- 1 -平成24年5月16日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成24年(ネ)第10007号損害賠償請求控訴事件原審・大阪地方裁判所平成23年(ワ)第3102号口頭弁論終結日平成24年4月11日判決控訴人 X被控訴人Y同訴訟代理人弁護士伊原友己加古尊温 主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は,控訴人に対し,1000万円及びこれに対する平成21年4月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。 4 仮執行宣言第2 事案の概要本判決の略称は,当事者の呼称を含め,審級に応じた読替えをするほか,原判決に倣う。 1 本件は,控訴人が,弁理士である被控訴人との間で締結した本件出願AないしC(実用新案登録出願1件及び特許出願2件)の出願手続に係る委任契約について,被控訴人の行った補正等の行為が債務不履行又は不法行為に該当するとして,被控訴人に支払った手続費用,実用新案登録や特許登録に至らなかったことによる- 2 -逸失利益及び慰謝料等の合計4988万2200円の一部である1000万円及びこれに対する催告の日又は不法行為の後の日である訴状送達の日の翌日である平成21年4月15日から支払済みまで民法所定の -逸失利益及び慰謝料等の合計4988万2200円の一部である1000万円及びこれに対する催告の日又は不法行為の後の日である訴状送達の日の翌日である平成21年4月15日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原判決は,被控訴人は,控訴人の意向や承諾に沿って補正等を行ったものなどとして,被控訴人の行為はいずれも債務不履行又は不法行為には該当しない旨を判示し,控訴人の請求を棄却したため,控訴人は,原判決を不服として控訴した。 2 前提となる事実控訴人の請求について判断の前提となる事実は,次のとおり訂正するほかは,原判決2頁6行目から6頁11行目までに摘示のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決4頁2行目から7行目までを,以下のとおり改める。 「控訴人は,平成8年7月15日付けで出願審査請求をしたところ,特許庁審査官は,平成9年11月11日,拒絶理由通知(甲4)を発した。その拒絶理由は以下のとおりである。 (ア) 本件出願Bに係る発明は,引用文献1(特開昭63-3228号公報)及び2(実願昭61-86729号(実開昭62-197025号)のマイクロフィルム)に記載された発明に基づいて,当業者において容易に想到することができたものであるから,平成11年5月14日法律第41号による改正前の特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 a 請求項1に対して車両の積載重量測定装置において送受信機によって車両データを送受することは,引用文献1に記載されている。積載重量測定装置を道路に設けることも周知である。 b 請求項2に対してトラックスケールの計重値に基づき伝票を発行し,料金を徴収することは引用文献2に記載されているから,総重量に基づき通行料金カードを発行するこ を道路に設けることも周知である。 b 請求項2に対してトラックスケールの計重値に基づき伝票を発行し,料金を徴収することは引用文献2に記載されているから,総重量に基づき通行料金カードを発行することが格別困難であるとは認められない。 - 3 -c 請求項3に対して計重測定機をいくつ設けるかは設計的事項にすぎない。 d 請求項4に対して総重量から車体重量を差し引いて積載重量を算出することも引用文献1に記載されている。積載重量測定装置をごみ処理場に設けることも周知である。 (イ) 請求項1ないし4は,特許請求の範囲の記載が平成6年12月14日法律第116号による改正前の特許法36条5項2号及び6項(以下,特許法については,改正に係る記載を省略し,単に「特許法」という。)の要件を満たしていない。 a 各請求項の記載からは,発明の対象が何であるのか不明であり,また,請求項1,3,4には複数の文が記載されており,これらの請求項に記載された事項が1つの発明を構成するのか否かも不明である(各請求項は1文で記載するとともに,末尾には対象となる発明の名称を記載されたい。)。 b 各請求項には,本願発明の目的,動作等が記載されているにすぎず,特許を受けようとする発明の構成に欠くことのできない事項のみが記載されているとは認められない(各請求項には,課題を解決するための発明の技術的構成を記載されたい。)。」(2) 原判決5頁21行目「以下「本件出願C」という。」を「以下「本件出願C」といい,本件出願AないしCを総称して,「本件各出願」という。」と改める。 3 本件訴訟の争点(1) 本件出願Aに係る被控訴人の債務不履行又は不法行為の成否(争点1)(2) 本件出願Bに係る被控訴人の債務不履行又は不法行為の成否(争点2)(3) 本件出願C 。 3 本件訴訟の争点(1) 本件出願Aに係る被控訴人の債務不履行又は不法行為の成否(争点1)(2) 本件出願Bに係る被控訴人の債務不履行又は不法行為の成否(争点2)(3) 本件出願Cに係る被控訴人の債務不履行又は不法行為の成否(争点3)(4) 損害額(争点4)第3 当事者の主張 1 原審における主張当事者の原審における主張は,次のとおり訂正するほかは,原判決6頁23行目- 4 -から10頁13行目までに摘示のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決6頁23行目の「被告には,本件出願Aに係る債務不履行又は不法行為があるか」を「本件出願Aに係る被控訴人の債務不履行又は不法行為の成否」と改める。 (2) 原判決7頁12行目「実用新案法3条柱書及び5条等」を,「平成11年4月14日法律第41号による改正前の実用新案法3条柱書及び平成6年12月14日法律第116号による改正前の実用新案法5条(以下,実用新案法については,改正に係る記載を省略し,単に「実用新案法」という。)」と改める。 (3) 原判決8頁2行目の「被告には,本件出願Bに係る債務不履行又は不法行為があるか」を「本件出願Bに係る被控訴人の債務不履行又は不法行為の成否」と改める。 (4) 原判決8頁17行目の「被告には,本件出願Cに係る債務不履行又は不法行為があるか」を「本件出願Cに係る被控訴人の債務不履行又は不法行為の成否」と改める。 2 争点1(本件出願Aに係る被控訴人の債務不履行又は不法行為の成否)についての当審における補充主張〔控訴人の主張〕(1) 全面的に書き換える補正の必要性についてア原判決は,本件出願Aについて,平成9年3月4日,拒絶理由通知を受けた時点で,少なくとも請求項の記載について,技術的構成を記載 訴人の主張〕(1) 全面的に書き換える補正の必要性についてア原判決は,本件出願Aについて,平成9年3月4日,拒絶理由通知を受けた時点で,少なくとも請求項の記載について,技術的構成を記載するように全面的に書き換える手続補正をする必要があったことは明らかであるとする。 しかしながら,控訴人は,本件出願Aについて被控訴人に委任する際,実開平8-794号公報及び注目発明選定証(甲22の1)を提示し,本件出願Aに係る技術は,光学的変位測定法(貨物自動車に光を投射し,貨物自動車の軸重荷重による影の変位差をもって重量を測定する方式)及びコンベアー(回転式)方式(貨物自動車の重量測定器が重量オーバーをしていることを検知する方式)を使用するも- 5 -のであること等について詳細に説明していた。 