令和3(ワ)3191 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年9月28日 大阪地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-92487.txt

判決文本文32,701 文字)

1 主 文1 被告らは、原告に対し、連帯して、332万6940円及びこれに対する令和元年6月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用はこれを2分し、その1を原告の負担とし、その余を被告らの連帯負5担とする。 4 この判決は第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由第1 請求被告らは、原告に対し、連帯して、674万2722円及びこれに対する令和10元年6月8日から支払済みまで年6分(被告協同組合については年5分の割合)による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、ベトナム人技能実習生である原告が、被告会社との間で雇用契約を締結し、鉄筋工として稼働していたところ、被告会社が申請した技能実習計画につ15いて在留期間中に外国人技能実習機構による認定が受けられず又は適切な説明を受けられなかったことによって在留期間を更新することができず、これによって上記雇用契約を契約期間の中途で解除せざるを得ず、収入を失ったなどとして、被告会社に対して、共同不法行為又は民法628条に基づき、残存期間の賃金相当額等の674万2722円の損害賠償及びこれに対する不法行為日である令20和元年6月8日から支払済みまで商法(平成29年法律第45号による改正前のもの)所定の商事法定利率による遅延損害金の支払を求めるとともに、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(以下「法」ともいう。)2条10項所定の監理団体である被告協同組合に対し、共同不法行為に基づき、前記と同額の損害賠償及びこれに対する令和元年6月8日から支払い済みまで25民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の民事法定利率による2 組合に対し、共同不法行為に基づき、前記と同額の損害賠償及びこれに対する令和元年6月8日から支払い済みまで25民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の民事法定利率による2 遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(争いがない事実及び括弧内掲記の証拠等から容易に認められる事実)(1) 当事者ア 原告は、▲年▲月生まれのベトナム国籍の男性である(甲13、14、31)。 5イ 被告会社は、鉄筋工事業等を目的とする株式会社である(争いがない)。 ウ 被告協同組合は、外国人技能実習制度における団体管理型技能実習の監理団体(法2条10項)となる非営利の法人である(争いがない)。 (2) 雇用契約の締結原告は、被告会社との間で、平成29年(2017年)11月25日、期間10を平成30年(2018年)7月6日から令和3年(2021年)6月7日、賃金を時給909円等と定めた雇用契約(以下「本件雇用契約」という。)を締結した。本件雇用契約は、被告会社を実習実施者、原告を技能実習生とし、原告が技能実習第1号ロの在留資格で入国し、技能等に係る業務に従事する活動を開始する時点をもって効力を生じ、原告が何らかの事由で在留資格を喪失し15た時点で終了する旨の条項があった。(甲3、4)(3) 原告の入国後の経過ア 原告は、平成30年6月8日、技能実習1号ロの在留資格で本邦に上陸し、本件雇用契約に基づき、被告会社において就労した。原告の前記在留資格による在留期間は令和元年6月8日までであった。(甲13及び争いがない)20イ 被告会社は、令和元年6月5日、原告に対し、在留資格変更の手続が止まっているため、在留期間満了日までにこれが間に合わず、いったんベ 年6月8日までであった。(甲13及び争いがない)20イ 被告会社は、令和元年6月5日、原告に対し、在留資格変更の手続が止まっているため、在留期間満了日までにこれが間に合わず、いったんベトナムに帰国すること、在留資格変更の手続が終われば日本に入国するための航空券や必要書類を送ること及びその間は60%の休業補償をすることを記載した別紙文書(以下「本件文書」という。)を日本語及びベトナム語で作成し25て、原告に対して提示した(甲25の1、25の2)。 3 ウ 原告は、令和元年6月7日以降、被告会社から貸与されていた寮を離れ、被告会社や被告協同組合と連絡が取れなくなった(甲21)。 エ 原告は、令和2年3月30日、名古屋出入国在留管理局長から、在留特別許可(出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)50条3項)を受け、短期滞在の在留資格が認められた。原告は、同年6月30日から、別5の会社を実習実施者として、技能実習2号ロの在留資格で在留するようになり、同社において就労するようになった。(甲30、61)(4) 技能実習制度及び原告の在留資格等ア 外国人は「技能実習」の在留資格で本邦に在留することができる。 技能実習には、企業単独型と団体監理型があり、原告は団体監理型の技能10実習生であり、被告会社はその実習実施者であり、被告協同組合はその監理団体であった(入管法別表第一の二、法2条1項)。 イ 技能実習生となる外国人が技能実習1号ロの在留資格を得たときの在留期間は最長1年である(出入国管理及び難民認定法施行規則別表第二)。 技能実習1号ロから2号ロに在留資格の変更(入管法20条)が認められ15るためには、外国人技能実習機構(以下「機構」という。)が行う技能実習計画( 出入国管理及び難民認定法施行規則別表第二)。 技能実習1号ロから2号ロに在留資格の変更(入管法20条)が認められ15るためには、外国人技能実習機構(以下「機構」という。)が行う技能実習計画(法8条)の認定を受けなければならず、原告の職種((鉄筋施工・鉄筋組立作業)について技能実習2号ロに係る技能実習計画の認定を受けるためには、前段階である技能実習1号の実習計画において目標とした技能検定試験の合格等を証する書類を提出する必要があった。(甲1、19)20ウ 被告会社は、平成31年4月14日付けで、機構に対し、原告に係る技能実習2号ロの技能実習計画の認定を申請し(以下「本件申請」という。)、同月23日、これが受理されたが、原告の技能実習1号ロの在留資格による在留期間の満了日までに、認定を受けることはできなかった(争いがない事実及び甲9)。 252 争点4 (1) 被告会社に対する請求ア 被告会社の原告に対する不法行為責任の成否(争点1)イ 本件雇用契約の終了事由(争点2(1))ウ 民法628条所定のやむを得ない事由及び過失の有無(争点2(2))(2) 被告協同組合に対する請求5被告協同組合の原告に対する不法行為責任の成否(争点3)(3) すべての請求損害の有無及び額(争点4)3 争点に関する当事者の主張(1) 被告会社の原告に対する不法行為責任の成否(争点1)について10(原告の主張)ア 実習計画認定申請の遅滞(以下「本件不法行為1」という。)(ア) 被告会社は、外国人技能実習生である原告を受け入れた法人として、技能実習生ごとに技能実習計画を作成して提出し、これが適当である旨の認定を受けなければならない(法8条1 」という。)(ア) 被告会社は、外国人技能実習生である原告を受け入れた法人として、技能実習生ごとに技能実習計画を作成して提出し、これが適当である旨の認定を受けなければならない(法8条1項)。原告が在留資格を更新するた15めには、技能実習2号に係る技能実習計画(以下「2号技能実習計画」という。)が、上記認定を受ける必要があった。 出入国在留管理庁及び厚生労働省が刊行している「技能実習制度運用要領」(甲52)においては、原告が受けるべき2号実習計画の認定申請は、実習開始予定日の6か月前から可能であり、原則として3か月前までに行20う必要があるとされている。原告の在留期間は令和元年6月8日までであったから、被告らは遅くとも同年(平成31年)3月8日までに、技能実習計画を申請しなければならなかった。 (イ) しかし、被告会社が実際に本件申請をしたのは、平成31年4月14日付けであった。申請に対する審査に通常要する期間は2~5週間とされて25いるから、仮に被告会社が同年3月8日までに申請していれば、遅くとも5 同年4月12日までには審査が完了したはずであり、在留期間満了日までに2か月近くの期間を確保できたから、仮に実習計画の認定や在留資格更新の過程で何らかのトラブルが生じたとしても、対応策を講じて、在留期間満了日までに手続を完了させることができたはずであった。また、被告会社に対して労働基準監督署の調査が入ったのは同年5月24日頃であ5り、是正勧告がされたのは同月27日であったから、仮に被告会社が期限を守って申請していれば、このことが問題化することなく、実習計画の認定を受け、在留期間満了日までに在留資格を更新することができたはずであった。 (ウ) したがって、原告は、被告会社の実習計画 守って申請していれば、このことが問題化することなく、実習計画の認定を受け、在留期間満了日までに在留資格を更新することができたはずであった。 (ウ) したがって、原告は、被告会社の実習計画の申請の遅滞により、在留期 間が満了することとなった。 イ被告会社の労働基準法及び労働安全衛生法違反により実習計画認定が遅滞したこと(以下「本件不法行為2」という。)本件申請に対し、機構が令和元年5月28日に審査手続を止め、在留期限までに認定が受けられなかった理由は、被告会社に対して、同月27日、労 働基準法違反及び労働安全衛生法違反によって労働基準監督署から是正勧告を受けたことである。 したがって、原告は、被告会社の労働基準法及び労働安全衛生法違反により、在留期間が満了することとなった。 ウ入管法20条6項に基づく在留期間延長の措置を講じなかったこと(以下 「本件不法行為3」という。)(ア) 入管法20条6項は、在留カードを所持している者が、在留期間更新許可申請又は在留資格変更許可申請を行った場合において、当該申請に係る処分が在留期間の満了の日までになされないときは、当該処分がされる時又は在留期間の満了の日から2か月が経過する日が終了する時のいずれ か早い時までの間は、引き続き従前の在留資格をもって日本に在留できる 旨を定めている。 (イ) したがって、本件申請に対する認定が原告の在留期間満了までに間に合わなかったとしても、被告会社は、原告に対し、技能実習2号に係る在留資格変更等の申請を行わせつつ、出入国在留管理庁に対し、本件申請に対する審査が止まっている事情を疎明し、前記(ア)によって在留できる2か 月のうちに、実習計画の認定を受けるように 2号に係る在留資格変更等の申請を行わせつつ、出入国在留管理庁に対し、本件申請に対する審査が止まっている事情を疎明し、前記(ア)によって在留できる2か 月のうちに、実習計画の認定を受けるようにすれば、原告は帰国することなく予定どおり技能実習生として就労することができた。 (ウ) したがって、原告は、被告会社が、原告の技能実習2号に係る在留資格変更及び在留期間更新の手続を行わせようとしなかったことによって、在留期間が満了することとなった。 エ短期滞在への在留資格の変更手続を行わせようとしなかったこと(以下「本件不法行為4」という。)(ア) 法務省入国管理局(当時)が作成した「入国・在留審査要領」によれば、技能実習期間中に技能実習生の責めによらない原因で技能実習が困難となり、在留期間内に新たな実習先が確保できなかった場合においては、9 0日間の短期滞在への在留資格変更が可能である旨が記載されている。 そして、在留資格変更申請等を行えば、前記のとおり、入管法上、申請に対する処分がされる時又は在留期間の満了の日から2か月が経過する日が終了する時のいずれか早い時までの間、引き続き従前の在留資格をもって日本に在留できる。 (イ) したがって、被告会社が、原告に対し、在留資格を短期滞在に変更する申請を行わせ、短期滞在の在留資格が認められるまでの間及びこれが認められた後の90日間の期間内に、2号技能実習計画の認定の審査が完了すれば、原告は、前記ウ同様、帰国することなく就労することが可能であった。このような対応は、一般に行われていた実務であり、文献でも紹介 されている。 (ウ) したがって、原告は、被告会社が、原告の短期滞在への在留資格の変更手続を行わせようとしな った。このような対応は、一般に行われていた実務であり、文献でも紹介25されている。 7 (ウ) したがって、原告は、被告会社が、原告の短期滞在への在留資格の変更手続を行わせようとしなかったことによって、在留資格の更新が受けられなくなった。 オ 調査及び説明義務違反(ア) 在留期間延長の方法に関する調査・説明義務違反(以下「本件不法行為55」という。)a 被告会社は、原告に対し、技能実習の適正な実施及び技能実習生保護の責任を負うから、そのために、技能実習生の在留資格の取得及び更新について、適正な対処をとるべき立場にある。したがって、被告会社は、原告に対し、原告を帰国させずに技能実習を継続できる手段について調10査し、原告に対して説明すべき法的義務を負っていた。特に原告は、フェイスブック上の在日ベトナム人のグループにおいて、帰国しなくても在留期限を延長することができる方法がある旨を聞き、被告会社の依頼した被告協同組合の通訳者にその旨を伝えていたのであるから、被告会社は、これを調査することができた。 15b そして、このような方法としては、前記ウ及びエの方法があった。 c しかし、被告会社は、このような調査を尽くすことなく、原告に対して、帰国するしかない旨の誤った説明をした。 (イ) 経過等に関する説明義務違反(以下「本件不法行為6」という。)a 前記(ア)aでみた被告会社の立場を踏まえれば、被告会社は、原告に20対し、原告の在留資格等に関する事実関係を正確かつ真摯に説明すべき法的義務を負っていた。 b しかし、被告会社は、原告に対し、在留期限満了日の4日前まで何らの説明をせず、帰国を求めるように告げた後も、帰国を求める理由、帰国した後の流れ及 確かつ真摯に説明すべき法的義務を負っていた。 b しかし、被告会社は、原告に対し、在留期限満了日の4日前まで何らの説明をせず、帰国を求めるように告げた後も、帰国を求める理由、帰国した後の流れ及びいかなる補償を行うのかといった重要な事実につ25いて、原告に対し、直接、真摯に説明をしようとしなかった。被告会社8 は、原告に対し、航空券代を負担して60%相当額の休業手当を支払う旨を説明したが、被告会社から経緯等について詳しい説明を受けていない原告としては、実際に休業手当が支払われる旨を簡単に信じることはできなかったし、被告会社の落ち度によって帰国を強いられる以上、賃金の60%の休業手当だけでは、補償として十分ではなかった。 5(ウ) 実習先変更に関する調査・説明義務違反(以下「本件不法行為7」という。)a 被告会社は、労働基準監督署から是正勧告を受け、2号技能実習計画の認定を受けることができなかったのであれば、原告に対し、速やかに別の実習先にて技能実習を継続する希望があるかを確認し、その希望が10あれば、別の実習先にて技能実習を継続できるように連絡調整等の必要な措置を講ずべき法的義務があった。 b しかし、被告会社は、実習先変更による対応の可能性について検討をせず、上記aの措置を講じなかった。 (被告会社の主張)15ア 本件不法行為1~5について(ア) 一般に、在留資格の変更及び在留期間の更新は、入管法上、法務大臣の自由な裁量に委ねられているものであるから、原告が在留資格の変更ができなかったとしても、被告会社に過失はなく、法的責任を負う立場にない。 (イ) また、在留期間の更新等は在留する本人が行う手続であるから、原告が20在留期間満了日までに在留資格の変 ができなかったとしても、被告会社に過失はなく、法的責任を負う立場にない。 (イ) また、在留期間の更新等は在留する本人が行う手続であるから、原告が20在留期間満了日までに在留資格の変更ができなかったとしても、被告会社に過失はなく、法的責任を負う立場にない。 (ウ) 被告会社は、機構との手続等について、被告協同組合に全面的に委任していた。原告は、在留資格の変更に当たり、被告協同組合に対し、パスポートと在留カードを預けており、被告会社は、在留資格変更等の手続のた25めに行動すべき立場にはなかった。これらの事実に照らせば、被告会社に9 おける技能実習計画の認定審査が止まったとしても、これに対する対応を検討すべきなのは、一次的には原告、二次的には被告協同組合であり、被告会社は、原告が在留期間満了日までに在留資格の変更ができなかったことについて過失がなく、法的責任を負う立場にない。 イ 本件不法行為6(経過等に関する説明義務違反)について5(ア) 被告会社は、原告に対し、令和元年6月5日、在留資格更新の手続が間に合わず、いったん帰国して待機してもらい、在留資格が下り次第、航空券と在留資格証を送付するので、直ちに会社に戻ってほしい旨及びその間の給与については休業補償として60%を補償する旨を記載した本件文書を、日本語だけでなくベトナム語でも作成した上で、提示した。 10そして、被告会社の担当者(A)は、原告に対し、本件文書と同様の内容を説明したところ、原告は被告会社の説明や方針に対して特に抗議をすることなく、一応納得していた。 (イ) 休業補償の額は月額12万円程度に達するものであり、原告がベトナムに帰国すれば高額の生活費を必要としなくなることに鑑みれば、送出機関1 特に抗議をすることなく、一応納得していた。 (イ) 休業補償の額は月額12万円程度に達するものであり、原告がベトナムに帰国すれば高額の生活費を必要としなくなることに鑑みれば、送出機関15への借金の返済ができなくなる程度のものではなかったし、原告の被告会社における就労中、被告会社との間に特段のトラブルはなく、前記(ア)で申し出た休業補償が実際に支払われるかを不安に感じるような事情はなかったはずであって、本件文書を提示した被告会社に説明義務違反があるとはいえない。 20ウ 本件不法行為7(実習先変更に関する調査・説明義務違反)について(ア) 前記ア(ア)~(ウ)のとおり、被告会社は、原告の在留資格変更が在留期間満了までにできなかったことについて、法的責任を負う立場にない。 (イ) また、被告会社は、令和元年5月27日に奈良労働基準監督署から是正勧告がされたが、同月31日には是正報告書を作成して提出しており、現25に、被告会社の他の技能実習生2名が、同年6月30日付けで在留資格の10 変更を申請したところ、同年7月18日付けで認められている。 