平成25(ワ)525 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成26年4月10日 大阪地方裁判所
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判決文本文36,422 文字)

平成26年4月10日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成25年(ワ)第525号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成26年2月10日判決当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。事実及び理由第1 当事者の求めた裁判 1 原告(1)被告らは,別紙被告製品目録記載の各製品を製造し,輸入し若しくは販売し又は輸入若しくは販売の申出をしてはならない。(2)被告らは,前項の各製品を廃棄せよ。(3)被告らは,原告に対し,連帯して1億円並びにこれに対する株式会社カテックスについては平成25年2月6日から,被告 株式会社については同月12日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。(4)訴訟費用は被告らの負担とする。(5)仮執行宣言 2 被告ら主文同旨第2 事案の概要 1 前提事実(当事者間に争いがない。)(1)当事者原告は,建設用ファスナー類及びトンネル用支保材並びにその附属品の製造,販売及び設計,施工等を目的とする会社である。被告株式会社カテックス(以下「被告カテックス」という。)は,ゴム製品,プラスチック製品,ビニール製品,合成樹脂成型品,工業用皮革製品並びにゴムホース各種の販売等を目的とする会社である。被告 株式会社(以下「被告ファイレップ」という。)は,工業用品の輸出入,販売,製造等を目的とする会社である。(2)原告の有する特許権原告は,以下の特許(以下「本件特許」といい,本件特許に係る発明を「本件特許発明」という。また,本件特許出願の願書に添付さ 輸出入,販売,製造等を目的とする会社である。(2)原告の有する特許権原告は,以下の特許(以下「本件特許」といい,本件特許に係る発明を「本件特許発明」という。また,本件特許出願の願書に添付された明細書及び図面を「本件明細書等」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有する。特許番号第3101180号発明の名称ロックボルト用ナット出願日平成7年6月28日登録日平成12年8月18日特許請求の範囲【請求項1】外周に雄ねじ部の形成されたロックボルトに螺合可能な所定長の雌ねじ部を有し,地山に打ち込まれたロックボルトに座板と組み合わせて嵌め込むことで,ロックボルトを地盤に固定するロックボルト用ナットにおいて,ロックボルト用ナットの大半の長さを占め,座板の穴に遊挿可能なシャフト部と,シャフト部の手元側に固着され,座板の穴より大きい頭部から成り,頭部からシャフト部まで連続するように所定長の雌ねじ部を形成したこと,を特徴とするロックボルト用ナット。(3)無効審判請求と訂正請求被告カテックスが,平成25年4月26日,本件特許について特許無効審判を請求したところ,原告は,当該特許無効審判において特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を請求した。訂正後における特許請求の範囲の記載は,以下のとおりである(以下「本件訂正発明」という。なお,下線部が訂正部分である。)。【請求項1】外周にロープねじ状の雄ねじ部の形成されたロックボルトに螺合可能な所定長の雌ねじ部を有し,工事トンネル内側壁に穿設された地山のボアホールに打ち込まれたロックボルトに座板と組み合わせて嵌め込むことで,ロックボルトを地盤に固定するための鋼製のトンネル工事用のロックボルト用ナットにおいて,前 事トンネル内側壁に穿設された地山のボアホールに打ち込まれたロックボルトに座板と組み合わせて嵌め込むことで,ロックボルトを地盤に固定するための鋼製のトンネル工事用のロックボルト用ナットにおいて,前記地山のボアホールに入り込むようにロックボルト用ナットの大半の長さを占め,座板の穴に遊挿可能なシャフト部と,シャフト部の手元側に固着され,座板の穴より大きく,締めつけ工具を嵌めて回転できるように六角頭状の頭部から成り,頭部からシャフト部まで連続するように前記ロープねじ状のロックボルトの雄ねじ部に螺合する所定長の雌ねじ部を形成したこと,を特徴とするトンネル工事用のロックボルト用ナット。(4)構成要件の分説ア本件特許発明を構成要件に分説すると,以下のとおりである。A 外周に雄ねじ部の形成されたロックボルトに螺合可能な所定長の雌ねじ部を有し,地山に打ち込まれたロックボルトに座板と組み合わせて嵌め込むことで,ロックボルトを地盤に固定するロックボルト用ナットにおいて,B ロックボルト用ナットの大半の長さを占め,座板の穴に遊挿可能なシャフト部と,C シャフト部の手元側に固着され,座板の穴より大きい頭部から成り,D 頭部からシャフト部まで連続するように所定長の雌ねじ部を形成したこと,E を特徴とするロックボルト用ナット。イ本件訂正発明を構成要件に分説すると,以下のとおりである。 外周にロープねじ状の雄ねじ部の形成されたロックボルトに螺合可能な所定長の雌ねじ部を有し,工事トンネル内側壁に穿設された地山のボアホールに打ち込まれたロックボルトに座板と組み合わせて嵌め込むことで,ロックボルトを地盤に固定するための鋼製のトンネル工事用のロックボルト用ナットにおいて, 前記地山のボアホールに入り込むようにロックボルト れたロックボルトに座板と組み合わせて嵌め込むことで,ロックボルトを地盤に固定するための鋼製のトンネル工事用のロックボルト用ナットにおいて, 前記地山のボアホールに入り込むようにロックボルト用ナットの大半の長さを占め,座板の穴に遊挿可能なシャフト部と, シャフト部の手元側に固着され,座板の穴より大きく,締めつけ工具を嵌めて回転できるように六角頭状の頭部から成り, 頭部からシャフト部まで連続するように前記ロープねじ状のロックボルトの雄ねじ部に螺合する所定長の雌ねじ部を形成したこと, を特徴とするトンネル工事用のロックボルト用ナット。(5)被告らの行為被告カテックスは,平成22年1月ころから,別紙被告製品目録記載の各製品(以下「被告製品」という。)を業として,販売している。被告ファイレップが被告製品を輸入し,被告カテックスに販売しているかについて,後記のとおり当事者間に争いがある。 2 原告の請求原告は,被告らの行為により本件特許権を侵害されたとして,被告らに対し,本件特許権に基づき,被告製品の製造販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに,不法行為(民法709条及び719条1項)に基づき,一部金請求として,連帯して1億円の損害賠償及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日(被告カテックスについては平成25年2月6日,被告ファイレップについては同月13日)からそれぞれ支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている。 3 争点(1)被告ファイレップが被告製品を輸入し,被告カテックスに販売しているか(争点1)(2)被告製品は本件特許発明及び本件訂正発明の技術的範囲に属するか(争点2)(3)本件特許は クスに販売しているか(争点1)(2)被告製品は本件特許発明及び本件訂正発明の技術的範囲に属するか(争点2)(3)本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものであるかア本件訂正発明は,本件特許出願前に頒布されたスイス国特許発明第654057号明細書(以下「乙3刊行物」という。)に記載された発明(以下「乙3発明」という。)と同一又は当業者が乙3発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるか (争点3-1)イ本件訂正発明は,本件特許出願前に頒布された国際公開第88/08065号(以下「乙10刊行物」という。)に記載された発明(以下「乙10発明」という。)と同一又は当業者が乙10発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるか (争点3-2)ウ本件訂正発明は,当業者が本件特許出願前に頒布された特開昭56-108500号公報(以下「乙7公報」という。)に記載された発明(以下「乙7発明」という。)に基づいて容易に発明をすることができたものであるか (争点3-3)エ本件特許は実施可能要件,サポート要件及び明確性要件に違反するものであるか (争点3-4)(4)損害額 (争点4)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告ファイレップが被告製品を輸入し,被告カテックスに販売しているか)について【原告の主張】以下のとおり,被告ファイレップは,被告製品を輸入し,被告カテックスに販売するなどしているものである。(1)主位的主張 テックスに販売しているか)について【原告の主張】以下のとおり,被告ファイレップは,被告製品を輸入し,被告カテックスに販売するなどしているものである。(1)主位的主張被告ファイレップは,平成23年1月31日に設立されて以降,被告製品を輸入し,被告カテックスに販売している。(2)予備的主張1仮に,後記【被告ファイレップの主張】のとおり,被告ファイレップが被告製品を輸入していないとしても,その主張の根拠としている被告カテックスとの間の貿易取引条件は容易に変更することができる。したがって,被告ファイレップは,被告カテックスとの間の貿易取引条件を変更し,自ら被告製品を輸入する(本件特許権を侵害する)おそれがある。(3)予備的主張2仮に,後記【被告ファイレップの主張】のとおり,被告ファイレップが被告製品を輸入し又は販売してはいないとしても,被告ファイレップは,被告製品を含む関連会社(外国会社)製品の日本国内における販売窓口であり,日本国内における販売活動を促進する様々な活動を行っている。また,被告ファイレップは,被告カテックスによる被告製品の輸入に際し,そのために必要な手続を全て行っている。これらの被告ファイレップの行為については,民法719条の共同不法行為(教唆又は幇助)が成立する。