- 1 -令和元年9月19日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成29年(ワ)第7576号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日令和元年7月16日判決 原告城東テクノ株式会社同訴訟代理人弁護士岩坪哲同速見禎 祥同溝内伸治郎被告吉川化成株式会社 同訴訟代理人弁護士朝野修治同鈴木章同訴訟代理人弁理士森治 主文 1 被告は,別紙「被告製品目録」2記載の製品を製造し,販売し,販売の申出 をしてはならない。 2 被告は,前項の製品を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,6828万4341円並びに内金5066万0809円に対する平成31年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員,内金460万円に対する平成29年8月17日から支払済みまで年5分の割合による金員 及び内金50万円に対する平成30年10月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用は,これを2分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 6 この判決は,第3項に限り,仮に執行することができる。 - 2 - 事実及び理由 第1 請求 1 主文第1項同旨 2 被告は,別紙「被告製品目録」2記載の製品及びその半製品を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,1億7419万6161円並びに内金1億2965万 5555円に 求 1 主文第1項同旨 2 被告は,別紙「被告製品目録」2記載の製品及びその半製品を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,1億7419万6161円並びに内金1億2965万 5555円に対する平成31年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員,内金1070万円に対する平成29年8月17日から支払済みまで年5分の割合による金員及び内金226万円に対する平成30年10月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は,発明の名称を「基礎パッキン用スペーサ」とする特許権(以下「本件第1特許権」という。)をかつて有し,また,発明の名称を「台輪,台輪の設置構造,台輪の設置方法及び建造物本体の設置方法」とする特許権(以下「本件第2特許権」という。)及び「台輪,台輪の設置構造及び設置方法」とする特許権(以下「本件 第3特許権」という。)を共有している原告が,別紙「被告製品目録」記載の各製品(スペーサ)を製造販売する被告に対し,特許法100条1項に基づき,同目録2記載の製品の製造,販売等の差止めを,同条2項に基づき,同製品及びその半製品の廃棄をそれぞれ請求するとともに,特許権侵害の不法行為に基づき,次の請求をした事案である。 (1) 特許法102条2項(一部製品に関しては予備的に同条3項)に基づく逸失利益及び弁護士費用相当額の損害の一部の賠償請求(2) 上記(1)の逸失利益に対する平成31年2月28日までの確定遅延損害金の一部の支払請求(3) 上記(1)の逸失利益に対する同年3月1日から支払済みまで民法所定の年5 分の割合による遅延損害金の支払請求- 3 -(4) 上記(1)の弁護士費用相当額の損害のうち1070万円に対する訴状送達日の 失利益に対する同年3月1日から支払済みまで民法所定の年5 分の割合による遅延損害金の支払請求- 3 -(4) 上記(1)の弁護士費用相当額の損害のうち1070万円に対する訴状送達日の翌日である平成29年8月17日から,残額の一部である226万円に対する原告第6準備書面(平成30年10月3日付け)の送付日である平成30年10月3日から,それぞれ支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求 2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲の証拠又は弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお,本判決における書証の掲記は,枝番号の全てを含むときはその記載を省略する。)(1) 当事者ア原告は,スペーサ等の建材を製造販売する株式会社である。 イ被告は,プラスチック製品の製造販売等を目的とする株式会社である。 (2) 本件第1~第3特許権ア原告は,以下の特許権(本件第1特許権)を有していた(以下,この特許権に係る特許を「本件第1特許」という。甲1)。 特許番号特許第3113831号 発明の名称基礎パッキン用スペーサ出願日平成9年1月28日登録日平成12年9月22日特許請求の範囲(訂正後の請求項1(請求項2は省略)。以下,この発明を「本件第1発明」という。) 【請求項1】板状で,左右の2分体からなり,基礎パッキンと土台との間に介挿される基礎パッキン用スペーサにおいて,前記基礎パッキンの上面凹所と係合するために前記基礎パッキンの下面方向に出没可能な突出構成を含み,該突出構成は弾性により介挿時には没入すると共にセット時には前記上面凹所内に突出して前記上面凹所と係合するようにした基礎パッキン用スペーサ。 イ原告は,以下の特許権 可能な突出構成を含み,該突出構成は弾性により介挿時には没入すると共にセット時には前記上面凹所内に突出して前記上面凹所と係合するようにした基礎パッキン用スペーサ。 イ原告は,以下の特許権(本件第2特許権)を訴外ミサワホーム株式会社- 4 -(以下「ミサワホーム」という。)と共有している(以下,この特許権に係る特許を「本件第2特許」といい,本件第2特許の出願の願書に添付された明細書及び図面を「本件第2特許明細書」という。)。本件第2特許明細書の記載は,本件第2特許に係る別紙「特許公報」のとおりである(甲2)。 特許番号特許第3870019号 発明の名称台輪,台輪の設置構造,台輪の設置方法及び建造物本体の設置方法出願日平成12年10月23日登録日平成18年10月20日特許請求の範囲本件第2特許に係る別紙「特許公報」のとおり(以下, この請求項1の発明を「本件第2発明」という。)ウ原告は,以下の特許権(本件第3特許権)をミサワホームと共有している(以下,この特許権に係る特許を「本件第3特許」といい,本件第3特許の出願の願書に添付された明細書及び図面を「本件第3特許明細書」という。)。本件第3特許明細書の記載は,別紙「訂正明細書」のとおりである(甲3)。 特許番号特許第4589502号発明の名称台輪,台輪の設置構造及び設置方法出願日平成12年8月30日登録日平成22年9月17日特許請求の範囲別紙「訂正明細書」のとおり(以下,この請求項2の発 明を「本件第3発明」という。)(3) 構成要件の分説ア本件第2特許の請求項1の構成要件は,次のとおり分説される。 2A アンカーボルトを介して結合される布基 以下,この請求項2の発 明を「本件第3発明」という。)(3) 構成要件の分説ア本件第2特許の請求項1の構成要件は,次のとおり分説される。 2A アンカーボルトを介して結合される布基礎と該布基礎上に構築される建造物本体との間に介在させるとともに,前記布基礎の長手方向に沿って複数隣 接して配置される台輪において,- 5 -2B 前記布基礎天端面に該布基礎の長手方向に沿って配置される台輪本体と,2C 前記台輪本体をその幅方向に貫通するようにして形成された換気孔と,2D 前記台輪本体に上下方向に貫通し且つ,該台輪本体の長手方向に細 長い形状に形成されたアンカーボルト挿通用のアンカー用長孔とを備え,2E 台輪本体の下面縁部と,前記台輪本体の側面縁部との間に下面または側面に対して傾斜するテーパ部が前記台輪本体の延在方向に沿って設けられていることを特徴とする2F 台輪。 イ本件第3特許の請求項2の構成要件は,次のとおり分説される。 3A 基礎上端に複数接続されて敷き込まれることで,基礎と基礎上に構築される建造物本体との間に介在される長尺板状に形成されたプラスチック製の台輪において,3B 複数の台輪のそれぞれは, 前記基礎の長手方向に沿って配置される台輪本体と,この台輪本体の長手方向の両端部にそれぞれ設けられた接続部とを備え,3C 前記台輪本体の両端部の接続部には,それぞれ嵌合部と当該嵌合部に嵌合可能な形状の被嵌合部とが幅方向に並んで配置され, 3D 前記両接続部の嵌合部と被嵌合部は,長手方向に隣接する他の台輪本体の接続部の被嵌合部と嵌合部に幅方向へ移動しないようにそれぞれ嵌合して接続するように構成されており,3E 前記嵌合部と前記被嵌合部との形成位置が前 合部と被嵌合部は,長手方向に隣接する他の台輪本体の接続部の被嵌合部と嵌合部に幅方向へ移動しないようにそれぞれ嵌合して接続するように構成されており,3E 前記嵌合部と前記被嵌合部との形成位置が前記台輪本体の長手方向の向きを逆にしても接続可能となっており, 3F 前記嵌合部は台輪本体の上下面に渡って形成された上下方向に延在- 6 -する溝部を備え,3G 前記被嵌合部は前記溝部に嵌る突部を備えることを特徴とする3H 台輪。 (4) 被告の行為等ア被告第1製品について (ア) 被告による製品の製造販売被告は,別紙「被告製品目録」1記載の製品(以下「被告第1製品」という。)を製造し,平成27年1月~平成29年1月28日(本件第1特許の存続期間の満了日)の間,第三者に販売していた(乙22)。 (イ) 製品の構成等 被告第1製品の構成は別紙「被告第1・第2製品説明書」の1のとおりであり,同製品は本件第1発明の技術的範囲に属する(当事者間に争いがない。)。 (ウ) 製品の売上額等被告による上記期間の被告第1製品の売上額は合計505万4220円(税抜)であり,それに係る被告の利益(限界利益)は合計183万5587円 (税抜)であった(当事者間に争いがない。)。 イ被告第2製品について(ア) 被告による製品の製造販売a 被告は,別紙「被告製品目録」2記載の製品(以下「被告第2製品」という。)を製造し,平成20年4月~平成30年10月(被告に対して同製品の 販売等の差止めの仮処分命令が発せられた月)の間,第三者に販売していた。 b 被告は,上記期間を通じて,被告第2製品を第三者に製造委託して製造していたほか,平成28年4月~平成29年7月21日の間は,茨城県所在の自社工 命令が発せられた月)の間,第三者に販売していた。 b 被告は,上記期間を通じて,被告第2製品を第三者に製造委託して製造していたほか,平成28年4月~平成29年7月21日の間は,茨城県所在の自社工場においても被告第2製品を製造していた(以下,上記工場を「茨城工場」,茨城工場で製造された被告第2製品を「被告工場製品」という。)。 被告工場製品には,別紙「被告製品目録」2記載の品番のうち,「NZSLG9- 7 -1-100」及び「NKSLG91-100A」という品番が付されていた。ただし,茨城工場での製造を中止した後に製造委託先から仕入れた被告第2製品にも同じ品番が付されていた(乙57)。 (イ) 製品の構成等a 被告第2製品の構成を本件第2発明の構成要件に即して分説すると, 次のとおりである(当事者間に争いがない)。 2a アンカーボルトを介して結合される布基礎と建築物本体の間に介在し,布基礎の長手方向に沿って複数隣接されるスペーサである。 2b 布基礎天端面に布基礎の長手方向に沿って配置されるスペーサ本体を有する。 2c スペーサ本体を幅方向に貫通する複数の換気孔が穿設されている。 2d スペーサ本体に上下方向に貫通し,長手方向に細長く形成されたアンカー用長孔を有する。 2e スペーサ本体の下面縁部と,側面縁部との間に,下面及び側面 に対し傾斜するテーパ部が,スペーサ本体の延在方向に設けられている。 2f スペーサである。 b 被告第2製品は,本件第3発明の技術的範囲に属する(当事者間に争いがない。)。 (ウ) 製品の売上額等 被告による上記期間の被告第2製品の販売個数,売上額(税抜),製造委託分の仕入高・茨城工場製造分の製造原価(材料費と加工費)及び運賃(いずれも がない。)。 (ウ) 製品の売上額等 被告による上記期間の被告第2製品の販売個数,売上額(税抜),製造委託分の仕入高・茨城工場製造分の製造原価(材料費と加工費)及び運賃(いずれも税抜)の額は,それぞれ別紙「被告第2製品の売上高・仕入高等」の「売上数」,「売上高」,「仕入高」及び「運賃」欄に各記載のとおりである(当事者間に争いがない。ただし,後述のとおり,被告は,自らの利益額算定に当たり,他にも控除 すべき経費があると主張している。)。 - 8 -ウ被告第2製品の形状変更被告は,平成30年10月,被告第2製品の金型を変更してその製造販売を中止し,同年11月以降,被告第2製品とは形状の異なる製品の製造販売を開始した(乙59,60)。 