平成27(行ウ)70 渋谷区新総合庁舎等整備事業差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成29年12月21日 東京地方裁判所 公物・公企業など
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判決文本文47,400 文字)

平成29年12月21日判決言渡平成27年(行ウ)第70号渋谷区新総合庁舎等整備事業差止等請求事件主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告渋谷区長は,別紙2物件目録記載1~4の各土地のうち,別紙図面1の赤斜線部分に所在する渋谷区総合庁舎の建物及び同図面の青斜線部分に所在する渋谷区公会堂の建物を解体してはならない。 2 被告渋谷区長が三井不動産株式会社及び三井不動産レジデンシャル株式会社との間で締結した平成27年10月30日付け定期借地契約を解除その他の方法により終了させないことが違法であることを確認する。 3 被告渋谷区長が三井不動産レジデンシャル株式会社との間で締結した平成27年10月30日付け土地使用貸借契約を解除その他の方法により終了さ せないことが違法であることを確認する。 4 被告渋谷区長は,三井不動産株式会社,三井不動産レジデンシャル株式会社及び株式会社日本設計との間で,平成26年3月31日付け基本協定書記載の新総合庁舎等整備事業の実施に必要な事項に係る契約を締結してはならない。 5 被告渋谷区総務部経理課長は,平成26年3月31日付け基本協定書記載の新総合庁舎等整備事業に係る公金の支出命令をしてはならない。 6 被告渋谷区長が三井不動産株式会社,三井不動産レジデンシャル株式会社及び株式会社日本設計との間で締結した平成26年3月31日付け基本協定書による協定を解除その他の方法により終了させないことが違法であること を確認する。 第2 事案の概要 1 渋谷区は,別紙2物件目録記載1~4の各土地(以下,これらの土地を併せて「本件土地」という。)のうち,別紙図面1の赤斜線部分に 違法であること を確認する。 第2 事案の概要 1 渋谷区は,別紙2物件目録記載1~4の各土地(以下,これらの土地を併せて「本件土地」という。)のうち,別紙図面1の赤斜線部分に所在する渋谷区総合庁舎(以下「現庁舎」という。)及び同図面の青斜線部分に所在する渋谷区公会堂(以下「現公会堂」といい,現庁舎と併せて「現庁舎等」ということ がある。)の各建物を解体した上で建て替えることを計画し,平成26年3月31日付けで三井不動産株式会社(以下「三井不動産」という。),三井不動産レジデンシャル株式会社(以下「三井レジデンシャル」といい,三井不動産と併せて「三井不動産ら」ということがある。)及び株式会社日本設計(以下,三井不動産らと併せて「三井不動産ほか2社」という。)との間で,新総 合庁舎等整備事業に関する基本協定書による協定(以下,平成27年3月31日付け変更後のものを含め,上記基本協定書を「本件基本協定書」といい,これによる協定を「本件基本協定」という。)を締結し,また,平成27年10月30日付けで三井不動産らとの間で定期借地権設定契約(以下「本件定期借地契約」という。)を,同日付けで三井レジデンシャルとの間で土地使用貸借 契約(以下「本件使用貸借契約」という。)をそれぞれ締結した。本件は,渋谷区の住民である原告が,地方自治法242条の2第1項の規定による住民訴訟として,被告らに対し以下の各請求を求める事案である。 (1) 被告渋谷区長(以下「被告区長」という。)に対する請求① 地方自治法242条の2第1項1号に基づき,現庁舎及び現公会堂の各 建物の解体の差止めを求める請求(以下「本件解体差止請求」という。請求の趣旨1項)② 同号に基づき,本件基本協定に係る新総合庁舎等整備事業(以下「本件 号に基づき,現庁舎及び現公会堂の各 建物の解体の差止めを求める請求(以下「本件解体差止請求」という。請求の趣旨1項)② 同号に基づき,本件基本協定に係る新総合庁舎等整備事業(以下「本件整備事業」という。)の実施に必要な事項に係る契約の締結の差止めを求める請求(以下「本件契約締結差止請求」という。請求の趣旨4項) ③ 同項3号に基づき,被告区長が,本件基本協定,本件定期借地契約及び 本件使用貸借契約(以下,併せて「本件基本協定等」という。)を解除その他の方法により終了させないことが違法であることの確認を求める請求(以下「本件各違法確認請求」という。請求の趣旨2項,3項及び6項)(2) 被告渋谷区総務部経理課長(以下「被告経理課長」という。)に対する請求 地方自治法242条の2第1項1号に基づき,本件整備事業に係る公金の支出命令の差止めを求める請求(以下「本件支出命令差止請求」という。 請求の趣旨5項) 2 関係法令の定め(1) 地方財政法 ア地方公共団体の経費は,その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて,これを支出してはならない(4条1項)。 イ地方公共団体の財産は,常に良好の状態においてこれを管理し,その所有の目的に応じて最も効率的に,これを運用しなければならない(8条)。 (2) 地方自治法 ア地方公共団体は,その事務を処理するに当つては,住民の福祉の増進に努めるとともに,最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない(2条14項)。 イ(ア) 売買,貸借,請負その他の契約は,一般競争入札,指名競争入札,随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする(234条1 項)。 (イ) 前項の指名競争入札,随意契約又はせり売りは,政令で定め 借,請負その他の契約は,一般競争入札,指名競争入札,随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする(234条1 項)。 (イ) 前項の指名競争入札,随意契約又はせり売りは,政令で定める場合に該当するときに限り,これによることができる(234条2項)。 (3) 地方自治法施行令地方自治法234条2項の規定により随意契約によることができる場合は, 次に掲げる場合とする(167条の2第1項)。 ア (略)(1号)イ不動産の買入れ又は借入れ,普通地方公共団体が必要とする物品の製造,修理,加工又は納入に使用させるため必要な物品の売払いその他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき(2号)。 ウ (略)(3号~9号) 3 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 現庁舎等の建替えが決定されるに至った経緯ア現庁舎及び現公会堂は,昭和39年に建設された。 イ渋谷区は,平成8年,現庁舎の耐震診断を実施したところ,耐震性能に 問題があると診断されたため,平成9年から平成16年にかけて,現庁舎の耐震補強工事を実施した(乙2)。 ウ平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の後,現庁舎の躯体にコンクリートのひび割れ等の損傷が発見された。 エ渋谷区は,平成24年6月から同年11月までの間,改めて現庁舎の耐 震診断を実施したところ,耐震性能に問題があるとする診断結果が示された(甲4〔資料1〕)。 オ渋谷区議会(以下単に「区議会」という。)において,平成24年10月16日,被告区長に対して「耐震診断の結果を踏まえて,老朽化した庁舎については,建替えに向けた検討委員会の立上げ等,積極的に検討され 区議会(以下単に「区議会」という。)において,平成24年10月16日,被告区長に対して「耐震診断の結果を踏まえて,老朽化した庁舎については,建替えに向けた検討委員会の立上げ等,積極的に検討され たい。」との意見が出され,渋谷区は,このころ,現庁舎を維持して耐震補強工事を行うことと,建て替えること(後者は現公会堂の建替えを含む。)の双方を視野に入れて検討を開始することとした(乙4,5)。 カ渋谷区は,上記エの耐震診断結果を受け,5つの耐震補強案(甲4〔資料2〕)を作成して比較検討の上,平成24年11月20日,同耐震診断 結果とともに区議会に報告した。 キ渋谷区は,平成24年12月1日,総務部に庁舎耐震問題担当課(以下単に「担当課」という。)を設置した。 ク区議会は,平成25年5月20日,庁舎問題特別委員会を設置し,耐震補強による現庁舎の活用と建替えの双方についての検討をした。 ケ担当課は,耐震補強による現庁舎活用案と建替案との比較検討を行い, 平成25年8月30日,その検討結果を区議会に報告した(甲4〔資料3〕)。 コ区議会は,平成25年9月10日,「渋谷区総合庁舎の建替えを求める決議」(以下「本件決議」という。)をした(乙7)。 サ渋谷区は,平成25年10月11日,現庁舎について建替えを行うこと を決定した(甲4)。 (2) 本件整備事業を行う事業者として三井不動産らが選定された経緯ア担当課は,建替案の検討において,現庁舎及び現公会堂の敷地(本件土地)を,建替え後の庁舎及び公会堂の整備用地(以下,これらの庁舎等をそれぞれ「新庁舎」,「新公会堂」といい,併せて「新庁舎等」というこ とがある。また,新庁舎等の整備用地を「本件新庁舎等整備用地」という。)と,それ以外の土地(以下 地(以下,これらの庁舎等をそれぞれ「新庁舎」,「新公会堂」といい,併せて「新庁舎等」というこ とがある。また,新庁舎等の整備用地を「本件新庁舎等整備用地」という。)と,それ以外の土地(以下「本件民間施設用地」という。)とに分け,後者の土地につき民間企業が共同住宅等の民間施設を建設することができるよう定期借地権を設定し,当該民間企業が定期借地権の設定の対価として支払う金員(以下「権利金」という。)を建替費用に充てるという 方法を検討した。 なお,本件新庁舎等整備用地及び本件民間施設用地の位置関係の概要は,別紙図面2のとおりである。 イ渋谷区は,平成24年12月27日,上記アの方法による建替えを行うことを前提とする募集要項を提示し,現庁舎等の建替えに係る事業手法の 提案を求める公募(以下「本件公募」という。)を行った(甲5,乙6)。 ウ本件公募に対して,提案期限とされた平成25年2月28日までに,5つの事業者から提案書が提出された(以下,これらの事業者による案をそれぞれ「A案」~「E案」といい,これらを併せて「本件各提案」という。 本件各提案の概要は,別紙4のとおりである。)(甲6の4,甲7〔別紙2~5〕)。 エ渋谷区は,平成25年11月,本件各提案について外部有識者の意見を聴くため,外部有識者及び渋谷区職員を構成員とする庁舎問題検討会を設置した。 オ被告区長は,平成25年12月13日,庁舎問題検討会の会長から同検討会において示された意見について報告を受け,本件各提案について比較 検討を行った結果,三井不動産が提案したC案を選定することを決定した。 (3) 本件基本協定が締結された経緯ア渋谷区は,平成26年1月31日,三井不動産に対し,優先交渉権者となった旨通知し,C案によ 行った結果,三井不動産が提案したC案を選定することを決定した。 (3) 本件基本協定が締結された経緯ア渋谷区は,平成26年1月31日,三井不動産に対し,優先交渉権者となった旨通知し,C案による事業の実施に向けて三井不動産との協議を開始した。 イ渋谷区は,平成26年3月31日,区議会の議決を経て,三井不動産ほか2社との間で本件基本協定を締結した(甲3,乙8)。 ウ三井不動産等から,建設工事費の高騰によるコスト増を賄うため,当初の提案(C案)よりも共同住宅の階数を2階分増やす内容の変更をしたいとの申入れ(以下「本件変更申入れ」という。)を受けた渋谷区は,検討 の結果,これを了承することとし,平成27年3月31日,区議会の議決を経て,同日,三井不動産ほか2社との間で本件基本協定の内容を一部変更することを合意した(乙9,10)。 エ渋谷区は,平成27年10月30日,三井不動産らとの間で本件新庁舎等整備用地を対象とする定期借地契約(本件定期借地契約)を締結した (乙15)。 オ渋谷区は,平成27年10月30日,三井レジデンシャルとの間で本件民間施設用地等を対象とする土地使用貸借契約(本件使用貸借契約)を締結した(乙16)。 (4) 本件訴えに至る経緯ア原告は,平成26年11月28日,地方自治法242条1項に基づき, 本件整備事業に関し,監査請求をした。 イ渋谷区監査委員は,平成27年1月27日,上記アの監査請求を棄却する旨の判断をし,これを原告に通知した(甲9)。 ウ原告は,平成27年2月16日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 4 争点 (1) 現庁舎及び現公会堂の解体の違法性(本件解体差止請求)(2) 本件整備事業の実施に係る契約締結の違法性(本件契約締結差止請 月16日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 4 争点 (1) 現庁舎及び現公会堂の解体の違法性(本件解体差止請求)(2) 本件整備事業の実施に係る契約締結の違法性(本件契約締結差止請求)(3) 本件基本協定等を解除その他の方法により終了させないことの違法性(本件各違法確認請求)(4) 本件整備事業に係る公金の支出命令の違法性(本件支出命令差止請求) 5 争点に関する当事者の主張の要旨は,別紙3のとおりである(同別紙中の略語は本文においても用いる。)。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に加え,後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実 が認められる。 (1) 現庁舎等の建替えが決定されるに至った経緯ア渋谷区は,平成23年3月11日に東北地方太平洋沖地震が発生したことや,内閣府等により首都直下型地震発生の可能性が指摘されていたことを踏まえ,平成24年11月までに現庁舎の耐震診断を実施したところ, 構造部材(特にコンクリート)の劣化が著しく,Is値が全階(塔屋部分 を除く。)において0.6未満であり,一部0.3未満の部分(Is値0. 23)もあるとの結果が示された(前記前提事実(1)エ,甲4)。 なお,Is値とは,建築物の各階の構造耐震指標として「建築物の耐震改修の促進を図るための基本的な方針」(平成18年国土交通省告示第184号)等において用いられているものであり,数値の評価としては,上 記告示の別表第6において,地震の振動及び衝撃に対する倒壊又は崩壊の危険性につき,0.6以上であれば危険性が低い(ただし,各階の保有水平耐力に係る指標も一定以上であることが必要である。),0.3以上0. 6未満であれば危険性がある,0.3未満であれば危険性が高い の危険性につき,0.6以上であれば危険性が低い(ただし,各階の保有水平耐力に係る指標も一定以上であることが必要である。),0.3以上0. 6未満であれば危険性がある,0.3未満であれば危険性が高いとされている(乙3)。 イ渋谷区は,現庁舎について,耐震補強と建替えの双方を検討することとし,上記アの耐震診断結果を踏まえた5つの耐震補強案(①枠付鉄骨ブレースによる耐震補強案,②プレキャストブロック増設壁による耐震補強案,③制震ブレースによる制震補強案,④中間階免震による免震補強案,⑤基礎免震による免震補強案)を作成した。そして,これらの耐震補強案につ き,施工性(既存フレーム内に容易に設置可能か,大がかりな工事が必要となるか等),工事期間中の使用性,補強後の使用性(執務スペースの減少,導線への制約の有無等),補強目標値となるIs値を0.75とした場合における工期及び概算工事費の各観点から比較検討した結果,中間階免震による免震補強案(上記④)は,免震装置によるエネルギー吸収効果 が十分に期待でき,構造体の耐震性を大幅に向上させることができるだけでなく,備品の転倒や設備機器の損傷等の被害を防ぐことができること,補強後の執務スペースへの影響も少ないこと,工期が26か月と比較的短いことなどから,総合的にみれば他案(上記①~③,⑤)よりも優れていると評価した。 渋谷区は,平成24年11月20日,5つの耐震補強案及びその評価に ついて,上記アの耐震診断結果とともに区議会に報告し,同年12月1日,総務部に庁舎耐震問題担当課(担当課)を設置した。 (以上につき,前記前提事実(1)カ,キ,甲4〔資料2〕)ウ担当課は,耐震補強による現庁舎活用案(上記イ④の中間階免震による免震補強案)と建替案(後記(2 耐震問題担当課(担当課)を設置した。 (以上につき,前記前提事実(1)カ,キ,甲4〔資料2〕)ウ担当課は,耐震補強による現庁舎活用案(上記イ④の中間階免震による免震補強案)と建替案(後記(2)のとおり公募によって得られたA~E案) との比較検討を行ったところ,(ア)現庁舎活用案は,①負担額が59億円であって,建替案における負担額66億円(建替えに伴う付帯経費,仮庁舎経費,移転に伴う経費の合計額)と比べて若干安いものの,②鉄筋コンクリート造建物の耐用年数を迎え,いかに補強しても構造体のコンクリートの劣化が否定できないこと,③工事期間中の騒音・振動,利用導線の分 断などによる区民サービスの低下が避けられないにもかかわらず,工期は26か月であって,建替案(工期は最短の場合,約27~30か月)と比較して大差がないこと,④事務上,環境上及び防災上の課題への十分な対応が難しいこと,⑤老朽化した給排水管,冷暖房設備の取替えや修繕等に係る維持管理費も必然的に増加すること,⑥駆体の劣化に伴い,将来的に 建替えが避けられなくなること,(イ)他方で,建替案によれば,①現庁舎活用案と大きく異ならない負担額と工期により,事務上,環境上,防災上の今日的な区政の課題に対応することができること,②最新の免震技術を採用することで長期にわたって庁舎の安全を確保することができ,環境性能にも配慮することができること,③最新の機能・設備を導入することで 維持管理費を低減することができることなどを記載した検討結果(甲4〔資料3〕)を取りまとめ,これを区議会に報告した(前記前提事実(1)ケ,甲4)。 エ区議会は,平成25年9月10日,(ア)現庁舎は耐震性が十分でなく,大地震では倒壊のおそれがあり,首都直下型地震の切迫性が指摘される中, 震 に報告した(前記前提事実(1)ケ,甲4)。 エ区議会は,平成25年9月10日,(ア)現庁舎は耐震性が十分でなく,大地震では倒壊のおそれがあり,首都直下型地震の切迫性が指摘される中, 震災時対応の拠点となる区役所庁舎の備えを万全にしておくことは喫緊の 課題であるところ,(イ)他の地方公共団体において庁舎の建替え又は中間階免震による免震補強工事を行った例を複数視察するなどして,建替えと免震補強のそれぞれの優位性等につき調査をした結果,現庁舎の免震補強工事を行ったとしても,構造体のコンクリートの劣化を止めることはできず,近い将来において建替えをせざるを得ないことを考慮し,より安全 性・経済性・利便性に優れ,長期間の使用に供することができる建替案を選択すべきであるとの調査結果に至ったなどとして,現庁舎につき早急な建替えを実施するよう強く求める旨の本件決議をした(前記前提事実(1)コ,乙7)。 オ現公会堂は,昭和39年,現庁舎とほぼ同時期に同一業者によって建設 され,平成17年から平成18年にかけて耐震補強がされた(弁論の全趣旨)。 現庁舎と現公会堂は建物が地下でつながっており,現公会堂を機能させるために必要な受変電設備,非常用発電設備,電話設備,給水設備及び消火設備等が現庁舎に設置されているため,現庁舎のみを建て替えるこ ととした場合,現公会堂について,引込経路の再構築,受変電設備の新設,非常用発電設備の新設,電話引込経路の再構築,給水引込経路の再構築,受水槽の新設又は増圧直結給水ポンプの新設,各種消火設備用ポンプユニットの新設又は移設等が必要になることが見込まれていた。他方,現庁舎とともに現公会堂をも建て替えることとした場合には,新庁 舎等の配置いかんによってはその敷地に広い余剰部分を生じ 用ポンプユニットの新設又は移設等が必要になることが見込まれていた。他方,現庁舎とともに現公会堂をも建て替えることとした場合には,新庁 舎等の配置いかんによってはその敷地に広い余剰部分を生じさせ,これを活用することが可能であった。(乙11~13,14の1~3,弁論の全趣旨)なお,現公会堂の解体工事の過程においては,柱について,コンクリートが劣化して剥離し,柱の主筋及び帯筋である鉄筋の暴露が見られたほ か,床版について,鋼製デッキと鉄筋に錆びが生じ,コンクリートが劣 化して剥離が進んでいたことが判明した。また,現公会堂が現庁舎と共有する大規模設備のうち,給水管の多くの箇所で漏水が生じていたほか,スプリンクラーの破損,脱落が見られた。(乙29の1及び2,30の1の1及び2,30の2)カ渋谷区は,平成25年10月11日,以上の経緯を踏まえて,現庁舎等 の建替えを行うことを決定した(前記前提事実(1)サ,甲4)。 キなお,渋谷区は,地方自治法241条1項に基づき,条例の定めるところにより渋谷区都市整備基金及び渋谷区財政調整基金(基金)を積み立てているところ,将来の財政需要の変化に柔軟に対応するため,基金の活用を最小限に抑えるべく,財政需要に照らしつつ財源確保策を図ってもなお 不足が見込まれる場合に基金を活用する方針を採っている。平成26年3月時点における基金の合計額は,585億円であった。(甲13,乙26~28,弁論の全趣旨)(2) C案が選定されるに至った経緯ア渋谷区は,現庁舎等の耐震補強及び建替えの双方について検討していた 平成24年12月,提案期限を平成25年2月28日までとして,現庁舎等の建替えに係る事業手法の提案を求める公募(本件公募)を行った。 本件公募 及び建替えの双方について検討していた 平成24年12月,提案期限を平成25年2月28日までとして,現庁舎等の建替えに係る事業手法の提案を求める公募(本件公募)を行った。 本件公募に係る募集要項には,①本件土地に加え,その南側に位置する小学校敷地及びさらにその南側に位置する神南分庁舎の敷地(別紙3の2〔原告の主張の要旨〕(2)イ,別紙図面1及び2参照)を計画検討区域 とすること,②新庁舎等の整備に当たっては,工期が短く,区の財政負担が最小限となるようにすること,③新庁舎等を本件土地上に整備すること,④現庁舎等及び神南分庁舎を解体し撤去すること,⑤新庁舎は約3万㎡を,新公会堂は座席数2000席をそれぞれ想定すること,⑥新庁舎等の整備後の計画検討区域内における未利用容積率は定期借地権等 の設定による共同住宅等に使用し,民間活力の活用を図ることなどが定 められた。 なお,本件公募に係る募集要項は,新庁舎等の整備費用及び上記民間活力の活用に係る事業に伴う対価等,区の事業収支及び全体収支について収支計画等を作成することを定めているが,これらは必ずしも将来の市場価格に基づく厳密な積算を求めたものではなかった。 (以上につき,前記前提事実(2)イ,甲5,乙6,弁論の全趣旨)イ本件公募に対して示された本件各提案の概要は別紙4記載のとおりであり,本件各提案のいずれにおいても,建替費用については,計画の概要に沿って当時の設計単価に基づき概算として算出されている(別紙4の①欄上段参照)。 C案は,共同住宅を37階建て(128.1m)とすることを提案するものであり,本件各提案の中では共同住宅の高さ(120~181m)が2番目に低かった。また,C案を除く他の案は土地の付替え又は容積率移転 は,共同住宅を37階建て(128.1m)とすることを提案するものであり,本件各提案の中では共同住宅の高さ(120~181m)が2番目に低かった。また,C案を除く他の案は土地の付替え又は容積率移転(別紙3の2〔原告の主張の要旨〕(2)イ参照)の少なくとも一方を要するのに対し,C案は,上記のいずれも要せず,現庁舎等の敷地 (本件土地)のみで計画を実現することができる点に特長があった。なお,新庁舎,新公会堂及び民間施設(共同住宅のほか商業施設を含む。)を一棟の複合建物とする旨のE案を除き,本件各提案における新庁舎等の高さ(新庁舎につき28~65m,新公会堂につき26~39m)は共同住宅の高さの半分程度ないし半分以下に抑えられていた。 (以上につき,甲6の4,7〔別紙2~5〕,弁論の全趣旨)ウ庁舎問題検討会は,現庁舎等の建替えが正式に決定された(前記(1)カ)後の平成25年11月に外部有識者及び区職員を構成員として設置され,同年12月13日まで計6回の会議が開かれた。 平成25年11月29日の第1回会議においては,アドバイザーに対し 専門的な見地からの意見を求めることとされ,これを受けて同年12月5 日付けで提出された意見書(甲6の4)では,容積率の移転を伴う案(A案,D案及びE案)とこれを伴わない案(B案及びC案)とを比べると,共同住宅の建築規模(延べ面積,住戸数)に大きな差が生ずること,容積率移転については小学校敷地の余剰容積率を新庁舎等及び共同住宅に利用することによる経済的メリットがある一方,小学校敷地の将来の利用の制 約や,共同住宅の高さなどの問題もあり,価値判断を含んだ総合的判断が必要になることが指摘された。また,同月9日付けで提出された別の意見書(甲6の2)では,特に会計・財務等の観 の将来の利用の制 約や,共同住宅の高さなどの問題もあり,価値判断を含んだ総合的判断が必要になることが指摘された。また,同月9日付けで提出された別の意見書(甲6の2)では,特に会計・財務等の観点からの検討が示され,C案については,新庁舎等の建設を含めた全体での事業規模が最小であり,事業者の資金負担リスクや新庁舎の建設後に渋谷区に生ずる維持管理費等は 相対的に少なくなること,C案のみ土地の付替え及び容積率移転を前提としない案であるため将来の区有地の利用に制約がない点が評価されることなどが記載されていた。 庁舎問題検討会の第6回会議においては,各分野の外部有識者から出された意見を踏まえ,本件各提案の評価方法につき,大項目として次の① ~⑤の評価項目を設定の上,さらにそれぞれにつき小項目(各大項目末尾の括弧内)を設定し(①災害対策の指揮,情報伝達を可能とする耐震性能の確保〔耐震性能〕,②周辺環境との調和〔周辺配慮,まちなみとの調和,まちづくり計画への適合,将来の環境変化に対する柔軟性〕,③工事による区民サービスや財政に対する影響〔工事期間,渋谷区の財 政負担〕,④現庁舎の機能維持による区民サービスの継続〔総合庁舎の面積,総合庁舎の駐車場台数,公会堂の座席数,公会堂のバックヤード,非常時対応設備〕,⑤現代社会に対応した環境性能を有するスマート庁舎の実現〔総合環境性能,長期経済性の実現,自然エネルギー等の活用,エネルギー有効活用・高効率機器の採用〕),各小項目ごとに3段階評 価で点数を付けること,これらの点数を付けるに当たっては渋谷区の事 業コンセプトに沿うか否かという観点から渋谷区が行う価値判断に沿って行われるべきであることなどの基本方針が確認された。 なお,上記第6回会議においては,土地の たっては渋谷区の事 業コンセプトに沿うか否かという観点から渋谷区が行う価値判断に沿って行われるべきであることなどの基本方針が確認された。 なお,上記第6回会議においては,土地の付替えについて,それによって生まれる空間が新庁舎と小学校との緩衝帯となるなどの積極的な意見が示された一方,小学校の管理・運営上の問題が生じる旨の消極的な意見も 示された。また,容積率移転についても,小学校敷地には校庭がある分余剰容積率が生じるため,これを一等地である庁舎側に移転させた方が区有地の有効活用の観点から合理的であるなどの積極的な意見が示された一方,小学校敷地の容積率の利用は,学校の容積率を売って庁舎を建てることとなるという議論を生み,教育委員会等との調整にも時間が掛かるおそれが あるなどの消極的な意見も示された。 (以上につき,甲6の2及び4,同7〔別紙4~8〕,乙25)エ渋谷区は,上記ウのとおり庁舎問題検討会の第6回会議において確認された基本方針の下,各小項目ごとに,非常に優れているものに3点,優れているものに2点,相対的に劣っているものに1点を付し,その合計点が 最も高い提案を選定することとして,本件各提案について以下の(ア)~(オ)のとおり点数評価した。その結果,本件各提案の合計点は,C案が37点,D案が34点,B案が32点,A案及びE案が31点であったことから,最も高い合計点を得たC案を選定することとした。 なお,渋谷区は,本件各提案の点数評価をするに際し,上記の基本方針 に従い,事業コンセプトに沿うか否かという観点から渋谷区が行う価値判断を示すものとして,「提案の比較において重視する事項」(甲7〔別紙1〕)を定めた。ここでは,①建築計画について,(a)現在の庁舎機能の維持を目的としたコン うか否かという観点から渋谷区が行う価値判断を示すものとして,「提案の比較において重視する事項」(甲7〔別紙1〕)を定めた。ここでは,①建築計画について,(a)現在の庁舎機能の維持を目的としたコンパクトな庁舎であること,(b)共同住宅の高さが周辺の建物に対して高過ぎないこと,②工事期間が短いこと,③容積率移転 について,(a)外部不経済及び小学校敷地の将来の利用への影響が少ない こと(小学校敷地の容積率移転により,権利金を高く設定することができる一方で,小学校敷地の経済的価値を下げ,より多くの区有財産を事業者へ提供することとなるほか,小学校敷地を含む区有地の将来の有効利用に支障となるため),(b)事業規模リスクが低いこと(容積率移転を実施するには建築基準法による認定を得る必要があるため),④土地の付替えに ついて,学校運営に与える影響が小さく,教育委員会との調整が少ないこと(土地の付替えにより小学校の校庭の位置及び形状を変更することとなるため),⑤権利金について,渋谷区の算出した定期借地権評価額を上回っていることが挙げられている。 (ア) 耐震性能の確保 庁舎問題検討会の構成員である構造専門家の意見を踏まえ,免震構造を提案したB~D案を3点とし,これらと同じく免震構造を提案したE案については,新庁舎等及び共同住宅を一棟とする計画であって,免震層の面積が広くなり,荷重の偏りと軸力の変動が大きい等の問題があることから2点とし,免震構造ではなく制振構造を提案するA案について は1点とした。 (イ) 周辺環境との調和a 周辺配慮①最も高層の建物となる共同住宅の高さが高い提案については,周辺環境との調和や景観への配慮の点で区民の理解を得難いうえ,更 (イ) 周辺環境との調和a 周辺配慮①最も高層の建物となる共同住宅の高さが高い提案については,周辺環境との調和や景観への配慮の点で区民の理解を得難いうえ,更地 返還時のリスクが高いことから,減点対象とし,②容積率移転を伴う提案については,小学校敷地の容積率が減り,将来の土地利用計画が制約を受けることなどから,減点対象とし,③土地の付替えを伴う提案は,小学校の管理運営上の問題や教育委員会との調整の必要性などの点から減点対象とすることとした。これらを踏まえ,A案について は,共同住宅の高さが比較的高いこと,土地の付替え及び容積率移転 を必要とすること,高層棟である民間施設を小学校側に配置することから1点とし,B案については,土地の付替えを必要とするものの,容積率移転を必要とせず,共同住宅の高さを比較的低く抑えていることから2点とし,C案については,唯一,土地の付替え及び容積率移転を必要とせず,また,共同住宅の高さを比較的低く抑えていること から3点とし,D案については,共同住宅の高さが比較的高いこと,土地の付替え及び容積率移転を必要とすることが減点対象である一方,小学校への配慮等を考慮して2点とし,E案については,共同住宅の高さが最も高いこと,土地の付替え及び容積率移転を必要とすることのほか,新庁舎等及び民間施設を一棟配置としたことも減点対象であ るとして1点とした。 b まちなみとの調和「公園通り側のにぎわい創出」及び「歩行者への配慮」の観点から本件各提案を評価することとし,本件各提案における区民ホールへのアプローチ,一般車両動線,新公会堂への大型車両による搬出入 動線の配置等を勘案して,A案を1点,B案を3点,C案を2点, から本件各提案を評価することとし,本件各提案における区民ホールへのアプローチ,一般車両動線,新公会堂への大型車両による搬出入 動線の配置等を勘案して,A案を1点,B案を3点,C案を2点,D案を3点,E案を3点とした。 c まちづくり計画への適合渋谷区都市計画マスタープランの方針(生活文化を発信する活力あるまちづくり)及び神南二丁目・宇田川町地区地区計画の内容に適合 しているか否かという観点から検討を行い,①D案を除く本件各提案については,いずれも上記地区計画等に適合していることから2点とし,②D案については,上記地区計画における敷地内の「歩行者通路2号」上に建物が計画されているため,同通路を屈曲させる地区計画の都市計画変更が必要となることから,1点とした。 d 将来の環境変化に対する柔軟性 新庁舎等及び共同住宅の配置計画から,将来の個別の建替え及び増改築や大規模修繕の容易さ等を基準に比較検討することとして,①A案,B案及びD案については,共同住宅を別棟配置しているが,公会堂棟の一部に庁舎機能又は区議会機能があり,一棟に用途が混在していることを減点対象としてそれぞれ2点とし,②C案については,唯 一,新庁舎・新公会堂・共同住宅をそれぞれ別棟配置しており,他案と比べて将来の個別の建替え等のための配慮がされていることから3点とし,③E案については,唯一,新庁舎等及び民間施設を複合建物として配置しており,将来の個別の建替え等の観点からは大きな制約となることから,1点とした。 (ウ) 工事による区民サービスや財政に対する影響a 工事期間①工期が短い(27~29か月)A案及びC案を3点とし,②工期が長い(39~48か月)B案及びE案 (ウ) 工事による区民サービスや財政に対する影響a 工事期間①工期が短い(27~29か月)A案及びC案を3点とし,②工期が長い(39~48か月)B案及びE案を1点とし,③その中間の工期(35か月)であるD案を2点とした。 b 渋谷区の財政負担①渋谷区に財政負担(建替えに伴う付帯経費,仮庁舎経費,移転に伴う経費等を除く。)が生じないA案及びC~E案を3点とし,②渋谷区に財政負担(5億6900万円)が生じるB案を1点とした。 (エ) 現庁舎の機能維持による区民サービスの継続 本件各提案はいずれも渋谷区が求める条件を満たすことから,いずれの小項目についても2点とした。 (オ) 環境性能本件各提案は,総合環境性能に配慮し,施設の維持管理費を低減するための設備,自然エネルギーを利用した設備,エネルギーを有効的に利 用するための設備を有していることから,いずれの小項目についても2 点とした。 (以上につき,前記前提事実(2)オ,甲6の5,同7,乙22,弁論の全趣旨)オ渋谷区は,本件各提案の選考過程において,本件各提案における権利金の額が定期借地権の評価額を上回っているか否かについて,本件民間施設 用地に共同住宅を建設して分譲することを想定して検討したところ,本件各提案のいずれにおいても権利金の額が定期借地権の評価額を上回ることを確認した。また,本件各提案における建設工事費が適正であるか否かについて,渋谷区が求める規模及び機能を備えた新庁舎等の建設工事費を,本件各提案に係る新庁舎等の延べ床面積に照らしてそれぞれ算出し,これ らと本件各提案における建設工事費を比較検討したところ,A~D案は渋谷区が算出した建設工事費を下回る建設 等の建設工事費を,本件各提案に係る新庁舎等の延べ床面積に照らしてそれぞれ算出し,これ らと本件各提案における建設工事費を比較検討したところ,A~D案は渋谷区が算出した建設工事費を下回る建設工事費を提案しており,E案は渋谷区が算出した建設工事費を2億円強上回る建設工事費を提案しているものの,過剰な積算とまではいえず,いずれの案も適正な建設工事費を提案していることを確認した。(甲7〔別紙1〕) (3) 本件基本協定の締結等ア渋谷区は,平成26年1月,C案を提案した三井不動産を優先交渉権者予定者として選定し,同月31日以降,同社との協議を開始し,同年3月31日,区議会の議決を経て,三井不動産ほか2社との間で本件基本協定を締結した。 本件基本協定書においては,①本件整備事業は,渋谷区が本件民間施設用地に設定する定期借地権の対価に,新庁舎等の建替費用を充当する方法により実施すること(2条),②本件整備事業を実施する敷地は本件土地とすること(3条),③渋谷区は本件民間施設用地に定期借地権を設定するとともに,新庁舎等の着工から渋谷区への所有権移転までの間, 新庁舎等整備用地を無償で事業者に貸し付けること(4条),④三井不 動産ほか2社は,新庁舎を3万㎡以上,新公会堂を座席数2000席以上として,新庁舎等を整備するとともに,共同住宅の分譲を行い,新庁舎等については平成31年1月まで,共同住宅については平成31年7月までを本件整備事業に係る予定の期間とすること(5条),⑤定期借地権の借地期間は70年間に建設工事期間及び更地返還のための除却期 間を加えた期間とすること(7条),⑥本件整備事業のリスクは,特段の事由がない限り事業者が負担することを原則とすること(8条2項),⑦渋谷区は,新庁舎 に建設工事期間及び更地返還のための除却期 間を加えた期間とすること(7条),⑥本件整備事業のリスクは,特段の事由がない限り事業者が負担することを原則とすること(8条2項),⑦渋谷区は,新庁舎等の評価額について第三者による評価を行い,定期借地権の評価額と等価であることを確認するものとし,定期借地権の評価額が新庁舎等の評価額(なお,新庁舎等の評価額は,現庁舎,現公会 堂及び神南分庁舎の解体費及び新庁舎等の設計費,工事管理費,建設工事費等の合計額とする。)を上回った場合,三井不動産ほか2社はその差額を渋谷区に支払うこと(9条)などが定められた。 (以上につき,前記前提事実(3)ア,イ,甲2,3,乙8)イ渋谷区は,平成26年夏頃,東北復興需要の増大に伴う建設業界全体で の人手不足やオリンピック招致の決定を背景とする建設工事費の高騰を理由として,三井不動産等から,これによるコスト増を賄うため共同住宅の階数を2階分増やす内容の変更をしたいとの申入れ(本件変更申入れ)を受けた。そこで,渋谷区は,三井不動産等に対し,改めて権利金の金額の提示を求めたところ,211億円(その内訳は,建設工事費193億円, 設計費等5億円及び解体費13億円)の提示を受けたため,不動産鑑定士に鑑定評価を依頼し,同不動産鑑定士は,平成27年2月,定期借地権の評価額を185億円と算出した。渋谷区は,三井不動産等が定期借地権の評価額を上回る権利金を提示したことに加え,本件変更申入れに係る変更をしても階数の増加が2階分に抑えられており,共同住宅の高さが比較的 低く抑えられているとのC案に対する評価には変わりがないこと,そのほ か,土地の付替えや容積率移転を必要としない点や,新庁舎等の性能,構造及び規模並びに各建物の位置関係等にも変更が 低く抑えられているとのC案に対する評価には変わりがないこと,そのほ か,土地の付替えや容積率移転を必要としない点や,新庁舎等の性能,構造及び規模並びに各建物の位置関係等にも変更がなかったことに照らして,本件変更申入れを了承することとした。(甲11の2,乙24,36~41〔枝番含む。〕,弁論の全趣旨)ウ渋谷区は,平成27年2月24日,三井不動産ほか2社との間で,本件 基本協定の変更等について覚書を締結した。同覚書においては,①上記変更に当たって改めて区議会の議決を得ること,②定期借地権の評価額について事業者提案の価額を211億円とすること,③共同住宅の高さについて39階建てを上限とすることなどが定められた。(乙18)エ渋谷区は,平成27年3月31日,区議会の議決を経て,三井不動産ほ か2社との間で,本件基本協定の内容を一部変更し,定期借地権の評価額を211億円とすることなどを合意した(前記前提事実(3)ウ,乙9,10)。 また,渋谷区は,同日,三井不動産ほか2社との間で,本件基本協定9条に定める新庁舎等の評価額についての第三者による評価に関する覚書を 締結した。同覚書においては,新庁舎等の建設工事費について,三井不動産ほか2社が施工会社に工事発注した時点における実施設計図書等に基づき施工会社が単価を入れて作成した見積書を,渋谷区の委託する第三者が数量の確認及び単価の検証を行って確認するものとすることなどが定められた。(乙42) オ渋谷区は,平成27年10月13日,本件民間施設用地を含む現庁舎の敷地等について用途廃止した(乙23)。 カ渋谷区は,平成27年10月30日,三井不動産らとの間で,本件民間施設用地を対象とする定期借地契約(本件定期借地契約)を締結した。本件定 を含む現庁舎の敷地等について用途廃止した(乙23)。 カ渋谷区は,平成27年10月30日,三井不動産らとの間で,本件民間施設用地を対象とする定期借地契約(本件定期借地契約)を締結した。本件定期借地契約においては,①借地権の存続期間を既存建築物の解体工事 着工時である同年11月1日から77年7月間(931月間)とすること (2条),②渋谷区は,同日,三井不動産らに対し,借地権設定の対象である土地(本件民間施設用地)を引き渡すこと(3条),③三井不動産らは,平成31年1月31日限り,渋谷区に対し,借地権の設定に当たって権利金(所定の事由により契約が解除される場合を除き返還されないもの)として105億5000万円を支払う(4条)とともに,借地権の存続期 間中の賃料として総額105億5000万円を支払うこと(5条),④三井不動産らは,上記③の権利金及び賃料(合計211億円)の支払に代えて,新庁舎及び新公会堂(附属設備を含む。)