- 1 -平成26年10月29日判決言渡平成26年(行ケ)第10094号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成26年9月25日判決 原告モンスターエナジーカンパニー 訴訟代理人弁理士柳田征史佐久間剛中熊眞由美 被告特許庁長官指定代理人浦辺淑絵酒井福造堀内仁子山田和彦 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 原告の求めた裁判特許庁が不服2013-10282号事件について平成25年12月2日にした- 2 -審決を取り消す。 第2 事案の概要本件は,商標登録出願に対する拒絶査定不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点は,本願商標と引用商標との類否(商標法4条1項11号)である。 1 特許庁における手続の経緯原告は,平成24年5月31日,下記本願商標につき,平成23年12月1日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づきパリ条約4条による優先権を主張して,商標登録出願(商願2012-43563号)をしたが(甲13),平成25年2月28日付けで拒絶査定を受けたので(甲 アメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づきパリ条約4条による優先権を主張して,商標登録出願(商願2012-43563号)をしたが(甲13),平成25年2月28日付けで拒絶査定を受けたので(甲16),同年6月4日,これに対する不服の審判請求をした(不服2013-10282号,甲17)。 特許庁は,同年12月2日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月17日に原告に送達された。 記【本願商標】(甲13) 指定商品第30類缶・びん・ペットボトル・紙容器入りのコーヒー・アイスコーヒー・コーヒー飲料,缶・びん・ペットボトル・紙容器入りの香りづけしたコーヒー・アイスコーヒー・コーヒー飲料,香りづけしたコーヒー・アイスコーヒー・コーヒー飲料,コーヒー,アイスコーヒー,コーヒー飲料- 3 - 2 本件審決の理由の要点【引用商標】(甲12の1,2) ①登録番号商標登録第5114122号②登録出願日平成19年7月13日③設定登録日平成20年2月29日④指定商品第30類コーヒー,コーヒー豆⑤商標権者特定非営利活動法人ピースウィンズジャパン(以下「引用商標権者」という。)⑴ 本願商標についてア本願商標は,その構成中,上段に大きくやや図案化して表された「PEACE」の欧文字(以下「本願上段文字」ともいう。)及び下段に大きく表された「COFFEE」の欧文字(以下「本願下段文字」ともいう。)の両文字部分(以下「本願上下段文字部分」ともいう。)が,取引者,需要者に対し,商品の出所識別標識として強く支配的な び下段に大きく表された「COFFEE」の欧文字(以下「本願下段文字」ともいう。)の両文字部分(以下「本願上下段文字部分」ともいう。)が,取引者,需要者に対し,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められることから,本願上下段文字部分を分離,抽出して取引に資されるといい得る。 また,本願商標は,その構成中の本願上段文字部分を分離,抽出して取引に資されることも十分にあり得る。 イしたがって,本願商標は,その構成中,①本願上段文字及び本願下段文字の両文字(以下「本願上下段文字」ともいう。)に相応して,「ピースコーヒー」の称呼及び「平和のコーヒー」の観念が生ずるものであり,また,②本願上段文字に相応して,「ピース」の称呼及び「平和」の観念をも生ずるものといえる。 (2) 引用商標について- 4 -引用商標は,その構成文字全体に相応して,「ピースコーヒー」の称呼及び「平和のコーヒー」の観念が生ずるものであり,また,その構成中の「ピース」及び「PEACE」の文字に相応して,「ピース」の称呼及び「平和」の観念をも生ずるものである。 (3) 本願商標と引用商標との類否について本願商標と引用商標とは,全体の外観において差異を有するものの,「PEACE」及び「COFFEE」の両文字部分の比較においては,外観上,その文字のつづりを共通にし,「ピースコーヒー」の称呼及び「平和のコーヒー」の観念を共通にする。また,「PEACE」の文字部分の比較においても,外観上,その文字のつづりを共通にし,「ピース」の称呼及び「平和」の観念を共通にする。 そこで,両商標について,これらの外観,称呼,観念によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察してみれば,両商標は,相紛れるおそれのある類似の 和」の観念を共通にする。 そこで,両商標について,これらの外観,称呼,観念によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察してみれば,両商標は,相紛れるおそれのある類似の商標というのが相当である。 そして,本願の指定商品(以下「本願指定商品」という。)は,引用商標の指定商品と同一又は類似するものである。 したがって,本願商標は,商標法4条1項11号に該当する。 第3 原告主張の審決取消事由 1 本願商標について⑴ 以下のとおり,本件審決が,本願上下段文字部分又は本願上段文字部分につき,分離,抽出して取引に資されることもある旨判断したのは,誤りである。 ア外観について(ア) 本件審決は,外観上,本願上下段文字部分が看者に強い印象を与える部分である旨認定する。 (イ) しかしながら,①「PEACEICEDCOFFEE」の文字部分(以下「本願文字部分」ともいう。)の外形と灰色地の図形部分(以下「図形部分」- 5 -という。)の外形とは密接しており,全体が一体化した薄い厚みの立体形状として看取されること,②本願文字部分及び図形部分には,黒,白及び灰色の色彩で地色と影になる部分とを塗り分けて立体的に表現するいわゆるシャドウ体の技法が用いられており,構成全体にモノトーンの濃淡による統一感,一体感が認められること,③本願商標の構成全体の面積の多くを占める本願上下段文字部分の地色及び灰色地の図形部分の影になる部分に同色の黒を用いており,図形部分は単なる「背景」ではなく,文字全体を融合した図形として見られることなどから,本願商標は,一部の文字部分や図形部分を抽出して把握することが困難な程度まで,後記ピースマークを含む本願文字部分,図形部分及び黒,白,灰色の色彩を ,文字全体を融合した図形として見られることなどから,本願商標は,一部の文字部分や図形部分を抽出して把握することが困難な程度まで,後記ピースマークを含む本願文字部分,図形部分及び黒,白,灰色の色彩を融合させた一体的なロゴマークとして看取されるものといえる。 特に,ロゴマークは,瞬時に看者の視覚をひきつけ,一瞬にして全体を理解させるものであり,この点も併せ考えれば,本願商標は,構成全体が一体不可分の商品出所識別標識として認識,理解されるものであり,本願上下段文字部分が,強く支配的な印象を与えるものということはできない。 