エ被告による事業譲渡 被告は,平成31年2月15日,訴外YPC株式会社(以下「YPC」という。)との間で,吸収分割契約を締結し,被告の商品カンパニー事業に関して有する権利義務をYPCに承継させ,YPCは,これを被告から承継すること,吸収分割の効力発生日を同年4月1日とすることなどを合意した。 3 争点 (1) 被告第2製品は本件第2発明の技術的範囲に属するか(争点1)(2) 本件第1特許権の侵害による原告の損害額(争点2)(3) 本件第2及び第3特許権の侵害による原告の損害額(争点3)(4) 消滅時効の成否(争点4)なお,被告は,このほかに自由技術の抗弁を主張するかのごとくであるが,その 主張内容は撤回された無効の抗弁と実質的に異なるものでないことから,被告による無効の抗弁の撤回は自由技術の抗弁の撤回の趣旨を含むものと理解される。 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告第2製品は本件第2発明の技術的範囲に属す 異なるものでないことから,被告による無効の抗弁の撤回は自由技術の抗弁の撤回の趣旨を含むものと理解される。 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告第2製品は本件第2発明の技術的範囲に属するか)について(原告の主張) (1) 構成要件の充足ア構成の対比被告第2製品の構成2a~2f(前記第2の2(4)イ(イ)a)は,それぞれ本件第2発明の構成要件2A~2F(同(3)ア)を充足する。 したがって,被告第2製品は,本件第2発明の技術的範囲に属する。 イ被告の主張について- 9 -被告は,本件第2発明の構成要件2Eの「テーパ部」を限定的に解釈すべきであると主張する。 しかし,被告が指摘する本件第2特許明細書の図5の凸部の描写は一例にすぎず,これより小さくても本件第2発明の効果は奏するから,被告の上記主張には理由がない。被告第2製品のテーパ部(被告のいう面取り部)は,その形状や大きさに照 らせば,構成要件2Eの「テーパ部」に相当する。 また,被告は被告第2製品のテーパ部は安全性の確保を目的としたものであるとも主張する。 しかし,そのような主観的な意図は構成要件充足性に関係しないし,当該製品では,角部全てにはテーパ部を設けていないから,このテーパ部は本件第2発明の効 果を狙ったものである。 (2) 被告第2製品が本件第2発明の作用効果を奏することア被告の後記主張は否認し,争う。被告第2製品は本件第2発明の構成要件を充足する以上,当然に本件第2発明の効果を奏する。 イ凸部をグラインダー等で除去するかどうかは施工者次第であり,必ずそ の作業が行われ,周縁部の凸部が一切生じないことなどあり得ない。 また,フラット35の利用者は10%程度にすぎないから,被告の主張を一 インダー等で除去するかどうかは施工者次第であり,必ずそ の作業が行われ,周縁部の凸部が一切生じないことなどあり得ない。 また,フラット35の利用者は10%程度にすぎないから,被告の主張を一般化することはできないし,布基礎の厚みは150㎜以上であるとは限らない。布基礎と被告第2製品のようなスペーサーは,布基礎の中央部に設置されること(「芯芯」といわれる設置法)もあるが,布基礎の外側面とスペーサーの外側面を合わせる方 法で設置されることもよくある(「外面合わせ」といわれる設置法)。この場合,布基礎の外側の周縁部の凸部と被告第2製品の外側のテーパ部が垂直方向で同じ位置となる。そうすると,テーパ部により凸部の干渉が避けられるという効果はごく一般的に奏される。 (被告の主張) (1) 原告の主張は否認し,争う。 - 10 -(2) 構成要件2Eの「テーパ部」の意義本件第2特許明細書の図5に記載されている凸部22の寸法(高さ3㎜,幅4㎜)に鑑みると,被告第2製品のC面からなる面取り部(高さ1㎜,幅2㎜)は,凸部22との干渉を排除する効果が奏せられるものでない。 したがって,構成要件2Eの「テーパ部」とは,布基礎の天端面周縁部に生じた 凸部との干渉を排除する効果が認められるような大きさや形状のものを指すと限定的に解釈すべきである。 また,被告第2製品に面取り部を設けたのは,製品を手に取った際に角部が手に当たらないよう面取りをし,安全性を確保することを目的とする。そのため,被告第2製品の面取り部と本件第2特許明細書において開示されているテーパ部では, 形状が大きく異なる。このことから,被告第2製品の面取り部は「テーパ部」に当たらない。 (3) 被告第2製品には本件第2発明が想定する作用効果の奏 書において開示されているテーパ部では, 形状が大きく異なる。このことから,被告第2製品の面取り部は「テーパ部」に当たらない。 (3) 被告第2製品には本件第2発明が想定する作用効果の奏功がないこと(作用効果不奏功の抗弁)ア本件第2発明は,布基礎の天端面周縁部に生じた凸部との干渉を排除す る効果を奏するものとされている。 しかし,現在,建物の基礎に凸部が生じた場合には,グラインダー(サンダー)等で除去するのが通常であること,基礎を構築するに当たってはセルフレベリング材が用いられていることから,そもそも基礎の凸部との干渉を防止するためにスペーサに面取り部(テーパ部)を設ける必要性はない。 さらに,独立行政法人住宅金融支援機構の融資(フラット35)の対象となる建物については,布基礎の立ち上がりの厚みは150㎜以上とされており,これ以外の建物でも同様の厚みが採用される場合が多い。また,被告第2製品の横幅が102㎜又は120㎜であり,アンカーボルトが布基礎の中心部に設けられることからも,天端面周縁部を避け布基礎の中央部に被告第2製品を設置すること(「芯芯」) が一般的である。このため,たとえ天端面周縁部に凸部が生じたとしても,この場- 11 -合には凸部との干渉を排除する効果は発揮されない。布基礎の厚みが150㎜未満の場合も,墨出しのために,布基礎の上面全体が覆われないように幅102㎜のスペーサが用いられるから,同様である。「外面合わせ」の方法が存在することは認めるが,「芯芯」の方法が主流であるし,「外面合わせ」の場合も,基礎の側面の延長線上ではなく,少なくとも数㎜内側に位置するように設置されるのが一般的である。 以上より,そもそも被告第2製品の面取り部には凸部との干渉を排除する効果が発 合わせ」の場合も,基礎の側面の延長線上ではなく,少なくとも数㎜内側に位置するように設置されるのが一般的である。 以上より,そもそも被告第2製品の面取り部には凸部との干渉を排除する効果が発揮される機会はない。 イ前述した被告第2製品の面取り部の大きさや形状に照らしても,凸部との干渉を排除する効果は認められない。 ウ以上より,被告第2製品は本件第2発明の構成要件2A~2Fを形式的 に充足するように見えても,本件第2発明が想定している作用効果は認められないから,同発明の技術的範囲には属しない。 2 争点2(本件第1特許権の侵害による原告の損害額)について(原告の主張)(1) 被告第1製品の販売による被告の利益の額 原告は,被告が支払う損害賠償金(特許法102条2項に基づき額が推定されるもの)に対して消費税の支払義務を負うから(消費税法基本通達5-2-5),同項の「利益の額」には,被告が受領した被告第1製品に係る消費税も含まれる。被告第1製品が販売された平成27年1月以降の消費税の税率は8%であるから,前記第2の2(4)ア(ウ)記載の利益額(183万5587円)に8%の消費税を加算し た198万2433円が「利益の額」となる。 これに対し,被告は消費税を加算することを争う。しかし,被告は製品を販売することにより消費税相当額を受領しているから,売上額として税込の金額を勘案することは妥当といえる。また,消費税は被告の事業全体について課税売上げから課税仕入を差し引いて課税されるものであるから,被告が納付する消費税は,侵害品 を製造販売することによりその製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費- 12 -に該当せず,上記額の算定に当たりこれを控除することは妥当でない。そして,現実 する消費税は,侵害品 を製造販売することによりその製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費- 12 -に該当せず,上記額の算定に当たりこれを控除することは妥当でない。そして,現実問題として,原告には上記通達に基づいて消費税が課税されることなどから,上記額の算定に当たり消費税を含めたとしても,原告が不当に過大な利益を受けることもない。 (2) 推定が覆滅されないこと ア被告の主張についてまず,代替品の存在につき,被告のカタログ(以下「本件被告カタログ」という。)によると,被告が指摘する製品は,被告第1製品とは使用対象製品が異なるものとされており,代替品とはいえない。そもそも,被告第1製品の購入者は,被告指摘の製品も選択可能な中で被告第1製品を購入したのであり,両者の機能上重 要な違いは出没可能な突出構成であるから,需要者にとってはその構成こそが重要であったと考えられる。被告第1製品とサイズの異なる代替品の存在をも指摘するけれども,被告第1製品のサイズを好適として購入する需要者にとっては,サイズが異なる他の製品は代替品となり得ない。 また,被告は被告第1製品についてハンマーで打ち込んでセットすることが多い と主張する。しかし,これをうかがわせる記載は本件被告カタログ等に一切なく,出没可能な突出構成が備わっていることにも反する。しかも,当該構成がある方が抜け止め防止作用が向上することは当然であり,それによって購入者の需要が喚起されることは疑いがない。 以上より,本件第1特許権の侵害による損害額につき,推定覆滅は認められない。 イしたがって,原告が被告の本件第1特許権の侵害により被った損害の額は,特許法102条2項に基づき,198万2433円と推定される。 (3) 確定遅延損 き,推定覆滅は認められない。 イしたがって,原告が被告の本件第1特許権の侵害により被った損害の額は,特許法102条2項に基づき,198万2433円と推定される。 (3) 確定遅延損害金原告が本件第1特許権の侵害により被った損害については,各侵害行為時から遅延損害金が発生するが,本件訴訟においては,その一部である上記侵害期間(前 記第2の2(4)ア(ア))の最終日である平成29年1月28日から支払済みまでの遅- 13 -延損害金を請求する。 平成29年1月28日~平成31年2月28日までの確定遅延損害金は,20万6662円である(計算式:198万2433円×5%×(2年+31日)÷365日=20万6662円)。 (4) 弁護士費用 後記3の原告の主張記載のとおり。 (被告の主張)(1) 被告第1製品の販売による被告の利益の額は183万5587円の限度で認め,原告のその余の主張は否認し,争う。 原告は特許法102条2項の「利益の額」の算定に当たって消費税を加算すべき 旨主張する。しかし,被告の税込売上額のうち消費税相当額は,仕入れに要する費用又は国への納付額となるから,同項の「利益」とはなり得ない。推定規定は,本来の立証責任の定めの例外となるものであるから,その適用は厳格にされなくてはならないし,原告の主張を認めると,原告が過大な利益を受けることになり,不当である。原告のその余の主張にも理由がない。 したがって,上記「利益の額」に消費税額を加算する必要性や合理的理由はない。 (2) 推定覆滅まず,被告第1製品には,出没可能な突出構成を含まず,サイズの異なる代替品が存在する(品番LP240-1,LP240-3)。なお,カタログの記載にかかわらず,被告第1製品用とされているス 推定覆滅まず,被告第1製品には,出没可能な突出構成を含まず,サイズの異なる代替品が存在する(品番LP240-1,LP240-3)。なお,カタログの記載にかかわらず,被告第1製品用とされているスペーサに代替品を組み合わせることも可 能である。 また,被告第1製品は,基礎と土台の隙間を埋めるためのものであるが,隙間の大きさは建物によって微妙に異なり,ぴったりとはめ込むことができるケースは少なく,実際の使用に当たっては,横からハンマーで打ち込んでセットすることが多い。このように,この種製品において重要なことは,隙間を確実に塞ぐことであっ て,出没可能な突出構成による抜け止め作用は本質的に重要な事項ではない。この- 14 -ため,そのような構成を有することは,被告第1製品の売上げに効果があったとはいえない。 以上より,被告の利益全額について,これを損害額とする推定は覆滅される。 原告のその余の主張は否認し,争う。 3 争点3(本件第2及び第3特許権の侵害による原告の損害額)について (原告の主張)(1) 特許法102条2項に基づく損害額(主位的主張)ア被告第2製品の販売による被告の利益の額(ア) 原告の主張被告は,別紙「被告第2製品の売上高・仕入高等」記載のとおり,平成2 0年4月1日~平成30年10月31日までの間,被告第2製品を合計7億3185万6254円販売し,合計2億0351万0133円の利益を得た。 