等の引渡しをもって充てること(6条),⑤住民監査請求に基づく勧告,住民訴訟に基づく差止め,政策変更その他渋谷区の責によるべき事由によって,新庁舎等及び共同住 宅の建設,分譲又は維持管理が不可能ないし著しく困難になったとき等には,三井不動産らは,相当の期間を定めて催告の上,なお改善されない場合は,契約を解除することができること(17条2項2号)などが定められた。(前記前提事実(3)エ,乙15)キ渋谷区は,平成27年10月30日,三井レジデンシャルとの間で,本 件新庁舎等整備用地等を対象とする使用貸借契約(本件使用貸借契約)を締結した。本件使用貸借契約においては,①渋谷区が三井レジデンシャルに対して本件新庁舎等整備用地等を無償で貸し付けるとともに,その引渡しと同時に現庁舎及び現公 する使用貸借契約(本件使用貸借契約)を締結した。本件使用貸借契約においては,①渋谷区が三井レジデンシャルに対して本件新庁舎等整備用地等を無償で貸し付けるとともに,その引渡しと同時に現庁舎及び現公会堂等を無償で譲り渡すこと(2条),②三井レジデンシャルは上記土地を現庁舎及び現公会堂等の解体工事並びに新庁 舎及び新公会堂等の新築工事等を行う目的のみに使用すること(3条)などが定められた。(前記前提事実(3)オ,乙16,弁論の全趣旨) 2 争点(1)(現庁舎及び現公会堂の解体の違法性)について(1) 本件解体差止請求は,現庁舎及び現公会堂の各建物の解体の差止めを求めるものであるところ,これらの解体は,地方公共団体が有する財産の財産 的価値に着目してされる「財産の処分」(地方自治法242条1項)として 住民訴訟の対象となると解される。そして,現庁舎及び現公会堂の各建物の解体は渋谷区総合庁舎の建替えに伴うものとして計画されたものであるところ,地方公共団体の庁舎等を建て替える必要性の有無並びにこれを建て替える場合の新庁舎等の立地,規模,形態及び機能等は,これらの事柄の性質上,当該地方公共団体における諸般の事情を総合的に考慮した上で,政策的,技 術的見地から判断することが不可欠であり,このような判断は,住民の福祉の増進を図ることを基本として地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担う地方公共団体(地方自治法1条の2第1項)の広範な裁量に委ねられているというべきである。 したがって,現庁舎及び現公会堂の各建物の解体が違法であるというため には,現庁舎等を建て替えることとした被告区長の判断が,重要な事実の基礎を欠くものであるか,又は,その内容が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くものであって 建物の解体が違法であるというため には,現庁舎等を建て替えることとした被告区長の判断が,重要な事実の基礎を欠くものであるか,又は,その内容が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くものであって,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したと認められることを要するものと解するのが相当である。 (2) 本件についてこれをみるに,現庁舎及び現公会堂は昭和39年に建設さ れ,建替えが決定された平成25年には築48年を経過していたものである(前記前提事実(1)ア)ところ,渋谷区が平成9年から平成16年にかけて現庁舎の耐震補強工事を実施したにもかかわらず,平成23年の東北地方太平洋沖地震の後,現庁舎の駆体にコンクリートのひび割れ等の損傷が発見され,平成24年に行われた耐震診断では構造部材(特にコンクリート)の劣 化が著しく,Is値が全階(塔屋部分を除く。)において0.6未満であり,一部には0.3未満の部分(Is値0.23)もあるとの結果が示された(前記前提事実(1)イ~エ,前記認定事実(1)ア)のであって,首都直下型地震の可能性が指摘される状況下において,庁舎の安全性を確保することが喫緊の課題となっていたものである(前記認定事実(1)エ)。そして,渋谷区 は,(ア)5つの耐震補強案のうち最も優れているとされた中間階免震による 免震補強案による現庁舎活用案を一方の案とし,現庁舎の建物を解体して新庁舎を建築する建替案を他方の案として比較検討した結果,①建替案による場合には,現庁舎活用案とあまり変わらない負担額と工期で,区政に求められる機能を備えた庁舎を得ることができ,かつ,最新の免震技術を採用し,最新の機能・設備を導入することにより,長期にわたって庁舎の安全を確保 し,維持管理費を低減することができるのに対し,②現 られる機能を備えた庁舎を得ることができ,かつ,最新の免震技術を採用し,最新の機能・設備を導入することにより,長期にわたって庁舎の安全を確保 し,維持管理費を低減することができるのに対し,②現庁舎活用案による場合には,当面の安全性は確保できるものの,将来的に駆体の劣化に伴い建替えが避けられなくなる上,老朽化した設備の維持管理費の増大などの問題が発生するといった検討結果が得られたものであり(前記認定事実(1)イ,ウ),また,(イ)区議会においても,上記のような現庁舎活用案と建替案と の比較検討結果等の報告を受け,他の地方公共団体における実施例を視察するなどして,庁舎の免震補強と建替えとのいずれが優位であるかについて検討を行った結果,現庁舎の建替えを実施するよう強く求める旨の本件決議がされたものである(前記認定事実(1)ウ,エ)。また,(ウ)現庁舎とほぼ同時期に同一業者によって建設された現公会堂についても,耐震補強がされて から10年以上が経過し,構造部材の劣化が現庁舎と同様に進行していると考えられたこと,(エ)現公会堂における受変電設備や給水設備等の各種設備は,現公会堂と地下でつながっている現庁舎内に設置されており,現庁舎のみを建て替えた場合にはこれらの設備を現公会堂に新設する等の必要があったこと,(オ)他方,現庁舎とともに現公会堂を建て替えることとした場合に は,新庁舎等の配置いかんによってはその敷地に広い余剰部分を生じさせ,これを活用することが可能となること(前記認定事実(1)オ)などが検討されたものである。被告区長は,これらの検討結果や区議会における本件議決などを踏まえて,現庁舎及び現公会堂の双方について建替えを行うことを決定したものであって,このような判断が,重要な事実の基礎を欠き,又は, その内 は,これらの検討結果や区議会における本件議決などを踏まえて,現庁舎及び現公会堂の双方について建替えを行うことを決定したものであって,このような判断が,重要な事実の基礎を欠き,又は, その内容が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くものであるということは できないから,被告区長の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえない。 (3)アこれに対し,原告は,5つの耐震補強案について複数の業者から見積りを取らなかったこと,現庁舎活用案(耐震補強案)と建替案とを比較検討するに当たって,建替案において建替費用の負担を考慮しなかった ことは,不合理であると主張する。 しかしながら,渋谷区が5つの耐震補強案を作成したのは,そのうち最も優れている案をもって,建替案と比較検討し,現庁舎を活用するのか建て替えるのかという基本的な方針を選択するためであり,その費用の算出も,上記の方針の選択により費用が大きく異なることとなるか否か という大体の傾向を把握するためのものであったと解されるところ,これらの比較検討に際し,その前提となる5つの耐震補強案について,その施工費につき,それぞれ複数の業者から見積りを取得しなければならないとする根拠は見当たらず,また,複数の業者から見積りを取得すれば耐震補強案の施工費について大きく異なる結果が得られたであろうこ とをうかがわせる証拠もない。 また,建替案において建替費用(新庁舎等の建設費等。建替えに伴う付帯経費,仮庁舎経費,移転に伴う経費を除く。)の負担が考慮されていない点については,本件整備事業において事業者が定期借地権設定の対価として支払う権利金を建替費用に充てることを前提として,本件各提 案の検討がされており(前記前提事実(2)ア,イ,前記認定事実(2)ア),B案 本件整備事業において事業者が定期借地権設定の対価として支払う権利金を建替費用に充てることを前提として,本件各提 案の検討がされており(前記前提事実(2)ア,イ,前記認定事実(2)ア),B案を除く本件各提案はいずれも,渋谷区に建替費用の負担を生じさせないものであり,B案における渋谷区の負担も5億6900万円にとどまるものであった(前記認定事実(2)エ(ウ)b)から,現庁舎活用案(耐震補強案)と建替案との比較において,建替費用の負担を考慮しなかっ たとしても,不合理であるとはいえない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 イ原告は,仮に現庁舎を建て替える必要があったとしても現公会堂を建て替える必要はないとも主張する。 しかしながら,上記(2)のとおり,現公会堂は,現庁舎とほぼ同時期に同一業者によって建設され,築48年が経過していた上,耐震補強がさ れてから10年以上が経過していたのであるから,現公会堂についても,現庁舎と同様に構造部材の劣化が進行していることを想定して建替えを要するものとしたことに不合理はなく,現に現公会堂の解体工事の過程においてはコンクリートの劣化が認められたこと(前記認定事実(1)オ)からも,その想定が相当であったことが裏付けられているものといえる。 そして,現公会堂を機能させるための受変電設備等の各種設備が現庁舎内に設置されており,現庁舎を単独で建て替えた場合にはこれらの設備を現公会堂に新設するなどしなければならないことや,現庁舎とともに現公会堂を建て替えた場合には配置いかんによって広い余剰部分を生じさせ,これを活用することが可能となることも上記(2)のとおりであるか ら,現庁舎とともに現公会堂を建て替えることとした判断が,重要な基礎を欠き,又 合には配置いかんによって広い余剰部分を生じさせ,これを活用することが可能となることも上記(2)のとおりであるか ら,現庁舎とともに現公会堂を建て替えることとした判断が,重要な基礎を欠き,又は,その内容が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くということはできず,原告の上記主張は採用することができない。 ウまた,原告は,新庁舎等に隣接して巨大な共同住宅が建設されることによって震災時における庁舎機能や日常的な行政活動が阻害されるおそれ があるのに,渋谷区の検討においてはこのことが十分考慮されていない旨主張する。 しかしながら,現庁舎活用案と建替案との比較において,事務上,環境上及び防災上の課題に対応することができるか否かといった観点からの検討が行われていることは前記認定事実(1)ウのとおりであり,その検討 によれば,現庁舎活用案ではこれらの課題への十分な対応は難しく,こ の点においても建替案の方が優れているとされているところ,建替案が新庁舎等に隣接して大規模な共同住宅を建設することを前提としていることを考慮しても,渋谷区における上記の検討が不合理であるということはできない。また,区議会においても,震災時対応の拠点となる区役所庁舎の備えを万全にしておくことは喫緊の課題であることを踏まえて, 現庁舎の建替えを実施するよう強く求める旨の本件決議がされている(前記認定事実(1)エ)。これらに照らせば,現庁舎等の建替えに関する渋谷区の検討は,震災時対応を含む庁舎機能を十分に考慮してされたものといえるから,原告の上記主張は採用することができない。 (4) よって,渋谷区において現庁舎及び現公会堂の各建物を解体することが 違法であるとはいえない。 3 争点(2)(本件整備事業の実施に係る契約締結の 主張は採用することができない。 (4) よって,渋谷区において現庁舎及び現公会堂の各建物を解体することが 違法であるとはいえない。 3 争点(2)(本件整備事業の実施に係る契約締結の違法性)について(1) 前記2(1)のとおり,地方公共団体の庁舎の建替えに関する判断は,当該地方公共団体の広範な裁量に委ねられていると解されるところ,現庁舎及び現公会堂の建替えを行うこととした被告区長の判断に裁量権の範囲の逸脱又 はその濫用があるとはいえないことは前述のとおりである。 そして,前記認定事実によれば,渋谷区は,(ア)建替えの方法に係る基本構想として,現庁舎及び現公会堂の敷地である本件土地を本件新庁舎整備用地と本件民間施設用地とに分け,後者の土地に定期借地権を設定して事業者に共同住宅を建設させるとともに,その設定の対価として事業者から支払わ れる権利金を建替費用に充てることとし,そのような基本構想に基づく建替えを実施するための具体的な事業手法の提案を求める公募(本件公募)を行った上で,(イ)本件公募に応じて提出された本件各提案のうちC案を選定することとし,その提案を行った三井不動産を優先交渉権者として交渉を行い,三井不動産ほか2社との本件基本協定の締結に至ったものであり,(ウ) その後,当初の提案より共同住宅の階数を2階分増やすことなどを内容とす る本件変更申入れの了承による協定内容の変更を経て,本件基本協定に基づき本件整備事業が実施されることとなったものである。 原告は,本件整備事業の実施に係る契約締結が違法であるとする根拠として,(ア)現庁舎等の建替えにつき共同住宅の建設と一体の事業として競争入札によらずに行うこととした仕組み自体に違法がある,(イ)本件各提案のう ちC案を選定した判断に違 違法であるとする根拠として,(ア)現庁舎等の建替えにつき共同住宅の建設と一体の事業として競争入札によらずに行うこととした仕組み自体に違法がある,(イ)本件各提案のう ちC案を選定した判断に違法がある,(ウ)本件変更申入れを了承した判断に違法があると主張するため,これらの仕組み又は判断が,重要な事実の基礎を欠くものであるか,又は,その内容が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くものであって,被告区長の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したと認められるか否かについて,以下,順次検討する。 (2) 本件整備事業の仕組みについてア本件整備事業の基本構想は,上記(1)のとおり,現庁舎等の建替えによって生ずる余剰敷地(本件民間施設用地)に定期借地権を設定してその対価を建替費用に充てるというものであって,区有財産を有効に活用して渋谷区が建替費用を負担することなく安全な庁舎を確保することができる ものといえるから,この基本構想自体が不合理なものであるとはいえない。 そして,限られた敷地内に新庁舎,新公会堂及び共同住宅をどのように配置するかによって,建設工事費や工事期間等も異なるものと考えられるところ,各建物の配置プランに応じた建設工事費や工事期間の算定は,その配置を考案した事業者が自ら行うことにより適切に算定されることが期待 できるものといえる。また,上記の基本構想は,定期借地権の対価が建替費用と同等のものであることを前提としているところ,事業者がその定期借地権の対価としていかなる額を提示するかは,本件民間施設用地に建設される共同住宅の分譲計画を含む事業者側の事情とも密接に関わるものといえる。これらのことに照らすと,渋谷区が,上記の基本構想の下,現庁 舎等の建替えと共同住宅の建設のための定期借地権の設定とを一体の事 同住宅の分譲計画を含む事業者側の事情とも密接に関わるものといえる。これらのことに照らすと,渋谷区が,上記の基本構想の下,現庁 舎等の建替えと共同住宅の建設のための定期借地権の設定とを一体の事業 として,その事業方法につき最も優れた提案をした事業者に優先交渉権を付与するとしたことには,相応の合理性があるということができる。 イ(ア) 原告は,本件整備事業が,競争入札ではなく随意契約の方法によって行われた点に違法がある旨主張する。 しかしながら,ある契約の目的・内容に相応する資力,信用,技術, 経験等を有する相手方を選定してその者との間で契約を締結するという方法をとるのが当該契約の性質に照らし又はその目的を達成する上でより妥当であり,ひいては当該普通地方公共団体の利益の増進につながる場合には,地方自治法施行令167条の2第1項2号にいう「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」に該当するというべき である(最高裁昭和57年(行ツ)第74号同62年3月20日第二小法廷判決・民集41巻2号189頁)。本件整備事業は,前記アのとおり,新庁舎等及び共同住宅の配置の在り方,建設工事費,工事期間,定期借地権の対価等を含む具体的な事業手法を同一の事業者に提案させ,最も優れた提案をした事業者に優先交渉権を与えて当該事業を行わせる というものであり,現庁舎等の建替えと共同住宅の建設とを一体の事業として行うところにその特徴を有するから,現庁舎等の建替えのみを取り上げて競争入札の方法により契約を締結するのではその目的を達成することができないものであったといえる。そうすると,現庁舎等の建替えについても本件公募によって事業者を選定したことは契約の性質に照 らし又はその目的を達成する上でより妥当であり,ひいては 成することができないものであったといえる。そうすると,現庁舎等の建替えについても本件公募によって事業者を選定したことは契約の性質に照 らし又はその目的を達成する上でより妥当であり,ひいては渋谷区の利益の増進につながるというべきであるから,本件基本協定等の締結は「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」(同号)に該当すると認められ,随意契約の方法によったことが違法であるとはいえない。 (イ) また,原告は,本件民間施設用地を長期間にわたって民間の事業者 に貸し付けることを内容とする本件整備事業について,行政財産を貸し付ける根拠を欠く上,周辺環境との調和や景観への配慮の観点からの検討も十分にされていないなどと主張する。 しかしながら,本件民間施設用地を含む現庁舎の敷地等は,平成27年10月13日に用途廃止され,普通財産となった(前記認定事実(3) オ)のであるから,原告の上記主張のうち行政財産の貸付けに関する点はその前提を欠くものである。また,本件各提案の中からC案を選定する過程において,景観への配慮を含む周辺環境との調和についても大項目及び小項目から成る評価項目が設定されて点数評価の対象とされたことは前記認定事実(2)ウ,エのとおりであり,このことに照らせば,本 件整備事業の基本構想として本件民間施設用地に共同住宅を建設させることを決するに当たっても,周辺環境との調和は,上記土地に定期借地権を設定することによる経済的メリットなどと並び,考慮されるべき諸般の事情の一つとして位置付けられていたものと推認される。したがって,原告の上記主張のうち周辺環境との調和についての検討の不十分を いう点についても,採用することができない。 (ウ) さらに,原告は,渋 位置付けられていたものと推認される。したがって,原告の上記主張のうち周辺環境との調和についての検討の不十分を いう点についても,採用することができない。 (ウ) さらに,原告は,渋谷区が585億円の基金を有していたのにこれを支出して庁舎を建て替える方法について検討しなかったことは違法であると主張するが,渋谷区は,将来の財政需要の変化に柔軟に対応するため,基金の活用を最小限に抑えるべく,財政需要に照らしつつ,財源 確保策を図った上でもなお不足が見込まれる場合に基金を活用するという方針を採っており(前記認定事実(1)キ),このような方針自体は不合理なものといえないところ,本件整備事業の仕組みによれば定期借地権の設定の対価として得られる権利金によって建替費用を賄うことができるのであるから,基金から建替費用を支出しないこととした判断につ いても不合理なものということはできない。したがって,原告の上記主 張は採用することができない。 (3) C案を選定したことについてア前記認定事実によれば,渋谷区が本件各提案の中からC案を選定するに当たっては,外部有識者及び区職員によって構成される庁舎問題検討会を設置して,アドバイザーから専門的な見地による意見を聴くなど合計6回 の会議を開いて本件各提案の比較検討の方法について検討し,その第6回会議においては,評価項目(大項目,小項目)の設定及び各項目ごとに3段階評価で点数を付けること,これらの点数評価は事業コンセプトに沿うか否かという観点から渋谷区が行う価値判断に基づいて行われるべきことが確認された(前記認定事実(2)ウ)。このように,本件各提案を比較検 討するに当たって考慮すべき評価項目及び点数評価の基本的方法については,庁舎問題検討会において専門的 いて行われるべきことが確認された(前記認定事実(2)ウ)。このように,本件各提案を比較検 討するに当たって考慮すべき評価項目及び点数評価の基本的方法については,庁舎問題検討会において専門的,技術的な見地から定められ,具体的な点数評価の実施に当たり政策的な見地からされる価値判断については,事業の主体である渋谷区において行うこととされたものと解される。そして,上記の方法による点数評価を実施するに当たり,渋谷区は,「提案の 比較において重視する事項」として,共同住宅の高さが高過ぎないことや土地の付替え及び容積率移転による影響が小さいことなどを挙げている(前記認定事実(2)エ)ところ,これらは,渋谷区が政策的な見地から行う価値判断として,周辺環境との調和の観点からの共同住宅の高さへの評価や,小学校敷地の容積率移転により同敷地の将来の有効利用に制約が生 ずること,土地の付替えにより小学校の運営に影響を与えることへの評価などを表したものであり,その内容が不合理であるとはいえないものである。また,渋谷区が本件各提案について行った点数評価自体にも,特に誤りや不当な点は見当たらず,C案が他の提案と比べ,共同住宅の高さも比較的低く,土地の付替え及び容積率移転のいずれも必要としないことなど から最高の評価を得たことは,上記の「重視する事項」に現れた価値判断 と合致した相当なものというべきである。これらに照らせば,渋谷区が本件各提案のうちC案を選定したことに不合理はなく,その選定に関する被告区長の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用は認められないというべきである。 イ(ア) 原告は,定期借地権の設定は,財産の処分行為にほかならないから, その処分価格は本来最も重視されなければならないにもかかわらず,本件各提案の中 濫用は認められないというべきである。 イ(ア) 原告は,定期借地権の設定は,財産の処分行為にほかならないから, その処分価格は本来最も重視されなければならないにもかかわらず,本件各提案の中で最も低い権利金を提示したC案が選定されたのは不合理である旨主張する。 しかしながら,本件整備事業は,定期借地権の設定の対価として支払われる権利金を現庁舎等の建替費用に充てることを前提としているので あって,本件各提案のうち権利金が高額であるものについては建替費用もこれに近似した高額なものとなっており,その差額はC案と大きく異なるものではない(別紙4参照)から,権利金の多寡は渋谷区の利益(建替費用の負担の有無及び額)に影響を及ぼすものとはいえず,原告の上記主張は前提を異にするものといわざるを得ない。なお,上記のよ うな仕組みの下では,権利金の多寡にかかわらず,現庁舎等の建替費用が,定期借地権の客観的な価値を下回らないことが渋谷区にとって重要であるところ,本件基本協定9条においては,第三者の評価によって,新庁舎等の評価額(現庁舎等の建替費用に相当)と定期借地権の評価額とが等価であることを確認し,後者が前者を上回る場合は三井不動産ら が渋谷区に対しその差額を支払う旨が定められている(前記認定事実(3)ア)のであるから,このことに照らしても,C案で提示された権利金の額が他の案よりも低かったことにより渋谷区に不利益が生じたということはできない。 (イ) また,原告は,C案の選定過程について,①C案に対する外部有 識者の評価は低く,土地の付替え及び容積率移転について,外部有識者 の意見を無視した採点がされた,②「渋谷区の財政負担」の小項目につき,C案は意図的に低額の建設工事費を提示したものであり,C案が非 価は低く,土地の付替え及び容積率移転について,外部有識者 の意見を無視した採点がされた,②「渋谷区の財政負担」の小項目につき,C案は意図的に低額の建設工事費を提示したものであり,C案が非常に優れていると評価されたことは不合理である,③新庁舎等の高さが最大であるにもかかわらず,「周辺環境との調和」の項目において高評価を得ている点で不当であるなどと主張する。 a 上記①の点につき,庁舎問題検討会においては,当初C案について消極的な意見を述べる外部有識者もいた(甲6の1)一方で,C案を推す外部有識者も存在した(甲6の5)。また,そもそも庁舎問題検討会において最終的に確認されたのは,本件各提案の評価方法として,5つの観点から設定された大項目及びこれに対応した小項目から成る 評価項目を設定し,各小項目ごとに3段階評価で点数を付けること,その点数評価に当たっては事業コンセプトに沿うか否かという観点から渋谷区が行う価値判断に沿って評価されるべきことであって(前記認定事実(2)ウ),庁舎問題検討会の構成員である外部有識者の意見は,渋谷区が点数評価を行うに当たっての参考として位置付けられて いたものということができる。そして,土地の付替え及び容積率移転を含む各項目について渋谷区が行った点数評価が不合理なものといえないことは,前記アのとおりである。 b 上記②の点につき,C案が提示した建設工事費が他案と比べて低額であった要因としては,C案における新庁舎等の建築規模が本件各提 案の中で最も小さかったことが考えられるところであり(甲7〔別紙3〕参照),C案において新庁舎等の建築規模が小さくなった要因としては,土地の付替えや容積率移転を伴わないことから共同住宅の建築規模が他案より小さくならざるを得ず,定期借地権の対価も り(甲7〔別紙3〕参照),C案において新庁舎等の建築規模が小さくなった要因としては,土地の付替えや容積率移転を伴わないことから共同住宅の建築規模が他案より小さくならざるを得ず,定期借地権の対価も相対的に低いものとならざるを得ないため,この対価によって賄われる新庁 舎等の建替費用をこれと同等の額になるように抑えるべく,新庁舎等 の建築規模につきその建替費用に見合う規模に設定したということが考えられる。 そして,渋谷区においては,本件各提案を点数評価するに当たって「重視する事項」として,新庁舎等の建築規模については,現在の機能が維持できる程度であれば足り,それ以上の規模とするとかえって 将来の経費負担が大きくなるため望ましくないとして「現在の庁舎機能の維持を目的としたコンパクト庁舎であること」を重視するとしていた(甲7〔別紙1〕)のであるから,C案において新庁舎等の建築規模を比較的小規模なものとしたことは,上記のような渋谷区の価値判断に沿うものといえる。 また,本件各提案における建設工事費が適正であるか否かについては,渋谷区においても自ら建設工事費を算出することによって検証しているところ,C案の建設工事費については渋谷区が算出した額を下回っており,適正な金額であることが確認されていること(前記認定事実(2)オ)からも,C案における建設工事費の算出は適正にされた ものと認められる。 