主文 被告人を懲役8年に処する。 未決勾留日数中90日をその刑に算入する。 押収してあるナイフ1本(平成13年押第18号の1)を没収する。 押収してある全国百貨店共通商品券10枚(平成13年押第18号の2)を被害者Aに還付する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1 コンビニエンスストアの経営者から金員を強取しようと企て,平成13年1月21日午後10時30分ころから同月22日午前0時ころまでの間,富山県射水郡a町bc番地B(当時58歳)方(以下「被害者宅」という。)において,その妻C(当時57歳)に対し,その左頬に所携のナイフ(刃体の長さ約10.7センチメートル,平成13年押第18号の1)を押し当て,その顔面にガムテープを巻きつけ,その両腕を後ろ手にガムテープで緊縛する暴行を加え,その長男A(当時24歳)に対し,その顔面にガムテープを巻きつけ,その両腕を後ろ手にガムテープで緊縛する暴行を加え,さらにC及びAに対し,「栃木の事件知ってるか。金を出せと言ったら,100万円しか出さなかったので殺してきた。」「店にはいくらある。」「金,取ってこい。」などと言って脅迫し,前記両名の反抗を抑圧した上,A所有の全国百貨店共通商品券10枚(額面金額合計1万円,同押号の2)を強取し,更に,Aをして,Bが経営する同県射水郡a町bd番地のeDストアーab店(以下「本件店舗」という。)からB所有の現金25万1500円を取って来させた上,被害者宅において同金員を差し出させて強取し,第2 業務その他正当な理由による場合でないのに,第1記載の日時・場所(被害者宅)において,同記載のナイフ1本を携帯し,第3 Aを略取して,その実父母であるB及びCの憂慮に乗じて財物を交付させようと企て,平成13年1月22日午前0時30分ころ,被害者宅におい ・場所(被害者宅)において,同記載のナイフ1本を携帯し,第3 Aを略取して,その実父母であるB及びCの憂慮に乗じて財物を交付させようと企て,平成13年1月22日午前0時30分ころ,被害者宅において,Aに対し,その顔面全体にガムテープを巻きつけ,その両腕をガムテープで後ろ手に緊縛した状態で被害者宅から連れ出し,付近に駐車中の普通乗用自動車に同人を乗せ,同車を発進走行させて同人を自己の支配下におき,もって同人を略取した上,同日午前11時54分ころから同日午後1時54分ころまでの間,合計5回にわたり,同県高岡市f町g番地hほか3か所に設置された各公衆電話から,本件店舗やCが所持していた携帯電話に電話をかけ「てめえ,息子がかわいくないんだなあ。」「金さえ受け取ったら終わるだろう。」「警察の動きが少しでもあるようだったら,また1年後でも寄らしてもらうからな。」などと申し向けて,もって,B及びCがAの安否を憂慮しているのに乗じて1000万円の交付を要求したが,同日午後2時ころになって警察が捜査を開始したことを察知したため,同日午後8時30分ころ,Aを安全な場所である同県婦負郡i町jk番地E神社入り口付近で解放し,第4 同日午前0時30分ころ,Aを,その顔面全体にガムテープを巻きつけ,その両腕をガムテープで後ろ手に緊縛し,前記普通乗用自動車に乗せて同車を走行させ,同日午前1時ころ,同県小矢部市lm番地被告人方ボイラー室に同人を連れ込んだ後,同所で同人の両足をガムテープで緊縛するなどし,さらに,同日午前3時ころ,同人を再度前記普通乗用自動車に乗せ,同県高岡市及びその周辺において同車を走行させるなどして,同日午後8時30分ころ第3記載のE神社入り口付近でAを解放するまでの間,同人が前記普通乗用自動車あるいは前記ボイラー室から脱出することを不能に 高岡市及びその周辺において同車を走行させるなどして,同日午後8時30分ころ第3記載のE神社入り口付近でAを解放するまでの間,同人が前記普通乗用自動車あるいは前記ボイラー室から脱出することを不能にし,もって同人を不法に監禁したものである。 (累犯前科)被告人は,平成9年12月9日富山地方裁判所高岡支部で住居侵入,窃盗,恐喝罪により懲役1年10月に処せられ,平成11年9月8日その刑の執行を受け終わったものであって,この事実は検察事務官作成の前科調書によって認められる。 (法令の適用)被告人の判示第1の所為は刑法236条1項に,判示第2の所為は銃砲刀剣類所持等取締法32条4号,22条に,判示第3の所為のうち,身の代金拐取の点は刑法225条の2第1項に,拐取者身の代金要求の点は同法225条の2第2項に,判示第4の所為は同法220条に該当するが,判示第3の身の代金拐取と拐取者身の代金要求との間には手段結果の関係があるので,同法54条1項後段,10条により1罪として犯情の重い拐取者身の代金要求罪の刑で処断することとし,所定刑中判示第2の罪について懲役刑を,判示第3の罪については有期懲役刑をそれぞれ選択し,前記の前科があるので同法56条1項,57条により各罪の刑について同法14条の制限内で(判示第1,第3の各罪)それぞれ再犯の加重をし,判示第3の罪については,被拐取者を安全な場所に解放したものであるから,同法228条の2,68条3号により法律上の減軽をし,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により最も重い判示第1の罪の刑に同法14条の制限内で法定の加重をし,その刑期の範囲内で被告人を懲役8年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中90日をその刑に算入し,押収してあるナイフ1本(平成13年押第18号の1)は,判示 に同法14条の制限内で法定の加重をし,その刑期の範囲内で被告人を懲役8年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中90日をその刑に算入し,押収してあるナイフ1本(平成13年押第18号の1)は,判示第1の罪の犯行の用に供した物で被告人以外の者に属しないから,同法19条1項2号,2項本文を適用してこれを没収し,押収してある全国百貨店共通商品券10枚(平成13年押第18号の2)は,判示第1の罪の賍物(盗品)で被害者に還付すべき理由が明らかであるから,刑事訴訟法347条1項によりこれを被害者Aに還付することとし,訴訟費用については,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用してこれを被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由) 1 本件は,被告人が,コンビニエンスストア経営者(以下「被害者父」という。)