この金額には消費税が含まれていないところ,前記(2(原告の主張)(1))のとおり,特許法102条2項の「利益の額」は被告が受領した消費税額を含めて算出すべきである。よって,別紙「被告第2製品に係る損害額(原告の主張)」記載のとお り,売上額及び粗利益の額には,それぞれ消費税分 法102条2項の「利益の額」は被告が受領した消費税額を含めて算出すべきである。よって,別紙「被告第2製品に係る損害額(原告の主張)」記載のとお り,売上額及び粗利益の額には,それぞれ消費税分を加算する必要がある(なお,同別紙では,経費についても売上げと同じ税率によって税込で計算されている。)。 そして,平成26年3月31日以前の売上げ及びそれに係る経費については税率5%,同年4月1日以降の売上げ及びそれに係る経費については税率8%で計算すべきである。その計算方法によると,1億3681万0744円が「利益の額」と なる。 (イ) 被告主張の販促活動費用の控除の可否一般に,カタログや展示会に被告第2製品のみを掲載・展示することは考え難く,現に,本件被告カタログにも他の製品が掲載されている。そうとすると,カタログの作成や展示会への出展は被告第2製品がなくても行われたものであって, 被告第2製品のためだけに追加的に支出された費用とはいえない。したがって,そ- 15 -の費用は控除すべきでない。 (ウ) 被告主張の茨城工場関係費用の控除の可否等a 特許法102条2項の「利益の額」の算定に当たっては,被告が負担した費用が全て控除されるわけではなく,あくまでも,原告の逸失利益を推定するのに相当な範囲で控除すべき費用が決定される。すなわち,控除される費用は, 原告が被告第2製品と同数の原告の製品を追加的に製造販売するに当たって,追加的に必要となる費用に限られる。 原告は,被告第2製品と同数の原告の製品を追加的に製造販売するために,新たに機械設備を導入する必要はなく,原告の現有設備を用いれば十分に対応可能である。そうである以上,茨城工場関係費用を控除する理由がない。 b 仮に,上記のように考えないとしても,茨城 に,新たに機械設備を導入する必要はなく,原告の現有設備を用いれば十分に対応可能である。そうである以上,茨城工場関係費用を控除する理由がない。 b 仮に,上記のように考えないとしても,茨城工場に据え付けられた成形機は金型を変更すれば他の製品の製造に使用できるから,成形機据え付けに関する費用は,被告工場製品のためだけに追加的に支出された費用ではない。また,茨城工場の設備は被告第2製品以外の製品の製造にも使用されたと認めるのが合理的である。さらに,被告主張の費用には,倉庫スペースの屋根や外壁の設置工事の 費用等が含まれているが,これは成形機とは直接の関係がないことなどから,これらは被告工場製品の製造のみに必要となった費用ではない。 仮に,被告が茨城工場の設備を他の用途に共用・転用しなかったとしても,それは他の製品の製造に使用が可能であるのに,茨城工場を閉鎖するという被告による合理的とはいえない判断が原因であるから,その閉鎖によって生じた費用(損失) は,侵害品を製造するために生じた支出に該当せず,控除すべきでない。 また,被告は茨城工場を被告第2製品の製造開始前である平成24年2月1日から賃借していることなどから,その賃料は,被告工場製品を製造するために追加的に必要となった費用ではなく,これも控除すべきでない。 以上より,茨城工場関係費用は控除すべきでない。 c 仮に,茨城工場関係費用の一部について控除が認められるとしても,- 16 -被告工場製品の売上げに対する範囲に限って控除が認められるべきであり,それ以外の製品の売上げからその費用の控除をすることは許されない。 また,被告は税務上の耐用年数を考慮して控除すべき経費を算定すべき旨主張する。しかし,これは減価償却のために仮定されたものにすぎず,実 外の製品の売上げからその費用の控除をすることは許されない。 また,被告は税務上の耐用年数を考慮して控除すべき経費を算定すべき旨主張する。しかし,これは減価償却のために仮定されたものにすぎず,実際の設備の使用可能年数とは異なる。製造に用いる設備(建物の基礎等を含む。)は,使用回数によ って使用可能年数が大きく異なるところ,被告主張に係る生産個数と通常の成形機の年間生産個数とを対比すると,被告による成形機の使用は低頻度と見られるから,茨城工場の設備の使用可能年数は,通常一般の製造設備の使用可能年数の2倍,3倍である20~30年を下回ることはない。 イ推定覆滅 (ア) 被告の主張についてまず,被告は競合品の存在を主張する。しかし,乙37~40記載の各製品は,いずれも本件第2及び第3発明が実施されていることが確認できず,被告第2製品と同種の製品とは認められない。 また,被告はNKSLシリーズの「易切断領域」について指摘するが,NKSL シリーズが販売されたことで,安い同シリーズに需要がシフトしたことはあったものの,被告第2製品の販売総量が劇的に増加したといった事実はない。したがって,易切断領域が設定されたことによる特段の価値を認めることはできず,被告第2製品の購入者が,上記設定がない原告の製品であれば購入しなかったというような,推定覆滅を認めるべき事情はない。 さらに,被告は被告第2製品における本件第2及び第3特許の比重について主張する。しかし,被告第2製品のような建築部材製品にとって施工容易性は重要であり,本件第2及び第3特許も施工容易性に関する技術である。そして,前記1で述べたことを踏まえると,本件第2及び第3特許の施工上のメリットは大きい。したがって,被告第2製品における本件第2及び第3特許の ,本件第2及び第3特許も施工容易性に関する技術である。そして,前記1で述べたことを踏まえると,本件第2及び第3特許の施工上のメリットは大きい。したがって,被告第2製品における本件第2及び第3特許の比重は大きいから,この点 によっては推定は覆滅されない。 - 17 -加えて,被告は被告第2製品の設計変更後,売上げが微増したことを指摘する。 しかし,被告の取引は一定の数量の販売を継続する企業間取引と推測されるところ,このような企業間取引においては,直ちに取引関係を解消し,新たな供給先を見付けることは困難である。このため,同程度の販売数量を維持しているからといって,本件第2及び第3特許の影響が小さいことの根拠にはならない。この点は,設計変 更の影響で供給が絞られたこと等も一因であるとみることができる。 被告のその余の主張は否認し,争う。 以上より,被告第2製品に関する損害額の推定覆滅は,最大でも30%しか認められないというべきである。 (イ) 被告がミサワホームに対して負担する損害賠償債務との関係 本件第2及び第3特許は原告とミサワホームの共有(持分は各2分の1)であるところ,原告が本件第2及び第3発明の実施品を販売しているのに対し,ミサワホームが独自に本件第2及び第3発明の実施品を他の住宅メーカー,施工業者等に販売している事実はない。これらの事実からすると,被告が本件第2製品を製造販売することにより利益を失ったのは専ら原告であるから,共有持分の割合にか かわらず,原告は特許法102条2項により認められる損害全額の賠償を受けられるべきである。ただし,原告の損害額の算定に当たり,被告がミサワホームに対して負担する損害賠償債務の額(相当実施料額の2分の1,すなわち,被告第2製品の売上額の2%(相当実施料率は後述とお 受けられるべきである。ただし,原告の損害額の算定に当たり,被告がミサワホームに対して負担する損害賠償債務の額(相当実施料額の2分の1,すなわち,被告第2製品の売上額の2%(相当実施料率は後述とおり4%))を控除することは争わない。 (ウ) したがって,原告が被告の本件第2及び第3特許権の侵害により被っ た損害の額は,特許法102条2項に基づき,別紙「被告第2製品に係る損害額(原告の主張)」の「E 損害」欄記載のとおり,1億3681万0744円と推定される。 ウ確定遅延損害金原告が本件第2及び第3特許権の侵害により被った損害については,各侵害 行為時から遅延損害金が発生するが,本件訴訟においては,その一部である別紙- 18 -「被告第2製品に係る損害額(原告の主張)」の「侵害期間」欄記載の各期間の最終日から支払済みまでの遅延損害金を請求する。 各起算日から平成31年2月28日までの確定遅延損害金は,同別紙の「FH31.2.28までの確定遅延損害金」欄記載のとおり,合計3339万1329円である。 (2) 特許法102条3項に基づく損害額(予備的主張)被告工場製品(NKSLG91-100A及びNZSLG91-100のうち茨城工場製造分合計25万0820個,売上高3472万1035円,粗利益402万5686円(いずれも税抜))については,茨城工場関係費用が大幅に控除されることによって特許法102条2項により推定される損害の額が同条3項による場 合に比して少額となる場合は,同条3項を適用すべきである。相当実施料率としては4%が妥当である。 (3) 弁護士費用原告が本件第1~第3特許権の侵害を解決するために弁護士に支払を要した費用は1387万円を下回らず,これは被告による本件第1~第3特許 相当実施料率としては4%が妥当である。 (3) 弁護士費用原告が本件第1~第3特許権の侵害を解決するために弁護士に支払を要した費用は1387万円を下回らず,これは被告による本件第1~第3特許権の侵害行為 と相当因果関係のある原告の損害である。このうち1070万円については訴状送達日の翌日から遅延損害金が発生し,残額については原告第6準備書面(平成30年10月3日付け)の送付日から遅延損害金が発生する。 (被告の主張)(1) 本件第2及び第3特許が原告とミサワホームの共有(持分各2分の1)で あることは認め,別紙「被告第2製品の売上高・仕入高等」記載の金額は争わない。 原告のその余の主張は否認し,争う。 前記2のとおり,特許法102条2項の「利益の額」を算定するに当たり消費税を加算することは争う。仮に売上げを税込で計算するのであれば,経費も税込で計算すべきである。その場合の経費の計算方法を原告主張の方法とすることは争わな い。 - 19 -(2) 被告の経費ア被告第2製品を製造販売するに当たっては,別紙「被告第2製品の売上高・仕入高等」記載の経費以外にも,次の費用合計3644万6770円を支出した。 (ア) 被告第2製品の販促活動費用 被告は,被告第2製品を販売するため,カタログを作成し,また展示会に協賛金を出すなどの販促活動を行った。その費用は,次のとおりである。 a カタログ作成費用 144万6500円(税抜)被告第2製品は被告の関連製品のラインナップの中で中心であり,その販促のためにカタログを作成した。 b 展示会出展費用 125万7000円(税抜)展示会における展示も被告第2製品が中心となっていた。 (イ) 茨城工場関係費用 であり,その販促のためにカタログを作成した。 b 展示会出展費用 125万7000円(税抜)展示会における展示も被告第2製品が中心となっていた。 (イ) 茨城工場関係費用被告は,茨城工場で被告第2製品(被告工場製品)を製造するに当たり,その製造のためだけに,次の費用を支出した。被告の売上げに相当する量の製品を 新たに製造するためには,製造設備の増強等の追加的な支出を要するのが通常であり,被告の「利益の額」の算定に当たってはこの費用を控除すべきである。 a 製造ラインを設置するための改修工事費用 1929万5000円(税抜)b 製造ラインを設置するための電気工事費用 162万1670円 (税抜)上記a及びbは,被告第2製品を製造する成形機を設置するための費用であり,成形機と関連するものや,被告第2製品の製造,搬出等と関連する。 c 茨城工場の賃料 160万円茨城工場のうち被告工場製品の製造ラインとして使用していたのは約半 分であるから,工場全体の賃料(月20万円。税込)のうち10万円を被告工場製- 20 -品の製造に係る費用とみて,この金額に製造期間(16か月)を乗じたものが上記額である。 d キュービクルのリース料及び買取り代金額 579万6000円(計算式)リース料月額9万2000円×24か月(リース料を支払った期間)+買取金額358万8000円(いずれも税抜) e ホイスト及び付帯設備のリース料及び買取り代金額 543万0600円(計算式)リース料月額8万6200円×24か月(同上)+買取金額336万1800円(いずれも税抜)イ原告の主張について 原告は茨城工場関係費用が被告工場製品の製造のみに係る経費ではないと主張する。しか 0円×24か月(同上)+買取金額336万1800円(いずれも税抜)イ原告の主張について 原告は茨城工場関係費用が被告工場製品の製造のみに係る経費ではないと主張する。しかし,据え付けられた成形機は,金型を変更すれば被告第2製品以外の製品にも使用できるものではあるが,その導入に関する費用は被告第2製品の製造のためだけに支出されたものである。茨城工場での生産量が少ないのは設備導入後の発注量が予想外に少なかったからであり,工場閉鎖の理由も同じである。 