令和3年4月13日判決言渡令和2年(ネ)第10041号損害賠償請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成30年(ワ)第31428号)口頭弁論終結日令和3年2月4日判決 控訴人 X 被控訴人東海旅客鉄道株式会社 同訴訟代理人弁護士宍戸一樹同吉川景司同首藤聡 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は,控訴人に対し,10万円及びこれに対する平成30年10月2 5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要(略称は,特に断りのない限り原判決に従う。) 1 本件は,発明の名称を「座席管理システム」とする特許(本件特許)の特許権者である控訴人において,被控訴人が運営等を行う東海道新幹線で使用されている車内改札システム(被告システム)は本件特許権を侵害するものであり, これにより控訴人に実施料相当額の損害が生じた旨主張して,本件特許権侵害 の不法行為による損害賠償請求権に基づく一部請求として,10万円及びこれに対する平成30年10月25日(不法行為の後である訴状送達の日の翌日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原判決は,被告システムは本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び2に係 る発明の技術的範囲に属さないから,その余 改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原判決は,被告システムは本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び2に係 る発明の技術的範囲に属さないから,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の請求は理由がないとして,これを棄却したところ,控訴人は,これを不服として,本件控訴を提起した。 2 前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,後記3のとおり控訴人の当審における補充主張を付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の2ないし4に記載のとおりであるから,これを引用する。 3 控訴人の当審における補充主張(1) 構成要件1C,2Cの充足性について原判決は,本件発明における「座席表示情報」とは,「ホストコンピュータ」において少なくとも券情報と発券情報の2つの情報に基づいて作成され, 端末機に伝送される情報であるところ,被告システムにおいては,改札機情報サーバーにおいてもマルスサーバーにおいても,このような本件発明における「座席表示情報」が作成されているとはいえず,その作成手段があるとはいえないから,被告システムは,構成要件1C,2Cを充足しない旨判断したが,以下のとおり誤りである。 すなわち,本件明細書の「例えばこれ等の両情報を地上の管理センターから受ける場合,伝送される情報は2種になるために通信回線の負担を1種の場合に比べて2倍にするとともに端末機の記憶容量と処理速度とをともに2倍にするなどの問題がある」(【0004】)との記載は,券情報と発券情報を別々に受ける場合の問題がある本件発明の実施例を示したものであるか ら,本件発明に関し記載したものであって,従来の技術ではない。 こうした本件発明の問 記載は,券情報と発券情報を別々に受ける場合の問題がある本件発明の実施例を示したものであるか ら,本件発明に関し記載したものであって,従来の技術ではない。 こうした本件発明の問題がある実施例は,券情報と発券情報とを別々に端末機に伝送する場合,それらの両情報を別ルートの通信回線を使って行う必要があるため,列車の本数が多い新幹線等では特に地上と端末機との通信回線の構築をより複雑にするなどの問題があることから,本件発明は,上記の問題のある実施例とは別に,券情報と発券情報とを統合して端末機に伝送す るもう1つの実施例を明細書に記載したものである。本件明細書に記載した2つの実施例は,本件明細書の特許請求の範囲に記載のある各構成要件の座席表示情報を作成する作成手段,伝送する伝送手段,表示する表示手段等の1つの手段にすぎず,いずれも特許請求の範囲に含まれるところ,被告システムは,本件発明の問題がある実施例と同じ構成を有するものであるから, 本件被告製品は,構成要件1C,2Cを充足する。 (2) 構成要件1D及び1E,2D及び2Eの充足性について原判決は,被告システムにおいては,本件発明における「座席表示情報」が作成され,その「座席表示情報」を記憶し,伝送する「ホストコンピュータ」があるとはいえないから,被告システムは,少なくとも構成要件1D及 び1E,2D及び2Eを充足しない旨判断したが,以下のとおり誤りである。 すなわち,被告システムと同じ構成の本件発明の問題がある実施例と,この問題を解決した本件発明のもう1つの実施例は,ともに前記(1)の作成手段(構成要件1C,2C)により作成された座席表示情報を記憶する手段(構成要件1D,2D)によって記憶された前記座席表示情報を伝送する伝送 決した本件発明のもう1つの実施例は,ともに前記(1)の作成手段(構成要件1C,2C)により作成された座席表示情報を記憶する手段(構成要件1D,2D)によって記憶された前記座席表示情報を伝送する伝送手 段(構成要件1E,2E)の各手段におけるそれぞれ1つの手段であるから,各手段が異なる前記2つの実施例はともに構成要件1Aないし1I,構成要件2Aないし2Iを充足することは前記(1)のとおりである。したがって,本件発明の問題がある実施例と同じ構成を有する被告システムも,構成要件を充足する。 (3) 均等侵害について ア均等論の第1要件について原判決は,本件発明において,従来技術に見られない特有の技術的思想を有する特徴的部分である本質的部分は,「ホストコンピュータ」が券情報と発券情報との2つの情報に基づいて1つの「座席表示情報」を作成する作成手段を有し,そのようにして作成された「座席表示情報」が「ホス トコンピュータ」から端末機に伝送される点にある旨判断し,1つの実施例であり,本件発明の1つの作成手段である「券情報を発券情報との2つの情報に基づいて1つの「座席情報」を作成する」作成手段に限定して本件発明の本質的部分を認定し,被告システムが均等論の第1要件を充足しないとしたが,前記(1)及び(2)において指摘したとおり,被告システムと 同じ構成の本件発明の問題がある実施例に基づく作成手段を考慮することなく判断したものであり,誤りである。 本件発明の課題は,車内改札の省力化を可能にすることにあり,それにより,車掌による車内乗客サービス及び車内防犯の強化等の作用効果が従来と比べて格段に図られる点にある。こうした本件発明の課題及び作用効 果等の本件発明の特徴(本件発明の本 ることにあり,それにより,車掌による車内乗客サービス及び車内防犯の強化等の作用効果が従来と比べて格段に図られる点にある。こうした本件発明の課題及び作用効 果等の本件発明の特徴(本件発明の本質的部分)は,被告システムでも実現されているから,仮に本件発明が券情報と発券情報とを1台のホストコンピュータで情報処理するのに対し,被告システムでは券情報と発券情報とを2台のサーバーで別々に処理しているとしても,この相違は,本件発明の本質的部分とは関係がなく,非本質的部分の相違である。 イ均等論の第2要件について原判決は,被告システムは,端末機に対して券情報と発券情報という2つの情報に基づいて作成された1つの情報が伝送されるものではないから,券情報と発券情報がそれぞれ端末機に伝送されるシステムに比べて通信回線の負担と端末機の記憶容量及び処理速度を半減するものではなく, したがって,本件発明と同一の作用効果を奏するものではないとして,第 2要件を満たさない旨判断したが,前記ア同様に,被告システムと同じ構成の本件発明の問題がある実施例を考慮することなく判断したものであり,誤りである。 本件発明によって得られる車内検札の自動化(車内改札の省略化)及びこれによって得られる乗客サービスの向上等の作用効果は端末機に対して 券情報と発券情報が別々である被告システムにおいても得られるのであって,仮に,被告システムに本件発明と異なる部分があるとしても,被告システムは車内改札の省力化が使用目的であり,車内改札の省力化の使用目的に伴って同様の作用効果が得られるから,被告システムは第2要件を満たす。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は,次のとおり 使用目的に伴って同様の作用効果が得られるから,被告システムは第2要件を満たす。