【DRY-RUN】○ 主文 原判決を取り消す。 本件訴えを却下する。 訴訟費用は、第一、二審とも控訴人の負担とする。 ○ 事実 第一 当事者の求めた裁判 一 控訴人 原判決を取り消す。 控訴人が昭和五二年三月一七日付で
○ 主文原判決を取り消す。 本件訴えを却下する。 訴訟費用は、第一、二審とも控訴人の負担とする。 ○ 事実第一当事者の求めた裁判一控訴人原判決を取り消す。 控訴人が昭和五二年三月一七日付でした同月七日受付第四七一五号所有権移転登記申請を却下する旨の決定を取り消す。 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。 との判決二被控訴人本件控訴を棄却する。 との判決第二当事者双方の事実主張は、次のとおり付加するほかは、原判決の事実中、原判決書二枚目表二行目から同七枚目表五行目までに摘示されているとおりであるからこれを引用する。 1 原判決書三枚目表八行目の「第三」を「第四」に改め、同七行目の次に次のとおり加える。 第三被控訴人の本案前の抗弁本件訴えは、訴えの利益を欠くので却下されるべきである。 一本件不動産に係る登記の経過は、次のとおりである。 昭和五二年三月七日受付所有権移転登記申請(本件申請)同年三月一七日却下(本件決定)同年六月一〇日受付遺贈による所有権移転登記(受遺者 A)同年六月一〇日受付贈与による所有権移転登記(受贈者控訴人)二右のとおり、本件不動産については、本件決定後、第三者への遺贈による所有権移転登記がなされ、かつ、同時に右第三者から贈与を原因として控訴人名義に所有権の移転登記がなされている。 このように本件不動産につき既に控訴人名義の所有権の登記がなされていることを考慮すると、本件決定の取消しを求める訴えの利益はないものといわなければならない。 2 原判決書四枚目裏六行目の「第四」を「第六」に改め、同五行目の次に次のとおり加える。 また、仮に訴人主張の如く、遺言の解釈にあたつて、遺言以外の外的資料をしんしやくすべきであるとしても、不動産登記制度上権利に関する登記についての登記官の審査権限は 同五行目の次に次のとおり加える。 また、仮に訴人主張の如く、遺言の解釈にあたつて、遺言以外の外的資料をしんしやくすべきであるとしても、不動産登記制度上権利に関する登記についての登記官の審査権限は、申請書及びその添付書面並びに登記簿の記載事項のみによつてその許否を判断するという形式的なものであることから、遺言書以外のその他の外的資料を考慮する余地はなく、したがつて右の意味からも登記官がした本件決定には誤りがないというべきである。 第五被控訴人の本案前の抗弁に対する控訴人の反論被控訴人の本案前の抗弁中一及び二の事実は認めるが、訴えの利益がないとの点は争う。すなわち、一 A名義の遺贈登記は、本件遺言が有効であれば、これと内容が牴触し取り消されたと解すべき亡Bの昭和四六年六月一四日付遺言書(甲第五号証の一〇二)第三項中に「私所有の不動産・・・・・・・・・すべて・・・・・・・・・A・・・・・・・・・にその処分を委ねる。Aは、これの一部または全部を自己所有のものとすると・・・・・・・・・」の文言が記されてあつたことに基づき、遺言者のまさに最終真意に反する権利移転をなしたものであるから、右登記原因は無効であり、したがつて、これに基づく控訴人への贈与の登記も、本来、無効である。右登記は、本件遺言による登記申請が違法に却下され、木下家財産が宙に浮き、遺言者が危惧していた家業倒壊を未然に防ぐため、緊急避難的に事実をまげてなされた措置であり、遺言者の最終意思の忠実な実現を求める本件訴えの法的利益を欠くことにはならない。 二違法な却下処分である本件決定の結果、控訴人は、二重の権利移転経過と二つの登記申請をなさざるを得なくなり、本来金三八四万八五〇〇円の登録免許税の納付をもつて足りるところ、その倍額を納めざるを得ず、右同額の損害を被つた。 三本件決定が 控訴人は、二重の権利移転経過と二つの登記申請をなさざるを得なくなり、本来金三八四万八五〇〇円の登録免許税の納付をもつて足りるところ、その倍額を納めざるを得ず、右同額の損害を被つた。 三本件決定が取り消されるならば、本件遺言書による本件申請が受理され、右遺贈によるA、贈与による控訴人への各移転登記は登記原因無効のものとして抹消されるから右登録免許税も還付され、控訴人の不当に受けた損害も回復されるのである。 