したがって、令和元年6月8日の原告の在留期間満了時、原告も比較的速やかに被告会社における技能実習を行うことができる見込みがあったのであり、実習先変更を促すべき場合に当たらない。 (2) 被告会社の原告に対する民法628条に基づく損害賠償責任の成否(争点25(1)(2))について(原告の主張)ア 本件雇用契約の終了事由(争点2(1))(ア) 本件雇用契約は平成30年7月6日から令和3年6月7日までの有期雇用契約であった。原告は、令和元年6月6日に被告会社の寮を出て、そ10れ以降、被告会社に対して労務を提供してはいないが、 (ア) 本件雇用契約は平成30年7月6日から令和3年6月7日までの有期雇用契約であった。原告は、令和元年6月6日に被告会社の寮を出て、そ10れ以降、被告会社に対して労務を提供してはいないが、被告会社に対して退職の意思表示はしていない。被告会社は、同月8日をもって原告の自己都合退職として取り扱っているが、これは被告会社が一方的に本件雇用契約を終了させたものであり、解雇に当たる。仮に原告の自己都合退職によって本件雇用契約が終了したものであるとしても、本件雇用契約が解除さ15れたことに変わりはない。したがって、民法628条が適用される。 (イ) 被告会社は、本件雇用契約は、契約書上の定めに基づき、在留資格の喪失によって終了したと主張しているが、強行法規である民法628条及び労働契約法17条により、「やむを得ない事由」がなければ解除できないのであり、被告会社が本件雇用契約の前記規定に基づいて本件雇用契約を20終了させる扱いをしたのであれば、それは、被告会社が「やむを得ない事由」である在留資格喪失との事情に基づいて、本件雇用契約を解除したものである。 イ やむを得ない事由及び過失の有無(争点2(2))本件雇用契約が上記アのいずれの事由によって終了したにせよ、これは原25告の在留期間満了日までに在留資格の更新ができなかったという「やむを得11 ない事由」によるものであり、これが被告会社の過失によるものであることは前記(1)(原告の主張)のとおりである。 (被告会社の主張)ア 本件雇用契約の終了事由(争点2(1))(ア) 本件雇用契約では、原告が何らかの事由で在留資格を喪失した時点で雇5用契約は終了する旨が定められていた。したがって、原告の在留期間が令和元年6月8日に満了したこ 争点2(1))(ア) 本件雇用契約では、原告が何らかの事由で在留資格を喪失した時点で雇5用契約は終了する旨が定められていた。したがって、原告の在留期間が令和元年6月8日に満了したことにより、本件雇用契約は終了した。 (イ) 原告は、令和元年6月6日、被告会社の寮から逃げ出し、同月7日の勤務を無断欠勤し、以降、連絡がつかなくなった。原告は退職の意思表示をしていないし、被告会社も解雇の意思表示をしておらず、本件雇用契約は10解除によって終了していないから、民法628条は適用されない。 イ やむを得ない事由及び過失の有無(争点2(2))上記のとおり、本件雇用契約は原告の在留期間満了によって終了したところ、前記(1)(被告会社の主張)記載のとおり、このことについて被告会社に過失はない。 15(3) 被告協同組合の原告に対する不法行為責任の成否(争点3)(原告の主張)ア 被告協同組合の責務被告協同組合は監理団体である。監理団体は、技能実習生の受入準備や技能実習生の保護等のために監理責任者を選任しなければならない(法40条201項)。そして、監理団体は、実習実施者が、技能実習に関し労働基準法、労働安全衛生法その他の労働に関する法令に違反しないよう、監理責任者をして、必要な指導を行わせなければならず、これらの法令に違反していると認めるときは、是正のため必要な指示を行わせなければならず、当該指示を行ったときは、速やかにその旨を関係行政機関に通報しなければならない旨を25定めている(同条3項~5項)。 12 したがって、監理団体は、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護の責務を負い、技能実習生の受入準備として、技能実習生の在留資格の取得及び更新について、適正な対処を取る 3項~5項)。 12 したがって、監理団体は、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護の責務を負い、技能実習生の受入準備として、技能実習生の在留資格の取得及び更新について、適正な対処を取るべき法的義務を負っていた。 イ 本件不法行為1~7について(ア) 以上のような監理団体の義務に照らせば、被告協同組合は、実習計画の5認定申請を、前記(1)(原告の主張)ア記載のとおり、平成31年3月8日までに、被告会社をして行わせなければならなかったのに、これを怠った(本件不法行為1)。 (イ) また、被告協同組合は、本件申請に対する認定が在留期間満了日までに受けられなかったとしても、原告に対し、①技能実習2号による在留資格10の更新を在留期間満了日までに行うことができなかったとしても、技能実習2号への在留資格の変更又は②短期滞在への在留資格への変更手続を行わせるべきであったのにこれを怠ったというべきであり(本件不法行為3・4)、少なくとも、短期滞在への変更等の他の在留期間延長に向けた手続の有無を調査して、これがあることを原告に対して説明すべきであった15のにこれを怠ったといえる(本件不法行為5)。 (ウ) そして、被告協同組合は、技能実習生保護のため、在留資格更新に向けた状況や、被告会社が帰国を求めたことについて、帰国を求める理由、帰国した後の流れ及びいかなる補償を行うのかといった重要な事実を説明すべきであったにもかかわらず、これを原告に対して説明せず(本件不法20行為6)、被告会社における技能実習の継続が不可能であれば、実習先を変更する方法があることについても説明しなかった(本件不法行為7)。 (エ) 前記(イ)及び(ウ)は、被告協同組合の不法行為に当たり、被告会社とは共同不法行為責任を負う。 (被 であれば、実習先を変更する方法があることについても説明しなかった(本件不法行為7)。 (エ) 前記(イ)及び(ウ)は、被告協同組合の不法行為に当たり、被告会社とは共同不法行為責任を負う。 (被告協同組合の主張)25ア 本件不法行為1(本件申請の遅滞)について13 (ア) 被告協同組合は、平成30年12月19日に、技能検定試験の受検申請を行い、同試験は平成31年4月16日に実施された。被告協同組合は、原告の技能実習試験の日程が決まった後、同月13日頃までに、2号技能実習計画の認定申請手続に必要な書類一式を作成し、被告会社に対して郵送した。被告会社は、同月14日付けで申請書類等を作成し、これを被告5協同組合に対して送付し、被告協同組合は、同月23日、機構に対し、本件申請をした。 (イ) 前記(ア)のとおり、被告協同組合は、平成30年12月には技能検定試験の受検申請手続を行っており、試験日程が決まった後は速やかに本件申請に向けた手続を進めているから、本件申請に遅滞はない。技能実習計画10の認定の審査は1か月程度で終了し、認定がされれば技能実習2号に係る在留資格変更の申請を行うことができ、これによって在留期間の満了日から2か月が経過するまで、従前の在留資格をもって在留することができるから(入管法20条6項)、平成31年4月23日の本件申請は、原告の在留期間が令和元年6月8日までであったことを踏まえても、十分な時間的15猶予がある状況で行われたといえる。 また、被告協同組合は、申請後は機構に対して適宜問い合わせをするなどして在留期限を意識して審査をするように促している。 (ウ) 以上によれば、本件申請に関する被告協同組合の対応に過失はなく、被告協同組合に不法行為責任は成立しない 構に対して適宜問い合わせをするなどして在留期限を意識して審査をするように促している。 (ウ) 以上によれば、本件申請に関する被告協同組合の対応に過失はなく、被告協同組合に不法行為責任は成立しない。 イ本件不法行為3~5について(ア) 被告協同組合の担当者であるBは、令和元年5月28日、機構から、本件申請の審査が止まる旨の連絡を受け、直ちに機構の大阪事務所を訪問し、今後の対応について相談したところ、機構からは、在留期間の延長手続が間に合わないようであればいったん帰国させるようにと回答された。Bは、 機構の本部にも電話で照会し、大阪出入国在留管理局にも電話で相談した が、いずれもいったん帰国させるようにとの指示を受けた。その後も、被告協同組合は、機構に対し、状況などを伝えて相談していたが、指示に変更はなかった。 (イ) 本件不法行為3について、技能実習2号への在留資格の変更は、技能実習計画の認定が前提となるので、本件申請に対する認定がされていない状 況下では、更新手続を行うことはできないものであった。 (ウ) 本件不法行為4について、短期滞在への在留資格の変更は「人道上の真にやむをえない事情又はこれに相当する特別な事情がある場合」に限定され、当然に認められるものではない。原告の指摘する「入国・在留審査要領」は、本件申請の後に作成されたものであり、当時は存在しなかった。 (エ) 被告協同組合は、在留期間満了日まで間がない中で、機構や大阪入国管理局から前記(ア)の指示があったため、前記(イ)及び(ウ)の状況の下、被告会社に対し、一時帰国させる方針を伝えたものであって、これは一つの合理的な選択であった。 したがって、技能実習2号や短期滞在の在留資格への変更手続等や、実 ため、前記(イ)及び(ウ)の状況の下、被告会社に対し、一時帰国させる方針を伝えたものであって、これは一つの合理的な選択であった。 