因として安全機能が喪失することがないように設計することを要求し,共通要因故障の原因となることが予見される自然現象等を含めた設計上の考慮を要求している(同規則3条~9条)。 また,前記のとおり,同規則12条1項は,安全施設について,異常発生防止機 能を有する系統については,高度の信頼性を確保し,そもそも,異常な過渡変化又は設計基準事故の発生を防止するが,さらに事故が発生した場合においても,事故を収束させるために,異常影響緩和機能を有する系統を要求している。 そして,異常影響緩和機能を有する系統については,機器として高度の信頼性を確保するのみならず,システム(系統)としての高度の信頼性を確保するために,「単一故障の仮定」を適用した場合においても機能できるよう,その系統に多重性又は多様性及び独立性を確保することを要求している。 b設置許可基準規則12条2項は,上記の異常影響緩和機能について,単一故障の仮定 の仮定」を適用した場合においても機能できるよう,その系統に多重性又は多様性及び独立性を確保することを要求している。 b設置許可基準規則12条2項は,上記の異常影響緩和機能について,単一故障の仮定による解析を行い,同機能を有する系統の安全評価を行うため,事故を想定する場合の規定である。 そもそも,同規則に該当する設備は,高度の信頼性が求められることから,偶発故障を引き起こすこと自体まれであり,かつ,想定される環境条件及び運転状態において,物理的方法又はそのほかの方法によりそれぞれ互いに分離することが求められることから,共通要因や従属要因によって複数の設備が同時に偶発的に故障を起こすことは極めてまれであるといえる。 そうであるから,このような設備の設計基準としては,単一の設備故障のみを考慮すれば十分な安全性を確保できるものといえる。 以上によれば,同規則が共通原因故障の考え方に照らして不合理な規定であるとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (イ)安全評価審査指針についてa新規制基準施行前新規制基準の施行以前は,原子力発電所の基本設計について,次のとおり,その要求事項が安全設計審査指針に定められ,また,その基本設計の妥当性を確認するため,安全設計評価が安全評価審査指針に基づいて行われていた(安全評価審査指針Ⅱ1)。 (a)原子力発電所の基本設計において,安全設計審査指針では,原子炉の停止,炉心の冷却,放射能の閉じ込めに関連する,安全機能の重要度が特に高い系統について,その構造,動作原理,果たすべき安全機能の性質等を考慮して,多重性又は多様性及び独立性を備えた設計であることが要求されるとともに(安全設計審査指針9の2),当該系統を構成する機器の単一故障の仮定に加え,外部電源が利用できない場合におい の性質等を考慮して,多重性又は多様性及び独立性を備えた設計であることが要求されるとともに(安全設計審査指針9の2),当該系統を構成する機器の単一故障の仮定に加え,外部電源が利用できない場合においても当該系統の安全機能が達成できる設計であることが要求されていた(安全設計審査指針9の3)。 (b)基本設計の妥当性を確認する安全設計評価について,安全評価審査指針では,原子炉施設の供用期間中に発生する可能性のある機器の故障や運転員の誤操作等を包絡する事象である「運転時の異常な過渡変化」並びに発生する頻度はより低いが,原子炉施設及び周辺公衆により重大な影響を与えるおそれのある事象を包絡するものである「事故」が発生した場合において,原子炉の停止,炉心の冷却及び放射性物質の閉じ込めの各安全機能別に,解析の結果を最も厳しくする機器について単一故障を仮定して事態の進展を解析し,炉心の著しい損傷に至らず,かつ,十分な冷却が可能であること等の判断基準が満たされることを確認することが要求されていた(安全評価審査指針Ⅱ)。 b設置許可基準規則(a)新規制基準における設置許可基準規則も,次のとおり,原子力発電所の基本設計について,安全設計審査指針と同様の要求事項を定め,原子力発電所の基本設計の妥当性について,新規制基準施行前と同様に,安全評価審査指針による評価を行うことを要求している。 (b)原子力発電所の基本設計について,設置許可基準規則及び同解釈は,安全設計審査指針と同様に,安全機能の重要度が特に高い系統について,単一故障が発生し,さらに外部電源が利用できない場合においても安全機能が維持されるように,多重性又は多様性を確保し,及び独立性を確保した,高い信頼性を持った設計であることを要求している(設置許可基準規則解釈12条2項)。 (c)安全 い場合においても安全機能が維持されるように,多重性又は多様性を確保し,及び独立性を確保した,高い信頼性を持った設計であることを要求している(設置許可基準規則解釈12条2項)。 (c)安全設計評価について,設置許可基準規則及び同解釈は,「運転時の異常な過渡変化」及び「設計基準事故」が発生した際に設計基準対象施設が有効に機能して事態が収束されることを要求し,具体的には,新規制基準施行前に用いられていた安全評価審査指針に基づいて解析を行い,同指針に定める判断基準を満たすことを要求している(設置許可基準規則13条1項及び同解釈13条1項)。そして,「運転時の異常な過渡変化」及び「設計基準事故」について,安全評価審査指針における「運転時の異常な過渡変化」及び「事故」をそれぞれ読み替えて評価を行うものとしている。 c相手方らは,設置許可基準規則解釈13条1項は,「運転時の異常な過渡変化及び設計基準事故」に対する解析及び評価を安全評価審査指針等に基づいて実施することとし,単一故障を想定した評価をしているから,不合理であると主張する。 しかし,地震,津波等の外部事象に起因する共通要因故障については,その原因となり得る外部事象によって安全機能を喪失することがないように設計することにより,安全機能の喪失が防止される。単一故障の仮定とは,このような共通要因故障を防止する設計が行われていることを前提とした上で,さらに,自然現象以外の事象に起因する設備の「異常事態」(安全設計審査指針における「運転時の異常な過渡変化」又は「事故」)を想定し,この「異常事態」に加えて,「異常事態」に対処するために必要な系統,機器の単一故障(偶発的な機器の故障,破損等のいわゆる「内部事象」による安全機能の喪失)を仮定して解析を行うことを意味する。 そうであるから,設置許可基 えて,「異常事態」に対処するために必要な系統,機器の単一故障(偶発的な機器の故障,破損等のいわゆる「内部事象」による安全機能の喪失)を仮定して解析を行うことを意味する。 そうであるから,設置許可基準規則13条1項及び同解釈並びに安全評価審査指針は,共通要因故障による設備の安全機能の喪失防止に加えて,さらに単一故障の仮定により,設備の安全性の確保を意図するものであり,不合理なものとはいえない。 なお,仮に,設計上の想定を上回る地震,津波等の外部事象によって共通要因故障に至る危険性があるのであれば,それは,当該外部事象に係る設計上の想定(地震であれば基準地震動,津波であれば基準津波等)が不十分であることに他ならな いのであるから,設計上の想定を見直して検討すべきであり,上記判断を左右しない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (ウ)基準地震動の策定について前記のとおり,本件各原子力発電所の「基準地震動策定」に関する新規制基準適合性について,新規制基準の策定内容を含めて,不合理な点がないことが,相当の根拠及び資料に基づいて疎明されているから,基準地震動の策定が不合理であるとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (4)重大事故等対策についてア新規制基準(乙75,乙76,乙128,乙273の1)(ア)重大事故等対策の規制の経緯新規制基準策定以前は,原子炉等規制法及び原子力安全委員会指針等においては,設計基準事故が生じた場合,「炉心は著しい損傷に至ること無く,かつ,十分な冷却が可能であること」のみが要求されていた。 新規制基準においては,福島第一原子力発電所の事故を踏まえ,上記に加えて設計基準事故に対処するための設備が機能喪失した場合,さらに炉心の著しい損傷が発生した場合も想定した対 」のみが要求されていた。 新規制基準においては,福島第一原子力発電所の事故を踏まえ,上記に加えて設計基準事故に対処するための設備が機能喪失した場合,さらに炉心の著しい損傷が発生した場合も想定した対策を求めることとした。 (イ)重大事故の定義重大事故とは,発電用原子炉の炉心の著しい損傷又は核燃料物質貯蔵設備に貯蔵する燃料体若しくは使用済燃料の著しい損傷を指し(原子炉等規制法43条の3の6第1項3号,実用炉規則4条),その重大事故に至るおそれのある事故(ただし,運転時の異常な過渡変化及び設計基準事故を除く。)と併せて重大事故等というと定められている(設置許可基準規則2条2項11号)。 設置許可基準規則は,第3章(重大事故等対処施設。同規則37条~62条)において,重大事故等対策の内容について規定し,深層防護の観点から,次のと おり定めている。 (ウ)重大事故等対処施設に関する要求事項(設置許可基準規則38条~42条)設置許可基準規則は,重大事故等対処施設に対して,一般的に要求すべき事項として,外部事象等への頑健性の観点から,自然的条件(地震,津波等),内部火災及び社会的条件(故意による大型航空機の衝突等)によって重大事故等対処施設の機能が損なわれるおそれがないことを要求している(同規則38条~42条)。 同規則38条は,基準地震動による地震力が作用した場合においても,建物等の支持機能に重大な影響が生じることにより重大事故等に対処するために必要な機能が損なわれることがないように,当該重大事故等対処施設を十分に支持することができる地盤に設けることなどを要求している。 同規則39条は,基準地震動による地震力により,必要な機能が損なわれるおそれがないことなどを要求している。 同規則40条は,基準津波により,必要な機能が損なわれるおそれがな ることなどを要求している。 同規則39条は,基準地震動による地震力により,必要な機能が損なわれるおそれがないことなどを要求している。 同規則40条は,基準津波により,必要な機能が損なわれるおそれがないことを要求している。 同規則41条は,施設に発生した火災により重大事故等に対処するための必要な機能が損なわれるおそれがないことを要求している。 同規則42条は,特定重大事故等対処施設(特定重大事故等対処施設とは,重大事故等対処施設のうち,故意による大型航空機の衝突その他のテロリズムにより炉心の著しい損傷が発生するおそれがある場合又は炉心の著しい損傷が発生した場合において,原子炉格納容器の破損による工場等外への放射性物質の異常な水準の放出を抑制するためのものをいう〔同規則2条2項12号〕。)について,原子炉建屋への故意による大型航空機の衝突等に対してその重大事故等に対処するために必要な機能が損なわれるおそれがないことなどを要求している。 (エ)重大事故等対処設備に関する要求事項(設置許可基準規則43条~62条)設置許可基準規則は,重大事故等対処設備について,共通する一般的要求事項を定める(同規則43条)とともに,個別の設備との関係で,考慮すべき重大事故等を踏まえて必要な個別の要求事項を定めている(同規則44条~62条)。 a一般的要求事項(設置許可基準規則43条)設置許可基準規則43条は,重大事故等対処設備の基本設計ないし基本的設計方針に係る一般的要求事項として,可搬型重大事故等対処設備(可搬型重大事故等対処設備とは,重大事故等対処設備のうち可搬型のものをいう〔同規則43条2項〕)及び常設重大事故等対処設備(常設重大事故等対処設備は,重大事故等対処設備のうち常設のものをいい,可搬型重大事故等対処設備と接続するものにあっては,当該可 ち可搬型のものをいう〔同規則43条2項〕)及び常設重大事故等対処設備(常設重大事故等対処設備は,重大事故等対処設備のうち常設のものをいい,可搬型重大事故等対処設備と接続するものにあっては,当該可搬型重大事故等対処設備と接続するために必要な発電用原子炉施設内の常設の配管,弁,ケーブルその他の機器を含む〔同規則43条2項〕)について,それぞれの役割を踏まえた機能等を要求している。 b個別的要求事項(設置許可基準規則44条~62条)発電用原子炉施設の基本的安全機能は,「止める」,「冷やす」,「閉じ込める」の3つである。 設置許可基準規則においては,通常運転時,運転時の異常な過渡変化時及び設計基準事故時に安全機能を有する系統の各基本的安全機能が維持されることを求めている。 そして,深層防護の考え方から,重大事故等対策として,想定外の事象を排除するため,理由を問わず,設計基準事故等に対処するための設備が機能喪失した場合においても,炉心の著しい損傷の防止,原子炉格納容器の破損防止等及び放射性物質の拡散の抑制のための対策を要求している。 (a)炉心の著しい損傷等を防止するための対策(設置許可基準規則44条~4 9条1項)「止める」機能について,核反応を止める制御棒等(設置許可基準規則25条)については,重要度の特に高い安全機能を有するものとして,合理的に達成しうる最高度の信頼性を確保すること(同規則12条,発電用軽水型原子炉施設の安全機能の重要度分類に関する審査指針)を要求している。