【被告ファイレップの主張】以下のとおり,被告ファイレップは,被告製品を輸入しておらず,被告カテックスに販売することなどもしていない。(1)主位的主張についてア被告ファイレップは被告製品を輸入していないことスイス法人である (以下「FIA社」という。)は,被告カテックスに対し,平成20年6月18日から,被告製品の販売を開始した。 ていないことスイス法人である (以下「FIA社」という。)は,被告カテックスに対し,平成20年6月18日から,被告製品の販売を開始した。その後,FIA社に代わり,ドイツ法人である  ! "#$%(以下「FRT社」という。)が,被告カテックスに被告製品を販売している。FIA社及びFRT社と被告カテックス間の取引では,インコタームズ(国際商業会議所が制定した貿易取引条件解釈の国際規則)のC&F(運賃込み条件。「CFR」ともいう。)が採用されている。C&Fでは,海外の売主(輸出者)が貨物を本船に積み込み,輸入港に到着するまでの運賃を負担し,その後の費用を買主が負担する。貨物の所有権や危険負担は,輸出港において売主が貨物を本船に積み込んだ時点(&')で買主に移転する。また,輸送保険料も買主が負担し,日本国内への通関手続も買主が全て行う。このように,C&Fでは,海外の売主が日本国内への輸入業務に一切関与しない。被告製品についても,輸出先の港で本船に積み込まれた時点で,その所有権や危険負担が被告カテックスに移転しており,その後に生じる一切の費用負担,名古屋港における通関手続は,被告カテックスが全て行っている。したがって,被告製品を輸入しているのは被告カテックスであり,被告ファイレップではない。イ被告ファイレップが被告カテックスに被告製品を販売していないこと被告ファイレップは,平成23年1月に設立された後,FRT社から日本国内に対するFRT社製品の販売等に関する代理権を与えられ,FRT社を代理して,被告カテックスから被告製品に関する注文を受け,代金も受領している。しかし,被告ファイレップと被告カテックスとの間に 本国内に対するFRT社製品の販売等に関する代理権を与えられ,FRT社を代理して,被告カテックスから被告製品に関する注文を受け,代金も受領している。しかし,被告ファイレップと被告カテックスとの間に直接(の契約関係はない。したがって,被告ファイレップは,被告カテックスに被告製品を販売していない。(2)予備的主張1について一般論として,インコタームズ2010の定める取引条件は,国際売買に関する極めて重要な取引条件であり,契約当事者が容易に変更することのできるものではない。被告カテックスとの取引条件についても,FIA社が契約当事者であった平成20年から現在に至るまで,基本契約及び個々の取引契約において一貫して「C&F」を採用している。そもそも,本件訴訟により本件特許権に係る紛争が生じているにもかかわらず,FRT社が,その侵害主体とされかねないような契約条件にあえて変更するという不合理な行動をとる蓋然性は皆無である。少なくとも被告ファイレップにおいて被告カテックスとの貿易取引条件を変更する意思はないから,本件特許権を侵害するおそれはない。(3)予備的主張2について仮に,被告ファイレップの行為を教唆又は幇助に当たると評価することが可能であったとしても,本件特許の登録国である日本の領域外の行為であるから違法性がなく,不法行為が成立する余地はない。 2 争点2(被告製品は本件特許発明及び本件訂正発明の技術的範囲に属するか)について【原告の主張】以下のとおり,被告製品は本件特許発明及び本件訂正発明の技術的範囲に属する。(1)被告製品の構成被告製品の構成は以下のとおりである。ア被告製品1(別紙被告製品目録記載1の製品))a 外周にロープねじ状の雄ねじ部の形成されたロックボルト 範囲に属する。(1)被告製品の構成被告製品の構成は以下のとおりである。ア被告製品1(別紙被告製品目録記載1の製品))a 外周にロープねじ状の雄ねじ部の形成されたロックボルトに螺合可能な長さの雌ねじ部を有し,工事トンネル内側壁に穿設された地山のボアホールに打ち込まれたロックボルトにプレートと組み合わせて嵌め込むことで,ロックボルトを地盤に固定するための鋼製のトンネル工事用のロックボルト用ナットであり,b 前記地山のボアホールに入り込むようにロックボルト用ナットの長さの約86%の長さを占め,プレートの穴に遊挿可能なシャフト部と,c シャフト部の手元側に固着され,プレートの穴より大きく,締めつけ工具を嵌めて回転できるように六角頭状の頭部から成り,d 頭部からシャフト部まで連続するように前記ロープねじ状のロックボルトの雄ねじ部に螺合する所定長の雌ねじ部を形成したこと,e を特徴とするトンネル工事用のロックボルト用ナット。イ被告製品2(別紙被告製品目録記載2の製品)上記アbの構成のうち,「ロックボルト用ナットの長さの約86%」が「ロックボルト用ナットの長さの約66%」であるほかは,被告製品1の構成と同じである。(2)構成要件充足性被告製品の構成c及びdは,それぞれ本件特許発明の構成要件C及びD並びに本件訂正発明の構成要件及びに相当し,被告製品は,上記各構成要件を充足する。また,被告製品は以下の構成要件も充足する。ア構成要件A及びE並びに及び(ア) 「ロックボルト用ナット」は,仮支保工用のものに限定されないこと本件特許発明及び本件訂正発明は,構成要件の文言上,仮支保工用のものに限定しておらず,本支保工用のものも上記各発明の技術的範囲に含まれる。 用ナット」は,仮支保工用のものに限定されないこと本件特許発明及び本件訂正発明は,構成要件の文言上,仮支保工用のものに限定しておらず,本支保工用のものも上記各発明の技術的範囲に含まれる。*(イ) 構成要件充足性被告製品の構成及び は,それぞれ構成要件A及びE並びに及びに相当する。イ構成要件B及び(ア)「ロックボルト用ナットの大半の長さ」の意義「大半」とは「半分以上」を意味する。(イ)構成要件充足性前記+1,のとおり,被告製品1のシャフト部は,「ロックボルト用ナットの長さの約86%の長さ」を占めており,被告製品1のシャフト部は,「ロックボルト用ナットの長さの約66%の長さ」を占めている。したがって,被告製品は,いずれも構成要件B及びを充足する。【被告らの主張】以下のとおり,被告製品は本件特許発明及び本件訂正発明の技術的範囲に属するものではない。(1)構成要件A及びE並びに及びア本件特許発明及び本件訂正発明の「ロックボルト用ナット」は,仮支保工用のものに限定されること本件明細書等の記載によれば,本件特許発明及び本件訂正発明は仮支保工用のみに用いることが予定されており,本支保工用として用いられることは一切予定されていない。したがって,本件特許発明及び本件訂正発明の「ロックボルト用ナット」は,仮支保工専用のものに限定されるべきである。イ構成要件充足性被告製品は,いずれも本支保工用のものであるから,構成要件A及びE並びに及びを充足しない。(2)構成要件B及び構成要件B及びのうち「ロックボルト用ナットの大半の長さ」という文言は,その意義が非常に不明確であり,技術的範囲を確定することができない を充足しない。(2)構成要件B及び構成要件B及びのうち「ロックボルト用ナットの大半の長さ」という文言は,その意義が非常に不明確であり,技術的範囲を確定することができない。したがって,被告製品は構成要件 及びを充足しない。 3 争点3-1(本件訂正発明は,乙3発明と同一又は当業者が乙3発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるか)について【被告らの主張】以下のとおり,本件訂正発明は,乙3発明と同一又は当業者が乙3発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。(1)乙3発明乙3公報には,以下の発明(乙3発明)が記載されている。3-A スポーク,心棒及びパイプからなるボルト体の外周に,雄ねじ部が形成されている。ナットは,ボルト体の外周の雄ねじ部に螺合可能な所定長の雌ねじ部を有する。ナットとアンカープレートを,ボルト体に組み合わせて嵌め込むことで,ボルト体を地盤に固定する。3-B ナットは,その大半(54%)の長さを占め,アンカープレートの穴に遊挿可能なシャフト部を有する。3-C ナットは,シャフト部の手元側に固着され,アンカープレートの穴より大きい頭部を有する。3-D ナットは,頭部からシャフト部まで連続する所定長の雌ねじ部を有する。(2)本件訂正発明との対比ア一致点乙3発明の「ナット」,「ボルト」及び「アンカープレート」は,それぞれ本件訂正発明の「ロックボルト用ナット」,「ロックボルト」及び「座板」に相当する。イ相違点(ア) 相違点1本件訂正発明の構成要件及びでは,ロックボルトの雄ねじ部の形状が「ロープねじ状」に特定されているのに対し,乙3発明では特定されていな 板」に相当する。イ相違点(ア) 相違点1本件訂正発明の構成要件及びでは,ロックボルトの雄ねじ部の形状が「ロープねじ状」に特定されているのに対し,乙3発明では特定されていない。(イ) 相違点2本件訂正発明の構成要件では,シャフト部が「地山のボアホールに入り込む」とされているのに対し,乙3発明ではこの点に関する明示的な記載がない。(ウ) 相違点3本件訂正発明の構成要件では,ナットの素材が「鋼製」に特定されているのに対し,乙3発明では特定されていない。(エ) 相違点4本件訂正発明の構成要件では,ロックボルト用ナットの頭部が「締めつけ工具を嵌めて回転できるように六角頭状」の構成に特定されているのに対し,乙3発明のナットの頭部は六角頭状ではない。(オ) 相違点5本件訂正発明では「トンネル工事用のロックボルト」又は「トンネル工事用ロックボルト用ナット」に特定されているのに対し,乙3発明では特定されていない。(3)新規性欠如又は進歩性欠如本件特許発明は,乙3発明と実質的に同一のものである。本件訂正発明は,本件特許発明の構成を前提として,上記相違点に係る構成を付加したものにすぎない。上記相違点に係る構成は,いずれもロックボルトの技術分野における技術常識であり,容易に想到することが可能である。したがって,本件訂正発明は,乙3発明と実質的に同一又は当業者が乙3発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。ア相違点1~4までいずれもロックボルトの技術分野における技術常識である。イ相違点5ロックボルトは,昭和25年ころから,欧米でトンネル工事に用いられるようになり,日本国内においても昭和35年ころからトンネル工事用に用いられるようになっ における技術常識である。