イ被控訴人は,控訴人が技術説明をする間,メモすら取らなかった。被控訴人が,本件出願Aに係る技術内容及び用語を十分理解していたならば,平成9年3月24日提出の手続補正書及び同年10月6日付け手続補正書の請求項の記載について,技術的構成を記載するように全面的に書き換える補正を行う必要性がないことは十分認識し得たものであり,そのような補正を行うことも,要旨変更と判断されることもなかったはずである。 ウ原判決は,控訴人が被控訴人に対する技術説明において使用した前記各文献の内容について合理的な検討を行っておらず,審理を十分に尽くしていない。 (2) 控訴人の承諾についてア原判決は,本件出願Aとは無関係な米国特許に係る出願手続の経緯を引合いに出し,本件出願Aについても,平成9年10月6日付け手続補正書の内容は,同様に,控訴人の意向に沿って作成されたものであるとする。 しかしながら,当該米国特許については,控訴人が実質的に補正書を作成したた 本件出願Aについても,平成9年10月6日付け手続補正書の内容は,同様に,控訴人の意向に沿って作成されたものであるとする。 しかしながら,当該米国特許については,控訴人が実質的に補正書を作成したため,控訴人の意向に沿って手続が進められたにすぎない。米国特許に係る出願手続の経緯からは,むしろ,被控訴人が本件出願Aについて,受任者としての責任を放棄していたことがうかがわれるものである。 イ被控訴人が,本件出願Aについて,手続の都度,控訴人に報告し,承諾を得ていたと主張するのであれば,米国特許に係る手続と同様に,書証をもって立証すべきである。 (3) 小括以上からすると,本件出願Aについて,被控訴人の行為は債務不履行又は不法行為に該当しないとした原判決は誤りである。 〔被控訴人の主張〕(1) 全面的に書き換える補正の必要性についてア控訴人は,被控訴人に対して,光学的変位測定法等について説明したことに- 6 -より,あたかも被控訴人において適正妥当な補正が可能であったかのように主張するが,控訴人が固執する「光学的変位測定法」なる用語については,平成9年10月6日付け手続補正書にも明記されており,また,当該補正書は,控訴人が示したとする注目発明認定証に係る考案の内容を踏まえたものであることからしても,被控訴人としては,最大限,控訴人の意向を汲んで補正書を作成したものである。 イ控訴人は,平成9年3月24日提出の手続補正書なるものの必要性を否定するが,これは,被控訴人に委任する前に控訴人自身が行い,後に補正却下になったものであって,被控訴人とは無関係である。 ウ被控訴人としては,先行する控訴人による出願や手続補正を前提に対応せざるを得ず,控訴人によってされた各手続が不適法なものであり,その補正が認められないような あって,被控訴人とは無関係である。 ウ被控訴人としては,先行する控訴人による出願や手続補正を前提に対応せざるを得ず,控訴人によってされた各手続が不適法なものであり,その補正が認められないようなものであった場合,たとえ専門家といえども,可及的に努力しても登録を得ることは至難の業といわざるを得ない。本件出願Aにおいて,控訴人自身が行った出願の枠内で被控訴人としては専門家として最善を尽くしたものである。 (2) 控訴人の承諾について被控訴人は,原判決認定のとおり,控訴人からの委任事務についても,通常業務の方式に則って,控訴人から発明と称する技術的事項について聴取し,それを特許審査,審判手続に適切に反映させるべく,知識と経験とを駆使して特許庁への提出書面を作成し,控訴人の承諾を得た上で提出している。本件出願Aに関する包袋書類は存在しないものの,同時期における控訴人に対する米国特許出願に係る連絡文書からも,控訴人の承諾を得ていたことが裏付けられるものである。 (3) 小括以上からすると,本件出願Aについて,被控訴人の行為は債務不履行又は不法行為に該当しないことは明らかである。 3 争点2(本件出願Bに係る被控訴人の債務不履行又は不法行為の成否)についての当審における補充主張〔控訴人の主張〕- 7 -(1) 平成9年11月11日付け拒絶理由通知についてア控訴人は,本件出願Bについて,平成9年11月11日付け拒絶理由通知を受けた。このうち,請求項3(貨物自動車の重量測定装置)に対する拒絶理由は,「貨物自動車に計重測定機を何個設置するかは設計上の問題である」と指摘されたにすぎず,審査官としては,計重測定機を2個以上設置する必要はないと述べているにとどまり,計重測定機自体は認める趣旨であることは明らかである。 そこで, 置するかは設計上の問題である」と指摘されたにすぎず,審査官としては,計重測定機を2個以上設置する必要はないと述べているにとどまり,計重測定機自体は認める趣旨であることは明らかである。 そこで,控訴人は,平成9年11月頃,被控訴人に対し,拒絶理由通知の内容及び技術内容の説明を行い,請求項3のみについて補正をするよう依頼した。 イ被控訴人は,平成10年1月12日付け手続補正書及び意見書を提出した。 これは,本件出願Bについて全文補正をし,請求項2を4に,4を3にそれぞれ変更し,更に,請求項3を請求項1の従属項(請求項2)とするものであった。 なお,上記意見書は,控訴人が被控訴人に対し,本件出願Cにおける補正にて使用するように指示し,交付したものであり,本件出願Bとは技術的関連を有するものではない。被控訴人は,本件出願Bと本件出願Cとの技術内容を混同していたため,本件出願Bに係る補正を正確に行うことができなかったものである。 ウ控訴人は,平成10年12月15日,前記イの補正が新規事項の追加に該当するとして,拒絶理由通知を受けた。これは,特許請求の範囲について,特許公開公報に記載された,控訴人作成に係る特許請求の範囲の記載に戻すように求める趣旨と解すべきである。これに対し,被控訴人は,平成11年4月1日付け手続補正書を提出し,請求項3を削除する内容の補正をした。 エ控訴人は,平成11年6月9日,拒絶査定を受けた。もっとも,その内容は,請求項2を独立項として補正すれば,特許登録を認めるというものであった。 被控訴人は,同年8月9日,拒絶査定不服審判請求をし,更に,同年9月6日付け補正書を提出し,請求項3を削除する内容の補正をした。これにより,特許請求の範囲は,請求項1が貨物自動車の総重量を測定して重量オーバーを表示する荷積載量 査定不服審判請求をし,更に,同年9月6日付け補正書を提出し,請求項3を削除する内容の補正をした。これにより,特許請求の範囲は,請求項1が貨物自動車の総重量を測定して重量オーバーを表示する荷積載量測定装置に関する発明であり,請求項2が請求項1の従属項として,シリンダ- 8 -とスプリングを用いた荷積載量測定装置に関する発明となった。 もっとも,被控訴人は,請求項2を独立項とする内容の補正を行わなかった。被控訴人は,本件出願Bの技術内容を正確に理解することができなかったため,拒絶査定の理由に対し,求められる補正を行うことができなかったものというほかない。 オ被控訴人は,審査官から,平成11年10月29日付けで,同年9月6日付け補正書の請求項2に限定すれば特許査定される旨の連絡を受けたにもかかわらず,平成12年1月17日,審査官と合意した内容の補正を行わず,上記補正書と同一内容の補正書及び意見書を提出した。 控訴人は,被控訴人から,拒絶理由通知や補正の内容について報告を受けておらず,平成12年1月中旬頃,被控訴人から補正書や審査官との面接記録を初めて受け取り,被控訴人に対し,請求項2に限定する旨の補正書を提出するよう求めたが,被控訴人はこれを拒絶した。控訴人は,審査官に対し,請求項2について限定する補正書を提出することの許可を求める嘆願書を送付するとともに,同年2月5日,被控訴人に対し,嘆願書及び重量測定装置に関する説明を行い,補正を促したが,被控訴人が補正を行わなかったので,控訴人は被控訴人を解任した。 (2) 原審における被控訴人本人尋問における供述内容について被控訴人は,原審における本人尋問において,補正については控訴人の意見を可能な限り取り入れた,審査官と合意した補正案については,権利範囲が狭すぎるとして控訴人が拒否し 尋問における供述内容について被控訴人は,原審における本人尋問において,補正については控訴人の意見を可能な限り取り入れた,審査官と合意した補正案については,権利範囲が狭すぎるとして控訴人が拒否した,自ら代理人を辞任したなどと供述した。 しかしながら,控訴人の意見を取り入れたとする根拠は,米国特許に係る手続において控訴人が承諾したことについて指摘するにすぎない。 また,請求項2に限定すると,請求項1の「貨物自動車」という限定がなくなり,「重力測定装置」一般に係る発明となることにより,結果的に権利範囲が拡大するから,産業界において重要視されている技術について,控訴人が権利範囲が狭すぎるとして審査官との合意を拒絶するはずがない。被控訴人がこのような供述をすること自体,本件出願Bの技術内容を理解していないことを裏付けるものである。 - 9 -(3) 小括以上からすると,本件出願Bについて,被控訴人の行為は債務不履行又は不法行為に該当しないとした原判決は誤りである。 なお,控訴人は,本件出願Bと同様の内容の発明につき,韓国において特許を取得している。控訴人は,当初,当該手続についても被控訴人に委任していたが,被控訴人が控訴人の説明した技術内容を正確に把握しておらず,被控訴人が作成した各種書類の内容に不満があったため,解任した。その後,控訴人は,韓国の特許事務所と直接,打合せをして,苦心の上,特許査定に至ったものである。韓国で,本件出願Bと同様の内容の発明に係る特許が登録されたことからすると,少なくとも被控訴人が本件出願Bに係る発明の技術内容及び控訴人の意見を理解し,代理人として職務を忠実に行ったならば,日本においても特許登録に至ったものと思われる。 また,本件出願Bに係る発明は,公開特許公報が公開された発明について,特許取得の可 容及び控訴人の意見を理解し,代理人として職務を忠実に行ったならば,日本においても特許登録に至ったものと思われる。 また,本件出願Bに係る発明は,公開特許公報が公開された発明について,特許取得の可能性を判断する「NRI サイバーパテントデスク」において,スコア99.1%という高評価を得ているものであるから,同発明は,最初から特許を取得できないような出願であったなどという被控訴人の主張は明らかに不合理である。 〔被控訴人の主張〕控訴人は,本件出願Bについてるる主張するが,いずれにせよ,このような出願当初の明細書の記載内容では登録に至る可能性が低い出願について,前置審査手続において減縮補正を行うことにより,請求項2については登録査定が得られる旨の審査官との合意が得られたのであれば,代理人弁理士である被控訴人が自己の都合でこれに沿った減縮補正を行わないなどということは,常識的にあり得ない。 控訴人は,権利範囲が狭くなることを嫌い,審査官との合意に沿った減縮補正を頑なに拒否したため,権利化の道を自ら閉ざしてしまったものにすぎない。 以上からすると,本件出願Bについて,被控訴人の行為は債務不履行又は不法行為に該当しないことは明らかである。 なお,韓国特許に係る経緯は,本件各出願とは無関係であるが,控訴人は,韓国- 10 -特許の各種手続について,代理人に対し,詳細かつ具体的な指示をしていたものであって,被控訴人が,控訴人に無断でその意に反する手続をしたとか,控訴人に対して何も手続状況の説明をしていないということは,到底あり得ない。 4 争点3(本件出願Cに係る被控訴人の債務不履行又は不法行為の成否)についての当審における補充主張〔控訴人の主張〕(1) 平成9年6月11日付け拒絶理由通知について原判決は,平成9年6月11日拒絶 件出願Cに係る被控訴人の債務不履行又は不法行為の成否)についての当審における補充主張〔控訴人の主張〕(1) 平成9年6月11日付け拒絶理由通知について原判決は,平成9年6月11日拒絶理由通知に対しては,請求項の内容を全面的に書き換え,技術的構成を明らかにする補正が必要であり,控訴人が希望する技術範囲を維持しながら新規事項を含まない補正をすることは容易ではなかったとする。 しかしながら,同通知には,「この拒絶理由通知中で指摘した請求項以外の請求項に係る発明については,拒絶の理由を発見しない。」,12の先行文献調査結果の記録は「拒絶理由を構成するものではない。」とも記載されており,原判決の認定は誤りである。 (2) 被控訴人による補正の問題点について控訴人は,自らの執筆した論文及び本件出願Cに係る特許公開公報に基づいて,被控訴人に対し,技術内容について十分に説明した。 被控訴人は,平成9年8月25日付け手続補正書を提出したが,当該補正は,名称の変更をしたり,上記論文の内容を全く加味することなく請求項1の内容について全文補正するものであったため,審査官は,同年10月24日付けで手続補正指令書を発し,同年6月11日付け拒絶理由通知以前の請求項の記載に戻した上で,再度,補正書を提出するように指示した。 被控訴人は,上記指示にもかかわらず,請求項1の記載について上記論文の内容に基づいて説明をしたり,名称の変更を戻すこともせず,更に,車輌情報検知システムに関する請求項についても請求することもせず,平成10年8月3日付け手続補正書を提出した。本件出願Cは,その後,拒絶査定された。 - 11 -このような経過からすると,被控訴人が控訴人の委任の趣旨に反し,出願の内容を熟知しようともしなかったことにより,拒絶査定を受けたことは 提出した。本件出願Cは,その後,拒絶査定された。 - 11 -このような経過からすると,被控訴人が控訴人の委任の趣旨に反し,出願の内容を熟知しようともしなかったことにより,拒絶査定を受けたことは明らかである。 (3) 控訴人の承諾について原判決は,本件出願Cについても,本件出願Aと同様に,米国特許に係る出願手続の経緯を根拠に控訴人の承諾があったとするものであって,明らかに不当である。 (4) 小括以上からすると,本件出願Cについて,被控訴人の行為は債務不履行又は不法行為に該当しないとした原判決は誤りである。 なお,控訴人は,本件出願Cと同様の内容の発明についても,韓国において特許を取得しており,被控訴人が代理人として職務を忠実に行ったならば,日本においても特許登録に至ったものであることは,本件出願Bにおいて先に述べたとおりである。 また,本件出願Cに係る発明も,「NRI サイバーパテントデスク」において,100%という高評価を得ているものである。 〔被控訴人の主張〕平成9年6月11日付け拒絶理由通知には,当該通知書で指摘された拒絶理由以外には,拒絶の理由を発見しない等の記載があるが,新規性や進歩性の審査をするための前提となる発明の要旨すら認定できない出願であったから,このような記載がされたものにすぎず,当該記載をもって,本件出願Cが登録に至る可能性がある出願であったものということはできない。 被控訴人は,控訴人が執筆した論文(甲50)をやむなく特許庁に提出するなど,最大限,控訴人のこだわりに応えて出願代理行為を行っていたものである。また,韓国特許に係る経緯については,本件出願Bについて先に述べたとおりである。 以上からすると,本件出願Cについて,被控訴人の行為は債務不履行又は不法行為に該当しないとことは明らかで ものである。また,韓国特許に係る経緯については,本件出願Bについて先に述べたとおりである。 以上からすると,本件出願Cについて,被控訴人の行為は債務不履行又は不法行為に該当しないとことは明らかである。 