平成29年9月14日判決言渡平成26年(ワ)第11271号地位確認等請求事件 主文 1 原告らの主位的請求をいずれも棄却する。 2 被告は,原告Z1に対し,50万6400円及び別紙7原告Z1認容額の合計欄記載の各金額に対する各支払日欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告Z2に対し,37万7200円及び別紙8原告Z2認容額の合計欄記載の各金額に対する各支払日欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は,原告Z3に対し,4万3200円及び別紙9原告Z3認容額の合計欄記載の各金額に対する各支払日欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は,原告Z1と被告との間においては,原告Z1に生じた費用の11分の1を被告の負担とし,その余を原告Z1の負担とし,原告Z2と被告との間においては,原告Z2に生じた費用の14分の1を被告の負担とし,その余を原告Z2の負担とし,原告Z3と被告との間においては,原告Z3に生じた費用の111分の1を被告の負担とし,その余を原告Z3の負担とする。 7 この判決は,第2項から第4項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求の趣旨 1 原告Z1が被告に対し,被告社員給与規程124条,同117条,同82条, 同83条,同126条,同128条,同61条及び同62条並びに被告社員就業規則68条19号,同条20号及び69条,63条2項2号イが適用される労働契約上の地位にあることを確認する。 2 原告Z2が被告に対し,被告社員給与規程124条,同117条 62条並びに被告社員就業規則68条19号,同条20号及び69条,63条2項2号イが適用される労働契約上の地位にあることを確認する。 2 原告Z2が被告に対し,被告社員給与規程124条,同117条,同82条,同83条,同126条,同128条,同61条及び同62条並びに被告社員就業規則68条19号,同条20号及び69条,63条2項2号イが適用される労働契約上の地位にあることを確認する。 3 原告Z3が被告に対し,被告社員給与規程124条,同82条,同83条,同126条,同128条,同117条の2並びに被告社員就業規則68条19号,同条20号及び同69条,同63条2項2号イが適用される労働契約上の地位にあることを確認する。 4 被告は原告Z1に対し,(1) 106万6485円及び別紙1の1「請求債権目録1」記載の平成24年4月から同25年3月までの各月の「合計」欄記載の金員に対する同請求債権目録記載の平成24年4月から同25年3月までの各月の「支払日」欄記載の日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 (2) 409万3920円及び別紙1の1「請求債権目録1」記載の平成25年4月から同28年8月までの各月の「合計」欄記載の金員に対する同請求債権目録記載の平成25年4月から同28年8月までの各月の「支払日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 (3) (2)の予備的請求409万3920円及び別紙1の1「請求債権目録1」記載の平成25年4月から同28年8月までの各月の「合計」欄記載の金員に対する同債権目録記載の平成25年4月から同28年8月までの「支払日」欄記載の日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 5 被告は原告Z2に対し, (1) 120万3949円及び別紙2の1「 録記載の平成25年4月から同28年8月までの「支払日」欄記載の日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 5 被告は原告Z2に対し, (1) 120万3949円及び別紙2の1「請求債権目録2」記載の平成24年4月から同25年3月までの各月の「合計」欄記載の金員に対する同請求債権目録記載の平成24年4月から同25年3月までの各月の「支払日」欄記載の日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 (2) 395万4387円及び別紙2の1「請求債権目録2」記載の平成25年4月から同28年8月までの各月の「合計」欄記載の金員に対する同請求債権目録記載の平成25年4月から同28年8月までの各月の「支払日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 (3) (2)の予備的請求395万4387円及び別紙2の1「請求債権目録2」記載の平成25年4月から同28年8月までの各月の「合計」欄記載の金員に対する同債権目録記載の平成25年4月から同28年8月までの「支払日」欄記載の日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 6 被告は原告Z3に対し,(1) 106万0012円及び別紙3の1「請求債権目録3」記載の平成24年4月から同25年3月までの各月の「合計」欄記載の金員に対する同請求債権目録記載の平成24年4月から同25年3月までの各月の「支払日」欄記載の日から支払済みまで年5%の割合による金員(2) 370万4249円及び別紙3の1「請求債権目録3」記載の平成25年4月から同28年8月までの各月の「合計」欄記載の金員に対する同請求債権目録記載の平成25年4月から同28年8月までの各月の「支払日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 (3) (2)の予備的請求 の「合計」欄記載の金員に対する同請求債権目録記載の平成25年4月から同28年8月までの各月の「支払日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。 (3) (2)の予備的請求370万4249円及び別紙3の1「請求債権目録3」記載の平成25年4月から同28年8月までの各月の「合計」欄記載の金員に対する同債権目録記載の平成25年4月から同28年8月までの「支払日」欄記載の日から支 払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 本件は,被告との間で期間の定めのある労働契約を締結した原告らが,期間の定めのない労働契約を締結している被告の正社員と同一内容の業務に従事していながら,手当等の労働条件において正社員と差異があることが労働契約法(以下「労契法」という。)20条に違反するとして,請求の趣旨第1項から第3項までに掲記の被告社員給与規程及び被告社員就業規則の各規定が原告らにも適用される労働契約上の地位にあることの確認を求めるとともに,上記差異が同条の施行前においても公序良俗に反すると主張して,同条の施行前については,不法行為による損害賠償請求権に基づき,同条の施行後については,主位的に同条の補充的効力を前提とする労働契約に基づき,予備的に不法行為による損害賠償請求権に基づき,別紙請求債権目録1の1及び2,同目録2の1及び2,同目録3の1及び2のとおり,労契法20条の施行前である平成24年4月から平成25年3月までの正社員の諸手当との差額及び各月の差額合計額に対する各給与支払日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払並びに同条の施行後である同年4月から平成28年8月までの前同様の差額及び各月の差額合計金に対する各給与支払日の翌日(予備的請求は各支払日)から支払済みま 法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払並びに同条の施行後である同年4月から平成28年8月までの前同様の差額及び各月の差額合計金に対する各給与支払日の翌日(予備的請求は各支払日)から支払済みまで商事法定利率年6%(予備的請求は民法所定の年5%)の割合による遅延損害金の各支払を求めた事案である。 2 前提事実証拠等を掲記していない事実は,当事者間に争いがない事実,当裁判所に顕著な事実及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実である。 (1) 当事者ア被告郵便事業は,従前は郵政省が取り扱っていたが,平成13年1月6日に郵政事業庁へ分割された。郵政事業庁は,平成15年4月1日,日本郵政 公社となり,平成19年10月1日に,郵政民営化に伴い,郵政三事業を含む全ての事業が日本郵政グループとして日本郵政株式会社及びその下に発足する4つの事業会社(郵便局株式会社,郵便事業株式会社,株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険)へ移管,分割されて,日本郵政公社は解散した。その後,平成24年10月1日,郵便局株式会社が郵便事業株式会社を吸収合併し,被告が成立した。なお,郵政民営化法173条は,「日本郵政株式会社は,(中略)承継職員の賃金,労働時間その他の労働条件を定めようとするときは,(日本郵政)公社の職員の給与,勤務時間その他の勤務条件に配慮するものとする。」と規定している。 被告の平成25年4月1日現在の正社員数は20万1998人,正社員以外の従業員数は19万0649人であり,原告らと同じ時給制契約社員は16万6983人である。 イ原告Z1原告Z1は,平成19年▲月▲日から同年▲月▲日まで日本郵政公社に任用された後,契約期間を6か月とする有期労働契約の更新を重ねて就労している時給制契約社員で 83人である。 イ原告Z1原告Z1は,平成19年▲月▲日から同年▲月▲日まで日本郵政公社に任用された後,契約期間を6か月とする有期労働契約の更新を重ねて就労している時給制契約社員である。原告Z1は,入社当初,Z4郵便局の○に配属されていたが,平成22年▲月▲日付けで同郵便局の勤務に関する契約を終了し,翌▲日付けでZ5郵便局における勤務に関する契約を締結した。原告Z1の業務内容は,郵便物の仕分け,配達と郵便商品等の営業販売等の郵便外務事務その他これに付随,関連する業務である。 ウ原告Z2原告Z2は,平成20年▲月▲日付けで郵便事業株式会社に入社し,その後平成21年▲月▲日からは契約期間を6か月とする有期労働契約の更新を重ねて就労している時給制契約社員である。原告Z2の就業場所はZ6郵便局であり,業務内容は郵便外務事務その他これに付随,関連する業務である。 エ原告Z3原告Z3は,平成15年▲月▲日,郵政事業庁に有期任用公務員として勤務を始め,その後,同年▲月▲日に日本郵政公社に任用期間6か月の有期任用公務員として再任用され,更新を重ねた後,平成19年▲月▲日,郵便事業株式会社との間で契約期間を6か月とする有期労働契約を締結し,以後,その更新を重ねて就労している時給制契約社員である。原告Z3の就業場所はZ7郵便局であり,業務内容は郵便内務事務及びこれに付随,関連する業務である。具体的には,書留郵便物の処理や窓口業務,定形外郵便物や郵便小包(ゆうパック),定型内郵便物の中で機械で区分けができなかった郵便物を宛先ごとに振り分ける作業(区分け作業),ゆうパックの追跡番号を端末に入力する(バーコードを読み取る)作業,付属業務として,代引き(着払い)の郵便物の管理票(QR コード)の作成等を行 った郵便物を宛先ごとに振り分ける作業(区分け作業),ゆうパックの追跡番号を端末に入力する(バーコードを読み取る)作業,付属業務として,代引き(着払い)の郵便物の管理票(QR コード)の作成等を行っている。 オ原告らは,「郵政産業労働組合」と「郵政労働者ユニオン」が平成24年7月1日に組織統一して結成された労働組合「郵政産業労働者ユニオン」の組合員である。 (2) 原告らの勤務時間等ア勤務時間服務表に定める「早出」,「日勤」,「中勤」,「夜勤」の勤務のシフトに従って就労する。ただし,原告Z3については「深夜勤」の勤務のシフトがある。 労働契約所定の勤務時間は,4週間について1週平均40時間を基本とする。ただし,原告Z3については4週間について1週平均35時間を基本とする。 イ所定労働時間外労働,休日労働の有無有り ウ休日(週休日)及び勤務日「休日(週休日)」は4週間に4日,「非番日」は休日(週休日)及び勤務日以外の日,「休日」,「非番日」,「勤務日」は期間雇用社員就業規則27条により指定する。なお,変更する場合もある。また,祝日に勤務を命じる場合がある。 エ基本賃金時給制である。 (ア) 原告Z1平成24年4月から平成25年3月まで時給1460円,平成25年4月から平成26年3月まで時給1660円,平成26年4月以降1650円(イ) 原告Z2時給1350円(ウ) 原告Z3時給960円(3) 被告における雇用形態ア被告の正社員の人事制度は,平成26年3月31日までと同年4月1日以降とでは,制度改正によりその内容を大きく異にしている(以下,同年3月31日までの人事制度を「旧人事制度」,同年4月1日以降の人事制度を「新人事制度」という。)。 3月31日までと同年4月1日以降とでは,制度改正によりその内容を大きく異にしている(以下,同年3月31日までの人事制度を「旧人事制度」,同年4月1日以降の人事制度を「新人事制度」という。)。 被告に雇用される従業員には,無期労働契約の社員(以下「正社員」という。)と有期労働契約の期間雇用社員(以下「契約社員」という。)があり,それぞれに適用される就業規則及び給与規定は異なる。 具体的には,新人事制度の正社員に適用される就業規則(甲10)及び給与規程(甲11),旧人事制度の正社員に適用される就業規則(甲1)及び給与規程(甲2)のほか,平成25年4月1日以降契約社員に適用さ れる就業規則(甲3)及び同年10月1日以降契約社員に適用される給与規程(甲4),平成26年10月1日以降,契約社員に適用される就業規則(甲12)及び給与規程(甲13)がある(以下,これらについては,「甲10」のように書証番号のみを記載することがある。)。 (甲1ないし4,甲10ないし13)イ正社員(ア) 平成26年3月31日までの旧人事制度甲1の第2章第1節で定める手続により雇用期間を定めずに採用された者をいう。(甲1,2条1項)定年は,年齢60歳であり,定年に達した日以後における最初の3月31日に退職する。(甲1,15条)勤務時間は,1日原則8時間,4週について1週平均40時間とする。 (甲1,45条)旧人事制度においては,正社員は,「管理者・役職者」,「主任・一般」,「再雇用」に分類され,職群として,「企画職群」,「一般職群」,「技能職群」に区分され,「一般職群」は,「一般職等」(職種)として郵便局に配属されていた(以下,「一般職等」(職種)を「旧一般職」という。)。旧一般職の等級区分は,1級:担当者,2級:主任,3級: 「技能職群」に区分され,「一般職群」は,「一般職等」(職種)として郵便局に配属されていた(以下,「一般職等」(職種)を「旧一般職」という。)。旧一般職の等級区分は,1級:担当者,2級:主任,3級:課長代理,4級:総括課長/課長とされていた。(甲1,2,17)(イ) 平成26年4月1日以降の新人事制度社員の職務や期待する役割に着目した区分を設けるコース制が導入され,管理職,総合職,地域基幹職及び新一般職(以下,その職種に該当する職員層を,「地域基幹職」,「新一般職」のようにコース名のみで記載することがある。)の各コースが設けられた。管理職は,監督又は管理の地位にある者であって,勤務地については,会社が指定するものとされ,総合職は,全社的な視点で企画立案・折衝調整・営業・管理業 務など幅広い業務全般に従事する者であって,勤務地は特定の地域に限定しないものとされ,地域基幹職(郵便コース,窓口コース及び企画コース)は,営業・お客様へのサービスの提供・業務運行・企画実施業務など,事業に応じた幅広い業務に従事する者であって,勤務地は原則として会社が指定する地域内に限るとされ,地域基幹職(渉外営業コース)は,専ら金融代理業務を中心とした渉外営業に従事する者であって,いずれも勤務地は原則として会社が指定する地域内に限るとされ,新一般職は,窓口営業,郵便内務,郵便外務又は各種事務等の標準的な業務に従事する者であって,役職層への登用はなく,勤務地は原則として転居を伴う転勤がない範囲とするものとされた。(甲10,16,17)ウ契約社員被告の契約社員の人事制度は,以下の点に関する限り,平成26年3月31日までと同年4月1日以降との間に違いはない。 (ア) 甲3(甲12)の第2章第1節で定める手続により期間を定めて採用された者をい 告の契約社員の人事制度は,以下の点に関する限り,平成26年3月31日までと同年4月1日以降との間に違いはない。 (ア) 甲3(甲12)の第2章第1節で定める手続により期間を定めて採用された者をいう。(甲3及び12・2条)(イ) 契約社員には,スペシャリスト契約社員(契約期間3年以内,労働基準法14条に定める労働者に当たる場合は5年以内),エキスパート契約社員(契約期間3年以内,月単位),月給制契約社員(契約期間1年以内),時給制契約社員(契約期間6か月以内),アルバイト(契約期間1か月未満)があるが,原告らは時給制契約社員である。(甲3及び12・11条)(ウ) 契約期間が満了した場合において,その雇用契約を更新することが必要と認めるときは,本人の希望を踏まえ,その雇用契約を更新することができる。満65歳に達した日以降の新たな更新は行わない。(甲3及び12・12条)(4) 正社員の労働条件の概要 新旧人事制度における郵便業務を担当する正社員の給与は,基本給と諸手当で構成され,諸手当には,扶養手当,通勤手当,住居手当,調整手当,寒冷地手当,遠隔地手当,超過勤務手当,祝日給,夜勤手当,特殊勤務手当,夏期手当及び年末手当(平成26年10月1日現在では,他に単身赴任手当,営業関係手当)がある。(甲2・160条,甲11・3条)原告らにおいて,正社員と比較して不合理な相違のある労働条件と主張する手当等の概要は,次のとおりである。 ア外務業務手当正社員が外務業務に従事した場合に支給され,その額は,外務業務に従事した日1日につき,支給区分(1日570円から1420円)に応じて支給される。ただし,平成26年3月に廃止された。(甲2・249条)イ年末年始勤務手当正社員が,12月29日から翌年の1月3日 日1日につき,支給区分(1日570円から1420円)に応じて支給される。ただし,平成26年3月に廃止された。(甲2・249条)イ年末年始勤務手当正社員が,12月29日から翌年の1月3日までの間において実際に勤務した時に支給され,その額は,12月29日から同月31日までは1日4000円,1月1日から同月3日までは1日5000円である(1日に実際に勤務した時間が4時間以下の場合は,その半額が支給される。)。(甲2・268条,甲11・124条)ウ早出勤務等手当正社員が,正規の勤務時間として始業時刻が午前7時以前となる勤務又は終業時刻が午後9時以後となる勤務に4時間以上従事したときに,始業終業時刻に応じ,350円から850円が支給される。(甲2・250条,甲11・117条)エ祝日給正社員が祝日において,割り振られた正規の勤務時間中に勤務することを命ぜられて勤務したとき(祝日代休が指定された場合に祝日勤務し た社員を除く。)及び1月1日から1月3日までの各日(祝日を除く。)に勤務したときに支給され,その額は,月の初日から末日までの間(給与期間)における祝日給の支給対象時間(休憩時間以外の時間)に次の算式により求められる額を乗じて得た額算式((基本給,基本給及び扶養手当に係る調整手当並びに遠隔地手当の合計額(月額))×12/年間所定勤務時間)×100分の135(甲2・238条,239条,237条,甲11・82条,83条,81条)オ夏期手当及び年末手当(以下「夏期年末手当」という。)(ア) 次のいずれかに該当する正社員に支給される。 a 基準日(夏期手当6月1日,年末手当12月1日)に在職する社員(ただし,休職中の者(業務傷病等休職にされた者を除く。)又は育児休業中の社員のうち,基準日以 ずれかに該当する正社員に支給される。 a 基準日(夏期手当6月1日,年末手当12月1日)に在職する社員(ただし,休職中の者(業務傷病等休職にされた者を除く。)又は育児休業中の社員のうち,基準日以前6か月以内の期間(対象期間)において勤務した期間がない者を除く。)b 基準日前1か月以内に退職(解雇,懲戒解雇及び諭旨解雇を除く。),又は死亡した者(ただし,基準日に社員又は再雇用社員として在職する者,又は,退職又は死亡時に上記ただし書きに該当する者を除く。)(イ) 支給額は,次のとおりである。 a 夏期手当(A+B+C)×D×Eによって算出される額A:基準日の基本給の月額,B:基準日の扶養手当の月額,C:基準日の調整手当の月額,D:在職期間割合(6か月:100分の100,3か月以上6か月未満:100分の60,3か月未満:100分の30),E:支給の都度定める割合b 年末手当 次の①,②の合計額① (A+B+C)×D×Eによって算出される額A:基準日の基本給の月額,B:基準日の扶養手当の月額,C:基準日の調整手当の月額,D:在職期間割合(6か月:100分の100,3か月以上6か月未満:100分の60,3か月未満:100分の30),E:支給の都度定める割合② (A+B)×C×Dによって算出される額A:基準日の基本給の月額,B:基準日の基本給の月額に係る調整手当の月額, C:在職期間割合(6か月:100分の100,3か月以上6か月未満:100分の60,3か月未満:100分の30),D:評定区分に応じた成績率(支給の都度定める割合(C評定)の100分の150(A評定),100分の140(B評定),100分の100(C評定),100分の90,80,70,60又は40(以上の4つはD評定))(甲 績率(支給の都度定める割合(C評定)の100分の150(A評定),100分の140(B評定),100分の100(C評定),100分の90,80,70,60又は40(以上の4つはD評定))(甲2・273条から278条まで,甲11・126条,128条,130条から132条まで)カ住居手当次のいずれかに該当する正社員に,その家賃の額や住宅購入の際の借入額に応じて支給される。 (ア) 自ら居住するため住宅(貸間を含む。)を借り受け,現に居住し,月額1万2000円を超える家賃(使用料を含む。)を支払っている正社員(イ) 正社員の所有に係る住宅のうち当該社員によって新築され,又は購入された住宅であって,当該新築又は購入の日から起算して5年を経過していないものに居住している正社員で世帯主である者(ウ) 単身赴任手当を支給されている正社員で,配偶者が居住するために 住宅を借り受け,月額1万2000円を超える家賃を支払っている者(甲2・219条,220条,甲11・61条,62条)キ夏期冬期休暇(ア) 夏期休暇6月1日から9月30日までの期間において,在籍時期に応じ,暦日1日から3日まで付与される。 (イ) 冬期休暇10月1日から翌年3月31日までの期間において,在籍時期に応じ,暦日1日から3日まで付与される。 (甲1及び甲10・63条1項2号,同条2項1号,68条1項19号,70条,甲1・68条1項20号,甲10・同号表中1)ク病気休暇(ア)業務上の事由又は通勤による傷病又は(イ)その他の私傷病のいずれかに該当し,勤務日又は正規の勤務時間中に勤務しない正社員に付与される。 (ア)の場合は無給,(イ)の場合は有給(ただし,結核性疾患の場合は引き続き1年,結核性疾患以外の場合は引き続 病のいずれかに該当し,勤務日又は正規の勤務時間中に勤務しない正社員に付与される。 (ア)の場合は無給,(イ)の場合は有給(ただし,結核性疾患の場合は引き続き1年,結核性疾患以外の場合は引き続き90日(勤続10年以上の社員にあっては180日)を超える期間については,基本給の月額及び調整手当を半減して支給)である。 (甲1・63条1項3号,同条2項2号,69条,70条,甲10・63条1項3号,同条2項2号,69条,70条)ケ夜間特別勤務手当正社員が正規の勤務時間として,郵便局において新夜勤,調整深夜勤及び深夜勤のいずれかに服し,かつ,夜間(午後10時から翌日の午前6時までの間)の全時間にわたって勤務したとき,勤務時間や勤務回数に応じて支給される。 (甲2・251条,甲11・117条の2)コ郵便外務業務精通手当及び郵便内務業務精通手当(以下「郵便外務・内務業務精通手当」という。)郵便業務調整額の支給を受ける社員のうち主として外務事務及び内務事務に従事する正社員(新規採用後6か月未満の者を除く。)に対し,郵便外務業務精通手当は,手当額(1万6500円,1万0900円,5100円)に調整率(100%,70%,30%)を乗じて算出した金額を,郵便内務業務精通手当は手当額(1万4100円,9000円,4000円)に調整率(100%,70%,30%)を乗じて算出した金額を支給する。この各手当は,平成26年3月に廃止された。 (甲2・264条,265条)(5) 契約社員の労働条件の概要時給制契約社員の給与は,基本給と諸手当で構成され,諸手当には,通勤費,時間外割増賃金,祝日割増賃金,深夜割増賃金,早朝・夜間割増賃金,営業関係手当,特殊勤務手当,臨時手当及び作業能率評価手当がある。(甲4・101条,甲 基本給と諸手当で構成され,諸手当には,通勤費,時間外割増賃金,祝日割増賃金,深夜割増賃金,早朝・夜間割増賃金,営業関係手当,特殊勤務手当,臨時手当及び作業能率評価手当がある。(甲4・101条,甲13・38条)基本給の加算給のほか,上記諸手当のうち,早朝・夜間割増賃金,祝日割増賃金及び臨時手当並びに時給制契約社員の病気休暇の概要は次のとおりである。 ア加算給郵便外務業務に従事する時給制契約社員には,時給のうち,基本給として130円又は80円が加算される。(甲4・103条及び別表第7,甲13・40条及び別表第4)イ早朝・夜間割増賃金時給制契約社員が,正規の勤務時間として,始業時刻が午前7時以前となる勤務又は終業時刻が午後9時以後(平成26年3月までの規程では, 午後9時以後午後10時以前となる。)となる勤務に1時間以上従事したときは,勤務1回につき,始業・終業時刻に応じて200円,300円又は500円を支給する。(甲4・109条,97条,甲13・46条,26条)ウ祝日割増賃金時給制契約社員が祝日に勤務することを命ぜられて勤務したときは,祝日割増賃金を支給する。給与期間における祝日給の支給対象時間(休憩時間以外の時間)に次の算式により求められる額を乗じて得た額である。 算式:(基本賃金額)×100分の35(甲4・107条,甲13・44条)エ臨時手当(夏期賞与及び年末賞与)毎年6月1日(夏期賞与)又は12月1日(年末賞与)に雇用されている時給制契約社員のうち,基準日前6か月の期間(「対象期間」)における実際勤務日数が60日以上ある者に支給される。支給額は,次の計算式により算出される。 A(対象期間において支給した基本給の合計額)÷6×0.3×B(対象期間における実際の勤務日数の 間」)における実際勤務日数が60日以上ある者に支給される。支給額は,次の計算式により算出される。 A(対象期間において支給した基本給の合計額)÷6×0.3×B(対象期間における実際の勤務日数の区分に応じた割合,対象期間における実際勤務日数が80日未満の場合,1.0,同80日以上の場合,1.1,同100日以上の場合,1.2,同120日以上の場合,1.3)(甲4・111条,甲13・52条)オ病気休暇私傷病による休暇は,無給の休暇として,1年度において10日の範囲内で取得することができる。 (甲3・42条,甲12・42条) 3 争点及びこれに関する当事者の主張(1) 争点1(労契法20条違反の成否)について (原告らの主張)ア個々の労働条件ごとに不合理性を比較すべきか否か政府が平成28年12月20日に発表した「同一労働同一賃金ガイドライン案」において,有期契約労働者と無期契約労働者との待遇差が不合理であるか否かにつき,個々の給付の趣旨,性格に照らして判断することとされており,本件においても,個々の労働条件ごとに不合理性を比較すべきである。 イ原告らの比較対象とするべき正社員原告ら時給制契約社員と被告の正社員との間で労働条件の相違がある場合に,それが不合理なものと認められるかを比較考察して判断する際,原告ら時給制契約社員の比較対象とするべき正社員は,旧人事制度においては,旧一般職のうち役職のない平社員である担当者及び主任であり,新人事制度においては,新一般職である。 旧人事制度においては,「担当者,主任」の層と,「課長代理,課長,総括課長」の役職者層は区別されて管理されていた。そして,担当者,主任においては,勤務する郵便局を異にする配置転換は例外的であり,転居を伴う人事異動は実 ,「担当者,主任」の層と,「課長代理,課長,総括課長」の役職者層は区別されて管理されていた。そして,担当者,主任においては,勤務する郵便局を異にする配置転換は例外的であり,転居を伴う人事異動は実施されていなかった。他方で,課長代理以上の役職者層は,課長代理等への昇任する際に郵便局を異にする配置転換が行われることが通例であり,郵便局を異にする配置転換も行われていた。したがって,旧人事制度における一般職のうち役職のない平社員である担当者,主任を比較対象とするべきである。 新人事制度においては,新一般職は,主として標準的な業務に従事し,主任や課長代理等への昇任はなく,原則として,転居を伴う配置転換はないとされているから,新一般職を比較対象とするべきである。 ウ原告ら時給制契約社員と被告正社員との間の職務内容等に関する相違の有無 (ア) 業務の内容等原告らが各所属郵便局で担当している業務は,当該郵便局で正社員が担当している業務と全く同一であり,原告らは,場合によっては正社員の代替要員となることもある。 (イ) 人事評価制度郵便外務事務及び内務事務においては,正社員と時給制契約社員との間で,想定される業務の内容や期待される職責,役割について違いはなく,人事評価の違いも明確ではない。 (ウ) 昇任昇格新一般職は,1級相当の担当者から2級以上である主任以上への昇任昇格が予定されていない点で,原告ら時給制契約社員と同一である。旧一般職については,就業規則上は主任以上への昇任昇格は可能とされているものの,実際には,大多数の者は,担当者,主任にとどまり,課長補佐以上へ昇任昇格するのは一部の者にすぎなかった。 (エ) 配置転換の範囲新一般職は,原告ら時給制契約社員と同じく,転居を伴う配置転換が原則として予定 数の者は,担当者,主任にとどまり,課長補佐以上へ昇任昇格するのは一部の者にすぎなかった。 (エ) 配置転換の範囲新一般職は,原告ら時給制契約社員と同じく,転居を伴う配置転換が原則として予定されておらず,旧一般職の担当者,主任も,転居を伴う配置転換はほとんどなく,勤務する郵便局を異にする配置転換も例外的なものであった。 (オ) 登用制度契約社員について将来的な正社員登用の可能性があるからといって,正社員と契約社員の労働条件の相違に関する合理性を基礎付けるものではない。実際にも,被告における契約社員の正社員への登用選考は,平成22年,23年は実施されておらず,平成24年以降は実施されているものの,応募者に対する合格率は27%から28%であり,高いものではない。 エ相違する個別の労働条件の不合理性正社員には,社員就業規則及び社員給与規程が適用され,契約社員には,期間雇用社員就業規則及び期間雇用社員給与規程が適用されるところ,それによる労働条件の差異は,別紙4「労働条件に関する主張対比表」(以下「主張対比表」という。)の原告主張欄記載のとおりであり,これらは,労契法20条にいう労働者の業務内容及び当該業務に伴う責任の程度,当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮すると,全て不合理なものである。 不合理な労働条件についての個別の主張は,主張対比表の各該当部分,具体的には,①外務業務手当(主張対比表pg.1~9),②年末年始勤務手当(主張対比表pg.10~15),③早出勤務等手当(主張対比表pg.16~23),④祝日給(主張対比表pg.24~28),⑤夏期年末手当(主張対比表pg.29~38),⑥住居手当(主張対比表pg. 39~43),⑦夏期冬期休暇(主張対比表pg.44~48),⑧病気休暇 ~23),④祝日給(主張対比表pg.24~28),⑤夏期年末手当(主張対比表pg.29~38),⑥住居手当(主張対比表pg. 39~43),⑦夏期冬期休暇(主張対比表pg.44~48),⑧病気休暇(主張対比表pg.49~51),⑨夜間特別勤務手当(主張対比表pg.52~56),⑩郵便外務・内務業務精通手当(主張対比表pg. 57~63)に記載のとおりである。 (被告の主張)ア個々の労働条件ごとに不合理性を比較すべきか否か原告ら主張に係る各手当は,賃金の一部を構成しており,これを含めて全体として一つの賃金体系が構築されていることや,休暇を含む人事制度全体や賃金体系と密接不可分に関連するから,労働条件を個別に取り上げて,同一名称の手当や休暇の支給等の相違だけに着目して不合理性を論じることは不適切である。 イ原告らの比較対象とするべき正社員正社員の地域基幹職は,1級の担当者に始まり,役割と連動した研修等 を実施しつつ,2級以上の主任,課長代理等へと昇任昇格していく中で,将来的に業務責任者や業務統括者として班や部等を運営していくことが想定されている人材である。したがって,原告らの比較対象とするべき正社員は,一般職(地域基幹職)全体である。 