イ相違点5ロックボルトは,昭和25年ころから,欧米でトンネル工事に用いられるようになり,日本国内においても昭和35年ころからトンネル工事用に用いられるようになった。ロックボルト又はロックボルト用ナットが「トンネル工事用」に用いられることは技術常識である。乙3発明のロックボルトは,「中空建造物における土に固定するための引張アンカー」である。中空建造物とは内部が空虚な建造物をいうものであり,トンネル,地下空洞,地下発電所,連絡坑等が含まれる。実際に,乙3発明のロックボルトは,本件特許出願前からトンネル工事用に用いられていた。したがって,相違点5も実質的な相違点ではない。【原告の主張】以下のとおり,本件訂正発明は,乙3発明と同一又は当業者が乙3発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。(1)本件訂正発明との対比ア構成要件に関する相違点乙3発明の「ボルト体」は「中空建造物における土に固定するための引張アンカー」であり,「トンネル工事用ロックボルト」に相当するものではない。したがって,乙3発明の「ナット」も,「トンネル工事用ロックボルト用ナット」に相当するものではない。本件訂正発明のロックボルトの雄ねじ部は,「ロープねじ状」(ピッチが粗いねじ)であるのに対し,乙3発明では雄ねじ部の形態について特定されていない。本件訂正発明のナットは「鋼製」であるのに対し,乙3発明ではナットの素材について特定がない。そもそも,乙3発明のナットは,ボルト体を地盤に固定するものではない。イ構成要件に関する相違点乙3発明のシャフト部はロックボルト用ナット全体の長さの約49%を占めるものにすぎず,「ロックボルト用ナットの大半の長さを占め」て 地盤に固定するものではない。イ構成要件に関する相違点乙3発明のシャフト部はロックボルト用ナット全体の長さの約49%を占めるものにすぎず,「ロックボルト用ナットの大半の長さを占め」ていない。乙3発明のシャフト部は,地山のボアホールに入り込むものでもない。ウ構成要件に関する相違点本件訂正発明のナットの頭部は「六角頭状である」のに対し,乙3発明のナットの頭部は六角頭状ではなく,放射状に突出したリブが形成されている。エ構成要件に関する相違点上記アのとおり,本件訂正発明のロックボルトの雄ねじ部は「ロープねじ状」(ピッチが粗いねじ)であるのに対し,乙3発明では雄ねじ部の形態について特定されていない。オ構成要件に関する相違点上記アのとおり,乙3発明の「ボルト体」は「中空建造物における土に固定するための引張アンカー」であり,「トンネル工事用ロックボルト」に相当するものではない。(2)新規性又は進歩性を有すること本件訂正発明は,シャフト部がロックボルト用ナットの大半の長さを占めること(構成要件)により,トンネル工事において使用されるロックボルトの地山から突出する長さを短くするという課題を解決するものである。これに対し,乙3刊行物には,シャフト部の長さがナットの大半を占める構成について記載がない。 また,本件訂正発明は,頭部を六角頭状にすること(構成要件)によっても,頭部の突出長さを短くするという課題を解決しているのに対し,乙3発明にはこれに相当する構成がない。乙3発明はナットの頭部の座板と接する面にテーパが形成されており,穿孔からの力を座板で受けると座板に局所的に過度の力が作用し,支持できないおそれがある。そのため,トンネル工事用に用いることができない 3発明はナットの頭部の座板と接する面にテーパが形成されており,穿孔からの力を座板で受けると座板に局所的に過度の力が作用し,支持できないおそれがある。そのため,トンネル工事用に用いることができない。そもそも,乙3発明は,「繊維強化プラスチックからなるパイプ状のアンカーにおいて,このようなアンカーをプレストレストアンカーとして使用できるようにする,引く力に耐え得るネジ取付部を提供すること」を課題とするものである。本件訂正発明とは課題が異なり,上記相違点も課題が相違することに起因するものである。本件訂正発明は,乙3発明に対し進歩性を有する。 4 争点3-2(本件訂正発明は,乙10発明と同一又は当業者が乙10発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるか)について【被告らの主張】以下のとおり,本件訂正発明は,乙10発明と同一又は当業者が乙10発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。(1)乙10発明の内容乙10刊行物には以下の発明(乙10発明)が記載されている。10-A 止め具部材の外周に雄ねじ部が形成されている。ナットは,止め具部材の外周の雄ねじ部に螺合可能な所定長の雌ねじ部を有する。ナットとアンカープレートを止め具部材に組み合わせて嵌め込むことで,止め具部材を地盤に固定する。10-B ナットは,その大半(78%)の長さを占め,アンカープレートの穴に遊挿可能なシャフト部を有する。10-C ナットは,シャフト部の手元側に固着され,アンカープレートの穴より大きい頭部を有する。10-D ナットは,頭部からシャフト部まで連続するような所定長の雌ねじ部を有する。(2)本件訂正発明との対比ア一致点 固着され,アンカープレートの穴より大きい頭部を有する。10-D ナットは,頭部からシャフト部まで連続するような所定長の雌ねじ部を有する。(2)本件訂正発明との対比ア一致点乙10発明の「ナット」,「ボルト」及び「アンカープレート」は,それぞれ本件訂正発明の「ロックボルト用ナット」,「ロックボルト」及び「座板」に相当する。イ相違点(ア) 相違点1本件訂正発明の構成要件及びではロックボルトの雄ねじ部の形状が「ロープねじ状」に特定されているのに対し,乙10発明では特定されていない。(イ) 相違点2本件訂正発明の構成要件ではシャフト部が「地山のボアホールに入り込む」とされているのに対し,乙10刊行物には明示的な記載がない。(ウ) 相違点3本件訂正発明の構成要件ではナットの素材が「鋼製」に特定されているのに対し,乙3発明では特定されていない。(エ) 相違点4本件訂正発明の構成要件ではロックボルト用ナットの頭部が「締めつけ工具を嵌めて回転できるように六角頭状」の構成に特定されているのに対し,乙10発明のナットの頭部は六角頭状ではない。(オ) 相違点5本件訂正発明では「トンネル工事用のロックボルト」又は「トンネル工事用ロックボルト用ナット」に特定されているのに対し,乙10発明では特定されていない。(3)新規性欠如又は進歩性欠如本件特許発明は,乙10発明と実質的に同一のものである。本件訂正発明は,本件特許発明の構成を前提として,上記相違点に係る構成を付加したものにすぎない。上記相違点に係る構成は,いずれもロックボルトの技術分野における技術常識であり容易に想到することが可能である。したがって,本件訂正発明は,乙10発明と実質的に同一又は当業 付加したものにすぎない。上記相違点に係る構成は,いずれもロックボルトの技術分野における技術常識であり容易に想到することが可能である。したがって,本件訂正発明は,乙10発明と実質的に同一又は当業者が乙10発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。ア相違点1~4までいずれもロックボルトの技術分野における技術常識である。イ相違点5ロックボルトは,昭和25年ころから,欧米でトンネル工事に用いられるようになり,日本国内でも昭和35年ころからトンネル工事用に用いられるようになった。ロックボルト又はロックボルト用ナットが「トンネル工事用」に用いられることは技術常識である。そもそも乙10発明の「止め具部材」は,トンネル,地下建造物(地下発電所等),橋梁,大規模な法面の補強等に使用されるものである。したがって,相違点5も実質的な相違点ではない。【原告の主張】以下のとおり,本件訂正発明は,乙10発明と同一又は当業者が乙10発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。(1)本件訂正発明との対比(ア構成要件に関する相違点乙10発明の「止め具部材」は「プレストレストコンクリートにおけるプラスチック留め具部材の固定アンカー及びプレストレストアンカー」であり,「トンネル工事用ロックボルト」に相当するものではない。したがって,乙10発明の「ナット」も,「トンネル工事用ロックボルト用ナット」に相当するものではない。本件訂正発明のロックボルトの雄ねじ部は「ロープねじ状」(ピッチが粗いねじ)であるのに対し,乙10発明では雄ねじ部の形態について特定されていない。本件訂正発明のナットは「鋼製」であるのに対し,乙10発明のナットは「繊維 雄ねじ部は「ロープねじ状」(ピッチが粗いねじ)であるのに対し,乙10発明では雄ねじ部の形態について特定されていない。本件訂正発明のナットは「鋼製」であるのに対し,乙10発明のナットは「繊維強化プラスチック等の繊維素材」である。そもそも,乙10発明のナットは止め具部材を地盤に固定するものではない。イ構成要件に関する相違点乙10刊行物に記載された図面には,一見,シャフト部がロックボルト用ナットの大半の長さを占めるもののように記載されている。しかし,乙10発明において,そのように構成する理由は全く記載されていない。乙10発明のシャフト部は,地山のボアホールに入り込むものでもない。ウ構成要件に関する相違点本件訂正発明のナットの頭部は「六角頭状である」のに対し,乙10発明のナットの頭部は六角頭状ではなく,締めつけ工具で締めつけにくい形状である。エ構成要件に関する相違点上記アのとおり,本件訂正発明のロックボルトの雄ねじ部が「ロープねじ状」(ピッチが粗いねじ)であるのに対し,乙10発明では雄ねじ部の形態について特定されていない。)オ構成要件に関する相違点上記アのとおり,乙10発明の「止め具部材」は「プレストレストコンクリートにおけるプラスチック留め具部材の固定アンカー及びプレストレストアンカー」であり,「トンネル工事用ロックボルト」に相当するものではない。(2) 新規性又は進歩性を有すること本件訂正発明はシャフト部がロックボルト用ナットの大半の長さを占めること(構成要件)により,トンネル工事において使用されるロックボルトの地山から突出する長さを短くするという課題を解決するものである。乙10明細書には,一見,シャフト部の長さがナットの大半を占める構成 要件)により,トンネル工事において使用されるロックボルトの地山から突出する長さを短くするという課題を解決するものである。