四法務局による登記申請に対する処分は、登記簿記載の権利移転を真正なものとする推定的効果を与えるから、前記遺言者の真意に明らかに反するにも拘らず、本件不動産の登記簿に登記された前記Aへの遺贈、同人から控訴人への贈与は、遺言者の相続人、親戚、縁者、控訴人、前記Aらの利害関係人及び担保提供先等に対し、極めて奇異な感と相続上の諸重要問題をもたらし、遺言者の真意に反するのみならず、登記の記載は永久に残るから、これが抹消され、本来の本件遺言に基づく登記がなされない限り、これによる控訴人の社会的不利益は解消しない。 五不動産登記簿上の右二つの権利移転の記載は、権威ある法務局による行政処分の結果として所得税法、地方税法上も、その権利取得につき二重の課税上の不利益をもたらすおそれがある。 以上の事由は、本件決定の取消しを求めるに十分な訴えの利益というべきである。 3 原判決書六枚目表九行目の「本件遺言」の上に「およそ遺言の解釈にあたつては、遺言以外の外的資料をもしんしやくすべきであるが、本件遺言の場合、外的資料上、次のような事実関係の存在が明らかである。すなわち」を加える。 第三証拠関係(省略)○ 理由一被控訴人は、本案前の抗弁として、控訴人の本件訴えについては訴えの利益がない旨主張する。被控訴人は附帯控訴をしていないが、訴えの利益の存否は職権調 ち」を加える。 第三証拠関係(省略)○ 理由一被控訴人は、本案前の抗弁として、控訴人の本件訴えについては訴えの利益がない旨主張する。被控訴人は附帯控訴をしていないが、訴えの利益の存否は職権調査事項であるから、まず、これについて検討する。 亡B名義に登記されていた本件不動産につき、控訴人及びCが昭和五二年三月七日に東京法務局に対してなした本件申請を却下した被控訴人の同月一七日付の本件決定がなされたのち、同年六月一〇日受付で遺贈を原因としてA名義に所有権移転登記がなされ、さらに同日受付で贈与を原因として控訴人名義に所有権移転登記がなされたことは、当事者間に争いがない。なお、当審証人Cの証言により真正に成立したものと認められる甲第八号証の記載と弁論の全趣旨とによれば、右の各所有権移転登記は、Aと控訴人と亡Bの遺言執行者たるCの三者が含意のうえ、本件申請が却下された事態のもとにおいで、本件不動産につき控訴人名義の所有権移転登記を実現する措置として、これを経由したものであることが明らかである。ところで本件申請は、要するに、本件不動産につき遺贈を原因として控訴人名義の所有権移転登記を実現することを目的とするものであるから、右のとおり控訴人名義の所有権移転登記が既に実現している以上、その登記原因及び所有権移転の経過が実体関係に符合していなくても、特に登記申請受付の順位を保持する必要があることその他特段の事情のない限り、控訴人は、本件決定の取消しを得て本件申請を受理してもらい、本件申請どおりの登記を実現する利益をもはや有しないものというべきであり、したがつて本件決定の取消しを求める本件訴えの利益を有しないものといわなければならない。そこで、控訴人主張の事由が右特段の事情にあたるか否かを順次検討してみる。 一控訴人は、前示のA名義の所有権移転登 がつて本件決定の取消しを求める本件訴えの利益を有しないものといわなければならない。そこで、控訴人主張の事由が右特段の事情にあたるか否かを順次検討してみる。 一控訴人は、前示のA名義の所有権移転登記原因たる遺贈は、遺言者たる亡Bの最終真意に反するものであるから無効であり、したがつてAから控訴人への贈与を原因とする所有権移転登記も無効である旨主張する。 右主張は本訴についての訴えの利益の主張としてはやや明確を欠くが、結局のところ、控訴人が本訴で勝訴すれば右各登記は抹消され、亡Bから控訴人への本件不動産の所有権移転の経過を如実に示す登記がなされることになるから本訴については訴えの利益があるというに帰するものと考えられる。しかしながら、仮に右各登記ないし登記原因が本件不動産の所有権移転の経過を如実に示していないとしても、控訴人名義の右登記は、控訴人が本件不動産の所有権を取得して現にその所有者であることを公示するに十分なものであるから、亡Bから控訴人への本件不動産の所有権移転の経過を如実に示すような登記のなされることをもつて、直ちに本件訴えの利益と認めることはできない。なお、前示各登記がたとえ控訴人主張の如く緊急避難的措置としてなされたとしても、控訴人が自己の意思に基づいて現に右のように自己名義の所有権移転登記を経由して不動産登記制度上の利益を享受している以上、本件訴えの利益を肯定すべき特段の事情があるということはできない。 