平成13(わ)1213 恐喝未遂

裁判年月日・裁判所
平成14年7月22日 神戸地方裁判所
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判決文本文3,902 文字)

神戸地方裁判所平成14年7月22日判決平成13年(わ)第1213号恐喝未遂被告事件 主文 被告人を懲役1年10月に処する。 未決勾留日数中170日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,暴力団A組B組C会D組舎弟であるが,同組若頭である分離前の共同被告人Eと共謀の上,被告人の内妻Fの妹Gがピザの配達用のバイクに接触されそうになったこと等に言い掛かりをつけ,いわゆるみかじめ料名下に金員を喝取しようと企て,平成13年10月7日午後8時ころ,神戸市H区Ia丁目b番c号所在の前記Fらの実家であるJ方に,株式会社KL事業部LM店店長V(当時33歳)を呼び出し,同所において,そのころから同日午後9時50分ころまでの間,同人に対し,運転していた奴を出せなどと要求して順次同店アルバイト従業員4名を同所に呼び出し,被告人において前記Vに殴りかかろうとする気勢を示し,前記Eにおいて上着をはだけて入れ墨を示しながら,こもごも,前記Vに対し,「お前のところのバイクの運転が危なくて接触しかけた。どういう教育してるんや。」「埋めたろか。筋者なめとったらあかんぞ。」などと申し向け,さらに,前記Eにおいて,所携の数珠を,前記Vのそばで正座している同店の従業員W目掛けて投げつけた上,「あんたの誠意見せてくれたらええだけや。100万円200万円用意せえ言うてるんちゃうぞ。盆と正月になぁ,品物持って行くから3万円で買うてくれたらいいねん。お前,警察にチクッたら殺すぞ。わしら,人殺すことなんて何とも思ってないからのう。」などと申し向けて金員を要求し,もしこの要求に応じなければ,同人の身体等にいかなる危害を加えるかも知れ らいいねん。お前,警察にチクッたら殺すぞ。わしら,人殺すことなんて何とも思ってないからのう。」などと申し向けて金員を要求し,もしこの要求に応じなければ,同人の身体等にいかなる危害を加えるかも知れない気勢を示して脅迫し,その旨同人を畏怖させ,同人から金員を喝取しようとしたが,同人が警察官に被害を届け出たため,その目的を遂げなかったものである。 (証拠の標目)-括弧内の数字は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号省略(補足説明)弁護人は,被告人が分離前の共同被告人Eとともに被害者に対し脅迫的言動をもって謝罪を迫ったことは事実であるが,被告人において金員を恐喝する意図はなかったし,仮に,前記Eにおいて金員を恐喝しようとしたとしても,同人との間でその旨共謀したことはない旨主張し,被告人もこれに沿う供述をするところ,前掲関係各証拠によれば,本件犯罪事実は疑いの余地なく認定できるのであるが,その理由につき,補足して説明を加える。 1 前掲関係各証拠によれば,次の事実が認められる。 (1) 被告人は暴力団A組B組C会D組舎弟であるが,平成13年10月7日,被告人の内妻Fらの実家であるJ方において,同組若頭である分離前の共同被告人E,前記F及び同女の実妹Gらとともに飲食中,外出しようとしたGが戻ってきて,被告人らに対し,家の前でピザの配達用のバイクに接触されそうになった上暴言を浴びせられたと訴えるや,同日午後8時ころ,株式会社KL事業部LM店に電話して,前記Eにおいて,同店店長Vを呼び出し,ほどなく同人が前記J方に来て,同所6畳和室に上がった。 (2) 同所において,前記EらはVに対し「お前のところのバイクの運転が危なくて接触しかけた。どういう教育してるんや。」 「運転していた奴を出せ。」などと怒鳴り,Vは正座してひたすら謝罪し 。 (2) 同所において,前記EらはVに対し「お前のところのバイクの運転が危なくて接触しかけた。どういう教育してるんや。」 「運転していた奴を出せ。」などと怒鳴り,Vは正座してひたすら謝罪しつつ,配達員を呼ぶことはできない旨返答していたが,被告人において何度か,殴る,蹴る等の仕草をするなどしつつ,「筋者なめとったらあかんぞ。埋めたろか。」などと怒鳴り,そのたびにEら周囲の者がこれを制止するような状態が続き,ついには,前記Eにおいて着ていたジャージをはだけて入れ墨を見せつけながら,「早う電話して犯人連れて来い。」と怒鳴った。 (3) やむなく,Vは,同日午後8時20分ころ,LM店に電話して,配達で前記J宅付近をバイクで走行したというアルバイト従業員Wを呼び出し,前記6畳和室において,Wは被告人らから犯人はお前ではないかと追求されたが,前記GがWではなかったというに及んで,被告人らは,犯人はいないはずがないとして,店の者全員を呼べと要求し,その結果,さらにXら3名の同店のアルバイト従業員が順次J宅に呼び出され,全員が正座させられた上,被告人及び前記Eらから,犯人は誰やなどと怒鳴りつけられたが,Gにおいていずれも違うと述べたため,前記Eにおいて,前記Wに対し,「後は店長と話するから,お前が認めればええやないか。」旨述べ,これに応じないWの態度に苛ついて,所携の数珠を,同人目掛けて投げつけ,前記3名の従業員が帰ることを許された後,Wが土下座して謝罪させられた。 (4) 前記Eは,Wに対し,後は店長と大人の話をするので帰ってええわと述べ,Wが帰った後,Vとの間で,要旨「あんたの誠意見せてくれ」(E),「お金ですか」(V),「そうや。でも100万円200万円用意せえ言うてるんちゃうぞ。 盆と正月に品物持って行くから3万円で買うてくれた Wが帰った後,Vとの間で,要旨「あんたの誠意見せてくれ」(E),「お金ですか」(V),「そうや。でも100万円200万円用意せえ言うてるんちゃうぞ。 盆と正月に品物持って行くから3万円で買うてくれたらええだけの話や。」(E)「分かりました。」(V)とのやりとりがなされた後,EはVに対し,「これからええつき合いしていこな。」「もう分かっとると思うけど,警察にちくったら殺すぞ。わしら殺すことなんて何とも思っていないからのう。」と述べ,さらに,台所にいた被告人に対し,「金の話の件もう済みました。」と述べた。 (5) 前記J方6畳和室とその奥の台所とは85センチメートル幅の廊下を挟んで見通しのきく位置関係にあり,被告人はその間台所にいたことはあるものの,ほとんどの間和室にいた。 2 以上のとおり認められる。LM店長及び同店のアルバイト従業員3名の当公判廷における証言の信用性は十分であり,これに反する被告人及び前記Eの各供述調書や当公判廷における供述並びにF及びGの各供述調書は信用しがたい。 これらの事実によれば,前記Eにおいて被害者を恐喝する意図で被害者らを呼び出したものと優に認められるし,被告人が前記Eの意図を了知した上,少なくとも,暗黙のうちに意思を相通じて本件犯行に及んだものと認めるに十分である。 被告人は,前記Eとともに被害者に対し脅迫的言動をもって謝罪を迫ったことは事実であるが,被告人において金員を恐喝する意図はなかったし,その旨共謀したこともないというが,被告人の供述は,約2時間にもわたる恐喝行為中,ほとんどの間,6畳和室におり,前記Eと行動を共にしていたことを認めながら,Eの具体的な挙動についてはほとんど記憶がないと強弁するものであって,到底信用できるものではない。 3 以上のとおり,被告人が本件犯行を行ったことにつき証明は Eと行動を共にしていたことを認めながら,Eの具体的な挙動についてはほとんど記憶がないと強弁するものであって,到底信用できるものではない。 3 以上のとおり,被告人が本件犯行を行ったことにつき証明は十分であり,弁護人の主張は理由がない。 (累犯前科)被告人は平成11年10月25日神戸地方裁判所で恐喝未遂,傷害の各罪により懲役1年4月に処せられ,平成12年12月23日その刑の執行を受け終わったものであって,この事実は,検察事務官作成の前科調書(検察官請求証拠番号50)及び判決書謄本(同57)によって認める。 (法令の適用)罰条刑法60条,250条,249条1項再犯加重刑法56条1項,57条宣告刑懲役1年10月未決勾留刑法21条(170日算入)訴訟費用刑事訴訟法181条1項ただし書(負担させない。)(量刑の理由)本件は,被告人が共犯者と共謀の上,配達員の運転態度がよくないなどと因縁を付け,LM店長に対し,判示のごとく脅迫し,付き合い料名下に,金員を恐喝しようとしたが,被害者が警察官に届け出たため,未遂に終わった恐喝未遂の事案であるが,犯行の動機に斟酌すべき事情は何ら認められない上,暴力団員であることを誇示し,執拗に脅迫を続けたその犯行態様は無法で悪質であること,被害者の被害感情は厳しいこと,被告人には累犯前科欄記載の同種前科があること,加えて,被告人は本件犯行につき不合理な弁解に終始し恥じるところがないこと等に徴すると,被告人の刑事責任は相当に重いというべきであるが,犯行が未遂に終わったこと,被告人なりの反省の態度等被告人のために酌むべき事情も十分に考慮した上,主文のとおり量定した次第である。 よって,主文のとおり判決する。 平成14年7月22日神戸地方裁判所第11 主文 告人なりの反省の態度等被告人のために酌むべき事情も十分に考慮した上,主文のとおり量定した次第である。よって,主文のとおり判決する。 平成14年7月22日 神戸地方裁判所第11刑事係甲 裁判官杉森研二

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