乙10明細書には,一見,シャフト部の長さがナットの大半を占める構成が記載されているものの,そのような構成を採用する理由は記載されていない。 また,本件訂正発明は,頭部を六角頭状にすること(構成要件)によっても,頭部の突出長さを短くするという課題を解決しているのに対し,乙10発明にはこれに相当する構成がない。乙10発明は,ナットの頭部の座板と接する面にテーパが形成されており,穿孔からの力を座板で受けると,座板に局所的に過度の力が作用し,支持できないおそれがある。そのため,トンネル工事用に用いることができるものではない。そもそも,乙10発明は,「止め具部材のプラスチックマトリックスの横方向圧縮力が小さく,かつ応力が均一に低い繊維強化プラスチックからなる既成要素を用い,複数のジャッキストロークによるプレストレスを可能にする締結装置を提供すること」を課題とするものである。本件訂正発明とは課題が異なり,上記相違点も課題が相違することに起因するものである。本件訂正発明は,乙10発明に対し進歩性を有する。 5 争点3-3(本件訂正発明は,当業者が乙7発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるか)について*【被告らの主張】以下のとおり,本件訂正発明は,当業者が乙7発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。(1)乙7発明の内容乙7公報には以下の発明(乙7発明)が記載されている。7-A 外周にねじ状の雄ねじ部の形成されたロックボルトに螺合可能な所定長の雌ねじ部を有し,工事トンネル内側壁(坑道の天井)に穿設された地山のボアホールに打ち込まれたロック 記載されている。7-A 外周にねじ状の雄ねじ部の形成されたロックボルトに螺合可能な所定長の雌ねじ部を有し,工事トンネル内側壁(坑道の天井)に穿設された地山のボアホールに打ち込まれたロックボルトに座板と組み合わせてはめ込むことで,ロックボルトを地盤に固定する鋼製のトンネル工事用(坑道工事用)のロックボルト用ナット(ボルトヘッド)である。7-B 上記ナットは,地山のボアホールに入りこむように,座板の穴に遊挿可能なシャフト部を有する。7-C 上記ナットは,シャフト部の手元側に固着され,座板の穴より大きい頭部を有する。7-D 上記ナットは,頭部からシャフト部まで連続するようにロックボルトの雄ねじ部に螺合する所定長の雌ねじ部を有する。7-E 上記ナットは,坑道工事用(トンネル工事用)のロックボルト用ナットである。(2)本件訂正発明との対比ア一致点以下の相違点を有するほか,本件訂正発明は乙7発明と一致する。イ相違点(ア)相違点1本件訂正発明の構成要件及びではロックボルトの雄ねじ部の形状が「ロープねじ状」に特定されているのに対し,乙7発明では特定されていない。(イ)相違点2本件訂正発明の構成要件ではシャフト部が「ロックボルト用ナットの大半の長さ」を占めるのに対し,乙7発明ではシャフト部がロックボルト用ナットの大半の長さを占めていない。(ウ)相違点3本件訂正発明の構成要件ではロックボルト用ナットの頭部が「締めつけ工具を嵌めて回転できるように六角頭状」の構成に特定されているのに対し,乙7発明のナットの頭部は六角頭状ではない。(3)容易想到性ア乙3発明との組合せによる容易想到性前記3【被告らの主張】(1 めて回転できるように六角頭状」の構成に特定されているのに対し,乙7発明のナットの頭部は六角頭状ではない。(3)容易想到性ア乙3発明との組合せによる容易想到性前記3【被告らの主張】(1)のとおり,乙3発明では,シャフト部がロックボルト用ナットの大半の長さを占めている。乙7発明と乙3発明は同一の技術分野に属するものであるから, 当業者が乙7発明に乙3発明の構成を適用することは容易である。前記3【被告らの主張】(3)と同様,上記各相違点に係る構成は,技術常識であり,容易に想到することが可能である。したがって,本件訂正発明は,当業者が乙7発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。イ乙10発明との組合せによる容易想到性前記4【被告らの主張】(1)のとおり,乙10発明では,シャフト部がロックボルト用ナットの大半の長さを占めている。乙7発明と乙10発明は同一の技術分野に属するものであるから, 当業者が乙7発明に乙10発明の構成を適用することは容易である。前記4【被告らの主張】(3)と同様,上記各相違点に係る構成は,技術常識であり,容易に想到することが可能である。したがって,本件訂正発明は,当業者が乙7発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。ウ乙3発明及び乙10発明との組み合わせによる容易想到性前記ア及びイのとおり,当業者が乙7発明に乙3発明及び乙10発明,技術常識を適用して,本件訂正発明の構成を想到することは容易である。【原告の主張】以下のとおり,本件訂正発明は,当業者が乙7発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。(1)本件訂正発明との対比本件訂正発明と乙7発明との一致点,相違点に関する被告らの主張(前記【被告ら ,本件訂正発明は,当業者が乙7発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。(1)本件訂正発明との対比本件訂正発明と乙7発明との一致点,相違点に関する被告らの主張(前記【被告らの主張】(2))について,争うことを明らかにしない。(2)容易想到性がないことア乙3発明との組合せによる容易想到性がないこと(ア)乙7発明に乙3発明の構成を適用する動機付けや示唆がないこと乙3発明は,繊維強化プラスチックからなるパイプ状のアンカーについて,プレストレストアンカーとして使用できるように,引く力に耐えるねじ取付部を提供することを課題としている。これに対し,乙7発明は,ボルトの締め付け前に得られる固定・設置トルクを予めテストできるようにすることを課題としている。このように,乙3発明と乙7発明は,課題が全く異なり(このため,乙3発明のナットは大型のものとなる。),これらを組み合わせる動機付けや示唆もない。そもそも,前記3【原告の主張】(1)イのとおり,乙3発明のシャフト部はロックボルト用ナットの大半の長さを占めていない。(イ)組合せに阻害要因があること乙3発明のナットに大きい力が作用する場合,シャフト部の長さが長いと,頭部に作用するねじり力(締め付け力)はナットの全長に均等に作用せず,頭部とシャフト部の境界付近に大きく作用し,ねじが破壊されるおそれがある。特に,乙3発明はパイプに直接ねじが形成されているのではなく,外側層が被覆されているので,技術的にはシャフト部の長さを短くする必要がある。したがって,乙7発明に乙3発明を適用することについては阻害要因がある。(ウ)その他の相違点に係る構成が技術常識ではないこと本件訂正発明の課題は,地山から突出するナットの頭部をできるだけ小さく がって,乙7発明に乙3発明を適用することについては阻害要因がある。(ウ)その他の相違点に係る構成が技術常識ではないこと本件訂正発明の課題は,地山から突出するナットの頭部をできるだけ小さくすることにある。そのために締め付け工具を嵌めて回転できるように六角頭状の頭部を有している。また,本件訂正発明は全面接着式のロックボルト用ナットに係る発明であるから,座板が地山表面に当接する程度にナットの頭部を締め付ければ足りるものである。これに対し,乙7発明のナットの頭部は四角形状であり,機械を使用して締め付けるものである。これは,乙7発明が全面接着式ではなく,先端接着式のものであり,機械でボルト装置全体を回転させて樹脂カプセルを破断,混合した後,締め付けることを前提としていることによる。このように,本件訂正発明のナットの頭部形状は,本件訂正発明の課題を解決するための特有の形状であり,単なる設計事項ではない。また,乙7発明は,ボルトヘッドに要求される回転力を正確に設定制御することを目的とした発明であり,ねじ山についても2.54㎝当たり11本のねじ山を有する並目ねじが実施例としてあげられている。したがって,仮にロープねじが技術常識であったとしても,乙7発明においてロープねじのような比較的ねじ山のピッチが粗いねじを採用することは考えられない。イ乙10発明との組合せによる容易想到性がないこと(ア)乙7発明に乙10発明の構成を適用する動機付けや示唆がないこと乙7発明は支持の目的で坑道の天井に設置されるアンカーボルトであるのに対し,乙10発明は,プレストレストコンクリートに用いられるアンカーであり,技術分野が異なる。また,乙7発明のアンカーボルトは一端部を地山の削孔に固定するとともに,地山の表面で他端部に トであるのに対し,乙10発明は,プレストレストコンクリートに用いられるアンカーであり,技術分野が異なる。また,乙7発明のアンカーボルトは一端部を地山の削孔に固定するとともに,地山の表面で他端部にナットを取り付けているのに対し,乙10発明のアンカーは両端部をコンクリートから突出させてナットを取り付けており,固定のメカニズムも全く異なる。他に,乙7発明に乙10発明の構成を適用する動機付けや示唆はない。そもそも,前記4【原告の主張】(1)イのとおり,乙10発明のシャフト部はロックボルト用ナットの大半の長さを占めていない。(イ)その他の相違点が技術常識ではないこと上記ア(ウ)のとおりである。ウ乙3発明及び乙10発明との組み合わせによる容易想到性がないこと前記ア及びイに述べたとおり,乙7発明に乙3発明及び乙10発明を組み合わせることによる進歩性欠如の主張には理由がない。 6 争点3-4(本件特許は実施可能要件,サポート要件及び明確性要件に違反するものであるか)について【被告らの主張】以下のとおり,本件特許は実施可能要件,サポート要件及び明確性要件に違反するものである。(1)本件訂正発明の構成要件「大半」とは,「半分以上」(50%以上)又は「十中八九」(80%,90%)をいう。そうすると,構成要件のうち「ロックボルト用ナットの大半の長さを占め」という部分には,広範な技術的範囲が含まれる。それにもかかわらず,本件明細書等の発明の詳細な説明では,約70%比率のロックボルトが1つ図示されているにすぎない。そうすると,本件明細書等の発明の詳細な説明では,当業者が本件訂正発明の広範な範囲全てに渡って実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないから,本件特許は いるにすぎない。