- 1 -主文1(1)原判決主文第1項中,控訴人に対し金97万9700円及び内金49万1900円に対する平成6年12月16日から,内金48万7800円に対する平成7年6月29日から各支払済みまで年5分の割合による金員の支払いを命じた部分を除いて,その余を取り消す。 (2)被控訴人の上記取消しに係る部分の請求を棄却する。 控訴人のその余の控訴を棄却する。 (),,, 控訴人の仮執行の原状回復申立てに基づき被控訴人は控訴人に対し金32万9055円及びこれに対する平成10年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2)控訴人のその余の上記申立てを棄却する。 訴訟の総費用はこれを3分し,その1を控訴人の負担とし,その余を被控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1控訴人の申立て 控訴の趣旨(1)原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。 (2)被控訴人の請求を棄却する。 仮執行の原状回復被控訴人は,控訴人に対し,金145万6771円及びこれに対する平成10年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要 本件の概要本件は,控訴人(吸収合併される前の学校法人東朋学園)の従業員であった被控訴人が,平成6年7月8日に出産をした後8週間休業し,これに引き続き育児のため子,,が1歳になるまでの間1日につき1時間15分の勤務時間短縮措置を受けたところ出勤率が90パーセント以上であることを必要とする旨を定めた賞与の支給要件を満たさないとして,平成6年度年末賞与及び平成7年度夏期賞与(以下「本件各賞与」という)が支給されなかったため,このような取扱い(以下「本件各取扱い」とい。 う)又はその根拠となった控訴人の就業規則の定めは,労働基準法(平成9年法律。 平成7年度夏期賞与(以下「本件各賞与」という)が支給されなかったため,このような取扱い(以下「本件各取扱い」とい。 う)又はその根拠となった控訴人の就業規則の定めは,労働基準法(平成9年法律。 第92号による改正前のもの。以下同じ)65条,67条,育児休業等に関する法。 律(平成7年法律第107号による改正前のもの。以下「育児休業法」という)1。 0条の趣旨に反し,あるいは不当な女性差別であって公序に反する,また,不合理な就業規則の不利益変更であって被控訴人に対して効力を生じない,さらに,賞与の支給に当たり勤務時間短縮措置による育児時間を欠勤扱いにするのは著しく信義に反し権利の濫用に当たるなどと主張して,控訴人に対し,本件各賞与(平成6年度年末賞与につき77万4500円,平成7年度夏期賞与につき48万7800円)の支払いを求めるとともに,債務不履行による損害賠償請求として慰謝料(平成6年度年末賞与の不払いに関し100万円,平成7年度夏期賞与の不払いに関し100万円)及び弁護士費用(平成6年度年末賞与の不払いに関し18万円,平成7年度夏期賞与の不- 2 -払いに関し15万円)の支払いを求め,かつ選択的に不法行為による損害賠償請求として,上記と同額の各金員の支払いを求めた事案である(平成6年度年末賞与に関連した請求が甲事件であり,平成7年度夏期賞与に関連した請求が乙事件である。 。)なお,控訴人は,第1審判決に基づく仮執行の原状回復等を申し立てている。 事件の経過(1)第1審判決は,被控訴人の控訴人に対する請求につき,控訴人の給与規程において出勤率が90パーセント以上であることを賞与の支給要件とした条項以下本(「件90%条項」という)中,出勤すべき日数に産前産後休業の日数を算入し,出。 勤した日数から産前産後休業の日数及び勤 いて出勤率が90パーセント以上であることを賞与の支給要件とした条項以下本(「件90%条項」という)中,出勤すべき日数に産前産後休業の日数を算入し,出。 勤した日数から産前産後休業の日数及び勤務時間短縮措置による勤務時間短縮分を除外することと定めている部分は,労働基準法65条,67条,育児休業法10条の趣旨に反し,公序良俗に違反するから無効であると解すべきである,上記の無効は一部無効であるにとどまり,本件各賞与の支給に関する根拠条項の効力に消長を来さないから,控訴人に対し本件各賞与全額の支払いを命ずるべきである,また,債務不履行ないし不法行為に基づく慰謝料及び弁護士費用の請求は理由がないと判断して,本件各賞与として合計126万2300円及び内金77万4500円に対する平成6年度年末賞与の支給日である同年12月16日から,内金48万7800円に対する平成7年度夏期賞与の支給日である同年6月29日から(なお,この遅延損害金請求については,本件各賞与の不払いが不法行為にも当たることから,その起算日を賞与の支給日としたものと解される,各支払済みまで年5分の割。)合による遅延損害金の支払いを求める限度で認容し,その余を棄却した。これに対し,控訴人が,敗訴部分の取消しを求めて控訴するとともに,第1審判決の仮執行宣言に基づいて支払った金員の原状回復等を命ずる裁判の申立てをし,一方,被控訴人も,敗訴部分の取消しを求めて附帯控訴した。なお,被控訴人は,第1審において,学校法人高宮学園(ただし,学校法人東朋学園を吸収合併する前のもの。以下「旧高宮学園」という)をも被告として,控訴人との連帯支払いを求めていた。 が,第1審判決は旧高宮学園に対する請求を棄却し,これに対し,被控訴人が控訴をしなかったため,この請求棄却部分は確定した。 (2)差戻し前 いう)をも被告として,控訴人との連帯支払いを求めていた。 が,第1審判決は旧高宮学園に対する請求を棄却し,これに対し,被控訴人が控訴をしなかったため,この請求棄却部分は確定した。 (2)差戻し前の控訴審判決は,被控訴人の控訴人に対する本件各賞与の支払請求について,第1審判決と同様の判断をして,控訴人の控訴を棄却し(したがって,控訴人の仮執行の原状回復請求は,判断の必要がないとした,また,被控訴人の。)債務不履行ないし不法行為に基づく慰謝料及び弁護士費用の請求についても,第1審判決と同様の判断をして,被控訴人の附帯控訴を棄却した。これに対し,控訴人が,控訴人の控訴を棄却した部分の破棄と仮執行の原状回復を求めて上告受理の申立てをし,最高裁判所は上告審として受理する旨の決定をした(ただし,控訴人が同時に申し立てた上告は棄却された。なお,被控訴人は,附帯控訴を棄却され。)た部分について上告の申立て等をしなかったため,控訴人に対する債務不履行ないし不法行為に基づく慰謝料及び弁護士費用の請求を棄却した部分は確定し,差戻し後の当審における審判の対象から除外された。 (3)上告審判決は,大略,次のとおり判示して,差戻し前の控訴審判決中,控訴人敗訴部分を破棄し,この部分を東京高等裁判所に差し戻すべきものとした。 - 3 -ア差戻し前の控訴審判決の判断は,次のとおりである。 ①本件90%条項の趣旨・目的は,従業員の出勤率を向上させ,貢献度を評価することにあり,もって,従業員の高い出勤率を確保することを目的とするものであって,一応の経済的合理性を有している。給与規程は,本件90%条項に関し,回覧文書をもって産前産後休業等の日数及び勤務時間短縮措置により短縮した時間を欠勤日数に加算することを定めることを許容する趣旨であり,この趣旨を受けて本件各 いる。給与規程は,本件90%条項に関し,回覧文書をもって産前産後休業等の日数及び勤務時間短縮措置により短縮した時間を欠勤日数に加算することを定めることを許容する趣旨であり,この趣旨を受けて本件各除外条項(産前産後休業等の日数及び勤務時間短縮措置により短縮した時間を欠勤日数に加算することを定めた規定)を定めた本件各回覧文書(後記の平成6年度回覧文書及び平成7年度回覧文書をいう)は。 給与規程と一体となり,本件90%条項の内容を具体的に定めたものと解するのが相当である。 ②本件各賞与は,支給対象期間中の労働の対償としての賃金たる性質を有していると解されるところ,労働者が産後休業ないし育児のための勤務時間短縮措置を取得した場合には,法律上,使用者には当該休業期間ないし短縮時間分に対応する賃金支払義務はない。したがって,本件各賞与のうち被控訴人が労務を提供しなかった部分に応じた金額が不支給とされたからといって,被控訴人が法の容認する不利益を超える不利益を被ったとはいえない。しかし,本件において,被控訴人が本件90%条項により本件各賞与を受けられなかったことによる経済的不利益は甚大であり,労働者は,このような不利益を受けることをおもんぱかって勤務時間短縮措置等を請求することを控え,さらには出産を断念せざるを得ない事態が生ずることが考えられ,このような事実上の抑止力は相当大きいものということができるから,労働基準法や育児休業法が労働者に産前産後休業等の権利ないし法的利益を保障した趣旨を没却するものというべきである。したがって,本件90%条項中,出勤すべき日数に産前産後休業の日数を算入し,出勤した日数に産前産後休業の日数及び勤務時間短縮措置による勤務時間短縮分を含めない旨を定めている部分は,労働基準法65条,67条,育児休業法10条の趣旨に反 べき日数に産前産後休業の日数を算入し,出勤した日数に産前産後休業の日数及び勤務時間短縮措置による勤務時間短縮分を含めない旨を定めている部分は,労働基準法65条,67条,育児休業法10条の趣旨に反し,公序良俗に違反するから,無効であると解すべきである。 本件90%条項は,賞与支給対象者から例外的に除外される者を定めるものであって,本件各賞与支給に関する根拠条項と不可分一体のものとは認められず,上記無効の部分を除外して本件各賞与支給に関する根拠条項を有効とすることは当事者双方の合理的意思に反しないと解されるから,上記無効は一部無効であるにとどまり,本件各賞与支給の根拠条項の効力に影響を及ぼさないと解すべきである。 ③産前産後休業期間等を賞与等における減額控除の対象とするか否か及びその基準については,各企業等によってその取扱いがまちまちであり,休業日数に正比例して賞与をカットすることが一般原則であるとまでは認められない。本件においては,本件90%条項を産後休業期間及び育児のための勤務時間短縮措置により短縮した勤務時間に適用する限度で一部無効と判断した場合,控訴人における賞与の支給要件及び算定基準について本件各除外条項がない状態に- 4 -復するのであるから,本件各賞与全額の支払いを命ずるのが相当である。 