したがって、技能実習2号や短期滞在の在留資格への変更手続等や、実15習先の変更を原告に対して行わせず、又はこれを説明しなかったとしても、被告協同組合に過失はない。 ウ 本件不法行為6(経緯等に関する説明義務違反)について(ア) 被告組合のベトナム人通訳であるCは、令和元年6月4日、原告からフェイスブックで問い合わせを受け、被告会社の事情で本件申請の審査が止20まっており、原告自身には問題がないこと、帰国のための航空券は被告会社が用意すること、同月8日を過ぎると不法滞在となること、帰国後にビザが下りればすぐに連絡することなどを、原告の質問に対して回答した。 また、原告が説明文書を渡すことを求めたため、被告会社が、日本語及びベトナム語で本件を作成し、その画像を送付した。 25(イ) また、被告協同組合のDは、被告会社に戻ってきた原告に対し、上記(ア)15 と同様の説明を行い、Cは電話によりこれを通訳した。 (ウ) 被告協同組合からの上記説明は令和元年6月4日以降にされたが、被告協同組合が本件申請の審査が止まっていることを把握したのが同年5月28日であるから、説明が在留期間満了日まで間がない時期になったとしてもやむを得なかった。Cの説明に対し、原告は補償内容については納得5していなかったが、被告協同組合は、原告に対する補償内容を決定する立場になく、被告会社に対してこれを指導すべき立場にもない。 (エ) 以上によれば、被告協同組合は、原告に対し、必要な説明を尽くしており、説明義務違反の不法行為は成立しない。 (4) 争点4(損害の有無及び額)について10(原告の主張 。 (エ) 以上によれば、被告協同組合は、原告に対し、必要な説明を尽くしており、説明義務違反の不法行為は成立しない。 (4) 争点4(損害の有無及び額)について10(原告の主張)ア 残期間の賃金相当額 512万9748円(ア) 原告の被告会社に対する平成30年12月度から令和元年5月度までの6か月間の給与の額は合計128万2437円であった。 本件雇用契約は2年間の期間を残して終了したから、その間の賃金相当15額は512万9748円となる(=128 万2437 円×4)。 (イ) 原告は、令和2年6月30日以降、別の実習実施者の下で技能実習を継続することができるようになったが、これは原告及び実習実施者等の特別な努力によるものであり、損害賠償義務を軽減させるべき事情に当たらない。 20イ 慰謝料 100万円被告らの行為によって、原告は、約1年間にわたり、技能実習を再開できるか不安な状態に置かれ、令和元年12月12日から令和2年1月31日までの間は、名古屋入国管理局に収容された。 これらの経過による精神的苦痛に対する損害は100万円を下らない。 25ウ 弁護士費用 61万2974円16 上記ア及びイの損害賠償を訴訟手続によって請求するに当たり、原告には、上記ア及びイの少なくとも10%の弁護士費用相当額の損害が生じた。 (被告会社の主張)否認又は争う。 (ア) 原告は、被告会社らが、一時帰国に関して合理的な提案や説明をしていた5のに、自ら一方的に被告会社の寮を立ち去った。被告会社は、原告が寮を出た令和元年6月7日の夜にも説明の場を設定していようとしていたし、その後も他の技能実習生を通じて原告と連絡 や説明をしていた5のに、自ら一方的に被告会社の寮を立ち去った。被告会社は、原告が寮を出た令和元年6月7日の夜にも説明の場を設定していようとしていたし、その後も他の技能実習生を通じて原告と連絡を取ろうとしていたが、原告はこれを拒絶し、連絡を取ることができなくなった。 前記のとおり、他の実習生の申請状況に照らせば、原告が一時帰国をして10手続を進めていれば、令和元年6月中旬(遅くとも同月末日)までには、技能実習2号の在留資格の変更が認められ、これに伴う在留期間の更新を行うこともできたというべきである。 すると、原告が就労できず又は不法滞在となった期間の大部分は、原告の選択によるものであり、被告会社らの行為との間に相当因果関係がない。 15(イ) 仮に本件申請に対する認定が原告の在留期間満了日までに行われなかったことが被告会社に対する労働基準監督署による是正勧告によるものであるとしても、原告の主張するとおり、本件申請に対する認定がないまま技能実習2号への在留資格変更申請を行う方法、短期滞在への在留資格変更申請を行う方法及び実習先変更といった方法を取ることができたとすれば、原告20は自らこれらの手段をとって在留することができたのであり、原告が就労できず又は不法滞在となった期間があったとしても、被告会社の行為との間に相当因果関係がない。 (被告協同組合の主張)否認ないし争う。 25原告は、被告協同組合のCから、在留期間を経過すれば不法滞在となること17 の説明を受けたにもかかわらず、自らの選択で被告会社の寮を立ち去り、失踪したのであり、原告の主張する損害はこれによって生じたものである。 第3 当裁判所の判断1 認定事実前記前提事実及び括弧内掲記の もかかわらず、自らの選択で被告会社の寮を立ち去り、失踪したのであり、原告の主張する損害はこれによって生じたものである。 第3 当裁判所の判断1 認定事実前記前提事実及び括弧内掲記の証拠等によれば、次の事実が認められる。 5(1) 雇用契約の締結、原告の入国及び就労状況等ア ベトナム国籍を有する原告は、被告会社との間で、平成29年(2017年)11月25日、期間を平成30年(2018年)7月6日から令和3年(2021年)6月7日まで、従事すべき業務を鉄筋組立て作業、賃金を時給909円などと定めて、「技能実習のための雇用契約書」及び「雇用条件10書」を作成して、本件雇用契約を締結した。これらの契約書等は、日本語及びベトナム語で記載がされていた。(前提事実(1)、(2)、甲3、4)イ 原告は、平成30年6月8日、本邦に上陸し、技能実習1号ロの在留資格で在留するようになった。在留期間は1年間であり、満了日は令和元年6月8日であった。(甲13、14)15ウ 原告は、平成30年6月以降、被告会社において、鉄筋工として就労を始めた。原告は、奈良県生駒市に、家賃月額2万5000円及び水道光熱費8000円の条件で賃貸住宅を貸与されていた。(甲7、17)エ 原告の本件雇用契約上の賃金は、平成30年12月25日、時給1066. 66円に変更された。原告の平成30年12月1日から令和元年5月31日20分までの本件雇用契約上の賃金額は次のとおりであり、182日間で128万2437円の支払を受けていた。(甲5、24の3、24の4、32の2)18 期間就労日数支払額平成30年12月1日~同月31日24190,654平成31年1月1日~同月31日22195,150平成31年2月1日 、24の3、24の4、32の2)18 期間就労日数支払額平成30年12月1日~同月31日24190,654平成31年1月1日~同月31日22195,150平成31年2月1日~同月28日19199,500平成31年3月1日~同月31日24216,000平成31年4月1日~同月30日26240,800令和元年5月1日~同月31日22240,333(合計額)1,282,437オ 原告は、被告会社で働き始めた頃、被告協同組合の通訳であるCの連絡先を伝えられ、原告は仕事を休みたいときなど、被告会社との間で通訳が必要なときに連絡を取っていた。Cは、被告協同組合が関与する約200人のベトナム人技能実習生に対して連絡先を伝え、通訳をしたり相談を受けたりし5ていた。 原告の被告会社における仕事ぶりに特に問題は見られず、被告会社や同僚らとトラブルを起こすこともなかった。 (被告代表者(2頁)、原告本人(2頁)、証人C(25頁))(2) 在留資格変更に向けた被告協同組合等の行動10ア 被告協同組合は、平成30年12月19日、原告について、E協会に対し、基礎級技能検定試験(鉄筋施工・鉄筋組立て)(以下「本件試験」という。)の受検の申請手続をした。しかし、本件試験のうち実技試験の日程がなかなか決まらず、これが実施されたのは平成31年4月中旬頃となった。 (乙5、証人B(3頁))15イ 被告協同組合は、被告会社の委任を受けて、平成31年4月14日、機構に対し、実習実施予定表等の必要書類を添付し、本件試験の合格に関する文書は後日提出することとして、原告についての技能実習計画の認定申請書を作成し、同月23日、機構がこれを受理した(本件申請)。 原告は、本件試験に合格し、 の必要書類を添付し、本件試験の合格に関する文書は後日提出することとして、原告についての技能実習計画の認定申請書を作成し、同月23日、機構がこれを受理した(本件申請)。 原告は、本件試験に合格し、被告協同組合は、本件試験の合格を証明する20文書(甲8)を、令和元年5月10日に入手し、後に機構に提出した。本件19 試験の合格証書が発行されたのは同月29日であった。 (甲3~19、乙4)ウ 被告協同組合は、被告会社に対して、令和元年5月8日、入国管理局への在留資格変更申請手続に添付する必要があるとして、原告のパスポート及び在留カードの原本並びに源泉徴収票又は賃金台帳を、同月20日までに送付するように求める文書を送付した(乙10)。 5(3) 本件申請に対する審査の停止とこれに対する対応状況ア 奈良労働基準監督署は、令和元年5月27日、被告会社に対し、労働基準法及び労働安全衛生法違反(以下「本件違反」という。)があるとして、是正勧告(以下「本件是正勧告」という。)をした(丙6の1。本件違反の具体的内容は、本件の口頭弁論終結の日と同日に行われた弁論準備手続期日で取り10調べられた被告会社提出に係る丙6の1及び丙6の2においても黒塗りにされており、明らかでない。)