それでもなお,制御棒が動かず緊急停止に失敗した場合を想定し,同規則44条は,緊急停止失敗時に炉心の著しい損傷を防止するため,原子炉を未臨界にするための設備を求めている。 「冷やす」機能について,事故時に炉心を冷却する非常用炉心冷却設備である高圧炉心スプレイポ 則44条は,緊急停止失敗時に炉心の著しい損傷を防止するため,原子炉を未臨界にするための設備を求めている。 「冷やす」機能について,事故時に炉心を冷却する非常用炉心冷却設備である高圧炉心スプレイポンプ等(同規則19条)も合理的に達成しうる最高度の信頼性を確保することを要求している。そして,非常用炉心冷却設備が作動せず炉心の冷却に失敗した場合を想定し,次のとおり定めている。 同規則45条は,原子炉冷却材圧力バウンダリが高圧の状態で設計基準事故対処設備が有する発電用原子炉の冷却機能が喪失した場合であっても,炉心の著しい損傷を防止するため,原子炉を冷却するための設備を求めている。 同規則46条は,原子炉冷却圧力バウンダリが高圧の状態で設計基準事故対処設備が有する発電用原子炉の減圧機能が喪失した場合であっても,炉心の著しい損傷を防止するため,原子炉冷却材圧力バウンダリを減圧するための設備を求めている。 同規則47条は,原子炉冷却材圧力バウンダリが低圧の状態で設計基準事故対処設備が有する発電用原子炉の冷却機能が喪失した場合であっても,炉心の著しい損傷を防止するため,原子炉を冷却するための設備を求めている。 このように,同規則45条から47条は,設計基準事故対処設備が有する発電用原子炉の安全機能が喪失した場合であっても,原子炉冷却材圧力バウンダリを高圧の状態から低圧状態にするなどして,発電用原子炉を冷却するため,各設備 を要求している。 「閉じ込める」機能について,格納容器には「閉じ込める」機能を担保するための格納容器スプレイ(格納容器内の圧力及び温度を低下させるための設備)等(同規則32条)の機器が設置されているが,そのような機器についても,合理的に達成しうる最高度の信頼性を確保すること(同規則12条,発電用軽水型原子炉施設の安全機能の重要度 低下させるための設備)等(同規則32条)の機器が設置されているが,そのような機器についても,合理的に達成しうる最高度の信頼性を確保すること(同規則12条,発電用軽水型原子炉施設の安全機能の重要度分類に関する審査指針)を要求している。そして,格納容器スプレイ等が機能しなかった場合を想定し,同規則49条1項は,設計基準事故対処設備が有する原子炉格納容器内の冷却機能が喪失した場合であっても,炉心の著しい損傷を防止するため,原子炉格納容器内の圧力及び温度を低下させるための設備を求めている。 なお,同規則48条は,設計基準事故対処設備が有する最終ヒートシンク(発電用原子炉施設において発生した熱を最終的に除去するために必要な熱の逃がし場をいう。)へ熱を輸送する機能が喪失した場合であっても,炉心に熱が蓄積することを防ぐことで炉心の著しい損傷を防止するため,最終ヒートシンクへ熱を輸送するための設備を求めている。 (b)炉心の著しい損傷が発生した場合を想定した上で要求する原子炉格納容器等の破損防止に必要な対策(設置許可基準規則46条,47条及び49条2項~53条)設置許可基準規則は,炉心の著しい損傷を防止するための設備を設けることを要求しているが,それでも炉心の著しい損傷が発生した場合を想定し,「閉じ込める」機能の観点から,原子炉格納容器等の破損及び放射性物質の異常な水準での放出を防止する対策を,同規則46条,47条及び49条2項から同規則53条において要求している。 (c)使用済燃料ピットの冷却等のための対策(設置許可基準規則54条)設置許可基準規則54条は,使用済燃料ピットの冷却等のための設備を求めて いる。 使用済燃料ピットには,使用済燃料が保管されており,一定の水位を保ちながら冷却を継続している。使用済燃料は炉内の燃料と比較すると発 4条は,使用済燃料ピットの冷却等のための設備を求めて いる。 使用済燃料ピットには,使用済燃料が保管されており,一定の水位を保ちながら冷却を継続している。使用済燃料は炉内の燃料と比較すると発熱量が小さく,使用済燃料ピットへの補給水系の機能が失われた場合においても損傷が生じるような事態に至るには長時間を要する。かかる施設の特徴を踏まえ,同規則54条1項は,使用済燃料ピットの冷却機能又は注水機能が喪失し,又は使用済燃料ピットからの水の漏えいその他の要因により当該使用済燃料ピットの水位が低下した場合を想定し,代替注水設備として可搬型代替注水設備を配備するなど,貯蔵槽内燃料体等を冷却し,放射線を遮蔽し,及び臨界を防止するための設備を求めている(同規則の解釈54条)。さらに,同規則54条2項は,使用済燃料ピットからの大量の水の漏えいその他の要因により当該使用済燃料ピットの水位が異常に低下した場合において,スプレイ設備として可搬型スプレイ設備を配備することなど,貯蔵槽内燃料体等の著しい損傷の進行を緩和し,及び臨界を防止するための設備を求めている(同規則の解釈同条)。 (d)工場等外への放射性物質の拡散を抑制するための設備に係る対策(設置許可基準規則55条)設置許可基準規則は,重大事故等対策として,炉心の著しい損傷の防止,原子炉格納容器の破損の防止,及び貯蔵槽内燃料体等の著しい損傷の防止のための設備を求めている。そして,あえて,炉心の著しい損傷及び原子炉格納容器の破損又は貯蔵槽内燃料体等の著しい損傷に至った場合をも想定し,その場合,周辺環境への放射性物質の異常な水準の放出防止の観点から,同規則55条は放射性物質の拡散形態を適切に考慮し,工場等外への放射性物質の拡散を抑制するための設備を求めている。 (e)その他の要求事項重大事故等が発 射性物質の異常な水準の放出防止の観点から,同規則55条は放射性物質の拡散形態を適切に考慮し,工場等外への放射性物質の拡散を抑制するための設備を求めている。 (e)その他の要求事項重大事故等が発生した場合において,炉心の著しい損傷等を防止するためには, 水の供給と電源の確保が重要となることから,同規則56条は,重大事故等の収束に必要となる十分な量の水を供給するための設備等を求めており,同規則57条において必要な電力を確保するための電源設備を求めている。 さらに,重大事故等に対処するためには,原子炉等の状況を把握し,収集した情報を基に,事故の進展に応じた対処をする必要がある。そこで,情報収集及び対処のために必要な設備として,計装設備(同規則58条),原子炉制御室(同規則59条),監視測定設備(同規則60条),緊急時対策所(同規則61条)及び通信連絡を行うために必要な設備(同規則62条)を求めている。 (オ)重大事故等対策の有効性評価重大事故等対策の有効性に係る評価は,設置(変更)許可申請者に対して,重大事故等を想定して解析評価を行い,重大事故等対策が有効であるかどうかを確認することを求めるものである(設置許可基準規則37条)。具体的には,設置(変更)許可申請者は,重大事故に至るおそれがある事故が発生した場合において,炉心の著しい損傷を防止するための必要な措置について,その有効性があることを確認し(同条第1項の解釈),さらに,重大事故が発生した場合においても,原子炉格納容器の破損及び工場等外への放射性物質の異常な水準の放出を防止するための必要な措置について,その有効性があることを確認するものである(同条第2項の解釈)。 (カ)炉心損傷防止対策における有効性評価の手法a事故シーケンスグループの選定方法設置許可基準規則37条1項 必要な措置について,その有効性があることを確認するものである(同条第2項の解釈)。 (カ)炉心損傷防止対策における有効性評価の手法a事故シーケンスグループの選定方法設置許可基準規則37条1項の解釈では,炉心の著しい損傷の防止対策について,事故シーケンスグループごとに,その対策に有効性があることを確認することを要求している。事故シーケンスとは,炉心の著しい損傷に至る可能性のある事故のシナリオを,起因事象,安全設備や緩和操作の成功・失敗,物理現象の発生の有無などの組み合わせとして表したものである。さらに,これを樹形状の論 理構造図にしたものをイベントツリーという。また,系統・機器等の機能喪失について,その発生の原因をたどって樹形状に展開した図式をフォールトツリーという。 そして,著しい炉心損傷に至る事故シーケンスを,起因事象,安全機能(注水設備等)及びサポート機能(電源等)の作動状態,対策の共通点に着目して類型化したものが事故シーケンスグループである。 同規則37条1項の解釈では,これまでの研究の成果等を踏まえ,有意な炉心損傷頻度をもたらす様々な事故シーケンスを概ね網羅すると考えられる事故シーケンスグループを「必ず想定する事故シーケンスグループ」として定めている。 本件各原子力発電所のような加圧水型原子炉(PWR)では,2次冷却系からの除熱機能喪失,全交流動力電源喪失,原子炉補機冷却機能喪失,原子炉格納容器の除熱機能喪失,原子炉停止機能喪失,ECCS注水機能喪失,ECCS再循環機能喪失,格納容器バイパス(インターフェイスシステムLOCA,蒸気発生器伝熱管破損)を「必ず想定する事故シーケンスグループ」としている。 その上で,プラント毎の設計等の違いもあることから,個別プラントの内部事象に関する確率論的リスク評価(PRA,原子炉で想定 蒸気発生器伝熱管破損)を「必ず想定する事故シーケンスグループ」としている。 その上で,プラント毎の設計等の違いもあることから,個別プラントの内部事象に関する確率論的リスク評価(PRA,原子炉で想定される事故を対象に,事故を収束するために必要な安全設備が運転に失敗する可能性を確率を用いて評価し,原子炉の炉心損傷頻度等を評価する手法をいう。なお,設置許可基準規則37条の解釈では内部事象だけでなく,地震等の外部事象に係るPRAのうち,適用可能なものは評価することを求めている。)及び外部事象に関する適用可能なPRA又はそれに代わる方法で評価を実施し,その結果,「必ず想定する事故シーケンスグループ」に含まれないものの,有意な頻度又は影響をもたらす事故シーケンスグループが抽出された場合には,「想定する事故シーケンスグループ」に追加することを求めている。 b重要事故シーケンスの選定と有効性評価の方法 想定する事故シーケングループごとに,同時に機能喪失する設備の数,余裕時間の長短,炉心損傷防止に必要な設備容量の程度,当該事故シーケンスグループ内の特徴を代表しているかどうかを着眼点として,重要事故シーケンスを選定する(実用発電用原子炉に係る炉心損傷防止対策及び格納容器破損防止対策の有効性評価に関する審査ガイド,別紙「規則・告示・内規一覧表」(23),以下「有効性評価ガイド」という。)。 その上で,重大事故等対策として要求される設備等により,当該重要事故シーケンスに対して炉心の著しい損傷を防ぐことができるかについて,計算シミュレーションなどにより評価の要件を概ね満足すること,必要な要員及び燃料等について計画が十分なものであることなどを確認する有効性評価を行う。 (キ)格納容器破損防止対策における有効性評価の手法a格納容器破損モードの選定設置 件を概ね満足すること,必要な要員及び燃料等について計画が十分なものであることなどを確認する有効性評価を行う。 (キ)格納容器破損防止対策における有効性評価の手法a格納容器破損モードの選定設置許可基準規則37条2項の解釈では,格納容器破損防止対策について,格納容器破損モードごとにその有効性があることを確認することを要求している。 格納容器破損モードとは,著しい炉心損傷後等に格納容器の破損及び工場等外への放射性物質の異常な水準の放出に至る可能性のある事象を,格納容器への負荷の種類に着目して類型化したものであり,有効性評価の前提として,格納容器破損モードを網羅的に抽出する必要がある。そして,同規則37条2項の解釈では,これまでの研究の成果を踏まえ,典型的な格納容器破損モードとして「必ず想定する格納容器破損モード」を定めている。そして,原子力発電所毎の設計等の違いもあることから,各個別原子力発電所の特性に基づく格納容器破損モードを選定するため,個別原子力発電所の内部事象に関するPRA及び外部事象に関する適用可能なPRA又はそれに代わる方法で評価を実施し,その結果,「必ず想定する格納容器破損モード」に含まれないものの,有意な頻度又は影響をもたらす格納容器破損モードが抽出された場合には,「想定する格納容器破損モード」に 追加することを求めている。 b評価事故シーケンスの選定と有効性評価の方法想定する格納容器破損モードごとに,PRAに基づく格納容器破損シーケンスの中から,格納容器に対する負荷などの観点から厳しい事故シーケンスを,評価事故シーケンスとして選定する。 その上で,重大事故等対策として要求される設備等により,当該評価事故シーケンスに対して格納容器の破損を防ぐことができるかについて,計算シミュレーションなどにより評価項目を概ね満足 スとして選定する。 その上で,重大事故等対策として要求される設備等により,当該評価事故シーケンスに対して格納容器の破損を防ぐことができるかについて,計算シミュレーションなどにより評価項目を概ね満足すること,必要な要員及び燃料等について計画が十分なものであることなどを確認する有効性評価を行う。 (ク)事故シーケンスグループが重畳する場合の検討「必ず想定する事故シーケンスグループ」は,事故等の発生後,設計基準事故対処設備が多重故障を起こすような重大事故に至るおそれのある事故であることから,発生頻度は低いと考えられる。 