なお,控訴人が本件各取扱いに及んだことをもって女性に対する差別的意図等に基づくものということはできないから,これを理由とする被控訴人の主張は認められない。 ,,イ差戻し前の控訴審判決の上記判断のうち①及び②は是認することができるが。 ,③の本件各賞与の支払いについての判断は是認することができないその理由は次のとおりである。 ①労働基準法65条は,産前産後休業を定めているが,産前産後休業中の賃金については何らの定めを置いていない ③の本件各賞与の支払いについての判断は是認することができないその理由は次のとおりである。 ①労働基準法65条は,産前産後休業を定めているが,産前産後休業中の賃金については何らの定めを置いていないから,産前産後休業が有給であることまでも保障したものではないと解するのが相当である。そして,同法39条7項や12条3項2号の規定も,産前産後休業期間を一般に出勤として取り扱うべきことまでも使用者に義務付けるものではない。また,育児休業法10条の規定は,労働者の申出に基づく勤務時間の短縮等の措置が講じられた場合に,短縮された勤務時間を有給とし,出勤として取り扱うべきことまでも義務付けているわけではない。したがって,産前産後休業を取得し,又は勤務時間の短縮措置を受けた労働者は,その間就労していないのであるから,労使間に特段の合意がない限り,その不就労期間に対応する賃金請求権を有しておらず,当該不就労期間を出勤として取り扱うかどうかは原則として労使間の合意にゆだねられているというべきである。 ところで,従業員の出勤率の低下防止等の観点から,出勤率の低い者につきある種の経済的利益を得られないこととする措置ないし制度を設けることは,一応の経済的合理性を有するものである。給与規程と一体となった本件各回覧文書によって具体化された本件90%条項は,労働基準法65条及び育児休業法10条の趣旨に照らすと,これにより認められた権利等の行使を抑制し,ひいては労働基準法等が上記権利等を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められる場合に限り,公序に反するものとして無効となると解するのが相当である。 本件の事実関係によれば,本件90%条項は,産前産後休業を取得するなどした従業員に対し,産前産後休業期間等を欠勤日数に含めて算定した出勤率が90%未満の場合には,一切賞与が 解するのが相当である。 本件の事実関係によれば,本件90%条項は,産前産後休業を取得するなどした従業員に対し,産前産後休業期間等を欠勤日数に含めて算定した出勤率が90%未満の場合には,一切賞与が支給されないという不利益を被らせるものであること,控訴人においては,従業員の年間総収入額に占める賞与の比重は相当大きく,本件90%条項に該当しないことにより賞与が支給されない者の受ける経済的不利益は大きなものであること,90%という出勤率の数値からみて,従業員が産前産後休業を取得し,又は勤務時間短縮措置を受けた場合には,それだけで賞与の支給を受けられなくなる可能性が高いこと,以上を考え合わせると,本件90%条項の制度の下では,勤務を継続しながら出産し,又は育児のための勤務時間短縮措置を請求することを差し控えようとする機運を生じさせるものと考えられ,上記権利等の行使に対する事実上の抑止力は相当強いものとみるのが相当である。そうすると,本件90%条項のうち,出勤すべき日数に産前産後休業の日数を算入し,出勤した日数に産前産後休業の日数- 5 -及び勤務時間短縮措置による短縮時間分を含めないものとしている部分は,上記権利等の行使を抑制し,労働基準法等が上記権利等を保障した趣旨を実質的に失わせるものというべきであるから,公序に反し無効である。 そして,本件90%条項は,賞与支給対象者から例外的に出勤率の低い者を除外する旨を定めるものであって,賞与支給の根拠条項と不可分一体のものであるとは認められず,出勤率の算定に当たり欠勤扱いとする不就労の範囲も可分であると解される。また,産前産後休業を取得し,又は勤務時間短縮措置を受けたことによる不就労を出勤率算定の基礎としている点が無効とされた場合に,その残余において本件90%条項の効力を認めたとしても,労使双方 解される。また,産前産後休業を取得し,又は勤務時間短縮措置を受けたことによる不就労を出勤率算定の基礎としている点が無効とされた場合に,その残余において本件90%条項の効力を認めたとしても,労使双方の意思に反するものではないというべきであるから,本件90%条項の上記一部無効は,賞与支給の根拠条項の効力に影響を及ぼさないものと解される。 ②控訴人の給与規程及びこれと一体を成す本件各回覧文書は,本件各賞与について所定の計算式により各従業員の賞与の額を算定し,産前産後休業の日数及び育児のための勤務時間短縮措置による短縮時間分を欠勤日数に加算する旨を定めているというのであるから,本件90%条項のうち,出勤すべき日数に産前産後休業の日数を算入し,出勤した日数に産前産後休業の日数及び勤務時間短縮措置による短縮時間分を含めないものとしている部分が無効であるとしても,上記の計算式の適用に当たっては,産前産後休業の日数及び勤務時間短縮措置による短縮時間分は,本件各回覧文書の定めるところに従って欠勤として減額の対象となるというべきである。そして,これらの計算式は,本件90%条項とは異なり,賞与の額を一定の範囲内でその欠勤日数に応じて減額するにとどまるものであり,加えて,産前産後休業を取得し,又は育児のための勤務時間短縮措置を受けた労働者は,法律上,上記不就労期間に対応する賃金請求権を有しておらず,控訴人の就業規則においても,上記不就労期間は無給とされているのであるから,本件各除外条項は,労働者の上記権利等の行使を抑制し,労働基準法等が上記権利等を保障した趣旨を実質的に失わせるものとまでは認められず,これをもって直ちに公序に反し無効なものということはできない。 ウところが,差戻し前の控訴審判決は,本件各除外条項が公序に反する理由を具体的に示さないまま, 質的に失わせるものとまでは認められず,これをもって直ちに公序に反し無効なものということはできない。 ウところが,差戻し前の控訴審判決は,本件各除外条項が公序に反する理由を具体的に示さないまま,直ちに本件各除外条項がない状態に復するとして,所定の計算式を適用せず,控訴人の本件各賞与全額の支払義務を肯定したものであり,この点において判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。そして,本件においては,判断されていない就業規則の不利益変更及び信義則違反の成否等の点について更に審理を尽くさせる必要があるから,前記部分につき本件を差し戻す。 (4)差戻し後の当審において,学校法人東朋学園は,学校法人高宮学園(控訴人)に吸収合併された。 前提事実,差戻し後の当審における争点(上告審判決が判示した点も含む)及び。 争点に関する当事者双方の主張(1)これらについては,当審における当事者の主張を後記(2)のとおり付加し,- 6 -第1審判決(原判決と表記する)を次のとおり改めるほか,原判決「事実及び理。 由」の「第二事案の概要」の一項ないし三項に記載されたとおりであるから,これを引用する(ただし,第1審相被告の旧高宮学園に関する部分を除く。 。)ア原判決10頁9行目の「配偶者の祖父母」を「配偶者の父母」と改める。 イ原判決16頁2行目の「一六時三〇」を「一六時三〇分」と改める。 ウ原判決18頁5行目を「被控訴人の場合は19万4100円(当事者間に争いがない」と,21頁8行目を「被控訴人の場合は5万7600円(当事者間。)に争いがない」とそれぞれ改める。 。)エ原判決22頁6行目から8行目の括弧書きを削り,同末行の末尾に「以下,(前記備考4及び5を「平成7年度回覧文書除外規定」といい,平成6年度回覧文書除外規定と併せて 」とそれぞれ改める。 。)エ原判決22頁6行目から8行目の括弧書きを削り,同末行の末尾に「以下,(前記備考4及び5を「平成7年度回覧文書除外規定」といい,平成6年度回覧文書除外規定と併せて「本件各除外規定」又は「本件各除外条項」という」を。)加える。 オ原判決24頁末行から25頁2行目までを削除する。 カ原判決43頁3行目の「二五分の一」を「二〇分の一」と改める。 キ原判決46頁1行目から48頁末行までを削除する。 ク原判決49頁1行目の「5」を「4」と,同2行目の「被告らは,原告()()に対し,連帯して」を「控訴人は,被控訴人に対し」とそれぞれ改め,同4行目及び7行目の「賞与支給日で」の次に「,かつ控訴人の本件各取扱いは不法行為にも当たることから当該行為日でも」をそれぞれ加える。 ケ原判決49頁10行目から52頁10行目までを削除し,同末行の「五」()を「四」と改める。 ()コ原判決53頁1行目の「共謀のうえ」を削り,同4行目の「及び七一九条の,共同不法行為」を「の不法行為」と,同5行目の「被告らは,原告に対し,連帯して」を「控訴人は,被控訴人に対し」とそれぞれ改める。 サ原判決53頁10行目から55頁6行目までを削除する。 (2)当審における主張ア本件各賞与の不支給の公序違反について(被控訴人の主張)①本件90%条項は,不就労を抑制して出勤率を向上させることを目的として定められたものであるが,出産休暇,及びその延長として取得される育児休暇や勤務時間短縮措置による育児時間は,当然にして不就労を伴うものであるところ,労働者の責めに帰すべき事由による不就労と区別して保障されるべきであるというのが法の趣旨であるから,労働者の責めに帰すべき事由による欠勤と同視して労働者に同様の不利益を被らせること のであるところ,労働者の責めに帰すべき事由による不就労と区別して保障されるべきであるというのが法の趣旨であるから,労働者の責めに帰すべき事由による欠勤と同視して労働者に同様の不利益を被らせることは法の趣旨を没却するものであって許されず,かつ殊更に他の特別休暇等と異なって出産休業や育児時間についてのみ不就労を貢献度評価にさらすということになれば,不合理で差別的なものとなることは明らかである。また,育児時間の欠勤扱いは全くの不意打ちであり,被控訴人が勤務時間短縮措置による育児時間を取得する際には一時金がそれを理由にカットされることなど全く考えられていなかったのであって,そのような取扱いは,賃金としての性格を持つ一時金の支給条件に関する- 7 -明確性の原則,禁反言の法理に照らして許されない。 ②控訴人は,本件各除外条項において,就業規則45条の特別休暇のうち専ら女性のみが取得する出産休暇と生理休暇を選んで,これを一時金支給の有無及び支給額の決定に当たっての欠勤として不利益に扱い,かつ実質的には専ら女性が権利行使をする育児時間を欠勤扱いしたものであって(なお,以下,本件各除外条項において,特別休暇のうち出産休暇と生理休暇を欠勤日数に加算するとした規定を「備考④,勤務時間短縮措置による短縮した時間を欠勤日数」に加算するとした規定を「備考⑤」ということがある,このような一時金。)の支給及び算定上の差異については,性以外の何らの合理的な根拠がなく,女性に対する差別である。控訴人は,女性が結婚し出産し子育てをしながら勤務を継続することを嫌悪ないし敵視し,女性職員の採用時には結婚したときは退,,,職する旨の念書を提出させたり職務配置賃金その他の処遇全般にわたって女性差別や不利益な取扱いを行っており,本件各取扱いも女性差別的意図に基 し敵視し,女性職員の採用時には結婚したときは退,,,職する旨の念書を提出させたり職務配置賃金その他の処遇全般にわたって女性差別や不利益な取扱いを行っており,本件各取扱いも女性差別的意図に基づいて行われたものである。 ③本件90%条項は無効であるが,その無効をもって一時金の支給に関する規定の全部を無効とするならば,被控訴人のみならず控訴人の従業員全員が一時金の支給を受けられないことになり,極めて不合理な結果となるのみならず,当事者の合理的な意思にも合致しないと推認される。したがって,原判決が一時金支給に関する規定全体を無効と判断しなかったことは当然である。 (控訴人の主張)①控訴人においては,賞与を支給するか否かの決定や支給基準等の確定はその裁量に委ねられており,賞与の性格は功労報償的,利益配分的色彩の濃いものであって,生活補給的な一面のあることも否定できないとしても,全体をみれば,恩恵的・任意的給付と認められる。 ②本件90%条項の趣旨・目的は,従業員の出勤率向上を図るとともに,貢献度評価という側面があり,被控訴人ら労働者の職務が事務職ということで,その業績に対する貢献度を数値的に算定することが困難なために出勤率を貢献度評価に置き換えているのであって,賞与の支給算定において控訴人に裁量権が存在しているという観点からも,本件90%条項はこのような貢献度評価という意味において十分に合理性を有する。本件90%条項が貢献度評価としての目的・機能を有するとすれば,そこで評価基準となるべき出勤率の算定において欠勤として扱われるものは,労働者の責めに帰すべき事由による欠勤に限定されるべきではなく,労使双方の責めに帰すべからざる事由による欠勤も,企業業績に対する貢献としてはマイナス評価されることは当然である。また,仮に,不就労が法的権利 責めに帰すべき事由による欠勤に限定されるべきではなく,労使双方の責めに帰すべからざる事由による欠勤も,企業業績に対する貢献としてはマイナス評価されることは当然である。また,仮に,不就労が法的権利の行使ないし反射的利益であるとしても,ノーワーク・ノーペイの原則からして,権利行使に伴う不就労についてはその間の賃金支払義務は基本的に否定されるのである。したがって,本件各賞与に関して,産後休業及び育児時間に伴う不就労に基づいて賞与をカットすることは当然に許されるものといわざるを得ない。 ③本件は,賞与の支給という従業員全体に対して一律に適用されるべき制度の- 8 -解釈が問題となっているから,個々の従業員の個別具体的な事情,状況等を加味しないと支給の可否が決定できないということになれば,賞与制度自体の法的安定性は著しく損なわれるのであって,公序違反の適用において,被控訴人の収入の減少面を特別に重視するなどした原判決は妥当でない。 イ本件各賞与を一部不支給とすることの公序違反について(被控訴人の主張)①育児時間を欠勤扱いした備考⑤は,控訴人が産後休暇を取得したことによって一時金を不払いとされたことにつき,本件訴訟を提起したことに対する報復的意図で設けられたものである。 ②本件各回覧文書における本件各賞与の支給計算基準の定め(以下「本件支給計算基準条項」という)について,出産休業や育児時間を欠勤日数に算入す。 ることは,他の特別休暇や年次有給休暇の扱い,更には労働災害による治療のために出勤しなかった日についても欠勤日数に算入されない扱いであることと比較して,著しい差異がある。 ③控訴人の就業規則において欠勤とは傷病又はやむを得ない事情による不就労とされ,労働者の責めに帰すべき事由による不就労を意味していることは疑いようがない。これに とと比較して,著しい差異がある。 ③控訴人の就業規則において欠勤とは傷病又はやむを得ない事情による不就労とされ,労働者の責めに帰すべき事由による不就労を意味していることは疑いようがない。これに対し,出産及び生理休暇については年次有給休暇などとともに欠勤とは区別された休暇と規定され,同様に勤務時間短縮措置による育児時間も欠勤とは異なる権利として定められているものである。したがって,本,,件支給計算基準条項において欠勤日数に上記の権利取得日数を加えることは本件各賞与の支給規定に係る文言からして不合理である。 ,()④以上によれば本件各除外条項において出産休業や育児時間及び生理休暇による不就労を一時金の支給要件として考慮に入れることはもとより,本件支給計算基準条項に定めるところの欠勤に加算することは不合理であって,公序に反するものである。 (控訴人の主張)①控訴人は,本件90%条項の適用場面において,産前産後休業の期間及び育児時間を取得したことによる不就労を当事者双方の責めに帰すべからざる事由による不就労として欠勤と同じく取り扱う意思を有していたのであって,それらの不就労期間に対応する賞与の減額まで否定することは,賞与の支払いを実行する者の意思を無視した解釈であり,使用者に帰責性のない不就労についても賞与の支払義務を認めるのは極めて不合理である。したがって,本件各除外条項が本件90%条項との関係で無効となるにしても,その規定自体は有効であって,本件各賞与については,算定の基礎となる期間における被控訴人の不就労期間に対応して減額を行い,その残額の支払いを控訴人に対して命じるべきこととなる。 ②本件事案において,被控訴人の不就労期間に対応する減額を行うと,支給されるべき本件各賞与は,以下の計算式のとおり,平成6年度年末賞与に い,その残額の支払いを控訴人に対して命じるべきこととなる。 ②本件事案において,被控訴人の不就労期間に対応する減額を行うと,支給されるべき本件各賞与は,以下の計算式のとおり,平成6年度年末賞与について,。 は46万3640円平成7年度夏期賞与については35万1570円となるa平成6年度年末賞与- 9 -基本給(14万1300円)×係数(4.0)=56万5200円職階手当,19万4100円家族手当(7600円)×2=1万5200円小計77万4500円基本給(14万1300円)÷20×欠勤日数(44日,産後休暇40日と育児時間を日数に換算した4日の合計)=31万0860円77万4500円-31万0860円=46万3640円b平成7年度夏期賞与基本給(14万3400円)×係数(3.0)=43万0200円職階手当,5万7600円小計48万7800円基本給(14万3400円)÷20×欠勤日数(19日,育児時間を日数に換算したもの)=13万6230円48万7800円-13万6230円=35万1570円ウ労働条件の就業規則による不利益変更について(被控訴人の主張)①控訴人は,一時金支給の都度回覧文書を配布してその計算基準等を職員に周知してきたもので,回覧文書は控訴人の就業規則の一部であり,一時金の支給額はこの計算基準等に基づくことが労働契約の内容とされていた。そして,回覧文書に定められた支給条件及び算定基準は,各項目に該当する金額や係数に若干の変動はあるものの,基本的な算定基準は過去20年来同一のものであって,労使慣行として確立されたものとなっていた。そして,控訴人は,長年にわたって特別休暇として勤務を免除したものについては,出産休暇や生理休暇を含め,一時金の算定に当たって欠勤日数に組み入れてこなかった。なお,ノーワ 立されたものとなっていた。そして,控訴人は,長年にわたって特別休暇として勤務を免除したものについては,出産休暇や生理休暇を含め,一時金の算定に当たって欠勤日数に組み入れてこなかった。なお,ノーワーク・ノーペイの原則も,労働契約上の定めを修正する規律性を有するものではない。 しかし,控訴人は,平成4年に就業規則を改定して,出産休業を無給化するとともに,平成4年度年末賞与の支給に当たって,回覧文書に定める一時金の算定基準のうち出産休業及び生理休業を一方的に欠勤扱いすることを決め,さらに,平成7年度夏期賞与の支給に当たって,勤務時間短縮措置による育児時間を一方的に欠勤扱いすることを決めた。このように回覧文書において上記の欠勤加算条項を挿入することは,出勤義務のある日の欠勤を抑制し,出勤率を高めることを目的とする規定及び支給慣行の趣旨を実質的に変更して,職員に著しい不利益を生じさせるものである。こうして就業規則の適用によって労働契約の内容を一方的に変更することは原則として許されず,職員に不利益を与えるに足りるだけの高度の必要性と合理性が求められる。 ,,,②本件において控訴人は上記の必要性及び合理性を主張立証していないし本件の不利益変更は,法の趣旨と信義に反し,著しい不合理があるから,違法無効である。 即ち,控訴人は,平成4年に初めて出産休暇を取得する女性職員が現れ,ま- 10 -た,同時期に札幌校において労働組合が結成されて女性組合員を中心に生理休暇を取得する動きが出たことや,平成7年になって被控訴人がその前年に育児時間の取得を開始したことなどを受けて,女性の出産休暇や生理休暇,更には育児時間の権利行使を抑制し,制裁的不利益を加えることを意図して本件の不利益変更を行ったものであり,女性に対する差別的取扱いであって,公序に反し違法 となどを受けて,女性の出産休暇や生理休暇,更には育児時間の権利行使を抑制し,制裁的不利益を加えることを意図して本件の不利益変更を行ったものであり,女性に対する差別的取扱いであって,公序に反し違法無効である。 