【DRY-RUN】○ 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実 第一 当事者の求めた裁判 一 請求の趣旨 被告が原告に対して昭和五七年八月三〇日付でした審査裁決を取り消す。 訴訟費用は被告の
○ 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実 第一 当事者の求めた裁判 一 請求の趣旨 被告が原告に対して昭和五七年八月三〇日付でした審査裁決を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 二 被告 主文同旨 第二 当事者の主張 一 請求原因 1 原告は東京都港区において「不動産に対する投資、売買並に仲介」等を目的と して登記した株式会社である。 2 東京法務局港出張所登記官は、原告と同一市町村(東京都港区)において「宅 地建物取引業務」等を目的とする株式会社新赤坂商事に係る株式会社変更登記申請 (昭和五二年一月二二日受付第九八三号)を受理し、登記した(以下このうち商号 変更登記に係る部分を「本件登記」又は「本件処分」という。)。 3 そこで原告は昭和五七年六月一〇日、本件処分は原告の商号専用権を侵害する ものであるとして被告に対して審査請求したところ、被告は、昭和五七年八月三〇 日付で、原告は本件処分の利害関係人に該当しないとして審査請求を却下する裁決 をした(以下「本件裁決」という。)。 4 しかしながら原告は本件処分により直接かつ現実に商号専用権を侵害されてお り、登記上直接の利害関係を有し審査請求人適格を有するので、本件裁決は商業登 記法(以下「法」という。)一一四条の解釈と適用を誤つた違法があるから、その 取消しを求める。 二 請求原因に対する認否 請求原因1ないし3の事実は認め、同4は争う。 三 被告の主張 1 (一)原告は本件審査請求をする利益を有せず、本件審査請求は不適法である から、これを却下」した本件裁決は適法である。 (二) 法一一四条は、審査請求をすることができる者について、「登記官の処分 を不当とする者」としか規定していないが、審査請求をすることができるのは、こ れらを行うについて法律上の利益を有する者でなければならない。こ 四条は、審査請求をすることができる者について、「登記官の処分 を不当とする者」としか規定していないが、審査請求をすることができるのは、こ れらを行うについて法律上の利益を有する者でなければならない。これは、審査請 求の制度が違法な行政処分に対する救済の制度であつて、利益のない者にまで審査 請求をする権利を認める理由がないことから、極めて当然のことである。このよう な法律上の利益を有しない者が審査請求を行つた場合、その審査請求は不適法とし て却下されるのである。 そして、右にいう「登記官の処分」が登記をしたことである場合には、その登記に 対する審査請求は、法一〇八条二項又は一一〇条以下の規定により、登記官が職権 で登記を更正し、又は抹消することができるときに限つて、これを行うことかでき る。なぜなら、いつたん登記がされた以上、登記官が職権により登記を更正し、又 は抹消することができない限り、登記をしたことに対する審査請求は目的を達しえ ないからである。 (三) 本件において、訴外株式会社新赤坂ゴルフからなされた「株式会社新赤坂 商事」とする商号変更登記の申請が、仮に原告主張のとおり、原告の商号と類似で あり、法二七条、二四条一三号により却下すべきものであつても、いつたん登記さ れた以上は職権により抹消することができないのであるから(法一一〇条ないし一 一三条)、審査請求の方法によつては、該登記の抹消という目的を達成することは できず、したがつて、原告は審査請求の利益を有しないものである。 原告としては、前記商号変更登記の申請人に対し、商法一九条あるいは二〇条に基 づき、前記登記の抹消請求をするほかないのである。 四 被告の主張に対する原告の反論 1 原告は本件審査請求をする法律上の利益を有し、かつ以下のとおり、本件登記 は法一一〇条以下の規定による登記官の職権抹消の対象となる 抹消請求をするほかないのである。 四 被告の主張に対する原告の反論 1 原告は本件審査請求をする法律上の利益を有し、かつ以下のとおり、本件登記 は法一一〇条以下の規定による登記官の職権抹消の対象となるものである。 2 (一)本件登記は東京法務局港出張所において原告が既にしていた「赤坂商事 株式会社」なる登記と重複し、法二四条三号に該当するから、法一〇九条一項一号 に該当し、法一一〇条以下の職権抹消の対象となる。 (二) 商法一九条は「他人ガ登記シタル商号ハ同市町村内ニ於テ同一ノ営業ノ為 ニ之ヲ登記スルコトヲ得ズ」と規定しているが、通説、判例は既登記商号と同一商 号のみならず、これと紛らわしく判然区別することができない類似商号も登記する ことはできないと解している。すなわち、既登記商号の法律効果たる商号専用権は 類似商号にもこれを排除する法律効果を及ぼすのである(換言すれば類似商号も既 登記商号と同一の登記効力を有するといえる。)。 このような商法一九条の解釈及び二重登記を排除する法二四条三号の趣旨からする と、既登記商号の登記効力の及ぶ範囲内の登記申請事件(すなわち既登記商号と紛 らわしく判然区別できない類似商号の登記申請事件も含む。)