二控訴人は、本件申請に対する違法な却下処分である本件決定の結果、所有権移転登記のための登録免許税を本来納付すべき額の倍額納付せざるを得なくなり、右税額相当の損害を被つたというが、仮に本件決定が違法であり、違法な本件決定がなされたことにより控訴人がその主張のような損害を被つたとしても、本件決定が取り消されることによつて右損 るを得なくなり、右税額相当の損害を被つたというが、仮に本件決定が違法であり、違法な本件決定がなされたことにより控訴人がその主張のような損害を被つたとしても、本件決定が取り消されることによつて右損害が当然に回復されるものではないし、また、右損害について国家賠償を請求する前提として必ずしも本件決定の取消しを得る必要もないのであるから、控訴人の右主張の事実は、本件訴えの利益を基礎付ける事由とはなり得ない。 三控訴人は、本件決定が取り消されるならば、前示各登記が抹消され、前記登録免許税も還付されることになり、控訴人が不当に受けた損害も回復されると主張するが、仮に本件決定が取り消されて前示各登記が抹消されることになつたとしても、前示各登記のために納付済みの登録免許税が還付されるべき法律上の根拠はないから、右主張はその前提において失当であつて採るを得ない。 四控訴人は、遺言者の真意に反する前示各登記が抹消され、本件遺言に基づく登記がなされない限り、控訴人の社会的不利益は解消されないと主張するが、控訴人が右不利益の内容とするものは、いずれも事実上の不利益と目すべきものであつて、法律上の不利益ということができないから、仮に控訴人の右主張のとおりとしても、これによつて、本件訴えの利益を肯定することはできない。 五控訴人は、前示各登記は、所得税法上も、地方税法上も、その権利取得につき二重の課税上の不利益をもたらすおそれがあると主張する。なるほど前示甲第八号証の記載によれば、控訴人とAとは、前示各登記をなすにあたり、これをなすことによつてAが課税等を受け、または何らかの金銭的損害を被るとぎは、控訴人が、これを直ちに弁償すべきことを約した事実が認められる。しかしながら、仮に本件遺言が有効であり、真実亡Bから控訴人に本件不動産が遺贈されたものであるとすれ は何らかの金銭的損害を被るとぎは、控訴人が、これを直ちに弁償すべきことを約した事実が認められる。しかしながら、仮に本件遺言が有効であり、真実亡Bから控訴人に本件不動産が遺贈されたものであるとすれば、A及び控訴人は、本件決定が取り消されると否とにかかわらず、課税当局に対し、前示各登記が真実の所有権移転の経過を反映するものではないことを主張立証することにより、これと反対の前提に立つ課税を免れることができるのであり、またそのため出費を余儀なくされ、損害を被つたとしても、右損害については国家賠償を請求することができ、そのためには必ずしも本件決定の取消しを得ておく必要はないのであるから、控訴人の右主張も本件訴えの利益を基礎付けるものとはいえない。 以上のほかに本件訴えの利益を肯定するに足りる特段の事情の存することについては本件全証拠によるもこれを認めることができないから、控訴人の本件訴えについては、訴えの利益がないものといわざるを得ず、したがつて本件訴えは不適法なものである。 二右と判断を異にする原判決は不当であるから民事訴訟法第三八六条に則つてこれを取り消したうえ本件訴えを却下することとし、訴訟費用の負担については、同法第九六条、第八九条を適用する。 よつて主文のとおり判決する。 (裁判官林信一宮崎富哉石井健吾)(原裁判等の表示)○ 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実第一当事者の求めた裁判一原告 1 被告が昭和五二年三月一七日付でした同月七日受付第四七一五号所有権移転登記申請を却下する旨の決定を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 との判決二被告主文と同旨の判決第二請求の原因一 1亡Bは、昭和五一年五月一三日次の内容を含む秘密証書による遺言をし(以下右遺言書を「本件遺 を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 との判決二被告主文と同旨の判決第二請求の原因一 1亡Bは、昭和五一年五月一三日次の内容を含む秘密証書による遺言をし(以下右遺言書を「本件遺言書」といい、次の(一)の遺言を「本件遺言」という。)、同年一二月二一日死亡した。 (一) Dに遺贈する不動産及び蓮光寺に遺贈する金三〇〇万円を除いて亡B所有の不動産(別紙物件目録記載の不動産(以下「本件不動産」という。)がこれに当たる。)、有体動産、有価証券、債権等すべてCにその処分を委ねる。 (二) 本件遺言書の遺言執行者としてCを指定する。 2 Cは、昭和五二年二月一日本件遺言に基づき亡Bの遺産をすべて原告に遺贈する旨意思表示し、また同日ころ遺言執行者に就職することを承諾した。 