そうすると,本件明細書等の発明の詳細な説明では,当業者が本件訂正発明の広範な範囲全てに渡って実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないから,本件特許は実施可能要件に違反する。また,本件訂正発明は発明の詳細な説明に記載された範囲を実質的に超えるものであり,本件特許はサポート要件にも違反する。そもそも「ロックボルト用ナットの大半の長さを占め」という部分は著しく不明確な記載であるから,本件特許は明確性要件にも違反する。(2)本件明細書等の発明の詳細な説明に本支保工用についての記載がないこと本件訂正発明は,構成要件の文言上,本支保工用と仮支保工用の両方を含みうる。しかし,本件明細書等の発明の詳細な説明には,仮支保工用ロックボルト用ナットについて記載があるものの,本支保工用ロックボルト用ナットについては全く記載がない。 そうすると,本件訂正発明は,発明の詳細な説明欄に記載された範囲を実質的に超えるものであり,本件特許はサポート要件に違反する。 また,本支保工用及び仮支保工用の両者を含む本件訂正発明の全範囲にわたって当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないから,本件特許は実施可能要件にも違反する。【原告の主張】以下のとおり,本件特許は実施可能要件,サポート要件及び明確性要件に違反するものではない。(1)本件訂正発明の構成要件構成要件の「大半」とは「半分以上」の長さをいうものであり,下限は明示されている。また,本件訂正発明のナットはシャフト部と頭部によって構成されるため,頭部を除いた部分の長さが上限となる。 したがって,構成要件に関する実施可能要件,サポート要件及び明確性要件違反はない。(2)本件明細書等の発明の詳細な説明に本支保 成されるため,頭部を除いた部分の長さが上限となる。 したがって,構成要件に関する実施可能要件,サポート要件及び明確性要件違反はない。(2)本件明細書等の発明の詳細な説明に本支保工用についての記載がないこと本支保工用のものと仮支保工用のものとでロックボルトの構成に差異はないから,本件訂正発明は,発明の詳細な説明欄に記載された範囲を超えるものではない。 したがって,この点に関するサポート要件及び実施可能要件違反もない。 7 争点4(損害額)について【原告の主張】(1) 売上高ア平成22年1月から平成23年1月30日までの期間における売上高被告カテックスは,平成22年1月から平成23年1月30日まで,単価約3000円で,少なくとも合計13万セットの被告製品を販売した。したがって,上記期間における被告製品の売上高は,少なくとも3億9000万円である。イ平成23年1月31日から現在までの売上高被告カテックスは,平成23年1月31日から現在までの間に,単価約3000円で,少なくとも合計24万セットの被告製品を販売した。したがって,上記期間における被告製品の売上高は,少なくとも7億2000万円である。 (2) 被告カテックスが受けた利益被告カテックスは,上記(1)の売上高合計11億1000万円の20%に相当する2億2200万円の利益(このうち平成23年1月31日以降の部分は1億4400万円である。)を受け,原告は同額の損害を受けた。 (3) 被告ファイレップが受けた利益被告ファイレップは,上記(1)イの売上高7億2000万円の10%に相当する7200万円の利益を受け,原告は同額の損害を受けた。 (4) 弁護士費用被告らが受けた上記(2)及び(3)の 告ファイレップは,上記(1)イの売上高7億2000万円の10%に相当する7200万円の利益を受け,原告は同額の損害を受けた。 (4) 弁護士費用被告らが受けた上記(2)及び(3)の利益合計2億9400万円の10%に相当する弁護士費用2940万円(このうち平成23年1月31日以降の被告らの行為に対応する部分は2160万円である。)は,本件と相当因果関係のある損害である。 (5) 被告らが負担する損害賠償義務被告カテックスは,上記(2)及び(4)の損害を合計した3億2340万円について損害賠償義務を負う。被告ファイレップは,平成23年1月31日以降の被告らの行為による損害合計2億3760万円(内訳:被告カテックスが受けた上記(2)の利益のうち1億4400万円,被告ファイレップが受けた上記(3)の利益7200万円,弁護士費用のうち2160万円)について損害賠償義務を負う。被告らの行為は共同不法行為であるから,被告カテックスと被告ファイレップの損害賠償債務は重複する限度で不真正連帯債務である。 【被告らの主張】否認し,争う。そもそも,原告が製造販売する製品は本件特許発明の実施品ではないから,原告に逸失利益は発生していない。第4  当裁判所の判断本件訂正発明は,当業者が乙7発明に基づいて容易に発明をすることができたものである(争点3-3に対する判断)。本件訂正発明は,本件特許発明を減縮したものであるから,本件特許発明についてもまた同じことがいえる。したがって,本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものであり,原告は,被告らに対し,本件特許権を行使することはできない(特許法104条の3第1項)。(以下,詳述する。 1 争点3-3(本件訂正発明は,当業者が乙7 り無効にされるべきものであり,原告は,被告らに対し,本件特許権を行使することはできない(特許法104条の3第1項)。(以下,詳述する。 1 争点3-3(本件訂正発明は,当業者が乙7発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるか)に対する判断(1)ロックボルト用ナットに関する本件特許出願日当時における技術常識と本件特許発明ア本件明細書等には以下の記載がある。「【発明の詳細な説明】【0001】【産業上の利用分野】本発明はトンネル工事等で地山の定着に用いるロックボルトにプレート,ワッシャー等の座板と組み合わせて嵌め込むことで,ロックボルトを地山に固定するロックボルト用ナットに係り,とくに仮支保工なため後で切断が可能なように,FRPや樹脂などからなり,外周にねじを形成した,単位長さ当たりのねじ強度(ねじ山の引張強度)が低いロックボルトに好適なロックボルト用ナットに関する。【0002】【従来の技術】山岳等のトンネル工事で一般的なナトム工法(NATM工法)では,地山を掘削したあと(必要な場合は壁をセメントで固めた後),壁から岩盤内部へ垂直に多数のロックボルトを打ち込み,セメント系或いは樹脂系等の所定の定着材で定着させるなどして,トンネルの壁近くの地盤を強固にするとともに岩盤内部の地盤で支持することで内壁周辺の崩落を防ぐようにしている(支保工)。ロックボルトには工事トンネルの側壁等に垂直に打ち込み定着させたあとそのまま地盤中に残して長期間,地盤の補強を行う支保工用と,工事トンネル先端の切羽鏡やサイロット等に打ち込み,定着させるが,一時的な補強を行うだけで後にトンネル掘進とともに切断される仮支保工用とが有る。【0003】前者の支保工用の場合,構造部材としてなるべく高強度のも)のが望まし に打ち込み,定着させるが,一時的な補強を行うだけで後にトンネル掘進とともに切断される仮支保工用とが有る。【0003】前者の支保工用の場合,構造部材としてなるべく高強度のも)のが望ましく鋼製のものが利用される。そして,打設後はプレート,ワッシャー等の座板とナットを用いて地盤への締めつけが行われ,長期間,強固に定着するようにしている。一方,後者の仮支保工の場合,後に切断可能なように,FRPや樹脂などからなり,外周にねじを形成した,単位長さ当たりのねじ強度(ねじ山の引張強度)が低い構造部材が用いられる。 但し,仮設の場合,短期間の内に除去されることが多いので通常はナットによる締めつけはされず,単に地盤中に打設されるだけである。【0004】ここで,工事トンネルの側壁に対し垂直かつ放射状に打設するパターンボルトの場合,後で拡幅しない場合は図4の右側に示す如く,鋼製のロックボルト1をプレート,ワッシャー等の座板とナットを用いて地盤に締めつけ支保工を行うが,後で拡幅のため掘削する予定が有る場合,FRPや樹脂などのように比較的強度の低いロックボルトで仮支保工を行う。但し,仮設期間が長くなるので,定着強度を上げるため図4の左側に示す如く,低強度のロックボルト2にプレート,ワッシャー等の座板と組み合わせたナットを嵌め込みたい場合が有る。ところが,FRPや樹脂などからなる構造部材では,鋼製ロックボルトの如く自在なピッチで外面に雄ねじ部を切削することが難しい。このことから,従来は,図5に示す如く,ロックボルト2の素材成型時にその外形を所謂ロープねじ状(鋼製ロックボルトに形成される雄ねじ部よりピッチが粗い)に加工するようにしていた。【0005】ロープねじ加工されたロックボルト2に用いるナット3は,同じくロープねじの雌ねじ部を形成したものと (鋼製ロックボルトに形成される雄ねじ部よりピッチが粗い)に加工するようにしていた。【0005】ロープねじ加工されたロックボルト2に用いるナット3は,同じくロープねじの雌ねじ部を形成したものとなる。このようなロープねじ加工されたロックボルト2とナット3において,打設後のロックボルト2にプレート,ワッシャー等の座板4と組み合わせたナット3を嵌め込んでロックボルト2を地山5に締めつけ,定着させる場合に,ロックボルト2とナット3の嵌め合わせ部分のねじ山に掛かる引っ張り荷重を小さくし,*ねじ山の引張強度の低い素材でも十分に耐えられるようにする必要がある。 このため,図5に示す如く,ロックボルト2とナット3との嵌め合わせ長さLをかなり長くしなければならず,ナット3を長尺にして雌ねじ部に十分な長さを確保しなければならない。【0006】【発明が解決しようとする課題】けれども,従来のナット3では地山の内壁に当たるプレート,ワッシャー等の座板4をナット3の一端面で押さえるようになっているので,ナット3が長尺になるとそれだけナット3を含めたロックボルト2の端部がトンネル空間内に大きく突出してしまう。この結果,トンネル施工の途中において他の作業の邪魔になったり,次工程で防水シート,アイソレーションシート等のシート類6を敷設する場合,突出したロックボルト頭部に阻害されてシート類6に凸凹が生じ,所期のシート性能を発揮できなくなってしまうなどの問題があった。