イ各構成部分の出所識別力について(ア) 本願上段文字部分について本件審決は,本願上下段文字部分が,取引者,需要者に対し,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える旨認定しているが,「PEACE」の文字は,「平和」を意味する外来語「ピース」として一般に親しまれているものであって,商品の出所識別標識として格別に強い印象を与えるものではない。 (イ) 「ICED」の文字部分についてa 本件審決は,本願商標の構成中,白抜きの「ICED」の文字(以下「白抜き文字」ともいう。)部分につき,外観上,さほど強く印象付けられるとはいい難く,かつ,「ICED」の文字は,「氷で冷やした」という意味を有する英語であり,本願指定商品の品質を表示するものであるから,商品の出所識別標識としての機能を有しない旨認定する。 - 6 -しかしながら,白抜き文字部分は,地色が白く,灰色地の図形部分の中央に配置されており,看者の視覚を瞬時にとらえる顕著な存在といえる。また,我が国において,「凍らせた/氷で冷やした/冷蔵したコーヒー」は,「アイスコーヒー(icecoffee)」と呼ばれて一般に親しまれ されており,看者の視覚を瞬時にとらえる顕著な存在といえる。また,我が国において,「凍らせた/氷で冷やした/冷蔵したコーヒー」は,「アイスコーヒー(icecoffee)」と呼ばれて一般に親しまれているが,これを「アイスト・コーヒー(icedcoffee)」と呼ぶことはないから,上記文字部分は,必ずしも本願指定商品の品質表示として直感されるものとはいえない。 以上によれば,白抜き文字部分は,商品出所識別標識として,取引者,需要者に印象付ける役割を十分に果たしている。 b 仮に,白抜き文字部分が本願指定商品の品質表示として認識される場合があるとしても,本願指定商品が含まれる飲料及び食品の分野においては,当該商品の普通名称や品質表示等に該当し,一般には出所識別力が弱いと考えられる文字部分についても,同文字部分を含めた構成文字全体が商標(製品名)として機能し,認識されている例が多く見受けられ,殊更に一部の文字部分を捨象したものが商品出所識別標識として認識される場面は,想定し難い。この理は,本願商標についても当てはまるといえる。 ⑵ 本願商標が「ピースコーヒー」又は「ピース」の称呼を生じるという本件審決の認定は,誤りである。 すなわち,前記のとおり,本願商標は,構成全体が一体不可分の出所識別標識として認識されるものであるから,本願文字部分全体,すなわち,「PEACEICEDCOFFEE」から,「ピースアイストコーヒー」の称呼が生じる。 ⑶ 本願商標が「平和のコーヒー」又は「平和」の観念を生じるという本件審決の認定は,誤りである。 「PEACEICEDCOFFEE」は,既成語ではないが,英語で「PEACE」が「平和」を,「ICED」が「凍らせた,氷で冷やした,冷蔵した」等を,「COFFEE」が「コーヒー」を りである。 「PEACEICEDCOFFEE」は,既成語ではないが,英語で「PEACE」が「平和」を,「ICED」が「凍らせた,氷で冷やした,冷蔵した」等を,「COFFEE」が「コーヒー」を,それぞれ意味する語に通じるものであることから,本願商標については,上記各語の意味に基づき,「平和の凍らせたコーヒー」- 7 -又は「平和の氷で冷やしたコーヒー」といった観念が想起される。また,後記ピースマークから,「ピースマークによって表現される平和」の観念も生じ得る。 2 本願商標と引用商標との類否について以下のとおり,本件審決が,本願商標と引用商標とは,類似の商標である旨判断したことは,誤りである。 ⑴ 外観についてア本願商標の外観は,以下のとおり,顕著な特徴を有するものである。 (ア) 「PEACE」の冒頭の「P」の文字のうち,字形の丸い部分は,同色の太線で描いた鳥の足形のような線状の模様の図形を有している。この図形は,「ピースマーク」又は「ピースシンボル」と呼ばれるシンボルマークに対応する図柄(以下「ピースマーク」という。)である。 ピースマークは,多くの辞書等に「平和・反戦を表す印」などとして紹介されるなど,平和運動や反戦運動の象徴,シンボルとして一般に浸透しており,広く認識されている。このことから,上記のとおり「PEACE」の文字に取り込まれたピースマークの存在は,本願商標の外観に独自性,特異性を与え,看者の視線を最も強くひきつけて印象付ける重要な構成要素といえる。 (イ) しかも,上記ピースマークは,独特の書体のデザイン文字及びフォントサイズの調整によって,視覚的に強調されている。 すなわち,「PEACEICEDCOFFEE」の文字部分には,手書きでデザインされた独特の ピースマークは,独特の書体のデザイン文字及びフォントサイズの調整によって,視覚的に強調されている。 すなわち,「PEACEICEDCOFFEE」の文字部分には,手書きでデザインされた独特の書体が用いられており,ピースマークを組み込んだ冒頭の「P」の文字は,円形の丸みが印象的であるのに対し,その余の文字はすべて,直線的で角張った形状を特徴としている。また,上記「P」の文字は,他の文字に比べて圧倒的に大きく,本願商標の構成全体の面積の約4分の1を占めているのに対し,同文字に続く「E」及び「A」の文字は,縦方向に3分の1程度圧縮され,上記「P」の文字のうち円形部分の弧の下にまとまって収まっている。また,「COFFEE」- 8 -の冒頭の「C」の文字は,上記「P」の文字の大きさとバランスをとるために,やや大きめのフォントで表されている。 「PEACE」の文字は,誰もが一見して容易に「PEACE」と認識できるとは必ずしもいえないほど高度にデフォルメされたレタリング方法で表現されており,看者の中には,ピースマークを組み込んだ冒頭の「P」を文字と解することができず,その下から始まる「EACE」の文字を見て,同文字を容易に発音できない意味不明なものとして受け止め,本願商標の全体的なデザインの外観のみを漠然ととらえて商標として認識する者も少なくないといえる。その場合,本願商標からは,称呼も観念も生じないので,外観のみが看者の記憶にとどめられることになる。 (ウ) 色彩は,取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等に大きな影響を及ぼすものであるから,前述したとおり本願商標を塗り分けている黒,白及び灰色の色彩が及ぼす影響は,看過できない大きなものといえる。 イ他方,引用商標は,通常の活字体の片仮名文字で「ピースコーヒー」と横書 るから,前述したとおり本願商標を塗り分けている黒,白及び灰色の色彩が及ぼす影響は,看過できない大きなものといえる。 イ他方,引用商標は,通常の活字体の片仮名文字で「ピースコーヒー」と横書きしたものを上段に,通常の活字体の英文字で「PEACECOFFEE」と横書きしたものを下段に,それぞれの語頭及び語尾をそろえて平行に配置したものである。 ウ前述したとおり,本願商標の外観が顕著な特徴を有するのに対し,引用商標は通常の書体の片仮名文字及び英文字のみで構成されており,両商標の外観については,取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等において大きな差異があることは明らかといえる。 