原告らの比較対象とすべき正社員についての主張は,このような人材育成の過程や期待される職務経歴の一部だけを取り出して主張するものであって不合理である。 ウ原告ら時給制契約社員と被告正社員との間の職務内容等に関する相違の有無(ア) 業務の内容等正社員,すわなち,新旧人事制度における旧一般職,地域基幹職及び新一般職は,郵便局において,配達業務等の外務業務及び窓口業務や区分業務等の内務業務に幅広く従事することが想定されている。また,地域基幹職については,支社や監査室等の おける旧一般職,地域基幹職及び新一般職は,郵便局において,配達業務等の外務業務及び窓口業務や区分業務等の内務業務に幅広く従事することが想定されている。また,地域基幹職については,支社や監査室等の社員に登用されて事務職や企画職に従事することもあり,将来的には,管理者として,班長・副班長として班をまとめることや,各社員の業務やシフト等の管理業務,郵便局や部の運営管理業務を行うことが想定されている。 時給制契約社員は,外務事務又は内務事務のうち,特定の定型業務にのみ従事するものであり,これらの業務について幅広く従事することは想定されていない。 (イ) 人事評価制度正社員には,営業・業務の実績や業務の品質は当然のこと,業務プロセスの適切性,業務の正確性,迅速性及び品質向上のための方法開発,担当可能担務の拡大,業務における責任感等が求められており,また,将来の役職者,管理者の候補者として,自己研鑽,状況把握力や論理的思考力等を磨くことや,組織全体への貢献等も期待されていることから,これらに 関連する項目が評価項目となっている。 これに対し,時給制契約社員は,正社員と異なり,幅広い職務を担当することや,重い職責を担うことはなく,将来の役職者,管理者に就任することも予定されておらず,基本的に,雇用契約書上で合意された特定の業務を適式に処理することが求められていることから,正社員のような自己研鑽,状況把握力,論理的思考力等は評価項目とされておらず,身だしなみやルールの遵守等の基礎的事項,従事する業務に必要となるスキルが身に付いているかという極めて簡素な評価項目となっている。 (ウ) 昇任昇格正社員のうち旧一般職及び地域基幹職は,昇任選考を経て,郵便局の主任,課長代理,課長,部長等の管理者へと昇任昇格することが想定さ るかという極めて簡素な評価項目となっている。 (ウ) 昇任昇格正社員のうち旧一般職及び地域基幹職は,昇任選考を経て,郵便局の主任,課長代理,課長,部長等の管理者へと昇任昇格することが想定されており,実際にも,人材育成の観点から,本人の能力,適性,勤務成績等も考慮しながら,昇任昇格を実施している。新一般職については,同一コース内での昇任昇格は予定されていないものの,本人が希望すれば,一定の条件の下で地域基幹職へのコース転換が可能となっている。 時給制契約社員については,職位が付されておらず,昇任昇格はそもそも予定されてない。 (エ) 配置転換の範囲正社員については,就業規則上配置転換があり得る旨が明示されており(甲1・11条1項,甲10・11条1項),このうち地域基幹職については,支社エリア内での郵便局を異にする異動や支社への異動等が命じられる可能性がある。実際にも,被告では,地域基幹職に対して,できるだけ幅広い経験をさせることを通じた人材育成の観点から,本人の能力,適性や要員事情等も考慮しながら,配置転換を行っている。新一般職についても,転居を伴わない範囲において人事異動等が命じられる可能性があり,実際にも,局内の活性化を目的とした人事の刷新の観 点や人材育成の観点から,上記と同様の考慮要素も踏まえて,配置転換を行っている。 時給制契約社員については,職場及び職務内容を限定して採用しており,正社員のような配置転換は行っていない(オ) 登用制度時給制契約社員に対して,被告による選考に合格した場合に正社員に登用される制度が用意されており,ほぼ毎年,時給制契約社員又は月給制契約社員から正社員への登用の募集が行われており,実際にも多くの者が正社員に登用されている。 エ個別の相違する労働条件の不合理 登用される制度が用意されており,ほぼ毎年,時給制契約社員又は月給制契約社員から正社員への登用の募集が行われており,実際にも多くの者が正社員に登用されている。 エ個別の相違する労働条件の不合理性原告らが不合理と主張する個別の労働条件の相違は,主張対比表の被告主張欄記載のとおり,いずれも不合理なものではない。 (2) 争点2(労契法20条の効力(補充的効力の有無))について(原告らの主張)労契法20条は,期間の定めがあることによる不合理な労働条件を是正するために不合理な労働条件を禁止し,同条の民事的効力により,これに反する定めを違法無効とするとともに,不法行為が成立するだけでなく,無期契約労働者と同じ労働条件を認める補充的効力を有するとするのが立法者意思である。このような立法者意思に基づいて,厚生労働省は,平成24年8月10日付け基発0810第2号「労働契約法の施行について」(厚生労働省労働基準局長発)を発し,その「第5,6,(2),カ」において「法第20条は,民事的効力のある規定であること。法第20条により不合理とされた労働条件の定めは,無効となり故意・過失による権利侵害,すなわち不法行為として損害賠償が認められ得ると解されるものであること。また,法第20条により,無効とされた労働条件については,基本的には,無期契約労働者と同じ労働条件が認められると解されるものであること。」と定めたのであ る。同通達は,単なる行政通達ではなく,国会審議を踏まえた立法趣旨及び立法者意思を確認した上で発出されたものである。 (被告の主張)労契法20条は,補充的効力を文言上規定していない。また,労契法20条は,有期契約労働者と無期契約労働者間の労働条件の相違が「不合理と認められるものであってはならない」と定めているとこ の主張)労契法20条は,補充的効力を文言上規定していない。また,労契法20条は,有期契約労働者と無期契約労働者間の労働条件の相違が「不合理と認められるものであってはならない」と定めているところ,これは,有期契約労働者の労働条件が無期契約労働者の労働条件に比較して単に低いだけではなく,法的に否認すべき程度に不公正に低いものであってはならないという意味であり,無期契約労働者と有期契約労働者の労働条件に相違があることだけで直ちに不合理と評価されるわけではないことや,無期契約労働者と有期契約労働者には人事制度上,賃金体系上の違いがあり,それとの整合性を図る必要があることからすれば,労働条件をどのように構築するかは,労使交渉による集団的設定に委ねられるべき事柄であるから,同条に補充的効力は認められない。 (3) 争点3(公序良俗違反の有無)について(原告らの主張)同一労働同一賃金の原則は,我が国が批准した国際労働憲章,ILO100号条約,国際人権規約A規約7条等の国際条約において確立した労働基準となっている。また,裁判例(長野地裁上田支判平成8年3月15日労判690号32頁)においても,「同一(価値)労働同一賃金の原則の基礎にある均等待遇の理念は,賃金格差の違法性判断において,ひとつの重要な判断要素として考慮されるべきものであって,その理念に反する賃金格差は,使用者に許された裁量の範囲を逸脱したものとして,公序良俗違反を招来する場合があ」り,許容される賃金格差の範囲を明らかに超えた場合には,使用者に許された裁量権の範囲を逸脱して違法となるとするものがある。この判断は,一定の許容された裁量権を逸脱した場合には賃金の格差が公序良俗に 違反することを示している。 本件の場合には,正社員と時給制契約社員の労働の同一性が顕 なるとするものがある。この判断は,一定の許容された裁量権を逸脱した場合には賃金の格差が公序良俗に 違反することを示している。 本件の場合には,正社員と時給制契約社員の労働の同一性が顕著であるから,労契法施行前においても,各労働条件の相違は,いずれも公序良俗違反として違法である。 (被告の主張)同一労働同一賃金の原則が公序,法規範を構成しないことは,多くの裁判例が繰り返し判示してきたとおりであり,同一賃金同一労働の原則の違反は公序良俗違反とはならない。なお,原告らが引用する裁判例は,「同一(価値)労働同一賃金の原則が,労働関係を規律する一般的な法規範として存在していると認めることはできない」とし,「これに反する賃金格差が直ちに違法となるという意味での公序とみなすことはできない」とした上で,その基礎にある均等待遇の理念に反する賃金格差が,「使用者に許された裁量の範囲を逸脱した」という極めて限定的な要件の下で,不法行為の成立を肯定したものにすぎない。 本件における原告ら有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違について,均等待遇の理念に反する賃金格差は存在しないし,使用者に許された裁量の範囲を逸脱したものでもない。 (4) 争点4(原告らの損害等)について(原告らの主張)原告Z1は,別紙1の2,原告Z2は,別紙2の2,原告Z3は,別紙3の2記載のとおり,平成24年4月から平成25年3月までの諸手当差額相当額の損害賠償請求権を,同年4月から平成28年8月までの諸手当差額相当額の損害賠償請求権をそれぞれ有するので,原告らは,それぞれ,別紙1の1,同2の1及び同3の1の各請求債権目録記載の請求をする。 (被告の主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 判断の基礎となる事実関係前提 で,原告らは,それぞれ,別紙1の1,同2の1及び同3の1の各請求債権目録記載の請求をする。 (被告の主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 判断の基礎となる事実関係前提事実,各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 (1) 業務内容ア正社員のうち旧一般職及び地域基幹職は,郵便局において,配達業務等の外務事務,窓口業務や区分業務等の内務事務について,幅広く従事することが想定されており,幅広い業務を経験させる目的や,局内の人員配置上の必要から,郵便局を異にする異動だけでなく,同一局内でも,内務と外務との間の配置転換や,所属部や所属班を変更する配置転換が行われることがある。また,地域基幹職は,支社や監査室等の社員に登用されて事務職や企画職に従事することがあるほか,将来的に,役職者,管理者となり,班長・副班長として班をまとめることや,各社員の業務シフト等の管理業務や,郵便局や部の運営理業務を担当することが想定されている。 他方,新一般職は,窓口営業,郵便内務,郵便外務又は各種事務等の標準的な業務に従事することとされているが,役職層等が担当する管理業務を行うことは予定されていない。 これに対して,時給制契約社員は,外務事務又は内務事務のうち,特定の定型業務に従事するものであり,これらの業務について幅広く従事することは想定されていない。時給制契約社員の担当業務が変更される場合もあるが,そのような場合には,本人の意思確認を行い,本人の了解を得た上で行われている。また,時給制契約社員が,上記のような,班長・副班長としての業務,組織管理に関わる業務,各社員の業務やシフト等の管理を行うことは予定されていない。 (甲16,17,19の1ないし3,甲21,乙22,29,30,証人Z ,上記のような,班長・副班長としての業務,組織管理に関わる業務,各社員の業務やシフト等の管理を行うことは予定されていない。 (甲16,17,19の1ないし3,甲21,乙22,29,30,証人Z8,証人Z9,証人Z10,原告Z1本人)。 イ正社員は,外務事務であれば,課長や課長代理という役職層の正社員が,班長・副班長として各班の業務,シフト,通区訓練の計画等を立案,管理する役割を担うことはもとより,主任や担当層においても,日頃から班長・副班長の業務を補佐し,不在の場合には代理を務めるなど,班の運営管理に積極的に関与し,班内の期間雇用社員を牽引していく職責を負っている。 これに対して,時給制契約社員は,配達業務や窓口業務という特定の定型業務を適式に処理することが求められている。 (甲17,19の2,乙29,30,証人Z8,証人Z9,証人Z10,原告Z1本人)ウまた,時給制契約社員の中には,正社員と異なり,勤務時間の長さが限定されている者が存在し,これらの時給制契約社員は,勤務時間の長さを限定して募集がされ,採用時に当該勤務時間での勤務について合意しており,その他,特定の勤務時間以外の時間帯には勤務をさせない旨や,特定の曜日には勤務させない旨をあらかじめ合意している者も存在する。このような時給制契約社員に関して,班長・副班長がシフトを組む際には,本人の了解のない限り,勤務させない旨を合意した時間帯や曜日にはシフトを入れないよう調整するなどしており,勤務時間等の指定に関して,正社員とは大きな違いがある(甲C2の1,乙23,28,30,証人Z8,証人Z10)。 (2) 人事評価ア地域基幹職の人事評価は,「業績評価」と「職務行動評価」から構成され,それぞれの実施要項において具体的な評価項目等が定められている。 28,30,証人Z8,証人Z10)。 (2) 人事評価ア地域基幹職の人事評価は,「業績評価」と「職務行動評価」から構成され,それぞれの実施要項において具体的な評価項目等が定められている。 地域基幹職の「業績評価」は,短期業績及び中長期業績を評価するものであり,営業・業務実績のほか,業務品質向上のための方法の開発,担当可能担務の拡大,部下育成指導状況等が対象となり,業績評価の一部である組織貢献加点評価においては,積極的な情報連携等により他局の業績へ の貢献や,他の班や局,又は支社全体といった他組織等の業績に対する貢献等も評価の対象とされている。「職務行動評価」は,社員に求められる役割を発揮した行動としての事実を評価するものであり,顧客志向,コンプライアンス,チームワーク・関係構築,自己研鑽・指導育成,状況把握,論理的思考,正確・迅速,責任感,業務品質向上,チャレンジ志向の10項目で評価される。各評価項目の内容は,新一般職の人事評価についても同様である。 これらの評価項目は,正社員に対して,営業・業務実績や業務品質向上はもとより,業務プロセスの適切性,業務の正確・迅速性及び品質向上のための方法開発,担当可能担務の拡大等の幅広い役割が求められているほか,地域基幹職については,将来の役職者,管理者の候補者として,組織全体への貢献等も期待されていることを反映しているものである。 (乙1ないし4,29,30,証人Z8,証人Z10)イこれに対して,時給制契約社員の人事評価は,「基礎評価」と「スキル評価」から構成され,実施要項において具体的な評価項目等が定められている。 時給制契約社員は,正社員のように幅広い業務に従事することや,管理者,役職者として重い職責を担うことは想定されておらず,他組織等への積極的な貢献を において具体的な評価項目等が定められている。 時給制契約社員は,正社員のように幅広い業務に従事することや,管理者,役職者として重い職責を担うことは想定されておらず,他組織等への積極的な貢献を行うことも期待されていないことから,組織貢献加点評価のような評価項目はない。基礎評価においては,時給制契約社員として求められる基本的事項,具体的には,服装等の身だしなみ,時間の厳守,上司の指示や職場内のルールの遵守等に関する評価が行われる。また,スキル評価においては,被評価者のランクに応じて,時給制契約社員が担当する職務の広さとその習熟度についての評価が行われる。例えば,郵便外務事務であれば,複数区の通区ができるか否かや,苦情,申告の初期対応ができるかなどが評価され,郵便内務事務であれば,郵便物等の区分作業が できるかや,電話応対ができるかなどが評価の対象となる。 正社員のような,人材開発,関係構築・自己研鑽,状況把握・論理思考等や組織貢献加点評価等の評価項目はない。 (甲A13の1ないし7,甲A20,甲C5,乙1ないし5,29,30,34,証人Z8,証人Z10)(3) 昇任昇格ア旧一般職及び地域基幹職は,一定の勤続年数の要件を満たすと昇任選考の受験が可能となり,郵便局の主任,課長代理,課長,部長等の管理者へと昇任昇格していくことで,期待される役割や職責が大きくなっていくことが想定されている。実際にも,将来の管理者や役職者として活躍できる有益な人材を育てるという人材育成の観点から,できるだけ幅広い経験をさせることを主な目的としつつ,本人の能力,適性,要員事情,勤務成績やキャリア形成等も考慮しながら,昇任,昇格が実施されている。旧一般職及び地域基幹職は,概ね,5年目頃から主任に昇任し,10年目から15年目までに課長 としつつ,本人の能力,適性,要員事情,勤務成績やキャリア形成等も考慮しながら,昇任,昇格が実施されている。