平成13(わ)2067 非現住建造物等放火未遂,詐欺被告

裁判年月日・裁判所
平成14年11月5日 名古屋地方裁判所
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判決文本文4,006 文字)

主文 被告人を懲役3年に処する。 理由 (犯罪事実)被告人は,分離前相被告人A及びBと共謀の上第1 愛知県小牧市a町b番地,c番地所在の,レンタルビデオ店「C店」の営業されている現に人が住居に使用せず,かつ,人が現在しない鉄骨造亜鉛メッキ鋼板葺2階建店舗(床面積合計約246.01平方メートル)に放火してこれを焼損しようと企て,平成11年12月7日午前3時24分ころ,同店1階店舗内において,被告人が,Dが所有する同店舗出入口付近床上に,灯油を入れたビールびん2本のうち1本を投げつけて割って灯油を撒き散らし,他の1本に入れた灯油を同所付近床に散布した上,これに所携のライターで点火して火を放ち,同建物を焼損しようとしたが,通報により駆けつけた消防署員らの消火活動により鎮火したため,塩化ビニール製床材等を溶解したにとどまり,その目的を遂げなかった。 第2 有限会社「E」が経営する上記「C店」店舗で発生した火災は被告人,分離前相被告人A及びBの放火行為によるものであり,同店舗の造作,備品及び営業用什器等に掛けていた店舗総合保険金を請求することができないのに正当な保険金請求であると装って保険会社から保険金の支払い名下に金員を詐取しようと企て,上記A及びBと共謀の上,平成12年2月10日ころ,名古屋市d区ef丁目g番h号F保険株式会社Gセンターにおいて,有限会社H代表取締役Iを介し,上記「C店」店舗の造作等に掛けていた店舗総合保険金を請求できる事由がないのにこれを秘し,あたかも正当な保険金請求であるかのように装い,上記F保険株式会社Gセンター業務部Jセンター課から委託を受けて事故事実の認定調査等を行うK株式会社のLに対し,上記有限会社「E」を保険契約者,F保険株式会社(代表取締役M)を保険者とし,上記「C店」店舗の造作等を対象とする保険金総額65 ー課から委託を受けて事故事実の認定調査等を行うK株式会社のLに対し,上記有限会社「E」を保険契約者,F保険株式会社(代表取締役M)を保険者とし,上記「C店」店舗の造作等を対象とする保険金総額6500万円の店舗総合保険につき,上記店舗に対する火災により同店舗内の造作及び備品等が焼損したことを理由とする保険金請求等の関係書類を交付し,同人を介して,東京都新宿区ij丁目k番l号所在の上記F保険株式会社に提出して上記店舗総合保険による保険金の支払いを請求し,上記L及び支払決定権者であるF保険株式会社Gセンター業務部長Nらをして,上記請求が正当な保険金請求である旨誤信させ,よって,同月17日,同社から愛知県犬山市大字m字no番地のp株式会社O銀行P支店の「E」B名義の普通預金口座に現金5899万6325円を振込入金させ,もって人を欺いて財物を交付させた。 (証拠)(省略)(事実認定の補足説明)第1 被告人は,判示第1の「C店」店舗(以下「本件建物」という。)は共犯者Bの所有建物であると思っていたと弁解し,弁護人も同様に主張して,被告人には共犯者所有の非現住建造物に対する放火の故意しかないから,刑法109条1項の罪ではなく,同条2項の限度で罪が成立するにすぎないと主張する。これに対して,検察官は,被告人が本件建物がBの所有であると思っていた旨の弁解は虚偽であるとして,他人所有の建物であると認識していたとする内容の本位的訴因を主張し,仮に,被告人が本件建物がB所有であると誤信していたとしても,被告人は本件建物に保険が掛けられていたと認識していた以上,刑法115条により,結局同法109条1項の故意が認められるとして,その旨の内容の予備的訴因を主張する。そこで,当裁判所が本位的訴因を認定した理由を以下補足して説明する。 第2 被告人の弁解1 法115条により,結局同法109条1項の故意が認められるとして,その旨の内容の予備的訴因を主張する。そこで,当裁判所が本位的訴因を認定した理由を以下補足して説明する。 第2 被告人の弁解 1 被告人は,本件建物がBの所有であると思っていたことについて,以下のとおり弁解する。 本件放火を分離前相被告人Aから依頼された際,Aからは,Bのビデオ屋に火をつけてくれと言われただけで,本件建物の所有関係についての話は出なかった。BがCを経営していたことはAから聞いて知っていたので,本件建物は漠然とBが所有している建物と思い,B自身が所有している建物を燃やすのであれば罪にはならず問題はないであろうと安易に考え,火をつけることを承諾した。前刑の裁判の時に,自分の建物に放火した女性のことが新聞に出ていたのを見て,その当時の弁護人に確認したところ,放火は公共の危険を処罰するものだから,誰の建物であろうと犯罪になると聞いて,自分のしたことが犯罪になると分かったが,その時には刑の軽重については聞かなかった。