第4 当裁判所の判断- 12 - 1 争点1(本件出願Aに係る被控訴人の債務不履行又は不法行為の成否)について(1) 認定事実ア本件出願Aの願書に添付された明細書(甲24)には,本件出願Aに係る実用新案登録請求の範囲について,以下のとおり記載されている。 1) 自動車(トラック)が管理された(管理者がいる)場所,及び国道(広い道路)等を走行する場合に設置するもので,自動車(トラック)の荷積載を標別,検知し,車体の長さを測定する。重量オーバーを表示して警告することができる。 第1図(1)(2)(3)(4)(5)(6)2) 自動車(トラック)が第一計重測機と第二計重測機に同時に2台進入しても,第一計重測機のみが働く。自動車(トラック)の車体の長さを検知する。車輛が第一計重測機と第二計重測機に進入した場合は,合計重量が測定できる。(普通乗用車は測定しない)。第1図(2) 第2図(7)(8)(9)イ控訴人は,特許庁審査官から,平成9年3月4日付けで拒絶理由通知(甲1)を受けた。その拒絶理由は以下のとおりである。 (ア) 本件出願Aに係る考案は,実用新案法3条1項柱書の要件を満たしていない。請求項1及び2の記載からは各請求項に記載の事項が物品の形状,構造又は組合せに係るものであるのか否かが不明瞭である。各請求項に記載のものが物品の形状,構造又は組合せに係るものであることが明確になるように請求項全体の記載を補正されたい。 (イ) 本件出願Aは,同法5条5項2号及び6項の要件を満たしていない。請求項1及び2には,本願考 品の形状,構造又は組合せに係るものであることが明確になるように請求項全体の記載を補正されたい。 (イ) 本件出願Aは,同法5条5項2号及び6項の要件を満たしていない。請求項1及び2には,本願考案がどのように作動するかが記載されているにすぎず,実用新案登録を受けようとする考案の構成に欠くことのできない事項のみが記載されているとは認められない。各請求項には,実用新案登録を受けようとする考案の技術的構成を記載されたい。また,考案の構成の説明は図面で代用することは認められないので,各請求項の末尾の記載(請求項1の末尾の「第1図(1)(2)- 13 -(3)(4)(5)(6)」,請求項2の末尾の「第1図(2) 第2図(7)(8)(9)」という記載)は削除し,考案の構成を文章で記載されたい。 ウ控訴人は,平成9年9月4日,拒絶査定不服審判を請求したが,平成11年12月7日,「審判の請求は成り立たない」旨の審決がされた(甲3)。審決の理由は以下のとおりである。 (ア) 請求項1の記載からは,自動車が管理された場所及び走行する場所に設置するもので,自動車の荷積載を標別,検知し,車体の長さを測定し,重量オーバーを表示して警告することを把握することができるが,そのような作用を実現するためにどのような技術的手段をどのように設けたのかが請求項1に記載されていないため,物品の形状,構造又は組み合わせに係る考案の構成が依然として不明瞭である。 (イ) 請求項2の記載からは,自動車が第一計重測機と第二計重測機に同時に2台進入しても第一計重測機のみが働き,自動車の車体の長さを検知し,車輛が第一計重測機と第二計重測機に進入した場合には合計重量を測定し,普通乗用車は測定しないことが把握できるが,そのような作用を実現するために,どのような技術的手段をどのよう の車体の長さを検知し,車輛が第一計重測機と第二計重測機に進入した場合には合計重量を測定し,普通乗用車は測定しないことが把握できるが,そのような作用を実現するために,どのような技術的手段をどのように設けたのかが請求項2に記載されていないため,物品の形状,構造又は組み合わせに係る考案の構成が依然として不明瞭である。 (ウ) 請求項1及び2には,それぞれ図面の符号のみを記載しているが,考案の構成は図面の記載を代用しなければ適切に記載できない場合を除き,代用はできないところ,代用を認めるべき特段の事情が見出せないから,図面の符号の記載により請求項1及び請求項2に係る考案の構成が不明瞭なものとなっている。 (エ) したがって,本願明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1及び請求項2には,実用新案登録を受けようとする考案の構成に欠くことができない事項のみが記載されているものとは認められないから,本願は,実用新案法5条5項2号の規定を満たしておらず,拒絶をすべきものである。 (2) 全面的な補正の必要性について- 14 -ア前記(1)によると,本件出願Aの各請求項には,考案の作用及び効果しか記載されておらず,技術的構成が記載されていないため,特許庁審査官及び審判官から,同様の判断により,拒絶理由通知や拒絶査定を受けたものといわなければならない。 そうすると,前記(1)イの拒絶理由通知を受けた時点で,少なくとも請求項の記載について,技術的構成を記載するように全面的に書き換える手続補正をする必要があったことは明らかである。 しかも,控訴人がした手続補正のうち,平成5年6月17日付け,平成7年10月27日付け及び平成9年3月25日付けのものについてはいずれも却下されたこと(甲3)からすれば,控訴人が被控訴人に手続を委任した当時,控訴人自身 手続補正のうち,平成5年6月17日付け,平成7年10月27日付け及び平成9年3月25日付けのものについてはいずれも却下されたこと(甲3)からすれば,控訴人が被控訴人に手続を委任した当時,控訴人自身で手続を進めて登録を受けることは望めなかったことが十分に窺われる。 イ控訴人は,体裁を整える手続補正をする必要があったにすぎず,内容に関する手続補正をする必要はなかったとも主張するが,前記(1)からすると,控訴人の主張はその前提自体が誤りであるというほかない。 本件出願Aに係る拒絶理由としては,請求項の記載を補正することを求めるのみであるが,考案として未完成であること自体を拒絶理由としていることからすると,請求項の記載のみを補正すれば足りるというものではなく,その余の部分を含めて全面的な補正が必要であるものの,根本的な問題である請求項の記載についてのみ,まず指摘したものと解するのが自然である。しかも,本件出願Aの願書に添付された明細書(甲24)の考案の詳細な説明欄には,測定方法としてコンベアー方式や光学的変異測定法やそのほかの方法を用いて,トラックの標示の識別,積載トン数,車体形状や長さなどを検知,測定することなどが漠然と記載されてはいるものの,その技術的意義などは不明である。 そうすると,上記明細書の記載を前提として,要旨変更に該当しないように補正をすることは,相当程度困難であったものというほかなく,被控訴人としては,請求項に最低限の技術的構成を記載することに伴い,平成9年10月6日付け手続補正により,明細書の記載を改めたことが窺えるところである。 - 15 -しかし,これが却下されたため,拒絶理由を回避することができないまま,請求不成立審決を受けたものであるが,先に述べたとおり,拒絶理由はそもそも考案として未完成であることを含んで る。 - 15 -しかし,これが却下されたため,拒絶理由を回避することができないまま,請求不成立審決を受けたものであるが,先に述べたとおり,拒絶理由はそもそも考案として未完成であることを含んでいるものであり,出願当初の明細書における漠然とした記載を前提として,要旨変更に該当しないように補正をすることは相当程度困難であった以上,被控訴人としては,請求項の記載を補正することに伴い,当初明細書の記載が不明瞭であると考え,当初明細書の記載から当業者が当然理解できると考えられる技術的事項を明確にし,かつ,将来,実用新案法5条の定める要件等が問題とならないよう,当初明細書の記載内容を,より明瞭に記載するために書き改めようとしたものということができる(乙14,原審における被控訴人本人)。 