そのため,2つの「必ず想定する事故シーケンスグループ」が重畳する場合とは,それらの発生頻度を掛け合わせた極めて低い頻度になると想定されることから,そのような重畳までを「必ず想定する事故シーケンスグループ」には含めていない。 なお,前記のとおり,個別原子力発電所の評価により有意な頻度又は影響をもたらす事故シーケンスグループが「必ず想定する事故シーケンスグループ」以外に抽出された場合には,それも「想定する事故シーケンスグループ」として追加することが求められている(設置許可基準規則37条解釈1-1(b)②)。 また,事故シーケンスグループ毎に炉心の著しい損傷の防止対策を定めることから,仮に重畳したとしても,それぞれの防止対策を柔軟に活用することができる。 (ケ)確率論的リスク評価を採用する理由 事故シーケンスグループの抽出の際に,PRAを採用するのは,起因事象,安全機能(注水設備等)及びサポート機能(電源等)の作動状態に着目して類型化した事故シーケンスグループを網羅的かつ体系的に検討できるからである。 すなわち,PRAでは原子力発電所の設計情報と運転情報を基に,起因事象を適切に洗い出すとともに,起因事象毎に安全停止状態に移行 化した事故シーケンスグループを網羅的かつ体系的に検討できるからである。 すなわち,PRAでは原子力発電所の設計情報と運転情報を基に,起因事象を適切に洗い出すとともに,起因事象毎に安全停止状態に移行させるために必要な設備や操作を明確にした上でイベントツリーを作成することで,起因事象と安全機能の喪失の組合せを網羅的かつ体系的に検討することができる。 (コ)重大事故等対策における可搬型設備の扱いについて重大事故等対策においては,常設設備を設置する場合には設計する際に必ず設計上の想定を定めなければならないところ,設計上の想定を超えた場合の効果が限定される可能性があるため,常設設備による対策に依存しすぎると想定を超えた事象に対処することが困難になる可能性がある。 他方,可搬型設備の場合は,例えば想定していた配管が使えなくなった場合でも,他の配管への接続を試みることができるなど柔軟性があり,接続に要する時間は接続手法の改善で短縮が見込める上,作業環境も接続場所の分散などによって選択肢を広げる等の対策が可能となるし,可搬型設備は,常設設備に比べると,経験則的に耐震上優れた特性が認められる。なお,審査において,設置(変更)許可申請者に,配備しようとする可搬型設備につき,加振試験などによる耐震評価を行うことが要求される。 以上によれば,重大事故等対策では,可搬型設備による対策が,その基本的な内容となるものといえる。 (サ)重大事故等対策における可搬型設備の配備要求の範囲設置許可基準規則の解釈では,時間的余裕,設備の大きさなどを考慮し,原子炉冷却材圧力バウンダリ高圧時に発電用原子炉を冷却するための設備(45条の解釈),原子炉冷却材圧力バウンダリを減圧する設備(46条の解釈),原子炉冷 却材圧力バウンダリ低圧時に発電用原子炉を冷却するための設備(4 リ高圧時に発電用原子炉を冷却するための設備(45条の解釈),原子炉冷却材圧力バウンダリを減圧する設備(46条の解釈),原子炉冷 却材圧力バウンダリ低圧時に発電用原子炉を冷却するための設備(47条の解釈),車載代替の最終ヒートシンクシステム(48条の解釈),使用済燃料貯蔵槽の冷却等のための設備(54条の解釈),電源設備(57条の解釈)につき,可搬型設備を要求している。 なお,設置許可基準規則は,設置(変更)許可申請者においてより良い対策が立案されることを促すため,性能要求として規定されており,可搬型設備及び常設設備のいずれにおいても,その解釈で例に挙げられている手段と同等以上で十分な機能を確保できる方策であれば足りるものとされている。 (シ)重大事故等対策については,設置許可基準規則において,可搬型設備だけではなく,可搬型設備と常設設備を適切に組み合せることで対策を実施することが要求されている。例えば,原子炉冷却材圧力バウンダリ低圧時に発電用原子炉を冷却するための設備として,「可搬型重大事故防止設備」とは別に,「炉心の著しい損傷に至るまでの時間的余裕のない場合に対応するため」に「常設重大事故防止設備を設置すること」(設置許可基準規則解釈47条1項(1)a)及びb))や,重大事故等が発生した場合において,炉心の著しい損傷等を防止するために必要な電力を確保するための設備として,「可搬型代替電源設備(電源車及びバッテリ等)とは別に「常設代替電源設備として交流電源設備」を設けること(設置許可基準規則解釈57条1項a))とされるなど,可搬型設備と常設設備を適切に組み合せることを要求することで,重大事等対策の信頼性をさらに高めることを意図している。 イ相手方らの主張(ア)具体的起因事象の想定について新規制基準の重大事故等対策は,炉心の著 設設備を適切に組み合せることを要求することで,重大事等対策の信頼性をさらに高めることを意図している。 イ相手方らの主張(ア)具体的起因事象の想定について新規制基準の重大事故等対策は,炉心の著しい損傷等の具体的起因事象を想定して事故シーケンスを検討することまで求めておらず,現実の事故対策と乖離しているから,実効性を欠き不合理である。 (イ)重大事故等対処施設の耐震性について重大事故等対処施設は,設計基準事故を超える事故の場合に稼働する役割を担 った施設であるから,基準地震動を超える地震動にも耐えることが基準として要求されるべきであるのに,新規制基準では基準地震動による地震力に対して機能が損なわれなければよいとされており,不合理である。 (ウ)設置許可基準規則55条について設置許可基準規則55条は,(工場等外への放射線物質の拡散を抑制するための設備)として「発電用原子炉施設には,炉心の著しい損傷及び原子炉格納容器の破損又は貯蔵槽内燃料体等の著しい損傷に至った場合において工場等外への放射線物質の拡散を抑制するために必要な設備を設けなければならない。」と規定するが,このような工場等外への放射線物質の拡散を抑制するための設備に係る対策は実効的でなく,不合理である。 (エ)設置許可基準規則解釈37条1項について設置許可基準規則解釈37条1項は,これまでの研究成果を踏まえ,有意な炉心損傷頻度をもたらす様々な事故シーケンスグループを概ね網羅すると考えられる事故シーケンスを「必ず想定する事故シーケンスグループ」として定めているが,このようなシーケンスグループを見出し得る研究成果はなく不合理であるし,IAEA安全基準「原子力発電所のシビアアクシデントマネジメント計画」(No.NS-G-2.15)(甲299)が,可能性のある起因事象に基づ ーケンスグループを見出し得る研究成果はなく不合理であるし,IAEA安全基準「原子力発電所のシビアアクシデントマネジメント計画」(No.NS-G-2.15)(甲299)が,可能性のある起因事象に基づいて起こり得ると考えられる全ての事象等を扱うべきと定めていることに照らし,「概ね網羅する」というのも不合理である。確率論的リスク評価(PRA)の使用や事故シーケンスグループを重畳させないこと等において,恣意的な適用がなされており,不合理である。 (オ)可搬型設備について新規制基準における可搬型設備による人的対応は,重大事故等発生後の緊急事態の下においては有効に機能しないことが明白であり,重大な欠陥がある。 ウ相手方らの主張に対する検討 (ア)具体的起因事象の想定について前記のとおり,設置許可基準規則解釈37条1項は,これまでの研究の成果等を踏まえ,有意な炉心損傷頻度をもたらす様々な事故シーケンスを概ね網羅すると考えられる事故シーケンスグループを「必ず想定する事故シーケンスグループ」として定めた上,各原子力発電所毎の設計等の違いもあることから,「必ず想定する事故シーケンスグループ」に含まれないものの,有意な頻度又は影響をもたらす事故シーケンスグループが抽出された場合には,「想定する事故シーケンスグループ」に追加することを求めている。 このように,新規制基準は,各原子力発電所の設計等をもとに具体的な起因事象により炉心の著しい損傷に至る過程からなる事故シーケンスを適切に洗い出し,事故シーケンスグループを抽出することを求めている。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (イ)重大事故等対処施設の耐震性についてa前記のとおり,新規制基準は,基準地震動について,最新の科学的・技術的知見を踏まえ,敷地及び敷地周辺の地質・地質 手方らの主張を採用することができない。 (イ)重大事故等対処施設の耐震性についてa前記のとおり,新規制基準は,基準地震動について,最新の科学的・技術的知見を踏まえ,敷地及び敷地周辺の地質・地質構造,地盤構造並びに地震活動性等の地震学及び地震工学的見地から想定することが適切なものとして策定することを求め,基準地震動の策定過程に伴う各種の不確かさについては,適切な手法を用いて考慮することを求め,基準津波について,最新の科学的・技術的知見を踏まえ,波源海域から敷地周辺までの海底地形,地質構造及び地震活動性等の地震学的見地から想定することが適切なものを策定することを求め,耐津波設計上の十分な裕度を含めるため,基準津波の策定の過程に伴う不確かさを十分踏まえた上で,これを適切な手法を用いて考慮することを求めている。そして,原子力発電所における基準地震動及び基準津波の策定が適切であるか否かは,原子力規制委員会における新規制基準への適合性審査において,当該原子力発電所の地域性等を踏まえて個別的に判断される。 このように,新規制基準は,基準地震動及び基準津波を,不確かさを適切に考慮 し,保守的に策定することを求めている。本件各原子力発電所の基準地震動及び基準津波も,このような基準に照らして,原子力規制委員会によって厳格に審査され,基準への適合性が確認されたのであり,十分な保守性を有している。 以上によれば,基準地震動及び基準津波を超える地震動及び津波が到来し,これによって重大事故等対策に係る重大事故等対処施設が機能喪失する事態に陥ることは,まず考えられないのであり,重大事故等対処施設について,地震及び津波に対する安全性を確認するための基準を基準地震動及び基準津波とする新規制基準の定めに不合理な点があるとはいえない。 b以上に加えて,前記のとお ないのであり,重大事故等対処施設について,地震及び津波に対する安全性を確認するための基準を基準地震動及び基準津波とする新規制基準の定めに不合理な点があるとはいえない。 b以上に加えて,前記のとおり,新規制基準における重大事故等対策は,経験則的に耐震上優れた特性が認められる可搬型設備による対策を基本とし,これに常設設備をも組み合わせることで多様性を持たせ,さらに信頼性を向上させている上,重大事故防止設備は,地震等の共通要因によって設計基準事故対処設備の安全機能等と同時にその機能が損なわれるおそれがないよう,可能な限り多様性を考慮し,適切な措置を講じることが求められ,可搬型重大事故等対処設備は,地震,津波等の条件を考慮した上で,常設重大事故等対処設備とは異なる保管場所に保管することが求められている。そして,新規制基準は,「『特定重大事故等対処施設』に『基準地震動による地震力に対してその重大事故等に対処するために必要な機能が損なわれるおそれがないもの』を適用する場合,基準地震動に対する設計上の許容限界は設計基準と同じものを適用する(例えば,基準地震動に対して設計基準上の許容値を適用する。)が,設計基準における措置とは性質の異なる対策(多様性)を講じること等により,基準地震動を一定程度超える地震動に対して頑健性を高めること。例えば,設計基準事故対処設備は剛構造であるの対し,特定重大事等対処施設に属する設備については,免震又は制震構造を有することをいう。」と定めている(同規則解釈39条4項)。以上のとおり,新規制基準における重大事故等対策は,基準地震動を超える地震等に対する配慮をしているものと認められる。 以上によれば,新規制基準の重大事故等対処施設の耐震性に関する規定内容に 不合理な点があるとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採 動を超える地震等に対する配慮をしているものと認められる。 以上によれば,新規制基準の重大事故等対処施設の耐震性に関する規定内容に 不合理な点があるとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (ウ)設置許可基準規則55条についてa前記のとおり,設置許可基準規則55条は,「発電用原子炉施設には,炉心の著しい損傷及び原子炉格納容器の破損又は貯蔵槽内燃料体等の著しい損傷に至った場合において工場等外への放射線物質の拡散を抑制するために必要な設備を設けなければならない。」と規定する。また,同規則解釈55条1項は,同規則55条に規定する「工場等外への放射線物質の拡散を抑制するために必要な設備」とは,以下に掲げる措置又はこれらと同等以上の効果を有する措置を行うための設備をいうとした上,次のとおり掲記している。 (a)原子炉建屋に放水できる設備を配備すること(b)放水設備は,原子炉建屋周辺における航空機衝突による航空機燃料火災に対応できること(c)放水設備は,移動等により,複数の方向から原子炉建屋に向けて放水することが可能なこと(d)放水設備は,複数の発電用原子炉施設の同時使用を想定し,工場等内発電用原子炉施設基数の半数以上を配備すること(e)海洋への放射線物質の拡散を抑制する設備を整備することb設置許可基準規則は,「第二章設計基準対象施設」において,地震,津波その他の自然的立地条件に係る安全確保対策,及び多重防護(深層防護)の考え方を取り入れた事故防止に係る安全確保対策を定めており,この対策が要求する「安全上重要な設備」は,基準地震動,基準津波等に対する安全性を有し,多重性又は多様性及び独立性を有するなど,格段に高い信頼性を有している。そうであるから,設置許可基準規則の「第二章設計基準対象施設」の 上重要な設備」は,基準地震動,基準津波等に対する安全性を有し,多重性又は多様性及び独立性を有するなど,格段に高い信頼性を有している。そうであるから,設置許可基準規則の「第二章設計基準対象施設」の対策が適切に講じられることにより,炉心の著しい損傷等に至ることは,まず想定しがたい。 c新規制基準では,上記対策が奏功しないような万一の事態をあえて想定し, このような場合においても,なお炉心の著しい損傷等に至ることを防止する対策(重大事故等対策)を求め,この対策が適切に講じられていることを確認するための基準として,設置許可基準規則の「第三章重大事故等対処施設」にその定めが設けられており,同規則37条は,炉心の著しい損傷を防止する対策,原子炉格納容器の破損を防止する対策,貯蔵槽内燃料体等の著しい損傷を防止する対策等を講じることを求めている。重大事故等対策で期待する重大事故等対処施設も,地震・津波に対する安全性を確保するなど,格段に高い信頼性が求められているから,これらの対策を適切に講じることにより,炉心の著しい損傷等を防止する確実性は更に高まるものといえる。 以上のとおり,設置許可基準規則は,炉心の著しい損傷等に至ることのないようにするため,設計基準対象施設及び重大事故等対処施設による多層的な対策を講じることを求めており,このような対策により,炉心の著しい損傷等に至ることは,さらに想定しがたい。 d設置許可基準規則55条の「炉心の著しい損傷及び原子炉格納容器の破損又は貯蔵槽内燃料体等の著しい損傷に至った場合」とは,設計基準対象施設による対策が奏功せず,かつ重大事故等対処施設による炉心の著しい損傷等を防止する対策も奏功しないという,極めて想定が困難な場合に該当するから,新規制基準は,このような場合においても,放射線による周辺への影響を が奏功せず,かつ重大事故等対処施設による炉心の著しい損傷等を防止する対策も奏功しないという,極めて想定が困難な場合に該当するから,新規制基準は,このような場合においても,放射線による周辺への影響を緩和するという観点から,なお,前記aのとおりの一定の対策を講じることを求めているものと解することができる。 以上によれば,設置許可基準規則55条の規定が不合理であるとはいえない。 eしたがって,相手方らの主張を採用することができない。 (エ)設置許可基準規則37条1項解釈についてa前記のとおり,設置許可基準規則37条1項解釈は,これまでの研究の成果等を踏まえ,有意な炉心損傷頻度をもたらす様々な事故シーケンスを概ね網羅すると考えられる事故シーケンスグループを「必ず想定する事故シーケンスグルー プ」として定めた上,各原子力発電所毎の違いもあることから,「必ず想定する事故シーケンスグループ」に含まれないものの,有意な頻度又は影響をもたらす事故シーケンスグループが抽出された場合には,「想定する事故シーケンスグループ」に追加することを求めている。そうすると,「必ず想定する事故シーケンスグループ」及び,これに追加する「想定する事故シーケンスグループ」によって,抽出される事故シーケンスグループの網羅性に欠けるものとはいえない。 b確率論的リスク評価(PRA)は,原子力発電所のリスクに関わる評価を現実的な仮定の基に論理的かつ包括的に行うことができるなどの特徴を有している手法であるが,この手法により,炉心損傷に至る可能性のある起因事象を見落とすことなく網羅的に選定した上で,各起因事象に対して,炉心損傷に至る過程を網羅的に展開することにより,事故シーケンス及び事故シーケンスグループを体系的,網羅的に抽出することが可能とされている(乙354)。 原子力規 に選定した上で,各起因事象に対して,炉心損傷に至る過程を網羅的に展開することにより,事故シーケンス及び事故シーケンスグループを体系的,網羅的に抽出することが可能とされている(乙354)。 原子力規制委員会は,抗告人が本件各原子力発電所の事故シーケンスの抽出に当たって用いた確率論的評価(PRA)の手法について,その評価手法及びその技術的根拠は日本原子力学会の実施基準に基づいていることを海外を含めたPRAの専門家により確認しており,標準的な手法に則って実施されているものと判断した。 c「必ず想定する事故シーケンスグループ」の抽出・整理には,確率論的評価(PRA)の手法により網羅的に抽出された事故シーケンスグループ及び格納容器破損モードの知見が用いられている。 新規制基準の「必ず想定する事故シーケンスグループ」に対応する各事故シーケンスグループの炉心損傷頻度が,概ね10-9~10-6/炉年と極めて低い水準とされていることからすると(乙355),「必ず想定する事故シーケンスグループ」が重畳する頻度が極めて低くなることは明らかであるから,「必ず想定する事故シーケンスグループ」を重畳させないことが不合理であるとはいえない。 dしたがって,相手方らの主張を採用することができない。 (オ)可搬型設備について前記のとおり,新規制基準においては,重大事故等対策について,可搬型設備だけではなく,可搬型設備と常設設備を適切に組み合せることにより,想定される様々な事故シーケンスグループについての対策が要求されており,このような対策により,重大事故等対策の信頼性がさらに高められているといえるから,不合理な点があるとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (5)特定重大事故等対処施設等に関する猶予期間の経過措置についてア 信頼性がさらに高められているといえるから,不合理な点があるとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (5)特定重大事故等対処施設等に関する猶予期間の経過措置についてア相手方らの主張新規制基準の経過措置は,特定重大事故等対処施設等の設置に猶予期間を設定しているが,原子力発電所が「災害の防止上支障がないもの」であるために必要な設備の設置を猶予するものであり,不十分な規定である。 イ検討(乙131)(ア)特定重大事故等対処施設等は,それ以外の施設及び設備によって重大事故等対策に必要な機能を満たした上で,その信頼性を向上させるためのバックアップ対策として求められているものであるが,特定重大事故等対処施設等の設置については,原子炉等規制法の平成25年7月8日改正以前に設置許可を受けている発電用原子炉に対して,新規制基準に適合するための本体施設等に係る工事計画認可の日から起算して5年を経過するまでの間は適用が猶予されている(設置許可基準規則附則2条)。 しかし,特定重大事故等対処施設等は,前記のとおり,重大事故等対策や大規模な損壊が生じた場合の対応が全て備えられた上で,さらにその信頼性を向上させるための対策であるから,猶予されることによって必要な対策に欠けるとまではいえず,新規制基準の上記規定が不合理であるとはいえない。 (イ)したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (6)外部電源安全確保対策について ア相手方らの主張外部電源の重要度分類はPS-3,耐震重要度分類はCクラスのままであり,これでは安全性が確保されない。外部電源喪失時の規定も具体的でない。膨大なコストがかかるという経済的な理由によって外部電源を耐震Sクラスに分類しないことは許されない。 イ検討(ア)発電用原子炉施設に は安全性が確保されない。外部電源喪失時の規定も具体的でない。膨大なコストがかかるという経済的な理由によって外部電源を耐震Sクラスに分類しないことは許されない。 イ検討(ア)発電用原子炉施設に必要とされる電源について(乙76,乙273の1)発電用原子炉施設内で必要とされる電源には,交流電源と直流電源がある。また,通常運転時に利用される常用電源と,事故等の発生時に必要とされる非常用電源に区分される。 炉心を冷却するために水を供給する大型ポンプ等の機器を動作させるためには,交流動力電源からの電力供給が必要である。通常運転時は,常用交流動力電源として,原子炉からの蒸気で駆動する発電機からの所内電力供給や敷地外の発電所等から電線路(送電線のこと)を通って供給される外部電源系が利用される。事故等の発生時には,非常用交流動力電源として非常用ディーゼル発電機を待機させ,外部電源系が喪失した場合には,非常用ディーゼル発電機から電力を供給する。 また,各機器の制御や原子炉の各種パラメータを監視する計測制御用の機器等を動作させるためには,直流の電力が主に必要となる。通常は外部電源系等から供給される交流電流を直流に整流して供給される。事故等の発生時には,外部電源系が喪失し,非常用ディーゼル発電機の機能も喪失した場合の非常用直流電源として,蓄電池等が必要とされる。 (イ)福島第一原子力発電所事故から得られた教訓(乙273の1)a福島第一原子力発電所事故においては,津波により所内の電気設備が水没, 被水したことにより機能喪失したため,外部電源系が機能していたとしても受電を継続することは困難であったと考えられるものの,外部電源の喪失が,その後の事故の進展防止を阻害する要因のひとつであり,地震後に外部電源を含む交流電源を利用することができた東北電力 いたとしても受電を継続することは困難であったと考えられるものの,外部電源の喪失が,その後の事故の進展防止を阻害する要因のひとつであり,地震後に外部電源を含む交流電源を利用することができた東北電力女川原子力発電所及び日本原子力発電東海第二発電所では,冷温停止に移行する等の緊急時対応を実施できたことを踏まえると,外部電源について複数の回線からの給電を確保するなどにより,1つのルートを失っても当該発電所が外部電源喪失にならないよう外部電源系の一層の信頼性を高めることが重要である(設置許可基準規則33条4項~6項)。 b非常用交流電源設備については,津波により非常用ディーゼル発電機等の冷却系の一部である海水ポンプが機能喪失したため,非常用ディーゼル発電機自体が水没,被水していなかったとしても機能しなかった。 各種の安全設備に電力を供給する配電盤等の電気設備は,津波による被水等により機能を喪失しており,その代替機能を短時間で用意することができず復旧に時間を要した。 燃料供給,起動,制御に必要な直流電源,配電盤等の電気設備のいずれかが機能喪失しても使用できなくなるおそれがあるため,津波等による共通要因故障を防止する対策を強化することが重要である。 従来より非常用電源設備等に対して多重性又は多様性及び独立性が要求されていたが,更なる交流電源設備,所内電気設備の独立性等を強化することが重要である。また,非常用電源設備用の十分な燃料を確保することも重要である。 福島第一原子力発電所事故では,交流電源を長期にわたって復旧させることができず,これに備えるべき非常用直流電源の蓄電容量が十分に確保できなかったために冷却機能等を長時間維持することができなかったことを踏まえると,交流電源が使用できない状況下では直流電源を維持することが必要不可欠である。 (ウ)グレ 流電源の蓄電容量が十分に確保できなかったために冷却機能等を長時間維持することができなかったことを踏まえると,交流電源が使用できない状況下では直流電源を維持することが必要不可欠である。 (ウ)グレーディッドアプローチ及び福島第一原子力発電所事故の教訓を踏ま えた発電用原子炉施設の電源に係る規制の考え方について(乙273の1)我が国の原子力規制のみならず,国際原子力機関(IAEA)の安全基準や米国をはじめとする多くの国の原子力規制においては,原子力発電所全体としての安全性を確保する方法として,グレーディッドアプローチが採用されている。 グレーディッドアプローチとは,「規制体系あるいは安全系のような管理又は制御するシステムに対し,適用される管理又は制御上の手段や条件の厳格さが,管理又は制御の喪失の起こり易さと起こりうる影響,及び管理又は制御の喪失に係るレベルと,実行可能な範囲で釣り合っていること」,すなわち重要度に応じて要求の程度を変化させるアプローチをいい,これを外部電源の問題に適用すると,事故時の安全機能の確保に関して原子力発電所外部の電源に依存することをしないで,原子力発電所内に信頼できる非常用電源を確保する方法ないし設計思想をすることを意味するところ,このような方法ないし設計思想は,国際原子力機関(IAEA)が福島第一原子力発電所事故から得られた教訓を基に見直した国際原子力機関(IAEA)基準「原子力発電所の安全:設計」(乙246)においても見直されていない。 新規制基準における設置許可基準規則では,グレーディッドアプローチ及び福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえ,発電用原子炉施設の電源に係る主な規制は以下のとおり定められている。 