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は,次のとおり原判決を補正し,後記2のとおり,控訴人の当審における補充主張に対する判断を補足するほか,原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の1ないし4(14頁5行目から29頁23行目まで)に記載のとおり であるから,これを引用する。 (原判決の補正)(1) 原判決14頁8行目の「従来,」を次のとおり改める。 「【従来の技術】従来,」 (2) 原判決18頁16行目冒頭から19頁7行目末尾までを次のとおり改める。 「(2) 上記(1)の記載事項によれば,本件明細書の発明の詳細には,本件発明に関し,次のような開示があることが認められる。 ア従来,指定座席を管理する座席管理システムとしては,カードリーダ で読み取られた座席指定券の券情報及び券売機等で発券された座席指定 券の発券(座席予約)情報等を,例えば,列車車内において,端末機(コンピュータ)で受けて記憶し表示して,指定座席の利用状況を車掌が目視できるようにして車内検札を自動化する座席指定席利用状況監視装置が発明されているが,この座席指定席利用状況監視装置には,券情報と発券情報を地上の管理センターから受ける場合,伝送される情報は2種 になるために通信回線の負担を1種の場合に比べて2倍にするとともに端末機の記憶容量と処理速度とをともに2倍にするなどの問題があった(【0002】,【0004】)。 「本発明」の課題は,上記発明の座席指定席利用状況監視装置は上記券情報と上記発券情報とに基づいて各座席指定席の利用状況 ともに2倍にするなどの問題があった(【0002】,【0004】)。 「本発明」の課題は,上記発明の座席指定席利用状況監視装置は上記券情報と上記発券情報とに基づいて各座席指定席の利用状況を表示す るにはこれらの両情報を地上の管理センターから受ける場合,伝送される情報量が2倍になるために,該情報を伝送する通信回線の負担を2倍にするとともに端末機の記憶容量と処理速度をともに2倍にするなどの点にある(【0005】)。 イ 「本発明」は,上記の問題点を解決するために,上記管理センターに 備えられるホストコンピュータが,カードリーダで読み取られた座席指定券の券情報と券売機等で発券された座席指定券の発券情報とを入力して,これらの両情報に基づいて表示する座席表示情報を作成して,作成された前記座席表示情報を,前記ホストコンピュータと通信回線で結ばれて,指定座席を設置管理する座席管理地に備えられる端末機へ伝送 して,該端末機が前記座席表示情報を入力して表示するようにして構成したことを主要な特徴とするものである(【0006】,【0016】)。 ウ 「本発明」は,上記の構成によって,上記ホストコンピュータから上記端末機へ伝送される情報量が上記券情報と上記発券情報との両表示情報から1つの表示情報となる上記座席表示情報にすることで半減さ れ,これによって通信回線の負担と端末機の記憶容量と処理速度とを半 減するなどの効果を有する(【0007】,【0020】)。」(3) 原判決22頁16行目冒頭から24頁13行目末尾までを次のとおり改める。 「(1)ア前記第2の2(3)のとおり,本件発明1に係る座席管理システムは,「カードリーダで読取られた座席指定券の券情報或いは券売機等で発 券された座席 末尾までを次のとおり改める。 「(1)ア前記第2の2(3)のとおり,本件発明1に係る座席管理システムは,「カードリーダで読取られた座席指定券の券情報或いは券売機等で発 券された座席指定券の発券情報等を管理する管理センターに備えられるホストコンピュータ」(構成要件1A1)が,「前記券情報と前記発券情報とを入力する入力手段と,」(構成要件1B)「該入力手段によって入力された前記券情報と前記発券情報とに基づき,かつ,前記座席管理地に設置される指定座席のレイアウトに基づいて表示する 座席表示情報を作成する作成手段と,」(構成要件1C),「該作成手段によって作成された前記座席表示情報を記憶する記憶手段と,」(構成要件1D),「該記憶手段によって記憶された前記座席表示情報を伝送する伝送手段と,」(構成要件1E)を備えることを発明特定事項に含むものである。 