被控訴人としては,控訴人が自ら作成し,提出した出願当初の明細書の記載を前提に,法律の定める手続に従って受任後の手続を追行するほかないところ,被控訴人が上記補正を試みたことは,結果として,請求不成立審決を受けるに至ったとしても,専門家としての注意義務に格別反するものとまで,認めることはできない。 ウなお,控訴人は,弁理士岸本忠昭作成に係る意見書(甲41)を提出するところ,同意見書には,被控訴人の行った各手続について,弁理士であれば通常そのような手続を行わない旨の指摘がされている。しかし,同意見書は,被控訴人による各手続について抽象的,断定的に非難するにとどまり,控訴人作成に係る出願当初の明細書の記載を前提とし,登録に至る蓋然性を有する「体裁を整える補正」の具体的な指摘などはされていないものであって,採用することはできない。 (3) 控訴人の承諾の有無についてア本件出願Aに関し,控訴人と被控訴人との間の連絡に係る書証は提出されてはいない。もっとも,被控訴 などはされていないものであって,採用することはできない。 (3) 控訴人の承諾の有無についてア本件出願Aに関し,控訴人と被控訴人との間の連絡に係る書証は提出されてはいない。もっとも,被控訴人は,陳述書(乙14)及び原審における本人尋問において,上記手続補正をするに当たっては,あらかじめ控訴人に手続補正書の原稿を送って承諾を得た,控訴人とは複数回にわたり長時間の打合せを経た,控訴人からは具体的な補正内容を指示されるなどしており,当該補正内容では要件を満たさないなどと説明してもなかなか受け容れられなかったため,控訴人の意向に沿った- 16 -内容の手続補正をせざるを得なかったなどと説明する。 他方,被控訴人は,控訴人が被控訴人に委任した,発明の名称を「生花器,植木鉢,造花籠を備えた容器と巻上げ装置」とする米国特許について,平成11年1月から平成20年8月までの間,手続を進めるに当たり,手続の都度控訴人に報告し,承諾を求めていたことが認められる(乙9の1~21)。 もっとも,登録に至った発明等に係る関係書類については,その後の手続等に備えて保存する必要性が生じるものの,登録に至らないことが確定した発明等に係る関係書類についてはその後の手続が通常は予定されていないため,出願手続について受任した弁理士事務所が保存する必要性は乏しいものと解されるところ,上記米国特許に係る手続と近接する時期に行われた本件出願Aに係る関係書類を被控訴人が所持していないこと自体は,登録に至らなかったため,これを廃棄したとしても,格別不自然とはいえない。加えて,後記2のとおり,控訴人が,被控訴人に対し,本件出願Bに係る手続補正の内容を詳細に指示したことも認められるのである。上記各事実からすると,被控訴人が,本件出願Aについても控訴人に説明し,控訴人からの 記2のとおり,控訴人が,被控訴人に対し,本件出願Bに係る手続補正の内容を詳細に指示したことも認められるのである。上記各事実からすると,被控訴人が,本件出願Aについても控訴人に説明し,控訴人からの指示を受け,承諾を得ていたものと推認することができる。 したがって,平成9年10月6日付け手続補正の内容は,控訴人の承諾に基づいて作成されたものであると認められる。 イこの点について,控訴人は,被控訴人が平成9年10月6日付け手続補正書を提出する際,控訴人から承諾を得ることなく,新規事項を追加する不必要な全文補正をしたから,これは本件出願Aに係る委任契約の債務不履行又は不法行為に当たると主張し,原審における本人尋問において,本件出願Aに係る出願手続は被控訴人に一任しており,手続補正の内容について被控訴人と打合せをしたことはないし,被控訴人から出願手続に関する報告を受けたことも全くなかった,本件出願Aは登録されたものと認識して放置していたところ,平成19年4月に日本弁理士会に対する苦情相談をして,初めて登録されなかったことを知ったなどと供述する。 しかしながら,前提事実及び前記(1)の認定事実のとおり,控訴人が被控訴人に出- 17 -願手続を委任する前に拒絶査定がされていたことなどからすれば,控訴人は本件出願Aが最終的に登録されない可能性があることを認識した上で,被控訴人に手続を委任したものと認められる。しかも,控訴人は,本件出願Aに係る考案は科学技術庁長官により注目発明として選定されたことから重要な価値があると考えていたというのであるから,そのような状況の中で,出願手続を被控訴人に一任し,手続経過等についても全く報告を受けることなく,登録されたものと考えて,被控訴人との委任契約締結後約10年間も放置していたなどという控訴人の供述は不合理と うな状況の中で,出願手続を被控訴人に一任し,手続経過等についても全く報告を受けることなく,登録されたものと考えて,被控訴人との委任契約締結後約10年間も放置していたなどという控訴人の供述は不合理というほかない。控訴人は,複数の特許を取得したことがあるというのであるから,特許証の交付や特許料の納付など,登録後の手続についても当然認識しているものというほかなく,登録料すら支払うことすらなく,本件出願Aに係る考案が登録されていたものと考えていたとは,到底理解し難いものである。 そして,控訴人が本件出願Aの拒絶査定確定後7年以上もの間被控訴人の責任を追及することはなかったことからしても,本件出願Aの出願手続において被控訴人の責任を追及することができるような事情があったとは考え難いものである。上記認定に反する控訴人の供述は採用できない。 (4) 控訴人の主張について控訴人は,被控訴人に対し,実開平8-794号公報及び注目発明選定証を提示し,本件出願Aに係る発明は光学的変位測定法及びコンベアー方式を使用するものであること等について詳細に説明しており,被控訴人が,本件出願Aに係る技術内容及び用語を十分理解していたならば,技術的構成を記載するように全面的に書き換える補正を行う必要性がないことは十分認識し得たものである,原判決は,上記各文献の内容について審理を十分に尽くしていないなどと主張する。 しかしながら,本件出願Aについては,そもそも考案として未完成であると指摘され,しかも,出願当初の明細書の記載が漠然としたものであったことは前記のとおりであるから,補正の必要性があったことは明らかであって,仮に控訴人が被控訴人に対し,技術内容及び用語について詳細に説明していたとしても,そのこと- 18 -をもって補正の必要性が否定されるものではない。ま ら,補正の必要性があったことは明らかであって,仮に控訴人が被控訴人に対し,技術内容及び用語について詳細に説明していたとしても,そのこと- 18 -をもって補正の必要性が否定されるものではない。また,本件出願Aに係る考案が注目発明に選定されたことと,当該考案が実用新案登録されるか否かとは無関係である。上記公報等に係る審理不尽をいう控訴人の主張は,原判決が本件出願Aに係る考案について実用新案登録の蓋然性を否定したことを非難するものにすぎず,失当である。 (5) 小括以上からすると,本件出願Aについて,被控訴人がした補正は,全面的な補正の必要性が認められ,その内容自体も,拒絶理由を前提とすると,やむを得ないものであったと解されるのみならず,控訴人の承諾に基づいて補正書が作成されたものと認められるから,被控訴人の行為が債務不履行又は不法行為に該当するものということはできない。 2 争点2(本件出願Bに係る被控訴人の債務不履行又は不法行為の成否)について(1) 本件出願Bに係る発明の内容について本件出願Bの願書に添付された明細書(甲25)には,本件出願Bに係る特許請求の範囲について,以下のとおり記載されている。 