令和6(ワ)70106 特許使用料請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年11月15日 東京地方裁判所
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令和6年11月15日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和6年(ワ)第70106号特許使用料請求事件口頭弁論終結日令和6年8月27日判決 原告アキシオン株式会社 被告アキシオン・トーキョー株式会社同訴訟代理人弁護士市川 穣主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は、原告に対し、600万円を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の要旨 本件は、原告が、被告に対し、原告と被告との間で締結された別紙特許権目録記載の各特許権(以下、同目録の項番に従って「本件特許権1」ないし「本件特許権3」といい、これらを併せて「本件各特許権」という。)について通常実施権を許諾する契約に基づき、令和6年1月から同年3月までの実施許諾料合計600万円(以下「本件許諾料」という。)の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲括弧内の証拠(以下、書証番号は特記しない限り枝番を含む。)、弁論の全趣旨及び当裁判所に顕著であることにより容易に認められる事実)(1) 当事者(甲1、弁論の全趣旨)原告及び被告は、いずれも、フルボ酸の研究開発等を行う株式会社である。 (2) 「新事業提携契約及び特許専用実施権契約」の締結及びその内容 原告と被告は、令和4年12月29日、「新事業提携契約及び特許専用実施権契約」(以下「本件契約」という。)を締結した。本件契約においては、原告が、被告に対し、本件各特許権について通常実施権を許諾し、被告が、原告に対し、その実施許諾料(本件許諾料)として月額200万円を支払う (以下「本件契約」という。)を締結した。本件契約においては、原告が、被告に対し、本件各特許権について通常実施権を許諾し、被告が、原告に対し、その実施許諾料(本件許諾料)として月額200万円を支払うことが定められた。 なお、本件契約の契約書(甲2)においては、被告代表者個人名義の記名押印しか存在しないが、本件契約が原告と被告との間で締結されたことは当事者間に争いがない。 (3) 本件特許権2に係る専用実施権の設定原告は、令和5年3月23日、本件特許権2を含めた三つの特許権(ただ し、本件特許権1及び3は含まれない。)について、特許権者である株式会社日本ソフケン(以下「日本ソフケン」という。)から、地域を日本全国、期間を本特許権の存続期間中、内容を全部とする専用実施権の設定を受けた(甲10、11)。 (4) 被告による本件契約の解除に至る経緯 ア被告は、令和5年12月20日、原告に対し、本件特許権1及び3は、原告が他の共有者からこれらの特許権に係る発明の実施について許諾を受けている事実を確認できないため、被告においてもその発明の実施ができない状況になっていると主張して、書面到達後1週間以内に他の共有者からの承諾書が提示されない場合は、債務不履行に基づき本件契約を解除す る旨を記載した「催告兼解除通知書」を送付し、同書面は、同月29日に原告に到達した(乙1)。 イまた、被告は、令和6年6月28日、原告に対し、本件特許権1及び3に係る発明の「実施権を創設する義務」を履行するように求めるとともに、書面到達後1週間以内に上記の義務を履行しない場合は本件契約を解除す る旨を記載した「被告第1準備書面」を送付し、同書面は、同年7月4日 に原告に到達した(当裁判所に顕著な事実)。 ウさらに、 週間以内に上記の義務を履行しない場合は本件契約を解除す る旨を記載した「被告第1準備書面」を送付し、同書面は、同年7月4日 に原告に到達した(当裁判所に顕著な事実)。 ウさらに、被告は、前記(2)のとおり、本件契約の契約書(甲2)には被告代表者個人名義の記名押印しか存在せず、形式的には被告の記名押印が存在しないこと等を踏まえ、令和6年8月8日、被告代表者との連名で、原告及び原告代表者に対し、前記ア及びイと同趣旨の「催告兼解除通知書」 を送付し、同書面は、原告に対しては同月15日に、原告代表者に対しては同月12日に、それぞれ到達した(乙13、14)。 (5) 本件訴訟に至る経緯(当裁判所に顕著な事実)原告は、令和6年3月6日、東京簡易裁判所に対し、被告を債務者として本件許諾料及び申立手続費用の支払を求める支払督促を申し立て、同月8日、 同旨の支払督促が発せられ、同月13日、同支払督促の正本が被告に送達された。 そうしたところ、被告が、同月19日、上記支払督促に対して異議を申し立てたため、本件訴訟に移行した。 3 争点 本件契約の解除の成否第3 争点に関する当事者の主張(被告の主張) 1 特許権について実施権を許諾する権限を有しない者が、第三者に実施権を許諾するような場合には、他人の権利を実施許諾の目的とした場合に該当するか ら、同契約は当事者間では有効に成立しつつ、許諾者は、実施権者のために約定の実施権を創設すべき義務を負うものと解される(民法559条、561条)。 そして、本件特許権1及び3については、原告以外の第三者による共有になっており、かつ、原告は、それらの共有者から専用実施権の設定を受けるなど しておらず、通常実施権を許諾する権限を有していない。そのため、原告 権1及び3については、原告以外の第三者による共有になっており、かつ、原告は、それらの共有者から専用実施権の設定を受けるなど しておらず、通常実施権を許諾する権限を有していない。そのため、原告は、 本件契約に基づき、被告に対し、これらの特許権についての通常実施権を創設すべき義務を負うところ、同義務を履行していないから、原告には、本件契約に係る債務不履行がある。 2 被告は、原告に対し、令和5年12月29日到達の「催告兼解除通知書」及び同年7月4日到達の「被告第1準備書面」により、さらに、被告代表者との 連名で、原告及び原告代表者に対し、同年8月15日及び同月12日にそれぞれ到達の「催告兼解除通知書」により、前記2の義務の履行の催告及び本件契約の解除の意思表示をした。 