また,茨城工場の設備導入は被告第2製品に関し,被告の全社的な製造設備の導入の一部として位置付けられていたのであるから,その費用は被告第2製品全体の売上げに対する費用として捉えるべきである。したがって,茨城工場関係費用の控除の対象を被告工場製品に限定するのは相当でない。 茨城工場の設備の使用可能年数については,国税庁が定める法定耐用年数をもと に,成形室(成形機を設置している建屋)については15年,それ以外の設備等については8年と解するのが合理的である。 (3) 推定覆滅仮に原告の損害額算定につき特許法102条2項が適用されるとしても,本件では次のとおり推定覆滅事由があり,その覆滅の程度は80%を下らない。 ア競合品の存在- 21 -被告が知る限り,被告第2製品のスペーサと同種の製品を販売している企業は4社存在する。仮に被告が被告第2製品を製造販売していなかったとしても,その分の需要が全て原告に流れるということはなく,同種製品を製造販売している企業の売上げも増えるはずである。 イ原告の製品と被告第2製品の違い 被告は,平成27年5月以降,易切断領域を設けたスペーサの新製品(品番NKSL91 種製品を製造販売している企業の売上げも増えるはずである。 イ原告の製品と被告第2製品の違い 被告は,平成27年5月以降,易切断領域を設けたスペーサの新製品(品番NKSL91-100,NKSL91-120)の製造販売を開始した。易切断領域は原告の同種製品にはない特徴であり,これがあることによってスペーサの長さ調節が容易になることから,少なくとも平成27年5月以降の被告の利益に対しては,易切断領域の設定が相応の貢献をしている。 ウ被告第2製品において本件第2及び第3特許が占める比重被告第2製品は,床下の換気を行うことを目的とする製品であり,その目的を充足するための換気性能及び土台より上の構造物を支える強度を有することが重要である。他方,本件第2及び第3特許は,あくまでも被告第2製品を設置する際の施工を容易にするための工夫にすぎず,これらの特許を組み込んだものでない限 り被告第2製品が本来の目的を果たさず,又は売れないといった関係にはない。 しかも,前述のとおり,施工に当たりテーパ部の存在は必ずしも必要ではないし,本件第3特許の嵌合部がなくても,スペーサの各端を合わせれば,隙間なく設置することは可能であるから,本件第2及び第3特許がなければ施工に困難を生ずるということもない。 実際,平成30年10月下旬以降,被告第2製品について形状を変更したが,その後の売上げは,減少するどころか増加している。このことからも,本件第2及び第3特許が被告第2製品(及び他社の同種製品)の需要に与える影響が小さいことが窺われる。 エミサワホームに生じた損害 ミサワホームに生じた損害額,すなわち特許法102条3項に基づき推定さ- 22 -れる損害額(被告第2製品の売上高の4% いことが窺われる。 エミサワホームに生じた損害 ミサワホームに生じた損害額,すなわち特許法102条3項に基づき推定さ- 22 -れる損害額(被告第2製品の売上高の4%程度)の限度で,原告の損害額の推定が一部覆滅されると解すべきである。 4 争点4(消滅時効の成否)について(被告の主張)(1) 原告は,本件訴訟提起日の3年前である平成26年8月以前に,被告第2 製品の存在及び構造を知っていた。 すなわち,原告が平成21年5月頃に配布を受けていた他社のカタログには,被告第2製品と原告の製品が連続して写真及び図入りで紹介されている。このため,原告は当然,同月頃,被告第2製品を見て,その存在及び構造を知っていたはずである。 また,原告は平成25年2月及び平成26年3月に開催された住宅関連の展示会に参加したところ,被告もこれに参加し,被告第2製品を出展した。その際,原告は被告第2製品の実物を確認するとともに,製造元が被告であることも主催者に確認するなどして知ったはずである。 (2) 以上より,少なくとも平成26年1月1日より以前に発生した被告第2製 品の製造販売による損害については,不法行為に基づく損害賠償債務の消滅時効が完成している。そこで,被告は,被告第9準備書面(平成30年11月5日付け)の送付によって,原告に対し,この消滅時効を援用するとの意思表示をする。 (原告の主張)被告の主張は否認し,争う。 被告が指摘するカタログないし展示会によって,原告が被告の製造販売する物(被告第2製品)が本件第2及び第3発明の技術的範囲に属することを認識した事実はないから,「損害及び加害者を知った」とはいえない。原告がこれらを知ったのは,通知書を送付した平成29年1月 販売する物(被告第2製品)が本件第2及び第3発明の技術的範囲に属することを認識した事実はないから,「損害及び加害者を知った」とはいえない。原告がこれらを知ったのは,通知書を送付した平成29年1月10日の直前である。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(被告第2製品は本件第2発明の技術的範囲に属するか)について- 23 -(1) 被告第2製品が前記第2の2(4)イ(イ)a記載のとおりの構成を有することは,当事者間に争いがない。また,弁論の全趣旨によれば,被告第2製品は本件第2発明の構成要件2A~2D及び2Fを充足すると認められる。 (2) 構成要件2Eの「テーパ部」の技術的意義について本件第2特許明細書(甲2の2)には,本件第2発明の技術的意義について, 次の記載がある。 ア本件第2発明は,基礎上端に敷き込まれて,基礎と基礎上に構築される建造物本体との間に介在させる台輪に関するものである(【0001】)。 イ従来,基礎上端に木質の床パネルを直接敷き込む際に,基礎上端の平坦面の確保,基礎上端の透水防止や換気効率化を図ることを目的として,換気孔が幅 方向に貫通するようにして形成されている鋼材からなる台輪が提案されているが,この構成の台輪では,現場においてアンカーボルトが貫通できる穴をアンカーボルトの立設間隔に合わせて作っているため,実際に基礎に設けられたアンカーボルトの位置が予定していた位置と異なった際には,台輪に新たに穴を作ったり,別の台輪を用意したりしなければならず,若干の手間がかかっていた。本件第2発明の課 題は,現場でアンカーボルト用の孔を設ける必要がなく基礎上に容易に設置できるとともに,基礎工事において換気口を設ける必要がない台輪を提供することである(【0004】~【00 本件第2発明の課 題は,現場でアンカーボルト用の孔を設ける必要がなく基礎上に容易に設置できるとともに,基礎工事において換気口を設ける必要がない台輪を提供することである(【0004】~【0006】)。 ウ本件第2発明は,以上の課題を解決するものであり,これによって,台輪本体が設置される基礎の構築工事の際に,基礎部分に換気孔を設ける必要がなく, その分の基礎工事の手間を簡略化することができるとともに,アンカー用長孔にアンカーボルトを挿通させ易く,アンカーボルトを挿入させた状態で台輪本体の長手方向の敷き込み位置を調整することができる(【0008】,【0046】,【0047】,【0051】,図1,図5,図8)(以下,この効果を「本件第2発明の効果1」という。)。 また,台輪本体を設置する布基礎の天端面に周縁に向かって上方に突出する凸部- 24 -が形成されていても,台輪本体の延在方向に沿って設けられたテーパ部が凸部上方に位置するように台輪を配置することで,凸部を削る作業の手間を掛けずに,凸部に干渉されることなく,台輪本体を略水平な状態で布基礎の天端面に設置することができる(【0010】,【0011】,【0028】,【0044】,【0052】,図5,8)(以下,この効果を「本件第2発明の効果2」という。)。 (3) 構成要件2Eの「テーパ部」の意義についてア本件第2特許の特許請求の範囲請求項1は,「テーパ部」につき,「台輪本体の下面縁部と,前記台輪本体の側面縁部との間に下面または側面に対して傾斜する」もので,「前記台輪本体の延在方向に沿って設けられている」とする。そこで,この記載から,「テーパ部」の形状は,台輪本体の下面又は側面に対して傾斜する形 状であることが理解される。 また,本件 もので,「前記台輪本体の延在方向に沿って設けられている」とする。そこで,この記載から,「テーパ部」の形状は,台輪本体の下面又は側面に対して傾斜する形 状であることが理解される。 また,本件第2特許明細書では,前記(2)で認定した記載があるとともに,【発明の実施の形態】として,「上面部材12及び下面部材13の長手方向の両縁部には,…それぞれ側面11a,11bまたは上下面に対して傾斜するテーパ部16が設けられている。テーパ部16はそれぞれ台輪1の延在方向に沿って形成され,台輪1 の両側部をそれぞれ先細り形状とならしめている。テーパ部16と上下面との境部分は段差が形成されており、テーパ部16は上下面のそれぞれより台輪本体11の厚み方向内側に下がった部位から傾斜した状態となっている。…設置される基礎において台輪側部の下方に位置する部位に凸部が形成されていても,台輪本体はテーパ部16によってこれを逃げ,凸部が干渉しないように台輪本体11を設置できる。」 (【0028】)との記載がある。さらに,図5及び8では,「テーパ部16」は,布基礎2の天端面21の凸部22の上方に,凸部22と接しないように配置された先細り形状のものとされている。 イ前記認定の本件第2発明の技術的意義並びに「テーパ部」に係る請求項及び特許明細書の記載に照らせば,「テーパ部」は,台輪本体を設置する布基礎の天 端面に上方に突出する凸部が形成されることがあることを踏まえて設けられたもの- 25 -であるところ,その凸部は基礎,特に布基礎を構築する際に,表面張力によって型枠の周縁に向かって上方に突出して形成されるものである(本件第2特許明細書【0010】)。そうすると,「テーパ部」は,台輪本体を基礎の天端面に設置するに当たり,台輪本体がその凸部に干 張力によって型枠の周縁に向かって上方に突出して形成されるものである(本件第2特許明細書【0010】)。そうすると,「テーパ部」は,台輪本体を基礎の天端面に設置するに当たり,台輪本体がその凸部に干渉しないような形状,すなわち,台輪本体の下面縁部と側面縁部との間に下面又は側面に対して傾斜させられたものであれば足りる と解される。 ウこれに対し,被告は,「テーパ部」とは凸部との干渉を排除する効果が認められるような大きさや形状のものを指すと限定的に解釈すべきであると主張する。 しかし,本件第2発明に係る請求項に「テーパ部」の大きさ等に関する記載はなく,また,本件第2特許明細書にも,「テーパ部」の大きさ等を具体的に規定する記 載は見当たらない。また,凸部が形成される理由ないし機序に照らせば,その凸部として常に一定の大きさ以上のものが形成されるわけではないし,基礎の天端面の周縁部に何らかの凸部が形成されていれば,それと台輪本体との干渉を防止する必要が生ずる。そうである以上,少なくとも「テーパ部」の大きさ(高さや奥行の長さ)が一定のものに限定されるべき必然性は認められない。 被告は,本件第2特許明細書の図5の「テーパ部16」の大きさと被告第2製品のテーパ部(面取り部)の大きさの違いを指摘するが,図5は本件第2発明を適用した一実施形態の図面にすぎず,これをもって構成要件2Eの「テーパ部」の大きさを限定的に解釈すべきものとはいえない。 なお,被告は,被告第2製品の「テーパ部」は安全性確保の目的によるものとも 主張するが,仮にそのような目的があっても,本件第2発明の技術的意義と両立し得ることなどから,被告第2製品の客観的な構成は本件第2発明の構成要件を充足する以上,この点については検討を要しない。 エ以上 仮にそのような目的があっても,本件第2発明の技術的意義と両立し得ることなどから,被告第2製品の客観的な構成は本件第2発明の構成要件を充足する以上,この点については検討を要しない。 エ以上より,構成要件2Eの「テーパ部」とは,台輪本体の下面縁部と側面縁部との間に設けられた下面又は側面に対して傾斜させられたものであれば足り る。この点に関する被告の主張は採用できない。 - 26 -そして,被告第2製品のテーパ部(面取り部)は,「台輪」に相当するスペーサ本体の下面縁部と側面縁部との間に下面又は側面に対して傾斜させられたものであるから,構成要件2Eの「テーパ部」に相当すると認められる。 また,被告第2製品のテーパ部がスペーサ本体の延在方向に設けられていることは,前記認定のとおりである。 (4) 被告による作用効果不奏功の抗弁についてアまず,被告は,建物の基礎に凸部が生じた場合,これを除去するのが通常である,セルフレベリング材を用いると天端面周縁部に凸部が生じることはない,などと主張する。 しかし,前記のとおり,本件第2発明は,台輪の天端面の周縁部に上方に突出し た凸部が形成された場合に,これを削る作業の手間を掛けずに,凸部に干渉されることなく,台輪本体を略水平な状態で布基礎の天端面に設置することができるという効果(本件第2発明の効果2)を奏するものである。