昭和55(行ウ)11 所得税更正処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和56年11月20日 京都地方裁判所 租税
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【DRY-RUN】○ 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実 第一 当事者の求めた裁判 一 請求の趣旨 1 被告が原告の昭和五三年分所得税について昭和五四年一〇月二日付でなした更 正処分及

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判決文本文7,660 文字)

○ 主文原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実第一当事者の求めた裁判一請求の趣旨 1 被告が原告の昭和五三年分所得税について昭和五四年一〇月二日付でなした更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分(ただし、昭和五六年三月二五日付再更正処分及び過少申告加算税の賦課変更決定処分により一部減額後のもの)を取消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 二請求の趣旨に対する答弁主文と同旨第二当事者の主張一請求原因 1 原告は、昭和四八年一一月一日訴外A所有の京都市<地名略>、宅地六一・三二平方メートル及び同所同番地上、木造瓦葺二階建居宅一棟、床面積合計七四・〇八平方メートル(以下「本件土地建物」という。)を競落により取得し、これを昭和五三年一〇月四日訴外Bに対し代金二八〇〇万円で売渡した。 そして、原告は、昭和五四年三月一二日被告に対し、原告の昭和五三年分所得税の確定申告を本件土地建物譲渡にかかる短期譲渡所得につき、租税特別措置法(昭和五四年法律第一五号による改正前のもの、以下「措置法」という。)三五条一項により特別控除の適用を受けるものとして、別表「確定申告」欄記載のとおり申告し、さらに同年六月六日被告に対し別表「(訂正)申告」欄記載のとおり訂正申告をした。 2 これに対し、被告は、昭和五四年一〇月二日右短期譲渡所得につき措置法三五条一項所定の特別控除の適用を否認して、別表「更正処分等」欄記載のとおり更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分をした。 そこで、原告は、右各処分を不服として昭和五四年一一月九日被告に対し異議申立をしたところ、被告は、同年一二月二七日付で右申立を棄却する旨の決定をした。 そこで、原告はさらに昭和五五年二月一三日国税不服審判所長に対し審査請求をしたところ、同所長は同年一〇月八日右審査請求を棄却 をしたところ、被告は、同年一二月二七日付で右申立を棄却する旨の決定をした。 そこで、原告はさらに昭和五五年二月一三日国税不服審判所長に対し審査請求をしたところ、同所長は同年一〇月八日右審査請求を棄却する旨の裁決をし、右裁決書はその頃原告に送達された。 その後被告は昭和五六年三月二五日付で別表「再更正処分等」欄記載のとおり税額を一部減額する旨の再更正処分及び過少申告加算税の賦課変更決定処分をした(以下、右再更正処分等により一部減額後の前記昭和五四年一〇月二日付更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を「本件処分」という。)。 3 しかしながら、原告が譲渡した本件土地建物は措置法三五条一項にいう「居住の用に供している家屋及びその敷地の用に供している土地」に該当するから、右規定の適用がないとしてなされた本件処分は違法である。 4 よつて原告は被告に対し、本件処分の取消を求める。 二請求原因に対する認否請求原因1、2の事実は認め、同3の主張は争う。 三被告の主張 1 原告の本件土地建物譲渡にかかる短期譲渡所得金額は、譲渡収入金額二八〇〇万円から、取得費五九六万一四〇〇円及び譲渡費用一万一九〇〇円を控除した二二〇二万六七〇〇円である。 2 措置法三五条一項の適用の有無について(一) (1)原告の母訴外Cは、訴外Aからその所有の本件建物を賃借し、原告とともにこれに居住していたが、原告は昭和四七年四月二〇日訴外Dと婚姻して原告のみ本件建物から京都市<地名略>に転居した。なお、Dは、同所の宅地及び同所所在の建物(以下「<地名略>の土地建物」という。)を所有していた。 (2) Cは、その後も本件建物に居住しており、原告が昭和四八年一一月一日本件土地建物を競落により取得した後も引続いて単身でこれに居住していた。 (3) 原告は、昭和五三年一〇月四日訴外Bに対し本 。 (2) Cは、その後も本件建物に居住しており、原告が昭和四八年一一月一日本件土地建物を競落により取得した後も引続いて単身でこれに居住していた。 (3) 原告は、昭和五三年一〇月四日訴外Bに対し本件土地建物を代金二八〇〇万円で売却し、一方、Dも同年一〇月六日<地名略>の土地建物を売却した。そして、原告とDは、同日<地名略>(原告肩書住所地)所在の土地建物を買受けて同月一九日所有権移転登記を経由し、その頃原告はD、Cらとともに右建物に転居した。 (二) ところで、措置法三五条一項に規定する「居住の用に供している家屋」とは、その者が実際に居住の用に供している家屋、すなわち、生活の拠点として利用している家屋(一時的な利用を目的とする家屋を除く。)をいうところ、右のとおり、昭和四七年四月以降売却に至るまでの間、本件建物には、Cのみが居住していたにすぎず、その間原告の生活の本拠は<地名略>の土地建物にあつたのであるから、本件土地建物を措置法三五条一項にいう原告の居住の用に供していたということはできない。 (三) (1)右のとおり、本来措置法三五条一項の居住用資産とは、当該個人が実際に居住の用に供している家屋を指すものであるが、居住用資産に該当しない場合であつても、右規定の趣旨に鑑み、扶養親族がその居住の用に供している家屋についても次の要件をみたす場合は、これを措置法三五条一項の「居住の用に供している家屋」に該当するものとして取扱うことができることとされている(措置法通達三五-三、以下「本件通達」という。)。 (1) 従来その所有者としてその居住の用に供していた家屋であること(2) 居住の用に供さなくなつた日以後引続いてその扶養している親族の居住の用に供していること(2) しかしながら、原告は前記のとおり昭和四七年四月以降<地名略>の土地建物に ていた家屋であること(2) 居住の用に供さなくなつた日以後引続いてその扶養している親族の居住の用に供していること(2) しかしながら、原告は前記のとおり昭和四七年四月以降<地名略>の土地建物に居住し、同所を生活の本拠としていたもので、仮にDが経営していたスナツク「アスコツト」を閉鎖、廃業した昭和四八年五月末まで、本件建物を利用していたとしても、おそくとも同年七月以降は、本件建物及び<地名略>の建物のガス、水道の使用量からみても、原告が本件建物を生活の本拠としていたものでないことは明らかであり、一方、原告が本件建物を取得したのは昭和四八年一一月一日であつて、原告が所有者として本件建物を居住の用に供していたことはないから、本件通達の基準によつても、「居住の用に供していた家屋」に該当するものとして取扱うことはできない。 (3) また、Cが本件通達のいう原告の扶養親族に該当するか否かの点についても、所得税法施行令二一八条一項によれば、二人以上の居住者がある場合の扶養親族の所属は、原則として居住者の選択によつて申告書等に記載されたところによるとされているが、Cについては、Dの昭和五〇年分以降における確定申告書に、その扶養親族として記載されており、原告の扶養親族と認めることはできない(もつとも、Dは昭和五三年分の所得税の修正申告書を、原告も同年分の所得税の訂正申告書をそれぞれ提出して、CをDから原告の扶養親族として所属の変更をしているが、扶養親族の所属の変更は、その年分の所得税法一一二条一項所定の申請書、確定申告書又は同法一九四条一項、二項、もしくは同法一九五条一項、二項の規定による申告書に記載することによりなすことができるのであつて、本件では右申告書等に基づき所属の変更がなされたものでなく不適法である。)。 3 以上のとおり、本件土地建物は措 法一九五条一項、二項の規定による申告書に記載することによりなすことができるのであつて、本件では右申告書等に基づき所属の変更がなされたものでなく不適法である。)。 3 以上のとおり、本件土地建物は措置法三五条一項の「居住の用に供する家屋」及び「その敷地の用に供している土地」に該当せず、また、本件通達の基準にも該らないから、右各規定の適用を否定してなした被告の本件処分は適法である。 四被告の主張に対する認否 1 被告の主張1の事実は認める。 2 同2の(一)の各事実は認める。 3 同2の(二)の主張は争う。 4 同2の(三)について、(1)の本件通達の存在は認め、(2)、(3)の主張は争う。 5 同3の主張は争う。 五原告の反論 1 措置法三五条一項に規定する「個人がその居住の用に供している」場合とは、その個人が所有し、自ら居住の用に供している場合のほか、以下に述べる理由から、その個人と消費経済単位を同じくし、その個人が扶養している者の居住の用に供している場合も含むと解すべきである。 (一) 措置法三五条一項は居住の用に供している家屋を買い替えようとする者が多額の譲渡所得税の負担に煩わされることなくその生活の規模、程度に相応した住居を得ることができるようにすることを目的としている。 一方、夫婦、親子のごとき家族は現代社会における生活単位であり、経済的にみれば、同居して生活していると否とを問わず、一の消費経済単位を構成しており、その居住の用に供される家屋は一の消費経済単位を構成する家族の共通の場である。 してみれば、居住用家屋を所有している者が自らその家屋に居住していなくとも、その扶養親族をこれに居住させているときは、少なくとも自己及び扶養親族の共同生活の場として居住用家屋を買い替える場合には、措置法三五条一項の適用を認めるべきである。 (二) に居住していなくとも、その扶養親族をこれに居住させているときは、少なくとも自己及び扶養親族の共同生活の場として居住用家屋を買い替える場合には、措置法三五条一項の適用を認めるべきである。 (二) 被告は、扶養親族がその居住の用に供している家屋について右規定を適用する場合には、本件通達の(1)(2)の要件が必要である旨主張するけれども、家屋の所有者がその居住の用に供していてそこを去つた後に扶養親族を居住させている場合と、当初から扶養親族だけを居住させるために所有している場合とを区別して、その取扱を異にすべき合理的根拠はない。 2 原告がCを扶養していた点について(一) 原告はCの扶養義務者であり、Cは無職で収入がなかつたため、原告がその所有にかかる本件土地建物を無償でCに使用させてその居住の用に供し、また、原告の収入及び夫であるDから受取る生活費のうちから、毎月三万円をCに送金する方法により同人を扶養していた。 (二) 被告は、Cにつき、法定の申告書等により申告されていないため原告の扶養親族ではないと主張するけれども、被告主張の諸規定は税法上の処理の便宜のために定められたものにすぎず、前記のような措置法三五条一項の立法趣旨等に照らせば、扶養親族であるか否かは、Cが原告と同一の消費経済単位を構成しており、原告によつて扶養されていたという実態に即して決せられるべきである。 第三証拠(省略)○ 理由一請求原因1、2の事実及び被告の主張1の事実は当事者間に争いがない。 二そこで、措置法三五条一項の適用の有無につき検討する。 1 Cが訴外Aから本件建物を賃借し原告とともにこれに居住していたが、原告が昭和四七年四月二〇日Dと婚姻するに及び、原告のみ、本件建物からD所有の<地名略>の建物へ転居し、以後本件建物にはCが単身居住していたこと、原告が昭和 を賃借し原告とともにこれに居住していたが、原告が昭和四七年四月二〇日Dと婚姻するに及び、原告のみ、本件建物からD所有の<地名略>の建物へ転居し、以後本件建物にはCが単身居住していたこと、原告が昭和四八年一一月一日訴外A所有の本件土地建物を競落により取得したが、その後もCが単独でこれに引続き居住していたこと、原告が昭和五三年一〇月四日訴外Bに対し、本件土地建物を売却し、一方、Dも同年一〇月六日<地名略>の土地建物を売却したこと、原告とDが同日原告肩書住所地所在の土地建物を買い受けて同月一九日所有権移転登記を経由し、その頃原告がD、Cらとともに右建物へ転居したこと(被告の主張2の(一)、(1)ないし(3)の事実)は、当事者間に争いがない。 もつとも、成立に争いのない乙第一八号証、第二九号証と原告本人尋問の結果を総合すれば、原告はDと婚姻して<地名略>の建物へ転居した後も、本件建物に原告のタンスや衣裳箱を置いており、本件建物に近い<地名略>でDが経営していたスナツク「アスコツト」を手伝い、同店が廃業した昭和四八年五月末頃までは本件建物をよく宿泊に利用し、その後も本件土地建物を売却するまでの間、本件建物へは原告の荷物が置いてあつたことや、原告の母Cが居住していたことなどからしばしば帰つていたこと、原告と長女Eの住民登録が同女を幼稚園に入園させる便宜のため昭和五三年七月二〇日付で<地名略>の建物から本件建物へ移され、さらに同年一〇月九日付で原告肩書住所地へ移されていることが認められるけれども、他方、成立に争いのない乙第二〇ないし第二七号証によると、本件建物の昭和四八年七月以降のガス、水道の使用量が<地名略>の建物のそれと比較して著しく少ないことが認められ、これらの事実と前記争いのない事実をあわせて考慮すれば、原告は本件土地建物を取得した昭和四 建物の昭和四八年七月以降のガス、水道の使用量が<地名略>の建物のそれと比較して著しく少ないことが認められ、これらの事実と前記争いのない事実をあわせて考慮すれば、原告は本件土地建物を取得した昭和四八年一一月一日からこれを譲渡した昭和五三年一〇月四日までの間、本件建物には居住しておらず本件建物を生活の本拠として居住していたのはCのみであつて、原告の生活の本拠は、Dとの婚姻以後引続いて<地名略>の建物にあつたものというべく(このことは原告も否定するところではない。)