次に,平成7年度回覧文書除外規定における備考⑤は,被控訴人が勤務時間短縮措置に係る権利を行使した後になって,過去に遡って短縮時間分を欠勤として取り扱うことにしたものであって,不利益遡及禁止の法理に反すること著しく,また,このときの備考⑤の適用対象者は被控訴人のみであり,かつ被控訴人が出産休暇取得を理由とする一時金カットを違法であるとして本件訴訟を提起した直後の時期であったことを考えると,被控訴人を狙い撃ちにした定めであることは明白である。 次に,出産休業及び勤務時間短縮措置による育児時間は,法令上義務付けられたもので,女性に対する差別的取扱いの禁止の観点からも不利益取扱いが許容されないという性格を有し,就業規則に定められた他の特別休暇等と比較して保障の必要性と重要性においてはるかに上回るものである。控訴人における一時金制度は,労働者の責めに帰すべき事由による欠勤をマイナス評価の対象とする限りにおいて合理性を有するのであって,殊更に出産休業及び育児時間を労働者の責めに帰すべき事由による欠勤と同様に取り扱わなければならない合理的な根拠は何一つなく,就業規則において特別休暇と欠勤が分けて規定されていることや,他の特別休暇や労働災害等による休業が欠勤扱いされていないこととの間に整合性もない。 さらに,出産休業について無給と定めた賃金規定の改定はもとより,本件各除外条項の設定についても,労働組合や従業員からの意見聴取はされず,従業員に対して全く周知されていなかったものである。 なお,控訴人における一時金の支給金額は,年間賃金総額に占める割合 とより,本件各除外条項の設定についても,労働組合や従業員からの意見聴取はされず,従業員に対して全く周知されていなかったものである。 なお,控訴人における一時金の支給金額は,年間賃金総額に占める割合が極めて大きいこと,被控訴人は,産前休暇を取得しないで出産間際まで勤務に精励し,育児時間の取得期間中も昼休み返上で職務を処理していた勤務実態も考,。 え合わせるとますます本件の不利益変更の不合理性は顕著となるものである(控訴人の主張)①就業規則では,所定の要件以外の詳細については,支給を実施するか否かを含めて支給の都度これを決定し,回覧文書によって従業員に周知することになっている。したがって,どのような休暇,休業,欠勤がどのように支給額の算定において反映されるかは,それ自体が就業規則としての効力を有する事項ではないのであるから,出勤率の算定に当たって控訴人がいかなる休暇をどのように取り扱うかを幅広い裁量に基づいて決定したとしても,就業規則の不利益変更の問題には当たらない。また,産前産後休業にしても勤務時間短縮措置による育児時間にしても,そもそもノーワーク・ノーペイの原則からしてそれらの制度による不就労期間の賃金請求権は労働者に帰属していなかったのであっ- 11 -て,労働条件の変更の対象となる既得の権利が存在していなかったといえるから,本件各除外条項の記載は単なる注意書以上の意味をなさず,これを設けたことによって初めて控除の効力が発生するものではないのであり,不利益に変更したという問題ではない。 なお,賞与については一般的に過去の勤務時間を評価対象とした算定がされるから,もし算定条件の不遡及が要求されるならば,算定対象となる期間中に起こり得るすべての事象について前もって算定条件を示さなければならないことになって,使用者に対して不可能 価対象とした算定がされるから,もし算定条件の不遡及が要求されるならば,算定対象となる期間中に起こり得るすべての事象について前もって算定条件を示さなければならないことになって,使用者に対して不可能を強いるものである。 ②仮に本件各除外条項を設けたことが就業規則の不利益変更に当たるとしても,その必要性と合理性があり,本件各除外条項を違法無効ということはできない。 まず,使用者側において,産前産後休業期間や勤務時間短縮措置による短縮時間分について,労働者に対して就労義務を課すことはできないから,これらに対して賃金ないし賞与の支払義務を負わせることは明らかに必要以上の負担を使用者側に負わせる結果となる。また,就業規則に規定された各種の特別休暇は,それぞれその趣旨や性格が異なるものであり,それらが同一の条項に定められているからといって,取扱いを同一にして整合性を図らなければならないものではない。 次に,産前産後休業期間や勤務時間短縮措置による短縮時間分の不就労による控除は,これらの法制度の樹立に伴うもので,変更を基礎付ける使用者側の事情が存在せず,それ自体で変更の必要性があるということができる。 さらに,本件各賞与に係る本件支給計算基準条項については,被控訴人が所属する労働組合との間で合意書が締結されている。 エ信義則違反について(被控訴人の主張)①被控訴人が産後休業及び育児時間を取得したことを理由とする一時金の不払いないし減額は,信義誠実の基本原理に大きく反する。 ②本件各除外条項は,就業規則に定められた特別休暇の中で専ら女性が取得する出産休暇,さらには勤務時間短縮措置による育児時間等のみを不利益の対象,,,,とするもので結婚妊娠出産を行いつつ働き続けようとする女性を嫌悪しそのような女性に一時金を不支給などすることによって経 暇,さらには勤務時間短縮措置による育児時間等のみを不利益の対象,,,,とするもので結婚妊娠出産を行いつつ働き続けようとする女性を嫌悪しそのような女性に一時金を不支給などすることによって経済的打撃を与え,権利行使を諦めさせたり就労意欲を削ぐことによって勤務の継続を不可能にすることを意図して設けられたものであり,内容自体が極めて不公正かつ差別的である。 次に,出勤率を要件としている本件支給計算基準条項の基本的趣旨ないし目的との間に何らの合理的な関連性がない。 特に,育児休業については欠勤とみなすことを定めている(育児休職規程9条,11条)が,勤務時間短縮措置による育児時間が一時金不支給の事由となることを定めた備考⑤は,育児時間の取得についてはそのような定めを置いていない就業規則に抵触し,しかも,被控訴人が育児時間を取得する際には何ら- 12 -の定めもなく,上司に尋ねても不利益を受ける旨の説明は一切なかったことから,一時金のカットを受けるということは予想もできなかった。また,この規定は,被控訴人において,出産休暇の取得を理由として一時金を不支給にされたことを違法であるとして本件訴訟の提起を行ったことに対する報復的措置であり,被控訴人を狙い撃ちにして,過去に遡って不意打ち的に不利益を与えるもので,禁反言の原則,法規不遡及の法理,就業規則の周知義務に反する。 また,被控訴人を初めとして,出産休暇及び育児時間を取得した労働者の受ける不利益も重大である。 (控訴人の主張),,①本件各賞与について備考④及び⑤を本件支給計算基準条項に当てはめると平成6年度年末賞与の控除額は28万2600円,平成7年度夏期賞与の控除額は13万6230円であり,被控訴人の年間収入額を平成5年度の422万0612円と平成8年度の426万4318円の平均値 ると平成6年度年末賞与の控除額は28万2600円,平成7年度夏期賞与の控除額は13万6230円であり,被控訴人の年間収入額を平成5年度の422万0612円と平成8年度の426万4318円の平均値である424万2465円とすると,控除額の占める割合は,平成6年度年末賞与で6.66パーセント,平成7年度夏期賞与で3.21パーセントにすぎない。また,上記のとおり本件各賞与について控除を受けると,平成6年度の収入は327万5890円となり,そのうち控除額の占める割合は8.63パーセント,平成7年度の収入は384万2155円となり,そのうち控除額の占める割合は3.55パーセントであって,いずれにしても各控除額が年収に占める割合は1割にも満たないと評価される状況の下においては,信義則違反を問題とするような不合理な状況は生じていない。 ②備考⑤の設けられたのが被控訴人が育児時間を取得した後であったという時間的な問題は,前記のとおり,賞与の算定条件の性格からして,事前に労働者に起こり得るすべての事象について基準を定めておくことが困難であることからして,やむを得ない措置であり,賞与の支給に関しては,就業規則においてその詳細を回覧文書により支給の都度定めると規定していることからして,これをもって遡及的な適用などと非難することはできない。 オ仮執行の原状回復請求について(控訴人の主張),,,控訴人は仮執行宣言の付された本件原判決に基づき平成10年3月30日被控訴人に対し,145万6771円を支払った。 そこで,控訴人は,民事訴訟法260条2項に基づき,被控訴人に対し,仮執行の原状回復として,支払った上記金員の返還とこれに対する平成10年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による損害賠償の支払いを求める。 (被控訴人の主張)①控訴人 被控訴人に対し,仮執行の原状回復として,支払った上記金員の返還とこれに対する平成10年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による損害賠償の支払いを求める。 (被控訴人の主張)①控訴人が,仮執行宣言の付された本件原判決に基づき,平成10年3月30日,被控訴人に対し145万6771円を支払ったことは認める。 ②控訴人は,原判決後,本件各賞与の不支給分を強制執行によることなく被控訴人に対し任意に支払ったもので,被控訴人は,これを善意で受領して生活費に費消してしまっている。したがって,被控訴人は,民法703条に従い善意- 13 -の受益者であるから,控訴人から何某かの返還を求められる事由があるとしても,現存利益は存在しない。 また,被控訴人は,本件各賞与を全額不支給とされることによって,生計維持のために借入れをすることを余儀なくされ,控訴人が返還を求める金額をはるかに上回る借入利息の支払いを強いられたものである。したがって,被控訴人は,この控訴人に対する損害賠償請求権をもって控訴人の上記原状回復請求権について対当額において相殺する。 第3当裁判所の判断 本件の事実関係前記の前提事実(原判決「事実及び理由」の第二の一項,各項末尾掲記の関係証)拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1)控訴人は,私立専修学校及び私立各種学校を設置することを目的とする学校法,,,()人であり被控訴人は昭和62年3月2日控訴人合併前の学校法人東朋学園に期間の定めなく事務職として採用され,本件当時,書記2級の職階にあった。 (2)被控訴人は,平成6年7月8日,男児を出産し,翌9日から同年9月2日までの8週間,産後休業を取得した(なお,産前休業は取らなかった。その後,被。)控訴人は,同月3日,職場に復帰したが, (2)被控訴人は,平成6年7月8日,男児を出産し,翌9日から同年9月2日までの8週間,産後休業を取得した(なお,産前休業は取らなかった。その後,被。)控訴人は,同月3日,職場に復帰したが,後記の育児休職規程13条に基づいて勤務時間の短縮を請求し,同年10月6日から平成7年7月7日までの間,1日につき1時間15分(午前30分,午後45分)の勤務時間短縮措置を受けた。 (3)控訴人は,就業規則として職員就業規則,給与規程及び育児休職規程を定めている。職員就業規則によると「所定労働時間は,休憩時間を除き原則として1日,7時間45分とし,1か月(当月16日から翌月15日まで)を平均し,1週40時間以内とする(24条「職員が次の各号の一に該当するときは,特別休暇。」),を受けることができる。欠勤中または休職中の者は,特別休暇を受けることができない。1号本人が結婚するとき5日,2号子女または兄弟が結婚するとき2日,3号配偶者が出産したとき5日,4号父母,配偶者及び子が死亡したとき5日,5号祖父母,兄弟及び配偶者の父母が死亡したとき3日,6号亡父母,亡夫妻,亡子の法要の場合1日,7号職員が出産するとき産前6週間産後8週間,8号生理日の就業が著しく困難なとき就業が困難な期間(4」5条「45条1号から6号・8号の特別休暇については通常の賃金を支払い,),7号の特別休暇については無給とする(47条「職員の給与については,別。」),に定めるところによる(50条)と規定されている。これを受けて,給与規程。」,「(),,19条は学園控訴人は毎年6月および12月に学園の業績を考慮した上職員(嘱託は除く)に対し勤務成績などに応じて賞与を支給することがある(1。」項「賞与の支給は 」,「(),,19条は学園控訴人は毎年6月および12月に学園の業績を考慮した上職員(嘱託は除く)に対し勤務成績などに応じて賞与を支給することがある(1。」項「賞与の支給は次の各号とする。1号6月の賞与は,前年11月16日か),らその年の5月15日まで,また,12月の賞与は,その年の5月16日から11月15日までの期間を対象とする。2号前号の期間を満たした者であっても,支給日現在も継続して勤務し,将来とも勤務する意志を有すると認められる者で,かつ出勤率が90%以上の者に支給する(本件90%条項。3号支給日,支給の)詳細については,その都度回覧にて知らせる(2項)と規定している。 。」- 14 -また育児休職規程は休職期間は子が満1歳の誕生日の前日までとする ,,「。」(条1項「育児休職中の賃金は支給しない(9条「休職期間中の日数は欠勤),。」),として取り扱い減給とし,給与規程に準ずるものとする(11条「満1歳に。」),満たない子供を養育する職員が育児休職を申し出なく,勤務時間の短縮を申し出た場合には9時から16時30分までの勤務とし,期間は5条に定めるものとする。 ただし,短縮した分の時間相当を給与から控除するものとする。また,時間外勤務は課さない(13条1項「その他の事項については,育児休業法,労働基準。」),法などの法律に準拠するものとする(14条)と規定している。なお,勤務時。」間短縮措置による育児時間を取得した場合の賞与の扱いについては,特に規定していない。 (4)控訴人の上記就業規則は平成4年3月に改正されたものであり,育児休職規程は,同年4月1日に育児休業法が施行されたのに伴い,同日から施行されるものとして定められた。控訴人は,就業規則を従前 。 (4)控訴人の上記就業規則は平成4年3月に改正されたものであり,育児休職規程は,同年4月1日に育児休業法が施行されたのに伴い,同日から施行されるものとして定められた。控訴人は,就業規則を従前は総務課に置いて周知していたが,上記の改正に際しては,労働者の代表の意見を聴取した上,同年5月1日に所轄の渋谷労働基準監督署長に届出を行い,従業員に回覧をして周知を図るとともに,各部署の部課長が保管して適宜に閲覧することができるようにした(乙1,40ない。 し42,44,原審証人A,同B)(5)控訴人は,平成6年度年末賞与を支給するに当たって,同年11月29日付けで,次の内容を記載した平成6年度回覧文書を従業員に回覧した。 ア支給日平成6年度年末賞与を12月16日に支給する。 イ支給対象者平成6年9月15日以前に本採用になった職員で,同年12月17日現在も継続して常勤の本採用職員(嘱託は除く)として勤務し,今後も引き続き勤務する意志を有すると認められる者,及び出勤率(出勤した日数÷出勤すべき日数)が90%以上の者(本件90%条項。 )ウ支給計算基準平成4年9月15日以前に本採用になった職員(基本給×4.0)+職階手当+(家族手当×2)-(基本給÷20)×欠勤日数(備考)①欠勤日数は,平成6年5月16日より同年11月15日までの期間で算出する。 ③遅刻,早退も欠勤日数に加算する。 ④就業規則45条7号,8号の特別休暇については欠勤日数に加算する(備考④。 )(6)次いで,控訴人は,平成7年度夏期賞与を支給するに当たって,同年6月8日付けで,次の内容を記載した平成7年度回覧文書を従業員に回覧した。 ア支給日平成7年度夏期賞与を6月29日に支給する。 - 15 -イ支給対象者平成7年5月15日以前に本採用になった職員 8日付けで,次の内容を記載した平成7年度回覧文書を従業員に回覧した。 ア支給日平成7年度夏期賞与を6月29日に支給する。 - 15 -イ支給対象者平成7年5月15日以前に本採用になった職員で,同年6月29日現在も継続して常勤の本採用職員(嘱託は除く)として勤務し,今後も引き続き勤務する意志を有すると認められる者,及び出勤率(出勤した日数÷出勤すべき日数)が90%以上の者(本件90%条項。 )ウ支給計算基準平成5年5月15日以前に本採用になった職員(基本給×3.0)+職階手当-(基本給÷20)×欠勤日数(備考)①欠勤日数は,平成6年11月16日より平成7年5月15日までの期間で算出する。 ③遅刻,早退は3回で欠勤1日とし,端数については2回は欠勤1日,1回は欠勤0.5とする。 ④就業規則45条7号,8号の特別休暇については欠勤日数に加算する(備考④。 )⑤育児休職規程13条の勤務時間の短縮を受けた場合には,短縮した分の総時間数を7時間45分(7.75)で除して欠勤日数に加算する(ただし,0. 5未満の端数日については切り捨てる。備考⑤。 )(7)平成6年度年末賞与の支給対象期間である平成6年5月16日から同年11月15日までの期間において,出勤が義務付けられた日数は125日であり,上記支給要件によれば,13日以上欠勤すれば,賞与は支給されないことになる。控訴人は,備考④(平成6年度回覧文書除外規定)により,8週間の産後休業を取得し40日分が欠勤扱いとされた被控訴人について,本件90%条項を充足しないことを理由に平成6年度年末賞与の支給を行わなかった。 また,平成7年度夏期賞与については,上記の支給要件によれば,その支給期間中,1日につき1時間15分の勤務時間短縮措置を受けると,1日当たり約16%の割合で欠勤して 度年末賞与の支給を行わなかった。 また,平成7年度夏期賞与については,上記の支給要件によれば,その支給期間中,1日につき1時間15分の勤務時間短縮措置を受けると,1日当たり約16%の割合で欠勤している計算になる。控訴人は,備考⑤(平成7年度回覧文書除外規定)により,上記の支給対象期間中にわたって1時間15分の育児時間を取得した被控訴人について,本件90%条項を充足しないことを理由に平成7年度夏期賞与の支給を行わなかった。 (8)控訴人においては,少なくとも昭和55年当時から年2回にわたって賞与が支,,給され本件90%条項と同様に出勤率が9割を超えることが要求されるとともに係数の違いこそあれ本件支給計算基準条項とほぼ同様の計算式でもって賞与の金額が算定され(控除額は基本給を月間の就業日数で割って欠勤日数を掛けたものである,これらは回覧文書に記載されて従業員に周知されてきた。本件90%条項。)は,その後,給与規程に盛り込まれるようになったが,その余の支給要件は,回覧文書によってその都度明らかにされてきた。 控訴人は,平成4年度の年末賞与の支給に当たって,初めて回覧文書に就業規則45条7号,8号の特別休暇を欠勤日数に加算するとの備考④を加え,以後,特別。 ,,休暇のうちの産前産後休暇と生理休暇を欠勤扱いにしたこれは控訴人において- 16 -初めて産前産後休暇の取得を予定する女性従業員が出現したことから,賞与の支給に関して,生理休暇と併せて産前産後休暇を欠勤扱いとするのが相当であるとの判断に基づいた措置であった。 次いで,控訴人は,平成7年度の夏期賞与の支給に当たって,初めて回覧文書に育児休職規程13条の勤務時間短縮措置による育児時間を欠勤扱いにするとの備考⑤を加えた。これは,控訴人の女性従業員として,初めて被控訴人が勤務時間短縮 年度の夏期賞与の支給に当たって,初めて回覧文書に育児休職規程13条の勤務時間短縮措置による育児時間を欠勤扱いにするとの備考⑤を加えた。これは,控訴人の女性従業員として,初めて被控訴人が勤務時間短縮措置を受けていたところ,賞与の支給に関して,この短縮時間分を欠勤扱いとするのが相当であるとの判断に基づくものであったが,この措置は上記夏期賞与の支給日の約1か月前に開かれた会議で決定されたものであったため,被控訴人が育児時間を取るに際してはこのような規定はなく(被控訴人が平成6年10月6日から育児時間を取ったにもかかわらず,平成6年度回覧文書に備考⑤に相当する規定は置かれなかった,被控訴人としては,勤務時間短縮措置を申請するに際して,そ。)のことで賞与の支給に関して不利益を受けるとの説明が控訴人側から一切なかったこともあって,欠勤扱いされることなど想定もできなかった。 なお,控訴人は,それ以降,賞与の支給に際して,回覧文書において備考④及び備考⑤の規定をそのまま置いている。 (,,,,,,,甲6の1ないし6 50の1ないし3 乙4の1・2 原審証人A,同B,当審証人C,原審及び当審における被控訴人本人)(9)被控訴人の所属する労働組合は,備考④及び備考⑤により,賞与の支給に当たって産前産後休業等が欠勤扱いされることに強く異議を唱えてきた。