。 イ 機構の担当者は、令和元年5月28日、被告協同組合のBに対し、原告を含む被告会社の技能実習生の技能実習計画の認定審査が止まっている旨を連絡した。 15被告協同組合の担当者は、直ちに被告会社代表者であるFに連絡を取り、Fは、本件是正勧告を受けた旨の報告を受け、考えられる理由はそれしか思い当たらない旨の話をした。 Bは、同日、機構の大阪事務所を訪問し、今後の本件申請等に関する対応を相談したところ、Bは、機構の担当者から、出入国在留 受けた旨の報告を受け、考えられる理由はそれしか思い当たらない旨の話をした。 Bは、同日、機構の大阪事務所を訪問し、今後の本件申請等に関する対応を相談したところ、Bは、機構の担当者から、出入国在留管理庁から審査を20保留するように連絡を受けており、今後のことは出入国在留管理庁に問い合わせるようにとの説明を受けた。 (認定理由については後述する。乙11、証人B(6~8頁)、被告代表者(14~15頁)、外国人技能実習機構大阪事務所長による調査嘱託回答結果(以下「本件調査嘱託回答」という。))25ウ 被告会社は、令和元年5月31日(金曜日)付けで、本件是正勧告に対す20 る是正・改善をしたとして、奈良労働基準監督署に対し、是正・改善報告書を提出した(以下「本件是正等」という。)。被告協同組合は、同日、被告会社からその写しの送付を受けた。(丙6の2、証人B(7頁))(4) 原告に対する一時帰国の説明等ア Fは、原告の在留期間満了日が令和元年6月8日に迫っていることから、5Bら被告協同組合の担当者と相談の上、原告を一時帰国させることを決めた。 被告会社の担当者は、同月4日(火曜日)、静岡県の現場に出張して稼働していた原告に対し、在留期間の満了日である同月8日に、ベトナムに一時帰国しなければならない旨を告げた。(乙2の2、被告代表者(19頁))イ(ア) 原告は、被告協同組合の通訳であったCに対し、フェイスブックを通じ10て、令和元年6月4日12時32分、「8日帰国しなければならないですか。ビザが何か問題ありますか。」と質問するメッセージをベトナム語で送付した。 Cは、被告協同組合に確認した上で、原告に対し、①被告会社が労働基準監督署に監査されており、ビザが下りていないこと、②具 か問題ありますか。」と質問するメッセージをベトナム語で送付した。 Cは、被告協同組合に確認した上で、原告に対し、①被告会社が労働基準監督署に監査されており、ビザが下りていないこと、②具体的な帰国時15期は分からず何とも言えないこと、③被告会社が帰国のための航空券を購入したこと、④ビザが下りれば積極的に連絡し、日本に戻るための航空券を送付すること、⑤原告には何も問題がないことを、原告の質問に答える形で、ベトナム語で回答し、帰国便の航空券の画像を送付した。 (イ) 原告は、前記(ア)と同様の方法で、Cに対し、令和元年6月4日23時2018分、両親が帰国を許可しなかった旨や、帰国と言われても戻ってくる日が分からないので安心できない旨を伝えた。 Cは、原告に対し、同月5日9時28分、同月8日を過ぎて日本に在留すると不法滞在となることを伝え、原告とのやり取りの中で、一時帰国中に給料がもらえるように交渉していることや会社に説明文書を書いても25らうこと等を伝えた。これに対し、原告は、説明文書をベトナム語で書い21 て欲しい旨や、静岡県の現場に迎えに来る際にはベトナム人に通訳して欲しい旨を伝えた。 (ウ) 原告は、令和元年6月5日、上記(イ)のやり取りに続けて、Cに対し、他の人から、一時帰国しないため、被告協同組合が短期滞在のビザを申請できることを聞いた旨を伝えた。これに対し、Cは、原告に対し、短期滞在5のビザは3年間の技能実習を終えた者が特定技能実習を申請するときにするものであり、後は待つしかない旨を伝えた。 (エ) 原告は、令和元年6月5日、上記(ウ)のやり取りを受け、Cに対し、会社に満足いく説明文書を書くように伝えて欲しい旨を伝えた。Cが原告に対して「あなたの満足のいくは何ですか。」と尋ね えた。 (エ) 原告は、令和元年6月5日、上記(ウ)のやり取りを受け、Cに対し、会社に満足いく説明文書を書くように伝えて欲しい旨を伝えた。Cが原告に対して「あなたの満足のいくは何ですか。」と尋ねたところ、原告は「日本に10戻ってこれない場合は賠償してくれるとか。」と答え、Cは「組合も会社作成文書を待っています。あなたが言った事が分かります。」などと答えた。 (オ) 被告会社は、令和元年6月5日13時17分、被告協同組合に対し、本件文書のうち日本語で書かれたものを送付し、Cは原告に対し、これとベトナム語で書かれたものの画像データを送付した。本件文書には、いった15んベトナムに帰国して待機し、在留資格の変更が終了次第、日本に入国するための航空券と書類を送付し、その間の給与については休業補償を60%補償する旨が記載されていた。 これを読んだ原告は、Cに対し、「戻ってこれない場合は会社がどうしますか。」と尋ねたが、Cは「良いことをもらえるように、いい方法を進め20ています。だから皆さんが協力しています。組合は各機関の意見を検討しました。ビザをおりるまでに待ちましょう。」と答え、原告が「何かあったら僕は損です。会社にもっと依頼してほしいです。」と答えると、Cは「あなたが他の希望があれば、直接会社に言ってくれませんか。」などと答え、原告は「はい、両親に相談します。」と答えた。 25これによって、原告とCとのやり取りは終了した。 22 (以上につき、甲25の1,25の2、乙2の2)(5) 在留期間満了後の経過ア 原告は、令和元年6月7日夜、静岡県から奈良県生駒市の被告会社から貸与された部屋に戻った後、同所を離れ、ベトナム人の知人のもとに滞在するようになった。(原告本人)5イ 原告 ア 原告は、令和元年6月7日夜、静岡県から奈良県生駒市の被告会社から貸与された部屋に戻った後、同所を離れ、ベトナム人の知人のもとに滞在するようになった。(原告本人)5イ 原告は、ベトナム人の友人を通じて株式会社上原の経営者らと知り合い、外国人労働者の支援に詳しいG労働組合に問い合わせをしたことを通じて、令和元年9月から、同労働組合の支援を受けるようになった。原告は、同年10月8日までには、同労働組合の指導の下、名古屋出入国在留管理局に出頭し、実習実施者を変更して技能実習を継続することを目指した活動を始め10た。 原告は、同年12月12日、名古屋出入国在留管理局によって、退去強制手続のために収容されたが、令和2年1月31日、仮放免され、同年3月30日、短期滞在の在留資格(在留期間90日間)の在留特別許可を受けた。 ウ 原告は、令和2年6月30日から、株式会社上原を実習実施者とする技能15実習を行うようになった。 (甲27、30、61~64)(6) 被告会社における他の技能実習生の在留期間更新の状況被告会社には、原告の他にもベトナム国籍を有する技能実習生が就労していたところ、そのうち2名は、令和元年7月18日、技能実習2号ロの20在留資格の変更が認められた(丙1,2)。 (7) 技能実習に係る在留資格変更手続が在留期間満了までに完了しない場合における短期滞在への在留資格変更手続について法務省入国管理局(当時の名称)が作成した「入国・在留審査要領」には、技能実習生の責めによらない原因で技能実習が困難となり、在留期間内で新25たな実習先を確保できなかった場合には、転籍活動を行っていることの資料23 の提出を受けて、短期滞在への在留資格変更許可申請を受け付け、特段の疑 で技能実習が困難となり、在留期間内で新25たな実習先を確保できなかった場合には、転籍活動を行っていることの資料23 の提出を受けて、短期滞在への在留資格変更許可申請を受け付け、特段の疑義がない場合、在留期間を90日とする短期滞在への在留資格変更許可を行う旨の記載がある。審査要領の当該記載は、令和元年6月当時は当該文書の形で存在していなかったが、この考え方は、出入国在留管理庁の実務担当者間で共有されていた。(甲57、乙8、9)52 争点1(被告会社の原告に対する不法行為責任の成否)について(1) 本件不法行為2~6についてア 原告に対する在留資格変更が在留期間満了日までに行えなかった原因前記前提事実及び認定事実によれば、原告の技能実習2号ロへの在留資格変更のためには、機構による技能実習計画の認定を受ける必要があるところ、10その審査手続は、被告会社に対して本件是正勧告がされた令和元年5月27日の翌日に止まった旨の連絡がされていること(認定事実(3)ア・イ)や、被告会社が同月31日に本件是正等を行ったところ、他の被告会社の技能実習生には同年7月18日には技能実習2号ロへの在留資格変更が許可されたこと(同(7))が認められる。 15すると、原告に対する技能実習2号ロへの在留資格変更が在留期間満了日である同年6月8日までに行われなかった原因は、被告会社の本件違反及びこれに対する本件是正勧告にあったものと認められる。 イ 被告会社が原告の在留資格変更手続について負う注意義務(ア) 前記認定事実(1)アのとおり、本件雇用契約は、その契約書の表題(「技20能実習のための雇用契約書」)及び内容に照らし、原告が技能実習生、被告会社がその実習実施者となることを想定して締結されたものであ 定事実(1)アのとおり、本件雇用契約は、その契約書の表題(「技20能実習のための雇用契約書」)及び内容に照らし、原告が技能実習生、被告会社がその実習実施者となることを想定して締結されたものであることが認められる。