以上によれば,三井不動産が意図的に低額の建設工事費を提示したと認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 c 上記③の点につき,複合建物を提案するE案を除くいずれの案においても,新庁舎等の高さは共同住宅の高さの半分程度ないし半分以下 に抑えられていた(前記認定事実(2)イ)のであるから ない。 c 上記③の点につき,複合建物を提案するE案を除くいずれの案においても,新庁舎等の高さは共同住宅の高さの半分程度ないし半分以下 に抑えられていた(前記認定事実(2)イ)のであるから,渋谷区が「周辺配慮」の小項目について,共同住宅の高さに着目した検討をしたことが合理性を欠くとはいえない。むしろ,C案における共同住宅の階数は37階(本件変更申入れによる変更後は39階)であって,本件各提案の中では共同住宅の高さが比較的低く抑えられていたこと (前記認定事実(2)エ(イ)a)に照らせば,C案は他案と比べて周辺 環境との調和(周辺配慮)の観点からより優れていたといえる。 d したがって,原告の主張はいずれも採用することができない。 (4) 本件変更申入れの了承についてア原告は,三井不動産等から申し入れられた建替費用の大幅な増額を受け入れることは選定手続の公正性を害することになる上,共同住宅の階数を 増加させることはC案との同一性を失わせることとなるから,本件変更申入れを受けた時点で本件基本協定等を終了させ,公募をやり直すべきであったなどと主張する。 しかしながら,本件公募に係る募集要項においては将来の市場価格に基づく厳密な積算が求められていたわけではなく,C案を含め本件各提 案はいずれも当時の設計単価に基づき建設工事費の概算を算出したものである(前記認定事実(2)イ)から,当初の提案(C案)よりも建設工事費が高額になったからといって,そのことのみによって選定手続の公正性を害する結果を招くものとはいい難い。また,渋谷区が本件変更申入れを受け入れることとした平成27年2月当時は,本件各提案が提出さ れた平成25年2月から約2年が経過しており,その間に東北復興需要の増大に伴う建設業界 はいい難い。また,渋谷区が本件変更申入れを受け入れることとした平成27年2月当時は,本件各提案が提出さ れた平成25年2月から約2年が経過しており,その間に東北復興需要の増大に伴う建設業界全体での人手不足に加えてオリンピック招致の決定など建設工事費の高騰につながるような事情の変化があったこと(前記認定事実(3)イ)に照らすと,三井不動産等がコスト増を主張して本件変更申入れをしたことに理由がないとはいえない。 そして,前述のとおり,本件基本協定は,9条において,新庁舎等の評価額(現庁舎等の建替費用に相当)と定期借地権の評価額とが等価であることを確認し,後者が前者を上回る場合は三井不動産らが渋谷区に対しその差額を支払うことを定めており(前記認定事実(3)ア),渋谷区に財政負担が生じないようにするための仕組みが取られていたところ,本 件変更申入れによる変更後もこの仕組みに変化はなく,現庁舎等の建替 費用の増大に伴って三井不動産らが渋谷区に支払う定期借地権の対価も増大して211億円とされたのであり,その後三井不動産らと渋谷区との間で締結された本件定期借地契約においても,借地権の存続期間中の賃料を含む211億円全額につき新庁舎等の引渡しをもって支払に充てるものとされており(前記認定事実(3)カ),現庁舎等の建替費用の支払 と定期借地権の対価の支払とが相殺処理される結果,渋谷区に建替費用の負担が実質的に生じないという点においても,本件変更申入れによる変更前と異ならないものということができる。 そうすると,本件変更申入れは,共同住宅の階数を増やすことによって,三井不動産らが共同住宅の分譲により得られる利益を増やし,コスト増 による負担を軽減するという点において従前との実質的な相違があるところ,本件変更 入れは,共同住宅の階数を増やすことによって,三井不動産らが共同住宅の分譲により得られる利益を増やし,コスト増 による負担を軽減するという点において従前との実質的な相違があるところ,本件変更申入れによる階数の増加は2階分にとどまり,本件整備事業に大きな影響をもたらすものではなく,本件各提案のうちC案が選定された根拠となる事情もほぼ変わらないものといえる(仮にC案において当初から39階建ての共同住宅が提案されていたとしても,A案, D案及びE案と比較すれば共同住宅の高さが抑えられていたものと認められる〔別紙4参照〕から,周辺環境への配慮に非常に優れている旨のC案に対する評価が左右されたものとは認め難い上,新庁舎等の施設性能,構造及び規模並びに各建物の位置関係等,C案の根幹となる内容にも変更がなかったものである〔前記認定事実(3)イ〕。)から,被告区長 が本件変更申入れを了承することとした判断が合理性を欠くとはいえない。 イこれに対し,原告は,本件各提案がされてから本件変更申入れがされるまでの各工種の設計労務単価の上昇幅は大きなものではなく,C案による建設工事費を約42%も増額させるようなコスト増があったとはいえない から,本件変更申入れを了承する合理的根拠はない旨主張する。しかしな がら,渋谷区施設整備課が作成した設計単価の推移表によれば,本件各提案がされた平成25年2月から平成26年8月にかけて建築費(標準予算単価モデル)が全体として約20%増加したこと(乙40),本件各提案がされた平成24年度と本件変更申入れがされた平成26年度における東京都工事設計単価表によれば,本件整備事業で予想される各工種の設計労 務単価はおおむね20%から30%強増加したこと(乙38の1及び2),平成26年当時, 更申入れがされた平成26年度における東京都工事設計単価表によれば,本件整備事業で予想される各工種の設計労 務単価はおおむね20%から30%強増加したこと(乙38の1及び2),平成26年当時,他の地方公共団体による公共事業において,当初の予定価格を6割も引き上げてようやく入札が成立した事例や,建築費を当初の予定価格の1.4倍に増額しても入札不調に終わった事例,建築費が当初の試算の約1.3倍になると算定されたことから事業を中止した事例など があったこと(乙36の1及び2,同41の1~3)に加え,平成26年当時も建築費の高騰が続いていたこと(乙36の1及び2)に照らせば,三井不動産等において本件整備事業の着工開始時期には更なる建築費の高騰の可能性があると見込んで本件変更申入れをしたとしても,これが不合理であるとまではいえない。 したがって,原告の主張は採用することができない。 (5) よって,本件整備事業の実施には違法事由が認められず,これに係る契約の締結が違法であるとはいえない。 4 争点(3)(本件基本協定等を解除その他の方法により終了させないことの違法性)について 前記3のとおり,三井不動産らに本件整備事業を行わせることとした被告区長の判断が違法であるとは認められないから,本件基本協定等の締結に違法があるとは認められない。したがって,本件基本協定等を解除その他の方法により終了させないことが違法であるとはいえない。 なお,原告は,本件定期借地契約において三井不動産らの解除権が定められ ていることから,渋谷区が事実上の働きかけを真しに行えば三井不動産らにお いて本件基本協定等の解消に応ずる蓋然性が大きかった旨主張するが,本件定期借地契約において定められた三井不動産らの解除権 ることから,渋谷区が事実上の働きかけを真しに行えば三井不動産らにお いて本件基本協定等の解消に応ずる蓋然性が大きかった旨主張するが,本件定期借地契約において定められた三井不動産らの解除権は,契約に基づく債務の履行等が不可能ないし著しく困難になった場合に発生するものであるところ(前記認定事実(3)カ),その履行が不可能ないし著しく困難になるような事情は見当たらないから,上記解除権は発生していないものといわざるを得ず, 原告の主張は採用することができない。 5 争点(4)(本件整備事業に係る公金の支出命令の違法性)について前記3のとおり,三井不動産らに本件整備事業を行わせることとした被告区長の判断が違法であるとは認められない。 したがって,本件定期借地契約及び本件使用貸借契約が本件整備事業に係る 公金の支出負担行為に当たるか否かについて判断するまでもなく,本件整備事業に係る公金の支出命令が違法であるとはいえない。 第4 結論以上によれば,原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第51部 裁判長裁判官清 水 知恵子 裁判官村松悠史 裁判官和田山 弘 剛 (別紙1省略)(別紙2省略) (別紙3)当事者の主張の要旨 1 争点(1)(現庁舎及び現公会堂の解体の違法性)について(原告の主張の要旨)(1) コスト等の比較に不備があること 渋谷区は,①5つの耐震補強案を比較検討するに当たって,1社のみに見積りを依頼している上,②建替案と現庁舎活用案との比較検討に当たって,建替案において生じる定期 スト等の比較に不備があること 渋谷区は,①5つの耐震補強案を比較検討するに当たって,1社のみに見積りを依頼している上,②建替案と現庁舎活用案との比較検討に当たって,建替案において生じる定期借地権の設定に伴う負担を考慮せず,また,建替案の負担額の算出について建替費用を一切計上していない。 (2) 現庁舎の解体に併せて,現公会堂の解体をする必要がないこと 渋谷区の調査によれば,耐震性能に問題があるのは現庁舎だけであって,現公会堂には問題がないのであるから,現公会堂の建替えの必要性はない。 すなわち,現公会堂を機能させるための設備が現庁舎に設置されているとしても,これを現公会堂に新設・構築するために要する具体的な費用や期間については全く検討がされていない(被告区長は,現公会堂の設備更新費用として 約6億円を要するなどと主張するが,これを裏付ける客観的資料はない。)。 また,現公会堂が現庁舎と同様に劣化が進んでいることを裏付ける根拠も存しない。かえって,庁舎耐震問題担当部長は,区議会が設置した庁舎問題特別委員会において,建替えに当たって渋谷区の負担を少なくするために現公会堂をも建て替える必要がある旨説明していたのであって,本件訴訟における被告の 主張は後付けのものにすぎない。さらに,現庁舎と現公会堂の敷地を合わせて一体として新たな建物の敷地とすることにより,渋谷区が支出する金額を最小限に抑制することができるか否かは,現公会堂の建替えに要する費用と権利金の価格とを具体的に比較検討して初めて判断することのできる事柄である。 結局のところ,被告区長は,現庁舎の建替えを決定した時点において,現公 会堂の建替えの要否について何らの調査も行わないまま,その建替えを所与の 前提として本件整備事業を進めたも 結局のところ,被告区長は,現庁舎の建替えを決定した時点において,現公 会堂の建替えの要否について何らの調査も行わないまま,その建替えを所与の 前提として本件整備事業を進めたものといわざるを得ない。 (3) 行政活動の阻害の有無について検討していないこと渋谷区は,巨大な共同住宅が長期に渡って新庁舎に隣接することによって,震災時における区の事業継続性(BCP)の基盤としての機能を阻害しないか否か,インフラの再整備の要否や庁舎利用区民のプライバシーの確保等に鑑 み,日常的な渋谷区の行政活動を阻害しないか否かについて,検討を一切行っていない。 (4) したがって,現庁舎及び現公会堂を解体することは,地方財政法4条,同法8条及び地方自治法2条14項に違反し,違法である。 (被告区長の主張の要旨) (1) 被告区長の裁量地方公共団体が採るべき施策の決定は,将来の予測,社会的・経済的な必要性及び効果の分析,他の政策等との調整など専門的判断を要するものであって,第一次的には当該地方公共団体の合理的な裁量に委ねられている。 (2) 現庁舎の解体の必要性 一般に,区役所の本庁舎は,区事務の執務場所であると同時に,区民にとっては区民生活に密接に関わる諸事務についての手続等の窓口であり,また,災害が発生した場合には,各関係機関との連絡調整,救援物資や避難場所の提供等を行う指令塔としての役割をも担うため,大規模な災害時にも災害対策の拠点として事業を実施することができなければならない。 この点,築約50年を経過している現庁舎は,構造部材(コンクリート)の劣化が著しく,耐震診断において全階がIs値0.6を下回る状況にある。そのため,大規模な地震が発生した際には倒壊のおそれがあり,その場合,上記区民 を経過している現庁舎は,構造部材(コンクリート)の劣化が著しく,耐震診断において全階がIs値0.6を下回る状況にある。そのため,大規模な地震が発生した際には倒壊のおそれがあり,その場合,上記区民生活に密接にかかわる諸事務の窓口及び防災活動の指令塔としての役割を果たすことができなくなるから,現庁舎の耐震問題は喫緊の課題である。 そして,現庁舎を維持したまま耐震補強を行うこととした場合,適正なIs 値を確保するために必要とされる工事費は約59億円と想定される上,将来の建替えは避けられないため,その費用も想定しておかなければならず,耐震補強に係る工期も26か月程度を要することが見込まれている。他方,建替えの場合は,必要な耐震性能が確保されることに加え,現公会堂と併せて建て替えた場合,各建物の配置によっては,敷地に余剰部分を生じ,これを有効利用す ることができる上,将来の建替費用も発生しないため,渋谷区の財政に過度な負担をもたらすことはない。また,工期は解体を含めて27か月程度であり,耐震補強の場合とほとんど変わらない。 さらに,渋谷区では,現庁舎の耐震性に問題があることが判明して以来,区議会に対して適宜報告,情報提供を行い,区議会では庁舎問題特別委員会を設 置するなどして独自に検討を行ったところ,最終的に本件決議がされ,被告区長に対して建替えを求める意思が示されたものである。 (3) 現公会堂の解体の必要性現公会堂は,現庁舎と地下で建物がつながっているばかりか,公会堂を機能させるための大規模設備が現庁舎内に設置されているため,現庁舎を単独で建 て替えた場合,これらの設備を公会堂側で新設・構築しなければならず,相応の費用・期間を要することとなり,その費用は約6億円にも上る。