a設計基準対象施設に係る規制(a)設計基準対象施設の共通要因故障を防止すること(設置許可基 一原子力発電所事故の教訓を踏まえ,発電用原子炉施設の電源に係る主な規制は以下のとおり定められている。 a設計基準対象施設に係る規制(a)設計基準対象施設の共通要因故障を防止すること(設置許可基準規則3条~9条)非常用電源設備を含む設計基準対象施設は,津波等による共通要因故障によりその安全機能を喪失することがないように設計することを要求している。 具体的には,前記のとおり,設計基準対象施設を十分に支持できる地盤に設けること(設置許可基準規則3条),地震による損傷の防止(同4条),津波による損傷の防止(同5条),想定される自然現象による外部からの衝撃による損傷の防 止(同6条),発電用原子炉施設への人の不法な侵入等の防止(同7条),火災による損傷の防止(同8条),溢水による損傷の防止等(同9条)を要求している。 (b)発電用原子炉施設には,非常用電源設備を設けること(設置許可基準規則33条2項)。 非常用電源設備として,事故等の発生時には,炉心冷却のためのポンプ等へ電力の供給を行う交流動力電源の非常用ディーゼル発電機,計測制御用の機器等へ電力の供給を行う蓄電池等がある。 これに対し,外部電源系による電力供給は,遠く離れた発電所等から電線路等を経由して供給されるものであるが,長大な電線路全てについて高い信頼性を確保することは不可能である上,電力系統の状況によりその信頼性が影響を受けるため,原子力発電所側から管理することはできない。また,原子力発電所外の電線路等は同発電所の設備ではないことからみても,事故等の発生時において,外部電源系による電力供給を期待すべきではない。 (c)非常用電源設備及びその附属設備は,多重性または多様性を確保し,及び独立性を確保し,その系統を構成する機械等の単一故障が発生した場合であっても,事故等に対処す 電力供給を期待すべきではない。 (c)非常用電源設備及びその附属設備は,多重性または多様性を確保し,及び独立性を確保し,その系統を構成する機械等の単一故障が発生した場合であっても,事故等に対処するための設備がその機能を確保するために十分な容量を有すること(設置許可基準規則33条7項)。 十分な容量とは,必要とする電力を供給できる発電容量があること及び外部電源系が長期間復旧できないことに備え,発電所への燃料補給等の外部支援がなくとも,7日間連続で非常用ディーゼル発電機等を運転するのに必要な容量以上の燃料を敷地内に貯蔵できることである。 貯蔵する燃料を7日間分以上としたのは,福島第一原子力発電所事故において,免震重要棟のガスタービン発電機の燃料供給に3日程度を要したため,より保守的に,少なくとも7日間と設定したものである。 (d)原子力発電所の設計基準対象施設に接続する電線路のうち少なくとも二回 線は,それぞれ互いに独立したものであって,当該設計基準対象施設において受電可能なものであり,かつ,それにより当該設計基準対象施設を電力系統に連系すること(設置許可基準規則33条4項)。 電線路のうち少なくとも一回線は,設計基準対象施設において他の回線と物理的に分離して受電できるものでなければならない(設置許可基準規則33条5項)。 設計基準対象施設に接続する電線路は,同一の原子力発電所にある2つ以上の発電用原子炉施設を電力系統に連携する場合には,いずれの二回線が喪失した場合においても電力系統からこれらの発電用原子炉施設への電力の供給が同時に停止しないものでなければならない(設置許可基準規則33条6項)。 事故等の発生時には,信頼性の低い外部電源系には期待すべきではないものの,その信頼性の向上を図るため,原子力発電所内に接続する電線路を,少なく いものでなければならない(設置許可基準規則33条6項)。 事故等の発生時には,信頼性の低い外部電源系には期待すべきではないものの,その信頼性の向上を図るため,原子力発電所内に接続する電線路を,少なくとも二回線は独立したものとし,一回線が機能を喪失したとしても,残りの回線で電力の供給ができるように要求している。 上記電線路は,単一の送電鉄塔の倒壊等により同時に機能を喪失しないよう,少なくとも一回線は,別の送電鉄塔に架線することにより,他の回線と物理的に分離して受電できるものとすること,同一の変電所に接続するものでないこととしている。 原子力発電所内に複数号機の発電用原子炉が設置されているような場合には,三回線以上の電線路を発電所へ接続し,その各電線路から供給される電力が,各号機の発電用原子炉施設全てに接続できるように所内で接続し,そのうち二回線が喪失しても複数の発電用原子炉施設が同時に外部電源喪失に至らないように設計することを要求している。 b発電用原子炉施設には,全交流動力電源喪失時から重大事故等に対処するために必要な電力の供給が交流動力電源設備から開始されるまでの間,原子炉を停 止し,炉心の冷却や原子炉格納容器の健全性を確保のための設備が動作することができるよう,これらの設備の動作に必要な容量を有する蓄電池等の電源設備をもうけること(設置許可基準規則14条)。 非常用ディーゼル発電機が機能を喪失し,また外部電源系による給電もできない全交流動力電源喪失の場合,重大事故等に対処するための電源設備からの電力が供給されるまでの一定時間,電力を使用しない冷却方法(BWRでは原子炉隔離時冷却ポンプ,PWRではタービン動補助給水ポンプ。いずれも炉心等からの蒸気を駆動源とする。)で炉心を冷却できるよう,当該ポンプを制御するために必要な十分な容 用しない冷却方法(BWRでは原子炉隔離時冷却ポンプ,PWRではタービン動補助給水ポンプ。いずれも炉心等からの蒸気を駆動源とする。)で炉心を冷却できるよう,当該ポンプを制御するために必要な十分な容量の非常用直流電源を備えることを要求している。 (エ)重大事故等対処施設に係る規制基準(乙273の1)重大事故等対処施設に係る規制基準は,共通要因によって設計基準事故対処設備の安全機能と同時にその機能が損なわれないよう,可能な限り多様性を考慮する(設置許可基準規則解釈43条第4項)とともに,発電用原子炉施設には,設計基準事故対処設備の電源が喪失したことにより重大事故等が発生した場合において炉心の著しい損傷,原子炉格納容器の破損等を防止するために必要な電力を確保するために必要な設備を設けることを要求している(設置許可基準規則57条)。 上記要求に対する解釈は,以下のとおりである(設置許可基準規則解釈57条)。 a代替電源設備を設けること(a)可搬型代替電源設備(電源車及びバッテリ等)を配備すること(b)常設代替電源設備として交流電源設備を設置すること(c)設計基準事故対処設備に対して,独立性を有し,位置的分散を図ること全交流動力電源喪失に至った場合,非常用ディーゼル発電機に代わって交流動力電源として機能するための代替電源設備として,常設型の空冷式非常用ディー ゼル発電機や,可搬型の電源車,バッテリー等を用意することとしている。 これらの代替電源設備は,非常用ディーゼル発電機等の設計基準事故対処設備と,共通の要因によって同時に機能が喪失することがないよう,独立性を有し,位置的分散を図るものとすることとしている。 b所内常設蓄電式直流電源設備は,負荷の切り離しを行わずに8時間,電気の供給が可能であること。 その後必要な負荷以外を切り ことがないよう,独立性を有し,位置的分散を図るものとすることとしている。 b所内常設蓄電式直流電源設備は,負荷の切り離しを行わずに8時間,電気の供給が可能であること。 その後必要な負荷以外を切り離して残り16時間の合計24時間にわたり電気の供給を行うことが可能であること。 24時間にわたり,重大事故等の対応に必要な設備に電気(直流)の供給を行うことが可能である可搬型直流電源設備を整備すること。 全交流動力電源,非常用直流電源設備等の機能が喪失し,また代替電源設備も機能が喪失した場合は,蒸気を動力源とするポンプにより炉心冷却を行う設計が要求されている。当該ポンプを制御し,その他必要な設備を作動させるための直流電源として,24時間にわたり電気の供給が可能な,常設蓄電池式直流電源設備及び可搬型直流電源設備を用意することが要求されている。 c複数号機設置されている工場等では,号機間の電力融通を行えるようにあらかじめケーブル等を敷設し,手動で接続できること。 発電用原子炉が複数号機設置されている発電所においては,ある号機の非常用電源,代替電源設備等が機能喪失し,電力が供給できなくなった場合に,その他の号機の非常用ディーゼル発電機などから電力が融通できるよう,あらかじめケーブル等を敷設しておくこと,手動でケーブルを接続し,電力供給できるようにしておくことが要求されている。 d所内電気設備は,代替所内電気設備を設けることなどにより共通要因で機能を失うことなく,少なくとも1系統は機能の維持及び人の接近性の確保を図ること。 各種の安全設備に電力を供給するための配電盤等を備えた所内電気設備について,代替所内電気設備を設けることなどにより,たとえば津波による水没等の共通の要因によって同時に機能が喪失することがないようにし,また,所内電気設備または るための配電盤等を備えた所内電気設備について,代替所内電気設備を設けることなどにより,たとえば津波による水没等の共通の要因によって同時に機能が喪失することがないようにし,また,所内電気設備または代替所内電気設備のどちらかには,人がたどり着き操作等ができるようにすることとしている。 e発電用原子炉施設には,原子炉冷却材圧力バウンダリが高圧の状態であって,設計基準事故対処設備が有する発電用原子炉の冷却機能が喪失した場合においても炉心の著しい損傷を防止するため,発電用原子炉を冷却するために必要な設備を設けなければならない(設置許可基準規則45条)。 上記要求の解釈として,現場での人力による弁の操作により,原子炉隔離時冷却系(RCIC)等の起動及び十分な期間の運転継続を行うために必要な設備を整備することとしている。 全交流動力電源及び直流電源が全て喪失した場合においても,電気を動力源としないポンプを稼働させるための弁を人力で操作し,原子炉冷却材圧力バウンダリの減圧対策及び原子炉冷却材圧力バウンダリ低圧時の冷却対策の準備が整うまでの間,炉心の冷却ができることを要求している。 (オ)外部電源系の安全重要度及び耐震重要度について(乙273の1)a前記のとおり,外部電源系による電力供給は,遠く離れた発電所等から電線路等を経由して供給されるものであるが,長大な電線路等や経由する変電所全てについて高い信頼性を確保することは事実上不可能である上,電力系統の運用の状況によりその信頼性が影響を受けるため,原子力発電所側から十分な管理をすることができない。また,原子力発電所外の電線路等の設備は,発電用原子炉施設の設備ではないことから,事故等の発生時は,外部電源系による電力供給には期待すべきではない。 bそうであるから,外部電源系のうち,原子力発電所内にある 力発電所外の電線路等の設備は,発電用原子炉施設の設備ではないことから,事故等の発生時は,外部電源系による電力供給には期待すべきではない。 bそうであるから,外部電源系のうち,原子力発電所内にある開閉所等の設備 は,非常用ではない電源供給機能を有する安全施設であり,重要度分類審査指針において,PS-3(異常状態の起因事象となるものであって,PS-1及びPS-2以外の構築物,系統及び機器)に分類され,外部電源系のうち,原子力発電所外にある電線路等は,重要度分類の対象外であるものと定められている。 なお,事故等の発生時には,非常用交流動力電源である非常用ディーゼル発電機から電力の供給を行う設計となっており,非常用ディーゼル発電機による電力供給機能は,MS-1に分類されている。 cまた,上記同様に,耐震重要度分類の考え方に従えば,外部電源系のうち,原子力発電所内にある開閉所等の設備は非常用電源設備ではないため,Sクラスに属する施設及びBクラスに属する施設以外の一般産業施設または公共施設と同等の安全性が要求される施設に該当し,Cクラスに分類され,外部電源系のうち,原子力発電所外にある電線路等は,耐震重要度分類の対象外であるものと定められている。 なお,事故発生時には,非常用電源設備として,非常用ディーゼル発電機から電力の供給を行う設計となっており,非常用ディーゼル発電機はSクラスに分類されている。 (カ)本件各原子力発電所における電源設備(空冷式非常用発電装置,電源車等)対策(乙76,乙273の1)a本件各原子力発電所では,発電機が停止し,かつ外部電源を喪失した場合であっても,必要な設備を作動できるように非常用ディーゼル発電機が設置されているが,万一,この非常用ディーゼル発電機までその機能を喪失する事態(全交流動力電源喪失)に至っ かつ外部電源を喪失した場合であっても,必要な設備を作動できるように非常用ディーゼル発電機が設置されているが,万一,この非常用ディーゼル発電機までその機能を喪失する事態(全交流動力電源喪失)に至った場合においても,なお必要な電力を供給できるように,代替の電源として,空冷式非常用発電装置,電源車,蓄電池,号機間電力融通恒設ケーブル等が備えられている。 これらの電源設備のうち,空冷式非常用発電装置及び電源車は,空冷式のディ ーゼル発電機であり,本件各原子力発電所の各号機に2台ずつ(電源車はさらに各号機共用の予備として1台),いずれも非常用ディーゼル発電機から離れた位置に分散して配置されている。 また,電源車は,空冷式非常用発電装置からも離れた位置に分散して配置されている。 