そして,①人間が五感から得る情報の8割以上が視覚によるものといわれていること,②本願指定商品の分野においては,商標をパッケージ正面に大きく目立つように表示することが一般的に行われており,取引者,需要者は,商標の外観に着目して商品を選択しているものと容易に推認できることから,外観は,商品出所識別標識として重要な役割を担っているといえる。この点に鑑みれば,両商標の外観について上記のとおり大きな差異があることは,類否判断において重視すべきである。 - 9 -⑵ 称呼についてア本願商標は,前記のとおり,「ピースアイストコーヒー」の称呼を生じる。 他方,引用商標は,「ピースコーヒー」及び「PEACECOFFEE」の文字全体を一連一体に発音した「ピースコーヒー」の称呼を生じる。 イ 「ピースアイストコーヒー」と「ピースコーヒー」とは,語頭の「ピース」の音及び語尾の「コーヒー」の音においては共通するが,長音「ー」を含む全体の構成音数は,前者が11音であるのに対し,後者は7音であり,著しく異なる。 また,前者は,「ピース」の音と「 語頭の「ピース」の音及び語尾の「コーヒー」の音においては共通するが,長音「ー」を含む全体の構成音数は,前者が11音であるのに対し,後者は7音であり,著しく異なる。 また,前者は,「ピース」の音と「コーヒー」の音との間に「アイスト」の4音を含む点において,後者とは,語調,語感が明らかに異なり,聞き誤るおそれはない。 したがって,本願商標と引用商標とは,称呼において非類似というべきである。 ⑶ 観念についてア本願商標は,前記のとおり,「平和の凍らせたコーヒー」,「平和の氷で冷やしたコーヒー」,「ピースマークによって表現される平和」の観念を生じる。 他方,引用商標は,構成文字「ピースコーヒー」,「PEACECOFFEE」に基づいた観念を生じるところ,当該構成文字は既成語ではないが,前述した「PEACE」及び「COFFEE」の各英語の意味に基づき,「平和のコーヒー」という観念が想起される。 イ(ア) 本願商標から生じる観念のうち「平和の凍らせたコーヒー」,「平和の氷で冷やしたコーヒー」と,引用商標から生じる「平和のコーヒー」という観念とを比較すると,「平和」及び「コーヒー」は共通するが,本願商標の観念は,「凍らせた」,「氷で冷やした」という観念を含む点において,引用商標から生じる観念とは異なり,両者が相紛れるおそれはない。 (イ) 本願商標は,「ピースマークによって表現される平和」という観念も生じるところ,ピースマークから想起される平和の観念は,ピースマークの他に「平和」の象徴,シンボルとして一般に広く認識されている「鳩」や「オリーブの枝」- 10 -から想起される平和の観念とは, 取引者や需要者に与える印象,記憶,連想等において異なる。 そして,本願商標は,「平和」を意味する「PEACE」の文字に る「鳩」や「オリーブの枝」- 10 -から想起される平和の観念とは, 取引者や需要者に与える印象,記憶,連想等において異なる。 そして,本願商標は,「平和」を意味する「PEACE」の文字に,「平和」の象徴であるピースマークを組み込み,「平和」のコンセプトを2つ掛け合わせて重ねて表現したものであり,その掛詞的な趣向の面白さは,取引者,需要者に対し,独創的でユニークな印象,記憶,連想等を与えるものである。 このことから,仮に,引用商標の「PEACE」の文字部分から「平和」の観念が想起されることがあるとしても,本願商標の構成中の「PEACE」の文字に組み込んだピースマークによって表現される平和の観念とは異質のものであり,両者が誤認混同されるおそれはない。 ウ以上によれば,本願商標と引用商標とは,観念においても,非類似のものといえる。 ⑷ 取引の実情について以下の点に鑑みれば,本願商標と引用商標が各指定商品に使用されても,その出所について誤認混同を生じるおそれはない。 ア引用商標の使用態様引用商標は,鳩の図柄を伴ったロゴマークの形でコーヒー製品のパッケージに表示されており,引用商標の文字,鳩の図柄,背景の地色などにつき,緑,茶等のアースカラーを用い,互いのコントラストが強い配色が施されている。 このように鳩の図柄を伴って使用されている引用商標は,その配色等の使用態様に加え,前述のとおり,本願商標におけるピースマークから想起される平和の観念が「鳩」から想起される平和の観念とは異なるものであることから,本願商標とは一見して明らかに異なる印象,記憶,連想等を与えるものといえる。 イ取引上の競合の不存在引用商標権者は,自然災害等の人為的要因によって生命や生活の危機にさらされた人々の支援を事 標とは一見して明らかに異なる印象,記憶,連想等を与えるものといえる。 イ取引上の競合の不存在引用商標権者は,自然災害等の人為的要因によって生命や生活の危機にさらされた人々の支援を事業内容とする特定非営利活動法人であるところ,そのウェブサイ- 11 -トには,フェアトレード商品であるコーヒー及びコーヒー豆を取り扱っている旨が掲載されており,そのコーヒーの主な販売場所は,同法人の通販,同法人の経営する店舗又は関連店舗である。 他方,本願商標を使用したコーヒー飲料はいまだ販売されていないが,原告が製造,販売したエナジードリンクは,アサヒ飲料の通販,コンビニ等で広く販売されている。また,原告は,米国において,若年層を対象にした低カロリー飲料「PEACETEA」を販売しており,本願商標使用に係るコーヒーについても,同様の商品イメージのマーケティング戦略による市場展開を実施する可能性がある。 以上によれば,原告が取り扱うコーヒーと引用商標権者が取り扱うコーヒーとの間には,商品コンセプトの相違が存在し,流通経路,販売場所,主たる需要者の範囲も異なることが予想される。 第4 被告の反論 1 本願商標について⑴ 以下のとおり,本件審決が,本願上下段文字部分又は本願上段文字部分につき,分離,抽出して取引に資されることもある旨判断したことに誤りはない。 ア外観について(ア) 本願商標中,本願上段文字は,大きくやや図案化して表された,「平和」の意味を有する一般に親しまれた英語「PEACE」の黒色の欧文字であり,本願下段文字は,本願上段文字とほぼ同様の大きさ及び態様をもって表された,「コーヒー」の意味を有する一般に親しまれた英語「COFFEE」の黒色の欧文字である。 本願上段文字部分と本願下段文 り,本願下段文字は,本願上段文字とほぼ同様の大きさ及び態様をもって表された,「コーヒー」の意味を有する一般に親しまれた英語「COFFEE」の黒色の欧文字である。 本願上段文字部分と本願下段文字部分との間には,小さく白抜きで表された,「氷で冷やした」の意味を有する英語「ICED」の白抜き文字が配置され,これらの構成文字全体の外形に沿うように影付きの薄灰色の図形部分が表されている。 (イ) そして,図形部分は,構成文字全体を単に囲むようにデザインされて- 12 -いると認識されるにすぎない。 本願上下段文字部分は,高さにして白抜き文字の6倍程度の黒色のゴシック体風の文字が白色の影付きで表されており,本願商標の大半を占めている。