3 原告及びCは、昭和五二年三月七日東京法務局に対し、本件不動産につき登記権利者原告、登記義務者亡B遺言執行者CとしCの代理権限を証する書面として本件遺言書を添附して、遺贈を登記原因とする所有権移転登記申請(同日受付第四七一五号)(以下「本件申請」という。)をした。 4 被告は、昭和五二年三月一七日付で本件申請を申請書に必要な書面(代理権限証書)の添附がないとの理由により不動産登記法第四九条第八号の規定により却下する旨の決定(以下「本件決定」という。)をした。 二しかしながら、本件申請はCの代理権限を証する書面に相当する本件遺言書を添附してされたのであるから、不動産登記法第四九条第八号の規定に該当せず、本件決定は違法である。よつて、原告は本件決定の取消しを求める。 第三請求の原因に対する被告の認否及び主張一請求の原因に対する認否 1 請求の原因一の1、3及び4の事実は認める。同2の事実は知らない。 2 請求の原因二の主張は争う。 二被告の主張遺言は遺言者の独立直接 原因に対する被告の認否及び主張一請求の原因に対する認否 1 請求の原因一の1、3及び4の事実は認める。同2の事実は知らない。 2 請求の原因二の主張は争う。 二被告の主張遺言は遺言者の独立直接の意思表示であるべきであり、遺言の代理は許されず、遺言書の表示自体に受遺者の選定及びこれに対する遺贈額の割当等その遺贈の内容が具体的に確定していなければならないから、受遺者の選定及びこれに対する遺贈額の割当を第三者に委託する旨の遺言は無効である。本件遺言については、仮に受託者(遺言執行者)が受遺者の選定及び遺贈額の割当を行つたとしても、これが遺言者の真意に合致するか否か必ずしも明瞭でなく、もはや遺言者の意思とはいえないものであり、このような場合においても、なお遺言者の最終意思の尊重に名をかり重要な利害関係のある相続人に不利益を甘受させることは相当でない。なお、本件遺言は受遺者の範囲すら限定されていない(抽象的な選定基準の明示もない。)ものであるから、遺言の代理禁止の例外あるいは緩和の事案にも当たらないものである。 また、遺言執行者の制度は遺言者の意思により決定された遺言の内容の実現を図るために設けられたものであつてその職務権限は遺贈に関する事務的な処理をするに過ぎないものであるから、負担附遺贈の受遺者の立場と本件遺言の受託者(遺言執行者)の立場とを同一視することはできないものである。 したがつて、本件遺言は無効であり、本件遺言書は遺言執行者の代理権限証書たり得ないものであるから、本件申請は申請書に必要な書面を添附せざるときに該当する。よつて、本件決定に違法はない。 第四被告の主張に対する原告の反論本件遺言は、Dに対する不動産の特定遺贈及び蓮光寺に対する金三〇〇万円の特定遺贈の各遺言をうけて、その余の全遺産の遺贈の方法、受遺者の選定及びこれが複 違法はない。 第四被告の主張に対する原告の反論本件遺言は、Dに対する不動産の特定遺贈及び蓮光寺に対する金三〇〇万円の特定遺贈の各遺言をうけて、その余の全遺産の遺贈の方法、受遺者の選定及びこれが複数のときはその遺贈額の決定を第三者たるCに委託したものと解される。 被告は、本件遺言は実質上遺言代理禁止の原則に反するもので無効であると主張するが、遺言自由の原則により本件遺言は有効と解されるべきである。すなわち、 1 法律行為はできるだけ有効となるように解釈すべきであり、このことは、遺言の場合死者の最終意思を実現させるべく一層強く要請されるものである。本件の場合、遺言者たる亡Bは本件遺言によつて自己の信頼する者に遺産の処分を任せているのであるから、右遺言を無効とするときは、法定相続ないし、右遺言前にされたこれと抵触し本来右遺言により取り消されたものとみなさるべき以前の遺言を復活せしめ有効とせしめるなど、遺言者の意思と余りにも垂離する不都合な結果となるのは極めて不合理な解釈というべきであり正しくない。 2 遺言代理禁止の原則は、代理人によつて遺言書を作成することができないという遺言方式の現定から推論しうるにとどまるのであつて、本書の如く全文を遺言者自身が自書した事案について右原則を適用することはできないはずである。右原則は、遺言書の作成自体に関するほか、実質的な意味及び適用を本件の如き第三者への処分委託まで拡大すべき合理的根拠は見出せないのである。受託者が本件遺言に基づきどのような決定をしようと、それは少なくとも形式的には遺言者の意思であると解する方が、右遺言を直ちに無効とするよりは実際的には妥当であり、遺言代理禁止の原則はこれをまで否定しうる合理的根拠をもたないのである。 