そして、本件雇用契約の雇用期間が3年間と定められていたことに照らすと、原告と被告会社は、原告が技能実習1号及び技能実習2号の在留資格を取得して、合計3年間、本邦に在留して活動することを25想定して、本件雇用契約を締結したものと認めるのが相当である。そして、24 原告が技能実習の在留資格を取得するためには、機構から技能実習計画の認定を受ける必要があるところ、技能実習計画は、技能実習生ではなく、技能実習を行わせようとする法人が、監理団体の指導に基づいて作成し、認定を受けなければならないものである(法8条1項、4項)。 また、被告会社は実習実施者として、「技能実習の適正な実施及び技能5実習生の保護について技能実習を行わせる者としての責任を自覚し(中略)技能実習を行わせる環境の整備に努め」なければならないとの一般的義務を負っている(法5条1項)。技能実習生が「技能実習」の在留資格を取得して本邦において適法に活動することは、技能実習の適正な実施の前提となる事項であり、技能実習を行わせる環境の基本的な構成要素ということ10ができる。 (イ) このような本件雇用契約の目的及び内容並びに技能実習制度の仕組みに照らせば、被告会社は、原告に対し、原告が技能実習1号ロによる在留期間満了までに技能実習2号ロへの在留資格の変更ができるよう、技能実習1号ロによる在留期間満了までに技能実習計画を作成して機構による15認定を受けるべき義務を負っていたというべきである。 被告会社は、平成31年4月23日までに技能実習計画 ができるよう、技能実習1号ロによる在留期間満了までに技能実習計画を作成して機構による15認定を受けるべき義務を負っていたというべきである。 被告会社は、平成31年4月23日までに技能実習計画を作成してこれを機構に対して申請したものの(認定事実(2)イ)、これに対する認定を、原告の技能実習1号ロによる在留期間満了日である令和元年6月8日までに得ることができなかったのであり、その原因は、被告会社の労働基準20法等の違反に対する是正を求める本件是正勧告にあったものと認められるから(前記ア)、上記義務を履行することができなかったものといわざるを得ない。 (ウ) そして、このような技能実習2号ロへの在留資格変更が同1号ロに係る在留期間満了までに行えなかった経緯に加え、前記(ア)でみた本件雇用契25約の目的及び内容並びに技能実習制度の仕組みに照らせば、適法に本邦に25 在留するために在留資格変更申請を行うのは原告であるとしても、被告会社は、原告に対し、本件雇用契約の目的及び内容を実現するため、本邦に在留しながら技能実習2号ロの在留資格変更手続を行うために取り得る手段の有無を調査して、これを原告に対して説明すべき義務を負っていたと認めるのが相当である。 5ウ 本件における検討(ア) これを本件について見ると、出入国在留管理庁の実務担当者で共有されていたとされる「入国・在留審査要領」の記載(前記認定事実(7))の基礎にある考え方や、現に原告が技能実習の継続を目的として短期滞在の在留資格を後に与えられたこと(認定事実(5)イ)に照らせば、技能実習生の責10によらない原因で技能実習の継続が困難となった場合、当該技能実習生は、出入国在留管理庁に対し、技能実習の継続に向けた活動を行っており、これが奏功する可能性があ イ)に照らせば、技能実習生の責10によらない原因で技能実習の継続が困難となった場合、当該技能実習生は、出入国在留管理庁に対し、技能実習の継続に向けた活動を行っており、これが奏功する可能性があることを疎明して、短期滞在への在留資格の変更申請手続をすれば、これが受理されて許可されることが、高度の蓋然性をもって想定されたものと認めるのが相当である。 15被告会社は、令和元年6月8日時点において、既に本件是正等を終えており、被告会社の他の技能実習生は同日から約1か月程度で技能実習2号ロへの在留資格変更を行うことができていること(認定事実(6))に照らすと、原告は、令和元年6月8日当時、近いうちに本件申請に係る技能実習計画の認定を受けられる見込みがあり、これを出入国在留管理庁に対し20て説明することができる状況にあったと認められる。 (イ) そして、このような方法は、本件訴訟係属中における被告協同組合に対する出入国在留管理庁の担当者の説明によっても方法論として考えられるとされているだけでなく(乙8、9)、原告自身も、Cに対し、令和元年6月5日、短期滞在のビザを申請することができる旨を指摘していること25が認められるから(認定事実(4)イ(ウ))、特異なものであったとも認めら26 れない。 (ウ) すると、原告についても、令和元年6月8日当時、被告会社における技能実習2号による在留資格の取得を目的として、同日までに在留資格を短期滞在に変更する手続を申請すること(以下「本件方法」という。)によって、同日以降も適法にわが国に在留することが十分に考えられたものと認5めるのが相当である。 (エ) なお、原告が本件方法をとった場合、在留期間満了日までに短期滞在の在留資格を得られなかったとしても、当該申請に対する処分 に在留することが十分に考えられたものと認5めるのが相当である。 (エ) なお、原告が本件方法をとった場合、在留期間満了日までに短期滞在の在留資格を得られなかったとしても、当該申請に対する処分がされる時又は従前の在留期間の満了の日から2月を経過する日が終了する時のいずれか早い時までの間は、引き続き本邦に在留することができるから(入管10法20条6項)、他の技能実習生の状況(認定事実(6))に照らして技能実習2号への在留資格変更が認められたと考えられる同年7月18日までの間、適法に本邦に在留することができたものと認められる。 (オ) 以上によれば、被告会社は、原告に対し、前記イ(ウ)の義務を負い、具体的には、その一環として、遅くとも令和元年6月8日までに、本件方法に15よる在留資格変更手続を行うことができる旨を説明すべきであったのにこれを説明しなかったものであり(以下「本件説明義務違反1」という。)、と認められるところ、これを怠ったといわざるを得ない。 これは、民法上の不法行為に当たり、被告会社は、原告に対し、これによって生じた損害の賠償責任を負うものと認められる(これは、本件不法20行為5に当たる。)。 なお、本件不法行為4は、結局のところ本件不法行為5と同旨をいうものであり、本件不法行為2、3及び6は、これによって生ずる損害額が本件説明義務違反1によって生ずる損害額を上回るものとは認められないから、判断を要しない。 25(2) 本件不法行為1について27 ア 前記認定事実(2)によれば、被告協同組合は、原告の在留期間満了日の約6か月前である平成30年12月19日には、本件試験の受検申請手続を終えていたが、試験実施機関の都合によって実技試験が実施されず、被告協同組合が本件試験の合格を証明す 合は、原告の在留期間満了日の約6か月前である平成30年12月19日には、本件試験の受検申請手続を終えていたが、試験実施機関の都合によって実技試験が実施されず、被告協同組合が本件試験の合格を証明する文書を入手することができたのは令和元年5月10日であり、合格証書が発行されたのは同月29日であったことが5認められる。 すると、仮に被告会社が、原告が本件申請をすべきであった期限と主張する平成31年3月8日までにこれをしていたとしても、その審査に関する必要資料が揃ったのは早くとも同年5月10日以降であったことが認められ、機構による審査に必要な期間に照らすと、本件違反が問題となった同月2710日頃以前までに、本件申請に係る実習計画が認定されていたかは明らかでなく、原告の在留期間がこれによって満了することを余儀なくされたものとは認められない。 イ 以上によれば、被告会社が、原告に対し、本件申請を遅滞したことによって生じた損害を賠償すべきものと認めることはできない。 15(3) 本件不法行為7についてア 原告の技能実習1号の在留期間は令和元年6月8日に満了したが、前記のとおり、同日時点において、原告は、近いうちに本件申請に係る技能実習計画の認定を受けられる見込みがあり、本件方法等によって、被告会社を実習実施者とする技能実習2号を行うことができる見込みもあったことが認め20られる。そして、原告が、同日までに、被告会社及び被告協同組合に対し、実習先を変更して技能実習を継続する意向を示していたとも認められない。 イ すると、被告会社が、原告に対し、令和元年6月8日までの間に、実習先を変更することができることを説明すべき義務があったとは認められず、これをしなかったことが不法行為に当たるとは認められない。 25 と、被告会社が、原告に対し、令和元年6月8日までの間に、実習先を変更することができることを説明すべき義務があったとは認められず、これをしなかったことが不法行為に当たるとは認められない。 25(4) 被告会社の主張に対する検討28 ア(ア) 被告会社は、在留資格の変更等は、法務大臣の自由な裁量に委ねられ、その申請は外国人本人が行うものであるから、被告会社に過失はなく、法的責任を負う立場にない旨を主張する。 (イ) しかし、被告会社が原告を技能実習生と受け入れ、期間を3年間と定めたといった本件雇用契約の目的及び内容並びに技能実習制度の仕組みに5照らせば、在留資格の変更手続それ自体を行うのは原告であるとしても、実習実施者である被告会社は、原告に対し、本邦に在留して3年間にわたって就労するために取り得る手続を調査・説明する義務を負い、その手続を行うために必要な書類を作成するなどの環境整備を行わなければならなかったと認められることは前示のとおりである。 