旧一般職及び地域基幹職は,概ね,5年目頃から主任に昇任し,10年目から15年目までに課長代理,15年目頃からは課長へと相当数が昇任しており,勤続年数を重ねるにつれて,課長や管理者の割合が増加する。 新一般職については,同一コース内での昇任昇格は予定されていないものの,本人が希望すれば,一定の条件の下で正社員地域基幹職へのコース転換が可能であり,コース転換することにより,地域基幹職と同様に昇任昇格することが想定されている。なお,制度上は昇任昇格が想定されている旧一般職及び地域基幹職の中には,上記のような昇任昇格に伴う役割や職責の拡大を負担と考え,昇任昇格を希望しない者も一定数存在する。 (甲16,17,21,乙22,25,29,30,証人Z9,証人Z11,証人Z12,証人Z10,証人Z13)イ時給制契約社員については,そもそも職位が付されておらず,昇任昇格もない(乙29)。 (4) 配置転換ア正社員については,就業規則において,業務上の都合又は緊急的な業務応援により,出向,転籍又は就業の場所若しくは担当する職務の変更を命じることがあり得る旨規定されており(甲1及び10・11条1項),地域基幹職は,支社エリア内での局間異動や支社への異動等が命じられる可能性がある。実際にも,地域基幹職は,将来の管理者,役職者として活躍できる有益な人材を育てるという人材育成の観点から,できるだけ幅広い経験をさせることを主な目的としつつ,本人の能力,適性,要員事情,勤務成績やキャリア形成等も考慮しながら,配置転換が行われている。平成22年度から同27年度までの間において,全国で延べ約5万名の地域基幹職が郵便局を異にして異動し つ,本人の能力,適性,要員事情,勤務成績やキャリア形成等も考慮しながら,配置転換が行われている。平成22年度から同27年度までの間において,全国で延べ約5万名の地域基幹職が郵便局を異にして異動しており,この6年間で3万5000名以上の地域基幹職が少なくとも1回は郵便局を異にする異動をしている。 (甲1,10,16,17,21,乙22,29,30,証人Z9,証人Z10)。 新一般職についても,転居を伴わない範囲において人事異動等が命じられる可能性があり,実際にも,局内の活性化を目的とした人事の刷新の観点や,正社員として幅広い経験をさせることで,より高度な技能や責任感を備えた人材を育てるという人材育成の観点から,できるだけ幅広い経験をさせることを主な目的としつつ,上記と同様の考慮要素も踏まえて,配置転換が行われている(甲19の2,甲21,証人Z8,証人Z9,証人Z10,原告Z1本人)。 イこれに対して,時給制契約社員については,職場及び職務内容を限定して採用されており,正社員のような人事異動等は行われない。ただし,時給制契約社員についても,例外的に,局の閉鎖や新局の開設に伴い,他の郵便局での勤務が打診される場合はあるものの,時給制契約社員がこれに同意した場合に限られる上,正社員のような業務命令による異動という形 式ではなく,従前の郵便局における勤務に関して締結されていた雇用契約を終了させた上で,新規に別の郵便局における勤務に関して雇用契約を締結し直すという形式で行われている。(乙29,証人Z11,原告Z1本人,原告Z2本人,原告Z3本人)。 (5) 正社員への登用制度ア時給制契約社員に対しては,被告による選考に合格した場合に月給制契約社員や正社員に登用される制度が用意されており,ほぼ毎年,時給制契約社員から月 原告Z3本人)。 (5) 正社員への登用制度ア時給制契約社員に対しては,被告による選考に合格した場合に月給制契約社員や正社員に登用される制度が用意されており,ほぼ毎年,時給制契約社員から月給制契約社員への登用や,時給制契約社員又は月給制契約社員から正社員への登用の募集が行われている(ただし,時給制契約社員から月給制契約社員への登用は,平成26年度以降は行われていない。)。 募集は,本社から各支社への指示文書に基づいて,各郵便局において登用の実施要領が朝礼や掲示板等によって周知されているほか,応募要件を満たす者には個別の声かけも行われている。時給制契約社員から正社員への登用は,人事評価や勤続年数等に関して,各年度ごとに応募要件が定められ,応募要件を満たせば応募が可能であり,適性試験と面接により選考される。(乙29,30,証人Z9,証人Z10)。 イ平成22年度と平成23年度に正社員登用試験に合格した時給制契約社員の合計は,応募者数3万9101人の約13%に当たる4968人であり,また,平成26年度と平成27年度に正社員登用試験に合格した時給制契約社員の合計は,応募者数1万5494人の約3割に当たる4301人である。なお,平成24年度及び平成25年度は,この登用試験は実施されていない。(乙29) 2 争点1(労契法20条違反の成否)について(1) 期間の定めによる相違であるか否か労契法20条は,有期契約労働者と無期契約労働者との間の労働条件の相違が不合理なものであることを禁止する趣旨であるところ,同条の「期間の 定めがあることにより」という文言は,有期契約労働者の労働条件が無期契約労働者の労働条件と相違するというだけで,当然に同条の規定が適用されるものではなく,当該有期契約労働者と無期契約労働者の間の労働条 めがあることにより」という文言は,有期契約労働者の労働条件が無期契約労働者の労働条件と相違するというだけで,当然に同条の規定が適用されるものではなく,当該有期契約労働者と無期契約労働者の間の労働条件の相違が,期間の定めの有無に関連して生じたものであることを要する趣旨であると解される。 本件において原告らが主張する時給制契約社員と正社員との間の諸手当や休暇等の労働条件の相違は,いずれも,正社員には社員就業規則(甲1,10)及び社員給与規程(甲2,11)が適用され,契約社員には期間雇用社員就業規則(甲3,12)及び期間雇用社員給与規程(甲4,13)が適用されることによるものであり,このように適用される就業規則等が異なるのは,有期労働契約か無期労働契約かによるのであるから,上記相違は,期間の定めの有無に関連して生じたものであると認められる。 (2) 不合理と認められるものか否かの判断の構造等ア労契法20条は,有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違について,職務の内容,当該職務の内容及び配置の変更の範囲,その他の事情(以下,この3つを併せて「職務の内容等」ということがある。)を考慮して,「不合理と認められるものであってはならない」と規定し,「合理的でなければならない」との文言を用いていないことに照らせば,同条は,問題となっている労働条件の相違が不合理と評価されるかどうかを問題としているのであって,合理的な理由があることまで要求する趣旨ではないと解される。そして,「不合理と認められるもの」という文言から規範的要件であると解されるので,同条の不合理性については,労働者において,相違のある個々の労働条件ごとに,当該労働条件が期間の定めを理由とする不合理なものであることを基礎付ける具体的事実(評価根拠事実)についての主張立 るので,同条の不合理性については,労働者において,相違のある個々の労働条件ごとに,当該労働条件が期間の定めを理由とする不合理なものであることを基礎付ける具体的事実(評価根拠事実)についての主張立証責任を負い,使用者において,当該労働条件が不合理なものであるとの評価を妨げる具体的事実(評価障害事実)につい ての主張立証責任を負い,主張立証に係る労契法20条が掲げる諸要素を総合考慮した結果,当該労働条件の相違が不合理であると断定するに至らない場合には,当該相違は同条に違反するものではないと判断されることになる。 イ同条は,不合理と認められるものか否かの判断に当たり,①職務の内容,②当該職務内容,配置の変更の範囲,③その他の事情を考慮要素としているところ,その規定の構造や文言等からみて,①及び②が無期契約労働者と同一であることをもって,労働条件の相違が直ちに不合理と認められるものではなく,両当事者の主張立証に係る①から③までの各事情を総合的に考慮した上で不合理と認められるか否かを判断する趣旨であると解される。このように労契法20条の判断において,職務内容は判断要素の一つにすぎないことからすると,同条は,同一労働同一賃金の考え方を採用したものではなく,同一の職務内容であっても賃金をより低く設定することが不合理とされない場合があることを前提としており,有期契約労働者と無期契約労働者との間で一定の賃金制度上の違いがあることも許容するものと解される。 ウ個々の労働条件ごとに相違の不合理性を判断すべきか否かにつき,被告は,本件で問題とされる各手当は,賃金の一部を構成しており,これを含めて全体として一つの賃金体系が構築されていることや,休暇を含めて人事制度や賃金体系と密接不可分に関連するから,個別の労働条件ごとに不合理性を論じる れる各手当は,賃金の一部を構成しており,これを含めて全体として一つの賃金体系が構築されていることや,休暇を含めて人事制度や賃金体系と密接不可分に関連するから,個別の労働条件ごとに不合理性を論じること自体が不適切である旨主張する。 しかしながら,労使交渉において個別の労働条件を交渉する場合においても,例えば,基本給と手当のように密接に関連する労働条件については,最終的に賃金の総額を見据えた交渉が行われるのが通例であることや,手当や待遇の中には共通の趣旨を含むものがあることもままみられることも公知の事実であり,個別の労働条件ごとに相違の不合理性を判断する場合 においても,個々の事案におけるそのような事情を「その他の事情」として考慮した上で,人事制度や賃金体系を踏まえて判断することになるのであるから,被告の上記主張は,採用することができない。なお,厚生労働省労働基準局長発都道府県労働局長あて平成24年8月10日付け基発0810第2号「労働契約法の施行について」においても,「法第20条の不合理性の判断は,有期契約労働者と無期契約労働者との間の労働条件の相違について,職務の内容,当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して,個々の労働条件ごとに判断されるものであること」とされている。 エ平成28年12月20日付けの「同一労働同一賃金ガイドライン案」(甲32)が公表されているところ,その前文には,同ガイドラインをもとに,法改正の立案作業を進めることが予定され,今後,関係者の意見や改正法案についての国会審議を踏まえて,同ガイドライン案を最終的に確定すると記載されていることに鑑みると,労契法20条の不合理性判断の際に,少なくとも現時点の同ガイドライン案を参酌する必要はないというべきである。 (3) 原告らの比較対 イドライン案を最終的に確定すると記載されていることに鑑みると,労契法20条の不合理性判断の際に,少なくとも現時点の同ガイドライン案を参酌する必要はないというべきである。 (3) 原告らの比較対象とするべき正社員ア新人事制度前判示のとおり,原告ら時給制契約社員は,外務事務及び内務事務のうち,特定の定型業務のみに従事し,担当業務が変更されることは極めて例外的であり,班長・副班長として班を総括することや,各社員の業務やシフトを管理する業務を行わず,原則として配置転換はなく,昇任昇格も予定されていないなど,担当業務の種類や異動等の範囲が限定されている。 他方,被告の社員は,新人事制度の下では,総合職,地域基幹職及び新一般職の各コースに分かれており,各コースは採用時に区分され,原則として在職中のコースの変更はなく,新一般職は,外務事務及び内務事務の 標準的な業務に従事し,1級担当者のままであり,上位級の課長や郵便局長等への昇任昇格は予定されておらず,配置転換は転居を伴わない範囲内でその可能性があるにとどまるなど,担当業務や異動等の範囲が限定されている。 そうすると,原告ら契約社員と労働条件を比較すべき正社員は,担当業務や異動等の範囲が限定されている点で類似する新一般職とするのが相当である。 これに対して被告は,地域基幹職と比較すべきである旨主張するけれども,地域基幹職は,将来の支社,郵便局等の管理職候補であって,1級担当者から2級以上への昇格,主任,課長代理,課長等への昇任が予定されているほか,郵便局を異にする異動も予定されており,担当業務や異動等の範囲の点で時給制契約社員と異なっている。加えて,新人事制度の下において,正社員と時給制契約社員の労働条件の相違を検討する上では,地域基幹職と新一般職というコー も予定されており,担当業務や異動等の範囲の点で時給制契約社員と異なっている。加えて,新人事制度の下において,正社員と時給制契約社員の労働条件の相違を検討する上では,地域基幹職と新一般職というコース別制度が採用され,昇格昇任や配置転換等において大きな差異を有するコースが格別に設けられ,コース間の変更が原則として認められないとされていることに鑑みると,時給制契約社員と比較する対象として,地域基幹職のみと比較することが相当でないばかりでなく,異なるコースの職種を一体として比較の対象とすること,例えば,新一般職と地域基幹職を併せて,あるいは正社員全体と比較することも相当でないというべきである。したがって,この点に関する被告の主張は,採用することができない。 イ旧人事制度前判示のとおり,旧人事制度においては,正社員は,「管理者・役職者」,「主任・一般」,「再雇用」に分類され,職群として企画職群,一般職群(旧一般職)及び技能職群の3つに分かれており,このうち旧一般職は,1級担当者,2級主任,3級課長代理,4級統括課長・課長までの4等級 の昇格昇任が予定されており,業務上の都合又は緊急的な業務応援により,出向,転籍又は就業場所若しくは担当する職務の変更及び配置転換等が予定されていることが認められる。そして,旧一般職の中で昇任昇格が事実上限定されていることや,人事異動の範囲が限定されるコースやグループ等があったことを認めるに足りる証拠はない。 そうすると,旧人事制度においては,原告ら時給制契約社員と労働条件を比較すべき正社員は,旧一般職とするのが相当である。 この点について原告らは,旧人事制度においては,担当者,主任の中には転居を伴う配置転換等を経験していない者が一定数存在したなどとして,担当者,主任を比較対象とすべきで 般職とするのが相当である。 この点について原告らは,旧人事制度においては,担当者,主任の中には転居を伴う配置転換等を経験していない者が一定数存在したなどとして,担当者,主任を比較対象とすべきである旨主張する。 しかしながら,旧人事制度上は,担当者,主任と課長代理,課長,総括課長とは,同一の昇任昇格経路の線上にあり,適用される就業規則も同一内容であることは前判示のとおりであり,仮に原告が主張するとおり,担当者,主任の中に転居を伴う配置転換等を経ていない者が一定数存在したとしても,両者の間で転居を伴う配置転換等において異なる取扱いをする慣行が確立されていたことを認めるに足りる証拠はない。そして,前判示に係る就業規則(甲1)の規定等に照らし,担当者,主任であっても,各部署において多様な業務に従事し,業務の必要により配置転換等を命じられることがあり,正当な理由なくこれを拒むことができなかったものと認められる。そうすると,旧人事制度の担当者,主任は,新人事制度の新一般職とは異なって,担当職務や異動の範囲が限定されているとは認められないので,比較すべき正社員として,旧一般職の担当者,主任に限定することは合理的ではないから,原告らの上記主張は採用することができない。 (4) 正社員と時給制契約社員との職務の内容等に関する相違について前提事実及び前記認定事実に基づき,各相違について検討する。 ア職務の内容の相違 (ア) 旧一般職及び地域基幹職は,郵便局において,配達業務等の外務事務,窓口業務や区分業務等の内務事務に幅広く従事することが想定されている。 旧一般職及び地域基幹職は,郵便局の主任,課長代理,課長,部長等の管理者へと昇任昇格していくことで,期待される役割や職責が大きくなっていくことが想定されており,実際にも, とが想定されている。 旧一般職及び地域基幹職は,郵便局の主任,課長代理,課長,部長等の管理者へと昇任昇格していくことで,期待される役割や職責が大きくなっていくことが想定されており,実際にも,概ね,5年目頃から主任に昇任し,その後,10年目から15年目までに課長代理,15年目頃からは課長へと相当数が昇任しており,勤続年数を重ねるにつれて,課長や管理者の割合が増加している。 他方,新一般職は,窓口営業,郵便内務事務,郵便外務事務又は各種事務等の標準的な業務に従事することが予定されており,1級の職位である担当のみとされており,2級以上の職位に昇任昇格することは予定されていない。 正社員の人事評価は,新一般職を含めて,業績評価において,業務の実績そのもののほか,人材開発,部下の育成指導状況等,他組織等の業績に対する貢献等も評価の対象とされており,職務行動評価においては,自己研鑽,状況把握,論理的思考,チャレンジ志向等についても評価の対象となっている。 (イ) これに対し,時給制契約社員は,外務事務又は内務事務のうち,特定の定型業務にのみ従事し,これらの業務について幅広く従事することは想定されていない。 また,時給制契約社員については,そもそも職位は付されておらず,昇任昇格もない。 人事評価においても,基礎評価では,時給制契約社員として求められる基本的事項についての評価が行われ,スキル評価では,被評価者のランクに応じて,時給制契約社員が担当する職務の広さとその習熟度につ いての評価が行われる。正社員のような,人材開発,関係構築・自己研鑽,状況把握・論理思考等や組織貢献加点評価等の評価項目はない。 (ウ) 以上のとおり,正社員のうち旧一般職及び地域基幹職と時給制契約社員との間には,従事する職務の内容及びその業務 関係構築・自己研鑽,状況把握・論理思考等や組織貢献加点評価等の評価項目はない。 (ウ) 以上のとおり,正社員のうち旧一般職及び地域基幹職と時給制契約社員との間には,従事する職務の内容及びその業務に伴う責任の程度に大きな相違があるものと認められる。 他方,正社員のうち新一般職と時給制契約社員との間には,いずれも昇任昇格が予定されていない点など共通点もあり,旧一般職及び地域基幹職と時給制契約社員との間ほどの大きな相違は認められないものの,時給制契約社員の中には,正社員と異なり,勤務時間の長さが限定されている者が存在し,これらの時給制契約社員は,勤務時間の長さを限定して募集がされ,採用時に当該勤務時間での勤務について合意しており,その他,特定の勤務時間以外の時間帯には勤務をさせない旨や,特定の曜日には勤務させない旨をあらかじめ合意している者も存在するなど,勤務時間等の指定について大きな相違があるほか,人事評価の評価項目等に照らしても,期待されている業務の内容や果たすべき役割に違いがあることが前提とされており,両者の間には一定の相違があることが認められる。 イ職務の内容及び配置の変更の範囲に関する相違(ア) 正社員は,就業規則上,配置転換が予定されており,地域基幹職は,支社エリア内での局間異動や支社への異動等が想定され,実際にも,平成22年度から同27年度までの間において,全国で延べ約5万名が郵便局を異にする異動をしている。また,新一般職は,転居を伴わない範囲において人事異動等が命じられる可能性があり,実際にも異動が行われている。 (イ) これに対し,時給制契約社員については,職場及び職務内容を限定して採用されており,正社員のような人事異動は行われず,郵便局を移 る場合でも,本人の同意に基づいて行われており,正社員 (イ) これに対し,時給制契約社員については,職場及び職務内容を限定して採用されており,正社員のような人事異動は行われず,郵便局を移 る場合でも,本人の同意に基づいて行われており,正社員のような人事異動という形式ではなく,従前の郵便局における雇用契約を終了させた上で,新規に別の郵便局における勤務に関して雇用契約を締結し直すという形式でされている。 (ウ) 以上によれば,正社員のうち旧一般職及び地域基幹職と時給制契約社員との間には,職務の内容及び配置の変更の範囲に大きな相違があり,新一般職と時給制契約社員との間にも,一定の相違があるということができる。 ウ小括以上の諸事情を総合考慮すると,正社員のうち旧一般職及び地域基幹職と時給制契約社員との間には,職務の内容及び配置の変更の範囲に大きな相違があり,新一般職と時給制契約社員との間にも,一定の相違があると認められる。 これに対し原告らは,原告ら各自の職務の内容及び責任の程度,職務の内容及び配置の変更の範囲について,正社員である旧一般職における担当者,主任及び新一般職と同一である旨主張する。 確かに,証拠(甲A21,甲B12,甲C12,原告Z1本人,原告Z2本人,原告Z3本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告Z1は,郵便外務事務その他これに関連する業務につき,正社員と同じ勤務シフトに組み込まれ,時には正社員の代替要員として勤務していること,原告Z2は,郵便局によっては正社員が担当することがある小包集配業務に従事していること,原告Z3は,郵便内務事務につき,正社員と同じ勤務シフトに組み込まれて勤務していることが認められる。 しかしながら,これらの事実は,原告らの担当する業務と正社員の担当する業務のうちに同一内容の業務があることを示すにとどまり,前判示に係る業務 シフトに組み込まれて勤務していることが認められる。 しかしながら,これらの事実は,原告らの担当する業務と正社員の担当する業務のうちに同一内容の業務があることを示すにとどまり,前判示に係る業務の内容等の相違に照らせば,これをもって正社員のうち比較対象 である旧一般職及び新一般職と時給制契約社員の業務の内容が同一であるとはいえないから,原告らの主張は採用することができない。 (5) 各労働条件の相違の不合理性これまでに認定判示してきた事実を前提に,(1)から(4)の判示を踏まえて,原告らの主張する各労働条件の相違が不合理なものであるか否かを検討する。 ア外務業務手当(ア) 前提事実,後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められるa 被告(当時日本郵政公社)の郵便局の常勤職員が従事する職務は,平成19年4月よりも前は,その内容に応じて内務職と外務職に分類されており,内務職に対しては内務調整額(郵内調整額)が支給され,外務職に対しては,外務職の職務,勤務条件の特殊性に鑑みて,内務調整額よりも高額な外務調整額(郵外調整額)が支給されており,両調整額は,いずれも基本給の調整額として,基本給月額に加算されて支払われていた。 被告が平成19年10月に民営化されることを踏まえて,事業環境の変化等に対する適切な対応等のため,柔軟な職員配置を可能とすべく,同年4月,内務職と外務職の両職種が一般職に統合され,内務調整額と外務調整額は,内務調整額と同額の郵便業務調整額に一本化された。 その結果,より高額の外務調整額が支給されていた外務職の処遇低下を防ぐため,内務調整額と外務調整額の差額相当額を外務業務手当として支給することとされ,その支給方法としては,従前の基本給の調整額として基本給月額へ加算するという 額が支給されていた外務職の処遇低下を防ぐため,内務調整額と外務調整額の差額相当額を外務業務手当として支給することとされ,その支給方法としては,従前の基本給の調整額として基本給月額へ加算するという方法ではなく,外務事務に従事した日数に応じ,1日当たりの金額で設定された手当を支給する 方法を採ることにより,より柔軟な職員配置が可能となることから,従前の基本給の調整額ではなく,これを手当化した外務業務手当が新設された。 外務業務手当の具体的な金額は,労使協議も踏まえ,最終的に,「(統合前の外務調整額-統合前の内務調整額)÷1か月当たりの出勤日数(18日)×「跳ね返り率」(1.9)」の計算式によることとされた。ここで跳ね返り率を乗じているのは,上記の職種統合前は基本給の一部であった調整額の手当化により,賞与や退職手当等の算定の基礎となる基本給月額が減少するところ,外務事務に従事する者に対する賞与や退職手当等の総額を統合前後で均衡させる観点から,当該減少分を外務業務手当支給額で補うためである。その結果,基本給月額の減少分も実質的に勘案すると,支給総額は統合前後で概ね均衡している。 (乙17,28,証人Z8)。 b 時給制契約社員の給与は,平成21年10月まで,基本給(時給)が地域別基準額と職務加算額で構成されていたところ,地域別最低賃金が引き上げられた場合の対応に困難を生ずるようになったことなどから,同月,地域別基準額を廃止するとともに,職務加算額も廃止し,同加算額の下限とされていた額を基本給加算額とした。 そして,内務事務より高額の職務加算額が支給されていた外務事務に従事する時給制契約社員の処遇を維持するため,労使交渉を経て,外務事務に従事する同社員に対し,外務加算額として130円又は80円が支給されるようになった り高額の職務加算額が支給されていた外務事務に従事する時給制契約社員の処遇を維持するため,労使交渉を経て,外務事務に従事する同社員に対し,外務加算額として130円又は80円が支給されるようになった。 (乙28,証人Z8)。 c 外務事務に従事している原告Z1及び原告Z2について,本件訴訟の請求対象期間である平成24年4月から平成26年3月までの外務 事務の勤務日数を前提に,当該請求対象期間内の各月ごとに,同原告らに支払われる外務加算額の金額,及び仮に正社員の外務業務手当を支給した場合に支払われる金額をそれぞれ算出して比較すると,別紙5「月額シミュレーション(外務業務手当と外務加算額)」のとおりであり,原告Z1は毎月1000円程度,原告Z2は毎月1万円程度の差額である(乙18)。 (イ) 以上の諸事実によれば,正社員に支給される外務業務手当が時給制契約社員には支給されないという相違があるものの,両者の間には,職務の内容並びに職務の内容及び配置の変更の範囲に大きな又は一定の相違がある上,正社員には長期雇用を前提とした賃金制度を設け,短期雇用を前提とする契約社員にはこれと異なる賃金体系を設けることは,企業の人事上の施策として一定の合理性が認められるところ,外務業務手当は,前記認定に係る制定の経緯から明らかなとおり,職種統合による賃金額の激変を緩和するため正社員の基本給の一部を手当化したものであり,同手当の支給の有無は,正社員と契約社員の賃金体系の違いに由来するものであること,その具体的な金額も,労使協議も踏まえた上で,統合前後で処遇を概ね均衡させる観点で算出されたものであること,郵便外務事務に従事する時給制契約社員については,時給制契約社員の賃金体系において,外務加算額という形で,外務事務に従事することについて別途反映さ 遇を概ね均衡させる観点で算出されたものであること,郵便外務事務に従事する時給制契約社員については,時給制契約社員の賃金体系において,外務加算額という形で,外務事務に従事することについて別途反映されていることが認められ,これらの諸事情を総合考慮すれば,正社員と時給制契約社員の外務業務手当に関する相違は,不合理であるとは認められない。 なお,外務事務に従事している原告Z1及び原告Z2について,本件訴訟の請求対象期間内の各月ごとに外務加算額と外務業務手当額を比較した際の両者の差額が毎月1000円から1万円程度であることは,前記判断を左右するに足りる事情であるとはいえない。 (ウ) この点に関して原告らは,基本給の一部として組み込まれている郵便業務調整額と外務業務手当の合計額全額を不合理な労働条件の相違としてみなければならない旨主張する。 しかし,前記の経緯からも明らかなとおり,郵便業務調整額は,内務職と外務職の職種統合に伴い,内務調整額と外務調整額が,より低額であった内務調整額と同額に一本化された調整額であるから,外務事務に従事する社員だけでなく,内務事務に従事する社員にも同額が支給されているものである。したがって,郵便業務調整額は,郵便外務職員の職務,勤務条件の特殊性を考慮して正社員に支払われているものではないから,この点に関する原告らの主張は,採用することができない。 イ年末年始勤務手当(ア) 前提事実(4)及び(5)に摘示のとおり,正社員は,12月29日から翌年の1月3日までの間において実際に勤務した時に年末年始勤務手当が支給され,その額は,12月29日から同月31日までは1日4000円,1月1日から同月3日までは1日5000円(いずれも,実際に勤務した時間が4時間以下の場合は,その額の100分の50に相 務手当が支給され,その額は,12月29日から同月31日までは1日4000円,1月1日から同月3日までは1日5000円(いずれも,実際に勤務した時間が4時間以下の場合は,その額の100分の50に相当する額。)であり,一方で時給制契約社員に対しては支給されておらず,年末年始勤務手当の支給について正社員と時給制契約社員との間に相違が存在する。 (イ) 証拠(乙28,証人Z8)及び弁論の全趣旨によれば,年末年始は年賀状の準備及び配達等により平常時の数倍の業務量が集中するという郵便事業の特殊性に鑑み,昭和32年に年末年始特別繁忙手当が導入され,その後,支給要件や支給額等がその都度定められて正社員に支払われてきたこと,平成17年10月1日から,それまでの年末年始特別繁忙手当が廃止され,その原資の一部によって年末年始勤務手当が創設されたことが認められる。 これらの事実に加え,年末年始勤務手当は,1日4時間を越える勤務をした場合には5000円(1月)又は4000円(12月)が,4時間以下はその半額が支払われるものであり,勤務内容にかかわらず一律額が支給されること,官公庁では行政機関の休日に関する法律により,12月29日から翌年1月3日を休日とし,原則として執務を行わず,民間においても,同時期が繁忙期である業種等を除いて概ねこれに準じていることは公知の事実であることを踏まえると,多くの労働者が年末年始の上記期間を休日として過ごしているのに対し,被告においては,年賀状の準備及び配達等の期間として,年間を通じて最繁忙時期となっており,その時期に実際に勤務した正社員に対し,通常の労働の対価としての基本給等に加えて,多くの国民が休日の中で最繁忙時期の労働に従事したことに対する対価として支払われるものであると認められる。 (ウ) 被告は 期に実際に勤務した正社員に対し,通常の労働の対価としての基本給等に加えて,多くの国民が休日の中で最繁忙時期の労働に従事したことに対する対価として支払われるものであると認められる。 (ウ) 被告は,単純な業務負担に対する対価として支払うのではなく,定年までの長期にわたり,年末年始に家族等と一緒に過ごすことができないことから,その労苦に報いるとともに,会社に貢献することのインセンティブを付与することにより,正社員の長期間の定着を図る趣旨であり,仮に業務負担に対する対価であるとすれば,手当の算出方法を業務内容や業務量に応じたものとなっているはずであるのに,基本的に一律額となっていることからも,業務負担に対する対価ではない旨主張する。 しかしながら,年末年始勤務手当は,1日4時間以下であっても,勤務に従事さえすれば少なくとも半額が支払われるものであって,最繁忙期である年末年始の当該期間において,勤務の内実を問うことなく,勤務に就いたこと,すなわち労働に従事したこと自体に対する対価として一律額が支給されるものであって,実際の業務の負担が当該期間以外と比較してどの程度過重なものであるかを考慮して同手当が支給されているものではないから,業務に従事したことの対価であることと手当額が 一律額であることとは矛盾するものではない。 (エ) これまで判示してきた年末年始の期間における労働の対価として一律額を基本給とは別枠で支払うという年末年始勤務手当の性格等に照らせば,長期雇用を前提とした正社員に対してのみ,年末年始という最繁忙時期の勤務の労働に対する対価として特別の手当を支払い,同じ年末年始の期間に労働に従事した時給制契約社員に対し,当該手当を全く支払わないことに合理的な理由があるということはできない。もっとも,年末年始勤務手当は,正 対する対価として特別の手当を支払い,同じ年末年始の期間に労働に従事した時給制契約社員に対し,当該手当を全く支払わないことに合理的な理由があるということはできない。もっとも,年末年始勤務手当は,正社員に対する関係では,定年までの長期間にわたり年末年始に家族等と一緒に過ごすことができないことについて長期雇用への動機付けいう意味がないとはいえないことから,正社員のように長期間の雇用が制度上予定されていない時給制契約社員に対する手当の額が,正社員と同額でなければ不合理であるとまではいえないというべきである。 (オ) したがって,年末年始勤務手当に関する正社員と時給制契約社員との間の相違は,同社員に対して当該手当が全く支払われないという点で,不合理なものであると認められる。 ウ早出勤務等手当(ア) 後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 a 早出勤務等手当は,沿革的には,昭和23年政令第323号の政府職員の特殊勤務手当に関する政令に規定されていた特殊勤務手当に由来するもので,正社員が勤務シフトによって早出勤務等が必要となることがあり,この場合に早出勤務等が必要のない他の業務に従事する正社員との間の公平を図るために昭和41年に新設され,現在まで支給されているものであり,その都度の労使協議を経て支給額が決定されている。