また,同様に,本件発明2に係る座席管理システムは,「カードリーダで読取られた座席指定券の券情報或いは券売機等で発券された座席指定券の発券情報等を管理する管理センターに備えられるホストコンピュータ」(構成要件2A1)が,「前記券情報と前記発券情報とを入力する入力手段と,」(構成要件2B1),「該入力手段によっ て入力された前記券情報と前記発券情報とを,前記座席管理地又は前記端末機を識別する座席管理地識別情報又は端末機識別情報に集計する集計手段と,」(構成要件2B2),「該集計手段によって集計された前記券情報と前記発券情報とに基づき,かつ,前記座席管理地に設置される指定座席のレイアウトに基づいて表示する座席表示情報を 作成する作成手段と,」(構成要件2C),「該作成手段によって作 成された前記座席表示情報を記憶する記憶手段と,」(構 に設置される指定座席のレイアウトに基づいて表示する座席表示情報を 作成する作成手段と,」(構成要件2C),「該作成手段によって作 成された前記座席表示情報を記憶する記憶手段と,」(構成要件2D),「該記憶手段によって記憶された前記座席表示情報を伝送する伝送手段と,」(構成要件2E)を備えることを発明特定事項に含むものである。 イこうした発明特定事項からすると,本件発明1の「該ホストコンピ ュータと通信回線で結ばれて,指定座席を設置管理する座席管理地に備えられる端末機」(構成要件1A2)に伝送される「座席表示情報」(1C,1F)は,管理センターに備えられるホストコンピュータが,①入力手段によって入力された,カードリーダで読み取られた座席指定券情報の券情報と券売機等で発売された座席管理指定券の発券情報 と,②指定座席を設置管理する座席管理地に設置される指定座席のレイアウトとに基づいて作成し,記憶する手段によって作成し,記憶したものであるということができる。 また,本件発明2の「該ホストコンピュータと通信回線で結ばれて,指定座席を設置管理する座席管理地に備えられる端末機」(構成要件 2A2)に伝送される「座席表示情報」(2C,2F)は,管理センターに備えられるホストコンピュータが,①入力手段によって入力され,複数の指定座席を管理する座席管理地を識別する座席管理地識別情報に集計する集計手段により集計され,又は複数の座席管理地に備えられる端末機を識別する座席管理識別情報別に集計された,カード リーダで読み取られた座席指定券情報の券情報と券売機等で発売された座席管理指定券の発券情報と,②指定座席を設置管理する座席管理地に設置される指定座席のレイアウトとに基づいて作成され,記憶す リーダで読み取られた座席指定券情報の券情報と券売機等で発売された座席管理指定券の発券情報と,②指定座席を設置管理する座席管理地に設置される指定座席のレイアウトとに基づいて作成され,記憶する手段によって作成し,記憶したものであるということができる。 ウこのような認定は,前記のとおり,請求項の記載自体から文理上明 らかである上,前記1(1)の本件明細書の記載(【0006】,【00 07】,【0010】,【0012】,【0016】,【0020】)とも整合するものである。 エ以上によれば,本件発明において端末機に伝送される「座席表示情報」は,ホストコンピュータが,①カードリーダで読み取られた座席指定券情報の券情報と券売機等で発売された座席管理指定券の発券情 報の情報と,②指定座席を設置管理する座席管理地に設置される指定座席のレイアウトに基づいて作成され,記憶されたものであると理解することができる。」⑷ 原判決25頁5行目の「「座席表示情報」とは」」から同9行目の「とはいえず,」までを「「座席表示情報」は,①カードリーダで読み取られた座 席指定券情報の券情報と券売機等で発売された座席管理指定券の発券情報の情報と,②指定座席を設置管理する座席管理地に設置される指定座席のレイアウトに基づいて作成され,端末機に伝送される情報であるところ,被告システムは,上記のとおり,改札情報サーバーは駅改札通過情報(本件発明の券情報に相当)に基づく情報を作成し,マルスサーバーは座席指定券の予約 情報(本件発明の発券情報に相当)に基づく情報をそれぞれ作成し,それぞれ必要な情報を抽出し,その抽出された情報を車掌端末(本件発明の端末機に相当)を伝送する構成を有しており,車掌携帯端末に伝送される情報は, 件発明の発券情報に相当)に基づく情報をそれぞれ作成し,それぞれ必要な情報を抽出し,その抽出された情報を車掌端末(本件発明の端末機に相当)を伝送する構成を有しており,車掌携帯端末に伝送される情報は,駅改札通過情報と予約情報に基づいて作成された1つの情報であるとはいえない点(上記①)で少なくとも異なっており,本件発明における「座席表示 情報」を作成しているとはいえず,」と改める。 ⑸ 原判決26頁12行目の「本件明細書」から同13行目の「理由はない。」までを「請求項1及び請求項2の「ホストコンピュータ」について,その具体的な個数の記載はなく,本件明細書にもその旨の記載はないから,サーバーの個数を1つに限定する理由はない。」