この大きさ及び態様に鑑みれば,本願上下段文字部分は,本願商標の構成中,視覚上顕著に表された部分として強く印象付けられるものである。 イ各構成部分の出所識別力について(ア) 白抜き文字部分について本願指定商品を取り扱う業界において,「ICED」は,その商品が冷やしたものであることを表す用語として広く使用されていることから,白抜き文字部分は,商品の品質を表すものとして直ちに理解される部分といえ,商品の出所識別標識としての機能を有するものではない。 (イ) 本願上段文字部分について商品の出所識別標識としての機能は,その指定商品との関係において検討すべきである。 そして,「PEACE」の文字は,一般に親しまれた平易な用語であったとしても,本願指定商品との関係においては,品質表示等の関連性を見出せないものであるから,独創性を備えた用語とはいえないものの,自他商品の識別力が弱いということはできない。 ウ称呼について本願商標を称呼する場合,本願上段文字は「 質表示等の関連性を見出せないものであるから,独創性を備えた用語とはいえないものの,自他商品の識別力が弱いということはできない。 ウ称呼について本願商標を称呼する場合,本願上段文字は「ピース」,白抜き文字は「アイスト」,本願下段文字は「コーヒー」と,それぞれ自然に読まれるものであるところ,後記のとおり構成文字全体から生じる「ピースアイストコーヒー」の称呼は,長音も含めて11音であり,やや冗長なものといえる。 エ小括以上によれば,本願商標は,本願上下段文字部分と白抜き文字部分とを分離して観察することが,取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているもの- 13 -ということはできない。 そして,本願商標の構成中,本願上段文字と本願下段文字は,同様の態様で視覚上顕著に表されており,看者の注意をひき,強く支配的な印象を与える部分であるといえるから,取引者,需要者が,上記文字部分に着目して取引に資する場合も決して少なくないものと判断すべきである。 オ原告の主張に対し(ア) マーケティング上の必要性から工夫されたロゴマークやその色彩等が需要者に対して一定の印象を与えることはあるとしても,需要者は,その印象によって自他商品を識別するものではないから,商品の出所に係る誤認混同のおそれの有無の判断に当たり,マーケティングにおけるロゴマークの外観の重要性が,直ちに結論に結びつくということはできない。 また,簡易迅速を尊ぶ商取引の場においては,一定のデザインが施されたマークであり,外観上まとまりよく表されているものであっても,常に一体不可分のものとして理解されるとは限らず,顕著な特徴を有する部分をもって記憶される場合も少なくないというべきである。 (イ)a 白抜き文字部分は,冷やした商品であるこ ものであっても,常に一体不可分のものとして理解されるとは限らず,顕著な特徴を有する部分をもって記憶される場合も少なくないというべきである。 (イ)a 白抜き文字部分は,冷やした商品であることを認識させるものであり,本願指定商品の品質を強調するものにすぎない。 b 商標権者が,自身の広告においては当該商標の構成文字を略することなく使用していても,簡易迅速を尊ぶ取引の実際の場面においては,一部の構成文字を略して当該商標を使用することもあり得る。 ⑵ア(ア) 本願商標は,その構成全体に相応して,「ピースアイストコーヒー」の称呼及び「平和の冷やしたコーヒー」の観念を生じるものである。 また,前記のとおり,取引者,需要者が本願上下段文字部分に着目して取引に資する場合も決して少なくないといえるから,本願上下段文字に相応して,「ピースコーヒー」の称呼及び「平和のコーヒー」の観念を生ずる。 (イ) さらに,本願下段文字は,本願指定商品の分野においては商品の普通- 14 -名称を表したものとして理解され,上記文字のみから商品の出所識別標識としての観念,称呼を生じるものではない。 このことから,本願商標は,本願上段文字に相応して,「ピース」の称呼及び「平和」の観念をも生ずるというべきである。 イ原告の主張に対し「ICEDCOFFEE」の文字は,平易な英語である上,一般の消費者向けにも販売されている本願指定商品において「アイスコーヒー」を表すものとして広く使用されていることから,取引者,需要者は,本願商標の構成中,「ICED」の文字を,商品の品質を表示するものとして容易に認識するといえる。 本願商標の構成全体から生じる称呼がやや冗長であることも併せ考えると,本願商標は,その構成中,外観上において強く支配的な印象を D」の文字を,商品の品質を表示するものとして容易に認識するといえる。 本願商標の構成全体から生じる称呼がやや冗長であることも併せ考えると,本願商標は,その構成中,外観上において強く支配的な印象を与える部分である「PEACE」及び「COFFEE」の文字から,商品の出所識別標識としての観念及び称呼を生じるというべきである。 2 本願商標と引用商標との類否について以下のとおり,本願商標は,引用商標と類似の商標といえ,本件審決が同旨の判断をしたことに誤りはない。 ⑴ 外観についてア本願商標と引用商標とは,構成全体の外観は異なるものである。 しかしながら,本願上下段文字及び引用商標の下段の文字は,いずれも「PEACE」及び「COFFEE」という同一の単語から構成されており,この事実は容易に認識され得るものであるから,両商標は,外観において近似した印象を与えるものといえる。 イ原告の主張に対し(ア) 本願上段文字部分中,「P」の文字の2筆目に当たる部分は,円形で表されており,その内部も同じ太さの描線により表されている。この外観によれば,- 15 -ピースマークの図形は,上記文字の一部として構成されているといえ,同文字全体の外形から,欧文字「P」が容易に認識される。 そして,「P」の文字と一体的に表されて同文字に続くものと看取される「EACE」の文字と併せみれば,本願上段文字部分は,やや図案化されているものの,本願商標の取引者,需要者においても広く親しまれた「PEACE」の平易な英単語を表したものと容易に認識できる。 (イ) 本願指定商品及び引用商標の指定商品を含む飲料及び食品を取り扱う業界において,商品に付された文字の一部を図案化すること,影付きの文字を用いること,文字と共に背景図形を用いること る。 (イ) 本願指定商品及び引用商標の指定商品を含む飲料及び食品を取り扱う業界において,商品に付された文字の一部を図案化すること,影付きの文字を用いること,文字と共に背景図形を用いることなどは,広く一般に行われている。 本願商標の図形部分は,やや立体的に表されているとしても,構成中の文字の輪郭に沿って描かれているものであり,その他,色彩等を含めても,本願商標の図案化は,上記業界において一般的に行われる程度のものにすぎないといえる。 ⑵ 称呼及び観念についてア(ア) 引用商標の構成中,「ピース」の片仮名文字及び「PEACE」の欧文字は,いずれも「平和」の意味を有する一般に親しまれた語であるから,引用商標は,その構成文字全体に相応して,「ピースコーヒー」の称呼及び「平和のコーヒー」の観念を生ずるものである。 (イ) また,引用商標の構成中,「コーヒー」の片仮名文字及び「COFFEE」の欧文字は,その指定商品との関係において商品の普通名称を表したものとして理解され,当該文字のみからは,商品の出所識別標識としての観念,称呼を生じない。 したがって,引用商標は,その構成中の「ピース」及び「PEACE」の文字に相応して,「ピース」の称呼及び「平和」の観念をも生ずるものである。 なお,引用商標が,原告主張のとおり,鳩の図柄を伴ったロゴマークの形で実際に使用されているとしても,この点は,本願商標と引用商標との類否の判断に影響するものではない。 - 16 -(ウ) 他方,前述のとおり,本願商標は,①本願上下段文字に相応して,「ピースコーヒー」の称呼及び「平和のコーヒー」の観念を生じ,また,②本願上段文字に相応して,「ピース」の称呼及び「平和」の観念をも生ずるといえることから,引用商標と比較すると,両者は,「ピース ,「ピースコーヒー」の称呼及び「平和のコーヒー」の観念を生じ,また,②本願上段文字に相応して,「ピース」の称呼及び「平和」の観念をも生ずるといえることから,引用商標と比較すると,両者は,「ピースコーヒー」の称呼及び「平和のコーヒー」の観念並びに「ピース」の称呼及び「平和」の観念を同一にするものである。 イ本願商標の構成全体から生じる「ピースアイストコーヒー」の称呼及び「平和の冷やしたコーヒー」(又は「平和の凍らせたコーヒー」)の観念と,引用商標から生じる「ピースコーヒー」の称呼及び「平和のコーヒー」の観念とを,それぞれ比較しても,前述したとおり,「ICEDCOFFEE」の文字は,「アイスコーヒー」を表すものとして一般に使用されていることから,両商標の相違は,当該商品を「アイスコーヒー」と認識させるか否かの違いにすぎない。 さらに,商品に使用される文字商標は,時代の変遷に伴い,付記的な記載やデザインに変更が施されることも少なくないといえることから,本願商標及び引用商標は,いずれも「PEACE」に係るコーヒーとして理解され得るものであり,商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるというべきである。 ⑶ 取引の実情について本願指定商品及び引用商標の指定商品は,一般の食品であり,その取引者,需要者には,これらの商品を取り扱う業者の他,広く一般の消費者が含まれ,その商品に対する注意力は,決して高いものとはいえない。加えて,これらの商品は,日常的に消費されるものであり,通常,安価に購入できる。 このことから,需要者は,必ずしも商標の構成を細部にわたり正確に記憶して取引するとは限らず,商標全体の主たる印象によって商品の出所を識別する場合も少なくないといえる。 上記の点に鑑みると,簡易迅速性を重んじる取引において,本願商標に接す 成を細部にわたり正確に記憶して取引するとは限らず,商標全体の主たる印象によって商品の出所を識別する場合も少なくないといえる。 上記の点に鑑みると,簡易迅速性を重んじる取引において,本願商標に接する取引者,需要者は,前記のとおり,本願商標の構成中,視覚上顕著に表された部分として強く印象付けられる本願上下段文字部分を記憶するとみるのが自然であり,上- 17 -記部分から生ずる称呼及び観念をもって取引に当たる場合も少なくないものというべきである。 第5 当裁判所の判断 1 本願商標について⑴ 外観について(甲19)ア本願商標は,前記第2の1のとおりの外観であって,①本願上段文字,すなわち,「PEACE」の文字,②本願下段文字,すなわち,「COFFEE」の文字,③白抜き文字,すなわち,「ICED」の文字及び④図形部分を組み合わせた結合商標である。本願商標は,全体的に若干左に傾いている。 (ア) その構成中,本願上段文字は,黒い太字で表されたアルファベットの大文字「P」,「E」,「A」,「C」及び「E」の5文字から成り,これらが横一列に近接して並んでおり,各文字の下端は,ほぼそろっている。本願上段文字部分は,本願商標全体の半分近くの面積を占めている。 冒頭の「P」の文字は最も大きく,上部の円形に近い形をした部分(以下「Pの円形部分」という。)の中には,文字と同じ太さ及び色の黒線で「⋔」という図が描かれている。上記文字に続く「E」及び「A」の文字は,いずれも「Pの円形部分」の下方に配置されており,各文字の高さは,本願上段文字の下端と「Pの円形部分」の下端との間に,幅は,2文字合わせて「P」の文字の縦線部分と「Pの円形部分」の右端との間に,それぞれちょうど収まる程度である。さらに,上記「E」及び「A」の ,本願上段文字の下端と「Pの円形部分」の下端との間に,幅は,2文字合わせて「P」の文字の縦線部分と「Pの円形部分」の右端との間に,それぞれちょうど収まる程度である。さらに,上記「E」及び「A」の文字の上部は,「Pの円形部分」の下方の弧に沿うように,わずかに凹んでいる。 一見すると,大きな「P」の文字の傘下に,「E」及び「A」の文字が収まっているような印象を受ける。 これらの文字の右方に,「P」よりは小さいものの,上記「E」及び「A」の文字よりは大きい「C」及び「E」の文字が並んでいる。 (イ) 本願下段文字は,黒い太字で表されたアルファベットの大文字「C」,- 18 -「O」,「F」,「F」,「E」及び「E」の6文字から成り,これらが横一列に近接して並んでおり,各文字の下端は,ほぼそろっている。本願下段文字部分は,本願商標全体の半分近くの面積を占めている。 冒頭の「C」の文字は,本願上段文字の「C」の文字とほぼ同じ大きさであり,その余の5文字はそれよりもやや小さいが,本願上段文字中,「Pの円形部分」の下方にある「E」及び「A」の文字よりは大きい。 (ウ) 白抜き文字は,白い線で表された同じ大きさのアルファベットの大文字「I」,「C」,「E」及び「D」の4文字から成り,これらが横一列に近接して並んでおり,各文字の下端は,ほぼそろっている。 上記4文字は,本願上下段文字よりも相当に小さく,これらの文字のうち最も小さい「Pの円形部分」の下方にある「E」及び「A」の文字と比べても,高さ,幅ともおおむね半分程度にすぎない。上記「E」及び「A」の文字以外の本願上下段文字は,高さにおいて,白抜き文字の約5倍以上である。また,白抜き文字は,本願上下段文字よりも,細い線で書かれている。 (エ) 図形部分は,灰色であ 記「E」及び「A」の文字以外の本願上下段文字は,高さにおいて,白抜き文字の約5倍以上である。また,白抜き文字は,本願上下段文字よりも,細い線で書かれている。 (エ) 図形部分は,灰色であり,本願文字部分全体の外形に沿い,背景のような印象を与える。図形部分の右側及び下側の外延には,黒色の影が付いており,立体感を出している。 イ(ア) 以上によれば,本願商標のうち,本願上段文字部分及び本願下段文字部分は,それぞれ本願商標全体の面積の約半分近くを占め,黒い太字で表されているのに対し,白抜き文字部分は,本願上段文字部分と本願下段文字部分との間に挟み込まれるように配置されており,しかも,これらの文字よりも相当に小さく,細い白線で表されていることから,あまり目立たず,本願上下段文字の中に埋没しているような印象も否定し難いところである。 