すなわち,凸部を除去するのが通常であるとしても,そのような作業の手間を不要とすることが本件第2発明の作用効果であるから,これをもって被告第2製品が本件第2発明の作用効果を奏 しないことの裏付けとなるものではない。 その点を措くとしても,凸部を完全に除去するかどうかは施工業者次第と認められるし(甲17),セルフレベリング材を使用したとし 件第2発明の作用効果を奏 しないことの裏付けとなるものではない。 その点を措くとしても,凸部を完全に除去するかどうかは施工業者次第と認められるし(甲17),セルフレベリング材を使用したとしてもなお凸部が形成され,「硬化後の処理」として「型枠解体後に材料端部のバリを除去」する必要が生じ得ることがうかがわれる(甲16,18,乙23)。そうである以上,被告の主張は, そもそもその前提を欠くことになる。 イまた,被告は,被告第2製品には幅が102㎜及び120㎜の製品があるところ,被告はこれを芯芯の方法により設置すると,凸部との干渉を排除する効果は発揮されないと主張する。 しかし,芯芯の方法により被告第2製品を設置することで被告第2製品が本件第 2発明の効果を奏しないことがあり得るとしても,外面合わせの方法も現に行われ,- 27 -この方法による場合は被告第2製品も本件第2発明の作用効果を奏し得るというのであれば,損害額算定に当たって推定覆滅事由として考慮されることはあるとしても,被告第2製品が本件第2発明の技術的範囲に属することを否定すべきことにはならない。 ここで,そもそも布基礎の厚みが150㎜を下回る場合もあること,150㎜以 上の場合を含め,常に芯芯の方法により被告第2製品を設置するわけではなく,外面合わせの方法により設置する場合があることは,いずれも被告の自認するところである。また,外面合わせの方法による場合に,スペーサが基礎の側面の延長線上から少なくとも数㎜内側に位置するように設置されるのが一般的であることを裏付ける的確な証拠はない。むしろ,証拠(甲17,18,乙23)によれば,実際の 施工現場において,被告第2製品が基礎の側面の延長線上に設置されることがあり得ることは否定できないし あることを裏付ける的確な証拠はない。むしろ,証拠(甲17,18,乙23)によれば,実際の 施工現場において,被告第2製品が基礎の側面の延長線上に設置されることがあり得ることは否定できないし,スペーサを基礎の側面の延長線上から数㎜内側に設置した場合にも,バリ(凸部)との干渉が避けられないことがあることもうかがわれる。 そうすると, 被告第2製品が本件第2発明の作用効果を奏することはないとは認 められない。 ウ以上より,この点に関する被告の主張は採用できない。 (5) そうすると,被告第2製品は構成要件2Eも充足する。 したがって,被告第2製品は,本件第2発明の技術的範囲に属する。 2 争点2(本件第1特許権の侵害による原告の損害額)について (1) 被告の利益の額についてア被告が平成27年1月~平成29年1月28日の間に被告第1製品を製造販売したことによる利益の額が合計183万5587円(税抜)であることは,当事者間に争いがない。 イ特許法102条2項の「利益の額」の算定に当たり,売上高に消費税を 加算すべきかについては,次のとおり,これを加算して算定するのが相当である。 - 28 -消費税は,国内において事業者が行った資産の譲渡等に課されるものであるところ(消費税法4条1項),「例えば,次に掲げる損害賠償金のように,その実質が資産の譲渡等の対価に該当すると認められるものは資産の譲渡等の対価に該当することに留意する。…(2) 無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無体財産権の権利者が収受する損害賠償金」(消費税法基本通達5-2-5)とされていること に鑑みると,特許権を侵害された者が特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償金を侵害者から受領した場合,その損害賠償 権の権利者が収受する損害賠償金」(消費税法基本通達5-2-5)とされていること に鑑みると,特許権を侵害された者が特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償金を侵害者から受領した場合,その損害賠償金も消費税の課税対象となるものと推察される。そうすると,特許権者が特許権侵害による損害のてん補を受けるためには,課税されるであろう消費税額相当分についても損害として受領し得る必要があるというべきである。そして,被告は,被告第1製品を販売するに当たり,その販売先 から別紙「被告第2製品の売上高・仕入高等」の「売上高」欄記載の売上額だけでなく,それに対する消費税相当額の支払も受けたものと推認される。 したがって,特許法102条2項の「利益の額」は,消費税込の売上額をもとに算定すべきである。 これに対し,被告は消費税を加算すべきでないと主張する。しかし,原告は,被 告から消費税相当額を加算した額の損害賠償を受けたとしても,前述のとおり,受領した損害賠償金のうちその実質が資産の譲渡等の対価に当たると認められる部分は課税対象になることなどに照らせば,不当に過大な利益を受けることにはならない。その他被告がるる指摘する事情を考慮しても,この点に関する被告の主張は採用できない。 なお,原告は,売上げのみならず経費についても税込で計算した主張をしているところ,本件では,これ以外に控除すべき経費があることを認めるに足りる証拠はない。 ウそうすると,本件第1特許権の侵害による被告の「利益の額」は,原告が主張するとおり,合計198万2433円となる。 (2) 推定覆滅について- 29 -ア特許法102条2項に基づく推定の覆滅については,侵害者が主張立証責任を負い,侵害者が得た利益と特許権者が受けた損害との相 となる。 (2) 推定覆滅について- 29 -ア特許法102条2項に基づく推定の覆滅については,侵害者が主張立証責任を負い,侵害者が得た利益と特許権者が受けた損害との相当因果関係を阻害する事情がこれに当たると解される。例えば,①特許権者と侵害者の業務態様等に相違が存在すること(市場の非同一性),②市場における競合品の存在,③侵害者の営業努力(ブランド力,宣伝広告),④侵害品の性能(機能,デザイン等特許発明以外 の特徴)などの事情について,推定覆滅の事情として考慮することができるものと解される。 イまず,被告は,代替品の存在を主張する。 しかし,被告指摘に係る製品は,本件第1発明の構成のうち「出没可能な突出構成」を含まないものと認められる(甲4,乙32)。また,サイズ違いの点について も,被告第1製品には被告指摘に係る製品にはないサイズのものが存在する。そうすると,後者をもって代替品に当たるということはできない。したがって,被告指摘に係る製品の存在は推定覆滅事由に当たらない。 ウまた,被告は,実際の使用態様に鑑みれば,「出没可能な突出構成」による抜け止め防止作用は重要なものではないなどと主張する。 しかし,被告指摘の使用態様については,本件被告カタログには記載がなく,その他そのような使用例が一般的ないし多数であることを認めるに足りる証拠はない。 むしろ,本件被告カタログによれば,被告は被告第1製品とともに「出没可能な突出構成」を備えない製品を販売していることが認められるところ,これは,被告第1製品のように「出没可能な突出構成」を有する製品の顧客吸引力の存在をうかが わせるものというべきである。 エそうすると,被告の推定覆滅に関する主張はいずれも採用できないから ,被告第1製品のように「出没可能な突出構成」を有する製品の顧客吸引力の存在をうかが わせるものというべきである。 エそうすると,被告の推定覆滅に関する主張はいずれも採用できないから,特許法102条2項による推定は覆滅されない。 (3) 以上より,特許法102条2項に基づく原告の損害額は,198万2433円と認められる。また,少なくとも原告主張の金額(20万6662円)の限度 で,平成31年2月28日までの確定遅延損害金が発生していることが認められる。 - 30 - 3 争点3(本件第2及び第3特許権の侵害による原告の損害額)について(1) 証拠(甲20,21)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,遅くとも平成16年以降,本件第2及び第3特許の実施品である「キソパッキンロング」という製品を販売していることが認められる。そうすると,これらの特許の特許権者である原告には,侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろ うという事情が存在するといえるから,その侵害行為には特許法102条2項が適用され得る。 また,被告が平成20年4月~平成30年10月の間に被告第2製品を販売したことによる売上額(税抜)や,製造委託分の仕入高・茨城工場製造分の製造原価及び運賃の額(税抜)が別紙「被告第2製品の売上高・仕入高等」記載のとおりであ ることは,当事者間に争いがない。 さらに,特許法102条2項の「利益の額」の算定に当たり,売上高に消費税を加算すべきことは,前記2のとおりである。そして,経費についても売上げと同じ税率によって税込で計算することにつき当事者間に争いがないことから,その方法で経費を控除する。これによれば,税込の売上額と仕入高・製造原価及び運賃の額 は,別紙「被告第2製品に も売上げと同じ税率によって税込で計算することにつき当事者間に争いがないことから,その方法で経費を控除する。これによれば,税込の売上額と仕入高・製造原価及び運賃の額 は,別紙「被告第2製品に係る損害額(裁判所の認定)」の「売上額」及び「仕入高・製造原価及び運賃」欄記載のとおりである(なお,消費税の税率が5%から8%に変更されたのは,平成26年4月1日からである。)。 (2) 他の経費の控除についてア被告は,別紙「被告第2製品の売上高・仕入高等」に記載のない費用を 支出したとして,特許法102条2項の「利益の額」の算定に当たり,その費用を控除すべきと主張する。 同項所定の侵害行為により侵害者が受けた利益の額は,侵害者の侵害品の売上高から,侵害者において侵害品を製造販売することによりその製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界利益の額であり,その主張立証責任は 特許権者側にあるものと解すべきである。このような観点から,以下検討する。 - 31 -イ被告主張の販促活動費用(ア) カタログ作成費用被告は,本件被告カタログを含むカタログの作成費用として,平成26年4月~平成29年8月の間に合計156万0330円(税込)を支出したことが認められる。 本件被告カタログ(甲4,乙32)を見ると,被告第1製品その他被告第2製品以外の製品も記載されている。もっとも,表紙には被告第2製品が掲載され,掲載製品の特徴を紹介する2頁でも被告第2製品に基づき説明がされている。他のページにおいても,その記載から被告第2製品が中心的なものと位置付けられていることがうかがわれる。このような事情を踏まえると,本件被告カタログの作成費用は, その半額の限度で,被告が侵害品である被 ジにおいても,その記載から被告第2製品が中心的なものと位置付けられていることがうかがわれる。このような事情を踏まえると,本件被告カタログの作成費用は, その半額の限度で,被告が侵害品である被告第2製品を製造販売することによりその製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費に当たると認めるのが相当である。 また,本件被告カタログを除くカタログは証拠提出されてないが,上記のような本件被告カタログにおける被告第2製品の取り扱われ方や上記期間における被告第 2製品の売上数及び売上額の推移に照らせば,同様に被告第2製品を中心的な製品と位置付けた掲載がされていたことが合理的に推認される。そうである以上,他のカタログについても同様に考えるのが相当である。 したがって,上記カタログ作成費用合計額の半額である78万0165円については,被告第2製品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費として, 「利益の額」の算定に当たり控除すべきである。これに反する原告及び被告の各主張はいずれも採用できない。 (イ) 展示会出展費用証拠(乙51,53,54)によっても,これに対応する各展示会における具体的な展示内容は明らかでない。他にこれをうかがわせる的確な証拠も見当た らない。そうである以上,被告主張に係る展示会出展費用が被告第2製品の製造販- 32 -売に直接関連して追加的に必要となった経費に当たると認めることはできないから,この費用は「利益の額」算定に当たり控除すべきものとはいえない。この点に関する被告の主張は採用できない。 ウ茨城工場関係費用(ア) 原告は,控除される費用は,被告第2製品と同数の製品を原告が追加 的に製造販売するに当たって,追加的に必要となる費用に限られると主張する 張は採用できない。 