【請求項1】貨物自動車が管理された有料道路及び国道を走行する場合に設置するもので,貨物自動車が有料道路に進入してきた時,設置された測定器より,送信側が電磁波を貨物自動車に照射する。自動車受信側に取付けた情報を送信側が受取って記録することができる。貨物自動車の場合の総重量を測定することによって,重量オーバーをデジタルで表示,警告することができる。普通乗用車の情報も記録される。 【請求項2】普通乗用車及び貨物自動車が車種別に分類されて,通行料金の算定料金カードを発行することができる。 【請求項3】貨物自動車が有料道路及 することができる。普通乗用車の情報も記録される。 【請求項2】普通乗用車及び貨物自動車が車種別に分類されて,通行料金の算定料金カードを発行することができる。 【請求項3】貨物自動車が有料道路及び国道を走行する場合に設置するもので,特に有料道路に第1計重測定器と第2計重測定器を設置することによって,重量測定- 19 -がしやすくなる。計重測定機構に,空気圧や油圧を利用する。一定圧力で,シリンダー内に圧力を送入する。シリンダー内部にオリフスを作ることによって,流速が速くなる。計重機に荷重がかかると,圧力変化が起こり,圧力が高くなる。高くなった圧力を,圧力測定法と同時にスプリングの撓みしろが起こる。撓みしろ測定法を併用利用するもので,クッションの働きをする。貨物自動車の重量が大きいため,計重機に荷重が平均にかかるようにする。従来,シリンダーを利用する場合にこのような考え方はなかった。 【請求項4】ゴミ焼却場に検知測定器を設置する。送信側が進入してくる自動車受信側に取付けた情報によって,自動車の車体重量を知ることができる。設置された計重機で測定された重量より車体重量を引くと,積載重量で重量に応じて自動料金支払いもできる。 (2) 被控訴人による手続の是非ア被控訴人が,審査官との間で,平成11年9月6日付け手続補正書による補正後の請求項2(出願当初の請求項3)に限定すれば特許査定を受けられる旨の合意をしたこと,その後,前置審査において審査官と面談し,上記合意内容を確認したにもかかわらず,合意に従わない手続補正をして審査官から上記合意を取り消されたことなどは,前提事実のとおりである。 被控訴人は,陳述書(乙14)及び原審における本人尋問において,手続補正をする際は,必ず控訴人に補正書案等を提示し,打合せもしたが,控訴人は,補正書案 されたことなどは,前提事実のとおりである。 被控訴人は,陳述書(乙14)及び原審における本人尋問において,手続補正をする際は,必ず控訴人に補正書案等を提示し,打合せもしたが,控訴人は,補正書案を持参するなどして,その内容のとおりに補正することを求め,被控訴人やその事務所において本件出願Bを担当していた A が代替案を示しても受け容れず,打合せに長時間を要して収拾がつかなかったことなどから,手続補正には控訴人の意見を可能な限り取り入れた,審査官と上記合意をした後,補正書案を作成して控訴人に送付したところ,権利範囲が狭すぎるとして拒否され,説得を重ねたものの,全く聞く耳を持たなかったため,再度,審査官と面談し,他の方法で特許査定を認めてもらえるように交渉したが,全く相手にしてもらえず,控訴人に上記交渉の経過- 20 -を伝え,合意に従うように更に説得したが頑なに拒否されたため,形式的に手続補正書を提出して前置審査につなぐこととし,代理人を辞任したなどと説明する。 イ前記平成9年11月11日付け拒絶理由通知の内容からすると,本件出願Bに係る発明は,技術内容の特定すら欠くものであり,被控訴人が審査官と面談し,請求項2に限定すれば特許査定する旨の合意が得られたこと自体,むしろ被控訴人による大きな成果と評価し得るものである。 したがって,被控訴人が審査官と再度面談をしたり,拒絶査定をされた出願について一部でも特許査定をする旨の合意をしたにもかかわらず,それに従った手続補正をしなかった理由としては,控訴人がそのような補正を拒絶したこと以外には考えられず,上記経過は前記被控訴人本人の供述を前提としてしか了解することができないものである。特に,控訴人は,平成12年1月20日,審査官に対し,嘆願書を提出し,当該合意に基づいた補正書の提出を認めるよ れず,上記経過は前記被控訴人本人の供述を前提としてしか了解することができないものである。特に,控訴人は,平成12年1月20日,審査官に対し,嘆願書を提出し,当該合意に基づいた補正書の提出を認めるように求めているものである(甲54)。このように,控訴人としては,審査官との当該合意に重大な関心を抱いていたものであるから,控訴人の承諾なしに,被控訴人が当該合意に沿った手続を行わないことは考え難いものである。 また,前提事実のとおり,控訴人と被控訴人とは相互に本件出願Bに係る委任契約を解除したにもかかわらず,再度,本件出願Bに係る委任契約を締結している。 これは,本件出願Bについて拒絶査定がされ,本件出願A及びCの拒絶査定も確定した後のことであり,控訴人の主張するような債務不履行又は不法行為が被控訴人にあったのであれば,通常起こり得ないことといわなければならない。 さらに,再度の委任契約後に,控訴人は本件出願Bに係る手続補正について発明の名称や請求項の記載内容の文案を示すなど,被控訴人に詳細に指示しており(乙20,21),前記1のとおり,被控訴人が控訴人から委任された米国特許について手続をする都度,控訴人に承諾を求めていたことも併せ考慮すると,被控訴人が控訴人に対して審査官との合意事項について説明し,補正内容についても控訴人の承諾に基づいて作成したものと推認することができる。控訴人は,原審における本- 21 -人尋問において,控訴人に対して示した文案は,被控訴人から指示されるままに書いたなどと述べるが,書面の体裁からして控訴人から被控訴人に指示したものであることは明らかであるから,当該供述は採用することはできない。 加えて,前記1と同様に,控訴人が平成19年4月に至るまで被控訴人の責任を追及することがなかったことからすれば,本件出願Bの出願 のであることは明らかであるから,当該供述は採用することはできない。 加えて,前記1と同様に,控訴人が平成19年4月に至るまで被控訴人の責任を追及することがなかったことからすれば,本件出願Bの出願手続において被控訴人の責任を追及することができるような事情があったとは考え難い。控訴人は,被控訴人から上記合意をしたことについて報告を受けたことはないし,上記手続補正の内容について承諾したこともない旨主張し,原審における本人尋問及び陳述書(甲42)において,本件出願Bに係る出願手続は A が担当しており,被控訴人は全く関与していなかった, A から手続補正書の内容を事前に提示されたことは1回しかなく,内容について訂正を求めても受け容れられず,その後補正書や意見書の内容について打合せをしたり,報告を受けたりしたことはなかった,被控訴人が審査官と合意をしたことなどについても一切報告はなく,被控訴人が合意に従わない補正をした後になって初めて知ったため,被控訴人との間の委任契約を解除したなどと述べるが,前記認定に反する控訴人の上記供述を採用することはできない。 ウ控訴人は,請求項3(貨物自動車の重量測定装置)に対する拒絶理由は,「貨物自動車に計重測定機を何個設置するかは設計上の問題である」と指摘するにすぎず,審査官としては,計重測定機を2個以上設置する必要はないと述べているにとどまり,計重測定機自体は認める趣旨であることは明らかであるとも主張する。 しかしながら,上記指摘の趣旨は,請求項3の発明が複数の計重測定機を有することが引用文献1に記載された発明との相違点であったとしても,計重測定機を何個設置するかは当業者が適宜設計し得る事項にすぎないから,請求項3の発明の進歩性を認める理由とはならないことを意味するものにすぎず,「計重測定機自体」につ との相違点であったとしても,計重測定機を何個設置するかは当業者が適宜設計し得る事項にすぎないから,請求項3の発明の進歩性を認める理由とはならないことを意味するものにすぎず,「計重測定機自体」については特許性を肯定する趣旨ではないことは明らかである。 