本件の平成6年度年末賞与や平成7年度夏期賞与の支給に関する団体交渉の場でも,組合側は,備考④及び備考⑤について働く女性の権利を考えると極めて重要な問題であるとして異議を申し入れたが,控訴人側は,撤回するつもりはない旨回答した。組合は,異議を留保した上で妥結することとし,殊に平成7年12月22日付けをもって同年度の夏期賞与等について控訴人との間に合意書を取り交わしたが,そ たが,控訴人側は,撤回するつもりはない旨回答した。組合は,異議を留保した上で妥結することとし,殊に平成7年12月22日付けをもって同年度の夏期賞与等について控訴人との間に合意書を取り交わしたが,そこには組合が異議を留保したことは記載されていない。なお,控訴人と組合との間には,平成8年度においても賞与の支給に関して同様の内容の合意書が取り交わされている。 (甲8の1ないし3,13ないし21,75,79,乙6の1,23の2,25の1,原審証人A,当審証人C,原審及び当審における証人B)(10)控訴人においては,従業員の年間総収入額に占める賞与の比重が大きく,被控訴人の場合,以下のとおり,平成6年度及び平成7年度を除く年度における年間総収入額に占める賞与の割合は,約27%から31%であった。 昭和63年度年間総収入額341万3280円,賞与合計額95万8960円(年間総収入額に占める賞与の割合は28.09%,以下同じ)。 平成元年度年間総収入額328万5476円,賞与合計額100万1040円(30.47%)平成2年度年間総収入額370万5146円,賞与合計額112万5460円(30.38%)平成3年度年間総収入額387万6892円,賞与合計額120万6040円(31.11%)- 17 -平成4年度年間総収入額420万9449円,賞与合計額124万8960円(29.67%)平成5年度年間総収入額422万0612円,賞与合計額126万4770円(29.97%)平成6年度年間総収入額278万3990円,夏期賞与額49万4965円平成7年度年間総収入額349万0585円,年末賞与額65万5520円平成8年度年間総収入額426万4318円,賞与合計額115万7920円(27.15%)(甲4(枝番を含む,38,39の1・ 成7年度年間総収入額349万0585円,年末賞与額65万5520円平成8年度年間総収入額426万4318円,賞与合計額115万7920円(27.15%)(甲4(枝番を含む,38,39の1・2,40の1ないし3)。) 本件各賞与を全額不支給とした控訴人の本件各取扱いについて本件各賞与は,支給対象期間中の労働の対償として賃金たる性質を有しており,賞与の支給要件や本件各除外条項(備考④及び備考⑤)などを定めた本件各回覧文書は就業規則の給与規程と一体となり,本件90%条項の内容を具体的に定めたものである。ところで,産前産後休業を取得し,又は勤務時間の短縮措置を受けた労働者は,その間就労していないのであるから,労使間に特段の合意がない限り,その不就労期間に対応する賃金請求権を有しておらず,当該不就労期間を出勤として取り扱うかどうかは原則として労使間の合意にゆだねられているというべきであり,従業員の出勤率の低下防止等の観点から,出勤率の低い者につきある種の経済的利益を得られないこととする措置ないし制度を設けることも,一応の経済的合理性を有する。しかし,本件各回覧文書によって具体化された本件90%条項のうち,出勤すべき日数に産前産後休業の日数を算入し,出勤した日数に産前産後休業の日数及び勤務時間短縮措置による短縮時間分を含めないものとしている部分は,労働基準法65条及び育児休業法10条により認められた権利等の行使を抑制し,ひいては労働基準法等がそれらの権利等を保障した趣旨を実質的に失わせるものというべきであるから,公序良俗に反し無効である。そして,本件90%条項は,賞与支給の根拠条項と不可分一体のものであるとは認められず,出勤率の算定に当たり欠勤扱いとする不就労の範囲も可分であると解されるし,産前産後休業を取得し,又は勤務時間短縮措置を て,本件90%条項は,賞与支給の根拠条項と不可分一体のものであるとは認められず,出勤率の算定に当たり欠勤扱いとする不就労の範囲も可分であると解されるし,産前産後休業を取得し,又は勤務時間短縮措置を受けたことによる不就労を出勤率算定の基礎としている点が無効とされた場合に,その残余において本件90%条項の効力を認めたとしても,労使双方の意思に反するものではないというべきであるから,本件90%条項の上記一部無効は,賞与支給の根拠条項の効力に影響を及ぼさない。 以上は,本件上告審判決が拘束力をもって判示するとおりである。 そうすると,本件90%条項により,出勤すべき日数に産後休業の日数を算入し,出勤した日数に産後休業の日数及び勤務時間短縮措置による短縮時間分を含めないものとして,本件各賞与の全額を不支給とした控訴人の本件各取扱いは違法である。なお,被控訴人は,契約上の請求権に基づき本件各賞与の支払いを求めるとともに,選択的に不法行為による損害賠償請求として同額の金員の支払いを求めているところ,本件各取扱いの違法性は大きいというべきであるから,本件各賞与の全部ないし一部の請求が認められる場合は,その付帯請求としての遅延損害金は不法行為の日である本件各賞与の支給日を起算日として請求することができるものである。 - 18 - 本件各賞与の一部不支給について控訴人の給与規程及びこれと一体を成す本件各回覧文書は,本件各賞与について本件支給計算基準条項により賞与の額を算定し,産前産後休業の日数及び育児のための勤務時間短縮措置による短縮時間分を欠勤日数に加算する旨を定めているというのであるから,本件90%条項のうち,出勤すべき日数に産前産後休業の日数を算入し,出勤した日数に産前産後休業の日数及び勤務時間短縮措置による短縮時間分を含めないものとしている部分 を定めているというのであるから,本件90%条項のうち,出勤すべき日数に産前産後休業の日数を算入し,出勤した日数に産前産後休業の日数及び勤務時間短縮措置による短縮時間分を含めないものとしている部分が無効であるとしても,本件支給計算基準条項の適用に当たっては,産前産後休業の日数及び勤務時間短縮措置による短縮時間分は,本件各回覧文書の定めるところに従って欠勤として減額の対象となるというべきである。そして,本件支給計算基準条項は,賞与の額を一定の範囲内でその欠勤日数に応じて減額するにとどまるものであり,加えて,産前産後休業を取得し,又は育児のための勤務時間短縮措置を受けた労働者は,法律上,上記不就労期間に対応する賃金請求権を有しておらず,控訴人の就業規則及び育児休職規程においても上記不就労期間は無給とされているのであるから,本件各除外条項(備考④及び備考⑤)は,労働者の前記権利等の行使を抑制し,労働基準法等が前記権利等を保障した趣旨を実質的に失わせるものとまでは認められず,これをもって直ちに公序に反し無効なものということはできない。 以上は,本件上告審判決が拘束力をもって判示するとおりである。 就業規則の不利益変更について(1)前記認定のとおり,控訴人の就業規則,給与規程及びこれと一体を成す回覧文書において,賞与の支給に当たって産前産後休業を欠勤扱いにする旨の備考④が定められたのは,平成4年度年末賞与の支給に係る回覧文書が初めてであり,同じく勤務時間短縮措置による育児時間を欠勤扱いにする旨の備考⑤が定められたのは,平成7年度夏期賞与の支給に係る回覧文書が初めてであるが,これは,控訴人において賃金たる性質を有する賞与の支給に関して,新たな減額規定を設けたものといってよいから,労働条件を定めた就業規則の不利益変更であるというべきである。 , 回覧文書が初めてであるが,これは,控訴人において賃金たる性質を有する賞与の支給に関して,新たな減額規定を設けたものといってよいから,労働条件を定めた就業規則の不利益変更であるというべきである。 ,,,控訴人は賞与の支給については控訴人の幅広い裁量に基づいて決定されまたノーワーク・ノーペイの原則からして産前産後休業や育児時間の制度による不就労期間の賃金請求権はそもそも労働者に帰属していなかったとして,本件各除外条項(備考④及び備考⑤)を設けたとしても,就業規則の不利益変更の問題には当たらないと主張する。しかし,前説示のとおり,控訴人において賞与は賃金たる性質を有するのであって,その支給について幅広い裁量があるとしても,労働条件の一つ,(。),であることは疑いなく就業規則これと一体を成す回覧文書を含むにおいて賞与の算定について特定の特別休暇の取得や育児時間の取得を欠勤扱いにするような減額規定を新たに設けることは不利益変更に当たるものである。また,就業規則で新たな減額規定を設ける以前から,これと別途に労働協約,労使慣行あるいは個別の労働契約において賞与につき同様の減額措置が合意されてきたというような事実を認めるに足りる証拠もないのであって,控訴人の上記主張は採用できない。なお,控訴人は,賞与について算定対象となる期間中に起こり得るすべての事象について前もって算定条件を示すことは使用者に対して不可能を強いるものであると主- 19 -張するが,本件で問題となっているのは,本件各除外条項をそれぞれ設ける以前から就業規則及び育児休職規程に規定されていた産前産後休業や勤務時間短縮措置による育児時間についての賞与支給に当たっての取扱いであって,前もってその取扱いを決定することができなかった事由であるとは到底いえないから,控訴人の上記 に規定されていた産前産後休業や勤務時間短縮措置による育児時間についての賞与支給に当たっての取扱いであって,前もってその取扱いを決定することができなかった事由であるとは到底いえないから,控訴人の上記主張も採用できない。 (),, ところで新たな就業規則の作成又は変更によって労働者の既得の権利を奪い労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは,原則として許されない。しかし,労働条件の集合的処理,特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって,当該規則条項が合理的なものである限り,個々の労働者において,これに同意しないことを理由として,その適用を拒むことは許されない。