10実習実施者である被告会社が、このような調査・説明及び申請環境の提供が行ったのに、在留資格変更手続の申請者である原告がこれを行わなかったり、出入国在留管理庁の裁量的判断によってこれが認められなかったりした場合は、被告会社は行うべき措置を講じたものといえ、原告に対して不法行為責任を負わないと考えられるが、このことは被告会社が前記の15調査・説明及び申請環境の提供義務を負うことを妨げるものではなく、令和元年6月8日時点において本件説明義務違反1があったとの前記判断を左右するものではない。 (ウ) よって、被告会社の前記(ア)の主張を検討しても、前記判断を覆すべきものとはいえない。 20イ(ア) 被告会社は、在留資格変更 ったとの前記判断を左右するものではない。 (ウ) よって、被告会社の前記(ア)の主張を検討しても、前記判断を覆すべきものとはいえない。 20イ(ア) 被告会社は、在留資格変更に向けた手続について、被告協同組合に全面的に委任しており、原告の在留期間満了日までに本件申請に対する認定が受けられなかったこと等の事態に対応すべきであったのは、一次的には原告、二次的には被告協同組合であった旨を主張する。 (イ) しかし、本件において、原告は、本件試験を受検して合格するなど、在25留資格変更に向けて行うべき事項は行っていたといえる。 29 また、原告との間で本件雇用契約を締結し、実習実施者として技能実習計画を作成して認定を受けるべき立場にあったのは被告会社であるから、被告会社が被告協同組合に対して、在籍する技能実習生に関する在留資格変更手続を委任していたとしても、原告との関係において、本件説明義務違反1があるとの前記判断を左右するものではない。 5(ウ) よって、被告会社の前記(ア)の主張を検討しても、前記判断を覆すべきものとはいえない。 3 争点3(被告協同組合の原告に対する不法行為責任の成否)について(1) 本件不法行為3~6についてア 前記認定事実((1)~(4))によれば、被告協同組合は、単に原告の技能実10習について監理団体の立場にあったというだけでなく、①被告会社から、原告の在留資格変更に向けた手続の委託を受けて、本件試験の受検手続や機構に対する技能実習計画の申請手続を行い、原告の在留資格変更に向けた活動を行っていたこと、②当該申請手続の審査が止まった際も、機構との間で面談を行い、Fと相談して、原告をいったん帰国させるとの判断に関与するな15ど、原告の在留 行い、原告の在留資格変更に向けた活動を行っていたこと、②当該申請手続の審査が止まった際も、機構との間で面談を行い、Fと相談して、原告をいったん帰国させるとの判断に関与するな15ど、原告の在留資格変更に支障が生じた際の対応策の策定に当たって主体的に活動していたこと及び③原告を含むベトナム人技能実習生にCの連絡先を伝えて通訳や相談に応じ、原告の在留資格変更についても、原告から相談を受けて、帰国すべき旨を応答していたことが認められる。 また、被告協同組合は、原告を技能実習生とする技能実習について監理団20体の立場にあったところ、監理団体は一般に「技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護について重要な役割を果たすものであることを自覚し、実習監理の責任を適切に果たす」義務を負うものとされているところ(法5条2項)、技能実習生が「技能実習」の在留資格を取得して本邦において適法に活動することが技能実習の適正な実施の前提となることは前示のとおりであ25る。 30 イ このような原告の技能実習2号ロへの在留資格変更に向けた関与状況等に照らせば、一般に監理団体がその担当する技能実習生に対して在留資格の取得及び変更の方法について調査・説明義務を負うか否かはともかく、本件においては、被告協同組合も、原告に対し、本邦に在留しながら技能実習2号の在留資格変更手続を行うために取り得る手段の有無を調査して、これを5原告に対して説明すべき義務を負っていたというべきである。 そして、前記2(1)ウ(イ)で説示したところによれば、被告協同組合も、被告会社と共に、原告に対し、遅くとも令和元年6月8日までに、本件方法による在留資格変更手続を行うことができる旨を説明すべきであったのにこれを説明しなかった(以下「本件説明義務違反2」という。) 、被告会社と共に、原告に対し、遅くとも令和元年6月8日までに、本件方法による在留資格変更手続を行うことができる旨を説明すべきであったのにこれを説明しなかった(以下「本件説明義務違反2」という。)といわざるを得10ず、これは民法上の不法行為に当たり、被告協同組合は、原告に対し、これによって生じた損害の賠償責任を負うものと認められる(これは、本件不法行為5に当たる。)。 なお、本件不法行為4は本件不法行為5と同旨をいうものであり、本件不法行為3及び6は、これによって生ずる損害額が本件説明義務違反1によっ15て生ずる損害額を上回るものとは認められないから、判断を要しない。 (2) 被告協同組合の主張に対する検討ア 機構及び大阪出入国在留管理局の指示について(ア) 被告協同組合は、被告担当者が、機構や大阪出入国在留管理局に対して問い合わせをしたところ、いったん帰国させるように指導され、これに従20った被告協同組合に過失はなく又は違法性はない旨を主張し、Bは前記指導があった旨を供述する(証人B(7~8頁)、乙11)。 (イ) しかし、Bが、令和元年5月28日、機構の大阪事務所を訪問し、本件申請に対する審査が止まったことについて機構担当者と協議をしたことは認められるが、機構は、当庁の調査嘱託に対し、被告協同組合に対して、25同日、出入国在留管理庁から審査を保留するように連絡を受けており、今31 後のことは出入国在留管理庁に問い合わせるようにとの説明をした旨を回答しており(本件調査嘱託結果)、機構が、同日、Bに対し、原告をいったん帰国させるように指導した事実を認めることはできない。また、Bの証言を検討しても、同人が、機構の本部又は大阪事務所に対して、本件是正等がされた後、その旨を伝えた上で 、同日、Bに対し、原告をいったん帰国させるように指導した事実を認めることはできない。また、Bの証言を検討しても、同人が、機構の本部又は大阪事務所に対して、本件是正等がされた後、その旨を伝えた上で今後の対応を相談したか否かは判然5とせず、被告協同組合が、機構に対して、本件是正等がされた後にその旨を報告したにもかかわらず、原告をいったん帰国させるように指導されたことを認めるに足りる的確な証拠はなく、これを認めることはできない。 (ウ) また、Bは、大阪出入国在留管理局に対しても電話で照会した旨を供述する(証人B(8頁))。 10しかし、Bは大阪出入国在留管理局の担当者に対して、被告会社が労働基準法等の違反に対して本件是正等をした旨は説明していなかったというのであるから(証人B(19頁))、原告について技能実習1号ロの在留期間の満了日が近づいているが技能実習2号ロに係る技能実習計画の認定が受けられていないとの事情のみを伝えられた出入国在留管理局の担15当者としては、技能実習計画の認定が行われることが見込まれず、在留資格変更が許可される見込みがない以上、当該外国人を帰国させるほかないとの一般的説明をしたとしても当然であったと考えられる。すると、仮にBが大阪出入国在留管理局に対して電話で照会し、同局の担当者が原告を帰国させるように指導したとの事実があったとしても、被告協同組合がこ20れに従ったことによって過失が否定されるものではなく、本件説明義務違反2を免れるものとはいえない。 イ 短期滞在への在留資格変更が当然に認められるものではない点について(ア) 被告協同組合は、短期滞在への在留資格変更は「人道上の真にやむをえない事情又はこれに相当する特別な事情がある場合」に限定され、当然に25認められるもので ものではない点について(ア) 被告協同組合は、短期滞在への在留資格変更は「人道上の真にやむをえない事情又はこれに相当する特別な事情がある場合」に限定され、当然に25認められるものではない旨を主張する。 32 (イ) しかし、「入国・在留審査要領」の記載(前記認定事実(7))は、直接は技能実習1号と同一の実習実施者による技能実習を継続することができなくなった場合を想定したものであるが、その基礎にある考え方は、技能実習生の責めによらない原因で、技能実習1号の在留期間満了までに、当該実習実施者に係る同2号への在留資格変更に係る要件を満たすことが5できなかったものの、当該技能実習生がこれを目指した活動をしており、その要件を満たす見込みがある場合にも当てはまると考えられる。そして前記記載の考え方自体は、出入国在留管理庁の実務者間で共有されていたことが認められ(前記認定事実(7))、前記審査要領によれば、「特段の疑義がない限り」、短期滞在への在留資格変更を許可すべきものとされている10のであるから、本件においても、前記のとおり、短期滞在への在留資格変更申請が受理されて認められることが、高度の蓋然性をもって予想されたと認めるのが相当である。 (ウ) すると、被告協同組合の前記主張を踏まえて検討しても、前記(1)の判断を覆すべきものとは認められない。 15(3) 本件不法行為1及び7について前記2(2)(3)で説示したところによれば、被告協同組合についても、原告に対し、本件申請を遅滞したことによって生じた損害を賠償すべきものと認めることはできず、実習先を変更することができることを説明しなかったことが不法行為に当たるとも認められない。 204 争点4(損害の有無及び額)について 生じた損害を賠償すべきものと認めることはできず、実習先を変更することができることを説明しなかったことが不法行為に当たるとも認められない。 