【0007】以上から本発明の目的は,ロックボルトの突出長さを短くできるロックボルト用ナットを提供することである。【0008】【課題を解決するための手段】上記課題は本発明においては,外周に雄ねじ部の形成されたロックボルトに螺合可能な所定長の雌ねじ部を有し,地山に打ち込まれたロックボ 提供することである。【0008】【課題を解決するための手段】上記課題は本発明においては,外周に雄ねじ部の形成されたロックボルトに螺合可能な所定長の雌ねじ部を有し,地山に打ち込まれたロックボルトに座板と組み合わせて嵌め込むことで,ロックボルトを地盤に固定するロックボルト用ナットにおいて,ロックボルト用ナットの大半の長さを占め,座板の穴に遊挿可能なシャフト部と,シャフト部の手元側に固着され,座板の穴より大きい頭部から成り,頭部からシャフト部まで連続するように所定長の雌ねじ部を形成したことにより達成される。【0009】【作用】本発明によれば,ロックボルトを用いて仮設期間の長い仮支保工を行う場合,地山にボアホールを穿設しておく。そして,ロックボルトを打設したあと,座板の穴にナットのシャフト部を遊挿した状態で,ロックボルト頭部外面の雄ねじ部にナットの雌ねじ部を嵌め込んでいく。嵌め込みの進行とともにナットのシャフト部はボアホール内に入り込み,座板はナットの頭部によって地盤に押し当てられ,ロックボルトが地盤に強固に定着される。これにより,ロックボルトに座板と組み合わせたナットを嵌め込んだとき,ナットの大部分はボアホール内に入り込み,ほぼナットの頭部と座板を合わせた厚み分が外に出るだけなので,ロックボルトの突出長さを短くでき,他の作業の邪魔とならず,また,次工程で防水シート,アイソレーションシート等のシート類を敷設する場合に凸凹が小さくなるので所期のシート性能を発揮させることができる。」「【0019】【発明の効果】以上本発明のロックボルト用ナットによれば,座板の穴にナットの大半の長さを占めるシャフト部を遊挿した状態で,ロックボルト頭部外面の雄ねじ部にナットの雌ねじ部を嵌め込んでいくと,嵌め込みの進行とともにナットの のロックボルト用ナットによれば,座板の穴にナットの大半の長さを占めるシャフト部を遊挿した状態で,ロックボルト頭部外面の雄ねじ部にナットの雌ねじ部を嵌め込んでいくと,嵌め込みの進行とともにナットのシャフト部はボアホール内に入り込み,座板はナットの頭部によって地山に押し当てられ,ロックボルトが地盤に締めつけられるように構成したので,ロックボルトに座板と組み合わせたナットを嵌め込んだとき,ナットの大半はボアホール内に入り込み,頭部が外に出るだけなので,ロックボルトの突出長さを短くでき,他の作業の邪魔とならず,また,次工程で防水シート,アイソレーションシート等のシート類を敷設する場合に凸凹が小さくなるので所期のシート性能を発揮させることができる。又,ロックボルトとナットの嵌め合い長さを十分に長くできるから,ねじのピッチが粗くてもねじ山に掛かる引っ張り荷重は小さく,ねじ山の引張強度が比較的低いロックボルトでも十分に耐えることができる。」イ上記アの本件明細書等の記載によれば,以下の事実が認められる。(ア)本件訂正発明の利用分野トンネル工事等で,地山の定着に用いられるロックボルトを,地山に固定するロックボルト用ナットに関する発明である(段落【0001】)。(イ)前提とする従来技術従来から,FRPや樹脂などからなる構造部材では,鋼製とは異なり,自在なピッチで外面に雄ねじ部を切削することが難しいため,ロックボルトの素材成型時にその外形を所謂ロープねじ状(鋼製ロックボルトに形成される雄ねじ部よりピッチが粗い)に加工するようにしていた(段落【0004】)。ロープねじ加工されたロックボルトに用いるナットは,同じくロープねじの雌ねじ部を形成したものとなる。このようなロープねじ加工されたロックボルトとナットでは,ロックボルトを いた(段落【0004】)。ロープねじ加工されたロックボルトに用いるナットは,同じくロープねじの雌ねじ部を形成したものとなる。このようなロープねじ加工されたロックボルトとナットでは,ロックボルトを地山に締めつけ,定着させる場合に,ロックボルトとナットの嵌合わせ部分のねじ山に掛かる引っ張り荷重を小さくし,ねじ山の引張強度の低い素材でも十分に耐えられるようにするため,ナットを長尺にして雌ねじ部に十分な長さを確保する必要があった(段落【0005】)。(ウ)解決しようとする課題,解決手段及び作用効果上記(イ)の従来技術では,ナットが長尺になるとそれだけナットを含めたロックボルトの端部がトンネル空間内に大きく突出してしまい,トンネル施工の途中に他の作業の邪魔になるなどの課題があった(段落【0006】)。本件訂正発明は上記課題を解決するため,ロックボルトの突出長さを短くできるロックボルト用ナットを提供することを目的とするものである(段落【0007】)。本件訂正発明が採用した課題解決手段は,ロックボルト用ナットについて,① 座板の穴より大きい頭部と,座板の穴に遊挿可能なシャフト部を組み合わせたこと,② シャフト部の長さをロックボルト用ナットの大半の長さを占めるようにしたことである(段落【0008】)。これにより,ロックボルトに座板と組み合わせたナットを嵌め込んだとき,ナットの大部分はボアホール内に入り込み,ほぼナットの頭部と座板を合わせた厚み分が外に出るだけなので,ロックボルトの突出長さを短くすることができるという作用効果を奏する(段落【0009】【0019】)。ところで,「大半」とは,一般に,「半分以上,過半,大部分。おおかた。」をいうものと解される。上記のとおり,本件訂正発明では,ナットの大部分が 用効果を奏する(段落【0009】【0019】)。ところで,「大半」とは,一般に,「半分以上,過半,大部分。おおかた。」をいうものと解される。上記のとおり,本件訂正発明では,ナットの大部分がボアホール内に入り込むから,構成要件’の「ロックボルト用ナットの大半の長さ」とは,「ロックボルト用ナットの大部分の長さ」をいうものと解される。ウ本件特許出願前に刊行された文献には,以下の記載がある。(ア)社団法人日本トンネル技術協会発行「トンネルと地下〔通巻90号〕」(乙14,20。昭和53年2月1日発行)「従来わが国では,トンネル工事においてコンクリートでライニングするまでの間,地山の緩みを支えるのに% 型鋼支保工が用いられてきたが,これに代わるものとして十数年前からロックボルト( -)が着目され,山陽新幹線工事や上越新幹線工事などで本格的に使用され実用化の段階に入ってきた。ロックボルトが用いられ始めたのは今世紀の初めからといわれ,1つは1912年にヨーロッパにおいて.' /0! が 0 !の'炭坑で使用したとの記録がある。これとは別に1910年代後半にアメリカの鉱山において開発され,発展普及して行ったといわれている。このアメリカの成果によって,1950年代後半から,ソ連フランス,西ドイツ,イギリス,オランダ,インド,南アフリカなどにおいて盛んに用いられている。わが国においても,ロックボルトは昭和25年(1950年)頃に鉱山へ導入されたが,トンネル工事で用いられたのは,33年に国鉄岩日線第3高野トンネルで試験的に使用したのではじめてではないかと思われる。その後,34~36年に神岡線第4中山トンネルで,38~41年に新清水トンネルで,42年 工事で用いられたのは,33年に国鉄岩日線第3高野トンネルで試験的に使用したのではじめてではないかと思われる。その後,34~36年に神岡線第4中山トンネルで,38~41年に新清水トンネルで,42年中央線第1羅天トンネルで使用された。これらの実績により,ロックボルトのトンネルの支保材としてすぐれていることが認められ,44年の土木学会トンネル標準示方書の改訂で,ロックボルト工が支保工の一部として節として設けられた。そして山陽新幹線の諸トンネルで本格的に用いられた。しかし,以上はいずれも硬岩においての締め付け方式のロックボルトであったが,この方式での締め付け管理のむずかしさおよびロックボルトの中硬岩ないし軟岩への適用の面から,全面接着方式の採用の機運が生まれ,まず高瀬川発電所の圧力導水路トンネルで同方式のロックボルトが使用された。次いで,上越新幹線大清水トンネル(万太郎谷工区),奥吉野地下発電所,紅葉山線鬼峠トンネル,大清水トンネル(保登野沢工区)で使用された。そして,現在施工中の上越新幹線中山トンネルで12(13/0/ "2!')を採用,成功するに及んでロックボルトはトンネル支保材としての価値が認められたものといえよう。ロックボルトは別名ルーフボルト(.)とも呼ばれるが,これは最初炭坑や鉱山で用いられ,単に坑道の天井部分の脱落しそうな岩塊をロックボルトによって健全な地山に結びつけようとしたことによるものと思われる。最近のロックボルトの使用の傾向は,上記の「つり下げ作用」的なものでなく,トンネルにおいては,掘削周辺岩盤に放射状にボルトを打ち込み,岩盤とロックボルトとを一体とさせて掘削空間を維持しようとする「岩盤補強作用」~「内圧作用」的に用いられるよう 的なものでなく,トンネルにおいては,掘削周辺岩盤に放射状にボルトを打ち込み,岩盤とロックボルトとを一体とさせて掘削空間を維持しようとする「岩盤補強作用」~「内圧作用」的に用いられるようになってきている。前述の12 はロックボルトのこのような作用を最大限に利用したトンネル掘削工法であり,オーストリアのタウェルントンネル(1970年から1975年)での成功が紹介され,わが国のトンネル技術者の間においても合理的な工法として認められた。」「ロックボルトを使用する際には,それがどのような機構でトンネル周辺の地山を安定化させるかを知ることが重要であるが,この問題は十分明らかにされているとはいえない。ロックボルトは経験的に支保工として有効であることが見い出されたものであり,その理由付けは種々試みられているものの,作用の仕方は複雑で一般に認められた統一的な理論が出されるまでに至っていない。ロックボルトの作用機構は,使い方によってまた適用する地質によって違ってくると考えるのが適当である。」(イ) 社団法人日本トンネル技術協会編「ロックボルト工の現場設計法に関する研究(その2)報告書」(乙13,23。昭和55年3月刊行)「ロックボルトには多くの種類があるが,これを定着方式により分類すると締付け式,全面定着式およびこれらの併用式に大別される。」締め付けは「ロックボルトの締付け式および併用式にのみ従来施工されており,全面接着式については軟弱地山の場合に孔口付近の表層部をベアリングプレートにより押しつける程度のナット締めを行ってきた。 