- 1 - 主文 本件各上告を棄却する。 理由 検察官の上告趣意は,判例違反をいう点を含め,実質は量刑不当の主張であり,弁護人塚田裕二の上告趣意は,事実誤認,量刑不当の主張であり,被告人本人の上告趣意は,事実誤認の主張であって,いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。 なお,所論に鑑み記録を調査しても,刑訴法411条を適用すべきものとは認められない。 付言するに,本件は,暴力団の幹部である被告人が,平成19年4月17日,長崎市内の選挙事務所前歩道上において,現職の長崎市長であり,次期市長選挙に立候補していた被害者Aに対し,殺意をもって,所携のけん銃で,その背後から弾丸2発を発射してその背部に命中させ,もって,公共の場所においてけん銃を発射するとともに,選挙の自由を妨害し,同人を殺害したという殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反及び公職選挙法違反の事実等からなる事案である。 被告人は,長崎市に対する不当な要求を繰り返していたところ,同市が市長である被害者の方針で暴力団からの不当要求等に屈しない姿勢をとっていたこともあって取り合わなかったことから,被害者を逆恨みしてこれを募らせ,被害者が次期市長選挙に立候補することを知ると,同人を殺害し,その当選を阻止することで被害者に対する恨みを晴らすとともに,世の中を震かんさせる大事件を引き起こすことによって自らの力を誇示しようなどと考え,行政対象暴力の極みともいうべき本件犯行に及んでおり,犯行動機は極めて反社会的で,酌量の余地はない。事前に被害- 2 -者の動向を探り,実弾を装てんしたけん銃を携行し,選挙事務所付近で被害者を待ち伏せて敢行された計画的な犯行である。犯行態様も,被害者の至近距離に近付き 的で,酌量の余地はない。事前に被害- 2 -者の動向を探り,実弾を装てんしたけん銃を携行し,選挙事務所付近で被害者を待ち伏せて敢行された計画的な犯行である。犯行態様も,被害者の至近距離に近付き,無防備の被害者の背後から,銃弾をその背中に撃ち込んだものであって,冷酷かつ残忍である。しかも,付近には,被害者の支援者をはじめ,多数の通行人などがいたのであり,極めて危険性の高い悪質なものというほかない。被害者は,長崎市長として同市の発展に多大な貢献をし,また,被爆地の市長として核兵器廃絶等を訴えてきたものであるところ,被告人の放った凶弾によって,突如として,その生命を奪われたのであり,犯行結果は重大である。また,本件は,公職の候補者に対する犯行であり,選挙妨害の結果も軽視できない。被害者の遺族の処罰感情はしゅん烈であり,本件犯行が社会に与えた影響も甚大である。 原判決は,これらの事情等に照らし,被告人の刑事責任は誠に重大であるとしつつも,本件においては殺害された者は1名であることを考慮する必要があるとした上で,本件犯行は,組織内で孤立していた被告人が,経済的に困窮し,自己の病気等により自暴自棄になる中,長崎市への不当要求等が思いどおりにならなかったことで思い詰めて,これがいわば暴発したという側面もあり,経済的利益等何らかの利益を得るために実行した事案とはいえず,本件犯行の動機,目的自体には利欲目的はなかったとし,さらに,何らかの政治的信条に基づき,その主義主張を実現する手段として,本件犯行に及んだものではなく,本件の主要な動機は被害者に対する恨みであり,選挙妨害そのものを目的としたものではないことなどを指摘する。 そして,以上の事情は,本件犯行の量刑評価に当たって軽視できない犯情であり,これらの事情も総合考慮すると,被告人に対し,死刑を選 みであり,選挙妨害そのものを目的としたものではないことなどを指摘する。 そして,以上の事情は,本件犯行の量刑評価に当たって軽視できない犯情であり,これらの事情も総合考慮すると,被告人に対し,死刑を選択することについてはなおちゅうちょせざるを得ないと判示している。原判決のこのような判断は首肯し得- 3 -ないではなく,第1審判決を破棄し,被告人を無期懲役に処した原判決が,刑の量定において甚だしく不当であるということはできない。 よって,刑訴法414条,386条1項3号,181条1項ただし書により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官寺田逸郎裁判官那須弘平裁判官田原睦夫裁判官岡部喜代子裁判官大谷剛彦)
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