さらに,大規模改修工 設置されているため,現庁舎を単独で建 て替えた場合,これらの設備を公会堂側で新設・構築しなければならず,相応の費用・期間を要することとなり,その費用は約6億円にも上る。さらに,大規模改修工事期間中は休業を余儀なくされるため,この点でも多額の費用が生じるといわざるを得ない。加えて,現公会堂の内外には,新設する上記設備を設置するスペースがなく,そのスペースの確保は現庁舎の建替えと併せて行う ことが事実上不可避な状況であった。 また,現公会堂につき,最後の耐震補強がされたのは10年も前のことであり,現公会堂は現庁舎と同時期に同一業者により建設されていることから,現庁舎と同様に構造部材の劣化が進行していた(現公会堂の解体工事時には,柱の鉄筋が暴露し,床版のコンクリートが劣化して剥離していたことからも,構 造部材の劣化が進行して性能が低下していたことは明らかである。)。その 上,現庁舎と共有する大規模設備の老朽化も深刻で,給水管の多くの箇所で漏水が生じ,スプリンクラーが破損し脱落するなど,早急に設備の更新が迫られる状況であったため,たとえ耐震補強工事を行ったとしても,近い将来,再び建替えのための工事を迫られる上,設備等の老朽化による修繕費を含む維持費も必然的に増加し,アスベストの撤去等,建替えの場合と同等の環境性能を確 保するには多くの経費を要するなどの問題があった。 これに対し,現庁舎と併せて現公会堂をも建て替えた場合には,上記(2)のとおり敷地を有効利用することができるなどの利点があった。 (4) 原告の主張について免震補強は一般化された工法として定着しているものであり,複数の業者か ら見積りを取ったとしても得られる結果は大きく異ならないため,免震補強による現庁舎活用案と建替案との比較という について免震補強は一般化された工法として定着しているものであり,複数の業者か ら見積りを取ったとしても得られる結果は大きく異ならないため,免震補強による現庁舎活用案と建替案との比較という施策決定の判断に当たって,複数の業者から見積りを取ることは必要的ではない。 本件整備事業は,庁舎等の建替費用に定期借地権の設定の対価を充てるという仕組みを採用したものであって,まさに効率性の原則に沿うものである。ま た,本件各提案は,渋谷区に低額の負担を生じる1案を除き,いずれも渋谷区に建設費等の負担が生じない内容であったから,渋谷区に財政的負担が生じないことが見込まれ,現庁舎活用案と建替案との比較検討において建設費等の負担を考慮する必要はなかった。 (5) 以上のとおり,被告区長は,現庁舎活用案と比較して建替案が合理的であ ることに加え,区民の代表たる区議会から建替えを求められたこと等をも勘案して,現庁舎及び現公会堂の建替えをするという案を選択し,本件整備事業を進めることとしたものであり,その判断に合理性があることは明らかであるから,現庁舎及び現公会堂の解体に違法はない。 2 争点(2)(本件整備事業の実施に係る契約締結の違法性)について (原告の主張の要旨) (1) 本件整備事業の仕組みについてア地方自治法234条2項は,随意契約によることができる場合を政令で定める場合に限定しているところ,本件がその例外事由に該当することの根拠は何ら示されていない。 区役所の庁舎の建替えのような大規模な公共工事は,政財官の癒着をもた らすおそれがあることから,地方自治法234条1項において一般競争入札を原則としているほか,平成6年1月18日に閣議了解された「公共工事の入札・契約手続の改善に関する行動計画」に の癒着をもた らすおそれがあることから,地方自治法234条1項において一般競争入札を原則としているほか,平成6年1月18日に閣議了解された「公共工事の入札・契約手続の改善に関する行動計画」においても,一定規模以上の大型公共工事について一般競争入札方式を導入することを明示するなどしている。また,渋谷区においても,予定価格1億5000万円以上の工事案件を 対象として制限付一般競争入札を実施し,平成21年4月からは,対象案件を拡大して,予定価格9000万円以上の建設工事等についても制限付一般競争入札を実施している。そして,競争入札の下においては,発注者である自治体が予定価格の範囲内で最も低い価格で入札した者と当該入札価格で契約を締結する仕組みが採られているところ,公共工事においては請負契約締 結の日から1年間は原則として請負代金額が変更できないこと(公共工事標準請負約款25条)から,事業者は賃金水準や物価水準の変動を見通した入札額を定めなければならない。そうであるにもかかわらず,競争入札の方法を採用せずに,意図する事業者に実現可能性がない提案をさせた上で優先事業者として選定し,その後,実現可能な事業への変更を無制限に許すことと なれば,公共工事の適正化を図ることはおよそできない。 本件においては,事業提案の段階で136億円であった建設工事費が,随意契約を締結した段階では193億円となっており,その増額の割合は42%にも及ぶ。被告らは,建設工事費の高騰につき,復興需要の増大及びオリンピック招致の決定によるものであると主張するが,本件各提案がされた 平成25年2月頃から実質的に193億円への増額が決定された平成26年 12月頃までの間に建築資材価格及び人件費が42%も増加したという具体的な根拠は存在せ が,本件各提案がされた 平成25年2月頃から実質的に193億円への増額が決定された平成26年 12月頃までの間に建築資材価格及び人件費が42%も増加したという具体的な根拠は存在せず,かえって,渋谷区においては,平成21年3月10日以降,公共工事の建設請負契約金額を増額したことはなかったものである。 本件各提案の中でC案が提示した建設工事費は飛び抜けて安いことなどからしても,三井不動産らは,意図的に低額の建設工事費を提示し,その後,随 意契約であることを奇貨として建設工事費を増額した可能性を否定できない。 以上のように,本件整備事業は,公共工事を巡る不正を防止するための制約を免れる便法として,随意契約によったものである。 イ地方自治法238条の4第1項は,行政財産の貸付けを原則として禁止し ているところ,本件整備事業において予定された本件土地の貸付けがいかなる法的根拠に基づいて正当化されるものであるか不明である。また,渋谷区の所有する土地上に,公益性のない一民間事業者が営利目的で建設する建物のために借地権を設定し,公共の目的でその土地を利用することができなくなる仕組みを選択することが公益性の観点から許されるのか,検討された形 跡が見当たらない。 そもそも,本件整備事業においては,定期借地権の設定と新庁舎等の建設が一事業体によってセットで提案されることとなるところ,定期借地権の設定に係る公募と新庁舎等の建設に係る公募を一緒にしなければならない必然性は全くなく,それぞれ別々に行えば,渋谷区に財政的負担が生じないにと どまらず,むしろ利益が生じていた可能性も考えられるのであるから,渋谷区が,その財産の運用に関して最も効率的な運用方法を十分に検討したとはいえない。 ウ渋谷区は,災害対策として庁舎 にと どまらず,むしろ利益が生じていた可能性も考えられるのであるから,渋谷区が,その財産の運用に関して最も効率的な運用方法を十分に検討したとはいえない。 ウ渋谷区は,災害対策として庁舎の建替え又は防災公園の整備等のために,合計585億円もの渋谷区都市整備基金及び渋谷区財政調整基金(以下,併 せて「基金」ということがある。)を準備していたのであるから,周辺環境 等を犠牲にし,かつ,70年もの借用期間にわたって本件民間施設用地を使用することができなくなる負担を受け入れてまで,建替えに伴う支出を抑える必要があったかについて検討すべきであったところ,こうした検討がされたことを示す証拠はない。 エしたがって,本件整備事業の仕組みはそれ自体が不合理であり,効率性の 原則(地方財政法4条,8条及び地方自治法2条14項)に反する。 (2) 本件各提案のうちC案を選定した判断についてア定期借地権の設定は,財産の処分行為にほかならず,その処分価格は本来最も重視されなければならないから,本件各提案の中で最も低い権利金を提示したC案を選定した判断は不合理である。 イまた,前記(1)アのように,C案は意図的に低額の建設工事費を提示したものであるところ,渋谷区は,漫然と検討を行った結果,「渋谷区の財政負担」の項目について,C案が「非常に優れている」としており,その評価は不当である。 さらに,庁舎問題検討会においては,土地の付替え(渋谷区役所神南分庁 舎〔以下「神南分庁舎」という。〕の敷地を神南小学校〔以下単に「小学校」といい,その敷地を「小学校敷地」という。〕の敷地とする代わりに,本件土地に接する小学校敷地のうち,神南分庁舎の敷地相当分を本件新庁舎等整備用地とすることをいう。以下同じ。)について肯定的 小学校」といい,その敷地を「小学校敷地」という。〕の敷地とする代わりに,本件土地に接する小学校敷地のうち,神南分庁舎の敷地相当分を本件新庁舎等整備用地とすることをいう。以下同じ。)について肯定的な評価がされていたにもかかわらず,採点の過程では,学校運営に与える影響や教育委員会 との調整など,庁舎問題検討会において一切指摘されなかった要素がリスク要因として考慮された結果,土地の付替えを用いないC案が高得点を得るに至った。また,容積率移転(建築基準法86条2項所定の連担建築物設計制度に基づき,新庁舎等及び共同住宅の敷地となる本件土地及び小学校敷地を,これらの建築物の一の敷地とみなすことにより,小学校敷地の余剰容積 率を新庁舎等及び共同住宅の容積率として利用することをいう。以下同 じ。)についても,庁舎問題検討会においては,肯定的な評価がされていたにもかかわらず,採点の過程では小学校敷地を含む将来の区有地の有効活用に支障になるなどとして否定的な評価が加えられた結果,容積率移転を用いないC案が高評価を得るに至った。このように,被告区長は,C案に否定的な評価を与えた外部有識者の意見を全く無視して本件各提案の点数を操作し たものである。 ウしたがって,C案を選定した被告区長の判断は,重大な事実誤認があるか又はその評価が著しく合理性を欠くものであって,効率性の原則(地方財政法4条,8条及び地方自治法2条14項)に反し,違法である。 (3) 本件変更申入れを了承したことについて ア仮に,C案を選定した被告区長の判断が不合理なものでなかったとしても,その後建設工事費が136億円から193億円へと大幅に増額され,共同住宅の階数も当初の提案(37階)よりも2階分も高い39階へと変更された。C案は,容積率 長の判断が不合理なものでなかったとしても,その後建設工事費が136億円から193億円へと大幅に増額され,共同住宅の階数も当初の提案(37階)よりも2階分も高い39階へと変更された。C案は,容積率等への配慮をほぼ唯一の理由として選定されたところ,もはやその唯一の長所も上記の変更によって失われた以上,変更後の計 画と当初の提案における計画との同一性は認め難いといわざるを得ない。 この点について,東北地方太平洋沖地震の発生による復興需要は本件公募のはるか前に生じていたものであり,建設工事費は平成24年7月頃から大幅に上昇に転じているのであって,C案が提案された平成25年度と,本件基本協定の見直しが庁舎問題特別委員会において議論された平成26年度と を比較すれば,工事設計単価表における各工種の設計労務単価の増加は,10%程度又はそれ以下でしかない。 本件公募に応募する事業者は建設工事費の上昇も見通してその見積りをすべきであり,その見通しが甘かったことのリスクは甘受すべきである。当初の見積りから1.5倍近い値上げをしなければ工事を実施することが不可能 であるというのであれば,本件公募の次点の者を事業候補者とするか,又は 本件公募をやり直さなければならなかったといえるから,三井不動産等による本件変更申入れを了承した被告区長の判断は,重大な事実誤認があるか又はその評価が著しく合理性を欠くものであって,効率性の原則(地方財政法4条,8条及び地方自治法2条14項)に反し,違法である。 イ被告区長は,権利金が増額されることから上記の変更を了承したなどと主 張するが,権利金は新庁舎等の引渡しをもって充てることとされているもので,金銭の授受がされるわけではない。また,本件定期借地契約において,新庁舎等の評価額は, から上記の変更を了承したなどと主 張するが,権利金は新庁舎等の引渡しをもって充てることとされているもので,金銭の授受がされるわけではない。また,本件定期借地契約において,新庁舎等の評価額は,現庁舎等の解体費用,新庁舎等の設計費用,工事監理費用,建設工事費用等の合計とするなどと定められているのであって,およそ客観的にその価値を表すものではない。そもそも,本件基本協定等に定め られた各条項を見ても,建設工事費が上昇したとしても渋谷区に金銭的な負担が生じないとする根拠は見当たらない。 (被告区長の主張の要旨)(1) 本件整備事業の仕組みについてア本件整備事業は,大量かつ均質な物品を購入する契約とは全く異なり,区 民の共有財産ともいうべき庁舎を建て替えるに際して,いかなる庁舎を建設するかという事業であり,その性質からすると,不特定多数の者の参加を求め競争原理に基づいて契約の相手方を決定することが必ずしも適当ではなく,庁舎の安全性及び耐震性を早急に確保しつつ,現代社会にふさわしい環境性能,省エネ性能を具備し,周辺環境とも調和した計画でありながら,財 政負担を最小限にするという事業の目的,内容に照らし,それに相応する資力,信用,技術,経験等を有する相手方を選定しその者との間で契約の締結をするという方法をとるのが妥当であり,渋谷区の利益の増進につながる。 したがって,本件整備事業は「契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」(地方自治法施行令167条の2第1項2号)に該当 し,本件基本協定等が締結されたことは適法である。 