しかしながら,ヨーロッパの12 における全面接着式のロックボルトでは打設後早い時期に5から10程度のプレストレスをかけている施工例があり,日本においてもプレストレスをかけてい しかしながら,ヨーロッパの12 における全面接着式のロックボルトでは打設後早い時期に5から10程度のプレストレスをかけている施工例があり,日本においてもプレストレスをかけている施工例が見受けられる。地山をゆるめないという点に関して積極的な考え方であるが,現在のところ今後の研究に待つところが多い。しかし,ロックボルトの施工のチェックという点では有用である。実施においては現場にて試験を行ってその時期と締めつけ力を決定すべきである。締付け式ボルトのいずれの型式についても,締付けの操作については同様である。すなわち,アンカーを固定したのち,孔口から突出しているボルトねじ部にベアリングプレートおよびナットを装着し,ナットを回転させてベアリングプレートを岩表面に圧着させてボルトを緊張する。締付けの方式としては」パイプレンチ,スパナ等を用いた「人力による方法」,「インパクトレンチによる方法」がある。(ウ) 一般社団法人日本規格協会「日本工業規格 42*5)) ロックボルト及びその構成部品」(乙42。平成4年刊行)「この規格は,坑道,トンネル,地下空洞,切取斜面の岩盤支保などに用いるロックボルト(以下,ロックボルトという。)及びその構成部品について規定する。」「ロックボルトは,緊定部及びねじ部を含む。ただし,緊定方式及び緊定形式は,この規格では特に規定しない。」「ナットの種類は, 4( の附属書(4&*~* によらない六角ナット)に規定する六角ナットの形状の区別によって,1種,2種及び4種の3種類とする。」エ小括本件明細書等及び上記ウの各文献の記載によれば,本件特許出願より前に,以下の点については,当業者の技術常識であったことが認め 形状の区別によって,1種,2種及び4種の3種類とする。」エ小括本件明細書等及び上記ウの各文献の記載によれば,本件特許出願より前に,以下の点については,当業者の技術常識であったことが認められる。(ア) ロックボルトは,坑道,トンネル,地下空洞,切取斜面の岩盤等について,支保工として広く用いられるものである。(イ) ロックボルトを定着方式により分類すると,締付け式,全面定着式およびこれらの併用式に分けられる。全面定着式についても締め付けがされることがあり,締め付けの操作は締付け式と共通であって,スパナ等を用いた人力によることもある(なお,本件明細書等の段落【0002】から【0007】までの記載によれば,本件特許発明は全面接着式のロックボルトについて締め付けを行う場合もその技術的範囲に含むことが明らかである。したがって,本件訂正発明も,全面接着式のロックボルトについて人力で締め付けを行いうることを前提としている。)。(ウ) ロックボルトに用いられるナットの形状は,六角ナットが標準規格として定められていた。(エ) ロックボルトとして,従来から,FRPや樹脂などからなる構造部材が用いられていた。この場合,ロックボルトの素材成型時にその外形を所謂ロープねじ状(鋼製ロックボルトに形成される雄ねじ部よりピッチが粗い)に加工するようにしていた。また,ロープねじ加工されたロックボルトに用いるナットは,同じくロープねじの雌ねじ部を形成したものであった。このようなロープねじ加工されたロックボルトとナットでは,ナットを長尺にして雌ねじ部に十分な長さを確保する必要があった。(2)乙7公報に記載された発明(乙7発明)ア乙7公報の記載乙7公報には以下の記載がある。(1欄1行目~)「特許請求の範囲軸部30と,坑 じ部に十分な長さを確保する必要があった。(2)乙7公報に記載された発明(乙7発明)ア乙7公報の記載乙7公報には以下の記載がある。(1欄1行目~)「特許請求の範囲軸部30と,坑道の天井に形成された穴の内端において該軸部30の一端を上記天井に固定するカプセル26と,該軸部30の他端の雄螺子部32に係合する雌螺子部40を有するヘッド部材34と,ヘッド部材34と天井表面の間で該軸部30に設けられヘッド部材34を締付けると天井面に押しつけられる天井板36と,からなる坑道天井に設置されるボルト装置にして,該ヘッド部材34の天井と接する側とは反対側に該軸部30と係合する雌螺子部40に続いてもう一つの雌螺子部42を設け,これにストッパプラグ44を螺合したことを特徴とする該ボルト装置。(〔産業上の技術分野〕本発明は支持の目的で坑道の天井に設置されるアンカーボルトに関する。」(3欄22行目~)「〔発明が解決しようとする問題点〕そこで本発明は,ボルトを最初に固定手段により所定位置に固定した後,ボルトの締付け前に得られる固定・設置トルクを予めテストする簡単かつ安価な手段を備え,ボルトヘッドを坑道の天井に向けて引き上げて天井板を天井に押しつけ,これにより支持係合させる坑道の天井に使用するボルト装置を提供することを目的とする。〔問題点を解決するための手段〕本発明は,上記目的を達成するため,軸部と,坑道の天井に形成された穴の内端において該軸部の一端を上記天井に固定するカプセルと,該軸部の他端の雄螺子部に係合する雌螺子部を有するヘッド部材と,ヘッド部材と天井表面の間で該軸部に設けられヘッド部材を締付けると天井表面に押しつけられるボルト装置にして,該ヘッド部材の天井と接する側とは反対側に該軸部と係合する雌螺子部に続いて るヘッド部材と,ヘッド部材と天井表面の間で該軸部に設けられヘッド部材を締付けると天井表面に押しつけられるボルト装置にして,該ヘッド部材の天井と接する側とは反対側に該軸部と係合する雌螺子部に続いてもう一つの雌螺子部42を設け,これにストッパプラグを螺合したことを特徴とする該ボルト装置を提供しようとするものである。〔作用〕上記ストッパプラグはボルト軸部の一端に当接してボルトヘッド内への上記軸部の進入を初期には制限する。しかし一定の回転力がボルトヘッドに加わると,軸部によりストッパプラグに加えられる力により前記第2ねじ穴部のねじ山が摺り減らされ,ストッパプラグは前記中心穴から押出され,ボルトヘッド及び天井板は天井に支持係合すべく天井に向けて前進し得るようになる。ストッパプラグをねじ穴部内に螺合して設けると,ストッパプラグをねじ穴部から離脱させるためにボルトヘッドに要求される回転力を正確に設定,制御できるとともに,予め固定し且つ得られる設置トルク)のテストを行うから,毀損の構造に無関係な部品を付加したり高価につく変形を施したりすることなくボルト装置を適切に設置できる。〔実施例〕本発明は更に,設置の最終段階でボルトヘッドから押し出されるストッパプラグをボルトヘッドに設けることにより,ボルト装置が適切に設置されたこと,及びボルト設置開会により適切な値の設置トルクを生じることを視覚的に示す。」(4欄25行目~)「本発明装置によれば,一端をねじ切りした標準的なボルト軸部を使用でき,これに係合するボルトヘッドは形状に関して従来の坑道の天井用のボルトヘッドと同じものでよい。そしてボルトヘッドのねじ穴は短時間で精確に形成でき,ストッパプラグは構成が簡単でボルトヘッドに対して容易に組付け得る。」(6欄27行目~)「第9図乃 道の天井用のボルトヘッドと同じものでよい。そしてボルトヘッドのねじ穴は短時間で精確に形成でき,ストッパプラグは構成が簡単でボルトヘッドに対して容易に組付け得る。」(6欄27行目~)「第9図乃至第13図に前記第1図乃至第8図の実施例の変形例を示す。この変形例におけるボルト軸部と天井板は前記実施例のものと同一であり,従って同様の部分をダッシュを付した同一符合で示す。第9図乃至第13図において,54はボルトヘッドのナット上本体部分で,外周部にフランジ56を備えている。58は該フランジ56から更に延設された略円筒形の本体部分で,その外壁60は該本体部分58の端部まで漸次先細とされている。」(7欄34行目~)「第9図,第10図からわかるように,先細状の本体部分58の一部は,穴22内に嵌入されて穴22内で軸部30を心合せする機能を果たしている。また第1ねじ穴部62のねじ山を穴22内で軸部30に係合させたことにより,ボルトヘッドに最終的に回転力が作用した時点で軸部30がボルトヘッドから過度に突出する可能性を最小限にできる。このことは,採掘の対象が薄い鉱石層や石炭層である場合に好適である。何故ならボルト軸部が突出していると,それらを打たずに安全に作*用しうるには採掘機械の高さを低くする必要があるからである。」(8欄9行目~)「前述の通り,樹脂がボルトヘッドに設定された分離トルクにて軸部の回転に抗するに十分な程硬化した後,軸部に対してボルトヘッドを回転させるとストッパプラグが軸部から抜け落ちる。このことは,ボルト設置機械が十分に大きい回転力を生じたこと,このトルクがボルトヘッドと天井板との摩擦として損失することなくボルト軸部に伝達されたこと,及びその結果ボルトが締められても穴内に固定された樹脂は移動しなかったことを 分に大きい回転力を生じたこと,このトルクがボルトヘッドと天井板との摩擦として損失することなくボルト軸部に伝達されたこと,及びその結果ボルトが締められても穴内に固定された樹脂は移動しなかったことを示す。」(8欄34行目~)「本発明によるボルト装置の軸部は,鋼,ファイバーグラス,木,或いは竹で製造でき,ボルトヘッド及びストッパプラグの材料としては,鋼,鋳鉄,ファイバーグラスの使用が可能である。尚,図面は,本発明を点支持用の樹脂ボルトに応用した場合を示すが,この構造は全コラム式の樹脂ボルト(./ /$0)や機械的なシェル形ボルト(0!)にも応用できる。」イ乙7発明上記アによれば,乙7公報には以下の発明の構成が記載されているものと認めることができる。7- 外周に雄ねじ部の形成されたボルト軸部に係合可能な所定長の雌ねじ部を有し,坑道の天井に形成された穴に打ち込まれたボルト軸部に天井板と組み合わせてはめ込むことで,ボルトヘッドを坑道の天井に向けて引き上げて天井板を天井に押しつけ,これにより支持係合させる坑道の天井に使用するボルト装置である。7- ボルトヘッドの一部は,天井の穴に嵌入されて穴内で軸部と心合せする機能を果たす。7- ボルトヘッドの一部は,天井の穴の外側にあり,天井板と組み合わせてボルト軸部にはめ込まれる。7- ボルトヘッドは,ストッパプラグの底部から穴内部に嵌入される先端部分まで連続するように,ボルト軸部の雄ねじ部に螺合する所定長の雌ねじ部を有する。7- 坑道工事用のボルト装置である。(3)乙7発明と本件訂正発明との対比ア一致点乙7発明の「ボルト軸部」,「坑道の天井に形成された穴」 に螺合する所定長の雌ねじ部を有する。