(乙28,証人Z8)b 時給制契約社員については,正規の勤務時間として始業時刻が午 前7時以前となる勤務又は終業時刻が午後9時以後午後10時以前となる勤務に1時間以上従事したときは,勤務1回につき,始業,終業時刻に応じて200円,300円又は500円の早朝・夜間割増賃金が支給されるところ,これは,時間外労働に対する対価でなく,労働基準法37条の割増賃金とは異なるものである。(甲 1回につき,始業,終業時刻に応じて200円,300円又は500円の早朝・夜間割増賃金が支給されるところ,これは,時間外労働に対する対価でなく,労働基準法37条の割増賃金とは異なるものである。(甲4・109条,97条)c 正社員は正規の勤務時間のうち,当該勤務に4時間以上勤務した場合に早出勤務等手当が支給されるのに対して,時給制契約社員は指定された勤務時間のうち,当該勤務に1時間以上勤務した場合に早朝・夜間割増賃金が支給されるのであり,この支給要件の関係では,時給制契約社員に有利となっている。(乙28)d 時給制契約社員については,採用の際に,早朝や夜間の時間帯に勤務することを前提とした上で雇用契約を締結している。(乙23,28,30,証人Z8,証人Z10)(イ) 以上のとおり,正社員に対しては勤務シフトに基づいて早朝,夜間の勤務を求め,時給制契約社員に対しては募集や採用の段階で勤務時間帯を特定して採用し,特定した時間の勤務を求めるという点で,両者の間には職務の内容等に違いがあることから,正社員に対しては,社員間の公平を図るため,早朝勤務等手当を支給するのに対し,時給制契約社員に対して支給しないという相違には,相応の合理性があるといえる。 また,時給制契約社員については,早朝・夜間割増賃金が支給されている上,時給を高く設定することによって,早出勤務等について賃金体系に別途反映されていること,類似の手当の支給に関して時給制契約社員に有利な支給要件も存在することからすれば,早出勤務等手当における正社員と時給制契約社員との間の相違は,不合理であると認めることはできない。 エ祝日給(ア) 後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 a 祝日給は,正社員が祝日において,割り振られた正規の勤務時 合理であると認めることはできない。 エ祝日給(ア) 後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 a 祝日給は,正社員が祝日において,割り振られた正規の勤務時間中に勤務することを命ぜられて勤務したときに,1時間当たりの給与に100分の135を乗じた金額が支給されるものである(甲2・238条1項,239条,237条1項2号)。 この正社員に対する祝日給は,昭和23年1月1日から適用された「政府職員の新給与実施に関する法律」(昭和23年法律第46号)により,常勤職員について祝日も勤務時間の割振りがある日とされたことに伴い,昭和24年1月1日から,祝日に勤務しない常勤職員との公平を図る観点から,祝日に勤務した常勤職員に対して支給されることとなった。そして,平成19年の郵政民営化の際,郵政民営化法173条に基づき,基本的に民営化前の労働条件及び処遇が踏襲されることとされ,上記祝日給も踏襲された。 現在,正社員については,祝日は勤務日とされているが,実際には祝日勤務を命じられる社員と命じられない社員が混在するため,祝日に勤務した正社員に対しては,それに対する給与が月額給与に含まれる形で支給されるが,当該祝日に実際には勤務していない正社員にも月額給与が減額されることなく支給されることとの公平を図る観点から,祝日給が支給されている。 また,国家公務員に対しては,祝日に正規の勤務時間が割り振られており,本来の給与が支給されるのに加えて,当該祝日に勤務しない職員にも本来の給与が減額されることなく支給されるため,他の職員との公平を図る観点から,1時間当たりの給与に100分の135を乗じた金額が「休日給」として支給されている(一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)17条,人事院規則9- ,他の職員との公平を図る観点から,1時間当たりの給与に100分の135を乗じた金額が「休日給」として支給されている(一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)17条,人事院規則9-4 3第3条)。 (甲2,乙28,証人Z8)b 時給制契約社員の場合は,実際に働いた時間数に応じて賃金が支払われ,祝日が常に勤務日として指定されるわけでないため,実際に祝日に勤務していない時給制契約社員に対して給与が支払われることはなく,正社員と同じ意味における時給制契約社員間の公平の確保は問題とならない。ただし,社会一般的には休日である祝日に勤務することに配慮する観点から,時給制契約社員が祝日に勤務した場合には,実際に勤務した時間について100分の35の割増賃金を支給している。(甲4,乙28,証人Z8)(イ) 以上のとおり,祝日に勤務することへの配慮の観点からの割増しについては,正社員と時給制契約社員との間に割増率(100分の35)の差異はないこと,正社員に対する祝日給については,正社員は祝日も勤務日とされており,昭和24年以降,祝日に勤務しない常勤職員(当時の国家公務員)にも勤務したものと同額の賃金が支払われていたことや,平成19年の郵政民営化の際,郵政民営化法第173条に基づき,民営化前の労働条件及び処遇に配慮する必要があったこと,国家公務員についても同様の支給形態が採用されていることなどに基づくものであり,正社員の賃金体系に由来する正社員間の公平のために設けられたものであること,これに対し,時給制契約社員については,元々実際に働いた時間数に応じて賃金を支払う形態が採られており,勤務していない祝日にその対価としての給与が支払われる理由がないことなどを踏まえると,正社員と時給制契約社員の祝日給に関する相違は,不合理 実際に働いた時間数に応じて賃金を支払う形態が採られており,勤務していない祝日にその対価としての給与が支払われる理由がないことなどを踏まえると,正社員と時給制契約社員の祝日給に関する相違は,不合理と認めることはできない。 オ夏期年末手当(ア) 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 a 一般職の職員の給与に関する法律の適用を受ける国家公務員については,同法の定めるところにより,期末手当及び勤勉手当が,毎年6月30日と12月10日の2回,それぞれ6月1日及び12月1日に現に在職する職員に対して支給されていたところ,郵政事業(法律の規定により,郵便局において行うものとされ,及び郵便局を活用して行うことができるものとされる事業をいう。郵政民営化法1条)に携わる正社員に対しても,概ね同様の要領によって,夏期手当及び年末手当を支給することとされた。具体的な支給額については,郵政事業に係る予算額を基礎として,労使交渉を踏まえて,毎年の支給額が決定されていた。 これを受けて,現在の計算式においても,基本給等及び在職期間に応じて決定される金額に,労使交渉による妥結率を乗じることとされており(甲2・273条2項1号,274条2項1号ア,甲11・126条2項1号,128条2項1号ア),年ごとの財政状況や会社の業績等を踏まえて行われる労使交渉の結果によって,その金額の相当部分が決定されている。 (甲2,乙28,証人Z8)b 郵政事業の非常勤職員に対しては,常勤職員のように夏期年末手当について制度化はされていなかったが,毎年,その都度の財政状況に応じて臨時的に夏期手当ないし年末手当を支給するものとされており,実際にも,ほぼ毎年支給されていた。具体的な支給額については,実際の勤務日数(1か月当たり20日以 ったが,毎年,その都度の財政状況に応じて臨時的に夏期手当ないし年末手当を支給するものとされており,実際にも,ほぼ毎年支給されていた。具体的な支給額については,実際の勤務日数(1か月当たり20日以上か否かの2区分),調整手当支給区分,内務・外務の区分,及び1日の勤務時間に応じて,定額制とされており,その都度労使間の交渉の結果に基づく額が支給されていた。 その後,平成16年4月に時給制契約社員の給与制度の改正が行わ れ,夏期年末手当についても,実績や能力をより反映させるために定額制から時給連動制に変更された。具体的には,主に事業への貢献度を重視するべく,労使交渉を踏まえて,対象期間における実際の勤務日数に応じて「1.0~1.3」の範囲内で加算率を乗じることとされ,その後,平成19年の民営化の際に,加算率の範囲が「1. 0~1.8」に変更された(甲4・111条3項,同4項)。 上記改正の前後で,時給制契約社員に対する夏期年末手当に係る支給額を均衡させるために,労使交渉を踏まえて,定数「0.3」を乗じることとされ,現在の臨時手当の計算式においても,計算基礎賃金に同様に定数「0.3」を乗じることとされている(甲4・111条3項,同4項)。 (甲4,乙28,証人Z8)(イ) 一般に,労使交渉において,労働組合側が基本給の増額を要求するのに対し,使用者側は,基本給を増額すると,退職金や年金が連動して増額となって財政負担が将来にわたることから,本件の夏期年末手当に相当する賞与等の一時金を増額して労働者の年収額自体は増加させるものの,基本給の増額は拒否し,最終的に一時金の増額で労使が合意することもままみられることは公知の事実である。このように,賞与は,労使交渉において,基本給に代わり,労働者の年収額を直接に変動させる要素として 本給の増額は拒否し,最終的に一時金の増額で労使が合意することもままみられることは公知の事実である。このように,賞与は,労使交渉において,基本給に代わり,労働者の年収額を直接に変動させる要素として機能している場合があることからすると,基本給と密接に関連する位置付けの賃金であるといえるところ,本件の夏期年末手当も,年ごとの財政状況や会社の業績等を踏まえて行われる労使交渉の結果によって,その金額の相当部分が決定される実情にあることは前判示のとおりであり,その意味で,基本給と密接に関連する賞与の性質を有する手当である。そうすると,被告の正社員である新一般職又は旧一般職と時給制契約社員との間には,職務の内容並びに職務の内容及び配置の変更の範囲に大きな又は一定の相違 があることから,基本給と密接に関連する夏期年末手当について相違があることは一定の合理性があること,賞与は,対象期間における労働の対価としての性格だけでなく,功労報償や将来の労働への意欲向上としての意味合いも有するところ,夏期年末手当も同様の意味合いを有することからすると,長期雇用を前提として,将来的に枢要な職務及び責任を担うことが期待される正社員に対する同手当の支給を手厚くすることにより,優秀な人材の獲得や定着を図ることは人事上の施策として一定の合理性があること,時給制契約社員に対しても労使交渉の結果に基づいた臨時手当が支給されていることなどの事情を総合考慮すれば,正社員の夏期年末手当と時給制契約社員の臨時手当に関する算定方法等の相違は,不合理と認めることはできない。 原告らは,時給制契約社員の臨時手当の計算において乗じられている定数0.3は,コストの均衡という財政的理由に基づくものであり,業務の内容や責任の程度とは無関係であり,不合理である旨主張する。 告らは,時給制契約社員の臨時手当の計算において乗じられている定数0.3は,コストの均衡という財政的理由に基づくものであり,業務の内容や責任の程度とは無関係であり,不合理である旨主張する。 しかしながら,前記事実(4)及び(5)に摘示したとおり,正社員の計算式においては在職期間に応じた割合(3か月未満であれば0.3)を乗じることとされている一方,時給制契約社員の計算式においては実際の勤務日数に応じた割合(最大1.8)を乗じることとされているなど,計算式自体を異にしており,正社員と比較して,一律に夏期年末手当の計算基礎賃金が3割に減じられていると評価することはできないこと,定数0.3という数値自体も,労使交渉の結果に基づいて設定されたものであること,正社員と時給制契約社員との間には職務の内容等に相違があることなどを総合考慮すると,臨時手当の計算において,定数0.3を乗じていることをもって,不合理な相違があると認めることはできないので,この点に関する原告らの主張は,採用することができない。 カ住居手当 (ア) 前提事実,後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 a 被告における住居手当は,昭和45年5月,民間企業の実情及び公務員の住居の状況を考慮して,一般職の職員の給与に関する法律により,借家,借間の居住者である公務員に対する住居手当が創設されたことに由来する。郵政省においても,同様に,昭和45年10月から常勤職員に対して住居手当が支給されることとなり,国家公務員に合わせて数次にわたる支給額等の改正を経て,現在の被告における正社員に対する住居手当の制度に引き継がれている。その支給額は,その都度労使協議を経て決定されてきた。(乙28)b 正社員に対しては,自ら居住するための住宅を借り受 改正を経て,現在の被告における正社員に対する住居手当の制度に引き継がれている。その支給額は,その都度労使協議を経て決定されてきた。(乙28)b 正社員に対しては,自ら居住するための住宅を借り受け,住宅を新築購入したり,単身赴任の際に家族用の住宅を借り受けたりした場合に住居手当が支給されるのに対し,時給制契約社員に対しては,住居手当は一切支給されない。(乙28)(イ) 証拠(乙28,証人Z8)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,正社員は配置転換等により勤務地が変更される可能性があること,正社員のうち社宅に入居できる者とできない者との公平を図る必要があること,住居費の負担を軽減することにより正社員の福利厚生を図り,長期的な勤務に対する動機付けの効果等を考慮して,住居手当の規定を設けたことが認められる。 そこで,被告の正社員と時給制契約社員について,配置転換等の実情についてみるに,前記認定のとおり,被告の正社員のうちの旧一般職は,転居を伴う可能性のある配置転換等が予定されていたこと,新一般職は,上位級の課長や郵便局長等への昇任昇格は予定されておらず,転居を伴う配置転換等は予定されないこと,時給制契約社員は転居を伴う配置転換等は予定されていないことが認められる。 このような配置転換等の実情を踏まえると,配置転換等が予定されていない時給制契約社員と比較して,住宅に係る費用負担が重いことを考慮して,旧一般職に対して住居手当を支給することは一定の合理性が認められ,また,長期雇用を前提とした配置転換等のある正社員である旧一般職に対して住宅費の援助をすることで有為な人材の獲得,定着を図ることも人事上の施策として相応の合理性が認められることなどの事情を併せ考慮すれば,旧一般職と時給制契約社員との間の住居手当の支給に関する相 対して住宅費の援助をすることで有為な人材の獲得,定着を図ることも人事上の施策として相応の合理性が認められることなどの事情を併せ考慮すれば,旧一般職と時給制契約社員との間の住居手当の支給に関する相違は,不合理と認めることはできない。 これに対し,新一般職に対しては,転居を伴う可能性のある人事異動等が予定されていないにもかかわらず,住居手当が支給されているところ,同じく転居を伴う配置転換等のない時給制契約社員に対して住居手当が全く支給されてないことは,先に述べた人事施策上の合理性等の事情を考慮に入れても,合理的な理由のある相違ということはできない。 もっとも,正社員に対する住居手当の給付は,住居費の負担を軽減することにより正社員の福利厚生を図り,長期的な勤務に対する動機付けを行う意味も有することからすると,正社員のように長期間の雇用が制度上予定されていない時給制契約社員に対する住居手当の額が,正社員と同額でなければ不合理であるとまではいえないというべきである。 (ウ) 以上によれば,新人事制度が導入された平成26年4月以降の住居手当に関する新一般職と時給制契約社員との間の相違は,同社員に対して同手当が全く支払われないという点で,不合理であると認められる。 キ夏期冬期休暇(ア) 前提事実,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 a 被告の正社員に付与されている夏期休暇は,昭和30年代後半以降,民間企業において夏期休暇を与える例が増加し,労使交渉を踏まえ, 昭和39年12月に夏期休暇を1日付与することとされたことに端を発する。その後,一般の国家公務員に平成2年から新たに3日の夏期休暇が付与されたことを考慮し,平成3年から郵政省においても付与日数が3日に増加された。(乙28)b 冬期休暇は,郵政 たことに端を発する。その後,一般の国家公務員に平成2年から新たに3日の夏期休暇が付与されたことを考慮し,平成3年から郵政省においても付与日数が3日に増加された。