各設備の配置位置の標高については,空冷式非常用発電装置はいずれも約32m,電源車は本件原子力発電所3号機用2台が約12mと約32m,本件原子力発電所4号機用2台が約22mと約32m,予備1台が約7mである。 b全交流動力電源喪失に至った後,これらの代替電源による電力供給が開始されるまでの間に必要な電力を供給する設備として,蓄電池(安全防護系用)を本件各原子力発電所の各号機の原子炉制御建屋内(津波防護対策済み)に2組備えている。 また,前記のとおり,福島第一原子力発電所事故では,津波の浸水によって電源盤等の電気設備が機能喪失し,「安全上重要な施設・設備」が受電できなくなったことを踏まえ,本件各原子力発電所には,所内の電気設備が機能喪失した場合に備えて,恒設の代替所内電気設備が新たに設けられている。同設備は,原子炉補助建屋の上部(標高17.5m)に設置されている。 (キ)まとめ以上によれば,新規制基準の定めた外部電源系の安全重要度及び耐震重要度等の安全確保対策は,グ 新たに設けられている。同設備は,原子炉補助建屋の上部(標高17.5m)に設置されている。 (キ)まとめ以上によれば,新規制基準の定めた外部電源系の安全重要度及び耐震重要度等の安全確保対策は,グレーディッドアプローチ及び福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえた適切な内容であり,不合理であるとはいえない。また,新規制基準を踏まえた抗告人の対応に不合理な点があるとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (7)残余のリスクについてア相手方らの主張 平成18年耐震設計審査指針では,地震学的見地からは,基準地震動を上回る強さの地震動が生起する可能性は否定できないとし,これを「残余のリスク」と称し,「残余のリスク」の存在を十分認識し,これを合理的に実行可能な限り小さくするための努力が払われるべきであるとされていた(解説1(2))が,新規制基準では,「残余のリスク」の概念が見当たらない。 イ検討「残余のリスク」とは,策定された地震動を上回る地震動の影響が施設に及ぶことにより,施設に重大な損傷事象が発生すること,施設から大量の放射性物質が放散される事象が発生すること,あるいはそれらの結果として周辺公衆に対して放射性被ばくによる災害を及ぼすことのリスクをいう(平成18年耐震設計審査指針・(解説)Ⅰ.基本方針について・(2))。 これについて,原子力規制委員会は,平成18年耐震設計審査指針に記載されていた「残余のリスク」について,「策定された地震動を上回る強さの地震動が生起する可能性が否定できないことから,「残余のリスク」の存在を十分認識しつつ,それを合理的に実行可能な限り小さくするための努力が払われるべき旨を述べていたものであり,安全審査に当たっての基準とはされておらず,規制要求の対象とはされていませんでした。 の存在を十分認識しつつ,それを合理的に実行可能な限り小さくするための努力が払われるべき旨を述べていたものであり,安全審査に当たっての基準とはされておらず,規制要求の対象とはされていませんでした。」とした上で,新規制基準においては,「仮に基準地震動を超えるような地震動が発生し,重大事故等が発生した場合においても,これに対処するための設備を整備するとともに,関連する手順書,体制を整備することを求めています」との見解を示している(乙275)。 このように,新規制基準においても,策定された基準地震動を上回る強さの地震動が生起する可能性を考慮した対応が求められており,「残余のリスク」の概念を用いた規定が存在しないからといって,新規制基準が不合理であるとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (8)汚染水対策についてア相手方らの主張新規制基準は汚染水対策に関する考察を全く欠く極めて不十分なものであるし,本件各原子力発電所の汚染水対策も同様である。 イ検討(乙14の2,乙76)新規制基準は,原子力発電所からの汚染水を発生させないことが重要であるとの観点に基づき,まず,設計基準の段階において,仮に炉心が損傷した場合でも放射性物質が原子力格納容器から流出しないための厳格な対策を要求している。 また,放射性物質を含んだ汚染水の処理活動を含む,重大事故等の発生後の中長期的な対応に備えた体制の整備について,技術的能力基準を策定し,その適合性を審査している。 原子力規制委員会は,本件各原子力発電所について,設計基準に関する新規制基準の適合性とともに,技術的能力基準の適合性を確認している。 なお,この点につき,原子力規制委員会は,「東京電力福島第一原子力発電所におけるような汚染水については,まず,これを発生させないことが重 基準の適合性とともに,技術的能力基準の適合性を確認している。 なお,この点につき,原子力規制委員会は,「東京電力福島第一原子力発電所におけるような汚染水については,まず,これを発生させないことが重要であり,新規制基準では,仮に,炉心が損傷した場合でも放射性物質が格納容器から流出しない対策を要求しています。また,重大事故等の中長期的な対応が必要となる場合に備えて,適切な対応を検討できる体制を整備する方針であることを確認しています」との見解を示している(乙40)。 以上によれば,汚染水対策に関する新規制基準の定めが不合理であるとはいえないし,本件各原子力発電所における汚染水対策が安全性を欠如しているとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (9)フィルタ付ベントについてア相手方らの主張 新規制基準は,フィルタ付ベントに弁操作機構(ラプチャー・ディスク)の設置を義務付ける内容となっていない。 イ検討(乙76)(ア)フィルタ付ベントとは,原子炉格納容器内の圧力の異常上昇に対し,原子炉格納容器を保護するため,原子炉格納容器内の気体を環境中に放出するための設備である。「ベント」とは排出口であり,金属フィルタ等を内蔵したフィルタを取り付ける(フィルタ付のベント設備とする)ことで,放射性物質を除去,低減しつつ環境中に放出する設計となっている。 (イ)新規制基準施行前は,上記のようなフィルタ付ベントを設置することは要求されておらず,また,そもそも特定重大事故等対処施設のような施設を設けることについても要求されていなかった。 これに対し,新規制基準における設置許可基準規則では,故意による大型航空機の衝突等のテロリズムに対処するための施設として,設置許可基準規則42条において,特定重大事故等対処施設の設置が新たに った。 これに対し,新規制基準における設置許可基準規則では,故意による大型航空機の衝突等のテロリズムに対処するための施設として,設置許可基準規則42条において,特定重大事故等対処施設の設置が新たに要求されている。 そして,上記施設が有すべき「原子炉格納容器の破損を防止するために必要な設備」には「原子炉格納容器の過圧破損防止機能」が求められており,同機能を有する設備の一例として「格納容器圧力逃がし装置」が示されている(設置許可基準規則解釈42条3項(a)ⅴ)。フィルタ付ベントは,この「格納容器圧力逃がし装置」に該当するものである。 フィルタ付ベントは,このほか,設置許可基準規則50条で要求されている原子炉格納容器の加圧破損を防止するための設備としても位置づけられる(設置許可基準規則50条及び同解釈50条1項a))。 しかし,設置許可基準規則50条では,原子炉格納容器の過圧破損を防止するための原子炉格納容器内の圧力及び温度を低下させるための設備として,「格納容器圧力逃がし装置」又は「格納容器再循環ユニット」又はこれらと同等以上の効 果を有する措置を行うための設備の設置が要求されており(同解釈50条1項a)),フィルタ付ベントはこのうち「格納容器圧力逃がし装置」に該当するが,本件各原子力発電所においては,これとは別の「格納容器再循環ユニット」が設置されており,これにより同条の要求を満たしている。 (ウ)以上によれば,抗告人は,新規制基準の上記要求事項を踏まえ,原子炉格納容器内の圧力及び温度を低下させるための設備として,「格納容器再循環ユニット」を設置しているから,フィルタ付ベントを用いていないからといって,本件各原子力発電所の安全性が欠如しているとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (10)コアキャッチャ を設置しているから,フィルタ付ベントを用いていないからといって,本件各原子力発電所の安全性が欠如しているとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (10)コアキャッチャーの装備等についてア相手方らの主張欧州電力事業者要求仕様(EUR)では,コアキャッチャーの装備,航空機衝突に耐えるための格納容器の二重化,12時間規則の採用等があり,新規制基準よりもはるかに厳しい規制内容である。 イ検討(乙90)「欧州電力事業者要求仕様(EUR)」,すなわち「TheEuropeanUtilityRequirements」は,欧州の電力会社が自主的に定めた規格であり,規制要求ではない。 この点に関して,原子力規制委員会は,「安全系4系統,コアキャッチャー,二重格納容器を新規制基準では要求しておらず不十分である。」との意見に対して,「新規制基準においては,個別の機器の設置を求めるのではなく,炉心損傷防止対策や格納容器破損防止対策等のために必要な機能を求めています。規制基準は,満足すべき性能水準を要求し,それを実現する『技術』は指定しないのが国際的に一般的な考え方です。規制要求を満たすのであれば,ご指摘の設備に限らず,他の方法でも問題ありません。なお,ご指摘の欧州の技術は,現在建設中の原子炉に限られたものであり,欧州でも既設の原子炉に対してご指摘のあった技術の 導入が義務付けられた例はありません。」と回答している。また,「欧州の基準と同様に,炉心損傷後12時間は格納容器を保護する操作は不要とすべき。」との意見に対して,「新規制基準においては,重大事故等に対して,必要な設備のみならず,手順書の整備や人員の確保,訓練の実施等も要求しています。なお,ご指摘の欧州の基準は,新設の原子炉に係る事業者の自主的なものであり,欧州 規制基準においては,重大事故等に対して,必要な設備のみならず,手順書の整備や人員の確保,訓練の実施等も要求しています。なお,ご指摘の欧州の基準は,新設の原子炉に係る事業者の自主的なものであり,欧州でも全ての既設の原子炉に対して義務付けるような規制基準にはなっていません。」と回答している(乙90)。 以上のとおり,新規制基準は,コアキャッチャーのような個別の特定の「機器」の設置を要求するのではなく,炉心の溶融や格納よ容器の破損を防止するなどのために必要な「機能」を要求している。すなわち,新規制基準は,規制の要求水準を満たすものであれば,特定の設備によらずに他の方法によって要求を満たすことも可能とする趣旨であるといえる。そうすると,新規制基準が不合理であるとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (11)有効性評価の対象となる放射線物質についてア相手方らの主張新規制基準は,重大事故等対策の有効性を評価する際に放出量を確認する放射性物質をセシウム137のみとし,ヨウ素131,クリプトン85等の放射性物質を評価対象としていないのは不合理である。 イ検討(ア)原子力規制委員会は,新規制基準が放射性物質の放出量をセシウム137で評価することについて,「原子力発電所のサイトの近隣に住む住民が長期避難を余儀なくされる可能性がある放射性物質を基準とする観点から,半減期が短い希ガス,ヨウ素などではなく,想定される放出量が多く,半減期が長いセシウム137の放出量を元に評価をすることを求めている」,「長期避難を防ぐという観点からすれば,重大事故発生時におけるセシウム137の総放出量が100テラベクレル を下回れば,セシウム137以外の放射性物質を考慮しても,長期避難を余儀なくされる事態となる見込みは少ないと考えられ すれば,重大事故発生時におけるセシウム137の総放出量が100テラベクレル を下回れば,セシウム137以外の放射性物質を考慮しても,長期避難を余儀なくされる事態となる見込みは少ないと考えられる」とし(乙273の1),重大事故等対策の有効性評価においては,長期避難の防止という観点から半減期の長いセシウム137を選定したとしている。 そして,イギリス,スウェーデン等をはじめとする諸外国においても,重大事故発生時の放射性物質の放出量を指標にしているところ,フィンランドでは,日本と同様のセシウム137放出量100テラベクレルを規制値として設定していることが認められる(乙273の1)。 (イ)科学的・技術的知見からみると,原子力発電所の重大事故によって放出される放射性物質の種類とその割合は,ほぼ一定であるとされているから,セシウム137の放出量を一定の水準に抑える規制により,ヨウ素131や希ガスであるクリプトン85及びキセノン135も一定の水準に抑えられることになる。 すなわち,原子炉の運転を続けると,核分裂等により,原子炉内に様々な種類の核分裂生成物(放射性物質)が蓄積されていくところ,炉心の熱出力と原子炉の運転時間が定まれば,ある時点における,ある種類(核種)の核分裂生成物の蓄積量が定まることが,科学的・技術的知見として一般的に認められている。