7- 坑道工事用のボルト装置である。(3)乙7発明と本件訂正発明との対比ア一致点乙7発明の「ボルト軸部」,「坑道の天井に形成された穴」及び「天井板」は,それぞれ本件訂正発明の「ロックボルト」,「地山のボアホール」及び「座板」に相当する。また,乙7発明のボルトヘッドの素材としては,乙7公報において,「鋼,鋳鉄,ファイバーグラスの使用が可能である」とされていることからすると,乙7発明の「ボルトヘッド」は,本件訂正発明の「鋼製のロックボルト用ナット」に相当する。前記(1)エのとおり,ロックボルトが,坑道,トンネル,地下空洞,切取斜面の岩盤等について,支保工として広く用いられるものであることは技術常識である。したがって,トンネル工事用であること(本件訂正発明)と,坑道工事に用いられるものであること(乙7発明)は相違点ではない。以上を前提とすると,本件訂正発明は,乙7発明と以下の構成において一致する。「外周に雄ねじ部の形成されたロックボルトに螺合可能な所定長の雌ねじ部を有し,工事トンネル内側壁に穿設された地山のボアホールに打ち込まれたロックボルトに座板と組み合わせて嵌め込むことで,ロックボルトを地盤に固定するための鋼製のトンネル工事用のロックボルト用ナットにおいて,前記地山のボアホールに入り込むように,座板の穴に遊挿可能なシャフト部と,シャフト部の手元側に固着される頭部から成り,頭部からシャフト部まで連続するように前記ロックボルトの雄ねじ部に螺合する所定長の雌ねじ部を形成したこと,を特徴とするトンネル工事用のロックボルト用ナット。」イ相違点本件訂正発明は,以下の点において,乙7発明と相違するものと認められる。(ア)相違点 する所定長の雌ねじ部を形成したこと,を特徴とするトンネル工事用のロックボルト用ナット。」イ相違点本件訂正発明は,以下の点において,乙7発明と相違するものと認められる。(ア)相違点1本件訂正発明では,ロックボルトの雄ねじ部及びこれと螺合するナットの雌ねじ部の形状について,「ロープねじ状」に特定されている。これに対し,乙7発明ではボルト軸部の雄ねじ部及びこれと係合するボルトヘッドの雌ねじ部の形状については特定されていない。(イ)相違点2本件訂正発明では,ロックボルト用ナットのシャフトが「ロックボルト用ナットの大半の長さ」を占めるものとされている。これに対し,乙7公報では,ボルトヘッド全体のうち穴内に嵌入する部分とそれ以外の部分の割合については記載がない。(ウ)相違点3本件訂正発明では,締めつけ工具を嵌めて回転できるように六角頭状の頭部がナットに設けられるものとされている。これに対し,乙7公報では,ナットの頭部の形状に関する明示的な限定はされていない(なお,実施例として,機械を使用してボルトヘッドを回転させるべく,頭部を四角形にしたボルトヘッドが記載されている。)。(4)容易想到性以下のとおり,上記(3)の相違点に係る構成は,乙7発明を実施するに当たっての単なる設計事項であるか,少なくとも当業者による通常の創作能力の発揮にすぎないというべきである。したがって,本件特許発明は,当業者が乙7発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。ア相違点1前記(2)アのとおり,乙7公報には,乙7発明のボルト軸部の材料として,ファイバーグラスを用いることができ,樹脂ボルトにも使用することができる旨の記載がある。 前記(1)エのとおり,本件特許出願前の時点で,ロックボルト 7公報には,乙7発明のボルト軸部の材料として,ファイバーグラスを用いることができ,樹脂ボルトにも使用することができる旨の記載がある。 前記(1)エのとおり,本件特許出願前の時点で,ロックボルトには,FRPや樹脂などからなる構造部材が用いられていたこと,この場合,ロックボルトの素材成型時にその外形を所謂ロープねじ状(鋼製ロックボルトに形成される雄ねじ部よりピッチが粗い)に加工することが技術常識であったことが認められる。また,ロープねじに加工されたロックボルトに用いるナットも同じくロープねじの雌ねじ部を形成したものとされることが技術常識であった。そうすると,乙7発明において,(繊維強化プラスチック。一般に,ファイバーグラスなどの繊維をプラスチックの中に入れて強度を向上させた複合材料をいう。)等の樹脂を素材とするロックボルトを使用する場合に,当該ロックボルトとこれに係合する鋼製のナットのねじ部をいずれもロープねじ状のものとすることは,乙7発明を実施するに当たっての単なる設計事項にすぎないものというべきである。なお,原告は,相違点1に係る構成について,乙7発明においてロープねじのようなピッチが粗いねじを採用することはないと主張し,その理由として,乙7公報の実施例に,2.54㎝当たり11本のねじ山を有する実施例を指摘するが,この記載により,ロープねじの採用を排斥しているということはできない。イ相違点2について乙3刊行物には,中空構造物における土に固定するための引張アンカーに関する発明が記載されており,上記アンカーを構成するナットのうちフランジを境として,約半分程度がアンカープレートの穴に遊走可能なシャフト部となっている図面が記載されている。原告は,乙3発明と乙7発明の課題が異なることを理由に,組 カーを構成するナットのうちフランジを境として,約半分程度がアンカープレートの穴に遊走可能なシャフト部となっている図面が記載されている。原告は,乙3発明と乙7発明の課題が異なることを理由に,組み合わせる動機付けや示唆がなく,むしろ,阻害要因があると主張するほか,乙3発明のシャフト部がナットの大半の長さを占めていないと主張する。たしかに,乙3刊行物において,引張アンカーを構成するナットに占めるシャフト部の具体的な長さやその技術的意義は,明示されているとはいえない。しかし,以下に述べるとおり,乙7公報自体に,ロックボルトについて天井板の外側の突出部を短くするという課題と,その課題解決手段としてナットの一部を天井の穴に嵌入させる構成が記載されており,乙7発明に接した当業者は,本件訂正発明の相違点2に係る構成を容易に想到することができるというべきである。 すなわち,ロックボルトとナットを係合させる場合に,その係合部分(応力を受け止めるために必要な部分)の長さを決めるためには,係合部分が受け止めるべき引張り強度(応力)を前提とし,ロックボルト及びナットの素材並びにねじ山のピッチ数等を勘案して適宜設計する必要があることは自明である。このことは,本件明細書等の段落【0005】において,従来技術のロープねじ加工されたロックボルトとナットにおいて,嵌め合わせ部分のねじ山に掛かる引っ張り荷重を小さくし,ねじ山の引張強度の低い素材でも十分に耐えられるようにする必要があるため,嵌め合わせ長さをかなり長くしなければならなかったという記載があることからも明らかである。前記(2)のとおり,乙7公報には,ロックボルトについて天井板の外側の突出部を短くするという課題と,その課題解決手段としてナットの一部を天井の穴に嵌入させる構成が記載さ らかである。前記(2)のとおり,乙7公報には,ロックボルトについて天井板の外側の突出部を短くするという課題と,その課題解決手段としてナットの一部を天井の穴に嵌入させる構成が記載されている。この乙7発明を実施するに当たっては,ロックボルトとナットの係合部分(応力を受け止めるために必要な部分)の長さのうち,天井板外側部分の長さと天井の穴に嵌入する部分の長さの和は一定である。この割合をどのようなものとするかは,乙7発明に接した当業者が適宜設計することのできる事項であるというべきであるところ,天井板の外側への突出部分をできるだけ減少させるという乙7発明の課題を前提とすれば,外側部分よりも内側部分を長くすることは当然の帰結である。しかも,前記(1)エのとおり,ロープねじ加工されたロックボルトとナットでは,ナットを長尺にして雌ねじ部に十分な長さを確保する必要があることも本件特許出願時における技術常識であったことが認められる。このような長尺のナットを用いる場合に内側部分がナット全体の長さの大部分を占めるようにすることは,乙7発明に接した当業者がいわば当然に行うことといえる。ウ相違点3について前記(1)エのとおり,本件特許出願時における技術常識として,ロックボルトを定着方式により分類すると,締付け式,全面定着式およびこれらの併用式に分けられたこと,全面定着式についても締め付けがされることがあり,締め付けの操作は締付け式と共通であって,スパナ等を用いた人力によることもあったことが認められる。また,ロックボルトに用いられるナットの形状は,六角ナットが標準規格として定められていたことも認められる。そうすると,乙7発明を実施するに当たり,当業者が締めつけ工具を嵌めて回転できるように六角頭状の頭部とすることは単なる設 ットの形状は,六角ナットが標準規格として定められていたことも認められる。そうすると,乙7発明を実施するに当たり,当業者が締めつけ工具を嵌めて回転できるように六角頭状の頭部とすることは単なる設計事項であったものというべきである。乙7公報の実施例の記載は,上記認定の妨げとなるものではない。 2 結論以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求にはいずれも理由がない。よって,主文のとおり判決する。        大阪地方裁判所第26民事部  裁 判 長 裁 判 官山田陽三 裁 判 官松阿彌隆裁判官西田昌吾は,転補につき,署名押印することができない。 裁判長裁判官山田陽三((別紙)当事者目録              原告株式会社ケー・エフ・シー                            同訴訟代理人弁護士山 田 威一郎同補佐人弁理士立花顕治同桝田 剛同石上和輝              被告      株式会社カテックス              同訴訟代理人弁護士青木茂雄同水野 幹 テックス              同訴訟代理人弁護士青木茂雄同水野 幹同補佐人弁理士小島清路同萩野義昇被告 株式会社同訴訟代理人弁護士上谷 清同仁田陸郎同萩尾保繁同山口健司同薄葉健司)同石 神 恒太郎同伊藤隆大同訴訟代理人弁理士島田哲郎同補佐人弁理士篠田拓也*(別紙)被告製品目録製品名を「POWERTHREAD」とするロックボルトユニット(ロックボルト本体,ナット,プレートの組み合わせ)で使用されているナットのうち, 1 以下の写真右端のもの 2 以下の写真左端のもの

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