BからもAからも,本件建物のどの部分を燃やすという指示はなかった。Bが自分の所有する建物を燃やすのだから,本件建物には保険でも掛けてあるのだろう,その結果,その保険金によって,自分も報酬がもらえるのだろうと思っていた。 2 1の弁解内容に格別不審な点は見当たらない上,この弁解をする前の被告人の供述は,「Aから事前に保険金目的であることを教えてもらっていなかったが,自分の店に放火する以上,保険が掛けてなければ損をするだけであるから,本件建物には保険が掛けられており,Bらは保険金をだまし取るつもりであると考えていた」というもので,前記弁解と矛盾したものではなく,現に被告人は,商品等に限定せず本件建物の広い範囲が燃えるような方法で放火行為に及んでいる られており,Bらは保険金をだまし取るつもりであると考えていた」というもので,前記弁解と矛盾したものではなく,現に被告人は,商品等に限定せず本件建物の広い範囲が燃えるような方法で放火行為に及んでいることからすると,被告人が,Bが本件建物の所有者であり,本件建物に掛けられている保険金をだまし取る目的であったと誤信していたものと認められる。 この点,検察官は,被告人の弁解が最終段階で突如としてなされたこと自体不合理であると主張するが,「刑の軽重は聞いておらず,誰の所有であろうと犯罪になると聞いていたことから言い出さなかった」という被告人の弁解も納得のいく説明であり,このほかに被告人が本件建物の所有者がBではないことを知っていたと認められるような事情はないから,上記主張は採用できない。 第3 本位的訴因が成立することについて現に人が住居に使用せず,かつ,現に人がいない建物が自己(共犯者を含む)の所有に属していても,保険が付されていれば,これを焼損した場合には,刑法115条により同法109条1項の罪が成立する。本件において,被告人は,本件建物が共犯者であるB所有であり,かつ,保険が付されたものであると認識していたのであるから,被告人には刑法109条1項で処断されるべき故意が認められることになる。このような故意のもとで,本位的訴因のとおり,被告人は,同条同項に該当する,他人所有の建物に放火したものであるから,被告人には事実の一部誤認が認められるが,故意は阻却されず,本位的訴因の罪が成立するものと解される。 (確定裁判)(省略)(法令の適用)罰条第1 刑法60条,112条,109条1項第2 刑法60条,246条1項併合罪の処理刑法45条後段,50条,45条前段,47条本文, 罰条第1 刑法60条,112条,109条1項第2 刑法60条,246条1項併合罪の処理刑法45条後段,50条,45条前段,47条本文,10条,14条(重い第1の罪の刑に法定の加重をする。)(量刑の理由)本件は,被告人が,A及びBと共謀して,Bが経営するビデオ店に保険金目的で放火し,建物の放火そのものは未遂に終わったものの,商品にかけられた保険金を保険会社から詐取したという事案である。 本件放火は,あらかじめ火炎瓶を作成した上これを用いて放火しているのであって,計画的犯行であり,その態様も危険かつ悪質である。本件ビデオ店舗は,主要幹線道路沿いにあって,近隣建物も多く一歩間違えば大惨事になりかねないものであった。また,被告人らは約5900万円もの保険金を詐取しているのであって,詐欺についても結果が重大である。被告人は,Aから誘われるや,共犯者であるBに近づきたいとの思いもあって,躊躇することなく放火の実行犯役を果たしたもので,動機に酌むべき事情はなく,果たした役割もまた重大である。そして,被告人自身本件の報酬として80万円を受け取っている。 そうすると,被告人の刑事責任は重い。 しかしながら,本件各犯行の主謀者はBであり,詐欺によって得た金額の大半は同人が手に入れており,被告人は,いずれの犯行においても従属的な立場で関与したものであり,いずれの罪についても認めて反省していること,放火については未遂に終わったこと,被告人は,被害保険会社に対して自己の分け前と同額である80万円の被害弁償をしたこと,本件各犯行と併合罪の関係にある確定判決を受け,現在受刑中であること,公判廷において被告人の実父が被告人を監督する旨述べていることなど被告人に有利な事情もある。 そこで,これらの諸事 償をしたこと,本件各犯行と併合罪の関係にある確定判決を受け,現在受刑中であること,公判廷において被告人の実父が被告人を監督する旨述べていることなど被告人に有利な事情もある。 そこで,これらの諸事情を総合考慮して,主文のとおり判決することとする。 (求刑-懲役5年)平成14年11月5日名古屋地方裁判所刑事第3部裁判長裁判官片山俊雄裁判官岩井隆義裁判官石井寛

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