また,図形部分は,本願文字部分全体の外形に沿い,背景として全体に一体感を与えているとみる余地もあるものの,色は灰色でそれほど目立つものではなく,黒色の影によって立体感が出ているとはいえ,顕著な特徴とまではいい難く,強い印- 19 -象を与えるものとはいえない。本願上下段文字は,図形部分の上に力強く浮き上がっている印象がある。 (イ) 以上の点から,結合商標である本願商標を構成する本願上段文字部分,本願下段文字部分,白抜き文字部分及び図形部分は,外観上,常に一体不可分のものとして認識されるものとまではいえず,分離して看取し得るものといえ,構成部分のうち,本願上段文字部分及び本願下段文字部分が,白抜き文字部分及び図形部分よりも,相当に強く看者の注意を引くものと認められる。 ⑵ 各構成部分についてア本願上段文字部分からは,その構成文字と同一の英文字から成る英単語の「pea 白抜き文字部分及び図形部分よりも,相当に強く看者の注意を引くものと認められる。 ⑵ 各構成部分についてア本願上段文字部分からは,その構成文字と同一の英文字から成る英単語の「peace」に相応した「ピース」の称呼及びその和訳である「平和」の意味合いを生じる(乙1)。 なお,上記英単語については,英和辞典(乙1)のみならず,国語辞典である「広辞苑第六版(第一刷)」(平成20年1月株式会社岩波書店発行,乙9)においても,「ピース【peace】①平和。」と掲載されていることから,上記称呼及び意味合いとも,我が国において日常使用する外来語として一般に定着しているものと認められる。 イ本願下段文字部分からは,その構成文字と同一の英文字から成る英単語の「coffee」に相応した「コーヒー」の称呼及び飲料の一種であるコーヒーの意味合いを生じる(乙2)。上記英単語も,我が国において日常使用する外来語として一般に定着していることが明らかである。 ウ白抜き文字部分からは,その構成文字と同一の英文字から成る英単語「iced」に相応した「アイスト」の称呼及びその和訳である「氷で冷やした」の意味合いを生じる(甲145,乙3)。 エ図形部分については,称呼は生じず,また,それ自体としても,本願文字部分のいずれか1つ又は複数と組み合わせても,特に何かを連想させるものとはいえない。 - 20 -オ上記アからエに鑑みると,本願商標において,本願上下段文字部分,白抜き文字部分及び図形部分を常に一体不可分のものとして認識しなければならないような称呼上の理由及び意味合い上の関連性は,見出し難いというべきである。 ⑶ 各構成部分の出所識別力についてア本願下段文字部分から生じる「コーヒー」の称呼及び飲料 しなければならないような称呼上の理由及び意味合い上の関連性は,見出し難いというべきである。 ⑶ 各構成部分の出所識別力についてア本願下段文字部分から生じる「コーヒー」の称呼及び飲料の一種であるコーヒーの意味合いは,本願指定商品(甲13)に含まれる「コーヒー」の商品名を表す普通名詞に他ならず,本願指定商品との関係においては,出所識別力を有しない。 白抜き文字部分から生じる前記称呼及び意味合いも,商品の品質を表示するものとして理解され,出所識別力は弱いものといえる。 イ本願上段文字部分から生じる「ピース」の称呼及び「平和」の意味合いは,前述したとおり,日常使用する外来語として一般的に定着しており,それ自体はありふれた用語といえるが,飲料である本願指定商品の商品名,品質,性状に関わるものではなく,通常,飲食物を示す用語と共に用いられることは,ほぼないものと考えられるから,本願上段文字部分は,本願下段文字部分及び白抜き文字部分と比較すると,本願指定商品との関係においてより出所識別力を有するものと認められる。 ⑷ 原告の主張についてア(ア) 原告は,本願商標は,ピースマークを含む本願文字部分,図形部分及び黒,白,灰色の色彩を融合させた一体的なロゴマークとして看取されるものであり,構成全体が一体不可分の商品出所識別標識として認識,理解されるものであり,本願上下段文字部分が,強く支配的な印象を与えるものということはできない旨主張する。 (イ)a ロゴマークとは,企業や商品の名前を図案化したロゴタイプ,企業や商品のイメージをデザインしたシンボルマーク及びこれらを組み合わせたものを意味するところ(甲30),本願商標は,前述したとおり,本願上段文字冒頭の「P- 21 -の円形部分」内に「⋔」の図が や商品のイメージをデザインしたシンボルマーク及びこれらを組み合わせたものを意味するところ(甲30),本願商標は,前述したとおり,本願上段文字冒頭の「P- 21 -の円形部分」内に「⋔」の図が描かれているなど図案化されており,ロゴマークに該当するものといえる。そして,一般に,ロゴマークには,その趣旨を看者に瞬時に理解させるという特質を有するものといわれている(甲30から甲32)。 b しかしながら,ロゴマークに該当する商標がすべて,外観上,常に一体不可分のものとして認識されるとは限らない。前述したとおり,本願商標においては,本願上段文字及び本願下段文字が,それぞれ,白抜き文字よりも相当に大きく,線も太く,本願商標の面積の半分近くを占めており,白抜き文字に比して強い存在感を醸し出すものといえる。また,本願上段文字及び本願下段文字は,図形部分の上に力強く浮き上がっている印象を与える。 以上に鑑みると,本願上下段文字部分は,本願商標のその余の構成部分である白抜き文字部分及び図形部分に比して,外観上,顕著なものであり,強く看者の注意を引くものといえることから,本願商標の構成中,突出して強く支配的な印象を与えることは否定し難いというべきである。この結論は,図形部分の一部に黒色の影が付いており,いわゆるシャドウ体(影を付けて立体的な表現を取ったもの〔甲40〕)が用いられていることなど原告指摘の点を考慮しても,左右されるものではない。 したがって,原告の前記主張は採用できない。 イ原告は,「PEACE」の文字は,「平和」を意味する外来語「ピース」として一般に親しまれているものであり,商品の出所識別標識として格別に強い印象を与えるものではない旨主張する。 しかしながら,出所識別力の有無は,当該指定商品又は役務との関係に る外来語「ピース」として一般に親しまれているものであり,商品の出所識別標識として格別に強い印象を与えるものではない旨主張する。 しかしながら,出所識別力の有無は,当該指定商品又は役務との関係において考えるべきであり,前記のとおり,本願商標中,本願上段文字部分の「PEACE」の文字から生じる称呼及び意味合いは,ありふれたものであるが,本願指定商品の品質等に関わるものではないことなどから,同商品については,一定の出所識別力を有するものと認められ,原告の上記主張は採用できない。 ウ(ア)a 原告は,白抜き文字部分につき,①その地色及び配置から,看者の- 22 -視覚を瞬時にとらえられる顕著な存在といえること,②我が国においては,「アイスコーヒー(icecoffee)」という呼び方が一般に親しまれており,これを「アイスト・コーヒー(icedcoffee)」と呼ぶことはないことから,上記文字部分は,必ずしも本願指定商品の品質表示として直感されるものとはいえない旨主張する。 