ウ茨城工場関係費用(ア) 原告は,控除される費用は,被告第2製品と同数の製品を原告が追加 的に製造販売するに当たって,追加的に必要となる費用に限られると主張する。 しかし,特許法102条2項はその文言上,侵害者が侵害行為により受けた利益の額に着目していることなどに照らすと,この点に関する原告の主張は採用できない。 (イ) 茨城工場関係費用に関する事実認定 後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 a 被告は,平成24年1月20日,第三者から茨城県古河市所在の建物(種類は工場,事務所,面積は1階531.8㎡,2階65.64㎡。以下「本件建物」という。)を賃料月額20万円(税込),契約期間同年2月1日~平成26年1月31日との約定で賃借し,茨城工場として使用していた(乙46)。なお,同 年2月1日以降,その賃貸借契約は更新された。 b 被告は,従前,被告第2製品を第三者に製造委託して製造していたが,平成27年頃,その関東地区における生産拠点を構築するために,茨城工場に被告第2製品を製造するための設備を導入することにした。そして,被告は,被告第2製品を製造するための大型の成形機を設置するために,茨城工場を改築するこ ととした(乙44の2)。 c 被告は,上記方針に基づき,第三者に対し,茨城工場の改修工事(以下「改修工事」という。)を注文するとともに,別の業者に対し,成形機新設に伴う電気工事(以下「電気工事」という。)を注文した(乙44)。 d このうち,改修工事の概要は次のとおりであり,この工事費用は合 計2083万8600円(税込)であった(乙44の1)。 - 33 -(a) 仮設工工事を安全に施工するための足場やシート,工事事務所の設置・ 概要は次のとおりであり,この工事費用は合 計2083万8600円(税込)であった(乙44の1)。 - 33 -(a) 仮設工工事を安全に施工するための足場やシート,工事事務所の設置・建設等。 (b) 成形機,天井クレーン基礎工成形機及び重量物を吊るすクレーンの重量は数十トンに及び,これら設備を設置するには,それらを支えるための基礎地盤が必要となる。そのための基礎工事。 (c) テント工成形機を設置した建屋及び隣接する倉庫スペースの屋根及び外壁の設置工事。 (d) 成形室工成形機を設置し,被告第2製品の製造を行う建屋の建設工事。 (e) 天井クレーン鉄骨工金型等を吊るす天井クレーン用のレールの 設置工事。 (f) 雑工e 電気工事の費用は,合計175万1404円(税込)であった(乙45)。 f 被告は,平成27年12月1日,リース会社との間で,キュービク ルをリース料月額9万9360円(税込)で賃借する旨のリース契約を締結した。 これに基づき,被告は,同日から平成29年11月までそのリース料を支払った。 また,被告は,同年12月,キュービクルをリース会社から代金387万5040円(税込)で購入した(乙47)。 キュービクルは,発電所から送電されてきた高圧の電気を受電し,使用可能な電 圧に降圧するための設備を収納した金属製の箱である。 g 被告は,平成27年12月1日,リース会社との間で,ホイストをリース料月額9万3096円(税込)で賃借する旨のリース契約を締結した。これに基づき,被告は,同日から平成29年11月までそのリース料を支払った。 また,被告は,同年12月,ホイストをリース会社から代金363万0744円 (税込)で購入した(乙48)。 - 34 -ホイスト は,同日から平成29年11月までそのリース料を支払った。 また,被告は,同年12月,ホイストをリース会社から代金363万0744円 (税込)で購入した(乙48)。 - 34 -ホイストは,上記クレーンを構成する設備のうち,荷物を吊り上げ移動させるための巻き上げ機である。 h 平成28年4月,茨城工場で被告第2製品(被告工場製品)の製造が開始されたが,平成29年7月21日までにその製造は中止された。なお,被告は上記期間中,茨城工場を被告第2製品の製造以外の用途にも使用していた。 (ウ) 上記各費用を控除することの要否a 茨城工場の賃料茨城工場を賃借したのは平成24年2月からであるのに対し,茨城工場で被告第2製品の製造を開始したのは平成28年4月である。しかも,茨城工場で被告第2製品を製造していた期間中,当該工場を他の用途にも使用していたことか らすると,半額であれ,茨城工場の賃料をもって被告第2製品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費に当たるということはできない。したがって,茨城工場の賃料は「利益の額」算定に当たり控除すべきものとは認められない。 b 改修工事の費用前記認定の改修工事をするに至った経緯及び改修工事の内容に照らせば, この費用は被告第2製品の製造に必要な成形機を設置するための費用であり,被告第2製品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費に当たると認められる。なお,原告は,改修工事によって設置された設備は被告第2製品以外の製品の製造にも使用されたと主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。 もっとも,茨城工場の設備等を使用した被告第2製品の製造は,16か月程度で 中止された。改修工事によって被告が有するに至った設備等の経済的価値がその間に が,これを認めるに足りる証拠はない。 もっとも,茨城工場の設備等を使用した被告第2製品の製造は,16か月程度で 中止された。改修工事によって被告が有するに至った設備等の経済的価値がその間に消滅したといえないことは明らかである(被告も,金型を変更すれば被告第2製品以外の製品の製造のために成形機を使用できることを自認している。)。そうである以上,改修工事の費用のうち,被告第2製品の製造販売に直接関連して追加的に必要となったといえるものを評価するに当たっては,上記設備等の使用中止以降も 被告が有する経済的価値を除外する必要がある。 - 35 -この評価の方法について,被告は法定耐用年数をもとにすべきと主張する。しかし,これは税務上の概念であって,その年数の経過により直ちに成形機や建物等が使用できなくなるとは考え難い。他方で,法定耐用年数は実際の使用可能年数に関する社会的実態を全く考慮することなく定められたものとも考え難いことや,弁論の全趣旨も踏まえ,成形室の建屋の使用可能期間は法定耐用年数の倍の30年,そ の余の設備等は同じく倍の16年と見て評価をするのが相当である。 このような観点から「利益の額」算定に当たり控除すべき費用を算出すると,次のとおり合計148万4288円(税込)と認められる(工事代金額は乙44の1により認められる。)。 (a) 成形室に係る費用 ・改修工事の代金のうち成型室の分(改修工事の費用のうち成形室工に係る費用431万9000円÷雑工を除くすべての工事(乙44の1の2枚目の1~5の工事)の費用1634万円)×工事代金総額(税抜)1929万5000円=510万0067円(小数点以下切り捨て。以下同じ。) ・このうち控除すべき金額510万0067円×1.08( 5の工事)の費用1634万円)×工事代金総額(税抜)1929万5000円=510万0067円(小数点以下切り捨て。以下同じ。) ・このうち控除すべき金額510万0067円×1.08(消費税を加算)÷30年×1.3年(茨城工場での製造期間である1年4か月弱)=23万8683円(b) それ以外の費用(1929万5000円-510万0067円(成形室に係る工事代 金。税抜))×1.08÷16年×1.3年=124万5605円c 電気工事の費用電気工事は成形機新設に伴って行われたものであるから,その費用は被告第2製品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費に当たるといえる。 もっとも,この費用についても,上記bと同様の観点から,「利益の額」算定に当 たりその一部を控除するのが相当であり,被告はその工事による利益を成形室の建- 36 -屋と同じく30年使用可能と見て控除すべき金額を算定することとする。 そうすると,被告が電気工事の費用として負担した175万1404円(税込)のうち,7万5894円を控除すべきことになる。 (計算式) 175万1404円÷30年×1.3年=7万5894円d キュービクル及びホイストの費用 キュービクル及びホイストに係る費用のうち,茨城工場で被告第2製品を製造していた期間のリース料は,その性質上,被告第2製品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費に当たると認められる。 他方,キュービクル及びホイストの購入は,茨城工場での被告第2製品の製造を中止した後であるから,この購入費用を被告第2製品の製造販売に直接関連して追 加的に必要となった経費に当たると認めることはできない。 このような観点からキュービクル及びホイストに係る費用のうち「利益の額 あるから,この購入費用を被告第2製品の製造販売に直接関連して追 加的に必要となった経費に当たると認めることはできない。 このような観点からキュービクル及びホイストに係る費用のうち「利益の額」算定に当たり控除すべき費用を算定すると,次のとおり,合計307万9296円(税込)と認められる。 (a) キュービクル分 9万9360円(税込)×16か月(なお,茨城工場での製造期間は16か月弱であるが,製造中止後リース物件の返還までに要する期間も考慮し,日割り計算はしない。)=158万9760円(b) ホイスト分9万3096円(税込)×16か月(同上)=148万9536円 (エ) 以上より,茨城工場関係費用のうち,「利益の額」算定に当たり控除すべき費用は,合計463万9478円(税込)と認められる。これに反する被告の主張は採用できない。 (オ) また,被告工場製品は,被告第2製品そのものであって,茨城工場での製造分と製造委託での製造分とで製品の構成が異なるわけではない。本件の訴訟 物である不法行為に基づく損害賠償請求権は,被告第2製品の販売によって発生し- 37 -たものであるが,茨城工場での製造分とそれ以外とで訴訟物が異なると見るべき根拠もない。 したがって,「利益の額」算定に当たり茨城工場関係費用のうち控除すべき上記各費用は,被告第2製品全体の売上額(税込)から控除すべきである。これに反する原告の主張は採用できない。 (カ) 被告第2製品の製造販売による被告の利益の額以上によれば,被告の「利益の額」は,別紙「被告第2製品に係る損害額(裁判所の認定)」の「被告の利益の額」欄記載のとおり,2億1105万1670円となる(なお,カタログ作成費用は支出した年度に 額以上によれば,被告の「利益の額」は,別紙「被告第2製品に係る損害額(裁判所の認定)」の「被告の利益の額」欄記載のとおり,2億1105万1670円となる(なお,カタログ作成費用は支出した年度に計上し,茨城工場関係費用は平成28年度(12か月)と平成29年度(4か月)で按分して計上した。)。これ に反する原告及び被告の各主張はいずれも採用できない。 (3) 推定覆滅についてア被告主張の競合品について(ア) 本件第2特許との関係被告指摘に係る乙37~40の製品(乙38は土台スペーサーロングに限 り,乙39はフリーロングキャットスペーサーに限り,乙40はエコパッキン長尺に限る。以下同じ。)は,少なくとも本件第2発明の構成要件2A~2D及び2Fを充足すると見られる。 しかし,これらの製品が構成要件2Eの「テーパ部」を備えていると認めることはできず,他の構成により本件第2発明の効果2(前記1(2)ア(ウ))を実質的に奏 する製品であると認めるに足りる証拠もない。 したがって,これらの製品は,本件第2発明との関係で,市場において競合関係に立つ製品であるとはいえない。 (イ) 本件第3特許との関係まず,乙37記載の製品のうち土台パッキンLは,長手方向の両端部には 幅方向に並んで2つの接続部が設けられていると見られるが,その形状は,「嵌合部- 38 -と当該嵌合部に嵌合可能な形状の被嵌合部」(構成要件3C)に当たるとはいえず,幅方向へ移動しないように接続するように構成されていると認めることもできない。 また,乙37記載の土台パッキンLモルストップは,上記に加え,モルタル受けが幅方向の一方に設けられており,モルタル受けを基礎外側面側に向けて設置することが予定されているから,当該 ることもできない。 また,乙37記載の土台パッキンLモルストップは,上記に加え,モルタル受けが幅方向の一方に設けられており,モルタル受けを基礎外側面側に向けて設置することが予定されているから,当該製品をそのままの状態で長手方向の向きを逆にして 接続することは通常想定されないと思われる。 次に,乙38の製品については,長手方向の両端部に接続部が設けられているかのように見得る部分もあるものの,その具体的な形状は必ずしも判然としない。