控訴人は,審査官との合意に基づいて補正後の請求項2に限定すると,請求項1の「貨物自動車」という限定がなくなり,「重力測定装置」一般に係る発明となっ- 22 -て,結果的に権利範囲が拡大するものであるから,控訴人が権利範囲が狭すぎるとして審査官との合意を拒絶するはずがないとも主張する。 しかしながら,平成11年9月6日付け補正書における請求項2は,請求項1の従属項であるから,請求項2に限定するという趣旨は,当然,請求項1の貨物自動車を前提として,独立した請求項に改めることが必要となることは明らかである。 仮に,控訴人が主張するとおり,請求項2に限定することにより結果的に権利範囲が拡大するものであるならば,審査官が請求項2に限定して特許査定する旨の合意をしたとは解し難いことは明らかである。控訴人の主張は失当である。 なお,控訴人が作成した前記嘆願書(甲54)には,「請求項(2)に限定した貨物自動車の荷積載重量測定装置」なる記載がされていることからすると,控訴人は,嘆願書作成当時,限定する請求項2の発明は,「重力測定装置」一般に係る発明ではなく,「貨物自動車の荷積載重量測定装置」に係る発明であることを認識していたものと推測される。 エ控訴人は,本件出願Bに係る発明は,特許取得の可能性について,スコア99.1%という高評価を得ているものであるとも主張する。 しかしながら,控訴人が提出するNRIサイバーパテントデスクスコア(甲53の1)には,「特開平8-50053の「公開系特許(A+T+S)要 99.1%という高評価を得ているものであるとも主張する。 しかしながら,控訴人が提出するNRIサイバーパテントデスクスコア(甲53の1)には,「特開平8-50053の「公開系特許(A+T+S)要約」で類似公報を検索しました。」と記載されていることからすると,控訴人が指摘する「スコア」は,特許登録の可能性ではなく,検索対象とされた公報との類似性を判定する数値であると推測されるところであって,また,だからこそ,本件出願Bに係る公開特許公報が最高スコアを得ているものということができるのである。 オ控訴人は,本件出願Bと同様の内容の発明について,韓国において特許を取得しているところ,当初,当該手続についても被控訴人に委任していたが,被控訴人が控訴人の説明した技術内容を正確に把握しておらず,被控訴人が作成した各種書類の内容に不満があったため,解任し,その後,韓国の特許事務所と直接,打合せをして,特許査定に至ったものであるなどと主張する。 - 23 -しかしながら,韓国の法制度に基づいて特許登録に至ったことと,本件出願Bにおける被控訴人による手続が債務不履行又は不法行為に該当するか否かについては,無関係であるというほかない。 また,控訴人の上記主張は,少なくとも韓国における出願については,その出願に係る各種書類の内容を確認していることを意味するところ,そのような控訴人が,本件各出願については,被控訴人が作成した当該各出願に係る各種書類の内容を確認しないでいたとは解されないのであって,被控訴人から一切説明を受けていないとする控訴人の主張とは整合しないものといわなければならない。しかも,仮に,控訴人が,被控訴人の能力に疑問を抱き,平成12年5月頃,韓国特許の手続について被控訴人を解任したのであれば,その後,本件出願Bについて,再度,被控訴人 いものといわなければならない。しかも,仮に,控訴人が,被控訴人の能力に疑問を抱き,平成12年5月頃,韓国特許の手続について被控訴人を解任したのであれば,その後,本件出願Bについて,再度,被控訴人に委任し,手続を一任したとは解し難い。 カなお,控訴人提出の意見書(甲41)を採用することができないことは,争点1において先に述べたとおりである。 キ控訴人の主張は,いずれも採用できない。 (3) 小括以上からすると,本件出願Bについて,被控訴人が審査官との合意に沿った補正を行わなかったことは,控訴人の承諾に基づくものと認められるから,被控訴人の行為が債務不履行又は不法行為に該当するものと認めることはできない。 3 争点3(本件出願Cに係る被控訴人の債務不履行又は不法行為の成否)について(1) 本件出願Cに係る発明の内容ア本件出願Cの願書に添付された明細書(甲27)には,本件出願Cに係る特許請求の範囲について,以下のとおり記載されている。 【請求項1】自動車が盗難された場合,自動車の発見が可能になる装置。自動車が国道,有料道路,有料駐車場,ガソリンスタンド等その他,自動車が走行及び利用する場合に設置される装置で測定器より送信側が電磁波を自動車に照射する。自動- 24 -車受信側に取付けた情報を送信側が受け取る。この場合に情報をナンバープレートに組込んでもよいが,自動車のナンバープレート以外に,前方より見易い場所に取付けてもよい。自動車に取付けた情報が記録され,その情報が連動的に連絡できるものである。 【請求項2】自動車が有料駐車場に駐車する場合の料金支払いをカードレス方式にする事ができる装置で,自動車が駐車場に進入すると,情報収録記録測定器が働き,自動車は停止する必要がなく,駐車場に入る事ができる。又,自動車に取付けた 車場に駐車する場合の料金支払いをカードレス方式にする事ができる装置で,自動車が駐車場に進入すると,情報収録記録測定器が働き,自動車は停止する必要がなく,駐車場に入る事ができる。又,自動車に取付けた情報と時間が記録される。自動車が駐車場を出る場合は,駐車料金が自動支払いする様にアナウンスで運転手に料金を説明,金額をデジタルで標示する装置。 【請求項3】自動車が有料道路を走行する場合の料金支払い方法が,自動料金支払い及び支払い方法がカードレス方式ができる装置である。自動車が有料道路に進入すると,情報収録記録測定機が働き,自動車は停止する必要がなく徐行して,有料道路に入る事ができる。又,自動車が有料道路に進入した場合にカード方式で車種分類,自動カード発行方法ができる装置である。 【請求項4】自動車がガソリンスタンドで給油する際,自動車に取付けた情報によって給油する場合,現在使用されているカード方式をカードレス方式に替える事ができる装置。 イ控訴人は,特許庁審査官から,平成9年6月11日付けで拒絶理由通知(甲15,乙22)を受けた。その拒絶理由は以下のとおりである。 (ア) 請求項1に係る発明には,自動車が盗難された場合,自動車の発見が可能になるとあるが,どのように自動車の発見が可能になるのか,その具体的構成が【発明の詳細な説明】に開示されておらず,当業者が容易にその実施をすることができる程度に,この発明の構成が記載されているものとは認められない。 (イ) 請求項1ないし4は,発明の目的,作用,効果のみが記載されており,それぞれの請求項に記載された事項に基づいて特許を受けようとする発明が明確に把握することができない。よって,請求項1ないし請求項4は,特許を受けようとす- 25 -る発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したもので れた事項に基づいて特許を受けようとする発明が明確に把握することができない。よって,請求項1ないし請求項4は,特許を受けようとす- 25 -る発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものでない。 (2) 全面的な補正の必要性について前記(1)によると,本件出願Cの各請求項には,発明の作用及び効果しか記載されておらず,技術的構成が記載されていないため,特許庁審査官及び審判官から,同様の判断により,拒絶理由通知や拒絶査定を受けたものといわなければならない。 