これに対し,原告は,競争入札による公共工事の場合,契約締結から1年間は請負代金の変更が認められないなどと主張するが,本件公募はあくまで事業 定等が締結されたことは適法である。 これに対し,原告は,競争入札による公共工事の場合,契約締結から1年間は請負代金の変更が認められないなどと主張するが,本件公募はあくまで事業手法(計画概要)の公募であり,本件各提案で提示された工事費の金額は提案時における計画概要に対する概算額であるから,競争入札における入札金額と同様の拘束力はない。また,本件公募においては,各事業者から提 示された権利金及び建替費用の適正さについて検証を行い,外部有識者による意見を参考にしながら適切に採点を行ったものであるから,実現可能性のない提案を選定することや意図する事業者に選定されやすい提案をさせることは不可能である。 イ本件民間施設用地は,平成27年10月13日,行政財産としての用途を 廃止して普通財産となっており,その貸付けの根拠は地方自治法238条の5第1項である。現庁舎の安全性及び耐震性の確保は早急に対応すべき課題であるところ,本件整備事業における仕組みは,現庁舎等の機能を維持しつつ,新庁舎等を建設することで生じる余剰地を民間事業者に貸し付けることによって,建替費用を捻出し,財政的負担を抑えるものであるから,まさに 効率性の原則の趣旨に沿うものである。原告の主張によれば,地方公共団体が普通財産を貸し付けること自体がおよそ認められないということになりかねない上,本件整備事業は,渋谷区の人口増加及びこれによる歳入増加に資するものであるから,公益性に反することはない。 また,民間施設の建設と新庁舎等の建設に係る入札を別々に行えば,事業 者にとって範囲の選択や調整の余地がなくなることから,魅力的な開発対象地となりづらく,提案の幅が狭まるため,高い権利金を提示する業者は現れづらく,かえって渋谷区にとって を別々に行えば,事業 者にとって範囲の選択や調整の余地がなくなることから,魅力的な開発対象地となりづらく,提案の幅が狭まるため,高い権利金を提示する業者は現れづらく,かえって渋谷区にとって有益な提案を受ける可能性が減ると考えられる。さらに,民間施設の建設と新庁舎等の建設とが別の時期に別の事業者によって行われることによって設計及び施工上の統一性・合理性が失われ, このことが工期の長期化及び工事費の増大につながるのみならず,プランの 統一性が失われることによる良好な街並み形成の阻害にもつながり得る。 ウ原告が指摘する585億円の基金は,庁舎の建替えを目的として積み立てられたものではない。 そして,ある事業につき基金を活用することができる場合であっても,これを活用するか否かは地方公共団体の長の裁量に委ねられている(地方自治 法149条6号参照)ところ,渋谷区においては,将来の財政需要の変化に柔軟に対応するため,基金の活用は最小限に抑える方針を採っている。また,基金を活用する場合は繰入金として予算計上することとなるから,区長は区議会の意向などを踏まえて基金の活用について判断することとなる。本件において,被告区長は,本件公募の結果,C案を選定し,渋谷区に建替費 用に係る財政的負担が生じないこととなったため,基金を活用する必要はないとの判断に至ったものであり,その判断に違法はない。 (2) 本件各提案のうちC案を選定したことについてア C案が提示した権利金の額は本件各提案の中で最も低いものの,権利金は,区有財産の適正な管理を果たすとの観点から,その額が定期借地権評価 額を下回らないことが重要であり,権利金の多寡が提案の優劣に直結するものではない。また,渋谷区において,定期借地権の対価が適正な価額 産の適正な管理を果たすとの観点から,その額が定期借地権評価 額を下回らないことが重要であり,権利金の多寡が提案の優劣に直結するものではない。また,渋谷区において,定期借地権の対価が適正な価額であるか否かについて不動産鑑定士による鑑定を行い,必要な検討を行った。 イ渋谷区は,評価項目ごとに点数を付す方法について外部有識者の承認を得た上で,外部有識者の意見を踏まえて採点した結果,最高点を獲得したC案 を選定したのであるから,その選定手続に何ら疑問の生じる余地はない。原告はC案に対する外部有識者の否定的な評価のみを抽出して指摘しているにすぎない。 また,C案が共同住宅の規模を比較的小さく抑えている点や,土地の付替えや容積率移転が用いられないため,隣接する小学校の校庭が変更されるな どの影響を受けない点を「周辺環境への配慮」として評価したことは合理的 である。なお,本件各提案が提示した建設工事費は,当時の設計単価に基づく積算の結果であって,その時点における適正な金額であったから,原告が主張するように無意味な概算値に点数を付けて選定を行ったものではない。 (3) 本件変更申入れを了承したことについてア渋谷区は,三井不動産らから,東北復興需要の増大に伴う建設業界全体で の人手不足やオリンピック招致の決定を背景とする建設費の高騰等の事情によるコスト増を賄うため,共同住宅の階数を増やしたい旨の本件変更申入れを受けた。渋谷区は,三井不動産らから提示された権利金の額(211億円)の適正さを検証すべく改めて不動産鑑定士による鑑定をしたところ,算出された定期借地権評価額は185億円であったこと,他の敷地の容積率を 利用する等の他の提案と異なり,総合設計により同一敷地内で対応するというC案の特徴は維持されてい よる鑑定をしたところ,算出された定期借地権評価額は185億円であったこと,他の敷地の容積率を 利用する等の他の提案と異なり,総合設計により同一敷地内で対応するというC案の特徴は維持されていたこと,建設費の高騰等の事情は本件各提案をした事業者全てに共通する事情であって専ら三井不動産らのみに生じた特殊な事情でなく,事業者が計画変更を必要とすることもやむを得ないと認められたこと,共同住宅の階数の増加を2階分に抑えており,本件各提案におけ る共同住宅の高さの序列に変動を来すものではなく,C案が周辺配慮において高評価を得た基礎事情の一つである「住宅棟の高さを比較的低く抑えている」との点等には変わりはなく,事業の根幹となる内容に変更がなかったこと等から,上記計画変更によって提案の同一性が失われたということはできないと判断し,これを了承したものである。 イ本件公募は,具体的な新庁舎等の設計を公募したものではなく,現庁舎の耐震補強と建替えを選択肢として検討する中での事業手法(計画概要)の公募である以上,将来の市場価格に基づき積算するのは困難を伴うものであった。原告が指摘する136億円は,C案の提案時における計画概要に対する新庁舎等建設の建設工事費(概算)を設計単価に基づいて積算したものであ り,この点は他に応募した各事業者も同様であった。 これに対して,原告が指摘する193億円は,建設業者の見積りを反映させた定期借地権設定契約時(平成27年10月)の新庁舎等の建設工事費の市場価格であり,136億円と193億円では,算定の基礎(建設業者の見積りを反映させたかどうか)及び算定時期が異なっているのであって,単純に両者の金額の比較から,当初の計画との同一性を論じることはできない。 なお,原告は,労務単価の上昇 算定の基礎(建設業者の見積りを反映させたかどうか)及び算定時期が異なっているのであって,単純に両者の金額の比較から,当初の計画との同一性を論じることはできない。 なお,原告は,労務単価の上昇率と建設工事費の増加率とを比較しているが,建設工事費は,建築資材の費用や人件費のみならず,仮設足場,残土処分,山留,杭打ちなどの経費,重機等工事用資機材の使用量,運搬費など様々な費用によって構成されるため,単純に建築資材価格及び人件費の増加率の合計が建設工事費全体の増加率を示すものではない。 ウ原告は,建設工事費の増加による金銭的負担が渋谷区に生じないことの根拠がないなどと主張するが,本件基本協定8条2項がその根拠である。 3 争点(3)(本件基本協定等を解除その他の方法により終了させないことの違法性)について(原告の主張の要旨) 本件定期借地契約において,三井不動産らは,渋谷区が住民訴訟に基づく差止めによって,新庁舎,新公会堂及び共同住宅の建設,分譲又は維持管理が不可能ないし著しく困難になったとき,相当の期間を定めて催告の上,なお改善されない場合は,契約を解除することができると定められている(17条2項2号)から,渋谷区が本件定期借地契約及びこれと不可分一体の関係にある本件使用貸借 契約について三井不動産らへの働きかけを真しに行えば三井不動産らにおいて本件定期借地契約及び本件使用貸借契約の解消に応ずる蓋然性が大きいというべきである。そして,前記2のとおり,C案に基づき三井不動産らに本件整備事業を行わせることは違法であるから,本件基本協定等を解除その他の方法により終了させないことは違法である。 (被告区長の主張の要旨) 前記2のとおり,C案に基づき三井不動産らに本件整備事業を行わせるこ あるから,本件基本協定等を解除その他の方法により終了させないことは違法である。 (被告区長の主張の要旨) 前記2のとおり,C案に基づき三井不動産らに本件整備事業を行わせることは違法ではないから,本件基本協定等を解除その他の方法により終了させないことも違法ではない。なお,本件定期借地契約17条2項2号に基づく解除権が認められるためには,同項1号に基づく解除権が「新庁舎,新公会堂及び共同住宅の建設,分譲又は維持管理が不可能ないし著しく困難になったとき」に認められて いることと同様に,住民訴訟に基づく差止請求がされただけでなく,新庁舎等の建設等が不可能ないし著しく困難になることが必要である。本件整備事業に係る工事は進められており,三井不動産らに同項2号に基づく解除権が生ずる状況にはなく,三井不動産らにおいて本件定期借地契約の解消に応ずるような事情もない。 4 争点(4)(本件整備事業に係る公金の支出命令の違法性)について(原告の主張)(1) 本件整備事業に係る公金の支出命令については,本件基本協定,本件定期借地契約及び本件使用貸借契約が支出負担行為となるところ,前記2に述べた諸事情に照らせば,本件定期借地契約及びその履行を目的として不可分一体の ものとして締結された本件使用貸借契約は,公序良俗(民法90条)に反するというべきである。仮に,本件定期借地契約及び本件使用貸借契約が公序良俗に反するものでないとしても,これを無効としなければ地方自治法2条14項,地方財政法4条1項の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められる。したがって,本件定期借地契約及び本件使用貸借契約は私法上無効である から,これらの契約を支出負担行為とする支出命令は違法である。 また,前記3のとおり,渋谷区が本 段の事情が認められる。したがって,本件定期借地契約及び本件使用貸借契約は私法上無効である から,これらの契約を支出負担行為とする支出命令は違法である。 また,前記3のとおり,渋谷区が本件定期借地契約及びこれと不可分一体の関係にある本件使用貸借契約について三井不動産らに事実上の働きかけを真しに行えば三井不動産らにおいてこれらの契約の解消に応ずる蓋然性が大きいといえる。したがって,客観的にみて渋谷区が本件定期借地契約及び本件使用貸 借契約を解消することができる特殊な事情があり,かつ,これらの契約が著し く合理性を欠きその締結に予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存するといえるから,これらの契約を支出負担行為とする支出命令は違法である。 (2) なお,本件定期借地契約は,全体を観察すれば,単なる定期借地権の設定契約ではなく,新庁舎,新公会堂及び附属設備の売買を含む複合的な契約であ るから,支出負担行為に他ならない。 (被告経理課長の主張)(1) 前記2のとおり,本件整備事業に違法が認められない以上,本件整備事業に係る公金の支出命令が違法になることはない。 (2) 本件定期借地契約及び本件使用貸借契約は,渋谷区が金銭の支払義務を負 う旨を定めていないため,いずれも支出負担行為に当たらない。仮にこれらの契約が支出負担行為に当たるとしても,前記2で述べたところに照らせば,これらの契約が私法上無効であるとはいえず,これを無効としなければ地方自治法2条14項,地方財政法4条1項の趣旨を没却する結果となる特段の事情も認められない。また,前記3で述べたとおり,本件定期借地契約の解除権は三 井不動産らに認められていないから,三井不動産らにおいて本件定期借地契約の解消に応ずるような事情はない。 段の事情も認められない。また,前記3で述べたとおり,本件定期借地契約の解除権は三 井不動産らに認められていないから,三井不動産らにおいて本件定期借地契約の解消に応ずるような事情はない。 以上 (別紙4)本件各提案(概要) ①②③④⑤A案192.8億円(174.3億円)180億円29か月共同住宅694戸約77,000㎡,160mありありB案187.5億円(166億円)180.5億円39か月共同住宅397戸約38,800㎡,120mありなしC案155.4億円(136億円)154億円27か月共同住宅414戸約45,300㎡,128.1mなしなしD案195.1億円(174.9億円)194億円35か月共同住宅630戸約66,000㎡,169.7mありありE案192.9億円(175.2億円)191.5億円48か月共同住宅・商業施設557戸約65,300㎡,181mなしあり(注)①欄上段は解体費用を含む建替費用(括弧内はそのうち新庁舎等の建設工事費),下段は権利金を示す。 ②欄は工期(解体を含む。)を示す。 ③欄は民間施設の用途,戸数,延べ面積及び高さを示す。 ④欄は土地の付替えの有無を示す。 ⑤欄は容積率移転の有無を示す。 以上

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