と改める。 ⑹ 原判決28頁6行目冒頭から29頁3行目末尾までを次のとおり改める。 「 本件発明の特許請求の範囲(請求項1,請求項2)の記載及び前記1(1)の開示事項を総合すれば,従来,指定座席を管理する座席管理システムとしては,カードリーダで読み取られた座席指定券の券情報及び券売機等で発券された座席指定券の発券(座席予約)情報等を,例えば,列車車内において,端末機(コンピュータ)で受けて記憶し表示して,指定座席の利 用状況を車掌が目視できるようにして車内検札を自動化する座席指定席利用状況監視装置が発明されているが,この座席指定席利用状況監視装置には,券情報と発券情報を地上の管理センターから受ける場合,伝送される情報は2種になるために通信回線の負担を1種の場合に比べて2倍にするとともに端末機の記憶容量と処理速度とをともに2倍にするなどの 問題があり,本件発明は,こうした問題点を解決するために,上記管理センターに備えられるホストコンピュータが,カードリーダで読み取られた もに端末機の記憶容量と処理速度とをともに2倍にするなどの 問題があり,本件発明は,こうした問題点を解決するために,上記管理センターに備えられるホストコンピュータが,カードリーダで読み取られた座席指定券の券情報と券売機等で発券された座席指定券の発券情報とを入力して,これらの両情報に基づいて表示する座席表示情報を作成して,作成された前記座席表示情報を,前記ホストコンピュータと通信回線で結 ばれて,指定座席を設置管理する座席管理地に備えられる端末機へ伝送して,該端末機が前記座席表示情報を入力して表示するようにして構成したことを主要な特徴とするものであり,こうした構成によって,上記ホストコンピュータから上記端末機へ伝送される情報量が上記券情報と上記発券情報との両表示情報から1つの表示情報となる上記座席表示情報にす ることで半減され,これによって通信回線の負担と端末機の記憶容量と処理速度とを半減するなどの効果を有するようにした点に技術的意義があるものと認められる(【0002】,【0004】,【0005】,【0006】,【0007】,【0016】,【0020】)。 そして,本件発明の上記技術的意義に鑑みると,本件発明の本質的部分 は,ホストコンピュータが,券情報と発券情報とに基づき,かつ,座席管 理地に設置される指定座席のレイアウトに基づいて表示する座席表示情報を作成し,これを記憶し,端末機に伝送するという構成を採用することにより,上記ホストコンピュータから上記端末機へ伝送される情報量が上記券情報と上記発券情報との両表示情報から1つの表示情報となる上記座席表示情報にすることで半減され,これによって通信回線の負担と端末 機の記憶容量と処理速度とを半減するなどの効果を奏するようにしたことにあるものと認め の両表示情報から1つの表示情報となる上記座席表示情報にすることで半減され,これによって通信回線の負担と端末 機の記憶容量と処理速度とを半減するなどの効果を奏するようにしたことにあるものと認められる。 これに対し,被告システムは,改札情報サーバーは駅改札通過情報に基づく情報を作成し,マルスサーバーは座席指定券の予約情報に基づく情報をそれぞれ作成し,それぞれ必要な情報を抽出し,その抽出された情報を 車掌端末(本件発明の端末機に相当)を伝送する構成を有しており,少なくとも構成要件1Cないし1E,2Cないし2Eを充足しないため,ホストコンピュータ(改札情報サーバー,マルスサーバー)から車掌携帯端末機へ伝送される情報量が券情報と発券情報との両表示情報から1つの表示情報となる上記座席表示情報にすることで半減され,これによって通信 回線の負担と端末機の記憶容量と処理速度とを半減するなどという本件発明の効果を奏するものと認めることはできない。 したがって,被告システムは,本件発明の本質的部分を備えているものと認めることはできず,被告システムの相違部分は,本件発明の本質的部分でないということはできないから,均等論の第1要件,第2要件を充足 しない。」⑺ 原判決29頁16行目の「前記3(1)」を「前記ア」と改める。 