3 したがって、本件契約の解除により、被告は本件許諾料の支払義務を負わない。 (原告の主張)被告は、原告において通常実施権を創設すべき義務があると主張するが、本件契約の契約書にはそのような義務は記載されていない。さらに、本件各特許権はいずれも被告の事業のために不必要な特許であり、原告が被告に対して別の特許発明の実施を許諾していることや、本件契約の契約書では、本件各特許 権について、原告が「特許庁への登録保全が出来ない」ものであると明記されていること(同契約書7条)を踏まえると、原告が本件契約に基づき上記の義務を負っていると解することはできない。 そして、原告は本件契約に定められた内容を遵守しており、何ら債務不履行は存在しない。 したがって、本件契約の解除は認められない。 第4 当裁判所の判断 1 特許権者の同意を得ることなく他人に通常実施権を許諾した場合であっても、契約締結後に特許権者から許諾を得ることは可能であ したがって、本件契約の解除は認められない。 第4 当裁判所の判断 1 特許権者の同意を得ることなく他人に通常実施権を許諾した場合であっても、契約締結後に特許権者から許諾を得ることは可能であるから、通常実施権を許諾する権限を有しない者が第三者に通常実施権を許諾した場合であっても、契 約を締結した当事者間においてその契約の効力を直ちに否定する必要はない。 しかしながら、このような実施許諾契約は、他人の権利を目的とした契約といえるから、通常実施権を許諾する権限を有しないにもかかわらず、これを許諾した者は、民法559条及び561条に基づき、通常実施権者のために通常実施権を許諾する権限を取得すべき義務を負うものと解される。 2 本件においては、前提事実(2)のとおり、本件契約は、原告が、被告に対し、 本件各特許権について通常実施権を許諾することなどを約したものであるが、証拠(乙11、12)及び弁論の全趣旨によれば、本件特許権1は国土防災技術株式会社及び日本ソフケンの共有に係るものであり、本件特許権3は、両社と日本ミクニヤ株式会社の共有に係るものであることが認められる。そうすると、原告は、被告に対し、本件契約に基づく債務として、上記の共有者から被 告のために通常実施権を許諾する権限を取得すべき債務(以下「本件債務」という。)を負っていたものと解される。 しかしながら、前提事実(3)のとおり、原告は、本件特許権2について、その単独の特許権者である日本ソフケンから専用実施権の設定を受けているものの、弁論の全趣旨によれば、本件特許権1及び3については、上記の共有者か ら被告のために通常実施権を設定する旨の許諾を得ていないものと認められる。 したがって、原告には本件債務の不履行があるといえる。 これに対し、原 件特許権1及び3については、上記の共有者か ら被告のために通常実施権を設定する旨の許諾を得ていないものと認められる。 したがって、原告には本件債務の不履行があるといえる。 これに対し、原告は、①本件各特許権はいずれも被告の事業のために不必要な特許であり、原告が被告に対して別の特許発明の実施を許諾していることや、②本件契約の契約書では、本件各特許権について、原告が「特許庁への登録保 全が出来ない」ものであると明記されていること(同契約書7条)から、原告には債務不履行がないと主張する。 しかしながら、上記①については、本件全証拠によっても、本件各特許権はいずれも被告の事業のために不必要な特許であり、原告が被告に対して別の特許発明の実施を許諾しているという事実を認めることはできないから、原告の 主張はその前提を欠くものである。 また、上記②についても、本件契約は、原告が、被告に対し、本件各特許権について通常実施権を許諾することを目的にした契約であること(前提事実(2))からすると、原告の指摘する契約書の文言のみをもって本件債務の存在を否定することはできないというべきである。 そうすると、原告の上記主張はいずれも採用できない。 3 そして、本件債務は期間の定めのない債務に該当するものと解されるところ、前提事実(4)アのとおり、被告は、令和5年12月20日、原告に対し、書面到達後1週間という期間を定めてその債務の履行を催告するとともに、その履行がない場合は本件契約を解除する旨を記載した「催告兼解除通知書」を送付して、この書面は、同月29日に原告に到達し、上記の催告期間は既に経過し ている。 4 以上によれば、原告による本件契約に係る債務不履行、被告による相当の期間を定めての履行の催告、その期間内 して、この書面は、同月29日に原告に到達し、上記の催告期間は既に経過している。 4 以上によれば、原告による本件契約に係る債務不履行、被告による相当の期間を定めての履行の催告、その期間内に履行がされなかったこと及び解除の意思表示という、催告による解除の要件(民法541条本文)が充たされているから、本件契約の解除により、被告は本件許諾料の支払義務を負わないというべきである。 第5 結論よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 國分隆文 裁判官 塚田久美子 裁判官 木村洋一 (別紙)特許権目録 1 特許番号特許第5354633号 発明の名称有機酸によって製造された腐植液を用いた無機質資材又は有機質資材の機能増進および機能回復方法 出願日平成25年1月28日 出願番号特願2013-13799 登録日平成25年9月6日 2 特許番号特許第6331206号 発明の名称フルボ酸溶液の良否評価方法及びフルボ酸溶液の製造方法 出願日平成29年11月22日 出願番号特願2017-224893 登録日平成30年5月11日 3 特許番号 フルボ酸溶液の良否評価方法及びフルボ酸溶液の製造方法出願日平成29年11月22日出願番号特願2017-224893登録日平成30年5月11日 3 特許番号特許第6559621号 発明の名称海草・藻類の再資源化方法出願日平成28年7月11日出願番号特願2016-136872登録日令和1年7月26日以上

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