204 争点4(損害の有無及び額)について(1) 就労できなかったことによる損害 272万6940円ア 検討(ア) 前記2及び3によれば、被告らは、原告に対し、本件説明義務違反1及び2によって生じた損害を賠償すべき義務を負う(民法709条)。 25原告は、在留期間満了後も本邦に在留することを希望していたのである33 から(認定事実(4)イ(ア)~(オ)及び(5))、被告らから本件方法によることができる旨の説明を受けていれば、これを受け入れて短期滞在への在留資格変更申請手続を行っていたものと認めるのが相当である。 そして、被告会社の他の従業員の状況に照らせば、原告に対しても、遅くとも令和元年7月18日までには、技能実習2号ロへの在留資格の変更5が行われたものと認めるのが相当であり、原告は、入管法20条6項所定の期間内に、被告会社における技能実習を再開することができたと認められる。 (イ) 前記認定事実(5)によれば、原告は、令和元年6月9日から株式会社上原で技能実習を再開した令和2年6月30日までの間、就労することがで10きなかったことが認められ、この間、原告が他に収入を得ていたことを認めるに足りる的確な証拠はない。 (ウ) 他方、原告は、令和2年6月30日以降は、株式会社上原における就労を開始しているのであって、その賃金が本件雇用契約上の時給(1066. 66円)を下回っているとは認められないから、同日以降については、原15告に、就労できなかったことによる損害が生じているとは認められない。 (エ) 以上によれば、原告は、本件説明 給(1066. 66円)を下回っているとは認められないから、同日以降については、原15告に、就労できなかったことによる損害が生じているとは認められない。 (エ) 以上によれば、原告は、本件説明義務違反1及び2により、令和元年6月9日から令和2年6月29日(就労再開日の前日)までの387日間、被告会社において就労できなかった損害を被ったものと認められる。 前記認定事実(1)エのとおり、原告は、被告会社において、平成30年1202月1日から令和元年5月31日までの間の182日間に合計128万2437円の給与の支払を受けていたことが認められるから、上記損害の額は、次のとおり272万6940円(1円未満切り捨て)となる。 (計算式)128 万2437 円÷182 日間×387 日間≒272 万6940 円イ 被告らの主張に対する検討25(ア) これに対し、被告らは、原告がいったん帰国して、本件申請に対する認34 定を受けて在留資格変更手続が完了した後、再び本邦に入国する方法も一つの合理的方法であり、被告会社は、往復の航空券の費用を負担し、60%の休業補償を支払う旨の本件文書を作成して、原告に対して提示するなどしているから、被告会社らは十分な説明を尽くしており、原告が前記ア(エ)の期間就労することができなかったとしても、それは原告の判断によるも5のである旨を主張する。 (イ) しかし、本件説明義務違反1及び2がなければ、原告が前記ア(エ)の期間もベトナムに帰国することなく就労することができたと認められることは前記ア(ア)のとおりであり、このことはいったん帰国する方法が一つの合理的方法であったことなどの前記(ア)の事情によって左右されるもの10ではない。 (ウ) また、被告 められることは前記ア(ア)のとおりであり、このことはいったん帰国する方法が一つの合理的方法であったことなどの前記(ア)の事情によって左右されるもの ではない。 (ウ) また、被告らによる原告に対する説明状況(認定事実(4))を見ても、①原告が、在留期間満了までに技能実習2号への在留資格変更に伴う在留期間の更新ができない旨を知らされたのは、令和元年6月8日(土曜日)の4日前である同月4日のことである上、②更新が間に合わなかったことに ついて考えられる原因として、被告会社が労働基準監督署から監査を受けた旨は説明されているものの、被告会社が労働基準監督署に対して本件是正等をした旨を報告したことは伝えられていないから、原告としては、被告会社における技能実習が継続できるのかに不安を覚えたとしてもやむを得なかったというべきである。③原告が要望した、仮に本邦に再び入国 して就労することができなかった場合における損害賠償の有無及び内容についても、特に説明がされていない。 これら①~③の点に加え、④原告は、令和元年6月4日、いったん帰国しなければならない旨を両親に相談したところ帰国を許可されなかったというのであり(認定事実(4)イ(イ))、急にベトナムに帰国しても、当面の 生活の基盤があったか明らかでないことや、⑤被告会社から60%の賃金 を支払う旨の休業補償の提案はあったものの(認定事実(4)イ(オ))、ベトナム帰国後の具体的な支払方法の説明がその際にされているとは認められず、これは従前から約40%の減収を伴うものであったことといった事情にも照らせば、原告が、被告らによる説明に対して、これに従わない選択をしたとしても無理からぬ面があったといえ、これが原告独自の不合理 な判断であったとい の減収を伴うものであったことといった事情にも照らせば、原告が、被告らによる説明に対して、これに従わない選択をしたとしても無理からぬ面があったといえ、これが原告独自の不合理5な判断であったということはできない。 そして、被告らが原告に対し、令和元年6月8日以降、被告会社を実習実施者とする技能実習を実施し得る環境を整えて、その旨を原告に対して説明したといった事実があるとはうかがわれないことや、原告は、同年9月以降は、適法な在留資格を取得して就労するための取り組みを始めてい10ることにも照らすと(前記認定事実(5)イ)、原告が、より早期に適法に就労する状態を整えることができたとも認められない。 (エ) 以上によれば、原告が自らの判断でいったん帰国する方法を選択しなかったとしても、このことによって、前記アの損害と本件説明義務違反1及び2との間の相当因果関係が否定されるものとはいえない。 15(2) 慰謝料 30万円本件説明義務違反1及び2により、原告は、令和元年6月9日から令和2年3月30日(短期滞在の在留資格変更日)までの間、在留資格を失ったまま本邦に在留する不安定な立場に置かれ、実際に50日間、収容されたことが認められる(認定事実(5))。 20これによって原告に生じた精神的苦痛に対する慰謝料は、30万円と認めるのが相当である。 (3) 弁護士費用 30万円本件の内容及び経過等に照らせば、原告に生じた弁護士費用は、前記(1)及び(2)の合計額の約10%である30万円の限度で、相当因果関係のある損害25と認めるのが相当である。 36 5 小括(1) 以上によれば、被告会社は原告に対し、不法行為に基づき、332万6940円の損害賠償義務及びこれに対する不法行為日である令和元年 25と認めるのが相当である。 36 5 小括(1) 以上によれば、被告会社は原告に対し、不法行為に基づき、332万6940円の損害賠償義務及びこれに対する不法行為日である令和元年6月8日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の法定利率である年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。 5原告の被告会社に対する民法628条に基づく請求は、その主たる請求について、本件雇用契約が終了して就労することができなかった損害が、本件の事情の下では、前記4(1)と変わるところがあるとは認められず、他の損害(慰謝料及び弁護士費用)についても認められるとはいえないから、認容額が不法行為に基づく請求による額を上回るものとは認められず、判断を要しない。 10(2) また、被告協同組合も、原告に対し、不法行為に基づき、前記(1)と同様の支払義務を負うと認められる。 (3) 前記認定事実(2)~(4)によれば、原告の在留資格変更に関する事務は被告会社が被告協同組合に委託して行われ、原告に対していったんベトナムに帰国するように説明することも、Fと被告協同組合の担当者が相談して決めたことが15認められるから、本件説明義務違反1及び2は、被告会社と被告協同組合において関連共同して行われたものであり、共同不法行為に当たるものと認めるのが相当である。 6 結論以上によれば、原告の被告らに対する請求は、主文第1項の限度で理由があり、20その余は理由がない。 被告会社の仮執行免脱宣言の申立ては相当でないから、これを付さないこととする。 よって、主文のとおり、判決する。 25大阪地方裁判所第5民事部37 裁判官 岩 﨑 雄 亮 38 (別紙)本 れを付さないこととする。 よって、主文のとおり、判決する。 25大阪地方裁判所第5民事部37 裁判官 岩 﨑 雄 亮 38 (別紙)本件文書(日本語)の記載現在、F株式会社の技能実習生の在留資格の更新が止まっています。 原告さんの在留資格が2019年6月8日の為、在留資格の更新が間に合いません。 5外国人技能実習機構に相談すると、在留期間が切れたらオーバーステイ(不法滞在)になり一時帰国をさせて下さいと指示されました。 その為、2019年6月8日の航空券を段取りし、一旦ベトナムで待機して下さい。 在留資格が下り次第、日本に入国の航空券と在留資格証を送り出し機関に送りま10す。 送り出し機関の指示に従い直ちに会社に戻ってください。 その間の給与について会社が休業補償を60%補償します。 以 上15

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る