b しかしながら,確かに,白抜き文字は,地色が白く,図形部分の中央辺りに存在するものの,前記のとおり,上記文字よりも相当に大きく,より太い黒線で書かれた本願上段文字と本願下段文字との間に挟み込まれるように配置されていることから,あまり目立つとはいえず,看過される可能性も否定しきれない。 また,辞典類には,外来語である「アイスコーヒー」につき,「icecoffee」と表記するもの(甲41から甲43)があるものの,他方,後述するとおり,「ICEDCOFFEE」等の文字を「アイスコーヒー」という文字と併記するコーヒー飲料の宣伝広告も存在する。加えて,「iced」は,それ自体,「凍らせた」を意味する比較的平易な英単語であり,また,本願指定商品はコー FEE」等の文字を「アイスコーヒー」という文字と併記するコーヒー飲料の宣伝広告も存在する。加えて,「iced」は,それ自体,「凍らせた」を意味する比較的平易な英単語であり,また,本願指定商品はコーヒーに関する飲料類であるから,白抜き文字,すなわち,「ICED」の文字に接した取引者,需要者は,直ちに上記英単語を想起し,冷たい飲料類を連想するものと推認できる。 以上によれば,白抜き文字部分は,本願指定商品の品質を表示するものとして理解されるといえ,原告の前記主張は採用できない。 (イ) また,原告は,仮に,白抜き文字部分が本願指定商品の品質表示として認識される場合があるとしても,本願指定商品が含まれる飲料及び食品の分野においては,商品の普通名称や品質表示等に該当し,一般には出所識別力が弱いと考えられる文字部分についても,同文字部分を含めた構成文字全体が商標(製品名)として機能し,認識されている例が多く見受けられ,殊更に一部の文字部分を捨象したものが商品出所識別標識として認識される場面は,想定し難く,この理は,本願商標についても当てはまる旨主張する。 - 23 -しかしながら,原告が掲げる実例(甲134から甲144)を参照しても,本願商標のように,視覚上分離して看取され得るものであり,称呼及び観念においても,常に全体が一体不可分のものとして認識されるものとはいえない結合商標につき,外観上,文字の大きさ,配置等により他の構成部分に比して明らかに印象の弱い構成部分まで含め,常にすべての構成部分が一体のものとして認識されるとは限らない。特に,後述するとおり,本願指定商品の分野における取引者,需要者には,広く一般の消費者も含まれており,また,簡易,迅速な取引が求められることに鑑みると,本願商標に接する取引者,需要者は,その構成中 。特に,後述するとおり,本願指定商品の分野における取引者,需要者には,広く一般の消費者も含まれており,また,簡易,迅速な取引が求められることに鑑みると,本願商標に接する取引者,需要者は,その構成中,強く看者の注意を引く本願上下段文字部分又は本願上段文字部分をもって,取引に当たる場合も少なくないものというべきである。 以上によれば,原告の前記主張は,採用できない。 ⑸ 小括以上に鑑みると,本願商標に接する取引者,需要者は,本願上下段文字部分及び白抜き文字部分を常に一体的に認識するだけでなく,外観上,強く看者の注意を引く本願上下段文字部分,又は,そのうち出所識別力を有する本願上段文字部分をもって,商品の出所識別標識としてとらえる場合もあるものと認められ,したがって,本願上下段文字部分又は本願上段文字部分が,取引者,需要者に対し,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるから,本願上下段文字部分又は本願上段文字部分を本願商標の要部として抽出し,他人の商標と比較して類否を判断することができるというべきである。 以上によれば,本件審決が,本願商標と引用商標との類否判断に当たり,上記と同旨の判断をして分離観察したことに誤りはない。 ⑹ 称呼及び観念についてア(ア) まず,本願商標を全体的に観察し,本願文字部分,すなわち,「PEACEICEDCOFFEE」を一連のものとしてみると,「PEACE」,「ICED」及び「COFFEE」の構成文字と同一の英文字から成る3語の英単- 24 -語,すなわち,「peace」,「iced」及び「coffee」に相応した「ピースアイストコーヒー」の称呼を生じる。 また,「icedcoffee」は,冷やしたコーヒーを意味する英語の慣用句であり,正しくは「 peace」,「iced」及び「coffee」に相応した「ピースアイストコーヒー」の称呼を生じる。 また,「icedcoffee」は,冷やしたコーヒーを意味する英語の慣用句であり,正しくは「アイストコーヒー」と発音するが,我が国においては「アイスコーヒー」という呼び名が一般に定着しており,乙4号証から乙8号証によれば,コーヒー飲料の宣伝広告に「ICEDCOFFEE」や「IcedCoffee」という文字が「アイスコーヒー」という文字と併記されており,これらが同義であることは,周知されているものと推認できることから,本願文字部分は,「ピースアイスコーヒー」の称呼も生じるものといえる。 (イ) 本願文字部分を一連のものとしてみた場合,上記3語の英単語に相応して「平和の(氷で)冷やしたコーヒー」の観念を生じるものと認められる。 イまた,本願商標については,前述したとおり,①本願上下段文字部分又は②本願上段文字部分を要部と解することができ,①前者の場合においては,「ピースコーヒー」の称呼及び「平和のコーヒー」との観念を生じ,②後者の場合においては,「ピース」の称呼及び「平和」との観念を生じる。 2 本願商標と引用商標との類否について⑴ 本願商標について外観の構成は,前記1⑴のとおりである。称呼及び観念については,本願上下段文字及び白抜き文字に相応した一連の称呼及び観念が生じるだけでなく,その構成中,要部と認められる本願上下段文字部分又は本願上段文字部分から,前者については「ピースコーヒー」の称呼及び「平和のコーヒー」との観念を生じ,後者については「ピース」の称呼及び「平和」との観念を生じる。 ⑵ 引用商標について引用商標(甲12の1)は,前記第2の2のとおりの外観であって,普通の書体で のコーヒー」との観念を生じ,後者については「ピース」の称呼及び「平和」との観念を生じる。 ⑵ 引用商標について引用商標(甲12の1)は,前記第2の2のとおりの外観であって,普通の書体で書かれた片仮名の「ピースコーヒー」の文字及びアルファベットの大文字「PE- 25 -ACECOFFEE」が,それぞれ,上段,下段に配置されている。 引用商標からは,「ピースコーヒー」の称呼及び「平和のコーヒー」との観念を生じるものと認められる。 ⑶ 本願商標と引用商標との比較本願商標と引用商標とは,その全体の外観構成において相違するものの,本願商標の要部である本願上下段文字部分と引用商標の下段文字部分は,いずれもアルファベットの大文字「P」,「E」,「A」,「C」,「E」,「C」,「O」,「F」,「F」,「E」及び「E」の11文字から成り,外観上,文字のつづりが共通している。 また,本願商標の要部である本願上下段文字部分と引用商標とは,「ピースコーヒー」の称呼及び「平和のコーヒー」との観念を同一にしてしている。 ⑷ 取引の実情について本願指定商品は,食品に含まれるものであるから,取引者,需要者には,同商品を取り扱う専門業者のみならず,広く一般の消費者も含まれる。