、原告が右の期間中本件建物を生活の本拠として居住の用に供していたものでないことは明らかである。 2 原告が本件土地建物を取得して以来、これに所有者として居住したことがないことは右認定のとおりである。 ところで、被告は、その主張2の(三)、(1)において、措置法の取扱いに関する本件通達によれば、(1)従来その所有者としてその居住の用に供していた家屋であること、(2)居住の用に供さなくなつた日以後引続いてその扶養している親族の居住の用に供していることを要件として、措置法三五条一項の居住用資産に該るものとして扱うことができるとされているが本件通達の基準によつても、原告が所有者として本件土地建物に居住した事実が存在しない以上、本件土地建物を原告の居住用資産として扱うことはできない旨主張し、これに対し、原告は、措置法三五条一項について本件通達のような取扱いが可能であるのは、居住用資産の買い替えの際、譲渡所得税の負担に煩わされることのないようにとの立法趣旨を重視し、一の消費経済単位を構成する者の居住用資産にもその趣旨を及ぼした結果であつて、そうであれば、一の消費経済単位を構成する者、とりわけ本件における扶養親族のごとき者がその居住の用に供していたという点こそ重要であり、本件通達のように原告 用資産にもその趣旨を及ぼした結果であつて、そうであれば、一の消費経済単位を構成する者、とりわけ本件における扶養親族のごとき者がその居住の用に供していたという点こそ重要であり、本件通達のように原告が所有者として居住の用に供していたことを動かし難い要件として、当初から扶養親族を居住させるために所有する場合と区別して取扱う合理的根拠は存在しないと主張する(原告の反論1)。 そこで、この点につき判断するに、措置法三五条一項に定める居住用資産の譲渡所得に対する特別控除の制度は、居住用資産を譲渡する場合には新たな居住用資産を購入することが通常であるところから、旧資産の譲渡所得への課税免除により新資産の購入に際し、旧資産と同程度、同規模のものを購入できるように保障するという趣旨で設けられたものであるということができ右規定の趣旨からすれば、措置法三五条一項の「個人がその居住の用に供している家屋」の解釈として、その個人が所有者として居住していたことがあり、当人が居住しなくなつた後もその扶養親族によつて居住の用に供される状態が継続されるならば、現に譲渡の時点まで本人の居住状態が継続されなくても、これに該当するという本件通達の運用は、これを是認することができる。 しかしながら、措置法三五条一項は租税負担の原則の特例を定めるものである以上、これを安易に拡大して解釈することのできないことは、言うまでもないことであつて、当該資産を取得して以来、所有者として当該資産に居住したことが全くない者を、「個人がその居住の用に供している」という法文の解釈として導くことは、文言上無理があると言わなくてはならず、本件通達のいう、所有者として居住していたこと、という要件は、本条項の解釈の限界を示す要件としてこれを認めることができる。 また、仮に原告の主張するように、一の消費経済単 があると言わなくてはならず、本件通達のいう、所有者として居住していたこと、という要件は、本条項の解釈の限界を示す要件としてこれを認めることができる。 また、仮に原告の主張するように、一の消費経済単位を構成する者の居住の用に供される財産という観点を重視して本条項を解釈するならば、右に述べたごとく法文から著しく離れた解釈であるのみならず、その消費経済単位に含まれる者の範囲が必ずしも明確でなく、夫婦、親子などの扶養親族に限られず、さらに拡張される可能性も十分認められるのであつて、特別控除の範囲を不明確にするものと言わざるをえず、かような点からも原告の主張は採用することができない。 右のとおりであるから、原告が所有権取得後、原告自身居住することなく、Cのみの居住の用に供されていた本件土地建物については、本件通達の基準にも該当しないから本件土地建物の譲渡所得について居住用資産としての特別控除の適用がないとする被告の主張は正当というべく、原告の主張は理由がない。 3 従つて、本件処分のうち、措置法三五条一項の適用を否認して短期譲渡所得金額を二二〇二万六七〇〇円とした点には何ら違法なところはなく、他に本件処分を違法とすべき理由は見出し得ない。 三以上の次第で、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官田坂友男東畑良雄石井忠雄)別表(省略)

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