(乙28)b 冬期休暇は,郵政省において,元々特別休暇の一つとして12月29日から翌年1月3日までの期間(週休日,非番日及び祝日を除く。)の年末年始特別休暇が設けられていた。しかし,上記期間は郵便事業において最も繁忙な時期であり,特に12月29日から12月31日までの期間は年賀配達の準備等のために繁忙を極めることから,平成20年から平成21年にかけて,年末年始特別休暇期間を1月2日及び同月3日に見直し,新たな特別休暇として冬期休暇が新設された。 (乙28)(イ) 以上を踏まえて,時給制契約社員に対して夏期冬期休暇が付与されていない点について検討するに,夏期冬期休暇は,民間企業において,例外的に夏期休暇の制度がない企業等もあるものの,官公庁及び大多数の民間企業等において夏期冬期休暇が設けられており,これは,夏期は古くから祖先を祀るお盆の行事,年末から正月3が日にかけて夏期と同様に帰省するなどの国民的な習慣や意識などを背景に,官公庁や大多数の民間企業等で制度化されてきたものであり,夏期及び冬期に休日に加えて休暇を取得することは,職種や繁忙期等との関係で取得時期や日数に差異があることは別として,一般的に広く採用されていることは公知の事実である。 このように,夏期冬期休暇は,その時期や日数については,とりわけ職務の内容や繁忙期による影響を受けると考えられるものの,職務の内容等の違いにより,制度としての夏期冬期休暇の有無について差異を設けるべき特段の事情がない限り,時給制契約社員についてだけ,制度と して夏期冬期休暇を設けないことは,不合理な相違というべきである 違いにより,制度としての夏期冬期休暇の有無について差異を設けるべき特段の事情がない限り,時給制契約社員についてだけ,制度と して夏期冬期休暇を設けないことは,不合理な相違というべきである。 これを本件についてみるに,正社員と時給制契約社員とを比較すると,最繁忙期が年末年始の時期であることには差異がなく,他の前判示に係る職務の内容等の相違を考慮しても,取得要件や取得可能な日数等について違いを設けることは別として,時給制契約社員に対してのみ夏期冬期休暇を全く付与しない合理的な理由は見当たらない。 この点に関して被告は,長期雇用を前提とした正社員に対してのみ夏期冬期休暇を付与することで,会社に貢献する意識を高め,有為な人材の確保,定着を図ることが期待できる旨主張する。 しかしながら,前判示のとおり,夏期冬期休暇は,お盆と年末年始を中核とする前後の一定の期間は大多数の官公庁及び民間企業で休暇を取得するといういわば国民的意識や慣習が背景にある休暇であり,被告においては,正社員と時給制契約社員との間で夏期や年末年始の繁忙期に差異があるとも認められない中で,これを正社員に対して付与していながら,時給制契約社員に対して全く付与しないことは,被告の主張に係る諸点を考慮しても,合理的な理由があるということはできない。 したがって,夏期冬期休暇に関する正社員と時給制契約社員との間の相違は,不合理であると認められる。 ク病気休暇前提事実(4)及び(5)に摘示したとおり,正社員には,私傷病につき有給の病気休暇(結核性疾患以外は少なくとも90日)が付与されているのに対し,時給制契約社員には,無給の病気休暇10日のみが設けられているという相違がある。 証拠(乙28,証人Z8)及び弁論の全趣旨によれば,病気休暇は,労働者の健康保 90日)が付与されているのに対し,時給制契約社員には,無給の病気休暇10日のみが設けられているという相違がある。 証拠(乙28,証人Z8)及び弁論の全趣旨によれば,病気休暇は,労働者の健康保持のため,私傷病により勤務できなくなった場合に,療養に専念させるための制度であると認められるところ,前判示に係る正社員と 時給制契約社員との間の職務の内容等に照らし,長期雇用を前提とした正社員に対し,有為な人材の確保,定着を図るため,有給の病気休暇を付与することには一定の合理的な理由があると解され,そのような事情のない時給制契約社員に対して同休暇を付与する場合,有給休暇を取得するための要件として正社員と異なった必要勤続期間を設定することや,取得可能日数について正社員と差異があることについては,その差異等の程度により,不合理であると認めることができない場合もあり得る。 しかしながら,病気休暇が労働者の健康保持のための制度であることに照らせば,時給制契約社員に対しては,契約更新を重ねて全体としての勤務期間がどれだけ長期間になった場合であっても,有給の病気休暇が全く付与されないことは,前判示に係る職務の内容等の違い等に関する諸事情を考慮しても,合理的理由があるということはできない。 したがって,病気休暇に関する正社員と時給制契約社員との間の相違は,不合理なものであると認められる。 ケ夜間特別勤務手当(ア) 前提事実,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 a 昭和23年政令第323号「政府職員の特殊勤務手当に関する政令」に特殊勤務手当が規定され,夜間特別勤務手当は,その特殊勤務手当の一つとして,昭和40年4月9日付公共企業体等労働委員会調停案において,深夜における勤務にして特に労働密度の高い勤務等に対 する政令」に特殊勤務手当が規定され,夜間特別勤務手当は,その特殊勤務手当の一つとして,昭和40年4月9日付公共企業体等労働委員会調停案において,深夜における勤務にして特に労働密度の高い勤務等に対して,勤務の実態に即して特別に手当を支給し得るよう労使において協議することとされたことを踏まえて,労使協議を経て同年に新設されたものであり,支給額は,その都度労使協議を経て,改正,決定されている。(乙28)b 時給制契約社員のうち夜間帯に勤務する者は,それを前提とした雇用 契約を締結しており,実態としても,夜間帯以外に勤務することは原則としてない。(甲C2の1,乙23,28,30,証人Z8,原告Z3本人)(イ) 以上の事実に加え,深夜労働を含む時間外労働に対しては,夜間特別勤務手当とは別に,労働基準法37条所定の割増賃金(甲2・240条,甲11・84条)が支給されていることからすると,同手当は,正社員が勤務シフトによって夜間勤務等が必要となる場合に,夜間勤務等が必要のない他の業務に従事する正社員との間の公平を図るために支給されているものと解される。 そうすると,正社員については,シフト制勤務により早朝,夜間の勤務をさせているのに対し,時給制契約社員については,募集や採用の段階で勤務時間帯を特定した上で雇用契約を締結し,その特定された時間の勤務を求めているという意味で職務内容等に違いがあり,その違いに基づき,正社員についてのみ社員間の公平を図るために夜間特別勤務手当を支給することは,相応の合理性があるといえるから,夜間特別勤務手当における正社員と契約社員間の相違は,不合理なものと認めることはできない。 コ郵便外務・内務業務精通手当(ア) 前提事実,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 手当における正社員と契約社員間の相違は,不合理なものと認めることはできない。 コ郵便外務・内務業務精通手当(ア) 前提事実,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 a 郵便外務・内務業務精通手当は,平成16年4月の給与制度改革において,それまで常勤職員の基本給に加算されていた各種の郵便関係調整額を圧縮し,より能力と実績を反映した支給を行うことを通じて,常勤職員に対し,能力向上に対する動機付けを行うため,労使協議を経て,担当職務の精通度合いに基づいて支給する手当として新設されたものである。具体的な金額については,縮小廃止する郵便関係調整 額等の支給額の総合計額と,新設拡充する各手当の支給額の総合計額が均衡することを前提に各手当の金額が定められた。つまり,郵便外務・内務業務精通手当は,平成16年4月の給与制度改革に際し,正社員の基本給及び手当の一部を郵便外務・内務業務精通手当として組替えを図ったものである。(乙28)b 正社員の場合には,正社員の担当する職務の精通度合いに応じて,郵便外務・内務業務精通手当の各手当額に反映させて支給されている(甲2・264条及び265条)。 これに対し,時給制契約社員の場合には,「スキル評価」(時給制契約社員が担当する職務の広さとその習熟度について行う評価)(乙1・15条)の結果に応じて「資格給」を加算することにより,担当職務への精通度合いが時給に反映されている(甲4・103条4項2号)。このように,時給制契約社員については,担当職務の精通度合い,すなわち,担当する職務の広さ及びその習熟度を反映した給与は,基本賃金(時給)の構成要素の一つである加算給の一つである「資格給」として支給されている。これは,時給制契約社員は,元々勤務した時間に対して賃金が発生す る職務の広さ及びその習熟度を反映した給与は,基本賃金(時給)の構成要素の一つである加算給の一つである「資格給」として支給されている。これは,時給制契約社員は,元々勤務した時間に対して賃金が発生するという給与制度であることから,担当職務への精通度合いを反映する給与も,基本給(時給)の中で「資格給」として支払われることとされたものである。 (甲2,4,乙1,28,証人Z8)c 原告らについて,本件訴訟の請求対象期間(平成24年4月から平成26年3月まで)における各原告のスキルレベル(担当職務への精通度合い)及び勤務日数を前提に,当該請求対象期間内の各月ごとに,各原告に支払われる資格給の金額,仮に正社員の郵便外務・内務業務精通手当を支給した場合に支払われる金額をそれぞれ算出すると,別紙6「月額シミュレーション(郵便外務・内務業務精通手当と資格給)」 のとおりであり,郵便外務・内務業務精通手当よりも資格給の合計額の方が相当に高額となる(乙19)。 (イ) 前判示のとおり,正社員である新一般職又は旧一般職と時給制契約社員の間には,職務の内容並びに職務の内容及び配置の変更の範囲に大きな又は一定の相違がある上,正社員には長期雇用を前提とした賃金制度を設け,短期雇用を前提とする時給制契約社員にはこれと異なる賃金体系を設けることは,企業の人事上の施策として一定の合理性が認められるところ,郵便外務・内務業務精通手当は,正社員の基本給及び手当の一部を原資に郵便外務・内務業務精通手当として組み替える方法により,正社員に対して能力向上に対する動機付けを図ったものであり,同手当の支給の有無は,正社員と契約社員の賃金体系の違いに由来するものであること,郵便外務・内務業務精通手当は,労使協議も経た上で新設されたものであること,時給制契約社員につ けを図ったものであり,同手当の支給の有無は,正社員と契約社員の賃金体系の違いに由来するものであること,郵便外務・内務業務精通手当は,労使協議も経た上で新設されたものであること,時給制契約社員については,資格給の加算により担当職務への精通度合いを基本給(時給)に反映させていることなどの諸事実を総合考慮すれば,正社員と時給制契約社員の郵便外務・内務業務精通手当に関する相違は,不合理なものと認めることはできない。 原告らについて,本件訴訟の請求対象期間内の各月ごとに資格給額及び郵便外務・内務業務精通手当額を算出して比較すると,資格給の方が相当に高額となり,仮に同手当も支給することとすると同種の手当を二重に支給する結果となりかねないことも,不合理なものと認められないことを裏付けるものである。 (ウ) この点に関して原告らは,正社員については,基本給の中で職務の広さ及びその習熟度が評価されて基礎昇給や加算昇給が行われており,それに加えて郵便外務・内務業務精通手当が支給されているのに対して,時給制契約社員については,職務の広さ及びその習熟度は基本給の中の資格給に反映されるのみで,手当としては支給されていないことから, 時給制契約社員の業務の習熟度などを評価して資格給が支払われることは,同社員に対して郵便業務・内務精通手当を支給しない合理的な理由とはならない旨主張する。 しかしながら,正社員の基本給の基礎昇給は,規定の文言上「良好な成績で勤務したとき」との表現が用いられており,懲戒処分等の欠格基準(甲2・179条,別表第29)に該当する場合,年齢による基礎昇給の停止(甲2・180条)又は休職等による昇給停止(甲2・181条)に該当する場合を除き,毎年定期的に行われるものである。このように,基礎昇給は,1年間懲戒処分や休職等が る場合,年齢による基礎昇給の停止(甲2・180条)又は休職等による昇給停止(甲2・181条)に該当する場合を除き,毎年定期的に行われるものである。このように,基礎昇給は,1年間懲戒処分や休職等がなく勤務することを評価して昇給させるものであり,郵便外務・内務業務精通手当や時給制契約社員の資格給とは評価の対象が異なるものである。また,正社員の基本給の加算昇給は,「勤務成績が特に良好な社員」のうち一定の枠内で選考された者のみを対象として行われる(甲2・184条)。この「勤務成績」は,懲戒処分等の選考除外事由に該当する者は対象外として,正社員の人事評価の基準により,単純な通区数や作業能率,業務知識だけではなく,担当業務に関する知識の積極的な習得・活用や,業務遂行の正確性・迅速性・効率性,担当業務に関する状況把握・課題の発見,担当業務の品質向上に向けた工夫・改善等も評価基準としている(乙3・別紙2,乙4・3~4枚目の表)。そうすると,基礎昇給や加算昇給は,正社員としての職責の履行に対する評価であって,郵便外務・内務業務精通手当の評価対象である郵便外務・内務業務についての精通度とは異なるものであるから,原告が主張するように,職務の広さ及びその習熟度に対するものとして,正社員に対し,基本給における基礎昇給及び加算昇給に加えて同手当が支給されていると認めることはできない。そして,時給制契約社員の資格給で評価される内容は,担当職務である郵便外務事務及び内務事務についての精通度であって,郵便外務・内務精通 手当の評価対象と同一であるから,正社員について,基礎昇給及び加算昇給とともに郵便外務・内務業務精通手当を支給し,時給制契約社員について,これを資格給として支給し,郵便業務・内務精通手当を支給しないことをもって不合理なものであるというこ ついて,基礎昇給及び加算昇給とともに郵便外務・内務業務精通手当を支給し,時給制契約社員について,これを資格給として支給し,郵便業務・内務精通手当を支給しないことをもって不合理なものであるということはできない。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 3 争点2(労契法20条の効力)について(1) 労契法20条は,訓示的規定ではなく,同条に違反する労働条件の定めは無効というべきであり,その定めに反する取扱いには,民法709条の不法行為が成立し得ると解される。しかし,労契法20条の法的効果として,有期契約労働者の労働条件が無期契約労働者の労働条件によって自動的に代替されることとなるか否か,すなわち,同条が補充的効力を有するか否かについては,同条に関して同法12条や労働基準法13条のように補充的効力を定めた明文の規定がないこと,無効とされた労働条件の不合理性の解消は,使用者の人事制度全体との整合性を念頭に置きながら,有期契約労働者と無期契約労働者の想定される昇任昇格経路や配置転換等の範囲の違いなどを考慮しつつ,従前の労使交渉の経緯も踏まえた労使間の個別的あるいは集団的な交渉の結果も踏まえて決定されるべきであることに照らし,補充的効力は認められないというべきである。 原告らは,政府参考人の国会答弁やこれを前提とする行政通達の定めを根拠に,補充的効力を肯定するのが立法者意思である旨主張するけれども,前判示のとおり,肯定するのであれば明文の規定が置かれるべきであるのに,それがないことに照らし,この点に関する原告の主張は,採用することができない。 (2) 労契法20条に補充的効力がないとしても,関係する就業規則,給与規程等の合理的解釈の結果,有期労働契約者に対して,無期契約労働者の労働条件を定めた就業規則,給与規程等 ることができない。 (2) 労契法20条に補充的効力がないとしても,関係する就業規則,給与規程等の合理的解釈の結果,有期労働契約者に対して,無期契約労働者の労働条件を定めた就業規則,給与規程等の規定を適用し得る場合には,合理的解釈 を通じて正社員の労働条件を適用する余地がある。 これを本件についてみるに,被告においては,正社員に適用される就業規則及び給与規程等と契約社員に適用される就業規則及び給与規程等が別個独立に存在し,前者が被告の全従業員に適用されることを前提に,契約社員については後者がその特則として適用されるという形式とはなっていないから,就業規則,給与規程等の合理的解釈として,正社員の労働条件が有期契約社員に適用されると解することはできない。 (3) そうすると,原告ら主張の労働条件が労契法20条の「不合理なものと認められる」として無効とされた場合,そのような労働条件に基づく取扱いには,不法行為が成立し得るけれども,同条に補充的的効力がない以上,原告主張の労働条件の相違に関して,原告らに対して正社員に適用されている就業規則及び給与規程が適用されるということはできない。 (4) したがって,原告らの本訴請求のうち,正社員に適用されている就業規則及び給与規程の各規定が適用される労働契約上の地位にあることの確認を求める請求の趣旨第1項から第3項までの請求,並びに労契法20条の施行後の期間について,同条の補充的効力を前提として労働契約に基づき,正社員との間の手当等の差額を請求する請求の趣旨第4項(2),第5項(2)及び第6項(2)の請求(同各項(3)の主位的請求)は,いずれも理由がない。 (5) その一方で,原告らの主張する正社員と時給制契約社員との労働条件の相違のうち,年末年始勤務手当,住居手当,夏期冬期休暇及び 項(2)の請求(同各項(3)の主位的請求)は,いずれも理由がない。 (5) その一方で,原告らの主張する正社員と時給制契約社員との労働条件の相違のうち,年末年始勤務手当,住居手当,夏期冬期休暇及び病気休暇についての相違は,平成25年4月1日以降(ただし,住居手当は平成26年4月以降。)は,労契法20条に違反するものであり,同日以降の原告らに対する各手当の不支給は,原告らに対する不法行為を構成する。 4 争点3(公序良俗違反の有無)について(1) 労契法施行前である平成25年3月31日以前において,原告らの主張する労働条件の相違のうち,前記各手当等の不支給等は,平成25年4月1日 以降においては労契法20条に違反するところ,そのことから直ちに,同日より前の時点において公序良俗に違反することになるものではなく,また,それ以外の労働契約の相違を含め,原告らの主張に係る相違が公序良俗違反となることを基礎付ける事実を認めるに足りる証拠はない。 この点に関して原告らは,同一労働同一賃金の原則が労働法制上法規範性を有する旨主張する。しかし,労契法20条が同一賃金同一労働の原則を定めたものではないことは,前判示のとおりであり,その他の現行法令上,原告らの主張する上記原則を定めた規定と解されるものは見当たらず,原告らの上記主張は採用することができない。また,原告らの主張に係る裁判例は,本件に適切でなく,上記判断を左右するものではない。 したがって,労契法20条施行前の期間について,原告らと正社員等との間の手当等との差額について,公序良俗違反を前提として不法行為が成立することによる損害賠償請求権に基づき,同差額の支払を求める請求の趣旨第4項(1),第5項(1)及び第6項(1)の各請求は,いずれも理由がない。 (2) 労契法施行後 違反を前提として不法行為が成立することによる損害賠償請求権に基づき,同差額の支払を求める請求の趣旨第4項(1),第5項(1)及び第6項(1)の各請求は,いずれも理由がない。 (2) 労契法施行後である平成25年4月1日以降においては,2で説示したとおり,原告らの主張する労働条件の相違のうち,年末年始勤務手当,平成26年4月以降の住居手当,夏期冬期休暇,病気休暇以外のものについては,正社員との労働条件の相違が職務の内容等の相違に照らして不合理なものとは認められず,労契法20条に違反しないところ,それとは別に公序良俗違反を基礎付ける事実を認めるに足りる証拠はなく,他に不法行為の成立原因に該当する事実を認めるに足りる証拠はない。また,年末年始手当,住居手当,夏期冬期休暇及び病気休暇は,平成25年4月1日以降(ただし,住居手当は平成26年4月以降。)においては労契法20条に違反するが,そのことをもって直ちに公序良俗違反となるものではないし,他に公序良俗違反を基礎付ける事実を認めるに足りる証拠はない。 5 争点4(原告らの損害)について (1) 有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理と認められて労契法20条違反となる有期契約労働者の労働条件には,同条の定める職務の内容等に関する相違の内容や程度等及び当該労働条件の性質や相違する程度等の総合判断により,無期契約労働者と同一内容でないことをもって直ちに不合理であると認められる労働条件と,無期契約労働者と同一内容の労働条件ではないことをもって直ちに不合理であるとまでは認められないが,有期契約労働者に対して当該労働条件が全く付与されていないこと,又は付与はされているものの,給付の質及び量の差異の程度が大きいことによって不合理であると認められる労働条件があるものと解され ないが,有期契約労働者に対して当該労働条件が全く付与されていないこと,又は付与はされているものの,給付の質及び量の差異の程度が大きいことによって不合理であると認められる労働条件があるものと解される。 (2) 無期契約労働者と同一内容の労働条件でないことをもって直ちに不合理であると認められる労働条件の場合には,差異があること自体が不合理なのであるから,不法行為における損害の算定においては,無期契約労働者に対する手当等との差額全額を損害として認めるべきである。 (3) これに対して,有期契約労働者に当該労働条件が全く付与されていないこと,又は無期契約労働者との間の給付の質及び量の差異をもって不合理であると認められる労働条件の場合には,損害の算定に当たっても,前判示に係る労契法20条違反とされた有期契約労働者の労働条件の不合理性をどのような形で解消すべきかという観点から検討する必要がある。すなわち,有期契約労働者に対し,労契法20条に違反しない形で当該労働条件を付与するためには,使用者の人事制度全体との整合性を念頭に置きながら,有期契約労働者と無期契約労働者の想定される昇任昇格の経路や配置転換等の範囲の違い等を考慮しつつ,労使間の個別的あるいは集団的交渉の経緯等も踏まえて,職務の内容の相違等に照らして不合理とはならない限度の労働条件を付与すべきところ,これを損害の公平な分担の理念に基づき現実の損害を填補するという損害の算定の面からみると,有期契約労働者に対して支給されている不合理とされた手当等の額と,上記の過程を経て決定される手当等の額 との差額をもって損害と認めるべきこととなる。 しかしながら,上記の種々の要素を踏まえて決定される給付されるべき手当額を証拠に基づき具体的に認定することは,その決定過程に照らして極めて困難 との差額をもって損害と認めるべきこととなる。 しかしながら,上記の種々の要素を踏まえて決定される給付されるべき手当額を証拠に基づき具体的に認定することは,その決定過程に照らして極めて困難であるといわざるを得ない。 本件の年末年始勤務手当及び住居手当については,いずれも,正社員に対する手当額と差異があることをもって直ちに不合理と認められたものではなく,時給制契約社員に対して当該労働条件が全く付与されていないことをもって不合理であると認められることは前判示のとおりであるので,各手当に関して原告らに損害が生じたことは認められるものの,損害の性質上,その額を立証することが極めて困難であるから,民事訴訟法248条に従い,口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき,相当な損害額を認定すべきものである。 (4) 年末年始勤務手当の相違による損害ア年末年始勤務手当の額は,12月29日から31日までは1日4000円,1月1日から3日までは1日5000円であるところ,正社員に対する支給額は,正社員の業務内容,職務上の地位や基本給の額にかかわらず定額であること,年末年始勤務手当は,年末年始という特別の期間に労働に従事したことに対する対価であり,手当額が正社員一律の定額となっていることなどの事情は,時給制契約社員に対する手当額を正社員と同額とする方向に働く事情である一方で,正社員に対する同手当の給付には,長期雇用を前提とする正社員に対する動機付けという要素がないとはいえず,有期契約労働者は制度上は長期雇用が前提とされていないことなどの前判示に係る諸事情を考慮すると,正社員に対する支給額全額を損害と認めることはできず,本件に顕れた一切の事情を考慮し,旧一般職及び新一般職に対する支給額の8割相当額を損害と認めるのが相当である。 以下,原 る諸事情を考慮すると,正社員に対する支給額全額を損害と認めることはできず,本件に顕れた一切の事情を考慮し,旧一般職及び新一般職に対する支給額の8割相当額を損害と認めるのが相当である。 以下,原告らの勤務状況を年末年始手当の規定に当てはめて支給される 額の8割相当額を算出する。 イ原告Z1証拠(甲A17)及び弁論の全趣旨によれば,原告Z1の年末年始の出勤日及びそれに伴う年末年始手当の8割相当額は,次のとおりである。 (ア) 平成25年12月29日から同月31日まで,9600円(イ) 平成26年1月2日及び同月3日,8000円(ウ) 平成26年12月29日から同月31日まで,9600円(エ) 平成27年1月2日及び同月3日,8000円(オ) 平成27年12月29日から同月31日まで,9600円(カ) 平成28年1月2日及び同月3日,8000円合計金額 5万2800円ウ原告Z2証拠(甲B17)及び弁論の全趣旨によれば,原告Z2の年末年始の出勤日及びそれに伴う年末年始手当の8割相当額は,次のとおりである。 (ア) 平成25年12月29日から同月31日まで,9600円(イ) 平成26年1月2日,4000円(ウ) 平成26年12月29日及び同月30日,6400円(エ) 平成27年1月1日から同月3日まで,1万2000円(オ) 平成27年12月29日から同月31日まで,9600円(カ) 平成28年1月1日及び同月3日,8000円合計金額 4万9600円エ原告Z3証拠(甲C2,6)及び弁論の全趣旨によれば,原告Z3の年末年始の出勤日及びそれに伴う年末年始手当の8割相当額は,次のとおりである。 (ア) 平成25年12月29日から同月31日まで,9600円(イ) 平成26年 及び弁論の全趣旨によれば,原告Z3の年末年始の出勤日及びそれに伴う年末年始手当の8割相当額は,次のとおりである。 (ア) 平成25年12月29日から同月31日まで,9600円(イ) 平成26年1月3日,4000円 (ウ) 平成26年12月29日及び同月30日,6400円(エ) 平成27年1月2日及び同月3日,8000円(オ) 平成27年12月29日,3200円(カ) 平成28年1月1日から同月3日まで,1万2000円合計金額 4万3200円(5) 住居手当の相違による損害ア前判示のとおり,住居手当は,正社員の人事異動による転居の負担を考慮するとともに,正社員のうち社宅に入居できる者とできない者との公平を図る必要があること,住居費の負担を軽減することにより正社員の福利厚生を図り,長期間にわたって被告において勤務することに対する動機付けをすることなどを考慮して設けられたものである。このように,住居手当は,転居を伴う人事異動の負担を考慮した面と長期間勤務の動機付けに向けた福利厚生の部分とで構成されているとみることができる。そして,被告は,正社員のうち転居を伴う配置転換が予定されていない新一般職に対しても,その負担のある地域基幹職と同じ支給要件により同額の住居手当を支給しているところ,住居手当が正社員に対する長期的な勤務に対する動機付けに向けた福利厚生の面も含んでいることを考慮すると,時給制契約社員について転居の負担のないことが新一般職と共通であるからといって,正社員と同額の住居手当全額を損害と認めることはできず,本件に顕れた一切の事情を考慮すると,正社員の支給要件を適用して認められるべき住居手当の6割相当額を損害と認めるのが相当である。 イ前提事実,証拠(甲2・219,220条,甲11・61,62条 ,本件に顕れた一切の事情を考慮すると,正社員の支給要件を適用して認められるべき住居手当の6割相当額を損害と認めるのが相当である。 イ前提事実,証拠(甲2・219,220条,甲11・61,62条)及び弁論の全趣旨によれば,自ら居住するため住宅を借り受け,現に居住し,月額1万2000円を超える家賃を支払っている社員に対する住居手当の支給額は,家賃月額2万3000円以下の場合,家賃月額から1万2000円を控除した額であり,家賃月額2万3000円を超える場合には,家 賃月額から2万3000円を控除した額の2分の1に相当する額を1万1000円に加算した額(2万7000円が上限)であることが認められる。 (ア) 原告Z1の損害証拠(甲A9の2)及び弁論の全趣旨によれば,平成26年4月以降の原告Z1の家賃は月額5万5000円であるから,以下の計算式により,住居手当相当額は2万7000円となるので,損害額はその6割総相当額の1か月当たり1万6200円となる。ただし,原告Z1は,平成27年11月分の住居手当については,請求の対象としていない。したがって,総額は,別紙7原告Z1認容額の住居手当欄の合計額である45万3600円となる。 (55,000-23,000)÷2+11,000=27,00027,000×0.6=16,200(イ) 原告Z2の損害証拠(甲B5)及び弁論の全趣旨によれば,平成26年4月以降の原告Z2の家賃は月額4万円であるから,以下の計算式により,住居手当相当額は1万9500円となるので,損害額はその6割相当額の1か月当たり1万1700円となり,総額は,別紙8原告Z2認容額の住居手当欄の合計額である32万7600円となる。 (40,000-23,000)÷2+11,000=19,500 の6割相当額の1か月当たり1万1700円となり,総額は,別紙8原告Z2認容額の住居手当欄の合計額である32万7600円となる。 (40,000-23,000)÷2+11,000=19,50019,500×0.6=11,700(6) 夏期冬期休暇及び病気休暇の相違による損害前判示のとおり,夏期冬期休暇及び病気休暇の相違は労契法20条に違反するが,原告らは,それに伴う損害について主張せず,この相違に係る損害賠償請求をしていない。 (7) したがって,労契法20条の施行後の期間について,不法行為による損害賠償請求権に基づき,正社員との間の手当等の差額を請求する請求の趣旨第 4項(3),第5項(3)及び第6項(3)の請求(同各項(2)の予備的請求)は,前記の限度で理由がある。 6 原告らの請求についての判断以上によれば,原告らの請求のうち,正社員の就業規則及び給与規程の各規定が適用される労働契約上の地位にあることの確認を求める請求の趣旨第1項から第3項までの請求,労契法20条施行前の期間について,原告らと正社員等との間の手当等との差額について,公序良俗違反を前提として不法行為が成立することによる損害賠償請求権に基づき,同差額等の支払を求める請求の趣旨第4項(1),第5項(1)及び第6項(1)の各請求,同条の施行後の期間について,同条の補充的効力を前提として労働契約に基づき,正社員との間の手当等の差額を請求する請求の趣旨第4項(2),第5項(2)及び第6項(2)の請求(同各項(3)の主位的請求)は,いずれも全部理由がなく,労契法20条の施行後の期間について,不法行為による損害賠償請求権に基づき,正社員との間の手当等の差額を請求する請求の趣旨第4項(3),第5項(3)及び第6項(3)の請求(同各項(2)の予備的請求 労契法20条の施行後の期間について,不法行為による損害賠償請求権に基づき,正社員との間の手当等の差額を請求する請求の趣旨第4項(3),第5項(3)及び第6項(3)の請求(同各項(2)の予備的請求)のうち,原告Z1については,年末年始勤務手当分5万2800円及び住居手当分45万3600円の合計50万6400円,原告Z2については,年末年始勤務手当分4万9600円及び住居手当分32万7600円の合計37万7200円,原告Z3については,年末年始勤務手当分の4万3200円並びに各月の損害額に対する不法行為の日である同各別紙の支払日欄記載の日から民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余の請求は理由がない。 第4 結論よって,原告らの主位的請求は理由がないからこれを棄却し,予備的請求は主文第2項から第4項までの限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求及びその余の予備的請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第19部 裁判長裁判官春名茂 裁判官石川真紀子 裁判官堀田秀一 (別紙1~3,5~9省略) (別紙4) 労働条件に関する主張対比表 (別紙4) 労働条件に関する主張対比表
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