3 受遺者が遺贈の目的物の一部又は全部を受遺者の選定する他人に分与すべき負 右遺言を直ちに無効とするよりは実際的には妥当であり、遺言代理禁止の原則はこれをまで否定しうる合理的根拠をもたないのである。 3 受遺者が遺贈の目的物の一部又は全部を受遺者の選定する他人に分与すべき負担を負わせる負担附遺贈は有効と解されるところ、右負担附遺贈と本件の如き第三者委託による遺贈とは、実質的には同趣旨に帰することの権衡からしても、前記立論が首肯さるべきである。 4 本件遺言は単に第三者に遺産の処分を委ねるとしているが、本件においては、実際には遺言者が生前に前記特定遺贈の対象とされた財産を除く全遺産の受遺者を遺言者が主宰していた株式会社木下七左衛門商店の後継者に予定されていた原告と決定していた。しかし、これを遺言書に明記し万一原告が遺言者より先に死亡したときは右会社の次の後継者に受遺者を変更しなければならないが、遺言者は本件遺言書作成当時病身衰弱のため再度公証人役場へ赴くことは不可能と思料されていたので、右のように受遺者を変更する必要のあるときはその者を受託者に口頭で指示し、その者に遺贈し得るように考えて、あえて遺言書に受遺者を明記しなかつたものである。そして、受託者たるCは、かねてから遺言者と懇意な知人関係にあり、遺言者より原告を受遺者とすべきことを口頭で指示され、その旨承諾していたものである。このような場合、受託者は、遺言者の真意の死後における外部に対する表示機関に過ぎず、決定者ではないから、受遺者の選定及び遺贈額の割当等本件遺言による遺贈の内容を確定する術がないということはできない。 第五証拠関係(省略)○ 理由一請求の原因一の1、3及び4の事実は当事者間に争いがない。 二そこで、本件決定に原告主張の違法が存するか否かについて判断する。 本件遺言書が本件申請についての遺言執行者たるCの代理権限を証する書面であるというた の1、3及び4の事実は当事者間に争いがない。 二そこで、本件決定に原告主張の違法が存するか否かについて判断する。 本件遺言書が本件申請についての遺言執行者たるCの代理権限を証する書面であるというためには、本件遺言書によりされた本件遺言が有効なものでなければならないので、この点について判断する。 遺言は法律の認めた一定の事項に限りすることのできる行為であり、遺言によつてなしうる財産処分としては遺贈(民法第九六四条)、寄附行為(同法第四一条第二項)及び信託の設定(信託法第二条)が認められているところ、本件遺言は特定の財産を除くその余の全遺産の処分を第三者に委ねることを内容とするものであり、右の遺言によつてなしうる財産処分のいずれにも該当しないものといわざるをえない。 原告は、本件遺言は他の遺言により特定遺贈の対象とされた財産を除くその余の全遺産を遺贈するにつき、その内容の決定を第三者たるCに委託したものであると主張する。しかしながら、本件遺言をもつて右主張のように解しうるとしても、現行法上遺贈の内容の決定を第三者に委託する旨の遺言を認める規定は存しないし(相続分の指定(民法第九〇二条第一項)、遺産分割方法の指定(同法第九〇八条)及び遺言執行者の指定(同法第一〇〇六条第一項)については、その指定の第三者への委託が認められている。)、受遺者の如き遺贈の内容の本質的な部分についてその決定を第三者に一任するような内容の遺言は遺言の代理を禁止する民法の趣旨に反するものであり、許されないものといわなければならない(なお、原告は、負担附遺贈と第三者委託による遺贈とは実質的に同趣旨に帰することの権衡からしても本件遺言に基づく遺贈を有効と解すべきであると主張するが、負担附遺贈の内容は遺言者自身により決定されるものであり、これと遺贈の内容の決定を第三者に委託 とは実質的に同趣旨に帰することの権衡からしても本件遺言に基づく遺贈を有効と解すべきであると主張するが、負担附遺贈の内容は遺言者自身により決定されるものであり、これと遺贈の内容の決定を第三者に委託する旨の遺言とを同一に論ずることはできないから、右主張は失当である。)。 したがつて、本件遺言は、法律の認めた事項に当たらない事項を内容とする遺言であり、無効である。 そうすると、本件遺言書は、本件申請についての遺言執行者たるCの代理権限を託する書面ということはできないから、本件申請を不動産登記法第四九条第八号の規定により却下した本件決定に違法はない。 三よつて、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。
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