はこれを法二四条三 号に該当する同一登記の申請として取り扱うのが相当である。 また法二四条三号は、登記申請人が同一人である場合に限らず広く別人の場合をも 包含するものと解すべきである。 (三) 本件処分にかかる「株式会社新赤坂商事」なる商号は原告の商号「赤坂商 事株式会社」と紛らわしく判然区別できない類似商号であるから、本件登記は法二 四条三号に該当するものである。 3 (一)仮に本件登記が法二四条三号に該当しないとしても、本件登記には無効 原因があり、しかもその無効は訴えによつて主張することを要しないものであるか ら、本件登記は法一〇九条一 該当するものである。 3 (一)仮に本件登記が法二四条三号に該当しないとしても、本件登記には無効 原因があり、しかもその無効は訴えによつて主張することを要しないものであるか ら、本件登記は法一〇九条一項二号に該当し、法一一〇条以下の職権抹消の対象と なるものである。 (二) 2(三)で主張したとおり本件登記は商法一九条に違反するものであり、 同条は国民に義務を課した実体法で強行法規かつ効力規定であるから、本件登記は 実体上の効力を生じないもの(無効)であり、法二四条一〇号に該当する。しか も、右無効は、実体法違反の違法を原因とする蓋然性の無効原因によるものであ り、明白顕著であつて、登記簿の記載、申請書又は添付書類により何人にも確実か つ容易に認識しうるので、訴えによることなく主張しうるのである。 (三) なお法二七条は商法一九条と異なり登記官に義務を課した手続法かつ訓示 規定であるから、同条違反の場合と商法一九条違反の場合の法律効果は区別して考 えなくてはならないし、また法二四条一〇号は実体法(例えば商法一九条)違反の 無効原因を却下事由とする規定であるのに対し法二四条一三号は手続法の禁止規定 (法二七条)違反を却下事由とする規定で両者の法律的性質は次元を異にするか ら、法二四条一三号の存在をもつて商法一九条違反が法二四条一〇号ひいては法一 〇九条一項二号に該当しないと根拠づけることはできない。 五 原告の反論に対する被告の再反論 1 原告の反論2について 法二四条三号に規定する「事件がその登記所においてすでに登記されていると き。」とは、同一事項は二重に登記されるべきでないとの観点から、申請にかかる 登記事項が既に登記されている場合、例えば、同一人が同一営業所において同一商 号の登記を重ねて申請する場合とか同一会社において同一人を取締役又は監査役に 選任する登記を重ねて との観点から、申請にかかる 登記事項が既に登記されている場合、例えば、同一人が同一営業所において同一商 号の登記を重ねて申請する場合とか同一会社において同一人を取締役又は監査役に 選任する登記を重ねて申請する場合等を意味するのであつて、本件において、株式 会社新赤坂ゴルフから申請のなされた、商号を「株式会社新赤坂商事」に変更する との登記事項については、東京法務局港出張所においては、これまで全く登記され ていないものであり、原告の主張は明らかに失当である。 2 原告の反論3について (一) 法一〇九条一項二号にいう「登記された事項につき無効の原因がある」と は、例えば、会社の解散が無効である場合において、その解散に基づいてされた解 散及び清算人選任の登記、取締役会の決議の方法に瑕疵があつて決議が無効の場合 において、その決議に基づく登記及び存在しない支店を支店として登記した場合に おけるその登記等のように、登記によつて公示された実体関係に無効の原因があつ たり、あるいは右実体関係が存在しない場合を意味するのであつて、本件において は、このように登記と実体関係との間に齟齬がある場合でないことは極めて明らか である。すなわち、商法一九条はこれに違反する登記申請を登記官が却下すべきも のとする登記手続法上の効力を定めたものにすぎず、商号登記の実体的効力に言及 したものではないから、同条に違反する商号登記であつても、それが実体的に無効 になることはないのである。 (二) 商法一九条は法二七条と同趣旨の部分を含んでいると一般に解されている が、法二七条に反して受理された登記について申請又は職権による抹消が許される のであれば、法の規定の形式からいつて、当然法一〇九条一項一号に規定されるべ きものであるが、同号には規定されておらず、しかも同号の抹消事由は限定的であ ると解されているので は職権による抹消が許される のであれば、法の規定の形式からいつて、当然法一〇九条一項一号に規定されるべ きものであるが、同号には規定されておらず、しかも同号の抹消事由は限定的であ ると解されているのであるから、法一一〇条ないし一一三条の規定により職権抹消 しえないことは明らかである。 (三) 法二四条に定める却下事由のうち、同条一〇号は「登記すべき事項につき 無効又は取消しの原因があるとき。」を掲げており、この無効原因は、同法一〇九 条一項二号の「無効の原因」と同一であると解されている。 ところで、同法二四条は、これとは別に同条一三号で同法二七条に該当する場合を 却下事由の一つとして掲げているが、先に述べたように商法一九条は、法二七条と 同旨の部分を含む現定であり、法二七条に該当する商号登記は、商法一九条によつ ても禁止されるものであるから、仮に同条違反の商号登記が実体的に無効であれ ば、すべて法二四条一〇号に該当することになり、これとは別個に同条一三号の規 定を置く必要は全くない。