そして,炉心の熱出力が大きく,原子炉の運転時間が長いと,それだけ核分裂生成物の蓄積量も多くなることも認められている。 (ウ)米国原子力規制委員会は,原子力発電所において放射性物質の異常放出に至る重大事故が発生した際に,炉心に存在する核分裂生成物のうち原子炉容器外に放出されるものの割合がどの程度になるかを,核種ごとに示した知見を公表しているところ(乙217の1・2),この知見によると,事故時点での が発生した際に,炉心に存在する核分裂生成物のうち原子炉容器外に放出されるものの割合がどの程度になるかを,核種ごとに示した知見を公表しているところ(乙217の1・2),この知見によると,事故時点での原子炉内における,ある核種の核分裂生成物の蓄積量が定まれば,その核種の核分裂生成物の放出量が推計することができる。 (エ)以上の原子炉内における核分裂生成物の蓄積量に関する知見と,この蓄積量に対する放出量の割合に関する知見を踏まえると,どの核種も,炉心の熱出力及 び原子炉の運転時間がいずれも最大の値をとる場合に,事故時における核分裂生成物の放出量が最大となることが認められる。また,炉心の熱出力及び原子炉の運転時間が定まれば,核種ごとの核分裂生成物の放出量が定まるから,例えば,セシウム137の放出量の最大値が定まれば,ヨウ素131や希ガス等といった他の核種の放出量の最大値も一定の値として定まることになる。 そうすると,セシウム137の放出量の最大値を一定の値以下に規制すると,ヨウ素131,希ガス等といった他の核分裂生成物(放射性物質)の放出量も一定の値以下に制限されるという関係にあることが認められる。 ちなみに,本件各原子力発電所における重大事故等対策の有効性評価では,解析の結果,セシウム137の放出量は4.2テラベクレルとなったことが認められる(乙76)。 (オ)以上によれば,重大事故等対策における有効性評価をセシウム137の放出量で確認するという新規制基準の定めは,諸外国の規制動向等を踏まえて策定されたものということができるし,また,原子力発電所で重大事故が発生した場合に放出される放射性物質の種類及び割合は概ね一定であるという科学的・技術的知見に照らしても合理的なものといえる。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 ( 電所で重大事故が発生した場合に放出される放射性物質の種類及び割合は概ね一定であるという科学的・技術的知見に照らしても合理的なものといえる。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 (12)炭素偏析に関する抗告人の調査についてア相手方らの主張抗告人の行った炭素偏析に関する調査は,炭素濃度を現実に計測していない点や鋳造鋼を対象としない点等において不十分であり,本件各原子力発電所の原子炉容器等に使用されている鋼材に含まれる炭素濃度が高く,強度不足となっているおそれがある。 イ検討(ア)炭素偏析の可能性に関する調査の経緯(甲334,甲335,乙392~398) a平成26年,仏国アレバ社は,クルゾ・フォルジュ社(以下,「クルゾ社」という。)が鍛造により製造した原子炉容器上蓋の頂上部に,規格で求められる靭性(ねばり強さ)を満足できない部分が存在することを確認し,その原因は「炭素偏析」であることを,仏国の規制機関である原子力安全局(ASN)に報告した。 なお,「鍛造」とは,溶鉱を凝固させた鋼塊を鍛錬(鋼材を叩くことにより鋼塊内部の微小な空隙をつぶし,圧着させる作業をいう。)により整形することで製品形状を得る製造方法である。他方,後記「鋳造」とは,製品形状を模した型に溶鉱を流し込み固めることで製品形状を得る製造方法である。 b原子炉容器上蓋等の鍛造鋼は,鋳型に溶鋼を注入して製造される巨大な鋼塊を,「鍛造」する,すなわち加熱し,鍛錬することにより製造されるが,クルゾ社は,この巨大な鋼塊を冷却する際に生じる炭素偏析した部位を適切に除去しなかったと考えられている。 すなわち,鋼塊は,鋳型に溶鋼を注入することにより製造されるところ,注入された溶鋼は,鋳型を介して外気により冷却されて周辺部から凝固していく。その際,溶鋼には炭 に除去しなかったと考えられている。 すなわち,鋼塊は,鋳型に溶鋼を注入することにより製造されるところ,注入された溶鋼は,鋳型を介して外気により冷却されて周辺部から凝固していく。その際,溶鋼には炭素が含まれているが,炭素が溶け込むことのできる量は液体に比べて固体のほうが小さいため,この凝固の過程で,固体部に溶け込めなくなった炭素が,液体部の溶鋼に吐き出され,溶鋼の炭素の濃度が徐々に高まるため,その結果,最後に固まる部分で炭素の濃度が高くなる。 このように鋼塊の炭素濃度が局部的に高い領域が生じることを炭素偏析といい,靭性(ねばり強さ)等の強度を低下させる。そこで,溶鋼を注入する鋳型の上部について,熱が逃げないようにレンガ等で保温し,最後に凝固させることでその部分に炭素偏析部を生じさせている。その上で,最終製品である原子炉容器上蓋等に炭素偏析部が混入しないように,鋼塊の段階,あるいは最終製品に成形するまでの段階で炭素偏析部を除去することになる。 炭素偏析は,溶鋼の凝固にかかる時間が長いほど,炭素が固体部から液体部へ移動しやすくなるため顕著になる。したがって,冷却に長時間を要する原子炉容器上 蓋等に用いられるような大型の鋼塊では,炭素偏析に対する注意が特に必要となるが,クルゾ社は,「炭素偏析」した部位を十分に除去できていなかったものと考えられる。 c仏国電力公社(EDF)は,この問題を受け,同社の原子力発電所において同様の問題が発生しているかどうかを確認した。その結果,クルゾ社及び日本鋳鍛鋼株式会社(以下「JCFC」という。)が鍛造の方法により製造した蒸気発生器の水室鏡(一次側鏡板)(蒸気発生器の下部にあるドーム状の部位)において,靭性等の強度を低下させる炭素濃度の高い領域を持つ鍛造鋼が使用された可能性があることが判明したため,当該確 製造した蒸気発生器の水室鏡(一次側鏡板)(蒸気発生器の下部にあるドーム状の部位)において,靭性等の強度を低下させる炭素濃度の高い領域を持つ鍛造鋼が使用された可能性があることが判明したため,当該確認結果を仏国の原子力安全局(ASN)に報告した。 d平成28年8月24日,原子力規制委員会は,炭素濃度の高い領域が残っている可能性がある鋼塊部分を含んだ鍛造鋼の使用の有無等について確認する必要があるとして,抗告人を含む日本国内の発電用原子炉設置者に対して,①(PWRについては)原子炉容器,蒸気発生器,加圧器について製造方法及び製造メーカーを調査すること,②その調査の結果,鍛造鋼が使用されている場合には,当該鍛造鋼が規格(JIS等)を上回る炭素濃度領域を含む可能性について評価し,その結果を報告することを指示した。 e抗告人は,原子力規制委員会の当該指示を受けて,下記(イ)のとおり,本件各原子力発電所を含む各原子力発電所の調査を行った。その結果,鍛造鋼に規格(JIS等)を上回る炭素濃度領域を含む可能性がないことを確認し,平成28年10月31日,原子力規制委員会に対して当該調査結果を報告した(乙394)。 f原子力規制庁は,抗告人を含む各発電用原子炉設置者からの報告内容,及び製造メーカー等との面談において確認した,製造方法の確認結果等を取りまとめ,平成28年11月22日に開催された原子力規制委員会の会合において,同委員会に対して「製品中に規格で定められた炭素濃度を超えるような部分が残っているおそれはないと評価できる」(乙396)と報告し,原子力規制委員会はこれを了承した(乙395)。 (イ)抗告人の本件各原子力発電所に関する調査・評価内容a製造方法及び製造メーカーの調査(a)原子力規制委員会の指示を受けて,抗告人は,本件各原子力発電 これを了承した(乙395)。 (イ)抗告人の本件各原子力発電所に関する調査・評価内容a製造方法及び製造メーカーの調査(a)原子力規制委員会の指示を受けて,抗告人は,本件各原子力発電所の原子炉容器(上蓋・下鏡〔下部鏡板〕・胴部〔上部胴・下部胴・トランジションリング〕),蒸気発生器(一次側鏡板)及び加圧器(鏡板)について,製造方法及び製造メーカーの調査を行った。なお,「鏡」とは容器にとりつけられたドーム状の部位をいい,原子炉容器の「下鏡」とは原子炉容器下部のドーム状の部位をいう。他方,原子炉容器の上部は,燃料取り出し等ができるように蓋構造となっているため「上蓋」と呼称されている。 (b)その結果,調査対象の機器のうち原子炉容器(上蓋・下鏡〔下部鏡板〕・胴部〔上部胴・下部胴・トランジションリング〕),及び加圧器(鏡板)については,いずれも,株式会社日本製鋼所(以下「JSW」という。)が製造した鍛造鋼もしくは鋼板が用いられていることを確認した。また,蒸気発生器(一次側鏡板)は,原子力規制委員会が評価を指示していない「鋳造」の方法により製造した鋼材(以下「鋳造鋼」という。)であり,その製造メーカーはJCFCであることを確認した。 b鍛造鋼に炭素偏析部が残存する可能性に関する評価(a)評価方針抗告人は,上記調査結果を踏まえ,鍛造鋼の使用が確認された部位を評価対象とし,また,原子炉容器等で用いられている鋼板についても,鋼塊を成形するという点で鍛造と製造方法が類似していることから,評価対象とした。 抗告人は,上記評価対象について,規格(JIS等)を上回る炭素濃度領域を含む可能性の有無について評価を行うこととし,4段階の評価ステップを以下のとおり設定し,いずれかの評価ステップを満足した場合は炭素偏析部が鍛造鋼もしくは鋼板に残存す JIS等)を上回る炭素濃度領域を含む可能性の有無について評価を行うこととし,4段階の評価ステップを以下のとおり設定し,いずれかの評価ステップを満足した場合は炭素偏析部が鍛造鋼もしくは鋼板に残存するおそれはないと評価することとした。 ①評価ステップA リング形状鍛造鋼および鋼板の製造時に,鋼塊の段階で鋼塊頂部や鋼塊軸心部(リング形状鍛造鋼の場合)を切除することで,鋼塊頂部に生ずる炭素偏析部が確実に除去される製造要領となっていることを確認する。 ②評価ステップB製造時に,炭素偏析が懸念される位置で炭素濃度分析が実施されており,規格要求値を満足していることを確認する。 ③評価ステップCモックアップ(過去に同等の手順で製造され,製品として納入されたものの総称)について,炭素濃度が規格要求値を十分満足することが確認された製造方法で製造されていることを確認する。 ④評価ステップD製品の炭素偏析が懸念される位置において,鋼塊頂部から製品までに除去された量(切捨量+機械加工量)を確認し,炭素濃度予測式から求められる炭素濃度が規格要求値を満足していることを確認する。 (b)評価結果①評価ステップAの条件抗告人は,JSWが保有する製造記録や関連する技術論文等を確認し,リング形状鍛造鋼を用いる原子炉容器の上部胴及びトランジションリングと,鋼板を用いる原子炉容器の下部胴,下部鏡板及び加圧器の鏡板については,鋼塊の段階で炭素偏析部が確実に除去される製造要領となっていることを確認したことから,評価ステップAの条件を満足するものとして,炭素偏析部が残存するおそれはないと判断した。 具体的には,リング形状鍛造鋼の鍛造工程において,鋼塊の段階で鋼塊頂部を除去した上で,さらに鋼塊軸心部をポンチ(くり抜くための器具)により穴を開けて除去するところ, 存するおそれはないと判断した。 具体的には,リング形状鍛造鋼の鍛造工程において,鋼塊の段階で鋼塊頂部を除去した上で,さらに鋼塊軸心部をポンチ(くり抜くための器具)により穴を開けて除去するところ,大型の鋼塊(350t級)については,炭素偏析部が確実に除去できていることを製造時の化学成分分析結果から確認した。 なお,炭素偏析は,冷却に時間を要する大型の鋼塊の方が顕著であるところ,大型の鋼塊(350t級)よりも小さく,炭素偏析が生じる範囲も小さくなる鋼塊であっても,同じ直径のポンチを用いて鋼塊軸心部を除去し,リング形状鍛造鋼を製造していることを確認した。このため,大型の鋼塊(350t級)よりも小さな鋼塊を使用し,上記製造要領で製造された本件対象部位(原子炉容器の上部胴及びトランジションリング)については,炭素偏析部はより確実に除去されると判断できたことから,炭素偏析部が残存するおそれはないと評価した。 また,鋼板の鍛造工程においては,鋼塊の段階で鋼塊頂部を除去するところ,炭素偏析が生じやすい大型の鋼塊(220t級)から製造された鋼板について,製造時の化学成分分析の結果により,炭素偏析部が確実に除去できていることを確認した。鋼塊の定量的な化学成分分析結果等を基にして,鋼塊サイズ毎に鋼塊頂部を除去する量を設定することにより,いずれの鋼塊サイズにおいても炭素偏析部は確実に除去される製造方法が確立されていることが確認できたことから,JSWで製造された鋼板に炭素偏析部が残存するおそれはないと評価した。 ②評価ステップBの条件抗告人は,評価ステップAの評価条件を満たさなかった原子炉容器上蓋について,評価ステップBの条件を満たすか検討したところ,これを満たさなかった。 ③評価ステップCの条件抗告人は,原子炉容器上蓋の先行製品(同じ製造方法で製造 評価条件を満たさなかった原子炉容器上蓋について,評価ステップBの条件を満たすか検討したところ,これを満たさなかった。 ③評価ステップCの条件抗告人は,原子炉容器上蓋の先行製品(同じ製造方法で製造された同等品〔モックアップ〕)について,炭素偏析部が残存するおそれがある箇所の炭素濃度が規格要求値を十分満足することが検証されており,同じ製造方法により,本件各原子力発電所の原子炉容器上蓋が製造されたことが確認できたことから,評価条件ステップCの条件を満足するものとして,炭素偏析部が残存するおそれはないと判断した。 具体的には,本件各原子力発電所の原子炉容器上蓋はJSW製であるところ,JSW製の原子炉容器上蓋は,鋼塊の段階で鋼塊頂部を除去した上で製品形状に近い状態に成形され,その後の機械加工により最終製品形状に成形される。この機械加 工で,鋼塊軸心部に残存している炭素偏析部が十分な余裕をもって除去されるところ,このような製造方法に基づき米国向けに製造された原子炉容器上蓋について,炭素偏析部が確実に除去できていることを製造時の化学成分分析によっても確認した。 本件各原子力発電所の原子炉容器上蓋は,上記の米国向けに製造された原子炉容器と同じサイズの鋼塊(250t級)を用い,同じ製造方法で製造されていることを確認したことから,本件各原子力発電所の原子炉容器上蓋に炭素偏析部が残存しているおそれはないと評価した。 (ウ)以上のとおり,抗告人は,原子力規制委員会の指示を受けて行った調査及び評価の結果,本件各原子力発電所の評価対象部位全てにおいて,炭素偏析部が残存するおそれはないことを確認しており,当該確認結果については,前記のとおり原子力規制委員会もこれを了承している。 したがって,抗告人の本件各原子力発電所に関する炭素偏析の可能性に係る評価は妥当 残存するおそれはないことを確認しており,当該確認結果については,前記のとおり原子力規制委員会もこれを了承している。 したがって,抗告人の本件各原子力発電所に関する炭素偏析の可能性に係る評価は妥当なものであり,本件各原子力発電所の安全性は確認されているものといえる。 (エ)相手方らの主張に対する検討a相手方らは,抗告人の行った調査は,鍛造鋼のみを対象としており,鋳造鋼も同様に炭素偏析が起こりうる可能性があるにもかかわらず調査対象としていないと主張する。 しかし,原子炉容器上蓋等に用いられる鍛造鋼は,大型の鋳型に溶鋼を注入して製造した鋼塊を鍛造することで成形したものであるところ,鋳型に鋳込まれる(注入される)溶鋼の厚み(外径)が数メートルと大きいため,凝固にかかる時間も長くなり,炭素偏析部が生じやすいが,他方,本件各原子力発電所の蒸気発生器の水室鏡(一次側鏡板)に用いられている鋳造鋼は,製品形状を模した砂型に溶鋼を注入して凝固させることにより製造され,砂型に鋳込まれる溶鋼の厚みは鍛造鋼に用いられるような大型の鋼塊に比べ数十センチメートルと小さいため,凝固にかかる時間は短くなり,炭素偏析部が生じにくい。 また,最終的な凝固は砂型の端部まで溶鋼が行き渡るように設けられた大きな押湯部(本件各原子力発電所の蒸気発生器の水室鏡の場合,鋳込まれる溶鋼の重量の6割にも達する)の開放面で生ずるため,炭素偏析部は押湯部の内部に生成され,鋳込み後に押湯部ごと切断・除去されることから製品側に炭素偏析部が残存することはない(乙397)。 以上によれば,鍛造鋼と鋳造鋼は製造方法が異なり,鋳造によって製造された製品中に炭素偏析部が残存するおそれはないといえる。 なお,原子炉容器等に用いられる鋳造鋼に炭素偏析部が残存する可能性は,仏国の原子力安全局(ASN) 鋳造鋼は製造方法が異なり,鋳造によって製造された製品中に炭素偏析部が残存するおそれはないといえる。 なお,原子炉容器等に用いられる鋳造鋼に炭素偏析部が残存する可能性は,仏国の原子力安全局(ASN)でも問題とはされておらず,また,原子力規制委員会も,鋳造鋼について炭素偏析の可能性に係る調査を指示していない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 b相手方らは,仏国に輸出された部材が製造メーカーの社内チェックをすり抜けたのであるから,国内の原子力発電所に向けて出荷された部材についても,仏国と同様に慎重な検査をするべきであり,本件各原子力発電所の原子炉容器等の炭素濃度を具体的に測定(非破壊検査等)して安全を確認できない限り,本件各原子力発電所の運転は許されないと主張する。 しかし,仏国において原子力安全局(ASN)に報告された炭素偏析部が残存している可能性があるとされた製品とは,前記のとおり,クルゾ社及びJCFCが製造した鍛造鋼であり,本件各原子力発電所の原子炉容器等に用いられている鍛造鋼はJSWが製造したもので,製造者が異なるのであり,JCFC等の製品で問題が生じたからといって,直ちに同様の問題がJSWの製品に生じるとはいえない。 また,JCFCが仏国に納入した問題の製品は,鋼塊の段階で鋼塊頂部を除去したが,その後の機械加工量が少なかったことから,炭素偏析部が十分除去しきれずに,規格値を超える炭素偏析部が製品に残存するおそれを否定できない製法で製造されたとされている(乙395)が,他方,本件各原子力発電所の原子炉容器等で用いられているJSW製の鍛造鋼については,前記のとおり,比較的炭素濃度が高 くなりやすい鋼塊頂部を取り除いた上で鍛造がなされ,残存した炭素偏析部もその後の機械加工により確実に除去される製法が採用されており JSW製の鍛造鋼については,前記のとおり,比較的炭素濃度が高 くなりやすい鋼塊頂部を取り除いた上で鍛造がなされ,残存した炭素偏析部もその後の機械加工により確実に除去される製法が採用されており,抗告人は,炭素偏析部が製品に残存するおそれがないことを確認しているところ,原子力規制委員会は抗告人の上記評価を了承している(乙396)。 以上によれば,仏国で問題となったJCFC製の製品と異なり,本件で調査対象とされるJSWの鍛造による製品については,炭素偏析部が残存するおそれはなく,本件各原子力発電所の原子炉容器等の炭素濃度を具体的に測定(非破壊検査等)しない限り,その安全性を確認できないとはいえない。 したがって,相手方らの主張を採用することができない。 第4 結論 以上によれば,本件各原子力発電所の安全性が欠如していることの疎明があるとはいえない。そうすると,本件仮処分命令申立てについて,被保全権利の疎明があるとはいえないから,保全の必要性についての判断をするまでもなく,本件仮処分命令申立ては理由がない。 したがって,本件仮処分決定は相当でなく,これを認可した原決定も相当でないから,原決定及び本件仮処分決定を取り消し,本件仮処分命令申立てを却下すべきである。 よって,主文のとおり決定する。 平成29年3月28日大阪高等裁判所第11民事部裁判長裁判官山下郁夫裁判官杉江佳治裁判官吉川愼一 別紙規則・告示・内規一覧表原子力規制委員会規則(1)実用発電用原子炉の設置,運転等に関する規則(昭和53年12月28日通商産業省令第77号)(実用炉則)(2)実用発電用原子炉及びその附属施設の位置,構造及び設備の基準に関する規則(平成25年6月28日原子力規制委員会規則第5号)(設置許可基準規則)(3)実用発 商産業省令第77号)(実用炉則)(2)実用発電用原子炉及びその附属施設の位置,構造及び設備の基準に関する規則(平成25年6月28日原子力規制委員会規則第5号)(設置許可基準規則)(3)実用発電用原子炉及びその附属施設の技術基準に関する規則(平成25年6月28日原子力規制委員会規則第6号)(技術基準規則)(4)実用発電用原子炉に係る発電用原子炉設置者の設計及び工事に係る品質管理の方法及びその検査のための組織の技術基準に関する規則(平成25年6月28日原子力規制委員会規則第8号)(5)実用発電用原子炉に使用する燃料体の技術基準に関する規則(平成25年6月28日原子力規制委員会規則第7号)告示(6)実用発電用原子炉の設置,運転等に関する規則等の規定に基づく線量限度等を定める告示(平成13年経済産業省告示第187号)(7)工場又は事業所における核燃料物質等の運搬に関する措置に係る技術的細目等を定める告示(昭和53年12月28日通商産業省告示第666号)内規(行政手続法の審査基準等を定めるもの)(8)核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律等に基づく原子 力規制委員会の処分に係る審査基準等(原規総発第1311275号)内規(行政手続法の審査基準に該当するもの)(9)原子力事業者の技術的能力に関する審査指針(平成16年5月27日原子力安全委員会決定)(10)実用発電用原子炉及びその附属施設の位置,構造及び設備の基準に関する規則の解釈(原規技発第1306193号)(設置許可基準規則の解釈)(11)実用発電用原子炉及びその附属施設の技術基準に関する規則の解釈(原規技発第1306194号)(12)実用発電用原子炉及びその附属施設の火災防護に係る審査基準(原規技発第1306195号)(13)実用発電用 炉及びその附属施設の技術基準に関する規則の解釈(原規技発第1306194号)(12)実用発電用原子炉及びその附属施設の火災防護に係る審査基準(原規技発第1306195号)(13)実用発電用原子炉に係る発電用原子炉設置者の設計及び工事に係る品質管理の方法及びその検査のための組織の技術基準に関する規則の解釈(原規技発第1306196号)(14)実用発電用原子炉に係る発電用原子炉設置者の重大事故の発生及び拡大の防止に必要な措置を実施するために必要な技術的能力に係る審査基準(原規技発第1306197号)(15)発電用軽水型原子炉の燃料設計手法について(昭和63年原子力安全員会了承)(16)実用発電用原子炉及びその附属施設における発電用原子炉施設保安規定の審査基準(原規技発第1306198号)(17)実用発電用原子炉の運転の期間の延長の審査基準(原管P発第1311271号) 内規(行政手続法の審査基準に該当しないが,基準に関連するもの)(18)原子力発電所の火山影響評価ガイド(原規技発第13061910号)(19)原子力発電所の竜巻影響評価ガイド(原規技発第13061911号)(20)原子力発電所の外部火災影響評価ガイド(原規技発第13061912号)(21)原子力発電所の内部溢水影響評価ガイド(原規技発第13061913号)(22)原子力発電所の内部火災影響評価ガイド(原規技発第13061914号)(23)実用発電用原子炉に係る炉心損傷防止対策及び格納容器破損防止対策の有効性評価に関する審査ガイド(原規技発第13061915号)(24)実用発電用原子炉に係る使用済燃料貯蔵槽における燃料損傷防止対策の有効性評価に関する審査ガイド(原規技発第13061916号)(25)実用発電用原子炉に係る運転 発第13061915号)(24)実用発電用原子炉に係る使用済燃料貯蔵槽における燃料損傷防止対策の有効性評価に関する審査ガイド(原規技発第13061916号)(25)実用発電用原子炉に係る運転停止中原子炉における燃料損傷防止対策の有効性評価に関する審査ガイド(原規技発第13061917号)(26)実用発電用原子炉に係る重大事故時の制御室及び緊急時対策所の居住性に係る被ばく評価に関する審査ガイド(原規技発第13061918号)(27)敷地内及び敷地周辺の地質・地質構造調査に係る審査ガイド(原管地発第1306191号)(28)基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド(原管地発第1306192号)(29)基準津波及び耐津波設計方針に係る審査ガイド(原管地発第1306193号)(30)基礎地盤及び周辺斜面の安定性評価に係る審査ガイド(原管地発第13 06194号)(31)耐震設計に係る工認審査ガイド(原管地発第1306195号)(32)耐津波設計に係る工認審査ガイド(原管地発第1306196号)(33)実用発電用原子炉に係る特定重大事故等対処施設に関する審査ガイド(原規技発第1409177号)(34)実用発電用原子炉に係る航空機衝突影響評価に関する審査ガイド(原規技発第1409178号)内規(行政手続法の審査基準に該当しないが,手続に関連するもの)(35)発電用原子炉施設の設置(変更)許可申請に係る運用ガイド(原規技発第13061919号)(36)発電用原子炉施設の工事計画に係る手続きガイド(原規技発第13061920号)(37)発電用原子炉施設に使用する特定機器の型式証明及び型式指定運用ガイド(原基技発第13061921号)(38)発電用原子炉施設の溶接事業者検査に係る実用発電用原子炉の設 1920号)(37)発電用原子炉施設に使用する特定機器の型式証明及び型式指定運用ガイド(原基技発第13061921号)(38)発電用原子炉施設の溶接事業者検査に係る実用発電用原子炉の設置,運転等に関する規則のガイド(原規技発第13061922号)(39)発電用原子炉施設の使用前検査,施設定期検査及び定期事業者検査に係る実用発電用原子炉の設置,運転等に関する規則のガイド(原規技発第13061923号)(40)実用発電用原子炉の運転期間延長認可申請に係る運用ガイド(原管P発第1306197号)(41)実用発電用原子炉施設における高経年化対策実施ガイド(原管P発第1306198号) (42)実用発電用原子炉の安全性向上評価に関する運用ガイド(原規技発第1311273号)
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