そして,当該規則条項が合理的なものであるとは,当該就業規則の作成又は変更が,その必要性及び内容の両面からみて,それによって労働者が被ることになる不利益の程度を考慮しても,なお当該労使関係における当該条項の法的規範性を是認することができるだけの合理性を有するものであることをいい,特に,賃金,退職金など労働者にとって重要な権利,労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成又は変更については,当該条項が,そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容することができるだけの必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において,その効力を生ずるものというべきである(最高裁昭和43年12月25日大法廷判決・民集22巻13号3459頁,最高裁昭和63年2月16日判決・民集42巻2号60頁,最高裁平成8年3月26日判決・民集50巻4号1008頁,最高裁平成9年2月28日判決・民集51巻2号705頁,最高裁平成12年9月7日判決・民集54巻7号2075頁参照。 )そこで,本件において,本件各除外条項が必要性に基づいた合理的なものとして効力を有するか 9年2月28日判決・民集51巻2号705頁,最高裁平成12年9月7日判決・民集54巻7号2075頁参照。 )そこで,本件において,本件各除外条項が必要性に基づいた合理的なものとして効力を有するか否かを検討すると,一方において,従業員の出勤率の低下防止等の要請があり,他方において,産前産後休業を取る権利及び育児のための勤務時間短,,縮措置を請求し得る利益の保障の要請がありこれらの要請を調整したものとして出勤率の低い者につきある種の経済的利益を得られないこととする措置ないし制度を設けることには,相応の合理性があり,賞与の支給について,欠勤日数に応じてある程度の不利益を被るものとする措置ないし制度を設けることも,許されるものと解される。そして,産前産後休業又は育児時間を取得した労働者は,法律上,これらの不就労期間に対応する賃金請求権を有しておらず,控訴人の就業規則等においても上記不就労期間は無給とされているのであるから,労使間に特段の合意がない限り,賞与の支給に関しても当該不就労期間を欠勤扱いとしたからといって,直ちにこれを不合理ないし必要性を欠くものということはできない。 以上に加えて,本件各除外条項が適用された場合の賞与額の減収による影響が後記の程度にとどまることを考え合わせると,本件各除外条項を設けたことによる就業規則の変更は合理性かつ必要性があるものとして効力を有するものと認めることができるというべきである。 (3)被控訴人は,産前産後休業及び勤務時間短縮措置による育児時間の取得を労働者の責めに帰すべき事由による欠勤と同様に取り扱うのは相当でなく,就業規則に- 20 -定められた他の特別休暇等との整合性も欠くと主張する。しかし,本件各除外条項を設けて賞与の一部を不支給としたからといって,これをもって公序に反し無効なものである 相当でなく,就業規則に- 20 -定められた他の特別休暇等との整合性も欠くと主張する。しかし,本件各除外条項を設けて賞与の一部を不支給としたからといって,これをもって公序に反し無効なものであるといえないことは,前記のとおりであり,本件支給計算基準条項における控除額算定の基礎となる欠勤日数を労働者の責めに帰すべき事由による欠勤に限定して解釈しなければならない根拠はないし,また,他の特別休暇等と同一に取り扱わなければならない根拠も見い出し難い(殊に,勤務時間短縮措置による育児時間を欠勤扱いすることについては,育児休職規程で賞与の支給に関して育児休職期間中の日数を欠勤として取り扱うものとされていることに照らして,かえって整合的であるともいえる。 。)次に,被控訴人は,控訴人が本件各除外条項を設けたことについて,女性に対する差別的,制裁的な意図をもってしたものであると主張するが,そのような事実を認めるに足りる的確な証拠はない。 また,被控訴人は,本件各除外条項のうちの備考⑤について,被控訴人が育児時間を取得した後になって設けたものであって,不利益遡及禁止の法理に違反し,かつ,被控訴人を狙い撃ちにした規定であると主張する。確かに,前記のとおり,被控訴人が勤務時間短縮措置を受けたときには賞与の支給に当たって育児時間の取得が不利益扱いされるとの規定はなかったものであり,この規定を被控訴人に適用することの適否については後記のように検討を要するところである。しかし,備考⑤を含めて本件各除外条項の内容は特に不合理であるとはいえないのであり,この規定が,賞与の支給に当たり,規定の制定前の事情を減額の要因として考慮に入れることを内容とするものであるからといって,この規定を取り込んだ就業規則の変更そのものの効力に消長を来すというものではない。また,備考⑤ の支給に当たり,規定の制定前の事情を減額の要因として考慮に入れることを内容とするものであるからといって,この規定を取り込んだ就業規則の変更そのものの効力に消長を来すというものではない。また,備考⑤を設けた契機が控訴人の従業員において初めて勤務時間短縮措置に係る権利を行使した被控訴人の出現によるものであるとはいえ,その内容が殊更に被控訴人のみを不利益に扱うものではなく,将来同様の状況におかれる従業員に等しく適用される内容となっているのであるから,これをもっても,就業規則の変更が効力を生じないというものでもない。 ,,,さらに被控訴人は本件各除外条項の設定を含めた控訴人の就業規則について制定の手続上就業規則としての効力を生じない旨主張するが,前記の認定事実に照らせば,労働者からの意見聴取や周知,更には行政官庁への届け出等について特に欠ける点は見当たらず,就業規則としての効力(変更の効力を含む)を妨げる事。 情は認められない。 その他,被控訴人の主張を検討しても,本件各除外条項は,就業規則の変更としての合理性を有し,有効に効力が生じているというべきである。 そうすると,他にその適用を妨げる事由がない限り,本件各除外条項に従って被控訴人の産後休業日数及び勤務時間短縮措置による短縮時間分を欠勤扱いとして,本件支給計算基準条項を適用して被控訴人に対する本件各賞与の一部の支払いを認めるべきである。 本件各除外条項を適用した場合の本件各賞与の金額について(1)前記の前提事実(原判決「事実及び理由」の第二の一項)及び認定事実に加え- 21 -て,証拠(甲5の2・3,47の1ないし12,乙1,28,原審における被控訴人本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア平成6年度年末賞与の支給当時において,被控訴人の基本給は月額14万1 拠(甲5の2・3,47の1ないし12,乙1,28,原審における被控訴人本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア平成6年度年末賞与の支給当時において,被控訴人の基本給は月額14万1300円,職階手当は19万4100円,家族手当は7600円であった。当該賞与の支給対象期間において,産後休業以外に欠勤として扱われるような事由はなく,したがって,欠勤日数は産後休暇の40日のみとなる。 イ平成7年度夏期賞与の支給当時において,被控訴人の基本給は月額14万34,。 ,00円職階手当は5万7600円であった当該賞与の支給対象期間において出勤が義務付けられた日数は120日であり,育児時間(1日1.25時間)以外に欠勤として扱われるような事由はなかった。 (2)以上を本件支給計算基準条項に当てはめると,本件各賞与額は次のとおりとなる。 ア平成6年度年末賞与基本給(14万1300円)×係数(4.0)=56万5200円職階手当19万4100円家族手当(7600円)×2=1万5200円以上小計77万4500円基本給(14万1300円)÷20×欠勤日数(40日)=28万2600円77万4500円-28万2600円=49万1900円イ平成7年度夏期賞与基本給(14万3400円)×係数(3.0)=43万0200円職階手当5万7600円以上小計48万7800円基本給(14万3400円)÷20×欠勤日数(19日,120日×1.25÷7.75)=13万6230円48万7800円-13万6230円=35万1570円なお,控訴人は,平成6年度年末賞与について,育児時間を日数に換算した4日分も欠勤扱いにすべきであるとも主張するようであるが,平成6年度回覧文書には,。 備考⑤に相当するような規定はないのであるから控訴人の上記主張は失当で 年末賞与について,育児時間を日数に換算した4日分も欠勤扱いにすべきであるとも主張するようであるが,平成6年度回覧文書には,。 備考⑤に相当するような規定はないのであるから控訴人の上記主張は失当である(3)以上によると,本件各除外条項が適用された場合の本件各賞与の金額は,平成6年度年末賞与が49万1900円,平成7年度夏期賞与が35万1570円となり,この場合の被控訴人の年間総収入額は,平成6年度が327万5890円(278万3990円+49万1900円。なお,賞与の割合は30.13%,平成)7年度が384万2155円(349万0585円+35万1570円。なお,賞与の割合は26.21%)となる。これに対し,本件各除外条項が適用されないとした場合の本件各賞与の金額は,平成6年度年末賞与が77万4500円,平成7年度夏期賞与が48万7800円であるから,この場合の被控訴人の年間総収入額は,平成6年度が355万8490円(278万3990円+77万4500円。 なお,賞与の割合は35.67%,平成7年度が397万8385円(349万)0585円+48万7800円。なお,賞与の割合は28.74%)となる。そし- 22 -て,本件各除外条項が適用になった場合に被控訴人の受ける不利益は,年間総収入額において平成6年度で28万2600円,平成7年度で13万6230円となるから,平成6年度で7.94%,平成7年度で3.42%の収入減となる。 信義則違反について(1)被控訴人は,本件各除外条項について,女性労働者の勤務の継続を不可能にすることを意図して設けられたものであり,内容自体が極めて不公正かつ差別的であるほか,本件支給計算基準条項の趣旨ないし目的との間に合理的な関連性がなく,労働者の受ける不利益も重大である旨主張するが,これらの主張 図して設けられたものであり,内容自体が極めて不公正かつ差別的であるほか,本件支給計算基準条項の趣旨ないし目的との間に合理的な関連性がなく,労働者の受ける不利益も重大である旨主張するが,これらの主張を採用することができないことは,前説示のとおりである。 