したがつて、同法は、商法一九条違反を法二四条一〇号 の無効原因には含めていないものと解すべきであり、同様に同法一〇九条一項二号 の「無効の原因」にも含まれないというべきである。 第三 証拠(省略) ○ 理由 一 請求原因1ないし3の各事実は当事者間に争いがない。 二 1本件審査請求は本件処分が商法一九条に基づく原告の商号専用権を侵害する としてされたものであることは右のとおり争いがないが、登記者の登記した処分に 対する審査請求については、当該登記申請が法二四条のいずれかの号に該当し、登 記官として却下すべきであつた場合にも、いつたんこれが受理されて登記が完了し た以上は、法一一〇条以下の規定に従い登記官が職権によりこれを抹消することが できる場合でなければ、審査請求の方法により当該登記の抹消を請 下すべきであつた場合にも、いつたんこれが受理されて登記が完了し た以上は、法一一〇条以下の規定に従い登記官が職権によりこれを抹消することが できる場合でなければ、審査請求の方法により当該登記の抹消を請求することは許 されないと解されるから、本件登記が職権抹消の対象となるか否かにつき検討す る。 2 まず、原告は本件登記は法二四条三号に該当し、したがつて法一〇九条一項一 号に該当すると主張する。 しかしながら、法二四条三号は「事件がその登記所においてすでに登記されている とき。」と規定しているところ、本件登記は商号を「株式会社新赤坂商事」に変更 するというものであり、同一申請人に係るこれと同一の登記が東京法務局港出張所 でされていないことは原告の主張に徴しても明らかであるから、本件登記が法二四 条三号に該当しないことは明白である。原告は商法一九条により原告の既登記商号 の効力の及ぶ範囲内の登記申請事件はすべて同一事件として取り扱うべきであり、 法二四条三号は登記申請人が同一である場合に限らないと主張するが、いずれも独 自の見解であり採用できない。 3 次に原告は本件登記は商法一九条に違反して無効であり、その無効を訴えによ つて主張することを要しない場合であるから、本件登記は法一〇九条一項二号に違 反すると主張する。 しかしながら、法一〇九条一項二号にいう「登記された事項につき無効の原因があ る。」とは、登記によつて公示された実体関係に無効の原因があり、あるいは実体 関係が存在しない結果登記と実体関係との間に齟齬がある場合を意味するものと解 されるところ、商法一九条は、既登記商号をこれと同一市町村内で同一の営業のた めに登記することを禁ずるのみで、右商号ないし登記を実体上当然無効とする趣旨 の規定であるとは到底解しえないから、仮に「株式会社新赤坂商事」なる商号を登 記することが これと同一市町村内で同一の営業のた めに登記することを禁ずるのみで、右商号ないし登記を実体上当然無効とする趣旨 の規定であるとは到底解しえないから、仮に「株式会社新赤坂商事」なる商号を登 記することが商法一九条に違反するとしても、それだけでは登記と実体関係との間 に齟齬を来すものではなく、本件登記が法二四条一〇号又は一〇九条一項二号に該 当するものでないことは明らかである。 けだし、法二四条一三号は、商法一九条と同一の趣旨の部分を含んでいると解され る法二七条の規定により登記することができない商号の登記を目的とする申請を却 下すべき旨定めているが、仮に商法一九条ないし法二七条違反の場合は当然職権抹 消の対象とする趣旨ならば法一〇九条一項一号に法二四条一三号に掲げる事由のあ ることも規定されるべきであるが、法一〇九条一項一号には「第二四条第一号から 第三号までに掲げる事由があること。」としか規定されていないこと、また、仮に 商法一九条に違反する登記が当然無効であるとするならば、法二四条一〇号の「登 記すべき事項につき無効又は取消しの原因があるとき。」とする却下事由と別個に 前記同条一三号の規定を設ける必要はないからである。 原告は商法一九条は実体法で強行法規かつ効力規定であるからこれに違反する登記 は実体上当然無効であると主張するけれども、これまた独自の説であり採用できな い。 4 したがつて原告の主張はいずれも理由がなく、本件登記は法一一〇条以下の規 定により職権抹消をしうる場合に当たらないといわなければならない。 三 したがつて、本件審査請求は審査請求の方法によつては本件登記の抹消という 目的を達成することができないという意味で審査請求の利益を欠くか、そもそも審 査請求の対象たりえない処分に対する審査請求を求めるもので不適法というべく、 これを却下した裁決は正当である。 の抹消という 目的を達成することができないという意味で審査請求の利益を欠くか、そもそも審 査請求の対象たりえない処分に対する審査請求を求めるもので不適法というべく、 これを却下した裁決は正当である。 四 よつて原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の 負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決す る。 (裁判官 時岡 泰 満田明彦 菊池 徹)
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