2 控訴人の当審における補充主張について(1) 構成要件の充足性(文言侵害)について控訴人は,前記第2の3(1)及び(2)のとおり,本件明細書の「例えばこれ 等の両情報を地上の管理センターから受ける場合,伝送される情報は2種に なるために通信回線の負担を1種の場合に比べて2倍にするとともに端末機の記憶容量と処理速度とをともに2倍にするなどの問題がある」(【000 の管理センターから受ける場合,伝送される情報は2種に なるために通信回線の負担を1種の場合に比べて2倍にするとともに端末機の記憶容量と処理速度とをともに2倍にするなどの問題がある」(【0004】)との記載は,券情報と発券情報を別々に受ける場合の問題がある本件発明の実施例を示したものであって,本件発明に関し記載したものであり,従来の技術ではなく,こうした本件発明の問題がある実施例は,特許請求の 範囲に含まれるものであるところ,被告システムは,この問題のある実施例と同じ構成を有するものであるから,構成要件1Cないし1E,2Cないし2Eをそれぞれ充足する旨主張する。 しかし,特許発明の技術的範囲は,願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定められるものであり(特許法70条1項),願書に添付された 明細書の記載及び図面は,特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するに当たり斟酌される(同条2項)ものであるところ,本件発明1及び2においては,請求項1及び2の各発明特定事項の文言自体から,本件発明において端末機に伝送される「座席表示情報」は,ホストコンピュータが,①カードリーダで読み取られた座席指定券情報の券情報と券売機等で発売された 座席管理指定券の発券情報の情報と,②指定座席を設置管理する座席管理地に設置される指定座席のレイアウトに基づいて作成され,記憶されたものであることが明らかであり,こうした認定は,本件明細書の記載とも整合的であることは,補正して引用する原判決の第3の3(1)のとおりである。 また,本件明細書の【0004】は,「このように,前記座席指定席利用 状況監視装置は,・・・問題がある。」との記載であるところ,ここでの「前記座席指定席利用状況監視装置」は,これに先立つ【0002 ,本件明細書の【0004】は,「このように,前記座席指定席利用 状況監視装置は,・・・問題がある。」との記載であるところ,ここでの「前記座席指定席利用状況監視装置」は,これに先立つ【0002】の中で「【従来の技術】」との表題の下に記載された「座席指定席利用状況監視装置」を指すものであることは明らかであるから,この従来の「座席指定席利用状況監視装置」について【0004】において問題提起をしていることも文理上 明らかであり,本件明細書の【0004】は,従来技術に関するものであっ て,本件発明の技術的範囲に含まれるものではないというほかない(この点を措くにしても,そもそも明細書中に,当該発明における問題がある実施例を殊更記載するということ自体が想定し難いし,本件明細書全体の構成に照らしても,そのような趣旨を読み取ることは到底できない。)。 したがって,控訴人の上記主張はいずれにしても理由がない。 (2) 均等侵害について控訴人は,前記第2の3(3)アのとおり,原判決の本件発明の本質的部分に関する認定は誤りである旨主張する。 しかし,本件発明の本質的部分は,ホストコンピュータが,券情報と発券情報とに基づき,かつ,座席管理地に設置される指定座席のレイアウトに基 づいて表示する座席表示情報を作成し,これを記憶し,端末機に伝送するという構成を採用することにより,上記ホストコンピュータから上記端末機へ伝送される情報量が上記券情報と上記発券情報との両表示情報から1つの表示情報となる上記座席表示情報にすることで半減され,これによって通信回線の負担と端末機の記憶容量と処理速度とを半減するなどの効果を奏するよ うにしたことにあるものと認められることは,補正して引用する原判決の第3の4(3 にすることで半減され,これによって通信回線の負担と端末機の記憶容量と処理速度とを半減するなどの効果を奏するよ うにしたことにあるものと認められることは,補正して引用する原判決の第3の4(3)のとおりであるから,控訴人の上記主張は理由がない。 (3) その他,控訴人は縷々主張するが,いずれも結論を左右するものではない。 3 以上によれば,控訴人の請求は,その余について判断するまでもなく理由がなく,これを棄却した原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから棄却 すべきである。 よって,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官菅野雅之 裁判官中村恭 裁判官岡山忠広
▼ クリックして全文を表示