このため,両端の接続部にそれぞれ「嵌合部と当該嵌合部に嵌合可能な形状の被嵌合部」を備えているとは認められず,また,幅方向へ移動しないように接続するよう に構成されているともいえない。 さらに,乙39の製品は,「スライド式で連結・調節も簡単です。」との記載はあるものの,その具体的な構成は,長手方向の接続部の存否を含め,判然としない。 このため,両端の接続部にそれぞれ「嵌合部と当該嵌合部に嵌合可能な形状の被嵌合部」を備えているとは認められず,また,幅方向へ移動しないように接続するよ うに構成されているともいえない。 乙40の製品は,両端の接続部の一方の中央部に大きな凸部があり,他方の中央部には凹部があり,当該製品を並べて敷き込む際,隣り合う製品の凸部と凹部を嵌合することも可能な構成と見得る。もっとも,当該部位については,「アンカーボルトの位置調整が簡単!」,「両端側に形成されたスライド機構でアンカーホールの位 置を簡単に調整できます。」という説明があり,凸部と凹部を嵌合させて幅方向への移動を規制するためのものではないと見られる。 以上のとおり,乙37~40の製品は,いずれも本件第3発明と構成及び機能を異にすることから,競合品とは認められない。 イ易切断領域(乙41)について するためのものではないと見られる。 以上のとおり,乙37~40の製品は,いずれも本件第3発明と構成及び機能を異にすることから,競合品とは認められない。 イ易切断領域(乙41)について 被告は被告第2製品の一部には易切断領域という原告の製品にはない構成が- 39 -設けられており,これが被告の利益に相応の貢献をしたと主張する。 しかし,侵害品に特許発明やその実施品にはない機能等があるとしても,そのことから直ちに推定の覆滅が認められるのではなく,当該機能等が侵害者の売上げに貢献しているといった事情がなければならないというべきである。 この点,本件被告カタログには易切断領域に関する記載が見られる。また,易切 断領域を設けた製品の販売を開始した平成27年度の被告第2製品全体の売上げは平成26年度よりも増加している。もっとも,被告第2製品の売上げは平成20年4月の販売開始以降増加基調を続けており,平成28年度の売上増加額と易切断領域を設けた製品の売上増加額とが一致しているわけでもないから,上記売上増加につき易切断領域を設けたことによるものと認めることはできない。また,顧客の購 買意欲(顧客吸引力)には,各製品の機能のみならず市場環境や販売価格等も影響し得る。 そうすると,易切断領域の存在が被告の売上げに貢献したとは認められず,易切断領域が設置された製品の存在を理由とする推定覆滅は認められない。 ウ被告第2製品において本件第2及び第3特許が占める比重について (ア) 本件第2発明の技術的意義は,前記認定のとおりである。 (イ) 本件第3特許明細書の記載によれば,本件第3発明の技術的意義は,次のとおりと認められる。 a 本件第3発明は,基礎上端に敷き込まれて,基礎と基礎上に構築され ,前記認定のとおりである。 (イ) 本件第3特許明細書の記載によれば,本件第3発明の技術的意義は,次のとおりと認められる。 a 本件第3発明は,基礎上端に敷き込まれて,基礎と基礎上に構築される建造物本体との間に介在される台輪に関するものである(【0001】)。 b 従来の台輪では,基礎上端に複数並べて敷き込む際に,基礎上面に並べられた台輪はそれぞれ基礎上で動かないように,1ピース毎に両端部等の離間した箇所を釘で基礎に止着する必要があった。よって,台輪を基礎上面に固定する際に,台輪毎に2カ所釘を打ち込む作業を減らすことで作業の容易化及び工期の短縮化を図ろうという要望があったところ,本件第3発明の課題は,基礎上端に隣接 して設置される複数の台輪の設置作業を容易に行うことができる台輪を提供するこ- 40 -とである(【0004】,【0005】)。 c この課題を解決するため,本件第3発明は,構成要件3A~3Hの構成を採用した。これによって,隣接する台輪の接続部同士を嵌合して接続した状態で複数の台輪を前記基礎上に接続して敷き込んだ際に,嵌合して接続される接続部同士において一方の接続部を固定するだけで,敷き込まれた複数の台輪それぞれ を幅方向に動かないように固定することができる。よって,基礎上に台輪を複数敷き込んで設置する際に,従来と異なり,敷き込まれた複数の台輪を台輪毎に基礎に固定する作業,つまり複数の台輪毎に2カ所釘を打ち込んで基礎に固定する作業の必要が無くなり,台輪の敷き込み作業の容易化及び工期の短縮化を図ることができる(【0008】,【0037】,【0061】)。 また,基礎上端に複数接続して敷き込む際に用いる台輪を全て同じ形状の台輪としても,幅方向に移動しないように接続すること 化を図ることができる(【0008】,【0037】,【0061】)。 また,基礎上端に複数接続して敷き込む際に用いる台輪を全て同じ形状の台輪としても,幅方向に移動しないように接続することができるから,接続部が異なる異形状の台輪を制作する必要がなくなり,コストの低廉化を図ることができる(【0011】,【0062】)。 さらに,台輪同士を接続する際に,一方の台輪の接続部に接続させるのが他の台 輪の両接続部のうちのどちらであっても,台輪同士を接続することができる(【0013】,【0032】,【0063】)。 (ウ) 本件第2及び第3発明の技術的意義と顧客吸引力a 本件第2特許明細書には,本件第2発明の効果1(前記1(2)ア(ウ))が本件第2発明の作用効果として記載される一方で,従来の技術として,換気孔は 備えるものの,アンカーボルト挿通用のアンカー用長孔を備えない鋼材からなる台輪(【0004】,図11)しか記載されていない。 しかし,本件第2特許の2か月弱前に出願された本件第3特許明細書には,従来の台輪として,基礎上端に複数並べて敷き込むアンカーボルト挿通用の貫通穴を備えたプラスチック製の台輪及びこの台輪が基礎の長手方向に沿って配置される様子 が示されているところ(【0003】,【0004】,図16),この台輪は,少なくと- 41 -も本件第2発明の構成要件2A,2B,2D及び2Fの構成を備えたものと見られる。この構成により本件第2発明の効果1を奏し得ることから,当該効果は,従来の技術によって既に奏することが可能なものであって,本件第2発明が新たに見出したものと認めることはできない。乙7(昭和58年7月19日出願の考案に係る公開実用新案公報)及び乙8(平成7年6月30日出願の発明に係る公開 奏することが可能なものであって,本件第2発明が新たに見出したものと認めることはできない。乙7(昭和58年7月19日出願の考案に係る公開実用新案公報)及び乙8(平成7年6月30日出願の発明に係る公開特許公報) の各記載からも,同様の構成を有する台輪がこれらの文献に開示されているといえる。 このように,本件第2発明の効果1は従来の技術によって奏することが可能なものと認められるから,この効果をもって顧客吸引力を示すものと捉えることはできない。 b 本件第3発明の技術的意義本件第3特許明細書記載の本件第3発明の技術的意義は前記認定のとおりであるところ,本件第3特許明細書には,従来の技術によれば,台輪につき1ピース毎に両端部等の離間した箇所を釘で基礎に止着する必要があると記載されている。 しかし,本件第3特許の約3年半前に出願された本件第1特許は,基礎パッキン用スペーサに係るものであるが,その明細書には,「前後端面に連結用凹凸6,7…が予め形成されている」基礎パッキンが開示されている(甲1の2【0008】,図2)。この基礎パッキンは,住宅などの建築物の基礎と,土台との間に介装されるプラスチック製のものであり(【0001】,【0002】),本件第3発明の「プラスチ ック製の台輪」に相当する。したがって,プラスチック製の台輪本体の長手方向の両端部にそれぞれ設けられた接続部を備え,その接続部を連結すること(構成要件3A,3B及び3H)は,従来の技術にもあったものと認められる。そうすると,本件第3発明の作用効果のうち,上記の点については,従来の技術によって既に奏することが可能なものであって,本件第3発明が新たに見出したものということは できない。 - 42 -以上より,上記の作用効果につ 果のうち,上記の点については,従来の技術によって既に奏することが可能なものであって,本件第3発明が新たに見出したものということは できない。 - 42 -以上より,上記の作用効果については従来の技術によって奏することが可能なものと認められるから,この作用効果をもって顧客吸引力を示すものと捉えることはできない。 c 以上を踏まえると,顧客吸引力を有すると見られる本件第2及び第3発明の技術的意義は,本件第2発明の効果2(前記1(2)ア(ウ))及び台輪本体の 長手方向の両端部に設ける接続部を構成要件3C~3Gの構成を有するものとすることによって,幅方向へ移動しないようにするという点に限られるというべきである。 (エ) 認定事実後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 a 本件被告カタログの表紙には,「安心安全な床下換気材キソスペーサー○Rを私達は提供致します。」として,次の3点が記載されている。なお,4頁にも,表現は異なるものの,これらと同趣旨の記載がある(甲4,乙32)。 (a) 充分な強度と換気性能があります。 (b) 3つの安定「安定供給」「安定品質」「安定価格」を図ります。(関 東と関西の2拠点体制,工業製品と同じ品質保証体制,自社コンパウンド)(c) 省施工商品です。カットしやすくゴミの発生が少ないです。合板支持パーツ付の品番もあります。 b 本件被告カタログの2頁には,「6つの特徴」として,被告第2製品を含む被告の製品について次の各特徴が列記されている(甲4,乙32)。 (a) 充分な強度,防鼠機能を備えた独自の換気スリットです。 (b) カットしやすい独自の形状,スピード施工,ゴミの発生がわずかです。 なお,この部 列記されている(甲4,乙32)。 (a) 充分な強度,防鼠機能を備えた独自の換気スリットです。 (b) カットしやすい独自の形状,スピード施工,ゴミの発生がわずかです。 なお,この部分には被告第2製品の写真が掲載されているところ,その長手方向の片方の端部の接続部を指して「連結構造」との説明が付されている。 (c) 合板支持パーツ(GSP)が更なる省施工と安全作業を可能にし- 43 -ました。 (d) アンカーボルトが干渉しにくい充分な開口です。 (e) 素手で持っても痛くありません(なお,※を付した上で,「現場施工時は保護手袋など安全策を行って下さい。」と記載されている。)。 (f) ストッパー付レベル調整プレートは3種類,2枚まで重ねて使用 できます(なお,上記プレートとして被告第1製品の写真が付されている。)。 c 原告の自社製品のカタログには,本件第2及び第3特許の実施品である「キソパッキンロング」の説明として,次のような記載がある(甲20,21)。 (a) 甲20の1(平成16年作成)住宅の荷重を基礎全周で受けるので,さらに安心。Jotoならでは のロングタイプ。性能・機能を極めたカタチ,半間モジュール(約910㎜)を採用。 ・特殊構造の換気スリット+防鼠材(先端シボリ)なお,17頁には,製品の断面図が掲載されているところ,当該図には,その下面の両端に傾斜部が設けられており,この傾斜部により天端モルタルのバリを避け ていることが示されている。 (b) 甲20の2(平成30年作成)・全周敷き込みの「簡単施工」を可能にした,ロングタイプ・特殊構造の換気スリット+防鼠材(先端シボリ)で,床下の湿気を効率よ (b) 甲20の2(平成30年作成)・全周敷き込みの「簡単施工」を可能にした,ロングタイプ・特殊構造の換気スリット+防鼠材(先端シボリ)で,床下の湿気を効率よく排出 なお,26頁には,「両端に天端モルタルのバリ逃げ」との説明が付された原告の製品の図が小さく掲載されている。 d 原告は,平成18年作成の「キソパッキンロング」のパンフレットにおいて,スタンダードタイプの製品の説明として,次の点を列記していた。なお,別のページには,製品の下面につき「両端に天端モルタルのバリ逃げ」との説明が 付された原告の製品の図が小さく掲載されている(甲21)。 - 44 -(a) 特殊構造の換気スリット+防鼠材(先端シボリ)(b) セットゲージ(セット位置合わせ部位)(c) アンカーホール(d) バリ逃げ基礎天端モルタルの中央部の凹みに合わせて,底面端部を削った形状。 浮きがなく,しっかりと据え付けができます。 (e) 表面シボ模様(f) 継手嵌合キソパッキンロングを連結するための,凹凸の形状です。 (g) 調整板ストッパー嵌合部 (h) 防風透湿マット(i) 施工が速いロングタイプ(j) ノウハウから生まれた20㎜の厚み(k) バリエーション豊富な3サイズe 原告・被告の同業他社の同種ないし類似製品に係る説明 (a) 乙37(土台パッキンLシリーズ)基礎天端に敷き詰めるだけの簡単施工。精度の高い施工を標準化できます。 ・長尺で施工が簡単!割付不要・安心の強度・耐久性 ・防鼠機能付き(b) 乙38(土台スペーサ 工。精度の高い施工を標準化できます。 ・長尺で施工が簡単!割付不要・安心の強度・耐久性 ・防鼠機能付き(b) 乙38(土台スペーサーロング)簡単施工で,しっかりフィット。 ・表面の凹凸模様で滑りにくくなっています。/さらに突起を設けて木材にしっかり食い込むため,高い安全性を実現しました(「/」は改行を示す。)。 ・ロングタイプでは全周敷き込みで簡単施工。カットも容易で作業効- 45 -率が上がります。 (c) 乙39(フリーロングキャットスペーサー)・切断・分割・調整がカンタン・全周換気+防鼠機能・ピッタリ安定&カンタン調整 ・白アリ保証が適用されます。 など(d) 乙40(エコパッキン長尺)・防鼠材不要のロングタイプ・アンカーボルトの位置調整が簡単・手で折り曲げて簡単施工 (オ) 以上を踏まえ,顧客吸引力の観点から被告第2製品における本件第2及び第3特許の技術的意義の有無及び程度を検討すると,まず,本件被告カタログ記載の「6つの特徴」の1つとして,被告第2製品は「素手で持っても痛くありません。」との記載がある。「テーパ部」の解釈に関する被告の主張をも考慮すると,これは「テーパ部」の存在をうかがわせるものとも理解し得るものの,いかなる構 成によって「素手で持っても痛く」ないことを実現しているのかは具体的に示されていない。当該記載に付された写真では,製品のアンカーボルト挿通用の開口部に手指を通して握る形で,当該開口部を囲む部材のうち長辺部分をなす部材のうちの1つを掌全体で把持していること(甲4,乙32)に鑑みると,「テーパ部」の存在故に「素手で のアンカーボルト挿通用の開口部に手指を通して握る形で,当該開口部を囲む部材のうち長辺部分をなす部材のうちの1つを掌全体で把持していること(甲4,乙32)に鑑みると,「テーパ部」の存在故に「素手で持っても痛く」ないという効果を奏しているとも断じ得ない。また, 本件第2発明の効果2に言及する記載もない。 さらに,本件被告カタログには,「6つの特徴」の1つとして,「スピード施工」が挙げられているところ,その部分には,被告第2製品の片方の端部の接続部について「連結構造」との説明が付されている。もっとも,「連結構造」とされる接続部の構造や接続の仕方ないし効果に関する説明はない。 むしろ,前記認定のとおり,本件被告カタログでは,被告第2製品の強度や換気- 46 -性能,供給・品質・価格の安定性,カットしやすい独自の形状を有する省施工商品であること等が強調されている。 この点は,原告や同業他社のカタログ等にも共通する。このうち,原告のカタログ等には「テーパ部」や「接続部」に関する記載も見られるものの,その構造は具体的に示されておらず,作用効果も,他の記載と比較すると,強調の度合いは低い。 むしろ,全周敷き込みの簡単施工や特殊構造の換気スリット・防鼠材といった点が前面に出されて強調されている。 以上の事情に加え,被告第2製品が本件第2発明の効果を奏しない形で使用されることがあり得ることは否定できないこと(ただし,実務上そのような使用態様が採られる割合は不明である以上,この事情を推定覆滅に当たって過大視することは できない。),前述のとおり,台輪の幅方向への移動を防止する別の方法もあることを踏まえると,本件第2及び第3発明は,施工容易性の実現という観点から一定の顧客吸引力を有するといえるものの,本件第2発明の「テー 。),前述のとおり,台輪の幅方向への移動を防止する別の方法もあることを踏まえると,本件第2及び第3発明は,施工容易性の実現という観点から一定の顧客吸引力を有するといえるものの,本件第2発明の「テーパ部」の構成や本件第3発明の構成要件3C~3Gの構成を有することによる顧客吸引力は,相対的には小さいというべきである。 なお,被告は,被告第2製品の形状変更後に売上げが増加したことを指摘しているが,その裏付けとなる資料(乙60)は形状変更後の4か月の売上額を集計したものにすぎないし,売上げの変動要因としては様々なものが考えられることから,上記事情が直ちに本件第2及び第3特許が被告第2製品の需要に与える影響が小さいことを裏付けると見ることはできない。 これらの事情を総合的に考慮すると,本件では,7割の限度で特許法102条2項による推定が覆滅されると認めるのが相当である。これに反する原告及び被告の各主張はいずれも採用できない。 エミサワホームに生じた損害本件第2及び第3特許がいずれも持分2分の1の割合による原告とミサワホ ームの共有であることは当事者間に争いはなく,また,弁論の全趣旨によれば,ミ- 47 -サワホームが自社施工工事分を除きこれらの特許を実施していないことが認められる。そして,原告及び被告いずれも,特許法102条3項に基づき損害額を算定する場合の本件第2及び第3特許の相当実施料率を4%程度とし,これを不合理ないし不相当と見るべき事情もないことから,相当実施料率は4%と認められるところ,相当実施料率を乗じる対象となる売上額を消費税込の金額とすべき証拠はない。 そうすると,次のとおり,1463万7125円をもってミサワホーム(なお,同社が本件第2特許の持分を取得する以前の損害賠償請求 料率を乗じる対象となる売上額を消費税込の金額とすべき証拠はない。 そうすると,次のとおり,1463万7125円をもってミサワホーム(なお,同社が本件第2特許の持分を取得する以前の損害賠償請求権を持分譲渡人が有しているのであれば,その譲渡人を含む。)の損害額と認めるのが相当である。 そして,侵害された特許権が共有であったことにより侵害者の賠償すべき損害額が単独保有の場合に比較して増額されるいわれはないことなどから,原告との関係 においては,更にこの限度で,特許法102条2項による推定が覆滅されるとするのが相当である。 (計算式) 売上額7億3185万6254円(税抜)×4%×1/2=1463万7125円オ原告の損害額 以上より,特許法102条2項に基づく原告の損害額は,別紙「被告第2製品に係る損害額(裁判所の認定)」の「原告の損害額」欄記載のとおり,4867万8376円と認められる。 (計算式) 被告の利益の額2億1105万1670円×0.3-1463万7125円=4867万8376円 (4) 原告の予備的主張について原告は,被告工場製品の製造販売について,特許法102条2項に基づき推定される損害額が同条3項に基づくそれを下回る場合には,予備的に,同項に基づく損害額を主張する。 しかし,前記認定から明らかなとおり,特許法102条3項に基づき推定される 原告の損害額は,同条2項に基づくそれを上回るものではないから,この点に関す- 48 -る原告の主張は採用できない。 仮に,原告の主張が,被告工場製品を除く被告第2製品の販売による損害については特許法102条2項に基づき賠償請求しつつ,被告工場製品の販売による損害については,同項に基づき算定される損害額が同条3項に基 ,原告の主張が,被告工場製品を除く被告第2製品の販売による損害については特許法102条2項に基づき賠償請求しつつ,被告工場製品の販売による損害については,同項に基づき算定される損害額が同条3項に基づくそれを下回る場合に,予備的に同項に基づく損害額を主張する趣旨であったとしても,前記3(2)ウ (オ)で判示したとおり,被告工場製品とそれ以外の製品とで訴訟物が異なると見るべき根拠はないから,原告の主張は採用できない。 (5) 弁護士費用(本件第1特許権の侵害分も含む。)について原告は本件訴訟代理人弁護士に訴訟の提起・追行を委任したところ,被告の本件第1~第3特許権侵害の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は,510万 円と認めるのが相当である。なお,逸失利益に係る損害の発生状況に照らし,弁護士費用に係る損害賠償支払債務のうち,平成29年8月17日の時点で遅滞に陥っていたのは460万円の損害賠償債務であると認めるのが相当である。また,被告の不法行為終了時期が平成30年10月末であることを踏まえると,残額の損害賠償債務の遅滞損害金の起算日は同月31日とするのが相当である。 (6) 原告の逸失利益に対する確定遅延損害金について原告が確定遅延損害金を請求している期間の,被告第2製品の製造販売による損害に対する遅延損害金の金額は,別紙「被告第2製品に係る損害額(裁判所の認定)」の「H31.2.28までの確定遅延損害金」欄記載のとおりの方法で計算すると,合計1231万6870円である。 4 争点4(消滅時効の成否)について被告は,原告がカタログ(乙52)又は展示会(乙53,54)を通じて被告第2製品の存在及び構造を知ったとして,当該製品の製造販売による損害賠償債務につき消滅時効を主張する。 ま 否)について被告は,原告がカタログ(乙52)又は展示会(乙53,54)を通じて被告第2製品の存在及び構造を知ったとして,当該製品の製造販売による損害賠償債務につき消滅時効を主張する。 まず,カタログ(乙52)は第三者が平成21年5月頃作成したものであるとこ ろ,そこには被告第2製品だけでなく,原告の製品も記載されている。しかし,両- 49 -製品は,連続しているとはいえ別々のページに掲載されており,しかも被告の社名は明示的に記載されていない。そうすると,原告がこれによって被告第2製品の存在を認識し,かつ,これを被告が製造販売したものであることを認識したことまで認めることはできない。 また,展示会(乙53,54)については,仮にその展示会に被告第2製品が出 展されていたとしても,原告がそれを目にしたことを認めるに足りる証拠もない。 しかも,その展示会には被告第2製品が展示会主催者のプライベートブランドとして出展されていたというのであるが,そのような出展形態では,当該製品の製造元が被告であることを知り得るとはいい難いし,原告が主催者に確認するなどして同製品の製造元が被告であると知ったことを認めるに足りる証拠もない。 以上より,原告が被告指摘に係るカタログないし展示会を通じて,被告が被告第2製品を製造販売していることを知ったとは認められない。そうである以上,消滅時効に係る被告の主張は採用できない。 5 差止め及び廃棄請求について被告は長期間にわたって被告第2製品を製造販売し続けたこと,本件でも特許権 侵害の成立を争っていたことを踏まえると,被告が本件第2及び第3特許権を侵害するおそれはなおも認められる(なお,被告がYPCとの間で吸収分割契約を締結したことを踏まえても,この判断は左右されない。)。し の成立を争っていたことを踏まえると,被告が本件第2及び第3特許権を侵害するおそれはなおも認められる(なお,被告がYPCとの間で吸収分割契約を締結したことを踏まえても,この判断は左右されない。)。したがって,原告による被告第2製品の製造,販売等の差止請求には理由がある。 また,被告は平成30年10月に被告第2製品の製造を中止したが,これは仮処 分命令を受けたものであり(弁論の全趣旨),その執行官保管も認められている。こうした経緯を踏まえると,被告第2製品については,その廃棄を命じる必要がある。 他方,半製品については,被告が平成30年10月以降,被告第2製品を製造しているとは認められず,しかも,被告は商品カンパニー事業に関して有する権利義務をYPCに承継させたことに鑑みると,現時点で,被告が被告第2製品の半製品を 所持していると認めることはできない。したがって,廃棄請求については,被告第- 50 -2製品の廃棄の限度で認めるのが相当である。 6 結論以上より,原告の請求は主文第1項~第3項の限度で認容し,その余の請求はいずれも理由がないから,棄却することとして,主文のとおり判決する。なお,主文第1項及び第2項については,仮執行の宣言を付すのは相当でないから,これを付 さないこととする。また,被告は主文第3項につき仮執行免脱宣言を求めているが,事案に鑑み,相当でないので,これを付さないこととする。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官 杉浦正樹 裁判官 杉浦正樹 裁判官 野上誠一 裁判官 主文 別紙被告製品目録 1 キソスペーサーロング換気タイプ用レベル調整プレートLP200-1、LP200-2、LP200-3 2 キソスペーサーロング換気タイプKSL91-100、ZSL91-100、WKSL100、NKSL91-100、NZSL91-100、NKSLG91-100、NKSLG91-100A、NZSLG91-100、KSL91-120、ZSL91-120、WKSL120、NKSL91-120、NZSL91-120、NKSLG91-120、NZSLG91-120以上 ※ 以下の1ないし5は省略 1 別紙被告第2製品の売上高・仕入高等 2 別紙被告第2製品に係る損害額(原告の主張) 3 別紙被告第2製品に係る損害額(裁判所の認定) 4 別紙特許公報 5 別紙訂正明細書
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