また,同商品は,日用の食品として頻繁に売買されることから,簡易,迅速な取引が要請されるものと考えられる。 以上の点に鑑みると,本願商標に接する取引者,需要者は,同商標の細部まで詳細に観察することなく,その構成中,強く看者の注意を引く本願上下段文字部分又は本願上段文字部分をもって取引に当たる場合が少なくないものと推認できる。 ⑸ 原告の主張についてア(ア) 原告は,①本願上段文字冒頭の「P」の文字には,ピースマークが取り込まれており,同マーク 文字部分をもって取引に当たる場合が少なくないものと推認できる。 ⑸ 原告の主張についてア(ア) 原告は,①本願上段文字冒頭の「P」の文字には,ピースマークが取り込まれており,同マークの存在は,本願商標の外観に独自性,特異性を与え,看者の視線を最も強くひきつけて印象付ける重要な構成要素といえること,②上記ピースマークは,独特の書体等によって視覚的に強調されており,また,同マークを含む本願上段文字は,誰もが一見して容易に「PEACE」と認識できるとは必ずしもいえないほど高度にデフォルメされたレタリング方法で表現されていること,- 26 -③本願商標を塗り分けている黒,白及び灰色の色彩が及ぼす影響は,看過できない大きなものといえることを掲げ,本願商標の外観は,このように顕著な特徴を有しており,引用商標との外観とは,大きな差異がある旨主張する。 (イ)a 確かに,前記のとおり,本願上段文字冒頭の「P」の文字においては,「Pの円形部分」の中に文字と同じ太さ及び色の黒線で「⋔」という図が描かれているところ,この部分は,「☮」,すなわち,ピースマーク(甲1)を連想させるものである。そして,ピースマークは,平和や反戦の象徴として広く国際的に周知されているものと認められる(甲1,甲2,甲20から甲29)。「平和」の意味合いを有する本願上段文字,すなわち,「PEACE」の文字の冒頭にある「P」の字に,平和や反戦の象徴であるピースマークを組み込んだデザインは,本願商標の外観を特徴付けるものといえる。 b しかしながら,本願商標におけるピースマークは,前述したとおり,「Pの円形部分」の中に,文字と同じ太さ及び色の黒線で「⋔」の図が描かれているというものであることから,視覚上,強調されているとはいい難く,「P」の文字の一部 おけるピースマークは,前述したとおり,「Pの円形部分」の中に,文字と同じ太さ及び色の黒線で「⋔」の図が描かれているというものであることから,視覚上,強調されているとはいい難く,「P」の文字の一部分という印象を与えるものといえ,しかも,「P」の文字の他の部分から際立った外観を呈しているともいえない。そして,ピースマークが組み込まれた「P」の字も含む本願上段文字は,ある程度図案化された書体で表わされているものの,文字の識別に支障を来すほどデフォルメされたものはなく,一見して容易に「PEACE」の文字として認識できる。また,色彩は,一般に看者に対して強い印象を与えるものといえるが(甲32から甲37),本願商標は,黒い影付きの灰色の図形部分を背景とし,黒い本願上下段文字及び白抜き文字から成り,これらの色は,いずれも人目を引くものではなく,配色についても,格別特徴的な点は見受けられない。これらのことから,本願商標の色彩は,必ずしも看者に対して強い印象を与え,その認識に大きな影響を及ぼすものとはいえない。他に,本願商標の外観につき,特に顕著な特徴というべき点は,見られない。 以上によれば,本願商標の外観は,それほど顕著な特徴を有するものとはいえず,- 27 -本願商標と引用商標との類否の判断において,類似性を否定する方向に働く強い要素とまではいえないとみるべきであり,原告の前記主張は採用できない。 イまた,原告は,仮に,引用商標の「PEACE」の文字部分から「平和」の観念が想起されることがあるとしても,本願商標の構成中の「PEACE」の文字に組み込んだピースマークによって表現される平和の観念とは異質のものであり,両者が誤認混同されるおそれはない旨主張する。 しかしながら,「平和」という用語の意味が,「ピースマークから想起される平 字に組み込んだピースマークによって表現される平和の観念とは異質のものであり,両者が誤認混同されるおそれはない旨主張する。 しかしながら,「平和」という用語の意味が,「ピースマークから想起される平和」,「鳩から想起される平和」などと複数種類あって,しかも,それらが異質のものであり,互いに識別し得るものであることは,本件証拠上,認められず,また,そのような公知の事実が存在すると認めることもできない。 したがって,原告の上記主張は,採用できない。 ウ(ア) さらに,原告は,取引の実情に関し,①鳩の図柄を伴ったロゴマークの形で使用されている引用商標は,その配色等の使用態様に加え,本願商標におけるピースマークから想起される平和の観念が「鳩」などから想起される平和の観念とは異なるものであることから,本願商標とは明らかに異なる印象等を与えるものといえる,②原告の取り扱うコーヒーと,引用商標権者の取り扱うコーヒーとの間には,商品コンセプトの相違が存在し,主たる需要者の範囲も異なり,取引の競合は生じないことが予想される,として,本願商標と引用商標が各指定商品に使用されても,その出所について誤認混同を生じるおそれはない旨主張する。 (イ) しかしながら,①の点については,商標の類否判断は,原則として当該商標自体を比較して決すべきであり,引用商標が鳩の図柄を伴って使用されていることが,直ちに類否判断に影響するとはいえない。加えて,前述のとおり,「平和」という用語の意味が複数種類あって,それらが異質のものであり,互いに識別可能なものであることは,証拠上認められず,そのような公知の事実の存在も認められない。 ②の点については,たとえ原告と引用商標権者との間に商品コンセプトの相違が- 28 -あり,それぞれ想定している顧客層や販売地域 証拠上認められず,そのような公知の事実の存在も認められない。 ②の点については,たとえ原告と引用商標権者との間に商品コンセプトの相違が- 28 -あり,それぞれ想定している顧客層や販売地域等が異なるとしても,本件証拠上,引用商標権者において会員限定販売など取引相手を明確に限定していることは認められず,原告においてもそのような限定を付する予定をしている事実はうかがわれない以上,原告と引用商標権者との間で本願指定商品における取引の競合が生じる可能性は否定しきれない。 以上によれば,原告の前記主張は,採用できないというべきである。 ⑹ 小括以上によれば,本願商標と引用商標とは,同一又は類似の商品に用いられた場合には,商品の出所につき混同誤認を生ずるおそれがある類似の商標であると認められ,同旨の認定をして,本願商標が商標法4条1項11号に該当するとした本件審決の判断に,誤りはないというべきである。 第7 結論以上によれば,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官清水 節 裁判官新谷貴昭 - 29 - 裁判官鈴木わかな 鈴木わかな
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