宅において,ナイフで同経営者の妻(以下「被害者母」という。)及び長男(当時24歳,以下「被害者長男」という。)を脅すなどして金員等を強取し,その際同ナイフを携帯した(判示第1,第2の事実)上,被害者長男を身の代金要求目的で略取して,その実父母である被害者父及び同母に対し身の代金を要求したが,捜査の開始を察知して同長男を解放するまでの間(判示第3の事実),普通乗用自動車内等に同長男を監禁した(判示第4の事実)という事案である。 2 被告人は,自ら300万円を超える債務を負っていながら,中国人ホステスとの交際のため,実母を騙して名義を借り,消費者金融業者から実母名義で200万円以上の借入を行い,その返済資金を得るあてがなかったことや,犯行当日,自宅前の用水路に落としたフォークリフトを引き上げるためのレッカー代として,実父から2万円程度を用意しておくよう言われたものの,前記ホステスが帰国した後,平成13年1月10日ころ以降は怠業して釣りやパチンコに興 に落としたフォークリフトを引き上げるためのレッカー代として,実父から2万円程度を用意しておくよう言われたものの,前記ホステスが帰国した後,平成13年1月10日ころ以降は怠業して釣りやパチンコに興じ,手持ちの金にも事欠いていたため,強盗や身の代金拐取,身の代金要求という卑劣な手段により借金の返済資金やレッカー代を得ようと考え,安易に本件各犯行に及んだものであって,その動機は身勝手極まりなく酌量の余地はない。 3 強盗及び銃刀法違反について被告人は,被害者母が本件店舗から居宅へ入るのを見届けた後,シャツを目出し帽様に加工してかぶり,ナイフ,ガムテープをコートのポケットにそれぞれ入れて携帯するなど,予め強盗の準備を整えて被害者宅へ入り,その後,判示のとおり,ナイフを用いて被害者母及び被害者長男を脅すなどした上,被害者母を自己の支配下に残して被害者長男に本件店舗の売上金を取りに行かせてこれを強取するなど,その犯行態様は悪質である。 4 身の代金拐取,拐取者身の代金要求及び監禁について被害者長男は,突如自宅に押し入った強盗犯人により,ガムテープで目隠しをされ,両腕は後ろ手に緊縛された状態で連れ去られ,殺されるのではないかとの死の恐怖にさらされたまま連れ回されたものであり,その間の肉体的苦痛,精神的苦痛は計り知れない。また,被害者父・同母においては,被害者長男の安否が分からぬまま,警察に連絡した後も身の代金を金融機関から借り入れるなど被告人の要求に必死に対応していたものであり,被害者長男が解放されたことを確認するまでの間に受けた精神的苦痛は察するに余りある。更に,被害者ら家族は,本件各犯行によってもたらされた恐怖感から,見知らぬ客への接客を避けられない本件店舗を閉鎖するに至った。被告人の本件各犯行に対する被害者らの処罰感情は強く,これに対し, ある。更に,被害者ら家族は,本件各犯行によってもたらされた恐怖感から,見知らぬ客への接客を避けられない本件店舗を閉鎖するに至った。被告人の本件各犯行に対する被害者らの処罰感情は強く,これに対し,被告人から何らかの慰謝の措置がとられる見込みは乏しい。 5 被告人は,本件各犯行について当公判廷で反省の言葉を述べているが,平成9年9月に犯した前件においても,遊興に耽って借金返済に窮した挙げ句,コンビニエンスストアの経営者方に侵入して窃盗を行った上,子を誘拐するなどと執拗に脅して金銭を喝取し,これらの事件につき同年12月に懲役1年10月の実刑判決を受けて服役したにも拘わらず,仮出獄後2年も経たないうちに,前件と同様の理由で,より凶悪な本件各犯行を行うに至ったものであって,被告人の規範意識の欠如には看過し得ないものがある。殊に,被告人は,自ら二児を持つ父親でありながら,息子の安否を気遣う被害者父・同母の憂慮に付け込み,金銭を要求するという卑劣な行為に及んでおり,この種の犯罪が社会一般の人々に与える不安や恐怖が大きいこと,及びその模倣性,伝播性が強いことなど社会に与える影響を併せ考えると,被告人の刑事責任は重いといわざるを得ない。 6 以上によると,被告人が略取した被害者長男を20時間余りで一般地方道に面した神社入り口付近において解放し,約10分後には被害者母に対して解放場所を電話で告げていること,解放するまでの間,被害者長男に対して,ガムテープでその顔面を巻き両腕部・脚部を緊縛した他は暴行を加えていないこと,身の代金の収受には至っていないこと,これまで養育費など支払うことはなかったものの,離婚した妻との間に若年の子2名がいることなどを考慮しても,なお,被告人を主文掲記の刑に処するのが相当であると判断した。 (求刑懲役10年,ナイフ1本没収) で養育費など支払うことはなかったものの,離婚した妻との間に若年の子2名がいることなどを考慮しても,なお,被告人を主文掲記の刑に処するのが相当であると判断した。 (求刑懲役10年,ナイフ1本没収)平成13年11月8日富山地方裁判所刑事部裁判長裁判官神沢昌克裁判官水野将徳裁判官光吉恵子
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