そうすると,前記(1)イの拒絶理由通知を受けた時点で,少なくとも請求項の記載について,技術的構成を記載するように全面的に書き換える手続補正をする必要があったことは明らかである。 しかも,本件出願Cの出願当初の明細書(甲27)の【発明の詳細な説明】の欄にも,情報収録記録測定機や遮断機など,個別の機器に関する概括的な記載は散見されるものの,主として発明の目的,作用,効果と解される記載が羅列されているものにすぎず,当該記載のうち,どの点をもって技術的構成が記載されているとみるかは困難であるというべきである。控訴人自身,どの点に技術的構成が記載されており,これをどのように請求項に記載すべきであったかについて何ら具体的な主張をしていない。したがって,控訴人が希望する技術的範囲を維持しながら新規事項を含まない補正をすることが容易ではなかったことは明らかである。 そうすると,本件出願Aと同様に,被控訴人としては,控訴人が自ら作成し,提出した出願当初の明細書の記載を前提に,法律の定める手続に従い受任後の手続を追行するほかないところ,被控訴人による補正が,専門家としての注意義務に格別反するものとまで,認めることはできない。 なお,控訴人提出の意見書(甲41)を採用することができないこと い受任後の手続を追行するほかないところ,被控訴人による補正が,専門家としての注意義務に格別反するものとまで,認めることはできない。 なお,控訴人提出の意見書(甲41)を採用することができないことは,争点1において先に述べたとおりである。 (3) 控訴人の承諾の有無についてア控訴人は,原審における本人尋問において,本件出願Aと同様に,本件出願Cについても,出願手続は被控訴人に一任しており,手続補正の内容について被控訴人と打合せをしたことはないし,被控訴人から出願手続に関する報告を受けたこ- 26 -とも全くなく,本件出願Cに係る発明は特許登録されたものと認識して放置していたところ,平成19年4月に日本弁理士会に対する苦情相談をして,初めて登録されなかったことを知ったなどと説明する。 被控訴人は,本件出願Cについても関係書類を証拠として提出していないが,本件出願Aについて先に述べた理由と同様の理由により,被控訴人が,本件出願Cに係る各手続についても控訴人に説明し,控訴人からの指示を受け,承諾を得ていたものであって,関係書類は登録に至らなかったために廃棄してしまったと推認することができるものである。控訴人の上記供述は採用できない。 イしたがって,被控訴人が作成した手続補正書の内容や拒絶理由の通知等に対応しないという方針の決定は,控訴人の意向に沿ったものであると認められる。 被控訴人は,控訴人の代理人であった以上,控訴人の意向に反する手続補正や手続をすることができないのはもとより,本件で,被控訴人が弁理士としての通常の注意義務を果たすことにより,控訴人の意向に沿いながら,上記拒絶理由を解消することのできる手続補正をすることができたことを認めるに足りる証拠もない。 また,委任者による指示がないにもかかわらず,拒絶査定不服審判請求を とにより,控訴人の意向に沿いながら,上記拒絶理由を解消することのできる手続補正をすることができたことを認めるに足りる証拠もない。 また,委任者による指示がないにもかかわらず,拒絶査定不服審判請求をする一般的な注意義務を弁理士が負うものと認めることもできない。 (3) 控訴人の主張についてア控訴人は,平成9年6月11日付けの拒絶理由通知には,「この拒絶理由通知中で指摘した請求項以外の請求項に係る発明については,拒絶の理由を発見しない」,先行文献調査結果の記録は「拒絶理由を構成するものではない」とも記載されており,請求項の内容を全面的に書き換え,技術的構成を明らかにする補正が必要であり,控訴人が希望する技術範囲を維持しながら新規事項を含まない補正をすることは容易ではなかったとの原判決の認定は誤りであると主張する。 しかしながら,「この拒絶理由通知中で指摘した請求項以外の請求項に係る発明については,拒絶の理由を発見しない」との記載が,拒絶理由通知書に記載される定型文であることは,本件出願A及びBに係る拒絶理由通知(甲1,4)にも記載- 27 -されていることからも明らかである。本件出願Cについては,全請求項について拒絶理由が指摘されており,そもそも「この拒絶理由通知中で指摘した請求項以外の請求項」は存在すらしないのである。 また,先行文献調査結果の記録についても,当該文献に基づいて拒絶理由を構成するものではないことを注意的に記載した定型文にすぎない(本件出願Bに係る拒絶理由通知(甲4)にも,同様の記載がある。)。 控訴人が指摘する各記載は,本件出願Cに係る発明が特許登録に至る蓋然性が高いものであったことを裏付けるものではない。前記の拒絶理由通知の内容からすると,軽微な手続補正で足りるようなものではなかったことは明らかであって, 載は,本件出願Cに係る発明が特許登録に至る蓋然性が高いものであったことを裏付けるものではない。前記の拒絶理由通知の内容からすると,軽微な手続補正で足りるようなものではなかったことは明らかであって,むしろ,控訴人が被控訴人に委任するに当たり,本件出願Cについて拒絶査定をされる可能性があることを当然認識していたものというべきである。 イ控訴人は,自らの執筆した論文及び本件出願Cに係る特許公開公報に基づいて,被控訴人に対し,技術内容について十分に説明したにもかかわらず,車輌情報検知システムに関する請求項についても請求することすらせず,控訴人の委任の趣旨に反し,出願の内容を熟知しようともしなかったことにより,拒絶査定を受けたことは明らかであるとも主張する。 しかしながら,本件出願Cについても,本件出願Aと同様に,仮に,控訴人が被控訴人に対して技術内容及び用語について詳細に説明していたとしても,そのことをもって補正の必要性が否定されるものではないし,出願当初の明細書の漠然とした記載からすると,補正により特許査定に至ることは困難であったものというほかない。控訴人が指摘する論文(甲50)は,「自動車の持つ情報」を活用する重要性等について一般的に説明する文献にすぎず,本件出願Cに係る発明の具体的構成を直接説明するものではない。また,出願当初の明細書には,「車輌情報検知システム」の技術内容に関する具体的な記載は存在しないから,同システムに関する請求項を記載することは不可能であったものというほかない。 ウ本件出願Cと同様の内容の発明に係る韓国特許に基づく控訴人の主張を採- 28 -用することができないことは,争点2において先に述べたとおりである。 エ控訴人の主張はいずれも採用できない。 (4) 小括以上からすると,本件出願Cについて,被控 訴人の主張を採- 28 -用することができないことは,争点2において先に述べたとおりである。 エ控訴人の主張はいずれも採用できない。 (4) 小括以上からすると,本件出願Cについて,被控訴人がした補正は,全面的な補正の必要性が認められ,その内容自体も拒絶理由を前提とするとやむを得ないものと解されるのみならず,拒絶理由通知等に対する対応方針も含め,控訴人の承諾に基づいてされたものと認められるのであるから,被控訴人の行為が債務不履行又は不法行為に該当するものということはできない。 4 結論以上の次第であるから,控訴人の請求を棄却すべきものとした原判決は相当であって,本件控訴は棄却されるべきものである。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官滝澤孝臣 裁判官井上泰人 裁判官荒井章光
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