しかしながら,本件各除外条項のうちの備考⑤は,前記のとおり,被控訴人が平成6年10月6日に勤務時間短縮措置を受けた際には存在しなかった規定であり,控訴人の女性従業員として被控訴人が初めて勤務時間短縮措置を受けたことを念頭に,被控訴人が引き続き短縮勤務を行っていた最中の平成7年5月ころの会議で設けることが決定され,同年6月8日付けの平成7年度回覧文書に規定されて同年度の夏期賞与の支給から適用されることになったというものである。したがって,控訴人におけるその当時の賞与の支給条件によれば,勤務時間短縮措置による育児時間を取得しても欠勤扱いされることはなかったものであって,被控訴人としても,育児時間を取得するに当たって,これが賞与の支給において不利益に扱われるとは想定できなかったのである。このような事情に加えて,控訴人においては,被控訴人を含めて従業員の年間総収入額に占める賞与の比重が大きいことにもかんがみれば,就業規則を変更して賞与の算定において勤務時間短縮措置による育児時間の取得を欠勤扱いとすることは許されるとしても,そのような不利益扱いは前もって従業員に対して周知されるべきであって,このような規定のなかったときに勤務時間短縮措置を受けた従業員にまで遡って不利益を及ぼすことは,信義誠実の原則に反して許容することができないものというべきである。 したがって,平成6年度年末賞与の支給に当たって備考④を適用し,本件支給計算基準条項に従って賞与の金額を一部カットすることは許されるが,平成7年度夏期賞 許容することができないものというべきである。 したがって,平成6年度年末賞与の支給に当たって備考④を適用し,本件支給計算基準条項に従って賞与の金額を一部カットすることは許されるが,平成7年度夏期賞与の支給に当たって,備考⑤を適用して賞与の金額をカットすることは許されないものである。 (2)控訴人は,被控訴人が育児時間を取得した後になって備考⑤を設けたことについて,賞与の算定条件について事前にすべての事象に対する基準を決めておくことは困難であるから,やむを得ない措置であったと主張するが,本件で問題となっている勤務時間短縮措置による育児時間の取扱いを前もって決定することができなかったとは到底いえないことは,前記説示のとおりである。また,控訴人は,賞与の支給に関しては,就業規則において詳細を回覧文書により支給の都度定めると規定しているから,本件各賞与のカットを本件各除外条項の遡及的な適用などと非難することはできない旨主張するが,法律や就業規則により労働者に認められた権利行使を重要な労働条件の一つである賞与の支給に当たって遡及的に不利益に扱うことは,賞与の支給日や係数の決定などとは質的に異なる問題であって,これらを同列に扱うことはできないというべきであるから,控訴人の上記主張は採用することが- 23 -できない。 その他,備考⑤が適用された場合の平成7年度の収入に対する控除額の占める割合が3.55パーセントにとどまることなど控訴人の主張を斟酌しても,前記の信義則違反に関する説示を動かすことはできないというべきである。 被控訴人の本件請求の帰結について以上の次第であって,被控訴人の本件各賞与の支払請求は,平成6年度年末賞与につき,本件支給計算基準条項に備考④を適用することが許されるから,49万1900円の支払いを求める限度で理由があり,平 いて以上の次第であって,被控訴人の本件各賞与の支払請求は,平成6年度年末賞与につき,本件支給計算基準条項に備考④を適用することが許されるから,49万1900円の支払いを求める限度で理由があり,平成7年度夏期賞与につき,これに備考⑤を適用することは信義則に違反して許されないから,48万7800円の支払いを求めることができる。また,被控訴人は,選択的に不法行為による損害賠償請求として本件各賞与と同額の金員の支払いを求めているところ,前記説示のとおり,損害賠償が認められる範囲も上記の各金員の支払いを求める部分に限られることになるから,同様の帰結となる。 したがって,被控訴人の本件請求は,本件各賞与として合計97万9700円及び内金49万1900円に対する不法行為の日である平成6年12月16日から,内金48万7800円に対する同じく平成7年6月29日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で認容すべきである。 仮執行の原状回復請求について(1)控訴人が仮執行宣言の付された本件原判決に基づき平成10年3月30日に被控訴人に対し145万6771円を支払ったことは,当事者間に争いがない。したがって,控訴人は,民事訴訟法260条2項に基づき,原判決が変更(一部取消)される限度において,被控訴人に対し,仮執行の原状回復として,支払った上記金員の返還を求めることができる。 (2)被控訴人は,控訴人が原判決後に上記の金員を強制執行によることなく任意に支払ったと主張するが,仮執行宣言付判決に対して上訴を提起した被告が,その判決によって履行を命じられた債務の存否を争いながら,同判決で命じられた債務につきその弁済としてした給付は,それが全くの任意弁済であると認められる特別の事情のない限り,仮執行の宣言に基づき被告が給付 決によって履行を命じられた債務の存否を争いながら,同判決で命じられた債務につきその弁済としてした給付は,それが全くの任意弁済であると認められる特別の事情のない限り,仮執行の宣言に基づき被告が給付したものに当たると解するのが相当であって(最高裁昭和47年6月15日判決・民集26巻5号1000頁参照,本件においては,上記特別の事情のあることは認められない。 ),,,また被控訴人は上記の金員を善意の受益者として費消してしまっているから現存利益は存在しないなどと主張する。仮執行の宣言に基づいて給付したものの返還については,不当利得に関する民法の規定が適用ないし類推適用されると解せられるが,仮執行制度の趣旨及び変更ないし取消しの対象となる仮執行宣言付判決に従って給付をした被告と給付を受けた原告の衡平を考えると,民法704条が適用ないし類推適用されるというべきであって,給付を受けた原告(本件の場合は被控訴人)に現存利益がないとしても,原告は給付を受けたものを返還する義務があるというべきである。仮に民法703条が適用になるとしても,被控訴人は上記の金員を生活費に費消したと主張しているところ,生活費に支出することによって,利得者の手元には支出を免れた固有財産たる利益が残存しているものと考えられるか- 24 -ら,特段の事情のない限り,生活費に支出したことを現存利益の消滅と解することもできない。 さらに,被控訴人は,本件各賞与を全額不支給とされたことによって生計維持のために借入れをすることを余儀なくされ,返還を求められる金額をはるかに上回る借入利息の支払いを強要されたから,これを控訴人に対する損害賠償請求権として。 ,,相殺する旨主張するしかし被控訴人が生計維持のために借入れをしたとしてもこれと本件各賞与を不支給とされたこととの間に相当因 支払いを強要されたから,これを控訴人に対する損害賠償請求権として。 ,,相殺する旨主張するしかし被控訴人が生計維持のために借入れをしたとしてもこれと本件各賞与を不支給とされたこととの間に相当因果関係があることをうかがわせる事情は認められないから,これを理由として控訴人に対して損害賠償請求権を取得すると認めることはできない。 以上のとおり,仮執行の原状回復義務を否定する被控訴人の主張はいずれも理由がない。 (3)前記のとおり,被控訴人の本件請求は,控訴人に対し,97万9700円及び内金49万1900円に対する平成6年12月16日から,内金48万7800円に対する平成7年6月29日から各支払済みまで年5分の割合による金員の支払いを求める限度で理由があり,他方で,控訴人が仮執行宣言付きの原判決に基づき被控訴人に対し145万6771円を支払ったのは,平成10年3月30日である。 そうすると,上記各内金について平成10年3月30日までの遅延損害金が発生しているから,その金額は,内金49万1900円については8万0860円{49万1900円×0.05×(3+105÷365,内金48万7800円につ)}いては6万7156円{48万7800円×0.05×(2+275÷365})であるから,元利金の合計額は112万7716円となる。 したがって,被控訴人が返還すべき金額は32万9055円となるから,控訴人は,民事訴訟法260条2項に基づき,被控訴人に対し,32万9055円及びこれに対する平成10年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による損害賠償の支払いを求めることができる。 第4 結論 以上のとおり,被控訴人の本件請求は,控訴人に対し,本件各賞与として合計97万9700円及び内金49万1900円に対する平成6年12月16日から,内金4 賠償の支払いを求めることができる。 第4 結論 以上のとおり,被控訴人の本件請求は,控訴人に対し,本件各賞与として合計97万9700円及び内金49万1900円に対する平成6年12月16日から,内金48万7800円に対する平成7年6月29日から各支払済みまで年5分の割合による金員の支払いを求める限度で理由があるから,控訴人に対し本件各賞与として合計126万2300円及び内金77万4500円に対する平成6年12月16日から,内金48万7800円に対する平成7年6月29日から各支払済みまで年5分の割合による金員の支払いを命じた原判決主文第1項中,前記の部分を除いてその余を取り消し,被控訴人のその取消しに係る部分の請求を棄却すべきである。 したがって,控訴人の本件控訴は上記の限度で理由があり,その余は理由がないから棄却すべきである。 また,控訴人の仮執行の原状回復申立てについては,被控訴人に対し,32万9055円及びこれに対する平成10年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払いを求める限度で理由があるから,これを認容し,その余は理由がないから棄却すべきである。 - 25 -よって,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第23民事部裁判長裁判官安倍嘉人裁判官内藤正之裁判官後藤健
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